説明

凸版反転オフセット印刷法に使用する着色組成物

【課題】塗布ムラが少なく、かつ連続印刷した際に形状変化が少ない、凸版反転オフセット法に使用する着色組成物の提供。
【解決手段】着色組成物をシリコーンゴムからなる離型性面に塗布して塗布面を形成する塗布面形成工程と、前記塗布面を半乾燥する乾燥工程と、前記塗布面に所定形状の凸版を押圧して凸版の凸部分に着色組成物を転写して除去する除去工程と、塗布面に残った着色組成物を基材に転写する転写工程とからなる凸版反転オフセット印刷法に使用する着色組成物であって、該着色組成物が、前記離型性面の有機溶剤による体積膨張率が0%以上50%以下であり、かつ760mmHgにおける沸点が110℃以上の有機溶剤と、色素と、色素担体とを含有する着色組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凸版反転オフセット印刷法による種々の微細なカラーフィルタの形成に用いられる着色組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
着色組成物を用い、種々の方法で形成された微細な着色パターンは、エレクトロニクス等の様々な分野で広く利用されている。例えば、液晶カラーディスプレイに利用されるカラーフィルタは、アルカリ可溶性樹脂、光重合性化合物、および着色剤を含む活性エネルギー線硬化性着色組成物をスピンコーター等で塗工し、露光とアルカリ現像を行うフォトリソ法により形成されている。
しかし、フォトリソ法によるパターニングは、黒、赤、緑、青等のそれぞれの着色パターンにおいて、洗浄・塗布・露光・現像・熱処理を繰り返すため工程が多く、液晶カラーディスプレイの大型化に伴い、より安価かつ精密なパターニングを行うことが求められている。
【0003】
そこで、近年、低コスト、大型化、高精密化に向け、印刷によるパターニングが行われ始めている。例えば、シリコーンブランケットを巻きつけたブランケット胴にインキ皮膜を形成し、樹脂凸版をこれに押圧し、該凸部分のインキをブランケット面から除去するとともに、残されたインキを被印刷体に転写する方法がある。この方法は4色同時入色が可能で色毎の焼き付け工程が必ずしも必要でないなど、短工程によって製造が行え、低製造コスト化、低設備コスト化が実現できる。しかし、塗布面の乾燥工程を持たない製造方法では、インキをすばやく乾燥するために、低沸点の有機溶剤を添加する必要があるが、シリコーンブランケット上の塗布面に乾燥ムラが生じ、均一なパターニングができない欠点がある。また、着色組成物に含まれる有機溶剤の種類によっては、シリコーンブランケット表面から吸収され、シリコーンゴム層を著しく膨潤させてしまうため、連続して印刷する場合には、表面のシリコーンゴム層が体積膨張により支持層から剥がれる、あるいは、表面ゴム層から吸収された溶剤が、逆に塗布面に移行して、塗布面が転写可能な乾燥状態になるまでにより多くの時間を要する、あるいはパターンの形状変化が増大するなどのトラブルが発生する。
【特許文献1】特開平2005−54104号公報
【特許文献2】特開2005−128346号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明は、塗布ムラが少なく、かつ連続印刷した際に形状変化が少ない、凸版反転オフセット印刷法に使用する着色組成物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の着色組成物は、着色組成物をシリコーンゴムからなる離型性面に塗布して塗布面を形成する塗布面形成工程と、前記塗布面を半乾燥する乾燥工程と、前記塗布面に所定形状の凸版を押圧して凸版の凸部分に着色組成物を転写して除去する除去工程と、塗布面に残った着色組成物を基材に転写する転写工程とからなる凸版反転オフセット印刷法に使用する着色組成物であって、前記離型性面の有機溶剤による体積膨張率が0%以上50%以下であり、かつ760mmHgにおける沸点が110℃以上の有機溶剤と、色素と、色素担体とを含有することを特徴とする。
【0006】
本発明の着色組成物において、有機溶剤は、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、2−エトキシエチルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチルからなる群から選ばれる少なくとも一種の溶剤を含むことが好ましい。
また、本発明の着色組成物は、さらに、レベリング剤および/または架橋剤を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明の着色組成物は、液状媒体として、該着色組成物が塗布される離型性面の有機溶剤による体積膨張率が0%以上50%以下であり、かつ760mmHgにおける沸点が110℃以上の有機溶剤を含有するため、凸版反転オフセット印刷法で形成される塗膜の乾燥ムラが少なく、連続印刷の際にパターンの形状変化が低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に、本発明の着色組成物について具体的に説明する。
本発明の着色組成物は、着色組成物をシリコーンゴムからなる離型性面に塗布して塗布面を形成する塗布面形成工程と、前記塗布面を半乾燥する乾燥工程と、前記塗布面に所定形状の凸版を押圧して凸版の凸部分に着色組成物を転写して除去する除去工程と、塗布面に残った着色組成物を基材に転写する転写工程とからなる凸版反転オフセット印刷法に使用する着色組成物であって、前記離型性面の有機溶剤による体積膨張率が0%以上50%以下であり、かつ760mmHgにおける沸点が110℃以上の有機溶剤と、色素と、色素担体とを含有することを特徴とする。
【0009】
離型性面の有機溶剤による体積膨張率は、離型性面を構成するシリコーンゴムを剥がし取り、これを有機溶剤中に1時間浸漬して浸漬前後の体積を測定し、下記式(1)に従って算出される。

体積膨張率(%)={(浸漬後体積―浸漬前体積)/(浸漬前体積)}×100
・・・(1)

離型性面の体積膨張率が50%を超える有機溶剤を含有すると、着色組成物中の有機溶剤による離型性面が激しく膨張し、支持層から剥がれてしまい、印刷不能となる。
また、760mmHgにおける沸点が110℃未満の有機溶剤を含有すると、塗膜の乾燥ムラを生じやすくなる。
【0010】
離型性面の有機溶剤による体積膨張率が0%以上50%以下であり、かつ760mmHgにおける沸点が110℃以上の有機溶剤としては、エチレングリコールモノブチルエーテル(沸点:171℃、体積膨張率:15%)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(119℃、10%)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(187℃、15%)、2−エトキシエチルアセテート(156℃、20%)、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(218℃、0%)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(146℃、30%)ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(218℃、5%)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(171℃、15%)ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(240℃、10%)シクロヘキサノン(160℃、40%)乳酸メチル(145℃、15%)、乳酸エチル(154℃、15%)乳酸ブチル(188℃、15%)等が挙げられる。
【0011】
なかでも、塗膜の乾燥ムラ、色素分散性などを考慮すると、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチルがより好ましい。
前記有機溶剤は、着色組成物の全重量を基準(100重量%)として50〜97重量%の割合で含有されることが好ましく、より好ましくは60〜95重量%、特に好ましくは70〜92重量%である。
【0012】
本発明の着色組成物に含まれる色素としては、有機または無機の顔料を、単独でまたは2種類以上混合して用いることができる。顔料のなかでは、発色性が高く、且つ耐熱性の高い顔料、特に耐熱分解性の高い顔料が好ましく、通常は有機顔料が用いられる。
以下に、本発明の着色組成物に使用可能な有機顔料の具体例を、カラーインデックス番号で示す。
【0013】
赤色着色組成物には、例えばC.I. Pigment Red 7、9、14、41、48:1、48:2、48:3、48:4、81:1、81:2、81:3、97、122、123、146、149、168、177、178、180、184、185、187、192、200、202、208、210、215、216、217、220、223、224、226、227、228、240、246、254、255、264、272等の赤色顔料を用いることができる。赤色着色組成物には、黄色顔料、オレンジ顔料を併用することができる。
【0014】
イエロー色着色組成物には、例えばC.I. Pigment Yellow 1、2、3、4、5、6、10、12、13、14、15、16、17、18、20、24、31、32、34、35、35:1、36、36:1、37、37:1、40、42、43、53、55、60、61、62、63、65、73、74、77、81、83、86、93、94、95、97、98、100、101、104、106、108、109、110、113、114、115、116、117、118、119、120、123、125、126、127、128、129、137、138、139、147、148、150、151、152、153、154、155、156、161、162、164、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、179、180、181、182、185、187、188、193、194、199等の黄色顔料を用いることができる。
【0015】
オレンジ色着色組成物には、例えばC.I. Pigment Orange 36、43、51、55、59、61等のオレンジ色顔料を用いることができる。
緑色着色組成物には、例えばC.I. Pigment Green 7、10、36、37等の緑色顔料を用いることができる。緑色着色組成物には黄色顔料を併用することができる。
青色着色組成物には、例えばC.I. Pigment Blue 15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、22、60、64等の青色顔料を用いることができる。青色着色組成物には、C.I. Pigment Violet 1、19、23、27、29、30、32、37、40、42、50等の紫色顔料を併用することができる。
【0016】
シアン色着色組成物には、例えばC.I. Pigment Blue15:1、15:2、15:4、15:3、15:6、16、81等の青色顔料を用いることができる。
マゼンタ色着色組成物には、例えばC.I. Pigment Violet 1、19、C.I. Pigment Red144、146、177、169、81等の紫色顔料および赤色顔料を用いることができる。マゼンタ色着色組成物には、黄色顔料を併用することができる。
【0017】
黒色着色組成物には、例えばカーボンブラック、アニリンブラック、アントラキノン系黒色顔料、ペリレン系黒色顔料、具体的には C.I. Pigment Black1、6、7、12、20、31等を用いることができる。黒色着色組成物には、赤色顔料、青色顔料、緑色顔料の混合物を用いることもできる。黒色顔料としては、価格、遮光性の大きさからカーボンブラックが好ましく、カーボンブラックは、樹脂などで表面処理されていてもよい。また、色調を調整するため、黒色着色組成物には、青色顔料や紫色顔料を併用することができる。
【0018】
無機顔料としては、硫酸バリウム、亜鉛華、硫酸鉛、黄色鉛、亜鉛黄、べんがら(赤色酸化鉄(III))、カドミウム赤、群青、紺青、酸化クロム緑、コバルト緑、アンバー、チタンブラック、合成鉄黒、酸化チタン、四酸化鉄などの金属酸化物粉や、金属硫化物粉や、金属粉等が挙げられる。無機顔料は、彩度と明度のバランスを取りつつ良好な印刷性、粘度安定性等を確保するために、有機顔料と組み合わせて用いられる。
本発明の着色組成物には、調色のため、耐熱性を低下させない範囲内で染料を含有させることができる。
【0019】
黒以外の色素は、着色組成物の全量を基準(100重量%)として、1〜22重量%の割合で含有されることが好ましい。また、黒色色素は、着色組成物の全量を基準(100重量%)として、3〜30重量%の割合で含有されることが好ましい。また、黒以外の色素は、最終の着色パターン中に10〜60重量%の割合で含有されることが好ましく、黒色色素は、最終の黒色パターン中に30〜70重量%の割合で含有されることが好ましい。なお、最終の着色パターンの残部は、色素担体により提供される樹脂質バインダーから実質的になる。
【0020】
色素担体は、透明樹脂、その前駆体またはそれらの混合物により構成される。透明樹脂は、可視光領域の400〜700nmの全波長領域において透過率が好ましくは80%以上、より好ましくは95%以上の樹脂である。透明樹脂には、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂が含まれ、その前駆体には、放射線照射または熱により重合して透明樹脂を生成するモノマーもしくはオリゴマーが含まれる。これらは、単独で、または2種以上混合して用いることができる。
色素担体は、着色組成物の全重量を基準(100重量%)として、1〜25重量%の割合で含有されることが好ましい
【0021】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ブチラール樹脂、スチレンーマレイン酸共重合体、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、シリコン樹脂、アルキッド樹脂、ポリスチレン、ポリアミド樹脂、ゴム系樹脂、環化ゴム系樹脂、セルロース類、ポリエチレン、ポリイミド樹脂等が挙げられる。
また、熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フマル酸樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。
【0022】
透明樹脂の前駆体としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、β−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、1, 6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、エステルアクリレート、メチロール化メラミンの(メタ)アクリル酸エステル、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタンアクリレート等の各種アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸、スチレン、酢酸ビニル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ビニルホルムアミド、アクリロニトリル等が挙げられる。
【0023】
これらの透明樹脂およびその前駆体は、分散性、相溶性、塗工性、膜形成性、転写性、熱硬化性付与のため、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、イソシアネート基、エポキシ基等の反応性の置換基を持つことが好ましい。
本発明の着色組成物は、1種または2種以上の色素を、色素担体および有機溶剤中に三本ロールミル、二本ロールミル、サンドミル、ニーダー、アトライター等の各種分散手段を用いて微細に分散して製造することができる。また、2種以上の色素を含む着色組成物は、各色素を別々に色素担体および有機溶剤中に微細に分散したものを混合して製造することもできる。色素を色素担体および有機溶剤中に分散する際には、適宜、樹脂型顔料分散剤、界面活性剤、色素誘導体等の分散助剤を含有させることができる。分散助剤は、顔料の分散に優れ、分散後の顔料の再凝集を防止する効果が大きいので、分散助剤を用いて顔料を色素担体および有機溶剤中に分散してなる着色組成物を用いた場合には、透明性に優れた着色パターンが得られる。
【0024】
樹脂型顔料分散剤としては、顔料に吸着する性質を有する顔料親和性部位と、色素担体と相溶性のある部位とを有し、顔料に吸着して顔料の色素担体への分散を安定化する働きをするものである。樹脂型顔料分散剤として具体的には、ポリウレタン、ポリアクリレートなどのポリカルボン酸エステル、不飽和ポリアミド、ポリカルボン酸、ポリカルボン酸(部分)アミン塩、ポリカルボン酸アンモニウム塩、ポリカルボン酸アルキルアミン塩、ポリシロキサン、長鎖ポリアミノアマイドリン酸塩、水酸基含有ポリカルボン酸エステル、ポリ(低級アルキレンイミン)と遊離のカルボキシル基を有するポリエステルとの反応により形成されたアミドやその塩、(メタ)アクリル酸−スチレン共重合体、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンや、これらの変性物、例えばエチレンオキサイド/プロピレンオキサイド付加物、燐酸エステル化物等が挙げられる。これらは、単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
【0025】
色素誘導体は、有機色素に置換基を導入した化合物であり、有機色素には、一般に色素とは呼ばれていないナフタレン系、アントラキノン系等の淡黄色の芳香族多環化合物も含まれる。色素誘導体としては、特開昭63−305173号公報、特公昭57−15620号公報、特公昭59−40172号公報、特公昭63−17102号公報、特公平5−9469号公報等に記載されているものを使用でき、これらは単独でまたは2種類以上を混合して用いることができる。
【0026】
本発明の着色組成物には、さらに、塗工ハジキや乾燥ムラ防止などの目的で、レベリング剤を含有させることができる。レベリング剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、スチレン−アクリル酸共重合体のアルカリ塩、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸モノエタノールアミン、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸アンモニウム、ステアリン酸モノエタノールアミン、ステアリン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、スチレン−アクリル酸共重合体のモノエタノールアミン、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルなどのアニオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリジメチルシロキサンーポリオキシアルキレンペンダント型共重合体、ポリオルガノシロキサン−ポリオキシアルキレンブロック型共重合体などのノニオン性界面活性剤;アルキル4級アンモニウム塩やそれらのエチレンオキサイド付加物などのカオチン性界面活性剤;アルキルジメチルアミノ酢酸ベタインなどのアルキルベタイン、アルキルイミダゾリンなどの両性界面活性剤が挙げられる。これらのレベリング剤は、単独で、または2種以上を混合して用いることができる。レベリング剤の含有量は、着色組成物の全重量を基準(100重量%)として、0.01〜0.8重量%であることが好ましい。
【0027】
また、本発明の着色組成物には、離型性面に塗布された塗膜に転写性を持たせるため、および硬化後の塗膜強度を確保するために、架橋剤を含有させることが好ましい。架橋剤としては、アルキル化メラミン樹脂、ジアリルフタレート、エポキシ化合物、イソシアネート化合物等が挙げられ、これらは単独または2種類以上混合して用いることができる。
架橋剤の含有量は、着色組成物の全重量を基準(100重量%)として、10〜60重量%であることが好ましい。
アルキル化メラミン樹脂としては、ヘキサメトキシメチロールメラミン、ヘキサブトキシメチロールメラミン等が挙げられる。
【0028】
エポキシ化合物としては、ビスフェノールフルオレンジグリシジルエーテル、ビスクレゾールフルオレンジグリシジルエーテル、ビスフェノキシエタノールフルオレンジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ジグリシジルテレフタレート、ジグリシジルo−フタレート、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、およびポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル等のポリオールのグリシジルエーテル、ポリグリシジルイソシアヌレート等が挙げられる。
【0029】
イソシアネート化合物としては、ヘキサメチレジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トルイジンイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4‘−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4‘−ジイソシアネート、ビス(4−イソシアネートシクロヘキシル)メタン、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等のジイソシアネート、これらジイソシアネートのイソシアヌレート体、トリメチロールプロパンアダクト型、ビウレット型、イソシアネート残基を有するプレポリマー(ジイソシアネートとポリオールから得られる低重合体)およびイソシアネート残基を有するウレトジオン等が挙げられる。イソシアネート化合物は、着色組成物の粘度安定性のために、ブロック化されたものが好ましい。
ブロック剤としては、フェノール(解離温度180℃以上)、ε−カプロラクタム(解離温度160〜180℃)、オキシム(解離温度130〜160℃)、活性メチレン(100〜120℃)等が挙げられる。
【0030】
本発明の着色組成物には、組成物の経時粘度を安定化させるために貯蔵安定剤を含有させることができ、透明基板との密着性を高めるためにシランカップリング剤等の密着向上剤を含有させることもできる。また、本発明の着色組成物には、塗膜性能向上などを目的としてパターン形成システムに応じて、熱架橋剤、光硬化剤などを添加することもできる。
貯蔵安定剤としては、例えばベンジルトリメチルクロライド、ジエチルヒドロキシアミンなどの4級アンモニウムクロライド、乳酸、シュウ酸などの有機酸およびそのメチルエーテル、t−ブチルピロカテコール、テトラエチルホスフィン、テトラフェニルフォスフィンなどの有機ホスフィン、亜リン酸塩等が挙げられる。
【0031】
シランカップリング剤としては、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等のビニルシラン類、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリルシラン類、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシシラン類、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジエトキシシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノシラン類、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等のチオシラン類、イミダゾールシラン等が挙げられる。
【0032】
本発明の着色組成物は、遠心分離、焼結フィルタ、メンブレンフィルタ等の手段にて、5μm以上の粗大粒子、好ましくは1μm以上の粗大粒子、さらに好ましくは0.5μm以上の粗大粒子および混入した塵の除去を行うことが好ましい。
【0033】
本発明の着色組成物は、着色組成物をシリコーンゴムからなる離型性面に塗布して塗布面を形成する塗布面形成工程と、前記塗布面を半乾燥する乾燥工程と、前記塗布面に所定形状の凸版を押圧して凸版の凸部分に着色組成物を転写して除去する除去工程と、塗布面に残った着色組成物を基材に転写する転写工程とからなる凸版反転オフセット印刷法に使用する着色組成物である。
この凸版反転オフセット印刷法とは、図1に示すように、まずCAPコーター5によりシリコーンブランケット4の表面に均一な厚みのインキ塗膜2を形成する。表面に均一なインキ塗膜2が形成された後、シリンダー3を回転させながら乾燥ユニット6から熱風を供給し、インキ塗膜2を半乾燥状態にする。ついで、半乾燥状態のインキ塗膜2が形成されたシリコーンブランケット4の表面を凸版7に押圧、接触させ、凸版7の凸部の表面に、シリコーンブランケット4上のインキ塗膜2の一部を付着、転写させる。これによりシリコーンブランケット4の表面に残ったインキ塗膜2には印刷パターン(画像)が形成される。さらに、この状態のシリコーンブランケット4を基材8の表面に押圧して、シリコーンブランケット4上に残ったインキ塗膜2を転写し、基材8上に転写されたインキ塗膜2を乾燥する方法である。
【実施例】
【0034】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。なお、実施例中、「部」および「%」は、「重量部」および「重量%」をそれぞれ表す。
[アクリル樹脂の合成]
攪拌機、温度計、コンデンサー、窒素導入管を取り付けた2000mlフラスコにシクロヘキサノン500部を入れ、容器に窒素ガスを注入しながら90℃に加熱して、同温度でシクロヘキサノン200部、メチルメタクリレート75部、n−ブチルメタクリレート75部、スチレン75部、メタクリル酸45部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート30部、およびアゾビスイソブチロニトリル6部の混合物を2時間かけて滴下し、更に90℃で4時間反応させ、アクリル樹脂を合成した。室温まで冷却し、不揮発分を20%になるように調整しアクリル樹脂溶液を得た。アクリル樹脂の重量平均分子量は30000であった。
【0035】
[黒色顔料分散体の調製]
黒色顔料(三菱化学社製「カーボンブラック#47」)14部、樹脂型顔料分散剤(ゼネカ社製「ソルスパーズ20000」)1部、アクリル樹脂溶液26部、シクロヘキサノン61部の混合物にジルコニアビーズを加え、ペイントシェーカー(レッドデビル社製)にて4時間分散し、シクロヘキサノンを添加して不揮発分20%の黒色顔料分散体を得た。
【0036】
[青色顔料分散体の調製]
青色顔料(BASF社製「ヘリオゲンブルーL−6700F」)14部、分散剤(ゼネカ社製「ソルスパーズ20000」)2.2部、上記アクリル樹脂溶液25部、シクロヘキサノン61部の混合物にジルコニアビーズを加え、ペイントシェーカー(レッドデビル社製)にて4時間分散し、シクロヘキサノンを添加して不揮発分20%の青色顔料分散体を得た。
【0037】
[赤色顔料分散体の調製]
赤色顔料(チバガイギー社製「イルガフォーレッドB−CF」)11.7部、赤色顔料(チバガイギー社製「クロモフタールレッドA2B」)2.0部、黄色顔料(チバガイギー社製「クロモフタールエローGT-AD」)0.3部、分散剤(ゼネカ社製「ソルスパーズ20000」)0.6部、上記アクリル樹脂溶液25部、シクロヘキサノン61部の混合物にジルコニアビーズを加え、ペイントシェーカー(レッドデビル社製)にて4時間分散し、シクロヘキサノンを添加して不揮発分20%の赤色顔料分散体を得た。
【0038】
[緑色顔料分散体の調製]
緑色顔料(東洋インキ製造社製「リオノールグリーン6YK」)8.1部、黄色顔料(バイエル社製「ファンチョンファーストエローY−5688」)5.9部 分散剤(ゼネカ社製「ソルスパーズ20000」)2.1部、上記アクリル樹脂溶液25部、シクロヘキサノン61部の混合物にジルコニアビーズを加え、ペイントシェーカー(レッドデビル社製)にて4時間分散し、シクロヘキサノンを添加して不揮発分20%の緑色顔料分散体を得た。
【0039】
(実施例1〜4および比較例1〜2)
表1の着色組成物実施処方に示す割合(組成物の全量を100とした重量比)の顔料分散体、アクリル樹脂溶液、架橋剤としてメラミン樹脂(日本サイテックインダストリーズ株式会社製「マイコート506」)、有機溶剤、およびレベリング剤(日本ユニカー社製FZ2203)からなる混合物を均一になるように攪拌混合した後、1μmのフィルタで濾過して、インキ(着色組成物)を得た。なお、シリコーンゴムの酢酸イソプロピルによる体積膨張率は、70%であった。
得られたインキについて、下記の方法で塗工性を評価した。結果を表1に示す。
【0040】
[インキ塗工性評価]
シリコーンゴム製のオフセットブランケット(ゴム硬度(JIS A):50°、表面粗度(十点平均粗さ):0.3μm)をシリンダー部に巻きつけ、CAPコーターにて乾燥塗膜厚が1〜2μmとなるように適宜塗工速度を調節して塗工を行い、下記の基準でインキハジキ性の評価を行った。
<評価基準>
◎:塗工面にハジキがなく、均一な塗工面ができる。
○:塗工面にハジキはないが、わずかな縦筋の濃淡ムラが発生する。
△:塗工面にハジキはないが、塗工面全体の濃淡ムラが激しい。
×:塗工面にハジキが発生する。
【0041】
[連続印刷性評価]
図1に示す薄膜印刷装置を用いて、シリコーンゴム製のオフセットブランケット(ゴム硬度(JIS A):50°、表面粗度(十点平均粗さ):0.3μm)をシリンダー部に巻きつけ、CAPコーターにて乾燥塗膜厚が1〜2μmとなるように適宜塗工速度を調節して塗工を行い、次いで、乾燥ユニットから約100℃の温風を100L/min程度の風量でシリンダーを一回転させて半乾燥する。更に該塗布面に100μmピッチのラインアンドスペース形状の凸版を押圧して凸版の凸部分に着色組成物を転写して除去、シリンダー上に残ったパターニングされた着色組成物をガラス基板に転写し、初版でパターニングされたストライプ線幅に対し、連続10回パターニング後のストライプ線幅の増減率(%)を算出した。
<評価基準>
◎:ストライプ線幅増減率が±2%未満である。
○:ストライプ線幅増減率が±2%以上、±5%未満である。
△:ストライプ線幅増減率が±5%以上、±10%未満である。
×:ストライプ線幅増減率が±10%以上である。
【表1】

*1 顔料+分散剤+アクリル樹脂+架橋剤+レベリング剤
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】実施例の連続印刷性評価における、薄膜印刷装置を用いた印刷方法を示す概念図である。
【符号の説明】
【0043】
1:インキ
2:インキ塗膜
3:シリンダー
4:シリコーンブランケット
5:CAPコーター
6:乾燥ユニット
7:凸版
8:基材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着色組成物をシリコーンゴムからなる離型性面に塗布して塗布面を形成する塗布面形成工程と、前記塗布面を半乾燥する乾燥工程と、前記塗布面に所定形状の凸版を押圧して凸版の凸部分に着色組成物を転写して除去する除去工程と、塗布面に残った着色組成物を基材に転写する転写工程とからなる凸版反転オフセット印刷法に使用する着色組成物であって、該着色組成物が、前記離型性面の有機溶剤による体積膨張率が0%以上50%以下であり、かつ760mmHgにおける沸点が110℃以上の有機溶剤と、色素と、色素担体とを含有することを特徴とする着色組成物。
【請求項2】
有機溶剤が、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、2−エトキシエチルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチルからなる群から選ばれる少なくとも一種の溶剤を含む請求項1記載の着色組成物。
【請求項3】
さらに、レベリング剤を含有することを特徴とする請求項1または2記載の着色組成物。
【請求項4】
さらに、架橋剤を含有することを特徴とする請求項1ないし3いずれか記載の着色組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2007−31463(P2007−31463A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−212213(P2005−212213)
【出願日】平成17年7月22日(2005.7.22)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】