説明

処理液用流量計

【課題】処理液用流量計に種々の機能を持たせて使い勝手を良くする。
【解決手段】供給配管200を流れる処理液の流速を測定するものであって、前記供給配管200の流れ方向に一定距離離間して配置された一対の超音波振動子2、3と、一方の超音波振動子2から発された超音波が他方の超音波振動子3に到達する時間である第1到達時間T1、及び、前記他方の超音波振動子3から発された超音波が前記一方の超音波振動子2に到達する時間である第2到達時間T2に基づいて、前記処理液の流速を算出する流速算出部4と、算出された前記処理液の流速の時間変化量に基づいて、該処理液に気泡が混入しているか否かを判断する気泡混入判断部5とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レジスト液などの処理液に好適に用いられる処理液用流量計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置のうち、フォトレジスト塗布装置では、ウエハ上にフォトレジストを極めて薄く均一に塗布することにより、ウエハに感光性を持たせている。ここで、ウエハ上にフォトレジストを均一に塗布するにあたり、レジスト液中に気泡が含まれていると塗布ムラが生じてしまい、均一に塗布することができないという問題がある。
【0003】
そのため、従来では、特許文献1に示すように、フォトレジスト装置にレジスト液を供給する供給配管に気泡検出部を設けることにより自動的にレジスト液内の気泡の有無を検出できるように構成したものがある。なお、供給配管上には、その他、フォトレジストを均一に塗布するために、レジスト液の流速を測定する流速計や、レジスト液の流量を測定する流量計等が設けられている。
【0004】
しかしながら、供給配管上に流速計や流量計等とは別に気泡検出部を設けるとなると、供給配管及びその周辺の構成が複雑になってしまうという問題がある。また、メンテナンスの作業も煩雑になりがちであり、大型化も招いてしまうという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−136185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、上記問題点を一挙に解決すべくなされたものであり、処理液用流量計に種々の機能を持たせることにより供給配管上の構成を簡単化すべく、処理液への気泡の混入を判断する機能、種々の処理液の流速を好適に測定できる機能、又は処理液の逆流を検出する機能を有する処理液用流量計を提供することをその主たる所期課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明に係る処理液用流量計は、供給配管を流れる処理液の流速を測定するものであって、前記供給配管の流れ方向に一定距離離間して配置された一対の超音波振動子と、一方の超音波振動子から発された超音波が他方の超音波振動子に到達する時間である第1到達時間、及び、前記他方の超音波振動子から発された超音波が前記一方の超音波振動子に到達する時間である第2到達時間に基づいて、前記処理液の流速を算出する流速算出部と、算出された前記処理液の流速の時間変化量に基づいて、該処理液に気泡が混入しているか否かを判断する気泡混入判断部と、前記流速算出部で算出された流速と前記供給配管の断面積に基づいて、流量を算出する流量算出部とを具備していることを特徴とする。
【0008】
このようなものであれば、超音波振動子を用いた流量計において、処理液中の気泡混入を判断する気泡混入判断機能を持たせることができる。したがって供給配管上に流量計と別に気泡検出部を設ける必要が無く、供給配管上の構成を簡単化することができる。また超音波振動子を用いて流速を算出していることから、例えば15[ml/min]以下の微小な流量を計測することができる。
【0009】
気泡混入判断部により気泡混入判断処理を容易にするためには、前記気泡混入判断部は、前記時間変化量が所定の閾値を超えた場合に、該処理液に気泡が混入していると判断することが望ましい。
【0010】
また本発明に係る処理液用流量計は、供給配管を流れる処理液の流速を測定するものであって、前記供給配管の流れ方向に一定距離離間して配置された一対の超音波振動子と、一方の超音波振動子から発された超音波が他方の超音波振動子に到達する時間である第1到達時間、前記他方の超音波振動子から発された超音波が前記一方の超音波振動子に到達する時間である第2到達時間、及び、前記処理液の種類に基づいて、前記処理液の流速を算出する流速算出部とを具備していることを特徴とする。このようなものであれば、処理液の種類も勘案して自動的に流速を算出することができる。
【0011】
個々の処理液の流速を個別に校正することなく、各処理液の流速を測定可能にするためには、前記流速算出部は、前記第1到達時間及び第2到達時間をパラメータとして含んだ流速算出式から所定の標準液での流速を求め、さらにその標準液流速に対して、処理液毎に予め定められた係数を乗じて当該処理液の流速を算出することが望ましい。
【0012】
さらに本発明に係る処理液用流量計は、供給配管を流れる処理液の流速を測定するものであって、前記供給配管の流れ方向に一定距離離間して配置された一対の超音波振動子と、一方の超音波振動子から発された超音波が他方の超音波振動子に到達する時間である第1到達時間、前記他方の超音波振動子から発された超音波が前記一方の超音波振動子に到達する時間である第2到達時間に基づいて、前記処理液の流速を算出する流速算出部とを具備し、前記流速算出部は、負の値の流速を算出した場合に、処理液が逆方向に流れていると判断するものであることを特徴とする。このようなものであれば、流速が負の値のときに処理液が逆方向に流れていることを好適に検出できる処理液用流量計を提供することができる。
【発明の効果】
【0013】
このように構成した本発明によれば、処理液への気泡の混入を判断する機能、種々の処理液の流速を好適に測定できる機能、又は処理液の逆流を検出する機能を有する処理液用流量計を提供することができる。また超音波振動子を用いて流速を算出していることから微小な流量を計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態の処理液用流量計の模式図。
【図2】第1到達時間の第2到達時間を示す模式図。
【図3】流速の時間経過及び気泡混入判断を示す模式図。
【図4】変形実施形態の処理液用流量計の模式図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本実施形態に係る処理液用流量計100は、図示しない半導体製造装置のフォトレジスト塗布装置に接続される例えばPFAチューブからなる供給配管200を流れるレジスト液の流速及び流量を測定するものである。なお、供給配管200をPFAチューブで構成することにより、絞り等の圧損がないため気泡が発生しにくい。
【0016】
具体的にこのものは、図1に示すように、供給配管の流れ方向に一定距離離間して配置された一対の超音波振動子2、3と、この一対の超音波振動子2、3から得られる検出信号を受信して、レジスト液の流速を算出する流速算出部4と、算出されたレジスト液の流速の時間変化量に基づいてレジスト液に気泡が混入しているか否かを判断する気泡混入判断部5と、流速算出部4で算出された流速と前記供給配管200の断面積に基づいて、流量を算出する流量算出部6とを備えている。
【0017】
なお、流速算出部4、気泡混入判断部5及び流量算出部6は、CPU、メモリ、ADコンバータ、DAコンバータ、入出力インタフェース等を備え、メモリに格納した所定のプログラムに従ってCPUや周辺機器が協働して動作する汎用乃至専用のいわゆるコンピュータ300により構成されている。その他、これら4〜6をディスクリート回路を用いて構成しても良い。
【0018】
上流側に設けられた一方の超音波振動子2は、図示しない駆動回路により駆動されて、他方の超音波振動子3に向かって超音波を送信するものである。またこの一方の超音波振動子2は、他方の超音波振動子3から送信された超音波を受信するものである。一方の超音波振動子2により受信された信号は、図示しない増幅回路により所定のゲインで増幅されて流速算出部4に送信される。
【0019】
下流側に設けられた他方の超音波振動子3は、一方の超音波振動子2と同様に、図示しない駆動回路により駆動されて、一方の超音波振動子2に向かって超音波を送信するものである。またこの他方の超音波振動子3は、一方の超音波振動子2から送信された超音波を受信するものである。他方の超音波振動子3により受信された信号は、図示しない増幅回路により所定のゲインで増幅されて流速算出部4に送信される。
【0020】
流速算出部4は、前記一対の超音波振動子2、3から検出信号を受信して、図2に示すように、一方の超音波振動子2から発された超音波が他方の超音波振動子3に到達する時間である第1到達時間T1、及び、前記他方の超音波振動子3から発された超音波が前記一方の超音波振動子2に到達する時間である第2到達時間T2を算出する。そして、流速算出部4は、これら第1到達時間T1及び第2到達時間T2に基づいて、レジスト液の流速を算出する。具体的に流速算出部4は、流速V(ml/min)を以下の式により算出する。ここでLは、超音波振動子2、3間の距離である。
【0021】
【数1】

【0022】
気泡混入判断部5は、流速算出部4から算出された流速データを取得して、その流速の時間変化量に基づいてレジスト液に気泡が混入しているか否かを判断する。具体的に気泡混入判断部5は、図3に示すように、流速の瞬時値の時間変化量が所定の閾値を超えた場合に、レジスト液に気泡が混入していると判断する。
【0023】
流量算出部6は、流速算出部4で算出された流速と供給配管200の断面積に基づいて、流量を算出する。具体的に流量算出部6は、流量Q(L/min)=60×V×S×k[L/min]の式から流量を算出する。ここでSは供給配管200の流路断面積であり、kは補正係数(供給配管の流路径及び振動子間距離等の補正値)である。
【0024】
<本実施形態の効果>
このように構成した本実施形態に係るレジスト液用流量計100によれば、超音波振動子2、3を用いた流量計において、レジスト液中の気泡混入を判断する気泡混入判断機能を持たせることができる。したがって供給配管200上に流量計100と別に気泡検出部を設ける必要が無く、供給配管200上の構成を簡単化することができ、メンテナンス作業を煩雑にすることなく、装置の大型化を招くことなく、気泡混入を判断できるようになる。また超音波振動子2、3を用いて流速を算出していることから、例えば15[ml/min]以下の微小な流量を計測することができる。
【0025】
<その他の変形実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0026】
例えば、前記実施形態の流速算出部4が、第1到達時間T1、第2到達時間T2及びレジスト液の種類に基づいて、レジスト液の流速を算出するものであっても良い。この場合、処理液用流量計100は、図4に示すように、標準液に対して各レジスト液の物性値等から定まる係数を示す係数データを格納する係数データ格納部D1を有する。そして、流速算出部4は、前記第1到達時間T1及び第2到達時間T2をパラメータとして含んだ流速算出式から所定の標準液での流速を求め、さらにその標準液流速に対して、係数データ格納部D1から取得した係数データを用いて、レジスト液毎に予め定められた係数を乗じて当該レジスト液の流速を算出する。
【0027】
また、前記実施形態の流速算出部が、負の値の流速を算出した場合に、レジスト液が逆方向に流れていると判断するように構成することもできる。
【0028】
さらに、前記実施形態では、処理液としてレジスト液の流量を測定するものであったが、その他、エッチング液などの流量を測定するものであっても良い。
【0029】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0030】
100・・・レジスト液用流量計(処理液用流量計)
200・・・供給配管
2 ・・・一方の超音波振動子
3 ・・・他方の超音波振動子
T1 ・・・第1到達時間
T2 ・・・第2到達時間
4 ・・・流速算出部
5 ・・・気泡混入判断部
6 ・・・流量算出部
D1 ・・・係数データ格納部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給配管を流れる処理液の流速を測定するものであって、
前記供給配管の流れ方向に一定距離離間して配置された一対の超音波振動子と、
一方の超音波振動子から発された超音波が他方の超音波振動子に到達する時間である第1到達時間、及び、前記他方の超音波振動子から発された超音波が前記一方の超音波振動子に到達する時間である第2到達時間に基づいて、前記処理液の流速を算出する流速算出部と、
算出された前記処理液の流速の時間変化量に基づいて、該処理液に気泡が混入しているか否かを判断する気泡混入判断部と、
前記流速算出部で算出された流速と前記供給配管の断面積に基づいて、流量を算出する流量算出部とを具備していることを特徴とする処理液用流量計。
【請求項2】
前記気泡混入判断部は、前記時間変化量が所定の閾値を超えた場合に、該処理液に気泡が混入していると判断する請求項1記載の処理液用流量計。
【請求項3】
供給配管を流れる処理液の流速を測定するものであって、
前記供給配管の流れ方向に一定距離離間して配置された一対の超音波振動子と、
一方の超音波振動子から発された超音波が他方の超音波振動子に到達する時間である第1到達時間、前記他方の超音波振動子から発された超音波が前記一方の超音波振動子に到達する時間である第2到達時間、及び、前記処理液の種類に基づいて、前記処理液の流速を算出する流速算出部とを具備していることを特徴とする処理液用流量計。
【請求項4】
前記流速算出部は、前記第1到達時間及び第2到達時間をパラメータとして含んだ流速算出式から所定の標準液での流速を求め、さらにその標準液流速に対して、処理液毎に予め定められた係数を乗じて当該処理液の流速を算出する請求項3記載の処理液用流量計。
【請求項5】
供給配管を流れる処理液の流速を測定するものであって、
前記供給配管の流れ方向に一定距離離間して配置された一対の超音波振動子と、
一方の超音波振動子から発された超音波が他方の超音波振動子に到達する時間である第1到達時間、前記他方の超音波振動子から発された超音波が前記一方の超音波振動子に到達する時間である第2到達時間に基づいて、前記処理液の流速を算出する流速算出部とを具備し、
前記流速算出部は、負の値の流速を算出した場合に、処理液が逆方向に流れていると判断するものであることを特徴とする処理液用流量計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−189401(P2012−189401A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−52228(P2011−52228)
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【出願人】(592187534)株式会社 堀場アドバンスドテクノ (26)
【Fターム(参考)】