説明

処理装置、プログラム及び電子ペン用帳票

【課題】予めグリッドが印刷されている方眼用紙にフリーハンドで記入した図形を精緻化した上でイメージ化することができる図形解析システムを提供する。
【解決手段】図形解析システム100において、利用者は、方眼用紙3に図形を記入する。サーバ5は、時間情報に基づいて、電子ペン10から取得した記入情報に含まれるストロークのグループ化を行う。また、サーバ5は、ストロークから所定の長さの線分を抽出し、当該線分から一定時刻毎のベクトルを抽出する。そして、サーバ5は、複数のベクトルの移動方向に基づいて、総合的に当該線分の移動方向し、グループ化されたストローク中に存在する分岐点を特定する。さらに、サーバ5は、特定した分岐点に基づいて、対応する図形を特定する。そして、サーバ5は、時系列に基づいて、グループ化されたストロークのデータを、特定した図形となるように精緻化することで精緻化データを生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子ペン用帳票に記入された情報をイメージ化するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、「電子ペン」、「デジタルペン」などと呼ばれるペン型入力デバイスが登場しており(以下、本明細書では「電子ペン」と呼ぶ。)、その代表的なものとしてスウェーデンのAnoto社が開発した「アノトペン(Anoto pen)」が知られている。アノトペンは、所定のドットパターンが印刷された専用紙(以下、「専用ペーパー」とも呼ぶ。)とペアで使用される。アノトペンは、通常のインクタイプのペン先部に加えて、専用紙上のドットパターンを読み取るための小型カメラと、データ通信ユニットを搭載している。利用者が専用紙上にアノトペンで文字などを書いたり、専用紙上に図案化されている画像をチェックしたりすると、ペンの移動に伴って小型カメラが専用紙上のドットパターンを検出し、利用者が書き込んだ文字、画像などの記入情報(「ストロークデータ」とも呼ぶ。)が取得される。この記入情報が、データ通信ユニットによりアノトペンから近くのパーソナルコンピュータや携帯電話などの端末装置に送信される。このアノトペンを利用したシステムは、キーボードに代わる入力デバイスとして利用することが可能であり、上述のパーソナルコンピュータやキーボードの使用に抵抗がある利用者にとっては非常に使いやすい。そのため、現在、各種ビジネス上の書類、申込書、契約書等に記入されたデータをデジタル化する手法として、電子ペンを利用したシステムが普及しつつある(例えば、特許文献1)。
【0003】
上記のようなシステムでは、利用者がアノトペンを使用して専用紙に図形を記入した場合、当該図形をイメージデータとして取得することができる。この場合、システムは、専用紙に記入された軌跡データをそのままイメージ化し、画像として保存していた。このようなシステムでは、入力が電子ペンと専用紙を使用してラフに行えるがゆえ、イメージ化されるデータがフリーハンドのデータとなる。そのため、通常、フリーハンドのデータをある程度精緻化する必要が生じていた。
【0004】
【特許文献1】特開2004−153612号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上の点に鑑みてなされたものであり、予めグリッドが印刷されている方眼用紙にフリーハンドで記入した図形を精緻化した上でイメージ化することができる図形解析システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1つの観点では、前記電子ペンにより認識可能なドットパターンが印刷された電子ペン用帳票に記入された情報を処理する処理装置において、前記電子ペン用帳票に記入された1つ以上のストロークを記入情報として取得する記入情報取得手段と、前記記入情報に含まれる時間情報に基づいて、1つの図形に対応する1つ以上のストロークをグループ化するグループ化手段と、前記記入情報に含まれるストロークから、所定の長さの線分を抽出する線分抽出手段と、前記時間情報に基づいて、前記線分から、一定時間内におけるベクトルを抽出するベクトル抽出手段と、前記ベクトルの移動方向に基づいて、前記線分の移動方向を特定する移動方向特定手段と、前記線分の移動方向に基づいて、グループ化されたストローク中の分岐点を特定する分岐点特定手段と、前記分岐点に基づいて、前記図形を特定する図形特定手段と、前記分岐点のドットパターン上の位置情報と、グループ化されたストロークのデータと、時間情報とに基づいて、特定した前記図形に精緻化した精緻化データを生成する精緻化データ生成手段と、を備える。
【0007】
上記のように構成された処理装置において、利用者は、電子ペンを使用して電子ペン用帳票に図形を記入する。ここで、図形とは、直線、三角形、正方形、長方形、ひし形又は円のいずれかであるとする。電子ペンは、電子ペンの移動に伴って帳票上のドットパターンを読み取り、利用者が記入した記入内容、即ち図形に関するストロークやドットパターン上の位置座標に関するデータを取得する。位置情報とは、ドットパターン上の位置座標(座標データ)のことである。さらに、電子ペンは、ストロークや位置座標に関するデータを記入情報として処理装置に送信する。ここで、ストロークとは、一筆で書かれた軌跡のことである。処理装置は、電子ペンから取得した記入情報から、まず、記入時刻に関する時間情報を抽出する。さらに、処理装置は、時間情報に基づいて、記入情報に含まれるストロークのグループ化を行う。具体的には、時系列に基づいて、1つの図形に対応するストロークをひとまとめにグループ化する。これによれば、複数のストロークから構成される図形であっても、時系列に基づいて適切なグループ化を行うことで、容易に1つの図形に対応するストロークを認識して処理することができる。なお、1つの図形に対応するストロークが1つである場合、グループ化する複数のストロークは存在しないが、グループ化と呼ぶものとする。
【0008】
また、処理装置は、記入情報に含まれるストロークから所定の長さの線分を抽出する。さらに、処理装置は、線分から、一定時刻毎のベクトルを抽出する。そして、処理装置は、複数のベクトルの移動方向に基づいて、総合的に当該線分の移動方向を特定する。特定した線分の移動方向に基づいて、処理装置は、グループ化されたストローク中に存在する分岐点を特定する。具体的には、線分の移動方向に基づいて、最短距離の点を抽出しながらストローク上の各点が同一方向に移動しているかを解析する。そして、X軸方向及び/又はY軸方向の移動に変化が見られた場合、異なる方向に移動し始めた点の最短距離の点を分岐点と特定する。さらに、処理装置は、特定した分岐点に基づいて、グループ化されたストロークに対応する図形を特定する。そして、処理装置は、時系列に基づいて、グループ化されたストロークのデータを、特定した図形となるように精緻化することでイメージデータである精緻化データを生成する。生成した精緻化データは、保存、送信等任意の処理を施すことができる。これによれば、電子ペン用帳票にフリーハンドで記入した図形の体裁を自動的に整えて、イメージ化することができる。
【0009】
上記処理装置の一態様では、前記処理装置は、前記記入情報に含まれる前記時間情報及び前記位置情報に基づいて、グループ化されたストロークの中の開始点を特定する開始点特定手段と、前記記入情報に含まれる前記時間情報及び前記位置情報に基づいて、グループ化されたストロークの中の終了点を特定する終了点特定手段と、をさらに備え、前記精緻化データ生成手段は、前記分岐点、前記開始点及び前記終了点の位置情報と、前記時間情報とに基づいて、特定した前記図形に精緻化した精緻化データを生成する。
【0010】
上記のように構成された処理装置は、時間情報及び位置情報に基づいて、グループ化されたストローク中の開始点及び終了点を特定する。具体的には、例えば、時系列に基づいて、グループ化されたストロークの中で最も早い時刻に記入された点を開始点と特定し、最も遅い時刻に記入された点を終了点と特定することが考えられる。また、直線以外の図形の場合、開始点と終了点が一致することも多いため、位置情報に基づいて、極めて近い点を開始点及び終了点と特定することも考えられる。処理装置は、このように特定した開始点、終了点及び分岐点を、時系列に基づいて直線で結ぶ等により、精緻化データを生成している。
【0011】
上記処理装置の他の一態様では、グループ化されたストローク中の分岐点の数を算出する分岐点数算出手段をさらに備え、前記図形特定手段は、グループ化されたストローク中の分岐点の数に基づいて、前記図形を特定する。これによれば、処理装置は、ストローク中の分岐点数に基づいて、自動的に図形を特定し、当該図形に精緻化したイメージデータである精緻化データを生成することができる。
【0012】
上記処理装置の他の一態様では、前記図形特定手段は、グループ化されたストローク中の分岐点の数が0である場合に、前記図形を直線であると特定し、前記精緻化データ生成手段は、グループ化されたストローク中の分岐点の数が0である場合に、前記開始点及び前記終了点の位置情報に基づいて、直線に精緻化した精緻化データを生成する。これによれば、処理装置は、グループ化されたストローク中に分岐点が存在しない場合、対応する図形は直線であると特定する。よって、開始点及び終了点を直線で結ぶことで、容易に精緻化データを生成することができる。
【0013】
上記処理装置の他の一態様では、前記図形特定手段は、グループ化されたストローク中の分岐点の数が2である場合に、前記図形を三角形であると特定し、前記精緻化データ生成手段は、グループ化されたストローク中の分岐点の数が2である場合に、前記開始点、前記終了点及び前記分岐点の位置情報と、時間情報とに基づいて、三角形に精緻化した精緻化データを生成する。これによれば、処理装置は、グループ化されたストローク中に分岐点が2つ存在する場合、対応する図形は三角形であると特定する。よって、開始点又は終了点と、2つの分岐点とを時系列により直線で結ぶことで、容易に精緻化データを生成することができる。
【0014】
上記処理装置の他の一態様では、前記帳票は、X軸と平行する横線及びY軸と平行する縦線から構成され、前記電子ペンによって図形が記入されるグリッドエリアを有しており、前記処理装置は、前記開始点、前記終了点及び前記分岐点の位置情報と、前記時間情報とに基づく線分の移動方向が、X軸又はY軸のいずれかと平行であるか否かを判定する軸判定手段をさらに備え、前記図形特定手段は、グループ化されたストローク中の分岐点の数が3であって、且つ、前記軸判定手段が平行であると判定した場合に、前記図形を正方形又は長方形であると特定し、前記精緻化データ生成手段は、グループ化されたストローク中の分岐点の数が3であって、且つ、前記軸判定手段が平行であると判定した場合に、前記開始点、前記終了点及び前記分岐点の位置情報と、前記時間情報とに基づいて、正方形又は長方形に精緻化した精緻化データを生成する。
【0015】
上記のように構成された処理装置において、電子ペン用帳票は、縦線及び横線が格子状に並んだグリッドエリアを有している。利用者は、電子ペンを使用して、電子ペン用帳票状のグリッドエリアに所定の図形を記入する。これによれば、縦線及び横線をガイドとして、フリーハンドで容易に図形を記入することができる。
【0016】
また、これによれば、処理装置は、時系列に基づいて開始点、終了点及び分岐点それぞれを結んだ全ての線分が、X軸又はY軸のいずれかと平行であるか否かを判定する。そして、処理装置は、時系列に基づいて開始点、終了点及び分岐点の間の線分の移動方向を特定する。換言すると、処理装置は、利用者が記入した図形の辺に対応する線分の移動方向を特定する。具体的に、分岐点が3つであるということは、利用者が記入する図形としては、正方形/長方形又はひし形が考えられる。そのため、処理装置は、全ての線分がX軸又はY軸のいずれかと平行であるということは、グループ化されたストロークに対応する図形は正方形/長方形であると特定する。よって、処理装置は、グループ化されたストローク中に分岐点が3つ存在し、且つ、図形の辺に対応する全ての線分の移動方向がX軸又はY軸と平行である場合、開始点又は終了点と、3つの分岐点とを時系列により直線で結ぶことで、容易に精緻化データを生成することができる。
【0017】
上記処理装置の他の一態様では、前記図形特定手段は、グループ化されたストローク中の分岐点の数が3であって、且つ、前記軸判定手段が平行ではないと判定した場合に、前記図形をひし形であると特定し、前記精緻化データ生成手段は、グループ化されたストローク中の分岐点の数が3であって、且つ、前記軸判定手段が平行ではないと判定した場合に、前記開始点、前記終了点及び前記分岐点の位置情報と、前記時間情報とに基づいて、ひし形に精緻化した精緻化データを生成する。これによれば、処理装置は、グループ化されたストローク中に分岐点が3つ存在し、且つ、図形の辺に対応する線分がX軸又はY軸と平行ではない場合、自動的に、グループ化されたストロークに対応する図形はひし形であると特定することができる。よって、開始点又は終了点と、3つの分岐点とを時系列により直線で結ぶことで、容易に精緻化データを生成することができる。
【0018】
上記処理装置の他の一態様では、前記図形特定手段は、グループ化されたストローク中の分岐点の数が3以上である場合、前記図形を円であると特定し、前記処理装置は、前記開始点、前記終了点及び前記分岐点の位置情報と、前記時間情報とに基づいて、前記円の直径を算出する直径算出手段をさらに備え、前記精緻化データ生成手段は、グループ化されたストローク中の分岐点の数が4以上である場合、前記開始点、前記終了点及び前記分岐点の位置情報と、前記時間情報と、算出した前記直径とに基づいて、円に精緻化した精緻化データを生成する。これによれば、処理装置は、グループ化されたストローク中に分岐点が4つ以上存在している場合、自動的に、グループ化されたストロークに対応する図形は円であると特定することができる。また、処理装置は、開始点、終了点及び分岐点の位置座標に基づいて円の直径を算出する。そして、処理装置は、算出した直径と、開始点又は終了点及び分岐点とに基づいて、弧を描くことにより、容易に精緻化したデータを生成することができる。
【0019】
上記処理装置の他の一態様では、前記処理装置は、円と、ひし形とを判別するための特定領域において、グループ化されたストロークの出現頻度が高いか低いかを判定する特定領域判定手段をさらに備え、前記図形特定手段は、グループ化されたストローク中の分岐点の数が3であり、前記軸判定手段が平行ではないと判定し、且つ、前記特定領域判定手段がストロークの出現頻度が低いと判定した場合に、前記図形をひし形であると特定し、前記精緻化データ生成手段は、グループ化されたストローク中の分岐点の数が3であり、前記軸判定手段が平行ではないと判定し、且つ、前記特定領域判定手段がストロークの出現頻度が低いと判定した場合に、前記開始点、前記終了点及び前記分岐点の位置情報と、前記時間情報とに基づいて、ひし形に精緻化した精緻化データを生成する。これによれば、グループ化されたストローク中の分岐点数が3であっても、特定領域における出現頻度に基づいて、容易に対応する図形がひし形であることを特定することができる。よって、的確な図形に精緻化したイメージデータを生成することができる。
【0020】
上記処理装置の他の一態様では、前記図形特定手段は、グループ化されたストローク中の分岐点の数が3であり、前記軸判定手段が平行ではないと判定し、且つ、前記特定領域判定手段がストロークの出現頻度が高いと判定した場合に、前記図形を円であると特定し、前記精緻化データ生成手段は、グループ化されたストローク中の分岐点の数が3であり、前記軸判定手段が平行ではないと判定し、且つ、前記特定領域判定手段がストロークの出現頻度が高いと判定した場合に、前記開始点、前記終了点及び前記分岐点の位置情報と、前記時間情報と、算出した直径とに基づいて、円に精緻化した精緻化データを生成する。これによれば、グループ化されたストローク中の分岐点数が3であっても、特定領域における出現頻度に基づいて、容易に対応する図形が円であることを特定することができる。よって、的確な図形に精緻化したイメージデータを生成することができる。
【0021】
上記処理装置の他の一態様では、前記帳票は、前記図形の種類を選択するために、前記電子ペンによってチェックマークが記入される選択エリアを有しており、前記処理装置は、前記選択エリアに記入された記入情報に基づいて、選択された図形の種類を特定する図形種類特定手段をさらに備え、前記図形特定手段は、選択された図形の種類と、前記分岐点とに基づいて、前記図形を特定する。これによれば、利用者が選択した図形の種類に基づいて、精緻化データを生成することができる。よって、図形の認識率を向上させることができる。
【0022】
本発明の別の観点では、前記電子ペンにより認識可能なドットパターンが印刷された電子ペン用帳票に記入された情報を処理するコンピュータにより実行されるプログラムであって、前記電子ペン用帳票に記入された1つ以上のストロークを記入情報として取得する記入情報取得手段、前記記入情報に含まれる時間情報に基づいて、1つの図形に対応する1つ以上のストロークをグループ化するグループ化手段、前記記入情報に含まれるストロークから、所定の長さの線分を抽出する線分抽出手段、前記時間情報に基づいて、前記線分から、一定時間内におけるベクトルを抽出するベクトル抽出手段、前記ベクトルの移動方向に基づいて、前記線分の移動方向を特定する移動方向特定手段、前記線分の移動方向に基づいて、グループ化されたストローク中の分岐点を特定する分岐点特定手段、前記分岐点に基づいて、前記図形を特定する図形特定手段、前記分岐点のドットパターン上の位置情報と、グループ化されたストロークのデータと、時間情報とに基づいて、特定した前記図形に精緻化した精緻化データを生成する精緻化データ生成手段、として前記コンピュータを機能させる。
【0023】
上記プログラムをコンピュータにより実行することにより、上述の処理装置を実現することができる。また、上述の処理装置の各態様も同様に実現することができる。
【0024】
本発明のさらに別の観点では、インクペンユニット及び光学的にドットパターンを読み取る読取ユニットを備える電子ペンにより記入される電子ペン用帳票であって、前記電子ペン用帳票は、X軸と平行する横線及びY軸と平行する縦線から構成され、前記電子ペンによって図形が記入されるグリッドエリアと、前記図形の種類を選択するために、前記電子ペンによってチェックマークが記入される選択エリアとを有する。
【0025】
これによれば、電子ペン用帳票は、図形が記入されるグリッドエリアと、図形の種類が選択される選択エリアとを有している。そのため、処理装置やサーバは、選択エリアに記入された記入情報に基づいて、利用者が選択した図形を特定することができる。そして、処理装置等は、特定した図形を考慮した上で、グリッドエリアに記入された記入情報に基づいて、精緻化したイメージデータである精緻化データを生成する。よって、選択エリアにより、図形の認識率を向上させると共に、的確な精緻化データを生成することを可能とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、予めグリッドが印刷されている方眼用紙にフリーハンドで記入した図形を精緻化した上でイメージ化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施の形態について説明する。まず、本発明のシステムにおいて入力デバイスとして使用される電子ペンの概要について説明する。
【0028】
[電子ペン]
図1は電子ペンの使用形態を模式的に示す図であり、図2は電子ペンの構造を示す機能ブロック図である。図1に示すように、電子ペン10は、ドットパターンが印刷された専用ペーパー20と組み合わせて使用される。電子ペン10は、通常のインクペンと同様のペン先部17を備えており、利用者は通常のインクペンと同様に専用ペーパー20上に文字などを書くことになる。
【0029】
図2に示すように、電子ペン10は、その内部にプロセッサ11、メモリ12、データ通信ユニット13、バッテリー14、LED15、カメラ16及び圧力センサ18を備える。また、電子ペン10は通常のインクペンと同様の構成要素としてインクカートリッジ(図示せず)などを有する。
【0030】
電子ペン10は、ペン先部17により専用ペーパー20上に描かれたインクの軌跡をデータ化するのではなく、専用ペーパー20上で電子ペン10が移動した軌跡座標をデータ化する。LED15が専用ペーパー20上のペン先部17近傍を照明しつつ、カメラ16が専用ペーパー20に印刷されているドットパターンを読み取り、データ化する。つまり、電子ペン10は専用ペーパー20上で利用者が電子ペン10を移動させることにより生じるストロークを画像データ又はベクトルデータとして取得することができる。
【0031】
圧力センサ18は、利用者が電子ペン10により専用ペーパー上に文字などを書く際にペン先部17に与えられる圧力、即ち筆圧を検出し、プロセッサ11へ供給する。プロセッサ11は、圧力センサ18から与えられる筆圧データに基づいて、LED15及びカメラ16のスイッチオン/オフの切換を行う。即ち、利用者が電子ペン10で専用ペーパー20上に文字などを書くと、ペン先部17には筆圧がかかる。よって、所定値以上の筆圧が検出されたときに、利用者が記述を開始したと判定して、LED15及びカメラ16を作動する。
【0032】
カメラ16は専用ペーパー20上のドットパターンを読み取り、そのパターンデータをプロセッサ11に供給する。プロセッサ11は、供給されたドットパターンから、専用ペーパー20上でのX/Y座標を算出する。
【0033】
プロセッサ11は、利用者の記述が行われる間に、筆圧の配列データ及びX/Y座標データを取得し、タイムスタンプ(時間情報)と関連付けてメモリ12に記憶していく。よって、メモリ12内には利用者の記述内容に対応するデータが時系列で記憶されていく。メモリ12の容量は例えば1Mバイト程度とすることができる。
【0034】
利用者により送信指示がなされるまでは、取得された全てのデータはメモリ12内に保持される。そして、利用者が送信指示を行うと、データ通信ユニット13により、電子ペン10と所定距離内にある端末装置25へメモリ12内のデータが送信される。基本的には、一度送信指示がなされると、電子ペン10はメモリ12内に記憶していた全てのデータを端末装置25へ送信するため、メモリ12内はクリアされる。よって、送信後にもう一度同じ情報を端末装置25へ送信したい場合には、利用者は専用ペーパー20上に再度記述を行う必要がある。なお、この場合、利用者は専用ペーパー20上にインクペンで書かれた文字などをなぞればよいことになる。
【0035】
電子ペン10自体は、送信ボタンなどの機能ボタンを備えておらず、送信指示その他の指示は、利用者が専用ペーパー20上の所定位置に設けられた専用ボックスを電子ペン10でチェックすることにより実行される。専用ボックスの位置座標には、予め送信指示が対応付けられており、プロセッサ11は専用ボックスの位置座標を受信すると、データ通信ユニット13にメモリ12内のデータを供給し、端末装置25への送信を行わせる。なお、電子ペン10は、データの送信完了を電子ペンの振動により示すことができる。
【0036】
バッテリー14は電子ペン10内の各要素に電源供給するためのものであり、例えば電子ペンのキャップ(図示せず)により電子ペン10自体の電源のオン/オフを行うことができる。
【0037】
このように、電子ペン10は利用者が専用ペーパー20上に記述した文字などに対応する座標データ及び筆圧データを取得して近傍の端末装置25へ送信する機能を有するが、電子ペン10のペン先部17は通常のインクペンとなっているため、専用ペーパー20上に記述した内容はオリジナルの原本として残るという特徴がある。即ち、紙の原本に対して記述するのと同時に、その内容を座標データなどの形態でリアルタイムに電子化することができる。
【0038】
なお、電子ペン10の標準機能によれば、電子ペン10により得られるデータは、原則として座標データ又はベクトルデータの形態であり、テキストデータではない。但し、電子ペン10は標準機能として、専用ペーパー20上に設けられた専用エリアに記述することにより、英数字に限りテキスト化する機能は備えている。
【0039】
また、電子ペン10内には、ペン自体及びその所有者に関するプロパティ情報(ペン情報及びペン所有者情報)を保持することができ、アプリケーションから参照することができる。ペン情報としては、バッテリーレベル、ペンID、ペン製造者番号、ペンソフトウェアのバージョン、サブスクリプションプロバイダのIDなどを保持できる。また、ペン所有者情報としては、国籍、言語、タイムゾーン、emailアドレス、空きメモリ容量、名称、住所、ファックス/電話番号、携帯電話番号などを保持することができる。
【0040】
なお、上記の例におけるデータ通信ユニット13では、Bluetooth(登録商標)の無線伝送、USBケーブルを使用した有線伝送、端子などの接触によるデータ伝送など、各種の方法によって電子ペン10から端末装置25へのデータ送信を行うことが考えられる。
【0041】
次に、電子ペンにより利用者が記述した内容のX/Y座標データを取得する方法について説明する。前述のように専用ペーパー20には、所定のドットパターンが印刷されている。電子ペン10のカメラ16は、利用者が専用ペーパー20上に記述したインクの軌跡を読み取るのではなく、専用ペーパー20上のドットパターンを読み取る。実際、図1に示すように、LED15による照明エリア及びカメラ16の撮影エリア(照明エリア内に位置する)は、ペン先部17が専用ペーパー20に接触する位置とはずれている。
【0042】
ドットパターンはカーボンを含む専用インキなどで印刷されており、カメラ16はその専用インキによるパターンのみを認識することができる。専用インキ以外のインキ(カーボンを含まない)により、専用ペーパー上に罫線や枠などを印刷しても、電子ペンはそれらを認識することはない。よって、専用ペーパーを利用して各種申込書などの帳票を作成する際は、専用インキ以外のインキで入力枠や罫線、注意書きなどを印刷する。
【0043】
ドットパターンは、図3に例示するように、各ドットの位置がデータに対応付けされている。図3の例では、ドットの位置を格子の基準位置(縦線及び横線の交差点)から上下左右にシフトすることにより、0〜3の2ビット情報を表示した例である。このようにして表現された情報の組合せにより、専用ペーパー上の位置座標が決定される。図4(a)に例示するように、縦横2mmの範囲内に36個のドットが格子状に配置され、これらのドットにより示されるデータの配列(図4(b))が、その専用ペーパー上の位置座標と対応付けされている。よって、電子ペン10のカメラ16が図4(a)に示すようなドットパターンを撮影すると、プロセッサ11はカメラ16から入力されるドットパターンのデータに基づいて図4(b)に示すデータ配列を取得し、それに対応する専用ペーパー上の位置座標(即ち、そのドットパターンがその専用ペーパー上のどの位置にあるのか)をリアルタイムで算出する。なお、ドットパターンを認識する最小単位は2mm×2mmであり、カメラ16は毎秒100回程度の撮影を行う。
【0044】
次に、専用ペーパーについて説明する。専用ペーパーの構造の一例を図5に示す。図示のように、専用ペーパー20は、台紙30上にドットパターン32が印刷され、その上に罫線などの図案34が印刷されている。台紙30は通常は紙であり、ドットパターン32は前述のようにカーボンを含んだ専用インキにより印刷される。また、通常のインキなどにより図案34が印刷される。ドットパターンと図案とは同時に印刷してもよいし、いずれかを先に印刷してもよい。
【0045】
図案34の例を図6に示す。図6は、ある申込書36の例であり、複数の記入欄38や送信ボックス39が印刷されている。図6には明確に図示されておらず、詳細は後述するが、実際にはドットパターンが申込書36の全面に印刷されており、その上に記入欄38や送信ボックス39が通常のインキにより印刷されている。利用者は、ドットパターンを意識することなく、従来からある申込書と同様に、電子ペン10を使用して必要事項を申込書36の各記入欄38に記入すればよい。
【0046】
専用ペーパー20上のエリアは大きく2種類のエリアに分けることができる。1つは記入エリアであり、電子ペン10による記述内容をそのまま情報として取り扱うエリアである。図6の例では複数の記入欄38がこれに該当する。もう1つは機能エレメントであり、対応するエリア内を電子ペン10でチェックした際に、予めそのエリアに対して定義されているアクション、指示などを実行するようになっている。図6の例における送信ボックス39がこれに該当する。
【0047】
送信ボックス39は前述したように電子ペン10内に記憶されているデータを近傍の端末装置25へ送信するための指示を行う際に使用される。利用者が送信ボックス39内に電子ペン10でチェックを入れると、電子ペン10が送信ボックス内のドットパターンを読み取る。当該パターンは送信指示に対応付けられており、電子ペン10内のプロセッサ11はデータ通信ユニット13にメモリ12内の記憶データの送信命令を発する。
【0048】
ドットパターンの割り当ては、通常、アプリケーション(用紙の種類)毎に行われる。即ち、ある申込書内のドットパターンは1枚の用紙の中で重複することはないが、同一の申込書には全て同じドットパターンが印刷されている。よって、利用者が電子ペン10で必要事項を入力すると、その入力事項がその申込書のどの項目に対するものであるかを、申込書上の座標データから特定することができる。
【0049】
このように、ドットパターンを印刷した専用ペーパー上に所定の図案を印刷することにより、専用ペーパーを利用した各種申込書が作成できる。利用者は電子ペン10を使用して通常の要領で必要事項を記入すれば、その電子データが自動的に取得される。
【0050】
上記の例では、ドットパターンは専用ペーパー上にカーボンを含むインキにより印刷されているが、プリンタ及びカーボンを含むインクを使用してドットパターンを通常の紙上にプリントすることも可能である。さらに、専用ペーパー上の図案も印刷ではなく、プリンタにより形成することも可能である。ドットパターンをプリンタにより紙上に形成する場合には、1枚1枚に異なるドットパターンを形成することが可能である。よって、形成されたドットパターンの違いにより、それらの用紙1枚1枚を識別し、区別することが可能となる。
【0051】
なお、本明細書においては、「印刷」の語は、通常の印刷のみならず、プリンタによるプリントも含む概念とする。
【0052】
次に、電子ペンにより取得したデータの送信処理について図2を参照して説明する。電子ペン10が取得したデータは、主として利用者が入力した事項のデータであるが、通常はそのデータの送信先であるサービスサーバがどこであるかの情報は含まれていない。その代わりに、その専用ペーパーに関するアプリケーションやサービスを特定する情報が専用ペーパー上のドットパターンに含まれており、利用者の入力作業中に専用ペーパーからその情報が取得されている。よって、電子ペン10から記入情報を受け取った端末装置25は、まず、問い合わせサーバ26に対して、その専用ペーパーに対して入力されたデータをどのサービスサーバ27へ送信すべきかの問い合わせを行う。問い合わせサーバ26は、専用ペーパー毎に、対応するサービスサーバの情報を有しており、端末装置25からの問い合わせに応じて、当該専用ペーパーに関するサービスなどを行うサービスサーバ27の情報(URLなど)を端末装置25へ回答する。それから、端末装置25は、電子ペンから取得した記入情報をそのサービスサーバ27へ送信することになる。
【0053】
なお、上記の例では端末装置25、問い合わせサーバ26及びサービスサーバ27が別個に構成されているが、これらの幾つか又は全てを1つの装置として構成することも可能である。本実施形態において後述するサーバは、問い合わせサーバ26及びサービスサーバ27を兼ねていることとしている。また、本実施形態では、記入情報には、ストロークデータや時間情報が含まれているものとする。
【0054】
[図形解析システム]
次に、本発明の図形解析システムについて説明する。図7に図形解析システム100の概略構成を示す。図7に示す処理システム100は、電子ペン10により専用ペーパーである電子ペン用帳票に記入された情報に基づいて、特定の図形に精緻化したイメージデータを作成するシステムである。具体的に、電子ペン用帳票は方眼用紙3であり、X軸と平行する横線及びY軸と平行する縦線から構成されるグリッドエリアを有している。なお、グリッドエリアは、方眼用紙3の一部であっても、全部であっても構わない。利用者は、方眼用紙3上のグリッドエリアに、直線、三角形、四角形又は円いずれかの図形をフリーハンドでラフに記入する。サーバ5は、方眼用紙3への記入情報に基づいて、利用者が記入した図形を特定し、さらに特定した図形に精緻化したイメージデータ(以下、「精緻化データ」とも呼ぶ。)を作成する。なお、本実施形態では、便宜上、直線も図形に含まれるものとする。
【0055】
図7に示すように、図形解析システム100は、端末装置25及びサーバ5がネットワーク2を通じて接続されることにより構成される。ここで、ネットワーク2の1つの好適な例はインターネットである。また、端末装置25とは、利用者が使用するパーソナルコンピュータ(以下、「PC」と呼ぶ。)や携帯電話といったネットワークを介してデータの授受が可能な端末である。
【0056】
ここで、図8及び図9を参照して、本システムによる図形解析方法の概要を述べておく。図8は、方眼用紙3が有するグリッドエリアの例である。一方、図9は、グリッドエリアにフリーハンドで記入されたデータと、記入情報に基づいて精緻化されたデータとを示す例である。
【0057】
利用者は、電子ペン10を使用して、電子ペン用帳票である方眼用紙3上に設けられたグリッドエリアに、フリーハンドでラフに図形を記入する。なお、記入する図形は、直線、三角形、四角形又は円いずれかであるものとする。方眼用紙3上に設けられたグリッドエリアは、図8に示すように、X軸と平行である横線と、Y軸と平行である縦線とから構成された格子状のエリアのことである。このようなグリッドの目盛りに従って、利用者は、フリーハンドであっても容易に図形を記入することができる。
【0058】
なお、方眼用紙3は、グリッドエリアの他に、上述の送信ボックス39を有しているものとする。
【0059】
本実施形態において、利用者が電子ペン10によりフリーハンドでグリッドエリアに記入する図形は、図9(a)に示すような、直線60a、三角形61a、正方形、長方形62a、ひし形63a及び円64aである。電子ペン10は、記入された内容に対応する記入情報を取得し、電子ペン10内のメモリに一時的に記憶した後、当該記入情報を端末装置25へ送信する。端末装置25は、取得した記入情報を、ネットワーク2を介してサーバ5へ送信する。
【0060】
サーバ5は、記入情報から、記入時刻に関する時間情報を抽出し、当該時間情報に基づいて1つの図形に対応する1つ以上のストロークをグループ化する。ここで、ストロークとは、一筆で書かれた軌跡のことである。長方形やひし形は、複数のストロークに分けて記入されることも考えられるため、サーバ5は、時間情報に基づいて、グループ化を行っている。具体的には、所定の時間以内に記入されたストロークをグループ化する等が考えられる。なお、1つの図形に対応するストロークが1つである場合、グループ化する複数のストロークは存在しないが、グループ化と呼ぶものとする。
【0061】
そして、サーバ5は、記入情報に含まれるドットパターン上の位置座標に基づいて、開始点及び終了点を特定する。具体的には、グループ化された各ストロークの開始点及び終了点を分析し、各々の方眼用紙3上で最も近い点を図形解析用の開始点及び終了点とする。なお、開始点及び終了点の特定はこれに限定されるものではなく、時間情報に基づいて、時系列的に最も早く記入された点を開始点、時系列的に最も遅く記入された点を終了点と特定することとしてもよい。また、位置座標及び時間情報に基づいて特定することとしてもよい。
【0062】
また、サーバ5は、各ストロークから所定の長さの線分を抽出する。さらに、サーバ5は、詳細は後述するが、ストロークの揺らぎを考慮するため、線分から一定時間又は一定頻度のベクトルを抽出する。そして、サーバ5は、ベクトルの移動方向に基づいて、線分の移動方向を特定する。
【0063】
サーバ5は、詳細は後述するが、線分の移動方向に基づいてストローク上の点が、同一方向に移動しているか否かを解析する。そして、サーバ5は、X軸方向及び/又はY軸方向の移動に変化がみられた場合、異なる方向に移動し始めた点の方眼用紙3上の最短距離の点を分岐点と特定する。さらに、サーバ5は、分岐点の数を算出する。
【0064】
そして、サーバ5は、時間情報、算出した分岐点数、線分の移動方向及び特定領域による判定等に基づいて、方眼用紙3に記入された図形が直線、三角形、正方形/長方形、ひし形又は円のいずれであるかを特定する。そして、サーバ5は、グループ化されたストローク中の分岐点、開始点及び終了点に基づいて、特定した図形に精緻化した精緻化データを生成する。この精緻化データとはイメージデータであり、サーバ5に保存されたり、端末装置25に送信されたりする。端末装置25は、取得した精緻化データを画面上に出力することもできる。つまり、端末装置25は、図9(a)に示すようなフリーハンドでラフに記入されたストロークのデータを精緻化して、図9(b)に示すように表示することができる。
【0065】
このように、本発明のサーバ5は、方眼用紙3の目盛りに従ってフリーハンドで記入した図形の体裁を整えて、精緻化したイメージデータを自動的に生成することができる。
【0066】
[図形]
ここで、図10乃至図14を参照して、グリッドエリアに記入された図形及び精緻化された図形について詳細に説明する。図10乃至図14は、それぞれグリッドエリアへの直線、三角形、正方形/長方形、ひし形及び円の記入例と、精緻化された図形の例である。
【0067】
まず、図10を参照し、直線について説明する。利用者は、電子ペン10を使用して、図10(a)に示すように、グリッドエリアにフリーハンドで直線60aを記入する。このとき、直線の2つの端点、即ち、図10(b)に示す開始点80及び終了点81は、グリッドエリアを構成する縦線と横線が交差する交点上に位置しなければならない。換言すると、利用者は、開始点80及び終了点81が、グリッドエリアの交点に重なるように直線60aを記入する。なお、直線60aは、グリッドエリアを構成する縦線(Y軸)又は横線(X軸)と平行である必要はない。
【0068】
サーバ5は、グループ化されたストローク中に分岐点がない場合、当該グループ化されたストロークに対応する図形は直線であると特定する。換言すると、サーバ5は、グループ化されたストローク中の線分の移動方向が全て同じ一方向である場合、当該グループ化されたストロークに対応する図形は直線であると特定する。さらに、サーバ5は、特定した開始点と終了点を結ぶことにより、直線に精緻化したイメージデータを作成する。即ち、図10(c)に示すように、開始点80及び終了点81を結んだ直線60bのイメージデータを生成する。
【0069】
次に、図11を参照し、三角形について説明する。利用者は、電子ペン10を使用して、図11(a)に示すように、グリッドエリアにフリーハンドで三角形61aを記入する。このとき、三角形61aの3つの頂点は、交点上に位置しなければならない。原則として、三角形61aを記入する場合、図11(b)に示すように、開始点82及び終了点83は一致するように記入されなければならない。換言すると、利用者は、三角形61aの3つの頂点である開始点82(終了点83)と、分岐点84と、分岐点85とが、グリッドエリアの交点に重なるように三角形61aを記入する。
【0070】
なお、三角形61aの辺は、グリッドエリアを構成する縦線(Y軸)又は横線(X軸)と平行である必要はない。三角形61aの辺とは、開始点82(終了点83)と、分岐点84と、分岐点85とを時系列に沿ってそれぞれ結ぶ線分のことである。線分の移動方向についての詳細は後述する。
【0071】
サーバ5は、グループ化されたストローク中の分岐点が2つの場合、当該グループ化されたストロークに対応する図形は三角形であると特定する。さらに、サーバ5は、特定した開始点82(終了点83)と、分岐点84と、分岐点85とを直線で結ぶことにより、三角形に精緻化したイメージデータを作成する。即ち、図11(c)に示すように、開始点82(終了点83)、分岐点84及び分岐点85を結んだ三角形61bのイメージデータを生成する。
【0072】
次に、図12を参照し、正方形/長方形について説明する。利用者は、電子ペン10を使用して、図12(a)に示すように、グリッドエリアにフリーハンドで正方形/長方形62aを記入する。このとき、長方形62aの4つの頂点は、交点上に位置しなければならない。原則として、長方形62aを記入する場合、図12(b)に示すように、開始点86及び終了点87は一致するように記入されなければならない。また、長方形62aの辺は、グリッドエリアを構成する縦線(Y軸)又は横線(X軸)のいずれかと平行でなければならない。長方形62aの辺とは、開始点86(終了点87)と、分岐点88と、分岐点89と、分岐点90とをそれぞれ結ぶ線分のことである。
【0073】
サーバ5は、グループ化されたストローク中の分岐点が3つであって、且つ、開始点86(終了点87)、分岐点88、分岐点89及び分岐点90をそれぞれ結ぶ線分が縦線(Y軸)又は横線(X軸)と平行である場合、当該グループ化されたストロークに対応する図形は長方形であると特定する。さらに、サーバ5は、特定した開始点86(終了点87)と、分岐点88と、分岐点89と、分岐点90とを時系列に沿って直線で結ぶことにより、長方形に精緻化したイメージデータを生成する。即ち、図12(c)に示すように、開始点86(終了点87)、分岐点88、分岐点89及び分岐点90を結んだ長方形62bのイメージデータを生成する。
【0074】
なお、図12では、長方形について説明しているが、辺の長さが全て同じである以外は正方形も同様であるため、便宜上説明は省略する。
【0075】
次に、図13を参照し、ひし形について説明する。利用者は、電子ペン10を使用して、図13(a)に示すように、グリッドエリアにフリーハンドでひし形63aを記入する。このとき、ひし形63aの4つの頂点は、交点上に位置しなければならない。原則として、ひし形63aを記入する場合、図13(b)に示すように、開始点91及び終了点92は一致するように記入されなければならない。なお、ひし形63aの辺は、グリッドエリアを構成する縦線(Y軸)又は横線(X軸)と平行である必要はない。ひし形63aの辺とは、開始点91(終了点92)と、分岐点93と、分岐点94と、分岐点95とをそれぞれ結ぶ線分のことである。
【0076】
サーバ5は、グループ化されたストローク中の分岐点が3つであって、且つ、開始点91(終了点92)、分岐点93、分岐点94及び分岐点95をそれぞれ結ぶ線分が縦線(Y軸)又は横線(X軸)と平行ではない場合、当該グループ化されたストロークに対応する図形はひし形であると特定する。さらに、サーバ5は、開始点91(終了点92)と、分岐点93と、分岐点94と、分岐点95とをそれぞれ時系列に沿って直線で結ぶことにより、ひし形に精緻化したイメージデータを生成する。即ち、図13(c)に示すように、開始点91(終了点92)、分岐点93、分岐点94及び分岐点95を結んだひし形63bのイメージデータを生成する。
【0077】
次に、図14を参照し、円について説明する。利用者は、電子ペン10を使用して、図14(a)に示すように、グリッドエリアにフリーハンドで円64aを記入する。このとき、円64aの直径は1目盛り単位(例えば、1cm又は2cm)でなければならない。また、円64aは、グリッドエリアを構成する縦線又は横線と4点で接していなければならない。原則として、円64aを記入する場合、図14(b)に示すように、開始点96及び終了点97は一致するように記入される。また、ひし形63aを構成する4つ以上の点が、縦線及び/又は横線に接するように記入される。
【0078】
サーバ5は、グループ化されたストローク中の分岐点が4つ以上である場合、当該グループ化されたストロークに対応する図形は円であると特定する。さらに、サーバ5は、円の直径を算出すると共に、当該直径に基づいて、開始点96(終了点97)、分岐点98、分岐点99、分岐点121及び分岐点122を弧で結ぶことにより、円に精緻化したイメージデータを生成する。即ち、14(c)に示すように、開始点96(終了点97)、分岐点98、分岐点99、分岐点121及び分岐点122を結んだ円64bのイメージデータを生成する。
【0079】
なお、利用者は原則として図形を記入する際、上述のルールに従う必要があるが、多少のずれが生じている場合、サーバ5は、ストロークの揺らぎとして開始点、終了点及び分岐点の位置座標を修正することとしてもよい。
【0080】
[特定領域]
次に、図15を参照して、特定領域について説明する。特定領域とは、グループ化されたストローク中の分岐点が3つである場合に、ひし形であるか円であるかを判別するための領域である。具体的には、図15(a)及び(b)に示す斜線の領域が特定領域である。
【0081】
図15(a)に示すように、特定領域上のストロークの出現頻度が低い場合、サーバ5は、グループ化されたストロークに対応する図形はひし形であると特定する。一方、図15(b)に示すように、特定領域上のストロークの出現頻度が高い場合、サーバ5は、グループ化されたストロークに対応する図形は円であると特定する。
【0082】
このように、サーバ5は、グループ化されたストローク中の分岐点が3つである場合、特定領域上のストロークの出現頻度に基づいて、対応する図形がひし形であるか円であるかを判別している。
【0083】
[移動方向の特定]
次に、図16を参照して、ストロークの揺らぎの考慮した移動方向の特定について詳しく説明する。上述のように、サーバ5は、ストロークから、図16に示すように、所定の長さの線分を抽出する。さらに、サーバ5は、図示のように、線分から一定時間又は一定頻度のベクトルを抽出する。抽出したベクトルの移動方向は、記入情報に含まれるストロークの位置座標及び時間情報に基づいて特定することができる。そして、サーバ5は、ベクトルの移動方向のうち、最も多い移動方向を線分の移動方向であると特定する。つまり、サーバ5は、ベクトルの移動方向を総合して、線分の移動方向を特定する。具体的に、図16の例では、真下に向いているベクトルが最も多いため、総合して線分の移動方向はY軸マイナス方向であると特定する。
【0084】
このように、サーバ5は、利用者がフリーハンドでラフに記入したストロークであっても、揺らぎを考慮して、各ストローク中の線分の移動方向を適切に特定することができる。
【0085】
[分岐点の特定]
次に、図17を参照して、分岐点の特定について詳しく説明する。
【0086】
利用者は、電子ペン10を使用し、図17(a)に示すように、左上の頂点を開始点として、ワンストロークで長方形を記入したとする。この場合、サーバ5は、ストローク中の線分の移動方向に基づいて、グリッドエリア上の最短距離の点を抽出しながら各点が同一方向に移動していることを解析し、移動に変化が見られた場合、異なる方向に移動し始めた点の最短距離の点を分岐点であると特定する。揺らぎを考慮した場合、最短距離の点に最も近いグリッドエリア上の交点を分岐点であると特定する。具体的に、図17(b)に示すように、線分131の移動方向は、上述の揺らぎを考慮すると、真下に向かっていると特定される。即ち、線分131の移動方向は、X軸において0方向に移動、Y軸においてマイナス方向に移動となる。ここで、0方向に移動とは、移動していないことを表している。一方、線分132の移動方向は、上述の揺らぎを考慮すると、右に向かっていると特定される。即ち、線分132の移動方向は、X軸においてプラス方向に移動、Y軸において0方向に移動となる。
【0087】
サーバ5は、記入情報に含まれる時間情報により、時系列に基づいて線分131と線分132の移動方向を比較することで、ストローク中の点の移動方向を解析する。上述の例では、線分131と線分132は、X軸及びY軸共に移動方向が変化していることが明らかである。よって、線分の移動方向が大きく変化した点133が分岐点となる。このとき、点133がグリッドエリアの交点上にない場合、サーバ5は、点133と最も距離が近い交点を分岐点と特定する。
【0088】
このように、サーバ5は、ストロークの移動方向や近似値線を算出することで、ストロークの移動方向が大きく変化する分岐点を特定する。
【0089】
図17は、長方形の分岐点を特定する例であるが、その他の図形(三角形、正方形、ひし形及び円)の分岐点を特定する場合も同様であるため、便宜上、説明は省略する。
【0090】
なお、分岐点の特定は、グループ化されたストローク中の開始点と終了点が一致するまで行われる。即ち、解析している点が終了点になるまで行われる。
【0091】
また、サーバ5は、位置座標及び時間情報に基づいて、開始点と終了点が誤差の範囲ではなく全く別の位置に存在する場合、図形を直線であると特定することとしてもよい。
【0092】
[サーバ]
次に、サーバ5について詳しく説明する。図18は、図形解析システム100における、特にサーバ5の内部構成を示す。図示のように、サーバ5は、図形解析プログラム101、記入情報取得機能102、グループ化機能103、開始点終了点特定機能104、ベクトル抽出機能105、移動方向特定機能106、分岐点特定機能107、分岐点数判定機能108、直線特定機能109、三角形特定機能110、軸判定機能111、正方形/長方形特定機能112、特定領域判定機能113、ひし形特定機能114、円特定機能115、精緻化データ生成機能116及び精緻化データ送信機能117を有する。なお、各機能は、サーバ5が有するCPUが予め用意されたプログラムを実行することにより実現される。
【0093】
図形解析プログラム101は、電子ペン10を使用してフリーハンドでグリッドエリアに記入された情報に基づいて、図形を特定すると共に、当該図形に基づいて精緻化した精緻化データを生成するプログラムである。
【0094】
記入情報取得機能102は、図形解析プログラム101を実行することにより、利用者が電子ペン10を使用して、方眼用紙3のグリッドエリアに記入した記入情報を取得する機能である。
【0095】
グループ化機能103は、記入情報取得機能102が取得した記入情報に含まれる時間情報に基づいて、1つの図形に対応する1つ以上のストロークをグループ化する機能である。
【0096】
開始点終了点特定機能104は、記入情報取得機能102が取得した記入情報に含まれるドットパターン上の位置座標及び時間情報に基づいて、グループ化されたストローク内の開始点及び終了点を特定する機能である。
【0097】
ベクトル抽出機能105は、記入情報から線分を抽出し、当該線分から一定時間又は一定頻度毎のベクトルを抽出する機能である。
【0098】
移動方向特定機能106は、ベクトルの移動方向に基づいて、線分の移動方向を特定する機能である。
【0099】
分岐点特定機能107は、移動方向特定機能106が特定した線分の移動方向に基づいて、グループ化されたストローク内における全ての分岐点を特定する機能である。また、分岐点特定機能107は、グループ化されたストローク内の分岐点の数を算出する機能である。
【0100】
分岐点数判定機能108は、分岐点特定機能107が算出した、グループ化されたストローク内における分岐点の数を判定する機能である。
【0101】
直線特定機能109は、分岐点数判定機能108が、グループ化されたストローク内における分岐点数が0であると判定した場合に、当該グループ化されたストロークに対応する図形が直線であると特定する機能である。
【0102】
三角形特定機能110は、分岐点数判定機能108が、グループ化されたストローク内における分岐点数が2であると判定した場合に、当該グループ化されたストロークに対応する図形が三角形であると特定する機能である。
【0103】
軸判定機能111は、分岐点数判定機能108が、グループ化されたストローク内における分岐点数が3であると判定した場合に、分岐点間を結ぶ線分がX軸又はY軸と平行であるか否かを判定する機能である。具体的に、グループ化されたストロークに対応する図形が正方形又は長方形の場合、分岐点間を結ぶ線分のうち2本の移動方向がX軸と平行となり、他の2本の移動方向がY軸と平行となるはずである。よって、軸判定機能111は、分岐点間を結ぶ線分の移動方向に基づいて、全ての線分がX軸又はY軸のいずれかと平行であるか否かを判定する機能である。
【0104】
正方形/長方形判定機能112は、軸判定機能111が、分岐点間を結ぶ線分の移動方向がX軸又はY軸のいずれかと平行であると判定した場合に、グループ化されたストロークに対応する図形が正方形又は長方形であると特定する機能である。
【0105】
特定領域判定機能113は、分岐点数判定機能108がグループ化されたストローク内における分岐点数が3と判定し、且つ、軸判定機能111が分岐点間を結ぶ線分の移動方向がX軸又はY軸のいずれかと平行ではないと判定した場合に、ストロークの特定領域上の出現頻度が高いか低いかを判定する機能である。具体的には、予め一定の出現頻度を設定しておき、グループ化されたストロークの出現頻度が当該一定の出現頻度より高いか否かで判定する。
【0106】
ひし形特定機能114は、特定領域判定機能113が特定領域上の出現頻度が低いと判定した場合に、グループ化されたストロークに対応する図形をひし形であると特定する機能である。
【0107】
円判定機能115は、特定領域判定機能113が特定領域上の出現頻度が高いと判定した場合に、グループ化されたストロークに対応する図形を円であると特定する機能である。また、円判定機能115は、分岐点数判定機能108が、グループ化されたストローク内における分岐点数が4以上であると判定した場合に、当該グループ化されたストロークに対応する図形が円であると特定する機能である。
【0108】
精緻化データ生成機能116は、特定した開始点、終了点及び分岐点のドットパターン上の位置座標に基づいて、特定した図形に精緻化した精緻化データを生成する機能である。
【0109】
精緻化データ送信機能117は、精緻化データ生成機能116が生成した精緻化データを、ネットワーク2を通じて端末装置25へ送信する機能である。
【0110】
[図形解析処理]
次に、上記の図形解析システム100により実行される図形解析処理について説明する。図19及び図20は、図形解析処理のフローチャートである。
【0111】
まず、利用者は、電子ペン10を使用して、方眼用紙3のグリッドエリアに任意の図形を記入する。このとき、利用者は、頂点は交点上といった上述のルールに従い、直線、三角形、正方形/長方形、ひし形又は円を図形として記入するものとする。図形の記入が完了すると、利用者は、方眼用紙3の送信ボックス39にチェックマークを記入することにより、記入情報を、端末装置25を介してサーバ5へ送信する。
【0112】
サーバ5は、電子ペン10から端末装置25を介して記入情報を取得する(ステップS1)。そして、サーバ5は、記入情報に含まれる時間情報に基づいて、1つの図形に対応する1つ以上のストロークをグループ化する(ステップS2)。さらに、サーバ5は、記入情報に含まれるドットパターン上の位置座標及び時間情報に基づいて、グループ化されたストローク中の開始点及び終了点を特定する(ステップS3)。
【0113】
次に、サーバ5は、グループ化されたストロークから所定の長さの線分を抽出する。このとき、サーバ5は、特定した開始点から線分の抽出を行う。さらに、サーバ5は、線分から一定時間又は一定頻度毎のベクトルを抽出する(ステップS4)。そして、サーバ5は、ベクトルの移動方向を総合して、線分の移動方向を特定する(ステップS5)。
【0114】
サーバ5は、線分の移動方向に基づいて、最短距離の点を抽出しながらストローク上の各点が同一方向に移動しているか否かを判定する。即ち、移動方向が変化しているか否かを判定する(ステップS6)。変化していない場合(ステップS6;No)、サーバ5は、ステップS8に進む。一方、変化している場合(ステップS6;Yes)、サーバ5は、分岐が発生したと判定し、異なる方向に移動し始めた点を分岐点と特定する(ステップS7)。そして、サーバ5は、判定した点が終了点であるか否かを判定する(ステップS8)。線分の移動方向の特定及び分岐点の特定は、開始点から始めて、終了点で終了することで、グループ化されたストローク全てを確認することができたといえるからである。そのため、判定した点が終了点でないと判定した場合(ステップS8;No)、サーバ5は、ステップS4乃至S8の処理を繰り返し行う。一方、判定した点が終了点であると判定した場合(ステップS8;Yes)、サーバ5は、ステップS9に進む。
【0115】
そして、サーバ5は、グループ化されたストローク中の分岐点数がいくつであるかを判定する(ステップS9)。分岐点が存在しない、即ち分岐点数が0である場合(ステップS9;0)、サーバ5は、グループ化されたストロークに対応する図形は直線であると特定する(ステップS10)。一方、分岐点数が2の場合(ステップS9;2)、サーバ5は、グループ化されたストロークに対応する図形は三角形であると特定し(ステップS11)、ステップS19へ進む。また、分岐点数が3以上である場合(ステップS9;3以上)、サーバ5は、さらに分岐点数が3であるか否かを判定する(ステップS12)。なお、便宜上、図21に示すフローチャートには記載されていないが、分岐点数が1の場合、サーバ5は、グループ化されたストロークに対応する図形を特定できないため、図形解析処理を終了する。
【0116】
分岐点数が3以上である場合(ステップS12;No)、サーバ5は、グループ化されたストロークに対応する図形は円であると特定する(ステップS17)。一方、分岐点数が3である場合(ステップS12;Yes)、サーバ5は、開始点、終了点及び分岐点の位置座標に基づいて、各点を結ぶ全ての辺がX軸又はY軸のいずれかと平行であるか否かを判定する(ステップS13)。全ての辺がX軸又はY軸のいずれかと平行である場合(ステップS13;Yes)、サーバ5は、グループ化されたストロークに対応する図形は正方形/長方形であると特定し(ステップS14)、ステップS19に進む。一方、辺がX軸又はY軸のいずれかと平行ではない場合(ステップS13;No)、サーバ5は、グループ化されたストロークの特定領域における出現頻度が高いか否かを判定する(ステップS15)。
【0117】
出現頻度が低い場合(ステップS15;No)、サーバ5は、グループ化されたストロークに対応する図形はひし形であると特定し(ステップS16)、ステップS19へ進む。一方、出現頻度が高い場合(ステップS15;Yes)、サーバ5は、グループ化されたストロークに対応する図形は円であると特定する(ステップS17)。さらに、サーバ5は、開始点、終了点及び分岐点の位置座標に基づいて、円の直径を算出する(ステップS18)。
【0118】
そして、サーバ5は、時間情報と、開始点、終了点及び分岐点の位置座標とに基づいて、特定した図形に精緻化したイメージデータである精緻化データを生成する(ステップS19)。このとき、サーバ5は、特定した図形が円であれば、直径も考慮して精緻化データを生成する。さらに、サーバ5が、生成した精緻化データを、ネットワーク2を介して端末装置25に送信する(ステップS20)ことにより、図形解析処理は完了する。精緻化データを受信した端末装置25は、保存したり、画面上に出力したりといった所定の処理を行うことができる。
【0119】
なお、本実施形態では、端末装置25とサーバ5とは別々であって、ネットワーク2を介して接続されたものとしているが、本発明はこれに限定されるものではなく、それぞれの機能を備えた1つの端末装置であることとしてもよい。
【0120】
また、本実施形態では、特に記載していないが、サーバ5は、直線、三角形、正方形/長方形及びひし形の精緻化データを方法する場合に、開始点、終了点及び分岐点の位置座標に基づいて、各図形の辺の長さを算出することとしてもよい。つまり、サーバ5は、利用者が電子ペン10を使用してフリーハンドで記入したストロークの分析を行い、グループ化されたストロークがいずれの図形であるかを特定すると共に、サイズやグリッドエリア上の位置に基づいて解析及び算出を行うことで精緻化データを生成している。
【0121】
本発明によれば、方眼用紙3上の目盛りに従ってフリーハンドで記入した図形の体裁を自動的に整えて、イメージ化することができる。このようなグリッドエリアを有する電子ペン用帳票は、工事現場等で図面を描く場合や、システムのフローチャート等を描く場合に特に有用である。
【0122】
[変形例]
上記実施形態では記載していないが、図形の認識率を向上させるため、グリッドエリアに図形を記入する前に、予め図形選択ボックスにて記入する図形を選択することも可能である。この場合、電子ペン用帳票である方眼用紙3は、例えば図21に示すように、グリッドエリアの他に図形選択エリアを有している。図形選択エリアは、図示のように、各図形のイラストにチェックボックスが対応付けられている。利用者は、任意の図形に対応するチェックボックスにチェックマークを記入した後、グリッドエリアに当該図形を記入する。そして、利用者が送信ボックス39にチェックマークを記入することで、電子ペン10内に格納された記入情報が、端末装置25を介してサーバ5へ送信される。
【0123】
サーバ5は、予め、図形選択エリア内の各チェックボックスの内容と、各チェックボックスのドットパターン上の位置座標とを対応付けた座標テーブルを有している。そのため、サーバ5は、電子ペン10から取得した記入情報に基づいて、座標テーブルを参照することにより、利用者が選択した図形が何であるかを容易に特定することができる。よって、サーバ5は、利用者が選択した図形を考慮した上で、上記実施形態のようにグループ化されたストロークに対応する図形を特定することができる。即ち、図形の認識率を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0124】
本発明によれば、フリーハンドで記入した図形を自動的に精緻化した上でイメージ化することが可能な方眼用紙として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】電子ペンの使用形態を模式的に示す図である。
【図2】電子ペンの構造を示す機能ブロック図である。
【図3】専用ペーパーに印刷されたドットパターンによる情報の表現方法を説明する図である。
【図4】ドットパターン及びそれに対応する情報の例である。
【図5】専用ペーパーにより構成される帳票の構造を示す。
【図6】電子ペン用帳票の例を示す。
【図7】図形解析システムの概略構成を示す。
【図8】グリッドエリアの例である。
【図9】フリーハンドの図形と、精緻化された図形を示す図である。
【図10】グリッドエリア上の直線を説明する図である。
【図11】グリッドエリア上の三角形を説明する図である。
【図12】グリッドエリア上の正方形/長方形を説明する図である。
【図13】グリッドエリア上のひし形を説明する図である。
【図14】グリッドエリア上の円を説明する図である。
【図15】特定領域を説明する図である。
【図16】揺らぎを考慮した線分の移動方向特定方法を説明する図である。
【図17】分岐点特定方法を説明する図である。
【図18】図7に示す図形解析システムに含まれるサーバの機能ブロック図である。
【図19】図形解析処理のフローチャートである。
【図20】図形解析処理のフローチャートである。
【図21】方眼用紙上のグリッドエリア及び図形選択エリアを示す図である。
【符号の説明】
【0126】
2…ネットワーク
3…方眼用紙
5…サーバ
10…電子ペン
11…プロセッサ
12…メモリ
13…データ通信ユニット
14…バッテリー
25…端末装置
26…問い合わせサーバ
27…サービスサーバ
100…図形解析システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子ペンにより認識可能なドットパターンが印刷された電子ペン用帳票に記入された情報を処理する処理装置において、
前記電子ペン用帳票に記入された1つ以上のストロークを記入情報として取得する記入情報取得手段と、
前記記入情報に含まれる時間情報に基づいて、1つの図形に対応する1つ以上のストロークをグループ化するグループ化手段と、
前記記入情報に含まれるストロークから、所定の長さの線分を抽出する線分抽出手段と、
前記時間情報に基づいて、前記線分から、一定時間内におけるベクトルを抽出するベクトル抽出手段と、
前記ベクトルの移動方向に基づいて、前記線分の移動方向を特定する移動方向特定手段と、
前記線分の移動方向に基づいて、グループ化されたストローク中の分岐点を特定する分岐点特定手段と、
前記分岐点に基づいて、前記図形を特定する図形特定手段と、
前記分岐点のドットパターン上の位置情報と、グループ化されたストロークのデータと、時間情報とに基づいて、特定した前記図形に精緻化した精緻化データを生成する精緻化データ生成手段と、を備えることを特徴とする処理装置。
【請求項2】
前記処理装置は、
前記記入情報に含まれる前記時間情報及び前記位置情報に基づいて、グループ化されたストロークの中の開始点を特定する開始点特定手段と、
前記記入情報に含まれる前記時間情報及び前記位置情報に基づいて、グループ化されたストロークの中の終了点を特定する終了点特定手段と、をさらに備え、
前記精緻化データ生成手段は、前記分岐点、前記開始点及び前記終了点の位置情報と、前記時間情報とに基づいて、特定した前記図形に精緻化した精緻化データを生成することを特徴とする請求項1に記載の処理装置。
【請求項3】
グループ化されたストローク中の分岐点の数を算出する分岐点数算出手段をさらに備え、
前記図形特定手段は、グループ化されたストローク中の分岐点の数に基づいて、前記図形を特定することを特徴とする請求項1又は2に記載の処理装置。
【請求項4】
前記図形特定手段は、グループ化されたストローク中の分岐点の数が0である場合に、前記図形を直線であると特定し、
前記精緻化データ生成手段は、グループ化されたストローク中の分岐点の数が0である場合に、前記開始点及び前記終了点の位置情報に基づいて、直線に精緻化した精緻化データを生成することを特徴とする請求項3に記載の処理装置。
【請求項5】
前記図形特定手段は、グループ化されたストローク中の分岐点の数が2である場合に、前記図形を三角形であると特定し、
前記精緻化データ生成手段は、グループ化されたストローク中の分岐点の数が2である場合に、前記開始点、前記終了点及び前記分岐点の位置情報と、前記時間情報とに基づいて、三角形に精緻化した精緻化データを生成することを特徴とする請求項3又は4に記載の処理装置。
【請求項6】
前記帳票は、X軸と平行する横線及びY軸と平行する縦線から構成され、前記電子ペンによって図形が記入されるグリッドエリアを有しており、
前記処理装置は、
前記前記開始点、前記終了点及び前記分岐点の位置情報と、前記時間情報とに基づく線分の移動方向が、X軸又はY軸のいずれかと平行であるか否かを判定する軸判定手段をさらに備え、
前記図形特定手段は、グループ化されたストローク中の分岐点の数が3であって、且つ、前記軸判定手段が平行であると判定した場合に、前記図形を正方形又は長方形であると特定し、
前記精緻化データ生成手段は、グループ化されたストローク中の分岐点の数が3であって、且つ、前記軸判定手段が平行であると判定した場合に、前記開始点、前記終了点及び前記分岐点の位置情報と、前記時間情報とに基づいて、正方形又は長方形に精緻化した精緻化データを生成することを特徴とする3乃至5のいずれか一項に記載の処理装置。
【請求項7】
前記図形特定手段は、グループ化されたストローク中の分岐点の数が3であって、且つ、前記軸判定手段が平行ではないと判定した場合に、前記図形をひし形であると特定し、
前記精緻化データ生成手段は、グループ化されたストローク中の分岐点の数が3であって、且つ、前記軸判定手段が平行ではないと判定した場合に、前記開始点、前記終了点及び前記分岐点の位置情報と、前記時間情報とに基づいて、ひし形に精緻化した精緻化データを生成することを特徴とする請求項6に記載の処理装置。
【請求項8】
前記図形特定手段は、グループ化されたストローク中の分岐点の数が4以上である場合、前記図形を円であると特定し、
前記処理装置は、
前記開始点、前記終了点及び前記分岐点の位置情報と、前記時間情報とに基づいて、前記円の直径を算出する直径算出手段をさらに備え、
前記精緻化データ生成手段は、グループ化されたストローク中の分岐点の数が3以上である場合、前記開始点、前記終了点及び前記分岐点の位置情報と、前記時間情報と、算出した前記直径とに基づいて、円に精緻化した精緻化データを生成することを特徴とする請求項7に記載の処理装置。
【請求項9】
前記処理装置は、
円と、ひし形とを判別するための特定領域において、グループ化されたストロークの出現頻度が高いか低いかを判定する特定領域判定手段をさらに備え、
前記図形特定手段は、グループ化されたストローク中の分岐点の数が3であり、前記軸判定手段が平行ではないと判定し、且つ、前記特定領域判定手段がストロークの出現頻度が低いと判定した場合に、前記図形をひし形であると特定し、
前記精緻化データ生成手段は、グループ化されたストローク中の分岐点の数が3であり、前記軸判定手段が平行ではないと判定し、且つ、前記特定領域判定手段がストロークの出現頻度が低いと判定した場合に、前記開始点、前記終了点及び前記分岐点の位置情報と、前記時間情報とに基づいて、ひし形に精緻化した精緻化データを生成することを特徴とする6乃至8のいずれか一項に記載の処理装置。
【請求項10】
前記図形特定手段は、グループ化されたストローク中の分岐点の数が3であり、前記軸判定手段が平行ではないと判定し、且つ、前記特定領域判定手段がストロークの出現頻度が高いと判定した場合に、前記図形を円であると特定し、
前記精緻化データ生成手段は、グループ化されたストローク中の分岐点の数が3であり、前記軸判定手段が平行ではないと判定し、且つ、前記特定領域判定手段がストロークの出現頻度が高いと判定した場合に、前記開始点、前記終了点及び前記分岐点の位置情報と、前記時間情報と、算出した直径とに基づいて、円に精緻化した精緻化データを生成することを特徴とする請求項9に記載の処理装置。
【請求項11】
前記帳票は、前記図形の種類を選択するために、前記電子ペンによってチェックマークが記入される選択エリアを有しており、
前記処理装置は、
前記選択エリアに記入された記入情報に基づいて、選択された図形の種類を特定する図形種類特定手段をさらに備え、
前記図形特定手段は、選択された図形の種類と、前記分岐点とに基づいて、前記図形を特定することを特徴とする請求項1乃至10のいずれか一項に記載の処理装置。
【請求項12】
電子ペンにより認識可能なドットパターンが印刷された電子ペン用帳票に記入された情報を処理するコンピュータにより実行されるプログラムであって、
前記電子ペン用帳票に記入された1つ以上のストロークを記入情報として取得する記入情報取得手段、
前記記入情報に含まれる時間情報に基づいて、1つの図形に対応する1つ以上のストロークをグループ化するグループ化手段、
前記記入情報に含まれるストロークから、所定の長さの線分を抽出する線分抽出手段、
前記時間情報に基づいて、前記線分から、一定時間内におけるベクトルを抽出するベクトル抽出手段、
前記ベクトルの移動方向に基づいて、前記線分の移動方向を特定する移動方向特定手段、
前記線分の移動方向に基づいて、グループ化されたストローク中の分岐点を特定する分岐点特定手段、
前記分岐点に基づいて、前記図形を特定する図形特定手段、
前記分岐点のドットパターン上の位置情報と、グループ化されたストロークのデータと、時間情報とに基づいて、特定した前記図形に精緻化した精緻化データを生成する精緻化データ生成手段、として前記コンピュータを機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項13】
インクペンユニット及び光学的にドットパターンを読み取る読取ユニットを備える電子ペンにより記入される電子ペン用帳票であって、
前記電子ペン用帳票は、X軸と平行する横線及びY軸と平行する縦線から構成され、前記電子ペンによって図形が記入されるグリッドエリアと、前記図形の種類を選択するために、前記電子ペンによってチェックマークが記入される選択エリアとを有することを特徴とする電子ペン用帳票。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2007−188159(P2007−188159A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−3701(P2006−3701)
【出願日】平成18年1月11日(2006.1.11)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】