説明

処理装置

【課題】ウェーハ支持部の面内の温度分布を適切にする処理装置を提供する。
【解決手段】処理装置は、処理室10と、該処理室内に設けられたウェーハWの支持部22と、該支持部を加熱するヒータhと、前記支持部に対向して設けられ、前記処理室に通じる複数のガス吹出孔14を有するシャワープレート12と、を備え、該シャワープレートにおける前記支持部に対向する表面は、前記支持部側からの輻射熱に対する反射率が相対的に異なる複数の領域を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、気相成長装置のガス供給機構として、多数のガス吹出孔を有するシャワーヘッドが用いられている。処理室内でサセプタに支持されたウェーハはシャワーヘッドに対向する。そして、サセプタ及びそれに支持されたウェーハを加熱しつつ、シャワーヘッドから原料ガスをウェーハに向けて吹き出させて、各種膜をウェーハ上に気相成長させる。
【0003】
そのとき、サセプタにおける面方向の温度分布がばらつくと、ウェーハの面方向で膜厚、膜組成、結晶品質などが変化する原因となり、最終的な製品の特性に影響する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−72424号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ウェーハ支持部の面方向の温度分布を適切にする処理装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態によれば、処理装置は、処理室と、前記処理室内に設けられたウェーハ支持部と、前記ウェーハ支持部を加熱するヒータと、前記ウェーハ支持部に対向して設けられたシャワープレートと、を備えている。前記シャワープレートは、前記ウェーハ支持部が臨む空間に通じる複数のガス吹出孔を有する。前記シャワープレートにおける前記ウェーハ支持部に対向する表面は、前記ウェーハ支持部側からの輻射熱に対する反射率が相対的に異なる領域を含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施形態の処理装置の模式図。
【図2】他の実施形態の処理装置の模式図。
【図3】実施形態の処理装置におけるシャワープレートの平面図。
【図4】比較例の処理装置におけるサセプタ中央部の温度低下を説明するための模式図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照し、実施形態について説明する。なお、各図面中、同じ要素には同じ符号を付している。
【0009】
図1(a)は、実施形態の処理装置の模式図である。本実施形態では、処理装置として、気相成長装置を一例に挙げて説明する。
【0010】
図1(a)における上下方向は鉛直方向に対応する。すなわち、処理室10内における鉛直方向の下方にステージ21が設けられ、その上方にシャワーヘッド11が設けられている。
【0011】
ステージ21は、例えば円盤状に形成されている。ステージ21の面方向(径方向)の中央部には、下方に延びる回転軸23が設けられている。
【0012】
回転軸23の下端部は、回転機構24に連結されている。回転機構24は、処理室10の外部に設けられ、例えば、モータ、そのモータと連結された駆動力伝達機構などを含む。
【0013】
処理室10内における、ステージ21の裏側には、ヒータhが設けられている。ヒータhは、処理室10の外部に設けられた図示しない電源に接続されている。
【0014】
ステージ21上には、ウェーハ支持部としてサセプタ22が保持されている。サセプタ22には、例えば複数枚のウェーハWが保持される。あるいは、サセプタ22は1枚のウェーハWのみを支持してもよい。
【0015】
ウェーハWは、例えば、シリコンなどの半導体基板、窒化ガリウム、窒化アルミニウム、炭化シリコンなどの化合物半導体基板、サファイア基板などである。あるいは、それら基板上に各種膜が形成されたものも、本実施形態における処理対象のウェーハWとして含む。
【0016】
処理室10の上方には、シャワーヘッド11が設けられている。シャワーヘッド11の外形は、例えば円盤状に形成されている。シャワーヘッド11の内部には、面方向に広がる空間としてガス導入室13が形成されている。
【0017】
ガス導入室13の下には、シャワープレート12が設けられている。シャワープレート12において、ガス導入室13に対する反対側の表面は、サセプタ22に対向している。シャワープレート12の表面と、サセプタ22との間には、空間が介在する。
【0018】
図1(b)は、シャワープレート12の表面を表す。シャワープレート12の表面の平面形状は、円形状である。
【0019】
シャワープレート12には、複数のガス吹出孔14が形成されている。ガス吹出孔14は、シャワープレート12の厚み方向を貫通している。すなわち、ガス吹出孔14の上端はガス導入室13に通じ、ガス吹出孔14の下端はサセプタ22上の空間(処理室10)に通じている。したがって、ガス導入室13と処理室10とは、ガス吹出孔14を介して通じている。
【0020】
シャワープレート12の平面サイズは、サセプタ22の平面サイズよりも大きい。シャワープレート12の表面における複数のガス吹出孔14が形成された領域の平面サイズは、サセプタ22の表面の平面サイズとほぼ同じである。
【0021】
シャワープレート12の材料として、例えば、ステンレス、アルミニウム等の金属、セラミック、石英などを用いることができる。
【0022】
シャワーヘッド11の側壁部には、ガス導入室13に通じるガス導入路15が形成されている。例えば、複数のガス導入路15が、シャワーヘッド11の面方向(径方向)の中心に対して対称的配置で設けられている。ガス導入路15は、処理室10の外部に設けられた図示しない原料ガス供給源に接続される。
【0023】
処理室10の下方の外周部には、排気路25が形成されている。排気路25は、処理室10の外部に設けられた図示しない真空ポンプ等を含む真空排気系に接続されている。
【0024】
原料ガスは、ガス導入路15を通じてガス導入室13内に導入される。ガス導入室13内に導入されたガスは、ガス導入室13内を面方向に均一に広がり、ガス吹出孔14から処理室10内に吹き出す。ガス導入量とガス排気量とを適切に制御することで、処理室10内は所望の減圧雰囲気にされる。
【0025】
回転機構24は、シャワープレート12とサセプタ22とを結ぶ方向である鉛直方向に延びる回転軸23まわりにステージ21を回転させる。サセプタ22及びサセプタ22に保持されたウェーハWも、ステージ21と一体に回転する。サセプタ22を回転させることで、ウェーハWの面方向に対する均一処理が可能となる。
【0026】
また、サセプタ22及びサセプタ22に保持されたウェーハWは、ヒータhによって加熱される。ガス吹出孔14から処理室10内に吹き出したガスは、加熱されたウェーハWの表面で分解及び反応する。これにより、ウェーハWの表面に所望の膜が形成される。
【0027】
ここで、図4(a)は、比較例の気相成長装置の模式図を示す。また、図4(b)は、比較例の気相成長装置におけるサセプタ22の径方向(面方向)の温度分布を表す。
【0028】
図4(a)及び(b)において、1点鎖線Cはシャワープレート42及びサセプタ22の径方向(面方向)の中心位置を表す。図4(a)は、その中心線Cよりも片側(左側)半分の断面を表す。
【0029】
この比較例の気相成長装置においても、複数のガス吹出孔14を有するシャワープレート42が、サセプタ22上に支持されたウェーハWに対向している。
【0030】
そして、サセプタ22及びウェーハWは、加熱されつつ、中心線Cのまわりに回転される。ガス吹出孔14から吹き出したガスは、サセプタ22に向かって、図4(a)における縦方向に流れるが、サセプタ22表面近傍では、サセプタ22の回転の影響を受けて、サセプタ22表面上を径方向の外側に向かって流れていく。そのサセプタ22表面上を横方向に流れる成分は、径方向の外側に行くに従い増していく。
【0031】
しかしながら、図4(a)において破線Aで表されるサセプタ22の中央部では、横方向に流れるガス成分がほとんどない。このため、サセプタ22の中央部には、より強い勢いのガスが吹き付けられやすく、図4(b)に示すように、サセプタ22の中央部で局部的に温度が下がる現象が確認された。これは、ウェーハWの面方向の温度分布を悪化させ、製品の特性ばらつきをまねく要因の一つになる。
【0032】
一方、本実施形態のシャワープレート12の表面は、加熱されているサセプタ22及びウェーハW側からの輻射熱に対する反射率が相対的に異なる領域を含む。ここで、反射率が相対的に異なるとは、10%以上異なることを言う。
例えば、図1(b)において、シャワープレート12の表面における面方向の中央部12aは、他の領域に比べて相対的に上記輻射熱に対する反射率が高い。
【0033】
具体的に、シャワープレート12の表面における中央部12aと他の領域とは、表面粗さが相対的に異なる。例えば、中央部12aを鏡面化させて、他の領域よりも上記輻射熱に対する反射率を高くしている。あるいは、他の領域を粗面化することで、中央部12aが相対的に反射率が高くなるようにしてもよい。
【0034】
シャワープレート12の表面の中央部12aは、より強い勢いでガスが吹き付けられやすく温度が低下しがちなサセプタ22の中央部に対向する部分である。その中央部12aの反射率を相対的に高くすることで、中央部12aで反射する熱量を増大させ、サセプタ22の中央部における局部的な温度低下を抑制できる。これにより、サセプタ22の面方向の温度を均一にできる。この結果、サセプタ22に支持されたウェーハWの面方向の温度ばらつきを抑制でき、製品品質及び歩留まりを向上させることができる。
【0035】
なお、シャワープレート12の表面を部分的に鏡面化、粗面化することに限らず、シャワープレート12の表面に部分的に膜を形成することでも、シャワープレート12の表面における上記反射率を部分的に異ならせることができる。
【0036】
例えば、図3(a)に示す具体例では、シャワープレート12の表面の中央部に、シャワープレート12とは異なる材料の膜18が形成されている。膜18は、ガス吹出孔14を閉塞していない。膜18は、シャワープレート12の材料よりも、上記輻射熱に対する反射率が高い。
【0037】
あるいは、シャワープレート12の表面における中央部以外の領域に、シャワープレート12の材料よりも上記輻射熱に対する反射率が低い膜を形成してもよい。その膜が形成されない中央部は、相対的に上記反射率が高くなる。あるいは、シャワープレート12の表面の中央部に第1の膜を形成し、その中央部以外の領域に、第1の膜よりも上記反射率が低い第2の膜を形成してもよい。
【0038】
いずれにしても、サセプタ22の面方向の温度分布に応じて、シャワープレート12の表面における、上記輻射熱に対する反射率を部分的に変えることで、シャワープレート12の表面からサセプタ22側への熱の反射量を制御できる。サセプタ22における温度が低下しがちな部分に対向するシャワープレート12の表面の上記反射率を相対的に高くすることで、サセプタ22における局部的な温度低下を抑制できる。結果的に、サセプタ22の面方向の温度分布を均一にすることができる。
【0039】
シャワープレート12の材料として、例えば石英を使った場合、加熱されているサセプタ22及びウェーハW側からの輻射熱(赤外光を主とする電磁波)は、石英を透過してしまう。したがって、石英を使ったシャワープレート12においては、上記反射率を高めたい部分には、表面処理よりも、上記輻射熱に対する反射性を有する膜を形成することが有効である。
【0040】
シャワープレート12の表面を部分的に鏡面化もしくは粗面化する処理は、シャワープレート12の表面に部分的に膜を形成するよりも比較的容易且つ低コストで行うことができる。
【0041】
次に、図2(a)は、他の実施形態の処理装置の模式図である。図2(a)において、図1(a)に示す前述した実施形態と同じ要素には同じ符号を付しており、その機能も同じである。
【0042】
本実施形態では、ステージ31が、図1(a)に示す実施形態と異なる。ステージ31の面方向の端部に脚部32が設けられ、ステージ31はその脚部32を介して、処理室10の底部上に支持されている。
【0043】
脚部32は、ステージ31から熱が逃げる経路になる。したがって、面方向の端部に脚部32が設けられたステージ31においては、その端部の温度が低くなりやすい。したがって、ステージ31上に保持されたサセプタ22において、その面方向の端部での局部的な温度低下が懸念される。
【0044】
そこで、本実施形態では、サセプタ22の面方向の端部に対向する部分である、シャワープレート12の表面における面方向の端部(外周側)が相対的に上記反射率が高くなるようにしている。
【0045】
例えば、図2(b)において、シャワープレート12の表面における面方向の端部(外周側)12bは、それよりも内側の領域に比べて上記輻射熱に対する反射率が高い。
【0046】
例えば、端部12bを鏡面化する。あるいは、端部12b以外の領域を粗面化して、端部12bが相対的に上記反射率が高くなるようにする。あるいは、端部12bに、シャワープレート12の材料よりも上記反射率が高い膜を形成してもよい。あるいは、端部12b以外の領域に、シャワープレート12の材料、もしくは端部12bに形成する膜よりも上記反射率が低い膜を形成してもよい。
【0047】
また、ステージ31が回転する場合、前述したように、サセプタ22の中央部で温度が低下しやすい。したがって、図3(b)に示すように、シャワープレート12の表面において、中央部12a及び端部12bが、相対的に他の領域よりも上記輻射熱に対する反射率が高くなるようにすることもできる。
【0048】
シャワープレート12の表面において、部分的に上記反射率を異ならせる箇所は、前述した実施形態に限定されない。局部的な温度変化部分がサセプタ22の中央部や端部以外であっても、その温度変化部分に対向する箇所のシャワープレート12表面の上記反射率を、他の領域と異ならせることで、サセプタ22における面方向の温度変化を緩和させることが可能である。
【0049】
また、サセプタ22の面方向の温度分布を均一にすることに限らない。シャワープレート12の表面の上記反射率を部分的に変えることで、サセプタ22の面方向の温度分布を任意に制御可能である。
【0050】
処理装置としては、前述した気相成長装置に限らない。例えば、プラズマCVD(chemical vapor deposition)装置、エッチング装置、プラズマドーピング装置、表面改質装置などにも実施形態は適用可能である。シャワープレートに対向配置されたサセプタ上に支持され且つ加熱されたウェーハに対して、シャワープレートからガスを供給する構成を有する装置に本実施形態は適用可能である。
【0051】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0052】
10…処理室、11…シャワーヘッド、12…シャワープレート、14…ガス吹出孔、15…ガス導入路、18…膜、21,31…ステージ、22…サセプタ、24…回転機構、25…排気路、h…ヒータ、W…ウェーハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理室と、
前記処理室内に設けられたウェーハ支持部と、
前記ウェーハ支持部を加熱するヒータと、
前記ウェーハ支持部に対向して設けられ、前記ウェーハ支持部が臨む空間に通じる複数のガス吹出孔を有するシャワープレートであって、前記ウェーハ支持部側からの輻射熱に対する反射率が相対的に異なる領域を、前記ウェーハ支持部に対向する表面に含むシャワープレートと、
を備えたことを特徴とする処理装置。
【請求項2】
前記シャワープレートの前記表面は、表面粗さが相対的に異なる領域を含むことを特徴とする請求項1記載の処理装置。
【請求項3】
前記シャワープレートの前記表面の一部に、前記シャワープレートとは異なる材料の膜が形成されたことを特徴とする請求項1記載の処理装置。
【請求項4】
前記シャワープレートと前記ウェーハ支持部とを結ぶ方向に延びる軸のまわりに、前記ウェーハ支持部を回転させる回転機構をさらに備え、
前記シャワープレートの前記表面における面方向の中央部が相対的に前記反射率が高いことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の処理装置。
【請求項5】
前記ウェーハ支持部は、その面方向の端部で前記処理室の底部上に支持され、
前記シャワープレートの前記表面における面方向の端部が相対的に前記反射率が高いことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−142329(P2012−142329A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−292096(P2010−292096)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】