説明

分光光度計

【課題】 測定精度を向上させることができる分光光度計を提供すること。
【解決手段】 試料セル6と、試料セル6に測定光を出射する光源部50と、試料セル6を通過した測定光を検出する光検出器12と、光源部50からの測定光が光検出器12に一定周期で入射しないようにする遮光部41と、遮光部41で遮光された遮光期間と、光検出器12で得られた出力強度信号とを対応付けて記憶する記憶部234と、記憶部234に記憶された入射期間の出力強度信号Sと遮光期間の出力強度信号DSとに基づいて、透過率又は吸光度を算出する制御部231とを備え、一周期として入射期間と遮光期間とをこの順で実行する分光光度計260であって、制御部231は、第N周期の入射期間の出力強度信号Sに含まれる第(N−1)周期の入射期間の出力強度信号SN−1の影響を除去した第N周期の真出力強度信号sを算出することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分光光度計に関し、特にダブルビーム型やシングルビーム型の紫外可視分光光度計に関する。
【背景技術】
【0002】
試料の透過率を測定する装置として、ダブルビーム型の紫外可視分光光度計が開発されている(例えば、特許文献1参照)。図11は、ダブルビーム型の紫外可視分光光度計を示す概略構成図である。
紫外可視分光光度計160は、試料セル6と、参照セル8と、測定光を出射する光源1と分光器2とを有する光源部50と、光検出器12と、セクタ鏡(切替部、遮光部)40と、複数の反射鏡3、5、7、9、10、11と、光を透過しない筐体15と、インデクス信号発生部20と、アナログ−デジタル(A/D)変換器14と、紫外可視分光光度計160全体を制御するコンピュータ130とを備える。
【0003】
筐体15の内部には、試料セル6と、参照セル8と、光源部50と、光検出器12と、セクタ鏡(切替部、遮光部)40と、反射鏡3、5、7、9、10、11とが所定の位置に配置されている。
なお、分析者が筐体15の扉を開くことにより、試料セル6や参照セル8を、新たな試料セルや参照セルに交換することができるようになっている。
【0004】
光源部50では、光源1から発した光が分光器2に入射され、分光器2で所望の波長λを有する単色光(測定光)が取り出される。
セクタ鏡40は、単色光を試料側光束LSと参照側光束LRとに交互に一定周期で振り分ける。さらに、セクタ鏡40には、回転に伴って試料側光束LSと参照側光束LRとを一定周期で遮光する遮光部41が設けられており、試料側光束LSの入射期間と試料側光束LSの遮光期間と参照側光束LRの入射期間と参照側光束LRの遮光期間とがこの順に一定周期で発生するようにしている。
インデクス信号発生部20は、所定速度で回転駆動されるセクタ鏡40の回転に同期して、1回転に1パルスのインデクス信号IDXを発生する。例えば、セクタ鏡40の回転周期は電源周波数に同期した周波数とされ、50Hz又は60Hzが採用される。
【0005】
コンピュータ130においては、CPU(制御部)131やメモリ(記憶部)134を備え、さらにキーボードやマウス等を有する入力装置32と、表示装置33とが連結されている。また、CPU131が処理する機能をブロック化して説明すると、メモリ134に光検出器12からの出力強度信号を記憶させる記憶制御部31aと、透過率を算出する算出制御部131bとを有する。
【0006】
このような紫外可視分光光度計160では、光源1から発した光は分光器2に入射され、分光器2で所望の波長λを有する単色光が取り出される。単色光は反射鏡3を経てセクタ鏡40に送られ、セクタ鏡40により試料側光束LSと参照側光束LRとに交互に振り分けられる。
まず、試料側光束LSは、反射鏡5を経て試料セル6に照射され、試料セル6を通過した光は反射鏡9、11を経て光検出器12の受光面に送られる。光検出器12に送られた光は、光検出器12で光電変換されて、試料側入射期間の出力強度信号Sとして取り出される。また、セクタ鏡40には、回転に伴って試料側光束LSを一定周期で遮光する遮光部41が設けられているので、遮光部41に対応した光検出器12の出力強度信号は試料側遮光期間の出力強度信号DSとなる。そして、光検出器12の出力強度信号S、DSは、A/D変換器14により一定時間間隔でサンプリングされてデジタル電圧値(信号値)に変換される。
【0007】
一方、参照側光束LRは、反射鏡7を経て参照セル8に照射され、参照セル8を通過した光は反射鏡10を経て光検出器12の受光面に送られる。光検出器12に送られた光は、光検出器12で光電変換されて、参照側入射期間の出力強度信号Rとして取り出される。また、セクタ鏡40には、回転に伴って参照側光束LRを一定周期で遮光する遮光部41が設けられているので、遮光部41に対応した光検出器12の出力強度信号は参照側遮光期間の出力強度信号DRとなる。そして、光検出器12の出力強度信号R、DRは、A/D変換器14により一定時間間隔でサンプリングされてデジタル電圧値(信号値)に変換される。
【0008】
コンピュータ130の記憶制御部31aは、メモリ134に光検出器12からの信号値(出力強度信号S、DS、R、DR)を記憶させる制御を行う。このとき、遮光部41で遮光された遮光期間と、セクタ鏡40で光路を切り替えた切替期間と、光検出器12で得られた出力強度信号とを対応付けて記憶させる。
図2は、セクタ鏡40の1回転の期間(これを1周期(N)とする)のタイミング図であり、図3は、複数周期期間に亘る信号値(デジタル電圧値)と時間との関係の一例を示す図である。
【0009】
1周期Nの期間中、光検出器12は、試料側光束LSの入射期間に対応する出力強度信号Sと、試料側光束LSの遮光期間に対応する出力強度信号DSと、参照側光束LRの入射期間に対応する出力強度信号Rと、参照側光束LRの遮光期間に対応する出力強度信号DRとをこの順で出力することになる。
なお、A/D変換器14でのサンプリング周期が周期Nに比べて短く、A/D変換器14の出力データ(以下「検出値データ」という)が1周期Nにおける各信号に対してそれぞれ多数(本例では6個ずつ)得られるので、D1〜D6、D7〜D12、D13〜D18、及び、D19〜D24は、出力強度信号S、出力強度信号DS、出力強度信号R、出力強度信号DRにそれぞれ対応する検出値データである。
【0010】
このようにメモリ134に記憶された出力強度信号Sと出力強度信号DSと出力強度信号Rと出力強度信号DRとを用い、算出制御部131bは、下記式(19)により透過率を算出する制御を行う。
透過率(%)=〔(S−DS)/(R−DR)〕/Z×100 ・・・(19)
Zは、対照として用いる試料(多くは水又は空気)を測定したときの〔(S−DS)/(R−DR)〕を予め記憶しておいたものである。
具体的には、各周期N毎に、出力強度信号Sに対応する検出値データD4〜D6、出力強度信号DSに対応する検出値データD10〜D12、出力強度信号Rに対応する検出値データD16〜D18、出力強度信号DRに対応する検出値データD21〜D24について、それぞれの平均値を計算し、式(19)に代入して第N周期の透過率を求める。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2002−162294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、近年、試料の低透過率の測定において測定精度に対する要求が高まっており、上述した紫外可視分光光度計160では、測定精度に問題があることがあった。
【課題を解決するための手段】
【0013】
そこで、本件発明者らは、上記課題を解決するために、試料の低透過率の測定において測定精度を向上させる方法について検討を行った。光電子増倍管等の光検出器12では、出力強度信号の検出値データが一定時間間隔で次々とサンプリングされて取り出されることになるが、以前の出力強度信号の検出値データの影響が残っていることがある。よって、光検出器12の受光面に光の入射がなくても、以前の出力強度信号の検出値データが多い光量を示すものであったときには、出力強度信号の検出値データが0にならないことがあった。
そこで、各信号に対してそれぞれ多数(本例では6個ずつ)の検出値データ(D1〜D6、D7〜D12、D13〜D18、D19〜D24)を得ていることから、多数の検出値データのうちから後半の時間に得られた検出値データ(D4〜D6、D10〜D12、D16〜D18、D21〜D24)のみを用いることが実行されている。さらに後半の時間に得られた検出値データ(D5〜D6、D11〜D12、D17〜D18、D22〜D24)のみを用いることも考えられるが、S/Nが損をすることになり、また、仮にそうした場合でも測定精度を充分に向上させることはできなかった。
【0014】
そこで、出力強度信号に含まれる以前の出力強度信号の影響を除去する演算式を作成することにした。特に直前の出力強度信号の影響が大きいので、その影響を除去するのが効果が高い。まず、シングルビーム型の紫外可視分光光度計について検討を行った。図4は、シングルビーム型の紫外可視分光光度計で得られた複数周期期間に亘る信号値(デジタル電圧値)と時間との関係の一例を示す図である。
図4では、真出力強度信号s(=S−S0)を取得したくても、第N周期の入射期間の出力強度信号Sを測定しながらS0を測定することはできない。そのため、S0を推定する。ここで、S0は、第(N−1)周期の入射期間の出力強度信号SN−1(直前の出力強度信号)の影響で0になっていないと考えられる。そこで、第N周期の入射期間の出力強度信号Sに含まれる第(N−1)周期の入射期間の出力強度信号SN−1の影響を除去するための補正係数Aを、実験や計算で算出した。これにより、補正係数Aを用いることを見出した。
【0015】
また、図5は、測定光が一定周期で光検出器に入射しないようにする遮光部を持ち、入射期間と遮光期間が交互に存在するタイプのシングルビーム型の紫外可視分光光度計で得られた複数周期期間に亘る信号値(デジタル電圧値)と時間との関係の一例を示す図である。上記と同様に第N周期の入射期間の出力強度信号Sに含まれる第(N−1)周期の入射期間の出力強度信号SN−1の影響を除去するための補正係数Bを、実験や計算で算出した。これにより、補正係数Bを用いることを見出した。また第N周期の遮光期間の出力強度信号DSに含まれる第N周期の入射期間の出力強度信号Sの影響を除去するための補正係数Cも、実験や計算で算出した。これにより、補正係数Cを用いることを見出した。
【0016】
また、第N周期の入射期間の出力強度信号Sが少ない光量を示すものであり、第(N−1)周期の入射期間の出力強度信号SN−1が多い光量を示すものであったとき(例えば、出力強度信号SN−1が出力強度信号Sの100倍以上の光量を示すものであったとき)には、第(N−1)周期の遮光期間の出力強度信号DSN−1と、第N周期の入射期間の出力強度信号Sと、第N周期の遮光期間の出力強度信号DSとは、第(N−1)周期の入射期間の出力強度信号SN−1の影響が主であると考えられる。つまり、第N周期の入射期間の出力強度信号Sが少ない光量を示すものであり、第(N−1)周期の入射期間の出力強度信号SN−1が多い光量を示すものであったときには、第N周期の入射期間の出力強度信号Sに含まれる第(N−1)周期の入射期間の出力強度信号SN−1の影響を除去するために、第(N−1)周期の遮光期間の出力強度信号DSN−1と第N周期の遮光期間の出力強度信号DSとを利用することができる。これらを用いて第N周期の入射期間の出力強度信号Sに含まれる第(N−1)周期の入射期間の出力強度信号SN−1の影響を除去するための補正係数Dを、実験や計算で算出した。これにより、補正係数Dを用いることを見出した。
【0017】
次に、ダブルビーム型の紫外可視分光光度計について検討を行った。図6及び図7は、ダブルビーム型の紫外可視分光光度計で得られた複数周期期間に亘る信号値(デジタル電圧値)と時間との関係の一例を示す図である。そして、シングルビーム型の紫外可視分光光度計と同様に補正係数E、F、G、Hを用いることを見出した。
【0018】
すなわち、本発明の分光光度計は、試料セルと、前記試料セルに測定光を出射する光源部と、前記試料セルを通過した測定光を検出する光検出器と、前記光検出器で得られた出力強度信号を記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶された出力強度信号Sに基づいて、透過率又は吸光度を算出する制御部とを備え、前記制御部は、第N周期の入射期間の出力強度信号Sに含まれる第(N−1)周期以前の入射期間の出力強度信号SN−1、SN−2、SN−3、・・・の影響を除去した第N周期の真出力強度信号sを算出するようにしている。
【0019】
ここで、「光検出器」とは、例えば、光電子増倍管や、PbS光導電素子や、フォトダイオード等が挙げられる。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、本発明の分光光度計によれば、第N周期の入射期間の出力強度信号Sに含まれる第(N−1)周期以前の入射期間の出力強度信号SN−1、SN−2、SN−3、・・・の影響を除去するので、測定精度を向上させることができる。
【0021】
(他の課題を解決するための手段および効果)
また、上記の発明において、前記記憶部は、第N周期の入射期間の出力強度信号Sに含まれる第(N−1)周期の入射期間の出力強度信号SN−1の影響を除去するための補正係数Aを記憶し、前記制御部は、下記式(1)を用いて第N周期の真出力強度信号sを算出するようにしてもよい。
=(S−SN−1×A) ・・・(1)
【0022】
ここで、「補正係数A」とは、第N周期の入射期間の出力強度信号Sに含まれる第(N−1)周期の入射期間の出力強度信号SN−1の影響を除去するためのものであり、波長λや検出器毎に実験的に若しくは計算で予め定められた数値や数式をいう。例えば各波長λにおいて光検出器への光入射後の出力強度信号変化を多数回測定し平均するという実験を行って求める。
【0023】
また、本発明の分光光度計は、前記光源部からの測定光が光検出器に一定周期で入射しないようにする遮光部を備え、一周期として入射期間と遮光期間とをこの順で実行する分光光度計であって、前記記憶部は、前記遮光部で遮光された遮光期間と、前記光検出器で得られた出力強度信号とを対応付けて記憶し、前記制御部は、前記記憶部に記憶された入射期間の出力強度信号Sと遮光期間の出力強度信号DSとに基づいて、透過率又は吸光度を算出するようにしている。
【0024】
また、上記の発明において、前記記憶部は、第N周期の入射期間の出力強度信号Sに含まれる第(N−1)周期の入射期間の出力強度信号SN−1の影響を除去するための補正係数Bを記憶し、前記制御部は、下記式(2)を用いて第N周期の真出力強度信号sを算出するようにしてもよい。
=(S−SN−1×B)−DS ・・・(2)
【0025】
ここで、「補正係数B」とは、遮光期間があることを考慮して第N周期の入射期間の出力強度信号Sに含まれる第(N−1)周期の入射期間の出力強度信号SN−1の影響を除去するためのものであり、波長λや検出器毎に実験的に若しくは計算で予め定められた数値や数式をいう。例えば各波長λにおいて光検出器への光入射後の出力強度信号変化を多数回測定し平均するという実験を行って求める。
【0026】
また、上記の発明において、前記記憶部は、第N周期の入射期間の出力強度信号Sに含まれる第(N−1)周期の入射期間の出力強度信号SN−1の影響を除去するための補正係数Bと、第N周期の遮光期間の出力強度信号DSに含まれる第N周期の入射期間の出力強度信号Sの影響を除去するための補正係数Cとを記憶し、前記制御部は、下記式(3)を用いて第N周期の真出力強度信号sを算出するようにしてもよい。
=(S−SN−1×B)−(DS−S×C) ・・・(3)
【0027】
ここで、「補正係数C」とは、第N周期の遮光期間の出力強度信号DSに含まれる第N周期の入射期間の出力強度信号Sの影響を除去するためのものであり、波長λや検出器毎に実験的に若しくは計算で予め定められた数値や数式をいう。例えば各波長λにおいて光検出器への光入射後の出力強度信号変化を多数回測定し平均するという実験を行って求める。
【0028】
また、上記の発明において、前記記憶部は、第N周期の入射期間の出力強度信号Sに含まれる第(N−1)周期の入射期間の出力強度信号SN−1の影響を除去するための補正係数Dを記憶し、前記制御部は、下記式(4)を用いて第N周期の真出力強度信号sを算出するようにしてもよい。
=S−(DSN−1−DS)×1/2×D−DS ・・・(4)
【0029】
ここで、「補正係数D」とは、第N周期の入射期間の出力強度信号Sが少ない光量を示すものであり、第(N−1)周期の入射期間の出力強度信号SN−1が多い光量を示すものであったとき(例えば、出力強度信号SN−1が出力強度信号Sの100倍以上の光量を示すものであったとき)に、第N周期の入射期間の出力強度信号Sに含まれる第(N−1)周期の入射期間の出力強度信号SN−1の影響を除去するためのものであり、波長λや検出器毎に実験的に若しくは計算で予め定められた数値や数式をいう。例えば各波長λにおいて光検出器への光入射後の出力強度信号変化を多数回測定し平均するという実験を行って求める。なお、SがSN−1より多い光量を示す場合には、計算される補正量((DSN−1−DS)×1/2×D)はSに対して小さく無視できるので、上記補正を適用したままでもよい。
【0030】
また、上記の発明において、参照セルと、前記参照セルを通過した測定光を検出する第二光検出器と、前記試料セルと参照セルとに測定光を振り分ける振分部とを備え、前記記憶部は、前記第二光検出器で得られた出力強度信号を記憶し、前記制御部は、前記記憶部に記憶された試料側出力強度信号Sと参照側出力強度信号Rとに基づいて、透過率又は吸光度を算出する分光光度計であって、前記制御部は、第N周期の参照側入射期間の出力強度信号Rに含まれる第(N−1)周期以前の参照側入射期間の出力強度信号RN−1、RN−2、RN−3、・・・の影響を除去した第N周期の参照側真出力強度信号rを算出するようにしてもよい。
【0031】
また、上記の発明において、前記記憶部は、第N周期の試料側入射期間の出力強度信号Sに含まれる第(N−1)周期の試料側入射期間の出力強度信号SN−1の影響を除去するための補正係数Eと、第N周期の参照側入射期間の出力強度信号Rに含まれる第(N−1)周期の参照側入射期間の出力強度信号RN−1の影響を除去するための補正係数E’とを記憶し、前記制御部は、下記式(5)を用いて第N周期の真出力強度信号sを算出するとともに、下記式(6)を用いて第N周期の参照側真出力強度信号rを算出するようにしてもよい。
=(S−SN−1×E) ・・・(5)
=(R−RN−1×E’) ・・・(6)
【0032】
ここで、「補正係数E」とは、第N周期の試料側入射期間の出力強度信号Sに含まれる第(N−1)周期の試料側入射期間の出力強度信号SN−1の影響を除去するためのものであり、波長λや検出器毎に実験的に若しくは計算で予め定められた数値や数式をいう。例えば各波長λにおいて光検出器への光入射後の出力強度信号変化を多数回測定し平均するという実験を行って求める。
また、「補正係数E’」とは、第N周期の参照側入射期間の出力強度信号Rに含まれる第(N−1)周期の参照側入射期間の出力強度信号RN−1の影響を除去するためのものであり、波長λや検出器毎に実験的に若しくは計算で予め定められた数値や数式をいう。例えば各波長λにおいて光検出器への光入射後の出力強度信号変化を多数回測定し平均するという実験を行って求める。なお、補正係数Eと同じものとしてもよい。
【0033】
また、本発明の分光光度計は、試料セルと、前記試料セルに測定光を出射する光源部と、前記試料セルを通過した測定光を検出する光検出器と、前記光源部からの測定光が光検出器に一定周期で入射しないようにする遮光部と、参照セルと、前記試料セルに代えて参照セルに測定光を一定周期で導くように変更可能な切替部と、前記遮光部で遮光された遮光期間と、前記切替部で光路を切り替えた切替期間と、前記光検出器で得られた出力強度信号とを対応付けて記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶された試料側入射期間の出力強度信号Sと試料側遮光期間の出力強度信号DSと参照側入射期間の出力強度信号Rと参照側遮光期間の出力強度信号DRとに基づいて、透過率又は吸光度を算出する制御部とを備え、一周期として試料側入射期間と試料側遮光期間と参照側入射期間と参照側遮光期間とをこの順で実行する分光光度計であって、前記制御部は、第N周期の試料側入射期間の出力強度信号Sに含まれる第(N−1)周期の参照側入射期間以前の出力強度信号RN−1、SN−1、RN−2、SN−2、・・・の影響を除去した第N周期の試料側真出力強度信号sを算出するとともに、第N周期の参照側入射期間の出力強度信号Rに含まれる第N周期の試料側入射期間以前の出力強度信号S、RN−1、SN−1、RN−2、・・・の影響を除去した第N周期の参照側真出力強度信号rを算出するようにしている。
【0034】
以上のように、本発明の分光光度計によれば、第N周期の試料側入射期間の出力強度信号Sに含まれる第(N−1)周期の参照側入射期間以前の出力強度信号RN−1、SN−1、RN−2、SN−2、・・・の影響を除去するとともに、第N周期の参照側入射期間の出力強度信号Rに含まれる第N周期の試料側入射期間以前の出力強度信号S、RN−1、SN−1、RN−2、・・・の影響を除去するので、測定精度を向上させることができる。
【0035】
また、上記の発明において、前記記憶部は、第N周期の試料側入射期間の出力強度信号Sに含まれる第(N−1)周期の参照側入射期間の出力強度信号RN−1の影響を除去するための補正係数Fと、第N周期の参照側入射期間の出力強度信号Rに含まれる第N周期の試料側入射期間の出力強度信号Sの影響を除去するための補正係数F’とを記憶し、前記制御部は、下記式(7)を用いて第N周期の試料側真出力強度信号sを算出するとともに、下記式(8)を用いて第N周期の参照側真出力強度信号rを算出するようにしてもよい。
=(S−RN−1×F)−DS ・・・(7)
=(R−S×F’)−DR ・・・(8)
【0036】
ここで、「補正係数F」とは、遮光期間があることを考慮して第N周期の試料側入射期間の出力強度信号Sに含まれる第(N−1)周期の参照側入射期間の出力強度信号RN−1の影響を除去するためのものであり、波長λや検出器毎に実験的に若しくは計算で予め定められた数値や数式をいう。例えば各波長λにおいて光検出器への光入射後の出力強度信号変化を多数回測定し平均するという実験を行って求める。
また、「補正係数F’」とは、遮光期間があることを考慮して第N周期の参照側入射期間の出力強度信号Rに含まれる第N周期の試料側入射期間の出力強度信号Sの影響を除去したりするためのものであり、波長λや検出器毎に実験的に若しくは計算で予め定められた数値や数式をいう。例えば各波長λにおいて光検出器への光入射後の出力強度信号変化を多数回測定し平均するという実験を行って求める。なお、補正係数Fと同じものとしてもよい。
【0037】
また、上記の発明において、前記記憶部は、第N周期の試料側入射期間の出力強度信号Sに含まれる第(N−1)周期の参照側入射期間の出力強度信号RN−1の影響を除去するための補正係数Fと、第N周期の参照側入射期間の出力強度信号Rに含まれる第N周期の試料側入射期間の出力強度信号Sの影響を除去するための補正係数F’と、第N周期の試料側遮光期間の出力強度信号DSに含まれる第N周期の試料側入射期間の出力強度信号Sの影響を除去するための補正係数Gと、第N周期の参照側遮光期間の出力強度信号DRに含まれる第N周期の参照側入射期間の出力強度信号Rの影響を除去するための補正係数G’とを記憶し、前記制御部は、下記式(9)を用いて第N周期の試料側真出力強度信号sを算出するとともに、下記式(10)を用いて第N周期の参照側真出力強度信号rを算出するようにしてもよい。
=(S−RN−1×F)−(DS−S×G) ・・・(9)
=(R−S×F’)−(DR−R×G’) ・・・(10)
【0038】
ここで、「補正係数G」とは、第N周期の試料側遮光期間の出力強度信号DSに含まれる第N周期の入射期間の出力強度信号Sの影響を除去するためのものであり、波長λや検出器毎に実験的に若しくは計算で予め定められた数値や数式をいう。例えば各波長λにおいて光検出器への光入射後の出力強度信号変化を多数回測定し平均するという実験を行って求める。
また、「補正係数G’」とは、第N周期の参照側遮光期間の出力強度信号DRに含まれる第N周期の参照側入射期間の出力強度信号Rの影響を除去するためのものであり、波長λや検出器毎に実験的に若しくは計算で予め定められた数値や数式をいう。例えば各波長λにおいて光検出器への光入射後の出力強度信号変化を多数回測定し平均するという実験を行って求める。なお、補正係数Gと同じものとしてもよい。
【0039】
また、上記の発明において、前記記憶部は、第N周期の試料側入射期間の出力強度信号Sに含まれる第(N−1)周期の参照側入射期間の出力強度信号RN−1の影響を除去するための補正係数Hと、第N周期の参照側入射期間の出力強度信号Rに含まれる第N周期の試料側入射期間の出力強度信号Sの影響を除去するための補正係数H’とを記憶し、前記制御部は、下記式(11)を用いて第N周期の試料側真出力強度信号sを算出するとともに、下記式(12)を用いて第N周期の参照側真出力強度信号rを算出するようにしてもよい。
=S−(DRN−1−DS)×1/2×H−DS ・・・(11)
=R−(DS−DR)×1/2×H’−DR ・・・(12)
【0040】
ここで、「補正係数H」とは、第N周期の入射期間の出力強度信号Sが少ない光量を示すものであり、第(N−1)周期の参照側入射期間の出力強度信号RN−1が多い光量を示すものであったとき(例えば、出力強度信号RN−1が出力強度信号Sの100倍以上の光量を示すものであったとき)に、第N周期の試料側入射期間の出力強度信号Sに含まれる第(N−1)周期の参照側入射期間の出力強度信号RN−1の影響を除去するためのものであり、波長λや検出器毎に実験的に若しくは計算で予め定められた数値や数式をいう。例えば各波長λにおいて光検出器への光入射後の出力強度信号変化を多数回測定し平均するという実験を行って求める。なお、SがRN−1より多い光量を示す場合には、計算される補正量((DRN−1−DS)×1/2×H)はSに対して小さく無視できるので、上記補正を適用したままでもよい。
また、「補正係数H’」とは、第N周期の参照側入射期間の出力強度信号Rが少ない光量を示すものであり、第N周期の試料側入射期間の出力強度信号Sが多い光量を示すものであったとき(例えば、出力強度信号Sが出力強度信号Rの100倍以上の光量を示すものであったとき)に、第N周期の参照側入射期間の出力強度信号Rに含まれる第N周期の試料側入射期間の出力強度信号Sの影響を除去するためのものであり、波長λや検出器毎に実験的に若しくは計算で予め定められた数値や数式をいう。例えば各波長λにおいて光検出器への光入射後の出力強度信号変化を多数回測定し平均するという実験を行って求める。なお、補正係数Hと同じものとしてもよい。なお、RがSより多い光量を示す場合には、計算される補正量((DS−DR)×1/2×H’)はRに対して小さく無視できるので、上記補正を適用したままでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の第一実施形態であるダブルビーム型の紫外可視分光光度計を示す概略構成図。
【図2】セクタ鏡の1回転の期間のタイミング図。
【図3】複数周期期間に亘る信号値と時間との関係の一例を示す図。
【図4】複数周期期間に亘る信号値と時間との関係の一例を示す図。
【図5】複数周期期間に亘る信号値と時間との関係の一例を示す図。
【図6】複数周期期間に亘る信号値と時間との関係の一例を示す図。
【図7】複数周期期間に亘る信号値と時間との関係の一例を示す図。
【図8】本発明の第二実施形態であるシングルビーム型の紫外可視分光光度計を示す概略構成図。
【図9】本発明の第三実施形態であるシングルビーム型の紫外可視分光光度計を示す概略構成図。
【図10】本発明の第四実施形態であるダブルビーム型の紫外可視分光光度計を示す概略構成図。
【図11】従来のダブルビーム型の紫外可視分光光度計を示す概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。なお、本発明は、以下に説明するような実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の態様が含まれることはいうまでもない。
【0043】
<第一実施形態>
図1は、本発明の第一実施形態であるダブルビーム型の紫外可視分光光度計を示す概略構成図である。なお、紫外可視分光光度計160と同様のものについては、同じ符号を付している。
紫外可視分光光度計60は、試料セル6と、参照セル8と、測定光を出射する光源1と分光器2とを有する光源部50と、光検出器12と、セクタ鏡(切替部、遮光部)40と、複数の反射鏡3、5、7、9、10、11と、光を透過しない筐体15と、インデクス信号発生部20と、アナログ−デジタル(A/D)変換器14と、紫外可視分光光度計60全体を制御するコンピュータ30とを備える。
【0044】
コンピュータ30においては、CPU(制御部)31やメモリ(記憶部)34を備え、さらにキーボードやマウス等を有する入力装置32と、表示装置33とが連結されている。また、CPU31が処理する機能をブロック化して説明すると、メモリ34に光検出器12からの出力強度信号を記憶させる記憶制御部31aと、透過率を算出する算出制御部31bとを有する。
【0045】
ここで、メモリ34には、式(7)と式(8)と式(20)と補正係数Fλ(Fλ1、Fλ2、Fλ3、・・・)とが予め記憶されている。
=(S−RN−1×Fλ)−DS ・・・(7)
=(R−S×Fλ)−DR ・・・(8)
透過率(%)=(s/r)/Z×100 ・・・(20)
Zは、対照として用いる試料(多くは水又は空気)を測定したときの(s/r)を予め記憶しておいたものである。
補正係数Fλは、第N周期の試料側入射期間の出力強度信号Sに含まれる第(N−1)周期の参照側入射期間の出力強度信号RN−1の影響を除去したり、第N周期の参照側入射期間の出力強度信号Rに含まれる第N周期の試料側入射期間の出力強度信号Sの影響を除去したりするためのものであり、波長λ、λ、λ、・・・毎に実験や計算で予め定められた数値である。例えば各波長λ、λ、λ、・・・において光検出器12への光入射後の出力強度信号変化を多数回測定し平均するという実験を行って求める。
また、式(7)は式(7’)としてもよい。通常は同じ状態での測定を複数周期繰り返すことが多く、周期Nが進んでも急激な光量変化が起こることは少ないため、RN−1=Rである。
=(S−R×Fλ)−DS ・・・(7’)
【0046】
算出制御部31bは、式(7)と式(8)と式(20)と補正係数Fλ1、Fλ2、Fλ3、・・・とにより透過率を算出する制御を行う。
具体的には、分光器2で取り出された測定光の波長λを取得して、第(N−1)周期において、出力強度信号RN−1に対応する検出値データD16〜D18の平均値を計算して、さらに第N周期において、出力強度信号Sに対応する検出値データD4〜D6、出力強度信号DSに対応する検出値データD10〜D12、出力強度信号Rに対応する検出値データD16〜D18、出力強度信号DRに対応する検出値データD21〜D24について、それぞれの平均値を計算し、式(7)と式(8)とに代入して第N周期の試料側真出力強度信号sと参照側真出力強度信号rとを求める。そして、第N周期の試料側真出力強度信号sと参照側真出力強度信号rとを式(20)に代入して第N周期の透過率を求める。また、第N周期において、出力強度信号Rに対応する検出値データD16〜D18の平均値を計算して、さらに第(N+1)周期において、出力強度信号SN+1に対応する検出値データD4〜D6、出力強度信号DSN+1に対応する検出値データD10〜D12、出力強度信号RN+1に対応する検出値データD16〜D18、出力強度信号DRN+1に対応する検出値データD21〜D24について、それぞれの平均値を計算し、式(7)と式(8)とに代入して第(N+1)周期の試料側真出力強度信号sと参照側真出力強度信号rとを求める。そして、第(N+1)周期の試料側真出力強度信号sと参照側真出力強度信号rとを式(20)に代入して第(N+1)周期の透過率を求める。このようにして第N周期の透過率を順次求めていく。
【0047】
以上のように、紫外可視分光光度計60によれば、第N周期の試料側入射期間の出力強度信号Sに含まれる第(N−1)周期の参照側入射期間の出力強度信号RN−1の影響を除去するとともに、第N周期の参照側入射期間の出力強度信号Rに含まれる第N周期の試料側入射期間の出力強度信号Sの影響を除去するので、測定精度を向上させることができる。
【0048】
<第二実施形態>
図8は、本発明の第二実施形態であるシングルビーム型の紫外可視分光光度計を示す概略構成図である。なお、紫外可視分光光度計160と同様のものについては、同じ符号を付している。
紫外可視分光光度計260は、試料セル6と、測定光を出射する光源1と分光器2とを有する光源部50と、光検出器12と、遮光部41と、複数の反射鏡3、5、9、11と、光を透過しない筐体15と、インデクス信号発生部20と、アナログ−デジタル(A/D)変換器14と、紫外可視分光光度計260全体を制御するコンピュータ230とを備える。
【0049】
コンピュータ230においては、CPU(制御部)231やメモリ(記憶部)234を備え、さらにキーボードやマウス等を有する入力装置32と、表示装置33とが連結されている。また、CPU231が処理する機能をブロック化して説明すると、メモリ234に光検出器12からの出力強度信号を記憶させる記憶制御部231aと、透過率を算出する算出制御部231bとを有する。
【0050】
ここで、メモリ234には、式(4)と式(21)と補正係数Dλ(Dλ1、Dλ2、Dλ3、・・・)とが予め記憶されている。
=S−(DSN−1−DS)×1/2×Dλ−DS ・・・(4)
透過率(%)=s/Z×100 ・・・(21)
Zは、対照として用いる試料(多くは水又は空気)を測定したときのsを予め記憶しておいたものである。
補正係数Dλは、第N周期の入射期間の出力強度信号Sに含まれる第(N−1)周期の入射期間の出力強度信号SN−1の影響を除去するためのものであり、波長λ、λ、λ、・・・毎に実験や計算で予め定められた数値である。例えば各波長λ、λ、λ、・・・において光検出器12への光入射後の出力強度信号変化を多数回測定し平均するという実験を行って求める。
【0051】
算出制御部231bは、式(4)と式(21)と補正係数Dλ1、Dλ2、Dλ3、・・・とにより透過率を算出する制御を行う。
具体的には、分光器2で取り出された測定光の波長λを取得して、第(N−1)周期において、出力強度信号DSN−1に対応する検出値データの平均値を計算するとともに、第N周期において、出力強度信号Sに対応する検出値データ、出力強度信号DSに対応する検出値データについて、それぞれの平均値を計算し、式(4)に代入して第N周期の試料側真出力強度信号sを求める。そして、第N周期の試料側真出力強度信号sを式(21)に代入して第N周期の透過率を求める。このようにして第N周期の透過率を順次求めていく。
【0052】
以上のように、紫外可視分光光度計260によれば、第N周期の入射期間の出力強度信号Sに含まれる第(N−1)周期の入射期間の出力強度信号SN−1の影響を除去するので、測定精度を向上させることができる。
【0053】
<第三実施形態>
図9は、本発明の第三実施形態である、入射期間と遮光期間とを一定周期で交互に持たないタイプのシングルビーム型の紫外可視分光光度計を示す概略構成図である。なお、紫外可視分光光度計160と同様のものについては、同じ符号を付している。
紫外可視分光光度計360は、試料セル6と、測定光を出射する光源1と分光器2とを有する光源部50と、光検出器12と、複数の反射鏡3、4、5、9、11と、光を透過しない筐体15と、インデクス信号発生部20と、アナログ−デジタル(A/D)変換器14と、紫外可視分光光度計360全体を制御するコンピュータ330とを備える。
【0054】
コンピュータ330においては、CPU(制御部)331やメモリ(記憶部)334を備え、さらにキーボードやマウス等を有する入力装置32と、表示装置33とが連結されている。また、CPU331が処理する機能をブロック化して説明すると、メモリ334に光検出器12からの出力強度信号を記憶させる記憶制御部331aと、透過率を算出する算出制御部331bとを有する。
【0055】
ここで、メモリ334には、式(1)と式(21)と補正係数Aλ(Aλ1、Aλ2、Aλ3、・・・)とが予め記憶されている。
=(S−SN−1×Aλ) ・・・(1)
透過率(%)=s/Z×100 ・・・(21)
Zは、対照として用いる試料(多くは水又は空気)を測定したときのsを予め記憶しておいたものである。
補正係数Aλは、第N周期の入射期間の出力強度信号Sに含まれる第(N−1)周期の入射期間の出力強度信号SN−1の影響を除去するためのものであり、波長λ、λ、λ、・・・毎に実験や計算で予め定められた数値である。例えば各波長λ、λ、λ、・・・において光検出器12への光入射後の出力強度信号変化を多数回測定し平均するという実験を行って求める。
【0056】
算出制御部331bは、式(1)と式(21)と補正係数Aλ1、Aλ2、Aλ3、・・・とにより透過率を算出する制御を行う。
具体的には、分光器2で取り出された測定光の波長λを取得して、第(N−1)周期において、出力強度信号SN−1に対応する検出値データの平均値を計算するとともに、第N周期において、出力強度信号Sに対応する検出値データの平均値を計算し、式(1)に代入して第N周期の真出力強度信号sを求める。そして、第N周期の真出力強度信号sを式(21)に代入して第N周期の透過率を求める。このようにして第N周期の透過率を順次求めていく。
【0057】
以上のように、紫外可視分光光度計360によれば、第N周期の入射期間の出力強度信号Sに含まれる第(N−1)周期の入射期間の出力強度信号SN−1の影響を除去するので、測定精度を向上させることができる。
【0058】
<第四実施形態>
図10は、本発明の第四実施形態である、入射期間と遮光期間とを一定周期で交互に持たないタイプのダブルビーム型の紫外可視分光光度計を示す概略構成図である。なお、紫外可視分光光度計160と同様のものについては、同じ符号を付している。
紫外可視分光光度計460は、試料セル6と、参照セル8と、測定光を出射する光源1と分光器2とを有する光源部50と、第一光検出器12と、第二光検出器13と、光束振分用ハーフミラー(振分部)42と、複数の反射鏡3、5、9、10と、光を透過しない筐体15と、インデクス信号発生部20と、アナログ−デジタル(A/D)変換器14と、紫外可視分光光度計460全体を制御するコンピュータ430とを備える。
【0059】
ハーフミラー42により試料側と参照側とに測定光の光量は二等分されて振り分けられる。試料側光束LSは、第一光検出器12に連続的に入射する。一方、参照側光束LRは、第二光検出器13に連続的に入射する。それぞれの光検出器12、13から見れば、入射期間と遮光期間とを一定周期で交互に持たないタイプのシングルビーム型の分光光度計の光検出器と同様な振る舞いをすることになる。
【0060】
コンピュータ430においては、CPU(制御部)431やメモリ(記憶部)434を備え、さらにキーボードやマウス等を有する入力装置32と、表示装置33とが連結されている。また、CPU431が処理する機能をブロック化して説明すると、メモリ434に光検出器12からの出力強度信号を記憶させる記憶制御部431aと、透過率を算出する算出制御部431bとを有する。
【0061】
ここで、メモリ434には、式(5)と式(6)と式(20)と補正係数Eλ(Eλ1、Eλ2、Eλ3、・・・)と補正係数E’λ(E’λ1、E’λ2、E’λ3、・・・)とが予め記憶されている。
=(S−SN−1×Eλ) ・・・(5)
=(R−RN−1×E’λ) ・・・(6)
透過率(%)=(s/r)/Z×100 ・・・(20)
Zは、対照として用いる試料(多くは水又は空気)を測定したときの(s/r)を予め記憶しておいたものである。
補正係数Eλは、第N周期の入射期間の試料側出力強度信号Sに含まれる第(N−1)周期の入射期間の試料側出力強度信号SN−1の影響を除去するためのものであり、波長λ、λ、λ、・・・毎に実験や計算で予め定められた数値である。例えば各波長λ、λ、λ、・・・において第一光検出器12への光入射後の出力強度信号変化を多数回測定し平均するという実験を行って求める。
また、補正係数E’λは、第N周期の入射期間の参照側出力強度信号Rに含まれる第(N−1)周期の入射期間の参照側出力強度信号RN−1の影響を除去するためのものであり、波長λ、λ、λ、・・・毎に実験や計算で予め定められた数値である。例えば各波長λ、λ、λ、・・・において第二光検出器13への光入射後の出力強度信号変化を多数回測定し平均するという実験を行って求める。
【0062】
算出制御部431bは、式(5)と式(6)と式(20)と補正係数Eλ1、Eλ2、Eλ3、・・・と補正係数E’λ1、E’λ2、E’λ3、・・・とにより透過率を算出する制御を行う。
具体的には、分光器2で取り出された測定光の波長λを取得して、第(N−1)周期において、試料側出力強度信号SN−1に対応する検出値データの平均値を計算するとともに、第N周期において、試料側出力強度信号Sに対応する検出値データの平均値を計算し、式(5)に代入して第N周期の試料側真出力強度信号sを求める。また、第(N−1)周期において、参照側出力強度信号RN−1に対応する検出値データの平均値を計算するとともに、第N周期において、参照側出力強度信号Rに対応する検出値データの平均値を計算し、式(6)に代入して第N周期の参照側真出力強度信号rを求める。そして、第N周期の試料側真出力強度信号sと参照側真出力強度信号rとを式(20)に代入して第N周期の透過率を求める。このようにして第N周期の透過率を順次求めていく。
【0063】
以上のように、紫外可視分光光度計460によれば、第N周期の入射期間の試料側出力強度信号Sに含まれる第(N−1)周期の入射期間の試料側出力強度信号SN−1の影響を除去するとともに、第N周期の入射期間の参照側出力強度信号Rに含まれる第(N−1)周期の入射期間の参照側出力強度信号RN−1の影響を除去するので、測定精度を向上させることができる。
【0064】
<他の実施形態>
(1)上述した紫外可視分光光度計60では、メモリ34には、式(7)と式(8)と式(20)と補正係数Fλ1、Fλ2、Fλ3、・・・とが予め記憶されており、算出制御部31bは、式(7)と式(8)と式(20)と補正係数Fλ1、Fλ2、Fλ3、・・・とにより透過率を算出するような構成を示したが、メモリには、式(9)と式(10)と式(20)と補正係数Fλ1、Fλ2、Fλ3、・・・、Gλ1、Gλ2、Gλ3、・・・とが予め記憶されており、算出制御部は、式(9)と式(10)と式(20)と補正係数Fλ1、Fλ2、Fλ3、・・・、Gλ1、Gλ2、Gλ3、・・・とにより透過率を算出するような構成としてもよく、メモリには、式(11)と式(12)と式(20)と補正係数Hλ1、Hλ2、Hλ3、・・・とが予め記憶されており、算出制御部は、式(11)と式(12)と式(20)と補正係数Hλ1、Hλ2、Hλ3、・・・とにより透過率を算出するような構成としてもよく、メモリには、式(7)〜(12)と式(20)と補正係数とが予め記憶されており、算出制御部は、式(7)〜(12)と式(20)と補正係数とを選択して透過率を算出するような構成としてもよい。
=(S−RN−1×F)−(DS−S×G) ・・・(9)
=(R−S×F)−(DR−R×G) ・・・(10)
=S−(DRN−1−DS)×1/2×H−DS ・・・(11)
=R−(DS−DR)×1/2×H−DR ・・・(12)
なお、第1周期に式(11)を用いる場合、式(11’)としてもよい。
また、第1周期に式(9)を用いる場合、式(9’)としてもよい。
=S−(DR−DS)×1/2×H−DS ・・・(11’)
=(S−R×F)−(DS−S×G) ・・・(9’)
【0065】
(2)上述した紫外可視分光光度計260では、メモリ234には、式(4)と式(21)と補正係数Dλ1、Dλ2、Dλ3、・・・とが予め記憶されており、算出制御部231bは、式(4)と式(21)と補正係数Dλ1、Dλ2、Dλ3、・・・とにより透過率を算出するような構成を示したが、メモリには、式(3)と式(21)と補正係数Bλ1、Bλ2、Bλ3、・・・、Cλ1、Cλ2、Cλ3、・・・とが予め記憶されており、算出制御部は、式(3)と式(21)と補正係数Bλ1、Bλ2、Bλ3、・・・、Cλ1、Cλ2、Cλ3、・・・とにより透過率を算出するような構成としてもよく、メモリには、式(2)と式(21)と補正係数Bλ1、Bλ2、Bλ3、・・・とが予め記憶されており、算出制御部は、式(2)と式(21)と補正係数Bλ1、Bλ2、Bλ3、・・・、とにより透過率を算出するような構成としてもよく、メモリには、式(1)〜(4)と式(21)と補正係数とが予め記憶されており、算出制御部は、式(1)〜(4)と式(21)と補正係数とを選択して透過率を算出するような構成としてもよい。
=(S−SN−1×B)−(DS−S×C) ・・・(3)
=(S−SN−1×B)−DS ・・・(2)
【0066】
(3)上述した紫外可視分光光度計60では、筐体15と離れた位置にコンピュータ30を備えるような構成を示したが、筐体と一体的にコンピュータを備えるような構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、例えば、ダブルビーム型やシングルビーム型の紫外可視分光光度計等に利用することができる。
【符号の説明】
【0068】
6 試料セル
12 光検出器
41 遮光部
50 光源部
31、231 CPU(制御部)
34、234 メモリ(記憶部)
60、260 紫外可視分光光度計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料セルと、
前記試料セルに測定光を出射する光源部と、
前記試料セルを通過した測定光を検出する光検出器と、
前記光検出器で得られた出力強度信号を記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された出力強度信号(S)に基づいて、透過率又は吸光度を算出する制御部とを備え、
前記制御部は、第N周期の入射期間の出力強度信号(SN)に含まれる第(N−1)周期以前の入射期間の出力強度信号(SN-1、SN-2、SN-3、・・・)の影響を除去した第N周期の真出力強度信号(sN)を算出することを特徴とする分光光度計。
【請求項2】
前記記憶部は、第N周期の入射期間の出力強度信号(SN)に含まれる第(N−1)周期の入射期間の出力強度信号(SN-1)の影響を除去するための補正係数(A)を記憶し、
前記制御部は、下記式(1)を用いて第N周期の真出力強度信号(sN)を算出することを特徴とする請求項1に記載の分光光度計。
=(S−SN−1×A) ・・・(1)
【請求項3】
前記光源部からの測定光が光検出器に一定周期で入射しないようにする遮光部を備え、一周期として入射期間と遮光期間とをこの順で実行する分光光度計であって、
前記記憶部は、前記遮光部で遮光された遮光期間と、前記光検出器で得られた出力強度信号とを対応付けて記憶し、
前記制御部は、前記記憶部に記憶された入射期間の出力強度信号(S)と遮光期間の出力強度信号(DS)とに基づいて、透過率又は吸光度を算出することを特徴とする請求項1に記載の分光光度計。
【請求項4】
前記記憶部は、第N周期の入射期間の出力強度信号(SN)に含まれる第(N−1)周期の入射期間の出力強度信号(SN-1)の影響を除去するための補正係数(B)を記憶し、
前記制御部は、下記式(2)を用いて第N周期の真出力強度信号(sN)を算出することを特徴とする請求項3に記載の分光光度計。
=(S−SN−1×B)−DS ・・・(2)
【請求項5】
前記記憶部は、第N周期の入射期間の出力強度信号(SN)に含まれる第(N−1)周期の入射期間の出力強度信号(SN-1)の影響を除去するための補正係数(B)と、第N周期の遮光期間の出力強度信号(DSN)に含まれる第N周期の入射期間の出力強度信号(SN)の影響を除去するための補正係数(C)とを記憶し、
前記制御部は、下記式(3)を用いて第N周期の真出力強度信号(sN)を算出することを特徴とする請求項3に記載の分光光度計。
=(S−SN−1×B)−(DS−S×C) ・・・(3)
【請求項6】
前記記憶部は、第N周期の入射期間の出力強度信号(SN)に含まれる第(N−1)周期の入射期間の出力強度信号(SN-1)の影響を除去するための補正係数(D)を記憶し、
前記制御部は、下記式(4)を用いて第N周期の真出力強度信号(sN)を算出することを特徴とする請求項3に記載の分光光度計。
=S−(DSN−1−DS)×1/2×D−DS ・・・(4)
【請求項7】
参照セルと、
前記参照セルを通過した測定光を検出する第二光検出器と、
前記試料セルと参照セルとに測定光を振り分ける振分部とを備え、
前記記憶部は、前記第二光検出器で得られた出力強度信号を記憶し、
前記制御部は、前記記憶部に記憶された試料側出力強度信号(S)と参照側出力強度信号(R)とに基づいて、透過率又は吸光度を算出する分光光度計であって、
前記制御部は、第N周期の参照側入射期間の出力強度信号(RN)に含まれる第(N−1)周期以前の参照側入射期間の出力強度信号(RN-1、RN-2、RN-3、・・・)の影響を除去した第N周期の参照側真出力強度信号(rN)を算出することを特徴とする請求項1に記載の分光光度計。
【請求項8】
前記記憶部は、第N周期の試料側入射期間の出力強度信号(SN)に含まれる第(N−1)周期の試料側入射期間の出力強度信号(SN-1)の影響を除去するための補正係数(E)と、第N周期の参照側入射期間の出力強度信号(RN)に含まれる第(N−1)周期の参照側入射期間の出力強度信号(RN-1)の影響を除去するための補正係数(E')とを記憶し、
前記制御部は、下記式(5)を用いて第N周期の真出力強度信号(sN)を算出するとともに、下記式(6)を用いて第N周期の参照側真出力強度信号(rN)を算出することを特徴とする請求項7に記載の分光光度計。
=(S−SN−1×E) ・・・(5)
=(R−RN−1×E’) ・・・(6)
【請求項9】
試料セルと、
前記試料セルに測定光を出射する光源部と、
前記試料セルを通過した測定光を検出する光検出器と、
前記光源部からの測定光が光検出器に一定周期で入射しないようにする遮光部と、
参照セルと、
前記試料セルに代えて参照セルに測定光を一定周期で導くように変更可能な切替部と、
前記遮光部で遮光された遮光期間と、前記切替部で光路を切り替えた切替期間と、前記光検出器で得られた出力強度信号とを対応付けて記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された試料側入射期間の出力強度信号(S)と試料側遮光期間の出力強度信号(DS)と参照側入射期間の出力強度信号(R)と参照側遮光期間の出力強度信号(DR)とに基づいて、透過率又は吸光度を算出する制御部とを備え、
一周期として試料側入射期間と試料側遮光期間と参照側入射期間と参照側遮光期間とをこの順で実行する分光光度計であって、
前記制御部は、第N周期の試料側入射期間の出力強度信号(SN)に含まれる第(N−1)周期の参照側入射期間以前の出力強度信号(RN-1、SN-1、RN-2、SN-2、・・・)の影響を除去した第N周期の試料側真出力強度信号(sN)を算出するとともに、第N周期の参照側入射期間の出力強度信号(RN)に含まれる第N周期の試料側入射期間以前の出力強度信号(SN、RN-1、SN-1、RN-2、・・・)の影響を除去した第N周期の参照側真出力強度信号(rN)を算出することを特徴とする分光光度計。
【請求項10】
前記記憶部は、第N周期の試料側入射期間の出力強度信号(SN)に含まれる第(N−1)周期の参照側入射期間の出力強度信号(RN-1)の影響を除去するための補正係数(F)と、第N周期の参照側入射期間の出力強度信号(RN)に含まれる第N周期の試料側入射期間の出力強度信号(SN)の影響を除去するための補正係数(F')とを記憶し、
前記制御部は、下記式(7)を用いて第N周期の試料側真出力強度信号(sN)を算出するとともに、下記式(8)を用いて第N周期の参照側真出力強度信号(rN)を算出することを特徴とする請求項9に記載の分光光度計。
=(S−RN−1×F)−DS ・・・(7)
=(R−S×F’)−DR ・・・(8)
【請求項11】
前記記憶部は、第N周期の試料側入射期間の出力強度信号(SN)に含まれる第(N−1)周期の参照側入射期間の出力強度信号(RN-1)の影響を除去するための補正係数(F)と、第N周期の参照側入射期間の出力強度信号(RN)に含まれる第N周期の試料側入射期間の出力強度信号(SN)の影響を除去するための補正係数(F')と、第N周期の試料側遮光期間の出力強度信号(DSN)に含まれる第N周期の試料側入射期間の出力強度信号(SN)の影響を除去するための補正係数(G)と、第N周期の参照側遮光期間の出力強度信号(DRN)に含まれる第N周期の参照側入射期間の出力強度信号(RN)の影響を除去するための補正係数(G')とを記憶し、
前記制御部は、下記式(9)を用いて第N周期の試料側真出力強度信号(sN)を算出するとともに、下記式(10)を用いて第N周期の参照側真出力強度信号(rN)を算出することを特徴とする請求項9に記載の分光光度計。
=(S−RN−1×F)−(DS−S×G) ・・・(9)
=(R−S×F’)−(DR−R×G’) ・・・(10)
【請求項12】
前記記憶部は、第N周期の試料側入射期間の出力強度信号(SN)に含まれる第(N−1)周期の参照側入射期間の出力強度信号(RN-1)の影響を除去するための補正係数(H)と、第N周期の参照側入射期間の出力強度信号(RN)に含まれる第N周期の試料側入射期間の出力強度信号(SN)の影響を除去するための補正係数(H')とを記憶し、
前記制御部は、下記式(11)を用いて第N周期の試料側真出力強度信号(sN)を算出するとともに、下記式(12)を用いて第N周期の参照側真出力強度信号(rN)を算出することを特徴とする請求項9に記載の分光光度計。
=S−(DRN−1−DS)×1/2×H−DS ・・・(11)
=R−(DS−DR)×1/2×H’−DR ・・・(12)

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−3090(P2013−3090A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−137302(P2011−137302)
【出願日】平成23年6月21日(2011.6.21)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】