説明

処理システム及び被処理物体の処理方法

【課題】水分量が1PPB以下というこれまで実現しえなかった環境下での脱水を行うことができ、これにより、脱水時間を顕著に短縮し、残留水分を低減化する顕著な効果が得られ、また、極めて水の少ない環境下で半導体装置の製造を行い、半導体装置に不純物として残留する水を極限まで低減させることが可能となる処理システムを提供する。
【解決手段】酸素分子排出時に電圧印加をONにし、酸素分子排出装置の電極間に電圧を印加して中空を通過するガス中の酸素分圧を制御する酸素分圧制御装置と、を備えるガス中の水分量を1PPB以下に生成する極低水分ガス生成装置と、その極低水分ガス生成装置で生成された前記ガス中の水分量が1PPB以下の極低水分ガスが導入され、該装置内部の水分が除去されてなる処理装置と、を備える処理システムとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜表面からの水分を極限までに低減させるための極低水分ガスを利用した処理システム、及び、極低水分ガスを用いた被処理物体の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、金属・絶縁体・半導体等の固体表面、もしくは固体内部から水を脱水除去する技術開発が進行している。特に半導体や電気・電子部品等の製造においては、製造装置の装置壁面金属からの脱水はもちろん、堆積した薄膜、特に金属や絶縁体・半導体薄膜の表面、あるいは有機EL層や液晶等に付着した水分を脱水除去するのが必須となっている。これは、残留水分が薄膜の信頼性、ひいては半導体や電気・電子部品装置の信頼性に大きく影響を及ぼすためであり、そのため半導体や電気・電子部品の製造時には十分に水分量を低下させる必要があるためである。
【0003】
そこで、製造環境における脱水処理が必須となっているが、通常の室温の空気中では、表面からの脱水乾燥には長時間を要するため、大気圧よりも減圧した真空下での脱水処理乾燥が広く行われている。これは、通常よりも減圧下とすることで、水蒸気の分圧を低下させ、蒸発を促進させる効果に基づく。さらには、上記真空下で部材や膜を100-200℃程度に加熱し、水の蒸発をより活発に促し、より短時間での脱水処理が行われている。
【0004】
たとえば、半導体や電気・電子部品製造装置においては、装置を大気圧から真空排気して、水のない良質な真空を実現するには、真空下で装置を100℃―200℃に加熱し、ステンレスもしくはアルミニウム等で構成される装置内壁部に付着した水分を加熱除去し、到達する真空度を向上させる手法が用いられる。また、半導体や電気・電子部品装置の製造においても、十分に到達真空度を向上させた装置内にて、薄膜堆積、熱処理、エッチング処理を行うことにより、半導体薄膜中に含まれる残留水分を極力低減させ、水分による膜の変質、酸化や信頼性の低下を防止している。また、薄膜堆積後に、当該薄膜から水分を加熱除去することなども通常行なわれている。さらには、半導体や電気・電子部品製造装置を構成する各種部品も、あらかじめ真空槽内にて加熱脱水処理を行うことにより、十分に脱水処理を施した後に装置に組み入れられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、従来は、金属や絶縁体、半導体等の固体表面および固体内部からの水分を脱水除去するためには、通常真空装置内で材料・部材を加熱していた。しかしながら、樹脂部品なども含まれるため真空装置材料固有の耐熱性限界があり、通常は100-200℃の加熱に留まるため、十分な脱水処理が行えないなどの制約がある。また、真空度も通常は最大でも10-5Pa程度の低真空中での加熱が用いられるため、十分に水分圧が低い状態での脱水ではないため、残留水分の影響を受けてしまうという制約があった。特に従来技術では、吸着剤などを用いてガス中の脱水処理を行っても、真空装置や、乾燥ガス中の水分量を1PPB以下に低下させるのは一般に困難であった。そこで、本願発明では、ガス中の水分量を1PPB以下となる極限まで乾燥した雰囲気を、新規の手法を用いて実現させ、当該雰囲気を用いて脱水処理および半導体や電気・電子部品装置の製造を行なう環境を新規に提供することが課題となる。
【0006】
一方、半導体や電気・電子部品の製造においては、特に薄膜の堆積や原料の導入時に、極限まで水分を除去する必要があるが、これまでは不純物として水分量を1PPB以下にすることが不可能であり、したがって、膜中に残留水分が存在し、装置のメンテナンスサイクルが低下するなどの課題が存在する。そこで本発明では、水分量を1PPB以下に乾燥させた環境を新規に実現させ、半導体や電気・電子部品を製造する環境を実現するのが第2の課題である。
【0007】
一般に使用されている不活性ガス、窒素等の産業用途のガスには、微量ではあるが不純物として酸素を含む。このことは、あらゆる分野において酸化を防ぐ目的の工程がある場合に酸素分子が問題となる場合がある。例えば、CVD、スパッタ等による金属薄膜の作成時、金属間化合物の製造時、半導体や電気・電子部品製造工程の配線処理等で問題になることがある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明の処理システムは、
1対の金属製管体と、
前記各管体にそれぞれ接続され、前記管体からのガスが通過する中空を有するセラミック製固体電解質体と、
該電解質体の内面に設けられた内側電極と外側電極と、
ここで、前記管体は、前記内側電極と共に内側電極を構成し固体電解質体を構成するセラミック材料の熱膨張係数とほぼ同じ金属材料で作られて固体電解質体と密封固着されており、
を備える酸素分子排出装置と、
前記酸素分子排出装置を加熱する加熱装置と、
前記酸素分子排出装置の電極間に電圧を印加する印加手段と、
ここで、前記酸素分子排出時に電圧印加をONにし、前記酸素分子排出装置の電極間に電圧を印加して中空を通過するガス中の酸素分圧を制御する酸素分圧制御装置と、を備える前記ガス中の水分量を1PPB以下に生成する極低水分ガス生成装置と;
前記極低水分ガス生成装置で生成された前記ガス中の水分量が1PPB以下の極低水分ガスが導入され、該装置内部の水分が除去されてなる処理装置と;を備える。
【0009】
(2)本発明の処理システムは、
1対の金属製管体と;
前記各管体にそれぞれ接続され、前記管体からのガスが通過する中空を有するセラミック製固体電解質体と、
該電解質体の内面に設けられた金又は白金製の内側電極と外側電極と、
前記管体は、ジルコニア製固体電解質体の熱膨張係数とほぼ同じコバール材料で作られて固体電解質体と銀ロウ付けで固着されており、かつ、該管体は、前記白金製内側電極と共に内側電極を構成し、
を備える酸素分子排出装置と;
前記酸素分子排出装置を加熱する加熱装置と;
前記酸素分子排出装置の電極間に電圧を印加する印加手段と、
前記酸素分子の排出時に電圧印加をONにし;
前記酸素分子排出装置の電極間に電圧を印加して中空を通過するガス中の酸素分圧を制御する酸素分圧制御装置と、を備える前記ガス中の水分量を1PPB以下に生成する極低水分ガス生成装置と;
前記極低水分ガス生成装置で生成された前記ガス中の水分量が1PPB以下の極低水分ガスが導入され、該装置内部に設けられた被処理物体から水分が脱水除去されてなる処理装置と;を備える。
【0010】
(3)本発明の処理システムは、
1対の金属製管体と;
前記各管体にそれぞれ接続され、前記管体からのガスが通過する中空を有するセラミック製固体電解質体と、
該電解質体の内面に設けられた金又は白金製の内側電極と外側電極と、
前記管体は、ジルコニア製固体電解質体の熱膨張係数とほぼ同じコバール材料で作られて固体電解質体と銀ロウ付けで固着されており、かつ、該銀ロウ付け固着部分と該管体は、金又は白金で電解メッキを施した電解メッキ層と、電解メッキ部分を酸又はアルカリで前処理した後に無電解の金又は白金メッキを施した無電解メッキ層を備え、
を備える酸素分子排出装置と;
前記酸素分子排出装置を加熱する加熱装置と;
前記酸素分子排出装置の電極間に電圧を印加して中空を通過するガス中の酸素分圧を制御する酸素分圧制御装置とを備える前記ガス中の水分量を1PPB以下に生成する極低水分ガス生成装置と;
前記極低水分ガス生成装置で生成された前記ガス中の水分量が1PPB以下の極低水分ガスが導入される処理装置と、ここで前記ガスは、被処理物体のエッチング用ガス、スパッタ用ガス又はキャリアガスのいずれか1である;
を備えることを特徴とする処理システム。
【0011】
(4)(2)の処理システムにおいて、
前記被処理物体は、ステンレス板、アルミニウム板、アルミナ板、ガラス板、石英板、シリコンウエハ、絶縁膜、金属膜又は半導体膜の堆積物のいずれか1である。
【0012】
(5)(1)〜(3)いずれかの処理システムにおいて、
前記ガス中の酸素分圧は、10のマイナス21乗気圧以下、好ましくは10のマイナス29乗気圧以下10のマイナス35乗気圧以上である。
【0013】
(6)(1)〜(3)いずれかの処理システムにおいて、
さらに、真空排気と、1PPB以下の水分量の極低水分ガスの導入によるパージが繰り替えされる。
【0014】
(7)(1)〜(3)いずれかの処理システムを使用して、ガス中の水分量を1PPB以下に制御した雰囲気中で被処理物体から水分を脱水除去するための被処理物体の処理方法とした。
【0015】
(8)(1)または(2)の処理システムを使用して、ガス中の水分量を1PPB以下に制御した雰囲気中で被処理物体をエッチングするための被処理物体の処理方法とした。
【0016】
(9)(1)または(2)の処理システムを使用して、ガス中の水分量を1PPB以下に制御した雰囲気中で基板上に薄膜を堆積するための被処理物体の処理方法とした。
【0017】
(10)(1)または(2)の処理システムを使用して、ガス中の水分量を1PPB以下に制御した雰囲気中で被処理物体に熱処理を施こするための被処理物体の処理方法とした。
【0018】
(11)(1)または(2)の処理システムを使用して、水分量を1PPB以下に制御したガスを原料のキャリアガスに使用して被処理物体を処理するための被処理物体の処理方法とした。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、水分量が1PPB以下というこれまで実現しえなかった環境下での脱水を行うことができる。これにより、脱水時間を顕著に短縮し、残留水分を低減化する顕著な効果が得られる。また、極めて水の少ない環境下で半導体や電気・電子部品装置の製造を行うことができるので、半導体や電気・電子部品装置に不純物として残留する水を極限まで低減させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0021】
図1は、本願発明に係る処理システムの概略図を示す。処理システム10は、処理装置12と、真空処理容器12内を減圧するための真空ポンプ14と、真空処理装置12内に水分量1PPB以下の極低水分ガスを供給するための極低水分ガス生成装置16とを備える。符号18は、真空処理装置12内に設けられた試料である。
【0022】
図2は、真空処理装置としての半導体や電気・電子部品製造装置の概略図を示す。半導体製造装置12は、ロードロック22および真空処理室12を備える。ロードロック室22は、1×10−4Pa に、および真空処理容器12は 1×10−5Pa まで真空排気される。真空処理容器12にはプラズマ源24及びヒータ26が設けられ、薄膜の堆積やエッチングが行われる。更に、半導体製造装置は、原料ガス28中から水分を排出する電気化学的な酸素分子排出装置を備える極低水分ガス生成装置16が備えられている。半導体製造装置は、原料シリンダー30から水分量1PPB以下、酸素分圧10-35気圧の超低水分の不活性ガス中でウエハー25を加熱処理するか、あるいは薄膜を堆積する。
【0023】
図3は、図1及び図2の極低水分ガス生成装置を構成する酸素分子排出装置20を示す要部概略図である。酸素分子排出装置20は、酸素イオン伝導性を有するジルコニア製固体電解質体40と、固体電解質体40の内面及び外面に配設された金又は白金よりなるネット状の電極42、44とを備える。ジルコニア製固体電解質体40は、両端部でコパール材からなる金属製管体46と銀ロウ付け48で固着される。固体電解質体の電極と管体46は、内側電極を構成する。酸素分子排出装置の内圧は、3kg/cm以下であり、通常0.1〜1.0kg/cmである。
【0024】
図4は、酸素分子排出装置20の作用を示す概略図である。内面電極42と外面電極44間に直流電源Eから電流Iを流すと、密閉容器内に存在する水分子(H2O)が、内面電極42によって水素イオンと酸素イオンに電気分解され、固体電解質40を通った後、再び酸素分子(O)として密閉容器の外部に放出するので、この密閉容器の外部に放出された酸素分子を空気等の補助気体をキャリアガスとして排気することにより、密閉容器に供給される不活性ガス中の水分子を除去して、水分量を低減できる。続いて、この密閉容器の外部に放出された酸素分子を空気等の補助気体をキャリアガスとして排気することにより、密閉容器に供給される不活性ガス中の酸素分子を除去して、その酸素分圧も同時に制御できる。
【0025】
このように酸素分子排出装置は、固体電解質体内40に導入されたガスが固体電解質体内21中を通過する間にガス中の酸素分子を外気に排出して、極めて低い水分ガスを生成して、固体電解質体から真空処理装置に向けて供給する。図4において、●は、ガス、○○は、水分子及び酸素分子、○は、水イオン及び酸素イオンである。
【0026】
次に、極低水分ガス生成装置の動作について説明する。まず、水分量設定部によって、所望の水分量、例えば1PPTに設定する。水分量設定部によって設定された水分量に設定するための制御信号が、水分圧制御部からポンプに送られる。その制御信号によってポンプの電流Iが制御されて、ガス供給弁およびマスフローコントローラを通って酸素分子排出装置に供給されたN ,Ar,He等の不活性ガス中の水分量が、水分量設定部によって設定された水分量に制御される。
【0027】
このように極めて低い水分量に制御された不活性ガスは、水分センサによってその分圧がモニタされた後、真空処理装置の反応室に供給される。また真空反応室を通って排気される使用済みガスの水分圧が水分センサによってモニタされて、そのモニタ値が水分量制御部に入力され、水分量設定部で設定値と比較される。このようにして、水分量が1PPT以下に制御された不活性ガスが供給される。なお、処理の際の圧力は、減圧下で行っても、あるいは常圧から加圧状態で行っても良く、また使用済みガスは、真空ポンプを介して装置外に排気しても、あるいは処理の間に使用済みガスを再び酸素分子ガス排出装置に戻すような閉ループを形成してもよい。なお、水分量は、酸素イオン伝導体を用いた酸素センサーを使い、熱力学計算から求めることができる。
【0028】
固体電解質体40を構成する固体電解質 は、例えば、一般式( ZrO ) 1-x-y( In ) x( Y ) y( 0< x < 0.20、0< y < 020、0.08< x+y <0.20) で表されるジルコニア系が利用できる。その中でも、0<x<0.20、y = 0 であることが望ましく、さらに、0.06<x< 0.12、 y=0 であることがより望ましい。
【0029】
固体電解質は、上記に例示したもの以外に、例えば、Ba および In を含む複合B酸化物であって、この複合酸化物のBa の一部をLaで固溶置換したもの、特に、原子数比{ La /( Ba+La ) } を0.3 以上としたものや、さらにInの一部をGaで置換したものや、一般式{ Ln 1 - x Srx Ga 1 - ( y + z )Mg y Co z O 、ただし、Ln = La,Nd の1種または2種、x = 0.05〜 0.3、y = 0〜 0.29、z = 0.01〜 0.3、y+z = 0.025〜 0.3} で示されるものや、一般式{ Ln ( 1 - x ) A x Ga ( 1 - y - z ) B1y B2z O3-d、ただし、Ln = La,Ce,Pr,Nd,Sm の1種または2種以上、A = Sr, Ca, Ba の1 種または2 種以上、B 1= Mg,Al,In の1 種または2 種以上、B 2= Co,Fe,Ni, Cu の1 種または2 種以上} で示されるものや、一般式{ Ln 2-xM xGe 1 - y Ly O5、ただし、Ln = La,Ce,Pr,Sm,Nd,Gd, Yd,Y,Sc、M = Li,Na,K,Rb,Ca,Sr,Ba の1種もしくは2 種以上、L = Mg,Al,Ga,In,Mn,Cr,Cu,Zn の1種もしくは2 種以上}や、一般式{ La ( 1 - x ) Sr xGa ( 1 - y - z ) Mg y Al 2 O 3 、ただし、0< x ≦ 0.2、0< y ≦ 0.2、0< z < 0.4} や、一般式{ La ( 1 - x ) A x Ga ( 1 - y - z ) B 1y B 2z O 3 、ただし、Ln = La,Ce,Pr,Sm,Ndの1 種もしくは2種以上、A = Sr,Ca,Ba の1 種もしくは2種以上、B 1= Mg,Al,In の1種もしくは2種以上、B 2= Co,Fe,Ni,Cu の1 種もしくは2 種以上、x = 0.05〜 0.3、y = 0〜 0.29、z = 0.01〜 0.3、y +z =0.025〜 0.3}等が採用できる。
【0030】
上述した固体電解質体の両端部と管体との気密性の良さが水分及び酸素分圧に強い影響を与える。イオン伝導性を発揮させるために固体電解質は、600℃〜1000℃に加熱される。極低水分ガスの水分量を少なくする場合、固体電解質をより高温に加熱することが好ましい。また、従来は、両端部はOリングや、真空機器用接着剤を用いて気密性を保っていたが、耐熱性を考えて、空冷等の措置がとられていた。しかし、十分な機密性を得ることができなかった。固体電解質体の両端部と管体との密封構造として、管体と固体電解質体を金属のロウで接合することを採用する.その結果、耐熱温度が向上するため、高い気密性を得ることができ、より低い極低水分ガスを得ることができる。
【0031】
また、シール構造の耐熱性及び酸素分子排出装置の機能向上を考慮すると、この酸素分子排出装置を構成する固体電解質体は一本よりも複数本あることが望ましく、かつ、それぞれの固体電解質体は長ければ長いほど分子排出機能が良く、加熱部分から離れたところでシール機能を持たせることができる。よって、管体の耐熱性も考える必要がなくなる。しかしながら、固体電解質体は、コストや取り扱いを考慮すると、15cm〜60cmの長さ有することが望ましい。片側の各管体の長さは、3cm〜60cmであることが望ましい。
【0032】
固体電解質体の両端部と管体との密封を保つためのシール構造は、以下のようにして行った。固体電解質体の両端部と管体とを銀ロウ付けにより固着する。次に、銀ロウ付け固着部分及び金属製管体を、金又は白金で電解メッキを施す。そして、電解メッキ部分を酸又はアルカリで前処理した後、固体電解質体も同時に無電解白金メッキを施す。
【0033】
図5及び図6に示すように、固体電解質体として、長さが50cm の6%モルのイットリアをドープしたジルコニア管を6本用いた。管体46とジルコニア管40との気密性は、銀ロウ付けにより接合することで、強度、耐熱性を向上させた。容器50内にジルコニア管40を6本並列して配設した。ジルコニア管の上下に加熱ヒータ52が配設される。
【0034】
ガス導入口よりアルゴンガスを導入し、マスフローコントローラで2L/min.となるように設定した。ジルコニア管を600℃〜1000℃に加熱し、内外壁にある両電極間に電圧として2V印加した。なお、固体電解質体の外側にはパージガスとして空気を流した状態としておく。
【0035】
続いて、分子排出装置内のジルコニア管を通過した水および酸素分圧を低減させたガスを水・酸素センサに導き、酸素分圧を測定した。なお、酸素分圧の測定には固体電解質体の内外の酸素分圧差に伴う濃淡電池反応による起電力を用いた。このとき、約2時間で酸素分圧は10のマイナス21乗気圧、好ましくは10のマイナス29乗気圧から10マイナス35乗気圧を示した。
【0036】
半導体製造装置に極低水分ガスを導入して、処理容器内の水分除去を以下の如くに行なった。まずターボ分子ポンプにより10−5Pa程度にまで容器内を真空排気した後、酸素分圧10のマイナス35乗気圧、水分量1PPT以下の窒素ガスを流量2SLMで導入して、大気圧乃至加圧状態まで容器内を満たした。続いて窒素ガスの導入をやめて、再びターボ分子ポンプにより10−5PaPaまで真空排気し、さらに窒素ガスを大気圧まで流入させる動作を繰り返した。その後上記動作を合計で6回繰り返した後、真空容器を改めて真空ポンプにより排気した。
【0037】
その時の、大気圧からの排気曲線を図7に示す。極低水分ガスによる水分除去を行なわないで、ただ単に真空排気を行なった場合に比べて、極低水分ガスを導入した後の排気速度および到達真空度は共に向上することが分かった。そこで、装置内の水分を調べたところ、本発明による極低水分ガスを導入すると、真空処理容器内部の水分量が低下して、排気速度および到達真空度が向上することが明らかになった。なお、水分の低減効果は、低水分ガスを、容器内に少なくとも1回以上導入すれば効果があり、さらにはガスの種類としては、一般的な不活性ガスである窒素以外にもアルゴン、ヘリウム、等の不活性ガスを用いても同様に効果があることを確認した。
【0038】
また、極低水分ガスを100℃-200に加熱して、真空処理容器内に導入した場合、さらには、真空処理容器を100℃に加熱(ベーキング)して、なおかつ、極低水分ガスを導入すると、水分が更に効率的に除去され、到達真空度がさらに向上する効果があることが分かった。
更には、真空処理容器内に、0.1−1 Mpa 程度に加圧した極低水分ガスジェットを高速で吹き付けた場合には、吹き付け効果により、より短時間で水分が効率的に除去されることが分かった。
また、窒素ガスと真空排気の繰り返し動作、いわゆるサイクルパージを行わずに、窒素ガスを真空処理容器内に連続的に流し続けて使用した場合も、到達真空度が向上する同様の効果が得られることが分かった。この場合、大気圧以上になると真空処理容器から余剰の窒素ガスが漏れ出すが、この漏れ出したガスはそのまま排気放出してもよく、あるいは、溢れたガスを再び極低水分発生装置に戻し、水分量を再び低減させて再び容器に戻す様な一種の閉ループを構成した場合も同様な効果があることが分かった。
【0039】
なお、半導体製造装置の材質はステンレス(SUS304,316,316L)製でもアルミニウム製でも、石英製でもよく、更には、半導体製造装置の内部にウエハー加熱機構や、プラズマ源、ウエハー支持機構等の様々な付帯機構があっても同様の効果が得られる。
【0040】
直径6インチのSUS板、アルミニウム板、アルマイト処理されているアルミニウム板、アルミナ板、ガラス板、石英板、シリコンウエハ、プラスチック基板や有機膜、からの脱水処理は、極低水分ガスを導入して、以下の如くに行った。
【0041】
まず、上記各種部材を超純水にて洗浄処理した後、真空処理容器内に入れて処理を行った。まずターボ分子ポンプにより10−5Pa程度にまで真空処理容器内を真空排気した後、酸素分圧10−35乗気圧、水分量1PPT以下の窒素ガスを流量2SLMで導入した。導入は、真空下でも、大気圧でも、あるいは加圧状態にしても良い。続いて窒素ガスの導入をやめて、再びターボ分子ポンプにより10−5Paまで真空排気し、さらに窒素ガスを大気圧まで流入させる動作を繰り返した。その後上記動作を合計で6回繰り返した後、真空処理容器を改めて真空ポンプにより排気した。
その結果、極低水分ガスによる水分除去を行なわないで、ただ単に真空排気を行なった場合に比べて、本ガスを導入した後の排気速度および到達真空度共に向上することが分かった。すなわち、効果的に脱水乾燥できることが分かった。
【0042】
なお、水分の低減効果は、減圧下の装置内に、低水分ガスを装置内に少なくとも1回以上導入すれば効果があり、さらには、ガスの種類としては、一般的な不活性ガスである窒素以外にもアルゴン、ヘリウム、等の不活性ガスを用いても同様に効果があることを確認した。また低酸素ガスを100℃-200℃に加熱して、容器内に導入した場合、さらには、容器内をヒータで200℃に加熱(ベーキング)してなおかつ、低水分ガスを導入すると、排気速度ならびに到達真空度がさらに向上する効果があることが分かった。更には、真空容器内に、0.1−1Mpa 程度に加圧した極低水分ガスジェットを高速で吹き付けた場合には、吹き付け効果により、より短時間で水分が効率的に除去されることが分かった。
また、窒素ガスと真空排気の繰り返し動作、いわゆるサイクルパージを行わずに、窒素ガスを、乾燥装置内に連続的に流し続けて使用した場合も、到達真空度が向上する同様の効果が得られることが分かった。この場合、大気圧以上になると乾燥装置から余剰の窒素ガスが漏れ出すが、この漏れ出したガスはそのまま排気放出してもよく、あるいは、ガスを再び極低水分ガス発生装置に戻し、水分量を再び低減させて再び製造装置に戻す様な一種の閉ループを構成した場合も同様な効果があることが分かった。なお、本効果は、上記に記載した各種の板に限らず、あらゆる部材の脱水に効果があることは言うまでもない。
【0043】
半導体装置における薄膜の膜内およびその表面からの脱水処理を極低水分ガスで以下の如くに行った。絶縁膜からの脱水処理に当該ガスを用いた。シリコンウエハ上に酸化シリコン膜を100nm堆積したウエハを用いて、熱処理装置で、300℃の熱処理を行った。水分量1PPT以下、酸素分圧10−35乗気圧のガスを熱処理装置に流量2SLMで導入し、基板を300℃に加熱したところ、酸化シリコン膜中や表面に残留した水分が顕著に減少する効果が得られた。続いて、シリコンウエハ上に比誘電率3.0の炭素含有酸化シリコン膜を100nm堆積したウエハを用いて、同様に脱水処理したところ、同様に膜中や膜表面水分の顕著な減少が見られた。同様に、アルミニウムや銅などの金属膜、シリコンやゲルマニウムなどの半導体膜を熱処理したところ、表面の水分を顕著に低減させる同様の効果が得られた。また、また低酸素ガスを100℃-200℃に加熱して、装置内に導入した場合、更には、0.1−1Mpa 程度に加圧した極低水分ガスジェットを高速で吹き付けた場合、より短時間で水分が効率的に除去されることが分かった。
【0044】
半導体や電気・電子部品装置における薄膜の堆積に極低水分ガスを適用した実施例は、以下の如くに行った。ポリシリコンの堆積において、まず真空反応室にモノシランガスを流量100sccmで導入し、同時に水分量1PPT以下および酸素分圧10−35乗気圧の極低水分量の窒素ガスを流量500sccmで導入し、圧力10−1Pおよび基板温度600℃でポリシリコン膜をシリコン基板上に堆積させた。その結果、ポリシリコン膜中の水分及び酸素量が顕著に減少する効果が得られた。熱によるモノシランの分解を用いているが、より低温でプラズマを用いた分解を利用してもよい。むろん、ポリシリコン膜の堆積以外の薄膜の製造にも適用できることはいうまでもない。
【0045】
スパッタリングを極低水分ガスで以下の如くに行った。アルゴンガス中の水分量1PPT以下および酸素分圧10-35乗気圧と、装置内に100sccmで導入し、圧力1Pa、電力200W でプラズマ化し、これをターゲットとなるアルミニウム板に衝突させてスパッタリングによりシリコン基板上にアルミニウム薄膜を堆積させたところ、膜中の酸素濃度が少ない、低抵抗のアルミニウムが形成された。
【0046】
薄膜のプラズマエッチングを極低水分ガスで以下の如くに行った。CF4ガス中の水分量1PPT以下および酸素分圧10−35乗気圧としたものを、装置内に100sccmで導入し、圧力1Pa、電力200W でプラズマ化し、これを、酸化シリコン基板上に吹き付けたところ、酸化シリコン膜に形成した微細なパターンを形状異常なく、均一にエッチングすることを可能とした。
【0047】
薄膜堆積のための原料のキャリアガスに極低水分ガスを適用した実施例は、以下の如くに行った。原料として、塩化物や有機金属、TiCl, Ti[N(CH)], HfCl, Hf[N(CH)] に適用した。これらの原料を原料シリンダに充填し、シリンダを50―100℃に加熱し、更に水分量1PPT以下および酸素分圧10−35乗気圧の極低水分窒素ガスを流量100sccmで流入させ、原料塩化物や有機金属を極低水分ガス中に気化させて混合したものを真空処理室に導入した。更にシリコンウエハをおよそ300℃に加熱したところ、使用した原料により、チタン、ハフニウム等の金属膜がウエハ上に堆積した。極低水分ガスを用いたために、配管内の水分が著しく低減され、その結果、乗気圧シリンダから発生するパーティクル数に著しい低減効果が得られた。特に、原料ガスラインの寿命がおよそ数倍に延びる効果が得られた。また、堆積した膜中の水分量や残留酸素量も、従来の不活性ガスを用いたものに比べて低減する効果が得られた。
また、本極低水分ガスは、液晶や有機EL素子等の表示電子デバイスの作成にも有効である。すなわち、液晶の封入工程、あるいは有機EL発光層の堆積中に、水分量1PPT以下および酸素分圧10−35乗気圧の極低水分窒素ガスを、流量100sccmから2SLMで流入させ、十分に水分を除去することにより、高信頼の表示電子デバイスの作製が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
極低水分ガスを使用して製品を製造する分野において用いられ、半導体製造装置、液晶製造装置、電気・電子部品製造装置、食品製造装置などに利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明に係る真空処理システムを示す構成図である。
【図2】本発明に係る真空処理システムを示す概略図である。
【図3】本発明に係る酸素分子排出装置の要部を示す平面図である。
【図4】本発明に係る酸素分子排出装置の原理を説明する概略構成断面図である。
【図5】本発明に係る酸素分子排出装置を、6本並列に配設した状態を示す概略平面図である。
【図6】本発明に係る酸素分子排出装置を、6本並列に配設した状態を示す概略側面図である。
【図7】排気時間と圧力との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0050】
10 真空処理システム
12 真空処理容器
14 真空ポンプ
16 極低水分ガス生成装置
18 試料
20 酸素分子排出装置
22 ロードロック
24 プラズマ源
28 原料ガス
30 原料シリンダ
40 固体電解質
42 内側電極
44 外側電極
46 管体
48 ロウ付け部分
50 容器
52 ヒータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1対の金属製管体と、
前記各管体にそれぞれ接続され、前記管体からのガスが通過する中空を有するセラミック製固体電解質体と、
該電解質体の内面に設けられた内側電極と外側電極と、
ここで、前記管体は、前記内側電極と共に内側電極を構成し固体電解質体を構成するセラミック材料の熱膨張係数とほぼ同じ金属材料で作られて固体電解質体と密封固着されており、
を備える酸素分子排出装置と、
前記酸素分子排出装置を加熱する加熱装置と、
前記酸素分子排出装置の電極間に電圧を印加する印加手段と、
ここで、前記酸素分子排出時に電圧印加をONにし、前記酸素分子排出装置の電極間に電圧を印加して中空を通過するガス中の酸素分圧を制御する酸素分圧制御装置と、を備える前記ガス中の水分量を1PPB以下に生成する極低水分ガス生成装置と;
前記極低水分ガス生成装置で生成された前記ガス中の水分量が1PPB以下の極低水分ガスが導入され、該装置内部の水分が除去されてなる処理装置と;
を備えることを特徴とする処理システム。
【請求項2】
1対の金属製管体と;
前記各管体にそれぞれ接続され、前記管体からのガスが通過する中空を有するセラミック製固体電解質体と、
該電解質体の内面に設けられた金又は白金製の内側電極と外側電極と、
前記管体は、ジルコニア製固体電解質体の熱膨張係数とほぼ同じコバール材料で作られて固体電解質体と銀ロウ付けで固着されており、かつ、該管体は、前記白金製内側電極と共に内側電極を構成し、
を備える酸素分子排出装置と;
前記酸素分子排出装置を加熱する加熱装置と;
前記酸素分子排出装置の電極間に電圧を印加する印加手段と、
前記酸素分子の排出時に電圧印加をONにし;
前記酸素分子排出装置の電極間に電圧を印加して中空を通過するガス中の酸素分圧を制御する酸素分圧制御装置と、を備える前記ガス中の水分量を1PPB以下に生成する極低水分ガス生成装置と;
前記極低水分ガス生成装置で生成された前記ガス中の水分量が1PPB以下の極低水分ガスが導入され、該装置内部に設けられた被処理物体から水分が脱水除去されてなる処理装置と;
を備えることを特徴とする処理システム。
【請求項3】
1対の金属製管体と;
前記各管体にそれぞれ接続され、前記管体からのガスが通過する中空を有するセラミック製固体電解質体と、
該電解質体の内面に設けられた金又は白金製の内側電極と外側電極と、
前記管体は、ジルコニア製固体電解質体の熱膨張係数とほぼ同じコバール材料で作られて固体電解質体と銀ロウ付けで固着されており、かつ、該銀ロウ付け固着部分と該管体は、金又は白金で電解メッキを施した電解メッキ層と、電解メッキ部分を酸又はアルカリで前処理した後に無電解の金又は白金メッキを施した無電解メッキ層を備え、
を備える酸素分子排出装置と;
前記酸素分子排出装置を加熱する加熱装置と;
前記酸素分子排出装置の電極間に電圧を印加して中空を通過するガス中の酸素分圧を制御する酸素分圧制御装置とを備える前記ガス中の水分量を1PPB以下に生成する極低水分ガス生成装置と;
前記極低水分ガス生成装置で生成された前記ガス中の水分量が1PPB以下の極低水分ガスが導入される処理装置と、ここで前記ガスは、被処理物体のエッチング用ガス、スパッタ用ガス又はキャリアガスのいずれか1である;
を備えることを特徴とする処理システム。
【請求項4】
前記被処理物体は、ステンレス板、アルミニウム板、アルミナ板、ガラス板、石英板、シリコンウエハ、絶縁膜、金属膜又は半導体膜、プラスチック基板、有機膜、あるいは当該基板上の堆積物のいずれかを少なくとも含む、ことを特徴とする請求項2記載の処理システム。
【請求項5】
前記ガス中の酸素分圧は、10のマイナス21乗気圧以下、好ましくは10のマイナス29乗気圧以下10のマイナス35乗気圧以上である、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の処理システム。
【請求項6】
さらに、真空排気と、1PPB以下の水分量の極低水分ガスの導入によるパージが繰り替えされる、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の処理システム。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の処理システムを使用して、ガス中の水分量を1PPB以下に制御した雰囲気中で被処理物体から水分を脱水除去する、ことを特徴とする被処理物体の処理方法。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の処理システムを使用して、ガス中の水分量を1PPB以下に制御した雰囲気中で被処理物体をエッチングする、ことを特徴とする被処理物体の処理方法。
【請求項9】
請求項1又は2に記載の処理システムを使用して、ガス中の水分量を1PPB以下に制御した雰囲気中で基板上に薄膜を堆積する、ことを特徴とする被処理物体の処理方法。
【請求項10】
請求項1又は2に記載の処理システムを使用して、ガス中の水分量を1PPB以下に制御した雰囲気中で被処理物体に熱処理を施す、ことを特徴とする被処理物体の処理方法。
【請求項11】
請求項1又は2に記載の処理システムを使用して、水分量を1PPB以下に制御したガスを原料のキャリアガスに使用して被処理物体を処理する、ことを特徴とする被処理物体の処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−272609(P2008−272609A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−115882(P2007−115882)
【出願日】平成19年4月25日(2007.4.25)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成18年度文部科学省「ベンチャー開発戦略研究センター」委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【出願人】(507026729)株式会社リドクシオン (5)
【Fターム(参考)】