説明

凹版印刷機のインキ硬化乾燥用放射線照射装置

【課題】 凹版印刷機のインキ硬化乾燥用放射線照射装置として、印刷済みシートの積載量に見合った放射線を照射することで、確実な乾燥を行うとともに、シート基材への影響排除、電力費用の低廉化及び作業負荷の低減を図る。
【解決手段】 印刷後のシート上のインキを乾燥する凹版印刷機のインキ硬化乾燥用放射線照射装置において、放射線照射装置は、印刷機のデリバリに積層されたシートの積層状態に応じて放射線照射量の出力を可変制御する制御装置を付設している凹版印刷機のインキ硬化乾燥用放射線照射装置とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート上のインキを乾燥させる放射線照射装置に関するものであり、特に放射線照射量を適宜制御する放射線照射装置に関する技術である。
【背景技術】
【0002】
一般に、印刷機に用いられているインキ硬化乾燥用放射線照射装置は、図9に示すように印刷部(12)においてシート(9)に印刷が施された後、その下流に位置する排紙部(8)に存しており、シートに放射線を照射することによりシート上のインキを乾燥させる。
【0003】
一般的なオフセット印刷機の場合、インキ硬化乾燥用放射線照射装置は、印刷後、印刷済みシートに対する放射線照射装置からの光照射によって、印刷シート上のインキの乾燥処理が行われている。近年、インキとして主流となっている紫外線硬化型インキを用いた場合の放射線照射装置では、シートに放射線(紫外線)を照射することで、瞬時にインキが乾燥及び固化することから、加刷、裁断などといった次工程の製造サイクルに移送することが可能であり、有用であった。
【0004】
しかしながら、上述したような従来の放射線照射装置にあっては、乾燥不良をなくすべく、最も乾燥が困難な絵柄等が乾燥可能である照射出力に設定されている。このように乾燥困難な絵柄に合わせた出力設定に固定した状態で、多数の印刷シートの乾燥処理を行うと、比較的乾燥が容易な絵柄(例えば、インキ量の少ない絵柄)等に対しては、過剰なエネルギーが照射されることになり、無駄な電力を消費するばかりでなく、印刷機や印刷工場の温度上昇も招いていた。また、過剰に放射線照射すると、DNAインキを用いている場合、DNAの塩基配列がダメージを受け、塩基配列を正確に読み取れなくなることや、シートの腰がなくなるといったシート基材への悪影響も懸念されていた。さらに、従来技術においては、印刷絵柄のインキの重なり具合い、インキの種類、インキの色等から目視判断して、作業者が放射線照射装置の光照射の出力を調整していたため、経験と勘とを必要とし、経験の浅い作業者には、その調整作業が困難となるといった問題があった。
【0005】
これらの問題点を解消する方策として、複数の印刷ユニットにて印刷された後の印刷シート上のインキを乾燥させるべく、印刷シートに対して放射線を照射する放射線照射手段と、放射線照射手段の出力を制御する制御手段とを備え、制御手段が印刷シート上に絵柄を形成する際に使用される印刷絵柄データを用いて演算される出力制御係数に基づき、放射線照射手段の出力を制御すべく構成され、出力制御係数が、絵柄の重なり合い状態を示す重合係数及びインキの色毎に定められた色係数に基づいて演算され、印刷シート上の複数の印刷領域で重なり合っているすべての色についての重合係数と色係数との積を計算し、それらすべての色の積を足し合わせることによって各印刷領域についての出力制御係数をそれぞれ演算し、演算された出力制御係数のうちの最も大きな値の出力制御係数に基づいて放射線照射手段の出力を制御すべく構成されていることを特徴とするインキ硬化乾燥用放射線照射装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】特許第4037763号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した先行技術である特許文献1の技術を用いた場合、印刷シートごとに、その印刷シートに形成される絵柄の印刷絵柄データ、例えば、印刷速度、インキ特性、シート特性などを用いて出力制御係数が演算され、この出力制御計数に基づいて、自動的に放射線照射手段の出力が制御されることから、比較的簡単な構成によって、経験等を特に必要とせず、エネルギーを効率的に使用することができる。このことで、インキ未乾燥状態にて発生する乾燥シートの汚れがなくなり、良好な印刷物を安定して印刷することが可能となる。
【0008】
しかしながら、特許文献1の技術は、シートへのインキ盛り量がわずか(例えば、画線高さ10μm程度)であるオフセット印刷においては、効果的に印刷シート上のインキを乾燥させることが可能であるが、シートへのインキ盛り量がオフセット印刷に比較して多い凹版印刷を対象とした場合、排紙部(デリバリ)に積層される印刷済みシートを、例えば、5,000枚程度積層すると、印刷後のシート同士の摩擦により生じるインキ汚れや、半乾燥状態である内部インキがシートの加重により潰れ、半乾燥状態のインキがシート又はインキと接着する「ブロッキング」と称する不良が発生することがあり、これらは、損紙となることから、先行技術を凹版印刷に活用することができなかった。
【0009】
また、ブロッキング等の不良を抑制するために、作業者は印刷機のデリバリにおけるシート積層量を2,000枚程度の少量に設定するとともに、印刷後、しばらくデリバリに滞置させる必要があり、不稼働時間が増加するなど、生産効率が悪くなっていた。現在まで、上述した問題点への対策が施されておらず、凹版印刷機の放射線照射装置においては、少なからず改善の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記のような課題を解決するため、本発明の凹版印刷機のインキ硬化乾燥用放射線照射装置は、印刷後のシート上のインキを乾燥する凹版印刷機のインキ硬化乾燥用放射線照射装置において、放射線照射装置は、印刷機のデリバリに積層されたシートの積層状態に応じて放射線照射量の出力を可変制御する制御装置を付設している凹版印刷機のインキ硬化乾燥用放射線照射装置としたものである。
【0011】
また、本発明の凹版印刷機のインキ硬化乾燥用放射線照射装置は、デリバリに積層されたシートの積層状態を検知する積層状態検知手段として、印刷済みシートを載置するシート載置プレートに加重を検出する加重センサを取設した加重検出プレートによりシートの積層状態を検知する凹版印刷機のインキ硬化乾燥用放射線照射装置としたものである。
【0012】
また、本発明の凹版印刷機のインキ硬化乾燥用放射線照射装置は、デリバリに積層されたシートの積層状態を検知する積層状態検知手段として、印刷済みシートを載置するシート載置プレートの近傍に配置し、積層シートにおける上層位置を検知する少なくとも一つ以上付設した光学センサによるセンシングによりシートの積層状態を検知する凹版印刷機のインキ硬化乾燥用放射線照射装置としたものである。
【0013】
また、本発明の凹版印刷機のインキ硬化乾燥用放射線照射装置は、デリバリに積層されたシートの積層状態を検知する積層状態検知手段として、印刷済みシートを把持し搬送する搬送チェーンの近傍に付設したシートカウンタにて勘定される数値によりシートの積層状態を検知する凹版印刷機のインキ硬化乾燥用放射線照射装置としたものである。
【0014】
さらに、本発明の凹版印刷機のインキ硬化乾燥用放射線照射装置は、放射線照射装置に用いられる放射線は、紫外線、赤外線、又は電子線のいずれかである凹版印刷機のインキ硬化乾燥用放射線照射装置としたものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の凹版印刷機のインキ硬化乾燥用放射線照射装置は、デリバリに存するシート載置プレートへのシートの積載量に応じて、放射線の照射量を適宜調節することができることから、放射線の照射不足によるシート間のブロッキングの発生を抑制することができるのみならず、適正な放射線の照射量で足りることから、放射線の過剰照射によるシート基材への影響が必要最低限で済み、品質の良い印刷製品を継続して得ることができる等、品質保全を確実に実現することができるという効果を奏する。
【0016】
また、本発明の凹版印刷機のインキ硬化乾燥用放射線照射装置は、印刷済みシートへの放射線照射量が必要最低限となることから、放射線照射にかかわる電力量を大幅に削減することができるとともに、用いる照射ランプの延命化を図ることができる。また、放射線照射不良にともなう損紙の発生を抑制することができるとともに、印刷にかかるコストの低廉化を実現することができるという効果を奏する。
【0017】
さらに、本発明の凹版印刷機のインキ硬化乾燥用放射線照射装置を用いることで、印刷シートの確実な乾燥を実現することができることから、従前まで発生が懸念されていたブロッキング及びシート間の接触時に発生するシート汚れを大幅に抑制することができるとともに、デリバリのシート載置プレートへ7,000枚程度の大量積載が可能となることから、従前まで作業者が頻繁に実施していたデリバリにおける積載シートの取り出し作業が少なくて済む。その他、積層されたシートの交換等に付随して発生する作業の手間が解消するばかりでなく、各種調整作業を解消することにより作業性の大幅な改善及び印刷機械の不稼働時間の低減を実現することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1乃至図4、図8及び図9に基づき、この発明の実施形態を説明する。図1は本発明における放射線照射装置の概略図であり、図2は放射線照射装置の態様を説明するための一部拡大図であり、また、図3及び図4は別形態の放射線照射装置の態様を説明するための一部拡大図である。さらに、図8は一般的な凹版印刷機の一例を示す概略図であり、図9は一般的なオフセット印刷機の一例を示す概略図をそれぞれ示している。
【0019】
まず、一般的な凹版印刷機のインキ硬化乾燥用放射線照射装置について詳説する。図8に示す一般的な凹版印刷機を用いて印刷を行う場合、まず、フィーダ部(6)から供給されたシート(9)は凹版印刷部(7)において印刷がなされ、その後、印刷済みシート(9)は、デリバリ部(8)に存するシート載置プレート(11)に積層される機構であり、印刷済みシート(9)のインキの乾燥を促進するために凹版印刷部(7)の下流に配置されるデリバリ部(8)に複数配置された支持具(4)に支持された搬送チェーン(5)の近傍箇所のいずれかに放射線を照射する放射線照射装置(1)が付設されている。
【0020】
また、図9に示すように一般的なオフセット印刷機のインキ硬化乾燥用乾燥装置についても、同様に印刷済みシート(9)の乾燥のための放射線照射装置(1)は、オフセット印刷部(12)の下流に位置し、デリバリ部(8)に複数配置された支持具(4)に支持された搬送チェーン(5)の近傍箇所のいずれかに放射線を照射する放射線照射装置(1)が付設されている。ここで、放射線照射装置の放射線照射出力は、使用するインキ、使用するシート、印刷速度を加味して任意に設定することができる。例えば、出力240Wの紫外線照射ランプを複数個設置している態様としているものがある。なお、放射線の照射量は、初期設定において決定し、一定の照射量を供給し続けることが可能である。
【0021】
一方、図1及び図2に示すように本発明の凹版印刷機のインキ硬化乾燥用放射線照射装置は、フィーダ部(6)から供給されたシート(9)が凹版印刷部(7)において印刷がなされ、その後、印刷済みシート(9)のインキの乾燥を促進するために凹版印刷部(7)の下流に位置し、デリバリ部(8)に存する複数配置された支持具(4)に支持された搬送チェーン(5)の近傍箇所のいずれかに放射線を照射する放射線照射装置(1)が付設され、その放射線照射装置(1)において乾燥処理が行われた印刷済みシート(9)は、デリバリ部(8)に存するシート載置プレートに加重センサを組み込んだ加重検出プレート(3)に積層される。
【0022】
図2には、本発明の特徴箇所を拡大した概略図を示す。ここで、加重検出プレート(3)によりシート積載量(重さ)を検出し、連結される放射線の照射量を制御することが可能である制御装置(2)に検出データが転送され、適切な放射線照射量が算出され、制御装置(2)に連結している放射線照射装置(1)の照射量の決定及び指示する態様となっている。なお、加重検出プレート(3)は、150重量kgまで計測できるものを採用している。また、放射線照射装置(1)の照射量は、0W乃至960Wにて調整することが可能である。
【0023】
また、本発明の凹版印刷機のインキ硬化乾燥用放射線照射装置は、図3に示すようにシート載置プレート(11)に積層されたシート(9)を重さで検知するのではなく、印刷済みシート(9)の積層高さにて検知する場合もある。この場合、シート載置プレート(11)の近傍箇所に光学センサ(10)であるレーザ式変位計が少なくとも一つ以上設置しており、シートの積層状態を把握することが可能である。このシート(9)の積層状態に応じて、シート積層データを連設している制御装置(2)に転送し、照射量を算出して連結している放射線照射装置(1)の照射量の決定及び指示する態様である。ここで、シート(9)の積層量が多くなると下層に位置するシート(9)がブロッキングしやすくなることから、放射線照射量は、最初のうちは高く設定し、シート(9)の積層量が多くなるに従い、徐々に低減させていくことになる。なお、デリバリパイルが切り替わると、放射線照射装置(1)の照射量は、初期の照射量に設定されることになる。また、レーザ式変位計では、シート載置プレート(11)へのシート(9)の積載高さとして10cm乃至1,200cmの範囲で検知することが可能である。さらに、放射線照射装置(1)の照射量は、0W乃至960Wにて調整することが可能である。
【0024】
また、本発明の凹版印刷機のインキ硬化乾燥用放射線照射装置は、図4に示すようにデリバリ部(8)のシート載置プレート(11)に積層されたシート(9)の状態を把握する手段として、複数の支持具(4)に支持された搬送チェーン(5)の近傍に付設し、通過した印刷済みシート(9)を少なくとも一つ以上配置したシートカウンタ(13)にて勘定した数値により検知する場合もある。この場合、シートカウンタ(13)の数値を連設している制御装置(2)に転送し、照射量を算出して連結している放射線照射装置(1)の照射量を決定、指示する態様である。ここで、シートカウンタ(13)の数値が大きくなると下層に位置するシート(9)がブロッキングしやすくなることから、放射線照射量は、最初のうちは高く設定し、シートカウンタ(13)の数値の増加に従い、徐々に低減させていくことになる。なお、デリバリパイルが切り替わると、放射線照射装置(1)の照射量は、初期の照射量に設定されることになる。また、放射線照射装置(1)の照射量は、0W乃至960Wにて調整することが可能である。
【実施例1】
【0025】
本発明における実施の例示について、図1に示す本発明の放射線照射装置の概略図及び図5から図7までに示す本発明の放射線照射装置を用いた場合のそれぞれのフロー図を用いて詳説する。まず、図1に示すように本発明の放射線照射装置は、フィーダ部(6)に積層されたシート(9)が凹版印刷部(7)に存する印刷機構を経由することで凹版印刷されたシート(9)を複数設置された支持具(4)に連接されたグリッパ式の搬送チェーン(5)によりデリバリ部(8)に搬送し、その搬送経路(シート絵柄面から約10mmの位置)に設置された放射線照射装置(1)により、シート(9)に放射線(ここでは、紫外線を使用)を照射することでシート上の未乾燥インキを乾燥する。その後、印刷済みシート(9)は、加重センサが付設されている加重検出プレート(3)に積層されることになる。加重検出プレート(3)では、積載されたシートの加重を測定している。例えば、枚葉紙2,000枚を積層した場合、約40重量kgであり、枚葉紙5,000枚を積層した場合、約100重量kgであった。
【0026】
次に、放射線である紫外線の照射量の変動について、図5のフロー図を基に詳説する。ここでは、印刷済みシート(9)の積載量として、2,000枚積載時(約40重量kg)までは、放射線である紫外線照射量を960W(240W×4灯)となるように、また、2,000枚積載時(約40重量kg)を超え、4,000枚積載時(約80重量kg)までは紫外線照射量を720W(240W×3灯)になるように、4,000枚積載時(約80重量kg)を超えると紫外線照射量を480W(240W×2灯)となるように、加重検出プレート(3)に連結された制御装置(2)に入力設定した。
【0027】
印刷開始とともに、放射線照射は960Wで出力されており(STEP1)、次いで、加重検出プレート(3)の加重値が40重量kgを示すまではそのままの出力である960Wで出力されており(STEP2)、加重検出プレート(3)の加重値が40重量kgを超えるとともに、紫外線照射出力が低減される。例えば、加重値60重量kgでは720W、加重値80重量kgでは480Wとなる(STEP3)。このSTEPを繰り返すことで、シート積載量に対する適正な紫外線の照射が行われることになる。なお、図2には本発明の特徴箇所を詳細に図示したものを記載している。本発明の凹版印刷機の放射線照射装置を用いて印刷を実施した結果、最高で7,000枚積層した印刷済みシート(9)について、シート汚れや顕著なブロッキングはどの積層位置においても発生しておらず、シートは至って良好な状態であった。
【実施例2】
【0028】
次に、印刷済みシート(9)の積層状態の把握に、光学センサ(10)を使用した場合の実施の例示について、図6のフロー図を基に詳説する。ここでは、2,000枚積載時(シート積載ボード表面からの高さは約28cm)までは、放射線である紫外線照射量を960W(240W×4灯)となるように、また、2,000枚積載時(約28cm)を超え、4,000枚積載時(シート積載ボード表面からの高さは約56cm)までは紫外線照射量を720W(240W×3灯)になるように、4,000枚積載時(シート積載ボード表面からの高さは約56cm)を超えると紫外線照射量を480W(240W×2灯)となるように、光学センサ(10)に連結された制御装置(2)に入力設定した。
【0029】
印刷開始とともに、放射線照射は960Wで出力されており(STEP1)、次いで、光学センサ(10)の検出値が“設定値28”を示すまではそのままの出力である960Wで出力されており(STEP2)、光学センサ(10)の設定値が“設定値28”を超えるとともに、紫外線照射出力が低減される。例えば、“設定値56”では720W、“設定値84”では480Wとなる(STEP3)。このSTEPを繰り返すことで、シート積載に対する適正な紫外線の照射が行われることになる。なお、図3には本発明の特徴箇所を詳細に図示したものを記載している。ここで、光学センサ(10)は、シート載置プレート(11)に直接4箇所配設している。本発明の凹版印刷機の乾燥装置を用いて印刷を実施した結果、最高でシート(9)を7,000枚積載した印刷済みシート(9)のシート汚れや顕著なブロッキングは、どの積載枚数の位置においても発生しておらず、シート(9)は至って良好な状態であった。
【実施例3】
【0030】
次に、印刷済みシート(9)の積層状態の把握に、シートカウンタ(13)を使用した場合の実施の例示について、図7のフロー図を基に詳説する。ここでは、2,000枚積載時(シートカウンタの数値が2000)までは、放射線である紫外線照射量を960W(240W×4灯)となるように、また、2,000枚積載時を超え、4,000枚積載時(シートカウンタの数値が4000)までは、紫外線照射量を720W(240W×3灯)になるように、4,000枚積載時を超える(シートカウンタの数値が4001)と紫外線照射量を480W(240W×2灯)になるように、シートカウンタ(13)に連結された制御装置(2)に入力設定した。
【0031】
印刷開始とともに、放射線照射は960Wで出力されており(STEP1)、次いで、シートカウンタ(13)の表示値が“設定値2000”を示すまではそのままの出力である960Wで出力されており(STEP2)、シートカウンタ(13)の設定値が“設定値2001”を超えるとともに、紫外線照射出力が低減される。例えば、“設定値3000”では720W、“設定値5000”では480Wとなる(STEP3)。このSTEPを繰り返すことで、シート積載に対する適正な紫外線の照射が行われることになる。なお、図4には、本発明の特徴箇所を詳細に図示したものを記載している。ここで、シートカウンタ(13)は、印刷済みシート(9)を搬送する搬送チェーン(5)の基台(図示せず)に配設している。本発明の凹版印刷機の乾燥装置を用いた結果、最高でシートを7,000枚積載した印刷済みシート(9)のシート汚れや顕著なブロッキングは、どの積載位置においても発生しておらず、シート(9)は至って良好な状態であった。
【0032】
また、印刷済みシート(9)の状態把握として、加重検出プレート(3)、光学センサ(10)及びシートカウンタ(13)のいくつかを併用することもできる。この場合、複数の検出値を図示しない判定プログラムにより適正に一元化することになる。これら本発明によってインキの種類、シートの種類、印刷速度に応じた照射量だけでなく、印刷済みシート(9)の積載量について加味した紫外線の照射が可能となる。このことは、特にインキ盛り量が多い凹版印刷において有用となる技術である。なお、上記いずれの実施例においても、デリバリパイルの切替えが行われると、放射線照射装置(1)の照射量は、初期の照射量に設定されることになる。
【0033】
実施例では、放射線として紫外線を用いた場合を例示したが、用途に応じて、放射線として赤外線を用いる場合や電子線を用いる場合もある。また、放射線の放射量は、図示しない表示装置に出力することも可能である。また、設定値を詳細に設定することで、放射線の照射量を適宜可変することは可能であるが、頻繁に照射量を変更することはかえって印刷済みシート(9)の乾燥状態にアバレが生じることになり、品質上良くない製品となることを経験的に理解している。上述したいずれの実施例においても、凹版印刷が行われた印刷済みシート(9)は、確実に乾燥しており、ブロッキング、インキ汚れ等の積載不良が発生することはなかった。
【0034】
上述した実施例は、あくまで例示の一例に過ぎず、特許請求の範囲に記載されている範囲において、あらゆる実施の形態が存在することは言うまでもない。例えば、放射線照射装置を複数配置した態様とする場合がある。この場合、それぞれの放射線照射装置が担当する領域ごとに出力を制御して、各放射線照射量の調整を行っても良い。こうすることで、より効率的な乾燥が可能である放射線照射装置を得ることができる。また、放射線照射装置を設置する位置についても、シートに対して放射線を適宜照射することが可能であれば限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の放射線照射装置を示す概略図である。
【図2】本発明の放射線照射装置の一部拡大図である。
【図3】本発明の別形態の放射線照射装置の一部拡大図である。
【図4】本発明の別形態の放射線照射装置の一部拡大図である。
【図5】本発明の放射線照射装置の一例を示すフロー図である。
【図6】本発明の放射線照射装置の一例を示すフロー図である。
【図7】本発明の放射線照射装置の一例を示すフロー図である。
【図8】一般的な凹版印刷機の一例を示す概略図である。
【図9】一般的なオフセット印刷機の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0036】
1 放射線照射装置
2 制御装置
3 加重検出プレート
4 支持具
5 搬送チェーン
6 フィーダ部
7 凹版印刷部
8 デリバリ部
9 シート
10 光学センサ
11 シート載置プレート
12 オフセット印刷部
13 シートカウンタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷後のシート上のインキを乾燥する凹版印刷機のインキ硬化乾燥用放射線照射装置において、前記放射線照射装置は、印刷機のデリバリに積層されたシートの積層状態に応じて放射線照射量の出力を可変制御する制御装置を付設していることを特徴とする凹版印刷機のインキ硬化乾燥用放射線照射装置。
【請求項2】
前記デリバリに積層されたシートの積層状態を検知する積層状態検知手段として、印刷済みシートを載置するシート載置プレートに加重を検出する加重センサを取設した加重検出プレートによりシートの積層状態を検知することを特徴とする請求項1記載の凹版印刷機のインキ硬化乾燥用放射線照射装置。
【請求項3】
前記デリバリに積層されたシートの積層状態を検知する積層状態検知手段として、印刷済みシートを載置するシート載置プレートの近傍に配置し、積層シートにおける上層位置を検知する少なくとも一つ以上付設した光学センサによるセンシングによりシートの積層状態を検知することを特徴とする請求項1記載の凹版印刷機のインキ硬化乾燥用放射線照射装置。
【請求項4】
前記デリバリに積層されたシートの積層状態を検知する積層状態検知手段として、印刷済みシートを把持し搬送する搬送チェーンの近傍に付設したシートカウンタにて勘定される数値によりシートの積層状態を検知することを特徴とする請求項1記載の凹版印刷機のインキ硬化乾燥用放射線照射装置。
【請求項5】
前記放射線照射装置に用いられる放射線は、紫外線、赤外線、又は電子線のいずれかであることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一つの請求項に記載の凹版印刷機のインキ硬化乾燥用放射線照射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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