説明

分包用積層材および分包用包装袋

【課題】帯電防止性、耐カール性、ミシン目カット性、シール適性、ガスバリア性、防湿性、機械適正に優れると共に、手で容易に引き裂くことができるため、粉末状あるいは顆粒状の医薬品を充填包装するのに有用な分包用積層材及び分包用包装袋の提供。
【解決手段】基材層となる2軸延伸ポリエステルフィルムの一方の面に帯電防止層、シーラント層を順に積層した積層材であって、前記帯電防止層が静電気誘導防止性を有する架橋性重合体を主成分とするものからなると共に、表面帯電量の半減期が5秒以下であり、前記シーラント層は、JIS K7112で測定した密度が915kg/m以下であり、かつJIS K7113で測定した引張破壊強さが13MPa以下であることを特徴とする分包用積層材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品、食品、化粧品などを包装する為の分包用包装袋に関するものであり、更に詳しくは、粉末あるいは顆粒状の医薬品等を充填包装するのに有用な分包用積層材およびそれを用いた分包用包装袋に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、合成樹脂のフィルムないしシートを使用して種々の包装用袋が提案され、種々の医薬品の充填包装に使用されている。例えば、粉末状あるいは顆粒状の医薬品であれば、分包の包装形態で包装されている。
【0003】
近年、医薬品を充填包装する分包用積層材として、セロハンに低密度ポリエチレン等を積層したラミネ−トフィルム等が、手で容易に引裂くことができ、袋の内容物を目で確認できる事から汎用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、内服薬、外服薬の投与期間は、人体に対する安全性の観点から、従来、薬事法により「内服薬、外服薬は、1回14日分以内」と規制されていたが、2002年度に「保険医療機関および保険医療養担当規則」が改正され、原則として投与期間の限度がなくなり、厚生労働大臣が定める内服薬および外用薬ごとに1回14日分、30日分、および90日分を限度とする内容に改正された。
【0005】
このため分包用包装袋には、従来よりも医薬品を長期間保存するので、保存中の医薬品に変質することのない分包用包装袋の要望が高まっている。
【0006】
しかしながら、従来のセロハンを積層したラミネートフィルムを分包用積層材とした分包用包装袋を使用すると、分包用積層材を透過する水分を防止する(以下「防湿性」という)のが不充分であり、長期間保存すると、医薬品が吸湿して変質してしまうという問題があった。また、セロハンを基材とした分包用包装袋では、吸湿によるカール発生のため、薬剤等の充填適正に問題があった。
【0007】
またセロハンは、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミドフィルム、ポリプロピレンフィルム等のプラスチックフィルムと比較してコストパフォーマンスに劣るという欠点がある。
【0008】
そのため、近年セロハンの代替として延伸フィルムが使用された分包用積層袋があるが(例えば、特許文献2参照。)、これはシーラント層に帯電防止剤を混入しているため、包装時のシール適正が低下してしまう不具合がある。また基材層である延伸フィルム側に帯電防止効果が得られず、内容物の充填時に充填機が帯電してしまい充填が出来ないという問題点や、基材層にゴミが付着してしまうという問題点もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】実公平1−37635号公報
【特許文献2】特開2005−305830号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、基材層及びシーラント層に優れた帯電防止機能を持ち、かつ耐カール性、シール適性、ガスバリア性、防湿性、寸法精度、機械適性、カット性に優れると共に、粉末状あるいは顆粒状の医薬品を充填包装するのに有用な分包用積層材およびそれを用いた分包用包装袋を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明は、基材層となる2軸延伸ポリエステルフィルムの一方の面に帯電防止層、シーラント層を順に積層した積層材であって、
前記帯電防止層が静電気誘導防止性を有する架橋性重合体を主成分とするものからなると共に、表面帯電量の半減期が5秒以下であり、
前記シーラント層は、JIS K7112で測定した密度が915kg/m以下であり、かつJIS K7113で測定した引張破壊強さが13MPa以下であることを特徴とする分包用積層材を提供する。
【0012】
また本発明は、基材層となる2軸延伸ポリエステルフィルムの一方の面に帯電防止層、シーラント層を順に積層した積層材であって、
前記帯電防止層が静電気誘導防止性を有する架橋性重合体を主成分とするものからなると共に、表面帯電量の半減期が5秒以下であり、
前記シーラント層は、JIS K7210で測定したMFRが10g/10min以上であり、
前記積層材の腰強度が、30mN/15mm以下であることを特徴とする分包用積層材を提供する。
【0013】
また本発明は、基材層となる2軸延伸ポリエステルフィルムの一方の面に帯電防止層、シーラント層を順に積層した積層材であって、
前記帯電防止層が静電気誘導防止性を有する架橋性重合体を主成分とするものからなると共に、表面帯電量の半減期が5秒以下であり、
前記シーラント層は、JIS K7112で測定した密度が915kg/m以下であり、前記積層材の引張強度が40N/15mm以下、かつ引張伸度が50%以下であることを特徴とする分包用積層材を提供する。
【0014】
本発明の分包用積層材において、前記基材層となる2軸延伸ポリエステルフィルムと帯電防止層の間に、無機酸化物の薄膜からなるバリア層が設けられたことが好ましい。
【0015】
本発明の分包用積層材において、前記シーラント層同士の静摩擦係数が0.5以下であることが好ましい。
【0016】
また本発明は、本発明に係る前記分包用積層材を用いて、長手方向の中心線に設けた折り目を介して該シーラント層が内面側となるように2つ折りし、長手方向と直角に所定間隔でヒートシール部を順次設け、前記ヒートシール部間の折り目と反対側の端辺に開口部を設け、さらに、該ヒートシール部の開口部側に手で切り易くするための細孔構造を形成してなることを特徴とする分包用包装袋を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の分包用積層材は、基材層及びシーラント層からの帯電防止性に優れ、充填適正に効果を発揮するとともに、良好なヒートシール強度が得られる。またガスバリア性、防湿性に優れるので、該分包用積層材を用いて作製した分包用包装袋は、粉末あるいは顆粒状さらには固形状の医薬品、食品、化粧品等を長期間保存することができる。
【0018】
また本発明の分包用積層材において、シーラント層に使用する樹脂の密度を915kg/m以下に設定することで、優れた耐カール性が得られる。また同時に低温シール性が得られることから、ヒートシール時のエア抱き、シワの発生が無く、外観上非常に優れた分包用包装袋を作製できる。さらに引張破壊強さを13MPa以下に設定したことにより、分包用包装袋を切り離す時のミシン目カット性が良好となり、従事者の作業効率が上がる効果が認められるものなので、粉末や顆粒状の医薬品、食品、化粧品等の分包用包装袋として極めて有用である。
【0019】
また本発明の分包用積層材において、該分包用積層材の腰強度を30mN/15mm以下とすることで、セロハンを使用した積層材に近い手触り感が得られ、カールも低減する。また積層材が軟らかくなることから、低温シール性が良好となり、ヒートシール時のエア抱き、シワの発生が無く、外観上非常に優れた分包用包装袋を作製できる。さらに、シーラント層の材料としてJIS K7210で測定したMFRが10g/10min以上の樹脂を用いていることで、分包用包装袋を切り離す時のミシン目カット性が良好となり、従事者の作業効率が上がる効果が認められるものなので、粉末や顆粒状の医薬品、食品、化粧品等の分包用包装袋として極めて有用である。
【0020】
また本発明の分包用積層材において、該分包用積層材の引張強度を40N/15mm以下かつ、引張伸度を50%以下に設定したことで、分包用包装袋を切り離す時のミシン目カット性が良好となり、従事者の作業効率が上がる効果が認められるものなので、粉末や顆粒状の医薬品、食品、化粧品等の分包用包装袋として極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の分包用積層材の第1実施形態を示す断面図である。
【図2】本発明の分包用積層材の第2実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の分包用積層材の第1実施形態を示す断面図である。本実施形態の分包用積層材は、基材層となる2軸延伸ポリエステルフィルム1の一方の面に、帯電防止層2とシーラント層3とを順に積層した構造になっている。
【0023】
また図2は、本発明の分包用積層材の第2実施形態を示す断面図である。本実施形態の分包用積層材は、一方の面に無機酸化物の薄膜からなるバリア層4を形成した2軸延伸ポリエステルフィルム1を用い、該バリア層4側の面に、帯電防止層2とシーラント層3とを順に積層した構造になっている。
【0024】
前記2軸延伸ポリエステルフィルム1としては、ポリエチレンテレフタレートフィルムが挙げられる。バリア層4としては、アルミ蒸着、アルミナ蒸着、二酸化珪素蒸着や、塩化ビニリデン樹脂コートが挙げられる。また、2軸延伸ポリエステルフィルム1の表面にウレタン系インキ等を用い、印刷されたものでもよい。これらの基材は、単独で使用することもできるが、2種類以上積層したものを基材とすることもできる。
【0025】
また前記2軸延伸ポリエステルフィルム1の表面に、前処理としてコロナ処理、低温プラズマ処理、イオンボンバード処理を施しておいてもよく、さらに薬品処理、溶剤処理などを施してもよい。
【0026】
前記2軸延伸ポリエステルフィルム1の厚さは特に制限を受けるものではないが、包装材料としての適性、他のフィルムを積層あるいは蒸着層を形成する場合の加工性等を考慮すると、5〜30μmの範囲が好ましい。
【0027】
前記帯電防止層2は、ポリエチレンイミンを主成分として含有する静電誘導防止剤を、グラビア印刷方式などで2軸延伸ポリエステルフィルム1の一方の面側に塗布し、乾燥硬化させて得られる。この帯電防止層2は、2軸延伸ポリエステル系樹脂フィルム1やシーラント層3との接着強度を向上させ、かつ耐水性や耐溶剤性を付与するとともに、その帯電防止性能により、2軸延伸ポリエステル系樹脂フィルム1及びシーラント層3の外表面に優れた帯電防止効果を付与することができるものである。
【0028】
さらに前記静電誘導防止剤を詳しく説明すると、静電誘導防止性を有する架橋反応性重合体からなるアンカーコート剤であり、さらに具体的には、側鎖にカルボキシル基及び4級アンモニウム塩基を有する架橋性高分子が好ましい。この静電誘導防止アンカーコート剤をグラビア方式、ロールコート方式、リップコート方式等で透明な2軸延伸ポリエステルフィルム1に塗布し、約90℃で数秒間乾燥して硬化させ、塗工量1g〜10g/m(ウエット塗布量)の静電誘導防止性を有する帯電防止層2とすることができる。
【0029】
前記シーラント層3は、ヒートシール性に優れる樹脂としてポリオレフィン系樹脂からなっており、特に直鎖状低密度ポリエチレンの使用が好ましい。さらに、耐カール適正から、前記シーラント層3の樹脂材料は、JIS K7112で測定した密度が915kg/m以下であり、かつ良好なミシン目カット性を得るためJIS K7113で測定した引張破壊強さが13MPa以下であることが好ましい。さらに、シーラント層同士の静摩擦係数は、JIS K7125の摩擦係数試験方法で、その測定値は0.5以下が好ましい。従って、このシーラント層3を備えた分包用積層材は、優れたスリップ性を有し、良好な充填適正が得られる。このシーラント層3の積層方法は、前記ポリオレフィン系樹脂を公知の溶融押出法で前記帯電防止層2の表面に積層する方法が好ましい。前記シーラント層3の厚みは特に限定しないが、通常30〜50μmのものが使用される。
【0030】
また、本発明において、前記シーラント層3の材料として、JIS K7210で測定したMFRが10g/10min以上の樹脂を用いることで、分包用包装袋を切り離す時のミシン目カット性が良好となり、従事者の作業効率が上がる効果が得られる。
【0031】
本発明に係る分包用積層材は、腰強度が30mN/15mm以下に設定することが望ましい。腰強度が30mN/15mm以下とした分包用積層材は、セロハンを使用した積層材に近い手触り感が得られ、カール発生も低減する。また積層材が軟らかくなることから、低温シール性が良好となり、ヒートシール時のエア抱き、シワの発生が無く、外観上非常に優れた分包用包装袋を作製できる。
また本発明に係る分包用積層材は、引張強度が40N/15mm以下、かつ引張伸度が50%以下とすることが好ましい。引張強度40N/15mm以下、引張伸度50%以下とすることで、分包用包装袋を切り離す時のミシン目カット性が良好となり、従事者の作業効率が上がる。
【0032】
本発明に係る分包用包装袋は、長尺の前記分包用積層材を用い、長手方向の中心線に設けた折り目を介して該シーラント層が内面側となるように2つ折りし、長手方向と直角に所定間隔でヒートシール部を順次設け、前記ヒートシール部間の折り目と反対側の端辺に開口部を設け、さらに、該ヒートシール部の開口部側に手で切り易くするための細孔構造を形成して構成される。前記細孔構造は、2軸延伸ポリエステルフィルム1のみに形成(シーラント層3は未貫通)してもよいし、分包用積層材の全層を貫通して形成してもよく、どちらの細孔構造でも手切れ性は得られるが、より好ましくは分包用積層材の全層を貫通して細孔構造を形成した方が、より安定した手切れ性が確保できる。
【実施例】
【0033】
[実施例1]
2軸延伸ポリエステルフィルム1として、厚さ12μmの2軸延伸PETフィルム(東洋紡(株)社製、商品名「E5100」)を使用し、高分子静電誘導防止AC剤(アルテック(株)社製、商品名「PA100」)をグラビアコート方式で前記の透明な2軸延伸ポリエステルフィルム1の片面に塗布し、90℃の雰囲気中で35〜40mの風量で乾燥し、塗工量3g/m(ウエット)の帯電防止層2を得た。続いて前記のように得られた帯電防止層2の面に、スリップ剤としてエルカ酸アミドを0.1質量部となるように配合した直鎖状低密度ポリエチレン(密度898kg/m、引張破壊強さ8MPa)を溶融押出法により押し出し積層して、厚さ45μmのシーラント層3を形成し、本発明の分包用積層材を作製した。
次に、前記のように得られた長尺の分包用積層材を、長手方向の中心線に設けた折り目を介して該シーラント層3が内面側となるように2つ折りし、長手方向と直角に所定間隔でヒートシール部を順次設け、前記ヒートシール部間の折り目と反対側の端辺に開口部を設け、さらに、該ヒートシール部の開口部側に手で切り易くするための細孔構造を形成して分包用包装袋を作製した。
【0034】
[実施例2]
実施例1において、2軸延伸ポリエステルフィルム1の一方の面にアルミナ蒸着膜からなるバリア層4を積層し、このバリア層4側に帯電防止層2とシーラント層3を積層したこと以外は実施例1と同様にして、実施例2の分包用積層材及び分包用包装袋を作製した。
【0035】
[比較例1]
実施例1において、シーラント層3として、低密度ポリエチレン(密度916kg/m、引張破壊強さ13MPa)を使用し、スリップ剤としてエルカ酸アミドを0.1質量部となるように配合したこと以外は実施例1と同様にして、比較例1の分包用積層材及び分包用包装袋を作製した。
【0036】
[比較例2]
実施例1において、シーラント層3として、直鎖状低密度ポリエチレン(密度914kg/m、引張破壊強さ15MPa)を使用し、スリップ剤としてエルカ酸アミドを0.1質量部となるように配合したこと以外は実施例1と同様にして、比較例2の分包用積層材及び分包用包装袋を作製した。
【0037】
[比較例3]
実施例1おいて、ポリエチレンイミンを主成分として含有する高分子静電誘導防止AC剤を塗布する代わりに、ウレタン系アンカーコート剤(三井化学(株)社製、商品名「A3210」)を2軸延伸ポリエステルフィルム1に塗布し、シーラント層3として低密度ポリエチレン(密度919kg/m、引張破壊強さ13MPa)を100質量部、帯電防止剤を構成するグリセリンステアリン酸エステルを0.25質量部、ジグリセリンステアリン酸エステルを0.25質量部、スリップ剤としてエルカ酸アミドを0.1質量部となるように配合したこと以外は実施例1と同様にして、比較例3の分包用積層材及び分包用包装袋を作製した。
【0038】
<評価>
実施例1、2及び比較例1〜3で作製した分包用積層材及び分包用包装袋について、分包用包装袋表面帯電量の半減期測定(測定方法1)、摩擦係数試験方法(測定方法2)、耐カール性(測定方法3)、ミシン目カット性(官能評価)、外観(目視評価)で評価した。その結果を表1に示す。
<測定方法1>
シンド静電気社製のスタチックオネストメーターを用いて、試料に電圧10kV印加して半減期を測定する。
<測定方法2>
JIS K7125 摩擦係数試験方法に基づく。
<測定方法3>
分包用積層材を2cm×2cmの大きさにカットし、その試験片のカールの有無を目視で判断した。耐カール性の判断基準は、
良好(○):カール無し
不良(×):カール有り
とした。
【0039】
ミシン目カット性の評価基準は、分包用包装袋にミシン目(穴径1mm、ピッチ1mm)を形成し、手でミシン目に沿って引き裂いた際のカット性を官能評価した。評価基準は
良好(○):ミシン目に沿ってスムーズにカット可能
不良(×):ミシン目に沿ってカットし難い
とした。
【0040】
外観の評価は、分包用包装袋の外観を目視にて観察し、次の評価基準、
良好(○):エア抱き、シワの発生無し
不良(×):エア抱き、シワの発生有り
にて評価した。
【0041】
【表1】

【0042】
[実施例3]
2軸延伸ポリエステルフィルム1として、厚さ12μmの2軸延伸PETフィルム(東洋紡(株)社製、商品名「E5100」)を使用し、高分子静電誘導防止AC剤(アルテック(株)社製、商品名「PA100」)をグラビアコート方式で前記の透明な2軸延伸ポリエステルフィルム1の片面に塗布し、90℃の雰囲気中で35〜40mの風量で乾燥し、塗工量3g/m(ウエット)の帯電防止層2を得た。続いて前記のように得られた帯電防止層2の面に、スリップ剤としてエルカ酸アミドを0.1質量部となるように配合した直鎖状低密度ポリエチレン(MFR20g/10min)を溶融押出法によって押し出し積層して厚さ45μmのシーラント層3を形成して、本発明の分包用積層材を作製した。
次に、前記のように得られた長尺の分包用積層材を、長手方向の中心線に設けた折り目を介して該シーラント層が内面側となるように2つ折りし、長手方向と直角に所定間隔でヒートシール部を順次設け、前記ヒートシール部間の折り目と反対側の端辺に開口部を設け、さらに、該ヒートシール部の開口部側に手で切り易くするための細孔構造を形成して分包用包装袋を作製した。
【0043】
[実施例4]
実施例3において、2軸延伸ポリエステルフィルム1の一方の面にアルミナ蒸着膜からなるバリア層4を積層し、このバリア層4側に帯電防止層2とシーラント層3を積層したこと以外は実施例3と同様にして、実施例4の分包用積層材及び分包用包装袋を作製した。
【0044】
[比較例4]
実施例3において、シーラント層3として、直鎖状低密度ポリエチレン(MFR9g/10min)を使用し、スリップ剤としてエルカ酸アミドを0.1質量部となるように配合したこと以外は実施例3と同様にして、比較例4の分包用積層材及び分包用包装袋を作製した。
【0045】
[比較例5]
実施例3において、シーラント層3として、直鎖状低密度ポリエチレン(密度914kg/m、引張破壊強さ15MPa)を使用し、スリップ剤としてエルカ酸アミドを0.1質量部となるように配合したこと以外は実施例3と同様にして、比較例5の分包用積層材及び分包用包装袋を作製した。
【0046】
[比較例6]
実施例3において、高分子静電誘導防止AC剤を塗布する代わりに、ウレタン系アンカーコート剤(三井化学(株)社製、商品名「A3210」)を2軸延伸ポリエステルフィルム1に塗布し、シーラント層3として低密度ポリエチレン(密度919kg/m、引張破壊強さ13MPa)を100質量部、帯電防止剤を構成するグリセリンステアリン酸エステルを0.25質量部、ジグリセリンステアリン酸エステルを0.25質量部、スリップ剤としてエルカ酸アミドを0.1質量部となるように配合したこと以外は実施例3と同様にして、比較例6の分包用積層材及び分包用包装袋を作製した。
【0047】
<評価>
実施例3、4及び比較例4〜6で作製した分包用積層材及び分包用包装袋について、分包用包装袋表面帯電量の半減期測定(測定方法1)、摩擦係数試験方法(測定方法2)、腰強度(測定方法3)、カール(測定方法4)、ミシン目カット性(官能評価)、外観(目視評価)で評価した。その結果を表2に示す。
<測定方法1>
シンド静電気社製のスタチックオネストメーターを用いて、試料に電圧10kV印加して半減期を測定する。
<測定方法2>
JIS K7125 摩擦係数試験方法に基づく。
<測定方法3>
ループスティフネステスター(テスター産業社製)を用いて、試作した分包用積層材の腰強度を測定した。試験片サイズ:15mm×165mm、ループ円周:100mm
<測定方法4>
分包用積層材を2cm×2cmの大きさにカットし、その試験片のカールの有無を目視で判断した。耐カール性の判断基準は、
良好(○):カール無し
不良(×):カール有り
とした。
【0048】
ミシン目カット性の評価基準は、分包用包装袋にミシン目(穴径1mm、ピッチ1mm)を形成し、手でミシン目に沿って引き裂いた際のカット性を官能評価した。評価基準は
良好(○):ミシン目に沿ってスムーズにカット可能
不良(×):ミシン目に沿ってカットし難い
とした。
【0049】
外観の評価は、分包用包装袋の外観を目視にて観察し、次の評価基準、
良好(○):エア抱き、シワの発生無し
不良(×):エア抱き、シワの発生有り
にて評価した。
【0050】
【表2】

【0051】
[実施例5]
2軸延伸ポリエステルフィルム1として、厚さ12μmのフィルム(東洋紡(株)社製、商品名「E5100」)を使用し、高分子静電誘導防止AC剤(アルテック(株)社製、商品名「PA100」)をグラビアコート方式で前記の透明な2軸延伸ポリエステルフィルム1の片面に塗布し、90℃の雰囲気中で35〜40mの風量で乾燥し、塗工量3g/m(ウエット)の帯電防止層2を得た。続いて前記のように得られた帯電防止層2の面に、スリップ剤としてエルカ酸アミドを0.1質量部となるように配合した直鎖状低密度ポリエチレン(密度898kg/m、引張破壊強さ8MPa)を溶融押出法により押し出し積層して、厚さ45μmのシーラント層3を形成し、本発明の分包用積層材を作製した。
次に、前記のように得られた長尺の分包用積層材を、長手方向の中心線に設けた折り目を介して該シーラント層3が内面側となるように2つ折りし、長手方向と直角に所定間隔でヒートシール部を順次設け、前記ヒートシール部間の折り目と反対側の端辺に開口部を設け、さらに、該ヒートシール部の開口部側に手で切り易くするための細孔構造を形成して分包用包装袋を作製した。
【0052】
[実施例6]
実施例5において、2軸延伸ポリエステルフィルム1の一方の面にアルミナ蒸着膜からなるバリア層4を積層し、このバリア層4側に帯電防止層2とシーラント層3を積層したこと以外は実施例5と同様にして、実施例6の分包用積層材及び分包用包装袋を作製した。
【0053】
[比較例7]
実施例5において、シーラント層(3)として、低密度ポリエチレン(密度916kg/m、引張破壊強さ13MPa)を使用し、スリップ剤としてエルカ酸アミドを0.1質量部となるように配合したこと以外は実施例5と同様にして、比較例7の分包用積層材及び分包用包装袋を作製した。
【0054】
[比較例8]
実施例5において、シーラント層3として、直鎖状低密度ポリエチレン(密度914kg/m、引張破壊強さ15MPa)を使用し、スリップ剤としてエルカ酸アミドを0.1質量部となるように配合したこと以外は実施例5と同様にして、比較例8の分包用積層材及び分包用包装袋を作製した。
【0055】
[比較例9]
実施例5において、ポリエチレンイミンを主成分として含有する高分子静電誘導防止剤を塗布する代わりに、ウレタン系アンカーコート剤(三井化学(株)社製、商品名「A3210」)を2軸延伸ポリエステルフィルム1に塗布し、シーラント層3として低密度ポリエチレン(密度919kg/m、引張破壊強さ13MPa)を100質量部、帯電防止剤を構成するグリセリンステアリン酸エステルを0.25質量部、ジグリセリンステアリン酸エステルを0.25質量部、スリップ剤としてエルカ酸アミドを0.1質量部となるように配合したこと以外は実施例5と同様にして、比較例9の分包用積層材及び分包用包装袋を作製した。
【0056】
<評価>
実施例5、6及び比較例7〜9で作製した分包用積層材及び分包用包装袋について、分包用包装袋表面帯電量の半減期測定(測定方法1)、摩擦係数試験方法(測定方法2)、引張強度・引張伸度(測定方法3)、耐カール性(測定方法4)、ミシン目カット性(官能評価)で評価した。その結果を表3に示す。
<測定方法1>
シンド静電気社製のスタチックオネストメーターを用いて、試料に電圧10kV印加して半減期を測定する。
<測定方法2>
JIS K7125 摩擦係数試験方法に基づく。
<測定方法3>
JIS K 7127 プラスチックフィルム及びシートの引張試験方法に準じる。
<測定方法4>
分包用積層材を2cm×2cmの大きさにカットし、その試験片のカールの有無を目視で判断した。耐カール性の判断基準は、
良好(○):カール無し
不良(×):カール有り
とした。
【0057】
ミシン目カット性の評価基準は、分包用包装袋にミシン目(穴径1mm、ピッチ1mm)を形成し、手でミシン目に沿って引き裂いた際のカット性を官能評価した。評価基準は
良好(○):ミシン目に沿ってスムーズにカット可能
不良(×):ミシン目に沿ってカットし難い
とした。
【0058】
外観の評価は、分包用包装袋の外観を目視にて観察し、次の評価基準、
良好(○):エア抱き、シワの発生無し
不良(×):エア抱き、シワの発生有り
にて評価した。
【0059】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、基材層及びシーラント層に優れた帯電防止機能を持ち、かつ耐カール性、シール適性、ガスバリア性、防湿性、寸法精度、機械適性、カット性に優れると共に、粉末状あるいは顆粒状の医薬品、食品、化粧品等を充填包装するのに有用な分包用積層材およびそれを用いた分包用包装袋を提供する。
【符号の説明】
【0061】
1…2軸延伸ポリエステルフィルム
2…帯電防止層
3…シーラント層
4…バリア層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層となる2軸延伸ポリエステルフィルムの一方の面に帯電防止層、シーラント層を順に積層した積層材であって、
前記帯電防止層が静電気誘導防止性を有する架橋性重合体を主成分とするものからなると共に、表面帯電量の半減期が5秒以下であり、
前記シーラント層は、JIS K7112で測定した密度が915kg/m以下であり、かつJIS K7113で測定した引張破壊強さが13MPa以下であることを特徴とする分包用積層材。
【請求項2】
基材層となる2軸延伸ポリエステルフィルムの一方の面に帯電防止層、シーラント層を順に積層した積層材であって、
前記帯電防止層が静電気誘導防止性を有する架橋性重合体を主成分とするものからなると共に、表面帯電量の半減期が5秒以下であり、
前記シーラント層は、JIS K7210で測定したMFRが10g/10min以上であり、
前記積層材の腰強度が、30mN/15mm以下であることを特徴とする分包用積層材。
【請求項3】
基材層となる2軸延伸ポリエステルフィルムの一方の面に帯電防止層、シーラント層を順に積層した積層材であって、
前記帯電防止層が静電気誘導防止性を有する架橋性重合体を主成分とするものからなると共に、表面帯電量の半減期が5秒以下であり、
前記シーラント層は、JIS K7112で測定した密度が915kg/m以下であり、前記積層材の引張強度が40N/15mm以下、かつ引張伸度が50%以下であることを特徴とする分包用積層材。
【請求項4】
前記基材層となる2軸延伸ポリエステルフィルムと帯電防止層の間に、無機酸化物の薄膜からなるバリア層が設けられたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の分包用積層材。
【請求項5】
前記シーラント層同士の静摩擦係数が0.5以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の分包用積層材。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の分包用積層材を用いて、長手方向の中心線に設けた折り目を介して該シーラント層が内面側となるように2つ折りし、長手方向と直角に所定間隔でヒートシール部を順次設け、前記ヒートシール部間の折り目と反対側の端辺に開口部を設け、さらに、該ヒートシール部の開口部側に手で切り易くするための細孔構造を形成してなることを特徴とする分包用包装袋。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−168315(P2011−168315A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−34809(P2010−34809)
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】