説明

凹凸歯車の加工装置

【課題】種々の凹凸歯車の凹歯を加工することができる加工装置を提供する。
【解決手段】加工装置100は、凹歯(揺動凹歯)15bの加工前の凹凸歯車(揺動歯車)15である円盤状ワークWに対して加工工具140を相対的に移動可能な、相互に直交する3つの直動軸と2つの回転軸とを備える。そして、相手歯車(固定軸)12と凹凸歯車15との間で動力を伝達する際における凹凸歯車15に対する相手歯車12の凸歯ピン12bの相対動作軌跡を抽出し、抽出された凸歯ピン12bの相対動作軌跡に基づいて加工工具140により凹凸歯車の凹歯15bを加工する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凹凸歯車の加工装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
減速機の一つとして、揺動型歯車装置がある。この揺動型歯車装置は、例えば、特許文献1の図3などに記載されている。すなわち、揺動型歯車装置は、同一の回転中心軸を有する第一歯車、第二歯車および入力軸と、第一歯車と第二歯車との間にて揺動しながら差動回転する揺動歯車とから構成される。揺動歯車は、入力軸によって傾斜した回転中心軸の回りに回転可能に支持されている。さらに、揺動歯車は、入力軸が回転することに伴って傾斜した回転中心軸が第一歯車の回転中心軸の回りに相対回転することで、第一歯車および第二歯車に対して揺動する。そして、揺動歯車のうち第一歯車側の面には、第一歯車に噛合する第一揺動歯が形成され、揺動歯車のうち第二歯車側の面には、第二歯車に噛合する第二揺動歯が形成されている。そして、揺動歯車が揺動することで、第一歯車と揺動歯車との間、もしくは、第二歯車と揺動歯車との間で、差動回転が行われる。つまり、入力軸に対して、第二歯車を出力軸とした場合に、大きな減速比によって減速することができる。
【0003】
この揺動歯車は、第一歯車または第二歯車との噛み合い面が非常に複雑であるため、加工が容易ではない。この揺動歯車の加工装置として、例えば、特許文献1〜4に記載されたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−272497号公報
【特許文献2】特開2006−315111号公報
【特許文献3】特開平10−235519号公報
【特許文献4】特公平7−56324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、平歯車やかさ歯車などの歯車の加工は、種々の加工方法が提案され、実現されている。揺動歯車の加工についても、特許文献1〜4に記載されているように専用機を用いて実現されている。しかし、平歯車、かさ歯車および揺動歯車などの凹凸歯車の加工は、特殊な加工装置を用いたり特殊な技能を要したり、容易とは言えない。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、凹凸歯車の加工装置として新しい加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、請求項1に係る発明の特徴は、
凹歯と凸歯が周方向に連続して形成され、当該凹歯が相手歯車の凸歯に噛合することにより前記相手歯車との間で動力伝達可能な凹凸歯車の加工装置であって、
前記凹歯の加工前の前記凹凸歯車である円盤状ワークに対して加工工具を相対的に移動可能な、相互に直交する3つの直動軸と2つの回転軸とを備え、
前記相手歯車と前記凹凸歯車との間で動力を伝達する際における、前記凹凸歯車に対する前記相手歯車の凸歯の相対動作軌跡を抽出し、抽出された前記相手歯車の凸歯の前記相対動作軌跡に基づいて、前記加工工具により前記凹凸歯車の凹歯を加工することである。
【0008】
請求項2に係る発明の特徴は、請求項1において、前記相手歯車の凸歯の数と前記凹凸歯車の凹歯の数が異なることである。
請求項3に係る発明の特徴は、請求項1または2において、前記凹凸歯車は、前記相手歯車の回転中心軸に対して交差する交差軸を中心として回転する歯車であることである。
【0009】
請求項4に係る発明の特徴は、請求項3において、
前記相手歯車の凸歯の外周面における当該凸歯の基準軸直交方向の断面形状は、円弧状に形成され、
前記相手歯車と前記凹凸歯車との間で動力を伝達する際における前記凹凸歯車に対する前記相手歯車の凸歯の相対動作軌跡は、
前記相手歯車の凸歯の基準位置を、前記円盤状ワークの凹歯形成面に接する面に直交する方向に移動させる第一直動軸と、
前記相手歯車の凸歯の基準位置を、前記円盤状ワークの凹歯形成面に接する面上であって、前記凹凸歯車の凹歯の歯溝方向に移動させる第二直動軸と、
前記相手歯車の凸歯の基準位置を、前記円盤状ワークの凹歯形成面に接する面上であって、前記第二直動軸に直交する方向に移動させる第三直動軸と、
前記相手歯車の凸歯の基準位置を前記第一直動軸の回りに回転させる第四回転軸と、
前記相手歯車の凸歯の基準位置を前記第三直動軸の回りに回転させる第五回転軸と、
前記凹凸歯車の回転中心軸に一致し前記凹凸歯車の回転位相を割り出す第六割出軸と、
により表わされ、
前記第四回転軸を前記第六割出軸に一致させることにより、前記3つの直動軸を前記第一直動軸、前記第二直動軸および前記第三直動軸に対応させ、前記2つの回転軸を前記第五回転軸および前記第六割出軸に対応させることで、前記凹凸歯車の凹歯の加工を行うことである。
【0010】
請求項5に係る発明の特徴は、請求項1〜4の何れか一項において、前記相手歯車は、前記凸歯を一体形成する相手歯車本体、または、前記凸歯と別体形成され前記凸歯を支持する前記相手歯車本体を備え、前記相手歯車の凸歯の外周面における当該凸歯の基準軸直交方向の断面形状は、円弧状に形成され、前記加工工具は、円盤状工具であることである。
【0011】
請求項6に係る発明の特徴は、請求項5において、前記円盤状ワークおよび前記加工工具の少なくとも一方を移動させて加工シミュレーションを行うシミュレーション手段と、予め設定された理想形状モデルと前記加工シミュレーションの結果の形状とを比較して、前記円盤状工具の中心軸を前記凹凸歯車の凹歯の歯溝方向にずらして切り込み動作の位置を算出する切り込み位置算出手段と、を備え、前記加工装置は、前記切り込み位置算出手段にて算出された切り込み動作の位置に基づいて、前記凹凸歯車の凹歯の加工を行うことである。
【0012】
請求項7に係る発明の特徴は、請求項6において、前記切り込み位置算出手段は、前記加工シミュレーションの結果の形状と前記理想形状モデルとの誤差が設定された許容値以内にしつつ、加工時間が最も短くなるような前記切り込み動作の位置を算出することである。
【0013】
請求項8に係る発明の特徴は、請求項1〜4の何れか一項において、前記相手歯車は、前記凸歯を一体形成する相手歯車本体、または、前記凸歯と別体形成され前記凸歯を支持する前記相手歯車本体を備え、前記相手歯車の凸歯の外周面における当該凸歯の基準軸直交方向の断面形状は、円弧状に形成され、前記加工工具は、前記凸歯の外周形状に一致または相似するピン形状に形成されていることである。
【0014】
請求項9に係る発明の特徴は、請求項1〜4の何れか一項において、前記相手歯車は、前記凸歯を一体形成する相手歯車本体、または、前記凸歯と別体形成され前記凸歯を支持する前記相手歯車本体を備え、前記相手歯車の凸歯の外周面における当該凸歯の基準軸直交方向の断面形状は、円弧状に形成され、前記加工工具は、回転するベルト状の工具であって、回転方向に直線部を有することである。
【0015】
請求項10に係る発明の特徴は、請求項1〜9の何れか一項において、前記円盤状ワークを保持するワーク保持部を、前記3つの直動軸のうち何れか1つと、前記2つの回転軸とに動作させるワーク動作手段と、前記加工工具を、前記3つの直動軸のうち残りの2つに動作させる工具動作手段と、を備え、前記ワーク動作手段が動作させる1つの前記直動軸は、ベッドの上面にて前記ワーク保持部を水平方向に動作させる軸であることである。
【0016】
請求項11に係る発明の特徴は、請求項1〜9の何れか一項において、前記円盤状ワークを保持するワーク保持部を、前記3つの直動軸のうち何れか1つと、前記2つの回転軸とに動作させるワーク動作手段と、前記加工工具を、前記3つの直動軸のうち残りの2つに動作させる工具動作手段と、を備え、前記ワーク動作手段が動作させる1つの前記直動軸は、ベッドの上面にて前記ワーク保持部を鉛直方向に動作させる軸であることである。
【0017】
請求項12に係る発明の特徴は、請求項1〜9の何れか一項において、前記円盤状ワークを保持するワーク保持部を、前記2つの回転軸に動作させるワーク動作手段と、前記加工工具を、前記3つの直動軸に動作させる工具動作手段と、を備えることである。
【発明の効果】
【0018】
上記のように構成した請求項1に係る発明によれば、NC工作機械を用いて、凹凸歯車の凹歯を加工することが可能となる。つまり、種々の形状の凹凸歯車に対して、同一のNC工作機械で加工することができる。具体的には、抽出された相手歯車の凸歯の相対動作軌跡に基づいてNCプログラムを生成し、当該NCプログラムを用いることで加工工具により凹凸歯車の凹歯を加工することができるようになる。このように、非常に容易に凹凸歯車の凹歯を加工することができる。
【0019】
そして、本発明の加工装置は、3つの直動軸と2つの回転軸のみで、凹凸歯車の凹歯を加工することができる。ここで、3つの直動軸と2つの回転軸を有する加工装置としては、5軸マシニングセンタなどの工作機械が存在する。つまり、本発明によれば、既存の工作機械を、凹凸歯車の凹歯の加工装置として適用することができる。
【0020】
請求項2に係る発明によれば、相手歯車の歯数と凹凸歯車の歯数が異なるため、相手歯車と凹凸歯車とが差動回転しながら動力伝達可能な構成となる。そして、両者の歯数が異なるため、凹凸歯車の凹歯の形状が非常に複雑な形状となる。このような場合であっても、本発明を適用することで、確実に凹凸歯車の凹歯を加工することができる。なお、相手歯車の歯数と凹凸歯車の歯数が同一である場合、すなわち同じ回転数で回転しながら動力伝達する場合にも、本発明の加工方法を適用できることは言うまでもない。
【0021】
ここで、相手歯車に対して交差軸を中心として回転する凹凸歯車(以下、「交差軸を有する凹凸歯車」とも称する)において、相手歯車と凹凸歯車との噛み合い率は高くなる。そのため、小型化、高強度化および静粛性を図ることが可能となる。一方で、良好な歯当たりを実現するためには、非常に高い精度の歯面形状を形成する必要があり、歯面形状の加工が容易ではないという問題がある。これに対して、請求項3に係る発明によれば、交差軸を有する凹凸歯車の凹歯を、容易にかつ高精度に形成することができる。その結果、本発明によれば、従来と同程度の精度にする場合には加工コストを低減することができる。なお、交差軸を有する凹凸歯車の他に、平行軸を有する凹凸歯車、いわゆる平歯車にも本発明を適用できる。
【0022】
請求項4に係る発明によれば、3つの直動軸と3つの回転軸のうち第四回転軸を省略できるため、確実に、3つの直動軸と2つの回転軸の機械構成により、加工することができるようになる。
【0023】
請求項5に係る発明によれば、円盤状工具を用いて相手歯車の凸歯を擬似的に表現することができる。つまり、円盤状工具を用いて、確実に凹凸歯車の凹歯を加工できる。さらに、円盤状工具を用いることで、工具剛性を高めることができ、高精度な加工が可能となる。ただし、円盤状工具を用いる場合には、加工に際して、円盤状工具の中心軸を凹凸歯車の凹歯の歯溝方向にずらした複数箇所にて切り込む動作により、円盤状工具により相手歯車の凸歯を擬似的に表現することによって、凹凸歯車の凹歯を円盤状工具にて加工することになる。
【0024】
請求項6に係る発明によれば、理想形状モデルとシミュレーションモデルを比較によって得られた切り込み動作の位置に基づいて加工を行うことで、高精度な凹凸歯車の凹歯を形成することができる。
請求項7に係る発明によれば、加工精度を許容値以内に確保しつつ、最短時間の加工条件を算出することができる。
【0025】
請求項8に係る発明によれば、加工工具を相手歯車の凸歯に一致または相似する形状とすることで、加工工具の動作を相手歯車の凸歯と同様の動作とすることで、最適な凹凸歯車の凹歯を形成することができる。
請求項9に係る発明によれば、ベルト状の工具の直線部により相手歯車の凸歯を表現することが容易に可能となる。従って、ベルト状の工具の直線部の動作を、相手歯車の凸歯と同様の動作とすることで、最適な凹凸歯車の凹歯を形成することができる。
【0026】
請求項10に係る発明によれば、既存の横型3軸マシニングセンタの機械構成をベースに、回転軸を追加する機械構成とすることで対応できる。一般に、横型3軸マシニングセンタの直動軸の移動可能距離は、十分に確保できる。従って、本発明によれば、直動軸の移動可能距離を長くする構成であっても適用可能となる。
【0027】
請求項11に係る発明によれば、既存の3軸研削盤の機械構成をベースに、回転軸を追加する機械構成とすることで対応できる。研削盤の砥石は、エンドミルなどの工具に比べて質量が大きい。つまり、本発明によれば、大きな質量の加工工具を用いた場合にも、加工工具を安定して位置決めすることが可能となる。
【0028】
請求項12に係る発明によれば、既存の3軸門型マシニングセンタの機械構成をベースに、回転軸を追加する機械構成とすることで対応できる。この場合、門型構成により加工工具を支持するため、大きな質量の加工工具を用いた場合にも、加工工具を安定して位置決めすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】第一実施形態の加工装置の斜視図である。
【図2】揺動型歯車装置の軸方向断面図である。(a)は凸歯ピンが固定軸本体および出力軸本体に対して別体に形成されている場合を示し、(b)は凸歯ピンが固定軸本体および出力軸本体に対して一体に形成されている場合を示す。
【図3】凸歯ピン(凸歯)と揺動歯車の噛み合い部の拡大図であって、凸歯ピンの軸方向から見た図である。(a)は凸歯ピンが固定軸に対して別体形成されている場合を示し、(b)は凸歯ピンが固定軸に対して一体形成されている場合を示す。
【図4】揺動凹歯の斜視図である。
【図5】(a)は、揺動凹歯を揺動歯車の径方向外方から見た図である。(b)は、揺動凹歯を揺動歯車の回転中心軸方向から見た図である。
【図6】第一実施形態の加工装置における処理を示すフローチャートである。
【図7】揺動歯車の揺動凹歯と凸歯ピン(凸歯)との相対的な動作を示す図である。(a1)は、凸歯ピンが揺動凹歯に噛み合う前の状態の両者の相対位置における揺動歯車の回転中心軸方向から見た図である。(a2)は、(a1)の右側から見た図である。(b1)は、凸歯ピンが揺動凹歯に噛み合っている状態の両者の相対位置における揺動歯車の回転中心軸方向から見た図である。(b2)は、(b1)の右側から見た図である。(c1)は、凸歯ピンが揺動凹歯に対して噛み合い状態から離れた時の状態の両者の相対位置における揺動歯車の回転中心軸方向から見た図である。(c2)は、(c1)の右側から見た図である。図5において、凸歯ピンの基準軸(凸歯ピンの長手方向の一点鎖線)および凸歯ピンの中心位置(黒丸)を示す。
【図8】(a)は、揺動歯車の回転中心軸方向から見た場合における、揺動歯車に対する凸歯ピンの基準軸および凸歯ピンの中心位置の動作軌跡を示す図である。(b)揺動歯車の径方向から見た場合における、揺動歯車に対する凸歯ピンの基準軸および凸歯ピンの中心位置の動作軌跡を示す図である。丸の中の数字は、軸番号に一致する。
【図9】第四回転軸の動作を第六割出軸と第三直動軸に分解する場合の説明図である。つまり、凸歯ピンの中心位置を第三直動軸の上に移動させる場合の図である。
【図10】必要とする工作機械の軸構成を説明する図である。(a)は第二直動軸および第三直動軸に平行な平面における工作機械の軸構成を示し、(b)は、第一直動軸および第二直動軸に平行な平面における工作機械の軸構成を示す。丸の中の数字は、軸番号に一致する。
【図11】トロイダル砥石(円盤状工具)を示す図である。(a)は、トロイダル砥石を当該回転軸方向から見た図であり、(b)は、径方向から見た図である。
【図12】トロイダル砥石を揺動凹歯の歯溝方向に対して1箇所の切り込み位置にて切り込み動作を行った場合における揺動凹歯の加工形状を示す図である。(a)は、揺動歯車の回転中心軸方向から見た図であり、(b)は、(a)の右側から見た図である。
【図13】トロイダル砥石を揺動凹歯の歯溝方向に対して3箇所の切り込み位置にて切り込み動作を行う場合の説明図である。
【図14】第二実施形態において、第四回転軸の動作を第六割出軸と第二直動軸に分解する場合の説明図である。つまり、凸歯ピンの中心位置を第二直動軸の上に移動させる場合の図である。
【図15】第三実施形態の加工装置の斜視図である。
【図16】第四実施形態の加工装置の斜視図である。
【図17】第五実施形態において、(a)は、回転ベルト砥石の回転軸方向から見た図であり、(b)は、(a)のA−A断面図である。
【図18】第五実施形態における処理を示すフローチャートである。
【図19】第六実施形態において、交差軸を有する凹凸歯車により構成される動力伝達装置の断面図である。(a)は凸歯ピンが入力軸本体に対して別体に形成されている場合を示し、(b)は凸歯ピンが入力軸本体に対して一体に形成されている場合を示す。
【図20】その他の変形態様における凸歯を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の凹凸歯車の加工装置を具体化した実施形態について図面を参照しつつ説明する。ここで、凹凸歯車の回転中心軸と相手歯車の回転中心軸とが交差する場合における凹凸歯車と相手歯車との関係を2組有するものが、揺動歯車装置となる。本実施形態においては、揺動型歯車装置の揺動歯車の加工装置を例に挙げて説明する。なお、以下の説明において、揺動歯車が本発明の「凹凸歯車」に相当し、固定軸12および出力軸13が本発明の「相手歯車」に相当する。
【0031】
<第一実施形態>
第一実施形態の揺動型歯車装置の揺動歯車の加工装置について、図1〜図13を参照して説明する。本実施形態における加工装置は、3つの直交する直動軸と、2つの回転軸を有する5軸構成の場合を示している。
【0032】
(1)加工装置100の構成
図1に示すように、加工装置100は、3軸横型マシニングセンタをベースとして、円盤状ワークW(揺動歯車)を載置するテーブルが、2つの回転軸回りに回転する構成である。ここで、図1および以下の図において、○の中の数字が、当該各軸の番号に一致する。例えば、○の中の数字が「1」で示される軸は、第一直動軸となる。
【0033】
詳細には、加工装置100は、ベッド110と、コラム120と、主軸頭130と、トロイダル砥石140(円盤状工具)と、ワーク支持基体150と、第一回転テーブル160と、第二回転テーブル170(本発明の「ワーク保持部」に相当する)とを備える。
【0034】
ベッド110は、扁平な直方体をなし、床面に設置されている。コラム120は、ベッド110の上を第二直動軸の方向に移動可能となるように、ベッド110の上に配置されている。主軸頭130は、コラム120に対して第一直動軸方向に移動可能となるように、コラム120に搭載されている。この主軸頭130は、内部に第三直動軸の回りに回転可能な主軸を備えている。トロイダル砥石140(円盤状工具)は、主軸頭130の主軸の一端に固定され、主軸の回転に伴って第三直動軸の回りに回転する。つまり、トロイダル砥石140は、ベッド110に対して第一直動軸および第二直動軸の動作をすることができる。ここで、トロイダル砥石140をベッド110に対して動作させるコラム120および主軸頭130が、本発明における「工具動作手段」に相当する。
【0035】
ワーク支持基体150は、ベッド110の上を第三直動軸の方向に移動可能となるように、ベッド110の上に配置されている。このワーク支持基体150は、内部に第三直動軸の回り(第五回転軸)に回転可能な回転軸を有している。第一回転テーブル160は、第二直動軸の方向から見た場合にはL字形状をなしており、当該L字形状の一方がワーク支持基体150の回転軸に固定されている。つまり、第一回転テーブル160は、ワーク支持基体150に対して第五回転軸の動作を行う。この第一回転テーブル160のL字形状の他方には、図1における第一直動軸の回り(第六割出軸)に回転可能な回転軸を有している。第二回転テーブル170は、第一回転テーブル160のL字形状の他方の上面に、第一回転テーブル160の回転軸に固定されている。つまり、第二回転テーブル170は、ベッド110に対して、第三直動軸、第五回転軸および第六割出軸の動作をすることができる。そして、この第二回転テーブル170の上面に、加工されることによって揺動歯車15となる円盤状ワークWが固定されている。
【0036】
ここで、円盤状ワークWをベッド110に対して動作させるワーク支持基体150、第一回転テーブル160および第二回転テーブル170が、本発明における「ワーク動作手段」に相当する。
【0037】
(2)揺動型歯車装置の構成
次に、本発明の加工対象である揺動歯車が用いられる揺動型歯車装置の構成について、図2〜図5を参照して説明する。ここで、図2(a)は、凸歯ピン12b,13bが、固定軸本体12aおよび出力軸本体13aに対して別体形成されている場合を示し、図2(b)は、凸歯ピン12b,13bが、固定軸本体12aおよび出力軸本体13aに対して一体形成されている場合を示す。なお、以下において、主として図2(a)を参照して説明し、図2(b)については、図2(a)と相違する点のみについて説明する。
【0038】
揺動型歯車装置は、減速機として用いられ、非常に大きな減速比を得ることができる減速機として注目されている。この揺動型歯車装置は、図2(a)に示すように、主として、入力軸11と、固定軸12(本発明の「相手歯車」に相当)と、出力軸13(本発明の「相手歯車」に相当)と、外輪14と、内輪15(本発明の「凹凸歯車」に相当)と、転動体16とを備えている。
【0039】
入力軸11は、モータ(図示せず)のロータを構成し、モータが駆動することで回転する軸である。この入力軸は、円筒状をなしており、回転中心軸A(図2(a)に示す)の回りに回転する。入力軸11の内周面には、傾斜面11aが形成されている。この傾斜面11aは、回転中心軸Aに対して僅かな角度だけ傾斜した軸線Bを中心軸とする円筒内周面である。
【0040】
固定軸12(本発明の「相手歯車」に相当する)は、図示しないハウジングに固定されている。固定軸12は、固定軸本体12aと、複数の凸歯ピン12bとから構成される。固定軸本体12a(本発明の「相手歯車本体」に相当する)は、軸線Aを回転中心軸とする円筒状の部材である。凸歯ピン12b(本発明の「相手歯車の凸歯」に相当する)は、固定軸本体12aの軸方向端面に、回転中心軸Aの周方向に等間隔に複数(G1)個支持されている。そして、それぞれの凸歯ピン12bは、円柱状または円筒状に形成されており、当該凸歯ピン12bが放射状に配置されるようにその両端を固定軸本体12aに支持されている。さらに、それぞれの凸歯ピン12bは、凸歯ピン12bの軸方向(基準軸方向)で、かつ、固定軸本体12aの径方向の軸を中心として回転可能となるように、固定軸本体12aに支持されている。さらに、凸歯ピン12bの一部は、固定軸本体12aの軸方向端面から突出している。つまり、固定軸12は、歯数Z1の凸歯を有する歯車として機能する。
【0041】
また、上記説明においては、図2(a)および図3(a)に示すように、固定軸12の凸歯ピン12bは、固定軸本体12aに対して別体形成し、固定軸本体12aに支持されるようにした。この他に、図2(b)および図3(b)に示すように、凸歯ピン12bを、固定軸本体12aに一体形成することもできる。この場合、一体形成した凸歯ピン12bは、別体形成された場合における凸歯ピン12bの固定軸本体12aの軸方向端面から突出している部分と同様に、固定軸本体12aに相当する部分の軸方向端面から突出している。
【0042】
出力軸13(本発明の「相手歯車」に相当する)は、図示しないハウジングに対して回転中心軸Aの回りに回転可能に支持され、図示しない出力部材に連結されている。出力軸13は、出力軸本体13aと、複数の凸歯ピン13bとから構成される。出力軸本体13a(本発明の「相手歯車本体」に相当する)は、軸線Aを回転中心軸とする円筒状の部材である。つまり、出力軸本体13aは、入力軸11および固定軸本体12aと同軸状に設けられている。
【0043】
凸歯ピン13b(本発明の「相手歯車の凸歯」に相当する)は、出力軸本体13aの軸方向端面に、回転中心軸Aの周方向に等間隔に複数(G4)個支持されている。そして、それぞれの凸歯ピン13bは、円柱状または円筒状に形成されており、当該凸歯ピン13bが放射状に配置されるようにその両端を出力軸本体13aに支持されている。さらに、それぞれの凸歯ピン13bは、凸歯ピン13bの軸方向(基準軸方向)で、かつ、出力軸本体13aの径方向の軸を中心として回転可能となるように、出力軸本体13aに支持されている。さらに、出力軸本体13aのうち凸歯ピン13bを支持する軸方向端面は、固定軸本体12aのうち凸歯ピン12bを支持する軸方向端面に対して、軸方向所定距離だけ離隔して対向するように設けられている。さらに、凸歯ピン13bの一部は、出力軸本体13aの軸方向端面から突出している。つまり、出力軸13は、歯数Z4の凸歯を有する歯車として機能する。
【0044】
また、上記説明においては、出力軸13の凸歯ピン13bは、出力軸本体13aに対して別体形成し、出力軸本体13aに支持されるようにした。この他に、図2(b)および図3(b)に相当するように、凸歯ピン13bを、出力軸本体13aに一体形成することもできる。この場合、一体形成した凸歯ピン13bは、別体形成された場合における凸歯ピン13bの出力軸本体13aの軸方向端面から突出している部分と同様に、出力軸本体13aに相当する部分の軸方向端面から突出している。
【0045】
外輪14は、内周面に軌道面を有する円筒状に形成されている。この外輪14は、入力軸11の傾斜面11aに圧入嵌合されている。つまり、外輪14は、入力軸11と一体的となり、回転中心軸Bの回りに回転可能となる。
【0046】
内輪15(本発明の「凹凸歯車」に相当する)は、ほぼ円筒状に形成されている。この内輪15の外周面には、転動面15aが形成されている。さらに、内輪15の軸方向一方(図2(a)の右側)の端面には、周方向に等間隔に複数(G2)個の揺動凹歯15bが形成されている。また、内輪15の軸方向他方(図2(a)の左側)の端面には、周方向に等間隔に複数(G3)個の揺動凹歯15cが形成されている。
【0047】
この内輪15は、外輪14の径方向内方に離隔して配置され、複数の転動体(球体)16を挟んでいる。つまり、内輪15は、回転中心軸Aに対して傾斜した回転中心軸Bを有する。従って、内輪15は、入力軸11に対して、回転中心軸Bの回りに回転可能となる。さらに、内輪15は、モータ駆動により入力軸11が回転中心軸Aの回りに回転することに伴って、回転中心軸Aの回りに回転可能となる。
【0048】
さらに、内輪15は、固定軸12と出力軸13との軸方向の間に配置されている。具体的には、内輪15は、固定軸本体12aのうち凸歯ピン12bを支持する軸方向端面と、出力軸本体13aのうち凸歯ピン13bを支持する軸方向端面との間に配置されている。そして、内輪15の一方の揺動凹歯15bは、固定軸12の凸歯ピン12bに噛合する。また、内輪15の他方の揺動凹歯15cは、出力軸13の凸歯ピン13bに噛合する。
【0049】
そして、内輪15は、固定軸12に対して回転中心軸Aの回りに揺動するため、内輪15の一方の揺動凹歯15bの一部(図2(a)の上側の部分)は、固定軸12の凸歯ピン12bに噛合しているが、当該一方の揺動凹歯15bの他の一部(図2(a)の下側の部分)は、固定軸12の凸歯ピン12bから離間している。また、内輪15は、出力軸13に対して回転中心軸Aの回りに揺動するため、内輪15の他方の揺動凹歯15cの一部(図2(a)の下側の部分)は、出力軸13の凸歯ピン13bに噛合しているが、当該他方の揺動凹歯15cの他の一部(図2(a)の上側の部分)は、出力軸13の凸歯ピン13bから離間している。
【0050】
そして、例えば、固定軸12の凸歯ピン12bの歯数Z1が、内輪15の一方の揺動凹歯15bの歯数Z2より少なく設定されており、出力軸13の凸歯ピン13bの歯数Z4と内輪15の他方の揺動凹歯15cの歯数Z3とが同一に設定されている。これにより、入力軸11の回転に対して、出力軸13は減速(差動回転)することになる。つまり、この例では、内輪15と固定軸12との間で差動回転がされるのに対して、内輪15と出力軸13との間では差動回転がされない。ただし、出力軸13の凸歯ピン13bの歯数Z4と内輪15の他方の揺動凹歯15cの歯数Z3とを異なるように設定することで、両者の間に差動回転が生じるようにすることもできる。これらは適宜、減速比に応じて設定可能である。
【0051】
図2(a)に示す揺動型歯車装置において、差動回転を生じる固定軸12の凸歯ピン12bと内輪15の一方の揺動凹歯15bとの噛合部分は、図3(a)に示すようになる。また、図2(b)に示す揺動型歯車装置において、差動回転を生じる固定軸12の凸歯ピン12bと内輪15の一方の揺動凹歯15bとの噛合部分は、図3(b)に示すようになる。ここで、図3(a)は、固定軸12における凸歯ピン12bが、固定軸本体12aに対して別体形成されている場合を示す。図3(b)は、固定軸12における凸歯ピン12bが、固定軸本体12aに一体形成されている場合を示す。図3(a)(b)のどちらの場合も、本実施形態を適用できる。なお、出力軸13と内輪15との間で差動回転を生じる場合には、出力軸13の凸歯ピン13bと内輪15の他方の揺動凹歯15cとの噛合部分についても、図3(a)(b)と同様となる。そして、以下の説明においては、固定軸12と揺動歯車15との噛合部分のみについて説明する。
【0052】
ここで、揺動凹歯15bは、図4および図5に示すような形状となる。つまり、揺動凹歯15bの歯溝方向に直交する方向の断面形状は、全体的には、図3および図5(a)に示すように、ほぼ半円弧凹状をなしている。詳細には、当該断面形状は、円弧凹状の開口縁部分が垂れた形状をなしている。さらに、揺動凹歯15bは、図4および図5(b)に示すように、歯溝方向の両端側に向かって溝幅が広がるような形状をなしている。これは、凸歯ピン12bの歯数Z1と揺動凹歯15bの歯数Z2とが相違するためである。
【0053】
(3)揺動歯車の加工方法
次に、上述した揺動型歯車装置における内輪15(以下、「揺動歯車」と称する)の揺動凹歯15bの加工方法について説明する。なお、揺動歯車15の揺動凹歯15cの加工方法についても同様である。まず、加工方法の処理手順について、図6を参照して説明する。図6に示すように、揺動歯車15および凸歯ピン12bの三次元CADのモデルまたは数式モデルを生成する(S11)。このモデルは、揺動歯車15と固定軸12とが差動回転する動作モデルである。
【0054】
続いて、両者が差動回転する際における、揺動凹歯15bに対する凸歯ピン12bの相対動作軌跡を抽出する(S12)(「軌跡抽出工程」、「軌跡抽出手段」)。この相対動作軌跡の抽出に際しては、揺動凹歯15bを固定したと考えて、凸歯ピン12bが揺動凹歯15bに対して移動するとして、凸歯ピン12bの動作軌跡を抽出する。そして、この凸歯ピン12bの動作軌跡には、凸歯ピン12bの中心軸12X(以下、「基準軸」と称する)、および、凸歯ピン12bの中心軸方向の中心の点12C(以下、「ピン中心点」と称する)の動作軌跡が含まれる。なお、凸歯ピン12bの基準軸12Xとは、凸歯ピン12bの歯厚中心面と基準円錐面との交線に平行な軸に相当する。すなわち、この時点においては、軌跡抽出工程において抽出された凸歯ピン12bの動作軌跡は、3つの直動軸と3つの回転軸とにより表されている。
【0055】
この軌跡抽出工程について、図7(a1)(a2)(b1)(b2)(c1)(c2)を参照して詳細に説明する。図7の各図において、凸歯ピン12bの形状は、図3(a)(b)にて示す固定軸12の固定軸本体12aに対して突出している凸歯ピン12bの部分のみについて示す。つまり、図7の各図においては、凸歯ピン12bは、図3(a)(b)に示す凸歯ピン12bの共通する部分を示している。
【0056】
凸歯ピン12bが揺動凹歯15bに噛み合う前の状態では、図7(a1)に示すように、揺動歯車15の回転中心軸方向(図2(a)(b)の「B」)から見た場合には、凸歯ピン12bの基準軸12Xは、揺動凹歯15bの歯溝方向15Xに対して図7(a1)の右側に傾斜している。さらに、図7(a2)に示すように、揺動凹歯15bの基準円錐面の接面のうち歯溝方向15Xに直交する方向から見た場合には、凸歯ピン12bの基準軸12Xは、揺動凹歯15bの歯溝方向15Xに対して図7(a2)の左側に傾斜している。そして、両図において、凸歯ピン12bのピン中心点12Cは、揺動凹歯15bの歯溝方向15Xからずれた位置に位置している。
【0057】
次に、凸歯ピン12bが揺動凹歯15bに噛み合っている状態では、図7(b1)(b2)に示すように、揺動凹歯15bの歯溝方向15Xと凸歯ピン12bの基準軸12Xとが一致している。当然に、凸歯ピン12bのピン中心点12Cも、揺動凹歯15bの歯溝方向15Xに一致している。
【0058】
次に、凸歯ピン12bが揺動凹歯15bに対して噛み合い状態から離れた時の状態では、図7(c1)に示すように、揺動歯車15の回転中心軸方向(図2(a)(b)の「B」)から見た場合には、凸歯ピン12bの基準軸12Xは、揺動凹歯15bの歯溝方向15Xに対して図7(c1)の左側に傾斜している。さらに、図7(c2)に示すように、揺動凹歯15bの基準円錐面の接面のうち歯溝方向15Xに直交する方向から見た場合には、凸歯ピン12bの基準軸12Xは、揺動凹歯15bの歯溝方向15Xに対して図7(c2)の左側に傾斜している。そして、両図において、凸歯ピン12bのピン中心点12Cは、揺動凹歯15bの歯溝方向15Xからずれた位置に位置している。
【0059】
つまり、凸歯ピン12bの基準軸12Xの動作軌跡およびピン中心点12Cの動作軌跡は、図8に示すようなものになる。この基準軸12Xの動作軌跡は、第一直動軸、第二直動軸、第三直動軸、第四回転軸、第五回転軸および第六割出軸に分解して表すことができる。ここで、図8において、○の中の数字が、当該各軸の番号に一致する。例えば、○の中の数字が「1」で示される軸は、第一直動軸となる。
【0060】
つまり、第一直動軸とは、凸歯ピン12bの基準位置(所定位置)を、円盤状ワーク(揺動歯車15)の凹歯形成面(本実施形態においては「軸方向端面」である)に接する面に直交する方向に移動させる軸である。第二直動軸とは、凸歯ピン12bの基準位置を、円盤状ワーク(揺動歯車15)の凹歯形成面に接する面上であって、揺動凹歯15bの歯溝方向に移動させる軸である。第三直動軸とは、凸歯ピン12bの基準位置を、円盤状ワーク(揺動歯車15)の凹歯形成面に接する面上であって、第二直動軸に直交する方向に移動させる軸である。
【0061】
第四回転軸とは、凸歯ピン12bの基準位置を第一直動軸の回りに回転させる軸である。第五回転軸とは、凸歯ピン12bの基準位置を第三直動軸の回りに回転させる軸である。ここで示す第四回転軸および第五回転軸は、凸歯ピン12bのピン中心点12Cを中心に回転する軸である。第六割出軸とは、揺動歯車15の回転中心軸B(図2(a)(b)に示す)に一致し揺動歯車15の回転位相を割り出す軸である。
【0062】
続いて、抽出された揺動歯車15に対する凸歯ピン12bの相対動作軌跡を座標変換することにより、トロイダル砥石140の動作軌跡であるNCプログラムを生成する(S13)(「座標変換工程」、「座標変換手段」)。このNCプログラムは、ワーク座標系における揺動凹歯15bを加工するための加工工具の動作軌跡に相当する。
【0063】
ここで、本実施形態における工作機械は、図1に示したように、第一直動軸、第二直動軸、第三直動軸、第五回転軸および第六割出軸を有する機械構成を対象としている。一方、凸歯ピン12bの相対動作軌跡は、第一〜第六の軸(3つの直動軸と3つの回転軸)により表されている。そこで、当該座標変換工程においては、第四回転軸の動作を第六割出軸と第三直動軸(または第二直動軸)に分解して、第四回転軸の動作を削除する処理を行っている。このようにすることで、凸歯ピン12bの相対動作軌跡は、3つの直動軸と2つの回転軸とにより表されることになる。
【0064】
具体的には、図9に示すように、第四回転軸の中心、すなわち凸歯ピン12bのピン中心点12Cを、第六割出軸の回転中心(揺動歯車15の回転中心軸B)に一致させるようにする。このとき、凸歯ピン12bのピン中心点12Cを移動させる際に、凸歯ピン12bの基準軸12X上としている。つまり、凸歯ピン12bの歯長さを無限長と考えて、移動させた第四回転軸の回転中心は、第三直動軸上を移動するようにしている。このように第四回転軸を、第六割出軸と第三直動軸とに分解することで、第四回転軸の動作を削除することができる。結果として、凸歯ピン12bの相対動作軌跡は、3つの直動軸と2つの回転軸とにより表されることになる。
【0065】
さらに続けて、座標変換工程にて、算出された第一直動軸、第二直動軸および第三直動軸の3つの直動軸と、第五回転軸および第六割出軸の2つの回転軸の動作軌跡に基づいて、3つの直動軸と2つの回転軸とにより表されるNCプログラムを生成する。
【0066】
ここで、この時点においては、当該NCプログラムは、トロイダル砥石140の歯溝方向の切り込み動作の位置を1箇所としている。この切り込み動作について、図11〜図13を参照して説明する。本実施形態における加工方法においては、図11に示すようなトロイダル砥石140を用いる。トロイダル砥石140は、図11(a)に示すような円盤状工具であって、その外周縁形状が図11(b)に示すような円弧凸状をなしている。
【0067】
このトロイダル砥石140を用いて揺動凹歯15bを加工する場合には、基本的には、図10に示すような動作を行う。つまり、トロイダル砥石140を、第一直動軸、第二直動軸、第三直動軸、第五回転軸および第六割出軸に同時に連続して動作させる。しかし、揺動凹歯15bに対してトロイダル砥石140の連続した動作(凸歯ピン12bの動作軌跡に相当する動作)を1回行った場合には、図12(a)(b)に示すように、揺動凹歯15bに削り残しが生じてしまう。
【0068】
そこで、図13に示すように、トロイダル砥石140の中心軸を揺動凹歯15bの歯溝方向にずらした複数箇所にて切り込む動作により、トロイダル砥石140により凸歯ピン12bを擬似的に表現している。その結果、揺動凹歯15bの削り残しを低減することができる。図13においては、切り込み動作は、3箇所の位置にて行っている例を示している。このように、複数の切り込み動作の位置にて、トロイダル砥石140の連続動作を行わせることで、より高精度な揺動凹歯15bの加工が可能となる。
【0069】
そこで、座標変換処理(S13)の後には、トロイダル砥石140と円盤状ワーク(揺動歯車15)を相対移動させて加工シミュレーションを行う(S14)(「シミュレーション工程」、「シミュレーション手段」)。つまり、揺動凹歯15bが加工される前の円盤状ワークに対して、トロイダル砥石140を生成されたNCプログラムに従って移動させることで、加工後の円盤状ワークの形状を加工シミュレーションにて生成する。
【0070】
続いて、予め設定された理想形状モデルと、加工シミュレーションの結果の形状とを比較し、誤差を算出する(S15)。続いて、算出された誤差が予め設定された許容値以内であるか否かを判定する(S16)。
【0071】
そして、算出された誤差が許容値を超えている場合には(S16:N)、トロイダル砥石140の中心軸を揺動凹歯15bの歯溝方向にずらして切り込み動作の位置を算出する(S17)(「切り込み位置算出工程」)。ここでは、例えば、トロイダル砥石140の中心軸を揺動凹歯15bの歯溝方向に2箇所にずらして切り込む動作を行うようにする。ここで、この切り込み位置算出工程においては、加工シミュレーションの結果の形状と理想形状モデルとの誤差が小さくなるように、且つ、加工時間が短くなるような切り込み動作の位置を算出する。
【0072】
切り込み動作の位置の算出が終わると、ステップS13に戻り、算出された切り込み動作の位置に基づいて再び座標変換処理が行われる。つまり、ステップS13〜S17を繰り返すことにより、切り込み位置算出工程においては、加工シミュレーションの結果の形状と理想形状モデルとの誤差が設定された許容値以内にしつつ、加工時間が最も短くなるような切り込み動作の位置を算出することになる。
【0073】
そして、算出された誤差が許容値以内となると(S16:Y)、生成されたNCプログラムに基づいて、円盤状ワークおよびトロイダル砥石140の少なくとも一方を移動させる(S18)(「加工工程」、「加工手段」)。ここで、各軸は、図1に示す加工装置100の各軸に対応している。つまり、加工装置100をNCプログラムに基づいて動作させることにより、高精度で加工時間が最も短い加工を行うことができる。
【0074】
(4)第一実施形態の効果
本実施形態によれば、5軸構成の加工装置(NC工作機械)を用いて、揺動歯車15の揺動凹歯15bを加工することが可能となる。つまり、揺動歯車15の外径が異なる場合や、揺動凹歯15bの形状が異なる場合にも、同一のNC工作機械で揺動凹歯15bを加工することができる。
【0075】
また、揺動歯車15は、相手歯車(固定軸12または出力軸13)に対して交差軸を中心として回転する凹凸歯車である。このような構成であるため、両者の歯車の噛み合い率は高くなる。そのため、小型化、高強度化および静粛性を図ることが可能となる。一方で、良好な歯当たりを実現するためには、非常に高い精度の歯面形状を形成する必要があり、歯面形状の加工が容易ではないという問題がある。これに対して、本実施形態の加工方法を適用することにより、交差軸を有する揺動歯車15の揺動凹歯15b、15cを、容易にかつ高精度に形成することができる。その結果、従来と同程度の精度にする場合には加工コストを低減することができる。
【0076】
ここで、凸歯ピン12bの歯数Z1と揺動凹歯15bとの歯数Z2が異なるため、固定軸12と揺動歯車15とが確実に差動回転可能な構成となる。そして、両者の歯数が異なるため、図3〜図5に示すように、揺動凹歯15bの形状が非常に複雑な形状となる。
【0077】
さらに、凸歯ピン12bの基準軸直交方向の断面形状を円弧状にしている。このようにすることで、固定軸12と揺動歯車15とは非常に滑らかに差動回転することが可能となる。その一方で、揺動歯車15の揺動凹歯15bの加工が複雑となる。凸歯ピン12bの基準軸直交方向の断面形状を円弧状であるため、揺動凹歯15bは、全体的には円弧凹状に近似した断面形状からなり、詳細には円弧凹状の開口縁部分が垂れた断面形状を有する。このように、揺動凹歯15bが複雑な形状であっても、本実施形態によれば、確実に高精度に加工することができる。その結果、低コストで高性能な揺動歯車15を形成することができる。
【0078】
また、揺動歯車15と固定軸12との相対的な動きは、三次元的な複雑な動きであるが、凸歯ピン12bの基準軸12Xを用いることで、確実に凸歯ピン12bの相対動作軌跡を把握することができる。
【0079】
また、本実施形態によれば、第四回転軸の動作を省略して、5つの軸によって加工ができる。従って、揺動凹歯15bを加工できる工作機械の構成軸数を削減できるため、工作機械の低コスト化を図ることができる。
【0080】
また、トロイダル砥石140を用いることにより、幾何学的な誤差、すなわち削り残しが発生してしまう。しかし、加工シミュレーションを行い、理想形状モデルと比較することによって、確実に高精度な揺動凹歯15bを形成することができる。さらに、最短時間の加工条件を算出することもできる。
【0081】
<第二実施形態:(第四回転軸削除の他の例)>
第二実施形態の揺動型歯車装置の揺動歯車の加工装置について、図14を参照して説明する。本実施形態における加工装置は、第一実施形態の加工装置100と同一である。そして、第一実施形態において第四回転軸の動作を第六割出軸と第三直動軸に分解していたのに対して、本実施形態における加工装置による加工方法では、第一実施形態にて説明した第四回転軸の動作を第六割出軸と第二直動軸に分解している。
【0082】
ここで、本実施形態において、第一実施形態における「座標変換工程」(S13)のみ相違する。本実施形態における座標変換工程(S13)においては、まず、第四回転軸の動作を第六割出軸と第二直動軸に分解して、第四回転軸の動作を削除する処理を行っている。ここで、第四回転軸は、第一実施形態においても説明したように、第六割出軸に平行な軸の回りに回転する軸である。そこで、図14に示すように、第四回転軸の中心、すなわち凸歯ピン12bのピン中心点12Cを、第六割出軸の回転中心(揺動歯車15の回転中心軸B)に一致させるようにする。このとき、凸歯ピン12bのピン中心点12Cを移動させる際に、凸歯ピン12bの基準軸12X上としている。つまり、移動させた第四回転軸の回転中心は、第二直動軸上を移動するようにしている。このように第四回転軸を、第六割出軸と第二直動軸とに分解することで、第四回転軸の動作を削除することができる。結果として、凸歯ピン12bの相対動作軌跡は、3つの直動軸と2つの回転軸とにより表されることになる。
【0083】
さらに続けて、座標変換工程にて、算出された第一直動軸、第二直動軸および第三直動軸の3つの直動軸と、第五回転軸および第六割出軸の2つの回転軸の動作軌跡に基づいて、3つの直動軸と2つの回転軸とにより表されるNCプログラムを生成する。本実施形態においても、第一実施形態と同様の効果を奏する。
【0084】
<第三実施形態>
第三実施形態の加工装置200について、図15を参照して説明する。本実施形態における加工装置は、3つの直交する直動軸と、2つの回転軸を有する5軸構成の場合を示している。
【0085】
図15に示すように、加工装置200は、3軸研削盤をベースとして、円盤状ワークW(揺動歯車)を載置するテーブルが、2つの回転軸回りに回転する構成である。ここで、図15において、○の中の数字が、上述した当該各軸の番号に一致する。例えば、○の中の数字が「1」で示される軸は、第一直動軸となる。
【0086】
詳細には、加工装置200は、ベッド210と、トラバースベース220と、工具台230と、トロイダル砥石240(円盤状工具)と、ワーク支持基体250と、上下スライドベース260と、第一回転テーブル270と、第二回転テーブル280(本発明の「ワーク保持部」に相当する)とを備える。
【0087】
ベッド210は、扁平な直方体をなし、床面に設置されている。トラバースベース220は、ベッド210の上を第三直動軸の方向に移動可能となるように、ベッド210の上に配置されている。工具台230は、トラバースベース220に対して第一直動軸方向に移動可能となるように、トラバースベース220に搭載されている。この工具台230は、内部にモータを備えている。トロイダル砥石240(円盤状工具)は、工具台230の一端に回転可能に支持され、モータの回転により第三直動軸の回りに回転する。つまり、トロイダル砥石240は、ベッド210に対して第一直動軸および第三直動軸の動作をすることができる。ここで、トロイダル砥石240をベッド210に対して動作させるトラバースベース220および工具台230が、本発明における「工具動作手段」に相当する。
【0088】
ワーク支持基体250は、ベッド210の上に立設されている。上下スライドベース260は、ワーク支持基体250の側面において第二直動軸の方向に移動可能となるように、ワーク支持基体250の側面に配置されている。この上下スライドベース260は、内部に第三直動軸の回り(第五回転軸)に回転可能な回転軸を有している。
【0089】
第一回転テーブル270は、上下スライドベース260の回転軸に固定されている。つまり、第一回転テーブル270は、上下スライドベース260に対して第五回転軸の動作を行う。この第一回転テーブル270には、図15における第一直動軸の回り(第六割出軸)に回転可能な回転軸を有している。第二回転テーブル280は、第一回転テーブル270の側面に、第一回転テーブル270の回転軸に固定されている。つまり、第二回転テーブル280は、ベッド210に対して、第二直動軸、第五回転軸および第六割出軸の動作をすることができる。そして、この第二回転テーブル280の側面に、加工されることによって揺動歯車15となる円盤状ワークWが固定されている。
【0090】
ここで、円盤状ワークWをベッド210に対して動作させる上下スライドベース260、第一回転テーブル270および第二回転テーブル280が、本発明における「ワーク動作手段」に相当する。
【0091】
本実施形態によれば、第一実施形態における効果を実質的に同一の効果を奏する。さらに、一般に、3軸研削盤の砥石は、エンドミルなどの工具に比べて質量が大きい。つまり、本実施形態によれば、3軸研削盤をベースとしているため、大きな質量のトロイダル砥石240を用いた場合にも、トロイダル砥石240を安定して位置決めすることが可能となる。
【0092】
<第四実施形態>
第四実施形態の加工装置300について、図16を参照して説明する。本実施形態における加工装置は、3つの直交する直動軸と、2つの回転軸を有する5軸構成の場合を示している。
【0093】
図16に示すように、加工装置300は、3軸門型マシニングセンタとして、円盤状ワークW(揺動歯車)を載置するテーブルが、2つの回転軸回りに回転する構成である。ここで、図16において、○の中の数字が、上述した当該各軸の番号に一致する。例えば、○の中の数字が「1」で示される軸は、第一直動軸となる。
【0094】
詳細には、加工装置300は、ベッド310と、水平スライドベース320と、コラム330と、主軸頭340と、トロイダル砥石350(円盤状工具)と、ワーク支持基体360と、第一回転テーブル370と、第二回転テーブル380(本発明の「ワーク保持部」に相当する)とを備える。
【0095】
ベッド310は、上方に開口するコの字形状をなし、床面に設置されている。つまり、ベッド310は、左右両端に柱を有する形状からなる。水平スライドベース320は、ベッド310の柱上端を第二直動軸の方向に移動可能となるように、ベッド310の柱上に配置されている。
【0096】
コラム330は、水平スライドベース320に対して第一直動軸方向に移動可能となるように、水平スライドベース320に配置されている。主軸頭340は、コラム330に対して第三直動軸方向に移動可能となるように、コラム330に搭載されている。この主軸頭340は、内部に第三直動軸の回りに回転可能な主軸を備えている。トロイダル砥石350(円盤状工具)は、主軸頭340の主軸の一端に固定され、主軸の回転に伴って第三直動軸の回りに回転する。つまり、トロイダル砥石350は、ベッド310に対して第一直動軸、第二直動軸および第三直動軸の動作をすることができる。ここで、トロイダル砥石350をベッド310に対して動作させる水平スライドベース320、コラム330および主軸頭340が、本発明における「工具動作手段」に相当する。
【0097】
ワーク支持基体360は、ベッド210の上に固定されている。ワーク支持基体360は、内部に第三直動軸の回り(第五回転軸)に回転可能な回転軸を有している。第一回転テーブル370は、ワーク支持基体360の回転軸に固定されている。つまり、第一回転テーブル370は、ワーク支持基体360に対して第五回転軸の動作を行う。この第一回転テーブル370には、図16における第一直動軸の回り(第六割出軸)に回転可能な回転軸を有している。第二回転テーブル380は、第一回転テーブル370の側面に、第一回転テーブル370の回転軸に固定されている。つまり、第二回転テーブル380は、ベッド310に対して、第五回転軸および第六割出軸の動作をすることができる。そして、この第二回転テーブル380の側面に、加工されることによって揺動歯車15となる円盤状ワークWが固定されている。
【0098】
ここで、円盤状ワークWをベッド310に対して動作させるワーク支持基体360、第一回転テーブル370および第二回転テーブル380が、本発明における「ワーク動作手段」に相当する。
【0099】
本実施形態によれば、第一実施形態における効果を実質的に同一の効果を奏する。さらに、門型構成によりトロイダル砥石350を支持するため、大きな質量のトロイダル砥石350を用いた場合にも、トロイダル砥石350を安定して位置決めすることが可能となる。
【0100】
<第五実施形態>
第一実施形態〜第四実施形態においては、加工工具として円盤状工具であるトロイダル砥石140,240,350を用いることとした。この他に、凸歯ピン12bの外周形状に一致または相似するピン形状の工具とすることもできる。また、図17に示すような回転するベルト状の工具を用いることもできる。このベルト状の工具とは、図17に示すように、回転方向に直線部を有する。そして、この直線部の外周側の形状が、凸歯ピン12bの外周形状の一部に一致または相似する。これらの加工工具を用いる場合には、図12を用いて説明したような削り残しがなくなる。この場合の加工手順は、図18に示すフローチャートのように行うことができる。つまり、第一実施形態において、加工シミュレーションを行い、切り込み位置の算出を行っていたが、この処理が不要となる。なお、これらの加工工具を用いた場合にも、実質的に上述と同様の効果を奏する。
【0101】
<第六実施形態>
上記第一〜第五実施形態においては、揺動型歯車装置の揺動歯車を加工対象としての加工方法について説明した。揺動型歯車装置は、それぞれの回転中心軸が交差する凹凸歯車と相手歯車との関係を2組有する構成である。このような凹凸歯車と相手歯車との関係を1組有する構成からなる動力伝達装置について図19(a)(b)を参照して説明する。
【0102】
ここで、図19(a)は、凸歯ピン112bが、入力軸本体112aに対して別体形成されている場合を示し、図19(b)は、凸歯ピン112bが、入力軸本体112aに対して一体形成されている場合を示す。
【0103】
図19(a)(b)に示すように、動力伝達装置は、入力軸112と出力軸115とから構成される。入力軸112(本発明の「相手歯車」に相当する)は、第一実施形態における出力軸13とほぼ同様の構成からなる。入力軸112は、入力軸本体112aと、複数の凸歯ピン112bとから構成される。入力軸本体112a(本発明の「相手歯車本体」に相当する)は、回転中心軸Aを回転中心軸とする円筒状の部材である。そして、入力軸本体112aは、軸受を介して、図示しないハウジングに対して回転中心軸Aの回りに回転可能に支持されている。
【0104】
出力軸115(本発明の「凹凸歯車」に相当する)は、第一実施形態における内輪(揺動歯車)15のうち一方の端面形状がほぼ共通する。つまり、出力軸115の軸方向一方(図19(a)(b)の左側)の端面には、周方向に等間隔に複数(G2)個の凹歯115bが形成されている。この出力軸115は、回転中心軸Aに対して傾斜した回転中心軸Bを中心に回転可能となるように、軸受を介して図示しないハウジングに支持されている。そして、出力軸115の軸方向他方(図19(a)(b)の右側)は、他の動力伝達部材に連結される。
【0105】
このように、入力軸112の回転中心軸Aに対して交差する回転中心軸Bを中心に回転する出力軸115の凹歯を加工対象とした場合に、上述した実施形態における加工方法を同様に適用できる。そして、同様の効果を奏する。
【0106】
<その他>
また、上記実施形態においては、凸歯ピン12bの基準軸直交方向の断面形状が円弧状であるとして説明したが、この他に、図20に示すように、凸歯ピン12bが、台形形状、インボリュート形状などの場合にも適用できる。
【0107】
また、上記実施形態においては、固定軸12の凸歯ピン12bと揺動凹歯15bとの関係について説明したが、出力軸13の凸歯ピン13bと揺動凹歯15cとの関係についても同様に適用できる。
【0108】
また、上記実施形態は、交差軸を有する凹凸歯車の凹歯を加工対象として説明したが、相手歯車の回転軸に対して平行する軸を中心として回転する凹凸歯車、いわゆる平歯車の凹歯を加工対象としても適用できる。この場合も、従来のような専用機を用いることなく、容易にかつ高精度に平歯車の凹歯を加工することができる。
【符号の説明】
【0109】
11:入力軸、 11a:傾斜面
12:固定軸、 12a:固定軸本体、 12b:凸歯ピン
12C:ピン中心点、 12X:基準軸
13:出力軸、 13a:出力軸本体、 13b:凸歯ピン
14:外輪
15:内輪(揺動歯車、凹凸歯車)、 15a:転動面、 15b,15c:揺動凹歯
15X:歯溝方向
16:転動体
140,240,350:トロイダル砥石

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹歯と凸歯が周方向に連続して形成され、当該凹歯が相手歯車の凸歯に噛合することにより前記相手歯車との間で動力伝達可能な凹凸歯車の加工装置であって、
前記凹歯の加工前の前記凹凸歯車である円盤状ワークに対して加工工具を相対的に移動可能な、相互に直交する3つの直動軸と2つの回転軸とを備え、
前記相手歯車と前記凹凸歯車との間で動力を伝達する際における、前記凹凸歯車に対する前記相手歯車の凸歯の相対動作軌跡を抽出し、抽出された前記相手歯車の凸歯の前記相対動作軌跡に基づいて、前記加工工具により前記凹凸歯車の凹歯を加工することを特徴とする凹凸歯車の加工装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記相手歯車の凸歯の数と前記凹凸歯車の凹歯の数が異なることを特徴とする凹凸歯車の加工装置。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記凹凸歯車は、前記相手歯車の回転中心軸に対して交差する交差軸を中心として回転する歯車であることを特徴とする凹凸歯車の加工装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記相手歯車の凸歯の外周面における当該凸歯の基準軸直交方向の断面形状は、円弧状に形成され、
前記相手歯車と前記凹凸歯車との間で動力を伝達する際における前記凹凸歯車に対する前記相手歯車の凸歯の相対動作軌跡は、
前記相手歯車の凸歯の基準位置を、前記円盤状ワークの凹歯形成面に接する面に直交する方向に移動させる第一直動軸と、
前記相手歯車の凸歯の基準位置を、前記円盤状ワークの凹歯形成面に接する面上であって、前記凹凸歯車の凹歯の歯溝方向に移動させる第二直動軸と、
前記相手歯車の凸歯の基準位置を、前記円盤状ワークの凹歯形成面に接する面上であって、前記第二直動軸に直交する方向に移動させる第三直動軸と、
前記相手歯車の凸歯の基準位置を前記第一直動軸の回りに回転させる第四回転軸と、
前記相手歯車の凸歯の基準位置を前記第三直動軸の回りに回転させる第五回転軸と、
前記凹凸歯車の回転中心軸に一致し前記凹凸歯車の回転位相を割り出す第六割出軸と、
により表わされ、
前記第四回転軸を前記第六割出軸に一致させることにより、前記3つの直動軸を前記第一直動軸、前記第二直動軸および前記第三直動軸に対応させ、前記2つの回転軸を前記第五回転軸および前記第六割出軸に対応させることで、前記凹凸歯車の凹歯の加工を行うことを特徴とする凹凸歯車の加工装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項において、
前記相手歯車は、前記凸歯を一体形成する相手歯車本体、または、前記凸歯と別体形成され前記凸歯を支持する前記相手歯車本体を備え、
前記相手歯車の凸歯の外周面における当該凸歯の基準軸直交方向の断面形状は、円弧状に形成され、
前記加工工具は、円盤状工具であることを特徴とする凹凸歯車の加工装置。
【請求項6】
請求項5において、
前記円盤状ワークおよび前記加工工具の少なくとも一方を移動させて加工シミュレーションを行うシミュレーション手段と、
予め設定された理想形状モデルと、前記加工シミュレーションの結果の形状とを比較して、前記円盤状工具の中心軸を前記凹凸歯車の凹歯の歯溝方向にずらして切り込み動作の位置を算出する切り込み位置算出手段と、
を備え、
前記加工装置は、前記切り込み位置算出手段にて算出された切り込み動作の位置に基づいて、前記凹凸歯車の凹歯の加工を行うことを特徴とする凹凸歯車の加工装置。
【請求項7】
請求項6において、
前記切り込み位置算出手段は、前記加工シミュレーションの結果の形状と前記理想形状モデルとの誤差が設定された許容値以内にしつつ、加工時間が最も短くなるような前記切り込み動作の位置を算出することを特徴とする凹凸歯車の加工装置。
【請求項8】
請求項1〜4の何れか一項において、
前記相手歯車は、前記凸歯を一体形成する相手歯車本体、または、前記凸歯と別体形成され前記凸歯を支持する前記相手歯車本体を備え、
前記相手歯車の凸歯の外周面における当該凸歯の基準軸直交方向の断面形状は、円弧状に形成され、
前記加工工具は、前記凸歯の外周形状に一致または相似するピン形状に形成されていることを特徴とする凹凸歯車の加工装置。
【請求項9】
請求項1〜4の何れか一項において、
前記相手歯車は、前記凸歯を一体形成する相手歯車本体、または、前記凸歯と別体形成され前記凸歯を支持する前記相手歯車本体を備え、
前記相手歯車の凸歯の外周面における当該凸歯の基準軸直交方向の断面形状は、円弧状に形成され、
前記加工工具は、回転するベルト状の工具であって、回転方向に直線部を有することを特徴とする凹凸歯車の加工装置。
【請求項10】
請求項1〜9の何れか一項において、
前記円盤状ワークを保持するワーク保持部を、前記3つの直動軸のうち何れか1つと、前記2つの回転軸とに動作させるワーク動作手段と、
前記加工工具を、前記3つの直動軸のうち残りの2つに動作させる工具動作手段と、
を備え、
前記ワーク動作手段が動作させる1つの前記直動軸は、ベッドの上面にて前記ワーク保持部を水平方向に動作させる軸であることを特徴とする凹凸歯車の加工装置。
【請求項11】
請求項1〜9の何れか一項において、
前記円盤状ワークを保持するワーク保持部を、前記3つの直動軸のうち何れか1つと、前記2つの回転軸とに動作させるワーク動作手段と、
前記加工工具を、前記3つの直動軸のうち残りの2つに動作させる工具動作手段と、
を備え、
前記ワーク動作手段が動作させる1つの前記直動軸は、ベッドの上面にて前記ワーク保持部を鉛直方向に動作させる軸であることを特徴とする凹凸歯車の加工装置。
【請求項12】
請求項1〜9の何れか一項において、
前記円盤状ワークを保持するワーク保持部を、前記2つの回転軸に動作させるワーク動作手段と、
前記加工工具を、前記3つの直動軸に動作させる工具動作手段と、
を備えることを特徴とする凹凸歯車の加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2011−161595(P2011−161595A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−29175(P2010−29175)
【出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】