説明

分光画像処理装置、分光画像処理方法、及びコンピュータープログラム

【課題】肌のトラブルを改善するために必要な栄養素等を無理なく摂取できる食事メニューを知ることができる分光画像処理装置及び分光画像処理方法並びにコンピュータープログラムを提供する。
【解決手段】分光画像処理装置は、複数の波長帯域で被検体Tを撮影して得られるマルチバンド画像を取得するマルチバンド画像取得部12,32と、分光推定パラメーターを保存する分光推定パラメーター保存部36と、マルチバンド画像から分光スペクトルを演算する分光推定部16と、検量処理パラメーターを保存する検量処理パラメーター保存部38と、分光スペクトルから特徴量を演算する検量処理部18と、診断データを保存する診断データベース保存部39と、特徴量から被検体Tの評価値を演算する診断部19と、提案データを保存する提案データベース保存部52と、評価値から被検体Tの食事内容を提案する提案部51と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分光画像処理装置、分光画像処理方法、及びコンピュータープログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、近赤外分光法を用いて肌の状態を推定、診断する技術が発展してきている。現在では、化粧品販売などで、その場で近赤外分光計測を行い、肌状態を計測することで、肌状態に合わせた化粧品の推奨などが行われている。
【0003】
従来、利用者の食事内容履歴、体調情報履歴を収集し、体調悪化要因を特定し、体調悪化を引き起こさない食事内容を支援するシステムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−249375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、一般に近赤外分光法による肌の測定結果から肌の状態を判断することや、問題点を改善する方法を知ることには、高度な専門知識が必要であり、誰でも行えることではなかった。同様に、肌のトラブルや問題点を根本的に改善するためには、必要な栄養素を効率よく摂取することが必要であるが、そのための食事メニューを選択することも、一般には難しい問題となっている。
【0006】
また、特許文献1では食事履歴、体調履歴を収集しないと、悪化要因を特定できない虞がある。また、体調情報の判断を医師が行うため、即時性が低い虞がある。さらに、肌状態改善のための知識を利用できない虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]本適用例に係る分光画像処理装置は、複数の波長帯域で被検体を撮影して得られるマルチバンド画像を取得するマルチバンド画像取得部と、前記マルチバンド画像のそれぞれにおける所定位置の画素値を示す第1群の変量と、該所定位置に対応した前記被検体の部分における分光スペクトルを示す第2群の変量と、の間の関係を示す分光推定パラメーターを保存する分光推定パラメーター保存部と、前記分光推定パラメーター保存部に保存されている前記分光推定パラメーターを用いて、前記マルチバンド画像から前記分光スペクトルを演算する分光推定部と、前記分光スペクトルを前記被検体の特定成分に関する特徴量に変換することに用いる検量処理パラメーターを保存する検量処理パラメーター保存部と、前記検量処理パラメーター保存部に保存されている前記検量処理パラメーターを用いて、前記分光推定部によって求められた前記分光スペクトルから前記特徴量を演算する検量処理部と、前記被検体の前記特徴量を前記被検体の評価値に変換することに用いる診断データを保存する診断データベース保存部と、前記診断データベース保存部に保存されている前記診断データを用いて、前記検量処理部によって得られた前記特徴量から前記被検体の前記評価値を演算する診断部と、前記被検体の前記評価値を前記被検体の食事内容に変換することに用いる提案データを保存する提案データベース保存部と、前記提案データベース保存部に保存されている前記提案データを用いて、前記診断部によって得られた前記評価値から前記被検体の前記食事内容を提案する提案部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
本適用例によれば、肌の状態を分光分析により診断し、さらに、肌に関する専門知識と、現在の肌の正確な情報を、即時で合成できるので、肌状態改善のための食事メニューがわかる。これにより、肌のトラブルを改善するために必要な栄養素等を無理なく摂取できる食事メニューを知ることができる。
【0010】
[適用例2]上記適用例に記載の分光画像処理装置は、前記マルチバンド画像取得部は、複数の波長帯域の感度で前記被検体の撮影を行うマルチバンドカメラに対して測定帯域を指示することに用いる複数の測定帯域データを保存する測定帯域データ保存部と、前記測定帯域データ保存部に保存されている前記測定帯域データを前記マルチバンドカメラに送ることによって、該マルチバンドカメラに測定帯域を指示する測定帯域指示部と、を備えることを特徴とする。
【0011】
本適用例によれば、マルチバンドカメラに対して測定帯域を指示することが可能となることから、特定成分に応じた所定帯域を含む複数の波長帯域のマルチバンド画像をより確実に取得することができる。
【0012】
[適用例3]上記適用例に記載の分光画像処理装置は、前記マルチバンド画像の取得先であるマルチバンドカメラにおける誤差を補正することに用いる補正量を、前記マルチバンド画像を構成するバンド画像のそれぞれに対して定めた前処理データを保存する前処理データ保存部と、前記マルチバンド画像取得部によって取得した前記マルチバンド画像を、前記前処理データ保存部に保存されている前記前処理データに基づいて補正し、補正後のマルチバンド画像を前記分光推定部に送る前処理部と、を備えることを特徴とする。
【0013】
本適用例によれば、マルチバンドカメラにおける誤差を、補正することができることから、推定精度をより高めることができる。
【0014】
[適用例4]本適用例に係る分光画像処理方法は、複数の波長帯域で被検体を撮影して得られるマルチバンド画像を取得する工程と、前記マルチバンド画像のそれぞれにおける所定位置の画素値を示す第1群の変量と、該所定位置に対応した前記被検体の部分における分光スペクトルを示す第2群の変量と、の間の関係を示す分光推定パラメーターを用いて、前記マルチバンド画像から前記分光スペクトルを演算する工程と、前記分光スペクトルを前記被検体の特定成分に関する特徴量に変換することに用いる検量処理パラメーターを用いて、前記分光スペクトルから前記特徴量を演算する工程と、前記被検体の前記特徴量を前記被検体の評価値に変換することに用いる診断データを用いて、前記特徴量から前記被検体の前記評価値を演算する工程と、前記被検体の前記評価値を前記被検体の食事内容に変換することに用いる提案データを用いて、前記評価値から前記被検体の前記食事内容を提案する工程と、を含むことを特徴とする。
【0015】
[適用例5]本適用例に係るコンピュータープログラムは、複数の波長帯域で被検体を撮影して得られるマルチバンド画像を取得する機能と、前記マルチバンド画像のそれぞれにおける所定位置の画素値を示す第1群の変量と、該所定位置に対応した前記被検体の部分における分光スペクトルを示す第2群の変量と、の間の関係を示す分光推定パラメーターを用いて、前記マルチバンド画像から前記分光スペクトルを演算する機能と、前記分光スペクトルを前記被検体の特定成分に関する特徴量に変換することに用いる検量処理パラメーターを用いて、前記分光スペクトルから前記特徴量を演算する機能と、前記被検体の前記特徴量を前記被検体の評価値に変換することに用いる診断データを用いて、前記特徴量から前記被検体の前記評価値を演算する機能と、前記被検体の前記評価値を前記被検体の食事内容に変換することに用いる提案データを用いて、前記評価値から前記被検体の前記食事内容を提案する機能と、をコンピューターに実現させることを特徴とする。
【0016】
適用例4の分光画像処理方法及び適用例5のコンピュータープログラムは、適用例1の分光画像処理装置と同様に、マルチバンド画像から分光スペクトルを得ることができるので、肌のトラブルを改善するために必要な栄養素等を無理なく摂取できる食事メニューを知ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施例に係る食事内容提案システムの構成を概略的に示す説明図。
【図2】本実施例に係る食事内容を提案する作業手順を示すフローチャート。
【図3】本実施例に係る前処理データを説明するための説明図。
【図4】本実施例に係る分光画像処理を示すフローチャート。
【図5】本実施例に係る肌構成成分と肌状態との関係を例示する図。
【図6】本実施例に係る食事メニューの提案処理を示すフローチャート。
【図7】本実施例に係る肌状態と必要栄養素との関係を例示する表。
【図8】本実施例に係る必要栄養素と食事メニューとの関係を例示する表。
【図9】本実施例に係る提案表示画面を例示する図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を実施例に基づいて説明する。本発明の一実施例は、被検体の肌状態の問題点を改善するための食事内容を提案するためのものである。
【0019】
A.食事内容提案システムの全体構成:
図1は、本実施例に係る食事内容提案システムの構成を概略的に示す説明図である。図示するように、食事内容提案システム1は、分光画像処理装置100と、マルチバンドカメラ200と、表示装置300と、記憶装置400と、を備える。マルチバンドカメラ200、表示装置300、及び記憶装置400は、分光画像処理装置100に電気的に接続されている。
【0020】
マルチバンドカメラ200は、レンズユニット210、波長選択フィルター220、CCD230、CCDAFE(Analog Front End)240、及び光源ユニット250等を備える。レンズユニット210は、被写体にフォーカスを合わせるオートフォーカス機構を備えないものであるが、オートフォーカス機構を備えるものとすることもできる。波長選択フィルター220は、透過波長帯域を変更可能なファブリペロー型のフィルターが用いられている。CCD230は、波長選択フィルター220を透過した光を光電変換して被写体像を表す電気信号を得る撮像デバイスである。CCDAFE240は、CCD230の検出信号をデジタル化するためのものである。光源ユニット250は、被写体を照射するためのものである。
【0021】
上記構成のマルチバンドカメラ200では分光画像処理装置100から、複数の測定帯域の指示を波長選択フィルター220で順に受けることで、波長選択フィルター220の透過波長域が順に変更される。こうして、マルチバンドカメラ200は、複数の波長帯域(マルチバンド)の感度で被検体T(被写体)の撮影を行う。
【0022】
表示装置300は、画面に情報を表示するための装置である。記憶装置400は、データを記憶するための外部装置であり、例えばハードディスクドライブ装置である。
【0023】
分光画像処理装置100は、波長帯域の相違するマルチバンド画像を分光スペクトルに変換する。分光画像処理装置100は、マルチバンドカメラ200で撮影して得られたマルチバンド画像を処理することで、被検体Tの食事内容を提案する装置である。分光画像処理装置100は、プログラムを実行することにより種々の処理や制御を行うCPU10と、プログラムやデータ・情報を格納するメモリー30と、マルチバンドカメラ200から画像データを受取、かつ、表示装置300及び記憶装置400に食事内容提案の結果を送る入出力インターフェイス(I/F)50と、を備えている。
【0024】
メモリー30は、測定帯域データ保存部32、前処理データ保存部34、分光推定パラメーター保存部36、検量処理パラメーター保存部38、診断データベース保存部39、及び提案データベース保存部52を有している。測定帯域データ保存部32は、複数の波長帯域の感度で被検体Tの撮影を行うマルチバンドカメラ200に対して測定帯域を指示することに用いる複数の測定帯域データを保存する。前処理データ保存部34は、マルチバンド画像の取得先であるマルチバンドカメラ200における誤差を補正することに用いる補正量を、マルチバンド画像を構成するバンド画像のそれぞれに対して定めた前処理データを保存する。分光推定パラメーター保存部36は、マルチバンド画像のそれぞれにおける所定位置の画素値を示す第1群の変量と、所定位置に対応した被検体Tの部分における分光スペクトルを示す第2群の変量と、の間の関係を示す分光推定パラメーターを保存する。検量処理パラメーター保存部38は、分光スペクトルを被検体Tの特定成分に関する特徴量に変換することに用いる検量処理パラメーターを保存する。診断データベース保存部39は、被検体Tの特徴量を被検体Tの評価値に変換することに用いる診断データを保存する。提案データベース保存部52は、被検体Tの評価値を被検体Tの食事内容に変換することに用いる提案データを保存する。各保存部32〜52の詳細については、後ほど詳述する。また、メモリー30は、図示はしないが、食事内容提案用プログラムを格納するプログラム保存部を有している。本実施例では、メモリー30は不揮発性のメモリーである。なお、不揮発性に替えて揮発性のメモリーとして、処理の実行前に必要なデータやパラメーターを外部から受け取って保存する構成としてもよい。
【0025】
CPU10は、メモリー30のプログラム保存部に格納された食事内容提案用プログラムを実行することで、測定帯域指示部12、前処理部14、分光推定部16、検量処理部18、診断部19、及び提案部51を機能的に実現する。検量処理部18は、肌を構成する各種成分を特徴量として、検量を行う。測定帯域指示部12は、測定帯域データ保存部32に保存されている測定帯域データをマルチバンドカメラ200に送ることによって、マルチバンドカメラ200に測定帯域を指示する。前処理部14は、測定帯域指示部12によって取得したマルチバンド画像を、前処理データ保存部34に保存されている前処理データに基づいて補正し、補正後のマルチバンド画像を分光推定部16に送る。分光推定部16と、分光推定パラメーター保存部36に保存されている分光推定パラメーターを用いて、マルチバンド画像から分光スペクトルを演算する。検量処理部18は、検量処理パラメーター保存部38に保存されている検量処理パラメーターを用いて、分光推定部16によって求められた分光スペクトルから特徴量を演算する。診断部19は、検量処理部18で検量した肌の各種成分の成分量から、現在の肌状態について、栄養状態の過不足により引き起こされる問題点を診断する。提案部51は、診断された問題点を改善するために必要な栄養素を判断し、必要な栄養素を適切に摂取できる食事メニューを提案データベースから選択し、提案する。各部12〜51は、対応する保存部32〜52に保存されたデータやパラメーターを用いて各処理を実行する。各処理の結果、CPU10は、マルチバンドカメラ200で得られるマルチバンド画像を取得し、マルチバンド画像から被検体Tの食事内容を提案し、その提案結果を、入出力I/F50を介して表示装置300及び記憶装置400に送信する。この結果、食事内容提案の結果が表示され、保存される。
【0026】
なお、分光画像処理装置100は、被検体Tの食事内容を提案するに際し、被検体Tの特定成分に関する特徴量を推定していることから、特徴量推定装置としても機能する。入出力インターフェイス(I/F)50、メモリー30の測定帯域データ保存部32、及びCPU10で機能する測定帯域指示部12が、適用例1における「マルチバンド画像取得部」に対応している。
【0027】
B.食事内容提案の作業手順:
図2は、本実施例に係る食事内容を提案する作業手順を示すフローチャートである。図示するように、まず、肌診断に必要となるデータベースを生成し、そのデータベースを分光画像処理装置100のメモリー30に保存する(工程S10)。ここでいうデータベースは、分光画像処理装置100における各保存部32〜52(図1)に保存される各種データに相当する。
【0028】
その後、分光画像処理装置100に接続されたマルチバンドカメラ200を用いて、被検体Tを撮影する(工程S20)。次いで、分光画像処理装置100は、マルチバンドカメラ200から出力されるマルチバンド画像から被検体Tの肌を診断し(工程S30)、その診断結果を表示・保存する(工程S40)。その後、分光画像処理装置100は、次の被検体Tがあるか否かを診断し(工程S50)、次の被検体Tがある場合(工程S50がYES)には、工程S20に戻って、次の被検体Tに対して工程S20ないし工程S40を行う。工程S50で、次の被検体Tがない場合(工程S50がNO)には、処理を終了する。
【0029】
C.データベースの生成・保存:
前記工程S10により生成し、保存するデータベースとしての各種データについて、その内容と生成方法を次に詳述する。各種データは、測定帯域データ、前処理データ、分光推定パラメーター、検量処理パラメーター、診断データベース、及び提案データベースである。なお、データベースの生成・保存は、分光画像処理装置100の工場出荷前に行うことが好適である。工程S30における診断は、肌が既知の被検体Tを使用する場合には省略してもよい。上記の手順の一部を、図示しないインターフェイスを介して作業者が行ってもよい。
【0030】
・前処理データ:
マルチバンドカメラ200には、光学系のムラや、波長選択フィルター220を構成するファブリペロー型フィルターの反りや、光源ユニット250の照明ムラなど、ハードウェア的な製造誤差がある。これにより、マルチバンドカメラ200では、撮影によって得られたマルチバンド画像の各面内(マルチバンド画像を構成する各バンド画像内)に波長ムラ(透過波長のムラ)や光量ムラが発生する。本実施例では、この面内波長ムラ及び光量ムラをキャンセルするための補正量を前処理データとして、前処理データ保存部34に記憶する。
【0031】
具体的には、まず、肌診断に使用するマルチバンドカメラ200(機種が同一、より好ましくは実機そのもの)で均一色のサンプルを撮影し、マルチバンド画像を取得する。次いで、マルチバンド画像を構成するバンド画像のそれぞれにおいて、画像内のどの位置でも均一となるように、ハードウェア的な製造誤差をキャンセルする補正データを画素毎に求め、その画素毎の補正データの集合を各バンド画像に対応した前処理データとして、前処理データ保存部34に記憶する。均一色のサンプルとしては、どの波長域でも均等に光を反射可能な色が好ましく、例えば標準白色板を用意する。
【0032】
図3は、本実施例に係る前処理データを説明するための説明図である。図中の(A)にマルチバンド画像を示し、図中の(B)に前処理データを示す。図示するように、複数の前処理データPD1,PD2,…,PDnのそれぞれは、マルチバンド画像を構成するバンド画像BP1,…,BPn毎(すなわち、マルチバンド画像の波長帯域毎)に用意されるもので、バンド画像BP1,BP2,…,BPnと同数、用意されている。そして、前処理データPD1,PD2,…,PDnのそれぞれは、各バンド画像と同じ要素数(画素数)によって構成される。k番目(k=1〜n)の前処理データPDkにおける、横方向がi番目、縦方向がj番目の要素に格納される補正データαk(i,j)は、k番目のバンド画像BPkにおける、横方向がi番目、縦方向がj番目の画素を補正する補正データ(k番目のバンド画像BPk内でムラをキャンセルすることに用いる補正データ)が格納されることになる。
【0033】
なお、本実施例では、補正データは、バンド画像BP1〜BPnにおける全ての画素に対して生成する構成としたが、これに替えて、離散的に補正データを生成することで補正データの数を減らして、補正データのない部分については補間演算によって求めるようにしてもよい。なお、前処理データの生成方法は、上記に限る必要はなく、他の手法に換えることができる。
【0034】
前処理データは、マルチバンド画像の各画素における補正量をテーブル化したものである。補正量は、マルチバンドカメラ200の光学系・フィルターなどのムラや、光源ユニット250の照明ムラをあらかじめ測定しておき、それをキャンセルする値を算出することで求める。前処理データは、マルチバンドカメラ200の特性のみに依存するので、工程S10の処理は検量/診断対象に依らず、共通の処理を用いることができる。
【0035】
・分光推定パラメーター:
分光推定パラメーターは、マルチバンド画像と分光スペクトルとの関係を表したものである。マルチバンド画像はマルチバンドカメラ200で得られる波長帯域の相違するマルチバンド画像であり、分光スペクトルは分光器によって得られるスペクトルである。具体的には、以下の式(1)における分光推定行列Mが、分光推定パラメーターである。式(1)において、xはマルチバンド画像の所定位置の値(画素値)を示す行列であり、pはその所定位置に対応した部分における分光スペクトルを示す行列である。「マルチバンド画像の所定位置の画素値」とはマルチバンド画像を構成する各バンド画像の所定位置の画素値のことであり、「その所定位置に対応した部分」とはその所定位置に対応した被検体Tにおける位置のことである。
【0036】
【数1】

【0037】
式(1)は、以下の式(2)を意味する。式(2)に示すように、行列xは、x1、x2、…、xnの要素を含むものである。各要素は測定帯域データ保存部32に保存された測定帯域データのそれぞれに対応したもので、要素の数nは、要素測定帯域データの数と同一である。すなわち、マルチバンド画像の所定位置の画素値は各測定帯域の光の強度として示されることから、前記画素値を示すxは、x1、x2、…、xnを要素とする行列で表される。一方、分光スペクトルを示す行列pは、p1、p2、…、pmの要素を含むものである。各要素は分光スペクトルを表す波長帯域に対応したもので、その要素の数mは、マルチバンド画像の画素値を示す行列xの要素の数nよりも大きい。分光推定行列Mは、m×n行列である。
【0038】
【数2】

【0039】
予め用意した色見本を、食事内容提案に使用するマルチバンドカメラ200(機種が同一、より好ましくは実機そのもの)と、分光器を備えた撮影装置(以下、「分光器撮影装置」と呼ぶ)とで撮影する。分光器撮影装置は、色見本からの反射光を分光器に通し、分光器から出力されるスペクトルを撮像素子の撮像面で受ける周知のものであり、例えば前述した特許文献1に記載されたものである。その後、マルチバンドカメラ200で得られたマルチバンド画像から所定位置の画素値を抽出する。ここでいう所定位置とは、マルチバンド画像内で色見本が写っている部分であればどの位置でもよいが、好ましくは、前処理データを作成する際に、ハードウェア的な製造誤差が少ないとされた部分に対応した位置とするのがよい。
【0040】
続いて、その所定位置に対応した色見本上の部分からの反射光のスペクトルを、分光器撮影装置で得られたデータから抽出する。これらの結果、前記色見本についての、マルチバンド画像の所定位置の画素値を示す行列xと、上記所定位置に対応した部分における分光スペクトルを示す行列pとを得ることができる。以下、「マルチバンド画像の所定位置の画素値」を単に「マルチバンド画像の画素値」と呼び、「上記所定位置に対応した部分」を単に「所定部分」と呼ぶ。
【0041】
さらに、可視光線の帯域から赤外線の帯域まで含む範囲で多数用意された各色見本について、マルチバンドカメラと分光器撮影装置での撮影を行い、多数の色見本のそれぞれについての、マルチバンド画像の画素値を示す行列xと、所定部分における分光スペクトルを示す行列pとを得る。
【0042】
行列はベクトルとして表すことができることから、以下、行列xをX(ベクトルを意味し、大文字で示す)と表し、行列pをP(ベクトルを意味し、大文字で示す)と表すものとする。したがって、多数の色見本についてのマルチバンド画像の画素値を示す行列(X1,X2,…,Xu)と、多数の色見本についての所定部分における分光スペクトルを示す行列(P1,P2,…,Pu)との間は、分光推定行列Mを用いて、以下の式(3)で関係づけることができる。uは色見本の数に一致する。
【0043】
【数3】

【0044】
行列(X1,X2,…,Xu)をAと表し、行列(P1,P2,…,Pu)をBと表すと、式(3)は以下の式(4)となり、式(4)を変形して以下の式(5)を得ることができる。
【0045】
【数4】

【0046】
【数5】

【0047】
式(5)において、Aは複数の色見本についてのマルチバンド画像の画素値であり、Bは複数の色見本についての所定部分における分光スペクトルである。tの上付き文字のある行列は転置行列を意味する。作業者は、式(5)に従って分光推定行列Mを求める。その後、作業者は、分光推定行列Mを分光推定パラメーターとして、分光推定パラメーター保存部36に記憶する。分光推定行列Mは、どの色見本においても、式(4)における左辺と右辺とが十分に近づくような値となる。この分光推定行列Mを求めるにあたって、マルチバンドカメラ200における測定帯域やバンド数(帯域数)を変更しながら、少ないバンド数で分光推定精度が維持できるようにするのが好ましい。このため、データベースの生成においては、この分光推定パラメーターの生成と、測定帯域データの生成とは合わせて行うのが好ましい。
【0048】
色見本としては検量/診断対象に依存しないカラーチャート等を用いることができる。分光推定パラメーターは、マルチバンドカメラにのみ依存する値となるので、被検体Tや特徴量の違いによらず共通して使えるようになる。
【0049】
なお、分光推定パラメーターは、マルチバンド画像と分光スペクトルとの関係を表すことができるものであれば、上記以外の内容に換えることができる。また、分光推定パラメーターの生成方法についても、上記に限る必要はなく、他の方法に換えることができる。
【0050】
・検量処理パラメーター:
検量処理パラメーターは、分光スペクトルと被検体Tの特徴量との関係を表したものである。被検体Tの特徴量は、本実施例では肌を構成する水分、油分、コラーゲン、メラニンなどの成分量である。検量サンプルには、例えば人の皮膚に合わせて人工的に作られた皮膚ファントムを用いる。各サンプルについて分光光度計でマルチバンド画像と同じ波長帯の分光スペクトルを測定し、合わせて化学分析などで構成成分(水分、油分、コラーゲン、メラニンなど)の量を測定する。分光スペクトルと特徴量から検量処理パラメーターを求める処理は、検量/診断対象に依らず共通の手法を用いることができる。具体的には、以下の式(6)における混合行列Zが、検量処理パラメーターである。式(6)において、pは被検体Tの所定部分における分光スペクトルを示す行列であり、sは前記所定部分における特徴量である。
【0051】
【数6】

【0052】
式(6)は、以下の式(7)を意味する。式(7)に示すように、行列pはp1、p2、…、pmの要素を含むものであり、行列sはs1、s2、…、slの要素を含むものである。混合行列Zは、l×m行列である。一般的に、特徴量についての要素の数lは、分光スペクトルについての要素の数mよりも小さい。
【0053】
【数7】

【0054】
なお、検量処理パラメーターは、分光スペクトルと被検体の特徴量との関係を表すことができるものであれば、上記以外の内容に換えることができる。また、検量処理パラメーターの生成方法についても、上記に限る必要はなく、主成分分析・PLS分析・ニューラルネットワークなどを用いる方法等、他の方法に換えることができる。
【0055】
・診断データベース:
診断データベースは、水分量、油分量のバランスから、肌が乾燥状態にある、皮脂が多すぎるなどの問題点との関係を表すためのものである。また、コラーゲン量、メラニン量から肌のたるみ、シミの量などの関係を診断データベースとして保存しておく。
【0056】
なお、診断データベースは、被検体Tの特徴量と何らかの評価値との関係を表すことができるものであれば、上記以外の内容に換えることができる。
【0057】
・提案データベース:
提案データベースは、栄養素量から、その栄養素量のバランスに近い食事メニューとの関係を表すためのものである。また、提案データベースは、被検体Tの診断結果と、その被検体Tの診断結果で示された肌問題を解決するために必要な栄養素とその量の関係を表すためのものである。
【0058】
D.肌画像の撮影:
肌画像の撮影について、次に詳述する。肌画像の撮影は、被写体に対し光源ユニット250から近赤外光を照射し、その反射光をマルチバンドカメラ200で撮影する。測定波長帯域は、測定帯域指示部12が測定帯域データ保存部32に保存されている測定帯域データを読み出して制御する、照明部は必ずしもカメラ部に含まれなくてもよい。
【0059】
肌画像の撮影は、肌のマルチバンド画像をマルチバンドカメラ200で撮影する。撮影用の照明は、水分、油分、コラーゲン、メラニンなどの吸収があり試料の比較的深部まで光が到達する近赤外光(600〜2500nm)がよい。工程S10において検量/診断対象に合わせた測定帯域データを生成しておけば、工程S20の処理は検量/診断対象に依らず、共通の処理を用いることができる。
【0060】
E.分光画像処理:
分光画像処理について、次に詳述する。分光画像処理は、前述した工程S30(図2)で分光画像処理装置100により実行される処理である。メモリー30のプログラム保存部に格納された分光画像用プログラムを、CPU10が実行することで、分光画像処理が実現される。
【0061】
分光画像処理は、工程S20で撮影したマルチバンド画像から、各画素の分光スペクトル・特徴量を推定し、その結果から診断を行う。分光画像処理は、マルチバンド画像から、肌の診断に必要な、水分、油分、コラーゲン、メラニンの量/分布を求める。工程S10において検量/診断対象に合わせた分光推定パラメーター及び検量処理パラメーターを生成しておけば、工程S30の処理は検量/診断対象に依らず、共通の処理を用いることができる。
【0062】
以下に各処理の詳細を示す。
図4は、本実施例に係る分光画像処理を示すフローチャートである。図示するように、処理が開始されると、CPU10は、マルチバンドカメラ200からマルチバンド画像を取得する処理を行う(ステップS310)。詳しくは、CPU10は、メモリー30の測定帯域データ保存部32に記憶された複数の測定帯域データを、マルチバンドカメラ200の波長選択フィルター220に順に送信することで、波長選択フィルター220の透過波長域を順に変更して、異なる測定帯域毎のバンド画像(スペクトル画像)を表すマルチバンド画像を、マルチバンドカメラ200から取得する。なお、このステップS310における処理の一部である、複数の測定帯域データをマルチバンドカメラ200に送信する構成が、CPU10で実現される測定帯域指示部12(図1)に相当する。
【0063】
次いで、CPU10は、ステップS310で取得したバンド画像のそれぞれを補正する前処理を実行する(ステップS320)。この前処理は、前処理データ保存部34に記憶された波長帯域毎の前処理データに基づいて、バンド画像を補正する画像処理である。具体的には、ステップS310で入力されたマルチバンド画像には、マルチバンドカメラ200の光学系・フィルターなどのムラや、光源ユニット250の照明ムラに起因する測定誤差が含まれている。これを工程S10で生成・保存された前処理データを用いて補正する。例えば、図3で例示したように、k番目の前処理データPDkを構成する各要素の補正データがαk(i,j)で示される場合、ステップS320では、kバンド画像の画素値gk(i,j)を次式(8)に従って補正する。
【0064】
tgk(i,j)=αk(i,j)・gk(i,j) …(8)
ただし、tgk(i,j)は補正後の画素値である。
【0065】
すなわち、変数iとjを順にインクリメントしながらk番目のバンド画像を補正する処理を1番目からn番目までの全てのバンド画像に施すことで、マルチバンド画像全体について補正する。なお、前処理データとしてのこの補正データは、前述したように、マルチバンドカメラ200におけるハードウェア的な製造誤差をソフトウェア的にキャンセルするためのものであることから、補正後のマルチバンド画像は、マルチバンドカメラ200におけるハードウェア的な製造誤差に起因する波長ムラや光量ムラを補正したものとなる。
【0066】
なお、式(8)は、補正データがαk(i,j)で示される場合についてのものであるが、補正データが、例えば2変数αk(i,j)、βk(i,j)である場合には、例えば次式(9)に従って補正する。
【0067】
tgk(i,j)=αk(i,j)・gk(i,j)+βk(i,j) …(9)
ただし、tgk(i,j)は補正後の画素値である。
【0068】
上記ステップS320の処理が、CPU10で実現される前処理部14(図1)に相当する。
【0069】
ステップS320の実行後、CPU10は、ステップS320で補正を終えた後のマルチバンド画像(以下、「補正後マルチバンド画像」と呼ぶ)から分光スペクトルを推定する処理を実行する(ステップS330)。ここでは、分光推定パラメーター保存部36に記憶された分光推定パラメーターに基づいて前記推定を行う。
【0070】
詳しくは、先に説明した式(1)に従う演算処理を実行する。すなわち、分光推定パラメーター保存部36に記憶された分光推定パラメーターMと、補正後マルチバンド画像の所定位置の値(画素値)xとの間の行列の積を求めることで、前記所定位置における分光スペクトルpを求める。ここで、所定位置とは、被検体Tが写っている部分であればどの位置でも良く、例えば、画像の中央位置である。どの位置でもよいとしたのは、ステップS320で波長ムラや光量ムラが補正されているためである。
【0071】
ステップS330の実行後、CPU10は、ステップS330で求めた各画素の分光スペクトルと、工程S10で生成・保存された求めた検量処理パラメーターから、式(6)を用いて特徴量を推定する(ステップS340)。ここでは、検量処理パラメーター保存部38に記憶された検量処理パラメーターに基づいて前記推定を行う。
【0072】
詳しくは、先に説明した式(6)に従う演算処理を実行する。すなわち、検量処理パラメーター保存部38に記憶された検量処理パラメーターZと、ステップS330で得られた所定位置の分光スペクトルpとの間の行列の積を求めることで、前記所定位置における特徴量、肌の水分、油分、コラーゲン、メラニン量を求める。
【0073】
上記ステップS330の処理が、CPU10で実現される分光推定部16(図1)に相当し、上記ステップS340の処理が、CPU10で実現される検量処理部18(図1)に相当している。
【0074】
ステップS340の実行後、CPU10は、ステップS340で得られた特徴量から肌診断結果を求める処理を行う(ステップS350)。
【0075】
図5は、本実施例に係る肌構成成分と肌状態との関係を例示する図である。
診断結果の算出は、ステップS340で求めた特徴量と、工程S10で生成・保存された診断データベースから診断結果を算出する。診断結果の算出は、算出された肌の構成成分量/成分比を、診断データベース保存部39に保存されている健康な状態・問題のある状態の成分量/成分比と比較する。成分量/成分比がもっとも近い状態を選択することで、肌の現在の問題点の診断を行う。ここでは、診断データベース保存部39に記憶された診断データベースに基づいて、前記肌診断結果の演算を行う。
【0076】
ステップS350の実行後、CPU10は、ステップS350で得られた肌診断結果を表示装置300及び記憶装置400に出力する(ステップS360)。この結果、肌の診断結果が表示装置300に表示され、記憶装置400に記憶される。ステップS360の実行後、CPU10はリターンに処理を進めて、この肌診断処理を一旦終了する。なお、図2で説明したように肌を診断したい次の被検体Tがある場合には、CPU10は、肌診断処理を繰り返し実行する。
【0077】
F.食事メニューの提案処理:
図6は、本実施例に係る食事メニューの提案処理を示すフローチャートである。
食事メニューの提案処理は、工程S30で求めた特徴量及び診断結果をもとに、食事メニューを選択し、表示装置300に表示しユーザーに伝える。
【0078】
食事メニューの提案処理は、工程S30で測定した水分、油分、コラーゲン、メラニンなどの成分量と、肌の問題点を診断した診断結果から、問題点の改善のために必要な栄養素とその量を決定し、その栄養素を効率よく摂取できる食事メニューを選択しその結果を提案として表示する。工程S10において検量/診断対象に合わせた提案データベースを生成しておけば、工程S40の処理は検量/診断対象に依らず、共通の処理を用いることができる。
【0079】
以下に各処理の詳細を示す。ステップS410において、ステップS360で出力された診断結果を入力する。
【0080】
図7は、本実施例に係る肌状態と必要栄養素との関係を例示する表である。
ステップS410の実行後、CPU10は、ステップS410で入力された診断結果から、肌の状態・問題点を改善するために必要な栄養素を、図7に例示した表の提案データベースから選択する(ステップS420)。さらに、状態・問題点の程度、問題の組み合わせから、各栄養素の必要量を計算しリストにする。
【0081】
図8は、本実施例に係る必要栄養素と食事メニューとの関係を例示する表である。
ステップS420の実行後、CPU10は、ステップS420で求めた必要栄養素量のリストを参照し、その栄養素量のバランスに近い食事メニューを、図8に例示する表の提案データベースから選択する(ステップS430)。選択する場合に、もっとも近いものだけでなく、許容範囲内で近しい複数のメニューを選択する。
【0082】
図9は、本実施例に係る提案表示画面を例示する図である。
ステップS420の実行後、CPU10は、ステップS430で選択されて、図9に例示する図の食事メニューを表示部に出力する(ステップS440)。
【0083】
G.実施例効果:
以上のように構成された食事内容提案システム1によれば、肌の状態を分光分析により診断し、さらに、肌に関する専門知識と、現在の肌の正確な情報を、即時で合成できるので、肌状態改善のための食事メニューがわかる。これにより、肌のトラブルを改善するために必要な栄養素等を無理なく摂取できる食事メニューを知ることができる。
【0084】
H.変形例:
この発明は前記実施例やその変形例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。なお、変形例の説明にあたっては上述した実施例と同一の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0085】
(変形例1)
前記実施例では、食事内容提案システム1専用の分光画像処理装置100を用いていたが、分光画像処理装置100は汎用のパーソナルコンピューターに換えることができる。また、マルチバンドカメラ200と分光画像処理装置100とは別体であったが、一体とすることもできる。例えば、分光画像処理装置100を内蔵する構成としてもよいし、マルチバンドカメラ200に分光画像処理装置100を例えばチップの形で内蔵する構成としてもよい。表示装置300及び記憶装置400も、分光画像処理装置100と一体とすることもできる。
【0086】
(変形例2)
前記実施例及び各変形例において、ソフトウェアによって実現した機能は、ハードウェアによって実現するものとしてもよい。
【0087】
(変形例3)
前記実施例及び各変形例では、分光推定パラメーターを用いて、マルチバンド画像から分光スペクトルを演算し、検量処理パラメーターを用いて、前記分光スペクトルから特徴量を演算する構成としていたが、これに換えて、分光推定パラメーターMと検量処理パラメーターZとを掛け合わせたパラメーターL(=Z・M)を用いて、マルチバンド画像から直接、特徴量を推定する構成としてもよい。マルチバンドカメラ200の個体、被検体Tの種類、及び推定する特徴量の組合せが予め定められている場合には、この構成によっても、マルチバンド画像から被検体の特徴量を高精度に推定することができる。
【0088】
(変形例4)
前記実施例及び各変形例では、測定帯域データ保存部32に記憶された複数の測定帯域データを、マルチバンドカメラ200の波長選択フィルター220に順に送信することで、波長選択フィルター220の透過波長域を順に変更して、異なる測定帯域毎のバンド画像(スペクトル画像)を表すマルチバンド画像を、マルチバンドカメラ200から取得する構成とした。これに替えて、予め定められた複数の測定帯域毎のバンド画像を表すマルチバンド画像をマルチバンドカメラ200から取得する構成としてもよい。すなわち、測定帯域データ保存部32及び測定帯域指示部12はなくてもよい。
【0089】
(変形例5)
前記実施例及び各変形例では、前処理データ保存部34に記憶した前処理データに基づいて、前処理部14がマルチバンド画像を補正し、補正後マルチバンド画像から分光スペクトルを推定する構成とした。これに替えて、マルチバンド画像取得部が取得したマルチバンド画像から分光スペクトルを推定する構成としてもよい。また、マルチバンド画像取得部が、補正後マルチバンド画像を取得してもよい。すなわち、前処理データ保存部34及び前処理部14はなくてもよい。
【0090】
(変形例6)
前記実施例及び各変形例では、分光画像処理装置100の診断データベース保存部39に記憶された診断データベースと、推定された特徴量とに基づいて、診断部19が診断を行う構成とした。これに替えて、推定された特徴量を分光画像処理装置100とは別に構成された診断装置に出力し、診断装置が診断を行ってもよい。すなわち、分光画像処理装置100には診断データベース保存部39及び診断部19はなくてもよい。
【0091】
なお、前述した各実施例及び各変形例における構成要素の中の、独立請求項で記載された要素以外の要素は、付加的な要素であり、適宜省略可能である。
【符号の説明】
【0092】
1…食事内容提案システム 10…CPU 12…測定帯域指示部(マルチバンド画像取得部) 14…前処理部 16…分光推定部 18…検量処理部 19…診断部 30…メモリー 32…測定帯域データ保存部(マルチバンド画像取得部) 34…前処理データ保存部 36…分光推定パラメーター保存部 38…検量処理パラメーター保存部 39…診断データベース保存部 50…入出力I/F 51…提案部 52…提案データベース保存部 100…分光画像処理装置 200…マルチバンドカメラ 210…レンズユニット 220…波長選択フィルター 230…CCD 240…CCDAFE 250…光源ユニット 300…表示装置 400…記憶装置 M…分光推定行列(=分光推定パラメーター) Z…混合行列(=検量処理パラメーター)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の波長帯域で被検体を撮影して得られるマルチバンド画像を取得するマルチバンド画像取得部と、
前記マルチバンド画像のそれぞれにおける所定位置の画素値を示す第1群の変量と、該所定位置に対応した前記被検体の部分における分光スペクトルを示す第2群の変量と、の間の関係を示す分光推定パラメーターを保存する分光推定パラメーター保存部と、
前記分光推定パラメーター保存部に保存されている前記分光推定パラメーターを用いて、前記マルチバンド画像から前記分光スペクトルを演算する分光推定部と、
前記分光スペクトルを前記被検体の特定成分に関する特徴量に変換することに用いる検量処理パラメーターを保存する検量処理パラメーター保存部と、
前記検量処理パラメーター保存部に保存されている前記検量処理パラメーターを用いて、前記分光推定部によって求められた前記分光スペクトルから前記特徴量を演算する検量処理部と、
前記被検体の前記特徴量を前記被検体の評価値に変換することに用いる診断データを保存する診断データベース保存部と、
前記診断データベース保存部に保存されている前記診断データを用いて、前記検量処理部によって得られた前記特徴量から前記被検体の前記評価値を演算する診断部と、
前記被検体の前記評価値を前記被検体の食事内容に変換することに用いる提案データを保存する提案データベース保存部と、
前記提案データベース保存部に保存されている前記提案データを用いて、前記診断部によって得られた前記評価値から前記被検体の前記食事内容を提案する提案部と、
を備えることを特徴とする分光画像処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の分光画像処理装置において、
前記マルチバンド画像取得部は、
複数の波長帯域の感度で前記被検体の撮影を行うマルチバンドカメラに対して測定帯域を指示することに用いる複数の測定帯域データを保存する測定帯域データ保存部と、
前記測定帯域データ保存部に保存されている前記測定帯域データを前記マルチバンドカメラに送ることによって、該マルチバンドカメラに測定帯域を指示する測定帯域指示部と、
を備えることを特徴とする分光画像処理装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の分光画像処理装置において、
前記マルチバンド画像の取得先であるマルチバンドカメラにおける誤差を補正することに用いる補正量を、前記マルチバンド画像を構成するバンド画像のそれぞれに対して定めた前処理データを保存する前処理データ保存部と、
前記マルチバンド画像取得部によって取得した前記マルチバンド画像を、前記前処理データ保存部に保存されている前記前処理データに基づいて補正し、補正後のマルチバンド画像を前記分光推定部に送る前処理部と、
を備えることを特徴とする分光画像処理装置。
【請求項4】
複数の波長帯域で被検体を撮影して得られるマルチバンド画像を取得する工程と、
前記マルチバンド画像のそれぞれにおける所定位置の画素値を示す第1群の変量と、該所定位置に対応した前記被検体の部分における分光スペクトルを示す第2群の変量と、の間の関係を示す分光推定パラメーターを用いて、前記マルチバンド画像から前記分光スペクトルを演算する工程と、
前記分光スペクトルを前記被検体の特定成分に関する特徴量に変換することに用いる検量処理パラメーターを用いて、前記分光スペクトルから前記特徴量を演算する工程と、
前記被検体の前記特徴量を前記被検体の評価値に変換することに用いる診断データを用いて、前記特徴量から前記被検体の前記評価値を演算する工程と、
前記被検体の前記評価値を前記被検体の食事内容に変換することに用いる提案データを用いて、前記評価値から前記被検体の前記食事内容を提案する工程と、
を含むことを特徴とする分光画像処理方法。
【請求項5】
複数の波長帯域で被検体を撮影して得られるマルチバンド画像を取得する機能と、
前記マルチバンド画像のそれぞれにおける所定位置の画素値を示す第1群の変量と、該所定位置に対応した前記被検体の部分における分光スペクトルを示す第2群の変量と、の間の関係を示す分光推定パラメーターを用いて、前記マルチバンド画像から前記分光スペクトルを演算する機能と、
前記分光スペクトルを前記被検体の特定成分に関する特徴量に変換することに用いる検量処理パラメーターを用いて、前記分光スペクトルから前記特徴量を演算する機能と、
前記被検体の前記特徴量を前記被検体の評価値に変換することに用いる診断データを用いて、前記特徴量から前記被検体の前記評価値を演算する機能と、
前記被検体の前記評価値を前記被検体の食事内容に変換することに用いる提案データを用いて、前記評価値から前記被検体の前記食事内容を提案する機能と、
をコンピューターに実現させることを特徴とするコンピュータープログラム。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図1】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−92372(P2013−92372A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−232549(P2011−232549)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】