説明

処理装置

【課題】より少ない始動準備時間にて利用することのできる処理装置を提供する。
【解決手段】貯液槽11から吐出ヘッドユニット110まで処理液Wが供給され、吐出ヘッドユニット110から吐出される処理液Wにて前記被処理物50の表面を処理する処理装置であって、貯液槽11からの処理液Wが吐出ヘッドユニット110から吐出されるまでの間に、当該処理液W中に微細なバブルを生成するバブル生成機構13、15を有するように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細なバブルを含有する液体を被処理物の表面に与えて当該被処理物の表面を処理する処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、超微細バブルを含む液体を物体表面の洗浄等の処理に利用することが考えられている。超微細バブルと液との界面の電位が洗浄効果や酸化作用を促し、また、物体表面に付着した超微細バブルが破裂するときのエネルギーが物体表面から汚れの剥離に寄与するとされている。なお、この超微細バブルは、そのサイズが小さくなるに従ってマイクロバブル、マイクロナノバブル、ナノバブルと呼ばれる。
【0003】
従来、このような超微細バブルを利用した洗浄装置が提案されている(特許文献1参照)。この洗浄装置では、洗浄液貯蔵タンク内にマイクロバブル生成装置が設けられ、マイクロバブル発生装置が洗浄液貯蔵タンク内の洗浄液中にマイクロバブルと呼ばれる微細なバブルを生成している。そして、洗浄液貯蔵タンク内の洗浄液中にマイクロバブルが満たされた状態になると、洗浄液貯蔵タンクからポンプによって微細バブル含有の洗浄液がスプレーノズルに供給され、スプレーノズルからその洗浄液が被洗浄物であるシリコンウェハの表面に噴出される。
【0004】
このような洗浄装置によれば、洗浄液中に含まれる超微細なバブル(マイクロバブル)の洗浄作用や酸化作用によって、シリコンウェハ(被洗浄物)の表面に付着した不純物に対する洗浄力を向上させることができるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−54792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来の洗浄装置では、洗浄液貯蔵タンク内に貯蔵された大量の洗浄液中に微細なバブルが満たされるまで、その洗浄液を洗浄に利用することができないため、その始動準備に多くの時間を要してしまう。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、より少ない始動準備時間にて利用することのできる処理装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る処理装置は、貯液槽から吐出ヘッドユニットまで処理液が供給され、該吐出ヘッドユニットから吐出される処理液にて前記被処理物の表面を処理する処理装置であって、前記貯液槽からの処理液が前記吐出ヘッドユニットから吐出されるまでの間に、当該処理液中に微細なバブルを生成するバブル生成機構を有する構成となる。
【0009】
このような構成により、貯液槽からの処理液が吐出ヘッドユニットから吐出されるまでの間に、当該処理液中に微細なバブルが生成されるようになるので、微細なバブルを含有する処理液を貯めておかなくても被処理物の表面に微細なバブルを含有する処理液を与えることができるようになる。
【0010】
本発明に係る処理装置において、前記バブル生成機構は、前記貯液槽からの処理液中に気体を溶融させて気体溶存処理液を生成する機構と、気体溶存処理液を加圧して前記吐出ヘッドユニットに向けて供給する機構と、前記気体溶存処理液の加圧状態を開放して当該処理液中に微細なバブルを生成する圧力開放機構とを有するように構成することができる。
【0011】
このような構成により、処理液が貯液槽から吐出ヘッドユニットまで供給され、該吐出ヘッドユニットから処理液が吐出されるまでの間に、気体溶存処理液が生成され、その気体溶存液が加圧された状態から開放されることによって微細なバブルを含有する処理液を生成することができる。
【0012】
また、本発明に係る処理装置において、前記吐出ヘッドユニットは、前記圧力開放機構を有し、前記吐出ヘッドユニットに加圧供給される気体溶存処理液から微細なバブルを含む処理液を生成し、該処理液を吐出するように構成することができる。
【0013】
このような構成により、加圧状態の気体溶存処理液が供給される吐出ヘッドユニットにおいて、微細なバブルを含有する処理液が生成され、その処理液が当該吐出ヘッドユニットから吐出される。
【0014】
また、本発明に係る処理装置において、前記吐出ヘッドユニットは、処理液を貯める処理液貯留部と、処理液貯留部に貯められた処理液を吐出するノズルと、前記加圧供給される気体溶存処理液を前記処理液貯留部に導くオリフィスの形成された前記圧力開放機構としての処理液導入部とを有し、加圧供給される前記気体溶存処理液が前記処理液導入部のオリフィスを通過するときにその加圧状態が開放されるように構成することができる。
【0015】
このような構成により、加圧状態の気体溶存処理液が処理液導入部に形成されたオリフィスを通って処理液貯留部に導入される際に当該処理液中に微細なバブルが生成され、その微細なバブルを含有する処理液が一時的に処理液貯留部に貯められる。そして、その処理液貯留部に貯められた微細なバブルを含有する処理液がノズルから吐出される。
【0016】
更に、本発明に係る処理装置において、前記吐出ヘッドユニットは、前記加圧供給される気体溶存処理液をその加圧状態を維持しつつ貯める処理液貯留部と、前記処理液貯留部の気体溶存処理液を加圧状態を開放しつつ吐出する前記圧力開放機構としてのノズルとを有し、前記ノズルから前記気体溶存処理液が吐出されつつ該処理液中に微細なバブルが生成されるように構成することができる。
【0017】
このような構成により、加圧状態の気体溶存処理液が処理液貯留部に一時的に貯められ、該処理液貯留部の気体溶存処理液がその加圧状態が開放されつつノズルから吐出する。このノズルから気体溶存処理液が吐出する際に、前記加圧状態の開放によって微細なバブルが生成され、該微細なバブルを含有する処理液がノズルから吐出されることになる。
【0018】
また、本発明に係る処理装置において、前記気体溶存処理液が前記圧力開放機構に加圧供給される前に当該気体溶存処理液から異物を除去するフィルタを有するように構成することができる。
【0019】
このような構成により、気体溶存処理液の加圧状態が開放されて微細なバブルが生成される前にフィルタにて異物が除去されるので、フィルタにて異物とともに生成された微細なバブルが除去されることがない。
【0020】
更に、本発明に係る処理装置において、前記吐出ヘッドユニットは、前記ノズルから吐出される処理液と高圧気体とを混合して送出する二流体ツールとして構成されることができる。
【0021】
このような構成により、吐出ヘッドユニットから微細なバブルを含有した処理液を高圧気体と混合して霧状にして被処理物の表面に与えることができるようになる。
【0022】
また、本発明に係る処理装置において、前記貯液槽からの処理液に溶融させるべき気体を当該処理液に供給する気体供給機構と、前記処理液中に溶融する気体の量を検出する溶融気体検出手段と、該溶融気体検出手段にて検出される前記処理液中に溶融する気体の量を表す情報を出力する手段とを有する構成とすることができる。
【0023】
このような構成により、処理液中に溶存する気体の量を表す情報が出力されるので、その出力された情報からユーザは、現在処理液中に溶存する気体の量が適量の微細バブルを発生させるために適したものであるか否かを判断することができる。そして、その判断に基づいてユーザが気体の供給量を調整する作業を行うことができるようになる。
【0024】
前記気体の量を表す情報を出力する手段は、その情報がユーザに提供できるものであれば特に限定されるものではなく、その情報を表示するもの、その情報をプリントアウトするもの、あるいは、その情報を音声出力するものとすることができる。
【0025】
更に、本発明に係る処理装置において、前記貯液槽からの処理液に溶融させるべき気体を当該処理液に供給する気体供給機構と、前記処理液中に溶融する気体の量を検出する溶融気体検出手段と、該溶融気体検出手段にて検出される前記処理液中に溶融する気体の量に基づいて前記気体供給機構から前記処理液に供給される気体の量を制御する制御手段とを有する構成とすることができる。
【0026】
このような構成により、処理液中に溶融される気体の量に基づいて当該処理液に供給される気体の量を制御することができるので、処理液中に溶存する気体の量を考慮した量の気体を供給することができる。
【0027】
前記溶融気体検出手段にて検出される前記処理液中に溶融する気体の量に基づいた前記気体供給機構から前記処理液に供給される気体の量の制御は、バブル生成機構にて発生させるべき微細バブルの状況に応じて決めることができる。例えば、処理液中の溶融される気体の量(検出される量)が所定範囲内となるように処理液に供給する気体の量を制御することにより、バブル生成機構に供給される処理液中に溶存する気体の量が安定したものとなる。その結果、バブル生成機構にて処理液中に生成される微細バブルの量がより安定したものとなり得る。また、処理液中の溶存される気体が過飽和の状態になるように処理液に供給する気体の量を制御することもできる。この場合、バブル発生機構にて常に最大の量の微細バブルを処理液中に発生させることができるようになる。
【0028】
また、本発明に係る処理装置において、前記気体供給機構から前記処理液に供給される気体は酸素であり、前記溶融気体検出手段は前記処理液中に溶融する酸素の濃度を検出する溶存酸素濃度センサである構成とすることができる。
【0029】
更に、本発明に係る処理装置において、前記気体供給機構から前記処理液に供給される気体は酸素以外の気体であり、前記溶融気体検出手段は前記処理液中に溶融する酸素の濃度を検出する溶存酸素濃度センサであり、前記制御手段は、前記溶存酸素濃度センサにて検出される酸素の濃度に基づいて前記気体供給機構から前記処理液に供給される酸素以外の気体の量を制御する構成とすることができる。
【0030】
このような構成により、処理液内に溶存する酸素以外の気体専用の溶存気体濃度センサがなくても、当該気体の処理液中の濃度の大小が当該処理液中の相対的な酸素濃度の大小に影響を与えることから、溶存酸素濃度センサにて前記処理液中に溶存する前記酸素以外の気体の濃度を検出できるので、より広範な種類の気体を利用することができるようになる。
【発明の効果】
【0031】
本発明に係る処理装置によれば、貯液槽からの処理液が吐出ヘッドユニットから吐出されるまでの間に当該処理液中に微細なバブルが生成されて、微細なバブルを含有する処理液を貯めておかなくても被処理物の表面にその処理液を与えることができるので、より少ない始動準備時間にて利用することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る処理装置の構成を示す図である。
【図2】図1に示す処理装置に用いられる吐出ヘッドユニットの内部構造の一例を示す正面断面図である。
【図3】図1に示す処理装置に用いられる吐出ヘッドユニットの内部構造の一例を示す側面断面図である。
【図4】図1に示す処理装置に用いられる吐出ヘッドユニットの内部構造の他の一例を示す正面断面図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係る処理装置の構成を示す図である。
【図6】図5に示す処理装置における制御系の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0034】
本発明の第1の実施の形態に係る処理装置は、図1に示すように構成される。この処理装置は、被洗浄物であるガラス基板を洗浄する基板洗浄装置である。
【0035】
図1に示す基板洗浄装置では、洗浄液W(例えば、純水)が貯留される貯液槽11の排出口に送通管12の一方の端部が接続され、送通管12の他方の端部がポンプ14の入力口に接続されている。送通管12のポンプ14に至るまでの所定部位にガス供給部13からの気体(例えば、窒素ガス、酸素ガス等)が噴射供給される。ポンプ14の出力口に接続される送通管は高圧槽15に接続されている。高圧槽15は、送通管12を通して供給されるバブル含有の洗浄液Wを高圧に維持して一時的に貯える。バブル含有の洗浄液Wが高圧槽15にて高圧状態に保持される間、バブルを形成する気体が洗浄液W中に溶融して洗浄液W中の気体濃度が上昇する。すなわち、高圧槽15にて気体溶存洗浄液Wが生成される。
【0036】
洗浄室100内には、洗浄液Wを下方に向けて吐出する吐出ヘッドユニット110が設置され、被洗浄物であるガラス基板50が吐出ヘッドユニット110に対向するようにその下方に配置されている。ガラス基板50は、吐出ヘッドユニット110に対向して設置されるターンテーブル上に載置されて回転させられるものであっても(スピン処理装置)、搬送機構によって吐出ヘッドユニット110の下方を所定の速度で移動するものであってもよい。
【0037】
前述した高圧槽15と吐出ヘッドユニット110とが送通管16によって接続されている。送通管16内には異物を除去するためのフィルタ17が設けられている。高圧槽15から気体溶存洗浄液Wが送通管16を通って吐出ヘッドユニット110に加圧供給される。吐出ヘッドユニット110は、その詳細な構造については後述するが、いわゆる二流体ツールの構造となっており、エア導入管111を通して導入される高圧エアによって送通管16を通して加圧供給される洗浄液Wを霧状にして噴出するようにしている。
【0038】
また、洗浄室100において、ガラス基板50の下方に、受け容器120が設置されており、ガラス基板50の洗浄に利用された洗浄液Wが受け容器120にて回収されるようになっている。そして、受け容器120には貯液槽11に向けて延びる送通管18が接続されており、受け容器120に回収された洗浄液Wが、送通管18を通して貯液槽11に戻され、再度洗浄に利用できるようになっている。
【0039】
前述した吐出ヘッドユニット110は、図2及び図3に示すように構成されている。なお、図2は、吐出ヘッドユニット110の内部構造を示す正面断面図であり、図3は、吐出ヘッドユニット110の内部構造を示す側面断面図である。
【0040】
図2及び図3において、吐出ヘッドユニット110は、高圧エアを貯めるエアタンク部114と洗浄液Wを貯める洗浄液貯留部115とを有している。吐出ヘッドユニット110には、洗浄液貯留部115から下方に向けて延びる複数のノズル117が形成され、エアタンク部114から洗浄液貯留部115の外周を通って複数のノズル117の先端から外方に開放するようにエア通路116が形成されている(図3参照)。
【0041】
吐出ヘッドユニット110の外壁部にはエアタンク部114と外部とを連通させるエア導入口112が形成され、エア導入口112にエア導入管111(図1参照)の端部が接続されている。これにより、エア導入管111を通してエアタンク部114に高圧エアが供給可能となっている。また、吐出ヘッドユニット110は、気体溶存洗浄液Wの導入部113を有し、導入部113には、複数のオリフィス113aが形成されている。そして、送通管16(図1参照)の端部が導入部113に接続され、送通管16を通って加圧供給される気体溶存洗浄液Wが複数のオリフィス113aを通って洗浄液貯留部115に導入されるようになっている。
【0042】
次に、前述した構造の基板洗浄装置の動作について説明する。
【0043】
ポンプ14が駆動されると、貯液槽11からの洗浄液Wが送通管12を通ってポンプ14の入力口に向かって流れる。その過程で、ガス供給部13からの気体が送通管12内の洗浄液Wに噴射供給され、送通管12を流れる洗浄液Wは、バブルが混合されたバブル含有洗浄液Wとなってポンプ14に引き込まれていく。そして、ポンプ14から出たバブル含有洗浄液Wが高圧槽15に供給される。高圧槽15では、バブル含有洗浄液Wが高圧に維持されることから、バブルを形成する気体が洗浄液W中に溶融して洗浄液W中の気体濃度が上昇する。そして、気体濃度の高い気体溶存洗浄液Wが高圧槽15からフィルタ17を通過し、送通管16を通って洗浄室100の吐出ヘッドユニット110に加圧供給される。
【0044】
送通管16を通って加圧状態にて吐出ヘッドユニット110に達する気体溶存洗浄液Wは、導入部113の各オリフィス113aを通して洗浄液貯留部115に導入される際にその加圧状態が開放される。この加圧状態の開放によって気体溶存洗浄液W中に溶融していた気体がバブルとして、特に、微細なバブルとして現れる。これにより、この微細なバブルを含有する洗浄液Wが洗浄液貯留部115に貯められていく。そして、洗浄液貯留部115に一時的に貯められる前記微細なバブルを含有する洗浄液Wが複数のノズル117のそれぞれから吐出する。なお、前記微細なバブルは、そのサイズの小さい順に、マイクロバブル、マイクロナノバブル、ナノバブルと呼ばれる。
【0045】
一方、エア導入管111を通して吐出ヘッドユニット110のエアタンク部114には高圧エアが供給される。そしてエアタンク部114に供給される高圧エアは、エア通路116を通って、前述したように微細なバブルを含有する洗浄液Wが吐出する各ノズル117の先端から外方に向けて噴出する。この高圧エアがエア通路116を通って各ノズル117の先端部分から外方に噴出する際に各ノズル117から吐出する洗浄液Wが粉砕、微粒子化されて霧状になって噴出する。
【0046】
このようにして吐出ヘッドユニット110の複数のノズル117の先端部分から霧状となって噴出する洗浄液Wがガラス基板50の表面に吹きかけられ、それによってガラス基板50の表面が洗浄(処理)される。ガラス基板50に吹きかけられる霧状の洗浄液Wには微細なバブルが含まれており、そのバブルの洗浄効果や酸化作用によってガラス基板50の表面を良好に洗浄することができる。
【0047】
前述した基板洗浄装置では、貯液槽11から吐出ヘッドユニット110に洗浄液Wを供給する過程で気体溶存洗浄液Wが生成され、その気体溶存洗浄液Wが吐出ヘッドユニット110の洗浄液貯留部115に導入される際に、微細なバブルが洗浄液W中に生成されるようになるので、予め微細なバブルを含有する洗浄液Wを貯めおかなくてもガラス基板50の表面に吐出ヘッドユニット110から微細なバブルを含有する洗浄液Wを与えることができるようになる。従って、より少ない始動準備時間にて当該基板洗浄装置を利用することができるようになる。
【0048】
前述した基板洗浄装置では、吐出ヘッドユニット110内において気体溶存洗浄液Wの加圧状態を開放して微細なバブルを生成しているので、高圧槽15から吐出ヘッドユニット110に向かう送通管16においてフィルタ17が異物とともに洗浄液Wから微細なバブルを除去してしまうことはない。
【0049】
吐出ヘッドユニット110は、図4に示すように構成することができる。この例では、複数のオリフィス113aの形成された導入部113(図2参照)に代えて、高圧槽15から延びる送通管16が接続される導入口118が形成されている。なお、他の構造は、前述した例と同様である(図3参照)。
【0050】
この場合、高圧槽15から送通管16を通して加圧供給される気体溶存洗浄液Wがその加圧状態を維持して吐出ヘッドユニット110の洗浄液貯留部115に導入される。そして、洗浄液貯留部115に一時的に貯められる気体溶存洗浄液Wが複数のノズル117のそれぞれから外方に向けて吐出する際に加圧状態が開放される。このノズル117から吐出する際での加圧状態の開放によって気体溶存洗浄液W中に溶融していた気体が微細なバブルとして現れる。これにより、各ノズル117から微細なバブルを含有する洗浄液Wが吐出され、その洗浄液Wが更にエア通路116を通る高圧エアによって微粒子化されて霧状となってガラス基板50の表面に与えられる。
【0051】
この場合も、貯液槽11から吐出ヘッドユニット110に洗浄液Wを供給する過程で気体溶存洗浄液Wが生成され、その気体溶存洗浄液Wが吐出ヘッドユニット110の各ノズル117から吐出する際に、微細なバブルが洗浄液W中に生成されるようになるので、予め微細なバブルを含有する洗浄液Wを貯めおかなくてもガラス基板50の表面に吐出ヘッドユニット110から微細なバブルを含有する洗浄液Wを与えることができるようになる。従って、前述した例と同様に、より少ない始動準備時間にて当該基板洗浄装置を利用することができるようになる。
【0052】
前述した各例では、吐出ヘッドユニット110において気体溶存洗浄液Wの加圧状態を開放して微細なバブルを含有する洗浄液Wが生成されたが、貯液槽11からの洗浄液Wが吐出ヘッドユニット110の各ノズル117から吐出されるまでの間であれば、いずれの位置であっても、微細なバブルを含有する洗浄液Wを生成することができる。
【0053】
次に本発明の第2の実施の形態に係る処理装置について説明する。本発明の第2の実施の形態に係る処理装置は、図5に示すように構成されている。この処理装置は、洗浄液Wに溶融している気体の濃度をモニタする点で前述した第1の実施の形態に係る処理装置と異なる。なお、図5において、図1に示す部分と同じ部分については同じ参照番号が付されている。
【0054】
図5において、この処理装置は、図1に示す処理装置と同様に、洗浄液Wを貯留する貯液槽11、ガス供給部13、ポンプ14、高圧槽15、フィルタ17、送通管12、16、18及び洗浄室100を有している。フィルタ17から洗浄室100に延びる送通管16には、送通管16を通る洗浄液Wに溶解しているガスの濃度(溶存ガスの量に相当)を検出する溶存ガス濃度センサ19が設けられるとともに、ガス供給部13から送通管12に延びる供給ガスの送通路にはアクチュエータ21によってその開度が調整される開閉弁20が設けられている。この第2の実施の形態では、ガス供給部13から供給されるガスを酸素ガスとするとともに溶存ガス濃度センサ19を溶存酸素濃度センサ19とする。
【0055】
この処理装置における制御系は、図6に示すように構成される。図6において、溶存酸素濃度センサ19及びアクチュエータ21が処理ユニット25に接続されており、処理ユニット25は、溶存酸素濃度センサ19からの検出信号に基づいて開閉弁20の開度を調整するアクチュエータ21の駆動制御を行うようになっている。なお、開閉弁20、アクチュエータ21及び処理ユニット25にて洗浄液W(処理液)に供給される酸素(気体)の量を制御する制御手段が構成される。また、処理ユニット25には表示ユニット26が接続されており、処理ユニット25は、溶存酸素濃度センサ19からの検出信号から洗浄液W中に溶存している酸素の濃度(酸素の量に相当)を表す表示データを生成し、該表示データに基づいて表示ユニット26に洗浄液W中に溶存している酸素の濃度を表示(出力)させる。
【0056】
このような処理系では、処理ユニット25は、溶存酸素濃度センサ19からの検出信号にて表わされる酸素濃度が所定濃度範囲になるように、ガス供給部13から供給される酸素ガスの量を制御する。具体的には、アクチュエータ21の駆動制御によって開閉弁20の開度調整がなされ、開閉弁20の開度に応じた量の酸素ガスがガス供給部13から送通管12を通る洗浄液Wに供給されるようになる。
【0057】
このような処理装置によれば、洗浄室100に供給される洗浄液W中に溶存する酸素の量(濃度)が安定するので、洗浄室100において、洗浄液W中での安定的な微細バブルの発生が可能となり、吐出ヘッド110の各ノズル117から吐出される洗浄液W中に含有される微細バブルの量も安定するようになる。その結果、ガラス基板50の効果的な洗浄を安定的に行うことができるようになる。
【0058】
また、表示ユニット26に洗浄液W中に溶存する酸素の濃度が表示されるので、ユーザは、その表示される酸素の濃度から、適正な量の微細バブルが発生し得る洗浄液Wが洗浄室100に供給されているか否かを判断することができる。
【0059】
また、表示ユニット26に洗浄液W中に溶存する酸素の濃度が表示(出力)される場合、開閉弁20は、アクチュエータ21にてその開度を調整されるものではなく、手動にて調整できるものであってもよい。この場合、ユーザが、表示ユニット26に表示される酸素濃度に従って、開閉弁20の開度を手動にて調整することができる。
【0060】
本発明の第2の実施の形態に係る処理装置では、ガス供給部13から酸素ガスが供給されていたが、酸素以外のガス、例えば、窒素ガスを供給することもできる。この場合、溶存酸素濃度センサ19をそのまま使用することができる。ガス供給部13から供給される窒素ガスの量が多くなって、洗浄液W中に溶存する窒素ガス濃度が大きくなると、相対的に溶存酸素濃度が低下する。従って、溶存酸素濃度センサ19からの検出信号にて表わされる酸素濃度が小さくなると、洗浄液W中に溶存する窒素ガス濃度が大きくなる。この相関関係に基づいて処理ユニット25は、溶存酸素濃度センサ19からの検出信号に基づいて洗浄液W中の窒素ガスの濃度(窒素ガスの量)を検出することができる。処理ユニット25は、その検出した窒素ガスの濃度に基づいて開閉弁20の開度を調整するアクチュエータ21を駆動する。その結果、洗浄液W中に溶存する窒素ガスの濃度を安定化させることができる。
【0061】
前述した各実施の形態では、微細なバブルを含有する洗浄液Wを用いて被洗浄物の表面を洗浄する洗浄装置であったが、その微細なバブルを含む処理液を洗浄以外の処理(例えば、有機物分解処理)に用いることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
以上、説明したように、本発明に係る処理装置は、より少ない始動準備時間にて利用することができるという効果を有し、微細なバブルを含有する液体を被処理物の表面に与えて当該被処理物の表面を処理する処理装置として有用である。
【符号の説明】
【0063】
11 貯液槽
12 送通管
13 ガス供給部
14 ポンプ
15 高圧槽
16 送通管
17 フィルタ
18 送通管
19 溶存ガス濃度センサ(溶存酸素濃度センサ)
20 開閉弁
21 アクチュエータ
25 処理ユニット
26 表示ユニット
50 ガラス基板(被処理物)
100 洗浄室
110 吐出ヘッドユニット
111 エア導入管
112 導入口
113 導入部
113a オリフィス
114 エアタンク部
115 洗浄液貯留部
116 エア通路
117 ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯液槽から吐出ヘッドユニットまで処理液が供給され、該吐出ヘッドユニットから吐出される処理液にて前記被処理物の表面を処理する処理装置であって、
前記貯液槽からの処理液が前記吐出ヘッドユニットから吐出されるまでの間に、当該処理液中に微細なバブルを生成するバブル生成機構を有する処理装置。
【請求項2】
前記バブル生成機構は、前記貯液槽からの処理液中に気体を溶融させて気体溶存処理液を生成する機構と、
気体溶存処理液を加圧して前記吐出ヘッドユニットに向けて供給する機構と、
前記気体溶存処理液の加圧状態を開放して当該処理液中に微細なバブルを生成する圧力開放機構とを有する請求項1記載の処理装置。
【請求項3】
前記吐出ヘッドユニットは、前記圧力開放機構を有し、
前記吐出ヘッドユニットに加圧供給される気体溶存処理液から微細なバブルを含む処理液を生成し、該処理液を吐出する請求項2記載の処理装置。
【請求項4】
前記吐出ヘッドユニットは、処理液を貯める処理液貯留部と、
処理液貯留部に貯められた処理液を吐出するノズルと、
前記加圧供給される気体溶存処理液を前記処理液貯留部に導くオリフィスの形成された前記圧力開放機構としての処理液導入部とを有し、
加圧供給される前記気体溶存処理液が前記処理液導入部のオリフィスを通過するときにその加圧状態が開放されるようにした請求項3記載の処理装置。
【請求項5】
前記吐出ヘッドユニットは、前記加圧供給される気体溶存処理液をその加圧状態を維持しつつ貯める処理液貯留部と、
前記処理液貯留部の気体溶存処理液を加圧状態を開放しつつ吐出する前記圧力開放機構としてのノズルとを有し、
前記ノズルから前記気体溶存処理液が吐出されつつ該処理液中に微細なバブルが生成されるようにした請求項3記載の処理装置。
【請求項6】
前記気体溶存処理液が前記圧力開放機構に加圧供給される前に当該気体溶存処理液から異物を除去するフィルタを有する請求項2乃至5のいずれかに記載の処理装置。
【請求項7】
前記吐出ヘッドユニットは、前記ノズルから吐出される処理液と高圧気体とを混合して送出する二流体ツールとして構成される請求項1乃至6のいずれかに記載の処理装置。
【請求項8】
前記貯液槽からの処理液に溶融させるべき気体を当該処理液に供給する気体供給機構と、
前記処理液中に溶融する気体の量を検出する溶融気体検出手段と、
該溶融気体検出手段にて検出される前記処理液中に溶融する気体の量を表す情報を出力する手段とを有する請求項2記載の処理装置。
【請求項9】
前記貯液槽からの処理液に溶融させるべき気体を当該処理液に供給する気体供給機構と、
前記処理液中に溶融する気体の量を検出する溶融気体検出手段と、
該溶融気体検出手段にて検出される前記処理液中に溶融する気体の量に基づいて前記気体供給機構から前記処理液に供給される気体の量を制御する制御手段とを有する請求項2に記載の処理装置。
【請求項10】
前記気体供給機構から前記処理液に供給される気体は酸素であり、
前記溶融気体検出手段は前記処理液中に溶融する酸素の濃度を検出する溶存酸素濃度センサである請求項9記載の処理装置。
【請求項11】
前記気体供給機構から前記処理液に供給される気体は酸素以外の気体であり、
前記溶融気体検出手段は前記処理液中に溶融する酸素の濃度を検出する溶存酸素濃度センサであり、
前記制御手段は、前記溶存酸素濃度センサにて検出される酸素の濃度に基づいて前記気体供給機構から前記処理液に供給される酸素以外の気体の量を制御する請求項9記載の処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−72950(P2011−72950A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−228892(P2009−228892)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000002428)芝浦メカトロニクス株式会社 (907)
【Fターム(参考)】