凹凸部を有する板材並びにこれを用いた車両パネル及び積層構造体
【課題】剛性向上効果の高い凹凸部のパターンを有する板材、およびこれを用いた車両パネル並びに積層構造体を提供する。
【解決手段】凹凸部20を有する板材1。第1基準面、第2基準面を基準とし、第2基準面に配した単位領域24を縦横n等分した格子により区画された升目を第1升と第2升とに分配する。第1升を連ねた領域を第1基準領域とし第2升を連ねた領域を第2基準領域とする。第1基準領域と第2基準領域を、第1突出領域、第1平面領域、第2突出領域、第2平面領域へと分配する。凹凸部20は、第1突出領域から第1基準面に突出する第1領域21と、第2突出領域から第2基準面に対して突出する第2領域22と、第1平面領域と第2平面領域とからなる平面領域からなる。
【解決手段】凹凸部20を有する板材1。第1基準面、第2基準面を基準とし、第2基準面に配した単位領域24を縦横n等分した格子により区画された升目を第1升と第2升とに分配する。第1升を連ねた領域を第1基準領域とし第2升を連ねた領域を第2基準領域とする。第1基準領域と第2基準領域を、第1突出領域、第1平面領域、第2突出領域、第2平面領域へと分配する。凹凸部20は、第1突出領域から第1基準面に突出する第1領域21と、第2突出領域から第2基準面に対して突出する第2領域22と、第1平面領域と第2平面領域とからなる平面領域からなる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凹凸部を形成することによって剛性を高めた板材、並びにこれを用いて構成した車両パネル及び積層構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車においては、軽量化を目的として、鋼板等によって構成されている部品の材料を、アルミニウム合金板等の軽量な材料に置き換えることが検討、実施されている。この場合、軽量化の前提として、要求される剛性を確保することが必要である。
これまで、板材の板厚を厚くすることなく剛性を向上させるために、板材に凹凸模様を設けて形状的に剛性を向上させることが検討されてきた。
例えば、自動車部品の一つに、ヒートインシュレータという板材よりなる部品がある。特許文献1には、その材料として、板厚を厚くすることなく十分な剛性を確保するために、エンボス成形による多数の突部を形成したものが提案されている。また、ヒートインシュレータに限らず、様々な用途においてエンボス成形等の凹凸部を形成することによって剛性を向上させた板材が提案されている。(特許文献2〜6)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−136720号公報
【特許文献2】特開2000−257441号公報
【特許文献3】特開平9−254955号公報
【特許文献4】特開2000−288643号公報
【特許文献5】特開2002−307117号公報
【特許文献6】特開2002−321018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1のように、多数の凹凸部を形成した板材は、凹凸部の無いものよりも剛性が高くなることは事実である。しかしながら、板厚を厚くすることなく剛性を向上するのに最適な凹凸部形状がいかなるものであるかについては、未だ解明できているとは言えない。そして、剛性向上率をこれまで以上に高くすることは、常に要求されている。
また、自動車に限らず、様々な機械装置等において、板材からなる部分を少しでも軽量化する要求が存在する。軽量化の必要性以外にも、材料費削減の効果も期待されている。また、板材(板形状を有する材料)であれば、材質を問わず剛性向上要求は存在する。
【0005】
また、剛性向上効果の高い凹凸部を有する板材を用いて、これを含んだ積層構造体や、剛性向上効果の高い凹凸部を有する板材を組み合わせた車両パネルについても、従来以上の高剛性なものとすることも求められている。
【0006】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであり、凹凸部を設けることによって剛性を向上させた板材であって、従来よりも剛性向上効果の高い凹凸部のパターンを有する板材、及びこれを用いた車両パネル並びに積層構造体を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、凹凸部を形成することによって剛性を高めた板材であって、
上記凹凸部は、間隔をあけて平行に配された仮想の2つの面である第1基準面及び第2基準面を基準とし、
上記第2基準面を同じ大きさの仮想の正方形である単位領域を敷き詰めたものと仮定し、上記各単位領域内を4以上の整数nによって縦横それぞれn等分した格子によって区画される仮想の升目を第1升と第2升の2種類に分類し、上記升目の各縦列及び各横列には、上記第1升と上記第2升の両者を必ず含むと共に、同種類のものが縦又は横に2個以上隣接するように配置し、かつ、上記単位領域内における上記第1升の合計個数及び上記第2升の合計個数は、いずれもn2/2±0.5の範囲内の整数とし、上記第1升を連ねた領域を第1基準領域とすると共に上記第2升を連ねた領域を第2基準領域とし、
上記第1基準領域は、該第1基準領域の一部を第1突出領域に分配し該第1突出領域以外の残りの上記第1基準領域を第1平面領域に分配するか、もしくは、上記第1基準領域の全領域を上記第1突出領域に分配し、
上記第2基準領域は、該第2基準領域の一部を第2突出領域に分配し該第2突出領域以外の残りの上記第2基準領域を第2平面領域に分配するか、もしくは、上記第2基準領域の全領域を上記第2突出領域又は上記第2平面領域のいずれかに分配し、
上記第2基準面上において定められた上記第1突出領域から上記第1基準面に向かって突出する第1領域と、上記第2基準面上において定められた上記第2突出領域から上記第1基準面に向かって突出する第2領域と、上記第2基準面上に定められた上記第1平面領域及び上記第2平面領域からなる平面領域を設け、
上記第1領域は、上記第1突出領域を上記第1基準面上に等倍又は縮小して投影した第1頂面と、該第1頂面の輪郭と上記第1突出領域の輪郭とをつなぐ第1側面とからなり、
上記第2領域は、上記第2突出領域を上記第1基準面上に等倍又は縮小して投影した第2頂面と、該第2頂面の輪郭と上記第2基準領域の輪郭とをつなぐ第2側面とからなり
上記平面領域は、上記第1平面領域及び上記第2平面領域の輪郭により形成される平面部からなるよう構成したことを特徴とする凹凸部を有する板材にある(請求項1)。
【0008】
第2の発明は、複数の板材を積層してなる積層構造体であって、上記板材の少なくとも1枚は第1の発明に記載の凹凸部を有する板材であることを特徴とする積層構造体にある(請求項11)。
【0009】
第3の発明は、アウターパネルと該アウターパネルの裏面に接合されたインナーパネルとを有する車両パネルであって、上記アウターパネル及び上記インナーパネルのいずれか一方又は両方が第1の発明に記載の凹凸部を有する板材よりなることを特徴とする車両パネルにある(請求項12)。
【発明の効果】
【0010】
第1の発明において、上記凹凸部は、上記のごとく、上記第2基準面上において定められた上記第1突出領域から上記第1基準面に向かって突出する上記第1領域と、上記第2基準面上において定められた上記第2突出領域から上記第1基準面に向かって突出する上記第2領域とを設けてなる。また、上記第2基準面上に定められた上記第1平面領域及び上記第2平面領域からなる上記平面領域を設けてなる。そして、上記第1領域は、上記第1頂面と、該第1頂面の輪郭と上記第1突出領域の輪郭とをつなぐ上記第1側面とからなり、上記第2領域は、上記第2頂面と、該第2頂面の輪郭と上記第2突出領域の輪郭とをつなぐ上記第2側面とからなる。また、上記平面領域は、上記第1平面領域及び上記第2平面領域の輪郭により形成される平面部からなる。
【0011】
このような構造を有しているので、本発明の上記板材は曲げ剛性に優れると共に、エネルギー吸収特性に優れた板材となる。
剛性が向上する理由は、次のように考えられる。即ち、上記第1領域と上記第2領域とは、板材の中立面から離れた位置に配される上記第1基準面上に配置した上記第1頂面及び上記第2頂面と、板材の厚さ方向に交差した上記第1側面及び上記第2側面とからなる。また、上記平面領域は、板材の中立面から離れた位置に配される第2基準面上に配置した上記平面部からなる。そのため、上記板材の中立面から離れた位置に多くの材料を配置できる。したがって、多くの材料を強度部材として効果的に使用することができ、剛性向上効果を高めることができる。また、剛性の向上に伴い、制振性の向上効果と、凹凸形状による音の反響抑制効果を得ることができる。
【0012】
また、上記第1基準領域を上記第1突出領域及び上記第1平面領域へと分配し、上記第2基準領域を上記第2突出領域及び上記第2平面領域へと分配する際に、その分配割合及び分配パターンを変化させることができる。これにより、形成される凹凸部の剛性及びその異方性を変化させることができる。すなわち、剛性の異方性が小さい板材だけでなく、剛性の異方性が大きい板材を形成することもできる。
【0013】
剛性の異方性が大きい板材は、一枚の板材において変形しやすい方向と変形しにくい方向とを有している。したがって、特定方向の入力に対しては高剛性で変形しにくく、その他の方向からの入力に対しては、上記高剛性を示す方向よりも変形しやすい板材を得ることができる。このような板材は、例えば、自動車のボディ及びその構造部材に用いることで、通常の使用時に生じる荷重の入力方向に対しては変形しにくい強度部材をなし、衝突時等に生じる荷重の入力方向に対しては変形しやすく衝撃を吸収する構造とすることができる。
【0014】
尚、後述のごとく、第1の発明において、上記第1基準領域を第1突出領域、上記第1平面領域へと分配し、上記第2基準領域を上記第2突出領域及び上記第2平面領域へと分配する際において、いずれの領域へと分配するかにより上記凹凸部の構成が変化する。具体的な凹凸部の構成としては、第1領域、第2領域及び平面領域の3つの領域からなる場合と、第1領域及び第2領域の2つの領域からなる場合と、第1領域と平面領域の2つの領域からなる場合とがある。尚、上記平面領域おいては、上記第1平面領域と上記第2平面領域の両方からなる場合と、いずれか一方からなる場合とがある。
【0015】
第2の発明においては、上記のごとく剛性向上効果を備えた凹凸部を有する板材を積層構造体の一部として用いることによって、非常に剛性が高い積層構造体を容易に得ることができる。また、剛性向上に伴う制振性の向上効果と、空気層を包容することによる吸音性の向上効果を得ることができる。
【0016】
第3の発明においては、上記のごとく剛性向上効果を備えた凹凸部を有する板材を上記アウターパネル及び上記インナーパネルのいずれか一方又は両方に用いることによって、非常に剛性が高い車両パネルを容易に得ることができる。また、剛性向上に伴う制振性の向上効果と、空気層を包容することによる吸音性の向上効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施例1における、凹凸部を有する板材の部分平面図。
【図2】図1のA−A線矢視断面の部分拡大図。
【図3】実施例1における、凹凸部を有する板材の部分斜視図。
【図4】実施例1における、凹凸部の形成方向を変化させた板材の部分平面図。
【図5】実施例1における、単位領域を示す説明図。
【図6】実施例1における、第2基準面を示す説明図。
【図7】実施例2における、凹凸部を有する板材の部分平面図。
【図8】図7のB−B線矢視断面の部分拡大図。
【図9】実施例2における、凹凸部を有する板材の部分斜視図。
【図10】実施例2における、凹凸部の形成方向を変化させた板材の部分平面図。
【図11】実施例2における、第2基準面を示す図。
【図12】実施例3における、凹凸部を有する板材の部分平面図。
【図13】実施例3における、凹凸部を有する板材の部分斜視図。
【図14】実施例3における、第2基準面を示す図。
【図15】実施例4における、単位領域を示す説明図。
【図16】実施例4における、単位領域を同じ姿勢で連続して配置した第2基準面を示す説明図。
【図17】実施例4における、単位領域を90°ずつ回転させた形状を連続配置した第2基準面を示す説明図。
【図18】実施例4における、単位領域の各辺に対して線対称である形状を連続配置した第2基準面を示す説明図。
【図19】実施例5における、単位領域を示す説明図。
【図20】実施例5における、単位領域の各辺に対して線対称である形状を連続配置した第2基準面を示す説明図。
【図21】実施例6における、単位領域を示す説明図。
【図22】実施例6における、単位領域を同じ姿勢で連続して配置した第2基準面を示す説明図。
【図23】実施例7における凹凸部を有する円筒材を示す説明図。
【図24】実施例8における積層構造体の展開説明図。
【図25】実施例9における車両パネルの展開説明図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明において、正方形等の形状の表現は、いずれも幾何学上の狭義の概念に止まらず、一般的に上記の形状と認識できる形状を含むものであり、各辺が若干曲線となったり、角部や面に成形上必要な丸み等が生じるいわゆるフィレットといわれる曲面を設けたりすることも当然に許容される。
また、本発明において、平行の表現は幾何学上の狭義の概念に止まらず、一般的に平行と認識できるものであればよい。
【0019】
また、上記第1基準領域を上記第1突出領域又は上記第1平面領域のいずれに分配するか、及び上記第2基準領域を上記第2突出領域又は上記第2平面領域のいずれに分配するかによって、上記凹凸部の構成は変化する。
上記第1基準領域の全領域を上記第1突出領域へと分配し、上記第2基準領域の全領域を上記第2突出領域へと分配した場合には、凹凸部は上記第1領域と上記第2領域とにより形成される。
【0020】
また、上記第1基準領域の一部を第1突出領域に分配し、該第1突出領域以外の残りの上記第1基準領域を上記第1平面領域に分配するか、もしくは、上記第1基準領域の全領域を上記第1突出領域に分配し、かつ上記第2基準領域は、その全領域を上記第2平面領域へと分配した場合には、凹凸部は、上記第1領域及び上記平面領域により形成される。
【0021】
また、上記第1基準領域は、その全領域を上記第1突出領域に分配し、上記第2基準領域の一部を上記第2突出領域に分配し、該第2突出領域以外の残りの上記第2基準領域を第2平面領域に分配した場合には、凹凸部は、上記第1領域、上記第2領域及び上記平面領域により形成される。
また、上記第1基準領域は、その一部を上記第1突出領域に分配し、該第1突出領域以外の残りの上記第1基準領域を上記第1平面領域に分配し、かつ上記第2基準領域は、該第2基準領域の一部を第2突出領域に分配し、該第2突出領域以外の残りの上記第2基準領域を第2平面領域に分配するか、もしくは上記第2基準領域の全領域を上記第2突出領域に分配した場合においても、凹凸部は、上記第1領域、上記第2領域及び上記平面領域により形成される。
【0022】
また、上記第1頂面及び上記第2頂面は、上記第1基準面の面によって構成することもできるし、あるいは、上記第1基準面から上記第2基準面を配した方向とは逆の方向に突出した部位によって構成することもできる。また、上記平面部は、上記第2基準面の面によって構成することもできるし、あるいは、上記第2基準面から上記第1基準面を配した方向とは逆の方向に突出した部位によって構成することもできる。突出した部位の形状例としては、ドーム形状、稜線形状、錐形状等があるがこれに限定するものではない。
【0023】
また、上記第1基準領域を上記第1突出領域及び上記第1平面領域にどのように分配するか、及び上記第2基準領域を上記第2突出領域及び上記第2平面領域にどのように分配するかにより、得られる剛性及びその異方性を適宜変更することができる。このとき、形成される上記第1領域、上記第2領域及び上記平面領域のうち、2つ以上の領域により形成される凹凸部の形状は、規則的に配されていることが好ましい。凹凸部が不規則な形状を有している場合、局部的な剛性の変化が生じ、剛性及びその異方性が不安定となる場合がある。
【0024】
上記凹凸部を有する板材において、上記単位領域を等分する数nの範囲は4≦n≦10であることが好ましい(請求項2)。
n<4の場合は、凹凸部形状が極めて単純となり、所望の剛性向上効果を得られない場合がある。n>10の場合においては、凹凸部の形状が小さくなり所望の剛性を得られない場合がある。また、凹凸部の形状が複雑となり成形が困難となるおそれがある。
【0025】
また、上記凹凸部を有する板材において、上記第1基準領域及び上記第2基準領域は、上記第1升及び上記第2升をそれぞれ連ねた後に、両者の面積が変化しないように両者の角部の一部を、円弧状に変形させることにより構成することができる(請求項3)。
ここで上記角部は、上記第1基準領域の輪郭線において凸角となる角部と、上記第2基準領域の輪郭線において凸角となる角部をさす。この場合には、上記凹凸部を有する板材の凹凸の角部を滑らかにできるので、成形が容易になると共に、用途の拡大やデザイン性の向上を図ることができる。
【0026】
また、上記凹凸部を有する板材において、上記第1基準領域及び上記第2基準領域は、上記第1升及び上記第2升をそれぞれ連ねた後に、両者のなす境界線の一部を両者の面積が変わらないように傾斜させることにより構成することもできる(請求項4)。
この場合にも、上記凹凸部を有する板材の成形性の改善や、用途の拡大、あるいはデザイン性の向上を図ることができる。
【0027】
また、上記凹凸部を有する板材において、上記第2基準面に対する上記第1側面の傾斜角度θ1(°)と上記第2基準面に対する上記第2側面の傾斜角度θ2(°)とは、10°〜90°の範囲にあることが好ましい(請求項5)。
上記第1側面の傾斜角度θ1(°)と上記第2側面の傾斜角度θ2(°)とが、10°〜90°の範囲にある場合、成形性を確保しつつ、優れた剛性向上率を有する凹凸部形状を得ることができる。
【0028】
上記第1側面の傾斜角度θ1(°)及び上記第2側面の傾斜角度θ2(°)が10°未満の場合には、上記第1領域と上記第2領域の突出高さを大きくすることが難しくなり、剛性向上率が低下する。また、上記第1側面の傾斜角度θ1(°)及び上記第2側面の傾斜角度θ2(°)が90°を超えることは凹凸部形成上困難であり、必要のない領域である。
尚、金属板をプレス成型する場合において上記第1側面の傾斜角度θ1(°)及び上記第2側面の傾斜角度θ2(°)の上限値は、成形性の問題から、70°以下であることがより好ましい。したがってより好ましい範囲としては10°〜70°である。
また、上記第1側面及び上記第2側面は複数の面により構成されるが、それらの面が全て同じ傾斜角度である必要はなく、部位によって傾斜角度を変えてもよい。但し、いずれの面においても、上記好ましい傾斜角度の範囲内とすることが好ましい。
【0029】
また、上記凹凸部を有する板材において、上記第1基準面及び上記第2基準面の少なくとも一部がそれぞれ平行な曲面からなることが好ましい(請求項6)。
この場合には、優れた上記凹凸部を有する板材を様々な形状に変形させることができ、用途を拡大することができる。
【0030】
また、上記凹凸部を有する板材において、上記板材は金属板をプレス成形することにより上記凹凸部を形成したものであることが好ましい(請求項7)。
金属板は、エンボス成形等のプレス成形あるいはロール成形等の塑性加工を施すことによって、容易に凹凸部を形成することができる。そのため、金属板の場合には、上記の優れた凹凸部形状を適用することが比較的容易にできる。金属板の材質としては、アルミニウム合金、鋼、銅合金などの塑性加工が可能な種々のものを適用できる。
【0031】
尚、成形方法においては、ロール成形等の塑性加工の他、鋳造、切削等を採用することも可能である。
また、上記板材は、上記凹凸部を有する限り、金属以外の材料においても有効であり、例えば、樹脂板等とすることもできる。樹脂材料等であれば射出成形あるいはホットプレス等によって凹凸部を形成することができる。樹脂材料においては、金属材料の場合よりも成形上の制約を受けにくく、設計の自由度もより広くなる。
【0032】
また、上記凹凸部を有する板材において、上記金属板の成形前の板厚t(mm)が0.05mm〜6.0mmであることが好ましい。
金属板の板厚が0.05mm未満の場合及び6.0mmを超える場合には、用途的に剛性を向上させる必要性が少ない。
【0033】
また、上記凹凸部を有する板材において、上記単位領域の一辺の長さL(mm)と、上記金属板の板厚t(mm)との比L/tは10〜2000であることが好ましい(請求項8)。
上記比L/tが10未満の場合には成形が困難となるおそれがあり、一方、上記比L/tが2000を超える場合には、十分な凹凸部形状を形成できなくなり、剛性が低下するという問題が生じるおそれがある。
【0034】
また、上記凹凸部を有する板材において、上記第1基準面と上記第2基準面との間の距離H(mm)と上記板厚t(mm)との比H/tと、上記第1側面と上記第2基準面とがなす最も大きい傾斜角θ1(°)とは、1≦(H/t)≦−3θ1+272の関係にあり、上記比H/Tと、上記第2側面と上記第2基準面とがなす最も大きい傾斜角θ2(°)とは、1≦(H/t)≦−3θ2+272の関係にあることが好ましい。
【0035】
上記比H/tが1未満の場合には、第1領域を形成することによる剛性向上効果が十分に得られないという問題が生じる恐れがある。一方、上記比H/tが−3θ1+272を超える場合には成形が困難になるという問題が生じる恐れがある。同様に、上記比H/tが1未満の場合には、第2領域を形成することによる剛性向上効果が十分に得られないという問題が生じる恐れがある。一方、上記比H/tが−3θ2+272を超える場合には成形が困難になるという問題が生じる恐れがある。
【0036】
また、第2の発明の積層構造体においては、上記凹凸部を有する板材を1枚のコア材として、その両面に配設された1枚ずつの平坦な面板よりなる三層構造の積層体とすることができる。また、このような基本構造を繰り返した構造、つまり、複数枚の上記凹凸部を有する板材を1枚ごとに平坦な面板を介して積層してなる多層構造を有することもできる。
また、複数枚の凹凸部を有する板材を直接積層してコア材とし、その片側又は両側の表面に平坦な面板を接合してなる構造を取ることもできる。
また、複数枚の凹凸部を有する板材を直接積層しただけの状態の積層構造体とすることもできる。
上記板材の積層枚数としては、用途及び要求特性に応じて変更することができる。
【0037】
また、第3の発明の車両パネルは、自動車のフードに限らず、ドアー、ルーフ、フロア、トランクリッドなどのパネル及び補強部材や、バンパー、クラッシュボックス、ドアビームなどのエネルギー吸収部材にも適用できる。また、上記アウターパネル及び上記インナーパネルとしては、鋼板、アルミニウム合金板などを用いることができる。
上記アウターパネルをアルミニウム合金板により構成する場合には、たとえば、比較的安価であるという理由により6000系合金が好適である。また、上記インナーパネルをアルミニウム合金板により構成する場合には、たとえば、比較的成形性が良いという理由により5000系合金板が好適である。
【実施例】
【0038】
(実施例1)
第1の発明の実施例にかかる凹凸部20を有する板材1につき、図1〜図6を用いて説明する。
【0039】
図6は、本例に示す板材1が有する凹凸部20の形状を、第2基準面K2における第1基準領域213、第2基準領域223、第1突出領域A1及び第2突出領域B1の配置によって表したものである。同図中において、実線は第1基準領域213及び第2基準領域223の輪郭線であり、輪郭線の内側に記載した記号は、その領域が第1突出領域A1又は第2突出領域B1のいずれの領域に属するかを示すものである。
【0040】
本例の凹凸部20を有する板材1は、図1〜図6に示すごとく、凹凸部20を形成することによって、剛性を高めた板材である。
凹凸部20は、次のように構成される。
図2に示すごとく、間隔をあけて平行に配された仮想の2つの面である第1基準面K1及び第2基準面K2を基準とした。図5及び図6に示すごとく、第2基準面K2を同じ大きさの仮想の正方形である単位領域24を敷き詰めたものと仮定し、各単位領域24内を縦横それぞれ6等分した格子によって区画される仮想の升目を第1升241と第2升242の2種類に分類した。上記升目の各縦列及び各横列には、第1升241と第2升242の両者を必ず含むと共に、同種類のものが縦又は横に2個以上隣接するように配置されている。単位領域24内における第1升241の合計個数及び第2升242の合計個数は、いずれも18個とし、第1升241を連ねた領域を第1基準領域213とすると共に第2升242を連ねた領域を第2基準領域223とした。本例においては、図6に示すごとく、第1基準領域213の全領域を第1突出領域A1に分配し、第2基準領域223の全領域を上記第2突出領域B1に分配してある。
【0041】
本例の凹凸部20を有する板材1は、図1〜図3に示すごとく、第2基準面K2(図6)上において定められた第1突出領域A1(図6)から第1基準面K1に向かって突出する第1領域21と、同様に、第2基準面K2(図6)において定められた第2突出領域B1(図6)から第1基準面K1に向かって突出する第2領域22とを設けてある。
第1領域21は、図1及び図2に示すごとく、第1突出領域A1を第1基準面K1上に縮小して投影した第1頂面211と、該第1頂面211の輪郭と第1突出領域A1の輪郭とをつなぐ第1側面212とからなる。また、第2領域22は、第2突出領域B1を第1基準面K1上に縮小して投影した第2頂面221と、該第2頂面221の輪郭と第2突出領域B1の輪郭とをつなぐ第2側面222とからなる。
【0042】
ここで、本例における、上記の第1基準領域213及び第2基準領域223を決定するための具体的な手順について、さらに詳しく説明する。
前述したように、図5に示すごとく、各単位領域24内を縦横それぞれ6等分した格子によって区画される仮想の升目を第1升241と第2升242の2種類に分類する。上記升目の各縦列及び各横列には、第1升241と第2升242の両者を必ず含むと共に、同種類のものが縦または横に2個以上隣接するように配置する。このとき、単位領域24内における第1升241の合計個数及び上記第2升242の合計個数は、いずれも18個とする。
【0043】
図5に示すごとく、単位領域24の任意の1つの角に存在する升目を基準升目(1−A)とする。該基準升目(1−A)を含む単位領域24の辺に沿った縦列を第1縦列とし、上記第1縦列に順次隣接する縦列を第2〜第6縦列とする。同様に、上記基準升目(1−A)を含む単位領域24の辺に沿った横列をA横列とし、順次隣接する横列をB〜F横列とする。ここでは、各縦列と各横列が交差する升を、各縦列の番号と各横列のアルファベットとを用いて表す。
【0044】
本例においては、1−A升〜5−A升、4−B升〜5−B升、4−C升〜5−C升、2−D升〜3−D升,2−E升〜3−E升,2−F升〜6−F升の18個の升を第1升241とし、上記以外の18個の升を第2升242とする。そして、第1升241を連ねた領域を第1基準領域213とすると共に第2升242を連ねた領域を第2基準領域223とした。これにより、図5に示すごとく、単位領域24には2個の第1基準領域213と2個の第2基準領域223が存在することとなる。次に、図6に示すごとく、第2基準面K2上において、単位領域24をその各辺に対して線対称をなすように連続的に配置する。そして、第1基準領域213の全領域を第1突出領域A1に分配し、第2基準領域223の全領域を第2突出領域B1に分配し、これらから上述した第1領域21及び第2領域22をそれぞれ形成する。したがって、本例において、第1平面領域A2及び第2平面領域B2は存在せず、平面領域23は形成されない。
【0045】
また、図5に示すごとく、第2基準面K2をなす仮想の単位領域24の一辺の長さL=24mmであり、図6に示す第2基準面K2に配された各単位領域24の大きさはすべて等しいものである。
また、図2に示すごとく、本例における第1基準面K1及び第2基準面K2は、互いに平行な平面である。第1頂面211及び第2頂面221は、その板厚中心が第1基準面K1と重なるように構成されている。そして、第1基準面K1と第2基準面K2との間の距離を突出高さHとする。本例においては、第1領域21及び第2領域22の突出高さHは、1.5mmとした。
【0046】
また、図2に示すごとく、第2基準面K2に対する第1側面212の傾斜角度θ1及び第2基準面K2に対する第2側面222の傾斜角度θ2は等しく、θ1=θ2=30°である。
また、本例の凹凸部20を有する板材1は、板厚t=0.3mmの1000系のアルミニウム板である。凹凸部20は、一対の金型を用いたプレス成形により形成される。尚、この成形方法は、表面に所望の凹凸形状を付けた一対の成形ロールによって成形するロール成形等の他の塑性加工方法を採用することも可能である。
【0047】
また、単位領域24の一辺の長さL(mm)と、上記アルミニウム板の板厚t(mm)との比L/tは80であり、10〜2000の範囲内にある。
【0048】
また、第1基準面K1と第2基準面K2との間の距離H(mm)と上記板厚t(mm)との比H/tは、5である。また、第1側面212と第2基準面K2とがなす傾斜角θ1=30°であり、−3θ1+272=182である。したがって、1≦H/t≦182の関係を満たしている。同様に、第2側面222と第2基準面K2とがなす傾斜角θ2=30°であり、−3θ2+272=182である。また、上記のごとく、比H/t=5である。したがって、1≦H/t≦182の関係を満たしている。
【0049】
次に、本例における凹凸部20を有する板材1の作用効果について説明する。
板材1は、上記のような特殊な形状の凹凸部を有している。すなわち、図1〜図3に示すごとく、第2基準面K2(図6)上において定められた第1突出領域A1(図6)から第1基準面K1に向かって突出する第1領域21と、第2基準面K2上において定められた第2突出領域B1(図6)から第1基準面K1に向かって突出する第2領域22とを設けてなる。そして、図2に示すごとく、第1領域21は、第1頂面211と、該第1頂面211の輪郭と第1突出領域A1の輪郭とをつなぐ第1側面212とからなり、第2領域22は、第2頂面221と、該第2頂面221の輪郭と第2突出領域B1の輪郭とをつなぐ第2側面222とからなる。
【0050】
このような構造を有しているので、本例の板材1は曲げ剛性に優れると共に、エネルギー吸収特性に優れた板材となる。
剛性が向上する理由は、次のように考えられる。即ち、第1領域21及び第2領域22は、板材1の中立面から離れた位置に配置した第1基準面K1上に配された第1頂面211及び第2頂面221と、板材1の厚さ方向に交差した第1側面212及び第2側面222とからなり、板材1の中立面から離れた位置に多くの材料を配置できる。そのため、多くの材料を強度部材として効果的に使用することができ、剛性向上効果とエネルギー吸収特性を高めることができる。また、剛性の向上に伴い、制振性の向上効果と、凹凸形状による音の反響抑制効果を得ることができる。
【0051】
また、第1基準領域213の全領域を第1突出領域A1に分配し、かつ第2基準領域223の全領域を第2突出領域B1に分配してあるため、凹凸部20は、第1領域21と第2領域22の2つの領域で構成される。そのため、第1領域21と第2領域22が規則的に、かつ全面に形成される。したがって、前述した剛性向上効果に加えて、異方性が非常に少ない板材を得ることができる。
【0052】
(FEM解析)
本例の板材1の剛性向上効果を定量的に判断するために、FEM解析を用いた片持ち梁による曲げ剛性評価を行った。
上記FEM解析は、試験片における凹凸部20の形成方向を変化させることにより、0°方向と45°方向における曲げ剛性評価を行った。
【0053】
FEM解析に用いた試験片形状は、120mm×120mmの矩形形状を有しており、その全面に凹凸部20を形成してある。尚、表面積の増加を考慮して板厚は、t=0.272mmとした。
上記試験片の端部において、一端を固定端とし、該固定端と対向して配される端部を自由端とした。該自由端をなす辺の中央部に1Nの負荷を加え、FEM解析を行うことで板材1のたわみ量を求めた。
評価は、凹凸部20を形成していない平板状の元板について、同様のFEM解析を行い得られたたわみ量と比較することで行った。
【0054】
<0°方向>
図1に示すごとく、単位領域24のなす辺と板材1のなす辺とが平行となるよう凹凸部20を形成した試験片において、同図中の上方に位置する端部Z1を固定端とし、端部Z1と対向する端部Z2を自由端とする方向を0°方向とした。
実施例1の凹凸部20を有する板材1は、前述した0°方向において、平板状の元板と比べて、曲げ剛性が5.72倍に向上することが明らかとなった。
【0055】
<45°方向>
図4に示すごとく、単位領域24のなす辺と板材1のなす辺とが45°となるよう凹凸部20を形成した試験片において、同図中の上方に位置する端部Z3を固定端とし、端部Z3と対向する端部Z4を自由端とする方向を45°方向とした。
実施例1の凹凸部20を有する板材1は、前述した45°方向において、平板状の元板と比べて、曲げ剛性が4.16倍に向上することが明らかとなった。
【0056】
(実施例2)
本例にかかる凹凸部20を有する板材1について、図7〜図11を用いて説明する。
本例は、図11に示すごとく、実施例1と同様に、第2基準面K2上に単位領域24を配置し、第1基準領域213及び第2基準領域223を形成した後、第1基準領域213の全てを第1突出領域A1とし、第2基準領域223の全てを第2平面領域B2とした例である。
【0057】
図11は、前述のごとく形成された第2基準面K2を第1基準領域213、第2基準領域223、第1突出領域A1及び第2平面領域B2の配置によって表したものである。同図中において、実線は第1基準領域213及び第2基準領域223の輪郭線であり、輪郭線の内側に記載した記号は、その領域が第1突出領域A1又は第2平面領域B2のいずれの領域に属するかを示すものである。
【0058】
したがって、凹凸部20は、図7〜図9に示すごとく、第2基準面K2(図11)に定められた第1突出領域A1(図11)から第1基準面K1に向かって突出した第1領域21と、同様に第2基準面K2に定められた第2平面領域B2(図11)からなる平面領域23とから構成されている。該平面領域23は、第2平面領域B2の輪郭により形成される平面部231からなる。また、図8に示すごとく、平面部231は、その板厚中心が第2基準面K2と重なるように構成されている。第1領域21の構成については実施例1と同様である。
【0059】
本例に示す板材1は、図7〜図9に示すごとく、第1基準面K1上に配される第1頂面211と、板材1と交差するように配された第1側面212と、第2基準面K2上に配される平面部231とからなる。そのため、板材1の中立面に対して、上面側及び下面側に離れた位置に配された第1頂面211と平面部231を有することにより、剛性向上効果とエネルギー吸収特性をより高めることができる。また、実施例1と同様に、剛性の向上に伴い、制振性の向上効果と、凹凸形状による音の反響抑制効果を得ることができる。
【0060】
(FEM解析)
本例の板材1の剛性向上効果を定量的に判断するために、FEM解析を用いた片持ち梁による曲げ剛性評価により行った。
上記FEM解析は、試験片に対して、凹凸部20の形成方向を変化させることにより、0°方向、45°方向、90°方向及び135°方向における評価を行った。
【0061】
FEM解析に用いた試験片形状は、120mm×120mmの矩形形状を有しており、その全面に凹凸部20を形成してある。尚、表面積の増加を考慮して板厚は、t=0.285mmとした。
上記試験片の端部において、一端を固定端とし、該固定端と対向して配される端部を自由端とした。該自由端をなす辺の中央部に1Nの負荷を加え、FEM解析を行うことで板材1のたわみ量を求めた。
評価は、凹凸部20を形成していない平板状の元板について、同様のFEM解析を行い得られたたわみ量と比較することで行った。
【0062】
<0°方向>
図7に示すごとく、単位領域24の辺と板材1の辺とが平行となるよう凹凸部20を形成した試験片において、同図中の上方に位置する端部Z1を固定端とし、端部Z1と対向する端部Z2を自由端とする方向を0°方向とした。
本例の凹凸部20を有する板材1は、前述した0°方向において、平板状の元板と比べて、曲げ剛性が5.19倍に向上することが明らかとなった。
【0063】
<45°方向>
図10に示すごとく、単位領域24の辺と板材1の辺とのなす角度が45°となるよう凹凸部20を形成した試験片において、同図中の上方に位置する端部Z3を固定端とし、端部Z3と対向する端部Z4を自由端とする方向を45°方向とした。
本例の凹凸部20を有する板材1は、前述した45°方向において、平板状の元板と比べて、曲げ剛性が5.17倍に向上することが明らかとなった。
【0064】
<90°方向>
図7に示すごとく、単位領域24の辺と板材1の辺とが平行となるよう凹凸部20を形成した試験片において、同図中の左側に位置する端部Z5を固定端とし、端部Z5と対向する端部Z6を自由端とする方向を90°方向とした。
本例の凹凸部20を有する板材1は、前述した90°方向において、平板状の元板と比べて、曲げ剛性が9.29倍に向上することが明らかとなった。
【0065】
<135°方向>
図10に示すごとく、単位領域24の辺と板材1の辺とがなす角度が45°となるよう凹凸部20を形成した試験片において、同図中の左側に位置する端部Z7を固定端とし、端部Z7と対向する端部Z8を自由端とする方向を135°方向とした。
本例の凹凸部20を有する板材1は、平板状の元板と比べて、曲げ剛性が5.18倍に向上することが明らかとなった。
上記のFEM解析を用いた片持ち梁による曲げ剛性評価の結果から、本例に示す凹凸部20を有する板材1は、90°方向に対して特に優れた剛性向上効果を有し、0°方向、45°方向及び135°方向においては剛性の異方性が極めて小さいことが明らかとなった。
【0066】
(実施例3)
本例は図12〜図14に示すごとく、実施例1と同様に、第2基準面K2上に単位領域24を配置し、第1基準領域213及び第2基準領域223を形成した後、第1基準領域213は、その一部領域を第1突出領域A1に分配し、該第1突出領域A1以外の残りの上記第1基準領域213を第1平面領域A2に分配し、第2基準領域223は、その全領域を第2平面領域B2へと分配してある。
【0067】
本例において、以下のごとく、第1基準領域213を第1突出領域A1及び第1平面領域A2へと分配した。
図14に示すごとく、単位領域24内に形成された2つの第1基準領域213の一方を仮突出領域214とし、もう一方を仮平面領域215とした。このように分配した単位領域24を、該単位領域24の各辺にそれぞれ線対称となるように配置した後、仮突出領域214からなる第1基準領域213を、第1突出領域A1とし、仮平面領域215からなる第1基準領域213を、第1平面領域A2とした。
【0068】
図14は、前述のごとく形成された第2基準面K2を第1基準領域213、第2基準領域223、第1突出領域A1、第1平面領域A2及び第2平面領域B2の配置によって表したものである。同図中において、実線は第1基準領域213及び第2基準領域223の輪郭線であり、輪郭線の内側に記載した記号は、その領域が第1突出領域A1、第1平面領域A2又は第2平面領域B2のいずれの領域に属するかを示すものである。
【0069】
本例の凹凸部20を有する板材1は、図12に示すD−D線断面において形成される凹凸の数が少ない。そのため、D−D線断面と同様の断面形状を有する部分における剛性向上率は、凹凸が多く形成されている断面に比べ小さいものとなり変形しやすい。したがって、断面において凹凸が多く形成された方向においては高剛性で変形しにくく、D−D線断面に対して垂直方向からの入力あるいはD−D線を軸とする曲げに対しては、上記高剛性を示す方向よりも変形しやすい板材を得ることができる
【0070】
(実施例4)
本例は、図15に示す単位領域24を構成し、図16〜図18に示すごとく、第2基準面K2上における単位領域24の配置を変更した例である。
図15に示すごとく、本例の単位領域24は、該単位領域24内を縦横それぞれ4等分した格子によって区画される仮想の升目を第1升241と第2升242に分類する。上記升目の各縦列及び各横列には、第1升241と第2升242の両者を必ず含むと共に、同種類のものが縦又は横に2個以上隣接するように配置する。このとき、単位領域24内における第1升241の合計個数及び上記第2升242の合計個数はいずれも8個とし、第1升241を連ねた領域を第1基準領域213とすると共に第2升242を連ねた領域を第2基準領域223とした。このとき、図15に示すごとく、第1基準領域213及び第2基準領域223は、それぞれ2個ずつ形成される。
【0071】
図16に示す第2基準面K2は、本例の単位領域24を、上下左右において、同姿勢で連続して配置した例である。
図17に示す第2基準面K2は、本例の単位領域24を、90°ずつ回転させ連続して配置した例である。
図18に示す第2基準面K2は、本例の単位領域24を、その各辺に対して線対称となるように連続して配置した例である。
【0072】
上記のいずれの変形例においても、第1基準領域213および第2基準領域223を、第1突出領域A1、第1平面領域A2、第2突出領域B1及び第2平面領域B2へと分配する。そして、形成された第1突出領域A1と第2突出領域B1とから第1基準面K1に向かって突出する第1領域21と第2領域22とを形成し、第1平面領域A2と第2平面領域B2とから平面領域23を形成し凹凸部を有する板材を構成するものである。尚、前述したごとく、第1基準領域213を第1突出領域A1及び第1平面領域A2のいずれに分配するか、及び第2基準領域223を第2突出領域B1及び第2平面領域B2のいずれに分配するかによって、凹凸部の構成は変化する。
本例において、図16〜図18に示す第2基準面K2を基に形成される板材は、剛性の向上効果を有し、かつ凹凸部の構成を変更することにより、剛性の異方性を変化させることができる。
【0073】
(実施例5)
本例は、図19に示すごとく、実施例4の単位領域24(図15)内に配された第1升241および第2升242をそれぞれ連ねた後に、両者の面積が変化しないように両者の角部の一部を、円弧状に変形させることにより構成した例である。具体的には、同図に示すごとく、第1基準領域213の輪郭線がなす2か所の凸角部a1と、第2基準領域223がなす2か所の凸角部a2とを、いずれも同じ曲率半径の円弧状に変形させてある。
【0074】
単位領域24の配置は、図20に示すごとく、単位領域24の各辺に対して線対称となるように連続して配置した例である。本例においても、同図中に示す第1基準領域213および第2基準領域223を、第1突出領域A1、第1平面領域A2、第2突出領域B1及び第2平面領域B2へと分配する。そして、第2基準面K2上に定められた第1突出領域A1と第2突出領域B1とから、第1基準面K1に向かって突出する第1領域21と第2領域22を形成し、第2基準面K2上に定められた第1平面領域A2と第2平面領域B2とから平面領域23を形成し凹凸部を有する板材を構成するものである。尚、前述したごとく、第1基準領域213を第1突出領域A1及び第1平面領域A2のいずれに分配するか、及び第2基準領域223を第2突出領域B1及び第2平面領域B2のいずれに分配するかによって、凹凸部の構成は変化する。
【0075】
本例の図20に示す第2基準面K2を基に形成される板材は、剛性の向上効果を有し、かつ凹凸部の構成を変更することにより、剛性の異方性を変化させることができる。また、凹凸部を有する板材の凹凸の角部を滑らかにできるので、成形が容易になると共に、用途の拡大やデザイン性の向上を図ることができる。
尚、第2基準面K2上に配される単位領域24の配置は、実施例3と同様に変化させることもできる。
【0076】
(実施例6)
本例は、図21に示すごとく、実施例4に示す単位領域24(図15)内に形成された第1基準領域213及び第2基準領域223の輪郭線の一部を傾斜させた例である。本例においては、単位領域24(図15)内において、第1基準領域213及び第2基準領域223の凹角を形成する短辺b1と長辺b2の2辺のうち、長辺b2を傾斜させてある。尚、傾斜角度αは20°とした。このとき、形成される第1基準領域213および第2基準領域223の面積は、長辺b2を傾斜する前後で同一である。
【0077】
単位領域24の配置は、図22に示すごとく、上下左右に同じ姿勢で連続して配置してある。同図中に示す第1基準領域213および第2基準領域223を、第1突出領域A1、第1平面領域A2、第2突出領域B1及び第2平面領域B2へと分配する。そして、第2基準面K2上に定められた第1突出領域A1と第2突出領域B1とから第1基準面K1に向かって突出する第1領域21と第2領域22を形成し、第2基準面K2上に定められた第1平面領域A2と第2平面領域B2とから平面領域23を形成し凹凸部を構成するものである。尚、第1基準領域213を第1突出領域A1及び第1平面領域A2のいずれに分配するか、及び第2基準領域223を第2突出領域B1及び第2平面領域B2のいずれに分配するかによって、凹凸部の構成は変化する。
【0078】
本例の図22に示す第2基準面K2を基に形成される板材は、剛性の向上効果を有し、かつ凹凸部の構成を変更することにより、剛性の異方性を変化させることができる。また、凹凸部を有する板材の成形性の改善や、用途の拡大、あるいはデザイン性の向上を図ることができる。
尚、第2基準面K2上に配される単位領域24の配置は、実施例3と同様に変化させることができる。また、本例においては、輪郭線の傾斜角度α=20°としたが、これに限定するものではない。
【0079】
(実施例7)
本例は、図23に示すごとく、凹凸部20を円筒材11に設けた例である。本例においては、第1基準面K1及び第2基準面K2は平行に配された円筒状の曲面からなる。本例の第2基準面K2は、実施例1〜実施例6のいずれかの平面状をなす第2基準面K2を円筒状に湾曲させたものである。凹凸部20をなす第1領域21、第2領域22及び平面領域23の構成は、実施例1〜実施例3と同様である。
本例に示すごとく、優れた特性を備えた凹凸部20を有する板材1を様々な形状に変形させることができ、用途を拡大することができる。
【0080】
また、本例に示す凹凸部20を有する円筒材11を、飲料缶やロケットのような円筒形の構造物に用いることで、材料の板厚を増加させることなく、剛性を高めることができる。また、本例の円筒材11は、優れたエネルギー吸収特性を有している。そのため、自動車などの車体に使用することで、高い剛性と優れたエネルギー吸収特性を付与することができる。
【0081】
(実施例8)
本例は、図24に示すごとく、実施例2の凹凸部20を有する板材1をコア材として用いて積層構造体5を構成した例である。
即ち、積層構造体5は、凹凸部20を有する1枚の板材1よりなるコア材の両側の表面に面板42、43を接合してなる。
面板42、43は、材質3000系、板厚1.0mmのアルミニウム合金板よりなる。
【0082】
本例の積層構造体5は、前述したような優れた剛性を有する凹凸部20を有する板材1をコア材として用い、その第1領域21の第1頂面211と平面領域23の平面部231に対して面板42、43を接着、ろう付け等により接合することによって、凹凸部20を有する板材1単体の場合よりも格段に剛性が高い積層構造体5が得られる。しかも、板材1も面板42、43もアルミニウム合金板よりなるため、軽量化することができる。
【0083】
また、剛性向上に伴う制振性の向上効果と、空気層を包容することにより吸音性の向上効果を得ることができる。また、良く知られているように、面板42、43のいずれか一方に貫通孔を形成することにより、ヘルムホルツ型吸音構造となり、さらに吸音性を向上させることができる。
尚、上記面板としては、アルミニウム合金以外の金属の板、たとえば、鋼板、チタン板等や、樹脂板等を適用することも可能である。
【0084】
(実施例9)
本例は、図25に示すごとく、実施例1〜実施例6に記載の板材1をインナーパネルとして用い、板材1における第2基準面K2側の面をアウターパネル61の裏面側に向けて配置して構成する車両パネル6の例である。上記インナーパネルは、その外周部においてアウターパネル61とヘム加工等により接合されている。尚、前述したインナーパネルにおいて、凹凸部20の形成方向を限定するものではなく、板材1における第1基準面K1側の面をアウターパネル61の裏面側に向けて配置して構成することもできる。
【0085】
本例の車両パネル6は、そのインナーパネルを構成する凹凸部20を有する板材1が、上記のごとく剛性向上効果に優れているので、歩行者が衝突した際の一次衝突のエネルギー及び二次衝突のエネルギーを吸収する特性に優れたものとなる。また、剛性向上に伴う制振性の向上効果と、空気層を包容することによる吸音性の向上効果を得ることができる。
尚、本例においては、凹凸部20を有する板材1をインナーパネルとして用いたが、インナーパネルとアウターパネルのいずれか一方又は両方に用いることができる。
【符号の説明】
【0086】
1 板材
20 凹凸部
21 第1領域
211 第1頂面
212 第1側面
213 第1基準領域
22 第2領域
221 第2頂面
222 第2側面
223 第2基準領域
23 平面領域
231 平面部
24 単位領域
241 第1升
242 第2升
5 積層構造体
6 車両パネル
A1 第1突出領域
A2 第1平面領域
B1 第2突出領域
B2 第2平面領域
K1 第1基準面
K2 第2基準面
【技術分野】
【0001】
本発明は、凹凸部を形成することによって剛性を高めた板材、並びにこれを用いて構成した車両パネル及び積層構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車においては、軽量化を目的として、鋼板等によって構成されている部品の材料を、アルミニウム合金板等の軽量な材料に置き換えることが検討、実施されている。この場合、軽量化の前提として、要求される剛性を確保することが必要である。
これまで、板材の板厚を厚くすることなく剛性を向上させるために、板材に凹凸模様を設けて形状的に剛性を向上させることが検討されてきた。
例えば、自動車部品の一つに、ヒートインシュレータという板材よりなる部品がある。特許文献1には、その材料として、板厚を厚くすることなく十分な剛性を確保するために、エンボス成形による多数の突部を形成したものが提案されている。また、ヒートインシュレータに限らず、様々な用途においてエンボス成形等の凹凸部を形成することによって剛性を向上させた板材が提案されている。(特許文献2〜6)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−136720号公報
【特許文献2】特開2000−257441号公報
【特許文献3】特開平9−254955号公報
【特許文献4】特開2000−288643号公報
【特許文献5】特開2002−307117号公報
【特許文献6】特開2002−321018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1のように、多数の凹凸部を形成した板材は、凹凸部の無いものよりも剛性が高くなることは事実である。しかしながら、板厚を厚くすることなく剛性を向上するのに最適な凹凸部形状がいかなるものであるかについては、未だ解明できているとは言えない。そして、剛性向上率をこれまで以上に高くすることは、常に要求されている。
また、自動車に限らず、様々な機械装置等において、板材からなる部分を少しでも軽量化する要求が存在する。軽量化の必要性以外にも、材料費削減の効果も期待されている。また、板材(板形状を有する材料)であれば、材質を問わず剛性向上要求は存在する。
【0005】
また、剛性向上効果の高い凹凸部を有する板材を用いて、これを含んだ積層構造体や、剛性向上効果の高い凹凸部を有する板材を組み合わせた車両パネルについても、従来以上の高剛性なものとすることも求められている。
【0006】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであり、凹凸部を設けることによって剛性を向上させた板材であって、従来よりも剛性向上効果の高い凹凸部のパターンを有する板材、及びこれを用いた車両パネル並びに積層構造体を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、凹凸部を形成することによって剛性を高めた板材であって、
上記凹凸部は、間隔をあけて平行に配された仮想の2つの面である第1基準面及び第2基準面を基準とし、
上記第2基準面を同じ大きさの仮想の正方形である単位領域を敷き詰めたものと仮定し、上記各単位領域内を4以上の整数nによって縦横それぞれn等分した格子によって区画される仮想の升目を第1升と第2升の2種類に分類し、上記升目の各縦列及び各横列には、上記第1升と上記第2升の両者を必ず含むと共に、同種類のものが縦又は横に2個以上隣接するように配置し、かつ、上記単位領域内における上記第1升の合計個数及び上記第2升の合計個数は、いずれもn2/2±0.5の範囲内の整数とし、上記第1升を連ねた領域を第1基準領域とすると共に上記第2升を連ねた領域を第2基準領域とし、
上記第1基準領域は、該第1基準領域の一部を第1突出領域に分配し該第1突出領域以外の残りの上記第1基準領域を第1平面領域に分配するか、もしくは、上記第1基準領域の全領域を上記第1突出領域に分配し、
上記第2基準領域は、該第2基準領域の一部を第2突出領域に分配し該第2突出領域以外の残りの上記第2基準領域を第2平面領域に分配するか、もしくは、上記第2基準領域の全領域を上記第2突出領域又は上記第2平面領域のいずれかに分配し、
上記第2基準面上において定められた上記第1突出領域から上記第1基準面に向かって突出する第1領域と、上記第2基準面上において定められた上記第2突出領域から上記第1基準面に向かって突出する第2領域と、上記第2基準面上に定められた上記第1平面領域及び上記第2平面領域からなる平面領域を設け、
上記第1領域は、上記第1突出領域を上記第1基準面上に等倍又は縮小して投影した第1頂面と、該第1頂面の輪郭と上記第1突出領域の輪郭とをつなぐ第1側面とからなり、
上記第2領域は、上記第2突出領域を上記第1基準面上に等倍又は縮小して投影した第2頂面と、該第2頂面の輪郭と上記第2基準領域の輪郭とをつなぐ第2側面とからなり
上記平面領域は、上記第1平面領域及び上記第2平面領域の輪郭により形成される平面部からなるよう構成したことを特徴とする凹凸部を有する板材にある(請求項1)。
【0008】
第2の発明は、複数の板材を積層してなる積層構造体であって、上記板材の少なくとも1枚は第1の発明に記載の凹凸部を有する板材であることを特徴とする積層構造体にある(請求項11)。
【0009】
第3の発明は、アウターパネルと該アウターパネルの裏面に接合されたインナーパネルとを有する車両パネルであって、上記アウターパネル及び上記インナーパネルのいずれか一方又は両方が第1の発明に記載の凹凸部を有する板材よりなることを特徴とする車両パネルにある(請求項12)。
【発明の効果】
【0010】
第1の発明において、上記凹凸部は、上記のごとく、上記第2基準面上において定められた上記第1突出領域から上記第1基準面に向かって突出する上記第1領域と、上記第2基準面上において定められた上記第2突出領域から上記第1基準面に向かって突出する上記第2領域とを設けてなる。また、上記第2基準面上に定められた上記第1平面領域及び上記第2平面領域からなる上記平面領域を設けてなる。そして、上記第1領域は、上記第1頂面と、該第1頂面の輪郭と上記第1突出領域の輪郭とをつなぐ上記第1側面とからなり、上記第2領域は、上記第2頂面と、該第2頂面の輪郭と上記第2突出領域の輪郭とをつなぐ上記第2側面とからなる。また、上記平面領域は、上記第1平面領域及び上記第2平面領域の輪郭により形成される平面部からなる。
【0011】
このような構造を有しているので、本発明の上記板材は曲げ剛性に優れると共に、エネルギー吸収特性に優れた板材となる。
剛性が向上する理由は、次のように考えられる。即ち、上記第1領域と上記第2領域とは、板材の中立面から離れた位置に配される上記第1基準面上に配置した上記第1頂面及び上記第2頂面と、板材の厚さ方向に交差した上記第1側面及び上記第2側面とからなる。また、上記平面領域は、板材の中立面から離れた位置に配される第2基準面上に配置した上記平面部からなる。そのため、上記板材の中立面から離れた位置に多くの材料を配置できる。したがって、多くの材料を強度部材として効果的に使用することができ、剛性向上効果を高めることができる。また、剛性の向上に伴い、制振性の向上効果と、凹凸形状による音の反響抑制効果を得ることができる。
【0012】
また、上記第1基準領域を上記第1突出領域及び上記第1平面領域へと分配し、上記第2基準領域を上記第2突出領域及び上記第2平面領域へと分配する際に、その分配割合及び分配パターンを変化させることができる。これにより、形成される凹凸部の剛性及びその異方性を変化させることができる。すなわち、剛性の異方性が小さい板材だけでなく、剛性の異方性が大きい板材を形成することもできる。
【0013】
剛性の異方性が大きい板材は、一枚の板材において変形しやすい方向と変形しにくい方向とを有している。したがって、特定方向の入力に対しては高剛性で変形しにくく、その他の方向からの入力に対しては、上記高剛性を示す方向よりも変形しやすい板材を得ることができる。このような板材は、例えば、自動車のボディ及びその構造部材に用いることで、通常の使用時に生じる荷重の入力方向に対しては変形しにくい強度部材をなし、衝突時等に生じる荷重の入力方向に対しては変形しやすく衝撃を吸収する構造とすることができる。
【0014】
尚、後述のごとく、第1の発明において、上記第1基準領域を第1突出領域、上記第1平面領域へと分配し、上記第2基準領域を上記第2突出領域及び上記第2平面領域へと分配する際において、いずれの領域へと分配するかにより上記凹凸部の構成が変化する。具体的な凹凸部の構成としては、第1領域、第2領域及び平面領域の3つの領域からなる場合と、第1領域及び第2領域の2つの領域からなる場合と、第1領域と平面領域の2つの領域からなる場合とがある。尚、上記平面領域おいては、上記第1平面領域と上記第2平面領域の両方からなる場合と、いずれか一方からなる場合とがある。
【0015】
第2の発明においては、上記のごとく剛性向上効果を備えた凹凸部を有する板材を積層構造体の一部として用いることによって、非常に剛性が高い積層構造体を容易に得ることができる。また、剛性向上に伴う制振性の向上効果と、空気層を包容することによる吸音性の向上効果を得ることができる。
【0016】
第3の発明においては、上記のごとく剛性向上効果を備えた凹凸部を有する板材を上記アウターパネル及び上記インナーパネルのいずれか一方又は両方に用いることによって、非常に剛性が高い車両パネルを容易に得ることができる。また、剛性向上に伴う制振性の向上効果と、空気層を包容することによる吸音性の向上効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施例1における、凹凸部を有する板材の部分平面図。
【図2】図1のA−A線矢視断面の部分拡大図。
【図3】実施例1における、凹凸部を有する板材の部分斜視図。
【図4】実施例1における、凹凸部の形成方向を変化させた板材の部分平面図。
【図5】実施例1における、単位領域を示す説明図。
【図6】実施例1における、第2基準面を示す説明図。
【図7】実施例2における、凹凸部を有する板材の部分平面図。
【図8】図7のB−B線矢視断面の部分拡大図。
【図9】実施例2における、凹凸部を有する板材の部分斜視図。
【図10】実施例2における、凹凸部の形成方向を変化させた板材の部分平面図。
【図11】実施例2における、第2基準面を示す図。
【図12】実施例3における、凹凸部を有する板材の部分平面図。
【図13】実施例3における、凹凸部を有する板材の部分斜視図。
【図14】実施例3における、第2基準面を示す図。
【図15】実施例4における、単位領域を示す説明図。
【図16】実施例4における、単位領域を同じ姿勢で連続して配置した第2基準面を示す説明図。
【図17】実施例4における、単位領域を90°ずつ回転させた形状を連続配置した第2基準面を示す説明図。
【図18】実施例4における、単位領域の各辺に対して線対称である形状を連続配置した第2基準面を示す説明図。
【図19】実施例5における、単位領域を示す説明図。
【図20】実施例5における、単位領域の各辺に対して線対称である形状を連続配置した第2基準面を示す説明図。
【図21】実施例6における、単位領域を示す説明図。
【図22】実施例6における、単位領域を同じ姿勢で連続して配置した第2基準面を示す説明図。
【図23】実施例7における凹凸部を有する円筒材を示す説明図。
【図24】実施例8における積層構造体の展開説明図。
【図25】実施例9における車両パネルの展開説明図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明において、正方形等の形状の表現は、いずれも幾何学上の狭義の概念に止まらず、一般的に上記の形状と認識できる形状を含むものであり、各辺が若干曲線となったり、角部や面に成形上必要な丸み等が生じるいわゆるフィレットといわれる曲面を設けたりすることも当然に許容される。
また、本発明において、平行の表現は幾何学上の狭義の概念に止まらず、一般的に平行と認識できるものであればよい。
【0019】
また、上記第1基準領域を上記第1突出領域又は上記第1平面領域のいずれに分配するか、及び上記第2基準領域を上記第2突出領域又は上記第2平面領域のいずれに分配するかによって、上記凹凸部の構成は変化する。
上記第1基準領域の全領域を上記第1突出領域へと分配し、上記第2基準領域の全領域を上記第2突出領域へと分配した場合には、凹凸部は上記第1領域と上記第2領域とにより形成される。
【0020】
また、上記第1基準領域の一部を第1突出領域に分配し、該第1突出領域以外の残りの上記第1基準領域を上記第1平面領域に分配するか、もしくは、上記第1基準領域の全領域を上記第1突出領域に分配し、かつ上記第2基準領域は、その全領域を上記第2平面領域へと分配した場合には、凹凸部は、上記第1領域及び上記平面領域により形成される。
【0021】
また、上記第1基準領域は、その全領域を上記第1突出領域に分配し、上記第2基準領域の一部を上記第2突出領域に分配し、該第2突出領域以外の残りの上記第2基準領域を第2平面領域に分配した場合には、凹凸部は、上記第1領域、上記第2領域及び上記平面領域により形成される。
また、上記第1基準領域は、その一部を上記第1突出領域に分配し、該第1突出領域以外の残りの上記第1基準領域を上記第1平面領域に分配し、かつ上記第2基準領域は、該第2基準領域の一部を第2突出領域に分配し、該第2突出領域以外の残りの上記第2基準領域を第2平面領域に分配するか、もしくは上記第2基準領域の全領域を上記第2突出領域に分配した場合においても、凹凸部は、上記第1領域、上記第2領域及び上記平面領域により形成される。
【0022】
また、上記第1頂面及び上記第2頂面は、上記第1基準面の面によって構成することもできるし、あるいは、上記第1基準面から上記第2基準面を配した方向とは逆の方向に突出した部位によって構成することもできる。また、上記平面部は、上記第2基準面の面によって構成することもできるし、あるいは、上記第2基準面から上記第1基準面を配した方向とは逆の方向に突出した部位によって構成することもできる。突出した部位の形状例としては、ドーム形状、稜線形状、錐形状等があるがこれに限定するものではない。
【0023】
また、上記第1基準領域を上記第1突出領域及び上記第1平面領域にどのように分配するか、及び上記第2基準領域を上記第2突出領域及び上記第2平面領域にどのように分配するかにより、得られる剛性及びその異方性を適宜変更することができる。このとき、形成される上記第1領域、上記第2領域及び上記平面領域のうち、2つ以上の領域により形成される凹凸部の形状は、規則的に配されていることが好ましい。凹凸部が不規則な形状を有している場合、局部的な剛性の変化が生じ、剛性及びその異方性が不安定となる場合がある。
【0024】
上記凹凸部を有する板材において、上記単位領域を等分する数nの範囲は4≦n≦10であることが好ましい(請求項2)。
n<4の場合は、凹凸部形状が極めて単純となり、所望の剛性向上効果を得られない場合がある。n>10の場合においては、凹凸部の形状が小さくなり所望の剛性を得られない場合がある。また、凹凸部の形状が複雑となり成形が困難となるおそれがある。
【0025】
また、上記凹凸部を有する板材において、上記第1基準領域及び上記第2基準領域は、上記第1升及び上記第2升をそれぞれ連ねた後に、両者の面積が変化しないように両者の角部の一部を、円弧状に変形させることにより構成することができる(請求項3)。
ここで上記角部は、上記第1基準領域の輪郭線において凸角となる角部と、上記第2基準領域の輪郭線において凸角となる角部をさす。この場合には、上記凹凸部を有する板材の凹凸の角部を滑らかにできるので、成形が容易になると共に、用途の拡大やデザイン性の向上を図ることができる。
【0026】
また、上記凹凸部を有する板材において、上記第1基準領域及び上記第2基準領域は、上記第1升及び上記第2升をそれぞれ連ねた後に、両者のなす境界線の一部を両者の面積が変わらないように傾斜させることにより構成することもできる(請求項4)。
この場合にも、上記凹凸部を有する板材の成形性の改善や、用途の拡大、あるいはデザイン性の向上を図ることができる。
【0027】
また、上記凹凸部を有する板材において、上記第2基準面に対する上記第1側面の傾斜角度θ1(°)と上記第2基準面に対する上記第2側面の傾斜角度θ2(°)とは、10°〜90°の範囲にあることが好ましい(請求項5)。
上記第1側面の傾斜角度θ1(°)と上記第2側面の傾斜角度θ2(°)とが、10°〜90°の範囲にある場合、成形性を確保しつつ、優れた剛性向上率を有する凹凸部形状を得ることができる。
【0028】
上記第1側面の傾斜角度θ1(°)及び上記第2側面の傾斜角度θ2(°)が10°未満の場合には、上記第1領域と上記第2領域の突出高さを大きくすることが難しくなり、剛性向上率が低下する。また、上記第1側面の傾斜角度θ1(°)及び上記第2側面の傾斜角度θ2(°)が90°を超えることは凹凸部形成上困難であり、必要のない領域である。
尚、金属板をプレス成型する場合において上記第1側面の傾斜角度θ1(°)及び上記第2側面の傾斜角度θ2(°)の上限値は、成形性の問題から、70°以下であることがより好ましい。したがってより好ましい範囲としては10°〜70°である。
また、上記第1側面及び上記第2側面は複数の面により構成されるが、それらの面が全て同じ傾斜角度である必要はなく、部位によって傾斜角度を変えてもよい。但し、いずれの面においても、上記好ましい傾斜角度の範囲内とすることが好ましい。
【0029】
また、上記凹凸部を有する板材において、上記第1基準面及び上記第2基準面の少なくとも一部がそれぞれ平行な曲面からなることが好ましい(請求項6)。
この場合には、優れた上記凹凸部を有する板材を様々な形状に変形させることができ、用途を拡大することができる。
【0030】
また、上記凹凸部を有する板材において、上記板材は金属板をプレス成形することにより上記凹凸部を形成したものであることが好ましい(請求項7)。
金属板は、エンボス成形等のプレス成形あるいはロール成形等の塑性加工を施すことによって、容易に凹凸部を形成することができる。そのため、金属板の場合には、上記の優れた凹凸部形状を適用することが比較的容易にできる。金属板の材質としては、アルミニウム合金、鋼、銅合金などの塑性加工が可能な種々のものを適用できる。
【0031】
尚、成形方法においては、ロール成形等の塑性加工の他、鋳造、切削等を採用することも可能である。
また、上記板材は、上記凹凸部を有する限り、金属以外の材料においても有効であり、例えば、樹脂板等とすることもできる。樹脂材料等であれば射出成形あるいはホットプレス等によって凹凸部を形成することができる。樹脂材料においては、金属材料の場合よりも成形上の制約を受けにくく、設計の自由度もより広くなる。
【0032】
また、上記凹凸部を有する板材において、上記金属板の成形前の板厚t(mm)が0.05mm〜6.0mmであることが好ましい。
金属板の板厚が0.05mm未満の場合及び6.0mmを超える場合には、用途的に剛性を向上させる必要性が少ない。
【0033】
また、上記凹凸部を有する板材において、上記単位領域の一辺の長さL(mm)と、上記金属板の板厚t(mm)との比L/tは10〜2000であることが好ましい(請求項8)。
上記比L/tが10未満の場合には成形が困難となるおそれがあり、一方、上記比L/tが2000を超える場合には、十分な凹凸部形状を形成できなくなり、剛性が低下するという問題が生じるおそれがある。
【0034】
また、上記凹凸部を有する板材において、上記第1基準面と上記第2基準面との間の距離H(mm)と上記板厚t(mm)との比H/tと、上記第1側面と上記第2基準面とがなす最も大きい傾斜角θ1(°)とは、1≦(H/t)≦−3θ1+272の関係にあり、上記比H/Tと、上記第2側面と上記第2基準面とがなす最も大きい傾斜角θ2(°)とは、1≦(H/t)≦−3θ2+272の関係にあることが好ましい。
【0035】
上記比H/tが1未満の場合には、第1領域を形成することによる剛性向上効果が十分に得られないという問題が生じる恐れがある。一方、上記比H/tが−3θ1+272を超える場合には成形が困難になるという問題が生じる恐れがある。同様に、上記比H/tが1未満の場合には、第2領域を形成することによる剛性向上効果が十分に得られないという問題が生じる恐れがある。一方、上記比H/tが−3θ2+272を超える場合には成形が困難になるという問題が生じる恐れがある。
【0036】
また、第2の発明の積層構造体においては、上記凹凸部を有する板材を1枚のコア材として、その両面に配設された1枚ずつの平坦な面板よりなる三層構造の積層体とすることができる。また、このような基本構造を繰り返した構造、つまり、複数枚の上記凹凸部を有する板材を1枚ごとに平坦な面板を介して積層してなる多層構造を有することもできる。
また、複数枚の凹凸部を有する板材を直接積層してコア材とし、その片側又は両側の表面に平坦な面板を接合してなる構造を取ることもできる。
また、複数枚の凹凸部を有する板材を直接積層しただけの状態の積層構造体とすることもできる。
上記板材の積層枚数としては、用途及び要求特性に応じて変更することができる。
【0037】
また、第3の発明の車両パネルは、自動車のフードに限らず、ドアー、ルーフ、フロア、トランクリッドなどのパネル及び補強部材や、バンパー、クラッシュボックス、ドアビームなどのエネルギー吸収部材にも適用できる。また、上記アウターパネル及び上記インナーパネルとしては、鋼板、アルミニウム合金板などを用いることができる。
上記アウターパネルをアルミニウム合金板により構成する場合には、たとえば、比較的安価であるという理由により6000系合金が好適である。また、上記インナーパネルをアルミニウム合金板により構成する場合には、たとえば、比較的成形性が良いという理由により5000系合金板が好適である。
【実施例】
【0038】
(実施例1)
第1の発明の実施例にかかる凹凸部20を有する板材1につき、図1〜図6を用いて説明する。
【0039】
図6は、本例に示す板材1が有する凹凸部20の形状を、第2基準面K2における第1基準領域213、第2基準領域223、第1突出領域A1及び第2突出領域B1の配置によって表したものである。同図中において、実線は第1基準領域213及び第2基準領域223の輪郭線であり、輪郭線の内側に記載した記号は、その領域が第1突出領域A1又は第2突出領域B1のいずれの領域に属するかを示すものである。
【0040】
本例の凹凸部20を有する板材1は、図1〜図6に示すごとく、凹凸部20を形成することによって、剛性を高めた板材である。
凹凸部20は、次のように構成される。
図2に示すごとく、間隔をあけて平行に配された仮想の2つの面である第1基準面K1及び第2基準面K2を基準とした。図5及び図6に示すごとく、第2基準面K2を同じ大きさの仮想の正方形である単位領域24を敷き詰めたものと仮定し、各単位領域24内を縦横それぞれ6等分した格子によって区画される仮想の升目を第1升241と第2升242の2種類に分類した。上記升目の各縦列及び各横列には、第1升241と第2升242の両者を必ず含むと共に、同種類のものが縦又は横に2個以上隣接するように配置されている。単位領域24内における第1升241の合計個数及び第2升242の合計個数は、いずれも18個とし、第1升241を連ねた領域を第1基準領域213とすると共に第2升242を連ねた領域を第2基準領域223とした。本例においては、図6に示すごとく、第1基準領域213の全領域を第1突出領域A1に分配し、第2基準領域223の全領域を上記第2突出領域B1に分配してある。
【0041】
本例の凹凸部20を有する板材1は、図1〜図3に示すごとく、第2基準面K2(図6)上において定められた第1突出領域A1(図6)から第1基準面K1に向かって突出する第1領域21と、同様に、第2基準面K2(図6)において定められた第2突出領域B1(図6)から第1基準面K1に向かって突出する第2領域22とを設けてある。
第1領域21は、図1及び図2に示すごとく、第1突出領域A1を第1基準面K1上に縮小して投影した第1頂面211と、該第1頂面211の輪郭と第1突出領域A1の輪郭とをつなぐ第1側面212とからなる。また、第2領域22は、第2突出領域B1を第1基準面K1上に縮小して投影した第2頂面221と、該第2頂面221の輪郭と第2突出領域B1の輪郭とをつなぐ第2側面222とからなる。
【0042】
ここで、本例における、上記の第1基準領域213及び第2基準領域223を決定するための具体的な手順について、さらに詳しく説明する。
前述したように、図5に示すごとく、各単位領域24内を縦横それぞれ6等分した格子によって区画される仮想の升目を第1升241と第2升242の2種類に分類する。上記升目の各縦列及び各横列には、第1升241と第2升242の両者を必ず含むと共に、同種類のものが縦または横に2個以上隣接するように配置する。このとき、単位領域24内における第1升241の合計個数及び上記第2升242の合計個数は、いずれも18個とする。
【0043】
図5に示すごとく、単位領域24の任意の1つの角に存在する升目を基準升目(1−A)とする。該基準升目(1−A)を含む単位領域24の辺に沿った縦列を第1縦列とし、上記第1縦列に順次隣接する縦列を第2〜第6縦列とする。同様に、上記基準升目(1−A)を含む単位領域24の辺に沿った横列をA横列とし、順次隣接する横列をB〜F横列とする。ここでは、各縦列と各横列が交差する升を、各縦列の番号と各横列のアルファベットとを用いて表す。
【0044】
本例においては、1−A升〜5−A升、4−B升〜5−B升、4−C升〜5−C升、2−D升〜3−D升,2−E升〜3−E升,2−F升〜6−F升の18個の升を第1升241とし、上記以外の18個の升を第2升242とする。そして、第1升241を連ねた領域を第1基準領域213とすると共に第2升242を連ねた領域を第2基準領域223とした。これにより、図5に示すごとく、単位領域24には2個の第1基準領域213と2個の第2基準領域223が存在することとなる。次に、図6に示すごとく、第2基準面K2上において、単位領域24をその各辺に対して線対称をなすように連続的に配置する。そして、第1基準領域213の全領域を第1突出領域A1に分配し、第2基準領域223の全領域を第2突出領域B1に分配し、これらから上述した第1領域21及び第2領域22をそれぞれ形成する。したがって、本例において、第1平面領域A2及び第2平面領域B2は存在せず、平面領域23は形成されない。
【0045】
また、図5に示すごとく、第2基準面K2をなす仮想の単位領域24の一辺の長さL=24mmであり、図6に示す第2基準面K2に配された各単位領域24の大きさはすべて等しいものである。
また、図2に示すごとく、本例における第1基準面K1及び第2基準面K2は、互いに平行な平面である。第1頂面211及び第2頂面221は、その板厚中心が第1基準面K1と重なるように構成されている。そして、第1基準面K1と第2基準面K2との間の距離を突出高さHとする。本例においては、第1領域21及び第2領域22の突出高さHは、1.5mmとした。
【0046】
また、図2に示すごとく、第2基準面K2に対する第1側面212の傾斜角度θ1及び第2基準面K2に対する第2側面222の傾斜角度θ2は等しく、θ1=θ2=30°である。
また、本例の凹凸部20を有する板材1は、板厚t=0.3mmの1000系のアルミニウム板である。凹凸部20は、一対の金型を用いたプレス成形により形成される。尚、この成形方法は、表面に所望の凹凸形状を付けた一対の成形ロールによって成形するロール成形等の他の塑性加工方法を採用することも可能である。
【0047】
また、単位領域24の一辺の長さL(mm)と、上記アルミニウム板の板厚t(mm)との比L/tは80であり、10〜2000の範囲内にある。
【0048】
また、第1基準面K1と第2基準面K2との間の距離H(mm)と上記板厚t(mm)との比H/tは、5である。また、第1側面212と第2基準面K2とがなす傾斜角θ1=30°であり、−3θ1+272=182である。したがって、1≦H/t≦182の関係を満たしている。同様に、第2側面222と第2基準面K2とがなす傾斜角θ2=30°であり、−3θ2+272=182である。また、上記のごとく、比H/t=5である。したがって、1≦H/t≦182の関係を満たしている。
【0049】
次に、本例における凹凸部20を有する板材1の作用効果について説明する。
板材1は、上記のような特殊な形状の凹凸部を有している。すなわち、図1〜図3に示すごとく、第2基準面K2(図6)上において定められた第1突出領域A1(図6)から第1基準面K1に向かって突出する第1領域21と、第2基準面K2上において定められた第2突出領域B1(図6)から第1基準面K1に向かって突出する第2領域22とを設けてなる。そして、図2に示すごとく、第1領域21は、第1頂面211と、該第1頂面211の輪郭と第1突出領域A1の輪郭とをつなぐ第1側面212とからなり、第2領域22は、第2頂面221と、該第2頂面221の輪郭と第2突出領域B1の輪郭とをつなぐ第2側面222とからなる。
【0050】
このような構造を有しているので、本例の板材1は曲げ剛性に優れると共に、エネルギー吸収特性に優れた板材となる。
剛性が向上する理由は、次のように考えられる。即ち、第1領域21及び第2領域22は、板材1の中立面から離れた位置に配置した第1基準面K1上に配された第1頂面211及び第2頂面221と、板材1の厚さ方向に交差した第1側面212及び第2側面222とからなり、板材1の中立面から離れた位置に多くの材料を配置できる。そのため、多くの材料を強度部材として効果的に使用することができ、剛性向上効果とエネルギー吸収特性を高めることができる。また、剛性の向上に伴い、制振性の向上効果と、凹凸形状による音の反響抑制効果を得ることができる。
【0051】
また、第1基準領域213の全領域を第1突出領域A1に分配し、かつ第2基準領域223の全領域を第2突出領域B1に分配してあるため、凹凸部20は、第1領域21と第2領域22の2つの領域で構成される。そのため、第1領域21と第2領域22が規則的に、かつ全面に形成される。したがって、前述した剛性向上効果に加えて、異方性が非常に少ない板材を得ることができる。
【0052】
(FEM解析)
本例の板材1の剛性向上効果を定量的に判断するために、FEM解析を用いた片持ち梁による曲げ剛性評価を行った。
上記FEM解析は、試験片における凹凸部20の形成方向を変化させることにより、0°方向と45°方向における曲げ剛性評価を行った。
【0053】
FEM解析に用いた試験片形状は、120mm×120mmの矩形形状を有しており、その全面に凹凸部20を形成してある。尚、表面積の増加を考慮して板厚は、t=0.272mmとした。
上記試験片の端部において、一端を固定端とし、該固定端と対向して配される端部を自由端とした。該自由端をなす辺の中央部に1Nの負荷を加え、FEM解析を行うことで板材1のたわみ量を求めた。
評価は、凹凸部20を形成していない平板状の元板について、同様のFEM解析を行い得られたたわみ量と比較することで行った。
【0054】
<0°方向>
図1に示すごとく、単位領域24のなす辺と板材1のなす辺とが平行となるよう凹凸部20を形成した試験片において、同図中の上方に位置する端部Z1を固定端とし、端部Z1と対向する端部Z2を自由端とする方向を0°方向とした。
実施例1の凹凸部20を有する板材1は、前述した0°方向において、平板状の元板と比べて、曲げ剛性が5.72倍に向上することが明らかとなった。
【0055】
<45°方向>
図4に示すごとく、単位領域24のなす辺と板材1のなす辺とが45°となるよう凹凸部20を形成した試験片において、同図中の上方に位置する端部Z3を固定端とし、端部Z3と対向する端部Z4を自由端とする方向を45°方向とした。
実施例1の凹凸部20を有する板材1は、前述した45°方向において、平板状の元板と比べて、曲げ剛性が4.16倍に向上することが明らかとなった。
【0056】
(実施例2)
本例にかかる凹凸部20を有する板材1について、図7〜図11を用いて説明する。
本例は、図11に示すごとく、実施例1と同様に、第2基準面K2上に単位領域24を配置し、第1基準領域213及び第2基準領域223を形成した後、第1基準領域213の全てを第1突出領域A1とし、第2基準領域223の全てを第2平面領域B2とした例である。
【0057】
図11は、前述のごとく形成された第2基準面K2を第1基準領域213、第2基準領域223、第1突出領域A1及び第2平面領域B2の配置によって表したものである。同図中において、実線は第1基準領域213及び第2基準領域223の輪郭線であり、輪郭線の内側に記載した記号は、その領域が第1突出領域A1又は第2平面領域B2のいずれの領域に属するかを示すものである。
【0058】
したがって、凹凸部20は、図7〜図9に示すごとく、第2基準面K2(図11)に定められた第1突出領域A1(図11)から第1基準面K1に向かって突出した第1領域21と、同様に第2基準面K2に定められた第2平面領域B2(図11)からなる平面領域23とから構成されている。該平面領域23は、第2平面領域B2の輪郭により形成される平面部231からなる。また、図8に示すごとく、平面部231は、その板厚中心が第2基準面K2と重なるように構成されている。第1領域21の構成については実施例1と同様である。
【0059】
本例に示す板材1は、図7〜図9に示すごとく、第1基準面K1上に配される第1頂面211と、板材1と交差するように配された第1側面212と、第2基準面K2上に配される平面部231とからなる。そのため、板材1の中立面に対して、上面側及び下面側に離れた位置に配された第1頂面211と平面部231を有することにより、剛性向上効果とエネルギー吸収特性をより高めることができる。また、実施例1と同様に、剛性の向上に伴い、制振性の向上効果と、凹凸形状による音の反響抑制効果を得ることができる。
【0060】
(FEM解析)
本例の板材1の剛性向上効果を定量的に判断するために、FEM解析を用いた片持ち梁による曲げ剛性評価により行った。
上記FEM解析は、試験片に対して、凹凸部20の形成方向を変化させることにより、0°方向、45°方向、90°方向及び135°方向における評価を行った。
【0061】
FEM解析に用いた試験片形状は、120mm×120mmの矩形形状を有しており、その全面に凹凸部20を形成してある。尚、表面積の増加を考慮して板厚は、t=0.285mmとした。
上記試験片の端部において、一端を固定端とし、該固定端と対向して配される端部を自由端とした。該自由端をなす辺の中央部に1Nの負荷を加え、FEM解析を行うことで板材1のたわみ量を求めた。
評価は、凹凸部20を形成していない平板状の元板について、同様のFEM解析を行い得られたたわみ量と比較することで行った。
【0062】
<0°方向>
図7に示すごとく、単位領域24の辺と板材1の辺とが平行となるよう凹凸部20を形成した試験片において、同図中の上方に位置する端部Z1を固定端とし、端部Z1と対向する端部Z2を自由端とする方向を0°方向とした。
本例の凹凸部20を有する板材1は、前述した0°方向において、平板状の元板と比べて、曲げ剛性が5.19倍に向上することが明らかとなった。
【0063】
<45°方向>
図10に示すごとく、単位領域24の辺と板材1の辺とのなす角度が45°となるよう凹凸部20を形成した試験片において、同図中の上方に位置する端部Z3を固定端とし、端部Z3と対向する端部Z4を自由端とする方向を45°方向とした。
本例の凹凸部20を有する板材1は、前述した45°方向において、平板状の元板と比べて、曲げ剛性が5.17倍に向上することが明らかとなった。
【0064】
<90°方向>
図7に示すごとく、単位領域24の辺と板材1の辺とが平行となるよう凹凸部20を形成した試験片において、同図中の左側に位置する端部Z5を固定端とし、端部Z5と対向する端部Z6を自由端とする方向を90°方向とした。
本例の凹凸部20を有する板材1は、前述した90°方向において、平板状の元板と比べて、曲げ剛性が9.29倍に向上することが明らかとなった。
【0065】
<135°方向>
図10に示すごとく、単位領域24の辺と板材1の辺とがなす角度が45°となるよう凹凸部20を形成した試験片において、同図中の左側に位置する端部Z7を固定端とし、端部Z7と対向する端部Z8を自由端とする方向を135°方向とした。
本例の凹凸部20を有する板材1は、平板状の元板と比べて、曲げ剛性が5.18倍に向上することが明らかとなった。
上記のFEM解析を用いた片持ち梁による曲げ剛性評価の結果から、本例に示す凹凸部20を有する板材1は、90°方向に対して特に優れた剛性向上効果を有し、0°方向、45°方向及び135°方向においては剛性の異方性が極めて小さいことが明らかとなった。
【0066】
(実施例3)
本例は図12〜図14に示すごとく、実施例1と同様に、第2基準面K2上に単位領域24を配置し、第1基準領域213及び第2基準領域223を形成した後、第1基準領域213は、その一部領域を第1突出領域A1に分配し、該第1突出領域A1以外の残りの上記第1基準領域213を第1平面領域A2に分配し、第2基準領域223は、その全領域を第2平面領域B2へと分配してある。
【0067】
本例において、以下のごとく、第1基準領域213を第1突出領域A1及び第1平面領域A2へと分配した。
図14に示すごとく、単位領域24内に形成された2つの第1基準領域213の一方を仮突出領域214とし、もう一方を仮平面領域215とした。このように分配した単位領域24を、該単位領域24の各辺にそれぞれ線対称となるように配置した後、仮突出領域214からなる第1基準領域213を、第1突出領域A1とし、仮平面領域215からなる第1基準領域213を、第1平面領域A2とした。
【0068】
図14は、前述のごとく形成された第2基準面K2を第1基準領域213、第2基準領域223、第1突出領域A1、第1平面領域A2及び第2平面領域B2の配置によって表したものである。同図中において、実線は第1基準領域213及び第2基準領域223の輪郭線であり、輪郭線の内側に記載した記号は、その領域が第1突出領域A1、第1平面領域A2又は第2平面領域B2のいずれの領域に属するかを示すものである。
【0069】
本例の凹凸部20を有する板材1は、図12に示すD−D線断面において形成される凹凸の数が少ない。そのため、D−D線断面と同様の断面形状を有する部分における剛性向上率は、凹凸が多く形成されている断面に比べ小さいものとなり変形しやすい。したがって、断面において凹凸が多く形成された方向においては高剛性で変形しにくく、D−D線断面に対して垂直方向からの入力あるいはD−D線を軸とする曲げに対しては、上記高剛性を示す方向よりも変形しやすい板材を得ることができる
【0070】
(実施例4)
本例は、図15に示す単位領域24を構成し、図16〜図18に示すごとく、第2基準面K2上における単位領域24の配置を変更した例である。
図15に示すごとく、本例の単位領域24は、該単位領域24内を縦横それぞれ4等分した格子によって区画される仮想の升目を第1升241と第2升242に分類する。上記升目の各縦列及び各横列には、第1升241と第2升242の両者を必ず含むと共に、同種類のものが縦又は横に2個以上隣接するように配置する。このとき、単位領域24内における第1升241の合計個数及び上記第2升242の合計個数はいずれも8個とし、第1升241を連ねた領域を第1基準領域213とすると共に第2升242を連ねた領域を第2基準領域223とした。このとき、図15に示すごとく、第1基準領域213及び第2基準領域223は、それぞれ2個ずつ形成される。
【0071】
図16に示す第2基準面K2は、本例の単位領域24を、上下左右において、同姿勢で連続して配置した例である。
図17に示す第2基準面K2は、本例の単位領域24を、90°ずつ回転させ連続して配置した例である。
図18に示す第2基準面K2は、本例の単位領域24を、その各辺に対して線対称となるように連続して配置した例である。
【0072】
上記のいずれの変形例においても、第1基準領域213および第2基準領域223を、第1突出領域A1、第1平面領域A2、第2突出領域B1及び第2平面領域B2へと分配する。そして、形成された第1突出領域A1と第2突出領域B1とから第1基準面K1に向かって突出する第1領域21と第2領域22とを形成し、第1平面領域A2と第2平面領域B2とから平面領域23を形成し凹凸部を有する板材を構成するものである。尚、前述したごとく、第1基準領域213を第1突出領域A1及び第1平面領域A2のいずれに分配するか、及び第2基準領域223を第2突出領域B1及び第2平面領域B2のいずれに分配するかによって、凹凸部の構成は変化する。
本例において、図16〜図18に示す第2基準面K2を基に形成される板材は、剛性の向上効果を有し、かつ凹凸部の構成を変更することにより、剛性の異方性を変化させることができる。
【0073】
(実施例5)
本例は、図19に示すごとく、実施例4の単位領域24(図15)内に配された第1升241および第2升242をそれぞれ連ねた後に、両者の面積が変化しないように両者の角部の一部を、円弧状に変形させることにより構成した例である。具体的には、同図に示すごとく、第1基準領域213の輪郭線がなす2か所の凸角部a1と、第2基準領域223がなす2か所の凸角部a2とを、いずれも同じ曲率半径の円弧状に変形させてある。
【0074】
単位領域24の配置は、図20に示すごとく、単位領域24の各辺に対して線対称となるように連続して配置した例である。本例においても、同図中に示す第1基準領域213および第2基準領域223を、第1突出領域A1、第1平面領域A2、第2突出領域B1及び第2平面領域B2へと分配する。そして、第2基準面K2上に定められた第1突出領域A1と第2突出領域B1とから、第1基準面K1に向かって突出する第1領域21と第2領域22を形成し、第2基準面K2上に定められた第1平面領域A2と第2平面領域B2とから平面領域23を形成し凹凸部を有する板材を構成するものである。尚、前述したごとく、第1基準領域213を第1突出領域A1及び第1平面領域A2のいずれに分配するか、及び第2基準領域223を第2突出領域B1及び第2平面領域B2のいずれに分配するかによって、凹凸部の構成は変化する。
【0075】
本例の図20に示す第2基準面K2を基に形成される板材は、剛性の向上効果を有し、かつ凹凸部の構成を変更することにより、剛性の異方性を変化させることができる。また、凹凸部を有する板材の凹凸の角部を滑らかにできるので、成形が容易になると共に、用途の拡大やデザイン性の向上を図ることができる。
尚、第2基準面K2上に配される単位領域24の配置は、実施例3と同様に変化させることもできる。
【0076】
(実施例6)
本例は、図21に示すごとく、実施例4に示す単位領域24(図15)内に形成された第1基準領域213及び第2基準領域223の輪郭線の一部を傾斜させた例である。本例においては、単位領域24(図15)内において、第1基準領域213及び第2基準領域223の凹角を形成する短辺b1と長辺b2の2辺のうち、長辺b2を傾斜させてある。尚、傾斜角度αは20°とした。このとき、形成される第1基準領域213および第2基準領域223の面積は、長辺b2を傾斜する前後で同一である。
【0077】
単位領域24の配置は、図22に示すごとく、上下左右に同じ姿勢で連続して配置してある。同図中に示す第1基準領域213および第2基準領域223を、第1突出領域A1、第1平面領域A2、第2突出領域B1及び第2平面領域B2へと分配する。そして、第2基準面K2上に定められた第1突出領域A1と第2突出領域B1とから第1基準面K1に向かって突出する第1領域21と第2領域22を形成し、第2基準面K2上に定められた第1平面領域A2と第2平面領域B2とから平面領域23を形成し凹凸部を構成するものである。尚、第1基準領域213を第1突出領域A1及び第1平面領域A2のいずれに分配するか、及び第2基準領域223を第2突出領域B1及び第2平面領域B2のいずれに分配するかによって、凹凸部の構成は変化する。
【0078】
本例の図22に示す第2基準面K2を基に形成される板材は、剛性の向上効果を有し、かつ凹凸部の構成を変更することにより、剛性の異方性を変化させることができる。また、凹凸部を有する板材の成形性の改善や、用途の拡大、あるいはデザイン性の向上を図ることができる。
尚、第2基準面K2上に配される単位領域24の配置は、実施例3と同様に変化させることができる。また、本例においては、輪郭線の傾斜角度α=20°としたが、これに限定するものではない。
【0079】
(実施例7)
本例は、図23に示すごとく、凹凸部20を円筒材11に設けた例である。本例においては、第1基準面K1及び第2基準面K2は平行に配された円筒状の曲面からなる。本例の第2基準面K2は、実施例1〜実施例6のいずれかの平面状をなす第2基準面K2を円筒状に湾曲させたものである。凹凸部20をなす第1領域21、第2領域22及び平面領域23の構成は、実施例1〜実施例3と同様である。
本例に示すごとく、優れた特性を備えた凹凸部20を有する板材1を様々な形状に変形させることができ、用途を拡大することができる。
【0080】
また、本例に示す凹凸部20を有する円筒材11を、飲料缶やロケットのような円筒形の構造物に用いることで、材料の板厚を増加させることなく、剛性を高めることができる。また、本例の円筒材11は、優れたエネルギー吸収特性を有している。そのため、自動車などの車体に使用することで、高い剛性と優れたエネルギー吸収特性を付与することができる。
【0081】
(実施例8)
本例は、図24に示すごとく、実施例2の凹凸部20を有する板材1をコア材として用いて積層構造体5を構成した例である。
即ち、積層構造体5は、凹凸部20を有する1枚の板材1よりなるコア材の両側の表面に面板42、43を接合してなる。
面板42、43は、材質3000系、板厚1.0mmのアルミニウム合金板よりなる。
【0082】
本例の積層構造体5は、前述したような優れた剛性を有する凹凸部20を有する板材1をコア材として用い、その第1領域21の第1頂面211と平面領域23の平面部231に対して面板42、43を接着、ろう付け等により接合することによって、凹凸部20を有する板材1単体の場合よりも格段に剛性が高い積層構造体5が得られる。しかも、板材1も面板42、43もアルミニウム合金板よりなるため、軽量化することができる。
【0083】
また、剛性向上に伴う制振性の向上効果と、空気層を包容することにより吸音性の向上効果を得ることができる。また、良く知られているように、面板42、43のいずれか一方に貫通孔を形成することにより、ヘルムホルツ型吸音構造となり、さらに吸音性を向上させることができる。
尚、上記面板としては、アルミニウム合金以外の金属の板、たとえば、鋼板、チタン板等や、樹脂板等を適用することも可能である。
【0084】
(実施例9)
本例は、図25に示すごとく、実施例1〜実施例6に記載の板材1をインナーパネルとして用い、板材1における第2基準面K2側の面をアウターパネル61の裏面側に向けて配置して構成する車両パネル6の例である。上記インナーパネルは、その外周部においてアウターパネル61とヘム加工等により接合されている。尚、前述したインナーパネルにおいて、凹凸部20の形成方向を限定するものではなく、板材1における第1基準面K1側の面をアウターパネル61の裏面側に向けて配置して構成することもできる。
【0085】
本例の車両パネル6は、そのインナーパネルを構成する凹凸部20を有する板材1が、上記のごとく剛性向上効果に優れているので、歩行者が衝突した際の一次衝突のエネルギー及び二次衝突のエネルギーを吸収する特性に優れたものとなる。また、剛性向上に伴う制振性の向上効果と、空気層を包容することによる吸音性の向上効果を得ることができる。
尚、本例においては、凹凸部20を有する板材1をインナーパネルとして用いたが、インナーパネルとアウターパネルのいずれか一方又は両方に用いることができる。
【符号の説明】
【0086】
1 板材
20 凹凸部
21 第1領域
211 第1頂面
212 第1側面
213 第1基準領域
22 第2領域
221 第2頂面
222 第2側面
223 第2基準領域
23 平面領域
231 平面部
24 単位領域
241 第1升
242 第2升
5 積層構造体
6 車両パネル
A1 第1突出領域
A2 第1平面領域
B1 第2突出領域
B2 第2平面領域
K1 第1基準面
K2 第2基準面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹凸部を形成することによって剛性を高めた板材であって、
上記凹凸部は、間隔をあけて平行に配された仮想の2つの面である第1基準面及び第2基準面を基準とし、
上記第2基準面を同じ大きさの仮想の正方形である単位領域を敷き詰めたものと仮定し、上記各単位領域内を4以上の整数nによって縦横それぞれn等分した格子によって区画される仮想の升目を第1升と第2升の2種類に分類し、上記升目の各縦列及び各横列には、上記第1升と上記第2升の両者を必ず含むと共に、同種類のものが縦又は横に2個以上隣接するように配置し、かつ、上記単位領域内における上記第1升の合計個数及び上記第2升の合計個数は、いずれもn2/2±0.5の範囲内の整数とし、上記第1升を連ねた領域を第1基準領域とすると共に上記第2升を連ねた領域を第2基準領域とし、
上記第1基準領域は、該第1基準領域の一部を第1突出領域に分配し該第1突出領域以外の残りの上記第1基準領域を第1平面領域に分配するか、もしくは、上記第1基準領域の全領域を上記第1突出領域に分配し、
上記第2基準領域は、該第2基準領域の一部を第2突出領域に分配し該第2突出領域以外の残りの上記第2基準領域を第2平面領域に分配するか、もしくは、上記第2基準領域の全領域を上記第2突出領域又は上記第2平面領域のいずれかに分配し、
上記第2基準面上において定められた上記第1突出領域から上記第1基準面に向かって突出する第1領域と、上記第2基準面上において定められた上記第2突出領域から上記第1基準面に向かって突出する第2領域と、上記第2基準面上に定められた上記第1平面領域及び上記第2平面領域からなる平面領域を設け、
上記第1領域は、上記第1突出領域を上記第1基準面上に等倍又は縮小して投影した第1頂面と、該第1頂面の輪郭と上記第1突出領域の輪郭とをつなぐ第1側面とからなり、
上記第2領域は、上記第2突出領域を上記第1基準面上に等倍又は縮小して投影した第2頂面と、該第2頂面の輪郭と上記第2基準領域の輪郭とをつなぐ第2側面とからなり
上記平面領域は、上記第1平面領域及び上記第2平面領域の輪郭により形成される平面部からなるよう構成したことを特徴とする凹凸部を有する板材。
【請求項2】
請求項1に記載の凹凸部を有する板材において、4≦n≦10であることを特徴とする凹凸部を有する板材。
【請求項3】
請求項1又は2のいずれか一項に記載の凹凸部を有する板材において、上記第1基準領域及び上記第2基準領域は、上記第1升及び上記第2升をそれぞれ連ねた後に、両者の面積が変化しないように両者の角部の一部を、円弧状に変形させることにより構成されていることを特徴とする凹凸部を有する板材。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の凹凸部を有する板材において、上記第1基準領域及び上記第2基準領域は、上記第1升及び上記第2升をそれぞれ連ねた後に、両者のなす境界線の一部を両者の面積が変わらないように傾斜させることにより構成されていることを特徴とする凹凸部を有する板材。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の凹凸部を有する板材において、上記第2基準面に対する上記第1側面の傾斜角度θ1(°)と上記第2基準面に対する上記第2側面の傾斜角度θ2(°)とは、10°〜90°の範囲にあることを特徴とする凹凸部を有する板材。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の凹凸部を有する板材において、上記第1基準面及び上記第2基準面の少なくとも一部がそれぞれ平行な曲面からなることを特徴とする凹凸部を有する板材。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の凹凸部を有する板材において、上記板材は金属板をプレス成形することにより上記凹凸部を形成したものであることを特徴とする凹凸部を有する板材。
【請求項8】
請求項7に記載の凹凸部を有する板材において、上記金属板の成形前の板厚t(mm)が0.05〜6.0mmであることを特徴とする凹凸部を有する板材。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の凹凸部を有する板材において、上記正方形の一辺の長さL(mm)と、上記板厚t(mm)との比L/tは10〜2000であることを特徴とする凹凸部を有する板材。
【請求項10】
請求項7〜9のいずれか一項に記載の凹凸部を有する板材において、上記第1基準面と上記第2基準面の間の距離H(mm)と上記板厚t(mm)との比H/tと、上記第1側面と上記第2基準面とがなす最も大きい傾斜角θ1(°)とは、1≦(H/t)≦−3θ1+272の関係にあり、上記第2側面と上記第2基準面とがなす最も大きい傾斜角θ2(°)とは、1≦(H/t)≦−3θ2+272の関係にあることを特徴とする凹凸部を有する板材。
【請求項11】
複数の板材を積層してなる積層構造体であって、上記板材の少なくとも1枚は請求項1〜10のいずれか1項に記載の凹凸部を有する板材であることを特徴とする積層構造体。
【請求項12】
アウターパネルと該アウターパネルの裏面に接合されたインナーパネルとを有する車両パネルであって、上記インナーパネルが請求項1〜10のいずれか1項に記載の凹凸部を有する板材よりなることを特徴とする車両パネル。
【請求項1】
凹凸部を形成することによって剛性を高めた板材であって、
上記凹凸部は、間隔をあけて平行に配された仮想の2つの面である第1基準面及び第2基準面を基準とし、
上記第2基準面を同じ大きさの仮想の正方形である単位領域を敷き詰めたものと仮定し、上記各単位領域内を4以上の整数nによって縦横それぞれn等分した格子によって区画される仮想の升目を第1升と第2升の2種類に分類し、上記升目の各縦列及び各横列には、上記第1升と上記第2升の両者を必ず含むと共に、同種類のものが縦又は横に2個以上隣接するように配置し、かつ、上記単位領域内における上記第1升の合計個数及び上記第2升の合計個数は、いずれもn2/2±0.5の範囲内の整数とし、上記第1升を連ねた領域を第1基準領域とすると共に上記第2升を連ねた領域を第2基準領域とし、
上記第1基準領域は、該第1基準領域の一部を第1突出領域に分配し該第1突出領域以外の残りの上記第1基準領域を第1平面領域に分配するか、もしくは、上記第1基準領域の全領域を上記第1突出領域に分配し、
上記第2基準領域は、該第2基準領域の一部を第2突出領域に分配し該第2突出領域以外の残りの上記第2基準領域を第2平面領域に分配するか、もしくは、上記第2基準領域の全領域を上記第2突出領域又は上記第2平面領域のいずれかに分配し、
上記第2基準面上において定められた上記第1突出領域から上記第1基準面に向かって突出する第1領域と、上記第2基準面上において定められた上記第2突出領域から上記第1基準面に向かって突出する第2領域と、上記第2基準面上に定められた上記第1平面領域及び上記第2平面領域からなる平面領域を設け、
上記第1領域は、上記第1突出領域を上記第1基準面上に等倍又は縮小して投影した第1頂面と、該第1頂面の輪郭と上記第1突出領域の輪郭とをつなぐ第1側面とからなり、
上記第2領域は、上記第2突出領域を上記第1基準面上に等倍又は縮小して投影した第2頂面と、該第2頂面の輪郭と上記第2基準領域の輪郭とをつなぐ第2側面とからなり
上記平面領域は、上記第1平面領域及び上記第2平面領域の輪郭により形成される平面部からなるよう構成したことを特徴とする凹凸部を有する板材。
【請求項2】
請求項1に記載の凹凸部を有する板材において、4≦n≦10であることを特徴とする凹凸部を有する板材。
【請求項3】
請求項1又は2のいずれか一項に記載の凹凸部を有する板材において、上記第1基準領域及び上記第2基準領域は、上記第1升及び上記第2升をそれぞれ連ねた後に、両者の面積が変化しないように両者の角部の一部を、円弧状に変形させることにより構成されていることを特徴とする凹凸部を有する板材。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の凹凸部を有する板材において、上記第1基準領域及び上記第2基準領域は、上記第1升及び上記第2升をそれぞれ連ねた後に、両者のなす境界線の一部を両者の面積が変わらないように傾斜させることにより構成されていることを特徴とする凹凸部を有する板材。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の凹凸部を有する板材において、上記第2基準面に対する上記第1側面の傾斜角度θ1(°)と上記第2基準面に対する上記第2側面の傾斜角度θ2(°)とは、10°〜90°の範囲にあることを特徴とする凹凸部を有する板材。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の凹凸部を有する板材において、上記第1基準面及び上記第2基準面の少なくとも一部がそれぞれ平行な曲面からなることを特徴とする凹凸部を有する板材。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の凹凸部を有する板材において、上記板材は金属板をプレス成形することにより上記凹凸部を形成したものであることを特徴とする凹凸部を有する板材。
【請求項8】
請求項7に記載の凹凸部を有する板材において、上記金属板の成形前の板厚t(mm)が0.05〜6.0mmであることを特徴とする凹凸部を有する板材。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の凹凸部を有する板材において、上記正方形の一辺の長さL(mm)と、上記板厚t(mm)との比L/tは10〜2000であることを特徴とする凹凸部を有する板材。
【請求項10】
請求項7〜9のいずれか一項に記載の凹凸部を有する板材において、上記第1基準面と上記第2基準面の間の距離H(mm)と上記板厚t(mm)との比H/tと、上記第1側面と上記第2基準面とがなす最も大きい傾斜角θ1(°)とは、1≦(H/t)≦−3θ1+272の関係にあり、上記第2側面と上記第2基準面とがなす最も大きい傾斜角θ2(°)とは、1≦(H/t)≦−3θ2+272の関係にあることを特徴とする凹凸部を有する板材。
【請求項11】
複数の板材を積層してなる積層構造体であって、上記板材の少なくとも1枚は請求項1〜10のいずれか1項に記載の凹凸部を有する板材であることを特徴とする積層構造体。
【請求項12】
アウターパネルと該アウターパネルの裏面に接合されたインナーパネルとを有する車両パネルであって、上記インナーパネルが請求項1〜10のいずれか1項に記載の凹凸部を有する板材よりなることを特徴とする車両パネル。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【公開番号】特開2012−96694(P2012−96694A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−246937(P2010−246937)
【出願日】平成22年11月3日(2010.11.3)
【出願人】(000002277)住友軽金属工業株式会社 (552)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月3日(2010.11.3)
【出願人】(000002277)住友軽金属工業株式会社 (552)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]