説明

処理槽切替え方式の表面処理装置、この表面処理装置に用いる可動式液受け装置

【課題】 処理槽内壁に付着したパラジウム等の金属粒子の剥離清掃作業中においても被処理物の表面処理を可能にする、処理槽切替え方式の表面処理装置を提供する。また、前工程からの液持ち込みによる弊害を解決する可動式液受け装置を提供する。
【解決手段】 第1処理槽1と第2処理槽2を平行に配置し、前処理槽3と後処理槽4を第1処理槽の長手方向の前後に配置し、被処理物Wを、第1処理槽の搬入部1A及び搬出部1Bの上空位置を経由した、第1処理槽搬送行程R1又は第2処理槽搬送行程R2に切替えて搬送するように構成した。また、前記第1処理槽の搬入部1Aと搬出部1Bに可動式液受け装置30を配設し、第2処理槽搬送行程に従って被処理物が搬送される場合は可動式液受け部31を液受け可能位置に移動し、液持ち込みを防止した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板等の被処理物の表面に化学銅メッキ等のメッキ処理その他の薬液処理を施す表面処理装置に係り、平行に配置した二列の処理槽をいずれか一方の処理槽に切替えて表面処理を行なえるようにした表面処理装置と該装置に用いる可動式液受け装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、化学銅メッキ等の表面処理作業において、薬液処理を一週間程度行なうと、処理槽(薬液槽)の内壁にパラジウム等の金属粒子が付着し析出反応が悪くなる。このような場合、薬液を排出した処理槽内に剥離液を入れ、1日乃至2日かけて内壁に付着したパラジウム等の金属粒子を剥離液で溶解し剥離する清掃作業を行なっているが、この剥離液による金属粒子の剥離清掃作業を完了するまで、処理装置の運転を中止しなければならない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
係る実情に鑑み、本発明は、被処理物の表面にメッキその他の薬液処理を施す処理槽内壁に付着したパラジウム等の金属粒子の溶解・剥離などの清掃作業中の一方の処理槽における表面処理作業の中止時に他方の処理槽において表面処理作業を行なうべく処理槽を切替え、一方の処理槽の清掃作業中においても連続した化学銅メッキ等の薬液処理その他の表面処理を可能にした処理槽切替え方式の表面処理装置を提供することを目的とする。
【0004】
また、上記の課題を解決するために提供した処理槽切替え方式の表面処理装置において、前工程からの液の持ち込みによる弊害を解決できるようにした処理槽切替え方式の表面処理装置に用いる可動式液受け装置を提供することを目的とする。すなわち、処理槽内壁に付着したパラジウム等の金属粒子の溶解・剥離などの清掃作業中の処理槽(第1処理槽)の被処理物搬入部に被処理物に付着された前処理槽の水洗液が持ち込まれ、同じく清掃作業中の処理槽(第1処理槽)の被処理物搬出部に被処理物に付着された他方の処理槽の薬液が持ち込まれることにより、剥離清掃作業中の剥離液に混入され、剥離液が希釈され、溶解・剥離機能が弱められてしまう弊害を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するため、本発明に係る処理槽切替え方式の表面処理装置は、被処理物の表面にメッキその他の薬液処理を施す処理槽であって、長手方向の一端側を被処理物の搬入部、他端側を被処理物の搬出部とした長槽の処理槽をその長手方向に沿って互いに平行に配置してなる第1処理槽と第2処理槽と、前記第1処理槽の長手方向の前後に該第1処理槽と直線的に配置した水洗槽などの前処理槽と後処理槽と、表面処理される被処理物を下方に保持(吊持)する被処理物保持体と、この被処理物保持体を搬送する搬送手段とを含み、前記第1、第2処理槽、前処理槽及び後処理槽は上部を開口した構造であり、前記搬送手段によって前記被処理物保持体で保持する被処理物を、前処理槽、第1処理槽、後処理槽の各処理液中に順に浸漬する処理工程と、前処理槽、第2処理槽、後処理槽の各処理液中に順に浸漬する処理工程に切替え可能に構成した表面処理装置において、前記搬送手段によって前記被処理物保持体で保持する被処理物を、前処理槽の上空位置から第1処理槽の搬入部上空位置まで水平方向に空中搬送する行程、この搬入部上空位置から第1処理槽の処理液中へ垂直方向に投入する行程、この搬入部液中位置から搬出部まで第1処理槽の処理液中に浸漬しながら水平方向に液中搬送する行程、この搬出部液中位置から垂直方向に取り出す行程、この取り出し位置から後処理槽の上空位置まで水平方向に空中搬送する行程の順に搬送する第1処理槽搬送行程と、前処理槽の上空位置から第1処理槽の搬入部上空位置まで水平方向に空中搬送する行程、この搬入部上空位置から第2処理槽の搬入部上空位置まで第1処理槽の長手方向と直交する水平方向に空中搬送する経路切替え行程、この搬入部上空位置から第2処理槽の処理液中へ垂直方向に投入する行程、この搬入部液中位置から搬出部まで第2処理槽の処理液中に浸漬しながら水平方向に液中搬送する行程、この搬出部液中位置から垂直方向に取り出す行程、この取り出し位置から第1処理槽の搬出部上空位置まで第2処理槽の長手方向と直交する水平方向に空中搬送する経路切替え行程、この搬出部上空位置から後処理槽の上空位置まで水平方向に空中搬送する行程の順に搬送する第2処理槽搬送行程のいずれか一方の搬送行程に切替えて搬送するように構成したことを特徴としている。
【0006】
また、本発明に係る処理槽切替え方式の表面処理装置は、前記搬送手段を、前記被処理物保持体を移送可能に支持するレールと、レールに支持された被処理物保持体を該レールに沿って一方向へ搬送駆動しえる押送手段とで構成し、前記レールは、前記前処理槽に対応して水平状態に配設し、前記被処理物保持体に保持した被処理物を前処理槽の上空に位置させる上方位置と液中に浸漬させる下方位置とに上下動させる前処理部レールと、第1処理槽及び第2処理槽にそれぞれ対応して水平状態に配設し、前記被処理物保持体に保持した被処理物を各処理槽の液中に浸漬しえる下方位置に配置した第1処理部レールと第2処理部レールと、前記後処理槽に対応して水平状態に配設し、前記被処理物保持体に保持した被処理物を後処理槽の上空に位置させる上方位置と液中に浸漬させる下方位置とに上下動させる後処理部レールと、前記処理槽の搬入部に対応して水平状態に配設した搬入部切替えレールと、前記処理槽の搬出部に対応して水平状態に配設した搬出部切替えレールとを含み、前記搬入部切替えレールを、前記第1処理槽搬送行程に従って被処理物保持体を搬送する場合においては、上方位置にある前処理部レールの終端部と直列的に整合される上方位置と第1処理槽の第1処理部レールの始端部に直列的に整合される下方位置とに上下動するように構成し、前記第2処理槽搬送行程に従って被処理物保持体を搬送する場合においては、上方位置にある前処理部レールの終端部と直列的に整合される上方位置と第2処理槽の搬入部上空位置とに前記第1処理槽の長手方向と直交する方向へ横移動し、該横移動位置で第2処理部レールの始端部に直列的に整合される下方位置に上下動するように構成し、前記搬出部切替えレールを、前記第1処理槽搬送行程に従って被処理物保持体を搬送する場合においては、第1処理槽の第1処理部レールの終端部に直列的に整合される下方位置と上方位置にある後処理部レールの始端部に直列的に整合される上方位置とに上下動するように構成し、前記第2処理槽搬送行程に従って被処理物保持体を搬送する場合においては、第2処理槽の第2処理部レールの終端部に直列的に整合される下方位置と上方位置とに上下動し、該上方位置から後処理部レールの始端部と直列的に整合される上方位置まで前記第2処理槽の長手方向と直交する方向へ横移動するように構成し、前記押送手段は、前処理部レールに支持された被処理物保持体を上方位置において該前処理部レールと直列的に整合される搬入部切替えレールへレールに沿って乗換え移送させる搬入用押送手段と、下方位置において直列的に整合される前記搬入部切替えレール、前記第1処理部レール及び前記搬出部切替えレールに沿って被処理物保持体を第1処理槽の搬入部から搬出部まで移送し、該保持体で保持する被処理物を処理液中に浸漬しながら移送しえる第1処理部押送手段と、下方位置において直列的に整合される前記搬入部切替えレール、前記第2処理部レール及び前記搬出部切替えレールに沿って被処理物保持体を第2処理槽の搬入部から搬出部まで移送し、該保持体で保持する被処理物を処理液中に浸漬しながら移送しえる第2処理部押送手段と、搬出部切替えレールに乗換え支持された被処理物保持体を上方位置において該搬出部切替えレールと直列的に整合される後処理部レールへレールに沿って乗換え移送させる搬出用押送手段とを含んで構成したことを特徴としている。
【0007】
また、本発明に係る処理槽切替え方式の表面処理装置に用いる可動式液受け装置は、前記第1処理槽の前記搬入部と搬出部に被処理物保持体に保持される被処理物に付着した処理液の落下を受ける上方を開口した略箱形状の可動式液受け部を有する可動式液受け装置をそれぞれ配設し、前記可動式液受け部を、第1処理槽における前記搬入部と搬出部の各上部開口を覆う液受け可能位置と、第1処理槽における前記搬入部と搬出部の各上部開口を覆わず且つ前記第1処理槽搬送行程に従って搬送される被処理物保持体及び該保持体に保持される被処理物の搬送を妨げない液受け不可位置とに可動するように構成し、前記第2処理槽搬送行程に従って被処理物保持体を搬送する場合には前記可動式液受け部を液受け可能位置に移動し、前記第1処理槽搬送行程に従って被処理物保持体を搬送する場合には前記可動式液受け部を液受け不可位置に移動するように構成したことを特徴としている。
【0008】
そして、前記可動式液受け装置は、前記可動式液受け部を液受け可能な横倒位置と液受け不可の略起立位置とに可動するようにそれぞれ枢設したことを特徴としている。
【0009】
さらに、前記可動式液受け装置は、前記可動式液受け部に該受け部で受けた液を処理槽の外部へ排出する排出管を設け、該受け部の底部を前記排出管へ向けて徐々に低くした傾斜形状としたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る処理槽切替え方式の表面処理装置によれば、被処理物の表面にメッキその他の薬液処理を施す処理槽内壁に付着したパラジウム等の金属粒子の溶解・剥離などの清掃作業中の一方の処理槽(第1処理槽)における表面処理作業の中止時においても他方の処理槽(第2処理槽)において表面処理作業を行なうべく処理槽を切替え、一方の処理槽(第1処理槽)の清掃作業中においても連続した化学銅メッキ等の薬液処理その他の表面処理を行なうことができる。
【0011】
しかも、本発明に係る処理槽切替え方式の表面処理装置によれば、被処理物保持体で保持する被処理物を、第1処理槽搬送行程に従って搬送する場合は勿論のこと、第2処理槽搬送行程に従って搬送する場合も、第1処理槽の搬入部上空位置及び搬出部上空位置を経由して切替え搬送されることになり、設備の低コスト化や被処理物保持体(被処理物)の搬送スピード化を図れる。
【0012】
また、本発明に係る処理槽切替え方式の表面処理装置に用いる可動式液受け装置によれば、前工程からの液の持ち込みによる弊害を解決できる。すなわち、処理槽内壁に付着したパラジウム等の金属粒子の溶解・剥離などの清掃作業中の処理槽(第1処理槽)の搬入部に被処理物に付着された前処理槽の水洗液が持ち込まれ、同じく清掃作業中の処理槽(第1処理槽)の搬出部に被処理物に付着された他方の処理槽(第2処理槽)の薬液が持ち込まれることに因る、剥離清掃作業中の剥離液への混入、混入による剥離液の希釈、希釈により剥離液の溶解・剥離機能が弱められてしまう弊害を解決できる。しかして、第1処理槽の搬入部と搬出部に可動式液受け装置を配設した本発明に係る処理槽切替え方式の表面処理装置によれば、前記した如く、前工程からの液の持ち込みによる弊害を解決できるため、第1処理槽から第2処理槽へ切替えて被処理物の表面処理を行なう場合も、第1処理槽の搬入部上空位置及び搬出部上空位置を経由して切替え搬送することができ、設備の低コスト化や被処理物保持体(被処理物)の搬送スピード化を図れる。換言すれば、本発明の可動式液受け装置を配設してない処理槽切替え方式の場合は、処理槽の切替え工程を当該処理槽の外側の前後で対応しなければならず、例えば、処理槽外の切替え位置から第2処理槽の搬入部へ被処理物保持体(被処理物)を搬送する搬送手段が必要になる等して、搬送駆動手段が複雑化し、よって、搬送駆動トラブルが多発し、搬送駆動に要するコストやメンテナンスが非常にかかる弊害がある。また、本発明の可動式液受け装置を配設してない処理槽切替え方式の場合は、処理槽の切替え工程を当該処理槽の外側の前後で対応しなければならず、被処理物の空中放置時間が長くなる弊害や、前処理槽や後処理槽の増設によるコストアップの弊害がある。本発明は上記した弊害を解決できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の実施形態を図面に基づき説明する。図1は本発明の処理槽切替え方式の表面処理装置の概略を説明的に示した平面図で、図1(A)は第1処理槽搬送行程を、図1(B)は第2処理槽搬送行程を示している。図2、3は、表面処理される被処理物を下方に保持する被処理物保持体と、この被処理物保持体を搬送する搬送手段(レール、押送手段)を加えて示した本発明の処理槽切替え方式の表面処理装置の正面図及び平面図である。
【0014】
本発明の処理槽切替え方式の表面処理装置は、被処理物の表面にメッキその他の薬液処理を施す処理槽(本実施例では化学銅メッキ等の表面処理を行うメッキ処理槽として構成している。)であって、長手方向の一端側を被処理物の搬入部、他端側を被処理物の搬出部とした長槽の処理槽をその長手方向に沿って互いに平行に配置してなる第1処理槽1と第2処理槽2と、前記第1処理槽1の長手方向(被処理物の浸漬移送方向)の前後に該第1処理槽1と直線的に配置した水洗槽としての前処理槽3と後処理槽4と、表面処理されるプリント基板などの被処理物Wを下方に垂直に吊持する被処理物保持体10と、この被処理物保持体10を搬送する搬送手段20とから構成される。第1、第2処理槽1,2はそれぞれ隔壁の無い連続した長槽で、各処理槽1,2の一端側(図1〜3では右側)を被処理物Wが処理液中に投入される搬入部1A,2A、他端側(図1〜3では左側)を被処理物Wが処理液中から上方に取り出される搬出部1B,2Bとしている。前処理槽3と後処理槽4は隔壁によって複数の前処理槽3と複数の後処理槽4に形成してある。また、前記両処理槽1,2、前処理槽3及び後処理槽4は上部を開口した構造である。この表面処理装置は、前記搬送手段20によって前記被処理物保持体10で保持する被処理物Wを、前処理槽3、第1処理槽1、後処理槽4の各処理液中に順に浸漬する処理工程と、前処理槽3、第2処理槽2、後処理槽4の各処理液中に順に浸漬する処理工程に切替え可能に構成してある。なお、図1(A),(B)に可動式液受け装置30(可動式液受け部31)を二点鎖線で示してあるが、これについては後で述べる。
【0015】
前記搬送手段20によって被処理物保持体10に保持された被処理物Wを、図1(A)に概略を示した第1処理槽搬送行程R1と、図1(B)に概略を示した第2処理槽搬送行程R2のいずれか一方の搬送行程に切替えて搬送するように構成した。
【0016】
前記第1処理槽搬送行程R1は、被処理物保持体10に保持された被処理物Wを、前処理工程の直前の前処理槽3の上空位置(上方位置)から第1処理槽1の搬入部1Aの上空位置(上方位置)まで水平方向に空中搬送する行程、この搬入部1Aの上空位置(上方位置)から第1処理槽1の処理液中へ垂直方向に入れる行程、この搬入部1Aの液中位置から第1処理槽1の搬出部1Bまで第1処理槽1の処理液中に浸漬しながら移送する水平方向に液中搬送する行程、第1処理槽1の搬出部1Bの液中位置から垂直方向に取り出す行程、この取出し位置(搬出部1Bの上空位置)から後処理工程の直後の後処理槽4の上空位置まで水平方向に空中搬送する行程の順に搬送する、平面視で直線的な搬送行程である。なお、被処理物保持体10に垂直に吊持した被処理物Wとしての基板は、前記第1処理槽搬送行程R1における水平方向への空中搬送・液中搬送る行程においては、基板の基板面を搬送方向と平行な姿勢で搬送される。
【0017】
また、前記第2処理槽搬送行程R2は、被処理物保持体10に保持された被処理物Wを、前処理工程の直前の前処理槽3の上空位置から第1処理槽1の搬入部1Aの上空位置まで水平方向に空中搬送する行程、この搬入部1Aの上空位置(上方位置)から第2処理槽2の始端部側に位置する搬入部2Aの上空位置まで前記第1処理槽1の長手方向と直交する水平方向に(すなわち前記第1処理槽搬送行程R1の水平方向への搬送とは直交する水平方向への)空中搬送する経路切替え行程、この搬入部2Aの上空位置から第2処理槽2の処理液中へ垂直方向に投入する行程、この搬入部2Aの液中位置から第2処理槽2の終端部側に位置する搬出部2Bまで第2処理槽2の処理液中に浸漬しながら水平方向に液中搬送する行程、第2処理槽2の搬出部2Bの液中位置から垂直方向に取り出す行程、この取り出し位置(搬出部2Bの上空位置)から第1処理槽1の搬出部1Bの上空位置(上方位置)まで前記第2処理槽2の長手方向と直交する水平方向に(すなわち前記第1処理槽搬送行程R1の水平方向への搬送とは直交する水平方向への)空中搬送する経路切替え行程、この第1処理槽1の搬出部1Bの上空位置(上方位置)から後処理工程の直後の後処理槽4の上空位置まで水平方向に空中搬送する行程の順に搬送する、平面視で迂回並路をもつ搬送行程である。なお、被処理物保持体10に垂直に吊持した被処理物Wとしての基板は、前記第2処理槽搬送行程R2における水平方向への空中搬送(経路切替え行程における空中搬送は除く。)・液中搬送る行程においては、基板の基板面を搬送方向と平行な姿勢で搬送される。
【0018】
前記搬送手段20を、前記被処理物保持体10を移送可能に支持する各レール21と、レールに支持された被処理物保持体10を該レールに沿って順次一方向へ搬送駆動しえる押送手段22で構成している。
【0019】
前記各レール21は、前記前処理槽3に対応して水平状態に配設し、前記被処理物保持体10に保持した被処理物Wを前処理槽3の上空に位置させる上方位置と液中に浸漬させる下方位置とに上下動させる前処理部レール21Aと、第1処理槽1及び第2処理槽2にそれぞれ対応して水平状態に配設し、前記被処理物保持体10に保持した被処理物Wを各処理槽1,2の液中に浸漬しえる下方位置に固定的に配置した第1処理部レール21Cと第2処理部レール21Dと、前記後処理槽4に対応して水平状態に配設し、前記被処理物保持体10に保持した被処理物Wを後処理槽4の上空に位置させる上方位置と液中に浸漬させる下方位置とに上下動させる後処理部レール21Fと、前記処理槽1,2の搬入部1A,2Aに対応して水平状態に配設した一つの搬入部切替えレール21Bと、前記処理槽1,2の搬出部1B,2Bに対応して水平状態に配設した一つの搬出部切替えレール21Eとで構成してある。
【0020】
前記搬入部切替えレール21Bは、前記第1処理槽搬送行程R1に従って被処理物保持体10(被処理物W)を搬送する場合においては、上方位置にある前処理部レール21Aの終端部と直列的に整合される上方位置と、該位置で第1処理槽1の第1処理部レール21Cの始端部に直列的に整合される下方位置とに上下動し、前記第2処理槽搬送行程R2に従って被処理物保持体10(被処理物W)を搬送する場合においては、上方位置にある前処理部レール21Aの終端部と直列的に整合される上方位置と、該位置から第2処理槽2の搬入部2Aの上空位置(上方位置)に前記第1処理槽1の長手方向と直交する方向へ横移動し(図3を参照)、該横移動位置で第2処理部レール21Dの始端部に直列的に整合される下方位置に上下動するように構成してある。
【0021】
前記搬出部切替えレール21Eは、前記第1処理槽搬送行程R1に従って被処理物保持体10(被処理物W)を搬送する場合においては、第1処理槽1の第1処理部レール21Cの終端部に直列的に整合される下方位置と上方位置にある後処理部レール21Fの始端部に直列的に整合される上方位置とに上下動し、前記第2処理槽搬送行程R2に従って被処理物保持体10(被処理物W)を搬送する場合においては、第2処理槽2の第2処理部レール21Dの終端部に直列的に整合される下方位置と上方位置とに上下動し、該上方位置から後処理部レール21Fの始端部と直列的に整合される上方位置まで前記第2処理槽2の長手方向と直交する方向へ横移動(図3を参照)するように構成してある。
【0022】
前記押送手段22は、前処理部レール21Aに支持された被処理物保持体10を上方位置において該前処理部レール21Aと直列的に整合される搬入部切替えレール21Bへレールに沿って乗換え移送させ、直前の前処理槽3から第1処理槽1の搬入部1Aの上空位置へ順次移送させる搬入用押送手段22Aと、下方位置において直列的に整合される前記搬入部切替えレール21B、前記第1処理部レール21C及び前記搬出部切替えレール21Eに沿って被処理物保持体10を第1処理槽1の搬入部1Aから搬出部1Bまで移送し、該保持体10で保持する被処理物Wを処理液中に浸漬しながら移送しえる第1処理部押送手段22Bと、下方位置において直列的に整合される前記搬入部切替えレール21B、前記第2処理部レール21D及び前記搬出部切替えレール21Eに沿って被処理物保持体10を第2処理槽2の搬入部2Aから搬出部2Bまで移送し、該保持体10で保持する被処理物Wを処理液中に浸漬しながら移送しえる第2処理部押送手段22Cと、搬出部切替えレール21Eに乗換え支持された被処理物保持体10を上方位置において該搬出部切替えレール21Eと直列的に整合される後処理部レール21Fへレールに沿って乗換え移送させ、後処理部レール21Fに乗換え移送された被処理物保持体10を該後処理部レール21Fに沿って順次移送する搬出用押送手段22Dとで構成している。
【0023】
前記押送手段(22A,22B,22C,22D)は、レール軌道に沿って往復移動する駆動杆23と、この駆動杆23に所定間隔をおいて取付けた係合体24とから成り、この駆動杆23の搬送方向への往移動(矢印方向への移動)においては係合体24がレールに支持された被処理物保持体10(保持体10の上部に突設した係合部11)に係合し該保持体10をレールに沿って一方向に順次移送するが、駆動杆23の反搬送方向への復移動(反矢印方向への移動)においては係合体24がレールに支持された被処理物保持体10(保持体10の上部に突設した係合部11)に係合されず該保持体10を移送しないように構成してある。
【0024】
前処理部では、上下動する前処理部レール21Aの下降位置(下方位置)において被処理物保持体10で保持した被処理物Wを前処理槽3の液中に浸漬し、上昇位置(上方位置)において被処理物保持体10で保持した被処理物Wを前処理槽3の液中から取出し、取り出された上昇位置(上方位置)において、搬送方向へ往移動(矢印方向への移動)する前記搬入用押送手段22Aの係合体24に被処理物保持体10が係合され、該保持体10をレールに沿って次の前処理槽3の上方位置へ搬送し、最後には該保持体10を第1処理槽1の搬入部1Aの上方位置で待機している搬入部切替えレール21Bに乗換え搬送する。
【0025】
後処理部では、第1処理槽1の搬出部1Bの上方位置に上昇している搬出部切替えレール21Eに支持されている被処理物保持体10を搬送方向へ往移動(矢印方向への移動)する前記搬出用押送手段22Dの係合体24に係合させて後処理部レール21Fに乗換え、後処理槽4の上方位置へ搬送する。該位置で、上下動する後処理部レール21Fの下降位置(下方位置)において被処理物保持体10で保持した被処理物Wを後処理槽4の液中に投入して浸漬し、上昇位置(上方位置)において被処理物保持体10で保持した被処理物Wを後処理槽4の液中から取出し、取り出された上昇位置(上方位置)において、搬送方向へ往移動(矢印方向への移動)する前記搬出用押送手段22Dの係合体24に被処理物保持体10が係合され、該保持体10をレールに沿って次の後処理槽4の上方位置へ搬送する。
【0026】
前記第1、第2処理槽1,2の表面処理部(メッキ処理部)では、処理部押送手段(22B,22C)によって搬送方向に一定間隔の複数の静止ポジションを設定してあり、被処理物保持体10で保持した被処理物Wは、各静止ポジションで一定時間(例えば30秒ほど)静止した状態に順次浸漬され、各静止ポジションを順に搬送方向に液中搬送され化学銅メッキ処理等の表面処理が行なわれるようにしている。
【0027】
本発明の処理槽切替え方式の表面処理装置で、被処理物保持体10(及び該保持体10に保持した被処理物W)を前記第2処理槽搬送行程R2に従って搬送する場合、被処理物保持体10(被処理物W)は、前処理工程の前処理槽3の上空位置から第1処理槽1の搬入部1Aの上空位置まで水平方向に空中搬送され、この搬入部1Aの上空位置を経由して第2処理槽2の搬入部2Aの上空位置へ経路切替え空中搬送されることになる。その際、被処理物Wに付着された前処理工程の水洗液が第1処理槽1の搬入部1Aに持ち込まれ、この搬入部1Aに水洗液が落下し、水洗液が剥離清掃作業中の剥離液に混入され、剥離液が希釈され、溶解・剥離機能を弱める弊害が生じる。また、同様に、被処理物保持体10(被処理物W)を前記第2処理槽搬送行程R2に従って搬送する場合、第2処理槽2の搬出部2B液中から取り出された被処理物Wは、この取出し位置から第1処理槽1の搬出部1Bの上空位置へ経路切替え空中搬送され、この第1処理槽1の搬出部1Bを空中において経由して後処理工程の後処理槽4へ搬送されることになり、その際、被処理物Wに付着された第2処理槽2の処理液(薬液)が第1処理槽1の搬出部1Bに持ち込まれ、第1処理槽1の搬出部1Bに処理液(薬液)が落下し、処理液(薬液)が剥離清掃作業中の剥離液に混入され、剥離液が希釈され、溶解・剥離機能を弱める弊害が生じる。
【0028】
係る弊害を解消するため、前記第1処理槽1の搬入部1Aと搬出部1Bに被処理物保持体10に保持される被処理物Wに付着した処理液の落下を受ける上方を開口した略箱形状の可動式液受け部31を有する可動式液受け装置30をそれぞれ配設した。
【0029】
この可動式液受け部31は、第1処理槽1における前記搬入部1Aと搬出部1Bの各上部開口を覆う液受け可能位置と、第1処理槽1における前記搬入部1Aと搬出部1Bの各上部開口を覆わず且つ前記第1処理槽搬送行程R1に従って搬送される被処理物保持体10及び該保持体に保持される被処理物Wの搬送を妨げない液受け不可位置とに可動するように構成してあり、前記第2処理槽搬送行程R2に従って被処理物保持体10(被処理物W)が搬送される場合には前記可動式液受け部31を液受け可能位置に移動し、前記第1処理槽搬送行程R1に従って被処理物保持体10(被処理物W)が搬送される場合には前記可動式液受け部31を液受け不可位置に移動するように構成してある。
【0030】
図4〜6の実施形態では、前記可動式液受け部31を液受け可能な横倒位置(図4に実線で示す)と液受け不可の略起立位置(図4に二点鎖線で示す)とに開閉可動するように前記搬入部1Aと搬出部1Bにそれぞれ枢設した。
【0031】
前記第1、第2処理槽1、2の槽間に配置した軸受け体32に枢軸33を該枢軸の軸方向が処理槽1、2の長手方向に沿うように軸支し、この枢軸33に可動式液受け部31を反転可能に固定すると共に、この枢軸33に操作レバー34を固定し、この操作レバー34の操作端側にエアーシリンダー(図示せず)を連結し、このエアーシリンダーの往復駆動で可動式液受け部31の開閉を制御できるようにしている。
【0032】
また、図6に示すように、前記可動式液受け部31に該受け部で受けた液を処理槽の外部へ排出する排出管35を設け、該受け部の底部31aを前記排出管35へ向けて徐々に低くした傾斜形状としてある。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の概略を説明的に示した平面図である。
【図2】本発明の表面処理装置を概略的に示した正面図である。
【図3】本発明の表面処理装置を概略的に示した平面図である。
【図4】本発明の可動式液受け装置の可動状態を示した縦断面図である。
【図5】本発明の可動式液受け装置の平面図である。
【図6】図5のA−A矢視線に沿う可動式液受け装置の縦断面図である。
【符号の説明】
【0034】
1 第1処理槽
2 第2処理槽
3 前処理槽
4 後処理槽
1A 第1処理槽の搬入部
1B 第1処理槽の搬出部
2A 第2処理槽の搬入部
2B 第2処理槽の搬出部
10 被処理物保持体
W 被処理物
R1 第1処理槽搬送行程
R2 第2処理槽搬送行程
20 搬送手段
21 レール
21A 前処理部レール
21B 搬入部切替えレール
21C 第1処理部レール
21D 第2処理部レール
21E 搬出部切替えレール
21F 後処理部レール
22 押送手段
22A 搬入用押送手段
22B 第1処理部押送手段
22C 第2処理部押送手段
22D 搬出用押送手段
30 可動式液受け装置
31 可動式液受け部
31a 可動式液受け部の底部
35 排出管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物の表面にメッキその他の薬液処理を施す処理槽であって、長手方向の一端側を被処理物の搬入部、他端側を被処理物の搬出部とした長槽の処理槽をその長手方向に沿って互いに平行に配置してなる第1処理槽と第2処理槽と、前記第1処理槽の長手方向の前後に該第1処理槽と直線的に配置した水洗槽などの前処理槽と後処理槽と、表面処理される被処理物を下方に保持する被処理物保持体と、この被処理物保持体を搬送する搬送手段とを含み、前記搬送手段によって前記被処理物保持体で保持する被処理物を、前処理槽、第1処理槽、後処理槽の各処理液中に順に浸漬する処理工程と、前処理槽、第2処理槽、後処理槽の各処理液中に順に浸漬する処理工程に切替え可能に構成した表面処理装置において、
前記搬送手段によって前記被処理物保持体で保持する被処理物を、前処理槽の上空位置から第1処理槽の搬入部上空位置まで水平方向に空中搬送する行程、この搬入部上空位置から第1処理槽の処理液中へ垂直方向に投入する行程、この搬入部液中位置から搬出部まで第1処理槽の処理液中に浸漬しながら水平方向に液中搬送する行程、この搬出部液中位置から垂直方向に取り出す行程、この取り出し位置から後処理槽の上空位置まで水平方向に空中搬送する行程の順に搬送する第1処理槽搬送行程と、前処理槽の上空位置から第1処理槽の搬入部上空位置まで水平方向に空中搬送する行程、この搬入部上空位置から第2処理槽の搬入部上空位置まで第1処理槽の長手方向と直交する水平方向に空中搬送する経路切替え行程、この搬入部上空位置から第2処理槽の処理液中へ垂直方向に投入する行程、この搬入部液中位置から搬出部まで第2処理槽の処理液中に浸漬しながら水平方向に液中搬送する行程、この搬出部液中位置から垂直方向に取り出す行程、この取り出し位置から第1処理槽の搬出部上空位置まで第2処理槽の長手方向と直交する水平方向に空中搬送する経路切替え行程、この搬出部上空位置から後処理槽の上空位置まで水平方向に空中搬送する行程の順に搬送する第2処理槽搬送行程のいずれか一方の搬送行程に切替えて搬送するように構成したことを特徴とする処理槽切替え方式の表面処理装置。
【請求項2】
請求項1記載の表面処理装置において、前記第1処理槽の前記搬入部と搬出部に被処理物保持体に保持される被処理物に付着した処理液の落下を受ける上方を開口した略箱形状の可動式液受け部を有する可動式液受け装置をそれぞれ配設し、前記可動式液受け部を、第1処理槽における前記搬入部と搬出部の各上部開口を覆う液受け可能位置と、第1処理槽における前記搬入部と搬出部の各上部開口を覆わず且つ前記第1処理槽搬送行程に従って搬送される被処理物保持体及び該保持体に保持される被処理物の搬送を妨げない液受け不可位置とに可動するように構成し、前記第2処理槽搬送行程に従って被処理物保持体を搬送する場合には前記可動式液受け部を液受け可能位置に移動し、前記第1処理槽搬送行程に従って被処理物保持体を搬送する場合には前記可動式液受け部を液受け不可位置に移動するように構成したことを特徴とする処理槽切替え方式の表面処理装置に用いる可動式液受け装置。
【請求項3】
前記可動式液受け部を液受け可能な横倒位置と液受け不可の略起立位置とに可動するようにそれぞれ枢設したことを特徴とする請求項2記載の処理槽切替え方式の表面処理装置に用いる可動式液受け装置。
【請求項4】
前記可動式液受け部に該受け部で受けた液を処理槽の外部へ排出する排出管を設け、該受け部の底部を前記排出管へ向けて徐々に低くした傾斜形状としたことを特徴とする請求項2記載の処理槽切替え方式の表面処理装置に用いる可動式液受け装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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