説明

分圧整流回路

【課題】 トランスレス及び低損失で整流出力を分圧出力し得る分圧整流回路を提供する。
【解決手段】 交流電源電圧を半周期ごとに整流して分離出力する一対の半波整流回路1、1aと、その整流出力端子2、2aに直列接続された一対のN個、例えば3個のコンデンサC11〜C13;C11a〜C13aと、このコンデンサ及び基準電位間に直列接続された共通コンデンサC1と、このコンデンサ及びN個のコンデンサ間に接続されたN個のコンデンサ分離用ダイオードD11〜D13;D11a〜D13aと、2番目以降のコンデンサの整流出力端子2、2a側の端子及び所属の整流出力端子2、2a間に接続されたN−1個の放電用ダイオードD21、D22;D21a、D22aと、N個のコンデンサの基準電位側の端子及び基準電位間に接続されたN個の放電帰路用ダイオードD31〜D33;D31a〜D33aと、整流出力端子2、2a及び分圧電圧出力端子3間に接続され、相手方の半波整流回路が作動する半周期中に導通する一対のスイッチング回路SW1、SW1aとを備える。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、交流電源電圧の整流出力をコンデンサにより分圧して出力する分圧整流回路に関するものである。
【0002】
【従来の技術】交流電源電圧よりも低い電圧の整流出力を発生させるには、相応の変圧比の電源トランスを用いれば良いが、重量がトランス分だけ増加することになる。また、スイッチングレギュレータを用いると、トランスを高周波用に置換できるために重量は軽減できるが、高周波のスイッチングノイズを発生する問題がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、このような点に鑑みて、トランスレス及び低損失で整流出力を分圧出力し得る分圧整流回路を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は、この目的を達成するために、請求項1により、交流電源電圧を半周期ごとに整流し、かつ半周期ごとの半波の整流出力を分離して出力する一対の半波整流回路と、その一対の整流出力端子にそれぞれ直列接続された一対のN個(Nは2以上の整数)のコンデンサと、この一対のN個のコンデンサ及び基準電位間に共通に直列接続された共通コンデンサと、この共通コンデンサ及びN個のコンデンサのそれぞれの間に所属の整流出力による充電電流を通流させる方向へ接続されたN個のコンデンサ分離用ダイオードと、整流出力端子から2番目以降のコンデンサの整流出力端子側の端子及び所属の整流出力端子間に所属のコンデンサの充電電圧を放電させる方向へそれぞれ接続されたN−1個の放電用ダイオードと、N個のコンデンサの基準電位側の端子及び基準電位間にそれぞれ接続されたN個の放電帰路用ダイオードと、一対の整流出力端子及び分圧電圧出力端子間にそれぞれ接続され、相手方の半波整流回路が作動する半周期中に導通する一対のスイッチング回路とを備えたことを特徴とする。
【0005】共通コンデンサに対して、スイッチング回路により半周期ごとに一方の対のN個のコンデンサが直列接続された状態でコンデンサ分離用ダイオードを通して充電回路を形成し、他方の対のN個のコンデンサがコンデンサ分離用ダイオードにより互いに分離され、かつ放電用及び放電帰路用ダイオードを通して並列に接続される。これにより、共通コンデンサは、交流電源電圧の整流出力を一方の対のN個のコンデンサとで分圧した分圧電圧を他方の対のN個のコンデンサと並列接続状態で放電出力する。並列接続のN個のコンデンサは次の半周期で直列接続されて充電回路を形成し、整流出力と各コンデンサの加算残留電圧との差電圧により再充電が行われる。
【0006】
【発明の実施の形態】図1乃至図4を基に本発明の実施の形態の一例による分圧整流回路を説明する。図1において、分圧整流回路は、整流出力の平滑された分圧電圧を分圧電圧出力端子3から出力するもので、100Vの交流電源の正負一方の半周期の入力電圧をそれぞれ整流する一対の半波整流回路1、1aと、この一対の半波整流回路の整流出力端子2、2aにそれぞれ直列接続された一対のそれぞれ3個の分圧用コンデンサC11〜C13;C11a〜C13aと、これらの一対のコンデンサに共通に直列接続されて基準電位に接続する1個の共通コンデンサC1と、これらのコンデンサのそれぞれの間に接続された3個のコンデンサ分離用ダイオードD11〜D13;D11a〜D13aと、共通コンデンサC1及び分圧電圧出力端子3間に接続された逆流防止用ダイオードD3と、2番目以降の分圧用コンデンサの整流出力端子2、2a側の端子及び所属の整流出力端子2、2a間にそれぞれ接続された2個の放電用ダイオードD21、D22;D21a、D22aと、分圧用コンデンサの基準電位側端子及び基準電位間にそれぞれ接続された3個の放電帰路用ダイオードD31〜D33;D31a〜D33aと、一対の整流出力端子2、2a及び分圧電圧出力端子3間にそれぞれ接続され、相手方の半波整流回路1又は1aの整流入力の発生期間、即ち整流動作を行う半周期中に導通するスイッチング回路SW1、SW1aとを備えている。
【0007】一対の半波整流回路1、1aは、全波整流回路の出力端を分離して構成され、それぞれダイオードD1、D2及びD1a、D2aで構成されている。コンデンサC11〜C13及びC11a〜C13aの容量は560μF、共通コンデンサC1の容量は330μFである。スイッチング回路SW1、SW1aはダーリントン接続のトランジスで構成され、相手方の整流入力が分圧電圧出力端子3の電圧を上廻ると導通する。
【0008】このように構成された分圧整流回路の動作を図2乃至図4を参照して説明する。半波整流回路1に半周期の正の整流入力電圧が加わると、図2に示すように、共通コンデンサC1に対して、一方の対の分圧用コンデンサC11〜C13が直列接続されたままで充電回路を形成し、他方の対のコンデンサC11a〜C13aがスイッチング回路SW1aの途中のオン期間中に並列に接続される。即ち、図3において前半の半周期においてコンデンサ分離用ダイオードD11〜D13を通して半波の整流出力による充電が行われ、他方の対のコンデンサC11a〜C13aは並列に接続される間、平滑作用を呈すると共に分圧電圧出力端子3に接続する負荷に放電する。その際、放電用ダイオードD21、D22及び放電帰路用ダイオードD31〜D33はフローティング状態となる。コンデンサ分離用ダイオードD11a〜D13aはコンデンサC11a〜C13aを互いに分離し、その状態でダイオードD21a、D22aは所属のコンデンサC12a、C13aの放電往路となり、放電用ダイオードD31〜D33aは所属のコンデンサC11a〜C13aの放電帰路となる。逆流防止用ダイオードD3は、並列接続のコンデンサC11aに充電された電流がスイッチング回路SW1aを発熱ロスを伴って通流し、コンデンサC12a、C13aに充電された電流と共に共通コンデンサC1に流入するのを阻止する。
【0009】次の後半の半周期中には、逆に他方の対のコンデンサC11a〜C13aが共通コンデンサC1に対してコンデンサ分離用ダイオードD11a〜D13aを通して直列接続されて充電回路を形成し、一方の対のコンデンサC11〜C13がスイッチング回路SW1の途中のオン期間中に互いに並列に接続される。
【0010】即ち、整流入力のゼロクロス領域では、その電圧が低いことにより充電動作が中断し、共通コンデンサC1のみの放電により、分圧電圧出力端子3に負荷電流が供給され、分圧電圧は相対的に早く低減する。前半の半周期中に生じる半波の整流入力が、直前の半周期中に共通コンデンサC1、コンデンサC11〜C13に残留したそれぞれの充電電圧の加算残留電圧を上廻ると、これらのコンデンサがその差電圧で充電されると共に、その整流入力の上昇によりスイッチング回路SW1aが導通してコンデンサC11a〜C13aも放電して負荷電流を供給する。この間、共通コンデンサC1も充電後に徐々に放電する。後半の半周期では、放電したコンデンサC11a〜C13aが共通コンデンサC1と共に差電圧で充電され、したがってこの共通コンデンサは同様に半周期中に充放電動作を繰返すが、代わってスイッチング回路SW1の導通で並列接続されたコンデンサC11〜C13も負荷電流を供給する。
【0011】図4は以上説明した分圧整流回路の動作開始時点からのコンデンサ電圧の過渡的な変化を原理的に示すもので、共通コンデンサC1は、図2の状態で所定の負荷状態を前提に一対のコンデンサC11〜C13と共に1回目の充電過程で充電され、その際共通コンデンサC1は容量比の逆数に応じて相対的に2倍の高い電圧になる。次の半周期で共通コンデンサC1がその高い電圧により相対的に大きく負荷に応じて放電し、並列接続されたコンデンサC11〜C13は僅かに放電してダイオードD3、D21、D22、D31〜D33のロスを無視するとほぼ同一となる。2回目の充電過程では共通コンデンサC1及びコンデンサC11〜C13の残留電圧の加算電圧と整流入力との差電圧で容量比の逆数に応じて充電され、2回目の半周期の放電過程でコンデンサ1〜C13は共通コンデンサC1との電圧差が小さくなり、したがって前回よりも大きく放電してより高い同一残留電圧になる。3回目の充電過程では定常状態に近づき、より小さな差電圧による充電及び同一残留電圧の放電を行う。以下、定常状態では放電時に同一電圧となり、充電時には共通コンデンサC1が容量比の逆数に応じて僅かに高い電圧に充電され、前述した充放電過程が繰返される。
【0012】つまり、コンデンサC11〜C13、C11a〜C13aの容量がさらに互いに異なる場合でも少なくとも定常状態に達した後は放電時に同一電圧になり、充電過程でそれぞれほぼ同一残留電圧の直列コンデンサの個数倍に対する差電圧がそれぞれの容量比に応じた電圧分だけ充電され、分圧電圧出力端子3からは電源電圧を直列コンデンサの個数で除算、即ち4分した電圧に対応する直流電圧が出力される。即ち、共通コンデンサC1に接続される分圧用コンデンサの個数をN、整流入力の最大値をVp、2個の整流ダイオードD1、D2又はD1a、D2a及びコンデンサ分離用ダイオードD11〜D13又はD11a〜D13aの5個分のロスをVdfとすると、共通コンデンサC1の分圧出力電圧Vopは次のようになる。Vop=(Vp−Vdf)/(N+1)=(141−5×1.1)/4≒34Vとなる。実際の分圧電圧は、Vopから負荷電流及び電源電圧の周期に応じて低下した直流電圧となる。
【0013】図5は共通コンデンサC2に1個の分圧用コンデンサC3、C3aが接続され、電源電圧を1/2に分圧する実施の形態を示す。この場合、コンデンサ分離用ダイオードD4、D4a及び放電帰路用ダイオードD5、D5aのみを備え、充電用ダイオードは不要になる。スイッチング回路SW2、SW2aは前述の簡単に構成される電圧比較式のものでも良いが、半周期の全期間中オンになる電源同期式のスイッチング回路にすることもできる。分圧電圧出力端子3には、前述の実施の形態についても同様であるが、安定化回路を接続することができる。
【0014】
【発明の効果】本発明によれば、電源トランスを用いることなく、平滑コンデンサのの直列回路を用いた軽量な構造で、電源電圧を平滑コンデンサの個数に応じた分圧比で分圧した整流出力が分圧抵抗のようなロスを伴わずに発生可能となる。スイッチングレギュレータのように高周波のパルス状スイッチング雑音を発生することもない。ダイオードによる損失を伴うだけであり、トランス式或はスイッチングレギュレータに比べて高効率となる。さらに、スイッチングレギュレータの電源として使用する場合でも、100V又は200V等の高い直流電源電圧によるスイッチング動作でなく、低い直流電源電圧でスイッチング回路を作動させ得るために、その回路からの放射雑音を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態による分圧整流回路の回路構成を示す図である。
【図2】同分圧整流回路の動作を説明する回路図である。
【図3】同分圧整流回路の動作を説明する各部の波形図である。
【図4】同分圧整流回路の各部の電圧を過渡状態から説明する図である。
【図5】別の実施の形態による分圧整流回路の回路構成を示す図である。
【符号の説明】
1、1a 半波整流回路
2、2a 整流出力端子
3 分圧電圧出力端子
C1、C2 共通コンデンサ
SW1、SW1a、SW2、SW2a スイッチング回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】 交流電源電圧の整流出力を分圧して出力する分圧整流回路であって、前記交流電源電圧を半周期ごとに整流し、かつ半周期ごとの半波の整流出力を分離して出力する一対の半波整流回路と、その一対の整流出力端子にそれぞれ直列接続された一対のN個(Nは2以上の整数)のコンデンサと、この一対のN個の前記コンデンサ及び基準電位間に共通に直列接続された共通コンデンサと、この共通コンデンサ及びN個の前記コンデンサのそれぞれの間に所属の前記整流出力による充電電流を通流させる方向へ接続されたN個のコンデンサ分離用ダイオードと、前記整流出力端子から2番目以降の前記コンデンサの前記整流出力端子側の端子及び所属の前記整流出力端子間に所属の前記コンデンサの充電電圧を放電させる方向へそれぞれ接続されたN−1個の放電用ダイオードと、N個の前記コンデンサの前記基準電位側の端子及び前記基準電位間にそれぞれ接続されたN個の放電帰路用ダイオードと、一対の前記整流出力端子及び前記分圧電圧出力端子間にそれぞれ接続され、相手方の前記半波整流回路が作動する半周期中に導通する一対のスイッチング回路とを備えたことを特徴とする分圧整流回路。
【請求項2】 交流電源電圧の整流出力を分圧して出力する分圧整流回路であって、前記交流電源電圧を半周期ごとに整流し、かつ半周期ごとの半波の整流出力を分離して出力する一対の半波整流回路と、その一対の整流出力端子にそれぞれ直列接続された一対の1個のコンデンサと、この一対のコンデンサ及び基準電位間に共通に直列接続された共通コンデンサと、この共通コンデンサ及び前記コンデンサのそれぞれの間に所属の前記整流出力による充電電流を通流させる方向へ接続されたコンデンサ分離用ダイオードと、前記コンデンサの前記基準電位側の端子及び前記基準電位間に接続された放電帰路用ダイオードと、一対の前記整流出力端子及び前記分圧電圧出力端子間にそれぞれ接続され、相手方の前記半波整流回路が作動する半周期中に導通する一対のスイッチング回路とを備えたことを特徴とする分圧整流回路。

【図 1】
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【図 2】
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【図 3】
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【図 4】
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【図 5】
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