説明

処理装置

【課題】筐体内雰囲気を外気と換気する処理装置であって、内部の放射能汚染の有無を簡単にチェックすることができる処理装置を提供すること。
【解決手段】処理装置1は、入力に応じた処理を実行する処理手段11と、筐体21に吸気口22と排気口23とを備え、換気によって内部冷却を行う電圧発生器1において、排気口23を覆うと共に、筐体21に着脱可能に取り付けられ、排気口23を通過する雰囲気中の異物を捕集する第1フィルタ51を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファンにより筐体内雰囲気を外気と換気して、内部冷却を行う処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所の放射線管理区域内に持ち込まれた装置を、放射線非管理区域に持ち出す際は、持ち出す装置が放射能汚染されていないことを、確認する必要がある。
そこで、装置を放射線管理区域から持ち出す際には、放射能測定装置によって、装置における放射能汚染の有無をチェックする(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかし、放射線管理区域に持ち込まれる装置としては、ファンにより筐体内雰囲気を外気と換気して、内部冷却を行う処理装置が少なくない。例えば、このような処理装置として、電圧発生器、電圧計や電圧計、圧力測定器等を挙げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−288667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ファンにより筐体の内部の空気を外気と換気して内部冷却を行う処理装置が放射線管理区域で使用された場合、装置内に流入する外気に放射能汚染物質が含まれていると、装置内に流入した外気中の放射能汚染物質が装置内部の回路基板等に付着し、装置の内部が汚染された状態になる。
【0006】
しかし、通常、放射能汚染のチェックに使用される放射能測定装置は、物体表面の放射能汚染を測定するもので、筐体内部の汚染については、測定できない。
【0007】
そこで、ファンにより筐体の内部の空気を外気と換気する処理装置を放射線管理区域から持ち出す場合には、処理装置の筐体を分解して、内部を開放状態にして、内部の放射能汚染をチェックする汚染検知方法も考えられる。しかし、筐体の分解・再組立は、非常に手間がかかるだけでなく、内部汚染が発生している場合には汚染を拡散してしまうおそれもあり、実際上は、実施できない。また、筐体を分解してしまった場合には、処理装置の精度が保証されなくなってしまうというおそれもある。
【0008】
そのため、ファンにより筐体の内部の空気を外気と換気する処理装置は、一旦、放射線管理区域で使用すると、内部の放射能汚染の有無がチェックできないため、定期的なメーカ点検等の事情があっても、放射線管理区域から持ち出すことができず、最悪の場合には、高額な装置を使い捨てにしなければならないという問題が生じていた。
【0009】
従って、本発明は、ファンにより筐体の内部の空気を外気と換気する処理装置において、内部の放射能汚染の有無を簡単にチェックすることができる処理装置、及び内部汚染検知方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明は、入力に応じた処理を実行する処理手段と、前記処理手段を収容する筐体と、
前記筐体に形成された吸気口と、前記筐体に形成された排気口と、を備える処理装置であって、前記排気口を覆うと共に、前記筐体に着脱可能に取り付けられ、前記排気口を通過する気体中の異物を捕集する第1瀘材を備える処理装置に関する。
【0011】
(2)また、上記(1)に記載の処理装置の場合、前記吸気口を覆うと共に、前記筐体に着脱可能に取り付けられ、前記吸気口から前記筐体の内部に流入する外気中の異物を捕集する第2瀘材を更に備えることが好ましい。
【0012】
(3)また、上記(2)に記載の処理装置の場合、前記第1瀘材には前記筐体に着脱可能の支持枠にスミヤ瀘紙を収めた第1フィルタを採用し、前記第2瀘材には前記筐体に着脱可能の支持枠にHEPAフィルタを収めた第2フィルタを採用することが好ましい。
【0013】
(4)また、本発明は、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の処理装置の筐体の内部における放射能汚染の有無を検知する内部汚染検知方法であって、
物体表面の放射能汚染を測定する放射能測定装置によって、前記筐体から取り外した前記第1濾材における放射能汚染の有無を検査し、前記第1濾材に放射能汚染が有る場合に、前記筐体の内部に放射能汚染が有りと判定する内部汚染検知方法に関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ファンにより筐体の内部の空気を外気と換気する処理装置において、内部の放射能汚染の有無を簡単にチェックすることができる処理装置、及び内部汚染検知方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の処理装置の一実施形態としての電圧発生器の概略構成図である。
【図2】図1に示した処理装置に装備された第1フィルタの概略構成を示す斜視図である。
【図3】図1に示した処理装置の内部の放射能汚染をチェックする内部汚染検知方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態の処理装置及び内部汚染検知方法について説明する。
まず、図1及び図2により、本発明に係る処理装置の一実施形態である電圧発生器の構成を説明する。
【0017】
図1に示した電圧発生器1は、他の計測機器等の外部装置の動作に必要な電圧を発生する装置で、前記外部装置の電源として利用される。
【0018】
この電圧発生器1は、電圧を発生させる処理手段である電圧発生処理回路11と、該電圧発生処理回路11を収容する筐体21と、筐体21の一側面である前面部21aに配置される操作部31と、筐体21の内部雰囲気を換気するためのファン41とを備えている。本実施形態の電圧発生器1は、ファン41による換気によって内部冷却を行う装置である。
【0019】
電圧発生処理回路11は、例えば、筐体21内に固定されたブラケット12と、このブラケット12に固定された回路基板13と、該回路基板13上に搭載される各種の回路部品14等から構成される。この電圧発生処理回路11は、操作部31からの入力設定、あるいは筐体21に装備された不図示の入力端子に外部から入力する信号、のいずれかの入力に応じた処理を実行して、前記外部装置に供給する所望の電圧を発生させる。電圧発生処理回路11の発生する電圧は、筐体21に装備された不図示の出力端子に出力され、対応する計測機器等に供給される。
【0020】
筐体21は、電圧発生処理回路11を収容する収容空間20を画成する箱型の構造物で、内部雰囲気を換気するために、吸気口22と、排気口23と、が貫通形成されている。
吸気口22及び排気口23は、小径の通気孔を適宜数配列した構成、あるいは、1つの大きな開口を形成した構成のいずれでもよい。
【0021】
操作部31は、電圧発生処理回路11の動作条件等を設定する複数のスイッチ31aを有しており、電圧発生処理回路11により発生させる電圧値を設定することができる。
【0022】
ファン41は、筐体21内で、排気口23に面して取り付けられている。このファン41は、吸気口22から筐体21内に外気を取り込むと共に、筐体内雰囲気を排気口23より筐体21の外部に排出して、筐体21内を換気する。
図1に示した矢印Fは、ファン41によって筐体21内を通過する外気の流れを示している。
【0023】
本実施形態の電圧発生器1は、第1瀘材としての第1フィルタ51と、第2瀘材としての第2フィルタ61と、を備えている。
【0024】
第1フィルタ51は、筐体21の外側から排気口23を覆っている。また、この第1フィルタ51は、図2に示すように、筐体21に着脱可能な支持枠52にスミヤ瀘紙53を収めた構造で、支持枠52を介して筐体21に着脱可能に取り付けられる。
【0025】
支持枠52を筐体21に着脱可能に取り付ける具体的な構造は、例えば、支持枠52が当接する筐体21の排気口23の周縁部と、該周縁部に当接する支持枠52の当接面とに、互いに係合する係合機構を装備してもよく、また、支持枠52をマグネットの磁力で筐体21に吸着させる構成にしてもよい。
【0026】
スミヤ瀘紙53は、JIS−Z−4504−1993(放射性表面汚染の測定方法)の規定に準拠した仕様のもので、放射線汚染物質が付着し易く、その保持性が高く、且つ、フィルタとしての通気性能を有したものが選択される。
【0027】
第1フィルタ51は、ファン41による送風力で、排気口23を通過する雰囲気中の異物を捕集する。
【0028】
第2フィルタ61は、筐体21の外側から吸気口22を覆っている。また、この第2フィルタ61は、筐体21に着脱可能な支持枠(不図示)にHEPAフィルタを収めた構造で、支持枠を介して筐体21に着脱可能に取り付けられる。
【0029】
HEPAフィルタを収容する支持枠は、図2に示した支持枠52と同様なもので、吸気口22を覆う板状にHEPAフィルタを支持する。
この第2フィルタ61は、吸気口22から前記筐体21内に流入する外気中の異物を捕集する。
【0030】
次に、電圧発生器1の筐体21内における放射能汚染の有無を検知する内部汚染検知方法を、図3に基づいて説明する。
図3において、符号71は物体表面の放射能汚染を測定する放射能測定装置71、符号72は放射能測定装置71に接続された放射能検出器72である。放射能測定装置71は、放射能検出器72の先端面72aを、測定する物体の表面に規定の距離まで近付けることで、物体の表面における放射能汚染の程度を測定することができる。
【0031】
本実施形態の内部汚染検知方法では、図3に示すように、筐体21から取り外した第1フィルタ51の表面に放射能検出器72の先端面72aを近付けて、第1フィルタ51における放射能汚染の有無を検査する。そして、第1フィルタ51に放射能汚染が有ると判明した場合に、筐体21内に放射能汚染が有りと判定する。
【0032】
以上説明した本実施形態の電圧発生器1は、入力に応じた処理を実行する電圧発生処理回路11と、電圧発生処理回路11を収容する筐体21と、筐体21に形成された吸気口22と、筐体21に形成された排気口23と、筐体内雰囲気を前記排気口23より筐体21の外部に排出して筐体21内を換気するファン41と、を備え、ファン41による換気によって内部冷却を行う電圧発生器であって、排気口23を覆うと共に、筐体21に着脱可能に取り付けられ、排気口23を通過する雰囲気中の異物を捕集する第1フィルタ51を備える。
【0033】
そのため、電圧発生器1は、例えば、放射線管理区域から放射線非管理区域に持ち出したい場合には、図3に示すように、筐体21から取り外した第1フィルタ51における放射能汚染の有無を放射能測定装置71によって検査する内部汚染検知方法を実施することで、筐体21を分解して内部を露出させずとも、簡単に、内部の汚染の有無を検知することができる。
従って、内部の放射能汚染の有無を簡単にチェックすることができる電圧発生器1を提供することができる。
その結果、持ち出す電圧発生器1が放射能汚染されていないことを確認して、放射線非管理区域に持ち出すことが可能になり、内部の放射能汚染をチェックできないために高額な装置を使い捨てにしなければならないといった不都合を解消することができる。
【0034】
また、本実施形態の電圧発生器1は、吸気口22を覆うと共に、筐体21に着脱可能に取り付けられ、吸気口22から筐体21内に流入する外気中の異物を捕集する第2フィルタ61を備える。
そのため、例えば、吸気口22から筐体21内に流入する外気中の異物として、放射能汚染物質が存在した場合、その放射能汚染物質を第2フィルタ61が捕集することで、放射能汚染物質が筐体21内に侵入すること自体を防止し、筐体21内の汚染の防止、又は汚染の低減を図ることができる。
【0035】
また、第2フィルタ61を備えている場合、第2フィルタ61に対しても、図3に示したように、筐体21から取り外して放射能測定装置71によって、放射能汚染の有無をチェックすることで、筐体21内における放射能汚染の有無の検知精度を向上させることができる。
【0036】
また、本実施形態の電圧発生器1の場合、第1フィルタ51は、図2に示しように筐体21に着脱可能の支持枠52にスミヤ瀘紙53を収めた構成であり、更に、第2フィルタ61は、筐体21に着脱可能の支持枠にHEPAフィルタを収めた構成である。
これらの第1フィルタ51や、第2フィルタ61は、放射能汚染された微粒子の捕集性や保持性が優れている。
そのため、筐体21から取り外した第1フィルタ51や第2フィルタ61に対して放射能測定装置71によって放射能汚染の有無をチェックするという本実施形態の内部汚染検知方法の信頼性を向上させることができる。
【0037】
尚、本発明に係る処理装置における第1フィルタ51や第2フィルタ61に採用する具体的な瀘材は、上記実施形態に示したものに限らない。例えば、第1フィルタ51及び第2フィルタ61の双方の瀘材にHEPAフィルタを採用したり、あるいは、HEPAフィルタよりも粒子捕集率に優れたULPAフィルタを採用したりすることも、考えられる。
【0038】
更に、本発明に係る処理装置は、上記実施形態に示した電圧発生器に限らない。即ち、本発明を、電流計、電圧計、圧力測定器(マノメータ)、電流発生器等に適用してもよい。
また、本実施形態では、本発明を、ファンにより筐体内雰囲気を外気と換気して内部冷却を行う処理装置に適用したが、これに限らない。即ち、本発明を、ファンを用いずに筐体の内部を冷却する自然循環式の処理装置に適用してもよい。
【符号の説明】
【0039】
1 電圧発生器(処理装置)
11 電圧発生処理回路(処理手段)
21 筐体
22 吸気口
23 排気口
41 ファン
51 第1フィルタ(第1瀘材)
61 第2フィルタ(第2瀘材)
71 放射能測定装置
72 放射能検出器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力に応じた処理を実行する処理手段と、
前記処理手段を収容する筐体と、
前記筐体に形成された吸気口と、
前記筐体に形成された排気口と、
を備える処理装置であって、
前記排気口を覆うと共に、前記筐体に着脱可能に取り付けられ、前記排気口を通過する気体中の異物を捕集する第1瀘材を備える処理装置。
【請求項2】
前記吸気口を覆うと共に、前記筐体に着脱可能に取り付けられ、前記吸気口から前記筐体の内部に流入する外気中の異物を捕集する第2瀘材を更に備える請求項1に記載の処理装置。
【請求項3】
前記第1瀘材には前記筐体に着脱可能の支持枠にスミヤ瀘紙を収めた第1フィルタを採用し、前記第2瀘材には前記筐体に着脱可能の支持枠にHEPAフィルタを収めた第2フィルタを採用した請求項2に記載の処理装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の処理装置の筐体の内部における放射能汚染の有無を検知する内部汚染検知方法であって、
物体表面の放射能汚染を測定する放射能測定装置によって、前記筐体から取り外した前記第1瀘材における放射能汚染の有無を検査し、前記第1瀘材に放射能汚染が有る場合に、前記筐体の内部に放射能汚染が有りと判定する内部汚染検知方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−107897(P2012−107897A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−255101(P2010−255101)
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】