説明

出血性ネコカリシウイルス、カリシウイルスワクチンおよびカリシウイルス感染または疾患を予防するための方法

【課題】出血性および通常の両方のFCV株により引き起こされる重篤な感染および疾患に対してネコを防御する広域ウイルスワクチンを提供する。
【解決手段】本発明は、新規の単離精製された出血性ネコカリシウイルスFCV−DD1に関する。本発明はさらに、新規FCV−DD1株を含む一価および多価のワクチンを含む。さらに本発明は、単独または他の病原体を加えたネコカリシウイルスにより引き起こされる感染に対してネコを防御するかまたは疾患を予防する方法に関し、この方法は、本明細書中に記載の免疫学的有効量の一価および多価のワクチンをネコに対して投与する工程を包含する。また本発明は、ネコカリシウイルスFCV−DD1またはネコカリシウイルスに対して惹起または産生されたFCV−DD1抗原抗体の存在を検出することにより、感受性宿主、無症候性キャリアなどにおいて出血性ネコカリシウイルスを診断または検出するための方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(米国出願に関連する相互参照)
この非仮出願は、米国特許法第119条第(e)項の下で、2004年、9月13日に出願された米国仮出願第60/609,480号の利益を主張する。この先行出願は、その全体が本明細書中に参考として援用される。
【0002】
(連邦政府によって援助された研究または開発に関する陳述)
適用なし
(「配列表」に関する参照)
適用なし
(発明の背景)
(発明の分野)
本発明は、毒性があり、出血生ネコカリシウイルスの新規の単離されて精製された菌株、その菌株から産生されるワクチンおよびネコをカリシウイルス感染または疾患から防御するためのワクチンの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
(関連技術の詳細)
本明細書中に引用される全ての特許および刊行物は、その全体が本明細書中に参考として援用される。
【0004】
ネコカリシウイルス(FCV)は、しばしば、多くのネコのいる環境(特に、動物病院および少ない程度で動物保護施設)において急性の発症を引き起こす。代表的に、FCV感染は、上気道に影響を与え、時折、関節痛および跛行を引き起こすことによるウイルス鼻気管炎(FVR)と似ている症状を示す。さらに、感染したネコは、舌の上および口の部分において潰瘍を発症する。鼻腔、硬口蓋および舌の小疱疹および糜爛は、蔓延するように見える。FCV疾患の他の症状としては、高熱、脱毛、脚または顔の周りにおける皮膚腫瘍形成および水腫(腫脹)が挙げられる。感染菌株の毒性に依存して、FCV感染は、致命的になり得る。感染の主要な方法は、感染の経口経路によるが、ネコはまた、感染したネコの唾液、顔または尿に見出される感染ウイルスの吸入から感染し得る。
【0005】
FCV感染は、飼いネコおよびいくらかの野生のネコ種の両方に影響を与え得る。FVRおよびFCVは、全てのネコ呼吸器感染のうちのほとんど90%を含み、これらの2つの疾患を予防するための効果的なワクチンの有効性が、最も重要である。FCVは、新しい菌株に変異し得る一本鎖のRNAウイルスである(非特許文献1)。65種以上のネコカリシウイルスが世界中に存在し、これにより、単独に構成されるワクチンを用いるワクチン接種による適切な防御は、ほとんど不完全で困難になっている。ウイルスが変異し得るために、FCVの一本鎖に基づく一価ウイルスは、他のFCV株に対して十分に防御し得ない(一般的に、非特許文献2;非特許文献3;非特許文献4;非特許文献5を参照のこと)。
【0006】
FCVに関する別の問題は、ウイルスが非常に感染性であり、感染したネコは、感染後、長期間ウイルスをまき散らし続け、回復したネコは、一生、感染性ウイルスのキャリアを保持し得る。無症候性のネコでさえ、他の健康なネコに対して致命的な疾患を伝播し得る。最近の急激な発生は、北カリフォルニアおよびニューイングランドにおいて、特に、動物保護施設におけるネコの集団に対して致命的であった2つの遺伝的に多様な菌株(それぞれ、FCV−AriおよびFCV−Divaと名付けられている)の非常に毒性がある、出血性カリシウイルスが報告されている(非特許文献6;非特許文献7)。
【0007】
過去に、一価ウイルスワクチンが、種々の抗原(例えば、ネコカリシウイルスF9菌株(特許文献1(J.L.Bittleら))、ネコChlamydia psittaci(特許文献2および特許文献3(H.J.Chuら))、ネコ白血病ウイルス(特許文献4(N.C.Pedersenら))など)を用いてネコの疾患を防御するために記載され、数種類が製造された。他のカリシウイルス菌株(例えば、FCV−M8およびFCV−255)およびネコ鼻気管炎ウイルスもまた、以前にワクチン用途のために単離され、記載されている(非特許文献8;非特許文献9;非特許文献10)。さらに、特許文献5(N.C.Pedersen)は、FCV−2280株を含むネコカリシウイルスワクチンを記載している。特許文献6(D.Colauら)は、FCV−2280株のゲノム由来のヌクレオチド配列およびネコカリシウイルス疾患を防御するためのカプシド遺伝子のヌクレオチド配列を用いるワクチンを開示している。特許文献7(G.P.Wiesehahnら)は、とりわけ、ネコカリシウイルスを含む不活性化ウイルスワクチンの調製を開示している。特許文献8(L.Simpsonら)は、抗原(例えば、カリシウイルス)と共に改変されたボツリヌス毒素を用いる経口ワクチンを記載している。
【0008】
より最近では、FCV−Kaosの株が、同定されて(非特許文献11)、続いて、FCV−Kaos株およびFCV−Ari株の両方が、単離された(特許文献9(2004年9月16日に公開されたHemorrhagic feline calicivirus))。単離された毒性があり、全身性のカリシウイルス(VS−FCV)株(FCV−Kaos、FCV−AriおよびFCV−Bellinghamが挙げられる)は、アミノ酸448位におけるリジン(K);アミノ酸452位におけるグルタミン酸(E);アミノ酸581位におけるリジン(K);およびアミノ酸581位におけるアスパラギン酸(D)からなる群より選択されるアミノ酸残基を含むカプシドタンパク質を含むと記載されている(特許文献10(2004年12月23日に公開されたVirulent systemic feline calicivirus))。
多価ワクチンは、ネコ白血病、ネコ汎白血球減少症ウイルス、ネコカリシウイルス、ネコ鼻気管炎ウイルス、ネコ後天性免疫不全症ウイルス、狂犬病、ネコ感染性腹膜炎、Borrelia burgdorferiなどを含む、1種以上の病原体と組み合わせた多くのウイルス抗原(例えば、Chlamydophila felis(以前はChlamydia psittaciとして公知))を含むように調製または記載されている(特許文献11(H.J.Chuら))。Rickard単離体ネコ白血病ウイルス、ネコ鼻気管炎ウイルス、ネコカリシウイルスおよびネコ汎白血球減少症ウイルスの別の混合物は、同様にワクチンとして開示されている(特許文献12(W.H.Kelseyら))。
残念ながら、以前に使用されたネコカリシウイルスの菌株を含む前のワクチンのどれも、出現する出血性ネコカリシウイルス株からネコを防御しない。最近の出血性ネコカリシウイルスの急激な発生において、ネコがカリシウイルスに対するワクチン接種を受けたという事実にもかかわらず、かなり多くが死んだ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第3,944,469号明細書
【特許文献2】米国特許第5,972,350号明細書
【特許文献3】米国特許第5,242,686号明細書
【特許文献4】米国特許第4,264,587号明細書
【特許文献5】米国特許第4,522,810号明細書
【特許文献6】米国特許第6,231,863号明細書
【特許文献7】米国特許第5,106,619号明細書
【特許文献8】米国特許第6,051,239号明細書
【特許文献9】米国特許出願第20040180064 A1号明細書
【特許文献10】米国特許出願第20040259225 A1号明細書
【特許文献11】米国特許第6,004,563号明細書
【特許文献12】米国特許第5,374,424号明細書
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】J.N.Burroughsら、「Physiochemical evidence fot the re−classification of the caliciviruses」、Journal Gen.Virol.、1974年、第22巻、p.281−286
【非特許文献2】N.C.Pedersenら、「Mechanisms for persistence of acute and chronic feline calicivirus infections in the face of vaccination」、Veterinary Microbiol.、1995年11月、第47巻(1−2)、p.141−156
【非特許文献3】A.Lauritzenら、「Serological analysis of feline calicivirus isolates from the United States and United Kingdom」、Veterinary Microbiol.、1997年5月、第56巻(1−2)、p.55−63
【非特許文献4】T.Hohdatsuら、「Neutralizing feature of commercially available feline calicivirus(FCV)vaccine immune sera against FCV field isolates」、Journal of Veterinary Medicine Sci.、1999年3月、第61巻(3)、p.299−301
【非特許文献5】A.D.Radfordら、「Comparison of serological and sequence−based methods for typing feline calcivirus isolates from vaccine failures」、2000年1月29日、第146巻(5)、p.117−123
【非特許文献6】N.C.Pedersenら、「An isolated epizootic of hemorrhagic−like fever in cats caused by a novel and highly virulent strain of feline calicivirus」、Veterinary Microbiol.、2000年5月、第73巻、p281−300
【非特許文献7】E.M.Schorr−Evansら、「An epizootic of highly virulent feline calicivirus disease in a hospital setting in New England」、Journal of Feline Medicine and Surgery、2003年、第5巻、p.217−226
【非特許文献8】E.V.Davisら、「Studies on the safety and efficacv of an intranasal feline rhinotracheitis−calicivirus vaccine」、VM−SAC、1976年、第71巻、p.1405−1410
【非特許文献9】D.E.Kahnら、「Induction of immunity to feline caliciviral disease」、Infect.Immun.、1975年、第11巻、p.1003−1009
【非特許文献10】D.E.Kahn、「Feline viruses:pathogenesis of picornavirus infection in the cat」、Am.J.Vet.Research、1971年、第32巻、p.521−531
【非特許文献11】K.F.Hurleyら、「An Outbreak of virulent systemic feline calicivirus disease」、J.Am.Vet.Med.Assoc.、2004年1月15日、第224巻(2)、p.241−249
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、非常に毒性がある出血性ネコカリシウイルス感染に対する、効果的で、安全なワクチンを生成するために、獣医学分野において確実な技術的に認識される必要性が存在する。別の技術的に認識される必要性は、出血性FCV株および通常のFCV株の両方によって引き起こされる重篤な感染および疾患に対してネコを防御する広範囲のウイルスワクチンを提供することである。本発明の新規のFCV株は、急性および慢性ウイルス疾患からネコを防御するために、毒性があり、出血性FCVの株に対する特異的免疫応答を唯一および有利に誘発することによって、これらの必要性を満たし得る。通常のカリシウイルスと組み合わせて、本発明の新規のFCV株は、優れたウイルス中和抗体価を達成し得、広範囲の免疫を可能にし得る。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(発明の要旨)
本発明は、非常に感染性があり、FCV−DD1と命名された新規の出血性FCV株に関し、これは、ワクチン株として有用である。本発明のさらなる実施形態は、出血性ネコカリシウイルスによって引き起こされる感染および疾患に対してネコを免疫するためにワクチンを用いる新規の方法に関する。ネコカリシウイルスFCV−DD1またはネコカリシウイルスFCV−DD1抗原に対して惹起または産生される抗体の存在を検出することによって、感受性宿主、無症候性キャリアなどにおいて出血性ネコカリシウイルスを診断または検出するための方法もまた、本発明に包含される。
本発明は例えば、以下の項目を提供する:
(項目1)
単離および精製された出血性ネコカリシウイルスFCV−DD1。
(項目2)
菌株が、ATCC特許受託番号PTA−6204またはその菌株由来のウイルスクローンである、項目1に記載のネコカリシウイルス。
(項目3)
免疫学的に有効な量の項目1に記載のネコカリシウイルスを含む、免疫原性組成物。
(項目4)
無毒性で、生理学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤および項目3に記載の免疫原性組成物を含む、ワクチン。
(項目5)
1種以上のさらなるネコカリシウイルスをさらに含む、項目4に記載のワクチン。
(項目6)
前記さらなるネコカリシウイルスが、FCV−255、FCV−2280、FCV−Diva、FCV−Kaos、FCV−Bellingham、FCV−F9、FCV−F4、FCV−M8およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、項目5に記載のワクチン。
(項目7)
前記さらなるネコカリシウイルスが、FCV−255、FCV−2280またはFCV−255とFCV−2280との組み合わせを含む、項目6に記載のワクチン。
(項目8)
前記さらなるネコカリシウイルスが、FCV−255を含む、項目7に記載のワクチン。
(項目9)
Chlamydophila felis、ネコ白血病ウイルス、ネコ汎白血球減少症ウイルス、ネコ鼻気管炎ウイルス、ネコ免疫不全ウイルス、狂犬病ウイルス、ネコ感染性腹膜炎ウイルス、Bartonellaおよびそれらの組み合わせからなる群より選択される抗原をさらに含む、項目7に記載のワクチン。
(項目10)
前記抗原が、Chlamydophila felis、ネコ白血病ウイルス、ネコ汎白血球減少症ウイルスおよびネコ鼻気管炎ウイルスの組み合わせを含む、項目9に記載のワクチン。
(項目11)
前記抗原が、Chlamydophila felis、ネコ汎白血球減少症ウイルスおよびネコ鼻気管炎ウイルスの組み合わせを含む、項目9に記載のワクチン。
(項目12)
前記抗原が、ネコ白血病ウイルスおよびネコ鼻気管炎ウイルスの組み合わせを含む、項目9に記載のワクチン。
(項目13)
アジュバントをさらに含む、項目9に記載のワクチン。
(項目14)
前記アジュバントが、リン酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、界面活性剤、ポリアニオン、ポリカチオン、洗浄剤、ペプチド、代謝可能動物油または代謝可能植物油、鉱油、鉱油エマルジョン、免疫調節剤、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、スチレンと、アクリル酸とメタクリル酸との混合物とのコポリマー、コリネバクテリウム由来アジュバント、プロピオン酸菌属由来アジュバント、Mycobacterium bovis(Bacille Calmette−Guerin)、インターロイキン、インターフェロン、リポソーム、イスコム(iscom)アジュバント、ミコバクテリア細胞壁抽出物、合成グリコペプチド、アブリジン、脂質A、硫酸デキストラン、DEAE−デキストラン、カルボキシポリメチレン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、アクリルコポリマーエマルジョン、動物ポックスウイルスタンパク質、サブウイルス粒子アジュバント、コレラ毒素、臭化ジメチルジオクタデシルアンモニウムおよびそれらの組み合わせからなる群より選択される、項目13に記載のワクチン。
(項目15)
前記アジュバントが、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、スチレンと、アクリル酸とメタクリル酸との混合物とのコポリマー、鉱油エマルジョンまたはそれらの組み合わせである、項目14に記載のワクチン。
(項目16)
前記アジュバントが、サポニン、スクアラン、スクアレンであり、前記洗浄剤、リン酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、またはそれらの組み合わせである、項目14に記載のワクチン。
(項目17)
前記無毒性で、生理学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤が、生理食塩水またはイーグル最小必須培地を含む、項目9に記載のワクチン。
(項目18)
防腐剤をさらに含む、項目9に記載のワクチン。
(項目19)
前記防腐剤が、チメロサール、ネオマイシン、ポリミキシンB、アンホテリシンB、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、項目18に記載のワクチン。
(項目20)
ネコカリシウイルスによって引き起こされる感染に対してネコを防御するか、または疾患を予防する方法であって、該方法は、免疫学的に有効な量の項目4に記載のワクチンを該ネコに投与する工程を包含する、方法。
(項目21)
ネコカリシウイルスによって引き起こされる感染に対してネコを防御するか、または疾患を予防する方法であって、該方法は、免疫学的に有効な量の項目5に記載のワクチンを該ネコに投与する工程を包含する、方法。
(項目22)
ネコカリシウイルスによって引き起こされる感染に対してネコを防御するか、または疾患を予防する方法であって、該方法は、免疫学的に有効な量の項目7に記載のワクチンを該ネコに投与する工程を包含する、方法。
(項目23)
ネコカリシウイルス、Chlamydophila felis、ネコ白血病ウイルス、ネコ汎白血球減少症ウイルス、ネコ鼻気管炎ウイルス、ネコ免疫不全ウイルス、狂犬病ウイルス、ネコ感染性腹膜炎ウイルス、Bartonellaおよびそれらの組み合わせによって引き起こされる感染に対してネコを防御するか、または疾患を予防する方法であって、該方法は、免疫学的に有効な量の項目9に記載のワクチンを該ネコに投与する工程を包含する、方法。
(項目24)
ネコカリシウイルス、ネコ白血病ウイルス、ネコ汎白血球減少症ウイルス、ネコ鼻気管炎ウイルスおよびChlamydophila felisによって引き起こされる感染に対してネコを防御するか、または疾患を予防する方法であって、該方法は、免疫学的に有効な量の項目10に記載のワクチンを該ネコに投与する工程を包含する、方法。
(項目25)
ネコカリシウイルス、ネコ汎白血球減少症ウイルス、ネコ鼻気管炎ウイルスおよびChlamydophila felisによって引き起こされる感染に対してネコを防御するか、または疾患を予防する方法であって、該方法は、免疫学的に有効な量の項目11に記載のワクチンを該ネコに投与する工程を包含する、方法
(項目26)
ネコカリシウイルス、ネコ汎白血球減少症ウイルスおよびネコ鼻気管炎ウイルスによって引き起こされる感染に対してネコを防御するか、または疾患を予防する方法であって、該方法は、免疫学的に有効な量の項目12に記載のワクチンを該ネコに投与する工程を包含する、方法
(項目27)
項目20、21、22、23、24、25および26のいずれか1項に記載の方法であって、前記ワクチンが、前記ネコに対して、非経口、経口、鼻腔内、口腔鼻または経皮的に投与される、方法。
(項目28)
前記ワクチンが、前記ネコに対して、筋肉内、皮下または口腔鼻に投与される、項目27に記載の方法。
(項目29)
ネコカリシウイルスFCV−DD1に対して惹起または産生される、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体。
(項目30)
ネコカリシウイルスFCV−DD1に対する抗体の形成を刺激する方法であって、該方法は、免疫学的に有効な量のFCV−DD1またはその抗原性サブユニットをネコに投与する工程を包含する、方法。
(項目31)
感受性宿主において出血性ネコカリシウイルス感染を検出または診断する方法であって、該方法は、該宿主由来の生物学的試料を分析する工程、および生物学的試料においてネコカリシウイルスFCV−DD1あるいはネコカリシウイルスFCV−DD1に対して惹起または産生される抗体の存在を検出する工程を包含する、方法。
(項目32)
生物学的サンプルにおいてネコカリシウイルスFCV−DD1に対する抗体を検出する方法であって、該方法は、該生物学的サンプルと、ネコカリシウイルスFCV−DD1を含む抗原とを接触させる工程、および抗原−抗体免疫複合体の形成を検出または観測する工程を包含する、方法。
(項目33)
前記抗原が、完全なウイルスFCV−DD1である、項目32に記載の方法。
(項目34)
前記抗原が、FCV−DD1の抗原性サブユニットである、項目32に記載の方法。
(項目35)
前記抗原−抗体免疫複合体が、酵素結合イムノソルベント検定法(ELISA)によって検出される、項目32に記載の方法。
(項目36)
前記抗原−抗体免疫複合体が、ウェスタンブロットによって検出される、項目32に記載の方法。
(項目37)
前記抗原−抗体免疫複合体が、フローサイトメトリーによって検出される、項目32に記載の方法。
(項目38)
前記抗原−抗体免疫複合体が、IFAによって検出される、項目32に記載の方法。
(項目39)
FCV−DD1抗原に対する抗体を検出するための酵素結合イムノソルベント検定法(ELISA)であって、該酵素結合イムノソルベント検定法(ELISA)は、FCV−DD1および該抗体が該抗原に結合する場合を示す、検出可能な基質でコーティングされた固体支持体を含む、酵素結合イムノソルベント検定法(ELISA)。
(項目40)
出血性ネコカリシウイルス抗原のキャリアを検出する方法であって、該方法は、以下の工程:
(a)試験サンプルを得る工程;
(b)該試験サンプルとFCV−DD1に対する抗体とをインキュベートする工程;
(c)抗体−抗原複合体を形成させる工程;および
(d)該抗体−抗原複合体の存在を検出する工程、
を包含する、方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(発明の詳細な説明)
本発明に従って、新規で、非常に感染性のあるネコカリシウイルス(FCV)株およびカリシウイルスによって引き起こされるウイルス感染からネコを防御するための獣医学ワクチンが提供される。より具体的には、本発明は、単離されて精製された出血性ネコカリシウイルス「FCV−DD1」を記載し、FCV−DD1単離体由来のウイルスクローンを含む(FCV−DD1単離体が本明細書中に記載される場合はいつでも、ウイルスクローンが、各場合において親単離体と置き換えられ得ることが、理解される)。FCV−DD1の免疫原性の量を含むワクチンおよびネコカリシウイルスによって引き起こされる感染に対してネコを防御する方法または疾患を予防するもまた、開示され、この方法は、防御を必要とするネコに対して、免疫学的に有効な量のワクチンを投与する工程を包含する。ワクチンは、必要に応じて、1種以上のさらなるFCV単離体(例えば、FCV−255、FCV−2280、FCV−Diva、FCV−Kaos、FCV−Bellingham、FCV−F9、FCV−F4、FCV−M8など)を含み得る。望ましくは、ワクチンは、FCV−255、FCV−2280またはその両方と共にFCV−DD1、より好ましくは、FCV−DD1とFCV−255との混合物を含む。
【0014】
また、ワクチンは必要に応じて、他の抗原または病原体(例えば、Chlamydophila felis(C.felis)、ネコ白血病ウイルス(FeLV)、ネコ汎白血球減少症ウイルス(FPV)、ネコ鼻気管炎ウイルス(FVR)、ネコ免疫不全ウイルス、狂犬病ウイルス、ネコ感染性腹膜炎ウイルス、Bartonella細菌(例えば、代表的には、ネコひっ掻き病(cat scratch disease))、それらの組み合わせなど)を含み得る。好ましくは、抗原の混合物は、C.felis、ネコ白血病ウイルス、ネコ汎白血球減少症ウイルスおよびネコ鼻気管炎ウイルスと組み合わせて、またはC.felis、ネコ汎白血球減少症ウイルスおよびネコ鼻気管炎ウイルスと組み合わせてFCV−DD1を含む。特に好ましい多価ワクチンは、ネコ白血病ウイルスおよび/またはC.felis、または他のFCV株の任意の付加とともにFCV−DD1、非出血性ネコカリシウイルス(例えば、FCV−255)、ネコ鼻気管炎ウイルスおよびネコ汎白血球減少症ウイルスを含む。
【0015】
新規の出血性ネコカリシウイルスFCV−DD1株の発見に至るまで、FCV−Ariの組織培養サンプルを、School of Veterinary Medicine,UC Davis,CaliforniaのDr.Neils Pedersenから得た(N.C.Pedersenら、「An isolated epizootic of hemorrhagic−like fever in cats caused by a novel and highly virulent strain of feline calicivirus」、Veterinary Microbiol.73:281−300(2000年5月))。FCV−Ariのサンプルを凍結し、解凍して使用し、組織培養ローラーボトルのコンフルエントなCrandell Feline Kidney Cell(CRFK)を感染させた(R.A.Crandellら、「Development,characterization,and viral susceptibility of a feline(Felis catus)renal cell line(CREK)」,In Vitro 9:176−185(1973))。後で、ローラーボトルを凍結し、解凍し、培養液を、作業ストックとして等分した。
【0016】
最初のFCV−Ari「作業ストック」を使用して、Dr.Neils Pedersenから得た材料由来の「作業ストック」が、出血性カリシウイルスを含むことを確認するためにネコに接種した。FCV−Ari「作業ストック」を接種したネコは、FCV−Ari「作業ストック」が、出血性カリシウイルスを含むことを確認する、極度の臨床徴候(例えば、高熱、水腫、脱水および死)を誘発した。
【0017】
次いで、FCV−Ari「作業ストック」を、1mLあたり10TCID50に希釈し、凍結し、解凍し、0.2μmで濾過した。濾過したFCV−Ariを、ほとんどの毒性カリシウイルス株の後の精製および単離のために使用した。濾過したFCV−Ariを、澄まし、連続的に希釈して使用し、24−ウェル組織培養プレートのコンフルエントをCRFK細胞で感染させた。CPFK細胞に対する細胞変性効果(CPE)を含む最も高い希釈のウェルを、収集し、凍結し、すぐに解凍し、連続的に希釈して使用し、別の24−ウェル組織培養プレートのコンフルエントをCRFK細胞で感染させた。この手順を、合計で3ラウンドの精製および単離のために2回繰り返した。
【0018】
このように精製したFCV−Ariの一部を、ホルマリンで不活性化して使用し、死滅させた多価ワクチンを混合した。この不活性化FCV−Ariワクチンをネコに注射して、ワクチン接種に対する血清学的応答を測定した。予想外に、ワクチンは、たとえウイルスに対する抗体が、ELISAによって確認されるように誘発されたとしても、ウイルス中和抗体価を誘発しなかった。さらに、精製したFCV−Ari(生きている)を使用して、2群のネコに接種した。これらの2群のネコは、出血性カリシウイルス感染の臨床徴候(例えば、高熱、水腫、膿皮症、脱毛など)の特徴を示さなかった。死滅させたワクチンは、中和抗体を誘発しなかったため、FCV−Ariの「作業ストック」から精製した生きている菌株は、制御されたチャレンジ研究において出血性カリシウイルス感染を引き起こさず、FCV−Ariのサンプルの最初の精製から単離したウイルスは、出血性単離体でないことを確認し;さらにこの菌株の作業およびワクチン開発を中止した。次いで、2つまたはおそらくそれ以上のFCV株を含む元のFCV−Ariのウイルスサンプルの少なくとも1つは、最初の精製から得た単離した菌株によって示されるように毒性がないことが推定された。
【0019】
出血性ネコカリシウイルス感染を引き起こす毒性のある菌株を単離する試みにおいて、FCV−Ariの元の組織培養サンプルを、3ラウンドの精製および単離のために使用した。この課題を達成するために、FCV−Ariサンプルを、元のFCV−Ari(死滅させた)ワクチン接種から得た抗血清とともにインキュベートした。ウイルスを、連続的に希釈して使用し、24−ウェル組織培養プレートのコンフルエントをCRFK細胞で感染させ、CRFK細胞に対する細胞変性効果(CPE)を示した最も高い希釈のウェルを、収集した。収集したウイルスクローンを、標準的な血清ウイルス中和アッセイによって評価した。各ウイルスクローンを、最初の精製して死滅させたワクチンから得た抗血清とともに、または生きている「作業ストック」でのチャレンジから得た抗血清とともにインキュベートした。この血清中和アッセイからの結果は、驚くべきことに、元のサンプルにおいて1種以上のカリシウイルスの株が存在することを示し、さらに、最初のラウンドの精製から単離した株は、出血性株ではないことを確認した。選択および処分されなかったウイルスクローンは、最初の精製の望ましくない産物に特異的な抗血清によって中和されたものであった。次のラウンドの精製のために選択したウイルスクローンは、最初の精製の望ましくな産物に対して特異的な抗血清によってまだ中和されていないDr.Pedersenから得た元のウイルスに対する抗血清によって中和されたものであった。CPEを引き起こす最も高い希釈を収集することによるウイルスクローン選択を、合計で3ラウンド繰り返した。得られたウイルス単離体(FCV−DD1と命名した)をネコに接種すると、ネコは、代表的な出血性カリシウイルスの臨床徴候を示した。このプロセスによって、精製および単離したFCV−DD1株を、真の出血性ネコカリシウイルス株(以前に獣医学分野において知られていない)であると決定した。
【0020】
従って、新規の精製および単離されたFCV−DD1株、FCV−DD1のワクチンおよびカリシウイルスを使用する方法は、本発明の範囲内に含まれる。接種されたネコは、カリシウイルスによって引き起こされる重篤なウイルス感染および疾患から防御される。この新規の方法は、本発明に従って、免疫学的に有効な量のワクチン(例えば、死滅されたFCV−DD1、改変された生きているFCV−DD1または弱毒化されたFCV−DD1またはそのクローンを含むワクチン)をネコに投与することによって、ウイルス感染に対して防御する必要のあるネコを防御する。ワクチンはさらに、多数のネコ疾患に対してネコの免疫学的防御を促進するために、さらなる抗原(非出血性カリシウイルス株(例えば、FCV−255、FCV−2280など)、他の出血性カリシウイルス(例えば、FCV−Diva、FCV−Kaos、FCV−F9など)および他の抗原(例えば、ネコウイルス鼻気管炎、ネコ汎白血球減少症ウイルス(ネコジステンパー)、Chlamydophila felis(C.felis)など)が挙げれるが、これらに限定されない)を含み得る。さらなる抗原は、ウイルス感染に対して広範囲の防御を提供するために、生成物と組み合わせて、または別々にネコに同時に与えられ得る。最も好ましくは、混合物は、FCV−DD1、FCV−255、C.felis、ネコ白血病ウイルス、ネコ汎白血球減少症ウイルスおよびネコ鼻気管炎ウイルス、あるいは代替としてFCV−DD1、FCV−255、ネコ汎白血球減少症ウイルスおよびネコ鼻気管炎ウイルス、死滅されたウイルス、ならびに必要に応じて、ネコ白血病ウイルスおよび/もしくはC.felisまたは他のFCV株を含む。補完的な様式において、感染または疾患に対するワクチンを含むFCV−DD1によって確認される防御の範囲を広げるために、2種以上のFCV株を含む多価ワクチンを有するこが有用であり、ここで、さらなるFCV株としては、FCV−255、FCV−280、FCV−Diva、FCV−Kaos、FCV−Bellingham、FCV−9、FCV−F4、FCV−M8などが挙げられるが、これらに限定されず;そして、特に、少なくとも1種以上の非出血性株(例えば、FCV−255、FCV−2280など)を含むことが有益である。特定のFCV抗原(例えば、FCV−F9)を使用する場合、ウイルスの毒性に適応させるために、改変された生きているワクチンまたは弱毒化されたワクチンを作製することが所望される。ワクチンにおける好ましい抗原の組み合わせは、FVV−DD1を含むさらなるネコカリシウイルスが、少なくともネコ汎白血球減少症ウイルスおよびネコ鼻気管炎ウイルスとともに、FCV−255、FCV−2280またはFCV−255とFCV−2280との組み合わせを含むものである。
【0021】
ワクチンは、例えば、無毒性の生理学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤および他の賦形剤、アジュバントあるいはネコ種に許容される従来の同時処方物と組み合わせて、感染性ウイルス(例えば、不活性化(死滅された)ウイルス、弱毒化されたウイルス、改変された生きているウイルスなど)含む。単離および精製されたFCV−DD1株またはそのウイルスクローンは、多価ウイルスとして使用され得、ここで、防御は、交差中和の間の他の血清型によって感染に対する防御を提供するその能力に依存する。同じ血清型を有する反復接種は、代表的に、後の重篤な感染に対する防御を与える。
【0022】
本発明の新規のワクチンは、任意の特定の型の調製方法に限定されない。ウイルスワクチンとしては、不活性化(死滅された)ワクチン、改変された生きているワクチン、弱毒化されたワクチン、サブユニットワクチン、遺伝子操作されたワクチンなどが挙げられるが、これらに限定されない。これらのワクチンは、当該分野において公知の標準的な方法によって調製される。毒性のあるFCV感染および疾患に対してネコに接種するための新規のFCV−DD1株を送達するための最も好ましいワクチンは、不活性化(死滅された)ウイルスワクチンまたは改変された生きているウイルスワクチンである。
【0023】
不活性化ウイルスワクチンを調製するために、例えば、ウイルス増殖が、当該分野に公知または本明細書中に記載される方法によって、行われる。ウイルス不活性化は、当業者に一般的に公知のプロトコルによって達成される。不活性化ウイルスワクチンは、ウイルスを不活性化因子(例えば、ホルマリンまたは疎水性溶媒、酸、βプロピオラクトン、バイナリー(binary)エチレンジアミンなど)で処理することによって、調製され得る。ホルマリンは、最も好ましい不活性化因子である。不活性化は、当該分野において公知様式において行われる。例えば、化学的不活性化を達成するために、適切なウイルスサンプルまたはウイルスを含む血清サンプルが、ウイルスを不活性化するために、不活性化因子に依存して、十分に高いまたは低い温度あるいはpHにおいて、十分な量または濃度の不活性化因子で、十分な期間、処理される。感染に対して感受性の細胞に感染し得ない場合、ウイルスが不活性化であるとみなされる。
【0024】
適切なワクチンの調製は、代表的に、改変された生きているワクチンまたは不活性化ワクチンの調製と異なる。サブユニットワクチンの調製の前に、防御またはワクチンの抗原性成分が、確認されなければならない。このような防御または抗原性組成物としては、例えば、ウイルス株の免疫原性タンパク質またはカプシドタンパク質が挙げられる。免疫原性組成物は、当該分野において公知の方法によって同定される。いったん、同定されると、防御またはウイルスの抗原性タンパク質(すなわち、サブユニット)が、続いて、標準的な手順によって精製され、そして/または標準的な組換えDNA技術によってクローニングされる(例えば、Maniatisら、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」,Cold Spring HarborLaboratory,Cold Spring Harbor,MA.1989を参照のこと)。サブユニットワクチン(例えば、高度に精製されたウイルスのサブユニット)が、完全なウイルスより毒性が少ないために、サブユニットワクチンは、生きているウイルスに基づいた他のワクチンより利点を提供する。
【0025】
毒性のあるウイルスクローンで、組織培養を適用された、生きている病原性FCV由来の弱毒化されたワクチンを調製するために、最初に、当該分野において公知の方法によって弱毒化され、代表的に、細胞培養によって連続的に継代される。病原性クローンの弱毒化はまた、ウイルスゲノムの遺伝子欠失をもたらす、点変異を導入することによってなされ得る。
【0026】
本発明のワクチンの免疫学的に有効または免疫原性の量は、ウイルス感染に対する防御を必要とするネコ(通常、8週齢またはそれ以上)に投与される。FCV感染および疾患に対してネコに接種する免疫学的に有効または免疫原性の量は、獣医学分野における当業者による慣例の試験によって、容易に決定され得るか、または容易に滴定され得る。有効な量は、ワクチンに対して十分な免疫学的応答があり、これにより、毒性のあるネコウイルスに曝露されたネコの防御が達成される。FCVについての免疫学的応答は、一般に、ウイルス中和抗体価を誘導するワクチンの能力によって示される。好ましくは、ネコは、ある程度まで防御され、ここで、ウイルス疾患状態の有害な生理学的徴候または効果は、顕著に減少、改善または完全に予防される。
【0027】
ワクチンは、代表的に、単回投与または長期にわたる反復投与において投与される。例えば、投薬範囲は、ワクチンの免疫原性成分の濃度に依存して、約0.25mL〜約3.5mL、通常、約0.5mL〜約2.5mL、好ましくは、約0.8mL〜約1.2mL、および最も好ましくは、約1.0mLであるが、副作用またはウイルス感染の生理学的症状を生じるのに十分なウイルスベースの抗原の量を含まないべきである。ネコの体重、抗原の濃度および他の代表的な因子に基づいて、最低限の効果的な投薬を見出すために、活性抗原性因子の適切な投薬を決定または滴定するための方法は、当該分野において周知である。最適な免疫化のために、健康なネコは、を用いて、無菌技術を用いて約1mlの用量でワクチン接種され、次いで、第2の1mlの用量は、約2週間〜4週間後に与えられる。ワクチンの単回の追加注射を用いる年1回のワクチン再接種は、感染に対する十分な免疫を維持するために有用である。
【0028】
ワクチンは、便宜的に、鼻腔内、経皮的(すなわち、全身性吸収のために皮膚表面上または皮膚表面に適用される)、非経口的、経口的などで、または組み合わせて(例えば、用量の一部が経口的に与えられ、一部が鼻孔中に与えられる口腔鼻)投与され得る。投与の非経口的経路としては、筋肉内、皮下、皮内(すなわち、注射またはそうでなければ皮膚の下に入れられる)、静脈内などが挙げられるが、これらに限定されない。筋肉内、皮下および口腔鼻の投与経路が、最も好ましい。
【0029】
液体として投与される場合、本発明のワクチンは、溶剤、シロップ、エリキシル剤、チンキ剤などの従来の形態で調製され得る。このような処方物は、当該分野において公知であり、代表的に、ネコに対する投与のための適切なキャリアまたは溶媒系における抗原および他の添加剤の溶解または分散によって調製される。適切な無毒性の生理学的に受容可能なキャリアまたは溶媒としては、水、生理食塩水、エチレングリコール、グリセロールなどが挙げられるが、これらに限定されない。ワクチンはまた、凍結乾燥(lyophilized)され得るか、そうでなければ、凍結乾燥(freeze−dried)され、次いで、使用前に短時間で適切な希釈剤を用いて、無菌的に再構成されるか、または再水和される。適切な希釈剤としては、生理食塩水、イーグル最小必須培地などが挙げられるが、これらに限定されない。代表的な添加剤または同時処方物は、例えば、認定された色素、矯味矯臭剤、甘味料および1種以上の抗菌性防腐剤(例えば、チメロサール(エチルメルクリチオサリシレートナトリウム(sodium ethylmercurithiosalicylate))、ネオマイシン、ポリミキシンB、アンホテリシンBなど)である。このような溶液は、例えば、部分的に加水分解されたゼラチン、ソルビトールまたは細胞培養培地の添加によって、安定化され得、そして、当該分野において公知の試薬(例えば、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素カリウム、リン酸ニ水素カリウム、それらの混合物など)を用いる従来の方法によって、緩衝化され得る。
液体処方物はまた、他の標準的な同時処方物と組み合わせた因子を懸濁または乳化する含む懸濁液およびエマルジョンを含み得る。これらのタイプの液体処方物は、従来の方法によって調製され得る。懸濁液は、例えば、コロイドミルを用いて調製され得る。エマルジョンは、例えば、ホモジナイザーを用いて調製され得る。
【0030】
体液系への注入のために設計される非経口的処方物は、ネコの体液のレベルに相当する適切な等張性およびpH緩衝化を必要とする。等張性は、塩化ナトリウムおよび必要な場合、他の塩で調整されて適切にされ得る。ワクチン接種時に、ウイルスは、生理学的に受容可能なキャリア(例えば、脱イオン水、リン酸緩衝化生理食塩水など)で解凍(凍結されている場合)または再構成(凍結乾燥されている場合)される。適切な溶媒(例えば、プロピレングリコール)は、処方物における成分の溶解度および液体調製物の安定性を増加させるために使用され得る。
【0031】
本発明のワクチンに使用され得るさらなる処方物としては、デキストロース、従来の酸化防止剤および従来のキレート剤(例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA))が挙げられるが、これらに限定されない。必要に応じて、ワクチン処方物を補い得る他の薬学的に受容可能なアジュバントとしては、以下が挙げられる:界面活性剤、ポリアミン、ポリカチオン、ペプチド、鉱油エマルジョン、免疫調節剤、種々の組み合わせなどが挙げられるが、これらに限定されない。適切なアジュバントのさらなる非限定的なとしては、スクアランまたはスクアレン(または他の動物源の油);ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー(例えば、Pluronic(登録商標)(例えば、BASF Aktiengesellschafy,Ludwigshafen,Germanyから市販されているL121));サポニン;洗浄剤(例えば、Tween(登録商標)−80(Sigma Chemical Co.,St.Louis,MOから市販されているポリソルベート80));Quil A(Iscotec AB,SwedenおよびSuperfos Biosector a/s,Vedbaek,Denmarkから入手可能なQuillaja saponariaの精製された形態の商品名);鉱油(例えば、Marcol(登録商標)(ExxonMobil,Fairfax,VAから市販されている、液体飽和炭化水素の精製された混合物));植物油(例えば、ラッカセイ油);コリネバクテイルム由来アジュバント(例えば、Corynebacterium parvum);プロピオニバクテリウム由来アジュバント(例えば、Propionibacterium acne);Mycobacterium bovis(Bacille Calnette−GuerinまたはBCG);インターロイキン(例えば、インターロイキン−2およびインターロイキン12);インターフェロン(例えば、γインターフェロン);組み合わせ(例えば、サポニン−アルブミン水酸化物またはQuli A−アルブミン水酸化物);リポソーム;イスコム(iscom)アジュバント;ミコバクテリア細胞壁抽出物;合成グリコペプチド(例えば、ムラミルジペプチドまたは他の誘導体);N,N−ジオクタデシル−N’,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)−ピロパンジアミン(アビジリン);脂質A;硫酸デキストラン;DEAE−デキストラン;カルボキシポリメチレン(例えば、Carbopol(登録商標)(B.F.Goodrich Company,Cleveland,Ohioから市販されているポリアクリルポリマー));無水マレイン酸エチレンまたはエチレン/無水マレイン酸コポリマー(Monsanto Co.,St.Louis,MOから市販されている、約75,000〜100,000の推定平均分子量を有する直鎖状のエチレン/無水マレイン酸コポリマーである、EMA(登録商標));アクリルコポリマーエマルジョン(例えば、NeoCryl(登録商標)A640のようなスチレンと、アクリル酸とメタクリル酸との混合物とのコポリマー(例えば、米国特許第5,047,238号(Polyvinyl Chemicals,Inc.,Wilmington,MAから市販されているスチレンと混合されたアクリル酸とメタクリル酸との非結合水溶性アクリル酸コポリマー)));動物ポックスウイルスタンパク質;サブウイルス粒子アジュバント(例えば、オルビウイルス);コレラ毒素;臭化ジメチルジオクタデシルアンモニウム(Kodak,Rochester,NYから市販されている、DDA);またはそれらの混合物。好ましいアジュバントは、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、スチレンと、アクリル酸とメタクリル酸との混合物とのコポリマー、鉱油エマルジョンまたはそれらの組み合わせを含む。
【0032】
FCV−DD1抗原を調製して、死滅させたFCV−DD1ワクチンを作製する方法の例を示すために、ウイルスを使用して、コンフルエントなCRFK細胞を、組織培養ローラーボトルにおいて0.01のMOI(代表的には、約0.001〜約1.0の範囲)にて感染させた。90%〜100%のCPEを観測した場合、ウイルス液を収集した。収集した液体を、4日間、36℃で0.04%ホルマリンを用いて不活性化した。残りのホルマリンを、亜硫酸水素ナトリウムの添加によって中和した。次いで、約0.5%w/v〜約10%w/vのFCV−DD1を含む死滅させたFCV−DD1ワクチンを、ホルマリンで不活性化されたFCV−DD1単独;死滅させたFeLV(約5.0%w/v〜約50%w/vの量において)、FPV(約0.5%w/v〜約10%w/vの量において)、FCV−255(約0.5%w/v〜約10%w/vの量において)、FVR(約1.0%w/v〜約20%w/vの量において)およびC.felis(約0.5%w/v〜約10%w/vの量において)と組み合わせたFCV−DD1;ならびにFPV(約0.5%w/v〜約10%w/vの量において)、FCV−255(約0.5%w/v〜約10%w/vの量において)およびFVR(約1.0%w/v〜約20%w/vの量において)と組み合わせたFCV−DD1を含むように処方した。ワクチンは、適切に調整されて;そしてイーグル最小必須培地は、混合希釈剤として添加された。ワクチンにおける各抗原の量は、抗原特異的ELISA力価試験を用いて決定された。ワクチンは、標準的なワクチン接種チャレンジ試験において出血性FCVに対する防御免疫を誘発することが見出された。FCV−DD1由来の他のワクチン画分の干渉がないことが、チャレンジ試験または血清学的試験のいずれかによって確認された。FCV−DD1、FVP、FCV−255、FVRおよびC.felisを含む別のワクチン処方物もまた、調製された。
【0033】
本発明の別の実施形態は、ネコカリシウイルスによって引き起こされる感染に対してネコを防御するか、または疾患を予防する新規の方法を包含し、この方法は、ネコに対して、単離および精製された出血性ネコカリシウイルスFCV−DD1を含む本明細書中に記載される免疫学的に有効な量のワクチンを投与する工程を包含する。さらなる方法は、FCV−DD1とともに1種以上の抗原(例えば、ネコ白血病ウイルス、ネコ汎白血球減少症ウイルス、ネコ鼻気管炎ウイルス、ネコ免疫不全ウイルス、狂犬病ウイルス、ネコ感染性腹膜炎ウイルス、Bartonellaなど)、より好ましくは、ネコ白血病ウイルスおよび/またはC.felis、あるいは他の出血性FCV株の最適な付加とともに、1種以上の非出血性ネコカリシウイルス(例えば、FCV−255)、ネコ鼻気管炎ウイルスおよびネコ汎白血球減少症ウイルスを含む抗原の組み合わせを用いて、他の病原性因子によって引き起こされる感染に対してネコを防御するか、または疾患を予防し、この方法は、ネコに対して、本明細書中の免疫学的に有効な量の多価ワクチンを投与する工程を包含する。
【0034】
本発明のさらなる実施形態は、FCV−DD1抗原に対して惹起または産生する抗体に関する。抗体は、当業者に周知であるインビトロまたはインビボでの方法によるいずれかで惹起または産生し得る。例えば、FCV−DD1に対する抗体の形成を刺激するための代表的なインビボでの方法は、ネコに対して、検出可能なウイルス中和抗体価を誘発するのに十分である、免疫学的に有効な量のFCV−DD1またはその抗原性サブユニットを直接的に投与する工程を包含する。FCV−DD1抗原に密接に関連する出血性カリシウイルス株の異なるエピトープを認識するために有用なFCV−DD1抗原に特異的なモノクローナル抗体およびポリクローナル抗体の両方は、本発明の実施に使用され得る。本発明のさらなる方法は、抗原−抗体相互作用ならびにFCV−DD1抗原および抗FCV−DD1抗体の能力に基づき、検出可能な免疫複合体を形成する。このような方法は、感受性宿主において出血性ネコカリシウイルスを検出または診断する方法を包含し、この方法は、宿主由来の生物学的試料を分析する工程および生物学的試料においてFCV−DD1またはFCV−DD1に対して惹起または産生された抗体の存在を検出する工程を包含し、生物学的サンプルにおいて抗FCV−DD1抗体を検出する方法は、生物学的サンプルとFCV−DD1を含む抗原とを接触させる工程およびの抗原−抗体免疫複合体の形成を検出または観測する工程を包含する。これらの方法において使用される抗原は、例えば、完全なウイルスFCV−DD1、FCV−DD1の抗原性サブユニット(例えば、免疫原性カプシドタンパク質など)である。
【0035】
出血性ネコカリシウイルスのキャリアを検出するための本発明のさらなる方法は、ウイルスが非常に感染性であり毒性があるために、保証される。ウイルスをまきちらす病気のネコから健康なネコへ感染が容易に広まり得る病院の環境において、感染性FCVは、無症候性のネコから他のネコまたは世話人(caretaker)へ運搬または感染され得る。従って、出血性ネコカリシウイルスのキャリアを検出する方法は、以下の工程:(a)無症候性のネコ(尿、血清、唾液、糞など)または世話人もしくはペットの飼い主(衣服、手、家具などからのネコの毛)、ネコのケージなどから試験サンプルを得る工程;(b)FCV−DD1に対して特異的な抗体とともに試験サンプルをインキュベートする工程;(c)抗体−抗原複合体の形成を可能にする工程;および(d)抗体−抗原複合体の存在を検出する工程を含むことが示される。本発明はさらに、当業者に明白である特異的な抗原−抗体相互作用を使用させる他の類似の方法を企図する。
【0036】
抗原−抗体免疫複合体は、任意の標準的な免疫学的検定(酵素結合イムノソルベント検定法(ELISA)、ウェスタンブロット、フローサイトメトリーなどが挙げられるが、これらに限定されない)によって検出され得る。周知のフローサイトメトリー技術は、例えば、デバイス(例えば、粒子上の蛍光色素の量を検出および測定するBecton−Dickinson FACScan Flow Cytometer)を使用し得る。サンプル細胞または試料は、蛍光色素で標識された抗体で標識され、過剰な非結合の抗体は、洗浄され、次いで、サンプルは、フローサイトメトリーで分析される。蛍光およびレーザー−スキャッター指標の程度が、血球計算器を通過する同じサンプル細胞について観測され、記録される。この様式において、蛍光と光散乱特徴との間の関係を示すカラーヒストグラムの形態で示されたデータによって、サンプル中の結合したFCV−DD1の存在が確認される。
【0037】
血清または他の試験サンプル中のウイルス特異的抗体の検出のための他の標準的なインビトロでの免疫学的アッセイは、直接的または間接的な抗体検出および力価決定の免疫蛍光法によって使用され得る。間接的な免疫蛍光アッセイは、サンプル試料中のFCVをスクリーニングおよび同定するために使用され得る。例えば、試験サンプルは、FCV−DD1抗原、FCV−DD1に独特な大部分のカプシドタンパク質とともにフラグメントとともにインキュベートされ、ここで、そのフラグメントは、出血性カリシウイルス単離体などに関連する組換えDNA技術を用いて発現された合成ペプチドであってもよいか、または短いペプチド鎖であってもよく、次いで、スライドガラス上でコーティングおよび安定化される。抗FCV−DD1抗体は、サンプル中に存在し、安定な抗原−抗体免疫複合体形態である。次いで、結合した抗体は、蛍光に結合した反応物質と反応され、複合体は、蛍光顕微鏡で観察される。抗原部位で明るく色づいた蛍光により、ポジティブ抗体反応が確認される。他の標準的なELISAまたは免疫クロマトグラフィー(immunochromatography)技術は、容易にアッセイされる酵素に結合した抗体または抗原の検出(例えば、モノクローナル抗体によって認識されるFCV−DD1抗原の存在の検出またはFCV−DD1抗原を認識する抗体についての試験)における診断目的のために使用され得る。特に、ELISAは、抗原濃度または抗体濃度のいずれかの有用な測定を供給し得る。あるいは、FCV−DD1抗原は、固体支持体(例えば、マイクロウェルテストストリップのポリスチレン表面)に付着され得る。試験サンプル(例えば、ネコの血清)は、洗浄されて、残りの血清が取り除かれ、次いで、ペルオキシダーゼが結合した酵素が添加される。検出可能な物質(例えば、無色のテトラメチルベンジジン/過酸化水素)もまた、添加されて、酵素によって加水分解される。色素原は、青色に変わる。反応後、酸の付加を停止して、色のついたテトラメチレンベンジジン/過酸化水素は、黄色に変わる。最終的な分析において、色の強度は、サンプル中の抗体−抗原複合体の存在を検出する。
【0038】
新規のFCV株は、37C.F.R.§1.808によって指定された条件下で寄託され、アメリカンタイプカルチャーコレクション(American Type Culture Collection)(ATCC)、10801 University Boulevard,Manassas,Virginia 20110−2209,USAにおいてブダペスト条約に従って維持されている。具体的には、FCV−DD1サンプルは、2004年9月9日にATCCに寄託され、ATCC特許受託番号PTA−6204と指定されている。
【0039】
以下の実施例は、本発明の特定の局面を示す。しかしながら、これらの実施例は、例示のみの目的であり、本発明の条件および範囲であると完全に最終的に支持されないことが、理解されるべきである。本明細書中に使用される全ての科学的および技術的用語は、獣医学および薬学的分野における当業者によって一般的に理解される場合と同様の意味を有することが、理解されるべきである。本発明の目的のために、FCV−DD1株に対する明細書または特許請求の範囲におけるあらゆる言及は、FCV−DD1単離体由来のウイルスクローンを含む。これらのウイルスクローンは、本明細書中に記載されるワクチン、方法などの全ての局面においてFCV−DD1と容易に置き換えられ得る。さらに、代表的な反応条件(例えば、温度、反応時間など)は、一般にあまり便利でないが、用いられ得る具体的な範囲の上および下の両方の条件を与えられることが、理解されるべきである。実施例は、室温(約23℃〜約28℃)および大気圧で行われる。本明細書中に言及される全ての部および割合は、重量を基本にしており、全ての温度は、具体的に反対に示されない限り、摂氏度で表される。
【0040】
本発明のさらなる理解は、以下の非限定的な実施例から得られ得る。
【実施例】
【0041】
(実施例1)
(出血性ネコカリシウイルスを単離する失敗した試み)
FCV−Ariの2つの25cm組織培養フラスコ(1:100および1:1000と標識した)を、Dr.Neils Pedersen,School of Vaterinary Medicine,UC Davisから得た(N.C.Pedersonら、「An isolated epizootic of hemorrhagic−like fever in cats caused by a novel and highly virulent strain of feline calicivirus」,Veterinary Microbiol.73:281−300(2000年、5月))。1:1000の標識をしたFCV−Ariのフラスコを、凍結して解凍した。次いで、1mLの培養液を使用して、1つの850cm組織培養ローラーボトルのコンフルエントなCrandellネコ腎臓細胞(Feline Kidney Cell)(CRFK)を感染させた(R.A.Crandellら、「Development,characterization,and viral susceptibility of a feline(Felis catus)renal cell line(CRFK)」,In Vitro 9:176−185(1973))。16時間後、このローラーボトルを、凍結し、解凍し、作業ストックとして等分した。
【0042】
最初のFCV−Ari「作業ストック」を使用して、この物質が、出血性カリシウイルスを含むことを確認するためにネコに接種した。FCV−Ari「作業ストック」を接種されたネコは、極度の臨床徴候(例えば、高発熱、水腫、脱水および死)を誘発した。従って、FCV−Ari「作業ストック」が、出血性カリシウイルスを含むことを確認した。
【0043】
FCV−Ari「作業ストック」を、1mlあたり約10TCID50の力価に希釈して、0.2μmで濾過した。濾過したFCV−Ariを、ほとんどの有毒なカリシウイルス株の精製/単離のために使用した。濾過したFCV−Ariを連続的に希釈して使用し、コンフルエントな24−ウェル組織培養プレートをCRFK細胞で感染させた。CRFK細胞に対して細胞変性効果(CPE)を示した最も高い希釈のウェルを回収し、凍結し、すぐに解凍し、連続的に希釈して使用し、別のコンフルエントな24−ウェル組織培養プレートをCRFK細胞で感染させた。全部で3ラウンドの精製および単離のために、この手順を2回繰り返した。
【0044】
精製したFCV−Ariを、ホルマリンで不活性化して使用し、死滅した一価ワクチンと混合した。このFCV−Ari(死滅した)ワクチンをネコに与え、ワクチン接種に対する血清応答を測定した。このワクチンは、ウイルス中和抗体価を誘導しなかったが、ウイルスに対する抗体は、ELISAによって確認されるように誘導された。
【0045】
特に、精製されて、死滅させたFCV−Ariワクチンを用いる研究には、20匹のネコを使用し、1群あたり5匹のネコに0.5%v/v、2%v/vおよび8%av/vの用量、5匹のコントロール(注射なし)を用いた。15匹のネコの各々に、3週間離して、2×1ml用量を首の項部の皮下に与えた。最後のワクチン接種の1週間および2週間後に、FCV SN価が、代表的に、それらのピークになった時点で、FCVに対する測定可能な血清中和(SN)価は、存在しなかった。
【0046】
再試験および最初の発見を確認するために、4匹以上のネコに、3週間離して、精製されて、死滅したFCV−Ariワクチンを含む2×1ml用量を与えた。最後のワクチン接種から1週間後、測定可能な血清中和抗体価(全て<2)は、FCVについての血清中和価が、代表的に、最も高い時点で存在しなかった。
【0047】
精製したFCV−Ari(生きている)をまた、使用して、2群のネコに接種した。2群のネコは、出血性カリシウイルス注射の臨床徴候(高熱、水腫、膿皮、脱毛など)の特徴を示さなかった。従って、「作業ストック」から精製した株は、出血性カリシウイルス株ではないことを確認した。また、ワクチンは、中和抗体を誘導しなかったため、この株のさらなる作業および開発を中止した。
【0048】
(実施例2)
(限界希釈クローニングによるFCV−DD1の単離)
元のFCV−Ariを、Dr.Pedersenから受け取り、1:100と標識し、3ラウンドの限界希釈クローニングのために使用して、FCV−DD1を精製して単離した。FCV−Ariの1:100サンプルを、FCV−Ariの最初の精製/単離から単離されたFCV株を中和するために元のFCV−Ari(死滅した)ワクチン接種から得た抗血清とともにインキュベートした。ウイルスを連続的に希釈して使用し、24−ウェル組織培養プレートのコンフルエントをCRFK細胞で感染させて、CRFK細胞に対して細胞変性効果(CPE)を示した最も高い希釈のウェルを、収集し、凍結し、すぐに解凍した。収集したクローンを、血清中和アッセイによって評価した(限界希釈クローニング法ならびにFCV株を識別および単離するために使用される血清中和アッセイの概要については、H.Pouletら、「Comparison between acute oral/respiratory and chronic stomatitis/gingivitis isolates of feline calicivirus:pathogenicity,antigenic profile and cross−neutralisation studies」,Arch.Virol.145:243−261(2000)を参照のこと)。FCV−Ariの各ウイルスクローンを、最初の精製して死滅させたワクチンから得た抗血清とともに、または生きた「作業ストック」でのチャレンジから得た抗血清とともにインキュベートした。この血清中和アッセイからの結果は、元のサンプルにおいて1種以上のカリシウイルスの菌株が存在することを示した。選択および処分されなかったウイルスクローンを、最初の精製の望ましくない産物に対して特異的な抗血清によって中和した。次の精製のラウンドのために選択したウイルスクローンは、最初の精製の望ましくない産物に対して特異的な抗血清によってまだ中和されていないDr.Pedersenから得た元のウイルスサンプルに対する抗血清によって中和したものであった。CPEを含む最も高い希釈を収集する、このウイルスクローン選択のパターンを、合計で3ラウンド繰り返した。FCV−DD1と命名された生じたクローンを、生物学的研究のために選択した。
【0049】
具体的には、FCV−Ariサンプルを中和して、限界希釈クローニングによって再精製した。FCV−Ariウイルスを中和するために、FCV−Ariサンプルの元の組織培養を、1×MEM(改変されたイーグル培地)において1:200に希釈した。元のFCV−Ari(死滅させた)ワクチン接種(α−Ari血清をワクチン接種する)から得た抗血清を、1×MEMにおいて1:50に希釈した。2mLの希釈した抗−Ari血清を、2mLの希釈したウイルスに添加した。ウイルス/抗血清混合物を、約1時間37℃でインキュベートした。
【0050】
中和したウイルスを用いる試験的FCV−Ari精製から、24−ウェルプレート中のCPEが、10−2希釈までポジティブであることを見出した(10−2ウェルは、50%COEであり、10−3は、0%CPEであった)。この情報に基づいて、ウイルスを希釈して、CRFK細胞のウェルの約50%のCPEを達成した。これらの希釈を、4倍より高い目標、4倍の目標、および4倍より低い目標で行った。
【0051】
1つの24−ウェルプレートを、各希釈のために使用した。全ての24ウェルを、同じ希釈の複製として使用した。これらのプレートを、4日間、5%COで37℃にてインキュベートした。24の複製において50%CPE未満または50%CPEとほとんど等しい希釈におけるCPEについてポジティブであったウェルを、収集した。
【0052】
限界希釈クローニング手順のラウンド#1について、交差中和分析を、収集したクローンに対して行った。各収集物を、1×MEMにおいて1:200および1:1000に希釈して、2つの複製において、Challenge α−Ari(生きた「作業ストック」でのチャレンジから得た抗血清)またはVaccinate α−Ari(最初に精製した死滅させたワクチンからの抗血清)のいずれかの希釈液とともに混合した。ウイルス血清混合物を、37℃で1時間、インキュベートし、次いで、96−ウェルプレート中のCRFK細胞上にプレートした。プレートを、3日間インキュベートして、CPEを測定した。最初のラウンドの限界希釈クローニングおよび交差中和スクリーニングから得た結果を、以下の表1に示す。
【0053】
5つの収集したクローン(AB2、BC1、BC4、CB4およびDD1)を、第1の精製の望ましくない産物に対して特異的な抗血清によってまだ中和されていないDr.Pedersenから得た元のウイルスサンプルに対する抗血清によって中和した。これらを、ラウンド#2の精製のために選択した。
【0054】
ラウンド#2の限界希釈クローニング手順に関して、24−ウェルプレート中のCPEを、10−5〜10−6までポジティブであることを見出した。これらの希釈を、4倍より高い目標、4倍の目標、4倍より低い目標で行った。1つの24−ウェルプレートを、各希釈のために使用した。全ての24ウェルを、同じ希釈の複製として使用した。これらのプレートを、4日間、5%COで37℃でインキュベートした。24の複製において50%未満のCPEを得た希釈のCPEについてポジティブであったウェルを、収集した。
【0055】
上記の工程を、3ラウンドの限界希釈クローニングのために繰り返した。
【0056】
【表1】

(実施例3)
(FCV−DDI株の単離)
1つの収集したクローン、DD1を、ラウンド#3から選択して使用し、約0.003のMOI(多重度の感染)で850cm組織培養ローラーボトルのコンフルエントなCRFKで感染させた。100%CPEを観測した場合、ウイルス流体をローラーボトルから収集し、4時間、−50℃で凍結し、次いで、37℃のウォーターバス中ですぐに解凍した。ウイルス流体を、Beckman GS−6R遠心機(Beckman Instruments,Inc.,Fullerton,CA)で、20分間、3000rpmで遠心分離し、無細胞上清を、81×1mLサンプルバイアル中に等分して、−80℃に保存した。
【0057】
(実施例4)
(生理学的チャレンジ研究)
実施例3において調製された単離および精製されたFCV−DD1株を、ネコに接種した。3匹のネコの1つのチャレンジ群を用い、ここで、各ネコに、鼻孔に0.25mLおよび経口で0.5mLで、合計1mLの投与によって、6.3logの毒性のあるFCV−DD1を与えた。ネコは、代表的な出血性カリシウイルス臨床徴候を示した。極度の高熱が、1日後に全ての3匹のネコに現れた。水腫(腫脹)は、観察の5日目に開始した。外部および口の両方の潰瘍形成が、観察の6日目に現れた。ネコの3分の2は、観察の6日目に安楽死(血を抜いた)させた。なぜなら、そのネコらは、瀕死であったからである。3匹目のネコは、観察の7日目に体温が低下し、瀕死であった。そして、この研究は終了した。このチャレンジ研究から得た結果は、元のFCV−Ariサンプル(FCV−DD1と命名された)から精製および単離されたカリシウイルスの株が、真の出血性ネコカリシウイルス株であることを証明している。
【0058】
上記において、例示の目的であり、限定されない本発明の特定の実施形態の詳細な説明が提供されている。この開示に基づいて当業者に明白である全ての他の改変、派生および等価物は、特許請求としての本発明の範囲内に含まれることが、理解される。
【0059】
【表2】

【受託番号】
【0060】
ネコカリシウイルス:FCV−DD1 PTA−6204

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書中に記載の発明。

【公開番号】特開2012−65670(P2012−65670A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−268298(P2011−268298)
【出願日】平成23年12月7日(2011.12.7)
【分割の表示】特願2007−531450(P2007−531450)の分割
【原出願日】平成17年9月12日(2005.9.12)
【出願人】(309040701)ワイス・エルエルシー (181)
【Fターム(参考)】