説明

出向支援装置、及び出向支援プログラム

【課題】出向スケジューリングを最適化し、且つ、顧客満足度の向上を図ることができる出向支援装置、及び出向支援プログラムを提供する。
【解決手段】出向支援装置は、作業に必要とされるスキルを表すスキル情報と、作業の作業量を表す作業情報と、を数値化する数値化部14と、数値化部14により数値化されたスキル情報及び作業情報に基づいて、作業現場を結ぶ巡回路を算出することにより、作業スケジュールを算出する最適化アルゴリズム実行部15と、最適化アルゴリズム実行部15により算出された作業スケジュールを提示する作業スケジュール提示部16とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、出向支援装置、及び出向支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
顧客から要請に応じて、複数の異なる現場に作業者を車両等より出向させ、作業者に作業をさせるための出向スケジューリングを効率化及び最適化するための技術は、作業を管理するスケジューリング、車両の運行を管理するスケジューリングとして、種々の技術に分かれて開発されている。
【0003】
出向支援システムを用いて、出向スケジューリングを管理する場合、出向指令業務は、営業系グループの持ち回りで当直を行うなど、人手に頼る部分が多く、スケジューリングの効率化を図るべき対象とされている。
【0004】
また、現状の出向支援システムにより管理者側が確認できるのは、「作業中/終了」などの簡単な作業ステータスのみであり、現場の状況の正確な把握(例えば、あと何分程度で終了等)、業務の最適な割り振りについても、スケジューリングの効率化が求められている。
【0005】
また、今後、出向拠点の集中化により、出向当直業務のスリム化が図られ、支店全体で一括指定、24時間体制になった場合に、現場の地理に不案内な人間が出向指令を行うことも想定される。このため、作業者の割り振りの最適化、作業状況の正確な把握と管理、及び最適なスケジューリングの作成が求められる。
【0006】
例えば、特許文献1には、利用者(顧客)、及び訪問従事者(出向者、作業者)の双方の事情を考慮してスケジューリングを柔軟に行うとともに、スケジューリング管理者の作業の効率化を図ることを目的とした情報処理装置、及び訪問スケジュール調整システムが開示されている。
【0007】
また、特許文献2には、配車センタが、荷主(顧客)の集配希望時刻に基づいて配車の運行計画を策定する手段と、該配車運行計画を記録する記録手段と、該配車運行計画を参照する手段と、前記配車運行計画を管理する手段と、該管理された配車運行計画を参照して集配先までの所要予測時間、または集配予測時刻を、荷主の指定する集配希望時刻とともに、画面に表示する表示手段とを有する配車運行計画管理技術が開示されている。
【0008】
また、特許文献3には、業務従事者のスキルを数値化し、人員配置に活用する技術として、業務付加価値の把握を可能にし、業務付加価値に適合した人員配置計画の立案、及びその設計を可能にする人員配置支援システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−129264号公報
【特許文献2】特開2004−010252号公報
【特許文献3】特開2002−73918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1〜3に開示された各システムでは、出向スケジューリングの最適化、及び顧客満足度の向上が、必ずしもなされていないという問題がある。例えば、電力会社における顧客への出向業務では、顧客の出向依頼に基づくコンサルタント及び作業が伴う。
【0011】
つまり、
(1)顧客が要望する内容に応じて、その緊急度及び要望の強さ(例えば、「いつでもいいですよ」、「すぐに来て」)は異なる。
(2)出向者のスキルにより、同じ作業内容でも必要と見積もられる時間は異なる。
(3)天候により、例えば、雨天時にはできない(避けたほうがよい)作業がある。
(4)例えば、都心部では渋滞などがあるため、移動時間を距離だけでは判断できない。
(5)出向業務では、通常、作業者(出向者)は車両により移動する。したがって、作業現場(出向先)における駐車場の有無、空き状況が考慮される必要がある。
【0012】
本発明は、前記の諸点に鑑みてなされたものであり、出向スケジューリングを最適化し、且つ、顧客満足度の向上を図ることができる出向支援装置、及び出向支援プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、作業に必要とされるスキルを表すスキル情報と、前記作業の作業量を表す作業情報と、を数値化する数値化部と、前記数値化部により数値化された前記スキル情報及び前記作業情報に基づいて、作業現場を結ぶ巡回路を算出することにより、作業スケジュールを算出する最適化アルゴリズム実行部と、前記最適化アルゴリズム実行部により算出された前記作業スケジュールを提示する提示部と、を備えることを特徴とする出向支援装置である。
【0014】
また、本発明は、前記作業情報が、雨天時に前記作業を行うことが可能か否かを前記作業の種別毎に表す情報、及び前記作業に必要と見積もられる作業時間の平均値と、を前記作業の種別毎に表す情報とのうち少なくとも1つ以上を含むことを特徴とする出向支援装置である。
【0015】
また、本発明は、前記スキル情報が、作業者が有する資格、前記資格に応じて定まる検定級、管轄する地域における作業者の実務経験年数、及び前記作業者の実務ブランク年数のうち少なくとも1つ以上と、予め定められた条件とに基づいて、前記作業に必要と見積もられる作業時間として数値化されることを特徴とする出向支援装置である。
【0016】
また、本発明は、前記最適化アルゴリズム実行部が、前記作業現場間の距離と、前記経路における渋滞情報とに基づいて、前記作業現場間の移動時間を算出し、前記各作業現場での作業時間と、前記移動時間とを加算し、前記加算した時間に基づいて、前記作業スケジュールとして、前記巡回路を算出することを特徴とする出向支援装置である。
【0017】
また、本発明は、前記最適化アルゴリズム実行部が、前記作業現場を前記作業時間の時間帯毎にグループ化し、前記巡回路を前記グループ毎に算出することを特徴とする出向支援装置である。
【0018】
また、本発明は、コンピュータに、作業に必要とされるスキルを表すスキル情報と、前記作業の作業量を表す作業情報と、を数値化する手順と、前記数値化部により数値化された前記スキル情報及び前記作業情報に基づいて、作業現場を結ぶ巡回路を算出することにより、作業スケジュールを算出する最適化アルゴリズム手順と、前記最適化アルゴリズム実行部により算出された前記作業スケジュールを提示する手順と、を実行させることを特徴とする出向支援プログラムである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、出向支援装置は、作業に必要とされるスキルを表すスキル情報と、作業の作業量を表す作業情報とを数値化し、数値化されたスキル情報及び作業情報に基づいて、作業現場を結ぶ巡回路を最適化アルゴリズムにより算出するので、出向スケジューリングを最適化し、且つ、顧客満足度の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態による、出向支援装置の構成を示すブロック図である。
【図2】最近傍法を説明するための概念図である。
【図3】2−opt法を説明するための概念図である。
【図4】本発明の一実施形態による、業務属性テーブルの構成を示す概念図である。
【図5】本発明の一実施形態による、天気予報テーブル(雨の確率テーブル)の構成を示す概念図である。
【図6】本発明の一実施形態による、出向者スキルテーブルの構成を示す概念図である。
【図7】本発明の一実施形態による、お客さま属性テーブルの構成を示す概念図である。
【図8】本発明の一実施形態による、駐車場テーブルの構成を示す概念図である。
【図9】本実施形態による、担当エリアを定める方法を説明するための概念図である。
【図10】本発明の一実施形態による、時間帯毎のグループ化を説明するための概念図である。
【図11】本発明の一実施形態による、出向者スキルの数値化に用いられる社内検定級の例を示す概念図である。
【図12】本発明の一実施形態による、出向者スキルの数値化に用いられる社内資格の例を示す概念図である。
【図13】本発明の一実施形態による、出向者スキルの数値化に用いられる社外資格の例を示す概念図である。
【図14】本発明の一実施形態による、出向者スキルの数値化に用いられる業務の例を示す概念図である。
【図15】本発明の一実施形態による、出向者スキル算出の条件テーブルを示す概念図である。
【図16】本発明の一実施形態による、出向者別の管轄地域#1の業務毎の経験テーブルを示す概念図である。
【図17】本発明の一実施形態による、出向者別の管轄地域#2の業務毎の経験テーブルを示す概念図である。
【図18】本発明の一実施形態による、出向者スキルテーブルの作成方法を説明するためのフローチャートである。
【図19】本発明の一実施形態による、出向者スキルテーブルの構成を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の一実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図1には、出向支援装置の構成がブロック図により表されている。出向支援システム1は、顧客要請受付部10と、エリア情報記憶部11と、作業員情報記憶部12と、現場情報記憶部13と、数値化部14と、最適化アルゴリズム実行部15と、作業スケジュール(提示部)16とを備える。
【0022】
顧客要請受付部10には、作業の受付日時と、作業日時と、作業場所と、作業項目と、作業量と、顧客要望度と、緊急度とが、顧客からの要請に従ってその都度入力され、記憶される。また、エリア情報記憶部11は、営業所から作業現場までの道路の渋滞情報と、作業現場での駐車場の状況と、作業現場の気象予報とを記憶している。また、作業員情報記憶部12は、作業者(出向者)のスキルを表す情報と、作業者の休暇予定を表す情報とを記憶している。また、現場情報記憶部13は、作業現場に係る情報(例えば、緯度、経度、所在地)、及び作業状況を表す情報を記憶している。
【0023】
数値化部14は、顧客要請受付部10と、エリア情報記憶部11と、作業員情報記憶部12と、現場情報記憶部13に記憶されている各種情報とに基づいて、作業日時と、天気(気象)と、到着予測時間(時刻)と、移動経路と、作業の作業量を表す作業情報と、作業者のスキルを表す出向者スキル情報と、作業者の重み付け順位とを数値化する。
【0024】
最適化アルゴリズム実行部15は、数値化されたデータに基づいて、最適化アルゴリズム(遺伝的アルゴリズムGAなど)により、作業者の割り振り、及びその作業者の出向スケジューリングを最適化する。作業スケジュール提示部16は、最適化した出向スケジュールを作業者などに提示する。
【0025】
ここで、最適化アルゴリズムとして、例えば、巡回セールスマン問題(TSP:Traveling Salesman Problem)の解法として提案されている最近傍法、又は2−opt法が用いられる。なお、最適化アルゴリズムは、これらに限らなくてよい。
【0026】
また、巡回セールスマン問題とは、セールスマンが営業所を出発して、すべての顧客を一度だけ訪れて営業所に戻るとした場合、その総移動距離が最短となる(最適化された)巡回路を求める問題である。図2(a)及び(b)は、最近傍法を説明するための概念図である。最近傍法では、開始位置(出発点)から順番に最も近い点が選択されることで、総距離が最短となる巡回路を求めるものである。
【0027】
図3(a)及び(b)は、2−opt法を説明するための概念図である。まず、2−opt法では、例えば、最近傍法を用いて、適当な巡回路を1つ定める。また、巡回路の2本の枝(i,j)及び(k,l)により、dik+djl<dij+dklとなる枝がない場合、巡回路の探索処理は終了する。一方、探索処理において、dik+djl<dij+dklとなる枝がある場合、枝(i,j)及び(k,l)を枝(i,k)及び(j,l)に繋ぎかえる。
【0028】
このように、巡回セールスマン問題により巡回路が単に算出されるのみでは、その巡回路の距離が単に最短となるだけであり、出向スケジューリングの最適化、及び顧客満足度の向上が図られるとは限らない。
【0029】
図4は、業務属性テーブルの構成を示す概念図である。業務属性テーブル20には、雨天時の作業が可であるか又は不可であるかと、作業時間の平均値(平均作業時間)[分]とが、業務の種別毎に保持されている。図4では、雨天時の作業について、一例として、業務#1は可、業務#2は可、業務#3は不可、業務#4は可、業務#5は可とする。また、作業時間の平均値[分]について、業務#1は5[分]と、業務#2は10[分]と、業務#3は20[分]と、業務#4は30[分]と、業務#5は45[分]とする。
【0030】
図5は、天気予報テーブル(雨の確率テーブル)の構成を示す概念図である。天気予報テーブル25には、出向日の降雨確率又は降雪確率が、時間帯別に保持されている。図5では、一例として、時間帯00:00〜は0%と、時間帯03:00〜は0%と、時間帯06:00〜は30%と、時間帯09:00〜は30%と、時間帯12:00〜は50%と、時間帯15:00〜は80%と、時間帯18:00〜は80%と、時間帯21:00〜は100%とする。
【0031】
図6は、出向者スキルテーブルの構成を示す概念図である。出向者スキルテーブル30には、作業に必要と見積もられる作業時間[分]が、出向者(作業者)毎、及び業務種別毎に保持されている。ここで、作業に必要と見積もられる作業時間は、過去の実績時間でもよい。また、過去の実績時間が無い場合、作業に必要と見積もられる作業時間は、予め定められた値(例えば、他の出向者の実績時間の平均値)でもよい。
【0032】
また、出向者のスキルによって作業ができない業務については、出向者スキルテーブルにおけるその出向者の欄に、「不可」と登録される。ここで、出向者のスキルは、出向者が有する検定級に基づいて、「可」又は「不可」が予め定められる。
【0033】
図6では、出向者#01について、業務#1は5[分]と、業務#2は10[分]と、業務#3は20[分]と、業務#4は30[分]と、業務#5は45[分]とする。また、出向者#10について、業務#1は5[分]と、業務#2は12[分]と、業務#3は20[分]と、業務#4は不可と、業務#5は50[分]とする。
【0034】
図7は、お客さま属性テーブルの構成を示す概念図である。お客さま属性テーブル35には、お客さまが希望した作業(顧客が要請した作業)に応じた業務種別と、お客さまが希望した作業時間と、緊急度と、作業現場における駐車場の有無と、緯度と、経度と、住所(所在地)とが、出向日毎に保持される。お客さま属性テーブル35を参照すれば、例えば、業務#2及び業務#3の2種類の業務を、希望作業時間帯09:00〜15:00に作業することを、お客さま#02が希望していることが判る。また、例えば、お客さま#02からの要請により作業を行う作業現場には、駐車場があることが判る。
【0035】
また、お客さまからの要請が、出向日の当日にあった場合、出向スケジュールは、その都度、その緊急度に基づいて作成し直される必要がある。図7では、緊急度が、お役様#11〜#13毎に登録されている。
【0036】
ここで、緊急度は、一例として、以下のように定められる。
緊急度「2」:早急に作業する必要がある場合
緊急度「1」:できるだけ早く作業する必要がある場合
緊急度「0」:希望作業時間帯での作業により対応する場合
【0037】
図8は、駐車場テーブルの構成を示す概念図である。駐車場テーブル40には、その緯度と、経度と、住所と、名称と、使用料とが、駐車場毎に保持されている。図8では、駐車場#01は、緯度「35.358704」と、経度「139.745408」と、住所「東京都港区…」と、名称「○○○」と、使用料「200円」と定められているものとする。
【0038】
次に、出向スケジューリングを最適化する方法について説明する。
(1)担当エリアを定める
図9は、担当エリアを定める方法を説明するための概念図である。出向場所である作業現場を表す丸印が、地図上にプロットされているとする。また、当日の出向者と、作業内容とに基づいて、各出向者が担当するエリア及び業務が、暫定的に割り振られる。ここで、作業者(出向者)によって担当できない作業があれば、これを考慮して割り振られてもよい。また、作業現場の数が作業者毎に均等になるように、及び、作業者によって作業が担当できない(不可である)業務がその作業者に割り当てられないように、各出向者が担当するエリア及び業務が、暫定的に割り振られる。
【0039】
(2)作業現場(例えば、お客さま宅)での作業の数値化
出向先での業務種別と、作業者のスキルとに基づいて、その作業現場での作業時間が、作業現場毎に加算される。一例として、お客さま#01は、業務#1を希望しているとする(図7を参照)。また、業務#1を作業する作業者(出向者)#01のスキルは、値5であるとする(図6を参照)。したがって、作業者#01が業務#1を作業した場合、その作業時間は、値5と定められる。なお、作業現場でない営業所における作業時間は、値0と定められる。
【0040】
(3)時間帯毎のグループ化
図10は、時間帯毎のグループ化を説明するための概念図である。お客さまが希望する作業時間帯毎に、作業現場の位置がグループ化される。図10では、作業時間帯18:00〜をお客さまが希望している作業現場の位置が、グループ化されている(図10において、線で囲まれている範囲)。ここで、お客さまが希望する作業時間帯が複数の時間帯にまたがる場合、原則として、同じグループに属させるものとする。ただし、作業量が所定量を越えないようにするため、作業時間帯が同じ複数の作業現場は、必ずしも同じグループに属さなくてもよい。
【0041】
また、お客さまが複数の作業時間帯を希望され、且つ、天候等により作業できない作業時間帯がある場合、作業が可能である作業時間帯のみに、その作業時間帯は定められる。また、天候等により作業ができる作業時間帯がない場合、その作業時間帯については、お客さまとの個別の調整が必要になる。なお、天候により作業できるか否かの判定は、雨の確率(降雨確率)及び降雪確率のうち少なくとも一方に基づいて判定される。
【0042】
また、最適化アルゴリズムによる最適化処理は、グループ毎に実行される。
(4)作業時間帯毎の巡回路の算出(探索)
巡回路を算出する処理の概要
・作業時間帯の早いグループから、巡回路が算出される。
・巡回路の開始位置は、営業所の位置とする。
・算出中の巡回路に対応する作業時間帯が、お客さまが希望している複数の作業時間帯のうち1つ以上と一致する場合、そのお客さまが要請した作業の作業現場を、巡回路の通過点に含める。
・算出中の巡回路によって、お客さまが希望されている時間帯を含めることができない(例えば、時間内に作業が終了しない)場合、その作業は、他の作業者(出向者)に振り分ける。
・算出中の巡回路が収束しない場合、その巡回路に含まれている作業現場を、他の作業者(出向者)に振り分ける。
・算出した第1巡回路における作業時間帯と、これに続く作業時間帯に巡回される第2巡回路とでは、第1巡回路の終了位置が、第2巡回路の開始位置とされる。
【0043】
巡回路を作業時間帯毎に算出する手順は、次のようになる。まず、巡回路の距離を時間(移動時間)に変換する。ここで、位置(地点)iから位置jまでの距離は、渋滞情報を考慮して、移動時間に変換される (ステップS1)。また、移動時間には、作業時間が加算される。ここで、位置iでの作業時間と移動時間とが加算され、この加算結果は、t(i,j)とされる(ステップS2)。また、巡回路が算出される。ここで、巡回路は、t(i,j)に基づいて、最適化アルゴリズム(例えば、最近傍法、2−opt法)により算出される。(ステップS3)
【0044】
(5)巡回路の再算出
算出した巡回路の終了位置を、これに続く巡回路の開始位置として、残りの作業現場の位置を通過点とする巡回路を、同様に算出する。
【0045】
なお、お客さまからの要請により、当日作成した出向スケジュールを変更する場合、お客さまから要請された作業内容を実行可能である出向者のうちから、最短で出向することができる出向者を選択し、選択した出向者について、巡回路(出向スケジュール)が再び算出されてもよい。
【0046】
次に、出向者スキルテーブル(図6を参照)の作成方法について説明する。
出向者のスキルを表す数値は、業務の実務レベルに応じて認定された検定級と、社内資格と、社外資格と、地域別の実務経験年数と、ブランク年数とのうち、1つ以上に基づいて定められる。ここで、検定級とは、業務の実務レベル毎に定められる級である。出向者(作業者)は、業務の従事に際して作業を行うスキルを有することが、認定資格者により認定される。また、一定の実務レベルに達していない出向者は、その実務レベルに応じて、認定資格のある者と同行して一緒に業務を行うことはできるが、単独で業務を行うことはできないとしてもよい。
【0047】
図11は、出向者スキルの数値化に用いられる社内検定級の例を示す概念図である。級は、A級が最も上位であり、C級が最も下位である。また、同じ級でも、符号の数字が大きいほど上位である。また、実務レベルの値と、業務内容の値と、社内資格の値と、社外資格の値とは、それぞれ値が大きいほど上位の実務レベル(高度の資格)である。また、実務レベルが上位であるほど、その作業者は、多くの業務を実行することができることを表す。
【0048】
また、資格には、業務の遂行に必要な社内の認定資格と、単独で車両を運転することができるなどの社外資格とがある。図12は、出向者スキルの数値化に用いられる社内資格の例を示す概念図である。例えば、社内資格「1」は、会社の車両を単独で運転することができると認定されたことを表す資格である。また、この資格には、その認定が有効とされる管轄地域も対応付けられている。
【0049】
図13は、出向者スキルの数値化に用いられる社外資格の例を示す概念図である。例えば、社外資格「1」は、公的な資格を有する作業主任者であることを表す。
【0050】
図14は、出向者スキルの数値化に用いられる業務の例を示す概念図である。図14には、作業に必要とされる社内資格と、社外資格と、管轄地域毎の作業時間の平均値とが、業務毎に表されている。また、作業時間は、管轄地域#nに応じて変わる場合がある。このため、業務#n(nは、1以上の整数)は、厳正かつ的確に管理されるよう、現場での作業実績の平均値が、リアルタイムで更新登録される。
【0051】
出向者スキルは、検定級、社内資格、社外資格、地域別の実務経験年数、及びブランク年数のうち1つ以上に基づいて算出される。出向者スキルは、例えば、出向先の管轄地域で業務を行う作業時間の短さにより表現されてもよい。
【0052】
図15は、出向者スキル算出の条件テーブルを示す概念図である。図15では、数値0〜1は、1未満を表すものとする。例えば、管轄地域での経験が2年未満の場合でも、管轄地域外での経験年数が2年以上あって、且つ、ブランク年数が3年未満であれば、その作業者(出向者)は、単独作業が可能なスキルを有しているとされる。このように、作業を担当する出向者は、実務経験に応じた出向者スキルに基づいて割り当てられる。
【0053】
図16は、出向者別の管轄地域#1の業務毎の経験テーブルを示す概念図である。また、図17は、出向者別の管轄地域#2の業務毎の経験テーブルを示す概念図である。図16及び図17に表されているように、実務経験は、管轄地域毎に管理される。例えば、作業に掛かる時間[分]は、業務種及び出向者毎に、経験テーブルに格納されている。ここで、作業できない業務は、「不可」と登録される。また、これらの経験テーブルは、出向者の経験値に応じて、適宜更新される。
【0054】
図18は、出向者スキルテーブルの作成方法を説明するためのフローチャートである。まず、出向者の検定級、社内資格、社外資格、及び管轄地域別の実務経験年数が、取得される(ステップS1)。次に、出向者スキル算出の条件テーブル50(図15を参照)に登録されている条件を満たすか否かが判定される(ステップS2)。
【0055】
そして、出向者スキル算出の条件テーブル50の条件が満たされる場合(ステップS2−満たす)、出向者スキル算出の条件テーブル50に基づいて、出向者スキルを出向者毎に時間に換算される(ステップS3)。また、出向者スキル(出向者毎の作業時間)が算出される(ステップS4)。一方、出向者スキル算出の条件テーブル50の条件が満たされない場合(ステップS2−満たさない)、その作業者をその作業に出向させることは、不可と定められる(ステップS5)。
【0056】
図19は、出向者スキルテーブルの構成を示す概念図である。出向者の管轄地域#1の経験テーブル#1(図16を参照)に表されているように、例えば、出向者#01は、業務#1について、管轄地域#1での経験が少ないものとする。また、出向者#01は、管轄地域#1でのブランク年数が、1〜3年の範囲にあるものとする。また、管轄地域#2の経験テーブル#1(図17を参照)に表されているように、出向者#01は、業務#1について、管轄地域外での経験年数は2年以上あるものとする。
【0057】
この場合、出向者#01のスキル(作業時間)は、出向者スキル算出の条件テーブル50(図15を参照)に基づいて、[管轄地域の平均作業時間]×1.7とされる。これにより、出向者#01が業務#1を管轄地域#1で作業するためのスキル(作業時間)は、業務#1を管轄地域#1で作業する作業時間の平均値(平均作業時間)4分に、1.7を乗算した値である6.8分と算出される。
【0058】
同様に、出向者の管轄地域#1の経験テーブル#1(図16を参照)に表されているように、出向者#02は、業務#1について、管轄地域#1での経験年数が4年(=2年以上)、且つ、管轄地域#1でのブランク年数が0であるものとする。この場合、出向者#02のスキル(作業時間)は、出向者スキル算出の条件テーブル50(図15を参照)に基づいて、出向者#02の「最新の実績値」と定められる。
【0059】
同様に、出向者#03のスキル(作業時間)は、出向者スキル算出の条件テーブル50(図15を参照)に基づいて、[管轄地域の平均作業時間]×1.5(=6分)と算出される。また、出向者#03は、出向者スキル算出の条件テーブル50(図15を参照)に基づいて、単独での出向による業務#5の作業が不可とされる。この場合、出向者#03は、他の作業者に同行して業務#5の作業をするよう定められる。
【0060】
このようにして、出向者スキルテーブル30a(図19を参照)は、経験テーブル(図16及び図17を参照)に基づいて作成される。
【0061】
以上のように、出向支援装置は、作業に必要とされるスキルを表す出向者スキル情報と、前記作業の作業量を表す作業情報と、を数値化する数値化部14と、数値化部14により数値化された出向者スキル情報及び前記作業情報に基づいて、作業現場を結ぶ巡回路を算出することにより、作業スケジュールを算出する最適化アルゴリズム実行部15と、最適化アルゴリズム実行部15により算出された前記作業スケジュールを提示する作業スケジュール提示部16と、を備える。
この構成により、出向支援装置は、作業に必要とされるスキルを表す出向者スキル情報と、作業の作業量を表す作業情報とを数値化し、数値化された出向者スキル情報及び作業情報に基づいて、作業現場を結ぶ巡回路を最適化アルゴリズムにより算出するので、出向スケジューリングの最適化し、且つ、顧客満足度の向上を図ることができる。
【0062】
また、作業情報は、雨天時に前記作業を行うことが可能か否かを前記作業の種別毎に表す情報、及び前記作業に必要と見積もられる作業時間の平均値と、を前記作業の種別毎に表す情報とのうち少なくとも1つ以上を含む。
【0063】
また、スキル情報は、作業者が有する資格、前記資格に応じて定まる検定級、管轄する地域における作業者の実務経験年数、及び前記作業者の実務ブランク年数のうち少なくとも1つ以上と、予め定められた条件とに基づいて、前記作業に必要と見積もられる作業時間として数値化される。
【0064】
また、最適化アルゴリズム実行部15は、前記作業現場間の距離と、前記経路における渋滞情報とに基づいて、前記作業現場間の移動時間を算出し、前記各作業現場での作業時間と、前記移動時間とを加算し、前記加算した時間に基づいて、前記作業スケジュールとして、前記巡回路を算出する。
【0065】
また、最適化アルゴリズム実行部15は、前記作業現場を前記作業時間の時間帯毎にグループ化し、前記巡回路を前記グループ毎に算出する。
【0066】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【0067】
なお、上記の出向支援装置を実現するためのプログラムを、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録し、そのプログラムをコンピュータシステムに読み込ませて実行するようにしてもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【符号の説明】
【0068】
10…顧客要請受付部、11…エリア情報記憶部、12…作業員情報記憶部、13…現場情報記憶部、14…数値化部、15…最適化アルゴリズム実行部、16…作業スケジュール提示部、20…業務属性テーブル、25…天気予報テーブル、30、30a…出向者スキルテーブル、35…お客さま属性テーブル、40…駐車場テーブル、50…出向者スキル算出の条件テーブル、55…出向者の管轄地域#1の経験テーブル#1、60…出向者の管轄地域#2の経験テーブル#1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業に必要とされるスキルを表すスキル情報と、前記作業の作業量を表す作業情報と、を数値化する数値化部と、
前記数値化部により数値化された前記スキル情報及び前記作業情報に基づいて、作業現場を結ぶ巡回路を算出することにより、作業スケジュールを算出する最適化アルゴリズム実行部と、
前記最適化アルゴリズム実行部により算出された前記作業スケジュールを提示する提示部と、
を備えることを特徴とする出向支援装置。
【請求項2】
前記作業情報は、雨天時に前記作業を行うことが可能か否かを前記作業の種別毎に表す情報、及び前記作業に必要と見積もられる作業時間の平均値と、を前記作業の種別毎に表す情報とのうち少なくとも1つ以上を含むことを特徴とする請求項1に記載の出向支援装置。
【請求項3】
前記スキル情報は、作業者が有する資格、前記資格に応じて定まる検定級、管轄する地域における作業者の実務経験年数、及び前記作業者の実務ブランク年数のうち少なくとも1つ以上と、予め定められた条件とに基づいて、前記作業に必要と見積もられる作業時間として数値化されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の出向支援装置。
【請求項4】
前記最適化アルゴリズム実行部は、前記作業現場間の距離と、前記経路における渋滞情報とに基づいて、前記作業現場間の移動時間を算出し、前記各作業現場での作業時間と、前記移動時間とを加算し、前記加算した時間に基づいて、前記作業スケジュールとして、前記巡回路を算出することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1つに記載の出向支援装置。
【請求項5】
前記最適化アルゴリズム実行部は、前記作業現場を前記作業時間の時間帯毎にグループ化し、前記巡回路を前記グループ毎に算出することを特徴とする請求項4に記載の出向支援装置。
【請求項6】
コンピュータに、
作業に必要とされるスキルを表すスキル情報と、前記作業の作業量を表す作業情報と、を数値化する手順と、
前記数値化部により数値化された前記スキル情報及び前記作業情報に基づいて、作業現場を結ぶ巡回路を算出することにより、作業スケジュールを算出する最適化アルゴリズム手順と、
前記最適化アルゴリズム実行部により算出された前記作業スケジュールを提示する手順と、
を実行させることを特徴とする出向支援プログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate


【公開番号】特開2012−203532(P2012−203532A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−65864(P2011−65864)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)