説明

出力特性制御方法

【課題】車両の負荷量が増加した場合に、車両を停止するために十分な制動力を得るとともに、より効率的に電力を確保すること。
【解決手段】電動車100は、車両重量の変化を検知すると(ステップS1001)、重量の変化量に基づいてバッテリーの目標充電率を設定し(ステップS1002)、目標充電率を達成するために必要な必要発電量を算出する(ステップS1003)。電動車100は、車両の重量変化量、必要発電量、重量変化前における操作量と回生トルクとの対応関係などに基づいて、電動モーター133の回生トルクを変更する(ステップS1004)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力によって電動モーターを駆動して走行する電動車の出力特性を制御する出力特性制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の重量変化(積載量の変化や牽引車の有無など)や、走行経路における登板の有無などに応じて、車両の出力特性を変化させる技術が知られている(たとえば、下記特許文献1および2参照)。たとえば、下記特許文献1では、ブレーキペダルやアクセルペダルなどの操作量と駆動系の制御量との関係を、ユーザの能力や車両の状況に合わせて調整する運転装置の制御装置が開示されている。また、下記特許文献2では、車重の推定値に誤差が生じやすい状況であったり、車両の駆動力または加速度にばらつきがあったりしても、車重推定の精度を確保できる車重推定装置が開示されている。
【0003】
また、電気自動車においては、走行に必要な電力を確保するため、車両の重量変化や走行経路における登板の有無などに応じて、発電機における発電量を制御する技術が知られている(たとえば、下記特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−347526号公報
【特許文献2】特開2009−168715号公報
【特許文献3】特許3429068号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車両の重量が増加すると慣性力も増加するので、車両を停止しようとした場合、より大きなブレーキ制動力が必要となる。また、電動車では車両の負荷量(重量や走行道路の傾斜など)が増加すると電動モーターの駆動に必要な電力も増加するため、走行に必要な電力を適切に確保しなくてはならない。このため、電動車において車両の負荷量が増加した場合、車両を停止するために十分な制動力を得るとともに、より効率的に電力を確保する必要があるという問題点がある。
【0006】
本発明は、上述した従来技術の問題点を鑑みてなされたものであり、電力によって電動モーターを駆動して走行する電動車において、車両の負荷量が増加した場合でも、車両を停止するために十分な制動力を得るとともに、より効率的に電力を確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明にかかる出力特性制御方法は、電動モーターで走行すると共にブレーキ操作手段への操作量に対応して前記電動モーターの回生トルクを含む制動量で自車両を制動する制動手段を備える電動車の出力特性を制御する出力特性制御方法であって、前記電動車への負荷量の変化を検知する検知工程と、前記検知工程で前記負荷量の変化を検知した場合、前記負荷量の変化量に基づいて前記制動手段における前記制動量を変更する変更工程と、を含み、前記変更工程では、前記電動モーターの回生トルクを変更することによって前記制動量を変更することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明によれば、電動車への負荷量の変化を検知した場合、負荷量の変化量に基づいて電動モーターの回生トルクを変更するので、車両への負荷量が変化しても、変化前と同様のブレーキ操作量でブレーキを制動することができる。本発明のような構成を備えていない場合、たとえば車両の重量が増加すると、より大きな制動力が必要なため、ブレーキの踏み込みを大きくする必要がある。仮に重量の増加前と同様の操作量でブレーキ操作をおこなった場合、運転者が期待するだけの制動力が得られず、制動距離が延びてしまう可能性がある。本発明のような構成を備えることによって、車両への負荷量の変化に伴う操作ミスなどを防止することができ、車両走行時の安全性を向上させることができる。
【0009】
請求項2の発明によれば、車両への負荷量が増加した場合、電動モーターの回生トルクを増加させるので、車両への負荷量増加に伴うブレーキ操作量の増大を防止することができる。
【0010】
請求項3の発明によれば、車両への負荷量の変化前の操作量と制動量との対応関係を維持するように回生トルクを変更するので、車両への負荷量が増加しても、増加前と同様のブレーキ操作量でブレーキを制動することができる。
【0011】
請求項4の発明によれば、負荷量の変化量に基づいてバッテリーの目標充電率を設定し、目標充電率を達成するために必要な必要発電量に基づいて回生トルクを変更する。電動車は、電動モーターの回生力によって発電する発電手段を備えているので、必要発電量を得るために必要な回生力を、回生トルクを変更することによって得ることができる。
【0012】
請求項5の発明によれば、発電手段における発電量が必要電力量と比例して増加するように回生トルクを増加させるので、車両の重量が増加して必要な電力量が増加した場合でも、効率的に増加分の電力を確保することができる。
【0013】
請求項6の発明によれば、負荷量として電動車の重量を検知するので、たとえば、牽引車の接続や貨物の搭載によって車両重量が変化した場合でも、車両重量の変化前と同様の操作によって電動車を制動可能となる。
【0014】
請求項7の発明によれば、牽引車の接続の有無に基づいて車両の重量変化を検知するので、車両の重量変化を確実に検知することができる。
【0015】
請求項8の発明によれば、負荷量として電動車が走行する道路の傾斜を検知するので、登板路を走行中も平地を走行している場合と同様の操作によって電動車を制動可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施の形態にかかる電動車100の構成を示す説明図である。
【図2】車両ECU140と車両各部との接続を示すブロック図である。
【図3】車両ECU140の機能的構成を示ブロック図である。
【図4】検知部301による牽引車接続の検知方法を模式的に示す説明図である。
【図5】車両重量の増大による回生トルクの変更を示すグラフである。
【図6】変更部302による回生トルクの変更方法の一例を示す説明図である。
【図7】変更部302による回生トルクの変更方法の他の例を示す説明図である。
【図8】通常時および牽引時における残存充電率の一例を示すグラフである。
【図9】算出部304による発電要求電力の算出方法を模式的に示す説明図である。
【図10】電動車100における出力特性制御処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる出力制御方法の好適な実施の形態を詳細に説明する。以下の実施の形態では、プラグインハイブリット自動車である電動車100に対して本発明にかかる出力制御方法を適用する場合の例について説明する。また、本実施の形態では、電動車100への負荷量として、車両の重量を検知するものとする。
【0018】
(実施の形態)
図1は、実施の形態にかかる電動車100の構成を示す説明図である。電動車100は、高圧バッテリー120(バッテリー)に蓄積された電力を用いて電動モーター133を駆動することによって走行する。高圧バッテリー120には、外部電源から供給される供給電力と、電動車100内に搭載された発電機130(発電手段)で発電された発電電力と、の2種類の電力が蓄電される。供給電力は、充電リッド111に接続された充電ケーブル112を介して外部電源から供給され、充電器113を介して高圧バッテリー120に蓄電される。
【0019】
発電電力は、ブレーキ時に発生する回生力によって電動モーター133を発電機として駆動することによって発電される。また、発電電力は、エンジン131を用いて発電機130を駆動することによっても発電される。エンジン131は、燃料タンク137に蓄積されたガソリンによって駆動される。発電機130で発電された発電電力は、DC−DCインバータ132を介して高圧バッテリー120に蓄電される。また、発電機130で発電された発電電力は、同じくDC−DCインバータ132を介して12Vバッテリー121にも蓄電される。12Vバッテリー121に蓄電された電力は、後述する車両ECU140の制御などに用いられる。
【0020】
高圧バッテリー120に蓄電された電力は、DC−DCインバータ132を介して電動モーター133に供給され、電動モーター133が回転する。電動モーター133の回転によって駆動機構134が駆動され、車軸135を回転させることによってタイヤ136が回転し、電動車100が走行する。
【0021】
走行中の電動車100にブレーキをかける際は、運転者はブレーキペダル138(ブレーキ操作手段)を踏み込む。これにより、各タイヤ136に設けられたブレーキ機構139が作動するとともに、電動モーター133(制動手段)に発生する回生力によっていわゆるエンジンブレーキがかかり、電動車100を制動する。すなわち、電動車100は、電動モーター133で走行すると共に、ブレーキ操作手段への操作量に対応し電動モーター133の回生トルクを含む制動量で自車両を制動する制動手段を備える。このときの制動量は、ブレーキペダル138への操作量に対応している。すなわち、ブレーキペダル138への操作量(踏み込み量)が大きいほど、大きな制動力が発生され、たとえば、同じ重量の車両では制動距離が短くなる。
【0022】
ここで、電動車100は、車両の重量に変化があった場合、重量の変化量に基づいて制動手段における制動量を変更する。より詳細には、電動車100は、電動モーターの回生トルクを制動量として、車両の重量が増加した場合、重量の変化前と比較して回生トルクを増加させる。これにより、重量の変化前と比較してエンジンブレーキの力が大きくなり、車両の重量増加に伴うブレーキ操作量の増大を防止することができる。また、電動車100は、重量の変化前のブレーキペダル踏み込み量と回転トルクとの対応関係を維持するように回生トルクを変更するので、車両の重量が増加しても、増加前と同様のブレーキ操作量でブレーキを制動することができる。
【0023】
また、電動車100では、高圧バッテリー120の残存充電率に対して目標充電率を定め、残存充電率が目標充電率の範囲内となるように制御している。これは、走行に必要な電力を確保するためであり、走行中に残存充電率が目標蓄電率を下回った場合は、発電機130によって発電をおこない、目標充電率を維持するようにしている。ここで、車両の重量が増加すると、走行に必要な電力量も増加する。このため、電動車100は、車両の重量が増加した場合、重量の変化量に基づいて高圧バッテリー120の目標充電率を再設定する。これにより、車両の重量が増加した場合でも必要な電力を確保することができる。さらに、電動車100は、上述のように、車両の重量が増加した場合には回生トルクを増加させるので、車両の重量が増加して必要な電力量が増加した場合でも、効率的に増加分の電力を確保することができる。
【0024】
なお、本実施の形態では、電動モーター133における回生力に着目して説明するが、回生力の制御と合わせて、ブレーキ機構139における制動力を変更するようにしてもよい。
【0025】
図1の説明に戻り、車両ECU140は、CPU、制御プログラムなどを格納・記憶するROM、制御プログラムの作動領域としてのRAM、各種データを書き換え可能に保持するEEPROM、周辺回路等とのインターフェースをとるインターフェース部などを含んで構成される。
【0026】
図2は、車両ECU140と車両各部との接続を示すブロック図である。図1では図示を省略したが、車両ECU140は、エンジン131、発電機130、高圧バッテリー120、電動モーター133、DC−DCインバータ132、ブレーキペダル138、ブレーキ機構139とインターフェース部を介して接続され、それら各部との間で情報の授受をおこない、各部の制御を司る。
【0027】
さらに、車両ECU140は、上記CPUが上記制御プログラムを実行することによって、図3に示す検知部301、変更部302、設定部303、算出部304を実現する。
【0028】
図3は、車両ECU140の機能的構成を示ブロック図である。検知部301は、電動車100の重量の変化を検知する。
検知部301は、たとえば、電動車100への牽引車の接続の有無を検知することによって重量の変化を検知する。
【0029】
図4は、検知部301による牽引車接続の検知方法を模式的に示す説明図である。電動車100には、牽引車接続用のコネクタ401が設けられている。コネクタ401には接続検知機構が設けられており、接続検知機構は、コネクタ401に牽引車410側のコネクタ411が接続されると、牽引車検知信号Sを車両ECU140の検知部301に出力する。また、電動車100の車内に牽引車410の接続状態を入力するスイッチ402を設けておき、牽引車410を接続した場合は、ユーザが手動でスイッチ402を押してもよい。
【0030】
図3の説明に戻り、変更部302は、検知部301で重量の変化を検知した場合、重量の変化量に基づいて制動手段における制動量、すなわち、電動モーターの回生トルクを変更する。車両の重量が増加した場合、変更部302は、重量の変化前と比較して回生トルクを増加させる。これは、車両の重量が増加した場合は、車両の制動に必要な制動力が増加するためであり、回生トルクを増加させることによって、エンジンブレーキによる制動力を増加することができる。このとき、変更部302は、たとえば、重量の変化前のブレーキペダル138の操作量(踏み込み量)と回生トルクとの対応関係を維持するように回生トルクを変更する。
【0031】
図5は、車両重量の増大による回生トルクの変更を示すグラフである。図5のグラフは、アクセル開度と走行トルクの関係を示すグラフであり、縦軸は走行トルク、横軸は車速を示している。縦軸の走行トルクは、回生トルクを負の値、駆動トルクを正の値で示し、その大きさはそれぞれ絶対値によって示される。また、横軸は図5では、重量変更前のトルクを点線で示し、重量変更後のトルクを実線で示している。
【0032】
回生トルクは、アクセル開度が0%の場合、または、アクセル開度が低く(たとえば10%)かつ車速が一定以上の場合に発生する。車両の重量が増加した場合、変更部302は、図5に示すように、回生トルクを増大させる。また、変更部302は、車両の重量が増加した場合、走行トルクについても、図5に示すように増大させるようにしてもよい。図5には、アクセル開度が10%、40%、70%の場合の走行トルクの変更例、および、参考のためアクセル開度100%の場合の走行トルクを示している。
【0033】
変更部302は、たとえば、以下のような方法で回生トルクを変更する。
図6は、変更部302による回生トルクの変更方法の一例を示す説明図である。走行トルク(回生トルク)はアクセル開度601および車速602から算出される。変更部302は、通常時、すなわち、牽引車を牽引していない場合の通常時走行トルクマップ603および牽引車を牽引している場合の牽引時走行トルクマップ604を保持している。変更部302は、検知部301から牽引車の接続の有無を示す牽引車接続情報605を取得し、牽引車が接続されていない場合は通常時走行トルクマップ603を、牽引車が接続されている場合は牽引時走行トルクマップ604を、それぞれ選択する(選択606)。そして、変更部302は、選択した走行トルクマップに基づいて回生トルク(607)を変更する。
【0034】
図7は、変更部302による回生トルクの変更方法の他の例を示す説明図である。変更部302は、牽引車を牽引していない場合の通常時走行トルクマップ703を保持している。この通常時走行トルクマップも、アクセル開度701および車速702から算出される。また、変更部302は、通常時走行トルクマップ703に対する係数を保持し、牽引車が接続されていない場合は通常時係数704を、牽引車が接続されている場合は牽引時係数705を、それぞれ選択する(選択706)。この選択は、検知部301から牽引車の接続の有無を示す牽引車接続情報707に基づいておこなう。図7の例では、通常時係数704として1、牽引時係数705として1.3が示されている。変更部302は、選択した係数を通常時走行トルクマップ703に掛け合わせ(乗算708)、得られた結果から回生トルク709を変更する。
【0035】
なお、図6および図7では、牽引時トルクマップをそれぞれ1つのみ示したが、たとえば、車両重量の変化量や後述する必要電力量などに基づいて、複数の牽引時トルクマップを保持しておき、条件に適合するマップを選択してもよい。
【0036】
図3の説明に戻り、設定部303は、電動車100の重量の変化量に基づいて高圧バッテリー120の目標充電率を設定する。設定部303では、電動車100の重量が増加した場合、重量の変化前と比較して目標充電率を高くする。これは、車両重量が重いほど、その駆動に多くのエネルギーが必要となり、たとえば、同じ距離を走行するにも多くの電力を必要とするためである。
【0037】
図8は、通常時および牽引時における残存充電率の一例を示すグラフである。図8のグラフAは、牽引車を牽引していない通常時におけるグラフであり、グラフBは牽引車を牽引している牽引時のグラフである。図8のグラフにおいて、縦軸は残存充電率、横軸は時刻をそれぞれ示しており、時刻0において走行を開始した場合の残存充電率の時間変化が示されている。グラフAの縦軸には通常時の目標充電率Wが、グラフBの縦軸には牽引時の目標充電率Wが示されている。目標充電率は、所定の幅を有する数値帯として設定されている。これは、目標充電率に上限値および下限値を設定し、残存充電率が上限値以下かつ下限値以上の範囲内にあれば目標充電率を満たすとするものである。また、使用下限Cは、これ以上残存充電率が低下すると電動車100の使用ができなくなる値である。
【0038】
図8に示すように、牽引時の目標充電率Wは、通常時の目標充電率Wより大きい値が設定される。すなわち、グラフB(牽引時)には、グラフA(通常時)と比較して、双方向矢印で示す余剰電力量W(目標充電率−使用下限)が大きく設定される。これにより、重量が増加した電動車100の走行に必要な電力が確保される。
【0039】
図8では、グラフA,Bともに、走行開始直後はEV走行をおこない、残存充電率が目標充電率の下限値となったタイミング(時刻TA1またはTB1)で発電機130による発電が開始され、ハイブリット走行に切り替わる。なお、電動モーター133による発電は、回生力発生時(たとえばブレーキ時など)に常時おこなわれている。そして、残存充電率が目標充電率の上限値となると、発電機130が停止される。電動車100では、このような処理をくり返して、残存充電率が目標充電率の範囲を保つようにしている。
【0040】
図3の説明に戻り、算出部304は、設定部303で設定された目標充電率を達成するために必要な必要発電量を算出する。算出部304で必要電力量が算出されると、変更部302では、必要発電量基づいて回生トルクを変更する。具体的には、車両の重量が増加した場合、重量の変化前と比較して目標充電率は高く設定される。この場合、変更部302は、電動モーター133における発電量が必要発電量と比例して増加するように回生トルクを増加させる。電動モーター133における発電量は、回生トルクの大きさと比例する。すなわち、回生トルクを増加させることによって電動モーター133における発電量を増大させることができる。このように、変更部302による回生トルクの変更は、車両重量の増加に対応する分の制動力を得るためにおこなわれるとともに、車両重量の増加に対応する分の電力を得るためにおこなわれる。
【0041】
図9は、算出部304による発電要求電力の算出方法を模式的に示す説明図である。算出部304は、通常時の目標充電率901および牽引時の目標充電率902を保持している。算出部304は、検知部301からの牽引車接続情報903に基づいて、いずれの目標充電率の値を使用するか選択する(選択904)。つぎに、算出部304は、高圧バッテリー120の残存充電率905を取得し、目標充電率と残存充電率905との差分を、目標充電率902を達成するための必要発電量906として算出する。一方、電動車100は走行をおこなっているため、発電中においても走行のために必要な走行用電力907が消費される。算出部304は、この走行用電力907と必要電力量906とを足し合わせて(加算908)、電動モーター133および発電機130に対する要求電力量(909)を算出する。
【0042】
図10は、電動車100における出力特性制御処理の手順を示すフローチャートである。図9のフローチャートにおいて、電動車100は、検知部301において、車両重量の変化、すなわち牽引車の接続を検知するまで待機する(ステップS1001:No)。牽引車の接続を検知すると(ステップS1001:Yes)、電動車100は、設定部303によって、重量の変化量に基づいて高圧バッテリー120の目標充電率を設定する(ステップS1002)。つぎに、電動車100は、算出部304によって、目標充電率を達成するために必要な必要発電量を算出する(ステップS1003)。
【0043】
つづいて、電動車100は、変更部302によって回生トルクを変更する(ステップS1004)。回生トルクの変更は、車両の重量変化量、必要発電量、重量変化前における操作量と回生トルクとの対応関係などに基づいておこなう。そして、電動車100は、走行が開始されるまで待機して(ステップS1005:Noのループ)、走行が開始されると、変更された回生トルクで走行をおこない(ステップS1005:Yes)、本フローチャートによる処理を終了する。
【0044】
以上説明したように、実施の形態にかかる電動車100は、電動車への負荷量の変化、すなわち車両重量の増加を検知した場合、負荷量の変化量に基づいて電動モーターの回生トルクを変更するので、車両への負荷量が変化しても、変化前と同様のブレーキ操作量でブレーキを制動することができる。本発明のような構成を備えていない場合、たとえば車両の重量が増加すると、より大きな制動力が必要なため、ブレーキの踏み込みを大きくする必要がある。仮に重量の増加前と同様の操作量でブレーキ操作をおこなった場合、運転者が期待するだけの制動力が得られず、制動距離が延びてしまう可能性がある。本発明のような構成を備えることによって、車両への負荷量の変化に伴う操作ミスなどを防止することができ、車両走行時の安全性を向上させることができる。
【0045】
また、電動車100は、車両への負荷量が増加した場合、電動モーターの回生トルクを増加させるので、車両への負荷量増加に伴うブレーキ操作量の増大を防止することができる。また、電動車100は、車両への負荷量の変化前の操作量と制動量との対応関係を維持するように回生トルクを変更するので、車両への負荷量が増加しても、増加前と同様のブレーキ操作量でブレーキを制動することができる。
【0046】
また、電動車100は、負荷量の変化量に基づいてバッテリーの目標充電率を設定し、目標充電率を達成するために必要な必要発電量に基づいて回生トルクを変更する。電動車100は、電動モーターの回生力によって発電する電動モーター133を備えているので、必要発電量を得るために必要な回生力を、回生トルクを変更することによって得ることができる。また、電動車100は、電動モーター133における発電量が必要電力量と比例して増加するように回生トルクを増加させるので、車両の重量が増加して必要な電力量が増加した場合でも、効率的に増加分の電力を確保することができる。さらに、電動車100は、牽引車の接続の有無に基づいて車両の重量変化を検知するので、車両の重量変化を確実に検知することができる。
【0047】
なお、本実施の形態では、電動車100への負荷量として車両重量の増加を検知する場合を説明したが、電動車100への負荷量として電動車が走行する道路の傾斜を検知するようにしてもよい。登板路では、電動車100は重力に逆らって走行するため、平地を走行する場合よりも大きな動力を必要とする。すなわち、電動車100が登板路を走行している状態は、電動車100の車両重量が増加している状態に置き換えられる。このような置き換えをおこなえば、電動車100への負荷量として電動車が走行する道路の傾斜を検知する場合でも、本実施の形態を適用することが可能である。
【符号の説明】
【0048】
100……電動車、111……充電リッド、112……充電ケーブル、113……充電器、120……高圧バッテリー、121……12Vバッテリー、130……発電機、131……エンジン、132……DC−DCインバータ、133……電動モーター、134……駆動機構、135……車軸、136……タイヤ、137……燃料タンク、138……ブレーキペダル、139……ブレーキ機構、301……検知部、302……変更部、303……設定部、304……算出部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モーターで走行すると共にブレーキ操作手段への操作量に対応して前記電動モーターの回生トルクを含む制動量で自車両を制動する制動手段を備える電動車の出力特性を制御する出力特性制御方法であって、
前記電動車への負荷量の変化を検知する検知工程と、
前記検知工程で前記負荷量の変化を検知した場合、前記負荷量の変化量に基づいて前記制動手段における前記制動量を変更する変更工程と、を含み、
前記変更工程では、前記電動モーターの回生トルクを変更することによって前記制動量を変更することを特徴とする出力特性制御方法。
【請求項2】
前記変更工程では、前記負荷量が増加した場合、前記負荷量の変化前と比較して前記回生トルクを増加させることを特徴とする請求項1に記載の出力特性制御方法。
【請求項3】
前記変更工程では、前記負荷量の変化前における前記操作量と前記制動量との対応関係を維持するように前記回生トルクを変更することを特徴とする請求項1または2に記載の出力特性制御方法。
【請求項4】
前記電動車は、前記電動モーターの駆動に用いられる電力が蓄積されるバッテリーと、前記電動モーターの回生力によって発電する発電手段と、を備えており、
前記電動車の前記負荷量の変化量に基づいて前記バッテリーの目標充電率を設定する設定工程と、
前記設定工程で設定された前記目標充電率を達成するために必要な必要発電量を算出する算出工程と、をさらに含み、
前記変更工程では、前記必要発電量に基づいて前記回生トルクを変更することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の出力特性制御方法。
【請求項5】
前記設定工程では、前記負荷量が増加した場合、前記負荷量の変化前と比較して前記目標充電率を高くし、
前記変更工程では、前記発電手段における発電量が前記必要発電量と比例して増加するように前記回生トルクを増加させることを特徴とする請求項4に記載の出力特性制御方法。
【請求項6】
前記検知工程では、前記負荷量として前記電動車の重量を検知し、
前記変更工程では、前記重量が増加した場合、前記重量が増加する前と比較して前記回生トルクを増加させることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の出力特性制御方法。
【請求項7】
前記検知工程では、前記電動車への牽引車の接続の有無を検知することによって前記重量の変化を検知し、
前記変更工程では、前記牽引車が接続されたことを検知した場合、前記重量が増加したものとして、前記牽引車が接続される前と比較して前記回生トルクを増加させることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の出力特性制御方法。
【請求項8】
前記検知工程では、前記負荷量として前記電動車が走行する道路の傾斜を検知し、
前記変更工程では、前記電動車が登板路を走行していることを検知した場合、平地を走行している場合と比較して前記回生トルクを増加させることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の出力特性制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−106457(P2013−106457A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−249522(P2011−249522)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】