説明

処理治具用収納ケース

【課題】 搬送効率の低下や無駄を省いて多品種少量生産等の生産管理方式に対応できる処理治具用収納ケースを提供する。
【解決手段】 下部構造体1、上部構造体2、及び中部構造体3を取り付け取り外しが可能な分割自在に備え、これらのうち、少なくとも下部構造体1と上部構造体2とを着脱自在に連結してそれらの間に半導体ウェーハを粘着保持する処理治具を整列収納する。下部構造体1を、底板5と、この底板5の両側部にそれぞれ設けられる一対の側壁10と、この一対の側壁10に設けられて処理治具を支持する支持板13とから構成する。また、上部構造体2を、天板14と、この天板14の両側部にそれぞれ設けられ、下部構造体1の側壁10に着脱自在に連結される一対の側壁10と、この一対の側壁10に設けられて処理治具を支持する支持板13とから構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハを保持する処理治具を収納する処理治具用収納ケースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
口径300mmタイプの半導体ウェーハ用の処理治具を収納する従来の収納ケースは、図示しないが、処理治具を収納するフロントオープンボックスタイプの容器本体と、この容器本体の正面を開閉する蓋体とを備えて構成されている。容器本体の両側壁の内面には、収納された処理治具の周縁部を水平に支持する複数の支持片がそれぞれ上下方向に並設されている(特許文献1、2、3参照)。
このような収納ケースは、半導体産業の標準化を図る国際的なSEMI規格により、13枚ないしは25枚の処理治具を収納可能な13段ないしは25段タイプが標準化されている。
【特許文献1】特開平8‐80989号公報
【特許文献2】特表2005‐508274号公報
【特許文献3】特開2000‐277603号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来における収納ケースは、以上のように構成され、13枚ないしは25枚の処理治具を収納可能な13段ないしは25段タイプが標準化されているので、近年の生産管理方式下においては、搬送効率が低下したり、無駄が少なくないという問題がある。
【0004】
この問題について説明すると、近年の最終ユーザの多くは、多品種少量生産というマーケットや時代の要請に応えるべく、必要な物を、必要な時、必要な量だけ小ロット生産したり、搬送して無駄を抑制する生産管理方式(かんばん方式等)を採用しているが、この方式を実効あらしめるためには、販売予測や生産数量計画を誤りなく策定する等の他に、収納ケースに必要数の処理治具が無駄なく適性に収納される必要がある。
【0005】
しかしながら、従来の収納ケースは、少なくとも13枚の処理治具を収納可能に一律に構成されているので、例えば収納ケースに13枚ではなく、3枚の処理治具のみを収納して出荷するような場合には、不適切な出荷単位となるので、搬送装置に負荷を加えて搬送効率が著しく低下したり、無駄な収納量が増大してしまい、生産の継続性、反復性、サイクルタイムの遵守に支障を来たすおそれが少なくない。
【0006】
本発明は上記に鑑みなされたもので、搬送効率の低下や無駄を省いて多品種少量生産等の生産管理方式に対応することのできる処理治具用収納ケースを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明においては上記課題を解決するため、下部構造体と上部構造体とを着脱自在に連結してそれらの間に半導体ウェーハを保持する処理治具を収納するものであって、
下部構造体は、底板と、この底板の両側部にそれぞれ設けられる一対の側壁とを含み、上部構造体は、天板と、この天板の両側部にそれぞれ設けられ、下部構造体の側壁に着脱自在に連結される一対の側壁とを含んでなることを特徴としている。
なお、下部構造体は、一対の側壁に設けられて処理治具を支持する支持体を含み、上部構造体は、一対の側壁に設けられて処理治具を支持する支持体を含んでなると良い。
【0008】
また、下部構造体と上部構造体との間に着脱自在に介在して連結される中部構造体を備え、この中部構造体は、下部構造体の側壁と上部構造体の側壁とを着脱自在に連結する一対の側壁と、この一対の側壁に設けられて処理治具を支持する支持体とを含むことが好ましい。
また、下部構造体、上部構造体、及び中部構造体のうち、少なくとも下部構造体と上部構造体を挟むクリップ体を備えることができる。
【0009】
また、下部構造体、上部構造体、及び中部構造体のうち、少なくとも下部構造体と上部構造体の各側壁に回転軸を支持させ、この回転軸に、収納された処理治具用の脱落防止ストッパを設け、この脱落防止ストッパを回転軸の回転に基づき、処理治具に対する干渉位置と未干渉位置との間で回転させるようにすることができる。
また、少なくとも下部構造体と上部構造体の回転軸のいずれか一方に凹部を、他方には凸部をそれぞれ形成し、これら凹部と凸部との着脱自在の嵌め合わせにより、下部構造体と上部構造体の回転軸を連結することができる。
【0010】
また、処理治具に対する干渉位置と未干渉位置との間で脱落防止ストッパを回転させる動力伝達機構を備えることが好ましい。
また、動力伝達機構は、上部構造体の天板前後方向にスライド可能な原動体と、この原動体に回転可能に連結されたリンクと、このリンクと上部構造体の回転軸とに取り付けられた従動体とを含むと良い。
【0011】
また、動力伝達機構には、上部構造体の天板に支持された回転可能な第一の歯車と、この第一の歯車に噛み合わされたラック体と、上部構造体の各回転軸に設けられ、ラック体と噛み合う第二の歯車とを含ませることが可能である。
また、処理治具は、半導体ウェーハを収容する中空のフレームと、このフレームに取り付けられてその中空部を覆い、フレームの中空部に収容された半導体ウェーハを着脱自在に保持する弾性の密着層とを含むと良い。
【0012】
また、下部構造体、上部構造体、及び又は中部構造体の支持体を、一対の側壁の間に架設される支持板とすることが可能である。
さらに、下部構造体、上部構造体、及び又は中部構造体の支持体を、一対の側壁の対向面からそれぞれ突出し、間隔をおいて対向する複数の支持片とすることが可能である。
さらにまた、中部構造体の一対の側壁と支持体とを分割可能とすることも可能である。
【0013】
ここで、特許請求の範囲における半導体ウェーハは、口径200mmタイプ、300mmタイプ、450mmタイプ等を特に問うものではなく、又ダイシングの有無をも問うものではない。下部構造体、上部構造体、及び中部構造体は、透明、不透明、半透明を特に問うものではない。
【0014】
中部構造体は、単数複数いずれでも良い。動力伝達機構は、脱落防止ストッパを備えた回転軸に動力を伝達できる機構であれば、ドラムとロープを組み合わせた機構、滑子クランク機構、ピストン機構等でも良い。さらに、本発明に係る処理治具用収納ケースは、工場の工程間で運搬されても良いし、複数の工場間で輸送されるものでも良い。
【0015】
本発明によれば、処理治具用収納ケースに所定枚数の処理治具を収納して出荷等したい場合には、下部構造体、上部構造体、及び必要な単数複数の中部構造体を積み重ねて着脱自在に連結し、処理治具用収納ケースを組み立てれば、処理治具用収納ケースに所定枚数の処理治具のみを収納して運搬、搬送、出荷等することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、搬送効率の低下や無駄を省き、多品種少量生産等の生産管理方式にも十分に対応することができるという効果がある。
また、下部構造体と上部構造体との間に着脱自在に介在して連結される中部構造体を必要数備えれば、下部構造体と上部構造体とを重ねて処理治具用収納ケースを組み立てる場合に比べ、処理治具の収納量を増大させ、例えば5段、13段、25段タイプ等の処理治具用収納ケースを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態を説明すると、本実施形態における処理治具用収納ケースは、図1ないし図7に示すように、下部構造体1、上部構造体2、及び必要な中部構造体3を取り付け取り外しが可能な分割自在に備え、これら下部構造体1、上部構造体2、及び中部構造体3のうち、少なくとも下部構造体1と上部構造体2とを上下方向に着脱自在に連結してそれらの間に半導体ウェーハWを保持する処理治具20を必要枚数整列収納するようにしている。
【0018】
下部構造体1、上部構造体2、及び中部構造体3のうち、少なくとも下部構造体1と上部構造体2とは、左右両側から略倒U字形を呈した弾性のクリップ片4にそれぞれ挟持されることにより分離不能に積層固定される(図1参照)。
【0019】
下部構造体1は、処理治具20を支持搭載する剛性の底板5と、この底板5の両側部にそれぞれ垂直に形成される左右一対の側壁10と、この一対の側壁10の対向する内面間に選択的に架設されて処理治具20を水平に支持搭載する支持板13とを備えて構成される。この下部構造体1の底板5、一対の側壁10、及び支持板13は、所定の材料、例えばポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート等を使用して形成され、これらの材料には、必要に応じてガラス繊維、炭素繊維、又は炭酸カルシウム等の補強剤が配合される。
【0020】
底板5は、処理治具20の大きさに対応する平坦な平面矩形に形成され、裏面には複数のキネマティックカップリング6が配設されており、処理治具20を搭載する表面には凹部8と左右一対の位置決めストッパ9とが配設される。複数のキネマティックカップリング6は、平面視で三角形あるいは略Y字形等を描くよう所定の間隔をおいて装着され、各キネマティックカップリング6がV溝7を備えた平面略小判形あるいは楕円形等に形成されており、オープナや半導体加工装置から突出した複数の位置決めピンに上方から嵌合して処理治具用収納ケースを位置決めするよう機能する。
【0021】
凹部8は、底板5の表面の大部分に断面略U字形を呈するよう浅く広く凹み形成されて作業用の空間を区画形成し、処理治具20を挿脱する搬送ロボットのハンドとの干渉を回避するよう機能する。また、一対の位置決めストッパ9は、底板5の表面後部の左右両側に装着され、各位置決めストッパ9がブロック形に形成されて側壁10の内面に隣接しており、収納された処理治具20の周縁部後方に接触して位置ずれや脱落を規制するよう機能する。
【0022】
一対の側壁10は、同じ大きさ・形に形成され、上下部がそれぞれ同じ高さになるよう揃えられる。各側壁10は、底板5の前後方向の長さに対応する矩形に形成され、平坦な下部下面がキネマティックカップリング6と同じ高さか、あるいはそれよりも下方に突出しており、下部下面の一部には、クリップ片4の屈曲端部と係止する切り欠き11が切り欠かれる。この切り欠き11は、クリップ片4の挟持時にその屈曲端部の外面が側壁10の下面に揃う深さに切り欠かれる(図1参照)。各側壁10の平坦な上部上面には、複数の位置合わせピン12が所定の間隔をおき並べて立設される。
【0023】
支持板13は、基本的には処理治具20の大きさに対応する平坦な平面矩形に形成され、前後部の中央が平面略半円形に湾曲して突出しており、表面には左右一対の位置決めストッパ9が配設される。この一対の位置決めストッパ9は、支持板13の表面後部の左右両側に装着され、各位置決めストッパ9がブロック形に形成されて側壁10の内面に隣接しており、収納された処理治具20の周縁部後方に接触して位置ずれや脱落を規制する。
【0024】
上部構造体2は、底板5の表面に支持板13を介して対向する平面矩形の天板14と、この天板14の両側部にそれぞれ垂下して形成され、下部構造体1の側壁10上に着脱自在に連結される左右一対の側壁10と、この一対の側壁10の対向する内面間に選択的に架設されて処理治具20を水平に支持搭載する支持板13とを備えて構成される。この上部構造体2の天板14、一対の側壁10、及び支持板13は、下部構造体1と同様の材料を使用して形成される。
【0025】
天板14は、下部構造体1の底板5に対応する平坦な平面矩形に形成され、表面の中央部にはハンドリングフランジ15が着脱自在に装着されており、このハンドリングフランジ15が図示しない搬送ロボットに把持されることにより、処理治具用収納ケースが搬送される。
【0026】
一対の側壁10は、同じ大きさ・形に形成され、上下部がそれぞれ同じ高さになるよう揃えられる。各側壁10は、天板14の前後方向の長さに対応する矩形に形成され、平坦な下部下面には、下部構造体1の位置合わせピン12と嵌合する位置合わせ穴16が所定の間隔をおき並べて穿孔される。各側壁10の上部上面の一部には、クリップ片4の屈曲端部と係止する切り欠き11が切り欠かれ、この切り欠き11は、クリップ片4の挟持時にその屈曲端部の外面が側壁10の上面に揃う深さに切り欠かれる(図1参照)。
【0027】
支持板13は、下部構造体1の支持板13同様、基本的には処理治具20の大きさに対応する平坦な平面矩形に形成され、前後部の中央が平面略半円形に湾曲して突出しており、表面には上記位置決めストッパ9と同様の位置決めストッパ9が左右一対配設される。
【0028】
中部構造体3は、図2や図3に示すように、下部構造体1の側壁10と上部構造体2の側壁10とを着脱自在に縦に連結する左右一対の側壁10と、この一対の側壁10の対向する内面間に並べて架設され、処理治具20を支持搭載する複数の支持板13とを備えて構成され、下部構造体1と上部構造体2との間に必要数が介在して連結される。この中部構造体3の一対の側壁10や支持板13については、下部構造体1や上部構造体2と同様の材料を使用して形成される。
【0029】
一対の側壁10は、同じ大きさ・形に形成され、上下部がそれぞれ同じ高さになるよう揃えられる。各側壁10は、底板5や天板14の前後方向の長さに対応する矩形に形成され、平坦な下部下面には、下部構造体1等の位置合わせピン12と嵌合する位置合わせ穴16が所定の間隔をおき並べて穿孔されており、平坦な上部上面には、上部構造体2等の位置合わせ穴16に嵌合する複数の位置合わせピン12が所定の間隔をおき並べて立設される。各支持板13は、下部構造体1や上部構造体2の支持板13と同様に形成される。
【0030】
半導体ウェーハWは、例えば口径300mm(12インチ)にスライスされた丸いシリコンウェーハ等からなり、表面に回路パターンが描画形成されており、裏面がバックグラインドされることにより100μm以下の厚さに薄片化される(図6参照)。この半導体ウェーハWの周縁部には、位置決め用のオリフラや半円形のノッチが選択的に形成される。
【0031】
処理治具20は、図5〜図7に示すように、半導体ウェーハWを収容する中空のフレーム21と、このフレーム21の裏面に貼着されてその中空部を被覆し、フレーム21の中空部に収容された半導体ウェーハWを着脱自在に保持搭載する弾性の密着層28とを備えて構成され、半導体のダイシング工程で使用される。
【0032】
フレーム21は、半導体ウェーハWよりも大きいリング形に形成され、底板5や支持板13に搭載される。このフレーム21の材料としては、特に限定されるものではないが、機械的強度に優れるPPS、PA、PEI、PAI、PEEK、PES、LCP、PBT等があげられる。これらの材料には、必要に応じて強度や剛性を確保するガラス繊維、炭素繊維、又は炭酸カルシウム等の充填剤が配合される。
【0033】
フレーム21は、その外周面の前部両側に位置決め用のノッチ22が並べて切り欠かれ、表面の後部中央には横長の収納穴23が選択的に凹み形成されており、この収納穴23には、RFIDシステム(移動体識別システム)を構築するRFタグ24が選択的に装着される。
【0034】
RFIDシステムは、図7に示すように、電波により内部メモリがアクセスされ、フレーム21と共に移動するRFタグ24と、このRFタグ24との間で電波や電力を送受信するアンテナユニット25と、RFタグ24との交信を制御するリーダ/ライタ26と、このリーダ/ライタ26を制御するコンピュータ27とを備えて構成される。アンテナユニット25とリーダ/ライタ26とは、別々に構成されるが、必要に応じて一体化される。また、リーダ/ライタ26の制御に支障を来たさなければ、コンピュータ27の代わりに各種のコントローラが使用される。
【0035】
密着層28は、所定の材料を使用して変形可能な可撓性の薄い円板に形成され、フレーム21の裏面に粘着保持されており、フレーム21中央の中空部に露出した粘着面に半導体ウェーハWの裏面を着脱自在に粘着保持するよう機能する。この密着層28の材料としては、特に限定されるものではないが、例えば厚さ20〜300μmのPP、PE、エチレンプロピレン共重合体、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、塩化ビニル、又はPET等のフィルムがあげられる。また、粘着剤としては、アクリル酸、メタアクリル酸やこれらの酸の各種エステル誘導体等を原料とした重合体、あるいは共重合体からなるアクリル系樹脂等の粘着性樹脂が使用される。
【0036】
上記において、例えば処理治具用収納ケースに3枚の処理治具20を収納して出荷する場合には、下部構造体1と上部構造体2とを上下方向に積層してその複数の位置合わせピン12と位置合わせ穴16とを嵌合し、下部構造体1と上部構造体2との両側部をクリップ片4によりそれぞれ挟持するようにすれば、前後の開口した3枚用の処理治具用収納ケースを組み立て、小ロット生産に対応可能な3枚の処理治具20を収納して迅速に出荷することができる(図1参照)。
【0037】
また例えば、処理治具用収納ケースに5枚の処理治具20を収納して出荷する場合には、下部構造体1、上部構造体2、及び中部構造体3を上下方向に積層してその複数の位置合わせピン12と位置合わせ穴16とを嵌合すれば、前後の開口した5枚用の処理治具用収納ケースを組み立て、5枚の処理治具20を収納して迅速に出荷することができる(図2参照)。
【0038】
また例えば、処理治具用収納ケースに13枚の処理治具20を収納して出荷する場合には、下部構造体1、上部構造体2、及び複数の中部構造体3を多段に積層してその複数の位置合わせピン12と位置合わせ穴16とを嵌合すれば、前後の開口した13枚用の処理治具用収納ケースを組み立て、13枚の処理治具20を収納して迅速に出荷することができる(図3参照)。
【0039】
さらに例えば、処理治具用収納ケースに25枚の処理治具20を収納して出荷する場合には、下部構造体1、上部構造体2、及び複数の中部構造体3を多段に積層してその複数の位置合わせピン12と位置合わせ穴16とを嵌合すれば、前後の開口した25枚用の処理治具用収納ケースを組み立て、25枚の処理治具20を収納して迅速に出荷することができる。
【0040】
これらに対し、例えば処理治具用収納ケースに1枚の処理治具20を収納して出荷する場合には、下部構造体1と上部構造体2の支持板13をそれぞれ取り外し、これら下部構造体1と上部構造体2とを積層してその複数の位置合わせピン12と位置合わせ穴16とを嵌合すれば、前後の開口した1枚用の処理治具用収納ケースを組み立て、底板5の表面に1枚の処理治具20のみを収納して迅速に出荷することができる(図4参照)。
【0041】
上記構成によれば、半導体ウェーハWや処理治具20の数に応じて適正な出荷単位の処理治具用収納ケースを自由に組み立てることができるので、搬送装置に負荷を加えて搬送効率が低下したり、無駄な収納量が増大するのを確実に防止することができ、生産の継続性、反復性、サイクルタイムの遵守に支障を来たすおそれが全くない。したがって、多品種少量生産というマーケットや時代の要請に応え、無駄をきわめて有効に抑制することができる。
【0042】
また、かんばん方式等の生産管理方式を効率的にすることができるので、在庫量を圧縮して品質の向上や工程の遅れ防止等を図ることができる。また、下部構造体1、上部構造体2、及び中部構造体3が簡易に構成されているので、コスト削減が大いに期待できる。また、下部構造体1と上部構造体2とを既存の半導体ウェーハ収納容器の上下部に準拠して構成すれば、既存の周辺装置に何ら特別な加工を施すことなく、そのまま使用することが可能になる。
【0043】
また、底板5や支持板13の表面に処理治具20の密着層28が隙間なく搭載されるので、処理治具20の運搬や輸送時に密着層28が振動して上下にばたつき、半導体ウェーハWやチップに悪影響を及ぼすことがない。さらに、下部構造体1と上部構造体2の支持板13をそれぞれ取り外し、上部構造体2のハンドリングフランジ15を取り外せば、1枚の処理治具20を収納する処理治具用収納ケースを上下方向に簡単かつ多段に積層することができる(図4参照)ので、取り扱いの便宜を大いに図ることが可能になる。
【0044】
次に、図8〜図10は本発明の第2の実施形態を示すもので、この場合には、下部構造体1、上部構造体2、及び必要な中部構造体3の支持体である支持板13を省略し、代わりに支持体として支持片17を使用するようにしている。
【0045】
本実施形態における支持体は、同図に示すように、下部構造体1、上部構造体2、及び中部構造体3の一対の側壁10の対向する内面からそれぞれ内方向に突出し、間隔をおいて相対向する左右一対の支持片17から形成される。その他の部分については、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0046】
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、支持体が大きな占有面積の支持板13ではなく、前後方向に細長く伸びるレール形の支持片17なので、支持体の材料コストを大幅に削減することができるのは明らかである。また、処理治具20を挿脱する搬送ロボットのハンドとの干渉回避をさらに容易に実現することができる。
【0047】
次に、図11〜図15は本発明の第3の実施形態を示すもので、この場合には、下部構造体1、上部構造体2、及び必要な中部構造体3の各側壁10内に回転軸30を回転可能に軸支させ、各回転軸30に、収納された処理治具20用の脱落防止ストッパ33を形成し、回転軸30に動力伝達機構37により動力を伝達して脱落防止ストッパ33を処理治具20に対する干渉位置34と未干渉位置35との間で揺動させるようにしている。
【0048】
下部構造体1、上部構造体2、及び中部構造体3の回転軸30は、処理治具用収納ケースの組み立て時に隣接する上下の回転軸30と相互に連結される。各回転軸30は、その上部上端面に凹部31が凹み形成されるとともに、下部下端面には凸部32が突出形成され、側壁10内の前部に縦に穿孔された貫通孔に縦に嵌入軸支されており、この貫通孔から露出する凹部31又は凸部32が隣接する他の回転軸30の凸部32又は凹部31と着脱自在に直接嵌合して連結される(図11、図12参照)。
【0049】
脱落防止ストッパ33は、略倒U字形に形成されてその両自由端部が回転軸30の周面に一体形成され、処理治具20の周縁部両側に対する干渉位置34で接触したり、処理治具20の周縁部両側から離隔した未干渉位置35である側壁10の収納溝36に嵌合退避する(図11参照)。収納溝36は、側壁10の前部から支持片17の前部にかけて湾曲して切り欠かれる。
【0050】
動力伝達機構37は、図13〜図15に示すように、上部構造体2の天板14上でスライド可能な操作レバー38と、この操作レバー38に揺動可能に連結された複数のリンク41と、各リンク41と上部構造体2の各回転軸30とに揺動可能に支持された従動片45とを備えて構成される。操作レバー38は、直線の略棒形に形成され、下面の端部にはガイドピン39が垂下して装着されており、このガイドピン39が上部構造体2の天板前後方向に切り欠かれた直線の溝穴40にスライド可能に嵌入支持される。
【0051】
各リンク41は、操作レバー38のガイドピン39に回転可能に連結される長い第一のリンク42と、この第一のリンク42の端部に回転可能に連結される短い第二のリンク43とを備えて構成され、この第二のリンク43が天板14上のガイド片44にスライド可能に嵌合した状態で処理治具用収納ケースの左右横方向に直線的に案内される。また、従動片45は、天板14を貫通して露出した回転軸30の上部と第二のリンク43の端部との間に揺動可能に連結軸架される。
【0052】
上記において、処理治具用収納ケースに収納した処理治具20の前方からの脱落や落下を防止したい場合には、天板14の基準位置にある操作レバー38を握持して手前(図14の下方向)に引けば良い。
【0053】
すると、操作レバー38が処理治具用収納ケースの前方にスライドして屈曲した第一のリンク42、第二のリンク43、及び従動片45を横一着線に伸ばし、上下方向に連結された各回転軸30が回転して脱落防止ストッパ33を未干渉位置35から干渉位置34に揺動させるとともに、各脱落防止ストッパ33が処理治具20の周縁部両側に対する干渉位置34で接触し、この接触により、処理治具20の前方からの脱落や落下が防止される(図14参照)。
【0054】
これに対し、処理治具用収納ケースに処理治具20を収納したり、取り出したい場合には、図14の位置にある操作レバー38を握持して奥方向(図15の上方向)の基準位置に押せば良い。
【0055】
すると、操作レバー38が処理治具用収納ケースの後方にスライドして第一のリンク42と従動片45とをそれぞれ揺動させ、上下方向に連結された各回転軸30が回転して脱落防止ストッパ33を干渉位置34からその後方の未干渉位置35に揺動させるとともに、各脱落防止ストッパ33が処理治具20の周縁部両側から離れ、この離隔により、処理治具用収納ケースに処理治具20を収納したり、取り出すことができる(図15参照)。その他の部分については、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0056】
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、各脱落防止ストッパ33が処理治具20の周縁部に対して進退動するので、処理治具用収納ケースに処理治具20を収納したり、取り出す作業に何ら支障を来たすことなく、処理治具20の脱落や落下を有効に抑制防止することができるのは明らかである。また、動力伝達機構37の操作レバー38を1回操作すれば、一部の回転軸30と脱落防止ストッパ33とが回転するのではなく、全ての回転軸30と脱落防止ストッパ33とが連動して回転するので、操作性や作業性を著しく向上させることができる。
【0057】
なお、上記実施形態では下部構造体1、上部構造体2、及び又は中部構造体3をクリップ片4、位置合わせピン12、位置合わせ穴16を使用して積層固定したが、何らこれに限定されるものではない。例えば、複数のボルト、ナット、螺子等の締結具を使用して積層固定しても良い。
【0058】
また、上記実施形態では下部構造体1の底板5に複数のキネマティックカップリング6を直接配設したが、何らこれに限定されるものではない。例えば、下部構造体1の底板5にボトムプレートを装着し、このボトムプレートに複数のキネマティックカップリング6を配設しても良い。
【0059】
また、複数の中部構造体3をそれぞれ同じ大きさにしても良いし、積層可能な範囲で大小異なる大きさに形成しても良い。また、処理治具用収納ケースを断面略U字形を呈した保持体内に搭載してその両側壁の外面には、作業者用の握持ハンドルをそれぞれ装着しても良い。また、支持板13や支持片17に、処理治具20の周縁部に嵌合してその位置ずれや脱落を規制する嵌合領域を凹み形成することも可能である。
【0060】
また、各中部構造体3の一対の側壁10と複数の支持板13や支持片17とを一体形成しても良いし、分割可能とすることも可能である。さらに、各中部構造体3の側壁10を平面視で略J字形や略L字形に形成してその屈曲片により処理治具用収納ケースの背面壁を形成することも可能である。さらにまた、上部構造体2の天板14上にスライド可能な操作レバー38を配置したが、操作レバー38の代わりにスライダやハンドル等をスライド可能に配置することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明に係る処理治具用収納ケースの実施形態における下部構造体と上部構造体の積層状態を模式的に示す説明図である。
【図2】本発明に係る処理治具用収納ケースの実施形態における下部構造体、上部構造体、及び中部構造体を模式的に示す説明図である。
【図3】本発明に係る処理治具用収納ケースの実施形態における下部構造体、上部構造体、及び複数の中部構造体を模式的に示す説明図である。
【図4】本発明に係る処理治具用収納ケースの実施形態における1枚用の処理治具用収納ケースの積層状態を模式的に示す説明図である。
【図5】本発明に係る処理治具用収納ケースの実施形態における処理治具を模式的に示す平面説明図である。
【図6】本発明に係る処理治具用収納ケースの実施形態における処理治具を模式的に示す断面説明図である。
【図7】本発明に係る処理治具用収納ケースの実施形態におけるRFIDシステムを模式的に示す斜視説明図である。
【図8】本発明に係る処理治具用収納ケースの第2の実施形態における下部構造体と上部構造体の積層状態を模式的に示す説明図である。
【図9】本発明に係る処理治具用収納ケースの第2の実施形態における下部構造体、上部構造体、及び中部構造体を模式的に示す説明図である。
【図10】本発明に係る処理治具用収納ケースの第2の実施形態における下部構造体、上部構造体、及び複数の中部構造体を模式的に示す説明図である。
【図11】本発明に係る処理治具用収納ケースの第3の実施形態における回転軸と脱落防止ストッパとを模式的に示す斜視説明図である。
【図12】本発明に係る処理治具用収納ケースの第3の実施形態における対向する一対の回転軸の連結状態を模式的に示す平面説明図である。
【図13】本発明に係る処理治具用収納ケースの第3の実施形態を模式的に示す説明図である。
【図14】本発明に係る処理治具用収納ケースの第3の実施形態における脱落防止ストッパを処理治具に対する干渉位置に揺動させた状態を模式的に示す平面説明図である。
【図15】本発明に係る処理治具用収納ケースの第3の実施形態における脱落防止ストッパを処理治具に対する未干渉位置に揺動させた状態を模式的に示す平面説明図である。
【符号の説明】
【0062】
1 下部構造体
2 上部構造体
3 中部構造体
4 クリップ片
5 底板
10 側壁
11 切り欠き
12 位置合わせピン
13 支持板(支持体)
14 天板
16 位置合わせ穴
17 支持片(支持体)
20 処理治具
21 フレーム
28 密着層
30 回転軸
31 凹部
32 凸部
33 脱落防止ストッパ
34 干渉位置
35 未干渉位置
36 収納溝
37 動力伝達機構
38 操作レバー(原動体)
39 ガイドピン
41 リンク
42 第一のリンク
43 第二のリンク
45 従動片(従動体)
W 半導体ウェーハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部構造体と上部構造体とを着脱自在に連結してそれらの間に半導体ウェーハを保持する処理治具を収納する処理治具用収納ケースであって、
下部構造体は、底板と、この底板の両側部にそれぞれ設けられる一対の側壁とを含み、上部構造体は、天板と、この天板の両側部にそれぞれ設けられ、下部構造体の側壁に着脱自在に連結される一対の側壁とを含んでなることを特徴とする処理治具用収納ケース。
【請求項2】
下部構造体は、一対の側壁に設けられて処理治具を支持する支持体を含み、上部構造体は、一対の側壁に設けられて処理治具を支持する支持体を含んでなる請求項1記載の処理治具用収納ケース。
【請求項3】
下部構造体と上部構造体との間に着脱自在に介在して連結される中部構造体を備え、この中部構造体は、下部構造体の側壁と上部構造体の側壁とを着脱自在に連結する一対の側壁と、この一対の側壁に設けられて処理治具を支持する支持体とを含んでなる請求項1又は2記載の処理治具用収納ケース。
【請求項4】
下部構造体、上部構造体、及び中部構造体のうち、少なくとも下部構造体と上部構造体の各側壁に回転軸を支持させ、この回転軸に、収納された処理治具用の脱落防止ストッパを設け、この脱落防止ストッパを回転軸の回転に基づき、処理治具に対する干渉位置と未干渉位置との間で回転させるようにした請求項3記載の処理治具用収納ケース。
【請求項5】
少なくとも下部構造体と上部構造体の回転軸のいずれか一方に凹部を、他方には凸部をそれぞれ形成し、これら凹部と凸部との着脱自在の嵌め合わせにより、下部構造体と上部構造体の回転軸を連結するようにした請求項4記載の処理治具用収納ケース。
【請求項6】
処理治具に対する干渉位置と未干渉位置との間で脱落防止ストッパを回転させる動力伝達機構を備えた請求項4又は5記載の処理治具用収納ケース。
【請求項7】
動力伝達機構は、上部構造体の天板前後方向にスライド可能な原動体と、この原動体に回転可能に連結されたリンクと、このリンクと上部構造体の回転軸とに取り付けられた従動体とを含んでなる請求項6記載の処理治具用収納ケース。
【請求項8】
下部構造体、上部構造体、及び又は中部構造体の支持体を、一対の側壁の間に架設される支持板とした請求項2ないし7いずれかに記載の処理治具用収納ケース。
【請求項9】
下部構造体、上部構造体、及び又は中部構造体の支持体を、一対の側壁の対向面からそれぞれ突出し、間隔をおいて対向する複数の支持片とした請求項2ないし7いずれかに記載の処理治具用収納ケース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2007−258562(P2007−258562A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−83111(P2006−83111)
【出願日】平成18年3月24日(2006.3.24)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】