説明

分光素子の同期駆動方法及び同期駆動装置、並びにクロマトグラフ用検出器

【課題】励起光波長と蛍光波長を高速で同期させて順次変更することができる分光素子の同期駆動装置を提供する
【解決手段】第一分光素子と第一パルスモータとを有する第一分光手段と、第二分光素子と第二パルスモータとを有する第二分光手段を備え、更に、単色化波長の変化に関する分光素子情報とパルスモータの動特性情報を内蔵する記憶部と、オペレータに同期駆動条件を設定させる駆動条件設定部と、第一分光素子情報、第一パルスモータの自起動領域又はスルー領域内のパルスレート、同期駆動条件に基づいて第一パルス数のパルスを第一パルス送信時間で送信する第一パルス送信パターンを作成し、第一パルス送信時間で第二パルス数のパルスを送信する第二パルス送信パターンを作成するパルス送信パターン作成部と、第一パルス送信パターンと第二パルス送信パターンに基づいて第一パルスモータと第二パルスモータにパルスを送信するパルス送信部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分光素子の同期駆動方法及び同期駆動装置に関する。特に、クロマトグラフ装置の検出部における分光素子の駆動方法及び駆動装置として好適に用いることができる分光素子の同期駆動方法及び同期駆動装置、並びにクロマトグラフ用検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
クロマトグラフ装置の検出方法として、分光蛍光分析法が広く用いられている。これは、分光蛍光分析法が、蛍光性を有する物質しか検出できないという制約はあるものの、光の吸収を利用した吸光分析法に比べて格段に高感度の分析が可能であるという特徴を有しているためである。図1に分光蛍光分析法を行う分光蛍光検出装置の概略構成図を示す。
【0003】
この分光蛍光検出装置1では、紫外域から近赤外域までの幅広い連続スペクトルを有するキセノンランプ等の光源10から発せられた光が励起光側分光器11に導入され、モータによって動作する回折格子11aにより特定の励起光波長に単色化された後、試料溶液13が貯留された試料セル12に励起光として照射される。この励起光の照射により、試料溶液13から放出された微弱な蛍光は蛍光側分光器14に導入され、回折格子14aにより特定の波長を持つ蛍光のみが取り出されて光電子増倍管15に入射される。光電子増倍管15は入射光の強度に応じた電流信号を出力し、電流/電圧(I/V)変換部16で変換された電圧信号がA/D変換部17でデジタル値に変換され、データ処理部18に入力される。データ処理部18は、この検出データを解析処理することにより、試料溶液13中の特定成分の定量値を計算する。
【0004】
一般的に、分光蛍光分析法では、励起光波長と蛍光波長のうちのいずれか一方を固定し、他方の波長を順次変更して測定を繰り返すことにより、励起光波長、蛍光波長、蛍光強度の3軸からなる3次元の蛍光スペクトルを取得する。
【0005】
この方法では励起光波長と蛍光波長の2つを独立に順次変更して蛍光スペクトルを取得することから、ピークの探索に非常に時間を要する。そこで、効率よくピークを探索する方法として、特許文献1に記載の方法が提案されている。この方法は、励起光波長及び蛍光波長を順次変更して得られる蛍光スペクトルにおいて、多くのピークの蛍光波長が励起光波長よりも20nm〜140nm長くなるという特性を利用し、効率的にピークの探索を行おうとするもので、蛍光波長が励起光波長よりも20nm〜140nm長くなる関係を維持しつつ、励起光波長と蛍光波長を同時に変更して蛍光スペクトルを得る方法である。
【0006】
この方法では、まず励起光波長と蛍光波長を同時に変更して効率的にピークの粗い探索を行い、ピークを発見した後に、励起光波長と蛍光波長を独立に変更して詳細な情報を取得する。そのため、測定波長の全範囲で励起光波長と蛍光波長をそれぞれ独立に変更する従来の分光蛍光分析法に比べて短時間で測定できる。
【0007】
この方法により蛍光スペクトルを測定する際には、励起光側分光器と蛍光側分光器の双方について、分光素子を駆動させるパルスモータに送信するパルス数と、分光素子による単色化波長の変化に関する情報を、予備測定などにより予め把握しておく。これにより分光蛍光分析条件(測定開始波長、測定終了波長、波長変更間隔)を決定すれば、励起光と蛍光の波長を並行して変更する際に、励起光側パルスモータと蛍光側パルスモータに対してそれぞれ送信するパルス数を決定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平3-144347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
一般的なパルスモータの駆動には、図2に示すような駆動速度が一定の定速駆動や、駆動時間が短縮できる台形駆動やS字駆動などがあり、励起光と蛍光の波長を同期させて変更する際には、これらの定速駆動や台形駆動、S字駆動などで駆動させるのが一般的である。しかし、台形駆動やS字駆動で、励起波長と蛍光波長を一定値の差に保ちつつ同時に駆動させると、励起光側パルスモータと蛍光側パルスモータに送信するパルス数がそれぞれ異なることから、駆動中に一定値の差を保つことが困難になり、同期スペクトル駆動で求めた励起波長と蛍光波長が真の値から大きく乖離し、その後の真の励起波長、蛍光波長を求める処理が必要であったり、求めるための処理のステップが増加したりする。また誤差を少なくするために、定速駆動にしたり、台形駆動、S字駆動の形を定速駆動に近づけたりすると、蛍光スペクトルを取得する際の波長変更に時間を要し、例えば、クロマトグラフ装置の検出部にこの方法を用いる場合には、試料のフロー中には測定が行えず、試料をセル内に止めて測定を行わなければならないという制限があった。
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、励起光波長と蛍光波長を高速で同期させて順次変更することができる、分光素子の同期駆動方法及び同期駆動装置、並びにクロマトグラフ検出器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために成された本発明に係る分光素子の同期駆動方法は、第一分光素子と該第一分光素子を駆動する第一パルスモータとを有する第一分光手段と、第二分光素子と該第二分光素子を駆動する第二パルスモータとを有する第二分光手段と、前記第一分光手段により単色化する波長を所定の間隔で順次変更するために必要な第一パルス数のパルスを前記第一パルスモータに送信すると共に、前記第二分光手段により単色化する波長を所定の間隔で順次変更するために必要な第二パルス数のパルスを前記第二パルスモータに送信するパルス送信手段とを備える分光装置において、前記第一分光素子と前記第二分光素子を同期駆動する方法であって、
前記第一パルスモータの自起動領域又はスルー領域内のパルスレートに基づいて前記第一パルス数のパルスの送信速度を決定し、
前記第一パルス数のパルスの送信速度と前記第一パルス数から第一パルス送信時間を求め、
前記第一パルス送信時間で、前記第二パルス数のパルスを前記第二パルスモータに送信する
ことを特徴とする。
【0012】
前記第二パルス数が前記第一パルス数よりも多く、第二パルスモータへのパルス送信速度を第一パルスモータへのパルス送信速度よりも速くしなければならない場合や、前記第一パルスモータと前記第二パルスモータの自起動領域やスルー領域の特性が異なる場合には、第二パルス数の第二パルスモータへのパルス送信速度が第二パルスモータの自起動領域又はスルー領域を外れてしまい、第二パルスモータが脱調する可能性がある。
従って、前記第二パルス数の第二パルスモータへのパルス送信速度が第二パルスモータの自起動領域又はスルー領域内であるかを確認し、領域外である場合には、当該パルスの送信速度を減速し、前記第一パルス送信時間内に送信する他の前記第二パルスの送信速度を加速することが望ましい。
これにより、第一パルスモータと第二パルスモータの両方を自起動領域又はスルー領域内のパルスレートで確実に、かつ高速で同期駆動させることができる。
【0013】
上記課題を解決するために成された本発明に係る分光素子の同期駆動装置は、第一分光素子と該第一分光素子を駆動する第一パルスモータとを有する第一分光手段と、第二分光素子と該第二分光素子を駆動する第二パルスモータとを有する第二分光手段とを備え、前記第一分光手段により単色化する波長を所定の間隔で順次変更するために必要な第一パルス数のパルスを前記第一パルスモータに送信すると共に、前記第二分光手段により単色化する波長を所定の間隔で順次変更するために必要な第二パルス数のパルスを前記第二パルスモータに送信することにより、前記第一分光素子と前記第二分光素子を同期駆動する装置であって、
a) 前記第一パルスモータに送信するパルス数と第一分光素子による単色化波長の変化に関する第一分光素子情報と、前記第二パルスモータに送信するパルス数と第二分光素子による単色化波長の変化に関する第二分光素子情報と、自起動領域及びスルー領域のパルスレートに関する前記第一パルスモータの動特性情報と、自起動領域及びスルー領域のパルスレートに関する前記第二パルスモータの動特性情報とを内蔵する記憶部と、
b) オペレータに、前記第一分光素子及び前記第二分光素子により単色化する光の変更開始波長、変更終了波長、及び波長変更間隔を同期駆動条件として設定させる駆動条件設定部と、
c) 前記第一分光素子情報、前記第一パルスモータの自起動領域又はスルー領域内のパルスレート、及び前記同期駆動条件に基づいて、第一パルス数のパルスを第一パルス送信時間で送信する第一パルス送信パターンを作成し、前記第一パルス送信時間で前記第二パルス数のパルスを送信する第二パルス送信パターンを作成する、パルス送信パターン作成部と、
d) 前記第一パルス送信パターンと、前記第二パルス送信パターンに基づいて、前記第一パルスモータと前記第二パルスモータにパルスを送信するパルス送信部と
を備えることを特徴とする。
【0014】
前記パルス送信パターン作成部が、更に、前記第二パルス数の第二パルスモータへのパルス送信速度が第二パルスモータの自起動領域又はスルー領域内であるかを確認し、領域外である場合には、当該パルスの送信速度を減速し、前記第一パルス送信時間内に送信する他の前記第二パルスの送信速度を加速することが望ましい。
これにより、第一パルスモータと第二パルスモータの両方を自起動領域又はスルー領域内のパルスレートで確実に、かつ高速で同期駆動させることができる。
【0015】
本発明に係る分光素子の同期駆動装置は、分光蛍光分析法を用いるクロマトグラフ検出器の分光素子を駆動するために好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る分光素子の同期駆動方法及び装置を用いれば、従来に比べて高速で第一分光素子及び第二分光素子を同期駆動させることができる。また、本発明に係る分光素子の同期駆動装置をクロマトグラフ装置の検出器の分光素子の駆動装置に用いれば、高速で分光器を同期駆動させ、短時間で蛍光スペクトルを取得することができるため、試料をフローさせたままで測定を行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】分光蛍光検出装置の概略構成を説明する図。
【図2】一般的なパルスモータの動特性を説明する図。
【図3】分光素子の同期駆動装置をクロマトグラフ用検出器に適用する一実施例を説明する図。
【図4】励起光側パルス送信パターンの作成方法を説明する図。
【図5】蛍光側パルス送信パターンの作成方法を説明する図。
【図6】蛍光側パルス送信パターンの修正手順を説明する図。
【図7】蛍光側パルス送信パターンの修正方法を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明をクロマトグラフ用の検出器(分光蛍光検出装置)の分光素子の駆動装置に適用した実施例を、図3により説明する。図3の上段に示す分光蛍光検出装置1は図1と同じであるため、同一の符号を付して説明を略す。
【0019】
本実施例に係る分光素子の同期駆動装置20は、記憶部21、駆動条件設定部22、パルス送信パターン作成部23、パルス送信部24を備えている。また、オペレータに同期駆動条件などを入力させるための入力部30と、駆動条件などを表示するための表示部40とが同期駆動装置20に接続されている。同期駆動装置20のパルス送信部24は、分光蛍光検出装置1の励起光側パルスモータ11M、蛍光側パルスモータ14Mに接続されている。
【0020】
記憶部21には、励起光側パルスモータ11M及び励起光側回折格子11aに関する情報、及び蛍光側パルスモータ14M及び蛍光側回折格子14aに関する情報が記憶されている。以降、これらの情報をまとめて分光器情報とする。
励起光側パルスモータ11M に関する情報には、励起光側パルス数や、自起動領域及びスルー領域のパルスレート情報を含む動特性情報等が含まれる。励起光側回折格子11aに関する情報には、励起光側回折格子11aによる単色化波長に関する情報が含まれる。蛍光側パルスモータ14M及び蛍光側回折格子14aに関する情報も同様である。
【0021】
また、記憶部21には同期駆動条件が記憶される。同期駆動条件とは、励起光側回折格子11a及び蛍光側回折格子14aにより単色化する光の変更開始波長、測定終了波長、及び波長変更間隔を指し、駆動条件設定部22が設定する。具体的には、駆動条件設定部22が表示部40に同期駆動条件入力画面を表示し、この画面を見ながらオペレータが入力部30を操作して同期駆動条件を入力する。オペレータが入力した同期駆動条件は記憶部21に送信され記憶される。
【0022】
パルス送信パターン作成部23は、記憶部21から同期駆動条件と分光器情報を読み出し、励起光側パルスモータ11M及び蛍光側パルスモータ14Mに送信するパルス送信パターンを作成する。作成したパルス送信パターンはパルス送信部24に送信される。励起光側パルスモータ11M及び蛍光側パルスモータ14Mに送信するパルス送信パターン作成の具体的な方法については後述するが、パルス送信パターンは、励起光側パルスモータ11M、蛍光側パルスモータ14Mの両方を脱調させることなく、高速で励起光側分光器11及び蛍光側分光器14を同期駆動するように作成する。
【0023】
パルス送信部24は、受信したパルス送信パターンを励起光側分光器11及び蛍光側分光器14に送信する。これにより、分光蛍光検出装置1の励起光側分光器11と蛍光側分光器14は励起光側パルスモータ11M及び蛍光側パルスモータ14Mを高速で同期駆動する。
【0024】
続いて、本発明に係る分光素子の同期駆動方法について説明する。
本実施例では、図3に示したクロマトグラフ検出装置において、励起光側回折格子により単色化する光の波長をA(nm)からB(nm)まで1nmずつ変更し、蛍光側回折格子により単色化する光の波長をA+α(nm)からB+α(nm)まで1nmずつ変更する。なお、本実施例で用いる励起光側パルスモータ11M、蛍光側パルスモータ14Mは、いずれも図2(a)のような台形駆動特性を有している。
【0025】
予備実験等により、励起光側パルスモータ11M及び励起光側回折格子11aに関する情報、及び蛍光側パルスモータ14M及び蛍光側回折格子14aに関する情報を取得しておく。以降、これらの情報をまとめて分光器情報とする。
励起光側パルスモータ11M に関する情報には、励起光側パルス数や、自起動領域及びスルー領域のパルスレート情報を含む動特性情報等が含まれる。励起光側回折格子11aに関する情報には、励起光側回折格子11aによる単色化波長に関する情報が含まれる。蛍光側パルスモータ14M及び蛍光側回折格子14aに関する情報も同様である。
また、後述するステップS42で参照するための波長変更間隔の範囲を予め設定しておく。
【0026】
まず、励起光側回折格子11aに関する情報に基づき、励起光側回折格子11aにより単色化する光の波長をA(nm)からB(nm)まで、1nmずつ変更するために、順次、励起光側パルスモータ11Mに送信する励起光側パルス数を決定する。続いて、励起光側パルスモータ11Mの動特性情報に基づき、各パルスを自起動領域又はスルー領域内の最大パルスレートで送信する励起光側パルス送信パターンを作成する。本実施例のパルスモータは台形駆動特性を有していることから、励起光側パルス送信パターンも図4に示すような台形状になる。図中のx(1)は自起動領域内の適当なパルスレートであり、 x(2), x(3), x(4) ,x(n)はスルー領域内の適当なパルスレートである。励起光側パルス送信パターンを作成した後、励起光側パルス数のパルスを励起光側回折格子11aに順次送信する励起光側パルス送信時間を決定する。
【0027】
続いて、蛍光側回折格子14aに関する情報に基づき、蛍光側回折格子14aにより単色化する光の波長をA+α(nm)からB+α(nm)まで、1nmずつ変更するために、順次、蛍光側パルスモータ14Mに送信する蛍光側パルス数を決定する。続いて、励起光パルス送信時間を蛍光側パルス数で除して、蛍光側パルスモータ11Mに送信するパルスレートy(1), y(2), y(3), …, y(e)を決定し、蛍光側パルス送信パターンを作成する(図5参照)。
【0028】
以上の手順で作成した、励起光側パルス送信パターン(図4)と蛍光側パルス送信パターン(図5)に基づき、パルス送信部24から励起光側パルスモータ11Mと蛍光側パルスモータ14Mにそれぞれパルスを送信する。これにより、励起光側回折格子11aと蛍光側回折格子14aを高速で同期駆動させることができる。
【0029】
上記の方法では、蛍光側パルス送信パターン作成時に、蛍光側パルスモータ14Mの動特性情報を考慮していない。そのため、例えば、蛍光側パルス数が励起光側パルス数よりも多い場合や、励起光側パルスモータ11Mと蛍光側パルスモータ14Mの自起動領域やスルー領域の特性が異なる場合には、蛍光側パルス送信パターンのパルスレートが蛍光側パルスモータ14Mの自起動領域又はスルー領域の最大パルスレートを上回り、蛍光側パルスモータ14Mが脱調する可能性がある。これを防ぐために、以下の手順を追加して蛍光側パルス送信パターンのパルスレートを確認し、必要な場合にこれを修正することが望ましい。
【0030】
パルス送信パターンの修正手順及び方法を、図6及び図7により説明する。まず、パルスモータ駆動開始時のパルスレートy(1)が、自起動領域内であるかを確認する(ステップS1)。もし、パルスレートy(1)が自起動領域内の最大パルスレートを超えるパルスがあれば、当該パルスのパルスレートをy(1)から自起動領域内の最大パルスレートy'(1)に修正する。また、これにより生じた差分Dを、単色化波長を(A+α)(nm)から(A+α+1)(nm)間に変更する間送信する他のパルスに加算する(ステップS11)。図7(a)に、最初の1パルスのパルスレートy(1)が自起動領域内の最大パルスレートを超える例を示す。この例の場合、最初の1パルスを送信するパルスレートをy'(1)に修正し、これにより生じた差分Dを、同じパルス送信時間内に送信する他の4パルスのパルスレートにD'ずつ加算して、パルス送信時間に変更が生じないように調整する。
【0031】
波長変更間隔を変更する場合、変更後の波長変更間隔が予め設定した範囲内であるかを確認する(ステップS42)。変更後の波長変更間隔が予め設定した範囲内であれば、再び上述した手順により励起光側パルス送信パターンと蛍光側パルス送信パターンを作成する。
一方、変更後の波長変更間隔が設定範囲外になる場合は、同期駆動条件を再設定するように促す画面表示するなどのエラー処理を行う。
【0032】
次いで、駆動終了時のパルスレートについても、ステップS1, S11と同様にステップS2、ステップS21を実行し、必要に応じてパルス送信パターンを修正する。図7(b)に、最後の1パルスについてパルスレートy(e)が自起動領域の最大パルスレートを超える例を示す。この例の場合、最後の1パルスを送信するパルスレートをy'(e)に修正し、これにより生じた差分Eを、同じパルス送信時間内に送信する他の3パルスのパルスレートにE'ずつ加算して、パルス送信時間に変更が生じないように調整する。
【0033】
最後に、駆動開始時、駆動終了時以外のパルスのパルスレートがパルスモータのスルー領域内であるかを確認し(ステップS3)、スルー領域外のパルスがある場合には、上述のステップS41により波長変更を実行する。
【0034】
上記の実施例はいずれも一例であって、本発明の趣旨に沿って適宜変更や修正を行うことが可能である。上記の実施例では、励起光側パルス送信パターンを先に作成し、励起光波長を所定の波長変更間隔だけ変更するために必要な励起光側パルス数のパルスを送信する励起光側パルス送信時間で、蛍光波長を所定の波長変更間隔だけ変更するために必要な蛍光側パルス数のパルスを送信する例を説明したが、蛍光側パルス送信パターンを先に作成しても、同様に励起光側分光素子と蛍光側分光素子を同期駆動させることができる。
また、上記の実施例は、励起光側分光素子により単色化される励起光と蛍光側分光素子により単色化される蛍光の波長差を常に一定に保つように同期駆動させる構成を説明したが、本発明は、第一分光素子により単色化する光の波長変更間隔と、第二分光素子により単色化する光の波長変更間隔をそれぞれ別に設定する場合にも用いることができる。
【符号の説明】
【0035】
1…分光蛍光検出装置
10…光源
11…励起光側分光器
11a…励起光側回折格子
11M…励起光側パルスモータ
12…試料セル
13…試料溶液
14…蛍光側分光器
14a…蛍光側回折格子
14M…蛍光側パルスモータ
15…光電子増倍管
16…I/V変換部
17…A/D変換部
18…データ処理部
20…同期駆動装置
21…記憶部
22…駆動条件設定部
23…パルス送信パターン作成部
24…パルス送信部
30…入力部
40…表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一分光素子と該第一分光素子を駆動する第一パルスモータとを有する第一分光手段と、第二分光素子と該第二分光素子を駆動する第二パルスモータとを有する第二分光手段と、前記第一分光手段により単色化する波長を所定の間隔で順次変更するために必要な第一パルス数のパルスを前記第一パルスモータに送信すると共に、前記第二分光手段により単色化する波長を所定の間隔で順次変更するために必要な第二パルス数のパルスを前記第二パルスモータに送信するパルス送信手段とを備える分光装置において、前記第一分光素子と前記第二分光素子を同期駆動する方法であって、
前記第一パルスモータの自起動領域又はスルー領域内のパルスレートに基づいて前記第一パルス数のパルスの送信速度を決定し、
前記第一パルス数のパルスの送信速度と前記第一パルス数から第一パルス送信時間を求め、
前記第一パルス送信時間で、前記第二パルス数のパルスを前記第二パルスモータに送信する
ことを特徴とする分光素子の同期駆動方法。
【請求項2】
前記第二パルス数の第二パルスモータへのパルス送信速度が第二パルスモータの自起動領域又はスルー領域内であるかを確認し、領域外である場合には、当該パルスの送信速度を減速し、前記第一パルス送信時間内に送信する他の前記第二パルスの送信速度を加速することを特徴とする、請求項1に記載の分光素子の同期駆動方法。
【請求項3】
第一分光素子と該第一分光素子を駆動する第一パルスモータとを有する第一分光手段と、第二分光素子と該第二分光素子を駆動する第二パルスモータとを有する第二分光手段とを備え、前記第一分光手段により単色化する波長を所定の間隔で順次変更するために必要な第一パルス数のパルスを前記第一パルスモータに送信すると共に、前記第二分光手段により単色化する波長を所定の間隔で順次変更するために必要な第二パルス数のパルスを前記第二パルスモータに送信することにより、前記第一分光素子と前記第二分光素子を同期駆動する装置であって、
a) 前記第一パルスモータに送信するパルス数と第一分光素子による単色化波長の変化に関する第一分光素子情報と、前記第二パルスモータに送信するパルス数と第二分光素子による単色化波長の変化に関する第二分光素子情報と、自起動領域及びスルー領域のパルスレートに関する前記第一パルスモータの動特性情報と、自起動領域及びスルー領域のパルスレートに関する前記第二パルスモータの動特性情報とを内蔵する記憶部と、
b) オペレータに、前記第一分光素子及び前記第二分光素子により単色化する光の変更開始波長、変更終了波長、及び波長変更間隔を同期駆動条件として設定させる駆動条件設定部と、
c) 前記第一分光素子情報、前記第一パルスモータの自起動領域又はスルー領域内のパルスレート、及び前記同期駆動条件に基づいて、第一パルス数のパルスを第一パルス送信時間で送信する第一パルス送信パターンを作成し、前記第一パルス送信時間で前記第二パルス数のパルスを送信する第二パルス送信パターンを作成する、パルス送信パターン作成部と、
d) 前記第一パルス送信パターンと、前記第二パルス送信パターンに基づいて、前記第一パルスモータと前記第二パルスモータにパルスを送信するパルス送信部と
を備えることを特徴とする分光素子の同期駆動装置。
【請求項4】
前記パルス送信パターン作成部が、更に、前記第二パルス数の第二パルスモータへのパルス送信速度が第二パルスモータの自起動領域又はスルー領域内であるかを確認し、領域外である場合には、当該パルスの送信速度を減速し、前記第一パルス送信時間内に送信する他の前記第二パルスの送信速度を加速することを特徴とする、請求項3に記載の分光素子の同期駆動装置。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の分光素子の同期駆動装置を備えることを特徴とするクロマトグラフ用検出器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−247334(P2012−247334A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−120025(P2011−120025)
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】