説明

処理対象物の加熱乾燥処理方法と加熱処理装置

【課題】食品処理対象物には澱粉質と水分が多く含まれる。澱粉質と水分を攪拌しながらゆっくり加熱すると糊状になる。糊状になったものが集合して大きな塊になる。塊の内部は乾燥し難く、破砕し乾燥をさせるための処理が長時間になる。
【解決手段】処理対象物投入口18と処理対象物排出口20と投入された処理対象物を攪拌する攪拌装置を備えた処理タンク12の内部に、摂氏100度以上の加熱気体を噴出させながら、処理対象物を攪拌し破砕乾燥させる。処理対象物に含まれる澱粉質は大きな塊になる前に表面が急激に乾燥させられる。さらに攪拌装置で攪拌をして塊を破砕すると、糊状の澱粉質が塊の中側から露出する。これも、加熱気体により急激に乾燥される。こうして次第に塊が小さくなり、すみやかに粉状になるまで乾燥が進む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品残渣等の未利用資源を再利用するための、処理対象物の加熱乾燥処理方法と加熱乾燥処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
食品残渣等の廃棄物を加熱乾燥し攪拌をしさらにこれを破砕して、効率よく脱水乾燥処理する装置が開発されている(特許文献1参照)。この種の装置は、廃棄物の体積を縮小させて燃料にしたり安全に廃棄したりできるようにするほか、肥料等に再利用する処理にも広く利用されている。
【特許文献1】特開2005−337631号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
既知の従来の技術には、次のような解決すべき課題があった。
食品加工工場等の食品残渣については、加熱脱水処理をし粉末にして、農業用の肥料として再利用することが行われている。この場合、食品残渣を、求められる含水率まで脱水乾燥させることが要求される。しかしながら、澱粉質の多い麺類や米飯類は、加熱攪拌すると、食品残渣に含まれる多量の水の作用によって糊状になる。この糊状物は大きな塊になる。その塊の内部の水分は蒸発しにくい。糊状物の塊は攪拌装置の一部に大きな負荷をかけ、これを破砕して乾燥させ粉状になるまで処理するのに、非常に時間がかかるという問題があった。また、食品残渣は動物の餌等に利用が望まれているが、食品残渣には油分が多量に含まれているため、これを搾り取って除去する必要がある。従来はこうした処理を経済的に行うことができず、廉価な動物用の飼料生産が難しいという問題があった。今後ますます、この種の未利用資源の経済的な用途を拡大し、低コストで大量の資源を処理する装置に対する需要が高まると予想される。
上記の課題を解決するために、本発明は次のような処理対象物の加熱乾燥処理方法と加熱乾燥処理装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
以下の構成はそれぞれ上記の課題を解決するための手段である。
〈構成1〉
処理対象物投入口と処理対象物排出口と投入された処理対象物を攪拌する攪拌装置を備えた処理タンク内部に、摂氏100度以上の加熱気体を噴出させながら、処理対象物を攪拌し破砕乾燥させることを特徴とする処理対象物の加熱乾燥処理方法。
【0005】
食品残渣には澱粉質と水分が多く含まれる。澱粉質と水分を攪拌しながらゆっくり加熱すると糊状になる。糊状になったものが集合して大きな塊になる。塊の内部は乾燥し難く、破砕し乾燥をさせるための処理が長時間になる。この発明の方法では、摂氏100度以上の加熱気体を噴出させながら、処理対象物を攪拌し乾燥させる。澱粉質は大きな塊になる前に表面が急激に乾燥させられる。さらに攪拌装置で攪拌をして塊を破砕すると、糊状の澱粉質が塊の中側から露出する。これも、加熱気体により急激に乾燥される。こうして次第に塊が小さくなり、すみやかに粉状になるまで乾燥が進む。これにより、未利用資源の肥料等への再利用が可能になる。
【0006】
〈構成2〉
構成1に記載の処理対象物の加熱乾燥処理方法において、処理タンクの蓋部または側壁または底部から摂氏100度以上の高温空気もしくは高温水蒸気を、処理対象物に向けて噴出させながら、処理対象物を攪拌し乾燥させることを特徴とする処理対象物の加熱乾燥処理方法。
【0007】
高温空気もしくは高温水蒸気を使用すると、最も経済的で効率よく処理対象物の急加熱乾燥ができる。高温空気もしくは高温水蒸気を処理対象物に向けて噴出させると、糊状の塊の表面を瞬時に乾燥させてしまう。従って、糊状になった塊が集合してより大きい塊ができるのを防ぐことができる。小さい塊ならば、破砕して乾燥させるための時間が短時間ですむ。
【0008】
〈構成3〉
構成1または2に記載の処理対象物の加熱乾燥処理方法において、処理タンクの底部から垂直に直立した回転軸の側面に攪拌羽根を備えた攪拌装置を有し、上記回転軸の軸部に設けた管路に加熱気体流入口と加熱気体排出口とを設けたことを特徴とする処理対象物の加熱乾燥処理方法。
【0009】
垂直に直立した回転軸を直接加熱して、攪拌羽根を回転させると、タンク内部をその中心部から高温に保持することができる。従って、澱粉質の急加熱ができる。
【0010】
〈構成4〉
構成3に記載の処理対象物の加熱乾燥処理方法において、上記加熱気体流入口は上記回転軸の一方の端部に設けられ、加熱気体排出口は、上記処理タンク内部の上記回転軸の側面に設けられていることを特徴とする処理対象物の加熱乾燥処理方法。
【0011】
加熱気体は処理タンクの外部から、回転軸の一方の端部を通じて供給される。もちろん、両端から供給しても構わない。その回転軸の側面から処理タンク内部に加熱気体を噴出させると、乾燥処理中の処理対象物に直接加熱気体が吹き付けられる。これにより、急激に処理対象物を加熱乾燥させることができる。また、澱粉質の塊の表面を急速乾燥させることができる。
【0012】
〈構成5〉
構成4に記載の処理対象物の加熱乾燥処理方法において、上記加熱気体排出口は、上記処理タンク内部の上記回転軸の側面に複数設けられていることを特徴とする処理対象物の加熱乾燥処理方法。
【0013】
加熱気体排出孔が多いほど、広く、直接、澱粉質の塊の表面に向けて加熱気体を噴出できる。
【0014】
〈構成6〉
構成1乃至4のいずれかに記載の処理対象物の加熱乾燥処理方法において、上記加熱気体は、上記処理タンク内部に堆積した処理対象物に向かって噴出され、処理対象物を破砕することを特徴とする処理対象物の加熱乾燥処理方法。
【0015】
処理タンクの特に低部に堆積した処理対象物に向かって加熱気体を強く噴出させると、処理対象物を破砕する効果がある。処理対象物に混入した澱粉質に直接加熱気体が吹き付けられて、その表面を乾燥させることができる。また、例えば、ご飯類の塊を破砕しながらその破片の表面をそれぞれ乾燥させて、大きな塊を作らせない効果がある。
【0016】
〈構成7〉
構成1乃至6のいずれかに記載の処理対象物の加熱乾燥処理方法において、処理対象物中に澱粉質を20%以上含むものを破砕しながら乾燥させることを特徴とする処理対象物の加熱乾燥処理方法。
【0017】
処理対象物中に占める澱粉質の割合が高いと、特に大きな塊が発生し易く、従来法では乾燥破砕処理が困難である。加熱気体を噴射する方法では従来の問題を解決できる。
【0018】
〈構成8〉
処理対象物投入口と処理対象物排出口とを有する処理タンクと、この処理タンク底部から垂直に直立した回転軸と、この回転軸の側面に取り付けられ投入された処理対象物を攪拌する攪拌羽根と、上記回転軸に設けられ、摂氏100度以上の加熱気体を受け入れる加熱気体流入口と、上記回転軸の側面に設けられ、上記加熱気体を上記処理タンクの内部に噴出させる加熱気体噴出口とを備えた処理対象物の加熱乾燥処理装置。
【0019】
〈構成9〉
構成8に記載の処理対象物の加熱乾燥処理装置において、上記加熱気体排出口は、上記処理タンク内部に堆積した処理対象物に対向する位置に配置されていることを特徴とする処理対象物の加熱乾燥処理装置。
【0020】
〈構成10〉
処理対象物を処理対象物に混入した油の粘度が低下して流下する温度まで加熱し、加熱した処理対象物から流下する油を、上記処理対象物と接触しない場所に配置した油受けに、油の透過する隔壁を介して移動させてから、上記処理対象物をさらに加熱攪拌して乾燥させ破砕することを特徴とする処理対象物の加熱乾燥処理方法。
【0021】
処理対象物に油分が混入しているとき、処理対象物を加熱して、油分を流下させ、その後攪拌して破砕乾燥させる。破砕乾燥させた後は油分を吸収し易くなるので、乾燥させる前に油分を油受けに取る。油の透過する隔壁は処理タンクの底部に設けると良い。
【0022】
〈構成11〉
構成10に記載の処理対象物の加熱乾燥処理方法において、未乾燥の処理対象物全体を摂氏70度以上の温度に加熱して所定時間保持し、処理対象物に混入した油を流下させることを特徴とする処理対象物の加熱乾燥処理方法。
【0023】
油分は、70度以上の温度に加熱すると粘度が低下する。その状態を所定時間保持すると油が流下する。
【0024】
〈構成12〉
構成10または11に記載の処理対象物の加熱乾燥処理方法において、処理対象物を攪拌して乾燥させる処理タンクの底部に油の透過する孔を設けて隔壁とし、この孔から油受けに油を移動させることを特徴とする処理対象物の加熱乾燥処理方法。
【0025】
処理タンクの底部の任意の数の孔から流下した油を取り出すと良い。
【0026】
〈構成13〉
構成10または11に記載の処理対象物の加熱乾燥処理方法において、処理対象物を攪拌して乾燥させる処理タンクの底部に傾斜面を設けて、その最低部に油の透過する孔を設け、この孔から油受けに油を移動させることを特徴とする処理対象物の加熱乾燥処理方法。
【0027】
処理タンクの底部に流下した油を可能な限り多く排出するために、処理タンクの底部に傾斜面を設けるとよい。
【0028】
〈構成14〉
構成10乃至13のいずれかに記載の処理対象物の加熱乾燥処理方法において、処理タンクには、乾燥された処理対象物の排出口が設けられ、この排出口から排出される処理対象物の温度が常温に低下する前に当該処理対象物を圧縮して、処理対象物に含まれる油分を搾り取り分離することを特徴とする処理対象物の加熱乾燥処理方法。
【0029】
排出口から排出される処理対象物の温度が常温に低下する前に当該処理対象物を搾ると、油分の粘度が低いから油を分離し易い。また、後工程で再加熱をして油分を搾り取るような無駄を省ける。
【0030】
〈構成15〉
構成14に記載の処理対象物の加熱乾燥処理方法において、上記処理対象物の排出口から排出される加熱気体により、上記排出口から排出される処理対象物の温度を保持しながら、当該処理対象物を圧縮して、処理対象物に含まれる油分を搾り取り分離することを特徴とする処理対象物の加熱乾燥処理方法。
【0031】
加熱乾燥処理をした処理タンクからは処理対象物とともに高温の気体が排出される。これにより排出口から排出される処理対象物を高温に保持する。そのまま油を搾る処理をすると、乾燥処理時の熱を利用して、短時間で効率よく油分を除去できる。
【0032】
〈構成16〉
構成10乃至15のいずれかに記載の処理対象物の加熱乾燥処理方法において、油分を含むものを破砕しながら乾燥させることを特徴とする処理対象物の加熱乾燥処理方法。
【0033】
油分の多い食品の処理に効適する。
【0034】
〈構成17〉
処理対象物を攪拌して乾燥させる処理タンクの底部に傾斜面を設けて、その最低部に油の透過する孔を設け、この孔から流下する油を受ける油受けを設けたことを特徴とする処理対象物の加熱乾燥処理装置。
【0035】
〈構成18〉
処理対象物を処理対象物に混入した油の粘度が低下して流下する温度まで加熱して、所定時間その温度を維持する制御と、上記油が処理対象物と接触しない場所に移動した後に、処理対象物をさらに加熱攪拌して乾燥させ破砕する制御を実行する制御装置を備えた処理対象物の加熱乾燥処理装置。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明の実施の形態を実施例毎に詳細に説明する。
【実施例1】
【0037】
図1は実施例1の処理対象物の加熱乾燥処理装置を示す縦断面図である。
なお、以下の実施例の処理対象物は、食品残渣等の未利用資源である。加熱乾燥処理装置は、その未利用資源を再利用可能な状態に加熱乾燥処理をする機能を持つ。この装置は、処理タンク12に食品残渣等の処理対象物を投入してその処理をする。処理タンク12は、蓋部13と側壁14と底部15で取り囲まれている。蓋部13には、処理対象物投入口18が設けられている。側壁14には、処理対象物排出口20が設けられている。底部15には、処理対象物を攪拌する攪拌装置が取り付けられている。攪拌装置は、処理タンク12の底部から垂直に直立した回転軸22の側面23に攪拌羽根24を備えた構造をしている。回転軸22はモータなどにより回転駆動される。
【0038】
この実施例では、回転軸22の軸部に設けた管路32に、加熱気体流入口34と加熱気体排出口36とを設けた。加熱気体流入口34には蒸気発生装置30が接続されている。蒸気発生装置30からは、摂氏100度以上の加熱気体が供給される。例えば、十分に高温の水蒸気が供給される。加熱気体は加熱気体噴出口36から、処理タンク12の内部の処理対象物に直接吹き付けられるように噴出される。水蒸気の代わりに高温空気を噴出させても構わない。加熱気体は処理対象物に含まれる水分を強制的に蒸発させる可能な限り高い温度であることが好ましい。少なくとも摂氏100度以上であることが必要である。
【0039】
処理タンク12の側壁14と底部15の外側には、加熱装置16が配置されている。加熱装置16には蒸気発生装置30で生成された水蒸気が導入され、処理タンク12全体を加熱している。処理タンク12は円筒状をしており、回転軸22が回転すると、処理タンク12に投入された処理対象物が加熱攪拌される。処理タンク12の内部に投入された食品残渣等の処理対象物は当初含有水分が非常に多い。回転軸22を回転させて攪拌羽根24で処理対象物を攪拌すると、処理対象物は処理タンク12の下部で次第に加熱され攪拌される。
【0040】
澱粉質を多く含む麺類や米飯類の未利用資源は、多量の水分と混ざり合って加熱され糊状になる。そこへ高温の水蒸気を直接吹きかけると、大きな塊になる前に多数の小さな澱粉質の塊ができる。塊の表面は乾燥した澱粉の殻で覆われる。この塊を攪拌羽根24で攪拌しながら破砕すると、硬い殻の中から糊状の澱粉質が露出する。ここにもすぐに高温の水蒸気が吹きかけられるから、再びより小さな塊ができる。これをまた攪拌羽根24で破砕する。このような処理を繰り返して、澱粉質は大きな塊になることなく速やかに紛状体にされる。多量の糊状物や澱粉質の大きな塊が存在しなければ、攪拌羽根24の負荷が小さくて高速回転することができるから、処理速度もさらに上げられる。
【0041】
特に、回転軸22の側面23に加熱気体噴出口36を配置し、澱粉質に直接高温水蒸気を吹き付けるようにすると、表面を乾燥させるだけでなく高圧により乾燥させた殻を破砕し吹き飛ばし内容物を外に出してさらにこれらを乾燥させるといった作用を及ぼす。従って、澱粉質の塊を短時間で破壊し粉々にし乾燥させることが可能になる。高温気体は乾燥空気でもよいが、処理タンク12を加熱するための水蒸気をそのまま利用できるので、高温水蒸気が最も経済的である。以上の構成により、未利用資源の可燃乾燥及び破砕処理を低コストで効率よく実施することが可能になる。
【実施例2】
【0042】
図2は実施例2処理対象物の加熱乾燥処理装置説明図である。
高温気体は、処理タンク12のどこから噴出させても構わない。即ち、蓋部13、側壁14,底部15のいずれの場所にも、噴出ノズルをとりつけることができる。全ての場所に取り付けても良いし、いずれかの場所のみでも構わない。図2(a)は、処理タンク12の蓋部13にノズル38を取り付けた状態を示す。処理タンク12の上方から加熱気体を噴出させて、処理対象物の上面に吹き付ける。処理対象物は処理タンク12の4分の1位の深さまで投入される。加熱攪拌を開始するときは、処理対象物の上面に高温気体を吹き付けて、早く処理対象物を乾燥させる効果がある。
【0043】
図2(b)は、処理タンク12の側壁14にノズル39を取り付けた例を示す。ノズル39は処理対象物40の側方に高温気体を吹き付けるので、処理対象物40を効果的に破砕する。従って、比較的大きな塊の存在する処理タンク12の底部15に近い場所にノズル39を配置することが好ましい。処理タンクの底部15に上方に向けてノズル37を取り付けても良い。ノズル37から常に高温気体を噴出させておけば、ノズルの詰まりは防止できる。水分を多く含む処理対象物については、強力に攪拌をして水分を追い出す効果がある。
【0044】
図2(c)は、回転軸22の軸部に例えば高温水蒸気を通して、回転軸22を加熱する構造を示す。回転軸22の下端にはユニバーサルジョイントを通じて加熱気体流入口34と加熱気体噴出口36が接続されている。加熱気体流入口34から高温水蒸気が回転軸22の内部に導入され、二重構造になった回転軸22の外側を通って上部から中心のパイプに流れ込む。その後加熱気体噴出口36から排出される。処理タンク12の側壁14や底部15だけでなく、処理タンク12の中心部にある回転軸22も高温に加熱しておくことにより、処理対象物をより早く加熱できる。特に澱粉質を含む場合には、急速に加熱をすることで糊状になるのを防ぐことができる。
【0045】
図2(d)の例では、回転軸22の下端に加熱気体流入口34を設けるとともに、回転軸22の側面23に複数の加熱気体排出口36を設けた。回転軸22に高さや方向の異なる加熱気体排出口36を設けると、処理タンク12の内部に投入された処理対象物の各所に高温気体を直接吹き付けることができ、急加熱、急乾燥、および破砕効果により、大きな澱粉質の塊ができるのを防止する効果がある。以上の装置及び処理方法は、特に、処理対象物中に澱粉質の重量が全重量の20%以上含まれる食品処理対象物の処理に非常に有効である。澱粉質の含有量がこのレベルだと、澱粉質が糊状の大きな塊になる傾向が高いからである。
【実施例3】
【0046】
図3は、実施例3の処理タンク底部の縦断面図である。
処理タンク12の上部構造は実施例1等と同様である。この処理タンク12の底部には、中央が高く周辺に向かうほど低くなる傾斜面42が設けられている。じれ等では平坦であった処理タンク12の底部を、中心が高く周辺が低くなるように湾曲させている。そして、最低部に任意の数だけ隔壁44を配置し、ここに流下孔46を設ける。隔壁44は多数の穴のあいた網などで構成する。
【0047】
流下孔46からは、処理対象物から分離した油48が滴下する。油受け50は滴下した油48を回収する。回転軸22は、処理タンク12の内部で回転して攪拌羽根24によって処理対象物を加熱攪拌する。処理対象物を投入後、処理対象物が高温に加熱されると処理対象物の内部に含有された油分がその粘度を低下させて、処理タンク12の底部に流下する。その油分を傾斜面42により処理タンク12の周囲に集める。そして、隔壁44と流下孔46を通じて外部に排出させる。
【0048】
処理対象物の加熱乾燥が進むと油分は滴下しなくなる。そして、処理対象物は次第に乾燥されて細かく破砕され、最後に処理対象物排出口20から排出される。従来は、加熱、攪拌、乾燥、粉砕という処理を連続的に行っていた。従って、例えば、加熱を開始した当初油分が処理タンク12の底に流下したとしても、その後次第に処理対象物の乾燥が進むと処理対象物が再び油分を吸収してしまう。そしてそのまま処理対象物排出口20から排出される。その結果、多量の油分を含んだ乾燥処理対象物が排出される。従って、その後処理対象物を再加熱し圧縮して油分を搾り出すといった工程が必要であった。
【0049】
一方、この発明では、最初に処理対象物を高温に加熱し、その段階で流下した油分を隔壁44と流下孔46を利用して排出してしまう。従って、油分の減少した処理対象物を加熱乾燥させ破砕することができる。十分に油分を除去できると、後の圧縮処理は不用になる。
【0050】
図4は、処理タンク12の変形例を示す部分縦断面図である。
この処理タンク12の底部にはその周辺に溝52が設けられている。そして、溝52の最も低い部分に任意の数の流下孔46を設ける。そして、流下孔46から流下する油を油受け50で受ける。溝52が十分に細ければ、溝52自体が隔壁の作用をして、油分だけを外部に取り出すことができる。溝52の幅が広ければ、多孔板等の隔壁を別途設けると良い。
【0051】
図5は、油分除去のための装置運転方法を示すタイムチャートである。
図の横軸は時間を表す。まず、処理対象物を処理タンク12に投入する。時刻t1から処理対象物の加熱を開始し、時刻t2までの間に処理対象物を充分高温に加熱する。加熱をするとまず水分が蒸発する。水分が少なくなり、さらに処理対象物を高温に加熱すると油分が流下し始め、処理タンク12の底部から排出される。時刻t2以後処理対象物はさらに加熱され乾燥され破砕される。そして時刻t3で加熱乾燥処理を終了し、処理対象物は処理タンク12から外部へ排出される。このように、時刻t1からt2までの間に油分を取り去ることで、従来よりも充分に油分の少ない処理対象物を得ることができる。なお、油分を流下させるには未乾燥の処理対象物全体を摂氏70度以上の温度に加熱して所定時間保持することが好ましい。以上の装置により、食品残渣等の油分の多い未利用資源を、動物の餌等の用途に、低処理コストで効率よく再利用することが初めて可能になった。
【実施例4】
【0052】
図6は実施例4の装置の部分側面図である。
処理タンク12の下部側面には処理対象物排出口20が設けられている。この処理対象物排出口20から、加熱乾燥され粉砕された処理対象物が排出される。それを図のような装置で受ける。この装置は駆動部60により駆動される。装置の内部には圧縮スクリュー62が配置されている。処理対象物は入力口64から圧縮スクリュー62に供給される。圧縮スクリュー62は処理対象物を圧縮し、油分を搾り取って出力口65から排出する。圧縮スクリュー62の構造は既知のものであるから簡単に説明をする。
【0053】
図7は圧縮スクリュー62の内部構造の説明図である。
処理対象物は図の右上の矢印方向から入力する。圧縮スクリュー62の羽根は、右側から左側に向かって次第にピッチが小さくなるように設計されている。この圧縮スクリュー62を回転させると、入力口64から投入された処理対象物は次第に圧縮されて、装置の内部に設けられた隔壁63に押し付けられる。その結果高い圧力を受けた処理対象物から油が搾り取られる。この油は油透過壁66を通過して受け皿68に回収される。
【0054】
油が搾り取られた処理対象物は隔壁63を越えて出力口65から排出される。なお、この圧縮スクリュー62に処理対象物が投入されるとき、同時に処理対象物排出口20(図6)から高温の水蒸気が出てくる。この高温の水蒸気が圧縮スクリュー62の中に処理対象物と同時に導入される。高温の水蒸気は圧縮スクリュー62と処理対象物とを高い温度に保持する。これによって油分の粘度を下げ、圧縮スクリュー62が処理対象物を圧縮して油を搾り出す作用を高める。
【0055】
処理タンク12(図1)の内部には、処理対象物を加熱乾燥するために使用された高温空気や高温水蒸気が満たされている。これを圧縮スクリュー62の部分に送り込むことによって、エネルギを有効利用し、効果的に油分を搾る処理ができる。また、加熱乾燥処理をした直後の処理対象物であるから処理対象物自身も高温に保持されている。従って、処理対象物が冷却された後再び加熱乾燥するよりもはるかに低コストで処理対象物を搾り、処理対象物から油分を排除することができる。以上のようにして、食品処理対象物の澱粉質を充分に乾燥し細かく破砕すると共に、内部に含まれた油分を許容値まで除去して、そのまま動物の餌や植物の肥料として使用できるものを生産できる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】実施例1の処理対象物の加熱乾燥処理装置を示す縦断面図である。
【図2】実施例2処理対象物の加熱乾燥処理装置説明図である。
【図3】実施例3の処理タンク底部の縦断面図である。
【図4】処理タンク12の変形例を示す部分縦断面図である。
【図5】油分除去のための装置運転方法を示すタイムチャートである。
【図6】実施例4の装置の部分側面図である。
【図7】は圧縮スクリュー62の内部構造の説明図である。
【符号の説明】
【0057】
10 加熱乾燥処理装置
12 処理タンク
13 蓋部
14 側壁
15 底部
16 加熱装置
18 処理対象物投入口
20 処理対象物排出口
22 回転軸
23 側面
24 攪拌羽根
30 蒸気発生装置
32 管路
34 加熱気体流入口
36 加熱気体噴出口
37 ノズル
38 ノズル
39 ノズル
40 処理対象物
42 傾斜面
44 隔壁
46 流下孔
48 油
50 油受け
52 溝
60 駆動部
62 圧縮スクリュー
63 隔壁
64 入力口
65 出力口
66 油透過壁
68 受け皿

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理対象物投入口と処理対象物排出口と投入された処理対象物を攪拌する攪拌装置を備えた処理タンク内部に、摂氏100度以上の加熱気体を噴出させながら、処理対象物を攪拌し破砕乾燥させることを特徴とする処理対象物の加熱乾燥処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の処理対象物の加熱乾燥処理方法において、
処理タンクの蓋部または側壁または底部から摂氏100度以上の高温空気もしくは高温水蒸気を、処理対象物に向けて噴出させながら、処理対象物を攪拌し乾燥させることを特徴とする処理対象物の加熱乾燥処理方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の処理対象物の加熱乾燥処理方法において、
処理タンクの底部から垂直に直立した回転軸の側面に攪拌羽根を備えた攪拌装置を有し、前記回転軸の軸部に設けた管路に加熱気体流入口と加熱気体排出口とを設けたことを特徴とする処理対象物の加熱乾燥処理方法。
【請求項4】
請求項3に記載の処理対象物の加熱乾燥処理方法において、
前記加熱気体流入口は前記回転軸の一方の端部に設けられ、加熱気体排出口は、前記処理タンク内部の前記回転軸の側面に設けられていることを特徴とする処理対象物の加熱乾燥処理方法。
【請求項5】
請求項4に記載の処理対象物の加熱乾燥処理方法において、
前記加熱気体排出口は、前記処理タンク内部の前記回転軸の側面に複数設けられていることを特徴とする処理対象物の加熱乾燥処理方法。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれかに記載の処理対象物の加熱乾燥処理方法において、
前記加熱気体は、前記処理タンク内部に堆積した処理対象物に向かって噴出され、処理対象物を破砕することを特徴とする処理対象物の加熱乾燥処理方法。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の処理対象物の加熱乾燥処理方法において、
処理対象物中に澱粉質を20%以上含むものを破砕しながら乾燥させることを特徴とする処理対象物の加熱乾燥処理方法。
【請求項8】
処理対象物投入口と処理対象物排出口とを有する処理タンクと、この処理タンク底部から垂直に直立した回転軸と、この回転軸の側面に取り付けられ投入された処理対象物を攪拌する攪拌羽根と、前記回転軸に設けられ、摂氏100度以上の加熱気体を受け入れる加熱気体流入口と、前記回転軸の側面に設けられ、前記加熱気体を前記処理タンクの内部に噴出させる加熱気体噴出口とを備えた処理対象物の加熱乾燥処理装置。
【請求項9】
請求項8に記載の処理対象物の加熱乾燥処理装置において、
前記加熱気体排出口は、前記処理タンク内部に堆積した処理対象物に対向する位置に配置されていることを特徴とする処理対象物の加熱乾燥処理装置。
【請求項10】
処理対象物を処理対象物に混入した油の粘度が低下して流下する温度まで加熱し、加熱した処理対象物から流下する油を、前記処理対象物と接触しない場所に配置した油受けに、油の透過する隔壁を介して移動させてから、前記処理対象物をさらに加熱攪拌して乾燥させ破砕することを特徴とする処理対象物の加熱乾燥処理方法。
【請求項11】
請求項10に記載の処理対象物の加熱乾燥処理方法において、
未乾燥の処理対象物全体を摂氏70度以上の温度に加熱して所定時間保持し、処理対象物に混入した油を流下させることを特徴とする処理対象物の加熱乾燥処理方法。
【請求項12】
請求項10または11に記載の処理対象物の加熱乾燥処理方法において、
処理対象物を攪拌して乾燥させる処理タンクの底部に油の透過する孔を設けて隔壁とし、この孔から油受けに油を移動させることを特徴とする処理対象物の加熱乾燥処理方法。
【請求項13】
請求項10または11に記載の処理対象物の加熱乾燥処理方法において、
処理対象物を攪拌して乾燥させる処理タンクの底部に傾斜面を設けて、その最低部に油の透過する孔を設け、この孔から油受けに油を移動させることを特徴とする処理対象物の加熱乾燥処理方法。
【請求項14】
請求項10乃至13のいずれかに記載の処理対象物の加熱乾燥処理方法において、
処理タンクには、乾燥された処理対象物の排出口が設けられ、この排出口から排出される処理対象物の温度が常温に低下する前に当該処理対象物を圧縮して、処理対象物に含まれる油分を搾り取り分離することを特徴とする処理対象物の加熱乾燥処理方法。
【請求項15】
請求項14に記載の処理対象物の加熱乾燥処理方法において、
前記処理対象物の排出口から排出される加熱気体により、前記排出口から排出される処理対象物の温度を保持しながら、当該処理対象物を圧縮して、処理対象物に含まれる油分を搾り取り分離することを特徴とする処理対象物の加熱乾燥処理方法。
【請求項16】
請求項10乃至15のいずれかに記載の処理対象物の加熱乾燥処理方法において、
油分を含むものを破砕しながら乾燥させることを特徴とする処理対象物の加熱乾燥処理方法。
【請求項17】
処理対象物を攪拌して乾燥させる処理タンクの底部に傾斜面を設けて、その最低部に油の透過する孔を設け、この孔から流下する油を受ける油受けを設けたことを特徴とする処理対象物の加熱乾燥処理装置。
【請求項18】
処理対象物を処理対象物に混入した油の粘度が低下して流下する温度まで加熱して、所定時間その温度を維持する制御と、
前記油が処理対象物と接触しない場所に移動した後に、処理対象物をさらに加熱攪拌して乾燥させ破砕する制御を実行する制御装置を備えた処理対象物の加熱乾燥処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−41783(P2009−41783A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−203987(P2007−203987)
【出願日】平成19年8月6日(2007.8.6)
【出願人】(399042063)共立工業株式会社 (11)
【Fターム(参考)】