説明

出血性障害を治療するための方法及び組成物

本発明の態様は、対象の血液凝固を増強する方法を含む。特定の実施形態による方法の実施において、一定量の非抗凝固性の硫酸化多糖(NASP)を対象に投与して、対象の血液凝固を増強する。また、血液凝固増強活性を有するNASP組成物の調製方法も、提供する。本発明の方法を実施するための組成物及びキットも記載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、35U.S.C.§119(e)に従って、参照により本明細書に組み込まれている、2010年1月14日出願の米国仮特許出願第61/335,964号の優先権を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
出血は、疾患の最も重篤で重要な発現症状の1つであり、局所部位から起こるか、又は全身性であり得る。局在的な出血は病変と関連する可能性があり、止血機構の欠陥によって更に複雑化し得る。先天性凝固障害によって生じ得る出血障害、後天性凝固障害又は外傷によって誘発される出血症状においては、血液凝固が不十分である。いずれかの凝固因子の先天性又は後天性欠乏が、出血傾向と関連する可能性がある。先天性凝固障害の一部として、血友病、凝固第VIII因子(血友病A)の欠乏又は第IX因子(血友病B)の欠乏を伴う劣性X連鎖障害、及びフォンビルブランド(von Willebrand)因子の重度欠乏を伴うまれな出血障害であるフォンビルブランド病が挙げられる。後天性凝固障害は、出血の既往歴のない個体においても、疾病過程の結果として起こり得る。例えば、後天性凝固障害は、血液凝固因子、例えば、第VIII因子、フォンビルブラント因子、第IX因子、第V因子、第XI因子、第XII因子及び第XIII因子に対する阻害剤若しくは自己免疫によって、又は凝固因子の合成低下と関連する可能性のある肝疾患に起因するような止血障害によって引き起こされる場合がある。
【発明の概要】
【0003】
本発明の態様は、対象の血液凝固を増強する方法を含む。特定の実施形態による方法の実施において、一定量の非抗凝固性の硫酸化多糖(NASP)を対象に投与して、対象の血液凝固を増強する。また、血液凝固増強活性を有するNASP組成物の調製方法も、提供する。本発明の方法を実施するための組成物及びキットも記載する。
【0004】
特定の実施形態において、本発明は、8重量%以上の硫黄含量を有するNASPの一定量を有する組成物を対象に投与することによって、血液凝固を増強する方法を提供する。一部の例では、NASPはフコイダンである。例えば、これらの実施形態において、フコイダンは、Fucoidan GFS5508005、発熱物質が除去されたワカメ(Undaria pinnatifida);Fucoidan GFS5508004、ワカメ;Fucoidan GFS5508003、ワカメ;Fucoidan 5307002、コンブ(Fucus vesiculosus)、最大MWピーク126.7kD;Fucoidan VG49、コンブ、MWが比較的低い、5307002の加水分解試料、最大MWピーク22.5kD;Fucoidan 5308004、コンブ;Fucoidan 5308005、コンブ;Fucoidan L/FVF1091、コンブ;Fucoidan VG201096A、コンブ;Fucoidan VG201096B、コンブ;Fucoidan VG57、ワカメ、高荷電(高硫酸化、脱アセチル化);Fucoidan VG50、アスコフィラム・ノドサム(Ascophyllum nodosum)、最大MWピーク149.7kD;及びそれらの組み合わせであることができる。
【0005】
一部の例では、本発明の方法は、血液凝固因子を、8%以上の硫黄含量を有するNASPと一緒に対象に投与することを更に含む。これらの場合、血液凝固因子としては、第Xa因子、第IXa因子、第XIa因子、第XIIa因子、第VIIIa因子、プレカリクレイン及び高分子量キニノーゲン、組織因子、第VIIa因子、第Va因子、第Xa因子、第II因子、第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XI因子、第XII因子、第XIII因子、フォンビルブランド因子並びにそれらの組み合わせを挙げることができるが、これらに限定するものではない。例えば、一部の実施形態において、本発明の方法は、8%以上の硫黄含量を有するNASPの一定量と第VIII因子とを対象に投与することを含む。別の実施形態において、本発明の方法は、8%以上の硫黄含量を有するNASPの一定量と第IX因子とを対象に投与することを含む。
【0006】
特定の実施形態において、本発明の態様はまた、生物学的供給源からのNASPの抽出及び抽出NASPの硫黄含量の増加による、血液凝固増強活性を有するNASPの調製方法を提供する。例えば、一部の例では、NASPの硫黄含量は、10重量%以上の硫黄含量を有するNASPを生じるのに十分なように、増加させることができる。他の例では、NASPの硫黄含量は、15重量%以上の硫黄含量を有するNASPを生じるのに十分なように、増加させることができる。
【0007】
特定の実施形態において、本発明は、40%以上のフコースサッカリド残基を有するNASPの一定量を対象に投与することによる、血液凝固の増強方法を提供する。一部の例では、NASPはフコイダンである。例えば、これらの実施形態において、フコイダンは、Fucoidan GFS5508005、発熱物質が除去されたワカメ;Fucoidan GFS5508004、ワカメ;Fucoidan VG23、E.Maxima;Fucoidan L/FVF1093、コンブ;Fucoidan L/FVF1092、コンブ;及びそれらの組み合わせであることができる。
【0008】
特定の実施形態において、本発明の方法は、血液凝固因子を40%以上のフコースサッカリド残基を有するNASPと組み合わせて対象に投与することを更に含む。これらの場合、血液凝固因子としては、第Xa因子、第IXa因子、第XIa因子、第XIIa因子、第VIIIa因子、プレカリクレイン及び高分子量キニノーゲン、組織因子、第VIIa因子、第Va因子、第Xa因子、第II因子、第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XI因子、第XII因子、第XIII因子、フォンビルブランド因子並びにそれらの組み合わせを挙げることができるが、これらに限定するものではない。例えば、一実施形態において、本発明の方法は、40%以上のフコースサッカリド残基を有するNASPの一定量と第VIII因子とを対象に投与することを含む。別の実施形態において、方法は、40%以上のフコースサッカリド残基を有するNASPの一定量と第IX因子とを対象に投与することを含む。
【0009】
特定の実施形態において、本発明は、Fucoidan 5307002、コンブ、最大MWピーク126.7kD;Fucoidan VG49、コンブ、MWが比較的低い5307002の加水分解試料、最大MWピーク22.5kD;Fucoidan VG57、ワカメ、高荷電(高硫酸化、脱アセチル化);Fucoidan GFS(5508005)、発熱物質が除去されたワカメ;Fucoidan GFS(L/FVF−01091)、発熱物質が除去されたコンブ、最大MWピーク125kD;Fucoidan GFS(L/FVF−01092)、発熱物質が除去されたコンブ、最大MWピーク260kD;Fucoidan GFS(L/FVF−01093)、加水分解され、発熱物質が除去されたコンブ、最大MWピーク36kD;Maritech(登録商標)エクロニア・ラジアータ(Ecklonia radiata)抽出物;Maritech(登録商標)エクロニア・マキシマ(Ecklonia maxima)抽出物;Maritech(登録商標)マクロシスティス・ピリフェラ(Macrocystis pyrifera)抽出物;Maritech(登録商標)免疫試験用フコイダンブレンド(Immune trial Fucoidan Blend);及びそれらの組み合わせのうち1種又はそれ以上の一定量を対象に投与することによる、血液凝固の増強方法を提供する。
【0010】
特定の実施形態において、本発明の方法は、血液凝固を増強する量のFucoidan GFS(L/FVF−01091)(発熱物質が除去されたコンブ、最大MWピーク125kD)を対象に投与することによって血液凝固を増強することを含む。
【0011】
一部の例では、本発明の方法は、血液凝固因子を前記フコイダンの1種と一緒に対象に投与することを更に含むことができる。これらの場合、血液凝固因子としては、第Xa因子、第IXa因子、第XIa因子、第XIIa因子、第VIIIa因子、プレカリクレイン及び高分子量キニノーゲン、組織因子、第VIIa因子、第Va因子、第Xa因子、第II因子、第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XI因子、第XII因子、第XIII因子、フォンビルブランド因子並びにそれらの組み合わせを挙げることができるが、これらに限定するものではない。例えば、一部の実施形態において、本発明の方法は、Fucoidan GFS(L/FVF−01091)(発熱物質が除去されたコンブ、最大MWピーク125kD)の一定量と第VIII因子とを対象に投与することを含む。別の実施形態において、方法は、Fucoidan GFS(L/FVF−01091)(発熱物質が除去されたコンブ、最大MWピーク125kD)の一定量と第IX因子とを対象に投与することを含む。
【0012】
特定の実施形態において、本発明の組成物は、dPTアッセイにおいて試験する場合に、血液凝固時間を減少させる。更なる実施形態において、当該組成物は、較正自動トロンボグラフィー(calibrated automated thrombography)(CAT)を使用して決定する場合に、第VIII因子及び/又は第IX因子が欠乏している血漿中で血液凝固促進活性(procoagulant activity)を示す。
【0013】
本発明の態様
1.8重量%以上の硫黄含量を含む非抗凝固性の硫酸化多糖(NASP)を、対象の血液凝固を増強するのに有効な量で含む組成物を対象に投与することを含む、対象の血液凝固の増強方法。
【0014】
2.NASPが、生物学的供給源から抽出される、請求項1に記載の方法。
【0015】
3.NASPがフコイダンである、請求項1に記載の方法。
【0016】
4.NASPが、Fucoidan GFS5508005、発熱物質が除去されたワカメ(Undaria pinnatifida);Fucoidan GFS5508004、ワカメ;Fucoidan GFS5508003、ワカメ;Fucoidan 5307002、コンブ(Fucus vesiculosus)、最大MWピーク126.7kD;Fucoidan VG49、コンブ、MWが比較的低い、5307002の加水分解試料、最大MWピーク22.5kD;Fucoidan 5308004、コンブ;Fucoidan 5308005、コンブ;Fucoidan L/FVF1091、コンブ;Fucoidan VG201096A、コンブ;Fucoidan VG201096B、コンブ;Fucoidan VG57、ワカメ、高荷電(高硫酸化、脱アセチル化);Fucoidan VG50、アスコフィラム・ノドサム(Ascophyllum nodosum)、最大MWピーク149.7kD;及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるフコイダンである、請求項3に記載の方法。
【0017】
5.NASPが、10〜30,000ダルトンの範囲の分子量を有する、請求項1に記載の方法。
【0018】
6.NASPを、0.01mg/kg〜100mg/kgの範囲の投与量で投与する、請求項1に記載の方法。
【0019】
7.対象に血液凝固因子を投与することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【0020】
8.血液凝固因子をNASPと一緒に対象に投与する、請求項7に記載の方法。
【0021】
9.血液凝固因子が、第Xa因子、第IXa因子、第XIa因子、第XIIa因子、第VIIIa因子、プレカリクレイン及び高分子量キニノーゲン、組織因子、第VIIa因子、第Va因子、第Xa因子、第II因子、第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XI因子、第XII因子、第XIII因子、フォンビルブランド因子並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項7に記載の方法。
【0022】
10.血液凝固因子が、第VIII因子である、請求項9に記載の方法。
【0023】
11.血液凝固因子が、第IX因子である、請求項9に記載の方法。
【0024】
12.対象が、慢性又は急性出血性障害、血液因子欠乏症に起因する先天性凝固障害、後天性凝固障害及び抗凝固剤の投与からなる群から選択される出血性障害を有すると診断されている、請求項1に記載の方法。
【0025】
13.8重量%以上の硫黄含量を含むNASPと
血液凝固因子と
を含む組成物。
【0026】
14.NASPが、生物学的供給源から抽出される、請求項13に記載の組成物。
【0027】
15.NASPがフコイダンである、請求項14に記載の組成物。
【0028】
16.NASPが、Fucoidan GFS5508005、発熱物質が除去されたワカメ(Undaria pinnatifida);Fucoidan GFS5508004、ワカメ;Fucoidan GFS5508003、ワカメ;Fucoidan 5307002、コンブ(Fucus vesiculosus)、最大MWピーク126.7kD;Fucoidan VG49、コンブ、MWが比較的低い、5307002の加水分解試料、最大MWピーク22.5kD;Fucoidan 5308004、コンブ;Fucoidan 5308005、コンブ;Fucoidan L/FVF1091、コンブ;Fucoidan VG201096A、コンブ;Fucoidan VG201096B、コンブ;Fucoidan VG57、ワカメ、高荷電(高硫酸化、脱アセチル化);Fucoidan VG50、アスコフィラム・ノドサム(Ascophyllum nodosum)、最大MWピーク149.7kD;及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるフコイダンである、請求項15に記載の組成物。
【0029】
17.NASPが、10〜30,000ダルトンの範囲の分子量を有する、請求項13に記載の組成物。
【0030】
18.血液凝固因子が、第Xa因子、第IXa因子、第XIa因子、第XIIa因子、第VIIIa因子、プレカリクレイン及び高分子量キニノーゲン、組織因子、第VIIa因子、第Va因子、第Xa因子、第II因子、第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XI因子、第XII因子、第XIII因子、フォンビルブランド因子並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項13に記載の組成物。
【0031】
19.血液凝固因子が、第VIII因子である、請求項18に記載の組成物。
【0032】
20.血液凝固因子が、第IX因子である、請求項18に記載の組成物。
【0033】
21.生物学的供給源からNASPを抽出するステップと、
抽出されたNASPの硫黄含量を増加するステップと
を含む、血液凝固増強活性を有するNASPの調製方法。
【0034】
22.抽出されたNASPの硫黄含量を増加するステップが、10重量%以上の硫黄含量を含むNASPを得るのに充分なようにNASPを化学的に硫酸化するステップを含む、請求項21に記載の方法。
【0035】
23.15重量%以上の硫黄含量を含むNASPを得るのに充分なようにNASPを化学的に硫酸化するステップを含む、請求項21に記載の方法。
【0036】
24.NASPを化学的に硫酸化するステップが、1つ又は複数の硫酸陰イオンをNASPの1つ又は複数の遊離ヒドロキシル基に結合するステップを含む、請求項21に記載の方法。
【0037】
25.40%以上のフコースサッカリド残基を有するNASPを、対象の血液凝固を増強するのに有効な量で含む組成物を対象に投与することを含む、患者の血液凝固の増強方法。
【0038】
26.NASPのサッカリド残基の少なくとも2つが、フコース、ガラクトース、グルコース、キシロース及びマンノースからなる群から選択される、請求項25に記載の方法。
【0039】
27.NASPが、40%以上のフコースサッカリド残基及び20%以上のガラクトースサッカリド残基を含む、請求項25に記載の方法。
【0040】
28.NASPが分岐多糖である、請求項25に記載の方法。
【0041】
29.NASPが線状多糖である、請求項25に記載の方法。
【0042】
30.NASPのサッカリド残基の75%以上が一硫酸化されている、請求項25に記載の方法。
【0043】
31.NASPが、40%以上の、フコースサッカリド残基の硫酸化エステルを含む、請求項25に記載の方法。
【0044】
32.NASPがフコイダンである、請求項25に記載の方法。
【0045】
33.NASPが、Fucoidan GFS5508005、発熱物質が除去されたワカメ;Fucoidan GFS5508004、ワカメ;Fucoidan VG23、E.Maxima;Fucoidan L/FVF1093、コンブ;Fucoidan L/FVF1092、コンブ;及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるフコイダンである、請求項32に記載の方法。
【0046】
34.NASPが、10〜30,000ダルトンの範囲の分子量を有する、請求項25に記載の方法。
【0047】
35.NASPを、0.01mg/kg〜100mg/kgの範囲の投与量で対象に投与する、請求項25に記載の方法。
【0048】
36.対象に血液凝固因子を投与することを更に含む、請求項25に記載の方法。
【0049】
37.血液凝固因子をNASPと一緒に対象に投与する、請求項36に記載の方法。
【0050】
38.血液凝固因子が、第Xa因子、第IXa因子、第XIa因子、第XIIa因子、第VIIIa因子、プレカリクレイン及び高分子量キニノーゲン、組織因子、第VIIa因子、第Va因子、第Xa因子、第II因子、第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XI因子、第XII因子、第XIII因子、フォンビルブランド因子並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項36に記載の方法。
【0051】
39.血液凝固因子が、第VIII因子である、請求項38に記載の方法。
【0052】
40.血液凝固因子が、第IX因子である、請求項38に記載の方法。
【0053】
41.対象が、慢性又は急性出血性障害、血液因子欠乏症に起因する先天性凝固障害、後天性凝固障害及び抗凝固剤の投与からなる群から選択される出血性障害を有すると診断されている、請求項25に記載の方法。
【0054】
42.40%以上のフコースサッカリド残基を含むNASPと、
血液凝固因子と
を含む組成物。
【0055】
43.NASPのサッカリド残基の少なくとも2つが、フコース、ガラクトース、グルコース、キシロース及びマンノースからなる群から選択される、請求項42に記載の組成物。
【0056】
44.NASPが、40%以上のフコースサッカリド残基及び20%以上のガラクトースサッカリド残基を含む、請求項42に記載の組成物。
【0057】
45.NASPが分岐多糖である、請求項42に記載の組成物。
【0058】
46.NASPが線状多糖である、請求項42に記載の組成物。
【0059】
47.NASPのサッカリド残基の75%以上が一硫酸化されている、請求項42に記載の組成物。
【0060】
48.NASPが、40%以上の、フコースサッカリド残基の硫酸化エステルを含む、請求項42に記載の組成物。
【0061】
49.NASPがフコイダンである、請求項42に記載の組成物。
【0062】
50.NASPが、Fucoidan GFS5508005、発熱物質が除去されたワカメ;Fucoidan GFS5508004、ワカメ;Fucoidan VG 23、E.Maxima;Fucoidan L/FVF1093、コンブ;Fucoidan L/FVF1092、コンブ;及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるフコイダンである、請求項49に記載の組成物。
【0063】
51.NASPが、10〜30,000ダルトンの範囲の分子量を有する、請求項42に記載の組成物。
【0064】
52.血液凝固因子が、第Xa因子、第IXa因子、第XIa因子、第XIIa因子、第VIIIa因子、プレカリクレイン及び高分子量キニノーゲン、組織因子、第VIIa因子、第Va因子、第Xa因子、第II因子、第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XI因子、第XII因子、第XIII因子、フォンビルブランド因子並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項42に記載の組成物。
【0065】
53.血液凝固因子が、第VIII因子である、請求項52に記載の組成物。
【0066】
54.血液凝固因子が、第IX因子である、請求項52に記載の組成物。
【0067】
55.Fucoidan 5307002、コンブ、最大MWピーク126.7kD;Fucoidan VG49、コンブ、MWが比較的低い5307002の加水分解試料、最大MWピーク22.5kD;Fucoidan VG57、ワカメ、高荷電(高硫酸化、脱アセチル化);Fucoidan GFS(5508005)、発熱物質が除去されたワカメ;Fucoidan GFS(L/FVF−01091)、発熱物質が除去されたコンブ、最大MWピーク125kD;Fucoidan GFS(L/FVF−01092)、発熱物質が除去されたコンブ、最大MWピーク260kD;Fucoidan GFS(L/FVF−01093)、加水分解され、発熱物質が除去されたコンブ、最大MWピーク36kD;Maritech(登録商標)エクロニア・ラジアータ(Ecklonia radiata)抽出物;Maritech(登録商標)エクロニア・マキシマ(Ecklonia maxima)抽出物;Maritech(登録商標)マクロシスティス・ピリフェラ(Macrocystis pyrifera)抽出物;Maritech(登録商標)免疫試験用フコイダンブレンド(Immune trial Fucoidan Blend);及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるNASPを含む組成物を、血液凝固の増強に有効な量で対象に投与することを含む、対象の血液凝固の増強方法。
【0068】
56.NASPが、10〜30,000ダルトンの範囲の分子量を有する、請求項55に記載の方法。
【0069】
57.NASPを、0.01mg/kg〜100mg/kgの範囲の投与量で投与する、請求項55に記載の方法。
【0070】
58.対象に血液凝固因子を投与することを更に含む、請求項55に記載の方法。
【0071】
59.血液凝固因子をNASPと一緒に対象に投与する、請求項58に記載の方法。
【0072】
60.血液凝固因子が、第Xa因子、第IXa因子、第XIa因子、第XIIa因子、第VIIIa因子、プレカリクレイン及び高分子量キニノーゲン、組織因子、第VIIa因子、第Va因子、第Xa因子、第II因子、第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XI因子、第XII因子、第XIII因子、フォンビルブランド因子並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項58に記載の方法。
【0073】
61.血液凝固因子が、第VIII因子である、請求項60に記載の方法。
【0074】
62.血液凝固因子が、第IX因子である、請求項60に記載の方法。
【0075】
63.対象が、慢性又は急性出血性障害、血液因子欠乏症に起因する先天性凝固障害、後天性凝固障害及び抗凝固剤の投与からなる群から選択される出血性障害を有すると診断されている、請求項55に記載の方法。
【0076】
64.Fucoidan 5307002、コンブ、最大MWピーク126.7kD;Fucoidan VG49、コンブ、MWが比較的低い5307002の加水分解試料、最大MWピーク22.5kD;Fucoidan VG57、ワカメ、高荷電(高硫酸化、脱アセチル化);Fucoidan GFS(5508005)、発熱物質が除去されたワカメ;Fucoidan GFS(L/FVF−01091)、発熱物質が除去されたコンブ、最大MWピーク125kD;Fucoidan GFS(L/FVF−01092)、発熱物質が除去されたコンブ、最大MWピーク260kD;Fucoidan GFS(L/FVF−01093)、加水分解され、発熱物質が除去されたコンブ、最大MWピーク36kD;Maritech(登録商標)エクロニア・ラジアータ(Ecklonia radiata)抽出物;Maritech(登録商標)エクロニア・マキシマ(Ecklonia maxima)抽出物;Maritech(登録商標)マクロシスティス・ピリフェラ(Macrocystis pyrifera)抽出物;Maritech(登録商標)免疫試験用フコイダンブレンド(Immune trial Fucoidan Blend);及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるNASPと
血液凝固因子と
を含む組成物。
【0077】
65.NASPが、10〜30,000ダルトンの範囲の分子量を有する、請求項64に記載の組成物。
【0078】
66.血液凝固因子が、第Xa因子、第IXa因子、第XIa因子、第XIIa因子、第VIIIa因子、プレカリクレイン及び高分子量キニノーゲン、組織因子、第VIIa因子、第Va因子、第Xa因子、第II因子、第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XI因子、第XII因子、第XIII因子、フォンビルブランド因子並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項64に記載の組成物。
【0079】
67.血液凝固因子が、第VIII因子である、請求項66に記載の組成物。
【0080】
68.血液凝固因子が、第IX因子である、請求項66に記載の組成物。
【0081】
69.(a)(i)8重量%以上の硫黄含量を含むNASP、
(ii)40%以上のフコースサッカリド残基を含むNASP、
(iii)Fucoidan 5307002、コンブ、最大MWピーク126.7kD;Fucoidan VG49、コンブ、MWが比較的低い5307002の加水分解試料、最大MWピーク22.5kD;Fucoidan VG57、ワカメ、高荷電(高硫酸化、脱アセチル化);Fucoidan GFS(5508005)、発熱物質が除去されたワカメ;Fucoidan GFS(L/FVF−01091)、発熱物質が除去されたコンブ、最大MWピーク125kD;Fucoidan GFS(L/FVF−01092)、発熱物質が除去されたコンブ、最大MWピーク260kD;Fucoidan GFS(L/FVF−01093)、加水分解され、発熱物質が除去されたコンブ、最大MWピーク36kD;Maritech(登録商標)エクロニア・ラジアータ(Ecklonia radiata)抽出物;Maritech(登録商標)エクロニア・マキシマ(Ecklonia maxima)抽出物;Maritech(登録商標)マクロシスティス・ピリフェラ(Macrocystis pyrifera)抽出物;Maritech(登録商標)免疫試験用フコイダンブレンド(Immune trial Fucoidan Blend)からなる群から選択されるNASP、及び
(iv)それらの組み合わせ
からなる群から選択されるNASPと
(b)血液凝固因子と
を含むキット。
【0082】
70.NASPが、10〜30,000ダルトンの範囲の分子量を有する、請求項69に記載のキット。
【0083】
71.血液凝固因子が、第Xa因子、第IXa因子、第XIa因子、第XIIa因子、第VIIIa因子、プレカリクレイン及び高分子量キニノーゲン、組織因子、第VIIa因子、第Va因子、第Xa因子、第II因子、第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XI因子、第XII因子、第XIII因子、フォンビルブランド因子並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項69に記載のキット。
【0084】
72.血液凝固因子が、第VIII因子である、請求項71に記載のキット。
【0085】
73.血液凝固因子が、第IX因子である、請求項71に記載のキット。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】較正自動トロンボグラフィー(CAT)を用いて測定された、第VIII因子阻害血漿中におけるトロンビン産生機構を示す図である。
【図2】較正自動トロンボグラフィー(CAT)を用いて測定された、第VIII因子阻害血漿中における、コンブフコイダンL/FVF−1091の血液凝固促進活性に関して取得されたデータの一例を示すグラフである。
【図3】実験セットアップ、及び活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)アッセイによって測定されたメカニズムを示す図である。
【図4】活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)アッセイを用いて測定された、凝固促進活性及び抗凝固活性に関して取得されたデータの一例を示すグラフである。
【図5−6】回転トロンボエラストメトリー(Rotation Thromboelastometry)を用いて測定された、凝固時間、血餅形成時間及び平均血餅形成の決定におけるデータの取得の例を示すグラフである。
【図7】フコイダン試料の単糖組成を決定するためのイオンクロマトグラム(IC)を示す図である。
【図8−10】イオンクロマトグラフィーによって測定された、数種のNASPの単糖組成を示すグラフである。
【図11】フコイダン試料のフコース及びアルギネート含量並びに不均一性を決定するためのNMRスペクトルを示す図である。
【図12】フコイダンの%吸収率を決定するためのCaCo2バイオアベイラビリティースクリーニングの実験セットアップを示す図である。
【図13】コンブフコイダンL/FVF−1091のCaCo2バイオアベイラビリティースクリーニングにおいて吸収されたNASPの量の一例を示すグラフである。
【図14】第VIII因子阻害血漿中におけるフコイダンによるTFPIの阻害機序を決定するために、較正自動トロンボグラフィー(CAT)を使用して測定された、数種のフコイダンの血液凝固促進活性に関して取得されたデータの一例を示すグラフである。
【図15】正常血漿中におけるフコイダンによるTFPIの阻害機序を決定するために、較正自動トロンボグラフィー(CAT)を使用して測定された、数種のフコイダンの血液凝固促進活性に関して取得されたデータの一例を示すグラフである。
【図16】第VIII因子阻害dFX血漿中におけるフコイダンによるTFPIの阻害機序を決定するために、較正自動トロンボグラフィー(CAT)を使用して測定された、数種のフコイダンの血液凝固促進活性に関して取得されたデータの一例を示すグラフである。
【図17】表面プラズモン共鳴実験(Biacore 3000、G.E. Healthcare)によって測定された、フコイダンとヒトTFPIタンパク質との相互作用を厳密に調べるための研究の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0087】
関連定義
本発明を記載する際には、以下の用語を使用する。これらは、以下に示すように定義するものとする。
【0088】
本明細書及び添付した「特許請求の範囲」中で使用する単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈からそうでないことが明白に示されない限り、複数の指示対象を含むことに留意しなければならない。したがって、例えば、1種の「NASP」への言及は、所望に応じて、2種以上のNASPの混合物を含んでいてもよい。
【0089】
本明細書中で使用する「NASP」は、本明細書中に記載する種々の凝固アッセイのいずれかにおいて非抗凝固活性及び抗凝固活性を示す、生物学的供給源から抽出された硫酸化多糖(SP)を指す。活性の1つの尺度は、NASPによって示される凝固時間をヘパリンによって示される抗凝固活性と比較することである。例えば、当該NASPは、希釈プロトロンビン時間(dPT)アッセイ又は活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)凝固アッセイにおいて、非分画ヘパリン(MW範囲8,000〜30,000;平均18,000ダルトン)のモル抗凝固活性の1/3以下、例えば1/10未満の抗凝固活性を示す。したがって、当該NASPは、本明細書において提供する方法及び組成物を用いることによって、ヘパリンと比較して、2倍以上低い、例えば5倍以上低い、例えば10倍以上低い、例えば25倍以上低い、例えば50倍以上低い、例えば100倍以上低い抗凝固活性を示す。
【0090】
当該NASPの分子量は、10〜1,000,000ダルトン、例えば100〜900,000ダルトン、例えば500〜500,000ダルトン、例えば1000〜250,000ダルトン、例えば5000〜150,000ダルトンの範囲であることができる。フコイダンの平均分子量は、約10〜約500,000ダルトン、例えば約100〜約300,000ダルトン、例えば1000〜250,000ダルトン、例えば1000〜150,000ダルトンの範囲であることができる。
【0091】
NASPは、凝固因子の欠乏に関連する出血性障害などの出血性障害を治療する際の止血を改善するために又は抗凝固剤の効果を逆転させるために、本発明の方法に使用してもよい。凝固を促進し、出血を減少させるNASPの能力は、種々のインビトロ凝固アッセイ(例えば、TFPI−dPT、トロンビン産生及びトロンボエラストグラフィー(TEG)アッセイ)及びインビボ出血モデル(例えば、血友病マウス又はイヌの、尾部小片(tail snip)、トラバースカット、全凝固時間又は角皮(cuticle)出血時間の決定)を用いて決定できる。例えば、PDR Staff. Physicians’ Desk Reference.2004、Andersonら(1976年)Thromb. Res.9:575〜580頁;Nordfangら(1991年)Thromb Haemost. 66:464〜467頁;Welschら(1991年)Thrombosis Research 64:213〜222頁;Brozeら(2001年)Thromb Haemost 85:747〜748頁;Scallanら(2003年)Blood. 102:2031〜2037頁;Pijnappelsら(1986年)Thromb. Haemost. 55:70〜73頁;及びGilesら(1982年)Blood 60:727〜730、並びにこれらに記載された例を参照のこと。
【0092】
「凝固促進剤(procoagulant)」は本明細書中で、血餅形成を開始又は促進できる任意の因子又は試薬を指すその従来の意味で使用する。本発明の凝固促進剤としては、内因性又は外因性凝固経路の任意の活性化剤、例えば、第Xa因子、第IXa因子、第XIa因子、第XIIa因子及び第VIIIa因子、プレカリクレイン、高分子量キニノーゲン、組織因子、第VIIa因子及び第Va因子からなる群から選択される凝固因子が挙げられるが、これらに限定するものではなく、更に、凝固を促進する他の試薬として、カリクレイン、APTT開始剤(即ち、リン脂質及び接触活性化剤を含有する試薬)、ラッセルクサリヘビ蛇毒(Russel’s viper venom)(RVV時間)及びトロンボプラスチン(dPT)が挙げられる。一部の実施形態において、接触活性化剤を、凝固促進試薬として使用してもよい。例えば、接触活性化剤としては、微粉化シリカ粒子、エラグ酸、スルファチド、カオリンなどを挙げることができる。凝固促進剤は、粗天然抽出物、血液若しくは血漿試料から単離し、実質的に精製したもの、合成によるもの又は組換えによるものであることができる。凝固促進剤としては、天然に存在する凝固因子、又は生物活性を保持する(すなわち、凝固を促進する)それらの断片、変異体若しくは共有結合的に修飾された誘導体を挙げることができる。
【0093】
本明細書中で使用する用語「多糖」は、共有結合によって連結されている2つ以上のサッカリド残基を含有するポリマーを指す。サッカリド残基は、例えば、グリコシド連結部分、エステル連結部分、アミド連結部分又はオキシム連結部分によって連結され得る。多糖の平均分子量は、広範囲に変化でき、例えば100〜1,000,000ダルトン及びそれ以上、例えば100〜500,000ダルトン及びそれ以上、例えば1000〜250,000ダルトン及びそれ以上、例えば1000〜100,000ダルトン及びそれ以上、例えば10,000〜50,000のダルトン及びそれ以上の範囲であることができる。多糖は、直鎖(即ち、線状)多糖若しくは分岐多糖であることもできるし、又は線状及び分岐部分の不連続領域を含むこともできる。多糖はまた、より大きい多糖の分解(例えば、加水分解)によって生じる多糖の断片であってもよい。分解は、断片化した多糖を生成するための、酸、塩基、熱、酸化剤又は酵素による多糖の処理を含む、任意の都合のよいプロトコールによって達成できる。多糖は、化学的に変化させてもよく、修飾、例えば硫酸化、ポリ硫酸化、エステル化及びメチル化(これらに限定するものではないが)してもよい。
【0094】
本明細書中に記載する分子量は、数平均分子量又は重量平均分子量のいずれかとして表すことができる。特に明記しない限り、本明細書中における分子量への言及は全て、重量平均分子量を指す。分子量の決定は、数平均分子量及び重量平均分子量のいずれも、例えば、ゲル浸透クロマトグラフィー又は他の液体クロマトグラフィー技術を用いて測定できる。
【0095】
用語「〜に由来する」は本明細書中で、分子の最初の供給源を特定するために用いるが、分子の製造方法を限定することを意味せず、例えば、化学合成又は組換え法によって製造してもよい。
【0096】
用語「変異体」、「類似体」及び「ムテイン」は、出血性障害の治療において所望の活性、例えば、凝固活性を保持する参照分子の生物活性誘導体を指す。ポリペプチド(例えば、凝固因子)に関する用語「変異体」及び「類似体」は、修飾が生物活性を損なわない限りは、天然の分子に対する1つ又は複数のアミノ酸付加、置換(一般に性質が保存的)及び/又は欠失がある、天然のポリペプチド配列及び構造を有する化合物、並びに以下に定義する参照分子と「実質的に相同」である化合物を指す。このような類似体のアミノ酸配列は、2つの配列を整列させた場合に、参照配列に対する高度な配列相同性、例えば50%以上、例えば60%以上、例えば70%以上、例えば80%以上、例えば90%以上、例えば95%以上、例えば99%以上のアミノ酸配列相同性を有する。一部の例では、類似体は、同じ数のアミノ酸を含むが、置換を含む。用語「ムテイン」は、1つ又は複数のアミノ酸様分子を有するポリペプチドを更に含み、その例としては、アミノ及び/又はイミノ分子のみを含有する化合物、アミノ酸の1つ又は複数の類似体を含有する(例えば、合成の、天然には存在しないアミノ酸などを含む)ポリペプチド、置換連結部及び当業界で知られている他の修飾を有するポリペプチド、天然に存在する及び天然に存在しない(例えば、合成の)、環化、分岐分子などが挙げられるが、これらに限定するものではない。この用語は更に、1つ又は複数のN−置換グリシン残基を含む分子(ペプトイド)及び他の合成アミノ酸又はペプチドを含む。(例えば、米国特許第5,831,005号、第5,877,278号、及び第5,977,301号、Nguyenら、Chem Biol.(2000年)7:463〜473頁、並びにSimonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1992年)89:9367〜9371頁(ペプトイドの説明に関する)を参照のこと)。本発明の実施形態において、類似体及びムテインは、天然分子と少なくとも同じ凝固活性を有する。
【0097】
前述のように、類似体は、保存的な置換、即ち、側鎖中の関連するアミノ酸のファミリー内で起きる置換を含んでいてもよい。具体的には、アミノ酸は一般に以下の4つのファミリーに分けられる:(1)酸性−アスパラギン酸塩及びグルタミン酸塩;(2)塩基性−リジン、アルギニン、ヒスチジン;(3)非極性−アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン;及び(4)非荷電極性−グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、トレオニン、チロシン。フェニルアラニン、トリプトファン及びチロシンは、芳香族アミノ酸と分類される場合もある。例えば、イソロイシン若しくはバリンによるロイシンの、グルタミン酸塩によるアスパラギン酸の、セリンによるトレオニンの孤立置換(isolated replacement)、又はアミノ酸の、構造的に関連したアミノ酸による同様な保存的置換は、生物活性に大きな影響を及ぼさない。例えば、当該ポリペプチドは、分子の所望の機能が無傷のままであるならば、最高約5〜10個の、又は更には最高約15〜25個、又は5〜25個の任意の整数個の保存的又は非保存的アミノ酸置換を含んでいてもよい。
【0098】
「誘導体」とは、参照分子の所望の生物活性(例えば、凝固活性、TFPI活性阻害)が保持されるならば、硫酸化、アセチル化、グリコシル化、リン酸化、ポリマー抱合(polymer conjugation)(例えば、ポリエチレングリコールによる)又は外来部分の他の付加などの、当該参照分子又はそれらの類似体の任意の適当な修飾形態を意味する。例えば、多糖は、1種又は複数の有機又は無機基によって誘導体化されていてもよい。例としては、少なくとも1つのヒドロキシル基が別の部分(例えば硫酸基、カルボキシル基、リン酸基、アミノ基、ニトリル基、ハロ基、シリル基、アミド基、アシル基、脂肪族基、芳香族基又はサッカリド基)で置換されている多糖、又は環酸素が硫黄、窒素、メチレン基などによって置き換えられている多糖が挙げられるが、これらに限定するものではない。多糖は、例えば凝固促進機能を改善するために、化学的に変化させてもよい。このような修飾としては、硫酸化、ポリ硫酸化、エステル化及びメチル化を挙げることができるが、これらに限定するものではない。
【0099】
「断片」とは、無傷の全長配列及び構造の一部を含有する分子を意味する。一部の例では、多糖の断片は、より大きい多糖の分解(例えば、加水分解)によって生成してもよい。本発明の多糖の活性断片は、断片が生物活性(例えば、凝固活性、又はTFPI活性を阻害する能力)を保持するならば、全長多糖の約2〜20個のサッカリド単位、例えば全長分子の約5〜10個のサッカリド単位、例えば2個のサッカリド単位と全長分子との間の任意の整数個のサッカリド単位を含んでいてもよい。ポリペプチドの断片は、天然のポリペプチドのC末端欠失、N末端欠失又は内部欠失を含み得る。特定のタンパク質の活性断片は、一部の実施形態において、当該断片が生物活性、例えば、凝固活性を保持するならば、全長分子の約5〜10個又はそれ以上の、例えば約15〜25個又はそれ以上の、例えば約20〜50個又はそれ以上の、例えば約5個のアミ酸と全長配列との間の任意の整数個の近接アミノ酸残基を含むことができる。
【0100】
「実質的に精製する(される)」とは、物質(例えば、非抗凝固性硫酸化多糖)が、それが含まれる試料の大部分となるような物質の単離を意味する。例えば、実質的に精製された試料は、当該物質を50%以上、例えば60%以上、例えば75%以上、例えば90%以上、例えば95%以上、例えば99%以上含有する。該当する多糖、ポリヌクレオチド及びポリペプチドの精製には、任意の都合のよいプロトコールを使用でき、その例としては、限外濾過、選択的沈殿、結晶化、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー及び密度による沈降分離が挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0101】
「単離する(される)」とは、多糖又はポリペプチドに関する場合には、示された分子が、自然界でそれを含んでいる生物全体から切り離され、生物体全体と別個であるか、又は同じ型の他の生物学的マクロ分子の実質的な不存在下で存在することを意味する。
【0102】
「相同性」とは、2つのポリペプチド部分間の同一性パーセントを意味する。本明細書中で言及する2つのポリペプチド配列は、約50%以上、例えば60%以上、例えば75%以上、例えば85%以上、例えば90%以上、例えば95%以上、例えば99%以上の配列同一性を示す場合に、互いに「実質的に相同」である。一部の実施形態において、実質的に相同なポリペプチドは、特定の配列に完全な同一性を有する配列を含む。
【0103】
「同一性」とは、2つのポリマー配列の正確なサブユニット対サブユニット対応を意味する。例えば、同一のポリペプチドは、別のポリペプチドと正確なアミノ酸対アミノ酸対応があるものであるか、又は同一のポリヌクレオチドは、別のポリヌクレオチドと正確なヌクレオチド対ヌクレオチド対応があるものである。同一性パーセントは、2つの分子間の(参照配列と、その参照配列との同一性%が未知である配列との間の)配列情報の直接比較によって決定できる。この直接比較は、配列を整列させ、整列した2つの配列間の正確な一致数をカウントし、参照配列の長さで割り、結果に100を掛けることによって行う。任意の都合のよいプロトコールを使用して、2つのポリマー配列間の同一性パーセントを決定できる(例えば、Smith及びWaterman(Advances in Appl.Math.2:482〜489頁、1981年)の局所的相同性アルゴリズム(local homology algorithm)をペプチド分析に適合させる、ALIGN、Dayhoff,M.O.、Atlas of Protein Sequence and Structure M.O.Dayhoff編、5 Suppl.3:353〜358頁、National Biomedical Research Foundation、ワシントンD.C.)。
【0104】
「対象」とは、脊索動物門亜門の任意のメンバー、例えば、これらに限定するものではないが、ヒト及びヒト以外の霊長類(例えば、チンパンジー及び他の類人猿並びにサル種)を含む他の霊長類;家畜、例えば、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ及びウマ;飼育哺乳類、例えば、イヌ及びネコ;齧歯動物(例えば、マウス、ラット及びモルモット)を含む実験動物;鳥類、例えば、飼育鳥、野鳥及び狩猟鳥(ニワトリ、シチメンチョウ及び他のキジ科鳥類、カモ、ガチョウなど)を意味する。この用語は、特定の年齢を意味しない。したがって、成人個体及び新生児個体も対象となる。
【0105】
用語「患者」は、本発明のNASPの投与によって予防又は治療できる状態に苦しんでいるか又はそのようになりやすい、生きている生物体を指すその従来の意味で用い、ヒト及びヒト以外の動物をいずれも含む。
【0106】
「生体試料」とは、対象から単離された組織又は体液の試料、例えば、これらに限定するものではないが、血液、血漿、血清、糞便物質、尿、骨髄、胆汁、脊髄液、リンパ液、皮膚の試料、皮膚、気道、腸管及び尿生殖路の外分泌物、涙、唾液、乳汁、血球、器官、生検材料、並びにまた、インビトロの細胞培養物構成要素の試料、例えば、これらに限定するものではないが、培地中での細胞及び組織の増殖によって生じる馴化培地の試料、例えば、組換え細胞及び細胞成分を意味する。
【0107】
「治療有効用量又は治療有効量」とは、本明細書中に記載したようにして投与した場合に、所望の治療反応、例えば、出血の減少又は凝固時間の短縮をもたらす量を意味する。
【0108】
「出血性障害」とは、過度な出血を伴う全ての障害、例えば、先天性凝固障害、後天性凝固障害、抗凝固剤の投与又は外傷によって誘発される出血症状を意味する。後述するように、出血性障害としては、血友病A、血友病B、フォンビルブランド病、特発性血小板減少、1種又は複数の接触因子(例えば、第XI因子、第XII因子、プレカリクレイン及び高分子量キニノーゲン(HMWK))の欠乏、臨床的に重要な出血と関連する1種又は複数の因子(例えば、第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XIII因子、第II因子(低プロトロンビン血症)及びフォンビルブランド因子)の欠乏、ビタミンK欠乏症、フィブリノーゲンの障害(無フィブリノーゲン血、低フィブリノーゲン血及びフィブリノーゲン異常症を含む)、α−抗プラスミン欠乏症及び出血多量(例えば、肝疾患、腎疾患、血小板減少症、血小板機能異常症、血腫、内出血、出血性関節症、外科手術、外傷、低体温症、月経及び妊娠に起因するもの)を挙げることができるが、これらに限定するものではない。
【0109】
詳細な説明
本発明の態様は、対象の血液凝固を増強する方法を含む。特定の実施形態による方法の実施において、一定量の非抗凝固性の硫酸化多糖(NASP)を対象に投与して、対象の血液凝固を増強する。また、血液凝固増強活性を有するNASP組成物の調製方法も、提供する。本発明の方法を実施するための組成物及びキットも記載する。
【0110】
本発明をより詳細に記載する前に、本明細書中に記載した個々の実施形態は変化し得るので、本発明はこのような実施形態に限定されないことを理解すべきである。また、本明細書中で使用する用語は個々の実施形態の説明にのみ使用するものであり、限定を意図しないことを理解すべきである。本発明の範囲は、添付した「特許請求の範囲」によってのみ限定される。特に定義されない限り、本明細書中で使用する技術用語及び科学用語は全て、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されているのと同じ意味を有する。値の範囲を示す場合、文脈上、そうでないとする明確な指示がない限り、その範囲の上限と下限の間の、下限の単位の1/10までの各介在値、及びその記載された範囲内の任意の他の記載された値又は介在値は、本発明の範囲内に包含されることが理解される。これらのより小さい範囲の上限及び下限は、そのより小さい範囲に独立して含まれることができ、また、本発明の範囲内に包含され、記載された範囲内における限度は全て明確に除外される。記載された範囲が限度の一方又は両方を含む場合には、それらの含まれる限度のいずれか一方又は両方を除外する範囲もまた、本発明に含まれる。特定の範囲は、本明細書中で、用語「約」が前置された数値によって示す。用語「約」は本明細書中で、それが先行する正確な数値と、その用語が先行する数値に近いか又はほぼその数値である数値とを文字通り裏付けるのに用いる。数値が、特に挙げられた数値に近いか又はほぼその数値であるかどうかを判断する際に、挙げられていない近い数値又は近似値は、それが示される文脈において、特に挙げられた数値に実質的に均等である数値と考えられる。本明細書中で引用した公表文献、特許及び特許出願は全て、個々の公表文献、特許又は特許出願が参照によって具体的且つ個別に組み入れられていることが示された場合と同程度まで、参照によって本明細書中に組み入れる。さらにまた、引用された各公表文献、特許又は特許出願は、公表文献の引用に関連する対象を開示及び記載するために、参照によって本明細書中に組み入れる。全ての公表文献の引用は、出願日前のその開示に関するものであり、本明細書中に記載した本発明が、先願発明という理由でこのような公表文献に先行する権利が与えられないと認めることと解するべきではない。更に、示されている発行日が、実際の発行日と異なっていることもあり、これらは独立して確認する必要があると考えられる。
【0111】
特許請求の範囲は、任意選択の要素を全て除外するように作成される場合があることに注意する。したがって、この記載は、特許請求の範囲の要素の列挙に関連する「単独」、「のみ」などのような排他的な用語、又は「負」の限定を使用するための先行事項として機能するよう意図される。この開示を読めば当業者には明らかなように、この開示中に記載及び例示した個々の実施形態はそれぞれ、個別的な成分及び特徴を有し、それらは、本発明の範囲又は精神を逸脱することなく、任意の他のいくつかの実施形態の特徴から容易に切り離すことができ又はそのような特徴と組み合わせることができる。任意の列挙した方法は、列挙した事象の順序で実施してもよいし、又は論理的に可能な任意の他の順序で実施してもよい。本明細書中に記載した方法及び材料と類似した又は同等の任意の方法及び材料も本発明の実施又は試験に使用できるが、代表的な実例となる方法及び材料をこれから記載する。
【0112】
主題発明を更に記載するに当たって、最初に、対象の血液凝固を増強する方法をより詳細に記載する。次に、血液凝固増強活性を有するNASP組成物の調製方法を概説する。主題発明の方法を実施するための組成物及びキットも記載する。
【0113】
対象の血液凝固を増強する方法
前記で要約したように、本発明の態様は、対象に一定量のNASPを有する組成物を投与することによって血液凝固を増強する方法を含む。用語「血液凝固を増強する」とは、血液凝固の開始を早める(即ち、凝固が始まるまでの時間の量を短縮する)こと、及び対象の全体的な血液凝固速度を加速する(即ち、血液凝固が完了するまでの時間の量を短縮する)ことを指す、その従来の意味で使用する。一部の実施形態において、本発明の方法は、血液凝固の開始を早める。例えば、本発明の方法は、血液が凝結し始めるのに必要な時間の量を、適当な対照と比較して、5%以上、例えば10%以上、例えば25%以上、例えば50%以上、例えば75%以上、例えば90%以上、例えば95%以上減少し得る。他の実施形態において、本発明の方法は、血液凝固速度を増加する。例えば、本発明の方法は、血液凝固速度を適当な対象と比較して2%以上、例えば5%以上、例えば10%以上、例えば25%以上、例えば50%以上、例えば75%以上、例えば100%以上、例えば200%以上、例えば500%以上増加し得る。
【0114】
本発明の実施形態において、対象の血液凝固を増強する方法が提供される。「対象」とは、血液凝固の増強を受けるヒト又は生物体を意味する。したがって、本発明の対象は、ヒト及び他の霊長類(例えば、チンパンジー及び他の類人猿並びにサル種);家畜(例えば、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ及びウマ);飼育哺乳類(例えば、イヌ及びネコ);齧歯動物(例えば、マウス、ラット及びモルモット)を含む実験動物;鳥類、例えば、飼育鳥、野鳥及び狩猟鳥(例えば、ニワトリ、シチメンチョウ及び他のキジ科鳥類、カモ、ガチョウ)などを含むことができるが、これらに限定するものではない。
【0115】
一部の実施形態において、主題方法は、出血性障害、例えば、慢性又は急性出血性障害、血液因子欠乏症に起因する先天性凝固障害、後天性凝固障害及び抗凝固剤の投与の治療に使用できる。例えば、出血性障害としては、血友病A、血友病B、フォンビルブランド病、特発性血小板減少、1種又は複数の接触因子(例えば、第XI因子、第XII因子、プレカリクレイン及び高分子量キニノーゲン(HMWK))の欠乏、臨床的に重要な出血と関連する1種又は複数の因子(例えば、第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XIII因子、第II因子(低プロトロンビン血症)及びフォンビルブランド因子)の欠乏、ビタミンK欠乏症、フィブリノーゲンの障害(無フィブリノーゲン血、低フィブリノーゲン血及びフィブリノーゲン異常症を含む)、α−抗プラスミン欠乏症及び出血多量(例えば、肝疾患、腎疾患、血小板減少症、血小板機能異常症、血腫、内出血、出血性関節症、外科手術、外傷、低体温症、月経及び妊娠に起因するもの)を挙げることができるが、これらに限定するものではない。
【0116】
他の実施形態において、主題方法は、血液凝固を増強して対象における抗凝固剤の効果を逆転させるのに使用できる。例えば、対象は、ヘパリン、クマリン誘導体(例えば、ワルファリン又はジクマロール)、TFPI、AT III(アンチトロンビンIII)、ループス抗凝固因子、線虫抗凝固ペプチド(NAPc2)、活性部位遮断第VIIa因子(第VIIai因子)、第IXa因子阻害剤、第Xa因子阻害剤(例えば、フォンダパリヌクス、イドラパリヌクス、DX−9065a及びラザキサバン(DPC906))、第Va因子及び第VIIIa因子の阻害剤(例えば、活性化プロテインC(APC)及び可溶性トロンボモジュリン)、トロンビン阻害剤(例えば、ヒルジン、ビバリルディン、アルガトロバン及びキシメラガトラン)を含むがこれらに限定されない抗凝固剤による治療を受けていてもよい。特定の実施形態において、対象が治療を受けている抗凝固剤は、凝固因子、例えば、第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XIII因子、第II因子、第XI因子、第XII因子、フォンビルブランド因子、プレカリクレイン又は高分子量キニノーゲン(HMWK)に結合する抗体(これらに限定するものではない)であってもよい。
【0117】
本発明の態様は、血液凝固を増強する量のNASPを有する組成物を対象に投与することを含む。特定の実施形態において、本発明の方法は、8重量%以上の硫黄含量を有するNASPの一定量を含有する組成物を対象に投与することを含む。例えば、NASPの硫黄含量は、10重量%以上、例えば15重量%以上、例えば20重量%以上、例えば25重量%以上であることができる。他の実施形態において、当該NASPは、例えば5〜25重量%、例えば5〜20重量%、例えば5〜15重量%、例えば10〜15重量%の範囲の種々の量の硫黄を含有できる。任意の都合のよいプロトコールを使用して、当該NASPの硫黄含量を決定できる。硫黄含量を決定するための方法としては、イオンクロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー、質量分析法、誘導結合プラズマ、原子吸光法、誘導結合プラズマ質量分析法、誘導結合プラズマ原子発光分光法、フレーム原子吸光分析、黒鉛炉原子吸光分析法、酸滴定又はその任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0118】
本発明の実施形態において、NASPの硫黄含量は、スルフェートの形態で存在していてもよい。用語「スルフェート」は、硫黄のオキシアニオン、SO2−を指すその従来の意味で使用するが、中心硫黄原子が少なくとも1つの酸素原子に結合されている硫黄の任意のオキシアニオン、例えば、スルファイト、ペルスルフェート、ハイポスルフェート又はチオスルフェートを使用してもよい。NASP中に存在するスルフェートの総量は様々であることができる。特定の実施形態において、本発明のNASP中に存在するスルフェートの総量は、20重量%以上、例えば25重量%以上、例えば35重量%以上、例えば50重量%以上である。他の実施形態において、NASP中のスルフェートの総量は、例えば5〜50重量%、例えば5〜40重量%、例えば5〜30重量%、例えば5〜25重量%、例えば10〜25重量%、例えば10〜20重量%、例えば10〜15重量%の範囲である。硫黄含量の決定に関して前述したような、任意の都合のよいプロトコールを使用して、NASPの硫酸化の量を決定できる。例えば、硫酸化の量を決定する方法としては、質量分析法、誘導結合プラズマ、イオンクロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー、原子吸光法、黒鉛炉原子吸光分析法、誘導結合プラズマ質量分析法、誘導結合プラズマ原子発光分光法、フレーム原子吸光分析法、酸滴定又はその任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0119】
当該NASPの各多糖残基は、種々の硫酸化度を有し得る。「硫酸化度」とは、NASP多糖主鎖上の各サッカリド残基に結合している硫酸基の数を意味する。一部の実施形態において、各多糖残基(例えば、フコース、ガラクトース、ラムノース、アラビノース、グルコース、マンノース、キシロース(以下に詳述))は、1つ(すなわち、一硫酸化)又は複数(すなわち、ポリ硫酸化)の硫酸部分を含有していてもよい。例えば、一部の例では、サッカリド残基は、サッカリド残基の4位で硫酸化されていてもよい。他の例では、サッカリド残基は、3位で硫酸化されている。特定の例では、サッカリド残基は、4位及び3位の両方で硫酸化されている。各残基は、硫酸化度が同一であってもよく(例えば、全てのサッカリド残基が一硫酸化されていてもよく)、又は硫酸化度が異なっていてもよい(例えば、一部のサッカリド残基が同一の硫酸化を有し、一部のサッカリド残基が異なる硫酸化を有していてもよい)。例えば、本発明のNASPのサッカリド残基の10%以上、例えば15%以上、例えば25%以上、例えば50%以上、例えば75%以上、例えば90%以上、例えば95%以上、例えば99%以上が一硫酸化されていてもよい。他方では、一部の実施形態において、本発明のNASPのサッカリド残基の10%以上、例えば15%以上、例えば25%以上、例えば50%以上、例えば75%以上、例えば90%以上、例えば95%以上、例えば99%以上がポリ硫酸化されていてもよい。一硫酸化サッカリド残基及びポリ硫酸化サッカリド残基の両方が存在する場合には、本発明のNASP中の一硫酸化残基の、ポリ硫酸化残基に対する比は様々であることができ、一部の場合では、1:1〜1:2.5、1:2.5〜1:5、1:5〜1:10、1:10〜1:25、1:25〜1:50、1:50〜1:100、1:100〜1:150、1:150〜1:200、1:200〜1:250、1:250〜1:500、1:500〜1:1000の範囲、又はそれらの範囲であることができる。例えば、当該NASP中の一硫酸化残基の、ポリ硫酸化残基に対するモル比(即ち、一硫酸化サッカリド残基:ポリ硫酸化サッカリド残基)は、1:1〜1:10、1:5〜1:25、1:10〜1:50、1:25〜1:100、1:50〜1:500、又は1:100〜1:1000の範囲であることができる。一部の実施形態において、NASP中のポリ硫酸化残基の、一硫酸化残基に対する比(即ち、ポリ硫酸化サッカリド残基:一硫酸化サッカリド残基)は、1:1〜1:2.5、1:2.5〜1:5、1:5〜1:10、1:10〜1:25、1:25〜1:50、1:50〜1:100、1:100〜1:150、1:150〜1:200、1:200〜1:250、1:250〜1:500、1:500〜1:1000の範囲、又はそれらの範囲である。例えば、当該NASP中のポリ硫酸化サッカリド残基の、一硫酸化残基に対する比は、1:1〜1:10、1:5〜1:25、1:10〜1:50、1:25〜1:100、1:50〜1:500、又は1:100〜1:1000の範囲であることができる。前述したような、任意の都合のよいプロトコールを使用して、NASPの硫酸化を決定できる。例えば、サッカリド残基の硫酸化度を決定する方法としては、質量分析法、NMR分光法、赤外線分光法又はそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0120】
一部の実施形態において、当該NASPのサッカリド残基は、4位で硫酸化されていてもよい。他の実施形態において、サッカリド残基は、3位で硫酸化されている。特定の実施形態において、サッカリド残基は、4位及び3位で硫酸化されている。例えば、本発明のNASPのサッカリド残基の10%以上、例えば15%以上、例えば、25%以上、例えば50%以上、例えば75%以上、例えば90%以上、例えば95%以上、例えば99%以上が4位で硫酸化されていてもよい。他の実施形態において、本発明のNASPのサッカリド残基の10%以上、例えば15%以上、例えば25%以上、例えば50%以上、例えば75%以上、例えば90%以上、例えば95%以上、例えば99%以上が、3位で硫酸化されていてもよい。特定の実施形態において、本発明のNASPのサッカリド残基の10%以上、例えば15%以上、例えば25%以上、例えば50%以上、例えば75%以上、例えば90%以上、例えば95%以上、例えば99%以上が、3位及び4位の両方で硫酸化されていてもよい。4位で硫酸化されているサッカリド残基及び3位で硫酸化されているサッカリド残基の両方が存在する場合には、4位で硫酸化されているサッカリド残基の、3位で硫酸化されているサッカリド残基に対する比は様々であることができ、一部の例では、1:1〜1:2.5、1:2.5〜1:5、1:5〜1:10、1:10〜1:25、1:25〜1:50、1:50〜1:100、1:100〜1:150、1:150〜1:200、1:200〜1:250、1:250〜1:500、1:500〜1:1000の範囲、又はそれらの範囲であることができる。例えば、当該NASP中の4位で硫酸化されたサッカリド残基の、3位で硫酸化されたサッカリド残基に対するモル比は、1:1〜1:10、1:5〜1:25、1:10〜1:50、1:25〜1:100、1:50〜1:500、又は1:100〜1:1000の範囲であることができる。一部の実施形態において、NASP中の3位で硫酸化されているサッカリド残基の、4位で硫酸化されているサッカリド残基に対する比は、1:1〜1:2.5、1:2.5〜1:5、1:5〜1:10、1:10〜1:25、1:25〜1:50、1:50〜1:100、1:100〜1:150、1:150〜1:200、1:200〜1:250、1:250〜1:500、1:500〜1:1000の範囲、又はそれらの範囲である。例えば、当該NASP中の3位で硫酸化されているサッカリド残基の、4位で硫酸化されているサッカリド残基に対する比は、1:1〜1:10、1:5〜1:25、1:10〜1:50、1:25〜1:100、1:50〜1:500、又は1:100〜1:1000の範囲であることができる。前述したような、任意の都合のよいプロトコールを使用して、NASPの硫酸化サッカリド残基の型を決定できる。例えば、サッカリド残基の硫酸化度を決定する方法としては、質量分析法、NMR分光法、赤外線分光法又はそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0121】
特定の実施形態において、本発明のNASPは、生物学的供給源から抽出してもよい。「生物学的供給源」とは、天然に存在する生物体又は生物体の一部を意味する。例えば、当該NASPは、植物、動物、真菌又は細菌から抽出してもよい。特に、当該NASPは、食用海藻、褐藻、棘皮動物(例えば、ウニ、ナマコ)などから抽出してもよい。任意の都合のよいプロトコールを使用して、生物学的供給源からNASPを抽出できる。例えば、生物学的供給源からのNASPの抽出は、数ある方法の中でも、酸塩基抽出、酵素分解、選択的沈殿、濾過によって実施できる。食用海藻及び褐藻などの生物学的供給源からNASPを抽出及び単離する方法は、参照によって開示全体が本明細書中に組み入れられている、2010年2月25日出願の同時係属米国特許出願第12/449,712号に詳述されている。
【0122】
一部の例では、生物学的供給源から抽出されたNASPは、8重量%以上の硫黄含量を有するフコイダンである。例えば、当該フコイダンの例としては、Fucoidan GFS 5508005、発熱物質が除去されたワカメ(Undaria pinnatifida);Fucoidan GFS5508004、ワカメ;Fucoidan GFS5508003、ワカメ;Fucoidan 5307002、コンブ(Fucus vesiculosus)、最大MWピーク126.7kD;Fucoidan VG49、コンブ、MWが比較的低い、5307002の加水分解試料、最大MWピーク22.5kD;Fucoidan 5308004、コンブ;Fucoidan 5308005、コンブ;Fucoidan L/FVF1091、コンブ;Fucoidan VG201096A、コンブ;Fucoidan VG201096B、コンブ;Fucoidan VG57、ワカメ、高荷電(高硫酸化、脱アセチル化);Fucoidan VG50、アスコフィラム・ノドサム(Ascophyllum nodosum)、最大MWピーク149.7kD;及びそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0123】
特定の実施形態において、本発明の態様は、血液凝固因子と組み合わせて、8重量%以上の硫黄含量を有するNASPの一定量を含有する組成物を対象に投与することによって、対象の血液凝固を増強する方法を含む。例えば、対象に、8重量%以上の硫黄含量を有するNASPを含む組成物の一定量と1種又は複数の血液凝固因子、例えば、これらに限定するものではないが、第XI因子、第XII因子、プレカリクレイン、高分子量キニノーゲン(HMWK)、第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XIII因子、第II因子、第VIIa因子、及びフォンビルブランド因子、第Xa因子、第IXa因子、第XIa因子、第XIIa因子及び第VIIIa因子、プレカリクレイン、高分子量キニノーゲン、組織因子、第VIIa因子、第Va因子及び第Xa因子を投与することができる。
【0124】
8重量%以上の硫黄含量を有するNASPを含有する組成物及び血液凝固因子を対象に投与する場合には、8重量%以上の硫黄含量を有するNASPを含有する組成物の、血液凝固因子に対する質量比は、1:1〜1:2.5、1:2.5〜1:5、1:5〜1:10、1:10〜1:25、1:25〜1:50、1:50〜1:100、1:100〜1:150、1:150〜1:200、1:200〜1:250、1:250〜1:500、1:500〜1:1000の範囲、又はそれらの範囲である。例えば、8重量%以上の硫黄含量を有するNASPを含有する組成物の、血液凝固因子に対する質量比は、1:1〜1:10、1:5〜1:25、1:10〜1:50、1:25〜1:100、1:50〜1:500、又は1:100〜1:1000の範囲であることができる。一部の実施形態において、血液凝固因子の、8重量%以上の硫黄含量を有するNASPを含有する組成物に対する質量比は、1:1〜1:2.5、1:2.5〜1:5、1:5〜1:10、1:10〜1:25、1:25〜1:50、1:50〜1:100、1:100〜1:150、1:150〜1:200、1:200〜1:250、1:250〜1:500、1:500〜1:1000の範囲、又はそれらの範囲である。例えば、血液凝固因子の、8重量%以上の硫黄含量を有するNASPを含有する組成物に対する質量比は、1:1〜1:10、1:5〜1:25、1:10〜1:50、1:25〜1:100、1:50〜1:500、又は1:100〜1:1000の範囲であることができる。
【0125】
血液凝固因子と8重量%以上の硫黄含量を有するNASPを含有する組成物とは、任意の順序で対象に投与できる。一部の例では、血液凝固因子の投与前に、8重量%以上の硫黄含量を有するNASPを含有する組成物を投与する。他の例では、8重量%以上の硫黄含量を有するNASPを含有する組成物を血液凝固因子の投与と一緒に投与する。さらに他の例では、血液凝固因子の投与後に、8重量%以上の硫黄含量を有するNASPを含有する組成物を投与する。8重量%以上の硫黄含量を有するNASPを含有する組成物を血液凝固因子と一緒に投与する場合には、8重量%以上の硫黄含量を有するNASPを含有する組成物を血液凝固因子と混合してから、対象に組成物を投与してもよい。乾式振盪、溶解又は懸濁混合、工業用混合プロトコールなどによる任意の都合のよい混合プロトコールを使用できる。
【0126】
一部の実施形態において、本発明の方法はまた、生物学的供給源からNASPを抽出するステップと、抽出されたNASPの硫黄含量を増加させるステップとを含む。前述のように、任意の都合のよいプロトコールを使用して、生物学的供給源からNASPを抽出できる。例えば、NASPは、数ある方法の中でも、酸塩基抽出、酵素分解、選択的沈殿、濾過によって生物学的供給源から抽出できる。食用海藻及び褐藻などの生物学的供給源からNASPを抽出及び単離する方法は、参照によって開示全体が本明細書中に組み入れられている、2010年2月25日出願の同時係属米国特許出願第12/449,712号に詳述されている。
【0127】
一部の実施形態において、生物学的供給源から抽出されたNASPは、8重量%以上の天然硫黄含量を有することができる。例えば、生物学的供給源から抽出されたNASPは、10重量%以上、例えば15重量%以上、例えば20重量%以上、例えば25重量%以上の天然硫黄含量を有することができる。他の実施形態において、生物学的供給源から抽出されたNASPは、8重量%未満、例えば5重量%未満、例えば2重量%未満、例えば1重量%未満、例えば0.5重量%未満の硫黄含量を有することができる。
【0128】
特定の実施形態において、生物学的供給源から抽出されたNASPは、8重量%以上の硫黄含量を有するNASPを得るのに充分なように化学的に硫酸化する。例えば、生物学的供給源から抽出されたNASPは、10重量%以上、例えば15重量%以上、例えば20重量%以上、例えば25重量%以上の硫黄を有するNASPを得るのに充分なように化学的に硫酸化できる。したがって、本発明の方法は、生物学的供給源から抽出されたNASPの硫黄含量を増加させる。例えば、生物学的供給源から抽出されたNASPの硫黄含量を、0.5重量%以上、例えば1重量%以上、例えば2重量%以上、例えば5重量%以上、例えば10重量%以上、例えば15重量%以上、例えば20重量%以上、例えば25重量%以上増加させることができる。これらの実施形態において、結果として生じるNASPは、生物学的供給源から抽出されたNASPよりも、重量で1.5倍多い、例えば2倍多い、例えば5倍多い、例えば10倍多い、例えば25倍多い、例えば100倍多い硫黄を有することができる。
【0129】
結果として生じるNASPの硫黄含量が8重量%以上であり且つ増加された硫黄含量が、新しい硫酸部分がNASP構造に共有結合した結果であれば、任意の都合のよいプロトコールを用いて、生物学的供給源から抽出したNASPを化学的に硫酸化できる。これらの実施形態において、抽出されたNASPのサッカリド主鎖上に位置する任意の遊離ヒドロキシル基を硫酸化によって修飾して、一硫酸化又はポリ硫酸化(例えば、二置換)サッカリドを生成できる。例えば、サッカリド主鎖に沿った1つ又は複数の遊離ヒドロキシル基の硫酸化は、サッカリド主鎖に沿った遊離ヒドロキシル基に1つ又は複数の硫酸アニオンを結合させることによって実施できる。例えば、サッカリド主鎖に沿った1つ又は複数の遊離ヒドロキシル基の硫酸化は、サッカリド主鎖に沿った遊離ヒドロキシル基に1つ又は複数の硫酸アニオンを結合させることによって、実施できる。他の例では、ピリジン、トリエチルアミンとの又は第一スズ錯体との三酸化硫黄複合体も使用できる(たとえば、Calvo−Asin,J.A.ら、J.Chem.Soc,Perkin Trans 1、1997年、1079頁のヒドロキシル基の硫酸化方法を参照のこと)。
【0130】
前述のように、本発明の態様は、血液凝固を増強する量のNASPを有する組成物を対象に投与することを含む。特定の実施形態において、本発明の方法は、40%以上のフコースサッカリド残基を含有するNASPの一定量を有する組成物を対象に投与することを含む。当該NASPのサッカリド含量は様々であることができる。一部の例では、当該NASPのサッカリドの内容物は、フコース残基、キシロース残基、ガラクトース残基、グルコース残基、マンノース残基、ラムノース残基、アラビノース残基及びウロン酸を含み得るが、これに限定されるものではない。一部の実施形態において、当該NASPは、フコース残基、キシロース残基、ガラクトース残基、グルコース残基、マンノース残基、ラムノース残基、アラビノース残基及びウロン酸のうちの2種以上から構成される。当該NASP中の各サッカリド残基の量は様々であることができる。例えば、本発明のNASPのサッカリド残基の40%以上、例えば45%以上、例えば50%以上、例えば65%以上、例えば75%以上、例えば90%以上、例えば95%以上、例えば99%以上がフコースサッカリド残基であってもよい。他の例では、本発明のNASPのサッカリド残基の1%以上、例えば5%以上、例えば10%以上、例えば15%以上、例えば20%以上、例えば25%以上が、ガラクトースサッカリド残基であってもよい。さらに他の例では、本発明のNASPのサッカリド残基の1%以上、例えば5%以上、例えば10%以上、例えば15%以上、例えば20%以上、例えば25%以上が、ウロン酸サッカリド残基であってもよい。任意の都合のよいプロトコールを使用して、当該NASPのサッカリド含量を決定できる。サッカリド含量を決定する方法としては、イオンクロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー、質量分析法、核磁気共鳴分光法又はそれらの任意の組み合わせを挙げることができるが、これらに限定するものではない。
【0131】
本発明の実施形態において、当該NASPは、線状(すなわち、非分岐)多糖であってもよいし、又は分岐多糖であってもよい。特定の例では、NASPは、その構造の一部分が線状であり、その構造の他の部分が分岐である。「線状多糖」とは、α−1,4グリコシド結合若しくはα−1,3グリコシド結合又は交互のα−1,3/α−1,4グリコシド結合のみを含む多糖又は多糖の一部を意味する。「分岐多糖」とは、他のサッカリド残基との2つ以上のグリコシド結合を含む多糖又は多糖の一部であって、グリコシド結合の1つがα−1,4グリコシド結合若しくはα−1,3グリコシド結合又は交互のα−1,3/α−1,4ーグリコシド結合であり且つ他がα−1,6グリコシド結合であるものを意味する。当該NASPの分岐の量は様々であることができる。
【0132】
本発明の態様は、40%以上のフコースサッカリド残基を含有するNASPの一定量を有する組成物を対象に投与することによって、対象の血液凝固を増強することを含む。これらの実施形態において、当該NASPは、45%以上、例えば50%以上、例えば60%以上、例えば75%以上、例えば85%以上、例えば90%以上、例えば95%以上のフコースサッカリド残基を含有できる。他の実施形態において、対象に投与するNASPは、例えば40〜99%、例えば40〜90%、例えば45〜85%、例えば50〜80%、例えば50〜75%、例えば50〜60%の範囲の量のフコースサッカリド残基を含有できる。
【0133】
特定の実施形態において、当該NASPは、40%以上、例えば50%以上、例えば60%以上、例えば75%以上、例えば85%以上、例えば90%以上、例えば95%以上のフコースサッカリド残基の硫酸化エステルを含有できる。前記で詳述したように、フコースサッカリド残基の硫酸化エステルは、硫酸化の量、硫酸化の位置選択性及び硫酸化度の点で異なり得る。例えば、フコースサッカリド残基の硫酸化エステルは、一部の例では、一硫酸化されていてもよい。他の例では、フコースサッカリド残基の硫酸化エステルは、ポリ硫酸化されていてもよい。同様に、特定の例では、フコースサッカリド残基の硫酸化エステルは、4位で硫酸化されていてもよい。他方で、フコースサッカリド残基の硫酸化エステルは、3位で硫酸化されていてもよい。
【0134】
特定の実施形態において、当該NASPは、40%以上のフコースサッカリド残基と20%以上のガラクトースサッカリド残基、例えば45%以上のフコースサッカリド残基と20%以上のガラクトース残基、例えば50%以上のフコースサッカリド残基と20%以上のガラクトース残基、例えば60%以上のフコースサッカリド残基と20%以上のガラクトース残基、例えば70%以上のフコースサッカリド残基と20%以上のガラクトース残基を含有する。他の実施形態において、当該NASPは、40%以上のフコースサッカリド残基と25%以上のガラクトースサッカリド残基、例えば40%以上のフコースサッカリド残基と30%以上のガラクトースサッカリド残基、例えば40%以上のフコースサッカリド残基と40%以上のガラクトースサッカリド残基を含有する。
【0135】
前述のように、本発明のNASPは、生物学的供給源から抽出してもよい。一部の例では、生物学的供給源から抽出されたNASPは、40%以上のフコースサッカリド残基を含有するフコイダンであってもよい。特定の実施形態において、当該フコイダンとしては、Fucoidan GFS5508005、発熱物質が除去されたワカメ;Fucoidan GFS5508004、ワカメ;Fucoidan VG23、E.Maxima;Fucoidan L/FVF1093、コンブ;Fucoidan L/FVF1092、コンブ;及びそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0136】
特定の実施形態において、本発明の態様は、40%以上のフコースサッカリド残基を含有するNASPの一定量を有する組成物を、血液凝固因子と組み合わせて対象に投与することによって、対象の血液凝固を増強することを含む。例えば、対象には、40%以上のフコースサッカリド残基を含有するNASPを含有する組成物の一定量と、第XI因子、第XII因子、プレカリクレイン、高分子量キニノーゲン(HMWK)、第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XIII因子、第II因子、第VIIa因子、及びフォンビルブランド因子、第Xa因子、第IXa因子、第XIa因子、第XIIa因子及び第VIIIa因子、プレカリクレイン、高分子量キニノーゲン、組織因子、第VIIa因子、第Va因子及び第Xa因子を含む(これらに限定するものではない)1種又は複数の血液凝固因子とを投与してもよい。
【0137】
40%以上のフコースサッカリド残基を含有するNASPを有する組成物と血液凝固因子とを対象に投与する場合には、40%以上のフコースサッカリド残基を含有するNASPを有する組成物の、血液凝固因子に対する質量比は、様々であることができ、一部の例では、1:1〜1:2.5、1:2.5〜1:5、1:5〜1:10、1:10〜1:25、1:25〜1:50、1:50〜1:100、1:100〜1:150、1:150〜1:200、1:200〜1:250、1:250〜1:500、1:500〜1:1000の範囲、又はそれらの範囲であることができる。例えば、40%以上のフコースサッカリド残基を含有するNASPを有する組成物の、血液凝固因子に対する質量比は、1:1〜1:10、1:5〜1:25、1:10〜1:50、1:25〜1:100、1:50〜1:500、又は1:100〜1:1000の範囲であることができる。一部の実施形態において、血液凝固因子の、40%以上のフコースサッカリド残基を含有するNASPを有する組成物に対する質量比は、1:1〜1:2.5、1:2.5〜1:5、1:5〜1:10、1:10〜1:25、1:25〜1:50、1:50〜1:100、1:100〜1:150、1:150〜1:200、1:200〜1:250、1:250〜1:500、1:500〜1:1000の範囲、又はそれらの範囲である。例えば、血液凝固因子の、40%以上のフコースサッカリド残基を含有するNASPを有する組成物に対する質量比は、1:1〜1:10、1:5〜1:25、1:10〜1:50、1:25〜1:100、1:50〜1:500、又は1:100〜1:1000の範囲であることができる。
【0138】
40%以上のフコースサッカリド残基を含有するNASPを有する組成物と血液凝固因子とは、任意の順序で対象に投与できる。一部の例では、40%以上のフコースサッカリド残基を含有するNASPを有する組成物は、血液凝固因子の投与前に投与する(即ち、連続して同日に又は異なる日に投与するなど)。他の例では、40%以上のフコースサッカリド残基を含有するNASPを有する組成物は、血液凝固因子の投与と一緒に投与する。さらに他の例では、40%以上のフコースサッカリド残基を含有するNASPを有する組成物は、血液凝固因子の投与後に投与する(即ち、連続して同日に又は異なる日に投与するなど)。40%以上のフコースサッカリド残基を含有するNASPを有する組成物を血液凝固因子と一緒に投与する場合には、40%以上のフコースサッカリド残基を含有するNASPを有する組成物を血液凝固因子と混合してから、組成物を対象に投与してもよい。乾式振盪、溶解又は懸濁混合、工業用混合プロトコールなどによる任意の都合のよい混合プロトコールを使用できる。
【0139】
本発明の態様はまた、生物学的供給源から抽出されたフコイダンの一定量を有する組成物を投与することによって、対象の血液凝固を増強する方法を含む。特定の実施形態において、本発明の方法は、表1の化合物からなる群から選択されるフコイダンの一定量を有する組成物を投与することを含む。これらの実施形態において、当該フコイダンの例としては、Fucoidan 5307002、コンブ、最大MWピーク126.7kD;Fucoidan VG49、コンブ、MWが比較的低い5307002の加水分解試料、最大MWピーク22.5kD;Fucoidan VG57、ワカメ、高荷電(高硫酸化、脱アセチル化);Fucoidan GFS(5508005)、発熱物質が除去されたワカメ;Fucoidan GFS(L/FVF−01091)、発熱物質が除去されたコンブ、最大MWピーク125kD;Fucoidan GFS(L/FVF−01092)、発熱物質が除去されたコンブ、最大MWピーク260kD;Fucoidan GFS(L/FVF−01093)、加水分解され、発熱物質が除去されたコンブ、最大MWピーク36kD;Maritech(登録商標)エクロニア・ラジアータ(Ecklonia radiata)抽出物;Maritech(登録商標)エクロニア・マキシマ(Ecklonia maxima)抽出物;Maritech(登録商標)マクロシスティス・ピリフェラ(Macrocystis pyrifera)抽出物;Maritech(登録商標)免疫試験用フコイダンブレンド(Immune trial Fucoidan Blend);及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0140】
これらの実施形態において、本発明の態様はまた、一定量のフコイダンを有する組成物を血液凝固因子と組み合わせて投与することを含んでもよい。例えば、対象には、フコイダンを含有する組成物の一定量と、第XI因子、第XII因子、プレカリクレイン、高分子量キニノーゲン(HMWK)、第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XIII因子、第II因子、第VIIa因子、及びフォンビルブランド因子、第Xa因子、第IXa因子、第XIa因子、第XIIa因子及び第VIIIa因子、プレカリクレイン、高分子量キニノーゲン、組織因子、第VIIa因子、第Va因子及び第Xa因子を含む(これらに限定されない)1種又は複数の血液凝固因子を投与することができる。
【0141】
一定量のフコイダンを有する組成物と血液凝固因子を対象に共に投与する場合には、一定量のフコイダンを有する組成物の、血液凝固因子に対する質量比は、様々であることができ、一部の例では、1:1〜1:2.5、1:2.5〜1:5、1:5〜1:10、1:10〜1:25、1:25〜1:50、1:50〜1:100、1:100〜1:150、1:150〜1:200、1:200〜1:250、1:250〜1:500、1:500〜1:1000の範囲、又はそれらの範囲であることができる。例えば、一定量のフコイダンを有する組成物の、血液凝固因子に対する質量比は、1:1〜1:10、1:5〜1:25、1:10〜1:50、1:25〜1:100、1:50〜1:500、又は1:100〜1:1000の範囲であることができる。一部の実施形態において、血液凝固因子の、一定量のフコイダンを有する組成物に対する質量比は、1:1〜1:2.5、1:2.5〜1:5、1:5〜1:10、1:10〜1:25、1:25〜1:50、1:50〜1:100、1:100〜1:150、1:150〜1:200、1:200〜1:250、1:250〜1:500、1:500〜1:1000の範囲、又はそれらの範囲である。例えば、血液凝固因子の、一定量のフコイダンを有する組成物に対する質量比は、1:1〜1:10、1:5〜1:25、1:10〜1:50、1:25〜1:100、1:50〜1:500、又は1:100〜1:1000の範囲であることができる。
【0142】
一定量のフコイダンを有する組成物と血液凝固因子は、任意の順序で対象に投与できる。一部の例では、一定量のフコイダンを有する組成物は、血液凝固因子の投与前に投与する(即ち、連続して同日に又は異なる日に投与するなど)。他の例では、一定量のフコイダンを有する組成物は、血液凝固因子の投与と一緒に投与する。さらに他の例では、一定量のフコイダンを有する組成物は、血液凝固因子の投与後に投与する(即ち、連続して同日に又は異なる日に投与するなど)。一定量のフコイダンを有する組成物を血液凝固因子と一緒に投与する場合には、一定量のフコイダンを有する組成物は、血液凝固因子と混合してから、組成物を対象に投与してもよい。乾式振盪、溶解又は懸濁混合、工業用混合プロトコールなどによる任意の都合のよい混合プロトコールを使用できる。
【0143】
本発明の特定の実施形態において、NASPを凝固促進剤として用いて出血性障害を治療するための方法及び組成物を提供する。本明細書中で開示するNASPは、単独で(即ち、単剤として)、又は互いに若しくは他の止血剤と組み合わせて投与できる。所望に応じて、当該NASPは、先天性凝固障害、後天性凝固障害、抗凝固剤の投与及び外傷によって誘発された出血症状を含む出血性障害があると診断された対象の治療に使用できる。
【0144】
一部の例では、対象は、血友病A、血友病B、フォンビルブランド病、特発性血小板減少、1種又は複数の接触因子(例えば、第XI因子、第XII因子、プレカリクレイン及び高分子量キニノーゲン(HMWK))の欠乏、臨床的に重要な出血と関連する1種又は複数の因子(例えば、第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XIII因子、第II因子(低プロトロンビン血症)及びフォンビルブランド因子)の欠乏、ビタミンK欠乏症、フィブリノーゲンの障害(無フィブリノーゲン血、低フィブリノーゲン血及びフィブリノーゲン異常症を含む)、α−抗プラスミン欠乏症及び出血多量(例えば、肝疾患、腎疾患、血小板減少症、血小板機能異常症、血腫、内出血、出血性関節症、外科手術、外傷、低体温症、月経及び妊娠に起因するもの)を含む(これらに限定されない)血液凝固障害があると診断されていてもよい。
【0145】
他の例では、対象は、血液因子欠乏症に起因する先天性凝固障害又は後天性凝固障害を含む血液凝固障害があると診断されていてもよい。例えば、血液因子欠乏症は、第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第XI因子、第XII因子、第XIII因子及びフォンビルブランド因子を含むがこれらに限定されない1種又は複数の因子の欠乏に起因し得る。
【0146】
さらに他の例では、対象は、抗凝固剤の対象への投与によって生じる血液凝固障害があると診断されていてもよい。例えば、抗凝固剤としては、ヘパリン、クマリン誘導体(例えば、ワルファリン又はジクマロール)、組織因子経路阻害剤(TFPI)、アンチトロンビンIII、ループス抗凝固因子、線虫抗凝固ペプチド(NAPc2)、活性部位遮断第因子VIIa因子(第VIIai因子)、第IXa因子阻害剤、第Xa因子阻害剤(例えば、フォンダパリヌクス、イドラパリヌクス、DX−9065a及びラザキサバン(DPC906))、第Va因子及び第VIIIa因子の阻害剤(例えば、活性化プロテインC(APC)及び可溶性トロンボモジュリン)、トロンビン阻害剤(例えば、ヒルジン、ビバリルディン、アルガトロバン及びキシメラガトラン)が挙げられるが、これらに限定するものではない。特定の実施形態において、抗凝固剤は凝固因子、例えば、第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XIII因子、第II因子、第XI因子、第XII因子、フォンビルブランド因子、プレカリクレイン又は高分子量キニノーゲン(HMWK)に結合する抗体(これらに限定されるものではない)であってもよい。
【0147】
本発明の方法の実施に当たり、対象の血液凝固を増強するためのプロトコールは、様々であることができ、例えば、対象の年齢、体重、血液凝固障害の重症度、対象の全身の健康状態、並びに投与する個々の組成物及びNASPの濃度によって異なり得る。
【0148】
本発明の実施形態において、投与の後に対象において達成されるNASPの濃度は様々であることができ、一部の例では、0.01〜500nMの範囲であることができる。当該NASPは、それらの最適濃度では凝固促進剤である。「最適濃度」とは、NASPが、最高量の血液凝固促進活性を示す濃度を意味する。NASPの多くはまた、最適濃度よりはるかに高い濃度では抗凝固活性を示したので、本発明のNASPは、その最適濃度の範囲で、非抗凝固作用を示す。したがって、NASPの作用強度及び所望の効果に応じて、本発明の方法によって提供されるNASPの最適濃度は、0.01〜500nM、例えば0.1〜250nM、例えば0.1〜100nM、例えば0.1〜75nM、例えば0.1〜50nM、例えば0.1〜25nM、例えば0.1〜10nM、例えば0.1〜1nMの範囲であることができる。当該NASPの較正自動トロンボグラフィー(CAT)アッセイによって決定された最適濃度及び活性レベルを、以下の表2〜4に要約する。
【0149】
したがって、当該NASPを含有する組成物の投与量は様々であり、約0.01〜500mg/kg/日、例えば0.01〜400mg/kg/日、例えば0.01〜200mg/kg/日、例えば0.1〜100mg/kg/日、例えば0.01〜10mg/kg/日、例えば0.01〜2mg/kg/日、例えば0.02〜2mg/kg/日の範囲であることができる。他の実施形態において、投与量は、0.01〜100mg/kgを1日に4回(QID)、例えば0.01〜50mg/kg QID、例えば0.01〜10mg/kg QID、例えば0.01〜2mg/kg QID、0.01〜0.2mg/kg QIDの範囲であることができる。他の実施形態において、投与量は、0.01〜50mg/kgを1日に3回(TID)、例えば0.01〜10mg/kg TID、例えば0.01〜2mg/kg TID、例えば0.01〜0.2mg/kg TIDの範囲であることができる。さらに他の実施形態において、投与量は、0.01〜100mg/kgを1日2回(BID)、例えば0.01〜10mg/kg BID、例えば0.01〜2mg/kg BID、例えば0.01〜0.2mg/kg BIDの範囲であることができる。投与する化合物の量は、特定のNASPの作用強度及び濃度、所望の大きさ又は凝固促進剤効果、並びに投与経路によって異なる。
【0150】
前述のように、本発明の方法によって提供されるNASPを含有する組成物は、臨床医の判断及び対象の要求に依拠する投与計画に従って、他のNASP又は他の治療薬、例えば、止血薬、血液因子又は他の医薬品と組み合わせて投与してもよい。したがって、投与計画としては、1日5回投与、1日4回投与、1日3回投与、1日2回投与、1日1回投与、1週間に3回投与、1週間に2回投与、1週間に1回投与、1ヶ月に2回投与、1ヶ月に1回投与、及びそれらの任意の組み合わせを挙げることができるが、これらに限定するものではない。
【0151】
一部の実施形態において、出血性障害は、主題の方法及び組成物を長期間にわたって複数回投与で必要とする慢性状態(例えば、先天性又は後天性凝固因子欠乏症)であることができる。別法として、本発明の方法及び組成物は、急性状態(例えば、外科手術若しくは外傷又は因子阻害剤に起因する出血/凝固補充療法(coagulation replacement therapy)を受けている対象の自己免疫エピソード)の治療のために、単回投与又は比較的短期間、例えば1〜2週間にわたって複数回投与できる。
【0152】
本発明の実施形態の実施に当たり、治療の1つ又は複数の治療有効サイクルを対象に施す。「治療の治療有効サイクル」とは、投与時に、治療に関する所望の治療反応をもたらす治療のサイクルを意味する。例えば、治療の1つ又は複数の治療有効サイクルは、血液凝固アッセイ(例えば、CAT、aPTT、(以下に詳述))によって決定される血液凝固速度を、1%以上、例えば5%以上、例えば10%以上、例えば15%以上、例えば20%以上、例えば30%以上、例えば40%以上、例えば50%以上、例えば75%以上、例えば90%以上、例えば95%以上増加させることができ、例えば、血餅形成速度を99%以上増加させることができる。他の例では、治療の1つ又は複数の治療有効サイクルは、血餅形成速度を、1.5倍以上、例えば2倍以上、例えば5倍以上、例えば10倍以上、例えば50倍以上、例えば100倍以上増加させることができる。一部の実施形態において、本発明の方法によって治療された対象は、正の治療反応を示す。「正の治療反応」とは、対象が出血性障害の1つ又は複数の症状の改善を示すことを意味する。例えば、本発明によって提供される方法に対して正の治療反応を示す対象は、血液凝固時間の短縮、出血の減少、因子補充療法の必要性の減少又はそれらの組み合わせなど(これらに限定するものではないが)の反応を伴うことができる。特定の実施形態において、治療の2つ以上の治療有効サイクルを施す。
【0153】
前記で概説したように、特定の実施形態による方法の実施において、一定量のNASPを含む組成物を対象に投与して、対象の血液凝固を増強する。任意の都合のよい投与方法を使用できる。投与方法としては、経口投与、注射(例えば、皮下注射、静脈内注射、又は筋肉内注射)、静脈内点滴、肺適用、直腸適用、経皮適用、経粘膜適用、髄腔内適用、心膜適用、動脈内適用、脳内適用、眼内適用、腹腔内適用又は局所(すなわち、直接)適用を挙げることができるが、これらに限定するものではない。以下により詳細に記載するように、本発明の医薬組成物は、液剤若しくは懸濁剤、シロップ剤、クリーム剤、軟膏剤、錠剤、カプセル剤、散剤、ゲル剤、マトリックス剤、坐剤又はそれらの任意の組み合わせの形態であることができる。前記で詳述したように、一定量のNASPを有する組成物を血液凝固因子と組み合わせて投与する場合には、各成分の投与方法は、同一であっても又は異なっていてもよい。例えば、一部の例では、一定量のNASPを有する組成物を局所適用する(例えば、クリーム剤として)一方で、血液凝固因子を経口投与してもよい。他の例では、一定量のNASPを有する組成物と血液凝固因子の両方を局所適用する。特定の実施形態において、一定量のNASPを有する組成物は、例えば、病変、損傷又は外科手術の結果としての出血の治療のための局部的な投与に使用できる。一部の例では、NASPは、出血の部位での注射によって又は固形物、液剤若しくは軟膏剤の形態で投与することもでき、或いは粘着テープによって適用することもできる。
【0154】
特定の実施形態において、本発明の方法は、一定量のNASPを有する組成物の予防的投与、例えば、予定されている外科手術前の投与を可能にする。組成物は、所望に応じて予防的に、例えば、予定されている手術の1時間以上前に、例えば、予定されている手術の10時間前に、例えば、予定されている手術の24時間前に、例えば、予定されている手術の1週間前に、適用できる。一部の例では、予定されている手術の前又は間に投与される組成物は、以下により詳細に記載するような持続放出製剤(例えば、経皮パッチ、小型の植込み型ポンプ、持続放出カプレット又は錠剤)であることができる。
【0155】
特定の実施形態において、本発明の組成物は、関連する症状又は無関係の症状を治療するための他の薬剤の前に、それと同時に又はその後に投与することができる。他の薬剤と同時に投与する場合には、本発明の組成物は、同一組成物で又は異なる組成物で投与できる。したがって、当該NASP及び他の薬剤は、併用療法の方法で個体に投与できる。「併用療法」とは、療法を受けている対象において物質の組み合わせの治療効果がもたらされるような、対象への投与を意図する。例えば、併用療法は、組み合わせで治療有効量を構成する、本発明の組成物と、少なくとも1種の他の薬剤、止血薬若しくは凝固因子(例えば、第VIII因子又は第IX因子)を有する医薬組成物とを、特定の投与計画に従って投与することによって実施できる。同様に、1種又は複数のNASPと治療薬とを、少なくとも1つの治療用量で投与できる。別々の医薬組成物の投与は、これらの物質の組み合わせの治療効果が療法を受けている対象にもたらされるのであれば、同時に又は異なる時間に(例えば、いずれかの順序で連続して同日に又は異なる日に)行うことができる。
【0156】
組成物
本発明の態様はまた、対象の血液凝固を増強する組成物を含む。本発明の実施形態において、組成物はNASPと血液凝固因子との組み合わせを含む。本発明の方法に使用するNASPは、血液凝固促進活性を示す硫酸化多糖である。潜在的なNASPの非抗凝固性は、第VIII因子及び/若しくは第IX因子欠乏血漿における較正自動トロンボグラフィー(CAT)、希釈プロトロンビン時間(dPT)又は活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)凝固アッセイを含む、本明細書中に記載した凝固アッセイのいずれかを用いて決定できる。非凝固活性の1つの尺度は、当該NASPと、既知の抗凝固剤ヘパリンとの比較である。例えば、NASPは、非分画ヘパリン(MW範囲8,000〜30,000;平均18,000ダルトン)の抗凝固活性(凝固時間の統計的に有意な増加によって測定される)の1/3以下、例えば1/10以下を示すことができる。したがって、本明細書中に詳述した種々の凝固アッセイのいずれかを使用すると、NASPは、ヘパリンと比較して少なくとも2倍低い、例えば2〜5倍低い、例えば2〜10倍低い抗凝固活性を示すことができる。
【0157】
一部の実施形態において、本発明の組成物は、8重量%以上の硫黄含量を有するNASPと血液凝固因子とを含む。特定の実施形態において、組成物は、硫黄含量が10重量%以上、例えば15重量%以上、例えば20重量%以上、例えば25重量%以上であるNASPを有する。他の実施形態において、本発明の組成物は、例えば5〜25重量%、例えば5〜20重量%、例えば5〜20重量%、例えば5〜15重量%の範囲の、種々の量の硫黄を含有するNASPを有する。
【0158】
前述のように、NASPの硫黄含量は、硫酸塩の形態で存在し得る。NASPに存在する硫酸塩の総量は様々であることができる。特定の実施形態において、本発明のNASP中に存在する硫酸塩の総量は、20重量%以上、例えば25重量%以上、例えば35重量%以上、例えば50重量%以上である。他の実施形態において、NASP中の硫酸塩の総量は、例えば5〜50重量%、例えば5〜40重量%、例えば5〜30重量%、例えば5〜25重量%、例えば10〜25重量%、例えば10〜20重量%、例えば10〜15重量%の範囲である。
【0159】
本発明のNASP中の各多糖残基は、種々の硫酸化度を有することができる。前述のように、「硫酸化度」とは、NASP多糖主鎖上の各サッカリド残基に結合している硫酸基の数を意味する。一部の実施形態において、各多糖残基(例えば、フコース、ガラクトース、グルコース、マンノース、キシロース(以下に詳述))は、1つ(すなわち、一硫酸化)又は複数(すなわち、ポリ硫酸化)の硫酸部分を含有していてもよい。例えば、一部の例では、サッカリド残基は、サッカリド残基の4位で硫酸化されていてもよい。他の例では、サッカリド残基は、3位で硫酸化されている。他の例では、サッカリド残基は、2位で硫酸化されている。他の例では、サッカリド残基は、6位で硫酸化されている。特定の例では、サッカリド残基は、6位、4位、3位及び2位並びにそれらの任意の組み合わせのうち1つ又はそれ以上で硫酸化されていてもよい。例えば、サッカリド残基は、4位及び3位で、又は4位及び2位で、又は3位及び2位で、又は6位、3位及び2位などで硫酸化されていてもよい。各残基は、硫酸化度が同一であってもよく(例えば、全てのサッカリド残基が一硫酸化されていてもよく)、又は硫酸化度が異なっていてもよい(例えば、一部のサッカリド残基が同一の硫酸化を有し、一部のサッカリド残基が異なる硫酸化を有していてもよい)。例えば、本発明のNASPのサッカリド残基の10%以上、例えば15%以上、例えば25%以上、例えば50%以上、例えば75%以上、例えば90%以上、例えば95%以上、例えば99%以上が一硫酸化されていてもよい。他方では、一部の実施形態において、本発明のNASPのサッカリド残基の10%以上、例えば15%以上、例えば25%以上、例えば50%以上、例えば75%以上、例えば90%以上、例えば95%以上、例えば99%以上がポリ硫酸化されていてもよい。一硫酸化サッカリド残基及びポリ硫酸化サッカリド残基の両方が存在する場合には、本発明のNASP中の一硫酸化残基の、ポリ硫酸化残基に対する比は様々であることができ、一部の例では、1:1〜1:2.5、1:2.5〜1:5、1:5〜1:10、1:10〜1:25、1:25〜1:50、1:50〜1:100、1:100〜1:150、1:150〜1:200、1:200〜1:250、1:250〜1:500、1:500〜1:1000の範囲、又はそれらの範囲であることができる。例えば、当該NASP中の一硫酸化残基の、ポリ硫酸化残基に対するモル比(即ち、一硫酸化サッカリド残基:ポリ硫酸化サッカリド残基)は、1:1〜1:10、1:5〜1:25、1:10〜1:50、1:25〜1:100、1:50〜1:500、又は1:100〜1:1000の範囲であることができる。一部の実施形態において、NASP中のポリ硫酸化残基の、モノ硫酸化残基に対する比(即ち、ポリ硫酸化サッカリド残基:一硫酸化サッカリド残基)は、1:1〜1:2.5、1:2.5〜1:5、1:5〜1:10、1:10〜1:25、1:25〜1:50、1:50〜1:100、1:100〜1:150、1:150〜1:200、1:200〜1:250、1:250〜1:500、1:500〜1:1000の範囲、又はそれらの範囲である。例えば、当該NASP中のポリ硫酸化サッカリド残基の、一硫酸化サッカリド残基に対する比は、1:1〜1:10、1:5〜1:25、1:10〜1:50、1:25〜1:100、1:50〜1:500、又は1:100〜1:1000の範囲であることができる。
【0160】
一部の実施形態において、当該NASPのサッカリド残基は、4位で硫酸化されていてもよい。他の実施形態において、サッカリド残基は、3位で硫酸化されている。特定の実施形態において、サッカリド残基は、4位及び3位で硫酸化されている。他の例では、サッカリド残基は、2位で硫酸化されている。他の例では、サッカリド残基は、6位で硫酸化されている。特定の例では、サッカリド残基は、6位、4位、3位及び2位並びにそれらの任意の組み合わせの1つ又はそれ以上で硫酸化されていてもよい。例えば、本発明のNASPのサッカリド残基の10%以上、例えば15%以上、例えば25%以上、例えば50%以上、例えば75%以上、例えば90%以上、例えば95%以上、例えば99%以上が、6位、4位、3位又は2位のうちの1つのみで硫酸化されていてもよい。他の実施形態において、例えば、本発明のNASPのサッカリド残基の10%以上、例えば15%以上、例えば25%以上、例えば50%以上、例えば75%以上、例えば90%以上、例えば95%以上、例えば99%以上が、6位、4位、3位及び2位のうちの2つ以上で硫酸化されている。特定の実施形態において、本発明のNASPのサッカリド残基の10%以上、例えば15%以上、例えば25%以上、例えば50%以上、例えば75%以上、例えば90%以上、例えば95%以上、例えば99%以上が、3位及び4位の両方で硫酸化されていてもよい。4位で硫酸化されているサッカリド残基及び3位で硫酸化されているサッカリド残基の両方が存在する場合には、4位で硫酸化されているサッカリド残基の、3位で硫酸化されているサッカリド残基に対する比は様々であることができ、一部の例では、1:1〜1:2.5、1:2.5〜1:5、1:5〜1:10、1:10〜1:25、1:25〜1:50、1:50〜1:100、1:100〜1:150、1:150〜1:200、1:200〜1:250、1:250〜1:500、1:500〜1:1000の範囲、又はそれらの範囲であることができる。例えば、当該NASP中の4位で硫酸化されたサッカリド残基の、3位で硫酸化されたサッカリド残基に対するモル比は、1:1〜1:10、1:5〜1:25、1:10〜1:50、1:25〜1:100、1:50〜1:500、又は1:100〜1:1000の範囲であることができる。一部の実施形態において、NASP中の3位で硫酸化されているサッカリド残基の、4位で硫酸化されているサッカリド残基に対する比は、1:1〜1:2.5、1:2.5〜1:5、1:5〜1:10、1:10〜1:25、1:25〜1:50、1:50〜1:100、1:100〜1:150、1:150〜1:200、1:200〜1:250、1:250〜1:500、1:500〜1:1000の範囲、又はそれらの範囲である。例えば、当該NASP中の3位で硫酸化されているサッカリド残基の、4位で硫酸化されているサッカリド残基に対する比は、1:1〜1:10、1:5〜1:25、1:10〜1:50、1:25〜1:100、1:50〜1:500、又は1:100〜1:1000の範囲であることができる。前述したような、任意の都合のよいプロトコールを使用して、NASPの硫酸化サッカリド残基の型を決定できる。
【0161】
前記で詳述したように、本発明のNASPは、生物学的供給源から抽出してもよい。一部の例では、当該NASPは、8重量%以上の硫黄含量を有するフコイダンである。特定の実施形態において、8重量%以上の硫黄含量を有するフコイダンとしては、Fucoidan GFS 5508005、発熱物質が除去されたワカメ(Undaria pinnatifida);Fucoidan GFS5508004、ワカメ;Fucoidan GFS5508003、ワカメ;Fucoidan 5307002、コンブ(Fucus vesiculosus)、最大MWピーク126.7kD;Fucoidan VG49、コンブ、MWが比較的低い、5307002の加水分解試料、最大MWピーク22.5kD;Fucoidan 5308004、コンブ;Fucoidan 5308005、コンブ;Fucoidan L/FVF1091、コンブ;Fucoidan VG201096A、コンブ;Fucoidan VG201096B、コンブ;Fucoidan VG57、ワカメ、高荷電(高硫酸化、脱アセチル化);Fucoidan VG50、アスコフィラム・ノドサム(Ascophyllum nodosum)、最大MWピーク149.7kD;及びそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0162】
更に、本発明の組成物は、1種又は複数の血液凝固因子も含む。例えば、本発明の組成物は、1種又は複数のNASPの一定量を1種又は複数の血液凝固因子と組み合わせて含むことができる。当該血液凝固因子としては、第XI因子、第XII因子、プレカリクレイン、高分子量キニノーゲン(HMWK)、第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XIII因子、第II因子、第VIIa因子、及びフォンビルブランド因子、第Xa因子、第IXa因子、第XIa因子、第XIIa因子及び第VIIIa因子、プレカリクレイン、高分子量キニノーゲン、組織因子、第VIIa因子、第Va因子及び第Xa因子が挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0163】
本発明の組成物中のNASP及び血液凝固因子のそれぞれの量(即ち、質量)は様々であることができ、0.001〜1000mg、例えば0.01〜500mg、例えば0.1〜250mg、例えば0.5〜100mg、例えば1〜50mg、例えば1〜10mgの範囲であることができる。したがって、本発明の組成物において、8重量%以上の硫黄含量を有するNASPの、血液凝固因子に対する質量比は様々であることができ、一部の例では、1:1〜1:2.5、1:2.5〜1:5、1:5〜1:10、1:10〜1:25、1:25〜1:50、1:50〜1:100、1:100〜1:150、1:150〜1:200、1:200〜1:250、1:250〜1:500、1:500〜1:1000の範囲、又はそれらの範囲であることができる。例えば、8重量%以上の硫黄含量を有するNASPの、血液凝固因子に対する質量比は、1:1〜1:10、1:5〜1:25、1:10〜1:50、1:25〜1:100、1:50〜1:500、又は1:100〜1:1000の範囲であることができる。一部の実施形態において、血液凝固因子の、8重量%以上の硫黄含量を有するNASPに対する質量比は、1:1〜1:2.5、1:2.5〜1:5、1:5〜1:10、1:10〜1:25、1:25〜1:50、1:50〜1:100、1:100〜1:150、1:150〜1:200、1:200〜1:250、1:250〜1:500、1:500〜1:1000、又はそれらの範囲である。例えば、血液凝固因子の、8重量%の硫黄含量を有するNASPを含有する組成物に対する質量比は、1:1〜1:10、1:5〜1:25、1:10〜1:50、1:25〜1:100、1:50〜1:500、又は1:100〜1:1000の範囲であることができる。
【0164】
他の実施形態において、本発明の組成物は、40%以上のフコースサッカリド残基を有するNASPと血液凝固因子とを含む。前述のように、NASPのサッカリド含量は様々であることができる。一部の例では、当該NASPのサッカリドの内容物は、フコース残基、キシロース残基、ガラクトース残基、グルコース残基、マンノース残基、ラムノース残基、アラビノース残基及びウロン酸を含み得るが、これに限定されるものではない。一部の実施形態において、当該NASPは、フコース残基、キシロース残基、ガラクトース残基、グルコース残基、マンノース残基、ラムノース残基、アラビノース残基及びウロン酸のうちの2種以上から構成される。当該NASP中の各サッカリド残基の量は様々であることができる。例えば、本発明のNASPのサッカリド残基の40%以上、例えば45%以上、例えば50%以上、例えば55%以上、例えば65%以上、例えば75%以上、例えば90%以上、例えば99%以上がフコースサッカリド残基であってもよい。他の例では、本発明のNASPのサッカリド残基の1%以上、例えば5%以上、例えば10%以上、例えば15%以上、例えば20%以上、例えば25%以上が、ガラクトースサッカリド残基であってもよい。さらに他の例では、本発明のNASPのサッカリド残基の1%以上、例えば5%以上、例えば10%以上、例えば15%以上、例えば20%以上、例えば25%以上が、ウロン酸サッカリド残基であってもよい。
【0165】
本発明の実施形態において、当該NASPは、線状(すなわち、非分岐)多糖であってもよいし、又は分岐多糖であってもよい。特定の例では、NASPは、その構造の一部分が線状であり、その構造の他の部分が分岐であるものでもよい。前述のように、線状多糖は、α−1,4グリコシド結合若しくはα−1,3グリコシド結合又は交互のα−1,3/α−1,4グリコシド結合のみを含む多糖又は多糖の一部であり、分岐多糖は、他のサッカリド残基との2つ以上のグリコシド結合を含む多糖又は多糖の一部であって、グリコシド結合の1つがα−1,4グリコシド結合若しくはα−1,3グリコシド結合又は交互のα−1,3/α−1,4グリコシド結合であり且つ他がα−1,6グリコシド結合であるものである。当該NASPの構造中の分岐の量は様々であることができる。
【0166】
一部の実施形態において、本発明の組成物は、40%以上のフコースサッカリド残基を含有するNASPを含む。例えば、当該NASPは、45%以上、例えば50%以上、例えば60%以上、例えば75%以上、例えば85%以上、例えば90%以上、例えば95%以上のフコースサッカリド残基を含有できる。特定の実施形態において、当該NASPは、40%以上、例えば50%以上、例えば60%以上、例えば75%以上、例えば85%以上、例えば90%以上、例えば95%以上のフコースサッカリド残基の硫酸化エステルを含有できる。前記で詳述したように、フコースサッカリド残基の硫酸化エステルは、硫酸化の量、硫酸化の位置選択性及び硫酸化度の点で異なり得る。例えば、フコースサッカリド残基の硫酸化エステルは、一部の例では、一硫酸化されていてもよい。他の例では、フコースサッカリド残基の硫酸化エステルは、ポリ硫酸化されていてもよい。同様に、特定の例では、フコースサッカリド残基の硫酸化エステルは、4位でリン酸化されていてもよい。他方で、フコースサッカリド残基の硫酸化エステルは、3位で硫酸化されていてもよい。
【0167】
特定の実施形態において、当該NASPは、40%以上のフコースサッカリド残基と20%以上のガラクトースサッカリド残基、例えば45%以上のフコースサッカリド残基と20%以上のガラクトース残基、例えば50%以上のフコースサッカリド残基と20%以上のガラクトース残基、例えば60%以上のフコースサッカリド残基と20%以上のガラクトース残基、例えば70%以上のフコースサッカリド残基と20%以上のガラクトース残基を含有する。他の実施形態において、当該NASPは、40%以上のフコースサッカリド残基と25%以上のガラクトースサッカリド残基、例えば40%以上のフコースサッカリド残基と30%以上のガラクトースサッカリド残基、例えば40%以上のフコースサッカリド残基と40%以上のガラクトースサッカリド残基を含有する。
【0168】
前記で詳述したように、本発明のNASPは、生物学的供給源から抽出してもよい。一部の例では、当該NASPは、40%以上のフコースサッカリド残基を含有するフコイダンである。特定の実施形態において、当該フコイダンとしては、Fucoidan GFS5508005、発熱物質が除去されたワカメ;Fucoidan GFS5508004、ワカメ;Fucoidan VG23、E.Maxima;Fucoidan L/FVF1093、コンブ;Fucoidan L/FVF1092、コンブ;及びそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0169】
本発明の組成物はまた、40%以上のフコースサッカリド残基を有するNASPに加えて、1種又は複数の血液凝固因子を含む。例えば、本発明の組成物は、1種又は複数のNASPの一定量を1種又は複数の血液凝固因子と組み合わせて含むことができる。当該血液凝固因子としては、第XI因子、第XII因子、プレカリクレイン、高分子量キニノーゲン(HMWK)、第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XIII因子、第II因子、第VIIa因子、及びフォンビルブランド因子、第Xa因子、第IXa因子、第XIa因子、第XIIa因子及び第VIIIa因子、プレカリクレイン、高分子量キニノーゲン、組織因子、第VIIa因子、第Va因子及び第Xa因子が挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0170】
本発明の組成物中のNASP及び血液凝固因子のそれぞれの量(即ち、質量)は様々であることができ、0.001〜1000mg、例えば0.01〜500mg、例えば0.1〜250mg、例えば0.5〜100mg、例えば1〜50mg、例えば1〜10mgの範囲であることができる。したがって、本発明の組成物において、40%以上のフコースサッカリド残基を有するNASPの、血液凝固因子に対する質量比は様々であることができ、一部の例では、1:1〜1:2.5、1:2.5〜1:5、1:5〜1:10、1:10〜1:25、1:25〜1:50、1:50〜1:100、1:100〜1:150、1:150〜1:200、1:200〜1:250、1:250〜1:500、1:500〜1:1000の範囲、又はそれらの範囲であることができる。例えば、40%以上のフコースサッカリド残基を有するNASPの、血液凝固因子に対する質量比は、1:1〜1:10、1:5〜1:25、1:10〜1:50、1:25〜1:100、1:50〜1:500、又は1:100〜1:1000の範囲であることができる。一部の実施形態において、血液凝固因子の、40%以上のフコースサッカリド残基を有するNASPに対する質量比は、1:1〜1:2.5、1:2.5〜1:5、1:5〜1:10、1:10〜1:25、1:25〜1:50、1:50〜1:100、1:100〜1:150、1:150〜1:200、1:200〜1:250、1:250〜1:500、1:500〜1:1000、又はそれらの範囲である。例えば、血液凝固因子の、40%以上のフコースサッカリド残基を有するNASPを含有する組成物に対する質量比は、1:1〜1:10、1:5〜1:25、1:10〜1:50、1:25〜1:100、1:50〜1:500、又は1:100〜1:1000の範囲であることができる。
【0171】
特定の実施形態において、本発明の組成物はフコイダンを含む。フコイダンは、特定の食用海藻、褐藻及び棘皮動物(例えば、ウニ、ナマコ)から抽出され得る、天然に存在する複雑な硫酸化多糖化合物である。本明細書中で使用する用語「フコイダン」は、1つの化学物質ではなく、低硫酸塩ポリマーの生物学的供給源から抽出された部分の様々な群を指す。褐藻及び棘皮動物の種々の種に由来するフコイダンは、それらの主鎖中のフコースの量、硫酸化度及び硫酸化パターン、構造(線状対分岐)、並びに個々のサッカリド及びウロン酸の割合の点で異なる。
【0172】
本発明に使用するフコイダンは、天然供給源(例えば、褐藻)から抽出し、更に精製し、且つ/又は修飾できる。フコイダンは熱水によって、酸若しくはエタノール抽出によって、又は酵素消化とそれに続く、沈殿(例えば、有機溶媒の追加による)による水溶液からの単離によって藻類から単離でき、又は限外濾過できる。
【0173】
本発明におけるフコイダンは、特に、ヒバマタ属(Fucus)、コンブ属(Laminaria)、オキナワモズク属(Cladosiphon)、モズク(Namacystus)、ワカメ属(Undaria)、ナガマツモ属(Chordaria)、ホンダワラ属(Sargassum)、ネバリモ属(Leathesia)、ウルシグサ属(Desmarestia)、ウイキョウモ属(Dictyosiphon)、アミジグサ属(Dictyota)、ウミウチワサ属(Padina)、コモングサ属(Spatoglossum)、アデノキスティス属(Adenocystis)、ピラエラ属(Pylayella)、アスコフィルム属(Ascophyllum)、ビフルカリア属(Bifurcaria)、ヒマンタリア属(Himanthalia)、ヒジキ属(Hizikia)、エゾイシゲ属(Pelvetia)、アイヌワカメ属(Alaria)、ネコアシコンブ属(Arthrothamnus)、ツルモ属(Chorda)、カジメ属(Ecklonia)、アラメ属(Eisenia)、マクロシスティス属(Macrocystis)、ネレオキスチス属(Nereocystis)、セイヨウハバノリ属(Petalonia)、カヤモノリ属(Scytosiphon)及びモツキチャソウメン属(Saundersella)の生物体から抽出できる。
【0174】
本明細書中に記載したフコイダンは、硫黄含量、硫酸化度、サッカリド含量及び分子量が異なるフコイダンの不均一な混合物であってもよい。
【0175】
当該フコイダンは、平均分子量が、約10〜約500,000ダルトン、例えば、約100〜約300,000ダルトン、例えば、1000〜250,000ダルトン、例えば、1000〜150,000ダルトンの範囲であることができる。フコイダンの分子量は、任意の都合のよいプロトコール、例えば、特にゲル浸透クロマトグラフィー又は高性能サイズ排除クロマトグラフィー(HPSEC)、キャピラリー電気泳動法、PAGE(ポリアクリルアミドゲル電気泳動法)、アガロースゲル電気泳動法によって決定できる。
【0176】
一部の実施形態において、当該フコイダンは、種々の分子量を有する硫酸化多糖の不均一な混合物であってもよい。例えば、一部の例では、フコイダン組成物の5%以上、例えば、10%以上、例えば、25%以上、例えば、50%以上、例えば、75%以上、例えば、90%以上、例えば95%以上が、10〜30,000ダルトンの範囲の分子量を有する。他の実施形態においては、フコイダン組成物の5%以上、例えば、10%以上、例えば、25%以上、例えば、50%以上、例えば、75%以上、例えば、90%以上、例えば95%以上が、30,000〜75,000ダルトンの範囲の分子量を有する。さらに他の実施形態において、フコイダン組成物の5%以上、例えば、10%以上、例えば、25%以上、例えば、50%以上、例えば、75%以上、例えば、90%以上、例えば95%以上が、75,000ダルトン超の分子量を有する。
【0177】
特定の実施形態において、低分子量フコイダンを、本発明の方法及び本発明の組成物によって提供される血液凝固の増強に使用できる。「低分子量フコイダン」とは、約10〜30,000ダルトン、例えば、100〜30,000ダルトン、例えば、500〜25,000ダルトン、例えば、1000〜15,000ダルトンの範囲の重量平均分子量を有するフコイダンを意味する。低分子量フコイダンの例は、10〜30,000ダルトンの範囲の分子量を有する天然に存在するフコイダン、より大きい分子量のフコイダンの酸若しくは酵素加水分解によって生成される比較的大きい分子量のフコイダンの断片などであることができるが、これらに限定するものではなく、又は分画フコイダン試料から単離された、10〜30,000ダルトンの範囲の分子量を有する画分であってもよい。
【0178】
一部の実施形態において、生物学的供給源から抽出されたフコイダンを分画して、低分子量フコイダン(即ち、10〜30,000ダルトンの範囲の分子量を有するフコイダンを含有する画分)を単離してもよい。特にサイズ排除クロマトグラフィー、ゲル浸透クロマトグラフィー、キャピラリー電気泳動法を含むがこれらに限定されない、任意の都合のよいプロトコールを用いて、当該フコイダンを分画できる。
【0179】
特定の例では、フコイダン試料の分画によって得られる低分子量フコイダンは、本発明の方法及び本発明の組成物によって提供される血液凝固の増強に使用できる。例えば、生物学的供給源から抽出されたフコイダンは、分画して、10〜30,000ダルトン、例えば、10〜5000ダルトン、例えば、5000〜10,000ダルトン、例えば、10,000〜15,000ダルトン、例えば、15,000〜30,000ダルトンの範囲の分子量を有するフコイダンを単離できる。特定の実施形態において、これらの画分の1つ又は複数を、前記方法によるなどして、対象の血液凝固を増強するために投与できる。
【0180】
特定の実施形態において、高分子量フコイダンの酸加水分解又はラジカル解重合(radical depolymerization)によって、種々の分子量画分を調製できる。結果として生じる生成物の分子量範囲は、使用する加水分解又は解重合条件の厳しさに基づいて調整できる。次いで、イオン交換クロマトグラフィーを使用して、画分を更に精製してもよい。例えば、フコイダンの中間分子量及び低分子量画分を得るために、高分子量フコイダンを、25〜80℃の範囲の温度において、酸、例えば、HCl(又は任意の他の適当な酸)を0.02〜1.5Mの範囲の濃度で用いて加水分解することができる。加水分解反応時間は典型的には、15分〜数時間の範囲である。結果として生じる加水分解反応混合物は、次に、塩基(例えば、水酸化ナトリウム)の添加によって中和する。その後に、例えば、電気透析法によって塩を除去し、炭水化物分析のための従来の分析技術を用いて加水分解生成物を分析して、重量平均分子量、サッカリド含量及び硫黄含量を決定する。別法として、酵素方法を用いて、例えば、フカンスルフェートヒドラーセ(fucan sulfate hydrolase)(フコイダナーゼEC3.2.1.44)及びα−L−フコシダーゼEC3.2.1.51などのグリコシダーゼを用いて、フコイダンを分解してもよい。本発明に使用するフコイダンは、使用する分離度によって不均一又は均一であり得る。
【0181】
特定の実施形態において、本発明の組成物は、血液凝固因子を、生物学的供給源から抽出されるフコイダン、例えば、Fucoidan 5307002、コンブ、最大MWピーク126.7kD;Fucoidan VG49、コンブ、MWが比較的低い5307002の加水分解試料、最大MWピーク22.5kD;Fucoidan VG57、ワカメ、高荷電(高硫酸化、脱アセチル化);Fucoidan GFS(5508005)、発熱物質が除去されたワカメ;Fucoidan GFS(L/FVF−01091)、発熱物質が除去されたコンブ、最大MWピーク125kD;Fucoidan GFS(L/FVF−01092)、発熱物質が除去されたコンブ、最大MWピーク260kD;Fucoidan GFS(L/FVF−01093)、加水分解され、発熱物質が除去されたコンブ、最大MWピーク36kD;Maritech(登録商標)エクロニア・ラジアータ(Ecklonia radiata)抽出物;Maritech(登録商標)エクロニア・マキシマ(Ecklonia maxima)抽出物;Maritech(登録商標)マクロシスティス・ピリフェラ(Macrocystis pyrifera)抽出物;Maritech(登録商標)免疫試験用フコイダンブレンド(Immune trial Fucoidan Blend);及びそれらの任意の組み合わせと組み合わせて含む。
【0182】
前述のように、当該フコイダンは、生物学的供給源から抽出できる。一部の例では、生物学的供給源から抽出される粗フコイダン組成物は、不純物も含む場合もある。「不純物」とは、望ましくない可能性があるか又はフコイダン組成物に有害である、粗フコイダン組成物の全ての成分を意味する。例えば、不純物は、本発明のフコイダンの個々の望ましい性質、例えば、血液凝固促進活性を妨げる(即ち、低下させる)か、又は阻害する可能性がある。他の実施形態において、不純物は、フコイダン組成物の機能に有害でない場合もあるが、例えば、後述するような、高レベルの毒素、細菌含量又は高レベルの微量金属イオン(例えば、ヒ素、鉛、カドミウム又は水銀)を含有する、対象への投与に不適当なフコイダン組成物をもたらす可能性もある。不純物としては、残留水分、タンパク質、エンドトキシン、アルギン酸塩、ウロン酸、微量元素及び金属イオンが挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0183】
本発明の抽出フコイダン組成物中に存在するタンパク質不純物の量は、様々であり、0.2〜6重量%、例えば、0.25〜5重量%、例えば、0.5〜2.5重量%、例えば、1.0〜2.0重量%の範囲であり得る。更に、抽出フコイダン組成物中のエンドトキシンレベルもまた、様々であり、0.1〜75EU/mg、例えば、0.5〜50EU/mg、例えば、1〜25EU/mg、例えば、5〜10EU/mgの範囲であり得る。本発明の抽出フコイダン組成物の残留含水量も様々であり、5%〜20%、例えば、5%〜15%、例えば、5%〜10%の範囲であり得る。
【0184】
一部の実施形態において、不純物はウロン酸を含む場合がある。ウロン酸は、本発明の抽出フコイダン組成物に、1〜60重量%、例えば、5〜50重量%、例えば、10〜40重量%、例えば、15〜25重量%の範囲の種々の量で存在し得る。ウロン酸不純物は、例えば、カルバゾールアッセイ又は核磁気共鳴分光法などの任意の都合のよいプロトコールを用いて、検出及び定量化できる。
【0185】
一部の実施形態において、不純物は、微量元素及び金属イオンを含み得る。微量元素及び金属イオンとしては、アルミニウム、ヒ素、臭素、カドミウム、セリウム、クロム、コバルト、ヨウ素、鉛、リチウム、マンガン、水銀、モリブデン、ニッケル、リン、ルビジウム、スズ、タングステン、ウラン、バナジウムを挙げることができるが、これらに限定するものではない。微量元素及び金属イオン(例えば、As、Cd、Hg、Pb)は、本発明の抽出フコイダン組成物中に、0.05μg/g〜3.0μg/g、例えば、0.1μg/g〜2.5μg/g、例えば、0.25μg/g〜2.0μg/g、例えば、0.5μg/g〜1.5μg/gの範囲の種々の量で存在し得る。微量元素及び金属イオンは、任意の都合のよいプロトコール、例えば、質量分析法、誘導結合プラズマ、イオンクロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー、原子吸光法、黒鉛炉原子吸光分析法、誘導結合プラズマ質量分析法、誘導結合プラズマ原子発光分光法、フレーム原子吸光分析法、酸滴定又はそれらの任意の組み合わせを用いて検出できる。
【0186】
一部の実施形態において、生物学的供給源から抽出されたフコイダン組成物は、対象への投与前に精製してもよい。フコイダン組成物中の不純物は、任意の都合のよいプロトコールを用いて精製できる。生物学的供給源から抽出されたフコイダン組成物から不純物を除去及び精製するための方法は、参照によって開示が本明細書中に組み入れられている、2010年2月25日出願の同時係属米国特許出願第12/449,712号に詳述されている。
【0187】
当該NASPと組み合わせて投与する血液凝固因子としては、第XI因子、第XII因子、プレカリクレイン、高分子量キニノーゲン(HMWK)、第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XIII因子、第II因子、第VIIa因子、及びフォンビルブランド因子、第Xa因子、第IXa因子、第XIa因子、第XIIa因子及び第VIIIa因子、プレカリクレイン及び高分子量キニノーゲン、組織因子、第VIIa因子、第Va因子及び第Xa因子を挙げることができるが、これらに限定するものではない。
【0188】
本発明の組成物中のフコイダン及び血液凝固因子のそれぞれの量(即ち、質量)は様々であることができ、0.001〜1000mg、例えば0.01〜500mg、例えば0.1〜250mg、例えば0.5〜100mg、例えば1〜50mg、例えば1〜10mgの範囲であることができる。したがって、本発明の組成物において、フコイダンの、血液凝固因子に対する質量比は様々であることができ、一部の例では、1:1〜1:2.5、1:2.5〜1:5、1:5〜1:10、1:10〜1:25、1:25〜1:50、1:50〜1:100、1:100〜1:150、1:150〜1:200、1:200〜1:250、1:250〜1:500、1:500〜1:1000の範囲、又はそれらの範囲であることができる。例えば、フコイダンの、血液凝固因子に対する質量比は、1:1〜1:10、1:5〜1:25、1:10〜1:50、1:25〜1:100、1:50〜1:500、又は1:100〜1:1000の範囲であることができる。一部の実施形態において、血液凝固因子の、フコイダンに対する質量比は、1:1〜1:2.5、1:2.5〜1:5、1:5〜1:10、1:10〜1:25、1:25〜1:50、1:50〜1:100、1:100〜1:150、1:150〜1:200、1:200〜1:250、1:250〜1:500、1:500〜1:1000、又はそれらの範囲である。例えば、血液凝固因子の、フコイダンに対する質量比は、1:1〜1:10、1:5〜1:25、1:10〜1:50、1:25〜1:100、1:50〜1:500、又は1:100〜1:1000の範囲であることができる。
【0189】
単一の型のNASPのみを含有する本発明の組成物は均一であり得る。他の実施形態において、当該組成物は、2種以上のNASPの不均一混合物である。例えば、不均一混合物は、単糖含量、硫黄含量、硫酸化度、及び不均一又は均一な分子量分布を有するNASPに関して異なる、2種以上のNASPを含有し得る。一部の例では、本発明の組成物は、低分子量を有するフコイダンである。他の例では、本発明の組成物は、広範囲の分子量を有するフコイダンから構成される。
【0190】
特定の実施形態において、本発明の組成物は、医薬組成物の一部として1種又は複数の医薬として許容される賦形剤を更に含むことができる。賦形剤としては、炭水化物、無機塩、抗菌剤、酸化防止剤、界面活性剤、緩衝剤、酸、塩基及びそれらの任意の組み合わせを挙げることができるが、これらに限定するものではない。注射用組成物に適当な賦形剤としては、水、アルコール、ポリオール、グリセリン、植物油、リン脂質及び界面活性剤を挙げることができる。糖、誘導体化糖、例えば、アルジトール、アルドン酸、エステル化糖及び/又は糖ポリマーなどの炭水化物も使用できる。当該炭水化物賦形剤の一部として、例えば、単糖、例えば、フルクトース、マルトース、ガラクトース、グルコース、D−マンノース、ソルボースなど;二糖、例えば、ラクトース、スクロース、トレハロース、セロビオースなど;多糖、例えば、ラフィノース、メレジトース、マルトデキストリン、デキストラン、澱粉など;及びアルジトール、例えば、マンニトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、キシリトール、ソルビトール(グルシトール)、ピラノシルソルビトール、ミオイノシトールなどが挙げられる。無機塩としては、クエン酸、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、硝酸カリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウムとその任意の組み合わせを挙げることができるが、これらに限定するものではない。
【0191】
特定の実施形態において、本発明の組成物は、微生物増殖を予防又は阻止する抗菌剤、例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ベンジルアルコール、塩化セチルピリジニウム、クロロブタノール、フェノール、フェニルエチルアルコール、硝酸フェニル水銀、チメロサール(thimersol)及びそれらの任意の組み合わせを含むこともできる。
【0192】
1種又は複数の酸化防止剤を使用することもできる。組成物の酸化、したがって劣化を低減又は予防できる酸化防止剤としては、例えば、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、次亜リン酸、モノチオグリセロール、没食子酸プロピル、亜硫酸水素ナトリウム、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム及びそれらの任意の組み合わせを挙げることができる。
【0193】
1種又は複数の界面活性剤が、本発明の組成物中に含まれる場合もある。例えば、適当な界面活性剤としては、ポリソルベート、例えば、「Tween 20」及び「Tween 80」、並びにプルロニック、例えば、F68及びF88(BASF、Mount Olive、New Jersey);ソルビタンエステル;脂質、例えば、リン脂質、例えば、レシチン及び他のホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン(しかし、リポソーム型でないのが好ましい)、脂肪酸及び脂肪酸エステル;ステロイド、例えば、コレステロール;キレート化剤、例えば、EDTA;更に亜鉛及び他のカチオンが挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0194】
酸又は塩基、本発明の組成物に存在し得る。例えば、酸としては、塩酸、酢酸、リン酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、ギ酸、トリクロロ酢酸、硝酸、過塩素酸、リン酸、硫酸、フマル酸及びそれらの任意の組み合わせを挙げることができるが、これらに限定するものではない。塩基の例としては、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、酢酸アンモニウム、酢酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、クエン酸ナトリウム、ギ酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、フマル酸カリウム及びそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0195】
組成物中の任意の個々の賦形剤の量は、賦形剤の性質及び機能並びに組成物の個々の要求によって異なる。典型的には、任意の個々の賦形剤の最適量の決定は、ルーチン実験によって、即ち、種々の量(少量から多量まで)の賦形剤を含有する組成物を調製し、安定性及び他のパラメーターを調べ、次いで、著しい有害作用を生じることなく最適性能を達成する範囲を決定することによって行う。しかし、一般に、1種又は複数の賦形剤は、組成物中に、約1〜約99重量%、例えば、約5〜約98重量%、例えば、約15〜約95重量%、例えば、30重量%未満の量で存在する。本発明の組成物中に使用できる医薬賦形剤と他の賦形剤は、「Remington:The Science & Practice of Pharmacy」、第19版、Williams & Williams、(1995年)、「Physician’s Desk Reference」、第52版、Medical Economics、Montvale、NJ(1998年)、及びKibbe,A.H.、Handbook of Pharmaceutical Excipients、第3版、American Pharmaceutical Association、Washington,D.C.、2000年に記載されており、これらの開示を参照によって本明細書中に組み入れる。
【0196】
前述のように、本発明の組成物は、任意の都合のよい投与方法によって投与できる。したがって、製剤は様々であることができる。例えば、本発明の組成物は、注射剤、例えば、使用前に溶剤でもどすことができる散剤又は凍結乾燥物、及びすぐに使用できる注射液又は注射懸濁液、使用前にビヒクルと組み合わされる乾燥不溶性組成物、並びに投与前に希釈される乳剤及び液体濃縮物であることができる。本発明の組成物を注射剤に使用する実施形態において、注射前に固体組成物をもどすための希釈剤としては、静菌性注射用蒸留水、5%ブドウ糖液、リン酸緩衝生理食塩水、リンゲル液、生理食塩水、滅菌水、脱イオン水及びそれらの任意の組み合わせを挙げることができるが、これらに限定するものではない。一部の実施形態において、本発明の医薬組成物は、液剤若しくは懸濁剤、シロップ剤、クリーム剤、軟膏剤、錠剤、カプセル剤、散剤、ゲル剤、マトリックス剤、坐剤又はそれらの任意の組み合わせの形態であることができる。
【0197】
本発明の組成物は、意図される送達方法及び使用方法によっては、シリンジ、埋め込み装置などに予め装填してもよい。特定の実施形態において、組成物は単位剤形であり、したがって、一定量の組成物が単一用量で、予め測定された又はプレパックされた形態で準備ができている。
【0198】
有用性
主題の方法及び組成物は、対象の血液凝固の増強が所望され且つ対象がNASPによる治療に応答性である全ての状況に使用される。特定の実施形態において、主題の方法及び組成物は、出血性障害、例えば、慢性又は急性出血性障害、血液因子欠乏症に起因する先天性凝固障害、後天性凝固障害及び抗凝固剤の投与の治療に使用できる。例えば、出血性障害としては、血友病A、血友病B、フォンビルブランド病、特発性血小板減少、1種又は複数の接触因子(例えば、第XI因子、第XII因子、プレカリクレイン及び高分子量キニノーゲン(HMWK))の欠乏、臨床的に重要な出血と関連する1種又は複数の因子(例えば、第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XIII因子、第II因子(低プロトロンビン血症)及びフォンビルブランド因子)の欠乏、ビタミンK欠乏症、フィブリノーゲンの障害(無フィブリノーゲン血、低フィブリノーゲン血及びフィブリノーゲン異常症を含む)、α−抗プラスミン欠乏症及び出血多量(例えば、肝疾患、腎疾患、血小板減少症、血小板機能異常症、血腫、内出血、出血性関節症、外科手術、外傷、低体温症、月経及び妊娠に起因するもの)を挙げることができるが、これらに限定するものではない。
【0199】
主題の方法及び組成物はまた、血液因子欠乏症に起因する先天性凝固障害又は後天性凝固障害の治療のための血液凝固の増強に使用される。血液因子欠乏症は、第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第XI因子、第XII因子、第XIII因子及びフォンビルブランド因子を含むがこれらに限定されない1つ又は複数の因子の欠乏に起因し得る。
【0200】
主題の方法及び組成物はまた、凝固因子の欠乏に関連する出血性障害などの出血性障害を治療する際の止血を改善するために又は対象における抗凝固剤の効果を逆転させるために、血液凝固を増強するのに使用される。例えば、本発明の方法及び組成物による血液凝固の増強は、先天性凝固障害、後天性凝固障害、外傷によって誘発される出血症状の治療に使用できる。NASPを用いて治療できる出血性障害の例としては、血友病A、血友病B、フォンビルブランド病、特発性血小板減少、1種又は複数の接触因子(例えば、第XI因子、第XII因子、プレカリクレイン及び高分子量キニノーゲン(HMWK))の欠乏、臨床的に重要な出血と関連する1種又は複数の因子(例えば、第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XIII因子、第II因子(低プロトロンビン血症)及びフォンビルブランド因子)の欠乏、ビタミンK欠乏症、フィブリノーゲンの障害(無フィブリノーゲン血、低フィブリノーゲン血及びフィブリノーゲン異常症を含む)、α−抗プラスミン欠乏症及び出血多量(例えば、肝疾患、腎疾患、血小板減少症、血小板機能異常症、血腫、内出血、出血性関節症、外科手術、外傷、低体温症、月経及び妊娠に起因するもの)が挙げられるが、これらに限定するものではない。特定の実施形態において、本発明の方法及び組成物は、血友病A、血友病B及びフォンビルブランド病を含む先天性凝固障害の治療に使用される。他の実施形態において、NASPは、第VIII因子、フォンビルブランド因子、第IX因子、第V因子、第XI因子、第XII因子及び第XIII因子の欠乏を含む後天性凝固障害の治療に、特に血液凝固因子に対する阻害剤又は自己免疫に起因する障害又は凝固因子の合成を減少させる疾患若しくは状態に起因する止血障害の治療に使用される。
【0201】
一部の実施形態において、出血性障害は、主題の方法及び組成物を長期間にわたって複数回投与で必要とする慢性状態(例えば、先天性又は後天性凝固因子欠乏症)であってもよい。別法として、本発明の方法及び組成物は、急性状態(例えば、手術若しくは外傷又は因子阻害剤に起因する出血/凝固補充療法(coagulation replacement therapy)を受けている対象の自己免疫エピソード)の治療のために、単回投与又は比較的短期間、例えば1〜2週間にわたって複数回投与できる。
【0202】
主題の方法及び組成物はまた、外科手術又は侵襲的手技を受けている対象における血液凝固の増強に使用される。
【0203】
主題の方法及び組成物はまた、対象における抗凝固剤の効果を逆転させるために血液凝固を増強するのに使用され、この方法は、NASPを含有する組成物の治療有効量を対象に投与することを含む。特定の実施形態において、対象は、ヘパリン、クマリン誘導体(例えば、ワルファリン又はジクマロール)、TFPI、AT III(アンチトロンビンIII)、ループス抗凝固因子、線虫抗凝固ペプチド(NAPc2)、活性部位遮断第VIIa因子(第VIIai因子)、第IXa因子阻害剤、第Xa因子阻害剤(例えば、フォンダパリヌクス、イドラパリヌクス、DX−9065a及びラザキサバン(DPC906))第Va因子及び第VIIIa因子の阻害剤(例えば、活性化プロテインC(APC)及び可溶性トロンボモジュリン)、トロンビン阻害剤(例えば、ヒルジン、ビバリルディン、アルガトロバン及びキシメラガトラン)を含むがこれらに限定されない抗凝固剤による治療を受けていてもよい。特定の実施形態において、対象が治療を受けている抗凝固剤は、凝固因子、例えば、第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XIII因子、第II因子、第XI因子、第XII因子、フォンビルブランド因子、プレカリクレイン又は高分子量キニノーゲン(HMWK)に結合する抗体(これらに限定するものではない)であってもよい。
【0204】
別の態様において、本発明は、本明細書中で詳述したNASPを含有する組成物の治療有効量を対象に投与することを含む、血液凝固の改善が望ましい、外科手術又は侵襲的手技を受けている対象の治療方法を提供する。特定の実施形態において、NASPは、外科手術又は侵襲的手技を受けている対象に、1種若しくは複数の異なるNASPを及び/又は1種若しくは複数の他の治療薬と組み合わせて同時投与することができる。例えば、第XI因子、第XII因子、プレカリクレイン、高分子量キニノーゲン(HMWK)、第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XIII因子、第II因子、因子VIIa及びフォンビルブランド因子からなる群から選択される1種又は複数の因子の治療有効量を対象に投与することができる。治療は、第Xa因子、第IXa因子、第XIa因子、第XIIa因子及び第VIIIa因子、プレカリクレイン及び高分子量キニノーゲンを含む内因性凝固経路の活性化剤;又は組織因子、第VIIa因子、第Va因子及び第Xa因子を含む外因性凝固経路の活性化剤などの凝固促進剤の投与を更に含むことができる。外科手術又は侵襲的手技を受けている対象の治療に使用される治療薬は、同一又は異なる組成物で、NASPの投与と同時に、NASP投与の前又は後に投与できる。
【0205】
別の態様において、本発明は、生体試料と本発明の組成物とを合わせるステップと、生体試料の凝固時間を測定するステップと、生体試料の凝固時間を、本発明の組成物に曝露していない対応する生体試料の凝固時間と比較するステップとを含む、本明細書中で詳述されたNASPによる、生体試料中の凝固促進を測定する方法であって、NASPに曝露された生体試料の凝固時間の減少が観察される場合、その減少が凝固を促進するNASPを示す、方法を提供する。
【0206】
前記で開示するように、止血薬、血液因子及び医薬品もまた使用できる。例えば、対象に、第XI因子、第XII因子、プレカリクレイン、高分子量キニノーゲン(HMWK)、第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XIII因子、第II因子、第VIIa因子、フォンビルブランド因子、第Xa因子、第IXa因子、第XIa因子、第XIIa因子及び第VIIIa因子、プレカリクレイン、高分子量キニノーゲン、組織因子、第VIIa因子、第Va因子及び第Xa因子などの1種又は複数の血液凝固因子を投与してもよい。
【0207】
キット
前記組成物、例えば、前述のようなNASP組成物及び/又は血液凝固因子の1種又は複数を含むことができる、主題方法の実施に使用するためのキットも提供する。キットは、主題方法の実施に使用できる他の成分、例えば、投与装置、流体源、シリンジ、針などを更に含むことができる。種々の成分は、所望に応じて、例えば、一緒に又は別個に包装することができる。
【0208】
前記成分に加えて、主題キットは、主題方法の実施にキットの成分を使用するための取扱説明書を更に含むことができる。主題方法を実施するための取扱説明書は一般に、適当な記録媒体に記録される。例えば、取扱説明書は、紙又はプラスチックなどに印刷してもよい。したがって、取扱説明書は、例えば、キット中に添付文書として、キット又はその成分の容器のラベル中に(即ち、パッケージ又はサブパッケージと関連させて)存在できる。他の実施形態において、取扱説明書は、適当なコンピュータ可読記憶媒体(例えば、CD−ROM、ディスケットなど)上に存在する電子記憶データファイルとして存在する。さらに他の実施形態において、実際の取扱説明書はキット中に存在せず、リモートソースからの(例えば、インターネットによる)取扱説明書の入手手段を提供する。この実施形態の一例は、取扱説明書を閲覧でき且つ/又は取扱説明書をダウンロードできるウェブアドレスを含むキットである。取扱説明書と同様に、取扱説明書のこの入手手段も、適当な支持体上に記録される。
【0209】
実験
以下の例は、例証のみを目的として提示し、本発明の範囲を限定することを決して意図しない。
【0210】
使用する数値(例えば、量、温度など)に関しては精度を保証するよう努めたが、若干の実験誤差及び偏差を考慮に入れなければならないことは言うまでもない。
【実施例1】
【0211】
凝固アッセイ
凝固を促進し、出血を減少させるNASPの能力を、種々のインビトロ凝固アッセイ(例えば、dPT及びaPTTアッセイ)及びインビボ出血モデル(例えば、血友病マウス又はイヌの尾部小片又は角皮出血時間の決定)を用いて決定する。凝固アッセイは、当該NASP及び1種又は複数の血液因子、凝固促進剤又は他の試薬を含む、本発明の組成物の存在下において実施できる。例えば、第XI因子、第XII因子、プレカリクレイン、高分子量キニノーゲン(HMWK)、第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XIII因子、第II因子、及びフォンビルブランド因子、組織因子、第VIIa因子、第Va因子、及び第Xa因子、第IXa因子、第XIa因子、第XIIa因子及び第VIIIa因子を含むがこれらに限定されない1種若しくは複数の因子、並びに/又はAPTT試薬、トロンボプラスチン、フィブリン、TFPI、ラッセルクサリヘビ蛇毒、微粉化シリカ粒子、エラグ酸、スルファチド及びカオリンを含むがこれらに限定されない1種若しくは複数の試薬を加えることができる。
【0212】
本発明の組成物は、血液凝固促進活性を示す濃度より著しく高い濃度でしか、抗凝固活性を示さない。望ましくない抗凝固性が生じる濃度の、所望の凝固促進活性が生じる濃度に対する比を、凝固促進インデックス(procoagulant index)と称する。本発明の組成物の凝固促進インデックスは、5以上、例えば、10以上、例えば、30以上、例えば、100以上、例えば、300以上、例えば、1000以上であることができる。
【0213】
較正自動トロンボグラフィー(CAT)アッセイ
CATの研究では、凝固促進ウインドウを検討するために、先天性凝固因子欠乏症患者からのいくつかの血漿及び第VIII因子が阻害されている正常血漿において、硫酸化多糖の血液凝固促進活性を調べた。プールされた正常血漿又は先天性凝固因子欠乏症患者からの血漿を、George King,Bio−Medical Inc.(米国カンザス州)から入手した。供給業者によれば、凝固因子が欠乏している各血漿の残留凝固因子活性は1%未満であった。抗体媒介第VIII因子欠乏症のモデルとして、新鮮な冷凍プール正常血漿(George King,Bio−Medical,Inc.、米国カンザス州)を、ヤギにおいて産生された、高力価の加熱不活性化抗ヒト第VIII因子血漿(4490BU/mL;Baxter BioScience、ウィーン、オーストリア)と共にインキュベートして、50BU/mLを生じさせた。いくつかの実験において、フコイダンの存在下又は不存在下で、血漿濃度がそれぞれ25nM又は100nMのポリクローナルヤギ抗ヒトTFPI抗体(R&D Systems、AF2974、米国ミネアポリス)又は正電荷を持つ、TFPIのC末端に対して作られたモノクローナル抗TFPI抗体(Sanquin White Label Products、MW1848、クローンCLB/TFPI C末端、アムステルダム、オランダ)のいずれかによって、組織因子経路阻害剤(TFPI)活性を遮断した。特に断らない限り、血漿は、コーントリプシンインヒビター(CTI)(Hematologic Technologies,Inc.、米国バーモント州エッセクスジャンクション)と混合して、第XIIa因子の特異的阻害のための最終濃度を40μg/mLとした。
【0214】
試験試料の調製は、Hepes緩衝生理食塩水中に分量の当該NASPを溶解させ、ヒト血清アルブミン(Sigma−Aldrich Corporation、米国ミズーリ州セントルイス)を濃度5mg/mLまで加えることよって行った。参照試料は、参照タンパク質、FVIII Immunate(登録商標)標準品(Baxter BioScience、ウィーン、オーストリア);第VIII因子阻害剤迂回活性(FEIBA)標準品(Baxter BioScience、ウィーン、オーストリア);NovoSeven(登録商標)組換え活性型第VII因子(Novo Nordisk A/S、デンマーク);及び精製ヒト血漿第IX因子(Enzyme Research Laboratories、米国イリノイ州サウスベンド)から調製した。トロンビン較正化合物は、Thrombinoscope BV(マーストリヒト、オランダ)から入手した。
【0215】
活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)アッセイ
aPTTアッセイは、変更を加えて前述のようにして実施する。aPTTアッセイの詳細な方法は、PDR Staff. Physicians’ Desk Reference. 2004に見出すことができ、この文献を参照によって本明細書中に組み入れる。簡潔には、解凍したヒト血漿(正常又は血友病)50μLを試験管に加える。生理食塩水(例えば、Sigma)5μL又は生理食塩水に溶解させた試験薬剤(例えば、NASP)5μLを、血漿50μLと混合する。aPTT試薬(例えば、STA APTT、Roche)を、蒸留水5mL中でもどし、APTT試薬を含有する、戻した溶液50μLを各試験管に加え、37℃において2〜3分間インキュベートする。その後、25mM CaCl 50μLを加えて、凝固を開始させる。全てのピペット操作ステップ及び血漿凝固時間の測定は、ACL Elite Pro(Beckman Coulter)機器を用いて実施する。ここで提示したaPTTアッセイの実験セットアップ及びメカニズムを、図3に示す。
【0216】
希釈プロトロンビン時間(dPT)アッセイ
ここで使用する1つのdPTアッセイは、標準臨床PTアッセイの変法である。dPTアッセイのための方法の詳細は、Nordfangら(1991年)Thromb Haemost 66:464〜467頁;Welschら(1991年)Thrombosis Research 64:213〜222頁に見出すことができ、この文献を参照することによって本明細書中に組み入れる。組織因子経路阻害剤(TFPI−dPT)を加える希釈プロトロンビン時間アッセイを用いて、血友病患者血漿(George King Biomedical)中におけるフコイダンBAX513のTFPI阻害効果を立証する。血漿試料は、全長TFPI(SKHep1によって構成的に生成されたaa1〜276)0.3μg/mL及びBAX513(0.03〜1μg/mL)と共に室温で15分間プレインキュベートする。0.5% BSAを含むHepes−緩衝生理食塩水で1:400に希釈したTF試薬TriniClot PT Excel S(Trinity Biotech)を、ACL Pro Elite 止血分析装置(Instrumentation Laboratory)上の血漿試料に加える。0.25mM CaClによって、凝固を開始させる。血漿:TF:CaClの容量比は1:1:1であった。血漿凝固時間を、ACL ProElite止血分析装置で測定する。
【0217】
動物の出血時間アッセイ
出血時間アッセイは、試験薬剤(例えば、ビヒクル対照又はNASP)の投与後の正常又は血友病(第VIII因子若しくは第IX因子又はフォンビルブランド因子欠乏症)齧歯動物における止血機能の変化を測定するために使用できる。試験薬剤(例えば、ビヒクル対照又はNASP)を、1日1又は2回、経口的に、非経口的に又は持続点滴によって齧歯動物に投与する。例えば、0.1〜10mg/kgの範囲の用量の試験薬剤0.1mL/10g体重(肩甲下)を、小ゲージ針を用いて1日2回、少なくとも1日、好ましくは3日超にわたって投与できる。出血時間アッセイの当日に、齧歯動物をケタミン/キシラジン(又はイソフルラン)で麻酔する。齧歯動物を、尾部浸漬のために生理食塩水のペトリ皿と共に無菌パッド上に整列させる。齧歯動物の、尾部を切断しようとする部位にEMLAクリームを適用する。マウスについては、尾部のまさしくその先端を切り取り、尾部を生理食塩水のペトリ皿中に入れ、カウンターを始動させる。ラットについては、ラット尾部の背側部に、長さ8mm×深さ1mmの切り込みを入れ、次に生理食塩水に移す。生理食塩水中への目に見える出血が停止する時間間を記録する。齧歯動物については、出血時間は概ね、正常対照マウスで10分、正常対照ラットで6分である。出血時間アッセイの完了後、齧歯動物の尾部を、滅菌ガーゼで拭き、止血の確認を行い、齧歯動物をケージに戻す。必要に応じて、切られた部位に硝酸銀を適用してもよい。
【0218】
或いは、出血時間は、マウス(Brozeら(2001年)Thromb.Haemost.85:747〜748頁)又はイヌ(Scallanら(2003年)Blood 102:2031〜2037頁;Pijnappelsら(1986年)Thromb.Haemost.55:70〜73頁)では、他の方法でも測定できる。他の又は追加の薬力学的評価項目としては、直接分析又は血漿単離のためのNASP処置対象からの血液の試料採取、及びエキソビボでの凝固時間(例えば、全血凝固時間及び/又はPT及び/又はAPTT)又は凝固因子レベルの測定を挙げることができる。
【0219】
全血凝固時間(WBCT)アッセイ
WBCTアッセイは、以下のように実施する。マウスを、イソフルラン室で簡単に麻酔する。次に、マウスを、後眼窩神経叢(retro orbital plexus)からプラスチック採血管中に出血させる(例えば、150μL)。採血管を37℃の水浴中に入れ、ストップウォッチを用いて凝固時間を測定する。この期間中、採血管は1分間隔で反転させる。血液凝固(完全な/部分的でない血餅)に必要な時間を測定する。
【実施例2】
【0220】
フコイダン粗組成物の抽出及び精製
食用海藻、褐藻及び棘皮動物(例えば、ウニ、ナマコ)からフコイダンを抽出及び単離する方法は、参照によって開示が本明細書中に組み入れられている、2010年2月25日出願の同時係属米国特許出願第12/449,712号に詳述されている。該当するNASP及びフコイダンの例を、後述の表1に列挙する。
【0221】
粗フコイダンであるマコンブ(Laminaria japonica)フコイダン抽出物(SIGMA)を以下のようにして精製して、重金属及びタンパク質のレベルを低下させた。粗フコイダン材料に40〜45℃において水を加えた。次に、EDTAを加えて、重金属を除去し、pHを6.0に調整した。混合物を1時間撹拌し、NaClを加え、pHを6.0に調整し、混合物を30分間撹拌した。無水エタノールを、20〜25℃において75分間にわたってゆっくりと加え、混合物を室温で遠心分離して、フコイダンを沈殿させた。上清を廃棄し、沈殿剤を40〜45℃において水で溶解させた。NaCl添加ステップ、エタノール添加ステップ、遠心分離ステップ及び沈殿ステップを更に2回(合計3回)実施した。最終水溶液のpHを6.0±0.2に調整し、溶液を20〜25℃に冷却した。溶液を、2μmのフィルターを通して2回、0.2μmのPosidyneフィルターを通して1回濾過して、滅菌ポリエチレンバッグ中に入れた。濾液を、活性フコイダン濃度の尺度である総中性糖含量についてアッセイした。この溶液は、1週間以下の期間、2〜8℃に保持してもよい。フコイダンを凍結乾燥するために、精製した溶液を、0.2μmのフィルターを通して濾過して、凍結乾燥バッグ中に入れ、凍結乾燥機中に入れた。温度を−40℃まで低下させ、真空を適用後(200ミクロン以下)、温度を上昇させ、10℃に4時間、20℃に20時間、25℃に24時間及び40℃に24時間保持した。真空の解放後、凍結乾燥材料を収容しているバッグを、二重のポリエチレンバッグで裏打ちされている、自重を計量した30ガロンドラムに移し、蓋及びロッキングリングによってシールした。容器を秤量室に移し、そこで凍結乾燥バッグを切り開き、内容物を、二重のバックで裏打ちされたドラム中に空ける。ドラムを秤量後、ドラムバッグをシールし、乾燥剤をバッグの周囲に置き、ドラムを再シールした。
【0222】
最終包装ステップで、凍結乾燥された原薬をドラムから二重ポリエチレンバッグに移し、バッグ当たり1〜500gを収容した。バッグを閉じ、タンパーエビデントシールが取り付けられる容器中に乾燥剤と共に包装した。シールした容器を2〜8℃で保存した。
【0223】
表1
化合物のリスト
1.Fucoidan 5307002、コンブ、最大MWピーク126.7kD
2.Fucoidan VG49、コンブ、比較的低いMWの5307002の加水分解試料、最大MWピーク22.5kD
3.Fucoidan VG50、アスコフィラム・ノドサム、最大MWピーク149.7kD
4.Fucoidan VG56、ワカメ、低荷電(低硫酸化)
5.Fucoidan VG57、ワカメ、高荷電(高硫酸化、脱アセチル化)Fucoidan GFS(5508005)、発熱物質が除去されたワカメ、
6.Fucoidan GFS(L/UPF−1008)、加水分解され、発熱物質が除去されたワカメ、最大MWピーク54kD
7.Fucoidan GFS+Ca(L/UPF−1108)、加水分解され、発熱物質が除去されたワカメ、最大MWピーク32kD
8.Fucoidan GFS(L/FVF−01091)、発熱物質が除去されたコンブ、最大MWピーク125kD
9.Fucoidan GFS(L/FVF−01092)、発熱物質が除去されたコンブ、最大MWピーク260kD
10.Fucoidan GFS(L/FVF−01093)、加水分解され、発熱物質が除去されたコンブ、最大MWピーク36kD
11.Maritech(登録商標)エクロニア・ラジアータ抽出物
12.Maritech(登録商標)エクロニア・マキシマ抽出物
13.Maritech(登録商標)アラリア・エスクレンタ(Alaria esculenta)抽出物
14.Maritech(登録商標)マクロシスティス・ピリフェラ抽出物
15.Maritech(登録商標)ヒジキ(Sargassum fusiforme)抽出物
16.Maritech(登録商標)オキナワモズク属sp.抽出物
17.Maritech(登録商標)ブルケルプ(Durvillea potatorum)抽出物
18.Maritech(登録商標)ラミナリア・ディギタータ(Laminaria digitata)抽出物
19.Maritech(登録商標)フカス・ポリフェノール・コンプレックス(Fucus polyphenol complex)抽出物
20.Maritech(登録商標)アスコフィラム・ノドサム抽出物
21.Maritech(登録商標)免疫試験用フコイダンブレンド
22.Maritech(登録商標)カプセル
23.発熱物質が除去されたエクロニア・ラジアータ
24.発熱物質が除去されたアラリア・エスクレンタ
25.発熱物質が除去されたオキナワモズク属sp.
26.発熱物質が除去されたヒジキ(Sargassum fusiformis)
27.発熱物質が除去されたエクロニア・マキシマ
28.発熱物質が除去されたマクロシスティス・ピリフェラ
29.フカス・エバネセンス(Fucus evanescens)
30.フカス・ディスティカス(Fucus distichus)
31.フィロスポラ・コモサ(Phyllospora comosa)
32.ホルモシラ・バンクシイ(Hormosira banksii)
33.レッソニア・ニグレッセンス(Lessonia nigrescencs)
【実施例3】
【0224】
フコイダンの凝固促進メカニズム
以下の実験を実施した。これらの実験は、フコイダンのこれまで知られていない凝固促進メカニズムを示す。いくつかのフコイダンの血液凝固促進活性を、組織因子(TF)依存性実験における較正自動トロンボグラフィー及び凝固因子欠乏血漿の使用によって特徴付けた。精製凝固因子又は阻害抗体を実験にスパイクすることにより、同定されたメカニズムを確認した。フコイダンで改善したトロンビン産生(TG)は、TF依存性であった。刺激性活性は、TFがない場合に最も顕著であった。第XII因子欠乏血漿におけるTGの改善により、血液凝固促進活性の標的から接触系が除外された。3つの凝固経路全てのタンパク質が欠乏している血漿を使用し、TFを用いないTG実験により、第XI因子が、フコイダン媒介TGを担う最も上流の因子として同定された。第XI因子欠乏血漿への第XI因子(30nM)のスパイクはフコイダン媒介TGを回復させたが、正常血漿への第XI因子阻害抗体の添加はTGを阻止した。このことから、第XI因子がフコイダンの標的として確認された。第XI因子が欠乏している血漿に第XIa因子(60pM)を加えた場合、フコイダン依存性TGは改善されなかった。このことは、フコイダンによる第XI因子の活性化を示唆している。
【0225】
血友病血漿におけるこのメカニズムの関連を、フコイダン媒介TGの第VIII因子濃度依存的増加をもたらす低レベルの第VIII因子(0.2〜10%)の添加によって研究した。
【0226】
前記で説明した通り、フコイダンのインビトロでの特徴付けは、TFPIの阻害及びトロンビン依存的な第Va因子形成の促進が、動物モデルにおいて止血を改善することを示唆している。これらの研究は、フコイダンの別の血液凝固促進活性を示している。特に、低いTF濃度での第XI因子活性化は、フコイダンの可能なメカニズムである。この新しいメカニズムの同定は、フコイダンの血液凝固促進活性の理解に役立ち、出血性障害を治療するための安全で効率的な代替手段の開発を助ける。
【実施例4】
【0227】
フコイダンの特徴付け
フコイダンは、構造が複雑で、多分散性及び不均一性の程度が高く、生物学的供給源によって異なる。6つの異なるフコイダン製剤の生物活性及び構造特性を深く理解するために、広範囲の分析ツールを適用する。
【0228】
以下の実験を実施した。これらは、NASPの凝固特性が、サッカリド含量及び硫酸化度と相関関係があることを示している。数種の褐藻(分子量6〜1000kD)から精製されたPPS及びフコイダンについて研究した。
【0229】
較正自動トロンボグラフィー(CAT)アッセイ
血液凝固促進活性は、第VIII因子及び第IX因子が欠乏している血漿及び第VIII因子が阻害されている血漿において、血友病治療と組み合わせて、較正自動トロンボグラフィー(CAT)によって特徴付けた。ここで提示するトロンビン形成のメカニズムを図1に示す。
【0230】
CAT研究では、凝固促進ウインドウを検討するために、先天性凝固因子欠乏症患者からのいくつかの血漿及び第VIII因子が阻害されている正常血漿において、硫酸化多糖の血液凝固促進活性を調べた。プールされた、正常血漿又は先天性凝固因子欠乏症患者からの血漿を、George King,Bio−Medical Inc.(米国カンザス州)から入手した。供給業者によれば、凝固因子が欠乏している各血漿の残留凝固因子活性は1%未満であった。抗体媒介第VIII因子欠乏症のモデルとして、新鮮な冷凍プール正常血漿(George King,Bio−Medical Inc.、米国カンザス州)を、ヤギにおいて産生された、高力価の加熱不活性化抗ヒト第VIII因子血漿(4490BU/mL;Baxter BioScience、ウィーン、オーストリア)と共にインキュベートして、50BU/mLを生じさせた。いくつかの実験において、フコイダンの存在下又は不存在下で、血漿濃度がそれぞれ25nM又は100nMのポリクローナルヤギ抗ヒトTFPI抗体(R&D Systems、AF2974、米国ミネアポリス)又は正電荷を持つ、TFPIのC末端に対して作られたモノクローナル抗TFPI抗体(Sanquin White Label Products、MW1848、クローンCLB/TFPI C末端、アムステルダム、オランダ)のいずれかによって、組織因子経路阻害剤(TFPI)活性を遮断した。特に断らない限り、血漿は、コーントリプシンインヒビター(CTI)(Hematologic Technologies, Inc.、米国バーモント州エッセクスジャンクション)と混合して、第XIIa因子の特異的阻害のための最終濃度を40μg/mLとした。
【0231】
試験試料の調製は、Hepes緩衝生理食塩水中に分量の当該NASPを溶解させ、ヒト血清アルブミン(Sigma−Aldrich Corporation、米国ミズーリ州セントルイス)を濃度5mg/mLまで加えることよって行った。参照試料は、参照タンパク質、FVIII Immunate(登録商標)標準品(Baxter BioScience、ウィーン、オーストリア);第VIII因子阻害剤迂回活性(FEIBA)標準品(Baxter BioScience、ウィーン、オーストリア);NovoSeven(登録商標)組換え活性型第VII因子(Novo Nordisk A/S、デンマーク);及び精製ヒト血漿第IX因子(Enzyme Research Laboratories、米国イリノイ州サウスベンド)から調製した。トロンビン較正化合物は、Thrombinoscope BV(マーストリヒト、オランダ)から入手した。
【0232】
特に、トロンビン産生に対する該当する各NASPの影響を、蛍光発生基質Z−Gly−Gly−Arg−AMCの緩徐な切断後に、較正自動トロンボグラフィーによって、Fluoroskan Ascent(登録商標)リーダー(Thermo Labsystems、ヘルシンキ、フィンランド;フィルター−励起390nm及び発光460nm)で、二重反復で測定した(Hemker HC.、Pathophysiol Haemost Thromb(2003年)33:4〜15頁)。96ウェルマクロプレート(Immulon 2HB、透明U底;Thermo Electron)の各ウェルに、予め加温した(37℃)血漿80μLを加えた。組織因子によるトロンビン産生のトリガーのために、一定量の組換えヒト組織因子(rTF)を含有するPPP試薬10μLと、ホスファチジルセリン、ホスファチジルコリン及びホスファチジルエタノールアミンからなるリン脂質小胞(Thrombinoscope BV、マーストリヒト、オランダ)(48μM)とを加えた。NASPの血液凝固促進活性を研究するために、1pMの最終TF濃度を用いて、試験系の第VIII因子及びTFPI感受性をもたらした。別法として、rTF(Innovin(登録商標)、Siemens Healthcare Diagnostics Inc.、米国ニューヨーク州タリータウン)とホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン及びスフィンゴミエリンから成るリン脂質エマルジョン(Phospholipid−TGT、Rossix、モルンダル、スウェーデン)との混合物を用い、TF濃度を0〜20μMに調整した。予め加温した(37℃)リーダーにプレートを入れる直前に、試験若しくは参照試料又は較正化合物10μLを加えた。蛍光発生基質及びHepes緩衝CaCl(100mM)を含有するFluCa試薬(Thrombinoscope BV、マーストリヒト、オランダ)20μLを各ウェルに分配することによってトロンビン産生を開始させ、蛍光強度を37℃において記録した。
【0233】
得られたトロンビン産生曲線のパラメーターを、Thrombinoscope(登録商標)ソフトウェア(Thrombinoscope BV、マーストリヒト、オランダ)並びに内部フィルター及び基質消費の影響を補正するためのトロンビンキャリブレーターを用いて計算した。トロンビンキャリブレーターを参照として、試験ウェル中のトロンビンのモル濃度を、ソフトウェアによって算出した。各トロンビン産生曲線のピークのトロンビン量(ピークトロンビン、nM)を、参照タンパク質(FVIII Immunate(登録商標)標準品、FEIBA標準品)の標準濃度から得られたピークトロンビンに対してプロットし、非線形アルゴリズムによって適合させた。この較正に基づき、FVIII Immunate(登録商標)、FEIBA及び第FIX因子の対応する活性を算出した。記録した他のパラメーターは、遅延時間(測定開始とトロンビン産生の開始との時間間隔)、ピーク時間(測定開始とピークトロンビンとの時間間隔)及び内因性トロンビンの可能性(トロンビン濃度対時間の曲線下の領域)である。
【0234】
CATによって、血友病血漿中の硫酸化多糖の凝固促進ウインドウは、2オーダーを超えて広がり、最大効果は、第VIII因子730〜940mU/mL、第IX因子32〜80mU/mL及びFEIBA 590〜1230mU/mLに相当した。したがって、当該NASPと第VIII因子、FEIBA、第IX因子又は第VIIa因子との併用には、相加的な凝固促進効果があった。
【0235】
較正自動トロンボグラフィーアッセイによって得られたデータの一例を、図2に示す。CATアッセイからの結果及びCATによる血友病治療との比較を、以下の表2〜4を要約する。これらの結果で示されるように、該当するNASPのいくつかは、CTIの不存在下でより高い濃度でトロンビン産生を増加させる。
【0236】
【表1−1】

【0237】
【表1−2】

【0238】
【表2】

【0239】
【表3】

【0240】
活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)アッセイ
抗凝固活性を、活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)アッセイによって特徴付けた。aPTTアッセイは、前述のようにして実施する。簡潔には、解凍したヒト血漿(正常又は血友病)50μLを試験管に加える。生理食塩水(例えば、Sigma)5μL又は生理食塩水に溶解させた試験薬剤(例えば、NASP)5μLを、血漿50μLと混合する。aPTT試薬(例えば、STA APTT、Roche)を蒸留水5mL中でもどし、APTT試薬を含有する、もどした溶液50μLを各試験管に加え、37℃において2〜3分間インキュベートする。その後、25mM CaCl 50μLを加えて、凝固を開始させる。全てのピペット操作ステップ及び血漿凝固時間の測定は、ACL Elite Pro(Beckman Coulter)機器を用いて実施する。ここで提示したaPTTアッセイの実験セットアップ及びメカニズムを、図3に示す。
【0241】
活性化部分トロンボプラスチン時間アッセイによって得られたデータの一例を、図4に示す。aPTTアッセイからの結果、並びにCATによって得られた結果と比較した凝固促進活性及び抗凝固活性の評価を、以下の表5に要約する。
【0242】
【表4−1】

【0243】
【表4−2】

【0244】
CATアッセイ及びaPTTアッセイ−低分子量フコイダンの活性
後述の実施例5で詳述するサイズ排除クロマトグラフィーを用いて、分画によって低分子量フコイダンを得た。サイズ排除クロマトグラフィーを用いて、分子量が1キロダルトン未満から〜30キロダルトンまでの範囲のフコイダン(コンブ)を得た。サイズ排除クロマトグラフィーから得られた画分は、以下の分子量範囲を有していた:a)1キロダルトン未満;b)1〜30キロダルトン;c)30キロダルトン未満;d)10〜30キロダルトン;e)1〜10キロダルトン;及びf)5〜30キロダルトン。各画分を、CATアッセイ及びaPTTアッセイによって研究し(方法は前記で詳述した通り)、対応する非分画フコイダン試料と比較した。凝固促進活性及び抗凝固活性の結果を、以下の表6に示す。
【0245】
結果から分かるように、低分子量フコイダンは、非分画フコイダンと比較した場合に類似の活性を有し、凝固の増強において少なくとも同程度に有効である。
【0246】
【表5】

【0247】
CATアッセイ及びaPTTアッセイ−F.v. L/FVF−1091の活性及びSECクロマトグラフィー
サイズ排除クロマトグラフィーを用いて、F.v. L/FVF−1091フコイダンの試料を分画した。5つの画分を集め、構造特性を、NMR、イオン交換クロマトグラフィー及び元素分析によって研究した。これらの方法については、後述の実施例5により詳細に記載する。画分の構造特性を、以下の表7に示す。
【0248】
【表6】

【0249】
各画分を、CATアッセイ及びaPTTアッセイによって研究し(方法は前記で詳述した通り)、対応する非分画フコイダン試料と比較した。凝固促進活性及び抗凝固活性の結果を、以下の表8に示す。
【0250】
結果から分かるように、低分子量画分は、非分画フコイダンと比較した場合により良好な活性を有し、凝固の増強において少なくとも同程度に有効である。
【0251】
【表7】

【0252】
トロンボエラストグラフィー回転トロンボエラストメトリー(TEG−ROTEM)アッセイ
TEG研究のために、健常な個体からの血液試料を、21G翼状針によって、クエン酸塩加Venoject(登録商標)管(Terumo Europe、ルーバン、ベルギー(127mmol/L))中に吸い込ませ、クエン酸塩1部を血液9部と混合した。吸引された第1の管は、廃棄した。一定の割合のこれらの血液試料を、ヤギにおいて産生された、高力価の加熱不活性化抗ヒト第VIII因子抗血清(3876BU/mL;Baxter BioScience、ウィーン、オーストリア)と共にインキュベートして、51又は150BU/mLを得た。試験試料の調製は、Hepes緩衝生理食塩水中に分量の硫酸化多糖を溶解させ、ヒト血清アルブミン(Sigma−Aldrich Corporation、米国ミズーリ州セントルイス)を濃度5mg/mLまで加えることよって行った。硫酸化多糖を含まない対照試料を調製した。
【0253】
ヒトの全血血餅の形成及び硬度(firmness)の連続粘弾性評価は、硫酸化の存在下又は不存在下で、全血製剤を用いて回転トロンボエラストグラフィーによって行った。簡潔には、血液を、加熱したキュベットホルダー内に使い捨てキュベット中に加えた。使い捨てピン(センサー)を、回転軸の先端に取り付けた。軸を、高精度ボールベアリングシステムによってガイドした。軸は前後に回転する。弾性測定のために、軸をバネと接続した。軸の正確な位置は、軸上の小さい鏡に対する光の反射によって検出した。試料凝固時の弾性の喪失が、軸の回転に変化をもたらす。得られたデータをコンピュータで分析し、トロンボエラストグラムにおいて視覚化した。トロンボエラストグラムは、弾性(mm)対時間(s)を示す。血餅形成の開始前は、0に近い弾性が観察された。ゼロ線の上下の鏡像トレースは、軸の回転に対する血餅形成の影響を示した。
【0254】
記録は、37℃でROTEMトロンボエラストグラフィー凝固分析装置(Pentapharm、ミュンヘン、ドイツ)を使用して行った。各実験の開始前に、第XIIa因子によって媒介される接触活性化を阻害するために、クエン酸塩加全血を、コーントリプシンインヒビター(CTI)(Hematologic Technologies,Inc.、米国バーモント州エセックスジャンクション)と混合して、第XIIa因子の特異的阻害のための最終濃度を37〜62μg/mLとした。分析セットアップは以下の通りとした:試験試料又は対照20μLに、予め加温した(37℃)CTI処理クエン酸塩加全血300μLを加え、続いて、組換えヒト組織因子(rTF、3pM)(TS40、Thrombinoscope BV、マーストリヒト、オランダ)を含有するTF PRP試薬1:15希釈物20μLを加えた。200mMのCaCl(star−TEM(登録商標)、Pentapharm、ミュンヘン、ドイツ)20μLの添加によって凝固を開始させ、記録を少なくとも120分間継続させた。アッセイにおけるrTFの最終濃度は、11又は44fMであった。
【0255】
凝固時間(CT)、血餅形成時間(CFT)及び最大血餅硬度(MCF)のトロンボエラストグラフィーパラメーターを、製造業者の取扱説明書に従って記録した。CTは、測定開始から血餅形成開始までの時間と定義する。CFTは、血餅形成開始から20mmの振幅に達するまでの時間と定義する。MCFは、アッセイ中の2つのトレース間の振幅の最大差である。トロンボエラストグラムのデータの一次導関数をプロットして、速度(mm/s)対時間(s)のグラフを得た。このグラフから、最高速度(maxV)を決定した。最高速度が得られる時間(maxV−t)も決定した。
【0256】
前記で説明したように、トロンボエラストグラフィーのパラメーターに対する種々のNASPの効果をそれぞれ、2種及び4種の濃度で、第VIII因子阻害血液中で試験した。フコイダンが存在しない2つの対照を実施した。一方は、第VIII因子を阻害した血液を使用し、他方は正常な血液を使用した。ROTEMトロンボエラストグラフィー凝固分析装置からのデータ結果の一例を、図5に示す。
【0257】
第1のROTEMトロンボエラストグラフィー凝固分析装置から得られたデータからの結果を、表9に要約する。第VIII因子を阻害した血液は、特徴的に長い凝固時間及び血餅形成時間を有していた。凝固時間及び血餅形成時間は共に、フコイダンを含有している、第VIII因子を阻害した血液の方が短く、フコイダンは、両パラメーターに対して濃度依存的な効果を及ぼした。フコイダンは、正常な血液においてもCT及びCFTを短縮した。
【0258】
図6に図示したような、ROTEMトロンボエラストグラフィー凝固分析装置を使用した第2の組の実験からのデータを、表10に要約する。表10に提示するデータによって示されるように、Fucoidan Smart City及びマコンブに由来するフコイダンは、第VIIIを阻害した血液及び正常な血液の凝固パラメーターを増強する。
【0259】
【表8−1】

【0260】
【表8−2】

【0261】
【表9】

【実施例5】
【0262】
フコイダンの構造的特徴付け
フコイダン製剤を、種々の構造特性に基づいて特徴付けた。
【0263】
硫酸化度
硫酸化度は、PE 2400 CHN Analyzerを用いて元素分析によって決定し、硫黄含量は、比色滴定によって決定した。硫黄含量はまた、誘導結合プラズマ質量分析法を用いて確認した。分析結果を、表11に要約する。
【0264】
【表10】

【0265】
単糖含量
種々のNASPの単糖含量を、イオンクロマトグラフィー及び核磁気共鳴スペクトル分光法によって分析した。
【0266】
イオンクロマトグラフィー
種々のNASPの単糖組成を、イオンクロマトグラフィーを用いて分析した。Dionex ICS 3000システムをPAD検出器と一緒に用いて、加水分解産物を分析した。この方法においては、7種の中性糖を標準として適用した。これらは、フコース、ラムノース、アラビノース、ガラクトース、グルコース、キシロース及びマンノースであった。単糖組成を決定するためのクロマトグラムの一例を、図7に示す。該当する数種のNASPのイオン交換クロマトグラフィーによって決定された単糖含量を、図8〜10に図示し、以下の表12に要約する。
【0267】
IC条件:
カラム:Dionex保護カラム(guard column)CarboPac(登録商標)PA10、2×50mm及びDionex分析カラムCarboPac(登録商標)PA1、4×250mm
移動相:2mM NaOH
流速:1mL/分
カラム温度:35℃
運転時間:30分
【0268】
【表11】

【0269】
核磁気共鳴スペクトル分光法
デュアルH/13C−Cryoprobeを備えるBruker Avance III NMRスペクトロメーターを用いて、フコイダン出発原料及びその画分を分析した。各試料をDO約0.6mL中に溶解させた。定性的NMR実験を用いて、それらの構造を特徴付けた。一次元H NMRスペクトルは、16スキャン、90°パルス、20秒の緩和遅延、32Kのデータ点及び2秒の捕捉時間を用いて得た。位相敏感多重度(phase sensitive multiplicity)によってエディットされる異核単一量子相関(Heteronuclear Single Quantum Correlation、HSQC)スペクトル、マグニチュードモードの異核多結合相関(Heteronuclear Multiple Bond Correlation、HMBC)スペクトル及び相関分光法(COSY)スペクトルは、観察領域の1024個のデータ点及び二次元目の128個の点を用いて得た。定量的一次元13C NMRスペクトルは、3kスキャン、5秒の緩和遅延を用いて得た。フコイダン出発原料及びその画分の13C NMRスペクトルに基づき、それらのアルギン酸塩及びフコースの含量を、算出できるであろう。13C−NMRにおけるアノマー及びフィンガープリントの範囲の複雑さの程度に基づき、それらの不均一性の順序を、1から7までのスケールで大雑把にランク付けできるであろう。1が最高で、7が最低である。例えば、1のランクは、不均一性の高い試料を示し、7のランクは不均一性の低い試料を示す。
【0270】
アルギン酸塩含量(C%アルギン酸塩)は、総サッカリドの%アルギン酸塩であり、以下の事実から計算できる:
・カルボニル基はアルギン酸塩のみに存在し、サッカリド当たり1つのアルギン酸塩が存在する。
・アルギン酸塩又はフコイダンからの各糖残基は、サッカリド環当たり1つのアノマー炭素を有する。
したがって、
【0271】
【数1】

[式中、
【0272】
【数2】

=カルボニル基の積分;
【0273】
【数3】

=アノマー領域の積分]。
アルギン酸塩の含量を計算し、表2に記載した。F.V.VG製剤の値は非常に低いため、それらは、10%未満のアルギン酸塩を有するものとして記載した。
【0274】
フコース含量(C%フコース)は、中性サッカリド(全サッカリド−アルギン酸塩)の%フコースであり、フコース残基当たり1つのメチル基が存在するという事実に基づく:
【0275】
【数4】

[式中、
【0276】
【数5】

=メチル基の積分]。
式2は、アルギン酸塩含量がかなり多いE.M.DS製剤及びF.V.DS製剤に用いた。F.V. VG試料は、アルギン酸塩含量がごくわずかであり、式2を
【0277】
【数6】

に単純化した。
【0278】
単糖組成の決定に用いた例のスペクトルを、図11に示す。NMRによって決定された該当する数種のNASPの単糖含量及び不均一性を、表13に要約する。
【0279】
【表12】

【0280】
分子量分布
種々のNASP(例えば、フコイダン)の分子量分布を、サイズ排除クロマトグラフィー、陰イオン交換分画、ゲル電気泳動によって分析した。
【0281】
SECクロマトグラフィー
サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)は、以下のようにして実施した。10mg/mLの試料溶液を調製し、0.45μmのUltrafree−MC HV遠心フィルターを通して濾過し、その後に200μLをHPLCに注入した。Wyatt Technology DAWN HELEOS準弾性光散乱(Quasi−Elastic Light Scattering)(QELS)検出器、多角度レーザ光散乱(MALLS)検出器及びOptilab rEX示差屈折率(dRI)検出器並びにGE Healthカラム、Superdex 200カラムと連結されたAgilent 1100 HPLCシステムを用いて、出発原料溶液をサイズによって分画した。RI検出器のプロフィールに基づき、NASP(例えば、フコイダン)を、異なる保持時間範囲によって分画した。画分の分子量は、同じ方法によってMALLS検出器を用いてそれらを分析することによって決定した。
【0282】
LC条件:
分析カラム:GE Healthcare Superdex 200、10/300GL
移動相:10% PBS緩衝液、pH 7.4
流速:1.0mL/分
カラム温度:周囲温度
試料温度:5℃に設定
注入容量:100μL
【0283】
フコイダン試料のクロマトグラムに2つの主要ピークが出現した一例において、2つのピークの分子量の計算を以下に記載する。
【0284】
【表13】

【0285】
該当する数種のNASP(例えば、フコイダン)の例の分子量プロフィールを、以下の表14に要約する。
【0286】
【表14】

【0287】
陰イオン交換クロマトグラフィー
陰イオン交換クロマトグラフィーを、弱陰イオン交換GE Healthcare LCシステム、AKTA Purifier 100システム及びDEAE Sepharose高流速(FF)カラム(5×22cm、カラム容量=431mL)を用いて、以下のようにして実施した。
【0288】
DEAE FFカラムによる陰イオン交換クロマトグラフィー
20mM酢酸アンモニウム(pH8.0)中のフコイダン試料F.v.V201096Bの10mg/mL溶液200μLを調製し、0.45μmのUltrafree−MC HV遠心フィルターを通して濾過し、DEAE FFカラム(5mL)に注入した。分析物は、オフラインでフェノール−硫酸アッセイによって検出した。分離は、以下に示す系を用いて塩勾配によって行った。
【0289】
LC条件:
移動相:溶媒A、Milli−Q水;溶媒B、2M NaCl
流速:49mL/分
カラム温度:室温
注入容量:1.5mL、80mg/mL
勾配:0% B、1CV;0〜100% B、16CV
収集:49mL/管
検出:フェノール−硫酸アッセイ、オフライン
【0290】
フェノール−硫酸アッセイ
奇数の管を、フェノール−硫酸アッセイによって試験した。このアッセイは、参照によって本明細書中に組み入れられている、Duboisらによって開発された原法(Analytical Chemistry、28、1956年、350〜356頁)から変更した。試料300μLに、5%(w/v)フェノール水溶液100μL、続いて濃硫酸1mLを加えた。反応は、オーブン中で100℃において10分間インキュベートすることによって行った。試料は、室温まで冷ました後、96ウェルプレートに移し(200μL)、490nmで吸光度を測定した。クロマトグラムは、これらのフェノール−硫酸アッセイデータによって作成した。
【0291】
アガロースゲル分析
フコイダン出発原料及び比較的低分子量の画分を、アガロースゲル電気泳動法によって分析した。これらの高分散硫酸化多糖の純度及び電荷特性を、この方法を用いて分析した。Bio−Rad Mini−Subセルを用いて、ゲルを流延した。試料(それぞれの10〜20μg)を0.04M酢酸バリウム中0.5%アガロースゲルに適用し、0.05M 1,3−ジアミノプロパンアセテート(pH9.0)中で100mAにおいて2時間泳動させる。ゲルを、0.2%(w/v)アルシアンブルー及び2%(v/v)酢酸水溶液で30分間染色し、Milli−Q水中で終夜脱色して、バックグラウンドを清浄にした。
【0292】
PAGE分析
フコイダン出発原料及び比較的低分子量の画分を更に、Bio−Radミニ−ゲル電気泳動システムを用いて、ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって分析した。これらの高分散硫酸化多糖の分子サイズ特性を、この方法を用いて分析した。各試料(5〜10μg)を、同じ容量(one volume)の50%(w/v)スクロースと合わせ、混合物を5%(全アクリルアミド)の濃縮用ゲルにロードし、15%分離用ゲルによって分析した。上部チャンバーの緩衝液は、0.2M Tris及び1.25Mグリシンからなり、pH8.3であった。下部チャンバーの緩衝液は、0.1Mホウ酸、0.1M Tris及び0.01Mエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム(EDTA)を含有し、pH8.3であった。分解用ゲルは、13.6%アクリルアミド及び1.4% N,N’−メチレンビスアクリルアミド並びに15%スクロースを含有し、これを下部チャンバーの緩衝液中に溶解させた。電気泳動は、150Vで80〜90分にわたって行った。ゲルは、2%(v/v)酢酸中のアルシアンブルーで染色した。
【0293】
加水分解及び薄層クロマトグラフィー(TLC)モニタリング
全てのブランク(1Nメタノール性HCl)、標準混合物(1Nメタノール性HCl中2mg/mL)及び試料(1Nメタノール性HCl中2mg/mL)を、80℃の加熱ブロック中で約24時間加熱した。次いで、加水分解溶液を45〜55℃において真空下で蒸発乾固し、水中でもどした。
【0294】
加水分解の完全性をモニターするために、加水分解物をTLCによって分析した。試験の実施には、以下の材料を用いた:
1.Merck(ドイツ)製のHPTLCシリカゲル60
2.展開溶媒、1−プロパノール:HO=8:3又はギ酸:1−ブタノール:HO=6:4:1
3.染色溶媒、ジフェニルアミン−アニリン−リン酸試薬−37.5% HCl 1mL、アニリン2mL、85% HPO 10mL、酢酸エチル100mL及びジフェニルアミン2g
【0295】
試料(容量約1.5μL)は、別個にTLCプレート(約4×5cm)上にロードし、溶媒系を用いて展開させた。開発されたプレートを、熱板によって乾燥させ、ジフェニルアミン−アニリン−リン酸試薬中に2秒間浸漬することによって染色し、その後に150℃のオーブン中で約10分間加熱した。
【0296】
元素分析
C、H及びNの測定には、PE 2400 CHN Analyzerを用いた。硫黄は、比色滴定によって分析した。これらの分析は、Intertek USA,Inc. QTI laboratoryによって実施された。
【0297】
ロット間変動
当該NASPのロット間変動を、フェノール−硫酸解重合アッセイ及びトルイジンブルーアッセイを用いて試験した。
【0298】
フェノール−硫酸アッセイ及びトルイジンブルーアッセイ
NASP中の炭水化物の定量化を、フェノール−硫酸アッセイによって試験した。フコースはフコイダンの一成分であるので、それを、フコイダンの単糖含量の定量化に役立つ標準として使用した。フェノール−硫酸アッセイは、試料条件下で既知の量のフコース及び試験試料の両方について行った。種々の量のフコースを用いて作成した標準曲線に基づいて、炭水化物含量を決定した。
【0299】
トルイジンブルーアッセイは、常法によって一定量のトルイジンブルーを分画NASP及び非分画NASPに加えることによって行った。トルイジンブルーは、硫酸塩、リン酸塩及びカルボン酸塩に結合するカチオン性染料である。異なるNASPは、硫酸塩及びウロン酸含量に応じて、異なる結合特性を示す。
【0300】
フェノール−硫酸アッセイ及びトルイジンブルーアッセイに基づき、前述した試験NASP試料間のロット間変動は低かった。
【実施例6】
【0301】
バイオアベイラビリティー
当該フコイダンのバイオアベイラビリティーを、CaCo2細胞モデルスクリーニングを用いて研究した。この方法は、細胞膜上で広範囲のトランスポータータンパク質を発現するヒト結腸癌細胞株を利用する。細胞層を、2つのコンパートメント(24ウェルプレート)を隔てる膜表面で増殖させる。これらの実験のための実験セットアップの一例を、図12に示す。選択されたフコイダン試料を、1mg/mLの濃度でRPMI細胞用培地に溶解させ、アピカルコンパートメント(apical compartment)中の細胞上に適用した。細胞を、37℃において5% CO中でインキュベートした。培地試料を、種々の時点でバソラテラル及びアピカルコンパートメントから除去した。細胞層の状態を、経上皮電気抵抗(TEER)の測定によってモニターした。試料を、第VIII因子阻害ヒト血漿において前述したトロンビン産生アッセイ(CAT)によって分析した。NASP濃度は、CATアッセイからの活性に基づいて計算した。全てのフコイダン試料は、試料濃度が血液凝固促進活性を増加する範囲となるように希釈した。最初の負荷濃度値に基づき、アピカル濃度及びバソラテラル濃度を2時間刻みで(例えば、24時間を含めて、2時間、4時間、6時間、8時間)決定した。決定されたバソラテラル濃度に基づき、各化合物についてパーセント吸収率を決定した。CaCo2系によって決定された、時間の関数としてのコンブフコイダンL/FVF−1091の細胞吸収の一例を、図13に示す。ここに記載した、当該NASPのCaCo2細胞モデルスクリーニングを用いたバイオアベイラビリティー研究の結果を、以下の表15に要約する。
【0302】
【表15】

【実施例7】
【0303】
TFPI機能に対するフコイダンの効果
TFPI機能に対するフコイダンの効果を、種々のフコイダン組成物を用いて試験した。詳細には、TFPI機能に対するフコイダンの効果を、較正自動トロンボグラフィーによって、TFPIの活性を阻害する抗体の存在下及び不存在下において、プールされた正常血漿中で低いTF濃度(1pM)で試験した。フコイダンが存在しない対照を実施した。TFPIが枯渇し及び第VIII因子が阻害されている血漿又は正常な血漿における種々のフコイダンによるTFPIに対する作用の機序についての研究結果を、以下の表16〜17に示す。CATアッセイ結果の一例を、図14に示す。
【0304】
正常血漿における、該当する数種のフコイダンによるTFPIに対する作用の機序の研究結果を、以下の表18に示す。これらの研究によるCATアッセイの結果の一例を、図15に示す。
【0305】
第VIII因子が阻害されているdFX血漿中での、該当する数種のフコイダンによるTFPIの阻害の機序についての研究結果を、以下の表19に示す。これらの研究のCATアッセイ結果の一例を、図16に示す。
【0306】
ここに提示した結果からわかるように、本発明のフコイダンは、その血液凝固促進活性と一致する最適濃度で添加した場合、プールされた正常血漿のピークトロンビンを増加させ、ピークトロンビンまでの時間を短縮した。ポリクローナル抗TFPI抗体によるTFPI活性の遮断によって、トロンビン産生のフコイダンパラメーターは変化しなかった。このことは、フコイダンがTFPIの機能を妨げることを示した。
【0307】
フコイダンが標的とするTFPI上の機能部位を更に探索するために、TFPIの塩基性C末端に対して作られたモノクローナル抗体を使用した。抗体の添加は、ピークトロンビンを151nMまで増加させ且つピーク時間を7.8分まで短縮することによって、トロンビン産生を改善した。マコンブフコイダンは、このような試験系に加えた場合、トロンビン産生のパラメーターを変化させなかった。これは、フコイダンが、機能的に重要なことが知られているTFPIのC末端を妨げることを示している。
【0308】
マコンブフコイダンがTFPIのC末端と相互作用することを更に示すために、組換えC末端切断型TFPI(TFPI 1〜160)を、TFPIのC末端に対して作られた抗体によって全長TFPIの活性が遮断された試験系に加えた。TFPI 1〜160の添加は、ピークトロンビンを151nMから57nMに低下させ、ピーク時間を7.8分から11.0分に増加させた。この系へのマコンブフコイダンの添加は、トロンビン産生のパラメーターを変化させなかった。これは、マコンブフコイダンが、C末端TFPI領域の活性と相互作用し、C末端TFPI領域の活性を妨げることを裏付けている。前述のようにして当該フコイダンを用いて更なる研究を行い、類似した結果を得た。したがって、当該フコイダンを使用して、第VIII因子が阻害されている血漿においてTFPIによる活性を阻害できる。
【0309】
【表16】

【0310】
【表17】

【0311】
【表18】

【0312】
【表19】

【0313】
フコイダンとヒトTFPIタンパク質との相互作用を研究するために、表面プラズモン共鳴実験(Biacore 3000、G.E. Healthcare)を更に用いた。使用したタンパク質は、全長TFPI(aa1〜276)及びC末端切断型TFPI(aa1〜160)である。C末端切断型TFPI 1〜160は、負荷電C末端及びクーニッツ領域3を欠いている。全長TFPI(flTFPI)は、構成的にSKHep1細胞によって発現させ、従来の精製装置及びカラムを用いた多段階精製プロトコールによって精製した。TFPI 1〜160は、大腸菌(E.coli)によって封入体中で発現させ、再び折り畳ませ、従来の精製装置及びカラムを用いた多段階精製プロトコールによって精製した。タンパク質を、pH4.5(10mM酢酸ナトリウム)で従来のアミンカップリング化学反応を用いて、CM5チップ(GE Healthcare)に共有結合させて、flTFPIについては900RU及びTFPI 1〜160については500RUの固定をそれぞれもたらした。
【0314】
結合アッセイのために、1% Tween 80(Merck)を添加したHBS−P緩衝液(0.01M Hepes pH7.4;0.15M NaCl;0.005%界面活性剤P20)(GE Healthcare)によって流速30μL/分で表面を平衡させた。75秒後に、HBS−P、1% Tween 80中に溶解させたマコンブフコイダンを、0.02〜250μg/mLの範囲の濃度で450秒間にわたって注入し、続いて475秒の解離時間を設けた。2.5M NaCl 10μL、続いて10mM NaOH、1M NaClの注入によって、チップを再生させた。結合アッセイ全体を通じて、HBS−P緩衝剤+1% Tween 80を使用した。各センサーグラムを、緩衝液及びブランクセルとそれぞれ照合した。
【0315】
結果を、図17に示す。フコイダンはflTFPIと濃度依存的に反応したが、C末端切断型TFPI 1〜160では結合が観察されなかった。これは、フコイダン(例えば、マコンブ)が、機能的に重要であることが知られているTFPIのC末端領域で結合することを示している。
【実施例8】
【0316】
動物血漿におけるインビトロの研究
今後のインビボ研究に向けて、フコイダン応答を観察できる1種又は複数の動物種を同定するために、当該フコイダンの研究を動物血漿において実施した。正常な動物血漿及び可能ならば、第VIII因子を阻害した動物血漿において、広い濃度範囲(0.02〜300μg/mL)でのフコイダンの滴定によって、CATアッセイを実施した。ヒト、カニクイザル、モルモット、ラット、イヌ、ウサギ、マウス及びミニブタからの動物血漿を試験した。第VIII因子阻害剤の濃度、組織因子の濃度及び血漿希釈に従って、CAT条件を各動物種に最適化した。各動物種に関するアッセイ条件を、後述の表20に示す。凝固効果は、約300μg/mLまでの治療ウインドウにおいて測定した。
【0317】
動物の血漿研究に基づき、カニクイザル、モルモット及びラットは、フコイダン応答を決定するために実行可能なインビボ研究の適当な候補であることが確認された。イヌ、ウサギ、マウス及びミニブタからの血漿は、インビボ研究の候補としてはそれほど適当でないことが確認された。
【0318】
インビトロ動物血漿試験の研究に従って、当該フコイダンのインビボ活性を評価するために、2つのモルモットモデル:頸動脈閉塞モデル及び全血のエキソビボTEG分析を開発した。
【0319】
【表20】

【実施例9】
【0320】
モルモットにおけるインビボ研究
エキソビボでフコイダンの活性を評価する研究を、動物モデルとしてモルモットを用いて行った。モルモットで内因性第VIII因子を阻害するために、血液試料採取の45分前に、第VIII因子阻害剤(Z994;42BU/kg)を静脈内投与した。血液試料採取の5分前に、フコイダン製剤F.v.VG201096Bを0.1、0.4又は1.6mg/kgで静脈内投与した。後大静脈(vena cava caudalis)の穿刺を行って、全血の試料採取を行った。クエン酸塩加全血の試料採取後直ちにトロンボエラストグラフィーによる測定を行い、最大120分にわたって観察を行った。
【0321】
a)阻害剤及びNaCl;b)阻害剤及び0.1mg/kg NASP;c)阻害剤及び0.4mg/kg NASP;d)阻害剤及び1.6mg/kg NASP;並びにe)阻害剤及び300U/kg FEIBAを用いて行った研究に基づき、モルモットからの全血のTEG分析によるインビボ研究は、NASP 0.4mg/kg及びFEIBA 300U/kgが、NaClよりよく機能する(即ち、血液凝固促進活性がより高い)ことを示した。
【0322】
以上、本発明を、理解を明確にするために図及び実施例によってある程度詳細に記載したが、添付した特許請求の範囲の精神又は範囲から逸脱することなく、ある程度の変更及び修正を行えることは、本発明の教示を考慮して当業者には容易にわかるであろう、
【0323】
したがって、前述の記載は、本発明の原理の例示に過ぎない。本明細書中に明確に記載又は示されていなくとも、本発明の原理を具体化し且つ本発明の精神及び範囲内に含まれる様々な構成を当業者が考案できることが理解されるであろう。さらに、本明細書に記載される全ての例及び条件つきの文言は主に、本発明の原理及び技術の進歩に対して本発明者らが貢献する概念とを読者が理解する助けとなるよう意図され、具体的に記載したこのような例及び条件に限定されることなく解釈されるべきである。また、本発明の原理、態様及び実施形態並びに本発明の具体例について記載している本明細書中の全ての記述は、本発明の構造的均等物及び機能的均等物をいずれも包含するよう意図される。加えて、このような均等物は、現在知られている均等物と、将来開発される均等物、即ち、構造に関係なく同じ機能を果たす、開発される全ての要素を含むことが意図される。したがって、本発明の範囲は、本明細書中に示し記載した実施態様に限定されるよう意図されることはない。むしろ、本発明の範囲及び精神は、添付した特許請求の範囲によって具体化される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)8重量%以上の硫黄含量を含むNASP、
(ii)40%以上のフコースサッカリド残基を含むNASP、
(iii)Fucoidan 5307002、コンブ、最大MWピーク126.7kD;Fucoidan VG49、コンブ、MWが比較的低い5307002の加水分解試料、最大MWピーク22.5kD;Fucoidan VG57、ワカメ、高荷電(高硫酸化、脱アセチル化);Fucoidan GFS(5508005)、ワカメ、発熱物質除去;Fucoidan GFS(L/FVF−01091)、コンブ、発熱物質除去、最大MWピーク125kD;Fucoidan GFS(L/FVF−01092)、コンブ、発熱物質除去、最大MWピーク260kD;Fucoidan GFS(L/FVF−01093)、コンブ、加水分解、発熱物質除去、最大MWピーク36kD;Maritech(登録商標)エクロニア・ラジアータ(Ecklonia radiata)抽出物;Maritech(登録商標)エクロニア・マキシマ(Ecklonia maxima)抽出物;Maritech(登録商標)マクロシスティス・ピリフェラ(Macrocystis pyrifera)抽出物;Maritech(登録商標)免疫試験用フコイダンブレンド(Immune trial Fucoidan Blend)からなる群から選択されるNASP、及び
(iv)それらの組み合わせ
からなる群から選択されるNASPを含む組成物を対象に投与することを含む、対象の血液凝固の増強方法。
【請求項2】
NASPが、生物学的供給源から抽出される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
NASPのサッカリド残基の少なくとも2つが、フコース、ガラクトース、グルコース、キシロース及びマンノースからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
NASPが、40%以上のフコースサッカリド残基及び20%以上のガラクトースサッカリド残基を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
NASPが分岐多糖である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
NASPが線状多糖である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
NASPのサッカリド残基の75%以上が一硫酸化されている、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
NASPが、40%以上の、フコースサッカリド残基の硫酸化エステルを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
対象に血液凝固因子を投与することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
血液凝固因子が、第Xa因子、第IXa因子、第XIa因子、第XIIa因子、第VIIIa因子、プレカリクレイン及び高分子量キニノーゲン、組織因子、第VIIa因子、第Va因子、第Xa因子、第II因子、第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XI因子、第XII因子、第XIII因子、フォンビルブランド因子並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
NASPを、0.01mg/kg〜100mg/kgの範囲の投与量で投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
NASPが、10〜30,000ダルトンの範囲の分子量を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
対象が、慢性又は急性出血性障害、血液因子欠乏症に起因する先天性凝固障害、後天性凝固障害及び抗凝固剤の投与からなる群から選択される出血性障害を有すると診断されている、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
(a)(i)8重量%以上の硫黄含量を含むNASP、
(ii)40%以上のフコースサッカリド残基を含むNASP、
(iii)Fucoidan 5307002、コンブ、最大MWピーク126.7kD;Fucoidan VG49、コンブ、MWが比較的低い5307002の加水分解試料、最大MWピーク22.5kD;Fucoidan VG57、ワカメ、高荷電(高硫酸化、脱アセチル化);Fucoidan GFS(5508005)、ワカメ、発熱物質除去;Fucoidan GFS(L/FVF−01091)、コンブ、発熱物質除去、最大MWピーク125kD;Fucoidan GFS(L/FVF−01092)、コンブ、発熱物質除去、最大MWピーク260kD;Fucoidan GFS(L/FVF−01093)、コンブ、加水分解、発熱物質除去、最大MWピーク36kD;Maritech(登録商標)エクロニア・ラジアータ(Ecklonia radiata)抽出物;Maritech(登録商標)エクロニア・マキシマ(Ecklonia maxima)抽出物;Maritech(登録商標)マクロシスティス・ピリフェラ(Macrocystis pyrifera)抽出物;Maritech(登録商標)免疫試験用フコイダンブレンド(Immune trial Fucoidan Blend)からなる群から選択されるNASP、及び
(iv)それらの組み合わせ
からなる群から選択されるNASPと
(b)血液凝固因子と
を含む組成物。
【請求項15】
(a)(i)8重量%以上の硫黄含量を含むNASP、
(ii)40%以上のフコースサッカリド残基を含むNASP、
(iii)Fucoidan 5307002、コンブ、最大MWピーク126.7kD;Fucoidan VG49、コンブ、MWが比較的低い5307002の加水分解試料、最大MWピーク22.5kD;Fucoidan VG57、ワカメ、高荷電(高硫酸化、脱アセチル化);Fucoidan GFS(5508005)、ワカメ、発熱物質除去;Fucoidan GFS(L/FVF−01091)、コンブ、発熱物質除去、最大MWピーク125kD;Fucoidan GFS(L/FVF−01092)、コンブ、発熱物質除去、最大MWピーク260kD;Fucoidan GFS(L/FVF−01093)、コンブ、加水分解、発熱物質除去、最大MWピーク36kD;Maritech(登録商標)エクロニア・ラジアータ(Ecklonia radiata)抽出物;Maritech(登録商標)エクロニア・マキシマ(Ecklonia maxima)抽出物;Maritech(登録商標)マクロシスティス・ピリフェラ(Macrocystis pyrifera)抽出物;Maritech(登録商標)免疫試験用フコイダンブレンド(Immune trial Fucoidan Blend)からなる群から選択されるNASP、及び
(iv)それらの組み合わせ
からなる群から選択されるNASPと
(b)血液凝固因子と
を含むキット。
【請求項16】
生物学的供給源からNASPを抽出するステップと、
抽出されたNASPの硫黄含量を増加するステップと
を含む、血液凝固増強活性を有するNASPの調製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公表番号】特表2013−517285(P2013−517285A)
【公表日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−549099(P2012−549099)
【出願日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際出願番号】PCT/US2011/021215
【国際公開番号】WO2011/088267
【国際公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(591013229)バクスター・インターナショナル・インコーポレイテッド (448)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER INTERNATIONAL INCORP0RATED
【出願人】(501453189)バクスター・ヘルスケヤー・ソシエテ・アノニム (289)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER HEALTHCARE S.A.
【Fターム(参考)】