説明

分包機における掻出し装置

【課題】分包機1の掻出し装置10において、組み立てが容易で、掻取爪50が着脱可能である分割ローター11。
【解決手段】分割ローター11に駆動軸20が挿入される被係合面44、72を備えた孔を形成し、駆動軸20には、被係合面44、72に係合して、これら駆動軸20と分割ローター11との相対的回動を規制する係合面21を形成する。掻取爪50は、回転板40と仕切板61とを接続する取付部材63に対して着脱自在に固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分包機における掻出し装置に関し、特に分割ローターと該分割ローターの駆動軸との取付け構造の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、病院等で調剤される散薬の分包のために、散薬を堆積するための環状溝を外周部上面に有するターンテーブルを具備し、このターンテーブルを回転させた状態で、散薬フィーダからターンテーブルの環状溝へ散薬を分布供給し、掻出し装置によって環状溝の散薬を適宜設定した分割数で分割して掻き出して包装装置に供給し、包装装置にて散薬を包装する構成の薬剤分包機(以下、単に分包機とも言う)が提供されている。
掻出し装置は、目的量の散薬を環状溝から分割ローターによって掻き出して、1包分ずつの散薬を包装装置に供給する。分割ローターは、環状溝に当接する回転板と、該回転板と所定間隔をおいて離間し、一部が環状溝に当接する仕切板と、回転板と仕切板との間に配置され、散薬を掻き出す掻取爪とから構成されている。
散薬の環状溝への分布供給が完了した後、掻出し装置が散薬を掻き出す際は、ターンテーブルが間欠運転されるとともに、分割ローターをターンテーブルの内周側から外周側へ間欠回動させる。この間欠回動に伴い、散薬が掻取爪によって掻き出されることにより、散薬が1包分ずつ包装装置に供給される。
【0003】
この種の装置において、従来の分割ローターの取付け構造としては、特許文献1のようなものが知られている。特許文献1に記載されている分包機の掻出し装置は、分割ローター駆動用モータの駆動力が、伝動ベルトを介して、分割ローターに直結する従動プーリーに伝達される構成である。従動プーリーには位置決め部材がねじ留めされており、この位置決め部材に回転板と、仕切板および掻取爪が一体となった掻出板とが固定ツマミによって固定されている。固定ツマミはねじ部を有しており、専用工具を使用して着脱される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−350146号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記従来の分包機における掻出し装置においては、従動プーリーに対して回転板および掻出板の位置決めするために、位置決め部材に嵌着された位置決めピンと、回転板および掻出板に形成された位置決め孔を用いている。この構成は、別途位置決めピンが必要であるなど、部品点数が多くなるという問題があった。
また、掻取爪は仕切板および固定部と一体となっており、掻取爪のみの交換ができず、最も交換頻度の高い掻取爪を交換する際に、より費用がかかるという問題があった。
さらに、固定ツマミのねじ部を螺着させる位置決め部材の板厚が薄いため、雌ねじ山の数が少なくなり、確実な固定ができないという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の掻出し装置は、回転駆動される駆動軸と、該駆動軸に固定された分割ローターとを備え、該分割ローターは、回転板と、該回転円板に固定された掻取爪と、該掻取爪を中に挟んで前記回転円板と対抗配置され、該掻取爪に固定された仕切板とを備え、前記駆動軸とともに前記分割ローターを回転させて、前記掻取爪によりターンテーブル上に載置された散薬を掻き出し、これを包装装置に定量ずつ分配する分包機における掻出し装置であって、前記分割ローターには、前記駆動軸が挿入される被係合面を備えた孔が形成され、前記駆動軸には、前記被係合面に係合して、これら駆動軸と分割ローターとの相対的回動を規制する係合面が形成されていることを特徴とする。
【0007】
前記仕切板は、取付け部材に固定され、前記掻取爪は該取付け部材に着脱自在に固定されてなり、前記孔は、前記回転板に設けられた第1の孔と、前記取付け部材に設けられた第2の孔とを有してなり、前記駆動軸は、前記第1、第2の孔内に挿入された状態にて、該挿入深さを規制する位置規制面と、その先端面に形成された雌ねじ穴とを有し、前記回転板と取付け部材とは、前記雌ねじ穴に雄ねじを螺着することにより、該雄ねじと前記位置規制面との間に挟持されていることが好ましい。
【0008】
前記駆動軸には、その外周部に前記回転板に当接してこれを保持する環状の保持壁部を備えた保持円板が固定されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、分割ローターに、駆動軸が挿入される被係合面を備えた孔が形成され、駆動軸に、被係合面に係合して、これら駆動軸と分割ローターとの相対的回動を規制する係合面が形成されているという構成としたため、部品点数が少なくなり、取り付けが容易となる上、取り付けミスも防止することができる。
掻取爪が取付け部材に着脱自在に固定されている構成としたため、掻取爪のみの交換が可能となる。
駆動軸の先端面に雌ねじ穴を有し、回転板と取付け部材とを雄ねじによって螺着する構成としたため、雌ねじ穴がより深くなり、より強固な固定が可能となる。
駆動軸に、その外周部に回転板に当接してこれを保持する環状の保持壁部を備えた保持円板が固定されているという構成としたため、回転板の固定がより安定し、分割ローターの回転が安定するという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る掻出し装置の分割図である。
【図2】本発明に係る掻出し装置の仕切部と掻取爪を組み合わせた状態の詳細図であって(a)は掻取爪の正面図であり(b)は掻取爪の側面図である。
【図3】本発明に係る掻出し装置の組立て状態の斜視図である。
【図4】本発明に係る掻出し装置を備える分包機の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を図面に基づいて詳細に説明する。
図4は、本発明の掻出し装置を備えた分包機の概略図である。
図4に示すように、この実施形態の分包機1は、図示しない散薬カセットから排出された散薬Pを供給する振動フィーダ2と、振動フィーダ2から落下する散薬Pを受け入れるターンテーブル3と、ターンテーブル3の回転に連動して、ターンテーブル3に供給された散薬Pを外方に定量的に掻き出す掻出し装置10と、この掻出装置10によって掻き出された散薬Pを包装する包装装置4とを備えた構成となっている。
【0012】
ターンテーブル3は、平面視円盤状からなり、上下方向の軸線を中心として回転自在に支持され、その外周部上面に、振動フィーダ2より落下する散薬Pを受け入れる断面円弧状の環状溝5を有する構成とされている。このターンテーブル3は、駆動機構6により回転駆動される。
【0013】
振動フィーダ2は、回転するターンテーブル3の環状溝5に対して散薬Pを落下させるもので、分包機1本体に固定され環状溝5の上部に配置されている。
【0014】
掻出し装置10は、分割ローター11と、アーム15と、駆動モータ12などから構成されている。
分割ローター11は、ターンテーブル3の径の内外方向に延在しているアーム15の先端側に、ターンテーブル3の接線方向の軸線を中心に回転駆動されるように取付けられている。アーム15は、基端側において、ターンテーブル3の接線方向の軸線を持つアーム支持軸14によって回動自在に支持されている。
アーム15の後方には駆動モータ12が配設されており、このモータ12の回転力は、ギヤ列13を介してアーム支持軸14に伝達され、更にアーム15内に設けられたプーリー、伝達ベルトなどの駆動力伝達機構を介して分割ローターの駆動軸20に伝達され、この回転駆動力によって、分割ローター11が回転駆動されるようになっている。
【0015】
図1は、本発明の掻出し装置10を構成する分割ローター11、駆動軸20、該駆動軸に取り付けられ分割ローター11を支持する保持円板30、分割ローター固定ねじ80の分解図である。
分割ローター11は、回転板40と、仕切部60と、掻取爪50とからなり、分割ローター固定ねじ80によって、駆動軸20に螺着されている。
駆動軸20は、図4に示した駆動モータ12の回転駆動力が伝達された図示しないプーリーに取り付けられており、その先端側には、保持円板30が螺着されている。
保持円板30は円板部31と、保持壁部32とから構成されている。保持壁部32は円板部31の外縁部に形成されており、後述する回転板40を支持している。また、駆動軸20との固定に使用される固定皿ねじ34を貫通させるための固定孔33が円板部31の所定位置に形成されている。
【0016】
駆動軸20の先端部には、軸の一部を面取り加工することによって、被係合面21が2面形成されており、駆動軸20の断面は、円の一部がカットされた形状をなしている。以下、この形状を軸先端断面と称する。
被係合面21は、駆動軸20の先端から、所定距離にわたって形成されている。この被係合面21によって、駆動軸20の軸方向に垂直な面を有する保持壁部22が被係合面21の端部に形成される。
また、駆動軸20の先端部には、分割ローター11を固定する分割ローター固定ねじ80が羅着される雌ねじ穴23が形成されている。
保持円板30と駆動軸20とは、駆動軸20に形成されたフランジ部(図示せず)に形成されたねじ穴に、固定皿ねじ34が螺着されることによって固定される。
【0017】
回転板40は、円形板状の部材であり、外周部の曲率が図4に示すターンテーブル3の環状溝5の曲率と対応するように形成されている。回転板40の中央には、軸先端断面と係合する形状である回転板孔41が形成されている。この回転板孔41の端面のうち、2つの平面部をなす第1係合面44は、駆動軸20の被係合面21に当接する。また、回転板40の周縁部には、シリコンゴム41が取付けられている。また、回転板40の所定部には、後述するリベット棒75との接触を回避するための逃げ孔42が形成されている。
【0018】
仕切部60は、仕切板61と、取付部材63とから構成されている。
仕切板61は、板状の部材であり、外縁部の一部は、円形板40の外縁部と同様に、環状溝5の曲率と対応するように形成されている。また、仕切板61には、後述する掻取爪50の凸部51と係合する角孔62が形成されている。
取付部材63は、仕切板61に対し垂直に固定される板部64と、該板部64の一端部に連接され、仕切板61に対して平行に位置する軸取付部65と、これら板部64と軸取付部65とを連結する連結部66とからなる。この取付部材63は、駆動軸20と仕切板61との相対的な位置を位置決めするための部材であり、仕切板61の円弧部と駆動軸20の軸線との距離が、回転板40の外周部と駆動軸20との距離と同一になるように、仕切板61を位置決めしている。
【0019】
板部64には、U字形状のU字溝68が形成されており、該U字溝68には後述する掻取爪50の円柱頭突起52が挿入される。U字溝68は、いわゆるザグリ形状のザグリ面69を有している。
軸取付部65には、上述した軸先端断面と係合する形状である仕切部孔67が形成されている。この仕切部孔67には、2つの平面部をなす第2係合面72が形成されており、この第2係合面72は、駆動軸20の被係合面21に当接する。
仕切板61と取付部材64とは、2本の丸棒状のリベット棒75によって結合されている。リベット棒75は、板部64の短手方向にわたって形成されている第1リベット孔70、および仕切板61に形成されている第2リベット孔71に通されており、リベット棒75の端部を潰すことによって、仕切板61と取付部材64とがリベット結合される。
【0020】
掻取爪50は帯状の板体で、側部には、仕切板61の角孔62と係合する角突起51が形成されている。掻取爪50の一端部には、仕切部60の取付部材63のU字溝68と係合する円柱頭突起52が設けられている。掻取爪50の他端部には、シリコンゴムで形成されたブレード53が取付けられており、ブレード53の先端部は、先鋭形状に形成されている。
【0021】
分割ローター固定ねじ80は、側面にローレット加工などのきざみが加工された頭部81を有するねじであって、一般的に入手可能なものであってよい。頭部81は、きざみが加工されていることによって、使用者は分割ローター固定ねじ80を手によって締めることができる。また、頭部81には、すりわりが形成されており、マイナスドライバーなどで締めることもできる。
【0022】
次に、前記構成からなる掻出し装置10の組み立て方法について説明する。
【0023】
まず、掻取爪50の円柱頭突起52を、取付部材63のU字溝68に係合させると共に、掻取爪50の凸部51を仕切板61の角孔62に係合させることによって、掻取爪50と仕切部60とを組み合わせる。
図2(a)(b)に仕切部60と掻取爪50を組み合わせた状態の詳細図を示す。
次に回転板40の回転板孔41を駆動軸20に、続いて仕切部60の仕切部孔67を駆動軸20に係合させる。この際、回転板40の周方向の位置および、仕切部60の周方向の位置は、駆動軸20の軸先端断面を回転板孔41および仕切部孔67と合わせることによって位置決めされる。
最後に、分割ローター固定ねじ80のねじ部を駆動軸20の雌ねじ穴23に螺合させ、分割ローター固定ねじ80の頭部81を手で回転させることで、駆動軸20に対して回転板40と、仕切部60と、該仕切部60に組み合わされた掻取爪50とが固定され、図3に示すように一体化する。
【0024】
次に、前記構成からなる掻出し装置10の作用について説明する。
【0025】
まず、ターンテーブル3の環状溝5に散薬Pが分布供給されている状態において、分割ローター11を回動させ、アーム15を分割ローター11が環状溝5に当接するように下降させる。分割ローター11が環状溝5に当接されると、掻取爪50が散薬Pを掻き出し、散薬Pは包装装置4へ送られる。散薬Pの掻き出しの際は、掻取爪50の左右両端部が回転板40と仕切板61とによって覆われていることにより、散薬Pが一定量掻き出されるようになっている。
【0026】
上述した本発明の実施形態の掻出し装置10によれば、
回転板40および仕切部60の取付部材63に、駆動軸20が挿入される回転板孔41と仕切部孔67が形成され、駆動軸20に、回転板孔41と仕切部孔67に係合して、これら駆動軸20と分割ローター11との相対的回動するという構成としたため、部品点数が少なくなり、取り付けが容易となる。
掻取爪50が取付け部材63に着脱自在に固定されている構成としたため、掻取爪50のみの交換が可能となる。
駆動軸20の先端面に雌ねじ穴23を有し、回転板40と取付部材63とを分割ローター固定ねじ80によって螺着する構成としたため、雌ねじ穴23をより深く形成することが可能となり、より強固な固定が可能となる。
駆動軸20に、その外周部に回転板40に当接してこれを保持する環状の保持壁部32を備えた保持円板31が固定されているという構成としたため、回転板40の固定がより安定し、分割ローター11の回転が安定するという効果を奏する。
駆動軸20に対して分割ローター11を固定するに当たり、頭部81にローレット加工などのきざみが形成された、分割ローター固定ねじ80を使用するため、組み立てに専用工具を必要とせず、手で固定することが可能となる。
【0027】
なお、第3のカバー32および掻出装置41の先端部に使用したシリコンゴムは、飛散防止効果や接触する部材に対する緩衝性による観点から採用したもので、同様の効果が期待できる材料であれば、これに限るものではない。
【符号の説明】
【0028】
1…分包機、2…振動フィーダ、3…ターンテーブル、4…包装装置、5…環状溝、6…駆動機構、10…掻出し装置、11…分割ローター、12…駆動モータ、13…ギヤ列、15…アーム、20…駆動軸、21…係合面、22…保持壁部、23…雌ねじ穴、30…保持円板、31…円板部、32…保持壁部、33…固定孔、34…固定皿ねじ、40…回転板、41…回転板孔、42…シリコンゴム、43…逃げ孔、44…第1被係合面、50…掻取爪、51…凸部、52…円柱頭突起、53…ブレード、60…仕切部、61…仕切板、62…角孔、63…取付部材、64…板部、65…軸取付部、66…連結部、67…仕切部孔、68…U字溝、69…ザグリ面、70…第1リベット孔、71…第2リベット孔、72…第2被係合面、75…リベット棒、80…分割ローター固定ねじ、81…頭部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動される駆動軸と、
該駆動軸に固定された分割ローターとを備え、
該分割ローターは、回転板と、該回転円板に固定された掻取爪と、該掻取爪を中に挟んで前記回転円板と対抗配置され、該掻取爪に固定された仕切板とを備え、
前記駆動軸とともに前記分割ローターを回転させて、前記掻取爪によりターンテーブル上に載置された散薬を掻き出し、これを包装装置に定量ずつ分配する分包機における掻出し装置であって、
前記分割ローターには、前記駆動軸が挿入される被係合面を備えた孔が形成され、
前記駆動軸には、前記被係合面に係合して、これら駆動軸と分割ローターとの相対的回動を規制する係合面が形成されていることを特徴とする掻出し装置。
【請求項2】
前記仕切板は、取付け部材に固定され、前記掻取爪は該取付け部材に着脱自在に固定されてなり、
前記孔は、前記回転板に設けられた第1の孔と、前記取付け部材に設けられた第2の孔とを有してなり、
前記駆動軸は、前記第1、第2の孔内に挿入された状態にて、該挿入深さを規制する位置規制面と、その先端面に形成された雌ねじ穴とを有し、
前記回転板と取付け部材とは、前記雌ねじ穴に雄ねじを螺着することにより、該雄ねじと前記位置規制面との間に挟持されていることを特徴とする請求項1に記載の掻出し装置。
【請求項3】
前記駆動軸には、その外周部に前記回転板に当接してこれを保持する環状の保持壁部を備えた保持円板が固定されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の掻出し装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−195437(P2010−195437A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−43941(P2009−43941)
【出願日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(390010582)株式会社エルクエスト (33)
【出願人】(392022064)株式会社エルクコーポレーション (25)
【Fターム(参考)】