説明

処理装置及び処理方法

【課題】可動部材及び作動機構の数を減らし、簡便な構造で被処理基板を保持する基板処理装置等を提供する。
【解決手段】回転する被処理基板1に対する処理を行う処理装置1において、被処理基板Wを保持しながら鉛直軸周りに回転する基板保持部2、3には、被処理基板Wの側周面を規制する規制部材52と、回動軸513周りに回動自在であり、被処理基板Wを規制部材52側に押し付けて保持する可動部材51と、当該可動部材51を回動させる可動部材作動機構と、を備えている。そして回動軸513には、被処理基板Wの中央部寄りの位置側に回動軸513を付勢する付勢力が付与され、ガイド部517に沿って水平方向に移動することにより大きさの異なる被処理基板Wを保持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理基板を回転させて処理を行う処理装置及び処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体ウエハ(以下、ウエハという)等の被処理基板を回転させて処理を行う処理装置として、被処理基板を一枚ずつほぼ水平に保持し、この被処理基板を垂直な回転軸を中心に回転させながら処理液を供給することにより被処理基板の表面に処理液を広げて液処理を行う枚葉式の液処理装置が知られている。
【0003】
このような枚葉式の液処理装置に被処理基板を保持する保持機構の一例として、特許文献1には、回転テーブルの周縁部の少なくとも3ヶ所に被処理基板を保持するための保持部材を設ける技術が記載されている。各保持部材はアングル形状(L字状)に形成され、曲折部に設けられた回動支点周りに回動自在となっている。この回動支点からは、上方に向けて、被処理基板の周縁部を保持する保持部が伸びだす一方、回転テーブルの下方側には、保持部材を回動支点周りに回動させるための被加圧部が伸び出している。また保持部材は、前記保持部にて被処理基板の周縁部を保持できるように回転テーブルの中央側へ向けて付勢されている。そして回転テーブルの下方側には昇降自在に構成された加圧部材が設けられており、この加圧部材を上昇させて被加圧部を加圧することにより保持部材を回動支点周りに回動させると、保持部による被処理基板の保持が解除されることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−209254号公報:段落0016〜0019、図3、図5
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし特許文献1に記載の洗浄装置では、回動支点を中心に回動する保持部材が3つ以上必要であり、それぞれの保持部材を回動させるための作動機構を持つ必要がある。そのため、装置の構成が複雑となる。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、可動部材及び作動機構の数を減らし、簡便な構造で被処理基板を保持する処理装置及び処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る処理装置は、回転する被処理基板を処理する処理装置において、
被処理基板を保持するための基板保持部と、
この基板保持部を鉛直軸周りに回転させる回転駆動部と、
前記基板保持部に固定して設けられ、被処理基板の側周面を規制する規制部材と、
前記基板保持部に設けられ、水平方向の回動軸周りに回動させて、当該被処理基板を前記規制部材側に押し付けて保持する可動部材と、
前記回動軸を保持すると共に、当該回動軸を被処理基板の中央部寄りの位置とこの位置から当該中央部とは反対側に離れた位置との間で水平方向にガイドするためのガイド部と、
前記回動軸を前記被処理基板の中央部寄りの位置側に付勢するための付勢機構と、
前記可動部材を回動させる可動部材作動機構と、を備え、
前記回動軸は、被処理基板が基板保持部に保持されるときに、前記付勢機構の付勢力に抗してガイド部に沿って移動することができることを特徴とする。
【0008】
前記処理装置は以下の特徴を備えていてもよい。
(a)前記可動部材は、回動して被処理基板の側周面に側方から接近して当該被処理基板を前記規制部材側に押し付ける上端部と、下端部とを有し、前記可動部材作動機構は、前記可動部材の下端部を押圧することにより当該可動部材を回動させること。
(b)前記基板保持部は、上部回転板と下部回転板とに上下に分割され、
前記上部回転板は、前記下部回転板に載置される位置と、当該下部回転板から浮上した位置との間で前記上部回転板を昇降させるための昇降機構を備え、
前記下部回転板には前記可動部材が前記回動軸周りに回動して被処理基板の側周面を前記規制部材に押し付けたときに、前記可動部材の下端部が収納される溝部が形成され、
前記上部回転板は、前記下部回転板に載置されるときに、前記溝部から出ている前記可動部材の下端部を押圧してこの可動部材を回動させ、当該可動部材の上端部により被処理基板を前記規制部材側に押し付けて保持させる前記可動部材作動機構であること。
(c)前記上部回転板の上面には、被処理基板を下面側から支持するための突起部が設けられ、上部回転板は、この突起部上に被処理基板を載置した状態で昇降し、前記規制部材及び可動部材に被処理基板を受け渡すこと。
(d)前記上部回転板の底面に設けられ、下方側へ向けて突出する突出部材と、前記下部回転板に設けられ、当該突出部材を挿入するための貫通穴とを備え、前記昇降機構は、当該貫通穴に挿入された突出部材を下部回転板の下面側から押し上げることにより、前記上部回転板を下部回転板から浮上した位置まで上昇させること。
(e)前記下部回転板には、当該下部回転板の上面に載置された上部回転板との間に入り込んだ処理液を集めて排出するための排出孔を備えた排出溝が設けられていること。
(f)前記排出溝は、下部回転板の上面に、周方向に沿って設けられていること。
【0009】
(g)前記可動部材は、回動して被処理基板の側周面に側方から接近して当該被処理基板を前記規制部材側に押し付ける上端部と、下端部と、前記上端部を被処理基板の側周面に押し付ける位置へ向けて付勢する第2の付勢機構とを有し、
前記可動部材作動機構は、前記第2の付勢機構の付勢力に抗して前記可動部材の下端部を押圧し、前記上端部を被処理基板の側周面に押し付ける位置から退避させること。
(h)前記可動部材は導電性の部材を含み、この導電性の部材は当該可動部材に帯電した状態で規制された被処理基板を除電するための接地回路の一部を構成していること。
(i)前記基板保持部は、下部回転板と、昇降自在に構成されると共に、この下部回転板上に載置される上部回転板とに上下に分割され、これら下部回転板の上面及び上部回転板の下面には、上部回転板が下部回転板上に載置されたときに互いに接触する領域に導電性の部材が設けられ、前記可動部材と導通して接地回路を構成すること。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、固定の規制部材と、この規制部材に対して被処理基板の側周面を押し付けて当該被処理基板を保持するために、水平方向の回動軸周りに回動自在な可動部材とを基板保持部に設け、さらに当該可動部材の回動軸を被処理基板の中央部寄りの位置とこの位置から当該中央部とは反対側に離れた位置との間で水平方向にガイドするガイド部を設けている。このように可動部材が固定の規制部材に対して被処理基板を押し付ける構造としたので基板保持部の可動部材やこれを作動させる作動機構の数を減らすことができ、装置を簡便な構造にすることができる。
また、可動軸を水平方向にガイドする構造としたことで、大きさの異なる被処理基板を保持する際にも、確実に保持すると共に被処理基板に加わるストレスを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】発明の実施の形態に係る洗浄装置の構成を示す縦断側面図である。
【図2】前記洗浄装置の内部構成を示す一部破断斜視図である。
【図3】前記洗浄装置に設けられている回転板及び支持板の構成を示す分解斜視図である。
【図4】前記支持板を回転板から浮上した位置まで上昇させた状態における洗浄装置の縦断側面図である。
【図5】前記回転板に設けられたウエハを保持するための可動部材の構成を示す拡大側面図である。
【図6】前記洗浄装置の作用を示す第1の説明図である。
【図7】前記洗浄装置の作用を示す第2の説明図である。
【図8】前記洗浄装置に設けられている可動部材の動作を示す第1の説明図である。
【図9】前記可動部材の動作を示す第2の説明図である。
【図10】前記可動部材の動作を示す第3の説明図である。
【図11】他の実施の形態に係る洗浄装置の構成を示す斜視図である。
【図12】前記他の洗浄装置に設けられている可動部材の動作を示す第1の説明図である。
【図13】前記他の洗浄装置に設けられている可動部材の動作を示す第2の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の液処理装置を、被処理基板であるウエハ(半導体ウエハ)の洗浄処理を行う洗浄装置に適用した実施の形態について説明を行う。本実施の形態に係る洗浄装置1の構成について図1〜図5を参照しながら説明する。図1の縦断側面図に示すように、洗浄装置1は鉛直軸をなす回転軸25の上部に設けられ回転自在に構成された回転板2と、上面側に設けられた突起部31にてウエハWを支持し、回転板2に載置されることにより当該回転板2と一体となって回転する支持板3と、ウエハWの側周面を規制する規制部52並びに当該規制部52(規制部材)に向けてウエハWを押し付けることにより、当該ウエハWを保持する可動部材51と、を備えている。この洗浄処理装置1において、支持板3は本実施の形態の上部回転板に相当し、回転板2は下部回転板に相当しており、これら回転板2及び支持板3によって基板保持部が構成されている。
【0013】
図2に示すように回転板2は、ウエハWよりも大径に構成された円板であり、図3、図4に示すようにその上面側には平面形状が円形の凹部23が形成されている。また回転板2の上面には、回転板2と支持板3の間に入り込んだ洗浄液(処理液)を捕集して、排出孔22から排出するための排液溝21が設けられている。排液溝21は、前記凹部23の周囲を取り囲むように周方向に沿って設けられている。排出孔22は遠心力を利用して排液溝21に捕集された洗浄液を外部へと排出できるように、排出孔22の外周面から回転板2の径方向の外側へ向けて下向きに伸び出しており、その他端は回転板2の外周面に開口している。このとき排液溝21にて捕集された洗浄液が遠心力の作用により排出孔22へと集まりやすくするため、排出孔22を他の排液溝21よりも回転板2の径方向外側に位置させてもよい。この場合には、排液溝21の平面形状は、この排出孔22が設けられている位置に向けて緩やかに突出する扁平な円形形状となる。
【0014】
回転板2の下面側の中央部には、鉛直方向に伸びる円筒状の回転軸25が接続されており、回転軸25は当該回転軸25を回転させる回転駆動部である回転モーター61に挿入されている。この回転モーター61にて回転軸25を回転させることにより、回転板2は回転軸25の上部にてほぼ水平な状態で回転することができる。
【0015】
図2に示すように支持板3は、ウエハWとほぼ同じ大きさの円板であり、図3、図4に示すように支持板3の下面側には、回転板2に設けられた既述の凹部23と嵌合する凸部32が形成されている。凸部32の高さは凹部23の深さと揃えられており、回転板2上に支持板3を載置すると、回転板2の上面と支持板3の下面とが接するようになっている。
【0016】
図2、図3に示すように支持板3の上面には、支持板3の外周縁に沿って複数本の突起部31が設けられており、これらの突起部31上にウエハWを載置することにより支持板3から浮上した位置にウエハWを支持することができる。
【0017】
回転板2の下面側に設けられた既述の回転軸25には、円筒形状の回転軸25を上下に貫通するように洗浄液供給管71が挿入されており、この洗浄液供給管71の上端側は回転板2及び支持板3を貫通して支持板3の上面まで伸びだしている。洗浄液供給管71の内部には、洗浄液供給管71の伸びる方向に沿って複数本、例えば4本の洗浄液供給路711が形成されており、洗浄液である各種の薬液やリンス液を切り替えて供給することができる。洗浄液供給管71としては、Nガス等のガスが通るガス供給路が設けられてもよい。
【0018】
図1、図3に示すように洗浄液供給管71の上端部には小型の円盤形状に形成された下面用ノズル73が設けられており、支持板3から浮上した位置に保持されているウエハWの裏面に向けて、当該下面用ノズル73の先端部に設けられている吐出孔731から洗浄液を吐出することができる。これら洗浄液供給管71や下面用ノズル73は回転板2、回転軸25及び支持板3には拘束されておらず、回転板2や支持板3が回転している場合であっても、静止した状態で洗浄液の供給を行う。洗浄液供給管71や下面用ノズル73は本実施の形態の処理液供給部に相当する。
【0019】
さらに図1、図3に示すように、前記下面用ノズル73はその上端部が傘状に広がっているので、洗浄液供給管71を貫通させるために支持板3側に形成された貫通穴の開口部を塞ぐことができる。この貫通穴が塞がれることによって、支持板3の上面側からの貫通穴内への洗浄液の進入が抑えられ、支持板3の下方側への洗浄液の流れ落ちが抑制される。
【0020】
図2、図3に示すように支持板3の上面には、洗浄液供給管71を貫通させるために当該支持板3に形成された開口部を覆うように扁平なリング形状のフィン部材72が設けられており、洗浄液供給管71はこのフィン部材72に挿入されている。フィン部材72の上面には、フィン部材72の内側から外側へ向けて旋回するように伸びる細長い羽根板状のフィン721が多数設けられており、これらのフィン721によって羽根車が形成されている。また図1に示すようにフィン部材72の上面は、傘状の下面用ノズル73にて覆われている一方で、フィン部材72の下面側の空間には、不図示の不活性ガス供給部から窒素ガスなどの不活性ガスが供給されている。
【0021】
この状態で回転板2を回転させると、このフィン部材72も支持板3と共に回転し、洗浄液供給管71とフィン部材72の隙間から支持板3の上面側へ流れ出した不活性ガスは、フィン部材72の羽根車の作用により、洗浄液供給管71の貫通部から外側へ向けて押し出されるように流れていく。こうして支持板3の内側から外側へ向けて流れる不活性ガスの流れを形成することにより、下面用ノズル73から吐出された洗浄液が支持板3とウエハWとの間に形成される隙間を流れる際に、フィン部材72の周囲へ向かう洗浄液の流れが促進される。この結果、洗浄液供給管71とフィン部材72との隙間から当該洗浄液が支持板3の下面側へと流れ込みにくくなる。
【0022】
支持板3の下面側には、図2に破線で示した3箇所に、突出部材である連結シャフト35が接続されており、各連結シャフト35は、回転板2の下面側に設けられると共に、本実施の形態の貫通穴をなす鞘部34内に挿入されている。図1に示すように各々の連結シャフト35は、支持板3の下面に固定されると共に鞘部34内に挿入された圧縮バネ36と接続されている。なお図3では連結シャフト35を上下に分割した状態で示してある。
【0023】
そして通常状態ではこの圧縮バネ36が伸びる方向へとバネの復元力が働くことにより、支持板3が下方側へと引っ張られ、図1に示す位置まで支持板が移動して回転板2上に載置される。他方、連結シャフト35を押し上げると図4に示すように圧縮バネ36が圧縮され、支持板3は回転板2から浮上した状態となる。支持板3を回転板2から浮上させると、後述する中カップ42よりも上方の高さ位置まで突起部31の先端が突出し、これにより他の機器と干渉せずに、外部の搬送アームとの間でウエハWの受け渡しを行うことが可能となる。
【0024】
図1、図4に示すように洗浄液供給管71には、連結シャフト35の下端部を押し上げることにより支持板3を昇降させるための3本の押し上げ部材65が昇降部材64を介して固定されている。さらにこの洗浄液供給管71は昇降モーター62により昇降自在に構成された連結部材63に接続されているため、この連結部材63を上昇させることにより、押し上げ部材65が上昇し、この押し上げ部材65によって連結シャフト35が押し上げられて支持板3を回転板2から浮上した位置まで移動させる。反対に押し上げ部材65を連結シャフト35の下端よりも下方側へ降下させると支持板3が降下して回転板2に載置された状態となる。この観点において昇降モーター62、連結部材63、洗浄液供給管71、昇降部材64、押し上げ部材65は、支持板3の昇降機構に相当している。
【0025】
ここで押し上げ部材65が連結シャフト35の下方側まで退避したとき、図1に示すように押し上げ部材65の全体が鞘部34から引き出された状態となり、回転板2を回転させる際に両部材34、65が干渉しないようになっている。また回転モーター61は回転板2の回転を停止する際に、押し上げ部材65の上方側に各鞘部34を位置させるように回転板2の停止位置を調整することが可能となっている。
【0026】
また本例に係る洗浄装置1は、ウエハWの上面側に洗浄液を供給するための上面用ノズル74を備えており、この上面用ノズル74はアーム75の先端部に取り付けられている。そしてこのアーム75を移動させることにより、洗浄液の供給を行うウエハW中央部の上方の供給位置と、ウエハW上から退避した退避位置との間で上面用ノズル74を移動させることができる。
【0027】
図2、図3に示すように、回転板2にはその周縁部に沿って中カップ42が設けられており、当該中カップ42はウエハWから飛散した洗浄液を受け止める役割を果たす。図1に示すように中カップ42はその縦断面が円弧をなすドーム状となっており、その上面には支持板3に支持されて昇降するウエハWを通過させるための開口部421が開口している。また中カップ42はその下端縁が回転板2の上面から浮いた状態となっており、ウエハWに供給された洗浄液は中カップ42の下端縁と回転板2の上面との間に形成される隙間から中カップ42の外へと排出される。
【0028】
さらに中カップ42の内側には、支持板3に保持されたウエハWの外周縁に沿って配置されるリング形状の内カップ41が設けられている。図1に示すように内カップ41には径方向の内側が高く、外側が低くなるように傾斜面が設けられており、中カップ42と回転板2とで囲まれた空間をこの傾斜面によって上下に分割している。そして内カップ41の上端縁は、支持板3上で保持されたウエハWとほぼ面一となる高さ位置に配置されており、また内カップ41の下端縁は回転板2の上面から浮いた状態となっていてこれらの部位41、2の間にも隙間が形成されている。
【0029】
このような構成によりウエハWの上面側に供給された洗浄液は中カップ42と内カップ41との間に形成される空間を通り、回転板2と中カップ42との間の隙間を通って中カップ42の外に排出されることとなる。またウエハWの下面側に供給された洗浄液は内カップ41と回転板2との間に形成される空間及びこれらの間の隙間を通り、さらに中カップ42と回転板2との間の隙間を通って中カップ42の外に排出されるようになっている。
【0030】
図1に示すように中カップ42及び内カップ41はボルト44によって回転板2に締結されており、回転板2を回転させると、支持板3と同様にこれら中カップ42や内カップ41も回転する構成となっている。また中カップ42の外側の領域には、回転板2や内カップ41を外側から覆うように形成された外カップ43が配置されており、中カップ42と回転板2との間から排出された洗浄液は当該外カップ43で受け止められて排液ライン431より外部へ排出することができる。
【0031】
さらに本実施の形態に係る洗浄装置1は、回転板2や支持板3と共に回転するウエハWを保持するために、ウエハWの側周面を規制する規制部52並びに当該規制部52へ向けてウエハWを押し付ける可動部材51を備えている。可動部材51は、支持板3が回転板2上に載置されたときに当該可動部材51に設けられた起立部511がウエハWの側方から近接して当該ウエハWの側周面を規制部側52に押し付ける機能を備えており、本例の洗浄装置1には例えば1個の可動部材51が設けられている。一方、規制部52は予め定められた位置に固定されていて、支持板3が回転板2に載置されたときウエハWの側周面を規制すると共に、前記可動部材51と協働してウエハWを保持する役割を果たす。本例の洗浄装置1では規制部52は支持板3の周方向に沿って、予め定められた位置に複数個設けられている。ここで規制部52は、ウエハWを保持する際に加わる力によって内カップ41が変形するのを防ぐために、ボルト44が貫通している部分に設けられるのが好ましい。
【0032】
図1、図3に示すように本例の可動部材51はL字状の部材として構成され、図5に示すようにウエハWの周縁部から中央部に向かって伸びる下端部である被押圧部515と、この被押圧部515の端部から連続して上方に伸び出した上端部である起立部511とを備えている。起立部511の先端にはウエハWの側周面と対向する位置に溝が形成された規制端512が設けられており、この溝内にウエハWの外周縁部を嵌め込むことにより当該ウエハWの側周面を規制部52側に押し付けて保持する構成となっている。但し、起立部511の先端に溝を備えた規制端512を設けることは必須ではなく、ウエハWの側周面を規制部52側へ押し付けることにより、当該ウエハWが可動部材51及び規制部52によって保持されればよい。
【0033】
この可動部材51には、回転板2に形成された後述の溝部26内に収まるように被押圧部515が設けられており、支持板3が回転板2から浮上した状態においては、被押圧部515は溝部26から飛び出す方向に付勢されている。被押圧部515のこの機能を実現するため、可動部材51は図3、図4に示すように被押圧部515における回転板2の中心部側の端部が跳ね上がるように水平方向の回動軸513周りに回動自在に軸支されている。
【0034】
図5に示すように可動部材51の側面は、回動軸513に巻き掛けられたねじりバネ状のバネ部材514と接続されており、このバネ部材514は起立部511を回転板2の径方向外側へ向けて倒す方向に付勢されており、この結果、被押圧部515の端部が跳ね上がって溝部26から飛び出した状態となる。
【0035】
このように構成された可動部材51に対し、支持板3を降下させて回転板3に載置すると、可動部材51の被押圧部515が支持板3に押圧されて溝部26内に収まる。当該被押圧部515が押圧されることにより、可動部材51が回動軸周りに回動する。この結果、起立部511が回転板2の中心部側に移動して支持板3上のウエハWを側周面から押すことになる。このとき図2に示すように起立部511は回転板2の溝部26と支持板3との間に形成される隙間から上方側へ伸び出してウエハWを規制、保持している。当該可動部材51の被押圧部515を押圧する部材として支持板3を利用して、上述のように起立部511がウエハWの側周面を押し付けるように可動部材51を回動させるという観点において、当該支持板3は本実施の形態の可動部材作動機構に相当している。
【0036】
また可動部材51の回動軸513は、回転板2の溝部26内に配置された軸受け部516によって保持されており、この軸受け部516には回動軸513を挿入するための軸受け孔517が形成されている。この軸受け孔517は水平方向に細長い形状に形成され、この軸受け孔517内で回動軸513を水平方向にガイドするガイド部の役割を果たしている。そして、保持されるウエハWの中央部寄りの位置と、この位置から当該中央部とは反対側に離れた位置との間で回動軸513を水平に移動させることにより、ウエハWの大きさの誤差(以下、加工公差という)を吸収して異なる位置にてウエハWを側周面から保持することができる。図5に示した例ではガイド部は孔状の軸受け孔517として構成されているが、当該軸受け孔517の上部側を切り欠いた切り欠き形状の軸受けにてガイド部を構成してもよい。
【0037】
ここで回動軸513に巻き掛けられたバネ部材514からは線状部518が伸びだしており、この線状部518は軸受け部516の内壁面に係止されて、保持されるウエハWの中央部寄りの位置側へ回動軸513を付勢して押し返している(図5(a))。そして、予め設定された最小径のウエハWよりも大きなウエハWを保持すると、当該ウエハWによりバネ部材514の線状部518の付勢力に抗して回動軸513が外側へと押されることになる(図5(b))。この観点においてバネ部材514及びその線状部518は、本実施の形態の付勢機構に相当している。なお図3では図示の便宜上、軸受け部516の記載は省略してある。
【0038】
また可動部材51は、カーボンブラックを添加したPEEK(PolyEtherEtherKetone、登録商標)などの導電性の部材を含んでいる。そして図1、図3に示すように、回転板2上に支持板3を載置したときに、前記被押圧部515と接触する支持板3の下面側の領域には導電性材料からなる導電部33が設けられており、さらにこの導電部33と接触する回転板2の上面側の領域にも導電性材料からなる導電部24が設けられている。そしてこの導電部24を接地することにより、帯電した状態で可動部材51に保持されるウエハWを除電するための接地回路を構成することができる。
【0039】
次に規制部52の構成について説明すると、本例に係る規制部52は図1〜図3に示すように内カップ41の上端縁部に形成されており、当該内カップ41の周方向に沿って、ボルト44が貫通している位置に設けられている。各規制部52はウエハWの側周面と対向する位置に溝が形成されおり、この溝内にウエハWの外周縁部を嵌め込むことにより当該ウエハWの側周面が規制され、保持される。ここで先に説明したように内カップ41はボルト44を介して回転板2に固定されているので規制部52は回転板2に設けられていることになる。また本規制部52においても溝を形成することは必須ではなく、当該規制部52によりウエハWの横方向のずれが規制され、可動部材51と協働してウエハWを保持することができればよい。
【0040】
ここで可動部材51と規制部52とを協働させてウエハWを保持する手法について説明すると、4個の規制部52のうち2個の規制部52は回転板2の中心(ウエハWの中央部)を挟んで規制部52の反対側の領域に配置されている。そして支持板3が回転板2に載置され起立部511を移動させてウエハWの側周面を押すと、ウエハWがこの反対側の領域に配置されている規制部52に押し付けられ、当該ウエハWが規制部52の溝内にはめ込まれる。残る2個の規制部52は互いに対向する領域に配置された可動部材51及び2個の規制部52を結ぶ方向とほぼ直交する領域に配置され、これらの方向へのウエハWの横方向へのずれを規制する。
【0041】
ここで突起部31によりウエハWを支持する高さ位置は、可動部材51、規制部52にてウエハWが保持される位置よりも低い方が好ましい。この場合にはウエハWは突起部31から可動部材51、規制部52に受け渡された状態でこれら可動部材51、規制部52に保持されることになる。ここで本実施の形態では、ウエハWの横方向へのずれを防止する作用を「規制」と表現し、この横方向のずれの規制に加えてウエハWが上下方向にもずれないように規制する作用を「保持」と表現している。
【0042】
そして下面用ノズル73より吐出される洗浄液からウエハWが受ける水圧が十分に小さくウエハWが浮き上がるおそれがない場合には、可動部材51、規制部52はウエハWの横方向のずれを規制する役割を備えていればよい。ただし各可動部材51、規制部52の溝内にウエハWの外周縁を嵌め込むことにより、洗浄液から受ける水圧が大きくなってもウエハWが上下方向にずれないように保持することができるという利点がある。また例えばウエハWの上面側からのみ洗浄液を供給し、下面側からは洗浄液を供給しないことなどにより、ウエハWが上方側へずれるおそれのない場合などには、ウエハWの側周面部を下面側から支持し、上方側へのウエハWのずれを規制しなくても本発明の「保持」に含まれる。
【0043】
以上の構成を備えた洗浄装置1の回転モーター61や昇降モーター62、また洗浄液供給管71に各種洗浄液を供給する不図示の薬液ポンプなどは、例えば図1に示すように制御部8と接続されている。制御部8は例えば図示しないCPUと記憶部とを備えたコンピュータからなり、記憶部には洗浄装置1にてウエハWの液処理を行う動作に係わる制御についてのステップ(命令)群が組まれたプログラムが記録されている。このプログラムは、例えばハードディスク、コンパクトディスク、マグネットオプティカルディスク、メモリーカード等の記憶媒体に格納され、そこからコンピュータにインストールされる。
【0044】
以上に説明した構成を備えた洗浄装置1の動作について、図6〜図10を参照しながら説明する。はじめに図6(a)に示すように各押し上げ部材65を上昇させ、連結シャフト35を押し上げて支持板3を上方位置まで移動させて、突起部31の先端を中カップ42の開口部421よりも上方側に突出させた状態で待機する。そしてウエハWを載置した状態で洗浄装置1の上方に進入してきた搬送アームを下方側へと降下させウエハWを突起部31に受け渡した後、搬送アームを洗浄装置1の上方位置から退避させる。
【0045】
こうして図6(b)に示すように支持板3の突起部31にウエハWが支持された時点においては、可動部材51はバネ部材514の作用により起立部511が回転板2の径方向外側に向けて倒れ、被押圧部515の端部が跳ね上がって溝部26から飛び出した状態になっている。
【0046】
図8(a)に示すように、可動部材51の被押圧部515の端部が溝部26から飛び出した状態となっているところで、押し上げ部材65を降下させると圧縮バネ36が伸び、支持板3が下方側へ向けて移動する。そして図8(b)に示すように溝部26から飛び出した被押圧部515に支持板3の底面が接触すると、支持板3の降下と共に被押圧部515が押圧され、可動部材51の全体が回動軸513周りに回転し、当該被押圧部515が回転板2の溝部26内に収まる。
【0047】
一方、起立部511は可動部材51の回動により垂直方向へと立ち上がり回転板2の中心部側に移動する。またウエハWは、その外周縁が規制部52の上端部に達すると、ウエハWの保持位置へ向けて徐々に低くなる傾斜を持つように形成された規制部52の規制面に案内されて保持位置に向けて移動していく。こうして、支持板3が回転板2の上に載置された状態となると、ウエハWの外周縁部に起立部511の規制端512が到達し、当該規制端512の溝内にウエハWが嵌めこまれた状態となる。
【0048】
そしてこの規制端512によってウエハWが規制部52側へ押し付けられることにより、可動部材51と反対側の領域に配置された規制部52の溝内にもウエハWの外周縁部が嵌め込まれ、これによりウエハWが可動部材51及び規制部52によって保持された状態となる(図7(a)、図8(c))。このようにウエハWを搬送する支持板3を利用して可動部材51を作動させることにより、ウエハWを搬送する動作と、可動部材51及び規制部52によってウエハWを保持する動作とが一つにまとめられ、作動機構の数を減らし、装置構成を簡単にすることができる。
【0049】
またこのとき図8(c)に示すように、可動部材51及び規制部52にてウエハWが保持される支持板3の上面からの高さhは、突起部31の高さよりも高くなっている。このため、上述の動作において突起部31上に載置されたウエハWは可動部材51及び規制部52に受け渡され、各突起部31の先端はウエハWの下面から離れた下方側の位置にて待機することになる。
【0050】
また図5を用いて説明したように可動部材51は、軸受け孔517に沿って回動軸513を水平方向に移動することができるので、加工公差に応じて異なる大きさのウエハWを水平に保持することができる。例えば図8は、ウエハWの径が小さく、可動部材51が当該ウエハWを中央部寄りの位置にて保持する場合の動作を示している。説明の便宜上、図8〜図10においては回転板2及び支持板3、規制部52や可動部材51など、ウエハWの保持に関連する部材のみを示し、各カップ41〜43や洗浄液供給管71等の記載は省略してある。また、例えば300mmのウエハWの場合、ウエハWの直径の公差は±0.2mm程度であり、軸受け孔517の水平部分の長さもこうした誤差を吸収できるように適宜設計される。但し説明の便宜上、図8〜図10の各図ではウエハWの直径の違いや細長に形成された長さ等は実際よりも誇張して示してある。
【0051】
ここで回動軸51は、バネ部材514の作用によってウエハWの中央部寄りの位置に向けて押し返されている。このとき保持されるウエハWの径が可動部材51及び規制部52にて保持可能な最小径となっている場合には、回動軸51は軸受け孔517内を水平方向に移動することなくその場で可動部材51を回動させてウエハWを保持することになる(図8(a)〜図8(c))。
【0052】
これに対して図9、図10は、ウエハWの径が図8に示した例よりも大きく、可動部材51が前記中央部寄りの位置よりも外側の位置にて当該ウエハWを保持する場合の動作を示している。図9、図10において、ウエハWに示した破線は、図8に示した径の小さなウエハWの両端位置を示している。
【0053】
図9(a)に示すように、支持板3の突起部31上に径の大きなウエハWが載置され、支持板3を下方側へ向けて移動させると、図8(b)の場合と同様に溝部26から飛び出した被押圧部515が支持板3の底面にて押圧される。この結果、図9(b)に示すように可動部材51全体が回動軸513周りに回転し、ウエハWの周縁部へ向けて起立部511が移動していく。また図9(b)に示した例においてもウエハWは規制部52の規制面によって保持位置へ向けて案内されていく。
【0054】
この状態にてさらに支持板3を降下させていくと、支持板3が回転板2上に載置される前に起立部511の規制端512がウエハWの外周縁部に到達する(図9(c))。こうしてウエハWと規制端512とが接触すると、ウエハWの中心を挟んで反対側の領域では、当該ウエハWの外周縁部は規制部52と接しているので、ウエハWの横方向への移動が規制され、起立部511は回転板2の内側へ向けて移動することができなくなる。
【0055】
そしてさらに支持板3を降下させると、被押圧部515を押し下げてもウエハWが存在することにより起立部511が回転板2の内側へ向けて移動できないことから、被押圧部515を押し下げる力は、軸受け孔517内で回動軸513を移動させる力に変換される。この結果、回動軸513はウエハWにより押され、軸受け孔517にガイドされながら、バネ部材514の線状部518から受ける付勢力に抗して外側へ向けて移動していく。
【0056】
そして支持板3が回転板2上に載置され、被押圧部515が溝部26内に収まると、図10に示すようにウエハWは可動部材51及び規制部52によって保持される。ここで、径の異なるウエハWが保持されている状態を図8(c)と図10とで比較すると、回動軸513が軸受け孔517にガイドされて移動した結果、起立部511の規制端512がウエハWと接する位置が回転板2の径方向で異なっている。
【0057】
洗浄装置1全体の動作説明に戻ると、以上に説明したようにウエハWが可動部材51及び規制部52に保持されると、図7(a)に示すように導電性の部材からなる可動部材51と支持板3の導電部33と回転板2の導電部24とが互いに接触しあって接地回路が形成される。このため搬送アームから受け渡されたウエハWが帯電している場合であっても、当該ウエハWが可動部材51と接触することにより電荷が放電されてウエハWを除電することができる。この結果、ウエハWへのパーティクル等の付着を抑制する効果がある。またこのとき押し上げ部材65はその全体が鞘部34から引き出された状態となり、回転板2を回転させても鞘部34と押し上げ部材65とは互いに干渉しない。
【0058】
しかる後、図7(b)に示すようにアーム75を動かして上面用ノズル74をウエハWの中央部の上方位置に移動させ、回転板2の回転を開始する。これにより、回転板2、支持板3、可動部材51及びウエハWや内カップ41、中カップ42が一体となって回転を開始する。このとき、既述のように支持板3の連結シャフト35が回転板2の鞘部34内に挿入された状態でこれら支持板3、回転板2が回転するので、上下に分割された保持部材(回転板2及び支持板2)を一体に回転させることが容易となる。そして回転板2の回転速度が予め設定した回転速度となったら下面用ノズル73及び上面用ノズル74から洗浄液の供給を開始する。
【0059】
洗浄処理は、例えばアルカリ性の薬液であるSC1液(アンモニアと過酸化水素水の混合液)によるパーティクルや有機性の汚染物質の除去→リンス液である脱イオン水(DeIonized Water:DIW)によるリンス洗浄→酸性薬液である希フッ酸水溶液(以下、DHF(Diluted HydroFluoric acid))による自然酸化膜の除去→DIWによるリンス洗浄のといったように、その目的に応じてウエハWの上下面に各々供給される洗浄液が順次切り替えられる。
【0060】
これにより図7(b)中に実線の矢印で示すようにウエハWの上面側、下面側に供給された洗浄液はウエハWの回転による遠心力によりこれら上面側、下面側においてウエハWの全面に広がって各々の洗浄液の目的に応じた洗浄処理が実行される。洗浄後の洗浄液は中カップ42の下端と回転板2の上面との隙間から外カップ43内に振り落とされ、当該外カップ43内で捕集されて排液ライン431を介して外部へと排出される。
【0061】
このとき仮に、回転板2と支持板3との間に少量の洗浄液が入り込んだ場合であっても、この洗浄液は排液溝21にて捕集され、排出孔22を介して外部へと排出される。このため回転モーター61や昇降モーター62が設けられている回転板2の中央部側にまで洗浄液が到達し、洗浄液供給管71と回転板2、支持板3との隙間を介して洗浄液がこれらの機器まで流れ出すといったトラブルの発生を低減することができる。
【0062】
このほか洗浄液供給管71が貫通している支持板3の中央部にはフィン部材72が設けられており、このフィン部材72はその下面側の空間に供給された不活性ガスが洗浄液供給管71とフィン部材72の隙間を介して支持板3の上面側へと流れ出してきたとき、羽根車の作用により不活性ガスを支持板3の径方向外側へと押し出す。この結果、図7(b)に破線の矢印で示すように不活性ガスの気流が形成され、この気流により、支持板3とウエハWとの間に形成される隙間を流れる洗浄液が洗浄液供給管71とフィン部材72との隙間を介して支持板3の下面側へと流れ込む可能性を小さくしている。
【0063】
こうして予め設定した時間だけ各種の洗浄液を供給したら、下面用ノズル73及び上面用ノズル74からの洗浄液の供給を停止する一方で回転板2の回転を継続する。これによりウエハWのスピン乾燥が実行されると共に、洗浄後のウエハWと接触する可動部材51、規制部52や突起部31についてもスピン乾燥が行われ、これらのピン51、52、31も乾燥した状態となる。特に突起部31は、既述のようにウエハWの下面から離れた下方側の位置にて待機し、ウエハWとは接触していない。このため、スピン乾燥時の液残りが発生しにくく、ウエハWの下面におけるウォーターマークの形成を抑制することができる。
【0064】
そして予め設定した時間だけスピン乾燥を実行したら、回転板2の回転を終了し、鞘部34が各押し上げ部材65の上方側に位置するように回転板2を停止させる。しかる後、押し上げ部材65を上昇させ支持板3が回転板2から浮上した位置まで移動させることにより、搬入時とは反対の順序で外部の搬送アームへとウエハWを受け渡され当該ウエハWについての洗浄処理が終了する。
【0065】
本実施の形態に係る洗浄装置1によれば以下の効果がある。複数の固定された規制部52側に対してウエハWの側周面を押し付けて当該ウエハWを保持するために、水平方向の回動軸513周りに回動自在な可動部材51を回転板2に1つ設け、さらに当該可動部材51の回動軸513をウエハWの中央部寄りの位置とこの位置から当該中央部とは反対側に離れた位置との間で水平方向にガイドする軸受け孔517を設けている。そして前記回動軸513をウエハWの中央部寄りの位置側に付勢し、ウエハWを保持するときに回動軸513が前記付勢力に抗して軸受け孔517に沿って外側に移動することができる。かかる構成にすることにより、基板保持部(回転板2、支持板3)に設けられた可動部材51の数を減らすことができ、また当該可動部材51を作動させる可動部材作動機構(本例では可動部材51を回動させる部材としての支持板3)を簡便な構造にすることができる。
【0066】
また、可動軸513を水平方向に移動できる構造としたことで、大きさの異なるウエハWを保持する際に、ウエハWに加わるストレスを抑えて、ウエハWの割れや、保持不良の発生を抑制しつつ、確実にウエハWを保持することができる。さらに大きさの異なるウエハWを保持する際に、可動部材51とウエハWが接触する高さの変化を抑え、大きさの異なるウエハWであっても水平に保持することができる。
【0067】
ここで本発明は、ウエハWと共に回転する可動部材51及び規制部52を利用してウエハWを保持し、保持されるウエハWの径の違いに応じて可動部材51が水平方向に移動可能とすることにより、水平にウエハWを保持する構成を備えていればよく、その具体的な構成は、図1〜図10に示した洗浄装置1の例に限られるものではない。例えば図11〜図13に示した洗浄装置1aは、回転板2上に載置される支持板3を備えず、専用の押圧部材101を利用して可動部材51を作動させる第2の実施の形態を示している。図中、第1の実施の形態に示した洗浄理装置1と共通の構成要素には、図1〜図10に示したものと同じ符号を付してある。
【0068】
図11に示した洗浄装置1aは、回転板2(下部回転板)と一体となって回転する支持板3(上部回転板)が設けられていない点と、可動部材51の被押圧部515が回転板2の下方側へ向けて伸びだしており、この被押圧部515を押圧するための専用の押圧部材101を備えている点と、が第1の実施の形態に係る洗浄装置1と異なっている。また図11では液受け用の各種カップ41〜43などの記載は省略してある。
【0069】
図11に示した洗浄装置1aは、鉛直方向に伸びる回転軸25の上端部に設けられた円板形状の回転板2の外周縁部に固定して設けられた2つの規制部材52と、同じくこの回転板2の外周縁部に設けられた1つの可動部材51とを備えている。可動部材51は、回転板2の外周縁部に固定された軸受け部516に支持され、前記の規制部材52に対して回転板2の中心を挟んで反対側の領域に配置されている。
【0070】
前記軸受け部516には、水平方向に伸びる細長い軸受け孔517が形成され、この軸受け孔517内に可動部材51の回動軸513が挿入されている点は第1の実施の形態の洗浄装置1と同様である。図12(a)に模式的に示すように、回動軸513からは上方側へ向けて上端部である起立部511が伸びだす一方、当該回動軸513からは、回転板2の下面側へ向けて下端部である被押圧部材515が斜め下方へと伸びだしている。
【0071】
ここで回動軸514にはねじりバネ状のバネ部材514が巻きかけられており、当該バネ部材514は、可動部材51を回動軸513周りに回動させ、ウエハWの側周面を規制部材52側に押し付ける位置へ向けて起立部511を倒すように付勢されている。この観点において、当該バネ部材514は、本実施の形態の第2の付勢機構に相当し、当該第2の付勢機構はウエハWの側周面を規制部材52側へ押し付けるように可動部材51を回動させる可動部材作動機構として作用することとなる。またバネ部材514から伸び出した線状部518が軸受け部516の内壁面に係止されて回動軸513をウエハWの中央部寄りの位置へ押し返すことにより、付勢機構を構成している点は、第1の実施の形態と同様である。
【0072】
そして本例の被押圧部515は、小型の筐体状に形成された軸受け部516の底面よりも下方側へ向けて伸びだしている。そしてこの被押圧部515を押し上げることにより、前記バネ部材514の付勢力に抗して起立部511をウエハWの側周面から離れる方向に移動させることができる。これにより、ウエハWを保持する際に起立部511をウエハWの保持位置から一旦、退避させてウエハWと起立部511との干渉を避けることができる。
【0073】
上述の退避動作を実行するため、本例の洗浄装置1aは、図11に示すように、前記押圧部材515を押圧し、起立部511を移動させるための押圧部材101を備えている。押圧部材101は、逆L字状に形成され、また回転板2の下方側へ伸び出した被押圧部材515のさらに下方側の位置に配置されている。これにより、前記L字の横棒部を上昇させて被押圧部515を押し上げ、また当該横棒部を降下させて被押圧部515の押し上げを解除することができる。図中、102は押圧部材101を昇降させるための昇降機構、103はその支持台である。
【0074】
ここで本例では被押圧部515を回転板2の下方側へ伸びだすように構成し、押圧部材101を昇降させることによりバネ部材514の付勢力に抗して可動部材51を回動軸513周りに回動させる構成を示したが、被押圧部515と押圧部材101との相対的な位置関係は、この例に限定されるものではない。例えば被押圧部515を垂直方向、下方側へと伸びだすように形成すると共に、押圧部材101を当該被押圧部515に対して、回転板2の径方向外側の側方位置に配置し、当該押圧部515を横方向に進退させて被押圧部515を押し戻すようにしてもよい。
以下、図12〜図13を参照しながら当該洗浄装置1aの可動部材51及び規制部材52にてウエハWを保持する動作について説明する。これらの図においても回転軸25や回転モーター61などの記載は省略してある。
【0075】
はじめに被押圧部515を押し上げていない状態では、図12(a)に示すように起立部511は、保持されるウエハWの中央部側へ向けて倒れた状態となっている。そして処理対象のウエハWが搬送アームのピンセット11上に載置された状態で回転板2の上方位置に搬送されてきたら、押圧部材101を上昇させて被押圧部515を押し上げ、回動軸513周りに可動部材51を回転させ、ウエハWを保持する位置から起立部511を一旦、退避させる(図12(b))。
【0076】
しかる後、ウエハWを降下させ、当該ウエハWの外周縁が規制部材52の上端部に設けられた規制面に案内されて保持位置へ向けて移動する高さ位置に到達したら、押圧部材101を降下させていく。すると、バネ部材514の作用により、可動部材51が回動軸513周りに回動し、起立部511がウエハWの外側の位置から中央部寄りの位置へ向けて移動していく。そしてウエハWの外周縁部に起立部511の規制端512が到達すると、図13(a)に示すように当該規制端512の溝内にウエハWが嵌めこまれた状態となる。
【0077】
この状態で引き続き押圧部材101を降下させると、起立部511は回転板2の内側へ向けて移動できないことから、起立部511を倒す方向へ働くバネ部材514の力は、軸受け孔517内で回動軸513を移動させる力に変換される。この結果、線状部518が回動軸513を押し返す力より、バネ部材514のねじりバネの復元力が大きい場合には、回動軸513はウエハWにより押され、軸受け孔517にガイドされながら、バネ部材514の線状部518から受ける付勢力に抗して外側へ向けて移動していく。
【0078】
しかる後、押圧部材101が被押圧部材515の下方位置まで退避して、その押圧状態を解除すると、バネ部材514の復元力と当該バネ部材514mの線状部518が回動軸514を押し返す力とがバランスする位置にて回動軸514の移動が停止する(図13(a))。本例のバネ部材514は、起立部511がほぼ垂直方向に立ち上がる位置にてこれらの力がバランスするように調節されている。この結果、基板保持部である回転板2の可動部材51の数を減らすことができた上、水平姿勢でウエハWに加わるストレスを抑制しつつ保持することができる。保持されたウエハWは、回転板2と共に回転させながら、ウエハWの下面(裏面)へ向けて吐出孔731から洗浄液を吐出することにより洗浄が行われる。
【0079】
以上、第1、第2の実施の形態に係る洗浄装置1、1aを例に挙げて、回動軸513が水平方向に移動可能な可動部材51及び規制部52(規制部材)を利用してウエハWを保持する発明の実施の形態を説明してきたが、可動部材51の起立部511を径方向外側(または内側)へと倒す手法は、バネ部材514を用いる場合に限定されない。第1の実施の形態に係る洗浄装置1を例にとると、被押圧部515の下面と溝部26内の回転板2の上面とに各々同極の磁石を設けてもよい。これらの磁石を互いに反発させることにより、被押圧部515が支持板3によって押下されていない状態で可動部材51がバネ部材514周りに回転し、起立部511を回転板2の径方向外側へ向けて倒すことができる。
また例えば起立部511の上端部に、被押圧部515とは反対の方向に負荷を加えるカウンターウェイトを設け、当該カウンターウェイトの作用により可動部材51をバネ部材514周りに回転させて起立部511を回転板2の径方向外側へ向けて倒してもよい。
【0080】
そして図1に示した洗浄装置1においては下面用ノズル73及び上面用ノズル74を用いてウエハWの上下両面に洗浄液を供給可能な構成を示したが、ウエハWの下面側だけまたは上面側だけに洗浄液を供給して洗浄処理を行ってもよいことは勿論である。
また本発明の洗浄装置を用いて処理可能な被処理基板はウエハWなどの円形基板に限定されるものではなく、FPD基板などの角型基板であってもよい。この場合において角型基板の径方向とは、角型基板の対向する2辺と直交する方向と定義し、可動部材51の起立部511は例えば当該角型基板の1辺と直交する方向へ向けて外側へ倒れることにより、溝部26から被押圧部515を飛び出させる構成とする場合などが考えられる。
【0081】
これらに加えて規制部52は図1〜図3を用いて説明したように回転板2に設ける場合に限定されるものではなく、支持板3に設けてもよい。また回転板2または支持板3の何れか一方に複数個の規制部52を設ける場合だけではなく、回転板2、支持板3の双方に規制部52を設け、これら規制部52と可動部材51とを協働させてウエハWを規制し、保持してもよい。また可動部材51の設置個数について、上述の各洗浄装置1、1aでは装置構成を簡素化する観点などから可動部材51を1つだけ備えた例について説明したが、すべてを可動部材51で構成してウエハWを保持するのでなければ、可動部材51は複数備えられてもよい。
【0082】
そして可動部材作動機構は、上端部(起立部511)及び下端部(被押圧部515)を備えた可動部材51の下端部を押圧することにより可動部材51を回動させる図1に示す支持板3や図11に示す押圧部材101にて構成する場合に限定されない。例えば回動軸513から上方に伸びる起立部511のみを備える可動部材51に、回動軸513を回動させるモーターを設けて可動部材作動機構としてもよい。
【0083】
この他、本発明を適用可能なプロセスは、既述の実施の形態中に示した洗浄装置1の例に限られるものではない。例えばウエハWの支持板3(及び回転板2)に支持されたウエハWを回転させながら当該ウエハWの下面にエッチング液を供給し、ウエハWの下面側に形成された不要な膜を除去するエッチング装置である液処理装置にも本発明は適用することができる。更には、ウエハWの上面側にレジスト膜を形成するためのレジスト液や露光後のレジスト膜を現像するための現像液などを塗布する塗布装置である液処理装置に本発明の可動部材51並びに規制部材52を適用してもよい。これらに加えて本発明は、液処理装置へ適用する場合に限定されるものではない。例えば、上面が液体により濡れたウエハWを基板保持部にて保持し、当該ウエハWを鉛直軸周りに回転させてスピン乾燥を行う処理装置にも適用することが可能である。
【符号の説明】
【0084】
W ウエハ
1 洗浄装置
2 回転板
25 回転軸
26 溝部
3 支持板
31 突起部
35 連結シャフト
51 可動部材
511 起立部
513 回動軸
514 バネ部材
515 被押圧部
516 軸受け部
517 軸受け孔
52 規制部
61 回転モーター
62 昇降モーター
73 下面用ノズル
74 上面用ノズル
8 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転する被処理基板を処理する処理装置において、
被処理基板を保持するための基板保持部と、
この基板保持部を鉛直軸周りに回転させる回転駆動部と、
前記基板保持部に固定して設けられ、被処理基板の側周面を規制する規制部材と、
前記基板保持部に設けられ、水平方向の回動軸周りに回動させて、当該被処理基板を前記規制部材側に押し付けて保持する可動部材と、
前記回動軸を保持すると共に、当該回動軸を被処理基板の中央部寄りの位置とこの位置から当該中央部とは反対側に離れた位置との間で水平方向にガイドするためのガイド部と、
前記回動軸を前記被処理基板の中央部寄りの位置側に付勢するための付勢機構と、
前記可動部材を回動させる可動部材作動機構と、を備え、
前記回動軸は、被処理基板が基板保持部に保持されるときに、前記付勢機構の付勢力に抗してガイド部に沿って移動することができることを特徴とする処理装置。
【請求項2】
前記可動部材は、回動して被処理基板の側周面に側方から接近して当該被処理基板を前記規制部材側に押し付ける上端部と、下端部とを有し、前記可動部材作動機構は、前記可動部材の下端部を押圧することにより当該可動部材を回動させることを特徴とする請求項1に記載の処理装置。
【請求項3】
前記基板保持部は、上部回転板と下部回転板とに上下に分割され、
前記上部回転板は、前記下部回転板に載置される位置と、当該下部回転板から浮上した位置との間で前記上部回転板を昇降させるための昇降機構を備え、
前記下部回転板には前記可動部材が前記回動軸周りに回動して被処理基板の側周面を前記規制部材に押し付けたときに、前記可動部材の下端部が収納される溝部が形成され、
前記上部回転板は、前記下部回転板に載置されるときに、前記溝部から出ている前記可動部材の下端部を押圧してこの可動部材を回動させ、当該可動部材の上端部により被処理基板を前記規制部材側に押し付けて保持させる前記可動部材作動機構であることを特徴とする請求項2に記載の処理装置。
【請求項4】
前記上部回転板の上面には、被処理基板を下面側から支持するための突起部が設けられ、上部回転板は、この突起部上に被処理基板を載置した状態で昇降し、前記規制部材及び可動部材に被処理基板を受け渡すことを特徴とする請求項3に記載の処理装置。
【請求項5】
前記上部回転板の底面に設けられ、下方側へ向けて突出する突出部材と、前記下部回転板に設けられ、当該突出部材を挿入するための貫通穴とを備え、前記昇降機構は、当該貫通穴に挿入された突出部材を下部回転板の下面側から押し上げることにより、前記上部回転板を下部回転板から浮上した位置まで上昇させることを特徴とする請求項3または4に記載の処理装置。
【請求項6】
前記下部回転板には、当該下部回転板の上面に載置された上部回転板との間に入り込んだ処理液を集めて排出するための排出孔を備えた排出溝が設けられていることを特徴とする請求項3ないし5のいずれか一つに記載の処理装置。
【請求項7】
前記排出溝は、下部回転板の上面に、周方向に沿って設けられていることを特徴とする請求項6に記載の処理装置。
【請求項8】
前記可動部材は、回動して被処理基板の側周面に側方から接近して当該被処理基板を前記規制部材側に押し付ける上端部と、下端部と、前記上端部を被処理基板の側周面に押し付ける位置へ向けて付勢する第2の付勢機構とを有し、
前記可動部材作動機構は、前記第2の付勢機構の付勢力に抗して前記可動部材の下端部を押圧し、前記上端部を被処理基板の側周面に押し付ける位置から退避させることを特徴とする請求項1に記載の処理装置。
【請求項9】
前記可動部材は導電性の部材を含み、この導電性の部材は当該可動部材に帯電した状態で規制された被処理基板を除電するための接地回路の一部を構成していることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか一つに記載の液処理装置。
【請求項10】
前記基板保持部は、下部回転板と、昇降自在に構成されると共に、この下部回転板上に載置される上部回転板とに上下に分割され、これら下部回転板の上面及び上部回転板の下面には、上部回転板が下部回転板上に載置されたときに互いに接触する領域に導電性の部材が設けられ、前記可動部材と導通して接地回路を構成することを特徴とする請求項9に記載の液処理装置。
【請求項11】
回転する被処理基板を処理する処理方法において、
水平方向の回動軸周りに回動自在に設けられた可動部材を回動させる可動部材作動工程と、
基板保持部に固定して設けられた規制部材と、前記回動部材作動工程にて回動した可動部材とにより、被処理基板の側周面を保持する基板保持工程と、
前記基板保持部にて被処理基板を保持するときに、被処理基板の中央部寄りの位置に向けて付勢されている前記回動軸が、水平方向に形成されているガイド部に沿って移動することができる軸移動工程と、を含むことを特徴とする処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−4320(P2012−4320A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−137611(P2010−137611)
【出願日】平成22年6月16日(2010.6.16)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】