説明

処理される材料の湿式化学処理のための方法およびデバイス

処理される材料(10)、特に、処理される平坦な材料(10)の湿式化学処理のためのデバイス(1)は、処理される材料(10)を処理液(9)で処理するための処理容器(2)と、処理される材料(10)を処理容器(2)を通して輸送するための輸送デバイス(24)と、不活性気体(16)を処理容器(2)に供給するための供給デバイス(11)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理される材料の湿式化学処理のための方法およびデバイスに関する。本発明は、特に、連続プロセスプラントにおいて、処理される材料が輸送されて、処理液で処理される、上記のデバイスおよび上記の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、プリント回路基板産業におけるプリント回路基板などの処理される平坦な材料の加工において、処理される材料の処理は、しばしば、湿式化学プロセスラインで行われる。連続プロセスプラントにおいて、処理される材料は、1つの処理モジュールまたは複数の処理モジュールを通して輸送可能であり、処理モジュールにおいて、1種の処理溶液で、または連続して種々の処理溶液で処理される。処理溶液を、ポンプによって、処理される材料へと運搬することができ、処理部材を介して送達することができる。それによって、大気酸素が処理溶液に入る可能性がある。
【0003】
いくつかの処理溶液では、酸素の移入によって、処理溶液自体および/または処理される材料の処理プロセスを悪化させる可能性がある。例えば、酸素の移入によって、電解質溶液中での酸化プロセスが促進される可能性がある。酸素の移入によって影響を受ける可能性のある処理溶液の例は、スズ溶液である。(特許文献1)においては、例えば、空気からスズ浴への酸素の移入によって、Sn(II)イオンの酸化の結果として、Sn(IV)イオンの蓄積、およびCu(I)−チオ尿素錯体の蓄積が起こる可能性があり、溶解限度を超えて、錯体が沈殿物を形成する濃度となることが説明されている。
【0004】
一般に、ある種の処理溶液は、処理モジュールにおいて粒子が沈殿して、相当するスラリーが形成するような様式で、酸素の移入に影響を受ける可能性がある。これは、浴の実用寿命の低下を導き、化学薬品およびメンテナンスのためのコストが増大することを意味する。このスラリーは、処理される材料へのダメージをもたらす可能性がある。また、このスラリーは、プロセスラインの低流量範囲で沈殿する可能性があり、スラリーの除去はメンテナンスに関する経費を増大させる可能性がある。
【0005】
また酸素の移入によって、処理溶液中で処理される材料との反応の間に有害な気体が形成する可能性があり、この有害気体が浴に溶解されたまま残留し、反応性の低下が導かれるという影響がある可能性がある。
【0006】
処理溶液への酸素の移入が、処理溶液自体、処理される材料の処理プロセス、またはプロセスラインもしくは処理モジュールの運転に有害な影響を及ぼす処理溶液については、以下、酸素感受性または空気感受性の処理溶液と記される。
【0007】
処理溶液中への酸素の移入の影響を低減するために、例えば、(特許文献2)には、浴を金属スズと接触させ、それによって、それらを再生させることが提案されている。それによって、高い酸化状態の金属イオンは、低い酸化状態で金属イオンへと還元される。その目的のために相当する再生器が提供されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】欧州特許出願公開第545216A2号明細書
【特許文献2】独国特許発明第10132478C1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の根底にある目的は、連続プロセスプラントに関して、処理される材料の処理のための改善された方法および改善されたデバイスを提供することである。特に、酸素の移入から生じる可能性のある、処理溶液および/または処理される材料の処理プロセスおよび/またはプロセスラインまたは処理モジュールの運転に及ぼす悪影響を低減させるような方法およびデバイスが必要とされている。特に、実質的に処理速度に影響を及ぼすことなく、連続プロセスプラントの連続運転の間に、それらの問題を低減させることができるような方法およびデバイスが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によると、独立請求項に記載される方法およびデバイスによって、この目的は達成される。従属請求項は、本発明の好ましい、または有利な実施形態を定義する。
一態様によると、連続プロセスプラントにおいて処理される材料の湿式化学処理の方法が提供される。この方法において、処理される材料は処理容器を通して輸送され、そしてその処理容器中で、処理液で処理される。本発明によると、不活性気体が処理容器に供給される。
【0011】
処理される材料は、特に、処理される平坦な材料、例えば、プリント回路基板、導電性フィルム、シート材料などであることが可能である。処理される材料は、導電性構造を有することが可能である。処理液は、特に、処理溶液への酸素の移入が、処理溶液自体および/または処理される材料の処理プロセスおよび/またはプロセスラインまたは処理モジュールの運転に悪影響を有する溶液であることが可能である。
【0012】
不活性気体を供給することによって、処理容器中で大気酸素の置き換えが起こる。この方法において、処理容器中の酸素濃度を低下させることができて、したがって、処理液への酸素の移入を低下させることができる。特に、ほんのわずかの酸素を含有するか、または酸素を含有しない気体クッションを、処理液の浴の上に、浴表面に直接隣接させて生じさせることができる。これによって、処理される材料が処理容器に輸送され、そして処理容器から輸送される連続プロセスプラントにおいて、処理溶液への酸素の移入が低減される。
【0013】
不活性気体の供給は、廃物空気が処理容器から放出される1つまたは複数の領域から間隔を置いて配置された処理容器の1つまたは複数の領域で実行することができる。例えば、不活性気体を、処理容器の少なくとも1つの第1の領域で、処理容器に供給することができる一方、第1の領域から間隔を置いて配置された処理容器の第2の領域で、処理容器から不活性気体は放出され、例えば、吸引または放出によって除去される。このことから、第1の領域および第2の領域の適切な配置によって、酸素を処理容器から移動させることが可能となる。
【0014】
不活性気体を、処理容器のエッジ領域を介して、処理モジュールから放出することができる。連続プロセスプラントにおいて、輸送方向で処理モジュールを区切る処理容器のジャケットの部分に、例えば、処理容器と、隣接している処理モジュールとの間の分割壁に、エッジ領域を配置することができる。少なくとも、輸送方向で処理容器を区切る処理容器の2つのジャケットの部分から間隔を置いて、特に、それらの間の実質的に中央に配置された領域において、処理容器への不活性気体の供給を行うことができる。これにより処理容器の長さにわたって酸素を移動させることができる。
【0015】
処理容器は、処理される材料がそれを通して処理容器に輸送されるインレットスロット、および処理される材料がそれを通して処理容器から輸送されるアウトレットスロットを
有することが可能であり、不活性気体は、インレットスロットおよび/またはアウトレットスロットを通して処理容器から放出される。不活性気体は、特に、吸引によって、インレットスロットを通して、そしてアウトレットスロットを通して、処理容器から除去することができる。これによって、処理される材料の通過のために処理容器に提供された1つのスロットを通して、特に、2つのスロットを通して、処理容器から廃物空気を放出することが可能となる。したがって、それらのスロットを通しての処理容器への空気の進入を防ぐことが可能である。
【0016】
処理容器の蒸気空間の圧力を、処理容器外の周囲圧力より高くなるように調節することができる。その結果、例えば、インレットスロットおよび/またはアウトレットスロットを通しての環境から処理容器への大気酸素の進入を低減させることができる。
【0017】
不活性気体を連続的に処理容器に供給することができる。その結果、連続プロセスプラントの連続運転の間、酸素を処理容器から移動させることができる。
不活性気体を処理容器に供給するために、不活性気体を少なくとも処理液に導入することができる。これによって、不活性気体が処理容器に供給される時に、処理液に溶解した酸素、または処理プロセスの間に形成する処理液に溶解した有害な気体を、処理液から追い出すことが可能となる。
【0018】
不活性気体を、処理液の浴水位より低く配置された位置で処理液に導入することができる。特に、不活性気体を、浴水位より少なくとも10mm、特に少なくとも100mm低く配置された位置で処理液に導入することができる。その結果、発泡を防止することができ、均一な気泡分布を達成することができ、そして、不活性気体気泡と処理液浴との間の長時間の接触時間を達成することができる。
【0019】
さらに、不活性気体を、浴または処理液の渦巻き(swirling)が達成されるように、処理液に導入することができる。その結果、残渣量でなお存在し得るいずれものスラリーの渦巻きを達成することができて、そのため、スラリーの濾過がより容易に可能となる。したがって、メンテナンス間隔を延長することができて、プロセスラインのより高い有効性を達成することができる。
【0020】
処理容器にサンプを備えることができ、その中で、処理液が少なくともある水位まで蓄積され、そこから処理液が処理部材へ運搬され、不活性気体は、その水位より低い位置で処理容器に導入される。その結果、低い酸素含有量を有する処理液が1つまたはそれ以上の処理部材を介して運搬および送達される様式で、不活性気体を、目的にかなって、処理液に導入することができる。そのような様式において、酸素および/または有害な気体を、処理容器中の処理液の大部分から追い出すことができる。
【0021】
不活性気体を、処理液に、特に、処理液を処理部材へ運搬するコンベアデバイスの吸入領域で導入することができる。特に、処理液を循環するコンベアデバイスに大量の液体が流入する位置もしくは領域で、および/またはコンベアデバイスの吸入開口部への流速が有限である位置もしくは領域で、サンプに蓄積された処理液に不活性気体を導入することができる。
【0022】
コンベアデバイスの吸入開口部より高く、サンプに配置された位置または領域で、サンプに蓄積された処理液中に不活性気体を導入することができる。それによって、コンベアデバイスにダメージを与える可能性のある気体気泡の吸入を防ぐことが可能である。
【0023】
特に、不活性気体を処理液に導入するための、不活性気体を供給するための供給デバイスは、不活性気体が微小気泡の形態で導入されるように構成することができる。供給デバ
イスは、多孔性フリットを有することができ、これを介して不活性気体が処理液に導入される。また供給デバイスは、小さい穴が配列された供給部分を備えることもでき、これを介して不活性気体が処理液に導入される。フリットまたは送達部分が、管状プラスチック部品の形態であることができる。不活性気体が微小気泡の形態で処理液に導入される場合、高度の不活性気体の使用を達成することができる。加えて、望ましくないスプラッシュ(splashes)を低減することができる。
【0024】
処理容器の蒸気空間における所望の酸素濃度を達成するために、処理容器に供給される不活性気体の体積流量率を確立することができる。例えば、処理容器の既知の寸法および運転パラメータ次第で、体積流量率を制御することができる。例えば、処理モジュールの蒸気空間における酸素濃度または他の気体濃度を測定するセンサの出力信号次第で、体積流量率を調節することができる。
【0025】
浴水位より高い処理容器の蒸気空間の酸素濃度が、10体積%未満、特に、5体積%未満、特に2体積%未満であるように、処理容器に供給される不活性気体の体積流量率を確立することができる。
【0026】
この方法およびデバイスにおいて、処理容器の蒸気空間における酸素濃度を0体積%まで低下させる必要はない。例示的な実施形態において、浴水位より高い処理容器の蒸気空間の酸素濃度が、0.1〜15体積%の範囲、特に、3〜12体積%の範囲、特に4〜8体積%の範囲であるように、処理容器に供給される不活性気体の体積流量率を確立することができる。上記の酸素の残留濃度がある場合でさえも、処理される材料が酸素感受性または空気感受性処理溶液で処理される場合に生じる可能性のある問題を首尾よく低減させることができることが示された。
【0027】
単位時間あたり処理容器から放出される廃物空気の量が、単位時間あたり供給される不活性気体、および処理液の蒸発によって単位時間あたり形成される蒸気の量の合計の少なくとも80%であるように、単位時間あたり処理容器に供給される不活性気体の量を確立することができる。単位時間あたり処理容器から放出される廃物空気の量は、そのような合計の少なくとも90%、特に、少なくとも100%であることが可能である。例示的な実施形態において、単位時間あたり処理容器から除去される廃物空気の量は、そのような合計の80%〜120%であることが可能である。そのような様式で、形成する蒸気は、吸引によって安全に除去することができる。
【0028】
/時間で測定される体積流量率と、mで測定される、処理容器に存在する処理液の体積との比率が20:1未満、特に10:1未満であるように、処理容器に供給される不活性気体の体積流量率を確立することができる。上記の不活性気体の体積流量率によって、処理される材料が酸素感受性または空気感受性の処理溶液で処理される場合に生ずる可能性のある問題を防ぐことができ、不活性気体の消費を十分に低くさせることができる。
【0029】
処理容器はメンテナンスおよびサービス開口部を有することが可能であり、そのそれぞれは少なくとも1つの閉鎖要素を備えることができる。少なくとも1つの閉鎖要素には、ガスケットを備えることができる。これによって、メンテナンスおよびサービス開口部を介して処理容器の環境から酸素が進入することを防ぐことができる。
【0030】
例えば、窒素または二酸化炭素を不活性気体として使用することができる。
さらなる態様によると、処理される材料、特に、処理される平坦な材料の湿式化学処理のためのデバイスが提供される。このデバイスは、処理液で処理される材料を処理するための処理容器と、処理容器を通して処理される材料を輸送するための輸送デバイスと、不
活性気体を処理容器に供給するための供給デバイスとを備える。
【0031】
不活性気体が処理容器に供給されるようにデバイスが構成されるため、処理容器中の大気酸素を置換することができる。したがって、デバイスは、処理容器中の酸素濃度を低下させ、したがって、処理液への酸素の移入を低減させるように構成される。特に、ほんのわずかの酸素を含有するか、または酸素を含有しない気体クッションを、処理液の浴の上に、浴表面に直接隣接させて生じさせることができる。これによって、連続プロセスプラントにおいて、処理溶液への酸素の移入が低減される。
【0032】
本明細書に記載される様々な例示的な実施形態による方法を実行するためにデバイスを構成することができ、対応するその方法の実施形態と関連して記載された効果を達成することが可能である。デバイスの実施形態は従属請求項においても記載されており、それおぞれ対応するその方法の実施形態と関連して記載された効果を達成することが可能である。
【0033】
本発明のさらなる態様によって、一態様または例示的な実施形態による方法によって処理された物品、特に、プリント回路基板または導体箔が提供される。
本発明の様々な例示的な実施形態による方法およびデバイスによって、処理液への酸素の移入が低減される。特に、処理される材料が処理容器に輸送され、そして処理液による処理後、処理容器から輸送される連続プロセスプラントにおいて、様々な例示的な実施形態による方法およびデバイスによって、処理液への酸素の移入によって生じる可能性のある問題を低減することができる。
【0034】
本発明の例示的な実施形態を、処理される材料が輸送されるプラントにおいて、例えば、プリント回路基板、箔状材料、ストリップ導体などの化学的、特に電気化学的処理のためのプラントにおいて使用することができる。しかしながら、例示的な実施形態は、その分野の用途に限定されない。
【0035】
添付の図面を参照し、本発明を、好ましいか、または例示的実施形態によって、以下、より詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】例示的な一実施形態による、処理される平坦な材料の処理のためのデバイスの概略断面図である。
【図2】図1のデバイスのさらなる概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
処理される材料が水平な輸送面で輸送される、処理される材料の処理のためのプラントに関して、例示的な実施形態を記載する。従来通り、処理される材料に関する方向または位置を、輸送方向に関して記載する。処理される材料の輸送において、輸送方向に対して平行または逆平行である方向を縦方向と呼ぶ。
【0038】
図1および図2は、処理される平坦な材料10の処理のためのデバイス1の概略断面図を示す。処理される平坦な材料は、例えば、プリント回路基板、導体箔などのプリント回路であることができる。図1の断面図においては、描写面は輸送方向25に対して直角に向いており、そして図2の断面図においては、描写面は輸送方向25に平行に向いている。
【0039】
デバイス1は、処理される材料が処理液で処理される、処理容器2を有する処理モジュールを備える。処理液は、特に、酸素感受性または空気感受性の処理溶液、例えば、化学
スズ浴であることが可能である。処理容器2を有する処理モジュールは、処理容器2を有する処理モジュールに隣接して配置され、そして処理される材料10が、種々のプロセス薬品またはリンス液でそれぞれ処理される、さらなる処理モジュール31、32を有するプロセスラインの一部であることが可能である。処理容器2において、処理される材料10を、従来の方法で処理液と接触させることができる。例えば、処理容器2は、処理液9が水位17まで蓄積するサンプ3を有することができる。以下に蒸気空間4として記される処理容器2中のさらなる領域は、処理液で充填されず、様々な気体を含有することができる。実施形態において、蒸気空間4を、液体が充填されていない処理容器2の部分体積として定義することができる。蒸気空間4において、蒸発した処理液が気相に含まれることも可能である。
【0040】
処理容器2は、処理容器2のジャケットを画定するが、気密である必要はないハウジングを有する。特に、輸送方向25において隣接する処理モジュール31から処理容器2を区切る分離壁35において、ハウジングはインレットスロット26を有することができ、これを介して、処理される材料10は処理容器2に輸送される。輸送方向25において隣接する処理モジュール32からその反対端部で処理容器2を区切る、さらなる分離壁36において、ハウジングはアウトレットスロット27を有することができ、これを介して、処理される材料10は処理容器2から輸送される。処理される材料10を処理容器2を通して運搬するために、輸送要素、例えば、輸送ローラ24の組を備える輸送デバイスが提供されている。
【0041】
処理容器2の下部において、吸入開口部6が提供されており、これによって、処理液は、処理容器2のサンプ3から、コンベアデバイス、例えば、ポンプ5によって運搬される。ポンプ5は、サンプ3から処理部材7、8へと処理液を運搬し、これは、フローノズル、スウェルノズル、スプレーノズルなどを備えることが可能である。処理液は、処理部材7、8を通って導かれた処理される材料10を処理液で処理するために、処理部材7、8から送達される。処理部材7、8から、または処理される材料10から、再びポンプ5によって循環するために、処理液をサンプ3に流し戻すことができる。
【0042】
デバイス1はさらに、不活性気体を処理容器2に供給することができるように構成される。供給される不活性気体は、例えば、窒素または二酸化炭素であることが可能である。そのために、デバイス1は、不活性気体を供給するための供給デバイス11を有する。供給デバイス11は、複数の供給要素12a、12b、12cを有し、これらから、不活性気体16を、水位17より低い位置で、処理容器2のサンプ3に蓄積された処理液9に送達することができる。
【0043】
不活性気体16を処理液9に送達するために、デバイス1の運転間に、サンプ3において処理液9が少なくとも蓄積される水位17より低い位置で供給要素が不活性気体を送達するように、供給デバイス11の供給要素12a、12b、12cを配置する。特に、供給要素が、水位17より少なくとも10mm、特に少なくとも100mm低い位置で不活性気体を処理液9に送達するように、供給デバイス11の供給要素12a、12b、12cを配置することができる。
【0044】
さらに、供給要素が吸入開口部より高い位置で不活性気体を処理液に送達するように、供給デバイス11の供給要素12a、12b、12cを配置することができ、吸入開口部を通して、ポンプ5がサンプ3から処理液を運搬する。
【0045】
供給デバイス11の少なくとも1つの供給要素12bは、処理容器2の縦方向で、輸送方向25で処理容器2を区切る分離壁35、36から離れて配置される。供給デバイス11の供給要素12bを、特に、いずれの場合も、2枚の分離壁35、36の間の中央の位
置でも処理液9に不活性気体16を送達することが可能であるように配置することができる。不活性気体は、処理容器2の縦方向で、インレットスロット26およびアウトレットスロット27から間隔を置いて配置される位置で、供給要素12bによって処理容器2に供給される。また、供給デバイス11の供給要素12a、12cも、処理容器2の縦方向で、輸送方向25で処理容器2を区切る2枚の分離壁35、36から離れて配置され、そして、処理容器2の縦方向でインレットスロット26およびアウトレットスロット27から遠く離れた位置で、不活性気体16を処理容器に供給する。
【0046】
供給デバイス11の少なくとも1つの供給要素12b、有利には、供給デバイス11の全供給要素12a、12b、12cを、それらが、比較的大量の処理液が吸入開口部6を通してポンプ5へと迅速に輸送されている位置で、サンプ3に蓄積された処理液9に不活性気体16を送達するように、処理容器に配置する。そのために、供給要素12a、12b、12cを、それらが、蓄積された処理液9が有限の流れ速度18を有し、それによって処理液9が吸入開口部6へと流動する位置で、サンプ3に蓄積された処理液9へと不活性気体16を送達するように、配置することができる。この方法では、処理液9が処理される材料10に供給されて、循環する前に、処理液9の酸素または有害な気体の濃度を低減することができる。これによって、処理容器2中の処理液の大気酸素および有害気体の迅速な低減が可能となる。不活性気体の移入から得られた蓄積された処理液9の渦巻きにより、処理液中の懸濁した粒子の沈殿を防ぐことができ、したがって、濾過を促進することができる。
【0047】
供給デバイス11の供給要素12a、12b、12cは、それぞれ、多孔性フリットの形態であることが可能である。あるいは、供給デバイス11の供給要素12a、12b、12cは、それぞれ、小さい穴の配列を有することが可能であり、それを通して、不活性気体16が処理液9に送達される。供給要素12a、12b、12cは、プラスチック部品の形態、特に、管状プラスチック部品の形態であることができる。
【0048】
制御可能デバイスまたは制御可能要素13、例えば、制御可能バルブは、不活性気体に関して供給パイプに与えられる。制御可能デバイス13によって、不活性気体リザーバ14から供給要素12a、12b、12cへの不活性気体の体積流量率を確立することができる。体積流量率を制御または調節するために、制御装置15を制御可能デバイス13と組み合わせる。制御装置15を、処理容器のセンサ37と、または複数のセンサ37と組み合わせることができる。センサ37または複数のセンサを、蒸気空間4の少なくとも1種の気体の濃度を検出するために構成することができる。例えば、センサ37を、蓄積された処理液9より高い蒸気空間4の酸素濃度を検出するため、そして制御装置15に濃度を示す信号を与えるために構成することができる。あるいは、または加えて、センサ37を、蒸気空間4の不活性気体の濃度を検出するため、そして制御装置15に濃度を示す信号を与えるために構成することができる。センサ37または複数のセンサを、それらが処理液の水位17より高い、特に、処理液の水位17のすぐ上の、対応する気体の濃度を測定するために構成することができる。制御装置15は、濃度次第で処理容器2に供給される不活性気体の体積流量率を調節するために、検出された濃度に応答して、制御可能デバイス13に制御信号を与えることができる。さらなる例示的な実施形態において、制御装置15は、例えば、処理容器2中の処理液9の量を挙げることができる処理容器2の既知の幾何学的特性およびデバイス1の運転パラメータ次第で、供給される不活性気体の体積流量率を制御することができる。
【0049】
制御装置15によって、処理容器に供給される不活性気体の体積流量率を調節することによって、供給される不活性気体の体積流量率または量を、可能な限り少ない値であるように選択することが可能となる。供給される不活性気体の体積流量率を、特に、可能な限り少ない不活性気体が供給されることによって、処理容器2の蒸気空間4において所望の
酸素濃度が達成されるように選択することができる。ゼロの酸素濃度が必ず達成されなくてもよいように、不活性気体の供給を調節することができる。例えば、浴水位17より高い蒸気空間4の酸素濃度が10体積%未満、特に5体積%未満、特に2体積%未満である場合、処理液への酸素の移入に関する満足な結果を達成することができることが示された。また不活性気体の供給を、浴水位17より高い蒸気空間4の酸素濃度が、0.1〜15体積%の範囲、特に、3〜12体積%の範囲、特に、4〜8体積%の範囲であるように、調節することもできる。
【0050】
不活性気体の供給を調節または制御するために、制御装置15によって、さらなる基準が用いられることが可能である。例えば、制御装置15は、m/時間で測定される、供給される不活性気体の体積流量率と、mで測定される、処理容器に存在する処理液の体積との比率が、20:1未満、特に、10:1未満であるような様式で、不活性気体の供給を調節することができる。
【0051】
図2に概略的に示されるように、廃物空気を、インレットスロット26およびアウトレットスロット27を介して処理容器2から除去することができる。これらのスロットを通して、処理される材料10は、処理容器2に輸送され、そして処理容器2から輸送される。インレットスロット26を通る廃物空気29の流れ、およびアウトレットスロット27を通る廃物空気30の流れは、蒸気空間4中をインレットスロット26およびアウトレットスロット27へと流動する、供給された不活性気体28、蒸発した処理液、ならびに処理容器2に吸引された有害な気体または空気の量を実質的に含有することができる。空気は、例えば、気密ではない領域を介して、処理容器2に通過することができる。
【0052】
環境から処理容器2への空気の進入を低減するために、処理容器2のメンテナンスおよびサービス開口部にガスケットを提供することができる。処理容器2は、例えば、カバー22によって密閉可能な、概略的に示されるメンテナンス開口部21を有することができる。カバー22は、空気の進入を防止するためのガスケット23を有する。
【0053】
廃物空気29、30が、処理容器2から、隣接する処理モジュール31、32へと流動するように、デバイス1を構成することができる。空気が処理モジュール31、32から処理容器2へと流入することを防止するために、インレットスロット26およびアウトレットスロット27を通しての気体の有限の流れ速度を、デバイス1で確立することができる。流れ速度は、気体が処理容器2から隣接する処理モジュール31、32へと流動するように配向されている。隣接する処理モジュール31、32に提供された吸入領域で33、34において、上流および下流処理モジュール31、32を介して、処理容器2から吸引によって、廃物空気を除去することができる。
【0054】
すでに記載したように、供給要素12a、12b、12cが不活性気体16を処理容器2に供給する処理容器2の領域は、輸送方向25で、インレットスロット26およびアウトレットスロット27から離れて配置される。これによって、処理容器2の縦方向に沿っての不活性気体16の分布が促進され、したがって、酸素の置き換えが促進される。
【0055】
インレットスロット26およびアウトレットスロット27を介して空気が処理容器2に入ることを防ぐように、処理容器2への不活性気体の吸引力および/または供給を確立することができる。単位時間あたりの吸引によって除去される廃物空気26、27の量が、単位時間あたりの供給される不活性気体の量および単位時間あたりの蒸発する処理液の量に少なくとも等しいように、吸引力を選択することができる。
【0056】
図に示され、詳細に記載された例示的な実施形態への修正を、さらなる例示的な実施形態において実行可能である。
例示的な実施形態に関して、処理される材料が水平に輸送されるデバイスが記載されているが、さらなる例示的な実施形態において、処理される材料が垂直面で輸送されることも可能である。
【0057】
例示的な実施形態に関して、不活性気体がサンプに蓄積された処理液中に放出されるデバイスおよび方法が記載されているが、さらなる例示的な実施形態において、あるいは、または加えて、処理液が蓄積されていない位置または領域で、不活性気体が処理容器中に供給されることも可能である。
【0058】
例示的な実施形態に関して、処理部材が、蓄積された処理液の液体水位より高い位置で提供されるデバイスおよび方法が記載されているが、さらなる例示的な実施形態において、処理される材料に浸漬処理を行うことも可能である。処理される材料に処理液を適用する別々の処理部材が提供されることは、必ずしも必要とされない。
【0059】
例えば、プリント回路基板、導体箔、太陽電池または太陽電池用部品などの導電性構造を有する物品の処理において、様々な例示的な実施形態によるデバイスおよび方法を使用することができるが、それらの使用は、これらに限定されない。特に、酸素感受性または空気感受性の処理溶液で処理される材料の処理において、様々な例示的な実施形態によるデバイスおよび方法を使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続プロセスプラントにおける、処理される材料(10)、特に、処理される平坦な材料(10)の湿式化学処理のための方法であって、
前記処理される材料(10)が処理容器(2)を通って輸送され、そして前記処理容器(2)中で処理液(9)で処理され、
不活性気体が前記処理容器(2)に供給される、方法。
【請求項2】
前記不活性気体(16)が、前記処理容器(2)の少なくとも1つの第1の領域(12a、12b、12c)において、前記処理容器(2)に供給され、そして前記不活性気体(16)が、前記第1の領域から間隔を置いて配置された前記処理容器(2)の第2の領域(29、30)において、前記処理容器(2)から放出される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記不活性気体(16)が、前記処理容器(2)のエッジ領域(35、36)を介して、前記処理容器(2)から除去される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記処理容器(2)が、前記処理される材料(10)がそれを通して前記処理容器(2)に輸送されるインレットスロット(26)、および前記処理される材料(10)がそれを通して前記処理容器(2)から輸送されるアウトレットスロット(27)を有し、前記不活性気体(16)が、前記インレットスロット(26)および/または前記アウトレットスロット(27)を通して前記処理容器(2)から放出される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記不活性気体(16)を前記処理容器(2)に供給するために、前記不活性気体(16)が少なくとも前記処理液(9)に導入される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記処理容器(2)がサンプ(3)を有し、その中で、前記処理液(9)が少なくとも水位(17)まで蓄積され、そしてそこから、前記処理液(9)が処理部材(7、8)へ運搬され、前記不活性気体(16)が前記水位(17)より低い位置で前記処理容器(2)に導入される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記処理容器(2)の蒸気空間(4)における酸素濃度が、0.1〜15体積%の範囲、特に、3〜12体積%の範囲、特に4〜8体積%の範囲であるように、前記処理容器(2)に供給される前記不活性気体(16)の体積流量率が確立される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
処理される材料(10)、特に、処理される平坦な材料(10)の湿式化学処理のためのデバイスであって、
前記処理される材料(10)を処理液(9)で処理するための処理容器(2)と、
前記処理される材料(10)を前記処理容器(2)を通して輸送するための輸送デバイス(24)と、
不活性気体(16)を前記処理容器(2)に供給するための供給デバイス(11)と
を備えるデバイス。
【請求項9】
前記処理容器(2)の少なくとも1つの供給領域(12a、12b、12c)で前記不活性気体(16)が前記処理容器(2)に供給されるように、前記供給デバイス(11)が構成され、そして前記処理容器(2)が、前記処理容器(2)から廃物空気(29、30)を放出するための少なくとも1つの放出開口部(26、27)を有し、前記少なくと
も1つの放出開口部(26、27)が、前記少なくとも1つの供給領域(12a、12b、12c)から離れて備えられている、請求項8に記載のデバイス。
【請求項10】
前記少なくとも1つの放出開口部(26、27)が、前記処理容器(2)のエッジ領域(35、36)に備えられている、請求項9に記載のデバイス。
【請求項11】
前記少なくとも1つの放出開口部(26、27)が、前記処理容器(2)に前記処理される材料(10)を導入するためのインレットスロット(26)および/または前記処理容器(2)から前記処理される材料(10)を放出するためのアウトレットスロット(27)備える、請求項9または10に記載のデバイス。
【請求項12】
前記供給デバイス(11)が、前記不活性気体(16)を前記処理液(9)に導入するように構成および配置される、請求項8〜10のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項13】
前記処理容器(2)が、サンプ(3)と、前記サンプ(3)から前記処理容器(2)の処理部材(7、8)に処理液(9)を運搬するためのコンベアデバイス(5)とを有し、前記供給デバイス(11)が、前記不活性気体(16)を、前記サンプ(3)に蓄積された処理液(9)に導入するように構成される、請求項8〜12のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項14】
前記処理容器(2)の蒸気空間(4)において、0.1〜15体積%の範囲、特に、3〜12体積%の範囲、特に4〜8体積%の範囲の酸素濃度を確立するために、前記不活性気体(16)の体積流量率を確立するための制御または調節デバイス(13、15、37)を備える、請求項8〜13のいずれか一項に記載のデバイス。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−515858(P2013−515858A)
【公表日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−546389(P2012−546389)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【国際出願番号】PCT/EP2010/007970
【国際公開番号】WO2011/079950
【国際公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(503037583)アトテック・ドイチュラント・ゲーエムベーハー (55)
【氏名又は名称原語表記】ATOTECH DEUTSCHLAND GMBH
【Fターム(参考)】