分包袋用積層フィルムおよびそれからなる分包袋
【課題】 従来の自動充填包装機(分包機)での取り扱い易さや透明性、開封性を損なわず、薬剤を長期保存することが可能な分包袋用材料を提供する。
【解決手段】 基材フィルムとヒートシール層とを有する積層フィルムであって、基材フィルムが二軸延伸ポリエステル系樹脂フィルムであり、ヒートシール層がポリエチレン系樹脂またはポリプロピレン系樹脂から構成され、積層フィルムの基材フィルム面及びヒートシール層面における表面固有抵抗が共に1010Ω以下であり、積層フィルムの水蒸気透過度が14g/m2・24hr以下であり、基材フィルムとヒートシール層の接着強度が200g/15mm以上であることを特徴とする分包袋用積層フィルム。
【解決手段】 基材フィルムとヒートシール層とを有する積層フィルムであって、基材フィルムが二軸延伸ポリエステル系樹脂フィルムであり、ヒートシール層がポリエチレン系樹脂またはポリプロピレン系樹脂から構成され、積層フィルムの基材フィルム面及びヒートシール層面における表面固有抵抗が共に1010Ω以下であり、積層フィルムの水蒸気透過度が14g/m2・24hr以下であり、基材フィルムとヒートシール層の接着強度が200g/15mm以上であることを特徴とする分包袋用積層フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は分包袋用フィルムに関するものであり、更に、医師の処方箋に基づき調剤された薬剤を一回に服用する量毎に包装した分包袋に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、処方箋に基づき調剤された薬剤を患者に投薬する場合、服用時に患者自身が自ら異なる薬剤を別々に取り出し組み合わせなくてもよいように、自動充填包装機(分包機)により1回の服用に必要な薬剤を個々の包装袋(分包袋)に包装して患者に投与されている。
【0003】
自動充填包装機での取り扱い易さ(腰と耐熱性)と、薬剤の種類や量が外部から見通すことが出来る程度の透明性とを有し、分包袋から薬剤を取り出す際に手で容易に開封ができることから、分包袋の材質として、グラシン紙やセロファンを基材フィルムとし、これにポリエチレン樹脂を押出したポリエチレンラミネート品が汎用に使用されている。
しかし、グラシン紙やセロファンは生産している企業が限定され、供給に不安があり、高価でもある。また、薬事法の改正により通院一回に渡すことの出来る薬剤量の上限が引き上げられたことから、長期保管しても薬剤が吸湿しない包材への需要が増している。
そこで、グラシン紙やセロファン以外の包材として、ポリエチレンテレフタレートフィルムまたはポリプロピレンフィルムと、ポリエチレンフィルムとからなる積層体を用い、これを分包袋に使用することが開示されている(特許文献1)。しかしながら、粉末状の薬剤を充填する際に、薬剤が静電気を帯びた積層フィルムの基材フィルム側に付着したり、またシーラント層側のヒートシールする部分に付着して、分包袋を完全密封できない場合があった。
【特許文献1】特開2003−677号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記課題を鑑み開発されたもので、グラシン紙やセロファンを使用しない包材であり、かつ従来の自動充填包装機(分包機)での取り扱い易さや透明性、開封性を損なわず、薬剤を長期保存することが可能な分包袋用材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記のような課題を解決すべく鋭意研究した結果、特定のポリエステルフィルムを使用した分包袋が、グラシン紙やセロファンを使った構成の包材と比べて、従来の性能を損なうことなく、しかも薬剤の長期保管が可能となることを見出して、本発明に至ったものである。
【0006】
すなわち、本発明の要旨は、基材フィルムとヒートシール層とを有する積層フィルムであって、基材フィルムが二軸延伸ポリエステル系樹脂フィルムであり、ヒートシール層がポリエチレン系樹脂またはポリプロピレン系樹脂から構成され、積層フィルムの基材フィルム面及びヒートシール層面における表面固有抵抗が共に1010Ω以下であり、積層フィルムの水蒸気透過度が14g/m2・24hr以下であり、基材フィルムとヒートシール層の接着強度が200g/15mm以上であることを特徴とする分包袋用積層フィルムである。また、前記積層フィルムが、ヒートシール層面どうしが重なるように流れ方向に沿って半折され、半折されていない縁辺部が流れ方向に沿ってヒートシールされた縦シール部を有し、流れ方向と直交する方向に沿ってヒートシールされた横シール部を所定間隔おきに有し、横シール部にミシン目加工が施されたことを特徴とする、内部に薬剤が充填され、服用時に分離可能に構成された分包袋である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、従来のグラシン紙やセロファンを使った構成で必要とされている自動充填包装機での取り扱い易さや透明性、開封性を損なわずに、しかも、薬剤の長期保管が可能となる分包袋を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明について詳細を説明する。
本発明の分包袋用積層フィルムは、基材フィルムとヒートシール層とを有する積層フィルムであって、基材フィルムは、二軸延伸ポリエステル系樹脂フィルムであり、ヒートシール層は、ポリエチレン系樹脂またはポリプロピレン系樹脂から構成される。
【0009】
基材フィルムを構成するポリエステル系樹脂は、耐熱性、力学的特性、延伸性及び良好な厚み精度を併せ持つという点で、結晶性ポリエステル樹脂、特に融点が230℃以上であるものが好ましく用いられ、中でもポリエチレンテレフタレートを主骨格とするポリエステル樹脂が好適に用いられる。本発明においてポリエステル系樹脂には、必要とされる特性が損なわれない範囲において、他の成分が共重合されてもよく、また他の高分子成分が含まれてもよい。
【0010】
本発明において、基材フィルムは、流れ方向に引裂き直線性を有することが好ましい。基材フィルムが、流れ方向に対して引裂き直進性を持つことにより、流れ方向に対して引裂き易く、表裏のラミネートフィルムの股開き量の少ない開封口が揃った分包袋を提供することが可能となる。基材フィルムの流れ方向に引裂き直線性を付与する方法としては、基材フィルムを構成するポリエステル系樹脂と相分離形態を呈する熱可塑性樹脂を基材フィルムに混合する方法が挙げられる。ポリエステル系樹脂と相分離形態を呈する熱可塑性樹脂としては、例えばポリテトラメチレングリコール(PTMG)で変性したポリブチレンテレフタレート(PBT)が挙げられるが、ポリエステル系樹脂と相分離形態を呈するならこれに限定されるものではない。
【0011】
本発明において、基材フィルムの配向角は45度以下であることが好ましく、40度以下であることがさらに好ましい。基材フィルムの配向角が45度を超えると、これから得られる分包袋を開封した際、分包袋の表裏の積層フィルムの引裂かれる方向が異なり、表裏の積層フィルムが離れ離れに開封され(股開きし)、中に入っている薬剤が分包袋から飛散してしまう危険性がある。基材フィルムの配向角が45度以下であれば、流れ方向に対して垂直に60mm引裂いた時に、表裏の積層フィルムが股開きする距離を10mm以内にすることができる。このような基材フィルムは、通常製造される基材フィルムから配向角が小さい部分を適宜選択して得られる。
【0012】
基材フィルムの厚みは、9〜25μmであることが好ましく、12〜16μmであることがさらに好ましい。厚みが9μmより小さいとヒートシール層と貼り合わせた積層フィルムの腰が無くなり、また耐熱性が低下するので、分包袋に製袋する際にヒートシール部が収縮して外観を損ね商品性に欠けるといった問題点が発生することがある。逆に、25μmを超えると、耐熱性は良くなるが、接着層と貼り合わせた積層フィルムの腰が硬くなり、半折に必要な柔軟性に欠けるとともに、手切れ性やミシン目加工を含むカット性が低下することから好ましくなく、またコストアップ要因にもなる。
【0013】
本発明の分包袋用積層フィルムに用いられるヒートシール層は、ヒートシール性を有するポリエチレン系樹脂またはポリプロピレン系樹脂から構成される。ポリエチレン系樹脂またはポリプロピレン系樹脂の具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレンコポリマー、エチレン−ビニルアセテートコポリマー、エチレン−アクリル酸共重合物、エチレン−メタクリル酸共重合物、エチレン−アクリル酸エチル共重合物、エチレン−メタクリル酸メチル共重合物、エチレン−アクリル酸メチル共重合物などが挙げられる。
【0014】
ヒートシール層の厚みは、25〜55μmであることが好ましく、35〜45μmであることがさらに好ましい。ヒートシール層の厚みが25μm未満である場合、ヒートシール層どうしの接着性を十分に得ることが出来ず、また、部分的に接着が不十分な箇所が生じることがある。また、厚みが55μmを超えると、基材フィルムと貼り合わせた積層フィルムの全厚みが増し、コストアップとなるため、好ましくない。
【0015】
ヒートシール層を基材フィルム上に積層する方法としては、ポリエチレン系樹脂またはポリプロピレン系樹脂からなる未延伸シートを、接着剤を介して基材フィルム上に積層するドライラミネーション法、または、前記樹脂を基材フィルム上に溶融押出して積層する押出ラミネーション法が挙げられる。ドライラミネーション法では種々の接着剤(AD剤)を、また押出ラミネーション法では種々のアンカーコート剤(AC剤)を用いることができる。
【0016】
積層フィルムにおいて、基材フィルムとヒートシール層の接着強度は、200g/15mm以上であることが必要である。接着強度が200g/15mm未満である場合、積層フィルムを製袋した分包袋を引裂いて開封しようとした際に、積層フィルムの基材フィルムとヒートシール層とが剥離(デラミ)し、開封が困難となることがある。またこの剥離をきっかけにして、表裏の積層フィルムの股開き量が大きくなることから、高齢者や障害者にとって開封時の大きな障害となる。接着強度を200g/15mm以上とするには、上記の接着剤(AD剤)やアンカーコート剤(AC剤)の種類や量を適宜選択、調整すればよい。
【0017】
本発明の積層フィルムの全厚みは、45〜65μmであることが好ましく、50〜60μmであることがさらに好ましい。全厚みが45μm未満であると、積層フィルムの腰が無くなり、グラシン紙やセロファンからなる包材を使用する従来の自動充填包装機を転用することが出来ず、専用の包装機を開発する必要が生じる。また、積層フィルムの全厚みが65μmを超えると、従来のグラシン紙やセロファンからなる包材の厚みより厚くなるため、積層フィルムのロール品の直径が大きくなって、包装機に掛けるスペースを確保する必要を生じる。また、巻き数を少なくした場合には、ロール品の取替え作業回数が増し、効率が悪くなるため好ましくない。
【0018】
本発明の積層フィルムの表面固有抵抗は、基材フィルム面及びシーラント層面において共に1010Ω以下であることが必要であり、さらに109Ω以下であることが好ましい。それぞれの面において表面固有抵抗が1010Ωを超えると、積層フィルムの半折していない縁辺部より薬剤(特に粉末)を充填する際に、薬剤が静電気を帯びた積層フィルムの基材フィルム側に付着したり、積層フィルムのシーラント層の縁辺部近くに付着してヒートシールが完全に出来ないといった問題が発生する。
【0019】
基材フィルム面における表面固有抵抗を1010Ω以下にする方法としては、基材フィルムに帯電防止処理を行ったフィルムを使用する方法と、印刷の加工時や接着剤の加工前に予め、基材フィルムに帯電防止剤をコーティングする方法が挙げられる。基材フィルムに帯電防止処理を行う方法としては、延伸する前のポリエステル樹脂に帯電防止剤を練り込む方法と、延伸の前或いは後工程で帯電防止剤をコーティングする方法がある。帯電防止性能を満たせば、どちらの方法であってもよい。また、印刷の加工前後や接着剤の加工前に基材フィルムに帯電防止剤をコーティングする方法は、基材フィルム側だけでなく、シーラント層側の表面固有抵抗を1010Ω以下にすることも可能であり、有益な方法である。帯電防止剤は、カチオン系・アニオン系・両性イオン系・非イオン系に大別され、カチオン系帯電防止剤としては、脂肪族アミン塩類、四級アンモニウム塩類、アルキルピリジニウム塩類等が挙げられる。アニオン系帯電防止剤としては、脂肪酸塩類、高級アルコール硫酸エステル塩類、液体脂肪油硫酸エステル塩類、脂肪族アミン及び脂肪族アミドの硫酸塩類、脂肪族アルコールリン酸エステル塩類、二塩基性脂肪酸エステル塩類、脂肪酸アミドスルホン酸塩類、アルキルスルホン酸塩類、アルキルアリールスルホン酸塩類、ホルマリン縮合のナフタレンスルホン酸塩類等が挙げられ、両性イオン系帯電防止剤としては、イミダゾリン誘導体類、カルボン酸アンモニウム類、硫酸エステルアンモニウム類、リン酸エステルアンモニウム類、スルホン酸アンモニウム類等が挙げられる。これらのなかでも、炭素数が8〜20であるアルキル基を有するスルホン酸金属塩は、効果と経済性のバランスが良く、好ましい。
なお、帯電防止剤を練り込んだり、コーティングした基材フィルムは、接着強力が一般に低下する傾向にあることから、ヒートシール層との接着強力が200g/15mm以上になるように設計することが必要である。帯電防止処理した基材フィルムとヒートシール層との接着強力を200g/15mm以上にする方法としては、前述の方法以外に、基材フィルムにコーティングや表面処理により易接着層を形成しておく方法が挙げられる。
【0020】
一方、シーラント層面における表面固有抵抗を1010Ω以下にする方法としては、(1)シーラント層として、ポリエチレン系またはポリプロピレン系樹脂に帯電防止剤が練り込まれた未延伸シートを使用し、これを基材フィルムに積層する方法、(2)帯電防止剤が練り込まれたポリエチレン系またはポリプロピレン系樹脂を基材フィルム上に溶融押出して積層させる方法、(3)二軸延伸フィルム上にポリエチレン系またはポリプロピレン系樹脂を溶融押出して積層し、これにポリエチレン系またはポリプロピレン系樹脂に帯電防止剤が練り込まれた未延伸シートを積層させる方法がある。これ以外に、前述のように、印刷の加工前後や接着剤の加工前に基材フィルムに帯電防止剤をコーティングする方法でも得られる。
【0021】
本発明の積層フィルムの水蒸気透過度は14g/m2・24hr以下であることが必要であり、好ましくは12.5g/m2・24hr以下である。従来のグラシン紙やセロファンを使用した構成のフィルムでは、水蒸気透過度が16g/m2・24hr前後であるのに対し、本発明の積層フィルムは水蒸気バリア性が向上され、防湿性を必要とする薬剤を、長期保管することが可能となる。積層フィルムの水蒸気透過度を14g/m2・24hr以下とする方法としては、基材フィルムとしてポリエステル樹脂系フィルムを使用する方法が挙げられる。
【0022】
本発明の積層フィルムの製造方法は公知の方法を利用できるが、以下、基材フィルムが帯電防止剤を含有する二軸延伸ポリエステルフィルムである例を挙げて説明する。
PETとアルキルスルホン酸金属塩とを混合したものを、コートハンガータイプのTダイを具備した押出機を使用して樹脂温度270〜290℃で溶融押出し、10〜40℃に温調された冷却ドラムに密着して巻きつけ冷却する。
続いて、得られた未延伸シートを90〜140℃の温度で、通常、縦横それぞれ3.0〜5.0倍の延伸倍率で二軸延伸する。延伸温度が90℃未満であると均質な延伸フィルムを得ることが出来ない場合があり、140℃を超えると、結晶性ポリエステル樹脂の結晶化が促進されて透明性が悪くなる場合がある。また、延伸倍率が3.0倍未満であると強度が小さく、包装体にしたときにピンホールが発生しやすく、5.0倍を超えると延伸が困難になる。
二軸延伸されたフィルムは、続いて、結晶性ポリエステル層の融点以下の温度で熱処理される。熱処理温度が高すぎるとフィルムが溶断するため好ましくない。
なお、二軸延伸方法としては、テンター同時二軸延伸法、ロールとテンターによる逐次二軸延伸法、あるいはチューブラー法のいずれでもよい。
【0023】
上記の方法で得られた基材フィルムは、必要に応じて印刷が施され、ヒートシール層とラミネートされて使用される。このため、印刷インキや接着剤などとの密着性を向上させるために、フィルム表面に化学的、または物理的処理を施すことが好ましい。
【0024】
本発明の積層フィルムを分包袋に製袋した際、投与日や投与者の氏名、薬品名等を記載する印字を見やすくするために、基材フィルムの表面または裏面の全部または一部分に、白或いは半透明な色の印刷を施してもよい。また、スリット時の蛇行を低減するために、基材フィルムの表面または裏面の端部に流れ方向に走る直線状の印刷をヒートシール層と貼り合わせる前に施してもよい。
【0025】
本発明の分包袋は、上記積層フィルムが、ヒートシール層面どうしが重なるように流れ方向に沿って半折され、半折されていない縁辺部が流れ方向に沿ってヒートシールされた縦シール部を有し、流れ方向と直交する方向に沿ってヒートシールされた横シール部を所定間隔おきに有し、横シール部にミシン目加工が施され、内部に薬剤が充填され、服用時に分離可能に構成された分包袋である。
【0026】
本発明の積層フィルムを使用して自動充填包装機(分包機)により分包袋を製造する場合、積層フィルムは流れ方向に対して所定の幅にスリットして半折された状態でロール状に巻き取られたロール品が用いられる。自動充填包装機(分包機)に掛けられたロール品は、流れ方向と直交する方向に沿って所定間隔おきにヒートシールされ(横シール部)、半折されていない縁辺部より薬剤が充填され、半折されていない縁辺部が流れ方向に沿ってヒートシールされ(縦シール部)、次いで、横シール部にミシン目の加工を行って連続した分包袋が製造される。このミシン目に沿って引裂くと、服用1回分の分包袋が分離される。
【0027】
分包袋を開封する方法としては、ミシン目の加工の際に出来た傷跡に沿って、横シール部を流れ方向に引裂き開封する方法と、縁辺部の縦シール部から流れ方法と直交する方向に開封する方法とがある。
横シール部に施すミシン目の形状は、縦長状でもよいが、菱形状にすることによって引裂き易さを改善することが可能である。また、横シール部にミシン目の加工を施す前或いは施すと同時に、横シール部にIノッチを施すことにより、Iノッチから開封することが出来る。
【0028】
分包袋の縁辺部の縦シール部から流れ方法と直交する方向に開封する場合、縁辺部の端裂抵抗が70N以下となるように、縦シール部に傷付け加工が施されていてもよい。傷付け加工方法として、金属刃、鋸刃、ミシン刃、カッター、ナイフを使用する直接的な傷付け加工方法、エンボスロール、研磨ロール、ワイヤーブラシ、砥石、サンドペーパー等を使用する間接的な傷付け加工方法、加熱した針等を押し付ける溶融傷付け加工方法、レーザービーム加工方法などが挙げられる。
【0029】
さらに、傷付け加工方法として、フィルムをローレット加工する方法が挙げられる。例えば、ロール(直径10〜500mm、幅10〜30mm)の円周面上に、円周方向のピッチが0.4〜2.5mmであり、幅方向のピッチが0.4〜2.5mmであり、高さが0.2〜1.25mmである突起からなる綾目ローレットが形成されたロールを用い、このロールをフィルムに押圧し、ローレットの表面形状をフィルムに転写してフィルム表面を傷付ける方法が挙げられる。また、ローレットとして、ロールの円周面上に円周方向のピッチが0.4〜1.5mmであり、幅方向の長さが0.1〜1.5mmであり、高さが0.1〜1.5mmである突起が、幅方向に0.1〜1.5mmの間隔をあけて形成された平目ローレットでもよい。ローレットの表面形状をフィルムに転写して傷付け加工する方法は、他の方法に比較して手軽で安価な方法である。
【0030】
分包袋の縦シール部に傷付け加工を施す方法としては、積層フィルムを流れ方向に対して所定の幅にスリットするときに施す方法、スリットした後に半折する機械に掛ける際に施す方法、スリットしながら同時に半折していく機械に掛ける際に施す方法等が挙げられる。傷付け加工は、スリットする前に施されても後に施されてよく、回転カッター刃を使用するスリットではスリットと同時に傷付け加工を行ってもよい。
【実施例】
【0031】
以下実施例により本発明を説明する。
なお、実施例及び比較例で用いた積層フィルムの原料及び測定方法は、次の通りである。
【0032】
〔基材フィルム〕
帯電防止タイプ二軸延伸ポリエステルフィルム:ユニチカ社製エンブレット PTME 厚み12μm
二軸延伸ポリエステルフィルム:ユニチカ社製エンブレット PET 厚み9、12、16、25μm
直線カットタイプ二軸延伸ポリエステルフィルム:ユニチカ社製エンブレット PC 厚み12μm
グラシン紙:日本製紙社製グラシン
セロファン:二村化学社製太閤PF−3 #300
二軸延伸ポリプロピレンフィルム(OPP):東セロ社製OP U−1 厚み20μm
【0033】
〔ヒートシール層用フィルム〕
帯電防止タイプ未延伸低密度ポリエチレンフィルム(LDPE(AS)):タマポリ社製VE−7 厚み25μm
帯電防止タイプ未延伸ポリプロピレンフィルム(CPP(AS)):二村化学社製太閤FC FCMN−AS 厚み25μm
直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(LLDPE):東セロ社製TUX FCS 厚み40μm
未延伸低密度ポリエチレンフィルム(LDPE):タマポリ社製V−2 厚み25μm
【0034】
〔ヒートシール層用樹脂〕
低密度ポリエチレン(LDPE)押出樹脂:住友化学工業社製スミカセン L211
【0035】
〔接着剤〕
押出ラミネート(EL)用接着剤(AC剤):大日精化社製セイカダイン 2710A/B
ドライラミネート(DL)用接着剤(AD剤):大日精化社製セイカボンド A−141/C−137
【0036】
〔帯電防止剤〕
帯電防止剤:コニシ社製ボンディンプ PA−100
【0037】
〔配向角の測定〕
配向角は、複屈折顕微鏡を使って、基材フィルムの流れ方向に対して垂直方向の軸とフィルムの主配向軸との差(角度)を測定した。
〔静電気性能の測定〕
表面固有抵抗は、測定条件23℃50%RHの環境下で三菱化学社製高抵抗計Hiresta IP MCP−HT260を使い、作成した積層フィルムの基材面側及びヒートシール面側を測定し、各々の平均値を示した。
アッシュテスト(灰付着高さ)は、測定条件23℃50%RHの環境下で幅25mmの短冊状にした長さ約30cmの積層フィルムの測定面と所定の綿布とを10往復擦り合せた後、乾燥したタバコの灰近くに上方から近づけた時に、灰がフィルムに向かって付着してきたときの距離を測定した。なお、測定は積層フィルムの基材面側及びヒートシール面側について行ない、各々の平均値を求めた。この値が5mm以下であるものを合格とした。
〔水蒸気透過度の測定〕
水蒸気透過度(WVTR)は、JIS K 7129に準じて測定し、平均値を示した。
〔接着強力の測定〕
接着強力は、作成した積層フィルムの基材フィルムとヒートシール層との間(界面)を剥離した後、引張スピード300mm/minの速さで基材フィルム側を固定してヒートシール層側を引張った際に測定される強力(測定界面がT型となるT型剥離)を測定する。測定されるサンプルは予め15mm幅にサンプリングされているため、単位はgf/15mmとなり、その平均値を示した。
〔耐熱性の評価〕
積層フィルムをヒートシール層が上下に重なり合うようにして、上段200℃、下段160℃、シール圧力0.29MPa(ゲージ圧)、1秒のシール条件にてヒートシールテスター(テスター産業社製TP−701S)を使い、20mm幅×30cmのヒートシールを行った。シール後のヒートシール部の外観を調査した結果、シール部の収縮が少なく外観が奇麗な場合を○、シール部の収縮は多少あるが凹凸が無く外観が奇麗な場合を△、シール部の収縮が大きくかつ凹凸も大きいため外観が良くない場合を×とした。
〔加工充填適性の評価〕
大成ラミック社製NT−DANGANIIIの高速自動充填包装機を使い、縦シール190℃、横シール165℃にて下記の充填スピードにて空充填を行なった。20m/minにおいて蛇行やシール不良が出た場合を×、20m/minで出なくて35m/minにおいて出た場合を△、35m/minにおいてでも出なかった場合を○とした。
〔端裂抵抗の測定〕
端裂抵抗は、JIS C 2318 6.3.4項に準じて測定し、平均値を示した。
〔手切れ性の評価〕
積層フィルムを折り曲げてその三方をインパルスシーラー(目盛6〜8)にて接着させ三方シール袋(縦80mm×横75mm、シール幅10mm)を作成、三方シール袋の縦シール部(縁辺部)を両手で引き裂くことによりフィルムの手切れ性を3段階で評価した。容易に手で引き裂けたものを○、やや抵抗が高かったが引き裂きは可能なものを△、手で引き裂くのが非常に困難であったものを×とした。
〔股開き性の評価〕
積層フィルムを折り曲げてその三方をインパルスシーラー(目盛6〜8)にて接着させ三方シール袋(縦80mm×横75mm、シール幅10mm)を作成、三方シール袋の横シール部と縦シール部(縁辺部)に予めIノッチ(5mm)を入れ、そのIノッチ部分から両手で引き裂いた時の表裏の積層フィルムの股開き量(引き裂き方向に対して60mm引き裂いた場所での差)を測定した。横シール部と縦シール部について、引き裂く際に右手を手前に引き裂く右手前及び左手を手前に引き裂く左手前、各々の平均値の大きい値を取り、その最大値が5mm未満を◎、5mm以上10mm未満を○、10mm以上15mm未満を△、15mm以上を×とした。
〔総合評価〕
総合評価として、表面固有抵抗が1010Ω以下であり、水蒸気透過度が14g/m2・24hr以下、耐熱性と加工充填適性と股開き性の評価がそれぞれ△以上であるものを○、一つでも満たさないものを×とした。また、手切れ性の評価が△以上であるものを◎とした。
【0038】
実施例1
基材フィルムとして配向角が40度の帯電防止タイプ二軸延伸ポリエステルフィルムPTME(厚み12μm)を用い、ヒートシール層として帯電防止タイプ未延伸フィルムLDPE(AS)(厚み25μm)に押出ラミネート法により押出ラミネート(EL)用接着剤(AC剤)を0.25g/m2(dry)となるように塗布した後にLDPE押出樹脂を15μm積層したものを用い、これらを貼り合わせて積層フィルムを作成した。作成した積層フィルムの構成、厚み、静電気性能(表面固有抵抗、アッシュテスト)、水蒸気透過度、接着強力、加工充填適性、耐熱性を表1に示した。
【0039】
作成した積層フィルムを流れ方向に幅150mmにスリットした後、下記の傷付け加工冶具α及びβ、エアーシリンダー、圧調整冶具を使って、受けロールとの間を通過する積層フィルムの両端部約5mmの箇所に均一な傷を流れ方向に連続して傷付け加工を行った。
傷付け加工冶具α:直径34mm、幅10mmのロールの円周面上に、円周方向と幅方向のピッチが1.5mmであり、高さが0.75mmの突起からなるローレットが形成されたロール。
傷付け加工冶具β:直径34mm、幅10mmロールの円周面上に、円周方向と幅方向のピッチが2.0mmであり、高さが1.0mmの突起からなるローレットが形成されたロール。
受けロール:金属ロール
エアーシリンダー:傷付け加工冶具と受けロール側との圧力を調節
圧調整冶具:傷付け加工次具と受けロールが左右(或いは前後)に均一に接するように
頭部が固定されず、僅かに左右(或いは前後)に圧が掛かると微調整する構造の冶具。
【0040】
次に、傷付け加工を施していない積層フィルムと、傷付け加工冶具α、βにより傷付け加工を施した積層フィルムとを用いて、端裂抵抗、三方シール袋の手切れ性(縦シール部)、及び股開き性を評価し、結果を表2に示した。
【0041】
実施例2、3
基材フィルムとして配向角が44度、46度の帯電防止タイプの二軸延伸ポリエステルフィルムPTME(厚み12μm)を用いた以外は、実施例1と同様にして積層フィルムを作成した。得られた積層フィルムの特性を表1、2に示した。
【0042】
実施例4
ヒートシール層用フィルムとして帯電防止タイプ未延伸フィルムCPP(AS)(厚み25μm)を用いた以外は、実施例1と同様にして積層フィルムを作成した。得られた積層フィルムの特性を表1、2に示した。
【0043】
実施例5
基材フィルムの二軸延伸ポリエステルフィルムPET(厚み12μm)に、予め帯電防止剤(PA−100)をコーティングして塗布した後、ヒートシール層として未延伸フィルムLLDPE(厚み40μm)を用い、これにドライラミネート法により酢酸エチルを溶剤として調製したドライラミネート(DL)用接着剤(AD剤)を2.5g/m2(dry)となるように塗布して、基材フィルムと貼り合わせ、積層フィルムを作成した。得られた積層フィルムの特性を表1、2に示した。
【0044】
実施例6
基材フィルムとして配向角が44度の直線カットタイプの二軸延伸ポリエステルフィルムPC(厚み12μm)を用いた以外は、実施例5と同様にして積層フィルムを作成した。得られた積層フィルムの特性を表1、2に示した。
【0045】
比較例1〜7
基材フィルムとしてグラシン紙、セロファン、二軸延伸ポリプロピレンフィルムOPP(厚み20μm)、二軸延伸ポリエステルフィルムPET(厚み9、12、16、25μm)を用いた以外は、実施例1と同様にして積層フィルムを作成した。得られた積層フィルムの特性を表1、2に示した。
【0046】
比較例8
基材フィルムとして二軸延伸ポリエステルフィルムPET(厚み12μm)を用い、ヒートシール層として未延伸フィルムLLDPE(厚み40μm)を用い、これにドライラミネート法により酢酸エチルを溶剤として調製したドライラミネート(DL)用接着剤(AD剤)を2.5g/m2(dry)となるように塗布して、基材フィルムと貼り合わせ、積層フィルムを作成した。得られた積層フィルムの特性を表1、2に示した。
【0047】
比較例9
基材フィルムとして二軸延伸ポリエステルフィルムPET(厚み12μm)を用い、押出ラミネート(EL)用接着剤(AC剤)の塗布量を0.12g/m2(dry)とした以外は、実施例1と同様にして積層フィルムを作成した。得られた積層フィルムの特性を表1、2に示した。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
【0050】
実施例1〜6の積層フィルムは、グラシン紙及びセロファンを使用した比較例1、2の従来の分包袋と同等の耐熱性及び静電気特性を有し、従来の自動充填包装機を使用することが可能であり、水蒸気透過度も優れていることから、薬剤を長期保管が可能な分包袋を作成することが出来た。また、実施例1の積層フィルムを使用したシール袋では、縦シール部に傷付け加工治具αやβを用いて傷付け加工を行うことにより、容易に手で引き裂くことが出来た。
比較例1、2のグラシン紙及びセロファンを使用した従来の積層フィルムは、水蒸気透過度が劣るものであった。
比較例3の積層フィルムは、耐熱性が低いことから、従来の自動充填包装機を使って分包袋を作成することが困難であった。
比較例4〜8の積層フィルムは表面固有抵抗が高いため、自動充填包装機を使って粉末の薬剤を充填した時に、薬剤が一定量規則正しく流れないで局所的に留まってしまったり、薬剤を飲む際に分包袋の中の薬剤がすべて取り出せないで残ってしまうといったトラブルが発生した。
比較例9の積層フィルムは、接着強力が200g/15mm未満であり、シール袋の股開き量も10mm以上となったことから、分包装として使用することが困難であった。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の積層フィルムの構成の一例を示す断面図である。
【図2】本発明の積層フィルムの構成の他の例を示す断面図である。
【図3】従来の分包袋及び本発明の分包袋の一般的な形態を示す模式図である。
【図4】従来の分包袋及び本発明の分包袋の縦シール部(Iノッチ部)からの開封方法を説明する模式図である。
【図5】従来の分包袋及び本発明の分包袋の横シール部(Iノッチ部)からの開封方法を説明する模式図である。
【図6】本発明の積層フィルムに傷付け加工を施す方法及び箇所を説明する模式図である。
【図7】本発明の積層フィルムに傷付け加工を施した分包袋の一例を説明する模式図である。
【図8】本発明で用いた傷付け加工冶具α、βを説明する模式図である。
【図9】本発明で用いた傷付け加工冶具α、βの突起部分を説明する断面図である。
【図10】本発明で用いた傷付け加工冶具の一例を説明する模式図である。
【図11】本発明で用いた傷付け加工冶具の一例の突起部分を説明する断面図である。
【図12】本発明で用いた傷付け加工冶具周辺部の機構を説明する模式図である。
【符号の説明】
【0052】
1 積層フィルム
2 基材フィルム
3 ヒートシール層
4 接着層(AC剤、AD剤)
5 帯電防止剤コート層
6 分包袋(三方シール袋)
7 折り込み部
8 縦シール部
9 縁辺部
10 横シール部
11 ミシン目
12 Iノッチ部
13 股開き量
14 スリットされた積層フィルム
15 傷付け加工冶具(18+19)
16 受けロール
17 傷付け加工施工部分
18 円盤
19 ローレット転写加工部分
20 突起
21 突起のピッチ
22 突起の長さ
23 突起間の間隔
24 圧調節冶具部分
25 エアーシリンダー
26 取付部分
【技術分野】
【0001】
本発明は分包袋用フィルムに関するものであり、更に、医師の処方箋に基づき調剤された薬剤を一回に服用する量毎に包装した分包袋に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、処方箋に基づき調剤された薬剤を患者に投薬する場合、服用時に患者自身が自ら異なる薬剤を別々に取り出し組み合わせなくてもよいように、自動充填包装機(分包機)により1回の服用に必要な薬剤を個々の包装袋(分包袋)に包装して患者に投与されている。
【0003】
自動充填包装機での取り扱い易さ(腰と耐熱性)と、薬剤の種類や量が外部から見通すことが出来る程度の透明性とを有し、分包袋から薬剤を取り出す際に手で容易に開封ができることから、分包袋の材質として、グラシン紙やセロファンを基材フィルムとし、これにポリエチレン樹脂を押出したポリエチレンラミネート品が汎用に使用されている。
しかし、グラシン紙やセロファンは生産している企業が限定され、供給に不安があり、高価でもある。また、薬事法の改正により通院一回に渡すことの出来る薬剤量の上限が引き上げられたことから、長期保管しても薬剤が吸湿しない包材への需要が増している。
そこで、グラシン紙やセロファン以外の包材として、ポリエチレンテレフタレートフィルムまたはポリプロピレンフィルムと、ポリエチレンフィルムとからなる積層体を用い、これを分包袋に使用することが開示されている(特許文献1)。しかしながら、粉末状の薬剤を充填する際に、薬剤が静電気を帯びた積層フィルムの基材フィルム側に付着したり、またシーラント層側のヒートシールする部分に付着して、分包袋を完全密封できない場合があった。
【特許文献1】特開2003−677号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記課題を鑑み開発されたもので、グラシン紙やセロファンを使用しない包材であり、かつ従来の自動充填包装機(分包機)での取り扱い易さや透明性、開封性を損なわず、薬剤を長期保存することが可能な分包袋用材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記のような課題を解決すべく鋭意研究した結果、特定のポリエステルフィルムを使用した分包袋が、グラシン紙やセロファンを使った構成の包材と比べて、従来の性能を損なうことなく、しかも薬剤の長期保管が可能となることを見出して、本発明に至ったものである。
【0006】
すなわち、本発明の要旨は、基材フィルムとヒートシール層とを有する積層フィルムであって、基材フィルムが二軸延伸ポリエステル系樹脂フィルムであり、ヒートシール層がポリエチレン系樹脂またはポリプロピレン系樹脂から構成され、積層フィルムの基材フィルム面及びヒートシール層面における表面固有抵抗が共に1010Ω以下であり、積層フィルムの水蒸気透過度が14g/m2・24hr以下であり、基材フィルムとヒートシール層の接着強度が200g/15mm以上であることを特徴とする分包袋用積層フィルムである。また、前記積層フィルムが、ヒートシール層面どうしが重なるように流れ方向に沿って半折され、半折されていない縁辺部が流れ方向に沿ってヒートシールされた縦シール部を有し、流れ方向と直交する方向に沿ってヒートシールされた横シール部を所定間隔おきに有し、横シール部にミシン目加工が施されたことを特徴とする、内部に薬剤が充填され、服用時に分離可能に構成された分包袋である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、従来のグラシン紙やセロファンを使った構成で必要とされている自動充填包装機での取り扱い易さや透明性、開封性を損なわずに、しかも、薬剤の長期保管が可能となる分包袋を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明について詳細を説明する。
本発明の分包袋用積層フィルムは、基材フィルムとヒートシール層とを有する積層フィルムであって、基材フィルムは、二軸延伸ポリエステル系樹脂フィルムであり、ヒートシール層は、ポリエチレン系樹脂またはポリプロピレン系樹脂から構成される。
【0009】
基材フィルムを構成するポリエステル系樹脂は、耐熱性、力学的特性、延伸性及び良好な厚み精度を併せ持つという点で、結晶性ポリエステル樹脂、特に融点が230℃以上であるものが好ましく用いられ、中でもポリエチレンテレフタレートを主骨格とするポリエステル樹脂が好適に用いられる。本発明においてポリエステル系樹脂には、必要とされる特性が損なわれない範囲において、他の成分が共重合されてもよく、また他の高分子成分が含まれてもよい。
【0010】
本発明において、基材フィルムは、流れ方向に引裂き直線性を有することが好ましい。基材フィルムが、流れ方向に対して引裂き直進性を持つことにより、流れ方向に対して引裂き易く、表裏のラミネートフィルムの股開き量の少ない開封口が揃った分包袋を提供することが可能となる。基材フィルムの流れ方向に引裂き直線性を付与する方法としては、基材フィルムを構成するポリエステル系樹脂と相分離形態を呈する熱可塑性樹脂を基材フィルムに混合する方法が挙げられる。ポリエステル系樹脂と相分離形態を呈する熱可塑性樹脂としては、例えばポリテトラメチレングリコール(PTMG)で変性したポリブチレンテレフタレート(PBT)が挙げられるが、ポリエステル系樹脂と相分離形態を呈するならこれに限定されるものではない。
【0011】
本発明において、基材フィルムの配向角は45度以下であることが好ましく、40度以下であることがさらに好ましい。基材フィルムの配向角が45度を超えると、これから得られる分包袋を開封した際、分包袋の表裏の積層フィルムの引裂かれる方向が異なり、表裏の積層フィルムが離れ離れに開封され(股開きし)、中に入っている薬剤が分包袋から飛散してしまう危険性がある。基材フィルムの配向角が45度以下であれば、流れ方向に対して垂直に60mm引裂いた時に、表裏の積層フィルムが股開きする距離を10mm以内にすることができる。このような基材フィルムは、通常製造される基材フィルムから配向角が小さい部分を適宜選択して得られる。
【0012】
基材フィルムの厚みは、9〜25μmであることが好ましく、12〜16μmであることがさらに好ましい。厚みが9μmより小さいとヒートシール層と貼り合わせた積層フィルムの腰が無くなり、また耐熱性が低下するので、分包袋に製袋する際にヒートシール部が収縮して外観を損ね商品性に欠けるといった問題点が発生することがある。逆に、25μmを超えると、耐熱性は良くなるが、接着層と貼り合わせた積層フィルムの腰が硬くなり、半折に必要な柔軟性に欠けるとともに、手切れ性やミシン目加工を含むカット性が低下することから好ましくなく、またコストアップ要因にもなる。
【0013】
本発明の分包袋用積層フィルムに用いられるヒートシール層は、ヒートシール性を有するポリエチレン系樹脂またはポリプロピレン系樹脂から構成される。ポリエチレン系樹脂またはポリプロピレン系樹脂の具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレンコポリマー、エチレン−ビニルアセテートコポリマー、エチレン−アクリル酸共重合物、エチレン−メタクリル酸共重合物、エチレン−アクリル酸エチル共重合物、エチレン−メタクリル酸メチル共重合物、エチレン−アクリル酸メチル共重合物などが挙げられる。
【0014】
ヒートシール層の厚みは、25〜55μmであることが好ましく、35〜45μmであることがさらに好ましい。ヒートシール層の厚みが25μm未満である場合、ヒートシール層どうしの接着性を十分に得ることが出来ず、また、部分的に接着が不十分な箇所が生じることがある。また、厚みが55μmを超えると、基材フィルムと貼り合わせた積層フィルムの全厚みが増し、コストアップとなるため、好ましくない。
【0015】
ヒートシール層を基材フィルム上に積層する方法としては、ポリエチレン系樹脂またはポリプロピレン系樹脂からなる未延伸シートを、接着剤を介して基材フィルム上に積層するドライラミネーション法、または、前記樹脂を基材フィルム上に溶融押出して積層する押出ラミネーション法が挙げられる。ドライラミネーション法では種々の接着剤(AD剤)を、また押出ラミネーション法では種々のアンカーコート剤(AC剤)を用いることができる。
【0016】
積層フィルムにおいて、基材フィルムとヒートシール層の接着強度は、200g/15mm以上であることが必要である。接着強度が200g/15mm未満である場合、積層フィルムを製袋した分包袋を引裂いて開封しようとした際に、積層フィルムの基材フィルムとヒートシール層とが剥離(デラミ)し、開封が困難となることがある。またこの剥離をきっかけにして、表裏の積層フィルムの股開き量が大きくなることから、高齢者や障害者にとって開封時の大きな障害となる。接着強度を200g/15mm以上とするには、上記の接着剤(AD剤)やアンカーコート剤(AC剤)の種類や量を適宜選択、調整すればよい。
【0017】
本発明の積層フィルムの全厚みは、45〜65μmであることが好ましく、50〜60μmであることがさらに好ましい。全厚みが45μm未満であると、積層フィルムの腰が無くなり、グラシン紙やセロファンからなる包材を使用する従来の自動充填包装機を転用することが出来ず、専用の包装機を開発する必要が生じる。また、積層フィルムの全厚みが65μmを超えると、従来のグラシン紙やセロファンからなる包材の厚みより厚くなるため、積層フィルムのロール品の直径が大きくなって、包装機に掛けるスペースを確保する必要を生じる。また、巻き数を少なくした場合には、ロール品の取替え作業回数が増し、効率が悪くなるため好ましくない。
【0018】
本発明の積層フィルムの表面固有抵抗は、基材フィルム面及びシーラント層面において共に1010Ω以下であることが必要であり、さらに109Ω以下であることが好ましい。それぞれの面において表面固有抵抗が1010Ωを超えると、積層フィルムの半折していない縁辺部より薬剤(特に粉末)を充填する際に、薬剤が静電気を帯びた積層フィルムの基材フィルム側に付着したり、積層フィルムのシーラント層の縁辺部近くに付着してヒートシールが完全に出来ないといった問題が発生する。
【0019】
基材フィルム面における表面固有抵抗を1010Ω以下にする方法としては、基材フィルムに帯電防止処理を行ったフィルムを使用する方法と、印刷の加工時や接着剤の加工前に予め、基材フィルムに帯電防止剤をコーティングする方法が挙げられる。基材フィルムに帯電防止処理を行う方法としては、延伸する前のポリエステル樹脂に帯電防止剤を練り込む方法と、延伸の前或いは後工程で帯電防止剤をコーティングする方法がある。帯電防止性能を満たせば、どちらの方法であってもよい。また、印刷の加工前後や接着剤の加工前に基材フィルムに帯電防止剤をコーティングする方法は、基材フィルム側だけでなく、シーラント層側の表面固有抵抗を1010Ω以下にすることも可能であり、有益な方法である。帯電防止剤は、カチオン系・アニオン系・両性イオン系・非イオン系に大別され、カチオン系帯電防止剤としては、脂肪族アミン塩類、四級アンモニウム塩類、アルキルピリジニウム塩類等が挙げられる。アニオン系帯電防止剤としては、脂肪酸塩類、高級アルコール硫酸エステル塩類、液体脂肪油硫酸エステル塩類、脂肪族アミン及び脂肪族アミドの硫酸塩類、脂肪族アルコールリン酸エステル塩類、二塩基性脂肪酸エステル塩類、脂肪酸アミドスルホン酸塩類、アルキルスルホン酸塩類、アルキルアリールスルホン酸塩類、ホルマリン縮合のナフタレンスルホン酸塩類等が挙げられ、両性イオン系帯電防止剤としては、イミダゾリン誘導体類、カルボン酸アンモニウム類、硫酸エステルアンモニウム類、リン酸エステルアンモニウム類、スルホン酸アンモニウム類等が挙げられる。これらのなかでも、炭素数が8〜20であるアルキル基を有するスルホン酸金属塩は、効果と経済性のバランスが良く、好ましい。
なお、帯電防止剤を練り込んだり、コーティングした基材フィルムは、接着強力が一般に低下する傾向にあることから、ヒートシール層との接着強力が200g/15mm以上になるように設計することが必要である。帯電防止処理した基材フィルムとヒートシール層との接着強力を200g/15mm以上にする方法としては、前述の方法以外に、基材フィルムにコーティングや表面処理により易接着層を形成しておく方法が挙げられる。
【0020】
一方、シーラント層面における表面固有抵抗を1010Ω以下にする方法としては、(1)シーラント層として、ポリエチレン系またはポリプロピレン系樹脂に帯電防止剤が練り込まれた未延伸シートを使用し、これを基材フィルムに積層する方法、(2)帯電防止剤が練り込まれたポリエチレン系またはポリプロピレン系樹脂を基材フィルム上に溶融押出して積層させる方法、(3)二軸延伸フィルム上にポリエチレン系またはポリプロピレン系樹脂を溶融押出して積層し、これにポリエチレン系またはポリプロピレン系樹脂に帯電防止剤が練り込まれた未延伸シートを積層させる方法がある。これ以外に、前述のように、印刷の加工前後や接着剤の加工前に基材フィルムに帯電防止剤をコーティングする方法でも得られる。
【0021】
本発明の積層フィルムの水蒸気透過度は14g/m2・24hr以下であることが必要であり、好ましくは12.5g/m2・24hr以下である。従来のグラシン紙やセロファンを使用した構成のフィルムでは、水蒸気透過度が16g/m2・24hr前後であるのに対し、本発明の積層フィルムは水蒸気バリア性が向上され、防湿性を必要とする薬剤を、長期保管することが可能となる。積層フィルムの水蒸気透過度を14g/m2・24hr以下とする方法としては、基材フィルムとしてポリエステル樹脂系フィルムを使用する方法が挙げられる。
【0022】
本発明の積層フィルムの製造方法は公知の方法を利用できるが、以下、基材フィルムが帯電防止剤を含有する二軸延伸ポリエステルフィルムである例を挙げて説明する。
PETとアルキルスルホン酸金属塩とを混合したものを、コートハンガータイプのTダイを具備した押出機を使用して樹脂温度270〜290℃で溶融押出し、10〜40℃に温調された冷却ドラムに密着して巻きつけ冷却する。
続いて、得られた未延伸シートを90〜140℃の温度で、通常、縦横それぞれ3.0〜5.0倍の延伸倍率で二軸延伸する。延伸温度が90℃未満であると均質な延伸フィルムを得ることが出来ない場合があり、140℃を超えると、結晶性ポリエステル樹脂の結晶化が促進されて透明性が悪くなる場合がある。また、延伸倍率が3.0倍未満であると強度が小さく、包装体にしたときにピンホールが発生しやすく、5.0倍を超えると延伸が困難になる。
二軸延伸されたフィルムは、続いて、結晶性ポリエステル層の融点以下の温度で熱処理される。熱処理温度が高すぎるとフィルムが溶断するため好ましくない。
なお、二軸延伸方法としては、テンター同時二軸延伸法、ロールとテンターによる逐次二軸延伸法、あるいはチューブラー法のいずれでもよい。
【0023】
上記の方法で得られた基材フィルムは、必要に応じて印刷が施され、ヒートシール層とラミネートされて使用される。このため、印刷インキや接着剤などとの密着性を向上させるために、フィルム表面に化学的、または物理的処理を施すことが好ましい。
【0024】
本発明の積層フィルムを分包袋に製袋した際、投与日や投与者の氏名、薬品名等を記載する印字を見やすくするために、基材フィルムの表面または裏面の全部または一部分に、白或いは半透明な色の印刷を施してもよい。また、スリット時の蛇行を低減するために、基材フィルムの表面または裏面の端部に流れ方向に走る直線状の印刷をヒートシール層と貼り合わせる前に施してもよい。
【0025】
本発明の分包袋は、上記積層フィルムが、ヒートシール層面どうしが重なるように流れ方向に沿って半折され、半折されていない縁辺部が流れ方向に沿ってヒートシールされた縦シール部を有し、流れ方向と直交する方向に沿ってヒートシールされた横シール部を所定間隔おきに有し、横シール部にミシン目加工が施され、内部に薬剤が充填され、服用時に分離可能に構成された分包袋である。
【0026】
本発明の積層フィルムを使用して自動充填包装機(分包機)により分包袋を製造する場合、積層フィルムは流れ方向に対して所定の幅にスリットして半折された状態でロール状に巻き取られたロール品が用いられる。自動充填包装機(分包機)に掛けられたロール品は、流れ方向と直交する方向に沿って所定間隔おきにヒートシールされ(横シール部)、半折されていない縁辺部より薬剤が充填され、半折されていない縁辺部が流れ方向に沿ってヒートシールされ(縦シール部)、次いで、横シール部にミシン目の加工を行って連続した分包袋が製造される。このミシン目に沿って引裂くと、服用1回分の分包袋が分離される。
【0027】
分包袋を開封する方法としては、ミシン目の加工の際に出来た傷跡に沿って、横シール部を流れ方向に引裂き開封する方法と、縁辺部の縦シール部から流れ方法と直交する方向に開封する方法とがある。
横シール部に施すミシン目の形状は、縦長状でもよいが、菱形状にすることによって引裂き易さを改善することが可能である。また、横シール部にミシン目の加工を施す前或いは施すと同時に、横シール部にIノッチを施すことにより、Iノッチから開封することが出来る。
【0028】
分包袋の縁辺部の縦シール部から流れ方法と直交する方向に開封する場合、縁辺部の端裂抵抗が70N以下となるように、縦シール部に傷付け加工が施されていてもよい。傷付け加工方法として、金属刃、鋸刃、ミシン刃、カッター、ナイフを使用する直接的な傷付け加工方法、エンボスロール、研磨ロール、ワイヤーブラシ、砥石、サンドペーパー等を使用する間接的な傷付け加工方法、加熱した針等を押し付ける溶融傷付け加工方法、レーザービーム加工方法などが挙げられる。
【0029】
さらに、傷付け加工方法として、フィルムをローレット加工する方法が挙げられる。例えば、ロール(直径10〜500mm、幅10〜30mm)の円周面上に、円周方向のピッチが0.4〜2.5mmであり、幅方向のピッチが0.4〜2.5mmであり、高さが0.2〜1.25mmである突起からなる綾目ローレットが形成されたロールを用い、このロールをフィルムに押圧し、ローレットの表面形状をフィルムに転写してフィルム表面を傷付ける方法が挙げられる。また、ローレットとして、ロールの円周面上に円周方向のピッチが0.4〜1.5mmであり、幅方向の長さが0.1〜1.5mmであり、高さが0.1〜1.5mmである突起が、幅方向に0.1〜1.5mmの間隔をあけて形成された平目ローレットでもよい。ローレットの表面形状をフィルムに転写して傷付け加工する方法は、他の方法に比較して手軽で安価な方法である。
【0030】
分包袋の縦シール部に傷付け加工を施す方法としては、積層フィルムを流れ方向に対して所定の幅にスリットするときに施す方法、スリットした後に半折する機械に掛ける際に施す方法、スリットしながら同時に半折していく機械に掛ける際に施す方法等が挙げられる。傷付け加工は、スリットする前に施されても後に施されてよく、回転カッター刃を使用するスリットではスリットと同時に傷付け加工を行ってもよい。
【実施例】
【0031】
以下実施例により本発明を説明する。
なお、実施例及び比較例で用いた積層フィルムの原料及び測定方法は、次の通りである。
【0032】
〔基材フィルム〕
帯電防止タイプ二軸延伸ポリエステルフィルム:ユニチカ社製エンブレット PTME 厚み12μm
二軸延伸ポリエステルフィルム:ユニチカ社製エンブレット PET 厚み9、12、16、25μm
直線カットタイプ二軸延伸ポリエステルフィルム:ユニチカ社製エンブレット PC 厚み12μm
グラシン紙:日本製紙社製グラシン
セロファン:二村化学社製太閤PF−3 #300
二軸延伸ポリプロピレンフィルム(OPP):東セロ社製OP U−1 厚み20μm
【0033】
〔ヒートシール層用フィルム〕
帯電防止タイプ未延伸低密度ポリエチレンフィルム(LDPE(AS)):タマポリ社製VE−7 厚み25μm
帯電防止タイプ未延伸ポリプロピレンフィルム(CPP(AS)):二村化学社製太閤FC FCMN−AS 厚み25μm
直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(LLDPE):東セロ社製TUX FCS 厚み40μm
未延伸低密度ポリエチレンフィルム(LDPE):タマポリ社製V−2 厚み25μm
【0034】
〔ヒートシール層用樹脂〕
低密度ポリエチレン(LDPE)押出樹脂:住友化学工業社製スミカセン L211
【0035】
〔接着剤〕
押出ラミネート(EL)用接着剤(AC剤):大日精化社製セイカダイン 2710A/B
ドライラミネート(DL)用接着剤(AD剤):大日精化社製セイカボンド A−141/C−137
【0036】
〔帯電防止剤〕
帯電防止剤:コニシ社製ボンディンプ PA−100
【0037】
〔配向角の測定〕
配向角は、複屈折顕微鏡を使って、基材フィルムの流れ方向に対して垂直方向の軸とフィルムの主配向軸との差(角度)を測定した。
〔静電気性能の測定〕
表面固有抵抗は、測定条件23℃50%RHの環境下で三菱化学社製高抵抗計Hiresta IP MCP−HT260を使い、作成した積層フィルムの基材面側及びヒートシール面側を測定し、各々の平均値を示した。
アッシュテスト(灰付着高さ)は、測定条件23℃50%RHの環境下で幅25mmの短冊状にした長さ約30cmの積層フィルムの測定面と所定の綿布とを10往復擦り合せた後、乾燥したタバコの灰近くに上方から近づけた時に、灰がフィルムに向かって付着してきたときの距離を測定した。なお、測定は積層フィルムの基材面側及びヒートシール面側について行ない、各々の平均値を求めた。この値が5mm以下であるものを合格とした。
〔水蒸気透過度の測定〕
水蒸気透過度(WVTR)は、JIS K 7129に準じて測定し、平均値を示した。
〔接着強力の測定〕
接着強力は、作成した積層フィルムの基材フィルムとヒートシール層との間(界面)を剥離した後、引張スピード300mm/minの速さで基材フィルム側を固定してヒートシール層側を引張った際に測定される強力(測定界面がT型となるT型剥離)を測定する。測定されるサンプルは予め15mm幅にサンプリングされているため、単位はgf/15mmとなり、その平均値を示した。
〔耐熱性の評価〕
積層フィルムをヒートシール層が上下に重なり合うようにして、上段200℃、下段160℃、シール圧力0.29MPa(ゲージ圧)、1秒のシール条件にてヒートシールテスター(テスター産業社製TP−701S)を使い、20mm幅×30cmのヒートシールを行った。シール後のヒートシール部の外観を調査した結果、シール部の収縮が少なく外観が奇麗な場合を○、シール部の収縮は多少あるが凹凸が無く外観が奇麗な場合を△、シール部の収縮が大きくかつ凹凸も大きいため外観が良くない場合を×とした。
〔加工充填適性の評価〕
大成ラミック社製NT−DANGANIIIの高速自動充填包装機を使い、縦シール190℃、横シール165℃にて下記の充填スピードにて空充填を行なった。20m/minにおいて蛇行やシール不良が出た場合を×、20m/minで出なくて35m/minにおいて出た場合を△、35m/minにおいてでも出なかった場合を○とした。
〔端裂抵抗の測定〕
端裂抵抗は、JIS C 2318 6.3.4項に準じて測定し、平均値を示した。
〔手切れ性の評価〕
積層フィルムを折り曲げてその三方をインパルスシーラー(目盛6〜8)にて接着させ三方シール袋(縦80mm×横75mm、シール幅10mm)を作成、三方シール袋の縦シール部(縁辺部)を両手で引き裂くことによりフィルムの手切れ性を3段階で評価した。容易に手で引き裂けたものを○、やや抵抗が高かったが引き裂きは可能なものを△、手で引き裂くのが非常に困難であったものを×とした。
〔股開き性の評価〕
積層フィルムを折り曲げてその三方をインパルスシーラー(目盛6〜8)にて接着させ三方シール袋(縦80mm×横75mm、シール幅10mm)を作成、三方シール袋の横シール部と縦シール部(縁辺部)に予めIノッチ(5mm)を入れ、そのIノッチ部分から両手で引き裂いた時の表裏の積層フィルムの股開き量(引き裂き方向に対して60mm引き裂いた場所での差)を測定した。横シール部と縦シール部について、引き裂く際に右手を手前に引き裂く右手前及び左手を手前に引き裂く左手前、各々の平均値の大きい値を取り、その最大値が5mm未満を◎、5mm以上10mm未満を○、10mm以上15mm未満を△、15mm以上を×とした。
〔総合評価〕
総合評価として、表面固有抵抗が1010Ω以下であり、水蒸気透過度が14g/m2・24hr以下、耐熱性と加工充填適性と股開き性の評価がそれぞれ△以上であるものを○、一つでも満たさないものを×とした。また、手切れ性の評価が△以上であるものを◎とした。
【0038】
実施例1
基材フィルムとして配向角が40度の帯電防止タイプ二軸延伸ポリエステルフィルムPTME(厚み12μm)を用い、ヒートシール層として帯電防止タイプ未延伸フィルムLDPE(AS)(厚み25μm)に押出ラミネート法により押出ラミネート(EL)用接着剤(AC剤)を0.25g/m2(dry)となるように塗布した後にLDPE押出樹脂を15μm積層したものを用い、これらを貼り合わせて積層フィルムを作成した。作成した積層フィルムの構成、厚み、静電気性能(表面固有抵抗、アッシュテスト)、水蒸気透過度、接着強力、加工充填適性、耐熱性を表1に示した。
【0039】
作成した積層フィルムを流れ方向に幅150mmにスリットした後、下記の傷付け加工冶具α及びβ、エアーシリンダー、圧調整冶具を使って、受けロールとの間を通過する積層フィルムの両端部約5mmの箇所に均一な傷を流れ方向に連続して傷付け加工を行った。
傷付け加工冶具α:直径34mm、幅10mmのロールの円周面上に、円周方向と幅方向のピッチが1.5mmであり、高さが0.75mmの突起からなるローレットが形成されたロール。
傷付け加工冶具β:直径34mm、幅10mmロールの円周面上に、円周方向と幅方向のピッチが2.0mmであり、高さが1.0mmの突起からなるローレットが形成されたロール。
受けロール:金属ロール
エアーシリンダー:傷付け加工冶具と受けロール側との圧力を調節
圧調整冶具:傷付け加工次具と受けロールが左右(或いは前後)に均一に接するように
頭部が固定されず、僅かに左右(或いは前後)に圧が掛かると微調整する構造の冶具。
【0040】
次に、傷付け加工を施していない積層フィルムと、傷付け加工冶具α、βにより傷付け加工を施した積層フィルムとを用いて、端裂抵抗、三方シール袋の手切れ性(縦シール部)、及び股開き性を評価し、結果を表2に示した。
【0041】
実施例2、3
基材フィルムとして配向角が44度、46度の帯電防止タイプの二軸延伸ポリエステルフィルムPTME(厚み12μm)を用いた以外は、実施例1と同様にして積層フィルムを作成した。得られた積層フィルムの特性を表1、2に示した。
【0042】
実施例4
ヒートシール層用フィルムとして帯電防止タイプ未延伸フィルムCPP(AS)(厚み25μm)を用いた以外は、実施例1と同様にして積層フィルムを作成した。得られた積層フィルムの特性を表1、2に示した。
【0043】
実施例5
基材フィルムの二軸延伸ポリエステルフィルムPET(厚み12μm)に、予め帯電防止剤(PA−100)をコーティングして塗布した後、ヒートシール層として未延伸フィルムLLDPE(厚み40μm)を用い、これにドライラミネート法により酢酸エチルを溶剤として調製したドライラミネート(DL)用接着剤(AD剤)を2.5g/m2(dry)となるように塗布して、基材フィルムと貼り合わせ、積層フィルムを作成した。得られた積層フィルムの特性を表1、2に示した。
【0044】
実施例6
基材フィルムとして配向角が44度の直線カットタイプの二軸延伸ポリエステルフィルムPC(厚み12μm)を用いた以外は、実施例5と同様にして積層フィルムを作成した。得られた積層フィルムの特性を表1、2に示した。
【0045】
比較例1〜7
基材フィルムとしてグラシン紙、セロファン、二軸延伸ポリプロピレンフィルムOPP(厚み20μm)、二軸延伸ポリエステルフィルムPET(厚み9、12、16、25μm)を用いた以外は、実施例1と同様にして積層フィルムを作成した。得られた積層フィルムの特性を表1、2に示した。
【0046】
比較例8
基材フィルムとして二軸延伸ポリエステルフィルムPET(厚み12μm)を用い、ヒートシール層として未延伸フィルムLLDPE(厚み40μm)を用い、これにドライラミネート法により酢酸エチルを溶剤として調製したドライラミネート(DL)用接着剤(AD剤)を2.5g/m2(dry)となるように塗布して、基材フィルムと貼り合わせ、積層フィルムを作成した。得られた積層フィルムの特性を表1、2に示した。
【0047】
比較例9
基材フィルムとして二軸延伸ポリエステルフィルムPET(厚み12μm)を用い、押出ラミネート(EL)用接着剤(AC剤)の塗布量を0.12g/m2(dry)とした以外は、実施例1と同様にして積層フィルムを作成した。得られた積層フィルムの特性を表1、2に示した。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
【0050】
実施例1〜6の積層フィルムは、グラシン紙及びセロファンを使用した比較例1、2の従来の分包袋と同等の耐熱性及び静電気特性を有し、従来の自動充填包装機を使用することが可能であり、水蒸気透過度も優れていることから、薬剤を長期保管が可能な分包袋を作成することが出来た。また、実施例1の積層フィルムを使用したシール袋では、縦シール部に傷付け加工治具αやβを用いて傷付け加工を行うことにより、容易に手で引き裂くことが出来た。
比較例1、2のグラシン紙及びセロファンを使用した従来の積層フィルムは、水蒸気透過度が劣るものであった。
比較例3の積層フィルムは、耐熱性が低いことから、従来の自動充填包装機を使って分包袋を作成することが困難であった。
比較例4〜8の積層フィルムは表面固有抵抗が高いため、自動充填包装機を使って粉末の薬剤を充填した時に、薬剤が一定量規則正しく流れないで局所的に留まってしまったり、薬剤を飲む際に分包袋の中の薬剤がすべて取り出せないで残ってしまうといったトラブルが発生した。
比較例9の積層フィルムは、接着強力が200g/15mm未満であり、シール袋の股開き量も10mm以上となったことから、分包装として使用することが困難であった。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の積層フィルムの構成の一例を示す断面図である。
【図2】本発明の積層フィルムの構成の他の例を示す断面図である。
【図3】従来の分包袋及び本発明の分包袋の一般的な形態を示す模式図である。
【図4】従来の分包袋及び本発明の分包袋の縦シール部(Iノッチ部)からの開封方法を説明する模式図である。
【図5】従来の分包袋及び本発明の分包袋の横シール部(Iノッチ部)からの開封方法を説明する模式図である。
【図6】本発明の積層フィルムに傷付け加工を施す方法及び箇所を説明する模式図である。
【図7】本発明の積層フィルムに傷付け加工を施した分包袋の一例を説明する模式図である。
【図8】本発明で用いた傷付け加工冶具α、βを説明する模式図である。
【図9】本発明で用いた傷付け加工冶具α、βの突起部分を説明する断面図である。
【図10】本発明で用いた傷付け加工冶具の一例を説明する模式図である。
【図11】本発明で用いた傷付け加工冶具の一例の突起部分を説明する断面図である。
【図12】本発明で用いた傷付け加工冶具周辺部の機構を説明する模式図である。
【符号の説明】
【0052】
1 積層フィルム
2 基材フィルム
3 ヒートシール層
4 接着層(AC剤、AD剤)
5 帯電防止剤コート層
6 分包袋(三方シール袋)
7 折り込み部
8 縦シール部
9 縁辺部
10 横シール部
11 ミシン目
12 Iノッチ部
13 股開き量
14 スリットされた積層フィルム
15 傷付け加工冶具(18+19)
16 受けロール
17 傷付け加工施工部分
18 円盤
19 ローレット転写加工部分
20 突起
21 突起のピッチ
22 突起の長さ
23 突起間の間隔
24 圧調節冶具部分
25 エアーシリンダー
26 取付部分
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムとヒートシール層とを有する積層フィルムであって、基材フィルムが二軸延伸ポリエステル系樹脂フィルムであり、ヒートシール層がポリエチレン系樹脂またはポリプロピレン系樹脂から構成され、積層フィルムの基材フィルム面及びヒートシール層面における表面固有抵抗が共に1010Ω以下であり、積層フィルムの水蒸気透過度が14g/m2・24hr以下であり、基材フィルムとヒートシール層の接着強度が200g/15mm以上であることを特徴とする分包袋用積層フィルム。
【請求項2】
基材フィルムが流れ方向に引裂き直進性を有することを特徴とする請求項1記載の積層フィルム。
【請求項3】
基材フィルムの配向角が45度以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の積層フィルム。
【請求項4】
請求項1記載の積層フィルムが、ヒートシール層面どうしが重なるように流れ方向に沿って半折され、半折されていない縁辺部が流れ方向に沿ってヒートシールされた縦シール部を有し、流れ方向と直交する方向に沿ってヒートシールされた横シール部を所定間隔おきに有し、横シール部にミシン目加工が施されたことを特徴とする、内部に薬剤が充填され、服用時に分離可能に構成された分包袋。
【請求項5】
横シール部にIノッチを有することを特徴とする請求項4記載の分包袋。
【請求項6】
縦シール部の端裂抵抗が70N以下であることを特徴とする請求項4または5記載の分包袋。
【請求項7】
縦シール部に傷付け加工部を有することを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載の分包袋。
【請求項8】
傷付け加工がローレット加工であることを特徴とする請求項7記載の分包袋。
【請求項1】
基材フィルムとヒートシール層とを有する積層フィルムであって、基材フィルムが二軸延伸ポリエステル系樹脂フィルムであり、ヒートシール層がポリエチレン系樹脂またはポリプロピレン系樹脂から構成され、積層フィルムの基材フィルム面及びヒートシール層面における表面固有抵抗が共に1010Ω以下であり、積層フィルムの水蒸気透過度が14g/m2・24hr以下であり、基材フィルムとヒートシール層の接着強度が200g/15mm以上であることを特徴とする分包袋用積層フィルム。
【請求項2】
基材フィルムが流れ方向に引裂き直進性を有することを特徴とする請求項1記載の積層フィルム。
【請求項3】
基材フィルムの配向角が45度以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の積層フィルム。
【請求項4】
請求項1記載の積層フィルムが、ヒートシール層面どうしが重なるように流れ方向に沿って半折され、半折されていない縁辺部が流れ方向に沿ってヒートシールされた縦シール部を有し、流れ方向と直交する方向に沿ってヒートシールされた横シール部を所定間隔おきに有し、横シール部にミシン目加工が施されたことを特徴とする、内部に薬剤が充填され、服用時に分離可能に構成された分包袋。
【請求項5】
横シール部にIノッチを有することを特徴とする請求項4記載の分包袋。
【請求項6】
縦シール部の端裂抵抗が70N以下であることを特徴とする請求項4または5記載の分包袋。
【請求項7】
縦シール部に傷付け加工部を有することを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載の分包袋。
【請求項8】
傷付け加工がローレット加工であることを特徴とする請求項7記載の分包袋。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−175728(P2006−175728A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−371374(P2004−371374)
【出願日】平成16年12月22日(2004.12.22)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年12月22日(2004.12.22)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【Fターム(参考)】
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