説明

分光センサー、分光センサーを利用した蛍光検出方法および蛍光検出装置

【課題】分光センサーの波長分解能を向上させる。
【解決手段】分光センサー1において、不純物濃度が1×1013〜1×1016cm-3の半導体基板11と、半導体基板11に形成された第1の拡散層12と、該第1の拡散層12の部位に形成された第2の拡散層13と、第1の拡散層12上に絶縁膜14を介して形成された、入射光を通過すると共に、ゲート電圧が印加される電極膜15とを備え、基板11に所定の電圧を印加させた状態で、ゲート電圧1〜20Vの範囲で変化させたとき、第1の拡散層12の表面から深さ方向において、電位が一定となる中性領域が存在しない電位分布となるように、第1の拡散層12の不純物濃度を半導体基板11の濃度の5〜50倍の範囲の所定値、第1の拡散層12の深さを0.1〜20μmの範囲の所定値とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は分光センサーに関するものであり、特に、入射光の波長毎の強度を検出する波長分別性能を向上させた分光センサーに関するものである。
【0002】
また、本発明は分光センサーを利用した蛍光検出方法および蛍光検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0003】
単板式ビデオカメラに用いられているイメージセンサーは、カラー画像を得るために、赤、緑、青のフィルタを各光検出素子(例えば、フォトダイオード)の上に取り付けるようにしている。
【0004】
また、三板式のビデオカメラにおいては、光学プリズムを用いて、入射光を赤、緑、青の3つの光にわけ、それぞれの光を3つのイメージセンサーで検知するようにしていた。
【0005】
また、入射する光が、いかなる波長であるか、かつそれらの波長の強度をしるためには、現在はグレーティングなどを用いた分光を行い、それぞれの光の強度分布をパワーメータのなどで測定を行っていた。
【0006】
また、1つのフォトダイオードにより、赤、緑、青のカラー情報を取得する試みがある(特許文献1、第4欄―第5欄参照)。この提案は、シリコン基板に、異なる深さの3つの拡散層を重ねるように配置して、それぞれの接合から得られる電流を検知するものであった。
【0007】
しかしながら、単板式ビデオカメラでは、光学プリズムの存在によりカメラ自体が大きくなるという問題があった。
また、三板式のビデオカメラでは、グレーティングなどを用いていたためやはり装置の構成が大きくなるという問題があった。
【0008】
さらに、特許文献1に提案されている3つの拡散層を重ねた構造の場合、カラー情報の分解能は低い上に、波長毎の強度を取得できないという問題があった。
【0009】
上記のような問題を解決する装置として、特許文献2では、CMOSトランジスタと類似の構造を備えた分光センサーが提案されている。この分光センサーは、n型半導体基板と該基板中に設けられたp型拡散層と、p型拡散層の部位に設けられたn拡散層を備え、p型拡散層上に絶縁膜を介してゲート電極となる透明電極を備え、p型拡散層にゲート電圧を印加した状態で、透明電極から入射した光により半導体内で発生する電子をn+拡散層に接続された電極から電流として取り出し電流値を測定するものであり、ゲート電圧を変化させることにより、p型拡散層中に生じた電子を捕獲する深さを変化させ、各電子深さ位置およびその深さ位置よりp型拡散層の表面側で生じる電子に基づく電流値から分光測定を行うというものである。
【0010】
一方、生化学の分野において、生化学反応の検出として蛍光法がよく知られている。蛍光法は、試料中の被分析物質に蛍光標識をし、試料に励起光を照射した際に蛍光標識から生じる蛍光を検出することにより被分析物質の量や存在の有無などを検出するものである。従来の蛍光検出装置においては、蛍光の検出にフォトダイオードと、蛍光を透過するが励起光を透過しない光学フィルタとを組み合わせたものが利用されている。光学フィルタを備えた従来の蛍光検出装置は大型であるため、蛍光検出装置の小型化が望まれており、上述の特許文献2には、上述の分光センサーを蛍光検出に用いることが提案されている。
【特許文献1】米国特許第5,965,875号明細書
【特許文献2】特開2005−10114号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献2で提案されている分光センサーでは、ゲート電圧を印加した際のp型拡散層の深さ方向の電位分布は図10に示すように、分布の鞍の電位変化が緩やかであり、電位がほぼ一定となる領域(中性領域)が広がっている。このような電位分布であると、所定の深さWまでの電子に基づく電流値を検出しても、分岐点となるWで正確に光電流を分離することができないという問題がある。これは、図10中両矢印で示している中性領域においては電子はp型拡散層表面側(A側)、基板側(A’側)のいずれにも自由に移動できるためである。
【0012】
このように、特許文献2に記載の分光センサーは、所定の深さまでに発生した電子を正確に検出することができないために、波長分解能が十分でなかった。特に、蛍光法のように正確な量の蛍光を検出したい場合には、これは重大な問題となる。
【0013】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、波長分解能に優れた分光センサーを提供することを目的とするものである。
【0014】
また、本発明は波長分解能に優れた分光センサーを用い、蛍光を精度よく検出することができる蛍光検出方法および該分光センサーを備えた蛍光検出装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の分光センサーは、
半導体基板と、
該半導体基板に形成された第1の拡散層と、
該第1の拡散層の部位に形成された第2の拡散層と、
前記第1の拡散層上に絶縁膜を介して形成された、入射光を通過すると共に、ゲート電圧が印加される電極膜とを備え、
前記基板に所定の電圧を印加させた状態で、前記ゲート電圧を変化させることにより前記第1の拡散層中で入射光により発生した電荷を捕獲する該第1の拡散層の表面からの深さを変化させ、該変化させたゲート電圧毎で、前記表面側から前記深さまでの領域で発生する前記電荷の量を示す電流を測定することにより、前記入射光の波長毎の強度を測定する分光センサーであって、
前記半導体基板の不純物濃度が1×1013〜1×1016cm-3であり、
前記基板に所定の電圧を印加し、前記ゲート電圧として1〜20Vの範囲の所定電圧を印加したとき、前記第1の拡散層の表面から深さ方向において、電位が一定となる中性領域が存在しない電位分布となるように、前記第1の拡散層の不純物濃度が半導体基板濃度の5〜50倍の範囲の所定値、前記第1の拡散層の深さが0.1〜20μmの範囲の所定値とされていることを特徴とするものである。
【0016】
半導体基板の不純物濃度を上記範囲の所定値とし、第1の拡散層の不純物濃度および深さをそれぞれ上記範囲で設定することにより、基板に所定の電圧を印加し、前記ゲート電圧として1〜20Vの範囲の所定電圧を印加したとき、中性領域が存在しない電位分布となるよう構成することができることは、本発明者らの鋭意研究により見いだされたものである。
【0017】
第1の拡散層中で入射光により発生した電荷を捕獲する該第1の拡散層の表面からの深さ(以下、「電荷捕獲深さ」という。)とは、第1の拡散層の表面から深さ方向の電位分布において電位の頂点(鞍点)となる深さである。なお、捕獲される電荷は電子あるいは正孔いずれであってもよい。
【0018】
中性領域とは、半導体のバンド構造において、ゲート電圧を印加することにより形成される表面側空乏領域と、基板側に所定の電圧を印加することにより形成される基板側空乏領域との間の領域であり、コンダクションバンドのエネルギーレベルが一定となっている領域をいう(図10中両矢印の領域)。本発明の分光センサーは、基板側に所定の電圧を印加し、ゲート電圧を印加した場合に、この中性領域がなく、表面側空乏領域と基板側空乏領域が山の頂点で繋がった電位分布(図2参照)となるように構成されていることを特徴とするものである。
【0019】
ここで、第1の拡散層の深さ(以下において、「接合深さ」という。)とは、基板表面から不純物濃度が半導体基板の濃度と一致するまでの深さをいい、第1の拡散層の不純物濃度は、表面から該深さまでの不純物濃度の平均値をいう。
【0020】
本発明の分光センサーは、さらに、前記半導体基板の不純物濃度が1×1014cm-3であり、前記基板に所定の電圧を印加し、前記ゲート電圧として1〜6Vの範囲の所定電圧を印加したとき、前記第1の拡散層の表面から深さ方向において、電位が一定となる中性領域が存在しない電位分布となるように、前記第1の拡散層の不純物濃度が5×1014〜8×1015cm-3の範囲の所定値、前記第1の拡散層の深さが3〜5μmの範囲の所定値とされていることが望ましい。
【0021】
特に、前記半導体基板の不純物濃度が1×10-14cm-3であり、前記第1の拡散層の深さが4μmであることが好ましい。さらには、第1の拡散層の不純物濃度が1×1015cm-3であることが特に好ましい。
【0022】
本発明の蛍光検出方法は、蛍光標識された被分析物質を含む試料に対して励起光を照射し、該励起光の照射により前記蛍光標識から生じる蛍光を検出する蛍光検出方法であって、
本発明の分光センサーを用い、
前記基板に所定の電圧を印加し、かつ前記ゲート電圧として第1のゲート電圧を印加した状態で前記電流を測定して第1の電流値を得、
前記基板に所定の電圧を印加し、かつ前記ゲート電圧として前記第1のゲート電圧とは異なる第2のゲート電圧を印加した状態で前記電流を測定して第2の電流値を得、
前記第1および第2の電流値に基づいて前記蛍光を前記励起光と分離して検出することを特徴とする。
【0023】
また、本発明の蛍光検出装置は、蛍光標識された被分析物質を含む試料に対して励起光を照射し、該励起光の照射により前記蛍光標識から生じる蛍光を検出する蛍光検出装置であって、
本発明の分光センサーを備え、該分光センサーにより前記蛍光の強度を前記励起光と分離して検出するものであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明の分光センサーによれば、ゲート電圧を変化させることにより変化する所定の深さ(電荷捕獲深さ)毎に、その所定深さまでに入射光により発生した電荷を検出するものであり、その際の第1の拡散層の表面から深さ方向において、電位が一定となる中性領域が存在しない電位分布となっているため、所定の深さ毎にその所定深さまでに発生した電荷を精度よく検出することができ、波長分解能が非常に高い。
【0025】
なお、上述の中性領域が存在しない電位分布を得るための、半導体基板の不純物濃度、第1の拡散層の不純物濃度および深さの値あるいは範囲が定められているため、このような波長分解能の高い分光センサーを容易に得ることができる。
【0026】
本発明の蛍光検出方法および蛍光検出装置においては、上述の本発明の分光センサーを利用あるいは備えているので、蛍光を精度よく検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
<基本原理>
まず、本発明の分光センサーにおいて入射光の波長を得るための基本原理について説明する。
【0028】
単色光が半導体内に入射する場合、半導体の入射面から深さ方向の位置Wまでに発生する電流は、計算によって求めることができる。半導体に光が入射すると光強度は指数関数的に減衰することから、ある深さxにおける光強度Aは、下記式で表される。
A=A0・e-αx
ここで、A0:入射光強度[W/cm2]、α:吸収係数[cm-1]である。
【0029】
従って、深さWまでに吸収される割合は、
【数1】

【0030】
となり、深さWまでに発生する電流は次式のように表される。
【数2】

【0031】
ここで、S:受光部の面積[cm2]、hν:光のエネルギー[J]、q:電子ボルト換算係数[J]である。
【0032】
複数の波長が半導体内に入射する場合、半導体内に入射した場合の減衰度合いは、波長毎で異なっている。
【0033】
例えば、2つの波長(λ1とλ2)の光が、強度A1とA2で同時に入射した場合、表面から捕獲位置W1[cm]の距離までに発生した電子による電流I1[A]、電子の捕獲位置W2[cm]の距離までに発生した電子による電流I2[A]とすると、電流I1、I2は次式のように表される。
【数3】

【0034】
ここで、A1、A2:入射強度[W/cm2]、S:センサー面積[cm2]、α1、α2:それぞれの波長の吸収係数[cm-1]、ν1:振動数(=c/λ1)、ν2:振動数(=c/λ2)、c:光速である。
【0035】
入射光強度A1、A2以外は全て既知の値であるから、この2式の連立方程式を解くことにより、入射光強度A1,A2を求めることができる。
【0036】
上記は、入射光が2波長であった場合であるが、入射光を3つの波長に分離する場合は、さらに、電子を捕獲する位置W3の場合の電流I3についての式を加え、各式に第3の波長の項を加え、3式の連立方程式を解くことにより、3つの波長それぞれの入射光強度を求めることができる。同様に100の波長で入射する入射光を分光する場合は、電子を捕獲する位置を100回変化させて(互いに異なる100の深さで)測定すればよい。
【0037】
なお、ここでは「電子」を捕獲するものとして説明したが、「正孔」を捕獲するように構成することもできる。
【0038】
<実施の形態>
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0039】
図1は、本発明の実施の形態の分光センサーを示す斜視図である。
分光センサー1は、n型シリコン基板(n型半導体基板)11、n型シリコン基板11中に形成された第1の拡散層であるp型拡散層(p型ウェル)12、p型拡散層12の部位に形成された第2の拡散層であるn拡散層13、p型拡散層12上に形成される絶縁膜であるシリコン酸化(SiO2)膜14、シリコン酸化膜14上に積層された、不純物が添加されたポリシリコン膜15、ポリシリコン膜15に接続設置され、ゲート電圧Vgを印加するためのAl電極16、n+拡散層13に接続設置されたAl電極17、p型拡散層12に接続設置され、接地されたAl電極18を備えている。ポリシリコン膜(poly-Si膜)15は、シリコン酸化膜(SiO2膜)14を介して光を透過すると共に、SiO2膜14を介してp型拡散層12にゲート電圧を印加する透明ゲート電極である。さらに、n型シリコン基板11には、基板11に所定の電圧Vsを印加するためのコンタクトが設けられている。
【0040】
基板11の不純物濃度は1×1013〜1×1016cm-3であり、第1の拡散層12の不純物濃度が基板11の不純物濃度の5〜50倍の範囲、第1の拡散層12の接合深さDが0.1〜20μmの範囲で、基板11に所定の電圧Vsを印加し、ゲート電圧Vgとして第1の拡散層12に1〜20Vの範囲の所定電圧を印加した場合の第1の拡散層12の表面から深さ方向において(図中A−A’において)、図2に示すように、電位が一定となる中性領域が存在しない電位分布となるように、それぞれ設定されている。例えば、基板の不純物濃度を固定し、他のパラメータを上記範囲で振ってシミュレーションを行い中性領域が存在しない電位分布となる所定値を定める。
【0041】
なお、基板11の不純物濃度を0.5×1014〜2×1014cm-3の範囲の所定値とし、第1の拡散層12の不純物濃度を5×1014〜8×1015cm-3の範囲の所定値とし、第1の拡散層12の接合深さDが3〜5μmの範囲で、基板11に所定の電圧Vsを印加し、ゲート電圧Vgとして第1の拡散層12に1〜6Vの範囲の所定電圧を印加した場合の第1の拡散層12の表面から深さ方向において電位が一定となる中性領域が存在しない電位分布となるようにそれぞれ設定することがさらに望ましい。
【0042】
半導体内のエネルギーバンドにおいては、基板側にVsが印加されることにより、p型拡散層の基板側に空乏領域が生じ、他方ゲート電圧Vgが印加されることにより、p型拡散層表面側に空乏領域が生じる。このように、Vs、Vgが印加された状態で、透明ゲート電極15、シリコン膜14を経てp型拡散層12表面に入射した光Lにより半導体内(p型拡散層12)で生じた電子はより近い方の空乏領域に移動する。
【0043】
図2において、電位分布の頂点となる位置(深さW)が電荷捕獲深さ(ここでは、電子捕獲深さ)であり、これはちょうど、基板側の空乏領域と表面側の空乏領域とが繋がった位置である。光が入射したことによりp型拡散層12で発生した電子はより近い空乏領域へ移動することから、Wより表面側(A側)で発生した電子がn拡散層13に接続された電極17へと流れ電流として測定される。
【0044】
従来例の場合、基板11に所定の電圧Vsを印加し、ゲート電圧Vgとして所定電圧を印加した場合の第1の拡散層12の表面から深さ方向において、図10のような電位分布となり、表面側の空乏領域と基板側の空乏領域との間の、図10中両矢印で示した、電位が一定となる中性領域の電子は少なくともこの範囲で自由に行き来できるため、電子捕獲深さWよりも基板側(A’側)の電子が表面側に移動し検出されてしまう恐れがあり、分光特性が十分とはいえない。
【0045】
第1の拡散層12の不純物濃度を1×1015cm-3とし、深さを4μmとし、Vs=5V、Vg=3V、酸化膜厚100nmとした場合の、表面から深さ方向(図1のA−A’)の電位分布のシミュレーション結果を図3に示す。このときの電子捕捉深さは1.83μmである。
【0046】
また、比較のために、基板11の不純物濃度を1.5×1014cm-3、第1の拡散層12の不純物濃度を2×1015cm-3、接合深さを5μm、Vs=5V、Vg=3V、SiO2膜14の膜厚65nmとした場合の、表面から深さ方向の電位分布のシミュレーション結果を図11に示す(特許文献2参照)。このシミュレーションからも、従来のものは、電位の一定となる中性領域が存在していたことが明らかである。
【0047】
図4は、電位分布における、kT/q=0.026eV以内の幅を説明するための図である。図4に示す、0.026eVの範囲は、300Kにおいて電子が自由に移動できる領域であり、所定の深さまでに入射光により発生した電子を精度よく検出するためには、所定の深さの前後の電位分布において0.026eV内となる領域(図中両矢印で示す深さ方向の幅)が小さければ小さいほど好ましい。
【0048】
本実施形態の分光センサーでは、図3に示すように、中性領域がなく電位の頂点位置近傍での電位分布が急峻に変化している。一方、従来の分光センサーの場合、図11中のWの位置を捕獲深さとしていたが、現実には、該深さWから約1.5μmに亘り中性領域が広がっており、上述の0.026eV内となる幅はさらに広くなっている。本実施形態の分光センサーは、従来のものと比較して、この0.026eV内の幅が非常に小さく、すなわち自由に電子が行き来できる幅が小さくなっていることを意味するものであり、測定精度が向上していると言える。
【0049】
図5は、基板11の不純物濃度1×10-14cm-3、p型拡散層12の接合深さ4μm、ゲート酸化膜厚(SiO2膜厚)100nmとし、p型拡散層の不純物濃度を変化させ、基板への印加電圧Vs=5V、ゲート電圧Vg=3Vのときのp型拡散層表面から基板側にかけての電位分布をシミュレーションにより求め、電子捕獲深さの電位(電位分布の頂点)から各不純物濃度の時の300Kの等価電圧以内の電位となっている深さ方向の幅(図4に示す幅であり、以下「電位の幅」という)をプロット(黒四角、実線で示す)したものである。
【0050】
比較として、基板濃度2.5×1015cm-3、p型拡散層の接合深さ6μmとし、p型拡散層の不純物濃度を変化させ、他の条件は上と同様の条件でシミュレーションを行い、各不純物濃度の時の300Kの等価電圧以内の電位の幅をプロット(白丸、破線で示す)している。
【0051】
図5に示すように、基板濃度が小さく、p型拡散層の接合深さが浅い方が300K等価電圧内の電位の幅が小さい傾向が得られた。さらに、上述の中性領域は300K等価電圧内の電位の幅が1.3μm以下であればほぼ0となる。ここから、基板11の不純物濃度1×10-14cm-3、p型拡散層12の接合深さ4μm、SiO2膜厚100nmの条件では、p型拡散層の不純物濃度は5×1014〜5×1015cm-3(即ち基板の不純物濃度の5〜50倍)が好ましいと言える。さらには、この電位の幅が1.0μm以下であればさらに好ましい。また、本シミュレーションでは、p型拡散層の不純物濃度が1×1015cm-3のとき電位の幅が最小値0.5μmとなり、最も好ましいという結果が得られた。
【0052】
なお、ゲート電極であるポリシリコン膜15と第1の拡散層12との間のSiO2膜14の厚みにより、拡散層12に生じる電位分布は変化する。具体的には、SiO2膜14が厚いほど、電位分布のピーク位置(所定深さW)が浅くなる傾向がある。SiO2膜14は50nm−150nm程度が好ましい。なお、SiO2膜に代えて、窒化膜Si3N4膜を用いてもよく、材料が異なるとやはり電位分布のピーク位置が変化する。窒化膜などSiO2膜以外の膜を形成した場合、その材料の比誘電率とSiO2の比誘電率との関係から、SiO2膜の厚みに換算することができる。
【0053】
次に、上述の分光センサー1を用いた蛍光検出方法および装置について説明する。
図6は、本実施形態の蛍光検出装置10の概略構成を示すものである。蛍光検出装置10は、蛍光標識された被分析物質を含む試料2を保持する試料保持部としてのガラスからなるサンプルプレート3と、試料2に励起光4を照射する、サンプルプレート上方に配置された励起光源5と、励起4の照射により生じる蛍光を検出するため、サンプルプレート3の励起光源5と対向する下側に配置された分光センサー1とを備えている。
【0054】
本蛍光検出装置により蛍光検出方法は以下のように行う。
励起光源5により励起光4を試料2に照射する。試料2中の被分析物質に標識された蛍光体から蛍光Lが生じる。この励起光(例えば、波長λ1=470nm)および蛍光(例えば、波長λ2=520nm)が分光センサー1のポリシリコン膜15から分光センサー1内に入射する。ここで、基板側への所定の電圧Vsとして5Vを印加し、ゲート電圧Vg=3V(W=2.00μm)のときの電流を測定し電流値I1を得、さらに、ゲート電圧Vg=5V(W2=2.14μm)のときの電流を測定し電流値I2を得る。この、W1、W2、I1およびI2から励起光強度A1および蛍光強度A2を、上述した(3)式に基づいて求める。
【0055】
このようにして蛍光と励起光とを分離してそれぞれの入射光強度を検出することができる。なお、上記実施形態においては、基板側に印加される電圧Vsは5Vとし、電流検出を行う時のゲート電圧を3Vと5Vとしたが、これらはこの値に限られるものではなく、分光センサーの特性および検出する蛍光、励起光の波長に応じて、所定の深さに電位のピーク位置が一致するように適宜設定すればよい。
【0056】
本実施形態の蛍光検出装置によれば、上述した本発明の分光センサーを用いており、蛍光と、励起光とを精度よく分離し、精度よく蛍光を検出することができる。
【0057】
次に、図7〜図9を参照して、本発明の蛍光検出装置に備えられる分光センサーの具体的な製造方法の例を説明する。図7および図8は断面図、図9は斜視図である。
【0058】
基板31としては、n型(100)4インチSi基板を用いる。不純物濃度は1×1014cm-3である。まず、初期酸化としてウェット酸化を行う。1000℃、240分の条件で、500nmの酸化膜(SiO2膜)32を形成する。図7(A)に示すように、酸化膜32上に、レジスト33を形成し、p型拡散層を形成する領域33aを確定するためのフォトリソグラフィを行う。次にSiO2膜32をBHF(バッファードフッ酸)により除去する。
【0059】
さらに図7(B)に示すように、保護酸化膜を形成するためのドライ酸化を1000℃、60分の条件で行い、酸化膜(SiO2膜)34を50nm形成する。この保護酸化膜34はイオン注入時のダメージを軽減するために形成する。
【0060】
次に、図6(C)に示すように、p型拡散層36を形成するためのイオン35注入を行う。ボロン(Boron)を60keV、1012cm-2の条件で注入し、その後、ドライブインとして、1150℃m、ドライ酸素雰囲気中、240分維持し、ボロンを拡散させ、図6(C)に示すようなp型拡散層36を形成する。その後、SiO2膜34を全面除去し、さらに、保護酸化として、1000℃、60分ドライ酸化させ、SiO2膜37を形成する。
【0061】
図7(D)に示すように、そのSiO2膜37上にレジスト38を形成し、チャネルストッパを形成するためのフォトリソグラフィを行い、チャネルストッパイオン39(ボロン、60keV、1014cm-2)注入を行い、チャネルストッパ40を形成する。
【0062】
その後、レジスト38を除去し、さらにSiO2膜37を全面除去する。さらに、フィールド酸化として、1000℃、240分ウェット酸化を行い、750nm厚のSiO2膜42を形成する。さらに、アクティブ形成フォトリソグラフィを行い、SiO2膜をエッチングし、1000℃、120分ドライ酸化を行い、ゲート領域に図8(A)に示すような酸化膜厚80nmのSiO2膜42aを形成する。
【0063】
さらに、650℃、75分の条件で、SiO2膜42および42a上に520nm厚のポリシリコン膜43を形成し、その後、ポリシリコン膜43をパターニングするためにレジスト44を塗布しフォトリソグラフィを行い、図8(B)に示すようにポリシリコン43をエッチングする。
【0064】
次に、図8(C)に示すように、n型イオン注入のために、p拡散領域をカバーするために、レジスト45の塗布およびフォトリソグラフィを行う。nイオンとしてリン46を注入し、p型拡散層36の一部位にn拡散層48を形成する。
【0065】
図8(D)に示すように、レジスト45を除去し、BPSG(ボロン−リン−シリコンガラス)膜49を600nm形成する。BPSG膜は900℃、10分の条件でリフローすることにより形成し、さらにコンタクト(電極)形成のためにBHFによるエッチングを行う。
【0066】
その後、1.2μm厚にAl(アルミニウム)をスパッタ蒸着し、電極部50a、50b、50c、50d以外の部分のAlをドライエッチングにより除去し、H雰囲気中でアニールすることにより完成する(図8参照)。
【0067】
このようにして、図8に示すように、n型Si基板31と、該基板の表面から所定深さまでp型イオンが拡散されて形成されたp型拡散層35と、このp型拡散層35の部位に形成されたn+拡散層48と、表面に形成されたSiO2膜42、入射光受光領域に備えられたポリシリコン膜43と、BPSG膜49と、4つのAl電極50a〜50dを備えた分光センサー51を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の実施の形態の分光センサーの概略構成を示す斜視図
【図2】図1に示す分光センサーにおける電位分布を示す模式図
【図3】図1に示す分光センサーの電位分布シミュレーション
【図4】電位分布におけるkT/q=0.026eV以内の幅を説明するための図
【図5】電位の幅とp型拡散層中の不純物濃度との関係を示すグラフ
【図6】本実施形態の蛍光検出装置の概略構成を示す図
【図7】分光センサーの製造工程を示す断面図(その1)
【図8】分光センサーの製造工程を示す断面図(その2)
【図9】分光センサーの斜視図
【図10】従来例の分光センサーの電位分布を示す模式図
【図11】従来例の分光センサーの電位分布シミュレーション
【符号の説明】
【0069】
1 分光センサー
11、31 半導体基板
12、35 第1拡散層(p型拡散層)
13、48 第2拡散層(n型拡散層)
14、42 SiO2
15、43 ポリシリコン膜(ゲート電極)
16、17、18、50a、50b、50c、50d Al電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
該半導体基板に形成された第1の拡散層と、
該第1の拡散層の部位に形成された第2の拡散層と、
前記第1の拡散層上に絶縁膜を介して形成された、入射光を通過すると共に、ゲート電圧が印加される電極膜とを備え、
前記基板に所定の電圧を印加させた状態で、前記ゲート電圧を変化させることにより前記第1の拡散層中で入射光により発生した電荷を捕獲する該第1の拡散層の表面からの深さを変化させ、該変化させたゲート電圧毎で、前記表面側から前記深さまでの領域で発生する前記電荷の量を示す電流を測定することにより、前記入射光の波長毎の強度を測定する分光センサーであって、
前記半導体基板の不純物濃度が1×1013〜1×1016cm-3であり、
前記基板に所定の電圧を印加し、前記ゲート電圧として1〜20Vの範囲の所定電圧を印加したとき、前記第1の拡散層の表面から深さ方向において、電位が一定となる中性領域が存在しない電位分布となるように、前記第1の拡散層の不純物濃度が半導体基板濃度の5〜50倍の範囲の所定値、前記第1の拡散層の深さが0.1〜20μmの範囲の所定値とされていることを特徴とする分光センサー。
【請求項2】
前記半導体基板の不純物濃度が0.5〜2×1014cm-3であり、
前記基板に所定の電圧を印加し、前記ゲート電圧として1〜6Vの範囲の所定電圧を印加したとき、前記第1の拡散層の表面から深さ方向において、電位が一定となる中性領域が存在しない電位分布となるように、前記第1の拡散層の不純物濃度が5×1014〜8×1015cm-3の範囲の所定値、前記第1の拡散層の深さが3〜5μmの範囲の所定値とされていることを特徴とする請求項1記載の分光センサー。
【請求項3】
蛍光標識された被分析物質を含む試料に対して励起光を照射し、該励起光の照射により前記蛍光標識から生じる蛍光を検出する蛍光検出方法であって、
請求項1記載の分光センサーを用い、
前記基板に所定の電圧を印加し、かつ前記ゲート電圧として第1のゲート電圧を印加した状態で前記電流を測定して第1の電流値を得、
前記基板に所定の電圧を印加し、かつ前記ゲート電圧として前記第1のゲート電圧とは異なる第2のゲート電圧を印加した状態で前記電流を測定して第2の電流値を得、
前記第1および第2の電流値に基づいて前記蛍光を前記励起光と分離して検出することを特徴とする蛍光検出方法。
【請求項4】
蛍光標識された被分析物質を含む試料に対して励起光を照射し、該励起光の照射により前記蛍光標識から生じる蛍光を検出する蛍光検出装置であって、
請求項1記載の分光センサーを備え、該分光センサーにより前記蛍光の強度を前記励起光と分離して検出するものであることを特徴とする蛍光検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−180512(P2009−180512A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−17112(P2008−17112)
【出願日】平成20年1月29日(2008.1.29)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2007年8月1日 社団法人 映像情報メディア学会発行の「映像情報メディア学会 2007年年次大会講演予稿集」に発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2007年9月4日 社団法人 応用物理学会発行の「2007年(平成19年)秋季 第68回応用物理学会学術講演会講演予稿集 第3分冊」に発表
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【出願人】(304027349)国立大学法人豊橋技術科学大学 (391)
【Fターム(参考)】