説明

出所情報識別機能を有する管芯無しトイレットロールの製造方法、出所情報識別機能を有する管芯無しトイレットロール

【課題】管芯無しトイレットロールの出所を識別できるようにする。
【解決手段】
管芯無しトイレットロール製造時に、コアシャフトに対して付与する巻き開始部分を形成するための接着糊中に所定波長の光及び試薬の少なくとも一方に対して呈色する識別薬を混合して芯を形成することとし、その識別薬をトイレットロールの出所毎に予め異ならしめ、製造後にそのトイレットロールの芯部分に対して、上記識別薬に対応する前記所定波長の光及び試薬の少なくとも一方を付与して、前記芯部分を呈色させ、その色によって出所を識別できるようにしたものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、出所情報識別機能を有する管芯無しトイレットロールの製造方法、出所情報識別機能を有する管芯無しトイレットロールに関する。
【背景技術】
【0002】
長尺のトイレットペーパーを巻いたトイレットロールにおいては、紙管と呼ばれる管芯にトイレットペーパーを巻き付けた、所謂、芯有りタイプのものと、管芯のない管芯無しタイプのものがある(この管芯無しタイプのものは、単に芯無し、或いはコアレスと称されることもある)。
【0003】
ここで、管芯有りトイレットロールにおいては、上記紙管の内周面にメーカー名、ロットナンバー、生産日、生産工場名等の出所情報が印刷等されている。これは、生産工場外へ流通したトイレットロールが返品等された際に、そのトイレットロールの出所情報に基づき上記メーカー名、ロットナンバー、生産日、生産工場等を識別可能にするためである。
【0004】
しかし、管芯無しタイプのトイレットロールでは、上記出所情報を付与することができず、返品された際に、そのトイレットロールのメーカー名、ロットナンバー、生産日、生産工場を識別することができない。
【0005】
ここで、トイレットロールにおいては、トイレットペーパーに対して、エンボスが付与されることがあり、このエンボスパターンが各社の生産業者において相違するため、このエンボスパターンによって、生産メーカーの識別を行なうことが考えられる。しかし、管芯無しトイレットロールは、古紙配合の安価な製品であることが多いため、エンボス等の付加価値が付与されていない製品が多く、エンボスパターンによる識別ができない製品が多い。また、エンボスパターンでは、上記生産業者程度しか識別できず、ロットナンバー、生産日、生産工場まで特定することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許4689223号
【特許文献2】特許2671250号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の主たる課題は、管芯無しトイレットロールにおいて、出荷後にも、そのメーカー名、ロットナンバー、生産日、生産工場等を識別可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決した本発明及び参考発明は以下のとおりである。
〔請求項1記載の発明〕
原反ロールからトイレットロールの製品幅の複数倍幅以上でかつ長尺のトイレットペーパー原紙を巻き出して、その先端部をコアシャフトに接触させる工程と、
トイレットペーパー原紙の先端部を接触させた状態でコアシャフトに向けて接着糊を噴射しつつコアシャフトを回転させて芯部分を形成する工程と、
接着糊の噴射を停止させた状態でコアシャフトを回転させ、コアシャフトに対してトイレットペーパー原紙をトイレットロールの径に巻き付ける工程と、
前記コアシャフトを引き抜いて、トイレットロール製品の製品幅の複数倍幅以上の管芯無しログを形成する工程と、
ログをトイレットロール製品の製品幅に裁断する工程と、を有するトイレットロールの製造方法において、
前記接着糊に対して、所定波長の光及び試薬の少なくとも一方に対して異なる色に呈色する識別薬を混合することとし、かつ、出所毎に呈色の色が異なる識別薬に変更する特徴とする出所情報識別機能を有する管芯無しトイレットロールの製造方法。
【0009】
〔請求項2記載の発明〕
管芯の無い管芯無しトイレットロールであって、トイレットロールの芯際を固めるための接着糊中に所定波長の光及び試薬の少なくとも一方に対して呈色する識別薬が混合されていることを特徴とする出所情報識別機能を有する管芯無しトイレットロール。
【0010】
〔参考発明〕
管芯無しトイレットロールの出所を識別する方法であって、
管芯無しトイレットロール製造時に、コアシャフトに対して付与する巻き開始部分を形成するための接着糊中に所定波長の光及び試薬の少なくとも一方に対して呈色する識別薬を混合して芯を形成することとし、
その識別薬をトイレットロールの出所毎に予め異ならしめ、
製造後にそのトイレットロールの芯部分に対して、上記識別薬に対応する前記所定波長の光及び試薬の少なくとも一方を付与して、前記芯部分を呈色させ、その色によって出所を識別することを特徴とする芯無しトイレットロールの出所識別方法。
【発明の効果】
【0011】
以上の本発明によれば、管芯無しトイレットロールにおいて、出荷後にも、そのメーカー名、ロットナンバー、生産日、生産工場等の識別が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明にかかる管芯無しトイレットロールの概略図である。
【図2】本発明にかかる管芯無しトイレットロールの製造装置例を示す図である。
【図3】本発明にかかる管芯無しトイレットロールの製造方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明にかかる管芯無しトイレットロールX1について図面を参照しながら詳述する。
本発明にかかるトイレットロールX1は、図1に示すように、所謂紙管とも称される管芯がない管芯無しトイレットロールX1であり(以下、単にトイレットロールともいう)、その芯部分1は、接着糊によりトイレットロールX1を構成するトイレットペーパー自体が固着されて形成されたものである。そして、本発明のトイレットロールX1においては、その芯部分1を固着している接着糊中に、所定波長の光及び試薬の少なくとも一方に対して呈色する識別薬が混合されている。
【0014】
この本発明のトイレットロールX1について、製造方法とともに更に詳述する。製造方法は、次のとおりである。まず、図2に示されるとおり、抄紙設備にて製造した原反ロールJRからトイレットロールX1の製品幅の複数倍幅以上でかつ長尺のトイレットペーパー原紙2を巻きだし、そのトイレットペーパー原紙2の端部を一対の巻き取りローラ31,31上に載せる。この際にトイレットペーパー原紙の先端部2tが下流側の巻き取りローラよりもさらに下流側に位置して巻き取りローラより露出するようにする。
【0015】
その後に図3(A)に示すように、コアシャフト30を上方から下方に向かって移動させ、前記トイレットペーパー原紙がコアシャフト30と前記巻き取りローラ31,31との間に介在され、かつ、前記先端部2tが前記コアシャフト30よりも下流側に露出された状態で、コアシャフトを前記一対の巻き取りローラ31,31により支持する。
【0016】
次いで、図3(B)に示すように、その先端部2tに下方からエアノズル等の折り返し手段32によって圧縮空気Aなどを噴射してコアシャフト30に先端部2tが巻かれるように折り返す。
【0017】
トイレットペーパー原紙2の先端部2tを折り返しコアシャフト30に巻き掛けたならば、図3(C)に示すように、噴霧手段33から接着糊Sをコアシャフト30に向けて噴射し、かかる噴射を行ないつつコアシャフト30を回転させて、トイレットペーパー原紙2の端部を適宜の長さ仮固着させて芯部分1を形成する。
【0018】
このように芯部分1が形成した後には、図3(D)に示すように、ライダーロール34とも称される巻き取り装置を仮固着部分(芯部分1)に当接させ回転させ、トイレットロールの製品直径に至るまでトイレットロール原紙2をコアシャフト30に巻き付ける。
【0019】
なお、前記コアシャフト30は、一般的に断面が実質的真円の筒状、中空又は中実の棒状をなし、その断面直径は、5〜50mm程度であり、長さは概ね1〜3mである。また、シャフトの材質は、限定されないものの金属製、特にステンレス製、なかでもSUS304が最も好ましく用いられる。
【0020】
コアシャフト30に対してトイレットペーパー原紙2をトイレットロールの製品径にまで巻き付けた後には、原反ロールJRからのトイレットペーパー原紙とコアシャフト30に巻き付けられたトイレットロール原紙との間で、図示しないカッター手段などによって切り離し、その切り離し端部にテールシール用糊を付けて、コアシャフト30に巻き付けられている筒状部分に接着する。所謂テールシールとも称される作業である。図1において、テールシール部分を符号3で示している。テールシール糊としては、水または、ポリビニルアルコール等の水性接着剤をそれぞれもしくは混合させて用いることができる。
【0021】
このようにコアシャフト30に対してトイレットペーパー原紙2を、トイレットロールの製品径に巻き付けた後、コアシャフト30を回転方向に直行する方向、すなわちコアシャフト30の軸心延在方向に引き抜き、トイレットロールX1の製品の径であり、かつ、トイレットロールX1の製品幅の複数倍幅の所謂ログとする。
【0022】
このログを製造した後には、これを図示しないログカッターにて幅方向に適宜の大きさ、例えばログの両側端をトリムした後、製品幅に裁断してトイレットロールX1とする。
【0023】
ここで、本発明における管芯無しトイレットロールX1を製造するにあたっては、上述のとおり、特徴的に、芯部分1を形成するための接着糊Sに対して、所定波長の光及び試薬の少なくとも一方に対して呈色する識別薬を混合する。このように識別薬を混合することで、製品となって市場に出荷された後においても、そのトイレットロールX1はその芯部分1に、当該識別薬に対応する所定波長の光を照射したり、或いは試薬を滴下することで反応等させて呈色させることが可能となる。
【0024】
なお、芯を形成するための接着糊としては、水または、ポリビニルアルコール等の水性接着糊をそれぞれもしくは混合させて用いることができる。また、識別薬は上記所定波長の光及び試薬の少なくとも一方に対して呈色させない状態においては、無色透明なものであるのが望ましい
【0025】
識別薬の具体例としては、エスクリン、ジアミノスチルベンゼンスルホン酸、ビス(トリアジニルアミド)スチルベンジルスルホン酸、クマリン誘導体、ピラゾリン誘導体、蛍光ラッテクス、日本化薬株式会社製Kayaphor EXN Liquid等の蛍光染料、チモールフタレイン(ブロモチモールブルー)、フェノールフタレイン、フェノールレッド、クレゾールレッド、澱粉等が挙げられる。接着糊に混合する識別薬は一種のみならず、適宜複数種を組み合わせて使用することができる。例えば、蛍光染料とチモールフタレインの双方を混合するようにしてもよい。なお、蛍光染料を使用するのであれば、一般的なものでもよいが安全性の高い医療用のものが望ましい。
【0026】
前記蛍光染料であれば、所謂ブラックライトとも称される長波長の紫外線を照射することで発光するように呈色させることができる。また、チモールフタレインであれば、酸或いはアルカリの試薬を滴下して呈色させることができる。フェノールフタレインであれば、アルカリの試薬を滴下して呈色させることができる。さらに、澱粉であればヨウ素を試薬として滴下することで呈色させることができる。なお、識別薬と試薬、光の組み合わせは上記例に限定されるものではない。
【0027】
また、接着糊に対する識別薬の混合量は特に限定されないが、目視にて十分に呈色が視認できる程度の混合割合とする。具体例としては、上記蛍光染料であれば100倍程度に希釈したものを接着糊100重量部に対して5〜20重量部混合すればよい。但し、5重量部未満の場合には、目視にて可能な程度にまで呈色がされないおそれがあるため好ましくなく、20重量部より多い場合には、トイレットペーパー原紙が変色してしまうため好ましくない。
【0028】
ここで、本発明におけるトイレットロールX1の製造方法においては、単に接着糊Sを識別薬に混合させたものとするだけではなく、その識別薬を製造工場、製造装置、製造ロット、生産日、生産時、製品種等の所定の製品出所単位毎に異ならしめるようにする。
【0029】
例えば、○月○日〜△月△日までの期間に製造するものについては、識別薬として澱粉を用い、×月×日から◎月◎日までの期間に製造するものについては、識別薬としてフェノールフタレインを用いる。また、例えば、A工場で製造するものについては、識別薬としてチモールブルーを用い、B工場で製造するものについては、識別薬としてフェノールフタレインを用いる。このように、時、場所、生産者等の出所が異なる毎に、識別薬を対応するように異ならしめる。
【0030】
なお、本発明における出所とは、少なくとも上記例の製造工場、製造装置、製造ロット、生産日、生産時、製品種を含む意味とする。
【0031】
かくして製造された本発明にかかる管芯無しトイレットロールX1は、市場に出荷された後など生産後に、何らかの事由によって消費者から返品されたトイレットロールの芯部分に対して、試薬或いは所定波長の光を照射することで、そのトイレットロールの時、場所、生産者等の出所を特定することが可能となる。そして、例えば、その返品理由が不良品であるなどの場合には、その発生事由や発生場所、発生装置、発生日時等を特定することが可能となり、迅速な品質改善を行なうことが可能となる。
【0032】
また、特に本発明にかかるトイレットロールX1においては、特に芯部分1を形成するための接着糊に対して識別薬を混合することとしたので、使用途中等でなんらかの返品事由が生じても、完全に使いきらない限り芯部分1は残るので、かかる使用途中のものであってもトイレットロールの出所を識別することが可能である。
【0033】
ここで、本発明にかかるトイレットロールX1は、構成するトイレットペーパー原紙2の積層数(プライ数)や組成は従来既知の技術による。例えば、一枚重ねの所謂シングルと呼ばれるものから、二枚重ねのダブル、三枚重ねのトリプル程度とすることができる。
【0034】
ただし、過度にプライ数が多くなると、コアシャフトに付着した水等の接着糊が過度に吸収されて、コアシャフト30とトイレットペーパー原紙2との間に存在する液体が減少し、効果的なシャフト引き抜き操作が発揮されなくなるおそれが高まる。
【0035】
また、トイレットペーパー原紙2の組成についても特に限定されず、原料パルプを主とする抄紙原料を、公知の抄紙設備及び抄紙工程、具体的には、ワイヤパート、プレスパート、ドライヤパート、サイズプレス、カレンダパート等を経るなどして製造したものとすることができる。
【0036】
もちろん、抄紙に際しては、例えば、分散剤、苛性ソーダ、アンモニア水等のpH調整剤、消泡剤、防腐剤、離型剤、耐水化剤、流動変性剤、歩留まり向上剤などの適宜の薬品を添加することができる。
【0037】
他方、本発明にかかる連続衛生薄葉紙の米坪は、JIS P 8124の米坪測定方法における値が、12.5〜25.0g/m2である。(なお、ここでの米坪は、積層構造の場合には、層を構成する一枚当たりのものである。)当該範囲を超えると、シャフトへの吸い付きが悪化する。
【符号の説明】
【0038】
X1…管芯無しトイレットロール、JR…原反ロール、1…管芯無しトイレットロールの芯部分、2…トイレットペーパー原紙、3…テールシール部分、2t…トイレットペーパー原紙の先端部、30…コアシャフト、31…巻き取りローラ、32…エアノズル、33…噴霧手段、34…ライダーロール、A…圧縮空気、S…接着糊。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原反ロールからトイレットロールの製品幅の複数倍幅以上でかつ長尺のトイレットペーパー原紙を巻き出して、その先端部をコアシャフトに接触させる工程と、
トイレットペーパー原紙の先端部を接触させた状態でコアシャフトに向けて接着糊を噴射しつつコアシャフトを回転させて芯部分を形成する工程と、
接着糊の噴射を停止させた状態でコアシャフトを回転させ、コアシャフトに対してトイレットペーパー原紙をトイレットロールの径に巻き付ける工程と、
前記コアシャフトを引き抜いて、トイレットロール製品の製品幅の複数倍幅以上の管芯無しログを形成する工程と、
ログをトイレットロール製品の製品幅に裁断する工程と、を有するトイレットロールの製造方法において、
前記接着糊に対して、所定波長の光及び試薬の少なくとも一方に対して異なる色に呈色する識別薬を混合することとし、かつ、出所毎に呈色の色が異なる識別薬に変更する特徴とする出所情報識別機能を有する管芯無しトイレットロールの製造方法。
【請求項2】
管芯の無い管芯無しトイレットロールであって、トイレットロールの芯際を固めるための接着糊中に所定波長の光及び試薬の少なくとも一方に対して呈色する識別薬が混合されていることを特徴とする出所情報識別機能を有する管芯無しトイレットロール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−250020(P2012−250020A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−83715(P2012−83715)
【出願日】平成24年4月2日(2012.4.2)
【分割の表示】特願2011−122484(P2011−122484)の分割
【原出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)