説明

分割錠

本発明の目的は、分割方法が特に限定されることなく、容易にかつ正確に分割でき、さらに優れた強度を有する分割錠を提供することにある。すなわち、本発明は下面が割線の真下の中心部から徐々に盛り上がった曲面であり、上面が割線によって2つの面に分かれている分割錠であって、その割線の延長線上から錠剤を眺めた側面図において、下面の中心と、下面の中心の接線から最も距離の遠い2つ以上の上面のそれぞれの点のいずれか2点を結んだ仮の三角形において、下面の中心における角度が70°以上であり、下面の中心の接線から最も距離の遠い2つ以上の上面のそれぞれの点のいずれかと下面の中心の接線との距離(c)と、割線の最下部と下面の中心との距離(d)の比c/dが1/0.70≦c/d≦1/0.40であることを特徴とする分割錠を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、分割錠に関する。
【背景技術】
医薬品等において、錠剤は汎用性の高い剤形として広く用いられている。そのうち分割錠は、服用量に応じて調剤時に薬剤師によって、又は、服用時に患者自身によって、分割される錠剤であり、個々の患者に対する服用量の管理を最適にし、処方の利便性を高めるために開発されている。
このような分割錠には、一般に、錠剤を分割するための割線(割溝)が設けられている。分割錠の例としては例えば実開平8−1012、実開平7−19339、特開平8−277217、米国特許4353887、米国特許4824677に記載されたものがあり、いずれも分割操作としては、薬剤師または患者が両手で錠剤をつかんで割線を開く(または閉じる)ような方法、または机などの硬質平坦な面上で、スプーンなどの縁で割線に沿ってもしくは割線のちょうど裏側を押圧する方法が用いられている。これらを正確に分割するには、分割にかかる力を均等に与える必要があるが、手作業においてはその正確さは期待できない。そこで、錠剤分割を自動的におこなう機器が開発されているが、急を要する場合や、患者自ら分割したい場合には用いることが困難である。実開平8−1012、特開平8−277218では、分割精度を高めるために錠剤の形状に工夫がされているが、この形状では近年小型化の傾向にある分割錠は分割し難いという問題がある。さらに、衛生面から錠剤に直接手を触れることなしに分割して容器から取り出せるように錠剤をプレススルーパック(以下、PTPという。)(例えば、塩化ビニル/塩化ビニリデン複合シート)等の包装の上から分割できることが好ましいが、前記文献に記載の分割錠では包装の上からの分割は極めて困難であった。
かかる状況において、実公昭40−3680、特許3015677、英国特許1387643、WO99/51207では、2枚の平坦な板に分割錠を挟んで押さえることで容易に分割を可能とした。また、割線を平坦な面上に下向きにして指などで押さえることで分割することも可能とした。さらには、PTP等の包装の上からさえも、割線が下向きであれば分割を可能とした。これらの分割錠では、2枚の平坦な板に分割錠を挟むと、分割錠と平坦な面上との接触点が、割線の両側に1ヶ所ずつと、さらに割線の反対面では割線のちょうど裏側の1ヶ所にあり、3つの力点が生じて分割が可能となっている。このような分割方法を用いることで、分割が容易になったばかりか、小型錠でも適応可能となっている。
さらに、WO99/51207では、割線を平坦な面上に下向きでも上向きでもどちらで置いても、指などで押さえることで容易に分割することを可能とした。さらには、PTP等の包装の上からさえも、割線が下向きでも上向きでもどちらでも分割を可能とした。この分割錠は、割線を平坦な面上に下向きに置いた場合に分割錠と平坦な面上との接触点が、割線の両側に1ヶ所ずつあり、その接触点から割線にいたる面が、下方に向かって凸面を呈することに特徴がある。この分割錠では、割線を平坦な面上に上向きにして上から押さえた場合であっても、上記接触点から割線の最底部にいたる面が上向きに凸面を呈するので、この凸面と、指やPTPの容器の面が新たに適当な接触点を形成し、さらに割線の反対面では割線のちょうど裏側の1ヶ所で平坦な面と接するので、3つの力点が生じて分割が可能となっている。実公昭40−3680、特許3015677、英国特許1387643の分割錠は、割線を上向きにして上から押さえた場合は、割線の両側に適度に接することは困難であり割れにくい。また、割れにくいことに起因して、分割精度も劣るものとなり、WO99/51207の分割錠とは異なる。
英国特許1387643は、分割しやすくするために割線の角度や、上面から下面までの距離に対する割線の最下部から下面までの距離について説明している。しかしながら、割線の中心角が大きいことを必要としているため分割精度が劣る。さらに、上面から下面までの距離に対して割線の最下部から下面までの距離が小さいことを必要としているが、このことは錠剤の硬度を弱くしている。
実公昭40−3680、特許3015677、WO99/51207でも、分割しやすさや分割精度を高めるために、割線の大きさや角度などについて説明しているが、それ以外の部分の形状に関する記述はない。一方で、これら分割錠にコーティングを施す場合に、ツイニングなどの障害を防止する目的においては、上面や下面の形状について説明されているが、それらの形状が、分割しやすさや分割精度に影響するかどうかの記述はない。これは、分割錠の形状がユニークな多面体であるため、それぞれの面の形状や大きさ、辺や角(3つの力点を含む)の位置関係を、複雑に組み合わさせて検討しなければならず、当業者の通常の最適化検討の範囲を超えた困難なものであったためである。
すなわち、2枚の平坦な板に分割錠を挟んで押さえることで容易に分割を可能とし、割線を平坦な面上に下向きにして上から指などで押さえることで容易に分割することも可能とし、さらにPTP等の包装の上からさえも、同様の方法で分割が可能であって、好ましくは割線を平坦な面上に下向きでも上向きでもどちらで置いても、上から指などで押さえることで容易に分割することを可能とする分割錠であって、分割がしやすく、分割精度が高いことに加え、錠剤の強度も強いものについてはこれまで具体的に開示されていなかった。また、このような技術の開示が切に望まれているにもかかわらず、分割錠の形状がユニークな多面体であるので、それを明らかにすることは困難であった。
【発明の開示】
本発明の目的は、2枚の平坦な板に分割錠を挟んで押さえることで分割が可能であり、割線を平坦な面上に下向きにして指などで押さえることで分割することも可能であり、PTP等の包装の上からさえも、同様の方法で分割が可能であり、好ましくは錠剤の上下面どちらの面を上向きとしても分割することが可能である分割錠であって、容易にかつ正確に分割でき、さらに優れた強度を有する分割錠を提供することにある。
本発明者らは上記目的を達成するために鋭意検討した結果、割線の角度だけでなく全体の形状を下記のように定めることにより、2枚の平坦な板に分割錠を挟んで押さえることで分割が可能であり、割線を平坦な面上に下向きにして指などで押さえることで分割することも可能であり、PTP等の包装の上からさえも、同様の方法で分割が可能であり、好ましくは錠剤の上下面どちらの面を上向きとしても分割することが可能である分割錠であって、容易にかつ正確に分割でき、さらに優れた強度を有する分割錠が得られることを知見した。本発明者らは更に検討を重ね、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、
(1)下面が割線の真下の中心部から徐々に盛り上がった曲面であり、上面が少なくとも1本のU字溝または中心角105°以下のV字溝からなる割線によって2つ以上の面に分かれている分割錠であって、その割線の延長線上から錠剤を眺めた側面図において、下面の中心と、下面の中心の接線から最も距離の遠い2つ以上の上面のそれぞれの点のいずれか2点を結んだ仮の三角形において、下面の中心における角度が70°以上であり、下面の中心の接線から最も距離の遠い2つ以上の上面のそれぞれの点のいずれかと下面の中心の接線との距離(c)と、割線の最下部と下面の中心との距離(d)の比c/dが、1/0.70≦c/d≦1/0.40であり、かつ(i)1/0.60≦c/d≦1/0.40の範囲の場合には、相当する仮の三角形において下面の中心における角度が70°以上であり、(ii)c/dが、1/0.65≦c/d<1/0.60の範囲の場合には、相当する仮の三角形において下面の中心における角度が75°以上であり、(iii)c/dが、1/0.70≦c/d<1/0.65の範囲の場合には、相当する仮の三角形において下面の中心における角度が70°以上75°未満または78°以上であることを特徴とする分割錠。
(2)下面が割線の真下の中心部から徐々に盛り上がった曲面であり、上面が少なくとも1本のU字溝または中心角105°以下のV字溝からなる割線によって2つ以上の面に分かれており、前記割線により形成される複数の領域の各々に前記割線を囲むように且つ錠剤の縁部より内側に位置するように稜線が設けられている分割錠であって、その割線の延長線上から錠剤を眺めた側面図において、下面の中心と、下面の中心の接線から最も距離の遠い2つ以上の上面のそれぞれの点のいずれか2点を結んだ仮の三角形において、下面の中心における角度が70°以上であり、下面の中心の接線から最も距離の遠い2つ以上の上面のそれぞれの点のいずれかと下面の中心の接線との距離(c)と、割線の最下部と下面の中心との距離(d)の比c/dが1/0.70≦c/d≦1/0.40であり、かつ(i)1/0.60≦c/d≦1/0.40の範囲の場合には、仮の三角形において下面の中心における角度が70°以上であり、(ii)c/dが1/0.65≦c/d<1/0.60の範囲の場合には、仮の三角形において下面の中心における角度が75°以上であり、(iii)c/dが1/0.70≦c/d<1/0.65の範囲の場合には、仮の三角形において下面の中心における角度が70°以上75°未満または78°以上であることを特徴とする分割錠、
(3)(i)仮の三角形において下面の中心における角度が70°以上で、かつc/dが1/0.60≦c/d≦1/0.40であるか、(ii)仮の三角形において下面の中心における角度が75°以上で、かつc/dが1/0.65≦c/d≦1/0.40であるか、(iii)仮の三角形において下面の中心における角度が78°以上で、かつc/dが1/0.70≦c/d≦1/0.40であることを特徴する前記(1)または(2)に記載の分割錠、
に関する。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明の分割錠の具体的一態様を示す概略図である。この図において、A1は上面から眺めた略図、B1は割線の延長線上から眺めた側面の略図である。
第2図は、本発明の分割錠の他の具体的態様を示す概略図である。この図において、A2は上面から眺めた略図、B2は割線の延長線上から眺めた側面の略図である。
第3図は、2枚の平坦な板に本発明の分割錠を挟んで押さえることにより、本発明の分割錠を分割する際に、分割錠に生じる現象を模式的に示す側面図である。
第4図は、PTPの収納本体の収納凹所(41)内に、封緘シート(42)の方に割線が設けられた上面を向けて収納されている本発明の分割錠(40)を、収納凹所から本発明の分割錠を取り出す前に、上方から下方に縦方向に力を加えて分割する際に、分割錠に生じる現象を模式的に示す側面図である。
第5図は、PTPの収納本体の収納凹所(41)内に、収納本体(43)の方に割線が設けられた上面を向けて収納されている本発明の分割錠(40)を、収納凹所から本発明の分割錠を取り出す前に、上方から下方に縦方向に力を加えて分割する際に、分割錠に生じる現象を模式的に示す側面図である。
第6図は、本発明に係る分割錠に設ける割線の形状を概略的に示す模式図である。
図中の符号1は下面を、符号2は割線を、符号3は中心部(中心)を、符号6は下面1の中心3の接線を、符号7,8は下面1の中心3の接線6から最も距離の遠い上面の点を、符号9,10は稜線を、符号12,13は割線2の起端を、符号Rは下面1の曲率半径を、符号aは割線2の中心角を、符号bは下面1の中心3と点7及び8のそれぞれを結んだ仮の三角形の下面1の中心3における角度を、符号cは点7及び8のいずれかと下面1の中心3の接線6との距離を、符号dは割線2の最下部の線11と下面1の中心3との距離を、符号18は下面を、符号19は割線を、符号20は中心部(中心)を、符号23は下面18の中心20の接線を、符号24,25は下面18の中心20の接線23から最も距離の遠い上面の点を、符号26,27は稜線を、符号29,30は割線19の起端を、符号Rは下面18の曲率半径を、符号Sは上面の曲率半径を、符号aは割線19の中心角を、符号bは下面18の中心20と点24及び25のそれぞれを結んだ仮の三角形の下面18の中心20における角度を、符号cは点24及び25のいずれかと下面18の中心20の接線23との距離を、符号dは割線19の最下部の線28と下面18の中心20との距離を、符号40は分割錠を、符号41は収納凹所を、符号42は封緘シートを、符号(a)はV字溝形状を、符号(b)は頂角近傍が丸いラウンド形状を有するV字溝形状を、符号(c)は頂角近傍が屈曲部を1以上有するV字溝形状を、符号(d)はU字溝形状を、符号(e)は屈曲部を1以上有するU字溝形状を、符号(f)は凸状の曲線が交わってなるV字溝形状を、符号43はプレススルーパックを表わす。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明に係る分割錠には、割線が2つ以上ある分割錠も含まれるが、以下の説明においては割線が1つの分割錠を例に取り説明する。
本発明の分割錠は、下面が割線の真下を中心部として徐々に盛り上がった曲面であり、上面が少なくとも1本のU字溝または中心角105°以下のV字溝からなる割線によって2つ以上の面に分かれている分割錠であって、その割線の延長線上から錠剤を眺めた側面図において、下面の中心の接線から最も距離の遠い上面の点が、割線の両側にそれぞれ少なくとも1つずつあり、2枚の平坦な板に分割錠を挟むと、分割錠の上面は、前記の割線の両側の少なくとも1ヶ所ずつで平坦な面と接し、さらに分割錠の下面は、中心部で平坦な面と接し、合わせて3つの力点が生じて分割が可能となっている分割錠である。
本発明の分割錠は、以下のような態様を有することが好ましい。本発明の分割錠は、下面が割線の真下の中心部から徐々に盛り上がった曲面であり、上面が少なくとも1本のU字溝または中心角105°以下のV字溝からなる割線によって2つ以上の面に分かれており、前記割線により形成される複数の領域の各々に前記割線を囲むように稜線が設けられている分割錠であって、第3図に示したようにその割線の延長線上から錠剤を眺めた側面図において、下面の中心の接線から最も距離の遠い上面の点が割線の両側の稜線上にそれぞれ少なくとも1つずつあり(第3図中の7および8)、2枚の平坦な板に分割錠を挟むと、分割錠の上面は、前記の割線の両側の少なくとも1ヶ所ずつ(第3図中の7および8)で平坦な面と接し、さらに分割錠の下面は、中心部(第3図中の3)で平坦な面と接し、合わせて3つの力点が生じて分割が可能となっている分割錠である。点7と点3との間の距離は、通常点8と点3との間の距離と同一である。また、この分割錠では錠剤の下面に錠剤の縁部から中心部に向かって除々に盛り上がる形状を設けているので、第4図に示したように、PTPの収納本体の収納凹所(第4図中の41)内に、封緘シート(第4図中の42)の方に割線が設けられた上面を向けて分割錠(第4図中の40)が収納されている場合には、PTPの収納本体の収納凹所の上から、錠剤の下面の凸形状の中央部を指で押すことにより、錠剤を容易に2つに分割することができる。
ここで、下面における中心部は、面であってもよいし、線であってもよいし、点であってもよい。
本発明においては、上面が、1本のU字溝または中心角105°以下のV字溝からなる割線によって2つの面に分かれており、前記割線により形成される2つの領域の各々に前記割線を囲むように且つ錠剤の縁部より内側に位置するように稜線が設けられている分割錠が好ましい態様として挙げられる。
本発明の分割錠においては、稜線の周辺領域が凸面形状の曲面で構成されていることが好ましい。つまり、稜線の周辺領域は面取りされていることが好ましい。このように、稜線の周辺領域を凸面形状の曲面で構成し、錠剤の上面から尖ったエッジ部を無くすようにすることにより、下記のような利点を有する。錠剤の上方から下方に力を加えた場合に、錠剤に欠けを生じることなく、割線に沿って、きれいに分割できる。且つ、打錠工程、空気輸送時や、PTPや瓶詰めにして搬送する際に、錠剤の欠けが生じ難い。分割錠のコーティング工程において、コアエロージョンやエッジチッピング等を生じ難い。さらに、PTPの収納凹所に錠剤を収容した場合に、手指等で押さなくても錠剤により勝手に封緘シートが破断するといった事態が生じ難い。
本発明の分割錠では、錠剤の上面における割線により形成される複数の領域の各々において、割線の起端となる線から稜線までに至る面の形状が、凸面形状の曲面で構成されていることが好ましい。より好ましくは、上面が、1本のU字溝または中心角105°以下のV字溝からなる割線によって2つの面に分かれており、前記割線により形成される2つの領域の各々に前記割線を囲むように且つ錠剤の縁部より内側に位置するように稜線が設けられており、錠剤の上面における割線により形成される2つの領域の各々において割線の起端となる線の各々から2つの稜線の各々迄の面の形状が、凸面形状の曲面で構成されている。
ここで、「凸面形状の曲面」とは、ゆるやかな隆起曲面となっていることである。より具体的に説明すると、割線の起端となる線から稜線方向に、曲率の小さい面から、次第に、曲率の大きい面になるように曲率が連続的に変化することで、全体として、ゆるやかな隆起曲面となっている場合が挙げられる。前記「凸面形状の曲面」は、曲率半径が約4mmより大きい曲面とすることがより好ましい。
本発明の分割錠が上記形状を有することにより、第4図に示したように、PTPの収納本体の収納凹所内に封緘シートの方に割線が設けられた上面を向けて分割錠が収納されている場合だけでなく、第5図に示したようにPTPの収納凹所(第5図中の41)に割線が設けられた上面が収納本体(第5図中の43)の方を向くように分割錠が収容されている場合でも、PTPの収納凹所(第5図中の41)の上から指で押すことにより、分割錠を容易に2つに分割することができる。第5図に示したように、前記分割錠の分割を側面視した場合、概ねV字形状に押しつぶされる収納凹所や指の形状に沿って、錠剤の上面の割線により形成される2つの領域の各々が対向する曲面を持っているため、指に大きな力を入れなくても、割線を開く方向に力が働く。これにより、PTPの収納凹所に、錠剤の割線が設けられた上面が収納本体の方を向くように収容された場合でも、錠剤をより容易に2つに分割することができる。このように、本態様の分割錠では、PTPの収納本体の収納凹所内に錠剤を方向規制することなく収容した場合にも、PTPから錠剤を取り出す前に、容易に2つに分割することができるという利点がある。また、本態様の分割錠は、上面に2つの凸形状の面と下面に凸形状の面とを有しているので、錠剤同士が面接触せず、点接触する。これにより、コーティングの工程において、ツウィンニングを生じ難いという利点もある。さらに、本発明の分割錠は、PTPから錠剤を取り出して、割線を平坦な面上に下向きでも上向きでもどちらで置いても、指などで押さえることで容易に分割することができる。割線を平坦な面上に上向きにして上から指などで押さえた場合、下面の中心の接線から最も距離の遠い上面の点から力点がずれる場合があるが、そのような場合であっても、上記接触点から割線の最底部にいたる面が上向きに凸状を呈する場合は、該面と指が新たに適当な接触点を形成し、さらに割線の反対面では割線のちょうど裏側の中心部で平坦な面と接するので、3つの力点が生じて分割が可能となっている。
本発明において、分割錠の上下面どちらの面を上向きとしても分割できる錠剤の他の態様としては、下面の中心の接線から最も距離の遠い2つの上面の点のそれぞれを起点として割線までを結ぶ線が、下面の中心の接線と約30°以下の角度を成す直線となっている分割錠が挙げられる。この場合、稜線から割線までは、直線であっても、凹面形状の曲線であっても、波状の曲線であっても構わない。
上記いずれの態様の分割錠においても、上面に設けられている割線はV字溝またはU字溝である。
前記V字溝においては、その中心角は105°以下、好ましくは90°以下、より好ましくは70°以下である。ここで、「V字溝」は、概ねV字溝である場合を含む。「概ねV字溝」は、例えば、V字溝の頂角の近傍が丸く曲線で形成されているような形状や、放物線(2次曲線)の頂点周辺のような形状である場合、またはV字溝の頂角の近傍が屈曲部を有する多角形状である場合等を含む。より具体的には、本発明におけるV字溝は、第6図(a)に示すV字溝形状であっても、第6図(b)に示すような、頂角近傍が丸いラウンド部61を有する形状であるV字溝であっても、第6図(c)に示すような、頂角近傍が屈曲部62を1以上有する多角形状であるV字溝であってもよい。
前記U字溝は、概ねU字溝である場合を含む。「概ねU字溝」は、例えば、U字溝の丸い曲線部分が屈曲部を有する多角形状にされている場合等を含む。より具体的には、本発明におけるU字溝は、第6図(d)に示すU字溝形状であってもよいし、第6図(e)に示すような、下部を滑らかな曲線(第6図(d)に示す領域63)にするのではなく、屈曲部62を1以上有する多角形状にしたU字溝であってもよい。V字溝としては、第6図(f)に示すように、凸状の曲線が交わってなるV字溝である場合を含み、割線の端に変曲点が無くなり、割線の端と稜線が同一となる場合を含む。
本発明の分割錠においては、その割線の延長線上から錠剤を眺めた側面図において、下面の中心と下面の中心の接線から最も距離の遠い2つ以上の上面のそれぞれの点のいずれか2点を結んだ仮の三角形(以下、単に「仮の三角形」という。)において、下面の中心における角度が約70°以上であることが好ましく、約75°以上がより好ましく、約78°以上がさらに好ましい。特に好ましくは、下面の中心の接線から最も距離の遠い2つ以上の上面のそれぞれの点のいずれかと下面の中心の接線との距離(c)と、割線の最下部と下面の中心との距離(d)の比c/dが(i)1/0.60≦c/d≦1/0.40の範囲の場合には、仮の三角形の下面の中心における角度が70°以上であり、(ii)1/0.65≦c/d<1/0.60の範囲の場合には、仮の三角形の下面の中心における角度が75°以上であり、(iii)1/0.70≦c/d<1/0.65の範囲の場合には、仮の三角形の下面の中心における角度が70°以上75°未満または78°以上である。
前述の仮の三角形の下面の中心における角度を約70°以上とし、割線の中心角を約105°以下とするためには、上面における稜線から割線の中心線に至るまでの面を曲面とするか、割線の起端で変曲する多面とすることが好ましい。
また、本発明の分割錠をより容易にかつより正確に分割可能とするために、下面の中心の接線から最も距離の遠い2つ以上の上面のそれぞれの点のいずれかと下面の中心の接線との距離(c)と、割線の最下部と下面の中心との距離(d)の比c/dは、仮の三角形の下面の中心における角度との関係で下記の範囲内にあることが好ましい。仮の三角形の下面の中心における角度が70°以上75°未満の場合は、上記比c/dを1/0.60≦c/d≦1/0.40程度にすることがより好ましく、また、仮の三角形の下面の中心における角度が75°以上78°未満の場合は、上記比c/dを1/0.65≦c/d≦1/0.40程度にすることがより好ましく、また、仮の三角形の下面の中心における角度が78°以上の場合は、上記比c/dを1/0.70≦c/d≦1/0.40程度にすることがより好ましい。さらに、仮の三角形の下面の中心における角度に関わらず、上記比c/dを1/0.60≦c/d≦1/0.50程度とすることがさらに好ましい。比c/dが1/0.60≦c/d≦1/0.50の場合には、仮の三角形の下面の中心における角度を78℃以上とすることがより好ましい。
本発明の分割錠では、上面から眺めたときの輪郭を、例えば、円形、楕円形、多角形または星状等の任意の形にすることができるが、円形ないし楕円形が好ましい。錠剤の大きさは大型ないし小型のものであってよく、例えば直径約6mmから12mm程度、またはさらに小型のものとしては直径約3mmから6mm程度とすることが可能である。
本発明の分割錠では、錠剤全体の機会的強度を向上させるために、錠剤の直径に対する厚み(第1図におけるc値、第2図におけるc値)を直径1に対して0.25以上とすることが好ましく、0.40以上とするのがより好ましい。
また、本発明の分割錠をより容易にかつより正確に分割可能とするために、本発明の分割錠の下面を、曲率半径が7mmより大きい曲面とすることが好ましく、曲率半径が9mmより大きい曲面とすることがより好ましく、曲率半径が11mmより大きい曲線とすることが最も好ましい。
本発明の分割錠は、さらに下記(a)〜(d)に記載の形状のうちいずれか1の形状を有することが好ましい。
(a)本発明の分割錠においては、割線の最下部と下面の中心との距離が、錠剤縁部の上端上の点と下面の中心の接線との距離に比べて、短いことが好ましい。この場合、錠剤の割線が通常の分割錠の割線に比べて深く形成されているので、割線に沿ってきれいに分割できる。
(b)本発明の分割錠においては、割線の起端となる線の各々が、錠剤縁部の上端より上方の位置に設けられていることが好ましい。すなわち、割線の起端となる線上の点と下面の中心の接線との距離が、錠剤縁部の上端上の点と下面の中心の接線との距離に比べて、長いことが好ましい。ここで、「割線の起端となる線」は、通常、割線1本につき2本存在する。
通常、分割錠においては、錠剤の上面から錠剤の縦方向に深く割線を形成し、割線の深さを深くすれば2つに分割し易くなるものの、割線が設けられた領域における機械的強度が弱くなり、分割することを意図していないにもかかわらず、錠剤が勝手に2つに分割されてしまい易くなるという問題がある。上述のような構造にすれば、割線が設けられた領域における錠剤の機械的強度をあまり低下させることなく、割線の深さを深くすることができるので、2つに分割し易く、且つ、分割することを意図していない場合に錠剤が勝手に2つに分割されてしまうことが実質的になくなる。
(c)本発明の分割錠においては、錠剤の上面にある複数、好ましくは2つの稜線の各々から錠剤縁部の上端までの形状が、急な斜面であることが好ましい。このような構造にすることにより、錠剤の上面において、割線の起端となる線から稜線までの形状が、稜線の各々から錠剤の縁部までの形状に比べ、緩やかな隆起曲線となるので、錠剤の上面に対し上から下方向に力を加えた場合、割線を開く方向に力が加わり易く、これにより、より小さな力で、よりきれいに割線に沿って分割することができるようになる。
前記「急な斜面」は、分割錠の割線の延長線上から錠剤を眺めた側面図において、直線または凸面形状の曲線であることが好ましい。前記「急な斜面」の形状を、直線にするか凸面形状の曲線にするかは、錠剤のデザイン面から決定すればよい。すなわち、分割錠の薬効、効能および効果等に基づいて、錠剤の形状を、医師、薬剤師または患者等に、印象付けることができるように、錠剤の形状を作製することができる。
(d)本発明の分割錠においては、割線が錠剤の縁部と交わる部分の近傍領域において面取りされていることが好ましい。さらに、前記近傍領域が、割線を挟むようにして形成された2つの凸面形状に面取りされていることがより好ましい。このような構造にすれば、更に錠剤に欠けが生じ難い。
本発明の具体的態様を第1図に示す。この図において、A1は上面から眺めた略図、B1は割線の延長線上から眺めた側面の略図である。
第1図の分割錠においては、下面1は割線2の真下を中心部3として徐々に盛り上がった曲面である。なお、第1図に示す態様においては、「下面の中心部」が点であり、「下面の中心」と同一の点を指すため、両者をともに符号3で表す。しかし、「下面の中心部」は点だけでなく、線や面の場合があることは上述したとおりである。上面は割線2によって面4及び5に分かれており、面4及び5には割線を挟んで稜線9及び10がある。下面1の中心3の接線6から最も距離の遠い上面の点7及び8が、割線2の両側(面4及び5)にそれぞれ1つずつ稜線9及び10上にある。稜線9及び10から割線2の最下部の線11に至るまでは、線12及び13で変曲したそれぞれ面14・15及び面16・17の二面ずつからなる。
また、下面1の曲率半径をRと示し、割線2の中心角をaと示し、下面1の中心3と、面4及び5上の点7及び8のそれぞれを結んだ仮の三角形の下面1の中心3における角度をbと示し、点7及び8のいずれかと下面1の中心3の接線6との距離をcと示し、割線2の最下部の線11と下面1の中心3との距離をdと示すと、Rは、約7mm以上が好ましく、約9mm以上がより好ましく、約11mm以上が最も好ましく、aは、約105°以下が好ましく、約90°以下がより好ましく、約70°以下が最も好ましく、bは約70°以上であることが好ましく、約75°以上がより好ましく、約78°以上が最も好ましく、bが70°以上75°未満の場合は、c/dの比が1/0.60≦c/d≦1/0.40程度、またbが75°以上78°未満の場合は、C/dの比が1/0.65≦c/d≦1/0.40程度、また、bが78°以上の場合は、cとdの比c/dが1/0.70≦c/d≦1/0.40程度であることが好ましい。なお、点7と接線6との距離は、通常点8と接線6との距離と同一である。
さらに、本発明の分割錠を上下面どちらの面を上向きとしても分割できる錠剤とした場合の具体的一態様を第2図に示す。この図において、A2は上面から眺めた略図、B2は割線の延長線上から眺めた側面の略図である。
第2図の分割錠においては、下面18は、割線19の真下を中心部20として徐々に盛り上がった曲面である。なお、第2図に示す態様においては、「下面の中心部」が点であり、「下面の中心」と同一の点を指すため、両者をともに符号20で表す。上面はV字溝19によって面21及び22に分かれており、面21及び22には割線を挟んで稜線26及び27がある。下面18の中心20の接線23から最も距離の遠い上面の点24及び25が、割線19の両側(面21及び22)にそれぞれ1つずつ、稜線26及び27上にある。稜線26及び27から割線19の最下部の線28に至るまでは、線29及び30で変曲したそれぞれ面31・32及び面33・34の二面ずつからなる。
また、下面18の曲率半径をRと示し、面31及び33の曲率半径をSと示し、割線19の中心角をaと示し、下面18の中心20と、面21及び22上の点24及び25のそれぞれを結んだ仮の三角形の下面18の中心20における角度をbと示し、点24及び25のいずれかと下面18の中心20の接線23との距離をcと示し、割線19の最下部の線28と下面の中心20との距離をdと示すと、Rは、約7mm以上が好ましく、約9mm以上がより好ましく、約11mm以上が最も好ましく、Sは、約4mm以上が好ましく、aは、約105°以下が好ましく、約90°以下がより好ましく、約70°以下が最も好ましく、bは約70°以上であることが好ましく、約75°以上がより好ましく、約78°以上が最も好ましく、bが70°以上75°未満の場合は、cとdの比c/dが1/0.60≦c/d≦1/0.40程度、またbが75°以上78°未満の場合は、Cとdの比c/dが1/0.65≦c/d≦1/0.40程度、また、bが78°以上の場合は、cとdの比c/dが1/0.70≦c/d≦1/0.40程度であることが好ましい。なお、点24と接線23との距離は、通常点25と接線23との距離と同一である。
本発明の分割錠は上記形状を有していればよく、含有成分については何ら制限がない。本発明の分割錠に含有しうる有効成分の例としては、例えば中枢神経系用薬、末梢神経系用薬、循環器官用薬、消化器官用薬、ホルモン剤、泌尿生殖器官用薬、血液・体液用薬、代謝性医薬品、腫瘍用薬、アレルギー用薬、抗生物質、化学療法剤、ビタミン、診断薬及び麻薬・覚醒剤等から選ばれる1種または2種以上の活性成分が挙げられる。さらに具体的には、例えばアセチルスピラマイシン、アモキシシリン、イコサペント酸エチル、イトラコナゾール、オキサトミド、オロパタジン、グリブゾール、グルタチオン、ケトフェニルブタゾン、コバマミド、シサプリド、トドララジン、トロピセトロン、ドンペリドン、バルプロ酸、ピリドキサール、フルオロウラシル、フルナリジン、フルラゼパム、ベニジピン、ミノサイクリン、メベンダゾール、メドロキシプロゲステロン、ユビデカレノン、レボドバ及びこれらの塩からなる群から選ばれる1種または2種以上の活性成分が挙げられる。有効成分は、一般に、一錠中(一錠の重量を100重量部とする)、約0.01重量部以上90重量部以下の範囲で含まれる。本発明の分割錠は、好ましくは医薬品として用いられるが、食品、化粧品、農薬、動物用薬などに用いることも好ましい。
本発明の分割錠は、一般製剤の製造に用いられる種々の添加剤を含んでもよく、またその添加量は一般製剤の製造に用いられる量でよい。このような添加剤としては、例えば賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、矯味剤、発泡剤、甘味料、香料、着色剤、安定化剤及び可溶化剤等が挙げられる。
前記賦形剤としては、例えば、乳糖、マンニトール、ショ糖、ブドウ糖などの糖類;バレイショデンプン、トウモロコシデンプン、部分α化デンプンなどのデンプン類;沈降炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、塩化ナトリウムなどの無機塩類;または、結晶セルロースなどが挙げられ、これら以外でも公知のものであれば何ら制限なく用いることができる。賦形剤は、一般に、一錠中(一錠の重量を100重量部とする)、約10重量部以上98重量部以下の範囲で含まれる。
前記結合剤としては、例えば、部分けん化ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、プルラン、メチルセルロース、アラビアゴムまたはデンプン類などが挙げられ、これら以外でも公知のものであれば何ら制限なく用いることができる。結合剤は、一般に、一錠中(一錠の重量を100重量部とする)、約0.5重量部以上15重量部以下の範囲で含まれる。
前記崩壊剤としては、例えば、クロスポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、部分アルファ化デンプンヒドロキシプロピルスターチ、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、結晶セルロースまたは粉末セルロースなどが挙げられ、これら以外でも公知のものであれば何ら制限なく用いることができる。なかでも、クロスポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースまたはクロスカルメロースナトリウムを用いることが好ましい。崩壊剤は、一般に、一錠中(一錠の重量を100重量部とする)、約1重量部以上30重量部以下の範囲で含まれる。
前記滑沢錠としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸、滑石、水素添加植物油またはタルクなどが挙げられるが、好ましくはステアリン酸マグネシウムまたはステアリン酸カルシウムである。滑沢剤は、一般に、一錠中(一錠の重量を100重量部とする)、約0.01重量部以上5重量部以下の範囲で含まれる。
前記矯味剤としては、例えば、グルタミン酸ナトリウム、5’−イノシン酸ナトリウム、5’−グアニル酸ナトリウム、アスパラギン酸ナトリウム等の矯味用有機酸塩等が挙げられ、これら以外でも公知のものであれば何ら制限なく用いることができる。
前記発泡剤としては、例えば、重曹、炭酸ナトリウムなどが挙げられ、これら以外でも公知のものであれば何ら制限なく用いることができる。
前記甘味料としては、例えば、アスパルテーム、サッカリンナトリウム、ステビアなどが挙げられ、これら以外でも公知のものであれば何ら制限なく用いることができる。
前記香料としては、例えば、レモン、オレンジ、メントールなどが挙げられ、これら以外でも公知のものであれば何ら制限なく用いることができる。
前記着色剤としては、例えば、食用黄色5号、食用赤色2号及び食用青色2号などの食用色素、食用レーキ色素、酸化鉄などが挙げられ、これら以外でも公知のものであれば何ら制限なく用いることができる。
前記安定化剤としては、例えば、エデト酸ナトリウム、トコフェロール、シクロデキストリン等などが挙げられ、これら以外でも公知のものであれば何ら制限なく用いることができる。
前記可溶化剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、シクロデキストリン類、ヒドロキシプロピルシクロデキストリン類及びポリビニルピロリドン(PVP)などが挙げられ、これら以外でも公知のものであれば何ら制限なく用いることができる。
本発明における分割錠は、その用途または投与方法などを特に問わない。
本発明における分割錠は、内服錠、発泡錠、調剤錠、チュアブル錠、口腔内速崩壊錠、トローチまたはバッカルもしくは舌下錠などの口腔錠などのいずれであってもよい。
また、本発明における分割錠は、普通錠やコーティング錠の他に、マルチプルユニット錠、グラジュメット、ワックスマトリックス、レジネートまたはスパンタプなどの機能性錠剤であってもよい。
本発明の分割錠を製造する方法としては、有効成分と種々の添加剤を、例えば流動層造粒、攪拌造粒、転動造粒、転動流動層造粒、押出し造粒等の各方法で造粒し、所望により滑沢剤を混合して打錠末とし、それ自体公知の打錠機、好ましくは生産性の優れたロータリー打錠機または単発打錠機で打錠する間接打錠法が挙げられる。また、有効成分と種々の添加剤の混合物を打錠末とし、それ自体公知の打錠機、好ましくは生産性の優れたロータリー打錠機または単発打錠機で打錠する直接打錠法も挙げられる。さらに、上記間接打錠法における造粒物または直接打錠法における混合物に滑沢剤を混合せずに、圧縮成形時に打錠機の杵臼にあらかじめ滑沢剤を塗布してから圧縮成形することもできる。
本発明の分割錠は、所望によりフィルムコーティングすることができる。本発明の錠剤に施すコーティングは錠剤のコーティングに通常用いられているものでよい。フィルムコーティングを形成させるために使用できるフィルム形成性ポリマーの例としては、セルロースポリマーがある。セルロースポリマーは、分子量が7500〜120000、粘度が1.5〜20mm/s(25℃)であるのが好ましい。例えば、セルロースポリマーの1つであるセルロースエーテル系ポリマーには、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース等が含まれる。好ましくは、HPMCである。HPMCとしては例えばTC−5(日本薬局方ヒドロキシプロピルメチルセルロース2910)が使用できる。
本発明の分割錠の分割方法は、特に限定されない。例えば、第3図に示したように、2枚の平坦な板に本発明の分割錠を挟んで押さえることで容易に分割することができる。また好ましくは、割線を平坦な面上に下向きにして指などで押さえることで分割することができる。また、好ましくは、割線を平坦な面上に上向きにして指などで押さえることでも分割することができる。さらに、本発明の分割錠がPTPに収容されている状態であっても、上記方法で本発明の分割錠を分割することができる。本発明の分割錠は、両手で錠剤をつかんで割線を開く(または閉じる)ような方法、または机などの硬質平坦な面上で、スプーンなどの縁で割線に沿ってもしくは割線のちょうど裏側を押圧する方法などの方法でも分割することができる。
以下に実施例により本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は本発明を制限するためのものではない。
【実施例1】
乳糖(DMV社製:200M)66.6重量%、トウモロコシ澱粉(日本食品加工社製:日食コーンスターチW)29.4重量%を流動層造粒機(フロイント社製:フローコーターFLO−15)内に仕込み、結合剤として部分けん化ポリビニルアルコール(日本合成社製:ゴーセノールEG−05)の10重量%水溶液を調製し、これを上記混合物に対しスプレーし、造粒し、乾燥させて、乾燥粉末を得た。尚、乾燥粉末には、結合剤が3重量%含まれていた。
次に、以上により作製した乾燥粉末を整粒機(徳寿工作所製:ランデルミルRM−I)で整粒し、得られた整粒物に滑沢剤(ステアリン酸マグネシウム(堺化学社製))を1重量%を加えてブレンダー(徳寿工作所製:ミックスウェル混合機V1−60)で、5分間、混合し、成形材料を得た。
次に、成形材料を、高速ロータリー打錠機(菊水製作所製:VIRGO12)で、第2図に示す型で錠剤径が7mm、R(曲率半径)、S(曲率半径)、a、b、c及びdがそれぞれ第1表に示す値になるよう杵を選択し、厚みを調節して、打錠圧9000Nで打錠して、本発明にかかる分割錠を作製した。
試験例
本発明の分割錠の評価結果を表に示す。
表中の官能試験とは、無作為に選出した5人のパネラーにより平らなテーブルの上で、割線を下向きにして指で押して分割してもらい、このときの分割のし易さを4段階(割れ易い:3点、やや割れ易にくい:2点、割れにくい:1点、割れない:0点)で評価してもらうもので、15点満点で15点を◎、10〜14点を○、5〜9点を△、4点以下を×として評価した。パネラーのほとんどが割れやすいと答えた○の評価が好ましく、全員が割れ易いと答えた◎の評価が極めて好ましい。
表中の分割後のCV(%)とは、10錠を分割した半錠20個について、重量を測定し、その標準偏差を平均値で割った時の百分率であり、この値が低いほど正確に分割できていることを表わし、値が2〜4で好ましく、2以下で極めて好ましい。

上記表から明らかなように、割線を平坦な面上に下向きにして指で押さえることで錠剤を分割したときはいずれの場合も容易にかつ正確に分割可能であった。特に、bが70°以上75°未満の場合は、cとdの比c/dが、1/0.60≦c/d≦1/0.40のとき、またbが75°以上78°未満の場合は、cとdの比c/dが、1/0.65≦c/d≦1/0.40のとき、また、bが78°以上の場合は、cとdの比c/dが、1/0.70≦c/d≦1/0.40のとき、より容易にかつ正確に分割することが可能であった。bが78°以上の場合で、cとdの比c/dが、1/0.70≦c/d≦1/0.40のとき、さらに容易にかつ正確に分割することが可能であった。
また、割線を平坦な面上に上向きにして指で押さえることで錠剤を分割したときも、いずれも容易にかつ正確に分割可能であった。
【産業上の利用可能性】
本発明によれば、2枚の平坦な板に分割錠を挟んで押さえることで分割が可能であり、割線を平坦な面上に下向きにして指などで押さえることで分割することも可能であり、PTP等の包装の上からさえも、同様の方法で分割が可能であり、好ましくは錠剤の上下面どちらの面を上向きとしても分割することが可能であり、容易にかつ正確に分割でき、さらに優れた強度を有する分割錠を提供できる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下面が割線の真下の中心部から徐々に盛り上がった曲面であり、上面が少なくとも1本のU字溝または中心角105°以下のV字溝からなる割線によって2つ以上の面に分かれている分割錠であって、その割線の延長線上から錠剤を眺めた側面図において、下面の中心と、下面の中心の接線から最も距離の遠い2つ以上の上面のそれぞれの点のいずれか2点を結んだ仮の三角形において、下面の中心における角度が70°以上であり、下面の中心の接線から最も距離の遠い2つ以上の上面のそれぞれの点のいずれかと下面の中心の接線との距離(c)と、割線の最下部と下面の中心との距離(d)の比c/dが1/0.70≦c/d≦1/0.40であり、かつ(i)1/0.60≦c/d≦1/0.40の範囲の場合には、相当する仮の三角形において下面の中心における角度が70°以上であり、(ii)c/dが1/0.65≦c/d<1/0.60の範囲の場合には、相当する仮の三角形において下面の中心における角度が75°以上であり、(iii)c/dが1/0.70≦c/d<1/0.65の範囲の場合には、相当する仮の三角形において下面の中心における角度が70°以上75°未満または78°以上であることを特徴とする分割錠。
【請求項2】
(i)仮の三角形において下面の中心における角度が70°以上で、かつc/dが1/0.60≦c/d≦1/0.40であるか、(ii)仮の三角形において下面の中心における角度が75°以上で、かつc/dが1/0.65≦c/d≦1/0.40であるか、(iii)仮の三角形において下面の中心における角度が78°以上で、かつc/dが1/0.70≦c/d≦1/0.40であることを特徴する請求項1に記載の分割錠。

【国際公開番号】WO2004/087110
【国際公開日】平成16年10月14日(2004.10.14)
【発行日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−504214(P2005−504214)
【国際出願番号】PCT/JP2004/004369
【国際出願日】平成16年3月26日(2004.3.26)
【出願人】(000001029)協和醗酵工業株式会社 (276)
【Fターム(参考)】