説明

出血性障害の治療および予防的治療における非静脈内投与のためのアルブミン融合凝固因子

本発明は、出血性障害の治療および予防的治療における非静脈内投与のためのアルブミン融合凝固因子を含む医薬製剤、ならびに凝固因子をアルブミンに融合することによって凝固因子の非静脈内投与後のインビボでの回収を増加させるための方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、出血性障害の治療および予防的治療における非静脈内投与のためのアルブミン融合凝固因子を含む医薬製剤、ならびに凝固因子をアルブミンに融合することによって凝固因子の非静脈内投与後の生体内回収率(in vivo recovery)を増加させるための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
数種の組換え治療用ポリペプチドが、ヒトにおける治療および予防的な用途で市販されている。患者は、一般的に、組換えの活性成分の特異的な作用機序によって利益を得るが、現在市販の凝固因子は全て静脈内投与によるものであり、それはしばしば注射部位における感染を引き起こし、また一般的には患者が避けたい(特に凝固プロセスに欠陥のある子どもの処置において)手順である。
【0003】
Ballance等(特許文献1)は、ヒト血清アルブミンに融合させると、インビボでの機能的な半減期を高め貯蔵寿命を延長すると予想される、多数の様々な治療用ポリペプチドの融合ポリペプチドを説明している。可能性のある融合パートナーの長い一覧が説明されているが、これらのポリペプチドのほとんど全てに関して、それぞれのアルブミン融合タンパク質が実際に生物活性を保持し、改善された特性を有するという実験データを示していない。実施例として示されている治療用ポリペプチドの一覧のなかでも特に、第IX因子、および、FVII/FVIIaが挙げられている。また、アルブミンとFIXまたはFVII/FVIIaとの間にペプチドリンカーが存在するFIXおよびFVII/FVIIaの融合体も説明されている。しかしながら、アルブミン融合が、各凝固因子が非静脈的に投与される場合に治療上の処置を向上し得ることは開示されていない。
【0004】
第VII因子および第VIIa因子
FVIIは、50kDaの分子量を有する単鎖糖タンパク質であり、これは、肝細胞によって、406個のアミノ酸からなる不活性な酵素原として血流に分泌される。FVIIは、Arg152〜Ile153における単一のペプチド結合のタンパク質分解によってその活性型である第VIIa因子に変換され、それにより、2種のポリペプチド鎖、N末端軽鎖(24kDa)、および、C末端重鎖(28kDa)の形成が起こるが、これらは、1個のジスルフィド架橋によって結合される。その他のビタミンK依存性凝固因子とは異なり、活性化ペプチドは、活性化中に切断されない。第VII因子の活性化による切断は、インビトロにおいて、例えば、第Xa因子、第IXa因子、第VIIa因子、第XIIa因子、第7因子活性化プロテアーゼ(FSAP)、および、トロンビンによって達成できる。非特許文献1は、いくつかの切断は、Arg290および/またはArg315で重鎖でも起こることを報告している。
【0005】
第VII因子は、血漿中に500ng/mlの濃度で存在する。活性化された第VIIa因子としては、約1%または5ng/mlの第VII因子が存在する。第VII因子の末梢血漿における半減期は、約4時間であり、第VIIa因子の末梢血漿における半減期は約2時間であることがわかっている。
【0006】
超生理学的な濃度の第VIIa因子を投与することによって、第VIIIa因子および第IXa因子への必要性が回避され止血を達成することができる。第VII因子に関するcDNAのクローニング(特許文献2)は、活性化された第VII因子を製薬として開発することを可能にしている。第VIIa因子の投与は、1988年に初めて成功している。その後継続的に、第VIIa因子に関する指標の数が徐々に増えてきており、これは、第VIIa因子が出血を止めることができる万能な止血剤になる可能性を示している(非特許文献2)。しかしながら、約2時間という第VIIa因子の短い末梢における半減期、および、インビボでの低い回収は、その適用を制限している。
【0007】
ヒトFIX
ヒトFIXは、ビタミンK依存性ポリペプチド群の1メンバーとして、57kDaの分子量を有する単鎖糖タンパク質であり、これは、肝細胞によって、415個のアミノ酸からなる不活性な酵素原として血流に分泌される。これは、ポリペプチドのN末端のGla−ドメインに局在している12個のγ−カルボキシ−グルタミン酸残基を含む。Gla残基は、それらの生合成のためにビタミンKを必要とする。Glaドメインに続いて、2種の上皮増殖因子ドメイン、活性化ペプチド、および、トリプシン型セリンプロテアーゼドメインがある。FIXのさらなる翻訳後修飾としては、水酸化(Asp64)、N−(Asn157およびAsn167)、加えてO型の糖付加(Ser53、Ser61、Thr159、Thr169、および、Thr172)、硫酸化(Tyr155)、および、リン酸化(Ser158)が挙げられる。
【0008】
FIXは、Arg145〜Ala146、および、Arg180〜Val181での活性化ペプチドのタンパク質分解によってその活性型である第IXa因子に変換され、それにより、2種のポリペプチド鎖、N末端軽鎖(18kDa)、および、C末端重鎖(28kDa)の形成が起こるが、これらは、1個のジスルフィド架橋によって結合される。第IX因子の活性化による切断は、インビトロで、例えば第XIa因子、または、第VIIa因子/TFによって達成できる。第IX因子は、ヒト血漿中に5〜10μg/mlの濃度で存在する。ヒトにおける第IX因子の末梢血漿における半減期は、約15〜18時間であることが見出された(非特許文献3;非特許文献4)。
【0009】
血友病Bは、第IX因子が機能しないか、または、失われることによって引き起こされるものであり、これは、血漿由来の第IX因子の濃縮物、または、第IX因子の組換え型で治療される。血友病B患者は、自然出血を回避するために第IX因子の予防的な投与を少なくとも2週に1度受けることが多いため、適用された第IX因子製品の半減期を長くすることによって投与間のインターバルを長くすることが望ましく、第IX因子の静脈内投与を避けることが望ましい。
【0010】
第VIII因子(FVIII)
FVIIIは、哺乳動物の肝臓で産生される約260kDa分子質量の血漿糖タンパク質である。これは血液凝固をもたらす凝固反応のカスケードの必須成分である。このカスケード内には、第IXa因子(FIXa)が、FVIIIと連動して第X因子(FX)を活性型のFXaに変換するステップがある。FVIIIはこのステップの補因子として作用し、FIXaの活性にはカルシウムイオン及びリン脂質が必須である。最も一般的な血友病性疾患は、機能的FVIIIの欠乏によって引き起こされ、血友病Aと呼ばれる。
【0011】
血友病Aの処置の重要な進歩は、ヒトFVIIIの完全な2,351アミノ酸配列をコードするcDNAクローンの単離であり(特許文献3)、並びにヒトFVIII遺伝子DNA配列及びその生産のための組み換え法の提供であった。
【0012】
クローン化cDNAから決定されたヒトFVIIIの推定一次アミノ酸配列分析の結果は、それが大きな前駆体ポリペプチドからプロセシングされたヘテロダイマーであることを示す。このヘテロダイマーは、約210kDaのN末端重鎖フラグメントと金属イオン依存的に会合した約80kDaのC末端軽鎖から成る(非特許文献5の総説を参照)。ヘテロダイマーの生理的活性化は、トロンビンによるタンパク質鎖のタンパク質分解的切断を介して起こる。トロンビンは、重鎖を90kDaタンパク質に切断し、次いで54kDa及び44kDaフラグメントに切断する。トロンビンは、また、80kDa軽鎖を72kDaタンパク質に切断する。それは、後者のタンパク質でありそしてカルシウムイオンにより一緒に保持される、活性FVIIIを構成する2つの重鎖フラグメント(上記54kDa及び44kDa)である。不活性化は、72kDa及び54kDaタンパク質が、トロンビン、活性化プロテインC又はFXaによって更に切断される場合に起こる。血漿中では、このFVIII複合体は、上述のようにFVIIIのタンパク質分解的破壊を阻害するように見える、50倍過剰のVWFタンパク質(「VWF」)と結びつくことにより安定化される。
【0013】
FVIIIのアミノ酸配列は、3つの構造ドメイン:330アミノ酸の三重Aドメイン、980アミノ酸の単一Bドメイン、及び150アミノ酸の二重Cドメインで構成されている。Bドメインは他のタンパク質と相同性を有さず、そして本タンパク質の25の可能性あるアスパラギン(N)結合グリコシル化部位のうち18を与える。Bドメインは明らかに凝固における機能はなく、そして尚凝固促進活性を有するBドメイン欠失FVIII分子で欠失され得る。
【0014】
フォン・ウィルブラント因子 (vWF)
VWFは、哺乳動物の血漿に存在する多量体接着性糖タンパク質であり、多様な生理機能を有する。一次止血中、VWFは血小板表面の特異的受容体及びコラーゲンなどの細胞外マトリックス成分間のメディエータとして作用する。更に、VWFは、凝固促進FVIIIの担体及び安定化タンパク質としての機能を果たす。VWFは、内皮細胞及び巨核球内で2813アミノ酸前駆体分子として合成される。その前駆体ポリペプチドのプレ−プロ−VWFは、成熟血漿VWFに認められる22残基シグナルペプチド、741残基プロペプチド及び2,050残基ポリペプチドから成る(非特許文献6)。血漿中に分泌されると、VWFは種々の分子サイズを有する多様な種の形態で循環する。これらのVWF分子は、2,050アミノ酸残基の成熟サブユニットのオリゴマー及びマルチマーから成る。VWFは、通常、1つのダイマーから50〜100個のダイマーから成るマルチマーまでの形態として血漿中に認めることができる(非特許文献7)。ヒト循環系におけるヒトVWFのインビボ半減期は、おおよそ12〜20時間である。
【0015】
ヒトの最も高頻度の遺伝性出血性疾患はフォンビルブラント病(VWD)であり、これは血漿又は組み換え起源のVWFを含有する濃縮液を用いる代償療法によって処置し得る。
【0016】
VWFは、例えば特許文献3に記載のようにヒト血漿から調製することができる。特許文献4は、組み換えVWFを分離する方法を記載している。
【0017】
VWFはインビボでFVIIIを安定化することが知られ、従って、血漿レベルのFVIIIを調節する重要な役割を担い、そしてその結果として、一次及び二次止血を調節する主要因子となる。また、VWF含有薬物製剤をVWD患者へ静脈内投与した後、24時間で内因性FVIII:Cが1〜3単位/ml増加することを観察することができ、FVIIIに対するVWFのインビボ安定化効果を示すことが知られている。
【0018】
今日まで、血友病A及びVWDの標準治療は、FVIII及びVWF濃縮物の製剤の頻回静脈内注射を含む。血友病Bの治療は、第IX因子の隔週投与を必要とし、FVIIaのインヒビター保有患者の治療においては、出血を避けるために1週間あたりFVIIaを複数回投与する必要がある。
【0019】
これらの代償療法は、一般的に、例えば予防的処置を受ける重度血友病Aの患者に有効であるが、第VIII因子は、約12時間の第VIII因子の短い血漿内半減期のために、週当たり約3回静脈内投与(i.v.)する必要がある。健常非血友病患者のFVIII活性の1%を超えるレベルに、例えば0.01U/mlずつのFVIIIのレベル上昇により既に到達している場合、重度血友病Aは中等度血友病Aに変わる。予防的処置では、投与計画は、FVIIIのトラフレベルが、健常非血友病患者のFVIII活性の2〜3%レベルを下回らないように設計される。
【0020】
静脈内投与による凝固因子の投与は疼痛を伴って扱いにくく、そして特に投与が主に血友病Aと診断された患者自身又は小児の親による在宅処置で行われるために、感染のリスクを伴う。加えて、頻回i.v.注射は必然的に瘢痕形成をもたらし、以後の注入を妨げる。重度血友病の予防的処置は、若年、しばしば2歳未満の小児で開始されることから、そのような小さな患者の静脈に週当り3回FVIIIを注射することは、尚更困難である。限られた期間、ポートシステムの移植は代替法を提供し得る。反復性感染症が発生し、そしてポートが運動時に不便を引き起こす可能性があるという事実にもかかわらず、それらはそれでも一般的に静脈内注射に比べて好ましいと考えられている。
【0021】
従って、凝固因子を静脈内に注入する必要を避ける、大きな医療上の必要性が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】WO01/79271
【特許文献2】米国特許第4,784,950号
【特許文献3】米国特許第4757006号
【特許文献4】欧州特許第05503991号
【特許文献5】欧州特許第0784632号
【非特許文献】
【0023】
【非特許文献1】Mollerup等.(Biotechnol.Bioeng.(1995)48:501〜505)
【非特許文献2】Erhardtsen,2002
【非特許文献3】White GC等.1997.Recombinant factor IX.Thromb Haemost.78:261〜265
【非特許文献4】Ewenstein BM等.2002.Pharmacokinetic analysis of plasma−derived and recombinant F IX concentrates in previously treated patients with moderate or severe hemophilia B.Transfusion 42:190〜197
【非特許文献5】Kaufman, Transfusion Med.Revs.6:235(1992))
【非特許文献6】Fischer等,FEBS Lett.351:345−348,1994
【非特許文献7】Ruggeri等.Thromb.Haemost.82:576−584,1999
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
本発明は、出血性障害の治療および予防的治療における非静脈内投与のための、アルブミン融合凝固因子を含む医薬製剤、ならびに凝固因子をアルブミンに融合することによって凝固因子の非静脈内投与後の生体内回収率を増加させるための方法に関する。
【0025】
好ましい凝固因子は、ビタミンK依存性凝固因子、ならびに、それらのフラグメントおよび変異体である。さらにより好ましくは、FVIIaおよびFIX、ならびに、それらのフラグメントおよび変異体である。以下に限定されないが、アルブミン融合FVIIIおよびvWF、フィブリノゲン、第II因子、第X因子、第XIII因子、トロンビン、プロトロンビンおよびプロテインCもまた好ましい。
【0026】
好ましくは、アルブミン融合凝固因子を含む製剤は、皮下投与される。しかしながら、非静脈内投与の他の全ての様式が包含される(例えば筋肉内または経皮投与)。
【0027】
この凝固因子は、ペプチドリンカーを介してアルブミンに融合し得、本発明の特定の実施態様においてプロテアーゼにより切断可能であり得る。
【0028】
本発明の要点は、ビタミンK依存性ポリペプチド第VII因子、およびアルブミンによって具体的に実証される。本発明はまた、他の凝固因子に関する。本発明はまた、アルブミン融合凝固因子をコードするcDNA配列に関する。この各凝固因子をコードするcDNAは、ヒト血清アルブミンをコードするcDNA配列に遺伝学的に融合しており、プロテアーゼによって切断可能な介在するペプチドリンカーをコードするオリゴヌクレオチドで連結されている。本発明はまた、非静脈内投与のための、このような融合cDNA配列を含む組み換え発現ベクターの使用にも関する。これは、例えば、アルブミン融合凝固因子をコードするcDNAを含む発現ベクターの筋肉内注射による遺伝子治療であり得る。
【課題を解決するための手段】
【0029】
発明の詳細な説明
「アルブミン融合凝固因子」は、本発明において、ヒトアルブミンと凝固因子との遺伝上の融合を意味し、得られた融合ポリペプチドの血漿内半減期は、同じであるが融合していない凝固因子と比較して増加しており、かつ非静脈内投与後の生体内回収率は、同じであるが融合していない凝固因子の非静脈内投与後の生体内回収率と比較して増加している。
【0030】
本発明の好ましい実施態様は、非静脈内投与後の生体内回収率が、同じであるが融合していない凝固因子と比較して少なくとも10%、好ましくは少なくとも25%、より好ましくは50%以上、より好ましくは100%以上、およびさらにより好ましくは200%以上増加している、アルブミン融合凝固因子である。
【0031】
「非静脈内投与後の生体内回収率」は、非静脈内投与後の血漿において見出され得る生物学的に活性な凝固因子の量を意味する。
【0032】
この非静脈内投与後の生体内回収率は、例えば当該分野で周知である、各凝固因子の生物活性を測定するための分析的な凝固関連アッセイによって、「曲線下面積」または「血漿ピーク濃度」として測定され得る。「生体内回収率」は、本発明の意味において、製品投与の直後に血液または血漿中に見出される製品の量を意味する。従って、生体内回収率を検出するためには、一般的に、製品投与の(例えば、15分、または60分、または2時間または4時間または8時間または12時間または20時間)後の血漿の含量が決定される。
【0033】
「凝固関連の分析」は、本発明の意味において、凝固プロセスに関連する酵素活性または補因子活性を決定するあらゆる分析か、または、固有の、または、固有でない凝固カスケードのいずれかが活性化されているのかを決定することができるあらゆる分析のことである。従って「凝固関連の」分析は、直接的な凝固分析でもよく、例えば、aPTT、PT、または、トロンビン生成分析が挙げられる。しかしながら、例えば、特定の凝固因子に適用される発色分析のようなその他の分析も含まれる。このような分析または対応する試薬の例としては、パトロムチン(Pathromtin(登録商標))SL(aPTT分析,デイド・ベーリング(Dade Behring))、または、対応する凝固因子が欠乏した血漿(デイド・ベーリング)と共に、トロンボレル(Thromborel(登録商標))S(プロトロンビン時間の分析,デイド・ベーリング)、例えば凝固因子が欠乏した血漿を用いたトロンビン生成分析キット(テクノクローン(Technoclone),トロンビンスコープ(Thrombinoscope))、発色分析、例えばバイオフェン(Biophen)の第IX因子(ハイフェン・バイオメド(Hyphen BioMed))、スタクロット(Staclot(登録商標))FVIIa−rTF(ロシュ・ダイアグノスティックス社(Roche Diagnostics GmbH))、コーテスト(Coatest(登録商標))第VIII因子:C/4(クロモジェニックス(Chromogenix))、または、その他のものが挙げられる。
【0034】
生物活性凝固因子を測定するための代替としてはまた、各凝固因子の抗原の量が測定され得る。抗原レベルは、好ましくはELISAテストのような技術によって測定される。
【0035】
本発明の意味での「凝固因子」は、一次止血または二次止血に寄与し得る任意のポリペプチドである。「凝固因子」は、これらに限定されないが、第IX因子、第VII因子、第VIII因子、フォン−ウィルブラント因子、第V因子、第X因子、第XI因子、第XII因子、第XIII因子、第I因子、第II因子(プロトロンビン)、プロテインC、プロテインS、GAS6、または、プロテインZ、加えてそれらの活性型からなるポリペプチドが挙げられる。さらに、有用な凝固因子は、野生型ポリペプチドである場合もあり、または、突然変異を含むもの場合もある。糖付加またはその他の翻訳後修飾の程度および位置は、選択された宿主細胞、および、宿主細胞の環境の性質に応じて様々であってよい。特定のアミノ酸配列に言及される場合、このような配列の翻訳後修飾は、本願に包含される。
【0036】
アルブミン
本明細書で用いられる「アルブミン」は、アルブミンポリペプチド若しくはアミノ酸配列、又はアルブミンの1つ若しくはそれ以上の機能的活性(例えば、生物活性)を有するアルブミンのフラグメント若しくは変異体を集合的に称する。特に、「アルブミン」は、ヒトアルブミン又はそのフラグメント、特に本明細書で配列番号1に示したようなヒトアルブミンの成熟形態若しくは他の脊椎動物由来アルブミン又はそのフラグメント、これらの分子の類似体若しくは変異体又はそれらのフラグメントを称する。
【0037】
アルブミン融合タンパク質のアルブミン部分は、上記したHAの配列の全長を含んでよく、又は治療的な活性を安定化又は延長することのできる、1つ若しくはそれ以上のフラグメントを含んでもよい。このようなフラグメントは、10以上のアミノ酸長であるか、HA配列由来の約15、20、25、30、50かそれ以上の連続したアミノ酸を含むか、又はHAの特異ドメインの一部若しくは全てを含んでよい。
【0038】
本発明のアルブミン融合タンパク質のアルブミン部分は正常HA(天然または人工のいずれか)の変異体であってもよい。本発明の融合タンパク質の治療ポリペプチド部分も、また、本明細書に記載されるように対応する治療用ポリペプチドの変異体であってもよい。用語「変異体」は、保存的かまたは非保存的か、天然化または人工化を問わず、挿入、欠失及び置換を含み、この場合、そのような変更は、実質的に治療用ポリペプチドの治療活性を与える活性部位又は活性ドメインを変化させない。
【0039】
特に、本発明のアルブミン融合タンパク質は、ヒトアルブミン及びヒトアルブミンのフラグメントの天然に存在する多型変異体を含んでよい。このアルブミンは何れの脊椎動物、特に何れの哺乳動物、例えばヒト、ウシ、ヒツジ又はブタから由来したものでもよい。非哺乳動物アルブミンとしてはニワトリ及びサケ由来のものが挙げられるが、それらに限定されない。アルブミンが連結したポリペプチドのアルブミン部分は、治療用ポリペプチド部分とは別の動物に由来するものでもよい。
【0040】
一般的に言えることは、アルブミンのフラグメント又は変異体は、少なくとも10、好ましくは少なくとも40、最も好ましくは70以上のアミノ酸長になる。アルブミンの変異体は、好ましくは、少なくともアルブミンの全ドメイン又は該ドメインのフラグメント、例えば、ドメイン1(配列番号1のアミノ酸1〜194)、2(配列番号1のアミノ酸195〜387)、3(配列番号1のアミノ酸388〜585)、1+2(配列番号1のアミノ酸1〜387)、2+3(配列番号1のアミノ酸195〜585)、又は1+3(配列番号1のアミノ酸1〜194+配列番号1のアミノ酸388〜585)から成るか、又は代わりにそれらを含むことができる。各ドメインは、それ自体、リジン106からグルタミン酸119、グルタミン酸292からバリン315及びグルタミン酸492からアラニン511の残基を含む、柔軟性のサブドメイン間リンカー領域を伴う、2つの相同的サブドメイン、即ち1〜105、120〜194、195〜291、316〜387、388〜491及び512〜585から出来ている。
【0041】
本発明のアルブミン融合タンパク質のアルブミン部分は、HAの少なくとも1つのサブドメイン若しくはドメイン、又はその保存的修飾を含んでよい。治療用融合タンパク質の血漿内半減期が、融合していない凝固因子と比較して少なくとも25%延長されるのであれば、あらゆるアルブミンのフラグメントおよび変異体が凝固因子の融合パートナーとして本発明に包含される。
【0042】
本願で用いられる「アルブミン融合凝固因子」は、それぞれの凝固因子の非活性型および活性型を含むポリペプチドを意味する。本発明において用いられる場合の「アルブミン融合凝固因子」は、天然の凝固因子およびアルブミンそれぞれのアミノ酸配列を有するタンパク質を含む。またわずかに改変されたアミノ酸配列(例えばN末端にアミノ酸欠失または付加を含む改変されたN末端)を有するタンパク質も含み、ただしこのようなタンパク質が、実質的に各凝固因子の生物活性を保持する場合である。「アルブミン融合凝固因子」はまた、上記の定義において、個体ごとに存在し、発生する可能性がある天然の対立遺伝子変異も含む。「アルブミン融合凝固因子」はさらに、上記の定義において、各凝固因子およびアルブミンの変異体を含む。このような変異体は、1個またはそれ以上のアミノ酸残基に関して野生型の配列とは異なる。このような差異の例としては、Nおよび/もしくはC末端における1個もしくはそれ以上のアミノ酸残基(例えば1〜10個のアミノ酸残基)のトランケーション、またはNおよび/もしくはC末端における1個もしくはそれ以上の追加の残基の付加、例えばN末端におけるメチオニン残基の付加、加えて保存的アミノ酸置換、すなわち類似の特徴を持ったアミノ酸のグループ、例えば(1)小さいアミノ酸、(2)酸性アミノ酸、(3)極性アミノ酸、(4)塩基性アミノ酸、(5)疎水性アミノ酸、(6)芳香族アミノ酸の中で行われる置換が挙げられる。以下の表に、このような保存的置換の例を示す。
【0043】
【表1】

【0044】
本発明の融合タンパク質のインビボでの半減期は、通常は末梢における半減期またはβ半減期として決定され、これらは一般的に、融合していないポリペプチドのインビボでの半減期よりも少なくとも約25%、好ましくは少なくとも約50%、および、より好ましくは100%よりも長い。
【0045】
好ましい実施態様において、リンカー領域は、発現された融合タンパク質の新抗原性の特性(ヒトタンパク質中には存在しない治療用抗原に含まれるペプチドが出現することによって、潜在的に免疫原性の新規のエピトープが形成されること)の危険が低減される、投与しようとする凝固因子またはそれらの変異体の配列を含む。さらにこの凝固因子が酵素原である(例えば、タンパク質分解による活性化を必要とする)ような場合においても、ペプチドリンカー切断の速度(kinetics)は、酵素原の凝固に関連する活性化の速度をよりいっそう密接に反映すると予想される。従って、このような好ましい実施態様において、酵素原およびそれに相当するリンカーが活性化され、それぞれ匹敵する速度で切断される。この理由のために、本発明はまた、具体的には、酵素原とアルブミンとの融合タンパク質にも関する。
【0046】
さらなる実施態様において、リンカーペプチドは、1種より多くのプロテアーゼのための切断部位を含む。これは、異なるプロテアーゼでも同じ位置で切断することができるリンカーペプチド、または、2種またはそれ以上の異なる切断部位を提供するリンカーペプチドのいずれかによって達成できる。これは、酵素活性を達成するために、治療用融合タンパク質をタンパク質分解的切断によって活性化しなければならない場合、および、この活性化工程に異なるプロテアーゼが寄与する可能性がある場合において有利な環境となることがある。これは、例えば、FIXが活性化されると、FXIaまたはFVIIa/組織因子(TF)のいずれかによって達成することができる場合である。
本発明の好ましい実施態様は、リンカーがプロテアーゼによって切断され、凝固因子を活性化することができる治療用融合タンパク質であり、それによって、リンカー切断が、凝固が起こる部位における凝固因子の活性化に確実に関連付けられるようになる。
【0047】
本発明に係るその他の好ましい治療用融合タンパク質は、リンカーが、治療用融合タンパク質の一部である凝固因子によって切断することができる治療用融合タンパク質であり、このような場合、このような凝固因子が一度活性化されると、融合タンパク質の切断も、凝固に関する事象と確実に関連するようになる。
【0048】
本発明に係るその他の好ましい治療用融合タンパク質は、リンカーが、そのものが治療用融合タンパク質の一部である凝固因子の活性によって直接的または間接的に活性化されるプロテアーゼによって切断することができる治療用融合タンパク質であり、このような場合、融合タンパク質の切断も、凝固に関する事象と確実に関連するようになる。
【0049】
最も好ましい治療用融合タンパク質の1つのクラスは、リンカーが、FXIaおよび/またはFVIIa/TFによって切断することができ、凝固因子がFIXである治療用融合タンパク質である。
【0050】
本発明の別の実施態様は、非静脈内投与のためのアルブミン融合凝固因子を含む、医薬組成物の使用である。投与方法は、優先的には皮下であるが、全ての血管外投与経路を包含する。上皮表面を経た投与(例えば皮膚に)も包含される。パッチ経由の投与は特に臨床的に有用である。この局所投与は、皮膚を介する取り込みを必要とするが、これは表在びらんだけでなく無傷の皮膚も完全に選ばれ、そして点眼薬及び鼻内投与を含む。上皮表面を介する投与としては吸入が含まれ、タンパク質で覆われた異常に大きい表面のために好適であり、迅速取込み及び肝臓の迂回をもたらす。上皮表面への投与としては、口腔内又は舌下に保持される剤形、即ちバッカル又は舌下剤形が含まれ、チューインガムとしてさえも可能である。口内のpHは相対的に中性(酸性の胃環境と対照的)なので、これはFVIIIなどの不安定なタンパク質に対して有利である。また、腟内及び直腸投与でさえも、また、直腸から水分を抜く静脈のいくつかが直接全身循環系へ至るので考慮することができる。一般的に、これは小さな子供のように経口経路を経由して物質を取込むことができない患者に最も有用である。
【0051】
皮内注射(皮膚内)はより侵襲的な投与方法であるが、介助又は経験者による実行さえない処置のために尚好適であり得る。皮内投与に続いて、皮下注射(皮膚直下)が行なわれる。一般的に取り込みは全く十分であり、そして注射部位を加温又はマッサージすることにより増加し得る。代わりに、血管収縮を起こすことができ、逆の挙動をもたらす、即ち吸着を低減するが効果を持続させることができる。
【0052】
更により侵襲性の血管外投与としては、筋肉内送達(筋肉体内へ)が含まれる。これは脂肪組織を迂回することにより利点をもたらし得るが、しかし一般に皮下注射より痛みを伴い、そして特に注射で改善すべき欠乏凝固系によって特徴付けられる患者では、出血を引き起こす組織病変のリスクがある。
【0053】
本発明の凝固因子は治療的有効用量で患者に投与されるが、治療的有効用量の意味するところは、所望の効果を生み出すのに十分で、耐えられない有害副反応をもたらす用量に到達することなしに、治療される病態又は適応症の重症度又は拡大を予防し又は軽減する用量である。的確な用量は、例えば適応症、製剤、投与方法のような多くの要素によって決まり、そしてそれぞれの適応症に対する前臨床及び臨床試験で決定されるべきである。
【0054】
本発明の凝固因子は、血友病AおよびBの家族性および後天性症例、家族性または後天性フォン−ウィルブランド病、単一の臓器や骨の損傷、または多発外傷のいずれかによる重症の出血を引き起こすあらゆるタイプの外傷(鈍的(blunt)または穿通性)、周術期または術後の出血を含む外科手術中の出血、小児の心臓外科手術における体外循環および血液希釈を受けている患者を含む心臓外科手術に起因する出血、脳内出血、クモ膜下出血、硬膜下または硬膜外出血、罹患した患者における凝固因子レベルの低下に至らしめる、血漿以外の循環血代用液による血液損失および血液希釈に起因する出血、播種性血管内凝固(DIC)および消費性凝固障害に起因する出血、血小板機能異常、減少および凝固障害、肝硬変、肝機能不全および劇症肝不全に起因する出血、肝臓病を有する患者における肝生検、肝臓およびその他の臓器の移植後の出血、胃静脈瘤からの出血、および消化性潰瘍の出血、機能性不正子宮出血(DUB)、早期胎盤剥離、低体重出生児における脳室内出血、分娩後出血、新生児仮死のような婦人科の出血、やけどに関連する出血、アミロイド症に関連する出血、血小板障害に関連する造血幹細胞移植、悪性疾患に関連する出血、出血性ウイルス感染、膵臓炎に関連する出血、の出血の治療のために用いられ得る。
【0055】
本発明はさらに、本出願に記載されるようなアルブミン融合凝固因子をコードするポリヌクレオチドの使用に関する。用語「ポリヌクレオチド」は、未修飾RNA若しくはDNA又は修飾RNA若しくはDNAであり得る任意のポリリボヌクレオチド又はポリデオキシリボヌクレオチドを一般的に指す。ポリヌクレオチドは、一本鎖又は二本鎖DNA、一本鎖又は二本鎖RNAであり得る。本明細書において使用される場合、用語「ポリヌクレオチド」はまた、1つ又はそれ以上の修飾塩基及び/又は通常でない塩基、例えばイノシンを含む、DNA又はRNAを含む。様々な修飾が、当業者に公知の多くの有用な目的に役立つDNA及びRNAに対してなされ得ることが認識される。用語「ポリヌクレオチド」は、それが本明細書において使用される場合、ポリヌクレオチドのこのような化学的に、酵素的に又は代謝的に修飾された形態、並びに、例えば単純細胞及び複雑細胞を含む、細胞及びウイルスに特有のDNA及びRNAの化学形態を包含する。
【0056】
当業者は、遺伝暗号の縮重に起因して、所定のポリペプチドが、種々のポリヌクレオチドによってコードされ得ることを理解する。これらの「変異体」は、本発明によって包含される。
【0057】
好ましくは、本発明のポリヌクレオチドは、精製されたポリヌクレオチドである。用語「精製された」ポリヌクレオチドは、他の核酸配列、例えばこれらに限定されないが、他の染色体及び染色体外DNA及びRNAを実質的に含まないポリヌクレオチドを指す。精製されたポリヌクレオチドは、宿主細胞から精製され得る。当業者に公知の従来の核酸精製方法が、精製されたポリヌクレオチドを得るために使用され得る。前記用語はまた、組換えポリヌクレオチド及び化学合成されたポリヌクレオチドを含む。
【0058】
本発明のさらに別の局面は、本発明に従うポリヌクレオチドを含むプラスミド又はベクターである。好ましくは、プラスミド又はベクターは発現ベクターである。特定の実施態様において、ベクターは、ヒト遺伝子治療における使用のための導入ベクターである。
【0059】
グリコシル化またはその他の翻訳後修飾の程度および位置は、選択された宿主細胞、および宿主細胞の環境の性質に応じて様々であってよい。特定のアミノ酸配列について述べる場合、このような配列の翻訳後修飾も本願に包含される。
【0060】
用語「組み換え」とは、例えば、変異体が遺伝子工学技術により宿主生物中に生産されることを意味する。本発明のFVIII又はVWF変異体は、通常は組み換え変異体である。
【0061】
提唱される変異体の発現:
適切な宿主細胞中での組換えタンパク質を高レベルで生産するには、上述の改変されたcDNAを、組換え発現ベクター中で適切な調節因子と共に効率的な転写単位に構築することが必要であり、このようなベクターは、当業者によく知られている方法に従って様々な発現系で増殖させることが可能である。効率的な転写調節因子の要素は、ウイルスを有する動物細胞(それらの天然の宿主として)から誘導してもよいし、または、動物細胞の染色体DNAから誘導してもよい。好ましくは、シミアンウイルス40、アデノウイルス、BKポリオーマウイルス、ヒトサイトメガロウイルス、もしくはラウス肉腫ウイルスのロングターミナルリピートから誘導されたプロモーター−エンハンサーの組み合わせを用いてもよいし、またはベータ−アクチンもしくはGRP78のような動物細胞中で強く構成的に転写された遺伝子を含むプロモーター−エンハンサーの組み合わせを用いてもよい。cDNAからの安定な高レベルのmRNAの転写を達成するために、転写単位は、その3’近位の部分に、転写終結ポリアデニル化配列をコードするDNA領域を含むはずである。好ましくは、この配列は、シミアンウイルス40初期転写領域、ウサギベータ−グロビン遺伝子、またはヒト組織プラスミノゲン活性化因子の遺伝子から誘導される。
【0062】
その後このcDNAは、本発明のアルブミン融合凝固因子を発現させるのに適した宿主細胞系のゲノムに組み込まれる。好ましくは、この細胞系は、確実に正しいフォールディング、Gla−ドメイン合成、ジスルフィド結合形成、アスパラギン結合型糖付加、O−結合型グリコシル化、およびその他の翻訳後修飾、加えて培地への分泌を達成するために、脊椎動物起源の動物細胞系であり得る。その他の翻訳後修飾の例は、新しく生じたポリペプチド鎖の水酸化、およびタンパク質分解によるプロセシングである。用いることができる細胞系の例は、サルCOS細胞、マウスL細胞、マウスC127細胞、ハムスターBHK21細胞、ヒト胎児腎臓293細胞、およびハムスターCHO細胞である。
【0063】
対応するcDNAをコードする組換え発現ベクターは、多種多様な方法で動物細胞系に導入することができる。例えば、組換え発現ベクターは、様々な動物ウイルスをベースとしたベクターから作製することができる。その例は、バキュロウイルス、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、および好ましくは、ウシパピローマウイルスベースとしたベクターである。
【0064】
また対応するDNAをコードする転写単位は、細胞中で優勢な選択マーカーとして機能する可能性がある別の組換え遺伝子と共に動物細胞に導入することもでき、これは、組換えDNAがそれらのゲノムに統合された特定の細胞クローンの単離を容易にするためである。このタイプの優勢な選択マーカー遺伝子の例は、Tn5アミノ配糖体ホスホトランスフェラーゼ(ゲネチシン(G418)耐性を付与する)、ハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ(ハイグロマイシン耐性を付与する)、およびピューロマイシンアセチルトランスフェラーゼ(ピューロマイシン耐性を付与する)である。このような選択マーカーをコードする組換え発現ベクターは、望ましいタンパク質のcDNAをコードするものと同じベクターに存在していてもよいし、または別のベクターにコードされていてもよく、後者の場合、これらベクターは同時に導入されて宿主細胞のゲノムに統合され、異なる転写単位間に固い物理的な連結が生じることが多い。
【0065】
望ましいタンパク質のcDNAと共に用いることができるその他のタイプの選択マーカー遺伝子は、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(dhfr)をコードする様々な転写単位をベースとするものである。このタイプの遺伝子を内因性dhfr活性が欠失した細胞、優先的にはCHO細胞(DUKX−B11、DG−44)に導入すると、これらはヌクレオシドが欠失した培地中で増殖が可能になると予想される。このような培地の例は、ヒポキサンチン、チミジンおよびグリシンを含まないハムF12(Ham’s F12)である。これらのdhfr遺伝子は、同じベクターまたは異なるベクターのいずれかに連結させて凝固因子のcDNA転写単位と共に上記のタイプのCHO細胞に導入することができ、このようにして組換えタンパク質を生産するdhfr陽性の細胞系を形成することができる。
【0066】
上記の細胞系を細胞毒性のdhfr阻害剤のメトトレキセートの存在下で増殖させると、メトトレキセート耐性の新しい細胞系が出現することになる。これらの細胞系は、連結されたdhfrおよび望ましいタンパク質の転写単位の数が増幅されたために、高速で組換えタンパク質を生産することが可能である。高濃度(1〜10000nM)のメトトレキセート中でこれらの細胞系を増殖させる場合、極めて高い速度で望ましいタンパク質を生産する新しい細胞系を得ることができる。
【0067】
上記の望ましいタンパク質を生産する細胞系は、懸濁培養中または様々な固体支持体上のいずれかでラージスケールで増殖することができる。これらの支持体の例は、デキストランまたはコラーゲンマトリックスをベースとしたマイクロキャリアー、または中空糸の形態の固体支持体、または様々なセラミック材料である。細胞懸濁培養中またはマイクロキャリアー上で増殖させる場合、上記の細胞系の培養は、バッチ培養、または長期間にわたり調整培地を連続生産する潅流培養のいずれかとして行うことができる。従って、本発明によれば、上記の細胞系は、望ましい組換えタンパク質を生産するための工業プロセスの開発によく適している。
【0068】
上記のタイプの分泌細胞の培地中に蓄積する組換えタンパク質は、様々な生化学およびクロマトグラフィー方法によって濃縮したり、精製したりすることができ、このような方法としては、細胞培地中で、望ましいタンパク質とその他の物質とのサイズ、電荷、疎水性、溶解性、特異的な親和性等の差を利用する方法が挙げられる。
【0069】
このような精製の例は、固体支持体に固定したモノクローナル抗体への組換えタンパク質の吸着である。脱離後、さらにタンパク質を上記の特性に基づく様々なクロマトグラフィー技術によって精製することができる。
【0070】
本発明の改変された生物活性アルブミン融合凝固因子は、≧80%純度、より好ましくは≧95%純度まで精製することが望ましく、そして夾雑高分子物質、特に他のタンパク質及び核酸に関して99.9%純度より高く、且つ、感染及び発熱因子のない薬剤的に純粋な状態が特に好ましい。好ましくは、本発明の単離又は精製した改変された生物活性アルブミン融合凝固因子は、他の治療用タンパク質と併用して投与される場合を除いて、実質的に他のポリペプチドを含まない。
【0071】
本発明で説明されているアルブミン融合凝固因子は、治療用途に応じた薬剤に製剤化することができる。精製したタンパク質は、一般的な生理学的に適合する水性緩衝溶液に溶解させてもよく、ここにおいて、医薬製剤を提供するために、水性緩衝溶液に場合により薬学的賦形剤が添加されていてもよい。
【0072】
このような製薬キャリアーおよび賦形剤、加えて適切な医薬製剤は当該分野で公知である(例えば、“Pharmaceutical Formulation Development of Peptides and Proteins”,Frokjaer等,TaylorおよびFrancis(2000)、または、“Handbook of Pharmaceutical Excipients”,第3版,Kibbe等,Pharmaceutical Press(2000)を参照)。特に、本発明のポリペプチド変異体を含む薬剤組成物は、凍結乾燥した形態、または安定な可溶性の形態で製剤化されてもよい。このようなポリペプチド変異体は、様々な当業界既知の手法によって凍結乾燥させてもよい。凍結乾燥製剤は、使用前に、1種またはそれ以上の製薬上許容できる希釈剤(例えば滅菌注射用水、または滅菌生理食塩水)を添加することによって再溶解する。
【0073】
本組成物の製剤は、あらゆる製薬的に適切な非静脈内投与手段によって個体に送達される。様々な送達システムが知られており、これらを用いて、あらゆる便利な経路によって本組成物を投与することができる。優先的には、本発明の組成物は、従来の方法に従って、皮下、筋肉内、腹腔内、大脳内、肺内、鼻腔内、または経皮投与のために、最も好ましくは皮下、筋肉内または経皮投与のために製剤化される。本製剤は、注入、またはボーラス注射によって連続的に投与することができる。いくつかの製剤は、遅延放出系を包含する。
【0074】
本発明のアルブミン融合凝固因子は、治療上有効な用量で患者に投与され、ここにおいて治療上有効な用量は、耐え難い副作用を引き起こす用量に達することなく、望ましい作用を生じさせ、治療される状態または適応症の重症度または蔓延を予防したり、または減少させたりするのに十分な用量を意味する。正確な用量は、例えば適応症、製剤、投与様式のような多くの要因に依存し、それぞれ個々の適応症について臨床前試験および臨床試験で測定しなければならない。
【0075】
本発明の医薬組成物は、単独でかまたは他の治療剤と組み合わせて投与され得る。これらの薬剤は、同じ医薬の部分として組み込まれ得る。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】300μg/kg rVIIa−FPおよびNovoSeven(登録商標)後のFVII:Ag血漿濃度の時間経過(プール;n=3/時点;線形スケール)
【図2】300μg/kg rVIIa−FPおよびNovoSeven(登録商標)後のFVII:Ag血漿濃度の時間経過(プール;n=3/時点;対数線形スケール)
【図3】610μg/kg rIX−FPおよびBerinin(登録商標)後のFIX:Ag血漿濃度の時間経過(プール;n=5/時点;線形スケール)
【図4】610μg/kg rIX−FPおよびBerinin(登録商標)後のFIX:Ag血漿濃度の時間経過(プール;n=5/時点;対数線形スケール)
【実施例】
【0077】
(実施例1)ラットにおいて皮下(s.c.)適用されたrVIIa−FPのバイオアベイラビリティの評価
最初の実施例に要約される実験の目的は、血管外注射がrVIIa−FP(ヒト)による向上された治療のための選択肢となり得るか否かを評価するためのものであった。血管外治療のための典型的な代表として、皮下注射を選択した。参照製品であるNovoSeven(登録商標)に対するrVIIa−FPの適合性を比較するために、表2に示されたデザインでの非臨床的な薬物動態研究を実施した。血漿中濃度の時間経過を等モル用量のrVIIa−FP(WO 2007/090584 30〜31頁に記載された通りに製造されたpFVII−937)およびNovoSeven(登録商標)をラットに対して単回静脈内/皮下注射後に測定した。NovoSeven(登録商標)の用量は300μg/kgとした。rVIIa−FPの用量は、OD測定(280〜320nm)によって測定されるタンパク質濃度に基づいた。FPのアルブミン部分について校正した300μg(FVIIa)/kgの用量を同じように適用した。これにより、両方の製品が治療的に有効な成分であるFVIIaに関して同じ用量で施用された。ラットを本研究のための動物種として選択したのは、ラットがこの種の研究においてよく特徴づけられ、また頻繁に用いられる種であるからである。ラット(CD系統)はチャールズ・リバー(Sulzfeld,Germany)から提供され、実験の間の重さは約200gであった。ラットを標準的な飼育条件下においた。短期麻酔下で、血液サンプルを眼窩後部から(retroorbitally)採取し、クエン酸カルシウムを用いて10〜20%のクエン酸血液に抗凝固処理し、血漿に処理し、そしてFVII血漿濃度の測定のために−20℃で保存した。サンプリング時間は表2に詳述されている。ヒトFVIIの血漿中濃度を、捕捉抗体としてヒツジの抗FVII IgG(Cedarlane/ Biozol)および検出抗体としてPOD標識ヒツジ抗FVII IgG (Cedarlane/ Biozol)を用いて、サンドイッチELISAにより測定した。標準的なヒト血漿を参照として用いた。rVIIa−FPの発酵、精製および活性化は、他に記載している。
【0078】
rVIIa−FPの静脈内注射により、同じ用量のNovoSeven(登録商標)での処理と比較して約60%高い初期血漿中濃度が得られた(表3、図1)。rVIIa−FPで皮下処置されたグループについてのみ、FVIIが血漿中で検出された。最大濃度は注射後約8時間で観察され、処理後1〜2日間で再びベースラインに到達した。NovoSeven(登録商標)をrVIIa−FPと同じFVIIa用量で注射したが、同じ用量のNovoSeven(登録商標)で皮下処置されたグループについては、血漿中濃度が観察期間を通して検出限界未満のままであった(図2)。
【0079】
【表2】

【0080】
【表3】

【0081】
NovoSeven(登録商標)をrFVIIa−FPと同じ用量で注射したが、血漿
濃度は見られなかった。従って、注射後の比較的短い停滞期間(約8時間)および長く続く減衰(すなわち少なくとも1〜2日間)期間後に観察されたピーク濃度により、rVIIa−FPでの皮下処置が十分に検出可能なFVIIa血漿中濃度をもたらしたことがわかったことは驚くべきことである。これはさらに、静脈内(i.v.)注射後のrVIIa−FPの時間経過を持続させた。rVIIa−FPの約50%というNovoSeven(登録商標)の低い分子量が、皮下組織からのその再吸収に好都合であったと予測される。この研究の結果は、反対の結果が生じたことを実証している。皮下投与されたrVIIa−FPの相対バイオアベイラビリティは約10%に到達したが、NovoSeven(登録商標)の皮下注射後の血漿中濃度は検出されなかった。
【0082】
血液循環への再吸収または輸送に関してrVIIa−FPに特に有益な点が存在するか否かを判断するために、rVIIa−FPとNovoSeven(登録商標)の相対バイオアベイラビリティを比較することは適切でない場合がある。なぜならば皮下(s.c.)投与されたrVIIa−FPのAUCは、その長い末梢における半減期によって支配され得、皮下区画から血液循環へのrVIIa−FPの連続的な放出が得られるからである。NovoSeven(登録商標)との比較において、静脈内注射後の末梢における半減期はすでに6倍以上延長していた。さらに、rVIIa−FPおよびNovoSeven(登録商標)の排出特性は、皮下空間から血液循環へのそれらの輸送または拡散によって差次的に影響を受け得る。従ってこのトピックにおける特有の結果は、ピーク濃度の評価に基づくほうがより確実である。NovoSeven(登録商標)について、血漿濃度は検出限界である25ng/mLには決して到達しなかったが、注射後すぐの融合タンパク質については約140ng/mLであった。
【0083】
第一段階として、血液循環への再吸収または輸送がrVIIa−FPと同じであるという仮定のもとに、NovoSeven(登録商標)での処置後に期待される血漿濃度を推定することは可能である。静脈内注射でrVIIa−FPの回収が60%高いと校正すると、ピーク血漿濃度は約90ng/mLと予測され得る。これは、明らかに検出限界を超えているため、根底にある方法論的な問題を排除し、NovoSeven(登録商標)によるs.c.処置後の、血漿中のFVIIの観察を防ぐことができる可能性がある。アルブミンへの融合によって達成される最小の利点を推定する第2段階において、実質的にNovoSeven(登録商標)に有利となるような最も良いケースシナリオを仮定してもよい。これは、NovoSeven(登録商標)が実際に血漿中に輸送されるが、達成されたピーク濃度が全ての時点において25ng/mLの検出レベルをごくわずかに下回ったままであったので観察することができなかったという仮定に基づく。NovoSeven(登録商標)は血漿中に存在し得る持続期間に関して、NovoSeven(登録商標)にとっての最良のケースは、その末梢での半減期が約6倍短いにもかかわらず、rVIIa−FPと同じ時間経過を仮定することである。得られたAUDCは、NovoSeven(登録商標)が550h*ng/mL、およびrVIIa−FPが約2200h*ng/mLであった。したがって、NovoSeven(登録商標)に非常に有利となるシナリオにおいて、血管外注射後のrVIIa−FPの生体内回収率は、少なくともNovoSeven(登録商標)よりも約4倍高いということが結論付けられた。
【0084】
(実施例2)血友病Bモデル(FIXノックアウトマウス)における皮下投与したrIX−FPのバイオアベイラビリティの評価
血管外注射がrIX−FP(ヒト)による向上された治療の選択肢であり得るか否かを評価するために、血管外治療の典型的な代表である皮下注射を選択した。このような実施例を調査する非臨床的な薬物動態学研究のデザインを表4に詳述した。血漿中濃度の時間経過を、血友病Bモデルに対する610IU/kgのBerinin(登録商標)またはrIX−FPの単回静脈内/皮下注射後に測定した。rIX−FPは、WO2007/144173に従い、実施例1〜3(pFIX−1088)に記載されたとおりに生成した。対応群を同じ用量のFIX:凝固活性で処置した。約25gの重さのFIXノックアウト(ko)マウスを血友病Bモデルとして用いた。これらのマウスは、FIX遺伝子のプロモーター領域が欠如しているため、FIXを発現しない(Lin等 1997,Blood,90,3962−3966)。これにより、ノックアウトマウスの血漿中FIX活性(すなわち機能的に活性なタンパク質)の定量化によって処置後のFIXレベルを分析することが可能である。短期麻酔下で、血液サンプルを眼窩後部から(retroorbitally)採取し、クエン酸カルシウムを用いて10〜20%のクエン酸血液に抗凝固処理し、血漿に処理し、そしてFIX活性の測定のために−20℃で保存した。サンプリング時間は表5に詳述されている。血漿中のFIX活性の定量は、標準的なaPPTに基づいたアプローチ(ベーリング凝固タイマー)によって実施した。これら動物を標準的な飼育条件下に置いておいた。
【0085】
FIXノックアウトマウスに対する610U/kg Berinin(登録商標)の皮下注射により、静脈内注射によって達成された血漿中レベルと比較して、血漿中レベルにおけるFIX活性のわずかな増加が得られた(図3)。皮下投与後のバイオアベイラビリティは約25%であった。皮下注射後のFIXは、約1〜2日間検出することができた。rFIX−FPに関する結果は、いくつかの局面で明らかに異なっていた:
1)rFIX−FPの皮下注射後のピーク濃度は、非融合野性型FIXであるBerininで見られるよりも約2倍高かった。
2)rFIX−FPでの皮下処置後のバイオアベイラビリティは、Berininで観察されたものよりもほぼ2倍高かった(25%と45%)。
3)Berininと対照的に、rFIX−FPの皮下注射で達成された血漿中レベルは、後期のrFIX−FP血管内注射で達成された血漿中レベルを超えた。
【0086】
これらの結果をまとめると、血管外注射は、rIX−FPによる向上された治療の価値ある選択肢であることが実証されている。より高いピーク濃度は、出血事象を予防するだけでなくことによると急性の代替治療の可能性さえも切り開いている。バイオアベイラビリティが高いほどより低用量かつ低注射量での施用が可能となり、費用効果を高め、患者の耐容性および安全性を向上することができる。最終的に、予防的な設定において、皮下投与は、静脈内注射後よりもより遅い時点でトラフレベルを達成されるため、治療間隔を広げることさえも可能となる。
【0087】
【表4】

【0088】
【表5】

【0089】
(実施例3):血友病Aモデル(FVIIIノックアウトマウス)における皮下投与したrVIII−FPのバイオアベイラビリティの評価
血管外注射がrVIII−FP(ヒト)による向上された治療の選択肢であり得るか否かを評価するために、血管外治療の典型的な代表である皮下注射を選択した。実施された可能な非臨床的薬物動態学研究のデザインを表7に詳述した。血漿中濃度の時間経過を、血友病Aモデルに対するReFactoまたはrFVIII−FPの単回静脈内/皮下注射後に測定した。対応群を同じ用量のFVIII:凝固活性で処置した。約25gの重さのFVIIIノックアウト(ko)マウスを血友病Aモデルとして用いた。これらのマウスは、エキソン16および17を欠いているので、FVIIIを発現しない(Bi L.等,Nature genetics,1995,Vol10(1),119−121;Bi L.等,Blood,1996,Vol88(9),3446−3450)。これにより、ノックアウトマウスの血漿中FVIII活性の定量化によって処置後のFVIIIレベルを分析することが可能である。処置の概要を表8に示す。短期麻酔下で、血液サンプルを眼窩後部から(retroorbitally)採取し、クエン酸カルシウムを用いて10〜20%のクエン酸血液に抗凝固処理し、血漿に処理し、そしてFVIII活性の測定のために−20℃で保存した。サンプリング時間の概要は表7に詳述されている。血漿中のFVIII活性の定量は、標準的なaPPTに基づいたアプローチ(ベーリング凝固タイマー)によって実施した。その動物を標準的な飼育条件下に置いておいた。
FVIIIノックアウトマウスに対する200U/kg ReFactoの皮下注射により、静脈内注射後に予測された血漿中レベルと比較して、血漿中レベルにおけるFIX活性のわずかな増加が得られた。rVIII−FP(ヒト)(グループ2および4)での対応する処置との比較により、血管外注射がrVIII−FPによる向上された治療のための選択肢であるか否かの評価のための結果がもたらされる。
【0090】
【表6】

【0091】
【表7】

【0092】
(実施例4):VWDまたは血友病Aモデル(VWFまたはFVIIIノックアウトマウス)における皮下投与したrVWF−FPのバイオアベイラビリティの評価
血管外注射がrVWF−FP(ヒト)による向上された治療の選択肢であり得るか否かを評価するために、血管外治療の典型的な代表である皮下注射を選択した。実施された可能な非臨床的薬物動態学研究のデザインを表10に詳述した。グループ1、2および4〜6は、この表中に詳述したように処置し、適切な場合他の用量のVWF:Agを注射した。血漿中レベルの時間経過を、血友病Aまたはフォン・ウィルブランド病(VWD)モデル動物に対するHaemate(登録商標)P、rVWF−FPまたはVWFのグリコシル化変異体の単回静脈内/皮下注射後に測定した。対応群を同じ用量のVWF:Agで処置した。約25gの重さのFVIIIノックアウト(ko)マウスを血友病Aモデルとして用いた。これらのマウスは、エキソン16および17を欠いているので、FVIIIを発現しない(Bi L.等,Nature genetics,1995,Vol10(1),119−121;Bi L.等,Blood,1996,Vol88(9),3446−3450)。約25gの重さのVWFノックアウト(ko)マウスをVWDモデルとして用いた。これらのマウスは、VWF遺伝子のエキソン4および5を欠いているので、VWFを発現しない(Denis C.等,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1998,Vol95,9524−9529)。
【0093】
処置の概要を表6に示す。短期麻酔下で、血液サンプルを眼窩後部から(retroorbitally)採取し、クエン酸カルシウムを用いて10〜20%のクエン酸血液に抗凝固処理し、血漿に処理し、そしてFVIII活性の測定のために−20℃で保存した。サンプリング時間は表7に詳述されている。血漿中のヒトVWF:Agの定量は、市販されているELISA試験キット(Asserachrom(登録商標)、Diagnostica Stago)によって実施した。これらの動物を標準的な飼育条件下に置いておいた。
【0094】
マウスに対する約1400U/kgのVWF:Ag U/kg Haemate(登録商標)Pの皮下注射により、静脈内注射後に予測された血漿中レベルと比較して、血漿におけるヒトVWF:Agの増加が得られた。rVWF−FP(ヒト)での対応する処置(グループ2および5)、ならびにVWFグリコシル化変異体での対応する処置(グループ3および6)との比較により、血管外注射がrVIII−FPおよびVWFグリコシル化変異体による向上された治療のための選択肢であるか否かの評価のための結果がもたらされる。
【0095】
【表8】

【0096】
【表9】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
出血性障害の治療および予防処置における非静脈内投与のための、アルブミン融合凝固因子を含んでなる医薬製剤。
【請求項2】
凝固因子が、第IX因子、第VII因子、第VIII因子、フォン・ウィルブラント因子、第V因子、第X因子、第XI因子、第XII因子、第XIII因子、第I因子、第II因子(プロトロンビン)、プロテインC、プロテインS、GAS6またはプロテインZならびにこれらの活性化形態からなるリストより選択される、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項3】
凝固因子が、第IX因子、第VII因子、第VIII因子、フォン・ウィルブラント因子ならびにこれらの活性化形態からなるリストより選択される、請求項1または2に記載の医薬製剤。
【請求項4】
凝固因子が、第VII因子またはFVIIa因子である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の医薬製剤。
【請求項5】
出血性障害が、家族性または後天性血友病AおよびB、単一の臓器や骨の損傷、または多発外傷のいずれかによる重症の出血を引き起こすあらゆるタイプの外傷(鈍的または穿通性)、周術期または術後の出血を含む外科手術中の出血、小児の心臓外科手術における体外循環および血液希釈を受けている患者を含む心臓外科手術に起因する出血、脳内出血、クモ膜下出血、硬膜下または硬膜外出血、罹患した患者における凝固因子レベルの低下に至らしめる、血漿以外の循環血代用液による血液損失および血液希釈に起因する出血、播種性血管内凝固(DIC)および消費性凝固障害に起因する出血、血小板機能異常、減少および凝固障害、肝硬変、肝機能不全および劇症肝不全に起因する出血、肝臓病を有する患者における肝生検、肝臓およびその他の臓器の移植後の出血、胃静脈瘤からの出血、および消化性潰瘍の出血、機能性不正子宮出血(DUB)、早期胎盤剥離、低体重出生児における脳室内出血、分娩後出血、新生児仮死のような婦人科の出血、やけどに関連する出血、アミロイド症に関連する出血、血小板障害に関連する造血幹細胞移植、悪性疾患に関連する出血、出血性ウイルス感染、膵臓炎に関連する出血、からなるリストより選択される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の医薬製剤。
【請求項6】
非静脈内投与が、皮下、経皮または筋肉内投与である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の医薬製剤。
【請求項7】
非静脈内投与が皮下投与である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の医薬製剤。
【請求項8】
凝固因子がペプチドリンカーを介してアルブミンに結合する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の医薬製剤。
【請求項9】
ペプチドリンカーがタンパク質分解的切断可能である、請求項8に記載の医薬製剤。
【請求項10】
凝固因子のアルブミンへの融合による、凝固因子の非静脈内投与後の生体内回収率を増加させるための方法。
【請求項11】
凝固因子が、第IX因子、第VII因子、第VIII因子、フォン・ウィルブラント因子、第V因子、第X因子、第XI因子、第XII因子、第XIII因子、第I因子、第II因子(プロトロンビン)、プロテインC、プロテインS、GAS6またはプロテインZならびにこれらの活性化形態からなるリストより選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
凝固因子が、第IX因子、第VII因子、第VIII因子、フォン・ウィルブラント因子ならびにこれらの活性化形態からなるリストより選択される、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
凝固因子が、第VII因子またはFVIIa因子である、請求項10〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
凝固因子がペプチドリンカーを介してアルブミンに結合する、請求項10〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
ペプチドリンカーがタンパク質分解的切断可能である、請求項10〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
非静脈内投与が、皮下、経皮または筋肉内投与である、請求項10〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
非静脈内投与が皮下投与である、請求項10〜16のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−502397(P2013−502397A)
【公表日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−525170(P2012−525170)
【出願日】平成22年8月18日(2010.8.18)
【国際出願番号】PCT/EP2010/062069
【国際公開番号】WO2011/020866
【国際公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(597070264)ツェー・エス・エル・ベーリング・ゲー・エム・ベー・ハー (32)
【Fターム(参考)】