説明

分光機器の較正システム、較正方法、分光システムおよび分光方法

【課題】
周波数コム光を利用して分光機器の較正を高精度で行う技術、較正がなされた分光機器を用いて高精度分光を行なう分光技術を提供することである。
【解決手段】
周波数安定化光源からの光を周波数シフタに入射して、当該周波数シフタから周波数シフト量設定値に応じて“周波数がシフトした複数の光”を順次出射し、周波数コム光発生器からコム周波数間隔が高精度に設定された中心角周波数が異なる周波数コム光を順次生成し、分光機器に異なる周波数シフト量設定値ごとに順次入射して、“近接する2つの特定コム”のそれぞれについて、“周波数がシフトした複数のコム”の光スペクトルを、所定のサンプリング周波数間隔で順次検出し、分光機器から、前記“近接する2つの特定コム”のそれぞれについての“周波数がシフトした複数のコム”の光スペクトルデータを取得して周波数較正演算を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光のスペクトルを測定するきわめて汎用的な測定機器である分光機器の測定精度を高める技術に関し、具体的には、周波数コム光を利用して分光機器の高精度較正を行う分光機器の較正方法,較正システム、および、前記較正がなされた分光機器を用いて高精度分光を行なう分光方法,分光システム、分光機器に周波数シフトした光を複数回順次入射して複数回の光強度検出を行いこれらの結果を用いて周波数分解能を高める分光方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高分解能かつ高確度な分光システムや光周波数検出システムは、基礎科学から応用まで幅広いニーズがある。たとえば、光周波数検出装置は、半導体レーザ、半導体レーザを用いた光伝送装置の光周波数の測定、光ネットワークを伝播する光周波数の測定等に使用される。また、分光器は、物質の吸収スペクトルの測定等に用いられる。
【0003】
一般的な分光システム5は、図10の基本構成図に示すように、光Sを生成する光源51と、試料54を介して光を入射する分光器52と、演算装置53(具体的にはPC)とからなる。このよう分光システム5の改良技術として、本願発明者の発明にかかる特許文献1(「光周波数検出装置、光スペクトラムアナライザおよび光信号処理装置」)、特許文献2(「光スペクトル計測装置」)に記載の装置が知られており、これらの装置によれば、MHzオーダの分解能を達成できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−212427
【特許文献2】特願2009−163206
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1および特許文献2に記載の装置は、通常の回折格子などを用いた分光器とは異なる特殊な構成をなし、光スペクトルの測定には、ヘテロダイン法など特殊な方法が用いられる。このため、汎用性に乏しく、また装置が高価となるという問題がある。
【0006】
ところで、汎用的な分光機器で、当該分光機器の分解能より細いスペクトル(レーザ発振スペクトルなどは数MHz)を測ったとき、分解能の周波数幅(一般に数GHz程度)まで広がってしまう。
【0007】
また、汎用的な分光機器のサンプリング周波数間隔を小さくするには限界がある。一般に、サンプリング周波数間隔の下限は分解能周波数幅の1/3〜1/10程度である。そのため、レーザ発振スペクトルや細い吸収線スペクトルのピークを、精確に決めることができず、せいぜいサンプリング周波数間隔の半分程度である。
【0008】
本発明の目的は、周波数コム光を利用して分光機器の較正を高精度で行う較正システム,較正方法を提供することである。
【0009】
本発明の他の目的は、較正がなされた分光機器を用いて高精度分光を行なう分光装置,分光方法を提供することである。
【0010】
本発明のさらに他の目的は、分光機器に周波数シフトした光を複数回順次入射して複数回の光強度検出を行いこれらの結果を用いて周波数分解能を高める分光方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の分光機器の較正システムは(1)から(3)を要旨とする。
(1)
分光機器の周波数較正に適用される較正システムであって、
周波数安定化光源と、前記周波数安定化光源からの光を入射して、周波数シフト量設定値に応じて周波数がシフトした複数の光を順次出射する周波数シフタと、当該周波数シフタからの光を順次入射し、コム周波数間隔が高精度に設定された中心角周波数が異なる周波数コム光を順次生成する周波数コム光発生器とを備えた較正用光源と、
前記周波数コム光発生器からの周波数コム光を、異なる周波数シフト量設定値ごとに被較正対象である分光機器に順次入射して、“近接する2つの特定コム”のそれぞれについて、“周波数がシフトした複数のコム”の光スペクトルを、所定のサンプリング周波数間隔で順次検出する前記分光機器と、
前記分光機器から、前記“近接する2つの特定コム”のそれぞれについての“周波数がシフトした複数のコム”の光スペクトルデータを取得して周波数較正演算を行う演算部を有する演算制御装置と、
を備え、
前記演算部は、
(a)前記“近接する2つの特定コム”のそれぞれについて、
前記分光機器によりそれぞれ検出した、前記“周波数がシフトした複数のコム”の各光スペクトルデータから、周波数が当該周波数シフト量だけ逆シフトした“新たな光スペクトルデータ”をそれぞれ生成し、
これらの“新たな光スペクトルデータ”を重ね合わせて、サンプリング点が増加した高密度光サンプリングデータを生成し、この高密度光サンプリングデータについて曲線フィッティングを行うことで精密波形を生成し、
(b)前記“近接する2つの特定コム”に対応する2つの精密波形同士の相互相関を計算することで、前記“近接する2つの特定コム”の周波数間隔実測値を求め、得られた周波数間隔実測値を、前記周波数コム光発生器において高精度に設定されたコム周波数間隔の値と比較して、前記分光機器のサンプリング周波数間隔の誤差を較正する、
ことを特徴とする分光機器の較正システム。
【0012】
(2)
周波数シフト量FUが、
0×fu,1×fu,2×fu,3×fu,・・・,(N−1)×fu
または、
0+0×fu、f0+1×fu、f0+2×fu、f0+3×fu、・・・、f0+(N−1)×fu
u:単位周波数シフト量
0:オフセット量
として順次設定されていることを特徴とする(1)に記載の分光機器の較正システム。
【0013】
(3)
単位周波数シフト量fuがサンプリング周波数間隔fsの1/4から1/10000倍以上であることを特徴とする(2)に記載の分光機器の較正システム。
【0014】
本発明の分光機器の較正システムは(4)から(6)を要旨とする。
(4)
分光機器の周波数較正に適用される較正方法であって、
周波数安定化光源からの光を周波数シフタに入射して、当該周波数シフタから周波数シフト量設定値に応じて“周波数がシフトした複数の光”を順次出射するステップ、
周波数コム光発生器に前記周波数シフタからの光を順次入射し、前記周波数コム光発生器からコム周波数間隔が高精度に設定された中心角周波数が異なる周波数コム光を順次生成するステップ、
分光機器に前記周波数コム光発生器から、異なる周波数シフト量設定値ごとに被較正対象である分光機器に順次入射して、“近接する2つの特定コム”のそれぞれについて、“周波数がシフトした複数のコム”の光スペクトルを、所定のサンプリング周波数間隔で順次検出するステップ、
前記分光機器から、前記“近接する2つの特定コム”のそれぞれについての“周波数がシフトした複数のコム”の光スペクトルデータを取得して周波数較正演算を行うステップ、
を有し、
前記周波数較正演算を行うステップは、
(a)前記“近接する2つの特定コム”のそれぞれについて、
前記分光機器によりそれぞれ検出した、前記“周波数がシフトした複数のコム”の各光スペクトルデータから、周波数が当該周波数シフト量だけ逆シフトした“新たな光スペクトルデータ”をそれぞれ生成するステップ、
これらの“新たな光スペクトルデータ”を重ね合わせて、サンプリング点が増加した高密度光サンプリングデータを生成するステップ、
この高密度光サンプリングデータについて曲線フィッティングを行うことで精密波形を生成するステップ、
(b)前記“近接する2つの特定コム”に対応する2つの精密波形同士の相互相関を計算することで、前記“近接する2つの特定コム”の周波数間隔実測値を求めるステップ、
得られた周波数間隔実測値を、前記周波数コム光発生器において高精度に設定されたコム周波数間隔の値と比較して、前記分光機器のサンプリング周波数間隔の誤差を較正するステップ、
を含む、
ことを特徴とする分光機器の較正方法。
【0015】
(5)
周波数シフト量FUが、
0×fu,1×fu,2×fu,3×fu,・・・,(N−1)×fu
または、
0+0×fu、f0+1×fu、f0+2×fu、f0+3×fu、・・・、f0+(N−1)×fu
u:単位周波数シフト量
0:オフセット量
として順次設定されていることを特徴とする(4)に記載の分光機器の較正方法。
【0016】
(6)
単位周波数シフト量fuがサンプリング周波数間隔fsの1/4から1/10000倍以上であることを特徴とする(5)に記載の分光機器の較正方法。
【0017】
本発明の分光機器の分光システムは(7)から(10)を要旨とする。
(7)
試料を介して広帯域光源からの光を入射し、周波数シフト量設定値に応じて“周波数がシフトした複数の光”を順次出射する周波数シフタが分光機器の前段に設けられ、かつ、(1)に記載の較正システムが組み込まれ、当該較正システムにより前記分光機器の較正がなされている分光システムであって、
前記周波数シフタからの光を、異なる周波数シフト量設定値ごとに前記分光機器に順次入射して、前記“周波数がシフトした複数の光”の光スペクトルを、所定のサンプリング周波数間隔で順次検出する分光機器と、
前記分光機器から、前記“周波数がシフトした複数の光”の光スペクトルデータを取得してサンプリング点を増加する処理を行う演算部を有する演算制御装置と、
を備え、
前記演算部は、
前記分光機器によりそれぞれ検出した、前記“周波数がシフトした複数の光”の各光スペクトルデータから、周波数が当該周波数シフト量だけ逆シフトした“新たな光スペクトルデータ”をそれぞれ生成し、
これらの新たな光スペクトルデータを重ね合わせて、サンプリング点が増加した高密度光サンプリングデータを生成し、この高密度光サンプリングデータについて曲線フィッティングを行うことで、前記試料を介して入射した光の精密なスペクトル波形とピークを測定する、
ことを特徴とする分光機器の分光システム。
【0018】
(8)
周波数シフト量FUが、
0×fu,1×fu,2×fu,3×fu,・・・,(N−1)×fu
または、
0+0×fu、f0+1×fu、f0+2×fu、f0+3×fu、・・・、f0+(N−1)×fu
u:単位周波数シフト量
0:オフセット量
として順次設定されていることを特徴とする(7)に記載の分光機器の分光システム。
【0019】
(9)
単位周波数シフト量fuがサンプリング周波数間隔fsの1/4から1/10000倍以上であることを特徴とする(8)に記載の分光機器の分光システム。
【0020】
(10)
周波数シフタが、(1)に記載の周波数シフタと共用されることを特徴とする(7)に記載の分光機器の分光システム。
【0021】
本発明の分光機器の分光方法は(11)から(14)、および(15)から(18)を要旨とする。
(11)
(4)に記載の較正方法により較正がなされている分光機器に、広帯域光源からの光を、試料を介して入射して分光測定を行う分光方法であって
広帯域光源からの光を、試料を介して周波数シフタに入射して、当該周波数シフタから周波数シフト量設定値に応じて“周波数がシフトした複数の光”を順次出射するステップ
前記周波数シフタからの光を、異なる周波数シフト量設定値ごとに前記分光機器に順次入射して、前記“周波数がシフトした複数の光”の光スペクトルを、所定のサンプリング周波数間隔で順次検出するステップ、
前記分光機器から、前記“周波数がシフトした複数の光”の光スペクトルデータを取得してサンプリング点を増加する処理を行うステップ、
を有し、
前記サンプリング点を増加する処理を行うステップは、
前記分光機器によりそれぞれ検出した、前記“周波数がシフトした複数の光”の各光スペクトルデータから、周波数が当該周波数シフト量だけ逆シフトした“新たな光スペクトルデータ”をそれぞれ生成するステップ、
これらの新たな光スペクトルデータを重ね合わせて、サンプリング点が増加した高密度光サンプリングデータを生成し、この高密度光サンプリングデータについて曲線フィッティングを行うことで、前記試料を介して入射した光の精密なスペクトル波形とピークを測定するステップ、
を含むことを特徴とする分光機器の分光方法。
【0022】
(12)
周波数シフト量FUが、
0×fu,1×fu,2×fu,3×fu,・・・,(N−1)×fu
または、
0+0×fu、f0+1×fu、f0+2×fu、f0+3×fu、・・・、f0+(N−1)×fu
u:単位周波数シフト量
0:オフセット量
として順次設定されていることを特徴とする(11)に記載の分光機器の分光方法。
【0023】
(13)
単位周波数シフト量fuがサンプリング周波数間隔fsの1/4から1/10000倍以上であることを特徴とする(12)に記載の分光機器の分光方法。
【0024】
(14)
周波数シフタが、(4)に記載の方法において使用した周波数シフタと共用されることを特徴とする(11)に記載の分光機器の分光方法。
【0025】
(15)
光源からの光を入射して、周波数シフト量設定値に応じて周波数がシフトした複数の光を順次生成(シフト量がゼロも含む)する周波数シフト光取得ステップ、
周波数がシフトした前記複数の光を、所定のサンプリング周波数間隔で順次検出する周波数検出ステップ、
周波数検出ステップにおける検出の結果を取得して、前記サンプリング周波数間隔よりも高い精度のサンプリングデータを生成する高精度サンプリングデータ生成ステップ、
を有する分光機器の高分解能分光方法であって、
前記高精度サンプリングデータ生成ステップでは、
前記周波数検出ステップにおいてそれぞれ検出した、周波数がシフトした前記複数の光についての各光スペクトルデータから、周波数が当該周波数シフト量だけ逆シフトした新たな光スペクトルデータをそれぞれ生成する新光スペクトルデータ生成ステップ、
これらの新たな光スペクトルデータを重ね合わせることで、前記光源からの光についてのサンプリング点が増えた光スペクトルデータを生成するサンプリング点増加ステップ、
を含むことを特徴とする分光機器の分光方法。
【0026】
(16)
周波数シフト量FUが、
0×fu,1×fu,2×fu,3×fu,・・・,(N−1)×fu
または、
0+0×fu、f0+1×fu、f0+2×fu、f0+3×fu、・・・、f0+(N−1)×fu
u:単位周波数シフト量
0:オフセット量
として順次設定されていることを特徴とする(15)に記載の分光機器の分光システム。
【0027】
(17)
単位周波数シフト量fuがサンプリング周波数間隔fsの1/4から1/10000倍以上であることを特徴とする(16)に記載の分光機器の分光方法。
【発明の効果】
【0028】
分解能以下の周波数精度でスペクトルのピークやスペクトルのシフトを検出できる。そのため、実質的に分光機器の分解能を向上したことと等価となる。また、高安定化した基準光源から広帯域なコムを発生させて周波数を較正するため、絶対的な周波数に較正でき、かつ広い波長範囲に渉って較正できる。
しかも、較正用光源を既存の分光機器にオプション的に取り付けて、本発明システムを構築できるので、低価格ですみ、また既存の分光機器の性能を向上させて、発光スペクトルも吸収スペクトルも高精度に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の、分光機器の較正システムの一実施形態を示す説明図である。
【図2】(A)に“近接する2つの特定コム”CMB11,CMB21を示し、(B)に分光器15のコムが、分解能の周波数幅δfまで広がった様子を示し、(C)にコムCMB11,CMB21のサンプリング測定結果を白丸で示し、(D)にCMB11の周波数が3段階でシフトしたCMB12,CMB13,CMB14およびCMB21の周波数が3段階でシフトしたCMB22,CMB23,CMB24を図示し、(E)に“新たな光スペクトルデータ”を重ね合わせて、サンプリング点が増加した高密度光サンプリングデータを示し、(F)に高密度光サンプリングデータについて曲線フィッティングを行うことで精密波形CMB’11,CMB’21を生成した例を示す。
【図3】(A)〜(E)は“近接する2つの特定コム”に対応する2つの精密波形同士の相互相関の計算原理を示す図であり、(F)は計算結果を示すグラフである。
【図4】本発明の分光機器の較正方法の一実施形態を示すフローチャートの前半を示す図である。
【図5】本発明の分光機器の較正方法の一実施形態を示すフローチャートの後半を示す図である。
【図6】本発明の分光機器の分光システムの実施形態を示す説明図である。
【図7】(A)に光Sが持っている吸収スペクトルとそのスペクトルを示し、(B)に光Sのサンプリング結果を白丸で示し、(C)に光Sの光スペクトルデータを上下反転させた波形を示し、(D)に光S(S0)および周波数が3段階でシフトしたS1,S2,S3を示し、(E)に“新たな光スペクトルデータ”を重ね合わせてサンプリング点が増加した高密度光サンプリングデータを示し、(F)に高密度光サンプリングデータについて曲線フィッティングを行うことで精密波形を生成した例を示す。
【図8】本発明の、分光機器の分光方法の一実施形態を示すフローチャートである。
【図9】被測定光源の発光スペクトルを測定する場合を示す図である。
【図10】従来の分光システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
《分光機器の較正システム》
図1は本発明の、分光機器の較正システムの一実施形態を示す説明図である。
図1において、較正システム1は分光器の周波数較正に適用されるものであり、周波数安定化光源11と、周波数シフタ12と、周波数コム光発生器13と光スイッチ(SW)14と、分光器15と、演算制御装置16とを備えている。
周波数安定化光源11は、基準となる安定した単一周波数の光(レーザ光)Lを生成することができる。
【0031】
周波数シフタ12は、周波数安定化光源11からの光Lを入射して、周波数シフト量設定値に応じて周波数がシフトした複数の光Lj(j=1,2,3,・・・,N)を順次出射することができる。
【0032】
周波数シフト量FUは、単位周波数シフト量をfuとして
0×fu、1×fu、2×fu、3×fu、・・・、(N−1)×fu
として順次設定される。単位周波数シフト量fuがサンプリング周波数間隔fsの1/4から1/10000倍以上である。
【0033】
周波数コム光発生器13は、周波数シフタ12からの光を順次入射し、コム周波数間隔fiが高精度に設定された中心角周波数が異なる周波数コム光FCを順次生成することができる。周波数安定化光源11と周波数シフタ12と周波数コム光発生器13とにより、較正用光源が較正される。
光スイッチ14は、本実施形態では較正用光源側からの光を分光器15に送出するようにセットされている。
【0034】
分光器(本発明における分光機器)15は、周波数コム光発生器13からの周波数コム光FCを、異なる周波数シフト量設定値(周波数シフト量FU)(0×fu,1×fu,2×fu,・・・,(N−1)×fu)ごとに順次入射して、“近接する2つの特定コム”のそれぞれについて、“周波数がシフトした複数のコム”の光スペクトルを、所定のサンプリング周波数間隔fsで順次検出する。
【0035】
図2(A)に“近接する2つの特定コム”CMB11,CMB21を示す。図2(B)に、分光器15のコムが、分解能の周波数幅δfまで広がった様子を示す。図2(C)にコムCMB11,CMB21のサンプリング測定結果を白丸で示し、図2(D)に、CMB11の周波数が3段階でシフトしたCMB12,CMB13,CMB14およびCMB21の周波数が3段階でシフトした“新たな光スペクトルデータ”CMB22,CMB23,CMB24を、白四角、白三角および白菱形で図示する。図2(E)に、“新たな光スペクトルデータ”を重ね合わせて、サンプリング点が増加した高密度光サンプリングデータを示す。図2(F)に、高密度光サンプリングデータについて曲線フィッティングを行うことで精密波形CMB’11,CMB’21を生成した例を示す。本実施形態では、単位周波数シフト量fuはサンプリング周波数間隔fsの1/4としたが、実際にはfuをもっと密にとることが好ましい。
【0036】
演算制御装置16は演算部161と、制御部162と、記憶装置163を有している。制御部162は、周波数シフタ12や周波数シフト量設定値のセット等を行うとともに、周波数コム光発生器13に内蔵されたマイクロ波発生器を駆動し、さらに光スイッチ14を制御する。記憶装置163には、分光器15の検出データ等を一時的に格納することができる。
演算部161は、分光器15から、“近接する2つの特定コム”のそれぞれについての“周波数がシフトした複数のコム”の光スペクトルデータDを取得して周波数較正演算を行う。
【0037】
すなわち、演算部161は、“近接する2つの特定コム”CMB11,CMB21のそれぞれについて、分光器15によりそれぞれ検出した、“周波数がシフトした複数のコム”CMB11〜CMB14,CMB21〜CMB24の各光スペクトルデータから、周波数が当該周波数シフト量FUだけ逆シフトした“新たな光スペクトルデータ”をそれぞれ生成する。そして、これらの“新たな光スペクトルデータ”を重ね合わせて、サンプリング点が増加した高密度光サンプリングデータを生成し、この高密度光サンプリングデータについて曲線フィッティングを行うことで精密波形CMB’11,CMB’21を生成する。図2(E)に“新たな光スペクトルデータ”を重ね合わせた様子を示し、図2(F)に曲線フィッティングの結果を示す。
【0038】
次に演算部161は、に示すように、“近接する2つの特定コム”CMB11,CMB21に対応する2つの精密波形CMB’11,CMB’21同士(図3(A)〜(E))の相互相関を計算することで(図3(F)参照)、“近接する2つの特定コム”CMB11,CMB21の周波数間隔実測値を求め、得られた周波数間隔実測値を、周波数コム光発生器13において高精度に設定されたコム周波数間隔fiの値と比較して、分光器15のサンプリング周波数間隔の誤差を較正する。周波数が大きく異なると誤差の値も変わるのが一般的であるから、上記の較正プロセスをいくつかの周波数帯で行って、各周波数帯での較正値を求めておく。
【0039】
《分光機器の較正方法》
図4および図5は、本発明の分光機器の較正方法の一実施形態を示すフローチャートである。この較正方法は、広帯域光源からの光を、試料を介して入射し、分光を行う分光機器の周波数較正に適用される較正方法であり、図1に示した分光機器の較正システム1の実施に適用される基本的には、分光機器の較正システム1の説明に際して既に述べているので、以下に較正手順のみを、図1から図3を参照しながら図4および図5のフローチャートにより示す。
【0040】
まず、制御部162は、制御レジスタの値jを「0」にセットし(S101)、周波数安定化光源11が生成する光Lから周波数シフト量設定値FU(=j×fu)に応じて周波数がシフトした光Ljを生成する(S102)。ここでは、制御レジスタの値が「0」であるので、周波数シフタ12による周波数シフト量設定値(周波数シフト量FU)が0(FU=0×fu)であり、周波数安定化光源11からの光Lは、周波数シフトを受けることなく周波数コム光発生器13に入射される(周波数シフトを受けない光LをL0とする)。
【0041】
光L0は、周波数コム光発生器13に入射され、周波数コム光発生器13は、コム周波数間隔fiが高精度に設定された周波数コム光FC1を生成する(S103)。周波数コム光FC1のコム周波数間隔fiは、内蔵されたマイクロ波発生器により高精度に設定されている。
【0042】
つぎに、分光器15を用いて、周波数コム光FC1の≡近接する2つの特定コム≡CMB10,CMB20について光スペクトルを測定して、測定結果(光スペクトルデータI0)を記憶装置DS1に格納する(S104)。
【0043】
以上の処理は、制御レジスタの値jがN未満である場合に行われる。すなわち、制御レジスタの値jが、(N−1)に達したかが判断される(S105)。この場合には、制御レジスタの値jは「0」であるので、jは、「0」から「1」にインクリメントされる(S106)。
【0044】
制御レジスタの値jが「1」にセットされると、周波数シフタ12からは、周波数シフト量が1×fuの光L1が生成される(S102)。すなわち、制御レジスタの値jが「1」のときは、周波数シフタ12による周波数シフト量設定値(周波数シフト量FU)が1×fuであり、周波数安定化光源11からの光Lは、この周波数シフトを受けて周波数コム光発生器13に光L1として入射される。
光L1は、周波数コム光発生器13に入射され、周波数コム光発生器13は、コム周波数間隔fiが高精度に設定された周波数コム光FC1を生成する(S103)。
【0045】
つぎに、分光器15を用いて、周波数コム光FC1の≡近接する2つの特定コム≡CMB11,CMB21について光スペクトルを測定して、測定結果(光スペクトルデータI1)を記憶装置DS1に格納する(S104)。
【0046】
既に述べたように、以上の処理は、制御レジスタの値jがN未満である場合に行われる。すなわち、制御レジスタの値jが、(N−1)に達したかが判断される(S105)。この場合には、制御レジスタの値jは「1」であるので、jは「1」から「2」にインクリメントされる(S106)。
【0047】
以上の処理が、j=N−1となるまで行われると、処理は、次の周波数較正演算処理に渡される。
すなわち、周波数較正演算処理では、まずレジスタの値kが「1」にセットされる(S107)。
【0048】
演算部161は、“近接する2つの特定コム”CMB10,CMB20のそれぞれについて、分光器15により検出した、光スペクトルデータI1から、周波数が当該周波数シフト量だけ逆シフトした“新たな光スペクトルデータ”I’1を生成し記憶装置DS2に格納する(S108)。
【0049】
この処理は、演算レジスタの値kがN未満である場合に行われる。すなわち、演算レジスタの値kが、(N−1)に達したかが判断される(S109)。この場合には、演算レジスタの値kは「1」であるので、kは、「1」から「2」にインクリメントされる(S110)。
【0050】
演算部161は、演算レジスタの値kが「2」にセットされると、記憶装置DS1に格納されている、“近接する2つの特定コム”CMB11,CMB21のそれぞれについての光スペクトルデータI2から、周波数が当該周波数シフト量だけ逆シフトした“新たな光スペクトルデータ”I’2を生成し、記憶装置DS2に格納する(S108)。
【0051】
以下、同様にして光スペクトルデータIN-1から、記憶装置DS1に格納されている、“近接する2つの特定コム”CMB1(N-1),CMB2(N-1)のそれぞれについての光スペクトルデータIN-1から周波数が当該周波数シフト量だけ逆シフトした“新たな光スペクトルデータ”I’N-1を生成し記憶装置DS2に格納する(S108)。
【0052】
記憶装置DS1に格納されている測定結果(光スペクトルデータI0)と、記憶装置DS2に格納されている“新たな光スペクトルデータ”I’1,I’2,・・・,I’N-1を重ね合わせて、サンプリング点が増加した高密度光サンプリングデータ(図2(E)参照)を生成する(S111)。
【0053】
この高密度光サンプリングデータについて曲線フィッティングを行うことで“近接する2つの特定コム”に対応する2つの精密波形CMB’1,CMB’2を生成する(S112)(図2(F)参照)。
【0054】
“近接する2つの特定コム”に対応する2つの精密波形CMB’1,CMB’2同士の相互相関を計算することで、“近接する2つの特定コム”CMB1,CMB2の周波数間隔実測値を求める(S113)(図3参照)。
【0055】
得られた周波数間隔実測値を、前記周波数コム光発生器において高精度に設定されたコム周波数間隔の値と比較して、前記分光機器のサンプリング周波数間隔の誤差を較正する(S113)。
【0056】
上記の実施形態では、“近接する2つの特定コム”CMB1,CMB2の較正を行う場合を述べた。上記の測定に際して、“近接する2つの特定コム”として、CMB1,CMB2を採用したが、CMB1,CMB3やCMB1,CMB4(CMB3,CMB4は、CMB1の近傍の周波数帯のCMB2とは異なる周波数)といったについて測定することができる。また、“近接する2つの特定コム”CMB1,CMB2の較正を行うと同時に、CMB1から遠く離れた他の周波数帯についても同時に較正することができる。
さらに、上記の例では、周波数シフト量設定値をj×fuとしたが、これらにオフセットf0を付加して、周波数シフト量設定値をf0+j×fuとすることができる。
【0057】
《分光機器の分光システム》
図6は、本発明の分光機器の分光システムの実施形態を示す説明図である。
図6において、分光システム2は、広帯域光源21と、周波数シフタ22と、光スイッチ(SW)14と、分光器15と、演算制御装置16とを備えている。
【0058】
本実施形態では、周波数シフタ22は、試料30を介して広帯域光源21からの光S(試料のスペクトルが載っている)を入射し、周波数シフト量設定値に応じて“周波数がシフトした複数の光”Sを順次、分光器15に出射することができる。
【0059】
分光システム2には、図6に示すように、実施形態1に述べた較正システムが組み込まれ、分光器15には、較正システム1により較正がなされている。
【0060】
分光器15は、周波数シフタ22からの光を、異なる周波数シフト量設定値ごとに分光器15に順次入射して、“周波数がシフトした複数の光”の光スペクトルを、所定のサンプリング周波数間隔fsで順次検出する。
【0061】
図7(A)に、光Sが持っている吸収スペクトルとそのスペクトルを示す。図7(B)に、光Sのサンプリング結果を白丸で示す。マイナスピークは、プラスに反転させた方が処理がし易い。図7(C)に、光Sの光スペクトルデータを上下反転させた波形を示す。図7(D)に、光S(S0)および周波数が3段階でシフトしたS1,S2,S3を示す。図7(E)に、“新たな光スペクトルデータ”を重ね合わせて、サンプリング点が増加した高密度光サンプリングデータを示す。図7(F)に、高密度光サンプリングデータについて曲線フィッティングを行うことで精密波形を生成した例を示す。
本実施形態において、単位周波数シフト量fuは、サンプリング周波数間隔fsの1/4とした。
【0062】
演算制御装置16は、第1実施形態(図1)の演算制御装置16と同じであり、演算部161と、制御部162と、記憶装置163を有している。本実施形態では、制御部162は、周波数シフタ22や周波数シフト量設定値FUのセット等を行い、さらに光スイッチ14を制御する。記憶装置163には、第1実施形態と同様、分光器15の検出データ等を一時的に格納することができる。
【0063】
演算部161は、分光器15から、“周波数がシフトした複数の光”S0,S1,S2,S3の光スペクトルデータを取得してサンプリング点を増加する処理を行う。すなわち、演算部161は、分光器15によりそれぞれ検出した、“周波数がシフトした複数の光”の各光スペクトルデータから、周波数が当該周波数シフト量だけ逆シフトした“新たな光スペクトルデータ”をそれぞれ生成する。そして、これらの“新たな光スペクトルデータ”を重ね合わせて、サンプリング点が増加した高密度光サンプリングデータを生成する。
【0064】
図7(E)に“新たな光スペクトルデータ”を重ね合わせた様子を示し、図7(F)に高密度光サンプリングデータに曲線フィッティングを行った様子を示す。
なお本実施形態の分光システム、および後述する分光方法ではでは、周波数シフタ12を、図1に示した分光機器の較正システム1に用いた周波数シフタ12と共用することができる。
【0065】
《分光機器の分光方法》
図8は、本発明の、分光機器の分光方法の一実施形態を示すフローチャートである。この較正方法は、図6および図7で説明した分光器15に、広帯域光源21からの光を、試料30を介して入射して分光測定を行う分光方法である基本的には、分光機器の分光システム2の説明に際して既に述べているので、以下に処理手順のみを、図6および図7を参照しながら図8のフローチャートにより示す。
【0066】
まず、制御部162は、制御レジスタの値jを「0」にセットし(S201)、広帯域光源21が生成する光Sから周波数シフト量設定値FU(j×fu)に応じて周波数がシフトした光Sjを生成する(S202)。ここでは、制御レジスタの値jが「0」であるので、周波数シフタ22による周波数シフト量設定値(周波数シフト量FU)が0(FU=0×fu)であり、広帯域光源21からの光Sは、周波数シフトを受けることなく分光器15に入射される(周波数シフトを受けない光SをS0とする)。
【0067】
分光器15では、入射された光S0について光スペクトルを測定して、測定結果(光スペクトルデータI0)を記憶装置DS1に格納する(S203)。
以上の処理は、制御レジスタの値jがN未満である場合に行われる。すなわち、制御レジスタの値jが、(N−1)に達したかが判断される(S204)。この場合には、制御レジスタの値jは「0」であるので、jは、「0」から「1」にインクリメントされる(S205)。
【0068】
制御レジスタの値jが「1」にセットされると、周波数シフタ22からは、周波数シフト量が1×fuの光S1が生成される(S202)、この光S1は、分光器15に入射され、分光器15では、光S1について光スペクトルを測定して、測定結果(光スペクトルデータI1)を記憶装置DS1に格納する(S203)。
既に述べたように、以上の処理は、制御レジスタの値jがN未満である場合に行われる。すなわち、制御レジスタの値jが、(N−1)に達したかが判断される(S204)。この場合には、制御レジスタの値jは「1」であるので、jは「1」から「2」にインクリメントされ(S205)。
【0069】
以上の処理が、j=N−1となるまで行われると、処理は、次の演算処理に渡される。
すなわち、演算処理では、まず演算レジスタの値kが「1」にセットされる(S206)。
演算部161は、分光器15により検出した、光スペクトルデータI1から、周波数が当該周波数シフト量だけ逆シフトした“新たな光スペクトルデータ”I’1を生成し記憶装置DS2に格納する(S207)。
【0070】
この処理は、演算レジスタの値kがN未満である場合に行われる。すなわち、演算レジスタの値kが、(N−1)に達したかが判断される(S208)。この場合には、演算レジスタの値kは「1」であるので、kは、「1」から「2」にインクリメントされる(S209)。
【0071】
演算部161は、演算レジスタの値kが「2」にセットされると、記憶装置DS1に格納されている、光S2の光スペクトルデータI2から、周波数が当該周波数シフト量だけ逆シフトした“新たな光スペクトルデータ”I’2を生成し、記憶装置DS2に格納する(S207)。
【0072】
以下、同様にして光スペクトルデータI3〜IN-1から、記憶装置DS1に格納されている、周波数が逆シフトした“新たな光スペクトルデータ”I’3〜I’N-1を生成し記憶装置DS2に格納する(S207)。
【0073】
記憶装置DS1に格納されている測定結果(光スペクトルデータI0)と、記憶装置DS2に格納されている“新たな光スペクトルデータ”I’1,I’2,・・・,I’N-1を重ね合わせて、サンプリング点が増加した高密度光サンプリングデータ(図7(E)参照)を生成する(S210)。
【0074】
この高密度光サンプリングデータについて曲線フィッティングを行うことで精密波形S’を生成する(S211)(図2(F)参照)。
【0075】
図8のフローチャートでは、試料の吸収スペクトルの測定についての実施形態を説明したが、図8のフローチャートに示した分光方法は、図9に示すように、被測定光源21’の発光スペクトルを測定する場合にも適用される。
【符号の説明】
【0076】
1 較正システム
2,5 分光システム
11 周波数安定化光源
12,22 周波数シフタ
13 周波数コム光発生器
14 光スイッチ
15 分光器
16 演算制御装置
21 広帯域光源
21’ 被測定光源
30 試料
161 演算部
162 制御部
163 記憶装置
CMB’11,CMB’21,S’ 精密波形
D,I1,I2,I3 光スペクトルデータ
DS1,DS2 記憶装置
FC,FC1 周波数コム光
FU 周波数シフト量
L,L0,L1,Lj,S,S0,S1,S2,Sj 光
f0 オフセット
fi コム周波数間隔
fs サンプリング周波数間隔
fu 単位周波数シフト量
δf 周波数幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分光機器の周波数較正に適用される較正システムであって、
周波数安定化光源と、前記周波数安定化光源からの光を入射して、周波数シフト量設定値に応じて周波数がシフトした複数の光を順次出射する周波数シフタと、当該周波数シフタからの光を順次入射し、コム周波数間隔が高精度に設定された中心角周波数が異なる周波数コム光を順次生成する周波数コム光発生器とを備えた較正用光源と、
前記周波数コム光発生器からの周波数コム光を、異なる周波数シフト量設定値ごとに被較正対象である分光機器に順次入射して、“近接する2つの特定コム”のそれぞれについて、“周波数がシフトした複数のコム”の光スペクトルを、所定のサンプリング周波数間隔で順次検出する前記分光機器と、
前記分光機器から、前記“近接する2つの特定コム”のそれぞれについての“周波数がシフトした複数のコム”の光スペクトルデータを取得して周波数較正演算を行う演算部を有する演算制御装置と、
を備え、
前記演算部は、
(a)前記“近接する2つの特定コム”のそれぞれについて、
前記分光機器によりそれぞれ検出した、前記“周波数がシフトした複数のコム”の各光スペクトルデータから、周波数が当該周波数シフト量だけ逆シフトした“新たな光スペクトルデータ”をそれぞれ生成し、
これらの“新たな光スペクトルデータ”を重ね合わせて、サンプリング点が増加した高密度光サンプリングデータを生成し、この高密度光サンプリングデータについて曲線フィッティングを行うことで精密波形を生成し、
(b)前記“近接する2つの特定コム”に対応する2つの精密波形同士の相互相関を計算することで、前記“近接する2つの特定コム”の周波数間隔実測値を求め、得られた周波数間隔実測値を、前記周波数コム光発生器において高精度に設定されたコム周波数間隔の値と比較して、前記分光機器のサンプリング周波数間隔の誤差を較正する、
ことを特徴とする分光機器の較正システム。
【請求項2】
周波数シフト量FUが、
0×fu,1×fu,2×fu,3×fu,・・・,(N−1)×fu
または、
0+0×fu、f0+1×fu、f0+2×fu、f0+3×fu、・・・、f0+(N−1)×fu
u:単位周波数シフト量
0:オフセット量
として順次設定されていることを特徴とする請求項1に記載の分光機器の較正システム。
【請求項3】
単位周波数シフト量fuがサンプリング周波数間隔fsの1/4から1/10000倍以上であることを特徴とする請求項2に記載の分光機器の較正システム。
【請求項4】
分光機器の周波数較正に適用される較正方法であって、
周波数安定化光源からの光を周波数シフタに入射して、当該周波数シフタから周波数シフト量設定値に応じて“周波数がシフトした複数の光”を順次出射するステップ、
周波数コム光発生器に前記周波数シフタからの光を順次入射し、前記周波数コム光発生器からコム周波数間隔が高精度に設定された中心角周波数が異なる周波数コム光を順次生成するステップ、
分光機器に前記周波数コム光発生器から、異なる周波数シフト量設定値ごとに被較正対象である分光機器に順次入射して、“近接する2つの特定コム”のそれぞれについて、“周波数がシフトした複数のコム”の光スペクトルを、所定のサンプリング周波数間隔で順次検出するステップ、
前記分光機器から、前記“近接する2つの特定コム”のそれぞれについての“周波数がシフトした複数のコム”の光スペクトルデータを取得して周波数較正演算を行うステップ、
を有し、
前記周波数較正演算を行うステップは、
(a)前記“近接する2つの特定コム”のそれぞれについて、
前記分光機器によりそれぞれ検出した、前記“周波数がシフトした複数のコム”の各光スペクトルデータから、周波数が当該周波数シフト量だけ逆シフトした“新たな光スペクトルデータ”をそれぞれ生成するステップ、
これらの“新たな光スペクトルデータ”を重ね合わせて、サンプリング点が増加した高密度光サンプリングデータを生成するステップ、
この高密度光サンプリングデータについて曲線フィッティングを行うことで精密波形を生成するステップ、
(b)前記“近接する2つの特定コム”に対応する2つの精密波形同士の相互相関を計算することで、前記“近接する2つの特定コム”の周波数間隔実測値を求めるステップ、
得られた周波数間隔実測値を、前記周波数コム光発生器において高精度に設定されたコム周波数間隔の値と比較して、前記分光機器のサンプリング周波数間隔の誤差を較正するステップ、
を含む、
ことを特徴とする分光機器の較正方法。
【請求項5】
周波数シフト量FUが、
0×fu,1×fu,2×fu,3×fu,・・・,(N−1)×fu
または、
0+0×fu、f0+1×fu、f0+2×fu、f0+3×fu、・・・、f0+(N−1)×fu
u:単位周波数シフト量
0:オフセット量
として順次設定されていることを特徴とする請求項4に記載の分光機器の較正方法。
【請求項6】
単位周波数シフト量fuがサンプリング周波数間隔fsの1/4から1/10000倍以上であることを特徴とする請求項5に記載の分光機器の較正方法。
【請求項7】
試料を介して広帯域光源からの光を入射し、周波数シフト量設定値に応じて“周波数がシフトした複数の光”を順次出射する周波数シフタが分光機器の前段に設けられ、かつ、請求項1に記載の較正システムが組み込まれ、当該較正システムにより前記分光機器の較正がなされている分光システムであって、
前記周波数シフタからの光を、異なる周波数シフト量設定値ごとに前記分光機器に順次入射して、前記“周波数がシフトした複数の光”の光スペクトルを、所定のサンプリング周波数間隔で順次検出する分光機器と、
前記分光機器から、前記“周波数がシフトした複数の光”の光スペクトルデータを取得してサンプリング点を増加する処理を行う演算部を有する演算制御装置と、
を備え、
前記演算部は、
前記分光機器によりそれぞれ検出した、前記“周波数がシフトした複数の光”の各光スペクトルデータから、周波数が当該周波数シフト量だけ逆シフトした“新たな光スペクトルデータ”をそれぞれ生成し、
これらの“新たな光スペクトルデータ”を重ね合わせて、サンプリング点が増加した高密度光サンプリングデータを生成し、この高密度光サンプリングデータについて曲線フィッティングを行うことで、前記試料を介して入射した光の精密なスペクトル波形とピークを測定する、
ことを特徴とする分光機器の分光システム。
【請求項8】
周波数シフト量FUが、
0×fu,1×fu,2×fu,3×fu,・・・,(N−1)×fu
または、
0+0×fu、f0+1×fu、f0+2×fu、f0+3×fu、・・・、f0+(N−1)×fu
u:単位周波数シフト量
0:オフセット量
として順次設定されていることを特徴とする請求項7に記載の分光機器の分光システム。
【請求項9】
単位周波数シフト量fuがサンプリング周波数間隔fsの1/4から1/10000倍以上であることを特徴とする請求項8に記載の分光機器の分光システム。
【請求項10】
周波数シフタが、請求項1に記載の周波数シフタと共用されることを特徴とする請求項7に記載の分光機器の分光システム。
【請求項11】
請求項4に記載の較正方法により較正がなされている分光機器に、広帯域光源からの光を試料を介して入射して分光測定を行う分光方法であって、
広帯域光源からの光を、試料を介して周波数シフタに入射して、当該周波数シフタから周波数シフト量設定値に応じて“周波数がシフトした複数の光”を順次出射するステップ
前記周波数シフタからの光を、異なる周波数シフト量設定値ごとに前記分光機器に順次入射して、前記“周波数がシフトした複数の光”の光スペクトルを、所定のサンプリング周波数間隔で順次検出するステップ、
前記分光機器から、前記“周波数がシフトした複数の光”の光スペクトルデータを取得してサンプリング点を増加する処理を行うステップ、
を有し、
前記サンプリング点を増加する処理を行うステップは、
前記分光機器によりそれぞれ検出した、前記“周波数がシフトした複数の光”の各光スペクトルデータから、周波数が当該周波数シフト量だけ逆シフトした“新たな光スペクトルデータ”をそれぞれ生成するステップ、
これらの新たな光スペクトルデータを重ね合わせて、サンプリング点が増加した高密度光サンプリングデータを生成し、この高密度光サンプリングデータについて曲線フィッティングを行うことで、前記試料を介して入射した光の精密なスペクトル波形とピークを測定するステップ、
を含むことを特徴とする分光機器の分光方法。
【請求項12】
周波数シフト量FUが、
0×fu,1×fu,2×fu,3×fu,・・・,(N−1)×fu
または、
0+0×fu、f0+1×fu、f0+2×fu、f0+3×fu、・・・、f0+(N−1)×fu
u:単位周波数シフト量
0:オフセット量
として順次設定されていることを特徴とする請求項11に記載の分光機器の分光方法。
【請求項13】
単位周波数シフト量fuがサンプリング周波数間隔fsの1/4から1/10000倍以上であることを特徴とする請求項12に記載の分光機器の分光方法。
【請求項14】
周波数シフタが、請求項4に記載の方法において使用した周波数シフタと共用されることを特徴とする請求項11に記載の分光機器の分光方法。
【請求項15】
光源からの光を入射して、周波数シフト量設定値に応じて周波数がシフトした複数の光を順次生成(シフト量がゼロも含む)する周波数シフト光取得ステップ、
周波数がシフトした前記複数の光を、所定のサンプリング周波数間隔で順次検出する周波数検出ステップ、
周波数検出ステップにおける検出の結果を取得して、前記サンプリング周波数間隔よりも高い精度のサンプリングデータを生成する高精度サンプリングデータ生成ステップ、
を有する分光機器の高分解能分光方法であって、
前記高精度サンプリングデータ生成ステップでは、
前記周波数検出ステップにおいてそれぞれ検出した、周波数がシフトした前記複数の光についての各光スペクトルデータから、周波数が当該周波数シフト量だけ逆シフトした新たな光スペクトルデータをそれぞれ生成する新光スペクトルデータ生成ステップ、
これらの新たな光スペクトルデータを重ね合わせることで、前記光源からの光についてのサンプリング点が増えた光スペクトルデータを生成するサンプリング点増加ステップ、
を含むことを特徴とする分光機器の分光方法。
【請求項16】
周波数シフト量FUが、
0×fu,1×fu,2×fu,3×fu,・・・,(N−1)×fu
または、
0+0×fu、f0+1×fu、f0+2×fu、f0+3×fu、・・・、f0+(N−1)×fu
u:単位周波数シフト量
0:オフセット量
として順次設定されていることを特徴とする請求項15に記載の分光機器の分光システム。
【請求項17】
単位周波数シフト量fuがサンプリング周波数間隔fsの1/4から1/10000倍以上であることを特徴とする請求項16に記載の分光機器の分光方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−154857(P2012−154857A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−15686(P2011−15686)
【出願日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(504132881)国立大学法人東京農工大学 (595)
【Fターム(参考)】