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分光測定装置、及び分光測定方法
説明

分光測定装置、及び分光測定方法

【課題】精度の高い測定を簡便に行うことができる分光測定装置、及び分光測定方法を提供すること。
【解決手段】
本発明の一態様にかかる分光測定装置は、レーザ光源101と、レーザ光源101からの光ビームを参照用サンプル120に集光するレンズ104と、第1レンズ104を通過した光ビームを測定用サンプル121に集光する対物レンズ106と、光ビームの照射によって、測定用サンプル121、及び参照用サンプル120で発生した光ビームと異なる波長の光を分光する分光器109と、分光器109で分光された光を検出する検出器110と、参照用サンプル120及び測定用サンプル121から分光器109に向かう光の光路を、レーザ光源か101から測定用サンプル121に向かう光ビームの光路から分岐するビームスプリッタ103と、を備えるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分光測定装置、及び分光測定方法に関し、特に詳しくは、参照用サンプル、及び測定用サンプルからの光を分光して、測定する分光測定装置、及び分光測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ラマン散乱光に対して分光測定を行うラマン分光測定装置が広く利用されている(特許文献1)。例えば、Siなどの半導体デバイスの製造プロセスの評価において、ラマン顕微鏡を用いて応力測定が行われている。応力はラマンスペクトルのピーク位置から求められる。100MPaの応力を求めるためには、0.1cm−1程度と比較的高精度にピーク位置を求める必要がある。室温の変動などの影響を受けずにピーク位置を求めるために、アルゴンレーザのプラズマラインを参照光に用いる方法が開示されている(特許文献2)。
【0003】
特許文献2の構成に付いて、図8を用いて説明する。レーザ光源201から出射したレーザ光は、ビームエキスパンダ202で拡大される。そして、レーザ光は、ハーフミラー203を通過して、対物レンズ204に入射する。対物レンズ204は、レーザ光を測定用サンプル221に集光する。そして、測定用サンプル221で発生したラマン散乱光は、対物レンズ204を介して、ハーフミラー203に入射する。ハーフミラー203は、ラマン散乱光をレンズ205に向けて反射する。レンズ205はラマン散乱光を、分光器207のスリット206に集光する。そして、スリット206を通過したラマン散乱光は分光器207で分光され、CCD検出器208で検出される。これにより、ラマンスペクトルを測定することができる。そして、ラマンスペクトルのピーク位置に基づいて、温度が求められる。
【0004】
しかしながら、この方法には、比較的大きなアルゴンレーザを使用する必要があり、装置の小型化が困難であるという問題点がある。別の方法として、レーザ光を分岐させて、参照光を得る方法が開示されている(特許文献3)。この方法では、参照光を利用してピーク位置を求めている。さらに、励起光と参照光をそれぞれ遮光するためのシャッタが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−179002号公報
【特許文献2】特開2001−66197号公報
【特許文献3】特開2005−114539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献3では、ハーフミラーを用いて、参照光用の光路と、励起光用の光路とを分岐している。ここで、ハーフミラーを用いて参照光を分岐して、参照用サンプルを照明する構成について、図9を用いて説明する。図9に示す構成では、図8で示した光学系の構成に加えて、ハーフミラー209とレンズ210が設けられている。ハーフミラー209で分岐された励起光がレンズ210を介して、参照用サンプル220に入射する。そして、参照用サンプル220で発生したラマン散乱光は、レンズ210を介して、ハーフミラー209に入射する。ハーフミラー209は、参照用サンプル220で発生したラマン散乱光と、測定用サンプル221で発生したラマン散乱光を合成する。そして、合成されたラマン散乱光が、ハーフミラー203及びレンズ205を介して、分光器207の入射側に設けられたスリット206に入射する。このようにして、ラマン分光測定を行っている。
【0007】
しかしながら、この方法には、(1)新たに参照用サンプルに用いられる光学系を必要とすることでコストが増大する、(2)測定用サンプルと参照用サンプルを同時に測定する場合に、ビームを分岐させることによるレーザ光およびラマン散乱光の損失があるという問題点がある。さらに、特許文献1に示すようなライン照明の光学系では、(3)分岐ミラーへの入射角が一定にならないため、測定用サンプルと参照用サンプルでのラインに沿った励起光強度分布、検出感度分布を揃えるのが困難である、などという問題点がある。
【0008】
このように従来のラマン分光測定装置では、参照サンプルと測定サンプルのピーク位置を測定する場合、光学系が複雑になってしまいコストが増大するという問題点がある。さらに、上記の問題点は、ラマン分光測定に限らず、蛍光等の他の二次光においても発生する。
【0009】
本発明は上述の問題点に鑑みてなされたものであり、精度の高い測定を簡便に行うことができる分光測定装置、及び分光測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様にかかる分光測定装置は、測定用サンプル、及び参照用サンプルで発生した光を分光測定して、前記測定用サンプル、及び前記参照用サンプルのスペクトルのピーク位置をそれぞれ検出する分光測定装置であって、光源と、前記光源からの光ビームを前記参照用サンプルに集光する第1レンズと、前記第1レンズを通過した光ビームを前記測定用サンプルに集光する第2レンズと、前記光ビームの照射によって、前記測定用サンプル、及び前記参照用サンプルで発生した前記光ビームと異なる波長の光を分光する分光器と、前記分光器で分光された光を検出する検出器と、前記参照用サンプル及び前記測定用サンプルから前記分光器に向かう光の光路を、前記光源から前記測定用サンプルに向かう光ビームの光路から分岐する光分岐手段と、を備えるものである。これにより、精度の高い測定を簡便な構成で行うことができる。
【0011】
本発明の第2の態様にかかる分光測定装置は、上記の分光測定装置において、前記参照用サンプルの既知のスペクトル情報を参照して、前記参照用サンプルのスペクトルのピーク位置と、前記測定用サンプルのスペクトルのピーク位置を判別する処理装置をさらに備えるものである。これにより、精度よく測定することができる。
【0012】
本発明の第3の態様にかかる分光測定装置は、上記の分光測定装置において、前記参照用サンプルが前記第1レンズの光軸上に配置され、前記光源からの光ビームが前記参照用サンプルを透過した後、前記第2レンズを介して前記測定用サンプルに入射するものである。これにより、参照用サンプル及び測定用サンプルを同時に照射することができ、構成をより簡素化することができる。
【0013】
本発明の第4の態様にかかる分光測定装置は、上記の分光測定装置において、前記光ビームを偏向して、前記測定用サンプル上での光ビームの位置を走査する走査手段をさらに備え、前記参照用サンプルが前記第1レンズの光軸からずれて配置され、前記走査手段が前記光ビームを偏向することによって、前記測定用サンプルに入射していた光ビームが、前記参照用サンプルに入射させることを特徴とするものである。これにより、様々な参照用サンプルを用いることができる。
【0014】
本発明の第5の態様にかかる分光測定装置は、上記の分光測定装置において、前記参照用サンプルから前記第1レンズまでの距離が可変となるよう、前記参照用サンプルが移動可能に設けられているものである。これにより、参照用サンプルからの参照光の強度を調整することができる。
【0015】
本発明の第6の態様にかかる分光測定装置は、上記の分光測定装置において、前記参照用サンプル及び前記測定用サンプルから前記分光器に向かう光が、前記分光器の入射側に設けられた入射スリットに沿った前記検出器の複数の画素に入射し、前記分光器によって前記検出器の画素列に分散される波長範囲を変えて、前記測定用サンプル、及び前記参照用サンプルのスペクトルを測定するものである。これにより、光強度分布、及び検出感度分布を容易に揃えることができる。
【0016】
本発明の第7の態様にかかる分光測定装置は、上記の分光測定装置において、前記参照用サンプルのスペクトル情報に含まれる2つ以上のピーク位置を用いて、前記測定用スペクトルのピーク位置を測定するものである。これにより、測定精度を向上することができる。
本発明の第8の態様にかかる分光測定装置は、上記の分光測定装置において、前記参照用サンプル及び前記測定用サンプルから前記分光器に向かう光が、前記分光器の入射側に設けられた入射スリットに沿った前記検出器の複数の画素に入射し、前記入射スリットに沿った方向における2箇所以上で、スペクトルのピーク位置をそれぞれ検出するものである。これにより、精度の高い測定を高速に行うことができる。
【0017】
本発明の第9の態様にかかる分光測定方法は、測定用サンプル、及び参照用サンプルで発生した光を分光測定して、測定用サンプル、及び参照用サンプルのスペクトルのピーク位置をそれぞれ検出する分光測定装置であって、光源からの光ビームを第1レンズによって参照用サンプルに集光するステップと、前記第1のレンズを通過した光ビームを第2レンズによって測定用サンプルに集光するステップと、前記光ビームの照射によって、前記測定用サンプル、及び前記参照用サンプルで発生した前記光ビームと異なる波長の光を、前記光源から前記測定用サンプルに向かう光から分岐するステップと、前記測定用サンプル、及び前記参照用サンプルで発生した前記光ビームと異なる波長の光を分光するステップと、を備えるものである。これにより、精度の高い測定を簡便な構成で行うことができる。
【0018】
本発明の第10の態様にかかる分光測定装置は、上記の分光測定装置において、前記参照用スペクトルからの光のスペクトル情報を参照して、前記参照用サンプルからの光のスペクトルのピーク位置と、前記測定用サンプルのスペクトルのピーク位置を判別するものである。これにより、精度よく測定することができる。
【0019】
本発明の第11の態様にかかる分光測定方法は、上記の分光測定方法において、前記参照用サンプルが前記第1レンズの光軸上に配置され、前記光源からの光ビームが前記参照用サンプルを透過した後、前記第2レンズを介して前記測定用サンプルに入射するものである。これにより、参照用サンプル及び測定用サンプルを同時に照射することができ、構成をより簡素化することができる。
【0020】
本発明の第12の態様にかかる分光測定方法は、上記の分光測定方法において、前記光ビームを偏向して、前記測定用サンプル上での光ビームの位置を走査するステップをさらに備え、前記参照用サンプルが前記第1レンズの光軸からずれて配置され、前記走査手段が前記光ビームを偏向することによって、前記測定用サンプルに入射していた光ビームが、前記参照用サンプルに入射させることを特徴とする請ものである。これにより、様々な参照用サンプルを用いることができる。
【0021】
本発明の第13の態様にかかる分光測定方法は、上記の分光測定方法において、前記参照用サンプルから前記第1レンズまでの距離が可変となるよう、前記参照用サンプルが移動可能に設けられているものである。これにより、参照用サンプルからの参照光の強度を調整することができる。
【0022】
本発明の第14の態様にかかる分光測定方法は、上記の分光測定方法において、前記光源からの光ビームがライン状のスポットに集光されて、前記測定用サンプル、及び前記参照用サンプルに入射し、前記分光器によって前記検出器の画素列に分散される波長範囲を変えて、前記測定用サンプル、及び前記参照用サンプルのスペクトルを測定するものである。これにより、光強度分布、及び検出感度分布を容易に揃えることができる。
【0023】
本発明の第15の態様にかかる分光測定方法は、上記の分光測定方法において、前記参照用サンプルの既知のスペクトル情報に含まれる2つ以上のピーク位置を用いて、前記測定用スペクトルのピーク位置を測定するものである。これにより、より精度よく測定することができる。
本発明の第16の態様にかかる分光測定方法は、上記の分光測定方法において、前記参照用サンプル及び前記測定用サンプルから前記分光器に向かう光が、前記分光器の入射側に設けられた入射スリットに沿った前記検出器の複数の画素に入射し、前記入射スリットに沿った方向における2箇所以上で、スペクトルのピーク位置をそれぞれ検出するものである。これにより、精度の高い測定を高速に行うことができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、精度の高い測定を簡便に行うことができる分光測定装置、及び分光測定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】実施の形態1にかかる分光測定装置の構成を示す図である。
【図2】参照用サンプルとレンズの配置を示す図である。
【図3】実施の形態2にかかる分光測定装置の構成を示す図である。
【図4】実施の形態2にかかる分光測定装置において、参照用サンプルの配置例を示す図である。
【図5】実施の形態3にかかる分光測定装置の構成を示す図である。
【図6】スペクトルのピーク位置の測定原理を説明するための図である。
【図7】スペクトルのピーク位置の測定原理を説明するための図である。
【図8】特許文献2に記載のラマン分光光度計を示す図である。
【図9】参照用サンプルを照明するために、励起光を分岐した構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
実施の形態1
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。まず、図1を用いて本実施形態に係る分光測定装置の全体構成を説明する。図1は、分光測定装置を示す図である。本実施の形態に係る分光測定装置は、サンプルで発生したラマン散乱光を分光して、測定するラマン分光測定装置である。
【0027】
図1に示すように、分光測定装置100は、レーザ光源101と、ビームエキスパンダ102と、ビームスプリッタ103、レンズ104、レンズ105、対物レンズ106、レンズ107、入射スリット108、分光器109、検出器110を備えている。分光測定装置100は、ラマン散乱光を検出するラマン顕微鏡であって、分光測定するための分光器109を有している。そして、参照用サンプル120と、測定用サンプル121にレーザ光を同時に照射して、ラマン分光測定を行う。
【0028】
レーザ光源101は単色のレーザ光を出射する。レーザ光源101は所定のレーザ波長を有するレーザ光を出射する。このレーザ光が、測定用サンプル121と、参照用サンプル120を励起する励起光となる。もちろん、励起光用の光源として用いられる光源は特に限定されるものではない。本実施形態においては、アルゴンレーザ等の大型のレーザ光源を用いる必要がない。よって、小型のレーザ光源を用いることができ、装置を小型化することができる。
【0029】
レーザ光源101からの光ビームはビームエキスパンダ102によって拡大される。ビームエキスパンダ102によって、スポットが拡大されたレーザ光は、平行光となっている。そして、ビームエキスパンダ102からのレーザ光は、ビームスプリッタ103に入射する。ビームスプリッタ103は、例えば、ダイクロイックミラーであり、レーザ波長の光を測定用サンプル121の方向に透過する。なお、ビームスプリッタ103として、ダイクロイックミラー以外の光分岐手段を用いることができる。例えば、偏光ビームスプリッタや、ハーフミラーを光分岐手段として用いることができる。
【0030】
ビームスプリッタ103を通過したレーザ光は、レンズ104に入射する。レンズ104で屈折されたレーザ光は、参照用サンプル120に入射する。ビームスプリッタ103と対物レンズ106の間に設置されたレンズ104がレーザ光を集光している。さらに、レンズ104による集光点に透明な参照用サンプル120を配置している。参照用サンプル120に入射した入射光の一部はラマン散乱される。このラマン散乱光は、ラマンシフトによって、レーザ波長と異なる波長となっている。なお、参照用サンプル120は、ラマンスペクトルが既知の物質である。よって、参照用サンプル120で発生したラマン散乱光が参照光となる。参照用サンプル120としては、例えば石英、サファイア、ダイアモンド、PET(ポリエチレンテレフタレート)、ポリエチレン、アクリル、ポリカーボネート、GaNなどの固体を用いることができる。あるいは、参照用サンプル120として、エタノール、四塩化炭素などの液体(場合によっては混合物)を用いても良い。さらには、参照用サンプル120として、チャンバーに封入された窒素、酸素等の液体を用いることができる。
【0031】
参照用サンプル120としては、測定用サンプル121のラマンピークに近く、かつ重ならない位置にラマンピークを持つ物質が好適である。例えば、0−1500cm−1に複数数のラマンピークを持ち、正確なピーク位置がよく知られている石英は、520cm−1にピークを持つSi、(他にSiGe,SiCなど)を材料とする半導体デバイスの応力、温度測定の場合の参照用サンプル120として好適である。参照用サンプル120を透過後の光は、参照用サンプル120と対物レンズ106の間に設置されたレンズ105によって再び平行光となって対物レンズ106に入射される。このような光学系とすることで、レーザビームを分岐させることなく参照用サンプル120の同時測定(測定用サンプル121と参照用サンプル120のスペクトルが重なったスペクトルの測定)が可能となる。また、透明な参照用サンプル120を用いることでレーザ光、測定用サンプル121からのラマン散乱光のロスを最小限にできる。
【0032】
レンズ105で屈折されたレーザ光は、対物レンズ106に入射する。対物レンズ106は、光ビームを集光して、測定用サンプル121に入射させる。すなわち、対物レンズ106は、測定用サンプル121上に光ビームを集光して、測定用サンプル121を照明する。これにより、測定用サンプル121のスポット状の領域が照明される。
【0033】
測定用サンプル121に入射した入射光の一部はラマン散乱される。測定用サンプル121に入射した入射光のうち、ラマン散乱により対物レンズ106側に出射した光を出射光とする。すなわち、ラマン散乱光のうち、対物レンズ106に入射したものを測定用サンプル121からの出射光とする。測定用サンプル121からの出射光は入射光とは異なる波長となっている。すなわち、ラマンシフトによって、測定用サンプル121からの出射光は入射光の振動数からずれて散乱される。測定用サンプル121からの出射光のスペクトルが測定用サンプル121のラマンスペクトルとなる。
【0034】
測定用サンプル121からの出射光は、対物レンズ106に入射する。従って、測定用サンプル121からの出射光は、入射光と同じ光路上を伝播していく。すなわち、測定用サンプル121からの出射光は、対物レンズ106により屈折され、レンズ105に入射する。さらに、測定用サンプル121からの出射光は、レンズ105で屈折され、参照用サンプル120を通過し、レンズ104で屈折されて、ビームスプリッタ103に入射する。
【0035】
また、参照用サンプル120で発生したラマン散乱光の一部もレンズ104を介して、ビームスプリッタ103に入射する。なお、測定用サンプル121がレーザ光を反射する物質の場合、測定用サンプル121で反射したレーザ光によってもラマン散乱光が発生する。ここで、参照用サンプル120で発生したラマン散乱光のうち、レンズ104に向かうものを参照用サンプル120からの出射光とする。なお、参照用サンプル120からの出射光には、参照用サンプル120で測定用サンプル121の方向に発生し、測定用サンプル121で反射したラマン散乱光も含まれている。参照用サンプル120からの出射光も、レーザ波長と異なる波長となっている。参照用サンプル120からの出射光も、測定用サンプル121からの出射光と同様に、レンズ104に入射する。参照用サンプル120からの出射光と測定用サンプル121からの出射光が合成される。参照用サンプル120からの出射光と、測定用サンプル121からの出射光が、同じ光路を伝搬していく。
【0036】
レンズ104は、測定用サンプル121からの出射光と、参照用サンプル120からの出射光を平行光とする。そして、レンズ104で屈折された出射光は、ビームスプリッタ103に入射する。ダイクロイックミラーであるビームスプリッタ103は、波長差に基づいて、レーザ光とラマン散乱光を分岐する。すなわち、測定用サンプル121からの出射光が、レーザ光源101から測定用サンプル121に入射する入射光から分岐される。ビームスプリッタ103は、その反射面が入射光の光軸に対して傾いて設けられている。測定用サンプル121からの出射光がビームスプリッタ103で反射することによって、測定用サンプル121からの出射光の光軸が、レーザ光源101から測定用サンプル121に入射する入射光の光軸と異なるものとなる。よって、測定用サンプル121からの出射光を、レーザ光源101から測定用サンプル121に入射する入射光から分離することができる。同様に、参照用サンプル120からの出射光も、レーザ光源101から測定用サンプル121に入射する入射光から分岐される。このようにして、レーザ光源101から測定用サンプル121に向かう入射光の光路と、測定用サンプル121又は参照用サンプル120から、分光器109に向かう出射光の光路とが分岐される。
【0037】
ダイクロイックミラーであるビームスプリッタ103は、レーザ波長の光を透過して、ラマン散乱光を反射するような、特性を有している。すなわち、ダイクロイックミラーをビームスプリッタ103として用いることによって、レーリー散乱光とラマン散乱光との波長に差に基づいてレーリー散乱光を除去することができる。さらに、レーザ光源101からのレーザ光のほとんどはビームスプリッタ103を透過して、参照用サンプル120、測定用サンプル121に向かう。これにより、レーザ光のロスを低減することができ、効率よくラマン散乱光のみを検出することができる。なお、ダイクロイックミラーの反射特性は、測定するスペクトルの範囲に応じて決定すればよい。
【0038】
ビームスプリッタ103で反射した出射光は、レンズ107に入射する。レンズ107は、分光器109の入射側に配置された入射スリット108上に出射光を集光する。レンズ107は出射光を屈折させて、入射スリット108上に結像する。ここで、測定用サンプル121面上において入射光はスポット状に結像されているため、入射スリット108上において出射光はスポット状に集光される。入射スリット108の開口部を通過した出射光が分光器109に入射する。
【0039】
この入射スリット108を通過した出射光は、分光器109に入射する。分光器109は、回折格子(グレーティング)やプリズムなどの分光素子を備えており、入射スリット108から入射した光をその波長に応じて空間的に分散させる。反射型回折格子を用いた分光器109の場合、さらに入射スリット108からの光を分光素子までに導く凹面ミラーと分光素子によって分光された光を検出器110まで導く凹面ミラーなどの光学系が設けられている。もちろん、上記以外の構成を有する分光器31を用いてもよい。出射光は分光器109によって入射スリット108の方向と垂直な方向に分散される。すなわち、分光器109は、入射スリット108のライン状の開口部と垂直な方向に出射光を波長分散する。分光器109により分光された出射光は検出器110に入射する。検出器110は受光素子がマトリクス状に配列されたエリアセンサである。具体的には、検出器110は画素がアレイ状に配置された2次元CCDカメラなどの2次元アレイ光検出器である。
【0040】
検出器110の画素は、入射スリット108に対応する方向に沿って配列されている。したがって、検出器110の画素の一方の配列方向は入射スリット108の方向と一致し、他方の配列方向は、分光器109の分散方向と一致する。検出器110の入射スリット108の方向に対応する方向がY方向とし、入射スリット108と垂直な方向、すなわち、分光器109によって出射光が分散される方向をX方向とする。従って、ラマン散乱光の波長が、検出器110の受光面における、X方向の位置に対応する。すなわち、X方向において異なる画素は、異なる波長のラマン散乱光を検出している。よって、検出器110の1フレームで、ラマンスペクトルを測定することができる。なお、入射スリット108の代わりにピンホールを用いても良い。
【0041】
検出器110は各画素で受光した出射光の光強度に応じた検出信号を処理装置111に出力する。処理装置111は、例えば、パーソナルコンピュータ(PC)などの情報処理装置であり、検出器110からの検出信号をメモリなどに記憶していく。これにより、ラマンスペクトルを測定することができる。参照用サンプル120のラマンスペクトルが既知である。処理装置111には、参照用サンプル120のスペクトル情報が格納されている。このスペクトル情報を参照することで、測定したラマンスペクトルのピーク位置(ピーク波長)から、参照用サンプル120からのラマン散乱光のピーク位置を抽出することができる。さらに、測定したラマンスペクトルのピーク位置から、参照用サンプル120のピーク位置と、測定用サンプル121のピーク位置とを判別することができる。
【0042】
具体的には、測定したスペクトルのピーク位置を求める。例えば、測定されたスペクトルデータに対して、公知のガウス関数、ローレンツ関数などでフィッティングを行う。こうすることで、自動的にピーク位置を抽出することができる。そして、予め記憶されている参照用サンプル120のスペクトル情報から、抽出されたピーク位置が参照用サンプル120によるラマンピークであるか否かを判定する。ここでは、スペクトル情報におけるピーク位置に近い測定スペクトルのピーク位置を参照用サンプル120のラマンピークとすることができる。そして、参照用サンプル120のラマンピーク以外のピーク位置を、測定用サンプル121のラマンピークとする。このようにして、参照用サンプル120のピーク位置と、測定用サンプル121のピーク位置をそれぞれ特定することができる。
【0043】
参照用サンプル120のラマンスペクトルのピーク位置と、測定用サンプル121のラマンスペクトルのピーク位置とを比較する。ピーク位置の差を求めることで、測定用サンプルのピーク位置を校正することができる。そして、この比較結果によって、測定用サンプル121の応力や温度を測定することができる。また、ステージやスキャナーなどを用いてレーザ光を走査することで、測定用サンプル121中の応力分布や温度分布を測定することができる。さらに、ラマンピークのピークシフトを測定することができ、ピークシフトイメージングを行うことができる。
【0044】
このように、参照用サンプル120からのラマン散乱光を参照光として用いることで、精度の高い測定を行うことができる。さらに、レンズ104とレンズ105を追加するだけでよいため、簡便に測定を行うことができる。参照用サンプル120と測定用サンプル121との光路を共通にすることができる。これにより、光ビームの分岐による光量の損失を低減することができる。
【0045】
さらに、参照サンプル120の複数のピークを用いて、測定用サンプル121のピーク位置を求めることができる。例えば、参照用サンプルのピーク位置の測定結果をPr1、Pr2とし、対応する参照用サンプルの既知のピーク位置をPk1、Pk2とする。このとき、測定結果のピーク位置xと、校正後のピーク位置yの関係を表す関数y=f(x)は、点Pk1,Pk2と点(Pr1,Pr2)を通る直線として求めることができる。測定用サンプルのピーク位置がPであるとき、校正後のピーク位置Pcalは関数fを用いて、Pcal=f(P)として求めることができる。
【0046】
もちろん、3以上のピークを用いて、測定用サンプル121のピーク位置を求めてもよい。この場合、関数fは、直線とするか、あるいは分光器の特性から適当な関数とし、参照用サンプルの既知のピーク位置と、測定結果のピーク位置から最小二乗法によって求める。なお、以上での、参照サンプルおよび測定用サンプルの測定結果のピーク位置として、分光器の特性などを用いた校正済みの値を用いてもよい。
【0047】
参照用サンプル120は光路中に挿脱可能とすることができる。これによって、測定用サンプル121に好適な参照用サンプル120を選択しての測定、及び、測定用サンプル121のみの測定、が可能である。すなわち、測定用サンプル121のみの測定を行う場合、参照用サンプル120をレーザ光の光路上から取り除く。また、測定用サンプル121を変えた場合、その測定用サンプル121に適した参照用サンプル120を光路上に配置する。このようにすることで、測定用サンプル121に応じて、参照用サンプル120を切り替えることができる。測定用サンプル121に適した参照用サンプル120を選択することで、より精度の高い測定を行うことができる。
【0048】
また、分光測定装置100における光学系は共焦点光学系となっている。このため、参照用サンプル120を移動することで、参照用サンプル120からのラマン散乱光の強度を調整することもできる。図2に示すように、参照用サンプル120を光軸に沿って移動可能とする。レーザ光源101と参照用サンプル120が互いに共役な位置に配置され、参照用サンプル120と入射スリット108が互いに共役な位置に配置されている。よって、参照用サンプル120を光軸に沿って移動することで、レンズ104又はレンズ105の焦点位置から、参照用サンプル120がずれていく。さらに、参照用サンプル120が焦点位置からずれると、参照用サンプル120の結像位置が入射スリット108からずれていく。よって、入射スリット108を通過する光が弱くなる。これにより、参照用サンプル120からのラマン散乱光(参照光)の強度を調整することができる。
測定用サンプル121と参照用サンプル120のそれぞれのラマンスペクトルを比較している。そのため、レーザ光の波長が測定中に変動するような場合にも、正確にピーク位置を求められる。ラマン散乱光の波数と、光源の波数の差がサンプルを反映するため、レーザ光の波長(波数)が変わったとしても、測定用サンプルと参照用サンプルの両方の波数が同じだけ変わるからである。高品質でないレーザ光源を用いた場合、発振波長の安定しないことがある。この場合でも、ピーク位置の測定精度の劣化を防止することができる。よって、安価なレーザ光源を用いることができる。また、参照用サンプル120にレーザ光とラマン散乱光の透過率を高める反射防止コーティングを施すことで、検出効率を高めることができる。
なお、参照用サンプル120として、ラマンスペクトルが既知の物質を用いたが、参照サンプル120は、ラマンスペクトルが予め既知の物質でなくてもよい。この場合、測定用サンプル121の測定の前、あるいは、測定の後に、参照用サンプル120のラマンスペクトルを測定しても良い。例えば、測定用サンプル121の測定の前に、ネオンランプ等のスペクトルが既知の光源を用いて、参照用サンプル120のピーク位置を測定する。スペクトルのピーク位置が既知の光源を用いて、予め参照用サンプル120のピーク位置を測定しておく。これにより、参照用サンプル120のラマンスペクトルにおけるピーク位置が既知となる。
【0049】
実施の形態2.
本実施の形態にかかる分光測定装置について、図3を用いて説明する。図3は、分光測定装置100の構成を示す図である。本実施の形態では、実施の形態1で示した分光測定装置の光学系に、ガルバノミラーによる走査光学系が追加されている。したがって、図3では、図1で示した分光測定装置100に、ミラー131、及びガルバノミラー132が追加されている。なお、実施の形態1で説明した内容と重複する内容については、適宜説明を省略する。
【0050】
ミラー131、及びガルバノミラー132は、ビームスプリッタ103とレンズ104の間に配置されている。従って、ビームスプリッタ103を通過したレーザ光は、ミラー131で反射されてガルバノミラー132に入射する。ガルバノミラー132がレーザ光を偏向することによって、測定用サンプル121上でのレーザ光の入射位置が変化する。すなわち、ガルバノミラー132によるレーザ光の反射角度が変化すると、測定用サンプル上でレーザ光が走査される。また、参照用サンプル120上でのレーザ光の入射位置も変化する。このように、ガルバノミラー132は、レーザ光をスキャンしている。さらに、参照用サンプル120、及び測定用サンプル121からの出射光は、ガルバノミラー132でデスキャンされて、ミラー131に入射する。そして、参照用サンプル120、及び測定用サンプル121からの出射光は、ミラー131で反射されて、ビームスプリッタ103に入射する。
【0051】
この光学系においては、リレーレンズ(レンズ104、レンズ105)の焦点位置(以後、中間像面とする)に、参照用サンプル120を配置している。こうすることで、追加の光学系なしに、参照用サンプル120と測定用サンプル121のラマンスペクトルを同時に測定することができる。すなわち、予め存在する中間像面に、参照用サンプル120を配置するだけで、参照用サンプル120と測定用サンプル121からのラマン散乱光を同時測定することができる。よって、精度の高い測定を簡便に行うことができる。
【0052】
ガルバノミラー132による走査光学系を備えた分光測定装置においては、ガルバノミラー132によって、参照用サンプル120の測定と、測定用サンプル121の測定を切り替える構成とすることも可能である。この構成について、図4を用いて説明する。図4は、リレーレンズであるレンズ104とレンズ105の間の構成を模式的に示す図である。
【0053】
この構成では、参照用サンプル120がレンズ104、及びレンズ105の光軸からずれて配置されている。すなわち、参照用サンプル120がレンズ104、レンズ105の光軸上に配置されていない。図4に示すように、光軸(図4中の一点鎖線)の両側に、参照用サンプル120a、120bが配置されている。そして、参照用サンプル120aと参照用サンプル120bの中間を光軸が通っている。従って、レンズ104による集光点がレンズ104の光軸上にある場合、参照用サンプル120a、120bには、レーザ光が入射しない。この場合、測定用サンプル121にレーザ光が入射する。ガルバノミラー132のスキャンによって、レンズ104によるレーザ光の集光点が光軸からずれる。すなわち、ガルバノミラー132によってレーザ光を偏向すると、参照用サンプル120a、120bにレーザ光が入射する。このように、ガルバノミラー132によって偏向角が変わっていくと、レーザ光が、参照用サンプル120a、測定用サンプル121(参照用サンプル120aと参照用サンプル120bの間)、参照用サンプル120b、測定用サンプル121(参照用サンプル120aと参照用サンプル120bの間)の順番に入射する。よって、偏向角度によって、参照用サンプル120の測定と、測定用サンプル121の測定を切り替えることができる。さらに、この場合、参照用サンプル120aと参照用サンプル120bに、シリコンの結晶等の不透明なサンプルを用いることができる。
【0054】
図4に示す構成においても、測定用サンプル121と参照用サンプル120のラマンスペクトルが重なったスペクトルを測定することができる。検出器110の露光時間に対して、ガルバノミラー132の走査周期を十分短くする。すなわち、検出器110の1回の露光中に、ガルバノミラー132を高速に動かす。例えば、露光時間1secに対して、ガルバノミラーによるレーザスポットの移動時間を10msecとする。測定用サンプル121の1点の測定に1秒間を要する場合、最初の490msecは、測定用サンプル121の測定に費やす。すなわち、ガルバノミラー132を動作させず、測定用サンプル121の1点(x_n,y)を490msec間、照明する。そして、ガルバノミラー132を10msec間動作させて、レーザスポットを測定用サンプル122から参照用サンプル121に移動する。そして、次の490msecを参照用サンプル120の測定に費やす。すなわち、ガルバノミラー132を動作させず、参照用サンプル120の1点を490msec間、照明する。さらに、次の10msecで、測定用サンプル121の別の1点(x_n+1,y)に、レーザスポットを移動させる。この動作を繰り返し行って、測定用サンプル121の所定の領域に対して測定を行う。なお、参照用サンプル120におけるレーザ光の照射位置は、毎回同じ位置でもよく、あるいは、レーザ照射による損傷を考慮して、別の位置としても良い。
これにより、参照用サンプル120と測定用サンプル121のラマンスペクトルが重なったスペクトルを得ることができる。参照用サンプル120a、120bの測定と、測定用サンプル121の測定の間の時間を短くすることができる。例えば、参照用サンプル120a、120bの測定から時間を置かずに、測定用サンプル121の測定を行うことができる。
そして、測定スペクトルからそれぞれのピーク位置を求める。測定用サンプル121と参照用サンプル120のピーク位置の差を求めることで、応力、温度などを精度良く求めることができる。ガルバノミラー132が光ビームを偏向することによって、測定用サンプル121に入射していた光ビームが、参照用サンプル120に入射する。こうすることで、非透明な参照用サンプル120を用いることができる。もちろん、ガルバノミラー132以外の光走査手段によって、光ビームを偏向しても良い。なお、測定用サンプル121のみのラマンスペクトルを測定する場合、スキャンしないようにするか、参照用サンプル120a、120bに入射光が入射しない範囲でスキャンする。 なお、参照用サンプル120a、120bとしては、ラマン散乱光を発生するサンプルの他、ネオンランプ、水銀ランプ。アルゴンランプ等の波長が既知の光源を設置して、スペクトルの校正に利用しても良い。
また、ガルバノミラー132によって、XY方向の走査を行っても良い。例えば、ガルバノミラー132を1対のガルバノミラーとする。X方向のガルバノミラーとY方向のガルバノミラーとを配置する。そして、1つのガルバノミラーによって、2次元走査を行う。これにより、2次元のラマン画像を得ることがきる。XY方向に走査するための2軸のガルバノミラーとしては、例えば、ケンブリッジテクノロジー(Cambridge Technology)社製XY Open Frameを用いることができる(http://www.gsig.co.jp/precision/products03.html参照)。あるいは、1軸をガルバノミラー132によって走査し、もう1軸をステージ駆動によって走査することもできる。このようにしても2次元のラマン画像を得ることができる。
【0055】
実施の形態3.
本実施の形態にかかる分光測定装置について、図5を用いて説明する。本実施の形態では、特許文献1の図7に示された光学系に、参照用サンプル26を配置している。なお、実施の形態1、2で説明した内容と重複する内容、さらには、特許文献1と重複する内容については、適宜説明を省略する。
【0056】
分光測定装置100は、測定用サンプル22を観察するための構成として、レーザ光源10と、ビームエキスパンダ11と、Y走査装置13と、レンズ14と、絞り15と、レンズ16と、ビームスプリッタ17と、X走査ミラー18と、レンズ19と、レンズ20と、対物レンズ21と、ステージ23と、レンズ24と、分光器31と、検出器32と、ステージ駆動装置40と、処理装置50とを備えている。また分光器31は入射側に入射スリット30を備えている。参照用サンプル26は、レンズ19とレンズ20の間に配置されている。すなわち、参照用サンプル26はレンズ19の集光点に配置されている。
【0057】
分光測定装置100は実施の形態1、2と同様にラマン顕微鏡であり、レーザ光源10からの光ビームを測定用サンプル22に入射させ、測定用サンプル22からのラマン散乱光を検出器32で検出する。さらに、ラマン散乱光を分光器31で分光するため、ラマンスペクトルを測定することができる。さらに、分光測定装置100では、XY方向(水平方向)及びZ方向(鉛直方向)に走査することができるため、3次元のラマンスペクトルイメージを測定することができる。また、本実施の形態では、レーザ光のスポットをライン状にしてライン照明を行っている。さらに、本実施の形態では、分光測定装置100は、ラインコンフォーカル光学系を構成している。
【0058】
まず、分光測定装置100の全体構成について説明する。レーザ光源10は単色のレーザ光を出射する。レーザ光源10には、例えば、LaserQuantum社製Torusを用いることができる。このレーザ光源10は、レーザー波長532nm、線幅1MHz、最大出力が400mWのレーザである。レーザ光源10はこのレーザ波長を有するレーザ光を出射する。アルゴンレーザ等の大型のレーザ光源を用いる必要がなくなるため、装置を小型化することができる。
【0059】
レーザ光源10からの光ビームはビームエキスパンダ11によって拡大され、Y走査装置13に入射する。Y走査装置13は、例えば、音響光学素子や、ガルバノミラーであり、入射した光ビームの出射角を変化させて、光ビームを偏向させる。これにより、測定用サンプル22上で光ビームの入射位置がY方向に沿って変化する。すなわち、Y走査装置13は、光ビームをY方向に走査する。なお、Y走査装置13での偏向角は、処理装置50からの電気信号によって制御される。Y走査装置13で偏向された光ビームはレンズ14で屈折され、シリンドリカルレンズ51に入射する。
【0060】
シリンドリカルレンズ51は凹レンズである。このシリンドリカルレンズ51によって、凸レンズであるレンズ14のX方向の屈折が打ち消される。従って、測定用サンプル22上では、レーザ光のビームスポットがX方向に延びて、楕円状になる。シリンドリカルレンズ51で屈折されたレーザ光は、絞り15に入射する。なお、レンズ14は絞り15の面上に光ビームを集光する。絞り15は、所定の開口を有し、外側の光ビームを遮光する。すなわち、開口から外れた光ビームの通過を制限する。
【0061】
絞り15を透過した光ビームは、レンズ16で屈折され、ビームスプリッタ17に入射する。ビームスプリッタ17は、例えば、ダイクロイックミラーであり、レーザ波長の光を測定用サンプル22の方向に反射する。ダイクロイックミラーとしては、Semrock社製のエッジフィルタを用いることができる。ビームスプリッタ17により反射された光は、X走査ミラー18に入射する。X走査ミラー18は、例えば、ガルバノミラーであり、反射面の角度が変化することによって、光ビームを偏向させる。すなわち、光軸に対するX走査ミラー18の反射面の傾斜角度が変化するため、光ビームの出射角を変化させることができる。これにより、測定用サンプル22上で光ビームの入射位置がX方向に沿って変化する。これにより、光ビームをX方向に走査することができる。X方向に延びたスポットを有するレーザ光がX方向に走査され、測定用サンプル22に照射される。シリンドリカルレンズ51によって延びる方向は、X走査ミラー18の走査方向と一致している。すなわち、X走査ミラー18は、シリンドリカルレンズ51によって延びる方向に、レーザ光を走査する。なお、X走査ミラー18での偏向角は、処理装置50からの電気信号によって制御される。また、X方向とY方向とは互いに直交する方向であるため、X走査ミラー18及びY走査装置13によってXY方向に走査することにより、測定用サンプル22上において2次元領域を走査することができる。
【0062】
X走査ミラー18によって走査された光ビームは、レンズ19、及びレンズ20で屈折され、対物レンズ21に入射する。さらに、レンズ19、及びレンズ20の間には、実施の形態1、2と同様に、参照用サンプル26が配置されている。参照用サンプル26のラマンスペクトルは既知であり、そのスペクトル情報が処理装置50に格納されている。この参照用サンプル26によって、上記と同様にラマン散乱光が発生する。参照用サンプル26を通過して、レンズ19で屈折されたレーザ光は、対物レンズ21に入射する。
【0063】
対物レンズ21は、光ビームを集光して、測定用サンプル22上を入射する。すなわち、対物レンズ21は、測定用サンプル22上に光ビームを集光して、測定用サンプル22を照明する。これにより、測定用サンプル22のスポット状の領域が照明される。対物レンズ21には、例えば、ニコン製アポクロマート NA 1.2 x60を用いることができる。
【0064】
測定用サンプル22に入射した入射光の一部はラマン散乱される。この測定用サンプル22で発生したラマン散乱光が、出射光として分光器31に入射する。入射光の焦点位置をXYZ方向にスキャンして測定用サンプル22の全面又は一部の領域からの出射光のスペクトルを測定することにより、ラマンスペクトルの3次元測定を行うことができる。
【0065】
なお、測定用サンプル22はステージ23の上に載置されている。ステージ23は、例えば、XYZステージである。このステージ23はステージ駆動装置40によって、駆動される。ステージ駆動装置40がステージ23をXY方向に駆動することによって、測定用サンプル22の任意の位置を照明することができる。また、ステージ駆動装置40がステージをZ方向に駆動することによって、対物レンズ21と測定用サンプル22との距離を変化させることができる。従って、対物レンズ21の焦点位置を光軸方向に沿って変化させることができる。本発明にかかる分光測定装置100は、後述するようにレーザコンフォーカル顕微鏡を構成しているため、焦点位置を変化させることによって、Z方向の走査が可能となる。すなわち、Z方向にステージを移動させることによって、測定用サンプル22の断層画像を撮像することができる。測定用サンプル22の任意の高さからのラマン散乱光の検出することができ、3次元のラマンスペクトルイメージの測定が可能になる。処理装置50はステージ駆動装置40に対して制御信号を入力し、ステージ23の駆動を制御する。
【0066】
ステージ23上に載置された測定用サンプル22でラマン散乱され、対物レンズ21に入射した出射光は、入射光と同じ光路上を伝播していく。すなわち、対物レンズ21により屈折され、レンズ20及びレンズ19で屈折されて、X走査ミラー18に入射する。同様に、参照用サンプル26からの出射光も、X走査ミラー18に入射する。X走査ミラー18は、入射した出射光をビームスプリッタ17の方向に反射する。このとき、出射光は、X走査ミラー18によってデスキャンされる。すなわち、出射光は、X走査ミラー18で反射されることによって、出射光は、レーザ光源10からX走査ミラー18に入射した入射光の進行方向と反対方向に伝播する。また、測定用サンプル22からのレーリー散乱光もラマン散乱光と同じ光路で伝播していく。
【0067】
X走査ミラー18によって、反射された出射光は、ビームスプリッタ17に入射する。ビームスプリッタ17は、例えば、ダイクロイックミラーであり、参照用サンプル26、及び測定用サンプル22からの出射光と、レーザ光源10から測定用サンプル22に入射する入射光とを波長に基づいて分岐する。すなわち、ビームスプリッタ17は、その反射面が入射光の光軸に対して傾いて設けられている。測定用サンプル22からの出射光がビームスプリッタ17を透過することによって、測定用サンプル22からの出射光の光軸が、レーザ光源10から測定用サンプル22に入射する入射光の光軸と異なるものとなる。よって、参照用サンプル26、及び測定用サンプル22からの出射光を、レーザ光源10から測定用サンプル22に入射する入射光から分離することができる。
【0068】
さらに、ダイクロイックミラーであるビームスプリッタ17は、レーザ波長の光を反射して、ラマン散乱光を透過するような、特性を有している。従って、参照用サンプル26、及び測定用サンプル22からのレーリー散乱光は、ビームスプリッタ17で反射され、波長の異なるラマン散乱光は、ビームスプリッタ17を透過する。すなわち、ダイクロイックミラーをビームスプリッタ17として用いることによって、レーリー散乱光とラマン散乱光との波長に差に基づいてレーリー散乱光を除去することができる。さらに、レーザ光源10からのレーザ光のほとんどはビームスプリッタ17で反射され、測定用サンプル22に向かう。これにより、レーザ光のロスを低減することができ、効率よくラマン散乱光のみを検出することができる。なお、ダイクロイックミラーの反射特性は、測定するスペクトルの範囲に応じて決定すればよい。ここで、ビームスプリッタ17は、測定用サンプル22とY走査装置13との間に配置されている。従って、ビームスプリッタ17は、Y走査装置13によってデスキャンされる前の出射光と、レーザ光源10からの光ビームとを分離する。
【0069】
ビームスプリッタ17を透過した出射光は、レンズ24で屈折されて分光器31の入射側に設けられた入射スリット30に入射する。このとき、レンズ24は入射スリット30上に出射光を集光している。すなわち、レンズ24は、入射スリット30上に測定用サンプル22照明された領域の拡大像を結像している。入射スリット30には、ライン状の開口部が設けられている。この開口部は、Y方向に対応する方向に沿って設けられている。すなわち、入射スリット30の開口部は測定用サンプル22上におけるY走査装置13の走査方向(Y方向)に対応する方向に沿って設けられている。
【0070】
レンズ24は出射光を屈折させて、入射スリット30上に結像する。ここで、測定用サンプル22面上において入射光はライン状に結像されているため、入射スリット30上において出射光はライン状に集光される。入射スリット30の開口部の方向とY走査装置13の走査方向とを一致させる。出射光は、Y走査装置13によってデスキャンされずに、ビームスプリッタ17に入射しているため、Y走査装置13で走査すると、入射スリット30上で光ビームのスポット位置が入射スリット30のライン状の開口部の方向に移動する。測定用サンプル22上でY方向に走査された光が入射スリット30の開口部に結像するように配置する。換言すると入射スリット30と測定用サンプル22とは互いに共役な関係となるよう配置される。したがって、ラマン顕微鏡はコンフォーカル光学系として構成される。すなわち、絞り15と測定用サンプル22面上とが互いに共役な関係となるように配置され、測定用サンプル22面上と入射スリット30とが互いに共役な関係となるように配置されている。絞り15が設けられたXY平面及び測定用サンプル22面上において、入射光がライン状に集光される。そして、測定用サンプル22から散乱して出射した出射光は入射スリット30上でライン状に集光される。入射スリット30はY方向に沿った開口部を有しており、この開口部に入射した出射光のみを検出器32側に透過させる。レーザ光源10から測定用サンプル22までの照明光学系及び測定用サンプル22から検出器32まで観察光学系をこのような結像光学系とすることにより、共焦点ラマン顕微鏡とすることができる。これにより、Z方向の分解能の高い測定を行うことができる。そして、ステージ23をZ方向に移動することにより、測定用サンプル22の任意の高さからのラマン散乱光を他の高さからのラマン散乱光から分離して検出することができる。
【0071】
この入射スリット30を通過した出射光は、分光器31の本体に入射する。分光器31は、回折格子(グレーティング)やプリズムなどの分光素子を備えており、入射スリット30から入射した光をその波長に応じて空間的に分散させる。反射型回折格子を用いた分光器31の場合、さらに入射スリット30からの光を分光素子までに導く凹面ミラーと分光素子によって分光された光を検出器32まで導く凹面ミラーなどの光学系が設けられている。もちろん、上記以外の構成を有する分光器31を用いてもよい。出射光は分光器31によって入射スリット30の方向と垂直な方向に分散される。すなわち、分光器31は、入射スリット30のライン状の開口部と垂直な方向に出射光を波長分散する。分光器31により分光された出射光は検出器32に入射する。検出器32は受光素子がマトリクス状に配列されたエリアセンサである。具体的には、検出器32は画素がアレイ状に配置された2次元CCDカメラなどの2次元アレイ光検出器である。
【0072】
検出器32には、例えば、冷却CCDを用いることができる。具体的には、検出器32として、プリンストン・インスツルメンツ社製1024×256画素の電子冷却CCD(−25℃)を用いることができる。また、検出器32にイメージインテンシファイアを取り付けることも可能である。検出器32の画素は、入射スリット30に対応する方向に沿って配置されている。したがって、検出器32の画素の一方の配列方向は入射スリット30の方向と一致し、他方の配列方向は、分光器31の分散方向と一致する。検出器32の入射スリット30の方向に対応する方向がY方向となり、入射スリット30と垂直な方向、すなわち、分光器31によって出射光が分散される方向がX方向となる。これにより、参照用サンプル26と測定用サンプル22からの出射光のスペクトルを同時に測定することができる。
【0073】
検出器32は各画素で受光した出射光の光強度に応じた検出信号を処理装置50に出力する。処理装置50は、例えば、パーソナルコンピュータ(PC)などの情報処理装置であり、検出器32からの検出信号をメモリなどに記憶していく。そして、検出結果に所定の処理を行い、モニターに表示する。さらに、処理装置50は、Y走査装置13及びX走査ミラー18の走査や、ステージ23の駆動を制御している。ここで、検出器32のX方向は出射光の波長(振動数)に対応している。すなわち、X方向に配列されている画素列において、一端の画素は長波長(低振動数)の出射光を検出し、他端の画素は短波長(高振動数)の出射光を検出する。このように、検出器32のX方向における光強度の分布はラマンスペクトルの分布を示すことになる。
【0074】
ここで、検出器32が1フレーム撮像する間に、光ビームをY方向に1回以上走査する。すなわち、Y走査装置13の走査周期を露光時間よりも短くして、検出器32の1フレームの露光時間内で、Y方向に1回以上走査する。これにより、検出器32の1フレームで、走査範囲に応じたライン状の領域のラマンスペクトルを測定することができる。例えば、3次元の広い領域に対してラマンスペクトルを測定する場合でも、測定時間が長時間となるのを防ぐことができ、実用性を向上することができる。
【0075】
このように、2次元アレイ状に画素が配列された検出器32のY方向と直交する方向に、ラマン散乱光の分光情報を展開する。そして、試料における直線状の領域の分光情報を1度に取得する。従って、高速にラマンスペクトルを測定することができる。また、レーザ光を走査しているため、均一に照明することができ、正確に測定を行うことができる。すなわち、光を高速に走査しているため、スペックルノイズを防ぐことができる。さらに、光を走査しているため、測定用サンプル22上の位置に応じた照明光輝度の変動を低減することができる。よって、正確に測定を短時間で行うことができる。
【0076】
このようにして、ライン状の領域のラマンスペクトルの測定を行うことができる。そして、上記の1フレームの撮像が終了したら、X走査ミラー18によってX方向に1照明領域分照明位置をずらす。そして、同様1フレームの撮像を行い、ライン状の領域のラマンスペクトルを測定する。これを繰り返し行なうことによって、測定用サンプル22上の2次元の領域のラマンスペクトルを測定することができる。このとき、対物レンズの照明領域毎にラマンスペクトルを測定することができるため、2次元ラマンスペクトルイメージを測定することができる。すなわち、X走査ミラー18によってX方向に走査しているため、試料の各点におけるラマン分光測定が可能になる。すなわち、測定用サンプル22上の2次元領域におけるラマンスペクトルを測定することができる。さらに、ステージ23をXY方向に移動することにより、より広い領域のラマンスペクトルを測定することができる。また、ステージ23をZ方向に駆動して、焦点位置を光軸に沿って移動させることによって、3次元測定が可能になる。すなわち、2次元領域のスペクトル測定が終了したら、焦点位置をZ方向にずらして、同様に2次元領域のラマンスペクトル測定を行う。これにより、ラマンスペクトルの3次元測定が可能になる。
【0077】
ライン状の各点で、参照用サンプル26のピーク位置と、測定用サンプル22のピーク位置を比較する。こうることで、歪の量を求めることができる。なお、特許文献1の図8においては、空気のラマン散乱光が重なることを防ぐために、レンズ19の集光点を真空にしている。あるいは、測定用サンプル22のラマン散乱光と異なる波長域のラマン散乱光を出射する物質を配置している。すなわち、レンズ19の集光点に配置された物質からのラマン散乱光をビームスプリッタ17(ダイクロイックミラー)で除去している。これに対して、本実施形態では、レンズ19の集光点に参照用サンプル26を配置して、参照用サンプル26で発生したラマン散乱光を分光測定している。そして、参照用サンプル26と測定用サンプル22のラマン散乱光を同時に分光測定して、スペクトル情報が既知である参照用サンプル26で発生したラマンピークを特定している。参照用サンプル26と測定用サンプル22のラマンピークをそれぞれ求めている。こうすることで、より精度の高い測定を行うことができる。
【0078】
ライン照明の光学系を用いて、ライン上の各点で、参照用サンプル26のピーク位置と、測定用サンプル22のピーク位置を比較する場合には、検出器32のピクセル(画素)の感度むらによって、ピーク位置の測定結果に影響が出る場合がある。このような場合には、参照用サンプル26と測定用サンプル22を複数回測定することで、感度むらの影響を低減することができる。
【0079】
例えば、図6(a)に示すように、検出器32によって、参照用サンプル26と測定用サンプル22からのラマン散乱光を同時測定する。なお、図6(a)では、検出器32の受光面32aを模式的に示す図である。図6(a)において、横方向がスペクトルの波長方向に対応している。この受光面32aには、参照用サンプル26のラマンピークの入射位置Prと、測定用サンプル22のラマンピークの入射位置Psがある。受光面32aにおいて、Y方向に沿った画素列が入射位置Pr、入射位置Psとなり、入射位置Prと入射位置Psは異なる画素列となっている。入射位置Prの画素列に対応する波長が、参照用サンプル26のラマンピークとなり、入射位置Psの画素列に対応する波長が測定用サンプル22のラマンピークとなる。処理装置50は、測定したスペクトルデータに対して、フィッティングを行い、ピーク位置を求める。図6(b)に示すように、処理装置50は、それぞれのピーク位置を求めて、ピーク位置の差Δ1を算出する。
【0080】
次に、分光器31のグレーティングを回転させるなどして、分光器31の測定波長範囲をずらす。すなわち、分光器に31よって検出器32の画素列に分散される波長範囲を変えて、スペクトル測定を行う。これにより、波長範囲の異なるスペクトルが測定される。なお、この波長範囲にもラマンピークの波長が含まれるように、波長範囲を変化させる。そして、同様に、参照用サンプル26と測定用サンプル22のピーク位置の差を測定する。これにより、ピーク位置の差Δ2を求めることができる。さらに、測定波長範囲をずらして、ピーク位置の差を求める。このようにしていくことで、ピーク位置の差Δ1〜Δnを算出することができる(nは2以上の整数)。ピーク位置の差Δ1〜Δnの平均値を用いることで、検出器の感度むらの影響を軽減することができる。ライン照明を行う場合であっても、ラインに沿った励起光強度分布、検出感度分布を容易に揃えることができる。
【0081】
本実施の形態では、Y走査装置13によってライン照明を行っているため、参照用サンプル26及び測定用サンプル22で発生したラマン散乱光が、入射スリット30に沿った検出器32の複数の画素に入射する。分光器31によって検出器32の画素に分散される波長範囲を変えて、測定用サンプル22、及び参照用サンプル26のスペクトルを測定する。なお、ライン照明は、上記のように検出器の1フレームよりも高速に走査する場合に限らず、レーザ光のスポットをライン状にする場合も含まれる。すなわち、入射スリット30に沿った検出器32の複数の画素を用いてラマン散乱光を検出する場合、上記のように、分光器31によって波長範囲をずらして測定する。
さらに、ライン照明、ライン検出の場合、ラインに沿った複数の画素のそれぞれにおいて、ラマンピークを求めてもよい。例えば、図7に示すように、波長方向に対応する画素列を画素列A、画素列Bとする。画素列Aにおけるスペクトルから、参照用サンプル26と測定用サンプル22のピーク位置をそれぞれ求める。そして、画素列Aにおけるピーク位置の差ΔAを算出する。同様に、画素列Bにおけるスペクトルから、参照用サンプル26と測定用サンプル22のピーク位置を求める。そして、画素列Bにおけるピーク位置の差ΔBを算出する。このように、ライン状の領域を一度に検出することで、高速に分布を測定することができる。すなわち、検出器32の1フレームで、複数点でのピーク位置検出が可能となるため、応力分布や温度分布を測定する場合でも、測定時間を短縮することができる。なお、上記の説明では、入射スリットに沿った方向における2箇所で、ピーク位置を検出したが、3箇所以上でピーク位置をそれぞれ検出してもよい。さらには、それぞれの箇所において、複数の画素の合計値によって、ピーク位置を算出しても良い。
【0082】
上記の分光測定装置によって、ラマンスペクトルのピークシフトを測定することができる。さらに、ラマンスペクトルのピークシフトイメージングを行うことができる。また、測定用サンプルをスキャンすることによって、温度分布や応力分布を測定することが可能である。なお、上述の説明では、ラマン散乱光を分光測定する分光測定装置100について説明したが、本発明はこれに限られるものでない。入射光のレーザ波長と異なる波長で試料から出射する出射光を検出する分光測定装置であればよい。例えば、励起光によって励起される蛍光を検出する分光測定装置や、赤外吸収を検出する分光測定装置であってもよい。これらの分光測定装置でも、短時間で、スペクトルの測定を行うことができる。
【符号の説明】
【0083】
10 レーザ光源
11 ビームエキスパンダ
13 Y走査装置
14 レンズ
15 絞り
16 レンズ
17 ビームスプリッタ
18 X走査ミラー
19 レンズ
20 レンズ
21 対物レンズ
22 測定用サンプル
23 ステージ
24 レンズ
26 参照用サンプル
30 入射スリット
31 分光器
32 検出器
40 ステージ駆動装置
50 処理装置
101 レーザ光源
102 ビームエキスパンダ
103 ビームスプリッタ
104 レンズ
105 レンズ
106 対物レンズ
107 レンズ
108 入射スリット
109 分光器
110 検出器
111 処理装置
120 参照用サンプル
121 測定用サンプル


【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定用サンプル、及び参照用サンプルからの光を分光測定して、前記測定用サンプル、及び前記参照用サンプルからの光のスペクトルのピーク位置をそれぞれ検出する分光測定装置であって、
光源と、
前記光源からの光ビームを前記参照用サンプルに集光する第1レンズと、
前記第1レンズを通過した光ビームを前記測定用サンプルに集光する第2レンズと、
前記光ビームの照射によって、前記測定用サンプル、及び前記参照用サンプルで発生した前記光ビームと異なる波長の光を分光する分光器と、
前記分光器で分光された光を検出する検出器と、
前記参照用サンプル及び前記測定用サンプルから前記分光器に向かう光の光路を、前記光源から前記測定用サンプルに向かう光ビームの光路から分岐する光分岐手段と、を備える分光測定装置。
【請求項2】
前記参照用スペクトルの既知のスペクトル情報を参照して、前記参照用サンプルからの光のスペクトルのピーク位置と、前記測定用サンプルからの光のスペクトルのピーク位置を判別する処理装置をさらに備える請求項1に記載の分光測定装置。
【請求項3】
前記参照用サンプルが前記第1レンズの光軸上に配置され、
前記光源からの光ビームが前記参照用サンプルを透過した後、前記第2レンズを介して前記測定用サンプルに入射する請求項1、又は2に記載の分光測定装置。
【請求項4】
前記光ビームを偏向して、前記測定用サンプル上での光ビームの位置を走査する走査手段をさらに備え、
前記参照用サンプルが前記第1レンズの光軸からずれて配置され、
前記走査手段が前記光ビームを偏向することによって、前記測定用サンプルに入射していた光ビームが、前記参照用サンプルに入射することを特徴とする請求項1、又は2に記載の分光測定装置。
【請求項5】
前記参照用サンプルから前記第1レンズまでの距離が可変となるよう、前記参照用サンプルが移動可能に設けられている請求項1乃至4のいずれか1項に記載の分光測定装置。
【請求項6】
前記参照用サンプル及び前記測定用サンプルから前記分光器に向かう光が、前記分光器の入射側に設けられた入射スリットに沿った前記検出器の複数の画素に入射し、
前記分光器によって前記検出器の画素に分散される波長範囲を変えて、前記測定用サンプル、及び前記参照用サンプルのスペクトルを測定する請求項1乃至5のいずれか1項に記載の分光測定装置。
【請求項7】
前記参照用サンプルのスペクトル情報に含まれる2つ以上のピーク位置を用いて、前記測定用サンプルからの光のピーク位置を検出する請求項1乃至6のいずれか1項に記載の分光測定装置。
【請求項8】
前記参照用サンプル及び前記測定用サンプルから前記分光器に向かう光が、前記分光器の入射側に設けられた入射スリットに沿った前記検出器の複数の画素に入射し、
前記入射スリットに沿った方向における2箇所以上で、スペクトルのピーク位置をそれぞれ検出する請求項1乃至7のいずれか1項に記載の分光測定装置。
【請求項9】
測定用サンプル、及び参照用サンプルで発生した光を分光測定して、前記測定用サンプル、及び前記参照用サンプルのスペクトルのピーク位置をそれぞれ検出する分光測定方法であって、
光源からの光ビームを第1レンズによって参照用サンプルに集光するステップと、
前記第1のレンズを通過した光ビームを第2レンズによって測定用サンプルに集光するステップと、
前記光ビームの照射によって、前記測定用サンプル、及び前記参照用サンプルで発生した前記光ビームと異なる波長の光を、前記光源から前記測定用サンプルに向かう光から分岐するステップと、
前記測定用サンプル、及び前記参照用サンプルで発生した前記光ビームと異なる波長の光を分光するステップと、を備える分光測定方法。
【請求項10】
前記参照用スペクトルの既知のスペクトル情報を参照して、前記参照用サンプルからに光のスペクトルのピーク位置と、前記測定用サンプルからの光のスペクトルのピーク位置を判別する請求項9に記載の分光測定方法。
【請求項11】
前記参照用サンプルが前記第1レンズの光軸上に配置され、
前記光源からの光ビームが前記参照用サンプルを透過した後、前記第2レンズを介して前記測定用サンプルに入射する請求項9、又は10に記載の分光測定方法。
【請求項12】
前記光ビームを偏向して、前記測定用サンプル上での光ビームの位置を走査するステップをさらに備え、
前記参照用サンプルが前記第1レンズの光軸からずれて配置され、
前記走査手段が前記光ビームを偏向することによって、前記測定用サンプルに入射していた光ビームが、前記参照用サンプルに入射させることを特徴とする請求項9、又は10に記載の分光測定方法。
【請求項13】
前記参照用サンプルから前記第1レンズまでの距離が可変となるよう、前記参照用サンプルが移動可能に設けられている請求項9乃至12のいずれか1項に記載の分光測定方法。
【請求項14】
前記光源からの光ビームがライン状のスポットに集光されて、前記測定用サンプル、及び前記参照用サンプルに入射し、
前記分光器によって前記検出器の画素に分散される波長範囲を変えて、前記測定用サンプル、及び前記参照用サンプルのスペクトルを測定する請求項9乃至13のいずれか1項に記載の分光測定方法。
【請求項15】
前記参照用サンプルの既知のスペクトル情報に含まれる2つ以上のピーク位置を用いて、前記測定用サンプルからの光のピーク位置を測定する請求項9乃至14のいずれか1項に記載の分光測定方法。
【請求項16】
前記参照用サンプル及び前記測定用サンプルから前記分光器に向かう光が、前記分光器の入射側に設けられた入射スリットに沿った前記検出器の複数の画素に入射し、
前記入射スリットに沿った方向における2箇所以上で、スペクトルのピーク位置をそれぞれ検出する請求項9乃至15のいずれか1項に記載の分光測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−47668(P2012−47668A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−191946(P2010−191946)
【出願日】平成22年8月30日(2010.8.30)
【出願人】(503138134)ナノフォトン株式会社 (19)
【Fターム(参考)】