説明

分光特性測定装置、その制御方法、及び分光特性測定方法、並びに分光特性測定装置の光路長差伸縮機構

【課題】外乱による信頼性の低下を抑えた分光特性測定装置とその制御方法、分光特性測定方法、及び光路長差伸縮機構を提供する。
【解決手段】本発明は、被測定物の測定点から多様な方向に向かって発せられた光を一つにまとめた後、分割光学系によって第1反射部と第2反射部に導き、前記第1反射部と前記第2反射部の相対位置に影響を及ぼす外乱を推定し、該外乱を解消するように前記第1反射部と前記第2反射部の少なくとも一方を移動させることにより前記第1反射部によって反射された第1反射光と前記第2反射部によって反射された第2反射光の光路長差を伸縮させつつ、前記第1反射光と前記第2反射光を結像光学系によって同一点に導き、その点の干渉光強度変化に基づき前記被測定物の測定点のインターフェログラムを求め、このインターフェログラムをフーリエ変換することによりスペクトルを取得する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、干渉光強度変化を表すインターフェログラムをフーリエ変換することにより被測定物の分光特性を取得する分光特性測定装置とその制御方法、及び分光特性測定方法、並びに分光特性測定装置の光路長差伸縮機構に関する。
【背景技術】
【0002】
物体の分光特性を測定する技術として、被測定物を光学的に構成する各輝点から生じる物体光束同士の干渉現象を利用することにより被測定物のインターフェログラムを求め、このインターフェログラムをフーリエ変換することにより分光特性を取得する装置が提案されている(特許文献1、2参照)。
この装置では、被測定物に入射させた光が該被測定物の測定点で反射、散乱、屈折等することによって被測定物の測定点から多様な方向に向かって発せられた光を対物レンズを介して固定ミラー及び可動ミラーに導き、これら2つのミラーで反射された2つの光線の干渉現象によって結像面に形成される干渉光の強度を検出する。可動ミラーを移動させて2つの光線の光路長差を変化させると、両光線を構成する種々の波長の光の干渉光強度は、その波長の長さに応じた時間周期で周期的に変化することから、干渉光強度変化、即ちインターフェログラムを取得することができる。このインターフェログラムをフーリエ変換することにより波長ごとの相対強度である分光特性(スペクトル)を取得することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-309706号公報
【特許文献2】特開2008-309707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
インターフェログラムをフーリエ変換して得られる分光特性の精度を上げるためには、2つの光線の光路長差を精度良く制御することが重要である。特許文献1や2に記載の分光特性測定装置では、可動ミラーを移動させることにより2つの光線の光路長差を変化させているが、可動ミラーの駆動制御を乱すような作用が加わると2つの光線の光路長差が変動する。可動ミラーの駆動制御を乱すような作用としては、外部から加わる振動や、可動ミラーの駆動制御むら、可動ミラーの移動軸の変動などが考えられる。上述の分光特性測定装置では、2つの光線の光路長差の変動については考慮されていないため、例えば製造プロセス現場のように振動が発生するおそれのある環境に装置が設置された場合には、取得した分光特性の信頼性が低下するという問題があった。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、外乱による信頼性の低下を抑えた分光特性測定装置とその制御方法、分光特性測定方法、及び分光特性測定装置の光路長差伸縮機構を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために成された本発明は、
a) 被測定物の測定点から発せられた光を分割して第1反射部と第2反射部に導く分割光学系と、
b) 前記第1反射部によって反射された第1反射光及び前記第2反射部によって反射された第2反射光を同一点に導く結像光学系と、
c) 前記同一点に導かれた光の強度を検出する検出部と、
d) 前記第1反射部及び前記第2反射部の少なくとも一方を移動させることにより前記第1反射光と前記第2反射光の光路長差を伸縮する光路長差伸縮手段と、
e) 前記光路長差伸縮手段によって光路長差を伸縮させつつ前記検出部で光強度変化を検出して前記被測定物の測定点のインターフェログラムを求め、このインターフェログラムをフーリエ変換することによりスペクトルを取得する処理部と
を備えた分光特性測定装置において、
f) 前記第1反射部と前記第2反射部の相対位置を検出する位置検出手段と、
g) 前記位置検出手段の検出結果に基づき外乱を推定し、該外乱を解消するように前記光路長差伸縮手段を制御する制御手段と
を備えることを特徴とする。
【0007】
さらに、本発明の分光特性測定装置は、前記光路長差伸縮手段が、前記第1反射部を移動させて該第1反射部と前記第2反射部の相対位置を変化させる移動機構と、前記移動機構に移動指令値を与える指令値付与手段とを備え、
前記位置検出手段が、前記第1反射部の移動量を検出する移動量検出手段から構成され、
前記制御手段が、推定した前記外乱に応じた補償値を生成して前記移動指令値に加算する外乱オブザーバ部を備えることを特徴とする。
【0008】
ここで、前記第1反射部と前記第2反射部の相対位置に影響を及ぼす外乱としては、装置の外部で発生する外部振動や可動ミラーの駆動制御むら、可動ミラーの移動軸の変動が考えられるが、前記移動機構が、前記第1反射部を保持するステージと、前記ステージを移動させるアクチュエータとを備える場合、前記制御手段は、前記アクチュエータの動作に伴う前記ステージの振動により発生する外乱を推定することを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、
a) 被測定物の測定点から発せられた光を分割して第1反射部と第2反射部に導く分割光学系と、
b) 前記第1反射部によって反射された第1反射光及び前記第2反射部によって反射された第2反射光を同一点に導く結像光学系と、
c) 前記同一点に導かれた光の強度を検出する検出部と、
d) 前記第1反射部及び前記第2反射部の少なくとも一方を駆動することにより前記第1反射光と前記第2反射光の光路長差を伸縮する光路長差伸縮手段と、
e) 前記光路長差伸縮手段によって光路長差を伸縮させつつ前記検出部で光強度変化を検出して前記被測定物の測定点のインターフェログラムを求め、このインターフェログラムをフーリエ変換することによりスペクトルを取得する処理部と
を備えた分光特性測定装置の制御方法であって、
前記第1反射部と前記第2反射部の相対位置を検出し、この検出結果に基づき推定した外乱を解消するように前記光路長差伸縮手段を制御することを特徴とする。
【0010】
この場合、前記光路長差伸縮手段が、前記第1反射部を移動させて該第1反射部と前記第2反射部の相対位置を変化させる移動機構と、前記移動機構に移動指令値を与える指令値付与手段とを備え、
前記第1反射部の移動量と前記移動指令値の比較から外乱を推定し、推定した前記外乱に応じた補償値を生成して前記移動指令値に加算することが好ましい。
【0011】
さらに、本発明に係る分光特性測定方法は、
a) 被測定物の測定点から発せられた光を分割光学系によって分割して第1反射部と第2反射部に導き、
b) 前記第1反射部と前記第2反射部の相対位置に基づき外乱を推定し、該外乱を解消するように前記第1反射部と前記第2反射部の少なくとも一方を移動させ、
c) 前記第1反射部によって反射された第1反射光と前記第2反射部によって反射された第2反射光の光路長差を伸縮させつつ、前記第1反射光と前記第2反射光を結像光学系によって同一点に導き、
c) 前記同一点に導かれた光の強度変化に基づき前記被測定物の測定点のインターフェログラムを求め、このインターフェログラムをフーリエ変換することによりスペクトルを取得する
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、第1反射部と第2反射部との相対位置に影響を及ぼすような外乱が加わった場合でも、第1反射光と第2反射光の光路長差の変動を抑えることができるため、精度良く分光特性を取得できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施例1に係る分光特性測定装置の概略的な全体構成図。
【図2】位相シフターの可動ミラー部の構成を示す側面図。
【図3】分光特性測定装置の光学的作用の説明図。
【図4】制御系のブロック図。
【図5】外乱の有無による可動ミラー部の変位量の違いを示す図。
【図6】外乱の有無による、得られる分光スペクトルの違いを示す図。
【図7】本発明の実施例2に係る分光特性測定装置の概略的な全体構成図。
【図8】可動ミラー部を保持する保持部の斜視図。
【図9】本発明の変形例を示す制御系のブロック図。
【図10】本発明の別の変形例を示す制御系のブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る分光特性測定装置のいくつかの実施例について図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0015】
図1は、本発明の実施例1に係る分光特性測定装置の全体構成の概略図である。分光特性測定装置1は、対物レンズ12、ビームスプリッタ14、位相シフター16、結像レンズ18、この結像レンズ18の結像面となる位置に受光面を有する検出部20、検出部20の検出信号を処理する処理部22を備える。図示しない光源から被測定物Sに対して光が照射されることにより当該被測定物Sの1輝点から多様な方向に向かって放射状に生じる散乱光や蛍光発光等の光線(「物体光」ともいう)は、対物レンズ12に入射し、平行光束へ変換される。
本実施形態では、対物レンズ12が分割光学系を、ビームスプリッタ14及び結像レンズ18が結像光学系を構成する。
前記対物レンズ12は、レンズ駆動機構13によって光軸方向に移動可能に構成されている。レンズ駆動機構13は、対物レンズ12の合焦位置を走査するためのもので、例えばピエゾ素子により構成することができる。
【0016】
なお、対物レンズ12を透過した後の光束は完全な平行光束である必要はない。後述するように、1つの輝点から生じた光線を2分割あるいはそれ以上に分割できる程度に広げることができればよい。ただし、平行光束でない場合は、位相シフト量(即ち、位相シフター16による可動ミラー部162の移動量)に応じて生じる位相差量(即ち、光路長差)に誤差を生じ易い。従って、より高い分光測定精度を得るためにはできるだけ平行光束とすることが望ましい。
【0017】
対物レンズ12を透過してきた平行光束は位相シフター16に到達する。位相シフター16は、固定ミラー部161及び可動ミラー部162を備えている。固定ミラー部161及び可動ミラー部162の表面は光学的に平坦で且つ本装置1が測定対象とする光の波長帯域を反射可能な光学鏡面となっている。両ミラー部161,162は、表面が平行となるように配置されている。
【0018】
本実施形態では、位相シフター16が本発明の光路長差伸縮手段に相当する。また、ここでは、反射光としたが透過光でも良い。
なお、以下の説明では、位相シフター16に到達した光束のうち可動ミラー部162の反射面に到達して反射される光束を可動光線、固定ミラー部161の反射面に到達して反射される光束を固定光線ともいう。
【0019】
図2に示すように、可動ミラー部162は、駆動ステージ163によって駆動される保持部164によって保持されている。保持部164と駆動ステージ163の間、及び保持部164と可動ミラー部162との間にはそれぞれ板バネ165及び板バネ166が介装されている。板バネ165及び板バネ166は、それぞれ曲げ応力を利用して可動ミラー部162のヨー方向及びピッチ方向の傾きを微調整するためのものである。例えば、板バネ165の場合、破線で示す状態に折り曲げることにより傾きを調整することができる。ここで、ピッチ方向とは可動ミラー部162の移動方向をいい、ヨー方向とは可動ミラー部162の移動方向と直交する方向をいう。本実施形態では図示しないビスを回転させることにより可動ミラー部162のピッチ方向及びヨー方向の傾きを0.01°単位で微調整可能に構成されている。
【0020】
駆動ステージ163は、圧電素子を用いたアクチュエータ30(PZTナノポジッショナー、インパクト駆動機構等)により駆動され、駆動ステージ163の駆動に伴い可動ミラー部162は矢印A方向に移動する。本実施形態では、保持部164、駆動ステージ163、アクチュエータ30が光路長差伸縮手段(機構)を構成する。駆動ステージ163の移動量はアクチュエータ30に内蔵の変位センサ32によって検出される。変位センサ32は静電ストレインゲージ等の歪みセンサからなり、その検出信号は制御部34に入力される。制御部34は変位センサ32からの検出信号に基づき駆動ステージ163の移動量、つまり可動ミラー部162の移動量をモニタリングし、当該移動量を予め設定された値に制御する。従って、本実施形態では、変位センサ32が位置検出手段、移動量検出手段を構成する。
【0021】
被測定物Sの一輝点から発せられた光線は、対物レンズ12を経て位相シフター16の固定ミラー部161及び可動ミラー部162の表面に到達する。このとき、固定ミラー部161の表面及び可動ミラー部162の表面に光線が二分割されて到達する。なお、図1では、固定ミラー部161の表面に到達した光線即ち固定光線と、可動ミラー部162の表面に到達した光線即ち可動光線の光量がほぼ等しくなるように描いているが、固定光線及び可動光線の一方或いは両方の光路に減光フィルタを設置して相対的な光量差を調整し、光量の均等化を行うことも可能である。
【0022】
固定ミラー部161及び可動ミラー部162の表面で反射された光線は、それぞれ固定光線及び可動光線として結像レンズ18に入射し、検出部20の結像面において集光する。このとき、被測定物Sから発せられる光線には様々な波長の光が含まれる(且つ各波長の光の初期位相が必ずしも揃っていない)ことから、可動ミラー部162を移動させて固定光線と可動光線との光路長差を変化させることにより、図3(a)に示すようなインターフェログラムと呼ばれる結像強度変化(干渉光強度変化)の波形が得られる。図3(a)は検出部20の一つの画素におけるインターフェログラムである。なお、図3(a)において、横軸は可動ミラー部162の移動に伴う固定光線と可動光線間の光路長差を、縦軸は結像面上の一点における結像強度を示す。
【0023】
このインターフェログラムをフーリエ変換することにより、被測定物Sの一輝点から発せられた光の波長毎の相対強度である分光特性を取得することができる(図3(b)参照)。検出部20の全ての画素において分光特性を得ることができれば、被測定物Sの2次元分光計測が可能となる。
【0024】
本実施形態では、検出部20は撮像手段としてのCCDカメラを備えて構成されている。なお、撮像手段はCCDカメラの他、CMOSカメラ、赤外線カメラ等から構成することもできる。また、撮像手段が検出する光強度データは1次元でも2次元でも良いが、ここでは2次元の光強度データを検出するものとする。検出部20がCCDカメラから取得した2次元の光強度データを収録している間、駆動ステージ163を停止させる必要がある。そのため、本実施形態では、駆動ステージ163のアクチュエータ30は間欠動作し、微動ステップ、停止ステップを交互に繰り返す。駆動ステージ163の可動部の構造物(可動ミラー部を保持する板材等)が完全な剛体ではないため、アクチュエータ30の駆動開始直後及び停止直後は可動ミラー部162が振動する。そのため、検出部20はアクチュエータ30が停止してから可動ミラー部162の振動が所定値以下になったとき、あるいは、アクチュエータ30が停止してから所定時間経過したときに、CCDカメラから取得した干渉光強度の2次元データを収録するようになっている。
【0025】
CCDカメラが検出する干渉光強度は、可動光線と固定光線の光路長差の変化に伴い変化し、インターフェログラムが得られる。インターフェログラムをフーリエ変換して得られる分光特性の精度を上げるためには、可動ミラー部162を高精度に制御する必要がある。そこで、制御部34は、可動ミラー部162と固定ミラー部161の相対位置に影響を与えるような外乱を推定し、その推定値に基づく補償値を位相シフター16の移動指令値に加算するようにしている。
【0026】
ここで、分光特性測定装置1の制御系の構成について図4を用いて説明する。制御部34は、外乱オブザーバ部40、コントローラ42を備えている。制御部34の実態はパーソナルコンピュータ(以下、「パソコン」という。)等に組み込まれたCPU等の演算処理プロセッサであり、CPU内或いはCPU外のメモリには予め所定のアプリケーションプログラムが格納されている。CPUが、このアプリケーションプログラムを読み出し、実行することにより、外乱オブザーバ部40の処理機能を実現する。アプリケーションプログラムには、後述の伝達関数等が予め設定されている。
【0027】
図4において、コントローラ42にはパソコンからの指令値zcmdが入力される。この指令値zcmdは、使用者がパソコンのキーボード等の入力手段を用いて入力しても良く、予めパソコン内のメモリに格納されていても良い。コントローラ42は、指令値zcmdが入力されると、この指令値zcmdに基づき、制御対象であるアクチュエータ30への移動指令値zrefを出力する。従って、コントローラ42が指令値付与手段を構成する。
加算器100には、コントローラ42からの移動指令値zrefと、外乱オブザーバ部40からの推定外乱変位値z^dis、外乱入力値zlが入力される。外乱オブザーバ部40には、コントローラ42からの指令値zrefと変位センサ32の検出値zとの差分値である外乱変位値zdisが入力され、推定外乱変位値z^disを出力する。ローパスフィルタ44の構造式(伝達関数)は以下の(1)式で示される。
g/(s+g) ・・・(1)
(gは遮断周波数を示す。)
よって、推定外乱変位値z^disは以下の(2)式で求められる。
z^dis=zdis・[g/(s+g)] ・・・(2)
【0028】
これにより、アクチュエータ30には、移動指令値zrefに、外乱入力値zlを打ち消す推定外乱変位値z^disを加えたものが入力される。このため、アクチュエータ30に加わる外乱の影響が抑制され、駆動ステージ163を精度良く制御することができる。
【0029】
図5〜図6は、波長632.8nmのHe-Neレーザ光源からのレーザ光を上記分光特性測定装置1の対物レンズ12に入射させて行った実験結果を示したものである。
図5は外乱の有無による可動ミラー部162の変位量の違いを、図6は外乱の有無により得られる分光スペクトルをそれぞれ示している。
具体的には、図5の(a)は本来の移動指令値に対する可動ミラー部162の変位量、(b)は人工的に入力した外乱による可動ミラー部162の変位量を示している。本来の移動指令値に外乱入力値が加わった結果、微動ミラー部162の変位量は図5〔c〕に示すようになる。
一方、上述のように外乱オブザーバ部40による外乱抑制制御を行った場合の可動ミラー部162の変位量を図5(d)に示す。図5(a)と比べると可動ミラー部162の変位量はやや変動するが、図5(c)のような周期的な変動が抑えられていることが分かる。
【0030】
図6は、可動ミラー部162の変位パターンと得られる分光特性の関係を実験的に求めた結果である。図6(a)〜(c)における左のグラフは図5の(a)、(c)、(d)と同じグラフである。図6の(a)と(b)の比較から、外乱が加わった結果、分光スペクトルに、正常な分光スペクトルでは見られないピーク(以下、「異常ピーク」と呼び、P1〜P3で示す。)が現れることが分かる。一方、図6の(c)では、これら異常ピークP1〜P3の相対輝度が小さくなり、異常ピークの発生を抑制できたことが分かる。
【実施例2】
【0031】
図7及び図8は本発明の実施例2を示している。本実施例が実施例1と大きく異なる点は、位相シフター16の配置及び可動ミラー部162の保持部の構成である。
図7に示すように本実施例に係る分光特性測定装置においては、位相シフター16は、固定ミラー部161及び可動ミラー部162の反射面が対物レンズ12からの光束の光軸に対して45°傾くように配置されている。このように可動ミラー部161及び固定ミラー部162を斜めに配置したことにより、本実施例では対物レンズ12からの光束を分岐するためのビームスプリッタが不要となるため、物体光の利用効率を高くすることができる。また、本実施例では、対物レンズ12が分割光学系として機能する。
【0032】
駆動ステージ163は、可動ミラー部162の反射面の光軸に対する傾きを45°に維持した状態で当該可動ミラー部162を移動する。このとき、可動ミラー部162の光軸方向の移動量は、駆動ステージ163の移動量の√2となる。また、固定光線群と可動光線群の2光束間の相対的な位相変化を与える光路長差は、可動ミラー部162の光軸方向の移動量の2倍となる。
【0033】
図8に示すように、可動ミラー部162の保持部50はL字状の保持部本体501と、保持部本体501の前面に取り付けられたミラー取付部502から構成されている。ミラー取付部502の前面に可動ミラー部162(図示せず)が取り付けられる。保持部本体501の背面には、2本の調節ネジ503,504が螺挿されている。前記調節ネジ503,504は保持部本体501を貫通しており、先端部がミラー取付部502に当接している。調節ネジ503,504のねじ込み量を調節することで可動ミラー部162(ミラー取付部502)のピッチ方向及びヨー方向の傾きを0.01°単位で微調整することができる。保持部50をこのように構成したことにより、従って、本実施例では、駆動ステージ163と保持部164の間及び保持部164と可動ミラー部162の間には板バネは設けられていない。
なお、上記した以外の分光特性測定装置の構成は実施例1と同じである。従って、本実施例においても実施例と同様の作用、効果が得られる。
【0034】
尚、本発明は上記した実施例に限らず種々の変形が可能である。例えば、図4に示した制御系に代えて図9や図10に示すような制御系を用いて可動ミラー部162を制御するようにしても良い。図9及び図10は外乱推定値の精度向上を図るためにフィードバック部分に2次系フィルタを付加した構成を示している。
【符号の説明】
【0035】
1…分光特性測定装置
12…対物レンズ
14…ビームスプリッタ
16…位相シフター
161…固定ミラー部
162…可動ミラー部
163…駆動ステージ
18…結像レンズ
20…検出部
22…処理部
30…アクチュエータ
32…変位センサ
34…制御部
40…外乱オブザーバ部
42…コントローラ
44…ローパスフィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a) 被測定物の測定点から発せられた光を分割して第1反射部と第2反射部に導く分割光学系と、
b) 前記第1反射部によって反射された第1反射光及び前記第2反射部によって反射された第2反射光を同一点に導く結像光学系と、
c) 前記同一点の光の強度を検出する検出部と、
d) 前記第1反射部及び前記第2反射部の少なくとも一方を移動させることにより前記第1反射光と前記第2反射光の光路長差を伸縮する光路長差伸縮手段と、
e) 前記光路長差伸縮手段によって光路長差を伸縮させつつ前記検出部で光強度変化を検出して前記被測定物の測定点のインターフェログラムを求め、このインターフェログラムをフーリエ変換することによりスペクトルを取得する処理部と
を備えた分光特性測定装置において、
f) 前記第1反射部と前記第2反射部の相対位置を検出する位置検出手段と、
g) 前記位置検出手段の検出結果に基づき外乱を推定し、該外乱を解消するように前記光路長差伸縮手段を制御する制御手段と
を備えることを特徴とする分光特性測定装置。
【請求項2】
前記光路長差伸縮手段が、前記第1反射部を移動させて該第1反射部と前記第2反射部の相対位置を変化させる移動機構と、前記移動機構に移動指令値を与える指令値付与手段とを備え、
前記位置検出手段が、前記第1反射部の移動量を検出する移動量検出手段から構成され、
前記制御手段が、推定した外乱に応じた補償値を生成して前記移動指令値に加算する外乱オブザーバ部を備えることを特徴とする請求項1に記載の分光特性測定装置。
【請求項3】
前記移動機構が、前記第1反射部を保持するステージと、前記ステージを移動させるアクチュエータとを備え、
前記制御手段が、前記アクチュエータの動作に伴う前記ステージ及び前記第1反射部の少なくとも一方の振動により発生する外乱を推定することを特徴とする請求項2に記載の分光特性測定装置。
【請求項4】
前記移動機構が、前記第1反射部を保持するステージと、前記ステージの移動と停止を交互に繰り返すアクチュエータとを備え、
前記検出部が、光強度データを検出する撮像手段と、前記アクチュエータが停止した後、前記第1反射部の振動が所定値以下になったとき、あるいは前記アクチュエータが停止してから所定時間経過したときの前記撮像手段の検出データを取得するデータ取得部とを備えることを特徴とする請求項2に記載の分光特性測定装置。
【請求項5】
a) 被測定物の測定点から発せられた光を分割して第1反射部と第2反射部に導く分割光学系と、
b) 前記第1反射部によって反射された第1反射光及び前記第2反射部によって反射された第2反射光を同一点に導く結像光学系と、
c) 前記同一点に導かれた光の強度を検出する検出部と、
d) 前記第1反射部及び前記第2反射部の少なくとも一方を移動させることにより前記第1反射光と前記第2反射光の光路長差を伸縮する光路長差伸縮手段と、
e) 前記光路長差伸縮手段によって光路長差を伸縮させつつ前記検出部で光強度変化を検出して前記被測定物の測定点のインターフェログラムを求め、このインターフェログラムをフーリエ変換することによりスペクトルを取得する処理部とを備えた分光特性測定装置の制御方法において、
前記第1反射部と前記第2反射部の相対位置を検出し、この検出結果に基づき推定した外乱を解消するように前記光路長差伸縮手段を制御することを特徴とする分光特性測定装置の制御方法。
【請求項6】
前記光路長差伸縮手段が、前記第1反射部を移動させて該第1反射部と前記第2反射部の相対位置を変化させる移動機構と、前記移動機構に移動指令値を与える指令値付与手段とを備え、
前記第1反射部の移動量と前記移動指令値の比較から外乱を推定し、推定した前記外乱に応じた補償値を生成して前記移動指令値に加算することを特徴とする請求項4に記載の分光特性測定装置の制御方法。
【請求項7】
前記移動機構が、前記第1反射部を保持するステージと、前記ステージを移動させるアクチュエータとを備え、
前記アクチュエータの動作に伴う前記ステージ及び前記第1反射部の少なくとも一方の振動により発生する外乱を推定することを特徴とする請求項6に記載の分光特性測定装置の制御方法。
【請求項8】
前記移動機構が、前記第1反射部を保持するステージと、前記ステージの移動と停止を交互に繰り返すアクチュエータとを備え、
前記検出部が、光強度データを検出する撮像手段を備え、前記アクチュエータが停止した後、前記第1反射部の振動が所定値以下になったとき、あるいは前記アクチュエータが停止してから所定時間経過したときの前記撮像手段の検出データを取得することを特徴とする請求項6に記載の分光特性測定装置の制御方法。
【請求項9】
a) 被測定物の測定点から発せられた光を分割光学系によって分割して第1反射部と第2反射部に導き、
b)前記第1反射部と前記第2反射部の相対位置に基づき外乱を推定し、該外乱を解消するように前記第1反射部と前記第2反射部の少なくとも一方を移動させ、
c)前記第1反射部によって反射された第1反射光と前記第2反射部によって反射された第2反射光の光路長差を伸縮させつつ、前記第1反射光と前記第2反射光を結像光学系によって同一点に導き、
d) 前記同一点に導かれた光の強度変化に基づき前記被測定物の測定点のインターフェログラムを求め、このインターフェログラムをフーリエ変換することによりスペクトルを取得する分光特性測定方法。
【請求項10】
被測定物の測定点から発せられた光を分割光学系によって分割して第1反射部と第2反射部に導き、
前記第1反射部と前記第2反射部の相対位置に基づき外乱を推定し、該外乱を解消するように前記第1反射部と前記第2反射部の少なくとも一方を移動させて前記第1反射部によって反射された第1反射光と前記第2反射部によって反射された第2反射光の相対的な光路長差を伸縮させつつ、前記第1反射光と前記第2反射光を結像光学系によって同一点に導き、
前記同一点に導かれた光の強度変化に基づき前記被測定物の測定点のインターフェログラムを求め、このインターフェログラムをフーリエ変換することによりスペクトルを取得する分光特性測定装置の、前記第1反射光と前記第2反射光の光路長差を伸縮するために用いられる光路長差伸縮機構であって、
前記第1反射部及び前記第2反射部のいずれか一方を保持するステージと、前記ステージを移動させるアクチュエータと、前記アクチュエータに移動指令値を与える指令値付与手段とを備えることを特徴とする分光特性測定装置の光路長差伸縮機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−184961(P2012−184961A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−46872(P2011−46872)
【出願日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(304028346)国立大学法人 香川大学 (285)
【出願人】(000166247)古野電気株式会社 (441)
【Fターム(参考)】