分子または粒子を検出するアッセイにおけるダイナミックレンジを拡張するための方法またはシステム
本明細書には、流体試料中のアナライト分子または粒子の濃度を決定するために使用されるアッセイ方法およびシステムのダイナミックレンジを拡張するためのシステムおよび方法が記載されている。いくつかの態様において、方法には、流体試料中の複数のアナライト分子を複数の区画に空間的に分離することが含まれる。少なくとも一つのアナライト分子を含む前記区画のパーセンテージを決定するために、少なくとも一部の区画をアドレスしてもよい。前記パーセンテージに少なくとも一部基づき、アナログの、強度に基づいた検出/分析の方法/システム、および/または、デジタルの検出/分析の方法/システムを使用して、流体試料中のアナライト分子の濃度の度合いを決定してもよい。いくつかの場合において、前記アッセイには、複数の捕捉物の使用が含まれてもよい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本明細書には、流体試料中のアナライト分子または粒子の濃度を決定するために使用される分析アッセイおよびシステムのダイナミックレンジを拡張するためのシステムおよび方法が記載されている。
【0002】
関連出願
この出願は、Rissinらの、「Methods and Systems for Extending Dynamic Range in Assays for the Detection of Molecules or Particles」と題された、2011年2月11日に出願された、米国仮特許出願第61/441,894号の利益を主張するものである。またこの出願は、Rissinらの、「Methods and Systems for Extending Dynamic Range in Assays for the Detection of Molecules or Particles」と題された、2010年3月24日に出願された、米国特許出願第12/731,136号の一部継続出願であり、該一部継続出願は、Rissinらの、「Methods and Systems for Extending Dynamic Range in Assays for the Detection of Molecules or Particles」と題された、2010年3月1日に出願された、米国仮特許出願第61/309,165号の利益を主張するものである。上記出願のそれぞれは参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
試料中の標的アナライト分子を迅速かつ正確に検出することができ、特定の場合においては定量することもできる方法およびシステムは、現代における分析測定の礎となっている。かかるシステムおよび方法は、学術的および工業的研究、環境アセスメント、食品安全性、医療診断、ならびに化学的、生物学的および放射線学的な兵器剤の検出などの多くの分野で採用されている。かかる技術の有利な特徴には、特異性、スピードおよび感度が含まれ得る。
【0004】
公知の方法および技術の多くは、該方法および技術が正確に検出できる濃度のダイナミックレンジ(例えば限定されたダイナミックレンジ)により限定され、および/または、分子もしくは粒子が極低濃度で存在するときそれらを検出するための感度を有さない。
【0005】
したがって、流体試料中の分子または粒子の濃度の度合い(measure)を決定するために使用される分析アッセイおよびシステムのダイナミックレンジを拡張するための、改善されたシステムおよび方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
発明の概要
本明細書には、流体試料中のアナライト分子または粒子の濃度を決定するために使用される分析方法およびシステムのダイナミックレンジを拡張するためのシステムおよび方法が記載されている。本発明の主題は、いくつかの場合において、相互に関連する製品、特定の問題に対する代替的解決、および/または、一つまたは二つ以上のシステムおよび/または物品の複数の異なる使用を伴う。
【0007】
いくつかの態様において、流体試料中のアナライト分子または粒子の濃度の度合いを決定するためのシステムは、複数の区画(location)であって、かかる区画内に形成されているか、または含まれる結合表面をそれぞれが含む、前記複数の区画を含むアッセイ基板(ここで少なくとも一つの結合表面は、該結合表面に固定化された少なくとも一つのアナライト分子または粒子を含む)、前記複数の区画をアドレスする(address)よう設定され、アドレスされたそれぞれの区画でのアナライト分子または粒子の有無を示し、かつそれぞれの区画でのアナライト分子または粒子の数によって変化する強度を有する、少なくとも一つの信号を生成することができる少なくとも一つの検出器、および、前記少なくとも一つの信号から、少なくとも一つのアナライト分子または粒子を含む前記区画のパーセンテージを決定するよう設定され、さらに、該パーセンテージに基づいて、少なくとも一つのアナライト分子もしくは粒子を含む区画の数に少なくとも一部基づいて前記流体試料中のアナライト分子もしくは粒子の濃度の度合いを決定するか、または複数のアナライト分子もしくは粒子の存在を示す前記少なくとも一つの信号の強度レベルに少なくとも一部基づいて前記流体試料中のアナライト分子もしくは粒子の濃度の度合いを決定するよう設定された、少なくとも一つの信号処理器、を含む。
【0008】
いくつかの態様において、流体試料中のアナライト分子または粒子の濃度の度合いを決定するための方法は、アナライト分子または粒子の少なくとも一つのタイプに親和性を有する結合表面、該結合表面は基板上の複数の区画の一つを形成しているか、またはその中に含まれている、に対して固定化されたアナライト分子または粒子を提供すること、前記複数の区画の少なくともいくつかにアドレスし、少なくとも一つのアナライト分子または粒子を含む前記区画のパーセンテージを示す度合いを決定すること、および該パーセンテージに基づいて、少なくとも一つのアナライト分子もしくは粒子を含む区画の数に少なくとも一部基づいて前記流体試料中のアナライト分子もしくは粒子の濃度の度合いを決定するか、または、複数のアナライト分子もしくは粒子の存在を示す信号の強度に少なくとも一部基づいて前記流体試料中のアナライト分子もしくは粒子の濃度の度合いを決定すること、を含む。
【0009】
いくつかの態様において、流体試料中のアナライト分子または粒子の濃度の度合いを決定するための方法は、捕捉物それぞれがアナライト分子または粒子の少なくとも一つのタイプに親和性を有する結合表面を含む複数の捕捉物を、アナライト分子もしくは粒子の少なくとも一つのタイプを含むかまたは含むことが疑われる溶液に暴露すること(ここで前記捕捉物の少なくともいくつかは少なくとも一つのアナライト分子または粒子と結びつく)、前記暴露工程に供された前記捕捉物の少なくとも一部捕捉物を、複数の区画に空間的に分離すること、前記複数の区画の少なくともいくつかをアドレスし、かつ、少なくとも一つのアナライト分子または粒子と結びついた捕捉物を含む該区画のパーセンテージを示す度合いを決定すること(ここでアドレスされた前記区画は少なくとも一つの捕捉物を含む区画である)、および該パーセンテージに基づいて、少なくとも一つのアナライト分子もしくは粒子と結びついた捕捉物を含む区画の数に少なくとも一部基づいて前記流体試料中のアナライト分子もしくは粒子の濃度の度合いを決定するか、または、複数のアナライト分子もしくは粒子の存在を示す信号の強度レベルに少なくとも一部基づいて前記流体試料中のアナライト分子もしくは粒子の濃度の度合いを決定すること、を含む。
【0010】
図面の簡単な説明
本発明の他の側面、態様および特徴は、添付の図面と併せて考慮すると、以下の詳細な説明から明らかになるだろう。添付の図面は概略図であって、縮尺通りに描くことを意図していない。明確化の目的のため、すべての図においてすべての構成要素に番号を付してはおらず、また描写が、当業者に本発明を理解させるために必要でない場合、本発明のそれぞれの態様のすべての構成要素が示されてもいない。本文に言及されているすべての特許出願および特許は、その全体が参照により組み込まれる。本明細書に含まれる記載と参照により組み込まれた文書との間に矛盾がある場合、本明細書が、定義を含め、制するものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、いくつかの態様に従って実施した、ポアソン分布調整の結果をグラフ表示したものを示す。
【図2】図2は、1つの態様に従い、流体試料中の酵素濃度に対してビーズあたりに結合した酵素の平均数をグラフにしたものを示す。
【0012】
【図3】図3は、1つの態様に従い、流体試料中の酵素濃度に対してビーズあたりに結合した酵素の平均数をグラフにしたものを示し、ここでビーズあたりに結合した酵素の平均数は、二つの異なる分析方法を使用して算出される。
【0013】
【図4A−C】図4Aは、1つの態様に従い、ポアソン分布を使用したデジタル計数により決定された、ビーズあたりの平均分子(AMB)によって与えられる、有効アナライト濃度に対する活性ビーズの割合をプロットしたものを示す。 図4Bは、1つの態様に従い、有効濃度、AMBの関数としてのアナログ強度(Ibead/Isingle)をプロットしたものを示す。
【0014】
図4Cは、1つの態様に従い、(i)デジタル分析および(ii)アナログ分析からの活性ビーズ数の関数としてのAMB(%CV)における不正確さをプロットしたものを示す。
【図5A】図5Aは、本発明の態様のアッセイプロトコルの模式図を示し、ここでAMB=0.1(左)、AMB=0.6(中央)およびAMB=3である。
【0015】
【図5B−D】図5B〜Dは、おおよそのAMBが(D)0.1、(E)0.6および(F)3.0であるときの、個々のウェルにおける単一化したビーズにかかるいくつかの態様におけるアッセイを使用して作成した蛍光画像を示す。
【図6】図6は、いくつかの態様に従い、ビーズ上の酵素数の関数として生成されたレゾルフィン分子数をプロットしたものを示す。
【0016】
【図7】図7は、いくつかの態様における、光退色の速度を決定するために使用され得る、時間に対する蛍光強度のグラフを示す。
【図8】図8は、前駆標識剤を採用する本発明の方法の工程の1つの態様を描写する模式図である。
【0017】
【図9A】図9Aおよび9Bは、光学検出システムを採用するシステムの、限定されない例を示す。
【図9B】図9Aおよび9Bは、光学検出システムを採用するシステムの、限定されない例を示す。
【図10】図10は、光検出システムを有する光ファイバー集合体を採用するシステムを示す模式的なブロック図である。
【0018】
【図11】図11は、基板と封着部材とを合わせることを通して複数の反応槽(reaction vessel)を形成するための方法の態様(工程A〜D)を描写する模式的なフロー図、および基板と比較した封着部材のサイズの例(E、F)の描写である。
【0019】
【図12A】図12Aは、光を使用する検出のための実験装置を描写したものである。
【図12B】図12Bは、封着部材により封着された光ファイバーのアレイを示す。
【図13A】図13Aは、1つの態様に従い、酵素濃度の関数としてのAMBをプロットしたものを示す。
【0020】
【図13B】図13Bは、1つの態様に従い、酵素濃度の関数としての%活性ビーズおよびAMB値を含む表を示す。
【図14A】図14Aおよび14Bは、いくつかの態様に従い、PSA試料のデジタルおよびアナログ分析の組み合わせを示すプロットである。
【図14B】図14Aおよび14Bは、いくつかの態様に従い、PSA試料のデジタルおよびアナログ分析の組み合わせを示すプロットである。
【0021】
【図15A】図15Aは、1つの態様に従い、ポアソン統計を使用した%活性ビーズからAMBdigitalへの変換を示すデータ表である。
【図15B】図15Bは、いくつかの態様に従い、酵素濃度の関数としての活性ビーズ(菱形)とAMBdigital(四角形)とをプロットしたものを示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
詳細な説明
本明細書には、流体試料中のアナライト分子または粒子(例えば、細胞、細胞小器官および他の生物学的または非生物学的な微粒子など)の濃度を決定するために使用される分析アッセイ方法およびシステムのダイナミックレンジを拡張するためのシステムおよび方法が記載されている。本発明の主題は、いくつかの場合において、相互に関連する製品、特定の問題に対する代替的解決、および/または、一つまたは二つ以上のシステムおよび/または物品の複数の異なる使用を伴う。以下の考察の多くがアナライト分子を対象としているが、これは例としてのみのものであり、例えば微粒子形態のアナライトなど、他の材料を検出および/または定量してもよいことは理解されるはずである。アナライト分子および粒子のいくつかの典型的な例は、本明細書に記載されている。
【0023】
本明細書に記載の方法およびシステムは、流体試料中のアナライト分子の濃度の度合いを決定するための二つまたは三つ以上の技術を採用することによって、ある態様で使用される分析の方法およびシステムのダイナミックレンジを拡張するのに役立ち得る。本明細書に記載されているように、いくつかの態様において、ダイナミックレンジは、アナログの、強度に基づいた検出/分析の方法/システムとデジタルの検出/分析の方法/システムとを組み合わせることによって拡張されてもよい。いくつかの場合において、流体試料中のアナライト分子がより低い濃度範囲で存在するとき、単一のアナライト分子が検出されてもよく、そしてアナライト分子数が決定されてもよい。流体試料中のアナライト分子の濃度の度合いは、デジタル分析の方法/システムを使用したこのデータ(例えばアナライト分子数)に少なくとも一部基づいてもよい。いくつかの場合において、そのデータは、ポアソン分布の調整を使用してさらに操作してもよい。
【0024】
より高い濃度範囲で(例えば、単離/検出/決定する単一のアナライト分子がより実用的でなくなり得る濃度レベルで)、流体試料中のアナライト分子の濃度の度合いは、アナログの、強度レベルに基づいた技術を使用して決定されてもよい。アナログ分析の方法/システムにおいて、濃度の度合いは、測定された相対的な信号強度に少なくとも一部基づいてもよく、ここで測定された強度の合計は、アナライト分子の存在および量に相関し得る。ある態様において、例えば、着目するアナライト分子についての校正基準を広いダイナミックレンジにわたり発生させてもよい、などのように、単一のアッセイ/システムにおいて、アナログとデジタルとの両方の性能を組み合わせてもよい。一つのかかる例において、単一の校正曲線を、デジタルとアナログとの両方の定量化技術を使用して作成してもよく、ここで本明細書に記載されているように、校正のデジタルとアナログとのレジーム(regime)は校正係数を使用することによって連結される。試験流体試料中のアナライト分子の未知の濃度の決定は、試験結果(例えばアナライト分子を含む区画の数/割合(デジタル)および/または測定された強度レベル(アナログ))を校正曲線と比較することに少なくとも一部基づいてもよい。
【0025】
「ダイナミックレンジ」という用語は、当該技術分野においてそれが通常用いられている意味が与えられ、試料の希釈もしくは濃縮または類似の結果を提供するアッセイ条件(例えば採用した試薬の濃度など)の変更をせずにシステムまたは方法によって定量化され得る流体試料中のアナライト分子の濃度範囲を言い、ここで流体試料中のアナライト分子の測定濃度は実質的に正確に決定されてもよい。流体試料中のアナライト分子の測定濃度が、流体試料中のアナライト分子の実際の(例えば本当の)濃度の約10%以内である場合、流体試料中のアナライト分子濃度は実質的に正確に決定されていると考えてもよい。ある態様において、測定濃度が流体試料中のアナライト分子の実際の濃度の約5%以内、約4%以内、約3%以内、約2%以内、約1%以内、約0.5%以内、約0.4%以内、約0.3%以内、約0.2%以内、または約0.1%以内である態様において、流体試料中のアナライト分子の測定濃度は実質的に正確に決定されている。
【0026】
いくつかの場合において、決定された濃度の度合いは、本当の(例えば実際の)濃度と、約20%以下、約15%以下、約10%以下、約5%以下、約4%以下、約3%以下、約2%以下、約1%以下、または約0.5%以下で異なる。いくつかの態様において、選択したアッセイ方法を使用して既知濃度である流体試料中のアナライト分子濃度を決定し、測定された濃度を実際の濃度と比較することによって、アッセイ方法の正確性を決定され得る。
【0027】
いくつかの態様において、本発明のシステムまたは方法は、約1000(3log)、約10,000(4log)、約100,000(5log)、約350,000(5.5log)、1,000,000(6log)、約3,500,000(6.5log)、約10,000,000(7log)、約35,000,000(7.5log)、約100,000,000(8log)、またはそれ以上のダイナミックレンジにわたり、流体試料中のアナライト分子濃度を測定することが可能であり得る。
【0028】
いくつかの態様において、実質的に正確に決定され得るてもよい流体試料中のアナライト分子濃度(例えば未知濃度)は、約5000fM(フェムトモーラー)未満、約3000fM未満、約2000fM未満、約1000fM未満、約500fM未満、約300fM未満、約200fM未満、約100fM未満、約50fM未満、約25fM未満、約10fM未満、約5fM未満、約2fM未満、約1fM未満、約500aM(アトモーラー)未満、約100aM未満、約10aM未満、約5aM未満、約1aM未満、約0.1aM未満、約500zM(ゼプトモーラー)未満、約100zM未満、約10zM未満、約5zM未満、約1zM未満、約0.1zM未満、またはそれ以下である。いくつかの場合において、検出限界(例えば溶液中で決定され得るアナライト分子のもっとも低い濃度)は、約100fM、約50fM、約25fM、約10fM、約5fM、約2fM、約1fM、約500aM(アトモーラー)、約100aM、約50aM、約10aM、約5aM、約1aM、約0.1aM、約500zM(ゼプトモーラー)、約100zM、約50zM、約10zM、約5zM、約1zM、約0.1zM、またはそれ以下である。
【0029】
いくつかの態様において、実質的に正確に決定されてもよい流体試料中のアナライト分子または粒子の濃度は、約5000fMと約0.1fMとの間、約3000fMと約0.1fMとの間、約1000fMと約0.1fMとの間、約1000fMと約0.1zMとの間、約100fMと約1zMとの間、約100aMと約0.1zMとの間、またはそれ以下である。検出の上限(例えば溶液中で決定されてもよいアナライト分子の最大の濃度)は、少なくとも約100fM、少なくとも約1000fM、少なくとも約10pM(ピコモーラー)、少なくとも約100pM、少なくとも約100pM、少なくとも約10nM(ナノモーラー)、少なくとも約100nM、少なくとも約1000nM、少なくとも約10μM、少なくとも約100μM、少なくとも約1000μM、少なくとも約10mM、少なくとも約100mM、少なくとも約1000mM、またはそれ以上である。いくつかの態様において、決定される流体試料中のアナライト分子または粒子の濃度は、約50×10−15M未満、または約40×10−15M未満、または約30×10−15M未満、または約20×10−15M未満、または約10×10−15M未満、または約1×10−15M未満である。
【0030】
典型的な、組み合わされたデジタル/アナログの分析の方法/システム
以下の項目には、流体試料中のアナライト分子または粒子の濃度の度合いを決定するために使用される分析方法/システムのダイナミックレンジを拡張するための典型的な方法およびシステムが記載されている。いくつかの態様において、採用した分析方法は、低濃度で単一のアナライト分子を個々に単離し検出することができる。いくつかの場合において、分析方法は、基板(例えば、プレート、チップ、光ファイバー表面など)の表面内または表面上の複数の区画に、複数のアナライト分子を空間的に分離することを含む。低濃度範囲において、少なくともいくつかの区画に少なくとも一つのアナライト分子が含まれると同時に、かかる区画の統計的に有意な割合にはアナライト分子が含まれないように、アナライト分子が空間的に分離されてよい。ダイナミックレンジを拡張するための本発明の方法/システムとともに使用してもよい方法/システムは本明細書に記載されている。
【0031】
典型的な方法として、そして本明細書にさらに詳細に記載されているように、流体試料中の複数のアナライト分子は、それぞれがアナライト分子の少なくとも一つのタイプに親和性を有する結合表面を含む複数の捕捉物(例えばビーズ)に対して固定化されるように作製されてもよい(例えば、共同出願である、2010年3月24日に出願された、Duffyらの、「Ultra-sensitive Detection of Molecules or Particles using Beads or Other Capture Objects」と題された米国特許出願第12/731,130号;および2011年3月1日に出願された、Duffyらの、「Ultra-sensitive Detection of Molecules or Particles using Beads or Other Capture Objects」と題された国際特許出願第(未定)(代理人整理番号Q0052.7011WO00)、それぞれ参照により本明細書に組み込まれる、に記載された方法および捕捉物を参照)。少なくともいくつかのビーズ(例えば少なくとも一つのアナライト分子と結びついた少なくともいくつか)は、複数の区画(例えば反応槽)に空間的に隔離/分離されてもよく、少なくともいくつかの反応槽は、ビーズおよびアナライト分子の存在を検出するためにアドレス/インタロゲート(interrogate)されてもよい。
【0032】
いくつかの場合において、アドレスされた複数の反応槽は、少なくとも一つの捕捉物(例えば、少なくとも一つのアナライト分子と結びついているか、または、どのアナライト分子にも結びついていない)を含んでもよい反応槽の総量の一部または実質的に全部である。本明細書の考察の多くが、複数の反応槽に複数のアナライト分子を空間的に分離する前に、ビーズ(または他の捕捉物)に対してアナライト分子を固定化すること含む方法に焦点を合わせているが、これは決して限定ではなく、他の方法/システムを、アナライト分子を空間的に分離するために使用してもよい(例えばアナライト分子が捕捉物上に固定化されずに複数の区画に分離される場合)ことは理解されるはずである。当業者は、本明細書に記載の方法、システムおよび分析を、捕捉物(例えばビーズ)を採用しない方法に適用することができるだろう。
【0033】
例えば、2007年2月16日に出願された、Waltらの、「Methods and arrays for target analyte detection and determination of target analyte concentration in solution」と題された米国特許出願第20070259448号;2007年2月16日に出願された、Waltらの、「Methods and arrays for detecting cells and cellular components in small defined volumes」と題された米国特許出願第20070259385号;2007年2月16日に出願された、Waltらの、「Methods and arrays for target analyte detection and determination of reaction components that affect a reaction」と題された米国特許出願第20070259381号;2007年8月20日に出願されら、Waltらの、「Methods for Determining the Concentration of an Analyte in Solution」と題された国際特許出願第PCT/US07/019184号;および2009年9月9日に出願された、Duffyらの「Ultra-Sensitive Detection of Molecules or Enzymes」と題された国際特許出願第PCT/US09/005428号を参照。これらは参照により本明細書に組み込まれる。
【0034】
ビーズを反応槽に空間的に分離することに続いて、少なくとも一つのアナライト分子と結びついたビーズを含む、アドレスされた区画の数および/またはパーセンテージを決定するために、少なくとも一部の反応槽をアドレス/インタロゲートしてもよい。いくつかの場合において、アドレスされた区画は、少なくとも一つのビーズ(例えば、少なくとも一つのアナライト分子と結びついているか、または、どのアナライト分子とも結びついていない)を含む区画の少なくとも一部である。少なくとも一つのアナライト分子と結びついたビーズを含む区画のパーセンテージ(「活性」ビーズのパーセンテージ)は、少なくとも一つのアナライト分子と結びついたビーズ数を、アドレスされたビーズの総数で割り、100%を乗じたものである。代わりに、アドレスされた区画がビーズを含むか否かにかかわらず、活性のパーセンテージは、必要に応じて、アドレスされた区画数に基づいてもよい(すなわち、アドレスされた区画のパーセンテージとしての、活性ビーズを含む区画)。当業者には理解されるだろうが、ビーズ(または他の捕捉物)が採用されない態様において、以下の考察における「活性ビーズ」のパーセンテージは、少なくとも一つのアナライト分子を含む区画のパーセンテージ(例えば「活性区画」のパーセンテージ)に置換され得る。
【0035】
いくつかの態様において、活性ビーズの数/パーセンテージを決定することによって、流体試料中のバルク(bulk)のアナライト濃度を決定することができる。特に低濃度レベルで(例えばデジタルの濃度範囲において)、流体試料中のアナライト分子濃度の度合いは、「オン」(例えば少なくとも一つのアナライト分子と結びついたビーズを含む反応槽)または「オフ」(例えばどのアナライト分子とも結びついていないビーズを含む反応槽)のいずれかとしてビーズを数えることによって、少なくとも一部決定されてもよい。ビーズに対するアナライト分子の比率が小さい(例えば、約1:5未満、約1:10未満、約1:20未満、またはそれ以下)とき、ほとんどすべてのビーズは、ゼロまたは一つのアナライト分子と結びついている。この範囲において、活性ビーズのパーセンテージ(例えば「オン」の反応槽)は、アナライト濃度の上昇に伴い、実質的に線形的に上昇し得、デジタルの分析方法を、データの分析のために有利に使用し得る。
【0036】
しかしながら、アナライト濃度が上昇するにつれて、ビーズの有意な集団は通常、一つ以上のアナライト分子と結びつく。すなわち、少なくともいくつかのビーズには、二つ、三つなどのアナライト分子が結びついている。したがって、より多くの割合を占めるビーズが一つ以上のアナライト分子と結びつき得るため、アナライト濃度が上昇するにつれて、ある時点で、集団中の活性ビーズのパーセンテージは通常、バルクのアナライト濃度と線形的に関連しないだろう。これら濃度範囲において、デジタルの分析方法(例えば「オン」と「オフ」とのビーズを数える)を使用して、データをさらに有利に分析してもよいが、ビーズ集団に対するアナライト分子集団の結合確率の計算に、ポアソン分布の調整を適用することによって、アッセイの正確性を改善することが可能であり得る。
【0037】
例えば、ポアソン分布の調整によれば、約1.0%の活性ビーズ(例えば、ビーズ総数に対する少なくとも一つのアナライト分子と結びついたビーズの比率が約1:100)を報告するアッセイでは、ビーズの約99%はアナライト分子がなく、ビーズの約0.995%は一つのアナライト分子と結びつき、ビーズの約0.005%は二つのアナライト分子と結びついている。比較として、約20.0%の活性ビーズ(例えば、ビーズ総数に対する少なくとも一つのアナライト分子と結びついたビーズの比率が約1:5)を報告するアッセイでは、ビーズの約80%はアナライト分子がなく、ビーズの約17.85%は一つのアナライト分子と結びつき、ビーズの約2.0%は二つのアナライト分子と結びつき、ビーズの約0.15%は三つのアナライト分子と結びついている。
【0038】
非線形効果(例えば、二つ目の比較例で見られるような)は、ポアソン分布の調整を使用する試料中のアナライト分子または粒子と結びついていない統計学的に有意な割合のビーズ(例えば本明細書に記載されているとおり−下記の方程式1と関連する考察を参照)が残存する濃度範囲(例えばデジタル分析の方法/システムが濃度の度合いを正確に決定し得る範囲、例えば、いくつかの場合において、最高約20%までの活性ビーズ、最高約30%までの活性ビーズ、最高約35%までの活性ビーズ、最高約40%までの活性ビーズ、最高約45%までの活性ビーズ、最高約50%までの活性ビーズ、最高約60%までの活性ビーズ、最高約70%までの活性ビーズ、またはそれ以上)の全体にわたって、説明する(account for)ことができる。ポアソン分布は、事象の平均数が既知である場合の事象が発生する数の尤度として記載される。発生数の期待値がμであるとき、正確にν発生(νは負の整数ではなく、ν=0、1、2、・・・)する確率(Pμ(ν))は、方程式1によって決定され得る:
【数1】
【0039】
本発明のいくつかの態様において、μは、検出されたビーズ(例えば、任意のアナライト分子と結びついているか、または結びついていないかのいずれか)の総数に対する検出されたアナライト分子数の比率と等しく、そしてνは、アナライト分子をある数含むビーズの数(例えば、0、1、2、3などのいずれかの個数のアナライト分子と結びついたビーズの数)である。したがって、実験からμを決定することにより、アナライト分子の数と、さらなる計算により、濃度とを決定することができる。測定のデジタル/バイナリモードにおいて、1、2、3、4などの個数のアナライト分子と結びついたビーズが区別できない場合(例えばν=1、2、3、4が区別できない場合)、アナライト分子を含むビーズ(または区画)は単純に「オン」として特徴付けられる。ν=0の発生は、「オフ」ビーズ(または区画)の数として断定的に決定することができる。(Pμ(0))は方程式2に従い算出され得、
【数2】
期待される発生数であるμは、方程式3で与えられるように、再構成された方程式2に基づき決定してもよい。
【数3】
【0040】
アナライト分子と結びついていないビーズの発生数であるPμ(0)が、1から、他のすべての発生にかかるビーズ(例えば少なくとも一つのアナライト分子と結びついたビーズ)の総数を差し引いたものであるとき、μは方程式4で与えられる。
【数4】
【0041】
いくつかの場合において、μはまた、「AMBdigital」として本明細書で言及されている。方程式4を再編成し、計数された区画に含まれる流体試料中のアナライト分子の総数は、方程式5を使用して決定することができる。
【数5】
【0042】
したがって、分子の総数は、与えられた数のビーズに対し「オン」ビーズの割合から決定することができ、そして、流体試料中のアナライト分子濃度の度合いは、(例えば、アッセイ中の試料の任意の希釈度、インタロゲートされた捕捉物を含むウェルの数や容積などと同様)この数に少なくとも一部基づいていてもよい。結びついたアナライト分子を1、2、3、4などの個数有するビーズの数は、決定されたμと方程式1とから、Pμ(1)、Pμ(2)、Pμ(3)などを算出することによっても決定することができる。
【0043】
ポアソン分布の調整の潜在的有用性は、表1により実証されている。カラムAは、試験されたモル濃度と容積とから算出された試料中のアナライト分子の数を示している。任意の数(例えば、1、2、3など)のアナライト分子と結びついた任意のビーズが単一のアナライト分子と結びついたものと数えられる場合、カラムBは、ビーズ上に捕捉された分子の調整されていない数を示している。カラムDはポアソン調整されたデータであり、ここで二つのアナライト分子と結びついたビーズは、結合された二分子を有するとして数え、三分子と結びついたビーズを、結合された三分子を有するとして数えられている。調整されていないデータと調整されたデータとの比較は、カラムCとEとを比較することによって理解することができる。これらのカラムから、各濃度でアッセイし、算出された捕捉効率が与えられる。ここで捕捉効率は、捕捉されたアナライト分子の決定された数(調整されていないか、またはポアソン調整された)を、流体試料中に提供されたアナライト分子の数で割り、100%を乗じたものである。
【0044】
カラムCは、調整されていないデータを使用して捕捉効率を算出したものを示し、アナライト分子濃度が上昇するにつれ、捕捉効率の低下が観察される。カラムEは、ポアソン調整したデータを使用して捕捉効率を算出したものを示す。図1は、典型的なポアソン分布の調整の結果をグラフ表示したものである。調整していないデータは濃度の上昇に伴い直線から逸脱しているのに対して、ポアソン分布の調整に供されたデータは、プロットされた濃度範囲の実質的な部分を通して、実質的に線形的である。カラムDに示された結果を使用して、ビーズあたりのアナライト分子の平均数を算出することができる(例えば捕捉された分子のポアソン調整された数をアドレスされたビーズの総数で割る)。本明細書に記載されているように、ある態様において、得られたビーズあたりのアナライト分子の平均数は、校正曲線を作成するために使用してもよい。
【0045】
【表1】
【0046】
ある活性ビーズのパーセンテージを超えると(すなわち、任意のアナライト分子もしくは粒子と結びついていないビーズの集団に統計学的に有意な割合のビーズがもはや存在しないか、あるいは、任意のアナライト分子もしくは粒子と結びついていないが、あるレベルを超える−例えば、約40%、もしくは約50%、もしくは約60%、もしくは約70%より大きいまたは十分に大きい−活性ビーズのパーセンテージ(または、ビーズを使用しない態様では活性区画のパーセンテージ)をもたらすビーズの集団に統計学的に有意な割合のビーズが存在し得る、潜在的に有利である状況)、アナライト分子濃度の決定における正確度および/または信頼性の改善は、前述のようなデジタル/バイナリ計数/ポアソン分布の調整よりむしろ、またはこれらに補足して、アナログの決定および分析に基づく強度測定を採用することによって潜在的に認識されてもよい。
【0047】
より高い活性ビーズのパーセンテージにおいては、他の活性ビーズ(例えば陽性の反応槽)に取り囲まれている活性ビーズ(例えば陽性の反応槽)の確率も高くなり、これは、特定のアッセイ装置において、デジタル/バイナリの決定方法を専ら使用することに対し、ある実務上の課題を創り出し得る。例えば、特定の態様において、隣接する反応槽からある反応槽に検出可能な成分が漏出することは、ある程度起こり得る。かかる状況において、アナログの、強度レベルに基づいた技術を使用することによって、より好ましい成績を生み出せる可能性がある。
【0048】
図2は、いくつかの場合において、アナライト濃度が上昇するにつれ、活性ビーズ数がより高いレベルまで増えるように観察され得る、ポアソン調整されたデジタル読み出し技術の特徴を説明するものである。特定の態様において、ある時点でのアナライト分子濃度が、ポアソン分布調整があろうとなかろうとデジタル読み出し技術によってはもはや直線的な関係が望ましいであろう程度には得られないレベルに到達し得、そして本発明のシステム/方法に採用された分析技術は、アナログの分析方法/システムが採用されるように変更され得る。
【0049】
アナログ分析では、単一ビーズに多数のアナライト分子が結びつくことによって、より効率的および/またはより確実に定量化できるかもしれない。少なくとも一つのアナライト分子を含む複数の反応槽からの少なくとも一つの信号の強度を決定してもよい。いくつかの場合において、決定された強度は、少なくとも一つのアナライト分子を含むインタロゲートされた反応槽のすべてから決定された全部の強度の合計であってもよい(例えば、反応槽の強度は全体として決定される)。他の場合では、信号を生成するそれぞれの反応槽の強度が決定され、平均化され、平均ビーズ信号(ABS)がもたらされてよい。
【0050】
アナログとデジタルとの両方の分析方法/システムを組み合わせた本発明のアッセイ方法/システムのダイナミックレンジを拡張するために、二つの分析方法/システムの結果/パラメータを関連付ける「関連性(link)」を規定してもよい。いくつかの場合において、これは、校正曲線の補助によりなされてもよい。いくつかの態様において、流体試料(例えば試験試料)中のアナライト分子の未知濃度の度合いは、測定されたパラメータを校正曲線と比較することによって少なくとも一部決定されてもよい。ここで校正曲線は、デジタルとアナログとの両方の濃度範囲を占めるデータ点を含むため、単一のモード(すなわちデジタルのみまたはアナログのみ)の分析方法/システムと比較すると、ダイナミックレンジが拡張されている。
【0051】
未知濃度の試験試料を分析するために使用された条件と実質的に類似した条件下で、既知濃度の複数の標準化試料を用いるアッセイを実施することによって、校正曲線を作成してもよい。ある例において、活性ビーズの検出されたパーセンテージが閾値(例えば、約40%の活性ビーズ、または約50%の活性ビーズ、または約60%の活性ビーズ、または約70%の活性ビーズなど)までまたは閾値を下回って低下するとき、アナログ測定を使用して決定されたデータから、デジタル分析システム/方法に、校正曲線を移行してもよい。
【0052】
特定の態様において、組み合わせたデジタル−アナログの校正曲線を作成するために、低濃度(デジタル)および高濃度(アナログ)の分析レジームで得られた結果の間で関連付けがなされる。特定の態様において、校正曲線は、ビーズあたりのアナライト分子の平均数、または溶液中の分子濃度に対するAMBとして定義されたパラメータに、アナライト分子濃度を関連付ける。以下の考察は、アナライト分子がたまたま酵素である典型的な態様を特徴とするが、これに決して限定されず、他の態様では、他のタイプのアナライト分子または粒子を採用してもよい。
【0053】
例えば、アナライト分子は生体分子であってもよく、アッセイは酵素成分を含む結合リガンドの使用を含んでもよい。デジタル分析に好ましい範囲に収まる濃度を有する試料のAMBは、前述のように、ポアソン分布の調整を使用して決定してもよい。アナログ分析に好ましい範囲に収まる濃度を有する試料のAMBは、後述のように、アナログの強度信号(例えば平均ビーズ信号)を、変換係数を用いてAMBに変換することによって、決定してもよい。
【0054】
最初の典型的な態様において、校正曲線を作成し適切な変換係数を決定するために、校正試料に対してアッセイを行う。ここで活性ビーズのパーセンテージ(または、ビーズを採用しない態様では活性区画のパーセンテージ)は、約30%と約50%との間、または約35%と約45%との間、またはいくつかの場合において約40%であり、またはいくつかの場合において50%より大きい。この試料にかかるAMBは、前述のように、ポアソン分布の調整を使用して算出することができる。この試料では、平均ビーズ信号(ABS)も決定される。ABSとAMBとを関連付ける変換係数(CF)は、例えば方程式6に従って定義し得る。
【数6】
【0055】
したがって、アナログ決定を使用するのが好ましいレジームにおいて、ある試料(例えば未知の試料、またはアナログ領域内にある濃度を有する校正試料)のAMBは、方程式7に従い算出し得る。
【数7】
【0056】
例えば、一つの典型的な態様において、校正曲線および変換係数は以下のように決定してもよい。以下に示す表2において、デジタル/バイナリの読み出しプロトコルを使用して決定されたもっとも濃度が高いアナライト分子(例えば、この典型的な態様における酵素)(約7fM)は、約42.36%の活性ウェルで発生した。このデジタル信号を、ポアソン分布調整を用いて調整して結合した分子の総数を決定し、そのAMBは0.551に決定された。この濃度レベルで収集されたデータはまた、分析して平均ビーズ信号を決定した(このABSは約1041蛍光ユニットに等しかった)。したがって、アナログからデジタルへの変換係数は、方程式6を使用して算出すると、0.000529AMB/蛍光ユニットであった。
【0057】
比較的高濃度範囲を有する他の試料にこの変換係数を適用することによって、AMB値を決定することができる(例えば方程式7に記載されているように)。アナログからデジタルへの変換係数を用いた平均ビーズ信号(例えば表2中の平均ビーズ化ウェル強度)からAMBへの変換と、いくらか低い濃度でデジタル的に決定されたAMB値とが、表2で説明される。組み合わせたデジタル/アナログ校正データは、濃度に対するAMB値の単一校正曲線上にプロットすることができる。図3は、デジタルデータとともにプロットされた、変換されたアナログデータのグラフ表示を示す。アナログ値は、AMBに変換され(データポイント14)、AMB値とともに、ポアソン調整されたデジタル読み出し範囲にプロットされている(データポイント12)。
【0058】
【表2】
【0059】
表1および2に一覧にされた実験に基づき、記載されたやり方によって実証されたダイナミックレンジは、6logより大きかった。一般的に、分析のシステム/方法のダイナミックレンジは、デジタル読み出しにかかる検出の下限(例えば記載されている具体例では、約227zM)およびアナログ読み出しにより試験され正確に定量化されたもっとも高い濃度(例えば、この例では、約700fM)、すなわち6.5logに境界される。分子集合体からのアナログ信号を測定する能力しか持たないプレートリーダー上の同じ試験試料に対して達成できる約3logのダイナミックレンジと、このダイナミックレンジを比較してもよい。
【0060】
二つ目の典型的な態様において、ビーズに対するアナライト分子の比率が低いとき、アナライト分子と結びついていないビーズ(「オフ」ビーズ)の数が有意である場合、検出されたビーズ総数に対する活性な、アナライト分子と結びついた(すなわち「オン」)ビーズの数を、前述のようなポアソン統計を通じてAMB(すなわちAMBdigital)を決定するために使用してもよい。しかしながら、比率がより高いときには、校正曲線を作成する最初の典型的な態様において、修正されたやり方が前述のものから得られる。この態様において、ビーズに対するアナライト分子の比率がより高く、ビーズのほとんどが一つまたは二つ以上の結合したアナライト分子を有し、そして計数のやり方がより不正確になるとき、AMB(すなわち、AMBanalog)は、アレイ中にビーズを含むウェルの平均蛍光強度(
【数8】
)から決定される。
【0061】
アナログレジームにおいて
【数9】
をAMBに変換するために、<10%の活性ビーズを有する画像を、単一の酵素分子の平均アナログ強度(
【数10】
)を決定するために使用してもよい。アナログAMBはすべてのビーズにわたる
【数11】
の
【数12】
に対する比率によって提供され、校正曲線は以下のようにして作成することができる。検出したそれぞれのビーズと結びついた分子(例えば酵素)の数を決定するために、ビーズを含むウェルの平均蛍光強度を測定することによって、デジタルレジームを超えて、アッセイのダイナミックレンジを拡張してもよい。この態様において、AMBは、活性ビーズの平均蛍光強度(
【数13】
)と、単一のビーズから生成される平均蛍光強度(例えば単一の酵素;
【数14】
)とから決定することができる。アナログ範囲におけるアレイのAMB(AMBanalog)は方程式8により定義される。
【数15】
【0062】
例えば方程式9に示されるように、一つまたはゼロのいずれかの分子と結びついた大部分のビーズが優位を占める場合、
【数16】
を決定するためには、AMBdigital(例えば方程式4を参照)とAMBanalog(方程式8)とを、活性ビーズの比率の点で明確に同等と見なすことができる。いくつかの場合において、(例えば、本明細書に記載されているように)基質の減損からの寄与が無視できる場合、これらの値は同等と見なされる。いくつかの場合において、アレイを分析し、「オン」ビーズの比率が<0.1であったとき、この条件はこれらの基準を満たすものと考えられる。
【数17】
【0063】
このとき、デジタル(AMBdigital(方程式4))とアナログ(AMBanalog(方程式8))との両方の範囲で、AMBをプロットすることができる。二つの曲線は、一つの校正曲線に組み合わせてもよい。
【0064】
二つ目の態様においてデジタルとアナログとのデータを組み合わせるとき、
【数18】
を決定するために実験を採用してもよい。この実験は試料を用い、ここで活性ビーズの比率は、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、またはそれ以上より小さい。いくつかの場合において、活性ビーズの比率は約10%である。この範囲をカバーする校正データポイント、またはこの範囲においてデジタル信号を有することが知られている具体的なコントロール試料を使用することによって、前述のようにこれを達成してもよい。fon<0.1である校正曲線において二つまたは三つの濃度を有する場合、
【数19】
を決定するために、個々のビーズの強度(例えば、個々の酵素分子の動力学的活性)を平均化することができる。酵素の場合、単一の酵素分子速度(例えば酵素代謝回転速度)に関連した固有変動を平均化することは、
【数20】
の測定に対する有意な変動がほとんど観察されないかまたはまったく観察されないようにしてもよい。
【0065】
N回測定に応じて、平均単一酵素強度(
【数21】
)における不確実性は
【数22】
によって与えられることができ、ここで
【数23】
は正規分布した単一酵素分子強度の幅パラメータである。例えば、平均単一酵素速度の幅パラメータが30%であり、1000を上回る単一分子を平均するとき、平均値である
【数24】
に加味される不確実性は1%であった。活性ビーズの割合が上昇するとき(例えば10%およびそれを超える)、AMBを決定するためには、理論上、デジタル計数とアナログ強度との両方を使用することができる。あるパーセンテージの活性ビーズを下回るとき(例えば、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約5%未満、またはそれ以下)、多数の酵素と結びついたビーズの寄与は、
【数25】
が活性ビーズの%の測定ノイズを超えて変動しないほど、かつアナログのやり方が正確な結果を提供しないだろうほど、小さいだろう。
【0066】
前述のように、fonが100%に達すると、「オン」と「オフ」とのビーズを数えることによっては、AMBの正確な測定は、提供され得ない。「オン」ビーズのパーセンテージが中間のとき、AMBdigital(方程式4)を使用する後述の活性ビーズとAMBanalog(方程式8)を使用する前述の活性ビーズとの割合の閾値を決定するためには、さまざまな係数を考慮してもよい。デジタルとアナログとの信号の変動に起因するAMBにおける不正確さをプロットすることによって、この閾値の選択を説明してもよい。
【0067】
例えば、図4Aは、ポアソン分布(方程式4)を使用してデジタル計数から決定される(AMBによって与えられる)有効濃度に対する活性ビーズの割合のプロットを示す。濃度が上昇するにつれて、活性%の勾配は緩やかになり、信号の不確実さによってもたらされる、決定された濃度における不確実さは大きくなる。図4Bは、AMB(方程式8)である有効濃度に応じてアナログ強度(Ibeads/Isingle)をプロットしたものを示す。低濃度では、強度測定における変動によって、多数の酵素における小さい増加分を検出するのが困難になる可能性があり、かつ外挿されたAMBのCVは高い。
【0068】
図4Cは、(i)デジタル分析および(ii)アナログ分析からのfonに応じてAMB(%CV)における不確実さをプロットしたものを示し、両方法においてCV信号を7.1%の一定とする。いくつかの場合において、デジタルからアナログへの閾値(例えば、デジタル分析(例えば方程式4)またはアナログ分析(例えば方程式8)を使用する間で濃度決定の移行がある閾値は、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、または約50%と約80%との間、または約60%と約80%との間、または約65%と約75%との間である。特定の態様において、この閾値は約70%、または約75%と約85%との間である。試料実験にかかる実施例8および9を参照。
【0069】
図5は、AMBを変動して決定がなされたアッセイを描写したものである。図5A(左)はAMB=0.1を示し、ここで活性ビーズのそれぞれは統計学的に大部分の単一アナライト分子と結びついており、デジタル分析を実施してもよい。図5A(中央)はAMB=0.6を示し、ここで有意な数の活性ビーズは一つ以上のアナライト分子と結びついており、アナログ分析またはデジタル分析を実施してもよい。デジタル分析を実施する場合、ビーズあたりの多数のアナライト分子は、ポアソン分布の分析を使用することによって説明し得る。
【0070】
図5A(右)はAMB=3を示し、ここで実質的にすべてのビーズが一つ以上のアナライト分子と結びついている。この場合、上述のように、活性ビーズの平均蛍光強度の測定によって、かつ、単一のアナライト分子(例えば酵素)によって生成された平均蛍光強度の情報から、ビーズあたりのアナライト分子の平均数を定量化してもよい。図5B〜Dは、おおよそのAMBが(D)0.1、(E)0.6および(F)3.0のとき、個々のウェル中の単一化したビーズの、本明細書に記載されているようなアッセイを使用して作成された、蛍光画像を示す。
【0071】
いったん、流体試料中のアナライト分子濃度の度合いとAMBとが関連付けられる校正曲線が展開されると、その校正曲線を使用して、試験試料(例えば未知試料)中のアナライト分子濃度の度合いを決定してもよい。校正試料に対して実施されたやり方と類似のやり方(例えば、複数のビーズに対してアナライト分子を固定化すること、および複数の反応槽に複数のビーズの少なくとも一部を空間的に分離することを含む)でアッセイを実施してもよい。複数の反応槽に複数のビーズを空間的に分離することに続いて、複数の反応槽の少なくとも一部を、特定の態様においては複数回、インタロゲートしてもよい。
【0072】
例えば、少なくとも約1回、少なくとも約2回、少なくとも約3回、少なくとも約4回、少なくとも約5回、少なくとも約6回、少なくとも約7回、少なくとも約8回、少なくとも約9回、少なくとも約10回、またはそれ以上インタロゲートを実施してもよく、該インタロゲートは、例えば、約1秒、約2秒、約5秒、約10秒、約20秒、約30秒、約40秒、約50秒、約1分、またはそれ以上の時間で隔てられている。それぞれのインタロゲートによって、一セットのデータが作成されてもよい。少なくとも一つのアナライト分子と結びついたビーズのパーセンテージ(例えば活性ビーズのパーセンテージ)(または、例えば、ビーズを採用しない態様においては活性区画のパーセンテージ)を決定するためにデータを分析してもよい。
【0073】
いくつかの態様において、活性ビーズ(または区画)のパーセンテージが約80%未満、約70%未満、約60%未満、約50%未満、約45%未満、約40%未満、約35%未満、約30%未満、約25%未満、または約20%未満である場合、流体試料中のアナライト分子または粒子の濃度の度合いは、少なくとも一つのアナライト分子または粒子を含むと決定された区画の数/パーセンテージに少なくとも一部基づいてもよい。すなわち、データの少なくとも一セットは、本明細書に記載されているように、デジタル分析の方法(ポアソン分布の調整による調整をさらに含んでもよい)を使用して分析してもよい。
【0074】
例えば、AMBは本明細書に記載されているように(例えばポアソン分布の調整を使用して)決定してもよく、濃度はAMBと校正曲線との比較によって決定してもよい。いくつかの場合において、使用するデータのセットは、(例えば酵素基質が検出可能な実体に変換されるのに充分な時間を確保するため)時間的により遅れて収集したデータセットでもよい。流体試料中のアナライト分子濃度の度合いは、測定されたパラメータと、(例えば少なくとも一つの校正係数の決定によって少なくとも一部形成された)校正曲線との比較に少なくとも一部基づいてもよい。
【0075】
他の態様において、例えば、活性ビーズのパーセンテージが比較的高い場合(例えば約30%を超え、約35%を超え、約40%を超え、約45%を超え、約50%を超え、約60%を超え、約70%を超え、約80%を超え、またはそれ以上)、流体試料中のアナライト分子または粒子の濃度の度合いは、複数のアナライト分子または粒子の存在を示す少なくとも一つの信号の強度レベルの度合いに少なくとも一部基づいてもよい。すなわち、そのデータは、本明細書に記載されているように、アナログ分析方法の一つを使用して分析してもよい。例えば、方程式7または方程式8を使用して試料に対して、AMBを決定してもよい。
【0076】
AMBは、流体試料中のアナライト分子濃度の度合いを決定するために、校正曲線と比較してもよい。いくつかの場合において、(例えば本明細書に記載されているように、基質の減損、光退色などに関連した困難を制限するため)使用したデータのセットは時間的により早く収集したデータセットであってもよい。流体試料中のアナライト分子濃度の度合いは、測定されたパラメータと、(例えば少なくとも一つの校正係数の決定によって少なくとも一部形成された)校正曲線との比較に少なくとも一部基づいてもよい。
【0077】
さらに他の態様において、例えば、活性ビーズのパーセンテージが約30%と約80%との間、または約40%と約70%との間、または約60%と約80%との間、または約65%と約75%との間、または約30%と約50%との間、または約35%と約45%との間、または40%付近であってもよい濃度の中間範囲では、流体試料中のアナライト分子または粒子の濃度の度合いは、デジタル分析方法によって決定されるように、およびアナログ分析方法によって決定されるように、アナライト分子または粒子の濃度の度合いの平均に基づいてもよい。すなわち、データの少なくとも一つのセットは、本明細書に記載されているように、デジタル分析方法および/またはアナログ分析方法を使用して分析してもよい。流体試料中のアナライト分子濃度の度合いを決定するために、(デジタルおよび/またはアナログの分析方法、および/または二者の平均から)AMBを決定し、そのAMBを校正曲線と比較してもよい。
【0078】
いくつかの態様において、アナライト分子の存在/濃度を示す信号の決定に加えて、少なくとも一つのバックグラウンド信号を決定してもよい。いくつかの場合において、データのセットからAMBを算出する前に、分析されたデータセットから、バックグラウンドのデータセットを差し引いてもよい。試験試料(例えば複数のビーズ上に固定化されていてもよいアナライト分子)を区画に空間的に分離する前に、および/または、信号を発現させるために複数の酵素基質(または他の前駆標識剤)に暴露させる前であるが空間的な分離の後に、区画のアレイをアドレスすることによってバックグラウンドのデータセットを収集してもよい。
【0079】
いくつかの態様において、アナライト捕捉用の複数の捕捉物に加えて、複数の対照物も提供および/または採用してもよい。対照物は、これに限定するものではないが、後述するように、複数の区画の配向(orientation)の同定(例えば複数の区画が反応部位や反応槽などのアレイとして形成される場合)アッセイの品質の決定を助けること、および/または、検出システム(例えば光学インタロゲートシステム)の校正を助けることを含む、さまざまな目的に有用であり得る。一つ以上のタイプの対照物(例えば対照物の第一のタイプはアッセイの品質を決定し、対照物の第二のタイプは区画マーカーとして作動する)が、アッセイのフォーマット(format)に存在してもよいこと、または単一のタイプの対照物が前述の機能の一つ以上を有してもよいことは理解されるはずである。
【0080】
いくつかの場合において、アレイ上の複数の区画(例えば反応槽や部位など)の配向を同定するために、対照物を使用してもよい(例えばアレイ用の区画マーカーとして機能する)。例えば、対照物は、アレイ上にランダムにまたは特異的に分布していてもよく、アレイの配向/位置を決定するための一つまたは二つ以上の参照区画を提供してもよい。かかる特徴は、アレイの一部からの多数の画像を異なる時間間隔で比較するとき、有用であり得る。すなわち、画像を登録するのに、アレイにおける対照物の位置を使用してもよい。いくつかの場合において、重複する小さな領域からなる複数の画像をより大きな画像を形成するために組み合わせる態様において、参照区画を提供するのに、対照物を使用してもよい。
【0081】
アッセイに対照物が存在することによって、アッセイの品質に関する情報が提供されてもよい。例えば、酵素成分を含む対照物は区画に含まれていることがわかっているが、標識剤(例えば酵素成分を含む対照物を前駆標識剤に暴露することによって存在し得る生成物)が存在しない場合、これによって、アッセイのある側面が適切に機能していないかもしれないという示唆が与えられる。例えば、試薬の質が落ちているかもしれない(例えば、前駆標識剤の濃度が低過ぎる、前駆標識剤の分解など)、および/または、おそらくすべての区画が前駆標識剤に暴露されていなかった、などである。
【0082】
いくつかの態様において、検出システムを校正するために、対照物を使用してもよい。例えば、対照物は、光学検出システムを校正するために使用し得る光学信号を出力してもよい。いくつかの態様において、対照物は、検出システム性能に対する品質管理チェックとして作動できる特定の特性(例えば、蛍光、色、吸光度など)で特徴付けられ、ドープ(dope)されることができる。
【0083】
いくつかの場合において、システムを標準化または正常化して、試験に使用されるアレイの異なる部分間および/または二つの異なるアレイ間で、時間の経過とともになど(例えば、検出システム、アレイ、試薬など)、異なるアッセイにおける異なるシステム成分の、性能および/または特性の変動を説明するために、対照物を使用してもよい。例えば、実験装置、パラメータおよび/または変化によって、異なる時点で単一のアレイから生成された信号(例えば蛍光信号)の強度、または同じもしくは異なる時点で少なくとも二つのアレイ間の変化がもたらされ得る。さらに、単一のアレイにおいて、アレイの異なる部分は異なるバックグラウンド信号を生成し得る。
【0084】
かかる変動は、アレイ間、アレイの部分間または多重時間の校正信号における変化(例えば平均ビーズ信号の決定)に繋がり得、それはいくつかの場合においては不正確な決定に繋がり得る。変動を引き起こすかもしれないパラメータの限定されない例として、標識剤の濃度、温度、焦点、検出光の強度、アレイ中の区画の深さおよび/または大きさなどが挙げられる。いくつかの態様において、かかる変動の一部または全部の効果を説明するために、複数の対照物を利用してもよい。いくつかの場合において、かかる対照物は、本質的にアナライト分子または粒子と結びつかない。特定の態様において、約20%、約10%、約5%、約1%など未満の対照物は、アナライト分子または粒子と結びついている。
【0085】
対照物は、捕捉物と区別できるものであってもよく(例えばそれぞれが区別できる信号を生成してもよく)、対照物と結びついたアナライト分子がアナライト分子の濃度決定の要因とならないように、システムが設定されていてもよい。異なるアレイ間のインタロゲート値または単一アレイの領域におけるインタロゲート値を正常化するために、対照物からの信号を使用してもよい。例えば、対照物からの信号は、アレイ間でおよび/または単一アレイについておおよそ等しいはずであるため、対照物の信号を適切な値に標準化し、非対照物(例えば、アナライト分子と結びついた捕捉物)の信号をそれに基づいて調整してもよい。
【0086】
具体例として、いくつかの場合において、活性10%に等しいかまたはそれ未満の対照物の群をアレイに提供してもよい。捕捉物からの
【数26】
は、デジタルAMB(例えば方程式4)とアナログAMB(例えば方程式8)とを等しくさせることによって決定してもよい。流体試料中のアナライト分子が低濃度のとき、アナログ領域における活性対照物のパーセンテージおよび流体試料のAMBanalogは、対照物を使用して決定された
【数27】
を使用して算出してもよい(例えば、流体試料からのアナライト分子と結びついた捕捉物を使用して算出した
【数28】
は使用しない)。この値は対照物(例えば、他の決定および/または対照物のインタロゲートにより校正されてもよい)を使用して決定されるため、
【数29】
におけるアレイからアレイの、アレイ内の、および/または、日々の変動によって引き起こされるAMBanalogの任意の不正確さが、このやり方によって低下され得る。
【0087】
対照物は、区画のアッセイアレイの至るところに分散配置されていてもよく、またはアッセイ捕捉物から隔離された一連の区画に分離されていてもよい。例えば、分離された一部の捕捉物は、捕捉物を含む領域から隔離されたアッセイ部位上の領域に提供されてもよく、これら部位にかかる
【数30】
の値は、アレイのこの特定の部分またはアレイのこのセットにかかる方程式8に特異的な分母を提供する。かかる場合において、対照物が捕捉物から空間的に隔離されているため、捕捉ビーズが対照物と区別できることは必ずしも必要ではない。
【0088】
いくつかの態様において、高解像度を有する画像カメラの使用を通じて、増大したダイナミックレンジが生成または強化されてもよい。例えば、前記の測定(例えば表2に与えられる)は、12ビットのカメラを使用して得られた。カメラの電子解像度の「n」ビットの特性評価は、2nで量子化されたアナログ強度ユニットが決定できることを示す。よって、12ビットのカメラでは、4096の離散強度の増分が区別し得る。このように、3.6logのオーダーのダイナミックレンジは一般に達成できるものであり、本明細書に記載されているように、カメラの解像度が向上することによって、デジタル分析レジームで正確に測定され得る濃度のダイナミックレンジが拡張され得る。
【0089】
通常、本発明の実施は、任意の特定のダイナミックレンジまたはカメラのタイプに特に限定されない。前記で考察した技術に代わって、または加えて、ダイナミックレンジを拡張またはさらに拡張するために、他の方法/システムを採用してもよい。例えば、より大量のビーズ(または他の捕捉物)の検出によって、ダイナミックレンジを拡張してもよい。結果が前記表に一覧にされた例において、アナライト分子を含む試料に暴露されたビーズの約13%が検出された。しかしながら、他の態様において、インタロゲートされた反応槽(例えば区画)の数を増やすことによって、および/または、視野がより大きいカメラを使用することによって、100%の試料に暴露されたビーズが検出できた。
【0090】
ダイナミックレンジのデジタル計数の限界において、数が増加したビーズを検出することによって、少なくとも1以上のlogの差で、ダイナミックレンジを拡張できた(例えば、約4.5logから約5.5logまでで、全範囲を約7.5logまで拡大する)。より多くのビーズを使用し、デジタル読み出し分析の方法/システムの検出限界(LOD)を下げることによっても、ダイナミックレンジを拡張できる。より多くの事象を計数することができるので、例えばビーズの数を増加することによって、ポアソンノイズの極限効果を低減させてもよい。
【0091】
特定の態様において、本発明にかかる一つまたは二つ以上の前記のダイナミックレンジを拡張する技術を用いて、試料あたりの単一アナライト分子を検出することが可能であり得る。ダイナミックレンジは、より高い濃度の、アナログ分析範囲においても拡張することができる。例えば、カメラの電子解像度を増大すること(例えば24ビットの光電子倍増管によるラインスキャンまたは最新式の16および18ビットの画像カメラの使用)によって、アナログ測定のダイナミックレンジを拡張してもよい。
【0092】
後述するように、検出可能な信号の生成を容易にするために前駆標識剤を使用する態様(例えば酵素標識されたアナライト分子またはアナライト分子に付着した結合リガンドを使用するアッセイ)において、検出され得る標識剤分子(例えば変換された酵素の基質分子)が少なくなるにつれ、アナライト分子が複数の区画に分離され、検出する標識剤に変換される前駆標識剤に暴露された後、より短い時間間隔(すなわちより短いインキュベーション時間の後)での画像の取得もまた、ダイナミックレンジを拡張することが可能であり得る。例えば、結果が表2に一覧になっている例において、もっとも低いアナログ測定は1041アナログカウントであった(表2参照)。
【0093】
使用した12ビットのカメラは16カウントから65536カウントまでのダイナミックレンジを有する。いくつかの態様において、インキュベート時間を短縮し、カウント下限での測定を取得することによって、ダイナミックレンジを拡張してもよく(例えば、もっとも低いアナログ測定は潜在的に(例えば1041カウントの代わりに)16カウントでなされることができる)、したがって、アナログの全ダイナミックレンジは3.6logとなり、これはデジタル+アナログの全ダイナミックレンジ約8.1logと同じである。同様な効果は、画像の取得時間(例えば、光がCCDチップにあたるまでの間、シャッターが開いている)を短縮することによっても達成できる。
【0094】
また、その時間は、デジタルからアナログへの切り替え点で、可能なアナログ反応のうちもっとも低いものが得られるように最小化することができ、かつダイナミックレンジを最大化することができる。特定の態様において、これらの変化によって、12ビットのカメラに対して9log超過のダイナミックレンジが潜在的にもたらされ得る。例えば、12ビットのカメラにおいて、ここに記載のデジタルおよびアナログ測定に対し前記変化を実施することによって、(5.5logデジタル+3.6logアナログ)9.1logの全ダイナミックレンジを達成し得る。16、18および24ビットの画像システムを使用することによって、そのダイナミックレンジはそれぞれ、10.3、10.9および12.7logに拡張できた。
【0095】
いくつかの場合において、本明細書に記載のデジタルからアナログへの変換は、基質の減損および/または光退色を説明するための技術および分析を含んでもよい。アッセイが、アナライト分子(またはアナライト分子と結びついた結合リガンド)に暴露されることにより前駆標識剤(例えば酵素基質)から形成される標識剤(例えば蛍光性の酵素産物)を検出することを含む態様において、基質の減損が発生してもよい。例えば、反応槽が一以上のアナライト分子(または結合リガンド)を含む態様において、基質の減損を説明するのに有利であり得る。例えば、ある実験において、おおよそ210万の基質分子が反応槽中、代謝回転に利用できることを考慮しなさい。
【0096】
この例において、酵素成分であるβ−ガラクトシダーゼは、100μMの基質濃度で186s−1の代謝回転速度を有する。(例えば反応槽中に存在する)ビーズあたりの酵素成分または分子(または結合リガンド)が一つしかない場合、酵素成分は、三分間の実験の時間を超えても、その活性の99%を保持する。他方、ビーズあたり(または、より高い濃度の試料では反応槽あたり)の酵素成分または分子が平均で50である場合、活性全体のおおよそ43%は、基質の減損により、実験の時間内に失われ得る。反応チャンバー活性の全体におけるこの損失は、酵素成分または分子を10含むチャンバーから期待されるだろう強度の値より少なくなっているという結果を招き得る。
【0097】
いくつかの態様において、アナログ測定の正確性に対する基質の減損の効果を軽減するために、さまざまな技術を採用してもよく、ここで考察される例のうち二つを挙げる。第一に、分析するデータセットを収集する時間を短縮してもよい。強度の値を算出するために、より長い時間(例えばt=0およびt=150秒)の代わりに、例えばt=0およびt=30秒での蛍光画像を使用してよい。より短時間で測定を実施することによって、減損される基質の量を減らしてもよく、かつ蛍光物質形成の線形速度を維持する助けになっていてもよい。さらに、多数回(例えばt=0、30、60、90、120、150秒で)に対して二回(例えばt=0およびt=30で)、蛍光産物を含む反応チャンバーを励起光に暴露することによって、光退色効果を減らしてもよい。表3は、典型的なアッセイ態様の基質の減損により、酵素活性が徐々に減少することを説明している。
【0098】
【表3】
【0099】
例えば、図6は、基質の減損を考慮し、ビーズを含む封をされたウェル中の酵素分子数に応じて、100μMのRPG溶液から、アッセイ測定の間にレゾルフィンに変換されたRPG量の理論曲線を示す。無制限の感度(例えばビット数に限定されない)を有するカメラを使用してアッセイを実施し、封をした直後に撮像を開始すると仮定すると、アッセイはAMB=50を超えておおよそ直線を保持し得る。具体的に図6は、ビーズ上の酵素数の関数として、150秒の実験の間に産生されたレゾルフィン分子数をプロットしたものを示し、ここで、モデル化の理論的制限は、(i)画像取得がt=0で始まり(封をしてすぐ)、いずれのRGPもレゾルフィンに変換される前である場合;および(ii)画像取得が封をした後t=45秒で始まる場合である。
【0100】
基質の減損の効果を軽減するために採用してもよい他の技術として、基質濃度を上昇することが挙げられる。前記の例における酵素/基質の対のKmは約62μMであった。酵素の代謝回転速度は、ミカエリス−メンテンの式によって明らかにされるように、基質濃度によって定義される。基質濃度がKmより大過剰であると、酵素の代謝回転速度はプラトーになり始めるだろう。例えば基質が約400μMのとき、酵素の代謝回転速度の平均は約707s−1であるのに対して、約200μMのときの代謝回転速度は約624s−1であり、約100μMのときの代謝回転の平均は約504s−1である。
【0101】
基質の濃度を約400μMから約200μMと半分に減らすことによって、代謝回転速度が約11%低下するという結果になるのに対して、基質の濃度を約200μMから約100μMに減らすことによって、代謝回転速度は約20%も低下するという結果になる。それ故に、基質の減損が、高い基質濃度を使用するアッセイ測定の間に起こる場合、この減損は、より低い基質濃度(例えばKmに近い)を使用するときに発生する消耗と比較して、酵素の代謝回転に対する効果がより小さいものであり得る。表4は、基質濃度が変わるときの消耗効果における変化の例を説明するものである。
【0102】
【表4】
【0103】
いくつかの態様において、生の蛍光強度に対する光退色効果を軽減するために、蛍光物質の光退色速度を決定してもよい。図7に示される例において、光退色速度は、検出される蛍光物質を含む溶液(10μMのレゾルフィン)を反応槽中に含むこと、および2000ミリ秒の暴露時間により15秒毎に蛍光減少を50分に亘り観測することによって決定した。データの指数関数適合によって、0.0013s−1の光退色速度kphが得られた(図7参照)。固有のkphは、アッセイシステム装置それぞれに使用される具体的な光学パラメータに対して決定でき、そして生の蛍光の強度に対する光退色効果のために収集したデータセットを調整するのに使用することができる。
【0104】
以下の項目は、本発明にかかる前述した分析方法/システムのさまざまな態様を実施するのに使用してもよい分析アッセイの方法/システム、アナライト分子、分析器のシステムなどのさまざまな側面に関連した、さらなる説明、例および手引きを提供する。追加情報として、2010年3月24日に出願された、Duffyらの、「Ultra-Sensitive Detection of Molecules or Particles using Beads or Other Capture Objects」と題された米国特許出願第12/731,130号;2011年3月1日に出願された、Duffyらの、「Ultra-Sensitive Detection of Molecules or Particles using Beads or Other Capture Objects」と題された国際特許出願第(未定)(代理人整理番号第Q0052.70011WO00);2007年2月16日に出願された、Waltらの、「Methods and arrays for target analyte detection and determination of target analyte concentration in solution」と題された米国特許出願第20070259448号;2007年2月16日に出願された、Waltらの、「Methods and arrays for detecting cells and cellular components in small defined volumes」と題された米国特許出願第20070259385号;2007年2月16日に出願された、Waltらの、「Methods and arrays for target analyte detection and determination of reaction components that affect a reaction」と題された米国特許出願第20070259381号;2010年3月24日に出願された、Duffyらの、「Ultra-Sensitive Detection of Molecules using Dual Detection Methods」と題された米国特許出願第12/731,135(代理人整理番号第Q0052.70012US01);2011年3月1日に出願された、Duffyらの、「Ultra-Sensitive Detection of Molecules using Dual Detection Methods」と題された国際特許出願第(未定)(代理人整理番号第Q0052.70012WO00);2007年8月20日に出願された、Waltらの、「Methods for Determining The Concentration of an Analyte In Solution」と題された国際特許出願第PCT/US07/019184号;および2009年9月9日に出願された、Duffyらの、「Ultra-Sensitive Detection of Molecules or Enzymes」と題された国際特許出願第PCT/US09/005428号からも見出してもよく、参照により本明細書に組み込まれる。
【0105】
区画のアレイにアナライト分子を分離するための方法およびシステム
本発明のアッセイ方法およびシステムは、特定の態様において検出/定量化を容易にするために、それぞれの区画がゼロまたは一つまたは二つ以上のいずれかのアナライト分子を含む(comprise)/含む(contain)ように、複数の区画にアナライト分子を空間的に分離する工程を採用する。さらに、いくつかの態様においては、それぞれの区画が単独にアドレスされうるようなやり方で、区画を含む物品が設定されている。複数の区画に複数のアナライト分子を空間的に分離するための典型的な態様が本明細書に記載されているが、他の多くの方法を潜在的に採用してもよい。
【0106】
いくつかの態様において、流体試料中のアナライト分子濃度の度合いを決定するための独創的な方法は、アナライト分子の少なくとも一つのタイプに親和性を有する結合表面に対して固定化されたアナライト分子を検出することを含む。特定の態様において、結合表面は、基板(例えば、プレート、ディッシュ、チップ、光ファイバーの一端など)上の複数の区画(例えば複数のウェル/反応槽)の一つを形成しているか(例えば基板上のウェル/反応槽の表面)、または該区画の一つの中に含まれている(例えば、ウェル内に含まれた、ビーズなどの捕捉物の表面)。
【0107】
少なくとも一部の区画がアドレスされてもよく、そして、少なくとも一つのアナライト分子または粒子を含む区画の数/パーセンテージを示す度合いをもたらしてもよい。いくつかの場合において、数/パーセンテージに基づき、流体試料中のアナライト分子または粒子の濃度の度合いを決定してもよい。以上詳述してきたように、流体試料中のアナライト分子または粒子の濃度の度合いは、ポアソン分布の調整を任意に採用するデジタル分析の方法/システムにより決定してもよく、および/または、測定された信号の強度に少なくとも一部基づいてもよい。
【0108】
前述のように、アナライト分子が複数の捕捉物に対して固定化されている態様において、アドレスされた区画は、少なくとも一つの捕捉物(例えば、任意のアナライト分子と結びついているか、または結びついていないかのいずれか)を含む区画であってもよく、よって、これらの態様において、少なくとも一つのアナライト分子を含む区画のパーセンテージが、少なくとも一つのアナライト分子と結びついた捕捉物のパーセンテージ(例えば「活性」ビーズのパーセンテージ)でもある。したがって、いくつかの態様において、流体試料中のアナライト分子または粒子の濃度の度合いを決定するための方法は、それぞれがアナライト分子または粒子の少なくとも一つのタイプに対して親和性を有する結合表面を含む複数の捕捉物(例えばビーズ)(例えば複数の捕捉成分)を、アナライト分子または粒子の少なくとも一つのタイプを含むかまたは含むことが疑われる溶液に暴露することを含む。ここで捕捉物の少なくともいくつかは、少なくとも一つのアナライト分子または粒子と結びつく。
【0109】
少なくとも一部の捕捉物(例えばビーズ)は複数の区画(例えば表面上の反応槽)に空間的に分離されていてもよい。複数の区画(例えば、いくつかの場合において、少なくとも一つの捕捉物を含む区画)の少なくとも一部をアドレスし、少なくとも一つのアナライト分子または粒子を含む区画のパーセンテージ(例えば、いくつかの場合において、少なくとも一つのアナライト分子と結びついた捕捉物のパーセンテージ)を示す度合いを決定してもよい。前述のように、いくつかの場合において、流体試料中のアナライト分子または粒子の濃度の度合いは、少なくとも一つのアナライト分子または粒子を含む捕捉物の数/パーセンテージに少なくとも一部基づき、および/または、複数のアナライト分子または粒子のパーセンテージを示す信号の測定された強度に少なくとも一部基づき、決定されたパーセンテージに基づいて決定されてもよい。
【0110】
いくつかの場合において、流体試料中のアナライト分子または粒子の濃度の度合いを決定するためのシステムは、さらに、複数の区画(例えば反応槽)を含むアッセイ基板(例えば、プレート、ディッシュ、スライド、チップ、光ファイバーの表面など)を含み、該区画それぞれは、かかる区画の中に結合表面を形成する(例えば複数の捕捉成分)か、またはかかる区画を含む(例えば複数の捕捉成分を含むビーズを含む)。ここで、少なくとも一つの結合表面は、該結合表面上に固定化された少なくとも一つのアナライト分子または粒子を含む。
システムはまた、複数の区画の少なくとも一部をアドレスするよう設定された少なくとも一つの検出器も含んでもよい。システムは、アドレスされたそれぞれの区画にアナライト分子または粒子が存在するか否かを示す少なくとも一つの信号を生成することができる。システムは、それぞれの区画でアナライト分子または粒子の数に伴い変化する強度レベルを測定できる能力を有する。
【0111】
さらに、システムは、少なくとも一つのアナライト分子または粒子を含むアドレスされた区画の数/パーセンテージを少なくとも一つの信号から決定するよう設定された少なくとも一つの信号処理器を含んでもよい。信号処理器は、前述の技術を使用して、数/パーセンテージに基づき、少なくとも一つのアナライト分子もしくは粒子を含む区画の数に少なくとも一部基づいた流体試料中のアナライト分子もしくは粒子の濃度の度合いを決定する(デジタル/バイナリ分析)、および/または、複数のアナライト分子または粒子の存在を示す少なくとも一つの信号の強度レベルに少なくとも一部基づいた流体試料中のアナライト分子または粒子の濃度の度合いを決定するよう、さらに設定されている。
【0112】
本明細書に提供されているアッセイ方法およびシステムは、本明細書に記載されているような、さまざまな異なる成分、工程および側面を採用してもよい。例えば、方法はさらに、少なくとも一つのバックグラウンド信号決定を決定すること(例えば他の決定からバックグラウンド信号を差し引くことをさらに含む)、洗浄工程などを含む。いくつかの場合において、アッセイまたはシステムは、本明細書に記載されているように、少なくとも一つの結合リガンドの使用を含んでもよい。いくつかの場合において、流体試料中のアナライト分子濃度の度合いは、測定されたパラメータと校正曲線との比較に少なくとも一部基づく。ときには、校正曲線は、本明細書に記載されているように、少なくとも一つの校正係数の決定によって少なくとも一部形成されている。
【0113】
いくつかの態様において、複数のアナライト分子は、複数の区画に空間的に分離されてもよい。ここで該区画は複数の反応槽を含む。少なくともいくつかの反応槽が少なくとも一つのアナライト分子を含み、かつ、統計学的に有意な割合の反応槽がアナライト分子を含まないように、アナライト分子は複数の反応槽にわたって分配されていてもよい。少なくとも一つのアナライト分子を含む(またはアナライト分子を含まない)統計学的に有意な割合の反応槽は、典型的には、特定の検出システムを使用して再現性良く検出かつ定量化することができるだろうし、典型的には、アナライト分子を一つも含まない試料のアッセイを実施する際に決定され、アドレスされた区画の総数で割ったバックグラウンドノイズ(例えば非特異的な結合)を上回っているだろう。本発明の態様において、本明細書中で使用される「統計学的に有意な割合」は、方程式10に従い評価してもよい。
【数31】
【0114】
ここでnは、選択した事象のカテゴリーにおいて、決定された事象の数である。すなわち、事象の数であるnが事象の数の平方根に三を乗じたものより大きいとき、統計学的に有意な割合が生じる。例えば、アナライト分子または粒子を含む反応槽の統計学的に有意な割合を決定するためには、nがアナライト分子を含む反応槽の数である。他の例として、単一のアナライト分子と結びついた捕捉物の統計学的に有意な割合を決定するためには、nが単一のアナライト分子と結びついた捕捉物の数である。
【0115】
いくつかの態様において、区画(または捕捉物)の総数に対する、少なくとも一つのアナライト分子(または、アナライト分子に対する区画の割合が、統計学的に、それぞれの区画に含まれたアナライト分子が実質的にゼロまたはたった一つとなるだろう場合において、単一のアナライト分子)を含む統計学的に有意な割合の区画は、約1:2未満、約1:3未満、約1:4未満、約2:5未満、約1:5未満、約1:10未満、約1:20未満、約1:100未満、約1:200未満、または約1:500未満である。したがって、かかる態様において、区画の総数に対する、アナライト分子を一つも含まない区画(または捕捉物)の割合は、少なくとも約1:100、約1:50、約1:20、約1:10、約1:5、約1:4、約1:3、約1:2、約1:1、約2:1、約3:1、約4:1、約5:1、約10:1、約20:1、約50:1、約100:1、またはそれ以上である。
【0116】
既に述べたように、いくつかの態様において、少なくとも一つのアナライト分子を含む区画のパーセンテージは、区画(または捕捉物)の総数の約50%未満、約40%未満、約30%未満、約20%未満、約10%未満、約5%未満、約2%未満、約1%未満、約0.5%未満、約0.01%未満、またはそれ以下である。いくつかの態様において、アナライト分子(またはアナライト分子と結びついた捕捉物)を一つも含まない区画のパーセンテージは、区画(または捕捉物)の総数の、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、またはそれ以上である。
【0117】
複数の反応槽に複数のアナライト分子または粒子を分配するための方法または技術は、2010年3月24日に出願された、Duffyらの、「Ultra-Sensitive Detection of Molecules or Particles using Beads or Other Capture Objects」と題された米国特許出願第12/731,130号(代理人整理番号Q0052.70011US01);2011年3月1日に出願された、Duffyらの、「Ultra-Sensitive Detection of Molecules or Particles using Beads or Other Capture Objects」と題された国際特許出願第(未定)(代理人整理番号Q0052.70011WO00);2007年2月16日に出願された、Waltらの、「Methods and arrays for target analyte detection and determination of target analyte concentration in solution」と題された米国特許出願第20070259448号;2007年2月16日に出願された、Waltらの、「Methods and arrays for detecting cells and cellular components in small defined volumes」と題された米国特許出願第20070259385号;2007年2月16日に出願された、Waltらの、「Methods and arrays for target analyte detection and determination of reaction components that affect a reaction」と題された米国特許出願第20070259381号;2007年8月20日に出願された、Waltらの、「Methods for Determining The Concentration of an Analyte In Solution」と題された国際特許出願第PCT/US07/019184号;および2009年9月9日に出願された、Duffyらの、「Ultra-Sensitive Detection of Molecules or Enzymes」と題された国際特許出願第PCT/US09/005428号に記載されており、これらは参照によって本明細書中に組み込まれる。
【0118】
いくつかの態様において、アッセイ方法は、複数の捕捉物の使用を含んでもよい。複数の捕捉物(例えばビーズ)は、アナライト分子または粒子を捕捉するよう設定してもよい。いくつかの場合において、複数の捕捉物は複数のビーズを含む。ビーズは磁性があってもなくてもよい。少なくとも一部の捕捉物は、複数の区画(例えば反応槽/ウェル)に空間的に分離されていてもよい。複数のアナライト分子は、捕捉物に対して複数のアナライト分子と結びつく前、同時または後に、複数のタイプの結合リガンドに暴露されてもよい。
【0119】
かかる捕捉成分を使用するアッセイ方法の他のさまざまな側面は、2010年3月24日に出願された、Duffyらの、「Ultra-Sensitive Detection of Molecules or Particles using Beads or Other Capture Objects」と題された、自己の米国特許出願第12/731,130号;および2011年3月1日に出願された、Duffyらの、「Ultra-Sensitive Detection of Molecules or Particles using Beads or Other Capture Objects」と題された、自己の国際特許出願第(未定)(代理人整理番号Q0052.70011WO00)に記載されている。特に、本明細書中に記載された方法およびシステムは、参照した前記出願に記載された単一の分子方法およびシステムと組み合わせ、そしてその文意内において使用してもよい。いくつかの場合において、捕捉物はそれ自体が検出可能であってもよく(例えば蛍光放射)、ビーズの検出がアナライト分子の検出を妨げないかまたは実質的に妨げないように、ビーズを選択してもよい。
【0120】
いくつかの態様において、アナライト分子は直接的に検出されても、間接的に検出されてもよい。直接的に検出される場合、アナライト分子は、直接インタロゲートおよび/または検出され得る分子またはその一部(例えば蛍光を放つ実体)を含んでもよい。間接的に検出される場合、アナライト分子の存在を決定するために追加成分を使用する。いくつかの場合において、アナライト分子は前駆標識剤(例えば酵素基質)を構成してもよく、該酵素基質は、アナライト分子に暴露されることによって検出可能な生成物(例えば蛍光分子)に変換されてもよい。いくつかの場合において、少なくともいくつかのアナライト分子を複数の区画に空間的に分離する前、同時および/または後に、複数のアナライト分子を、少なくとも一つの追加の反応成分に暴露してもよい。
【0121】
いくつかの場合において、少なくともいくつかが少なくとも一つのアナライト分子と結びついた複数の捕捉物を、複数の結合リガンドに暴露してもよい。以下でさらに考察するように、特定の態様において、結合リガンドは、直接的に検出されるように適合してもよく(例えば結合リガンドが検出可能な分子もしくはその一部を含む)、または間接的に検出されるように適合してもよい(例えば前駆標識剤を標識剤に変換することができる成分を含む)。結合の一つ以上のタイプとして、任意の所定アッセイ方法において、例えば結合リガンドの第一のタイプおよび結合リガンドの第二のタイプを採用してもよい。一例として、結合リガンドの第一のタイプは、アナライト分子の第一のタイプと結びつくことができ、結合リガンドの第二のタイプは、第一の結合リガンドと結びつくことができる。他の例として、本願明細書に記載されているように、結合リガンドの第一のタイプと結合リガンドの第二のタイプとはともに、単一のアナライト分子の同じまたは異なるエピトープと結びついてもよい。
【0122】
特定の結合リガンドは、直接的または間接的な検出を容易にすることができる実体を含むことができる。成分が測定可能な特性(例えば、蛍光放射、色など)を含む態様において、成分を、直接的に検出されるように適合してもよい。例えば成分は、前駆標識剤を標識剤(例えばアッセイで検出される薬剤)に変換することによって、間接的な検出を容易にし得る。「前駆標識剤」は、好適な変換剤(例えば酵素成分が結合リガンド中に含まれる)への暴露により、標識剤に変換されることができる任意の分子、粒子などである。「標識剤」は、検出される実体として働くことによって、選んだ検出技術を使用して検出を容易にする任意の分子、粒子などである。
【0123】
いくつかの態様において、少なくとも一つの結合リガンドは酵素成分を含む。いくつかの態様において、アナライト分子は酵素成分を含んでもよい。酵素成分は、前駆標識剤(例えば酵素基質)を標識剤(例えば検出可能な生成物)に変換してもよい。流体試料中のアナライト分子濃度の度合いはその後、標識剤を含む区画の数を決定すること(例えば、標識剤を含む区画の数を、アナライト分子を含む区画の数(または、捕捉物の総数に対する、少なくとも一つのアナライト分子と結びついた捕捉物の数)と関連付けることによって)に少なくとも一部基づいて、決定することができる。
【0124】
酵素または酵素成分の限定されない例として、西洋ワサビペルオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼおよびアルカリホスファターゼが挙げられる。検出のためのシステムまたは方法の他の限定されない例として、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、ローリングサークル増幅(RCA)、ライゲーション、ループを介した等温増幅(Loop-Mediated Isothermal Amplification)(LAMP)などの、核酸前駆体が多数のコピーに複製されるか、または核酸前駆体が容易に検出できる核酸に変換される態様が挙げられる。Vadim Demidovらの「DNA Amplification:Current Technologies and Application」(2004年)に記載されているように、かかるシステムおよび方法は当業者に公知であろう。
【0125】
図8に示されるように、前駆標識剤の使用を含むアッセイ方法の例として、複数の区画を含む基板100が提供される。ここで該区画は反応槽を含む。反応槽101(例えば区画)において、アナライト分子102はビーズ103(例えば捕捉物)に対して固定化されている。結合リガンド104はアナライト分子102と結びついている。結合リガンド104は酵素成分を含む(図示なし)。前駆標識剤106は、(酵素成分に暴露されると)標識剤108に変換される。標識剤108は、本明細書に記載されている方法を使用して検出される。
【0126】
対照的に、反応槽111は、ビーズ110に対して固定化されたアナライト分子112を含む。この反応槽において、アナライト分子112は、酵素成分を含む結合リガンドと結びついていない。したがって、前駆標識剤114は、反応槽内で標識剤に変換されない。よって、前駆標識剤が標識剤に変換された反応槽101と比較すると、この反応槽は異なる信号を与えることになる。いくつかの場合において、アナライト分子と結びついていないビーズを含む反応槽であってもよく、例えば反応槽121はビーズ116を含む。さらに、反応槽のいくつかは任意のビーズを含まなくてもよく、例えば反応槽123である。反応槽121および123は、標識剤が存在しないだろうから、反応槽101と比較して異なる信号を与え得る。しかしながら、反応槽121および123は、前駆標識剤117を含んでいてもよい。一つ以上の前駆標識剤は任意の所定の反応槽中に存在していてもよい。
【0127】
特定の態様において、可溶化したかまたは懸濁した前駆標識剤を採用してもよく、ここで前駆標識剤は、液体に不溶の標識剤および/または区画内(例えば標識剤が形成される反応槽内)/近傍に固定化される標識剤に変換される。かかる前駆標識剤および標識剤ならびにそれらの使用は、2008年9月23日に出願された、Duffyらの、「High Sensitivity Determination of the Concentration of Analyte molecules in a Fluid Sample」と題された、自己の米国特許出願第12/236,484号に記載されており、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0128】
いくつかの態様において、捕捉成分および/または捕捉物からアナライト分子が解離するのを止めるかもしくは抑える、および/または、アナライト分子および/または他の結合リガンドから結合リガンドが解離するのを止めるかもしくは抑える技術を使用してもよい。当業者には公知であろうが、選択したアナライト分子、捕捉成分および/または結合リガンドの間(例えば抗体と抗原との間)の、いくつかの可逆的な親和性相互作用は、熱力学に支配される。
【0129】
したがって、あるアッセイ方法の最中のある時点で、アナライト分子および捕捉成分および/または結合リガンドの間、ならびに/あるいは結合リガンドおよびアナライト分子および/または他の結合リガンドの間で、ある解離が発生してもよい。これにより、実際に存在するアナライト分子(例えば免疫複合体)の数より検出されるアナライト分子の数の方が減少するという結果になり得る。成分の特定の対(例えば抗体−抗原の対)の解離定数、洗浄および/または流体への暴露、暴露とインタロゲートとの時間間隔、および/または他の要因によって、解離事象がアナライト分子および/または粒子の決定を変える程度に影響が及ぼされてもよい。したがって、特定の技術を使用して解離過程の効果を軽減してもよい。
【0130】
第一の態様において、(例えば、捕捉成分を介して捕捉物と結びついた、および/または、少なくとも一つの結合リガンドと結びついた)複数のアナライト分子を複数の区画に空間的に分離することに続き、アッセイの区画(例えばウェル)から流体を除去することによって解離を抑えるかまたは減らしてもよい。すなわち、区画に取り囲まれているかまたは区画中に実質的に含まれる、全部または実質的に全部の流体を除去してもよい。例えば、空気および/または真空乾燥によって流体を除去してもよい。流体の除去によって、解離が抑えられるかまたは減らされてもよい。区画をインタロゲートする直前に、複合体への水分補給により検出器を使用するインタロゲートを促進するために、区画に流体を加えてもよい。
【0131】
第二の態様において、アナライト分子を捕捉成分に架橋、および/または、結合リガンドをアナライト分子および/または第二の結合リガンドに架橋することによって、解離を抑えるかまたは減らしてもよい。例えば、抗原を含むアナライト分子は結合リガンドおよび/または抗体を含む捕捉成分と架橋されていてもよい。採用してもよい架橋の方法および技術は当業者に公知である。
【0132】
いくつかの態様において、複数の区画をアドレスしてもよく、および/または、着目する複数の捕捉物および/または化学種/分子/粒子を実質的に同時に検出してもよい。本文中で使用されるときの「実質的に同時に」とは、期間が重複しない場合に連続してアドレス/検出されるのとは対照的に、着目する少なくとも二つの区画/捕捉物/化学種/分子/粒子がアドレス/検出される間の期間が重複するように、おおよそ同じ時に、着目する区画/捕捉物/化学種/分子/粒子がアドレス/検出されることを言う。光学技術(例えばCCD検出器)を含むさまざまな技術を使用することによって、同時のアドレス/検出を達成することができる。いくつかの態様に従い、捕捉物/化学種/分子/粒子を、複数の個別の溶解できる区画に空間的に分離することは、多数の区画が実質的に同時にアドレス可能となることによって、実質的な同時検出を促進する。
【0133】
例えば、検出の間、複数の、個別の別々に溶解できる区画に、他の捕捉物に対して空間的に分離されている捕捉物に個々の化学種/分子/粒子が結びついている態様について、複数の、個別の別々に溶解できる区画を実質的にアドレスすることで、個々の捕捉物ひいては個々の化学種/分子/粒子(例えばアナライト分子)も溶解することが可能となる。例えば、特定の態様において、それぞれの反応槽がゼロかまたはたった一つの化学種/分子/粒子を含むように、複数の分子/粒子の個々の分子/粒子は複数の反応槽にわたって分配されている。いくつかの場合において、すべての化学種/分子/粒子のうち、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、少なくとも約99.5%が、検出の間、他の化学種/分子/粒子に対して空間的に隔離されている。
【0134】
約1秒未満、約500ミリ秒未満、約100ミリ秒未満、約50ミリ秒未満、約10ミリ秒未満、約5ミリ秒未満、約1ミリ秒未満、約500マイクロ秒未満、約100マイクロ秒未満、約50マイクロ秒未満、約10マイクロ秒未満、約1マイクロ秒未満、約0.5マイクロ秒未満、約0.1マイクロ秒未満、または約0.01マイクロ秒未満、約0.001マイクロ秒未満、またはそれ以下の時間内に実質的に同時に、複数の化学種/分子/粒子を検出してもよい。いくつかの態様において、約100マイクロ秒と約0.001マイクロ秒との間、約10マイクロ秒と約0.01マイクロ秒またはそれ以下との間の時間内に実質的に同時に、複数の化学種/分子/粒子を検出してもよい。
【0135】
いくつかの態様において、区画は光学的にインタロゲートされる。それらの光学的な特徴において変化を示す区画は、従来の光学縦列および光学検出システムによって同定されてもよい。検出された化学種(例えば蛍光を放つタイプの実体など)および有効な波長に応じて、区画の光学的インタロゲートのために、特定の波長用に設計された光学フィルターを採用してもよい。光学的インタロゲートを使用する態様において、システムは、一つ以上の光源および/または波長を調整するための複数のフィルターおよび/または光源の強度を含んでもよい。いくつかの態様において、複数の区画からの光学信号は、CCDカメラを使用して捕捉される。
【0136】
当業者には公知であろうが、画像を取り込むために使用しうるカメラ画像タイプの、他の限定されない例として、電荷注入装置(CID)、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)装置、科学計測用(scientific)CMOS装置、および時間遅延積分方式(time delay integration)(TDI)装置が挙げられる。カメラは商業的供給源から得てもよい。CIDは、CCDと同様に、ソリッドステート(solid state)二次元マルチピクセル画像装置であるが、画像の取り込み方と読み込み方との点で異なる。CCDの例としては、米国特許第3,521,244号および米国特許第4,016,550号を参照。CMOS装置も二次元ソリッドステート画像装置であるが、電荷の集積と出力とのやり方の点で標準的なCCDアレイとは異なる。CMOSトランジスタを製作する半導体技術基盤に画素が組み込まれており、それ故、装置に組み込まれた相当な読み出しのある電子機器および顕著な補正電子機器からの信号において顕著な増幅を可能にする。
【0137】
例えば米国特許第5,883,83号を参照。CMOS装置は、優れた感度とダイナミックレンジとを可能にする特定の技術的進歩を有するCMOS画像技術を含む。TDI装置は、画素のカラムを該カラム内および隣接するカラムに移動させ、集光し続けさせるCCD装置を採用する。このタイプの装置は、典型的には、有意な時間内に動画を統合させることができ、かつカメラにおける画像の相対運動によって動画がぼやけないように、画素のカラムの移動が集積されている画像の動きと同期するようなやり方で使用される。いくつかの態様において、フォトダイオードまたは光電子倍増管(PMT)と一体となったスキャニングミラーシステム(scanning mirror system)を画像用に使用することができる。
【0138】
ある態様において、複数の反応槽として複数の区画を、光ファイバー束の一端に直接形成する。ある態様に従い、米国公報第20030027126号に記載のシステムなどの光学検出システムとともに、本発明の反応槽のアレイを使用することができる。ある態様に従い、例えば、本発明の反応槽のアレイは、光がファイバー間で混ざらないように、クラッドファイバーから構成される光ファイバー束を含む光ファイバー集合体の一端に形成される。
【0139】
図9Aおよび9Bは、いくつかの態様に従う、本発明のシステムの限定されない例を示す。該システムは、光源452、励起フィルター454、二色性鏡(dichromatic mirror)458、放射フィルター460、対物470、およびアレイ472を含む。光源452から発生する光453は励起フィルター454を通過する。該光は二色性鏡458に反射し、対物470を通過し、アレイ472上で光る。いくつかの場合において、絞り(iris)や開口部などのような迷光低減機能468によって、迷光464を低減させてもよい。アレイから放射された光471は対物470と放射フィルター460とを通過する。光462が観察される。当業者には理解されるだろうが、特定の応用のために、必要に応じて、システムは追加の部材(例えば、追加のフィルター、鏡、拡大装置など)を含んでもよい。
【0140】
図9Aに示されるシステムは、(例えば白色光を使用する)捕捉物を含む反応槽の数の決定に役立つ部材をさらに含んでもよい。代わりに、区画の総数を決定するため、および/または、区画(例えば捕捉物を含むかまたは含まない)の位置に関する空間的な情報を提供するために、追加の部材を使用してもよく、該部材は、異なる光レジーム(例えば、蛍光、白色光)の下で観察され、区画の位置と一致する信号を確認するのに役立たせてもよい(例えばマスクを設けてもよい)。
【0141】
図9Aおよび9Bにおいて、励起光は供給源452から放射され、ビーム453へとコリメートされる。励起フィルター454は、蛍光体を励起する波長バンドのみ(例えばレゾルフィンの場合、575nm+/−10nm)を伝送するよう設定してもよい。励起光は二色性フィルター458によって下方に反射され、対物レンズ470を介して、試料を含む基板472を励起する。対物レンズ470によって画像光が収集され、ビーム471に集束され、二色性フィルター458を介して伝送される。蛍光波長バンド(例えばレゾルフィンの場合、670nm+/−30nm)に一致する画像光のみを、放射フィルター460を介して伝送する。残存するコリメートされたビーム462は、カメラシステムを介してその後画像化されるだろう放射された蛍光波長のみを含む。
【0142】
試料を含む区画(例えば反応槽)の位置を決定するために、同じシステムを使用してもよい。「明視野」の白色光照明を用いて、捕捉物を含む反応槽を含むアレイを明るくしてもよい。収集対物の開口数をちょうど外れる角度(例えば図9Aのθ1が、約20度、約25度、約30度、約35度、約40度またはそれ以上であってもよい)からアレイ表面上に擬似コリメートされた白色光(例えば白色光LED)を向けることによって(例えば図9Aに示される光源475を使用して)、アレイを明るくしてもよい。アレイ472の表面に命中している光(例えば光476)が表面に反射(および散乱)され、471にコリメートされ、対物レンズ(470)に収集される。続いて、コリメートされたビームは、カメラシステムによって、画像化される。
【0143】
どの区画が捕捉物(例えばビーズ)を含むかを決定するためにもまた、同じシステムを使用してもよい。いかなる特定のビーズもアナライト分子および/または結合リガンドと結合していてもよいし、していなくてもよい。「暗視野」の白色光照明を用いて(例えば図9Aに示されるような光源473を使用して)アレイを明るくしてもよい。収集対象の開口数を十分に外れる角度(例えば図9Aのθ2が、約65度、約70度、約75度、約80度、約85度である)からアレイ表面上に擬似コリメートされた白色光(例えば白色光LED473)を向けることによって、アレイを明るくしてもよい。アレイ472の表面に命中している光(例えば光474)が表面に反射(および散乱)され、471にコリメートされ、対物レンズ470に集光される。続いて、コリメートされたビームは、カメラシステムによって、画像化される。
【0144】
いくつかの態様において、例えば米国公報第2003/0027126号に記載されているように、光学検出システムを採用してもよい。典型的なシステムにおいて、光ファイバーの近位端または遠位端の画像サイズの調整を可能にする倍率切り替えを使用することによって、光ファイバー束の遠位端で形成された反応槽のアレイから返ってくる光が変更される。拡大された画像は、その後、シャッターホイール(shutter wheel)により、シャッターが閉められ、フィルターがかけられる。そして、電荷結合素子(CCD)カメラにより画像が取り込まれる。CCDカメラからの情報を処理する画像処理ソフトウェアを含み、該ソフトウェアを実行するコンピュータが提供されてもよく、該コンピュータはシャッターを制御しホイールにフィルターをかけるよう任意に設定されていてもよい。米国公報第20030027126号に記載されているように、束の近位端は、z移動ステージおよびx−y微小位置決め(micropositioner)を与えられる。
【0145】
例えば図10は、光学検出システムを有する光ファイバー集合体400を採用するシステムの模式的なブロック図を示す。ファイバー間で光が混ざらないように、光学ファイバー束またはアレイ402を含む光学ファイバー集合体400は、クラッドファイバーから構成されている。反応槽401のアレイは、光ファイバーの遠位端412に形成/付着されており、その近位端414は、z移動ステージ416およびx−y微小位置決め418と動作可能なように(operatively)接続されている。これら二つの部材は、顕微鏡の対物レンズ420において、束402の近位端414を正確に位置決めするように協調する。対物レンズ420により収集された光は、スリーポインターキューブスライダー(three pointer cube slider)を有する反射光蛍光アタッチメント422に移動する。
【0146】
アタッチメント422によって、対物レンズ420を介する75ワットのXeランプ424からの直接光はファイバー束402中で組み合わせることができる。供給源424からの光は濃縮レンズ426により濃縮され、その後、フィルターおよびシャッターホイール428により、フィルターがかけられ、および/または、シャッターが閉められ、それに続き、NDフィルタースライド430を通過する。束402の遠位端412から帰ってきた光は、アタッチメント422から、ファイバーの近位端または遠位端の画像サイズの調整を可能とする倍率切り替えまで通過する。光が通過する倍率切り替え432は、その後、第二のホイール434によりシャッターが閉められ、フィルターがかけられる。光は電荷結合素子(CCD)カメラ436に集光される。コンピュータ438は、CCDカメラ436からの情報を処理する画像処理ソフトウェアを実行し、そしてシステムの他の部材も任意に制御する。他の部材としては、第一ならびに第二のシャッターおよびフィルターホイール428、434を含むがこれらに限定されない。
【0147】
本発明のいくつかの態様を実施するために使用される反応槽のアレイは、互換性のあるさまざまな工程を使用して、光ファイバー束の遠位端と一体となっているか、または該遠位端に付着していてもよい。いくつかの場合において、光ファイバー束の個々のファイバーの中央にマイクロウェル(microwell)が形成されており、該マイクロウェルは封がされていても、されていなくてもよい。光ファイバー束のそれぞれの光ファイバーは、ファイバーの遠位端の中央に形成された単一のマイクロウェルからの光を伝達してもよい。この特徴によって、それぞれのマイクロウェル中の反応物/内容物を同定するために、個別の反応槽の光学的特性をインタロゲートすることが可能となる。その結果、CCDアレイを用いて束の端の画像を収集することによって、反応槽の光学的特性を個々にインタロゲートしてもよく、および/または、実質的に同時に画像化してもよい。
【0148】
任意の好適な技術を使用して、複数の区画を形成してもよい。いくつかの態様において、複数の区画は、基板上の複数の反応槽/ウェルを含む。特定の態様において、反応槽は一つの捕捉物しか受け入れず、そして含まないように設定されてもよい。
【0149】
本発明のいくつかの態様において、複数の反応槽は、例えば第二の基板と封着部材とを合わせることによって、(例えば、アナライト分子、結合リガンド、および/または前駆標識剤の導入後)封がされてもよい。反応槽の封は、アッセイの残りの間、反応槽それぞれの内容物が反応槽から抜け出られないようになされてもよい。いくつかの場合において、アナライト分子の添加後、および任意で、アナライト分子の検出を容易にするために前駆標識剤の少なくとも一つのタイプを添加後、反応槽に封をしてもよい。前駆標識剤を採用する態様において、いくつかのまたはそれぞれの反応槽中の内容物に封をすることにより、検出可能な標識剤を生成する反応は封がされた反応槽内で進行することができ、その結果、反応槽中に保持される検出目的の標識剤が検出可能な量で生成される。
【0150】
さまざまな方法および/または材料を使用して、複数の反応槽を含む複数の区画を形成してもよい。いくつかの場合において、複数の反応槽は、第一の表面上のくぼみのアレイとして形成される。また一方で、他の場合では、のっぺりした表面を有してもよい基板か、または封着部材上のくぼみと合致したくぼみを含んでもよい基板のいずれかと、複数のくぼみを含む封着部材とを合わせることによって、複数の反応槽を形成してもよい。封に役立つため、任意の装置部材、例えば基板や封着部材、を柔軟な材料、例えば弾性ポリマー材料、から製作してもよい。その表面は疎水的であってもよく、疎水的になるよう製造されてもよく、またはマイクロウェルからの水性試料の漏出を最小化するために疎水的な領域を含んでもよい。
【0151】
いくつかの場合において、それぞれの反応槽の内容物が反応槽から抜け出すことができないよう、それぞれの反応槽に封がされるかまたは隔絶されるように、封着部材はマイクロウェルのアレイ外面に接触(例えばさらに詳細に後述するように、光ファイバー束の被覆)することができてもよい。ある態様に従い、封着部材は、基板全体にわたり実質的に一定に加圧されるマイクロウェルのアレイに対して置いてもよいシリコーンエラストマーガスケットであってもよい。いくつかの場合において、アナライト捕捉のために使用される複数の捕捉物と、任意に、アナライト分子の検出を容易にするために使用されてもよい任意の前駆標識剤とを添加した後、反応槽に封をしてもよい。
【0152】
基板上/内のアッセイ溶液を含む複数の反応槽の形成にかかる限定されない例を図11に示す。図11のパネル(A)は、アッセイ溶液141に暴露された複数のマイクロウェル139を含む表面(例えばアナライト分子を含む溶液)および封着部材143を示す。この例における封着部材143は実質的に平面的な底面を含む。基板139を封着部材143と合わせることによって、封がされた複数の反応槽145が形成される。反応槽間の領域148は、反応槽間を密封するのに役立つように変更してもよい。
【0153】
第二の態様を図11のパネル(B)に示す。ここで、複数のマイクロウェル163を含む封着部材162は、アッセイ溶液162に暴露された実質的に平面的な表面158と合わせられる。その結果、複数の反応槽164が形成される。
【0154】
第三の態様において、図11のパネル(C)に示されるように、複数のマイクロウェル167を含む基板表面166は、同様に複数のマイクロウェル171を含む封着部材170と合わせられる。この態様において、基板のマイクロウェルと封着部材のマイクロウェルとは、形成されたそれぞれの反応槽172が封着部材のマイクロウェルの一部と基板からのマイクロウェルの一部とを含むように、実質的に配置されている。図11のパネル(D)において、それぞれの反応槽が封着部材173のマイクロウェルまたは基板175のマイクロウェルとを含むように、マイクロウェルは配置されていない。
【0155】
封着部材は本質的に基板と同じサイズであってもよいし、異なるサイズであってもよい。いくつかの場合において、封着部材はおおよそ基板と同じサイズであり、基板の前面と実質的に合わさっている。他の場合において、図11のパネル(E)に描かれているように、封着部材176は基板174より小さく、封着部材は基板の一部178のみと合わさっている。さらに他の場合において、図11のパネル(F)に描かれているように、封着部材182は基板180より大きく、封着部材の一部184のみが基板180と合わさっている。
【0156】
いくつかの態様において、反応槽はすべて、おおよそ同じ容量を有していてもよい。他の態様において、反応槽は異なる容量を有していてもよい。それぞれ個別の反応槽の容量は、任意の特定のアッセイプロトコルを容易にするために適切に選択してもよい。例えば、それぞれの槽に含まれたアナライト捕捉に使用される捕捉物の数を小さい数に制限するのが望ましい態様の一セットにおいて、捕捉物の種類、採用された検出の技術および道具、基板上のウェルの数および密集度、ならびに、ウェルを含む基板にアプライされた液体中の捕捉物の期待される濃度に応じて、反応槽の容量は、アトリットル(またはそれ以下)からナノリットル(またはそれ以上)にまで及んでもよい。
【0157】
ある態様において、アナライト捕捉に使用される捕捉物がたった一つでも反応槽内に完全に含まれうるように、反応槽のサイズを選択してもよい(例えば、2010年3月24日に出願された、Duffyらの、「Ultra-Sensitive Detection of Molecules or Particles using Beads or Other Capture Objects」と題された米国特許出願第12/731,130号;または、2011年3月1日に出願された、Duffyらの、「Ultra-Sensitive Detection of Molecules or Particles using Beads or Other Capture Objects」と題された国際特許出願第(未定)(代理人整理番号Q0052.70011WO00)を参照。これらは参照により本明細書に組み込まれる)。
【0158】
本発明のある態様に従い、反応槽は、約1フェムトリットルと約1ピコリットルとの間、約1フェムトリットルと約100フェムトリットルとの間、約10アトリットルと約100ピコリットルとの間、約1ピコリットルと約100ピコリットルとの間、約1フェムトリットルと約1ピコリットルとの間、または約30フェムトリットルと約60フェムトリットルとの間の容量を有する。いくつかの場合において、反応槽は、約1ピコリットル未満、約500フェムトリットル未満、約100フェムトリットル未満、約50フェムトリットル未満、または約1フェムトリットル未満の容量を有する。いくつかの場合において、反応槽は、約10フェムトリットル、約20フェムトリットル、約30フェムトリットル、約40フェムトリットル、約50フェムトリットル、約60フェムトリットル、約70フェムトリットル、約80フェムトリットル、約90フェムトリットル、または約100フェムトリットルの容量を有する。
【0159】
アッセイで採用した区画の総数および/または区画の密集度(例えばアレイの反応槽の数/密集度)は、アレイの組成と最終用途とに依存することができる。例えば採用した反応槽の数は、採用したアナライト分子および/または結合リガンドのタイプの数、アッセイの疑わしい濃度範囲、検出の方法、捕捉物のサイズ、検出実体のタイプ(例えば、溶液中の遊離の標識剤、沈殿している標識剤など)に依存してもよい。反応槽を約2から何十億まで(または反応槽の総数)含むアレイは、さまざまな技術および材料を利用して作製することができる。アレイの反応槽数を増やすことは、アッセイのダイナミックレンジを増大すること、または、多数の試料もしくは多数のタイプのアナライト分子を並行してアッセイすることに利用できる。
【0160】
アッセイは、分析される試料あたりの反応槽を一千と百万との間の個数で含んでもよい。いくつかの場合において、アレイは百万を超える反応槽を含む。いくつかの態様において、アレイは反応槽を、約1,000と約50,000との間、約1,000と約1,000,000との間、約1,000と約10,000との間、約10,000と約100,000との間、約100,000と約1,000,000との間、約100,000と約500,000との間、約1,000と約100,000との間、約50,000と約100,000との間、約20,000と約80,000との間、約30,000と約70,000との間、約40,000と約60,000との間の個数で含む。いくつかの態様において、アレイは反応槽を、約10,000、約20,000、約50,000、約100,000、約150,000、約200,000、約300,000、約500,000、約1,000,000、またはそれ以上の個数含む。
【0161】
反応槽のアレイは、実質的に平面的な表面上に配置されてもよく、または非平面的な三次元配置に供されてもよい。反応槽は、規則的なパターンで整列していてもよいし、ランダムに分布していてもよい。具体的な態様において、アレイは、実質的に平面的な表面上の部位の規則的なパターンであり、該部位はX−Y座標面にアドレスされていてもよい。
【0162】
いくつかの態様において、反応槽は固形物中に形成される。当業者にはよく理解されているだろうが、反応槽を形成することができる潜在的に好適な材料は極めて多数あり、これらに限定されないが、ガラス(修飾(modified)ガラスおよび/または機能性(functionalized)ガラスを含む)、プラスチック(アクリル、ポリスチレンおよびスチレンと他の材料との共重合体、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレン、ポリウレタン、環状オレフィン共重合体(COC)、環状オレフィン重合体(COP)、テフロン(登録商標)、多糖、ナイロンまたはニトロセルロースなど)、エラストマー(ポリ(ジメチルシロキサン)およびポリウレタンなど)、複合材料、セラミック、シリカまたはシリカ系材料(シリコンおよび修飾シリコンを含む)、炭素、金属、光ファイバー束などが挙げられる。一般に、基板の材料は、感知できるほどの自己蛍光がなく、光学検出が可能なように選択してもよい。特定の態様において、反応槽を可とう性材料中に形成してもよい。
【0163】
表面(例えば基板または封着部材)上の反応槽を、当該分野において公知のさまざまな技術を使用して形成してもよく、該技術としては、これらに限定されないが、フォトリソグラフィ、スタンプ技術、成形技術、エッチング技術などが挙げられる。当業者にはよく理解されているだろうが、使用する技術は、支持材料の組成および形状ならびに反応槽のサイズおよび数に依存することができる。
【0164】
特定の態様において、反応槽のアレイは、光ファイバー束の一端上にマイクロウェルを作製することによって、および、封着部材として平面的な柔軟な表面を利用することによって、形成される。特定のかかる態様において、光ファイバー束の一端上に反応槽のアレイを以下のようにして形成してもよい。まず、マイクロウェルのアレイを、磨いた光ファイバー束の一端にエッチングする。光ファイバー束を形成しエッチングするための技術および材料は当業者に公知である。所望の容量のマイクロウェルを形成してもよいように、例えば、光ファイバーの直径、ファイバーのコアとクラッドとの領域の存在、サイズおよび組成、ならびにエッチングの深さおよび特異性を、選択したエッチング技術により変更してもよい。
【0165】
特定の態様において、それぞれのウェルが単一のファイバーにおおよそ調整され、かつクラッド材料により隣接するウェルと隔絶されるように、束の個別のガラスファイバーのコア材料を優先的にエッチングするというエッチング工程によって、マイクロウェルが作製される。光ファイバーのアレイフォーマットの潜在的利点は、それによって、複雑な微細加工をせずに数千から数百万もの反応槽を生産することができること、および、同時に多くの反応槽を観察し光学的にアドレスする能力を提供することができること、である。
【0166】
光ファイバー束が励起光および放射光の両方をウェルへおよびウェルから伝送することができるように、それぞれのマイクロウェルは束になっている光ファイバーとともに配列していてもよく、ウェルの内容物を遠隔インタロゲートすることが可能となる。
(2)さらに、光ファイバーをアレイすることによって、ファイバー間の信号「クロストーク(cross-talk)」がない、隣接する槽中の分子を同時にまたは非同時に励起することができる性能が提供されてもよい。
(3)すなわち、一つのファイバー中に伝送される励起光は隣接するファイバーに漏れ出さない。
【0167】
代わりに、基板として光ファイバー束の末端を利用しない他の方法および材料を使用して、複数の反応槽と同等の構造物を作製してもよい。例えば、そのアレイは、当該分野に公知の技術により製造され、目印をつけられた(spotted)基板、印刷された基板またはフォトリソグラフィで作製された基板であってもよい。例えば、WO95/25116;WO95/35505;PCT US98/09163;米国特許第5,700,637号、第5,807,522号、第5,445,934号、第6,406,845号および第6,482,593号を参照。当業者には公知であろうが、いくつかの場合において、成形技術、エンボス技術および/またはエッチング技術を使用して、アレイを製造してもよい。
【0168】
特定の態様において、本発明は、封着部材を基板に適用する機械的基盤を備えたシステムを提供する。基盤はシステムのステージの下方に位置付けられてもよい。選択した反応成分が反応槽のアレイに添加された後、封着部材をアレイと合わせてもよい。例えば、機械的基盤によって一定に加圧されながら平坦な表面(例えば顕微鏡のスライドなど)と反応槽のアレイとの間に、封着部材を入れてもよい。
【0169】
限定されない態様が図12Aに説明されている。封着部材300は機械的基盤302の上端に置かれている。アッセイ溶液304は封着部材300の上端に置かれている。一定に加圧されるように、機械的基盤はアレイ306(例えば光ファイバーアレイ)に面して上方に移動する。図12Bに示されるように、封着部材300によりアレイ306は密封される。他の例では、封着部材とアレイとの間が密封されるように、封着部材にさまざまな圧力を加えてもよい。本明細書でさらに考察されているとおり、システムもまた、アレイを分析するために利用してもよい追加部材312(例えば、顕微鏡、コンピュータなど)を含んでもよい。
【0170】
いくつかの態様において、複数の区画は複数の反応槽/ウェルを含まなくてもよい。例えば、捕捉物を採用する態様において、パターン形成された実質的に平面的な表面を採用してもよく、パターン形成された領域は複数の区画を形成している。いくつかの場合において、パターン形成された領域は、実質的に疎水的な表面によって実質的に囲まれた、実質的に親水的な表面を含んでもよい。特定の態様において、複数の捕捉物(例えばビーズ)は、実質的に親水的な培地(例えば水を含む)によって実質的に囲まれていてもよく、そしてビーズがパターン形成された領域(例えば表面上の親水的な区画)と結びつくようにビーズはパターン形成された表面に暴露されていてもよい。その結果、複数のビーズが空間的に分離される。
【0171】
例えば、かかる態様において、基板はゲルや他の材料であってもまたそれを含んでいてもよく、該ゲルや他の材料は、大量輸送に対する十分な障壁(例えば対流障壁および/または拡散障壁)を提供し、区画をアドレスしてアッセイを完了させるのに必要な時間枠内に異なる捕捉物を含む空間的な区画間で干渉またはクロストークの原因となるため、アナライト捕捉に使用される捕捉物および/または前駆標識剤および/または標識剤を、材料上または材料中の一つの区画からもう一つの区画に移動するのを防ぐ。例えば、ある態様において、複数の捕捉物は、ヒドロゲル材料上および/または該材料中の捕捉物が拡散されることによって、空間的に分離される。いくつかの場合において、前駆標識剤はヒドロゲル中に既に存在していてもよく、その結果、(例えば酵素成分を有する結合リガンドまたはアナライト分子に暴露することによって)標識剤の局所濃度の生成が容易になる。さらに他の態様では、一つまたは二つ以上の毛細管中に捕捉物を閉じ込めてもよい。
【0172】
いくつかの場合において、複数の捕捉物は多孔質または繊維質の基板(例えばろ紙)上に吸収されるか局在化されてもよい。いくつかの態様において、捕捉物は一定の表面(例えば平面的な表面)上に空間的に分離されていてもよく、捕捉物が局在化する区画またはその近くに局在し続ける実質的に不溶化のまたは沈殿する標識剤に変換される前駆標識剤を使用して、対応する捕捉物を検出してもよい。かかる実質的に不溶化のまたは沈殿する標識剤は、本明細書に記載されている。いくつかの場合において、単一のアナライト分子は、複数の液滴に空間的に分離されていてもよい。すなわち、単一のアナライト分子は、最初の流体を含む液滴に実質的に含まれていてもよい。液滴は第二の流体に実質的に囲まれていてもよく、ここで第二の流体は最初の流体と実質的に混合しない。
【0173】
いくつかの態様において、アッセイの間、少なくとも一つの洗浄工程を実施してもよい。特定の態様において、それが、捕捉物および/またはアナライト分子の立体配置(configuration)に大幅な変化をもたらさず、および/または、アッセイの少なくとも二つの成分間のいかなる特異的な結合の相互作用を破壊しないように、洗浄工程を選択する。他の場合において、洗浄溶液は、一つまたは二つ以上のアッセイ成分と化学的に相互作用するように選択する溶液であってもよい。当業者には理解されるだろうが、洗浄工程は、本発明の方法の間の任意の適切な時点で実施してもよい。
【0174】
例えば、アナライト分子、結合リガンド、前駆標識剤などを含む一つまたは二つ以上の溶液に捕捉物を暴露した後、複数の捕捉物を洗浄してもよい。他の例として、複数の捕捉物に対するアナライト分子の固定化に続き、複数の捕捉物を洗浄工程に供してもよく、その結果、捕捉物に対して特異的に固定化されていないアナライト分子のいずれも除去される。
【0175】
分析器システム
本発明はまた、前記の少なくともいくつかのアッセイ工程および/または信号/データ処理工程を実施するよう設定された流体試料中のアナライト分子または粒子の濃度の度合いを決定するためのシステムを含む。
【0176】
例えば特定の態様において、本発明は、流体試料中のアナライト分子または粒子の濃度の度合いを決定するためのシステムを含み、該システムは、複数の区画であって、かかる区画内に形成されているか、または含まれる結合表面をそれぞれが含む、前記複数の区画を含むアッセイ基板(ここで少なくとも一つの結合表面は、該結合表面に固定化された少なくとも一つのアナライト分子または粒子を含む)、前記複数の区画をアドレスするよう設定され、アドレスされたそれぞれの区画でのアナライト分子または粒子の有無を示し、かつそれぞれの区画でのアナライト分子または粒子の数によって変化する強度を有する、少なくとも一つの信号を生成することができる少なくとも一つの検出器、および、前記少なくとも一つの信号から、少なくとも一つのアナライト分子または粒子を含む前記区画のパーセンテージを決定するよう設定され、さらに、該パーセンテージに基づいて、少なくとも一つのアナライト分子もしくは粒子を含む区画の数に少なくとも一部基づいて前記流体試料中のアナライト分子もしくは粒子の濃度の度合いを決定するか、または複数のアナライト分子もしくは粒子の存在を示す前記少なくとも一つの信号の強度レベルに少なくとも一部基づいて前記流体試料中のアナライト分子もしくは粒子の濃度の度合いを決定するよう設定された、少なくとも一つの信号処理器を含む。
【0177】
特定のかかる態様において、信号処理器は図10に図解したコンピュータ438を含むか、またはその一部であってもよい。信号処理器/コンピュータは、システムの残存部材の一部でありうるか、または該部材と有効に関連して連結されうり、いくつかの態様において、前述のとおり、分析値および計算値と同様、システムの操作パラメータを制御および調整するよう設定および/またはプログラムされうる。いくつかの態様において、信号処理器/コンピュータは、システムの他の部材の操作パラメータを設定および/または制御するための制御信号を送信および受信できる。他の態様において、信号処理器/コンピュータは、他のシステム部材から隔離され、および/または、他のシステム部材に対して遠隔設置することができ、間接的手段および/または携帯用手段を介して(例えば携帯用電子データ記憶装置(磁気ディスクなど)を介して、またはコンピュータネットワーク通信(インターネットや局所的なイントラネットなど)を介して)システムの一つまたは二つ以上の他の部材からデータを受信するよう設定されてもよい。
【0178】
信号処理器/コンピュータは、いくつかの公知の部材および電気回路を含んでもよく、さらに詳細に後述するように、運搬電気回路(例えば一つまたは二つ以上のバス)、ビデオおよびオーディオデータの入力/出力(I/O)サブシステム、専用ハードウェア、ならびに他の部材や、電気回路などの他の部材と同様、プロセシング・ユニット(すなわち処理器)、メモリシステム、入力および出力装置ならびにインターフェース(例えば相互接続機構)が挙げられる。さらに、信号処理器/コンピュータはマルチ処理器コンピュータシステムであってもよく、コンピュータネットワークに接続した多数のコンピュータを含んでもよい。
【0179】
信号処理器/コンピュータは処理器を含んでもよく、例えば、セレロンおよびペンティアム(登録商標)処理器のシリーズx86の一つなどの市販の処理器、インテルから入手のもの、AMDおよびCyrixの類似の装置、モトローラから入手できる680X0シリーズマイクロプロセッサ、およびIBMのPowerPCマイクロプロセッサが挙げられる。他の処理器の多くも入手でき、コンピュータシステムは特定の処理器に限定されない。
【0180】
処理器は典型的には、Windows(登録商標)7、Windows(登録商標) Vista、Windows(登録商標)NT、Windows(登録商標)95または98、UNIX(登録商標)、Linux(登録商標)、DOS、VMS、MacOSおよびOS8が例である、オペレーティングシステムと呼ばれるプログラムを実行する。該オペレーティングシステムは、他のコンピュータプログラムの実行を制御し、スケジューリング、デバッギング、入力/出力制御、会計、編集、記憶域の割り当て、通信制御および関連するサービスを提供する。処理器およびオペレーティングシステムはともに、高レベルなプログラミング言語におけるアプリケーションプログラムが書かれたコンピュータ基盤を定義する。信号処理器/コンピュータは特定のコンピュータ基盤に限定されない。
【0181】
信号処理器/コンピュータは、メモリシステムを含んでもよく、該メモリシステムは、コンピュータが読み取れ、書き込める不揮発性の記録媒体であり、例えば磁気ディスク、光学ディスク、フラッシュメモリおよびテープなどである。かかる記録媒体は取り外し可能であってもよく(例えば、フロッピー(登録商標)ディスク、読み取り/書き込みCDやメモリスティック)、または常設されていてもよい(例えばハードドライブ)。
【0182】
かかる記録媒体は、典型的にはバイナリ形式(すなわち一とゼロとの数列として翻訳された形式)で信号を保存する。ディスク(例えば磁気または光学)は多数のトラックを有し、該トラック上でかかる信号は、典型的にはバイナリ形式(すなわち一とゼロとの数列として翻訳された形式)で保存されていてもよい。かかる信号は、マイクロプロセッサで実行されるソフトウェアのプログラム(例えばアプリケーションのプログラム)、またはアプリケーションのプログラムで処理される情報を定義してもよい。
【0183】
信号処理器/コンピュータのメモリシステムもまた、集積回路メモリエレメントを含んでいてもよく、該エレメントは、ダイナミック・ランダム・アクセス・メモリ(DRAM)やスタティックメモリ(SRAM)などの、揮発性のランダム・アクセス・メモリである。典型的には、処理器は、操作中、プログラムおよびデータを、不揮発性の記録媒体から集積回路メモリエレメント中に読み取らせる。典型的には、不揮発性の記録媒体より処理器の方がプログラム命令およびデータにより早くアクセスできる。
【0184】
一般に、処理器は、プログラム命令に従い集積回路メモリエレメント内でデータを操作し、処理が完了した後、不揮発性の記録媒体に操作したデータをコピーする。不揮発性の記録媒体と集積回路メモリエレメントとの間でのデータ移動を扱うためのさまざまな機構が知られており、前記の方法、工程、システムおよびシステム要素を実行する信号処理器/コンピュータは、それらに限定されない。信号処理器/コンピュータは、特定のメモリシステムに限定されない。
【0185】
前記のかかるメモリシステムの少なくとも一部は、前記の一つまたは二つ以上のデータ構造(例えば参照表)または方程式を保存するために使用してもよい。例えば、不揮発性の記録媒体の少なくとも一部は、一つまたは二つ以上のかかるデータ構造を含むデータベースの少なくとも一部を保存してもよい。かかるデータベースは、さまざまなタイプのデータベースのいずれであってもよく、例えば、ファイルシステムとしては、データがデリミタで区切られたデータユニットに整頓される、一つまたは二つ以上のフラット−ファイルデータ構造、データが表中に保存されたデータユニット中に整頓される関係型データベース、データがオブジェクトとして保存されたデータユニットに整頓されるオブジェクト指向データベース、他のタイプのデータベース、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0186】
信号処理器/コンピュータは、ビデオとオーディオデータI/Oサブシステムを含んでもよい。サブシステムのオーディオ部分は、アナログからデジタル(A/D)への変換器を含んでもよく、該変換器は、アナログのオーディオ情報を受け取り、それをデジタル情報に変換する。デジタル情報は、別のときに使用するハードディスクに保存するための公知の圧縮システムを使用して圧縮してもよい。I/Oサブシステムの典型的なビデオ部分は、その多くが当該分野で公知のビデオ画像圧縮器/解凍器を含んでもよい。かかる圧縮器/解凍器は、アナログのビデオ情報を圧縮されたデジタル情報に変換(逆の場合も同じ)する。圧縮されたデジタル情報は、後の使用のために、ハードディスクに保存してもよい。
【0187】
信号処理器/コンピュータは一つまたは二つ以上の出力装置を含んでもよい。出力装置の例としては、陰極線管(CRT)、液晶ディスプレイ(LCD)および他のビデオ出力装置、プリンター、モデムやネットワーク・インターフェースなどの通信装置、ディスクやテープなどの保存装置、ならびにスピーカーなどのオーディオ出力装置が挙げられる。
【0188】
信号処理器/コンピュータもまた、一つまたは二つ以上の入力装置を含んでもよい。入力装置の例としては、キーボード、キーパッド、トラックボール、マウス、ペンおよびタブレット、前記のものなどの通信装置、ならびにオーディオとビデオ取込装置およびセンサーが挙げられる。信号処理器/コンピュータは、本明細書に記載された特定の入力または出力装置に限定されない。
【0189】
信号処理器/コンピュータは、特別にプログラムされた特殊用途のハードウェア、例えばアプリケーション特異的集積回路(ASIC)を含んでもよい。かかる特殊用途のハードウェアは、前記の一つまたは二つ以上の方法、工程、シミュレーション、アルゴリズム、システム、およびシステム要素を実行するために設定してもよい。信号処理器/コンピュータおよびそれらの部材は、さまざまな一つまたは二つ以上の好適なコンピュータのプログラミング言語のいずれかを使用してプログラム可能であってもよい。かかる言語としては、例えばC、Pascal、FortranおよびBASICなどの手続き型プログラミング言語、例えばC++、Java(登録商標)およびEiffelなどのオブジェクト指向言語、ならびに他の言語、スクリプト言語やアセンブリ言語さえも挙げられる。
【0190】
方法、工程、シミュレーション、アルゴリズム、システムおよびシステム要素は、かかるコンピュータシステムで実行されてもよい、手続き型プログラミング言語、オブジェクト指向プログラミング言語、他の言語およびそれらの組み合わせを含むさまざまな好適なプログラミング言語のいずれかを使用して実行してもよい。かかる方法、工程、シミュレーション、アルゴリズム、システムおよびシステム要素は、コンピュータプログラムの別々のモジュールとして実行することができ、また別々のコンピュータプログラムとして独立して実行することもできる。かかるモジュールおよびプログラムは別々のコンピュータで実行することができる。
【0191】
前記の方法、工程、シミュレーション、アルゴリズム、システムおよびシステム要素は、前記のコントロールシステムを実行したコンピュータの一部として、または独立した部材として、ソフトウェア、ハードウェアまたはファームウェアまたはこれら三者の任意の組み合わせで実行してもよい。
【0192】
かかる方法、工程、シミュレーション、アルゴリズム、システムおよびシステム要素は、例えば不揮発性の記録媒体、集積回路メモリエレメントまたはそれらの組み合わせなどの、コンピュータで読み取り可能な媒体上のコンピュータで読み取り可能な信号として、有形に具体化されたコンピュータプログラム産物として、独立してまたは組み合わせて実行してもよい。かかる方法、工程、シミュレーション、アルゴリズム、システムおよびシステム要素のそれぞれにおいて、かかるコンピュータプログラム産物は、例えばコンピュータに実行された結果として方法、工程、シミュレーション、アルゴリズム、システムまたはシステム要素を実施するようコンピュータに命令する一つまたは二つ以上のプログラムの一部として、命令を定義する、コンピュータで読み取り可能な媒体上に有形に具体化されたコンピュータで読み取り可能な信号を含んでもよい。
【0193】
典型的な標的アナライト
当業者には十分理解されるだろうが、大多数のアナライト分子および粒子は、本発明の方法およびシステムを使用して検出され、任意に定量化されてもよく;基本的に、結合リガンドに対して固定化されるように作製することが可能な任意のアナライト分子は、本発明を使用して潜在的に調査することができる。アナライト分子を含んでもよい、潜在的に関心のある、特定のより具体的な標的について、以下に言及する。以下に列挙されたものは典型例であって、これらに限定されるものではない。
【0194】
いくつかの態様において、アナライト分子は生体分子であってもよい。生体分子の限定されない例として、ホルモン、抗体、サイトカイン、タンパク質、核酸、脂質、炭水化物、脂質細胞膜抗原および受容体(神経の、ホルモンの、栄養の、および細胞表面の受容体)もしくはそのリガンド、またはそれらの組み合わせが挙げられる。タンパク質の限定されない態様として、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質断片、タンパク質複合体、融合タンパク質、組み換えタンパク質、リンタンパク質、糖タンパク質、リポタンパク質などが挙げられる。当業者には十分理解されるだろうが、本発明を使用して結合パートナーを検出または評価してもよいタンパク性のアナライト分子は大多数存在する可能性がある。前に考察したような酵素に加えて、好適なタンパク質アナライト分子としては、これらに限定されないが、免疫グロブリン、ホルモン、成長因子、サイトカイン(これらの多くが細胞受容体のリガンドとして働く)、癌マーカーなどが挙げられる。生体分子の限定されない例としては、PSAおよびTNF−αが挙げられる。
【0195】
特定の態様において、アナライト分子は翻訳後修飾タンパク質(例えば、リン酸化、メチル化、グリコシル化)であってもよく、捕捉成分は翻訳後修飾に特異的な抗体であってもよい。修飾タンパク質は、極めて多数の特異的な抗体を含む捕捉成分により捕捉されてもよく、そして捕捉されたタンパク質は、翻訳後修飾に特異性を有する二次抗体を含む結合リガンドにさらに結合してもよい。代わりに、修飾タンパク質は、翻訳後修飾に特異的な抗体を含む捕捉成分により捕捉されてもよく、そして捕捉されたタンパク質は、それぞれの修飾タンパク質に特異的な抗体を含む結合リガンドにさらに結合してもよい。
【0196】
他の態様において、アナライト分子は核酸である。核酸は、相補的な核酸断片(例えばオリゴヌクレオチド)により捕捉されてもよく、そして任意に、異なる相補オリゴヌクレオチドを含む結合リガンドにより、続いて標識されてもよい。
【0197】
好適なアナライト分子および粒子としては、これらに限定されないが、小分子(有機化合物および無機化合物を含む)、環境汚染物質(農薬、殺虫剤、毒素などを含む)、治療用分子(治療用薬物および乱用薬物、抗体などを含む)、生体分子(ホルモン、サイトカイン、タンパク質、核酸、脂質、炭水化物、細胞膜抗原および受容体(神経の、ホルモンの、栄養の、および細胞表面の受容体)またはそのリガンドなどを含む)、全細胞(原核細胞(病原性細菌など)および哺乳動物腫瘍細胞を含む真核細胞を含む)、ウイルス(レトロウイルス、ヘルペスウイルス、アデノウイルス、レンチウイルスなどを含む)、胞子などが挙げられる。
【0198】
いくつかの態様において、アナライト分子は酵素であってもよい。酵素の限定されない例としては、酸化還元酵素、転移酵素、リン酸化酵素、加水分解酵素、リアーゼ、異性化酵素、リガーゼなどが挙げられる。酵素のさらなる例としては、これらに限定されないが、ポリメラーゼ、カテプシン、カルパイン、例えばASTおよびALTなどのアミノ転移酵素、例えばカスパーゼなどのプロテアーゼ、ヌクレオチドシクラーゼ、転移酵素、リパーゼ、心臓発作に関連した酵素などが挙げられる。本発明のシステム/方法を、ウイルス性因子または細菌性因子の存在を検出するために使用するとき、適切な標的酵素としては、ウイルス性または細菌性ポリメラーゼおよびウイルス性または細菌性プロテアーゼを含む他のかかる酵素などが挙げられる。
【0199】
他の態様において、アナライト分子は酵素成分を含む。例えばアナライト分子は、細胞外表面上に存在する酵素または酵素成分を有する細胞でありうる。代わりに、アナライト分子は、細胞表面上に酵素成分を有さない細胞である。後述する間接的アッセイの方法を使用して、典型的には、かかる細胞を同定する。酵素成分の限定されない例は、西洋ワサビペルオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、およびアルカリホスファターゼである。
【0200】
アナライト分子を含むか含むことが疑われる流体試料は任意の好適な供給源に由来する。いくつかの場合において、試料は、液体、流動性のある粒子状固体、固体粒子の流体懸濁液、超臨界流体および/または気体を含んでもよい。いくつかの場合において、アナライト分子は、決定前に、その供給源から分離または精製してもよく;しかしながら、特定の態様において、アナライト分子を含む未処理の試料は直接試験してもよい。アナライト分子の供給源は、合成品(例えば実験室で製造された)、環境(例えば空気、土など)、哺乳動物、動物、植物、またはそれらの任意の組み合わせであってもよい。特定の態様において、アナライト分子の供給源は、ヒトの体物質(例えば、血液、血清、血漿、尿、唾液、組織、器官など)である。
【0201】
分析される流体試料の体積は、例えば、使用される/利用できる捕捉物の数、使用される/利用できる区画の数などに応じて、広範な体積のうち潜在的に任意の量であってもよい。いくつかの特定の典型的な態様において、試料体積は、約0.01μL、約0.1μL、約1μL、約5μL、約10μL、約100μL、約1mL、約5mL、約10mLなどであってもよい。いくつかの場合において、流体試料の体積は、約0.01μLと約10mLとの間、約0.01μLと約1mLとの間、約0.01μLと約100μLとの間、または約0.1μLと約10μLとの間である。
【0202】
いくつかの場合において、流体試料は、アッセイで使用する前に希釈されてもよい。例えば、アナライト分子の供給源がヒトの体液(例えば血液、血清)である態様において、該液は、適切な溶媒(例えばPBS緩衝液などの緩衝液)で希釈されてもよい。流体試料は、使用前に、約1倍、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約10倍またはそれ以上に希釈されてもよい。試料を、複数の捕捉物を含む溶液に添加するか、または複数の捕捉物を試料に直接添加してもよく、もしくは溶液として試料に添加してもよい。
【0203】
捕捉成分
本発明のいくつかの態様において、アナライト分子は表面(例えば、捕捉物の表面、区画(例えば反応槽)の表面など)に対して固定化されてもよい。複数のタイプの結合リガンドに暴露する前、同時、または後に、アナライト分子は表面に対して固定化されてもよい。いくつかの態様において、表面に対するアナライト分子の固定化は、表面から(例えば反応槽から)アナライト分子を取り除くことを考慮せずに、溶液から任意の過剰な結合リガンドを除去するのに役立ってもよい。一般に、捕捉成分は、分子、粒子もしくは複合体の固定化、検出、定量化および/または分析の目的で、分子、粒子もしくは複合体を固体の支持体に付着させる。
【0204】
当業者には十分理解されるだろうが、捕捉成分の組成はアナライト分子の組成に依存するだろう。多種多様な標的分子に対する捕捉成分は公知であるか、または公知の技術を使用して容易に発見もしくは明らかになりうる。例えば、標的分子がタンパク質であるとき、捕捉成分は、タンパク質、特に抗体またはその断片(例えば、抗原結合断片(Fab)、Fab’断片、ペプシン断片、F(ab’)2断片、全長のポリクローナルまたはモノクローナル抗体、抗体様断片など)、受容体タンパク質、プロテインA、プロテインCなどの他のタンパク質、または小分子を含んでもよい。
【0205】
いくつかの場合において、タンパク質に対する捕捉成分はペプチドを含む。例えば、標的分子が酵素であるとき、好適な捕捉成分としては、酵素基質および/または酵素阻害剤が挙げられる。いくつかの場合において、標的アナライトがリン酸化された化学種であるとき、捕捉成分はリン酸結合剤を含んでもよい。例えば、リン酸結合剤は、米国特許第7,070,921号および米国特許出願第20060121544号に記載されたものなどの、金属イオン親和性媒体を含んでもよい。さらに、標的分子が一本鎖の核酸であるとき、捕捉成分は相補的な核酸であってもよい。同様に、標的分子は核酸結合タンパク質であってもよく、捕捉成分は一本鎖または二本鎖の核酸であってもよく;代わりに、標的分子が一本鎖または二本鎖の核酸であるとき、捕捉成分は核酸結合タンパク質であってもよい。
【0206】
代わりに、米国特許第5,270,163号、第5,475,096号、第5,567,588号、第5,637,459号、第5,683,867号、第5,705,337号および関連特許に一般に記載されているように、核酸である「アプタマー」を、任意の標的分子を事実上捕捉するために開発してもよい。また、例えば標的分子が炭水化物であるとき、潜在的に好適な捕捉成分として、例えば、抗体、レクチン、およびセレクチンが挙げられる。当業者には十分理解されているだろうが、着目する標的分子と特異的に結びつくことができる任意の分子は、捕捉成分として潜在的に使用してもよい。
【0207】
特定に態様において、好適な標的分子/捕捉成分の対としては、これらに限定されないが、抗体/抗原、受容体/リガンド、タンパク質/核酸、核酸/核酸、酵素/基質および/または阻害剤、炭水化物(糖タンパク質および糖脂質を含む)/レクチンおよび/またはセレクチン、タンパク質/タンパク質、タンパク質/小分子;小分子/小分子などを挙げることができる。一つの態様に従い、捕捉成分は、成長ホルモン受容体、ブドウ糖輸送担体(特にGLUT4受容体)などの多量体化するのが知られている細胞表面の受容体の一部(特に細胞外の一部)であり、T細胞受容体および標的アナライトは一つまたは二つ以上の受容体標的リガンドである。
【0208】
特定の態様において、捕捉成分の表面への付着を容易にする結合表面および/または捕捉成分のリンケージ(linkage)、機能化または修飾を介して、捕捉成分は表面に付着してもよく、該リンケージは任意の実体を含んでもよい。捕捉成分と表面との間のリンケージは、一つもしくは二つ以上の化学的または物理的(例えば、ファン・デル・ワールス力、水素結合、静電的相互作用、疎水的/親水的相互作用などを介した非特異的な付着)結合および/またはかかる結合を提供する化学的リンカーを含んでもよい。特定の態様において、捕捉成分は、捕捉拡張成分を含む。かかる態様において、捕捉成分は、アナライト分子に結合する第一の部分および結合表面への付着に使用されうる第二の部分を含む。
【0209】
特定の態様において、信号の喪失または検出中に擬陽性の信号をもたらすかもしれないアッセイの実施中、結合表面への非捕捉成分(例えばアナライト分子、結合リガンド)の非特異的な付着を低減することができるかまたは最小化することができる防御層または保護層も、表面に含まれてもよい。保護層を形成する特定の態様で利用してもよい材料の例としては、これらに限定されないが、タンパク質の非特異的な結合をはじくポリ(エチレングリコール)などの重合体;血清、アルブミンおよびカゼインなどの、タンパク質の非特異的な結合をはじく特性を有する天然由来のタンパク質;スルホベタインなどの界面活性剤(例えば両性イオン界面活性剤);天然由来の長鎖脂質;およびサケ精子DNAなどの核酸が挙げられる。
【0210】
一つの態様は、タンパク性の捕捉成分を利用する。当該分野において公知なように、あらゆる技術を、タンパク性の捕捉成分を多種多様な固体表面に付着させるために使用してもよい。本文中の「タンパク質」または「タンパク性」としては、例えば酵素および抗体を含む、タンパク質、ポリペプチド、ペプチドが挙げられる。多種多様な技術(例えば米国特許第5,620,850号に概要が記載されている方法)は、タンパク質に反応性の実体を加えることが知られている。表面にタンパク質を付着させることは公知であり、Heller、Acc.Chem.Res.23巻:128頁(1990年)および他の多くの類似の参考文献を参照のこと。
【0211】
いくつかの態様において、捕捉成分(または結合リガンド)はFab’断片を含んでもよい。全抗体とは対照的に、Fab’断片の使用によって、捕捉成分と結合リガンドとの間の非特異的な結合が低減させ得る。いくつかの場合において、捕捉成分(または結合リガンド)のFc領域を(例えばタンパク分解的に)除いてもよい。いくつかの場合において、酵素は、Fc領域を除くために使用してもよい(例えばF(ab’)2断片を生成し得るペプシンやFab断片を生成し得るパパイン)。ときには、捕捉成分は、アミンを使用して結合表面に付着させてもよく、またはアビジンまたはストレプトアビジンで被覆された捕捉物表面への結合を容易にするためにビオチンを使用して(例えばNHS−ビオチンを使用して)修飾してもよい。F(ab’)2断片は、二つのチオールを生成するFab’断片をいくつかの場合においては形成する化学的還元処理(例えば2−メルカプトエチルアミンへの暴露により)に供してもよい。これらチオール生成断片は、その後、マレイミドなどのマイケル・アクセプターとの反応を介して付着されうる。例えば、Fab’断片はその後、前述のようなストレプトアビジンで被覆した表面への付着を容易にするために少なくとも一つのビオチン実体を付着(すなわちビオチン化)するため、試薬(例えばマレイミド−ビオチン)で処理してもよい。
【0212】
当該分野において周知であるように、例えば、アナライト分子が核酸または核酸結合タンパク質であるとき、または捕捉成分がタンパク質に結合するアプタマーとして働くことが望ましいときの特定の態様は、捕捉成分として核酸を利用する。
【0213】
ある態様によれば、それぞれの結合表面は複数の捕捉成分を含む。複数の捕捉成分は、いくつかの場合において、「芝生」のような結合表面上にランダムに分布していてもよい。代わりに、捕捉成分は、異なる領域に空間的に分離していてもよく、かつ任意の所望のやり方で分布していてもよい。
【0214】
特定の態様において、捕捉成分とアナライト分子との間の結合は特異的であり、例えば、捕捉成分とアナライト分子とが結合対の相補的な部分である場合である。特定のかかる態様において、捕捉成分は、特異的かつ直接的にアナライト分子と結合する。「特異的に結合する」または「特異的な結合」とは、捕捉成分が、アナライト分子と試験試料中の他の成分または混入物質とを区別するのに十分な特異性を有してアナライト分子と結合することを意味する。ある態様によれば、例えば捕捉成分は、アナライト分子(例えば抗原)のある部分と特異的に結合する抗体であってもよい。ある態様によれば、抗体は、着目するアナライト分子に特異的に結合することができる任意の抗体でありうる。例えば、適切な抗体としては、これらに限定されないが、モノクローナル抗体、二重特異性抗体、ミニボディ、ドメイン(domain)抗体、合成抗体(ときとして抗体模倣剤として言及される)、キメラ抗体、ヒト化抗体、抗体融合(ときとして「抗体コンジュゲート」として言及される)、およびそれぞれの断片が挙げられる。他の例として、アナライト分子は抗体であってもよく、捕捉成分は抗体であってもよい。
【0215】
アナライト粒子が生体細胞(例えば、哺乳類、鳥類、爬虫類、他の脊椎動物、昆虫、酵母、細菌、の細胞など)である一つの態様によれば、捕捉成分は、細胞表面抗原(例えば細胞表面受容体)に特異的な親和性を有するリガンドであってもよい。一つの態様において、捕捉成分は、接着分子受容体またはその一部であり、それは標的の細胞タイプの表面上に発現された細胞接着分子に特異的に結合する。使用にあたって、接着分子受容体は、標的細胞の細胞外表面上の接着分子に結合し、その結果、細胞を固定化または捕捉する。アナライト分子が細胞である一つの態様において、捕捉成分がフィブロネクチンであり、それは、例えば神経細胞を含むアナライト粒子に対して特異性を有する。
【0216】
いくつかの態様において、当業者により十分に理解されているだろうが、アナライト分子との結合が高度に特異的ではない捕捉成分を使用してアナライト分子を検出することが可能である。例えば、かかるシステム/方法は、例えば異なる結合リガンドの一団などの異なる捕捉成分を使用してもよい。任意の特定のアナライト分子の検出は、「電子の鼻」が動作するやり方に類似して、結合リガンドのこの一団に結合する「特徴」を介して決定される。これによって、特定の小分子アナライトの検出において特定の有用性が見出され得る。いくつかの態様において、アナライト分子と捕捉成分との間の結合親和性は、非特異的に結合した分子または粒子を除去する洗浄工程を含むアッセイ条件下で、結合を残留させるのに十分であるはずである。いくつかの場合において、例えば特定の生体分子の検出において、アナライト分子とその相補的な捕捉成分との結合定数は、少なくとも約104と約106M−1との間、少なくとも約105と約109M−1との間、少なくとも約107と約109M−1との間、約109M−1を超え、またはそれを超えてもよい。
【0217】
結合リガンドおよび前駆標識剤/標識剤
いくつかの態様において、アッセイは少なくとも一つの結合リガンドを含んでもよい。より詳細に後述するが、結合リガンドは、アナライト分子と結びつくおよび/または他の結合リガンドと結びつくことができる、任意の好適な分子、粒子などから選択してもよい。特定の結合リガンドは、直接的(例えば検出可能な実体を介して)または間接的のいずれかで、検出を容易にできる成分を含むことができる。成分が例えば前駆標識剤分子を標識剤分子(例えばアッセイで検出される薬剤)に変換することによって、間接的な検出を容易にしてもよい。いくつかの態様において、結合リガンドは酵素成分(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、アルカリホスファターゼなど)を含んでもよい。本明細書中に考察したとおり、第一のタイプの結合リガンドは、追加の結合リガンド(例えば第二のタイプなど)とともに使用しても、使用しなくてもよい。
【0218】
いくつかの態様において、結合リガンドが複数のアナライト分子の少なくともいくつかと結びつくように、複数のアナライト分子(例えばいくつかの場合において、捕捉物に対して固定化されている)は、複数の結合リガンドに暴露されてもよい。いくつかの場合において、約80%を超える、約85%を超える、約90%を超える、約95%を超える、約97%を超える、約98%を超える、約99%を超える、またはそれ以上のアナライト分子は、結合リガンドと結びつく。
【0219】
捕捉工程において、ビーズ濃度の選択は、いくつかの競合因子に依存してもよい。例えば、熱力学的および動力学的な視点から、ほとんどの標的アナライトを捕捉するのに十分なビーズが存在する場合、それは有利でありうる。典型的な説明として、熱力学的に、それぞれが約80,000の捕捉成分(例えば抗体)に結合した、100μL中の200,000のビーズは、約0.3nMの濃度の抗体と相互に関連付けられ、その濃度のときの抗体とタンパク質との平衡は、ある場合において(例えば>70%)、標的アナライト分子の比較的高い捕捉効率を生じてもよい。動力学的に、100μL中に分散したビーズ200,000個において、ビーズ間の平均距離は約80nmであると見積もることができる。
【0220】
典型的なアナライト分子として、例えば、TNF−αおよびPSAのサイズ(それぞれ17.3kDaおよび30kDa)のタンパク質は典型的に、2時間を超えるインキュベートでは、かかるアナライト分子の捕捉が動力学的に制限されない傾向にあるように、1分間未満で80μm拡散する傾向にあるだろう。さらに、ポアソンノイズを制限するために、アレイ上に、所望の量または許容量までロードした十分なビーズを提供することもまた、有利でありうる。例として体積10μL中の200,000個のビーズがアレイ上にロードされている状況を考慮すると、典型的に、約20,000〜30,000個のビーズを、アレイのフェムトモーラーサイズのウェル中に閉じ込めてもよい。
【0221】
1%の活性ビーズの典型的なバックグラウンド信号(例えば非特異的な結合による等)において、このロードによって、検出された活性ビーズ200〜300個のバックグラウンド信号がもたらされることが予想されるだろう。これは6〜7%のポアソンノイズからの変動係数(CV)に対応し、典型的な態様において許容されてもよい。しかしながら、特定の濃度を超えるビーズ濃度は、ある場合において望ましくないかもしれない。a) バックグラウンドに対する信号(signal-to-background)を低減してもよい非特異的な結合が増加する;および/またはb) 活性ビーズの割合が低過ぎて、その結果ポアソンノイズのCVが高くなるように、ビーズに対するアナライトの比率が望ましくないぐらいに低い、という結果がもたらされるかもしれない。ある態様において、前述したもののような因子のバランスを考慮して、試験試料の100μLあたり約200,000〜1,000,000ビーズを提供することは、本発明の特定のアッセイを実施するにあたって、望ましいことであってもよく、またある場合には、最適であってもよい。
【0222】
捕捉されたアナライト分子を標識するために一つまたは二つ以上の結合リガンドを採用する本発明のアッセイの態様において、いくつかの場合において、望ましいかまたは最適な性能を得るために使用される濃度を調整することは有利であってもよい。例えば、タンパク質(捕捉タンパク質)であるアナライト分子を含む態様を考慮し、検出抗体を含む第一の結合リガンドと酵素コンジュゲート(例えばSβG)を含む第二の結合リガンドとを採用すると、捕捉されたタンパク質を標識するのに使用される検出抗体と酵素コンジュゲート(SβG)との濃度は、いくつかの場合において、許容されるバックグラウンド信号(例えば1%またはそれ以下)および許容されるポアソンノイズが得られるように制限または最小化してもよい。捕捉されたタンパク質を標識するのに使用される検出抗体と酵素コンジュゲート(SβG)との濃度の選択は、本発明のアッセイ方法の性能を改善するかまたは最適化する要素でありうる。
【0223】
ある場合において、アッセイで生成される信号が飽和状態になるのを避けるために、一部の捕捉タンパク質だけを標識することが望ましいことがあり得る。例えば、観察されたバックグラウンドレベルが標的タンパク質の〜1〜2fMに相当する特定のアッセイにおいて、ビーズに対するアナライトの比率が約0.3〜0.6となってもよいように、どのタンパク質も酵素で標識される場合、活性ビーズ数は約25〜40%の範囲にあってもよく、これは、いくつかの場合において望ましいものより高いかもしれない。
【0224】
デジタル検出アッセイにおけるダイナミックレンジの下限により近くてもよいバックグラウンド信号を生成すること−例えばある場合において、1%の活性ビーズが本発明のデジタル検出アッセイにおけるバックグラウンドに対して合理的なノイズ・フロアを提供してもよいことを考慮すると−両方の標識試薬の濃度を制限もしくは最小化すること、または、より短いインキュベート時間を用いることのいずれかによって、捕捉タンパク質の適切な標識は、標識工程の動力学的制御により潜在的に達成することができる。例えば、標識濃度が最小化されているある態様において、標準的なELISAインキュベート時間を用いることは、例えばアッセイの合計時間として〜6時間用いて、許容される結果を提供してもよい。この時間の長さは、試料にとって日々の所要時間に耐えるものであり、試験に許容されてもよい長さである。例えば<1時間などの、より短い所要時間において(例えばポイント・オブ・ケアの適用において)は、インキュベートをより短く、標識濃度をより高くして、アッセイを実施することができる。
【0225】
いくつかの態様において、結合リガンドの一つ以上のタイプを使用してもよい。
いくつかの態様において、第一のタイプの結合リガンドと第二のタイプの結合リガンドとを提供してもよい。いくつかの態様において、結合リガンドの少なくとも二つ、少なくとも三つ、少なくとも四つ、少なくとも五つ、少なくとも八つ、少なくとも十、またはそれ以上のタイプを提供してもよい。複数の捕捉物(そのうちのいくつかは少なくとも一つのアナライト分子と結びついている)が複数のタイプの結合リガンドに暴露されているとき、複数の固定化アナライト分子の少なくともいくつかは、結合リガンドのそれぞれのタイプの少なくとも一つと結びついていてもよい。さまざまな異なるやり方で結合リガンドが互いに相互作用するように、結合リガンドを選択してもよい。最初の例で、第一のタイプの結合リガンドはアナライト分子と結びつくことができてもよく、第二のタイプの結合リガンドは第一のタイプの結合リガンドと結びつくことができてもよい。かかる態様において、第一のタイプの結合リガンドは、アナライト分子との結びつきに役立つ第一の成分と、第一のタイプの結合リガンドを有する第二のタイプの結合リガンドとの結びつきに役立つ第二の成分とを含んでもよい。特定の態様において、第二の成分はビオチンであり、第二のタイプの結合リガンドは酵素またはビオチンと結びつく酵素成分を含む。
【0226】
他の例として、第一のタイプの結合リガンドと第二のタイプの結合リガンドとの両方とも、アナライト分子と直接結びついてもよい。理論や任意の特定のメカニズムに縛られることなく、第一のタイプと第二のタイプとの両方の結合リガンドの結びつきは、(例えば直接的または間接的な検出を介して)第一のタイプの結合リガンドおよび/または第二のタイプの結合リガンドの両方を含むと決定される区画のみをアナライト分子を含むものとして同定することによって、アッセイを実施するのにさらなる特異性と信頼性とを提供してもよい。結合リガンドの単一のタイプのみ(例えば第一のタイプの標識剤または第二のタイプの標識剤のみ)を有すると見出された区画を、アナライト分子を含む区画として考えないまたは計上しないことで、かかるアッセイ方法は、非特異的な結合により引き起こされる擬陽性の数を減らし得る。
【0227】
第一のタイプの結合リガンドは第一のタイプの酵素成分を含んでもよく、第二のタイプの結合リガンドは、第一のタイプの酵素成分とは異なる第二のタイプの酵素成分を含んでもよい。アナライト分子を含む捕捉物、第一のタイプの結合リガンド、および第二のタイプの結合リガンドは、第一のタイプの酵素成分に暴露されることによって第一のタイプの標識剤(例えば第一の測定可能な特性)に変換される第一のタイプの前駆標識剤と、第二のタイプの酵素成分に暴露されることによって第二のタイプの標識剤(例えば第一の測定可能な特性とは区別することができる測定可能な特性を含む)に変換される第二のタイプの前駆標識剤に暴露されてもよい。
【0228】
したがって、第一のタイプの標識剤と第二のタイプの標識剤とを含むことが決定された区画のみがアナライト分子を含むものと決定される。他の例として、第一のタイプの結合リガンドと第二のタイプの結合リガンドとはそれぞれ成分(例えばDNA標識など)を組み込んでもよく、第三のタイプの結合リガンドは、第一のタイプと第二のタイプの結合リガンドの成分に相補的な二つの成分(例えば二つのタイプの相補的DNA標識)を含んでもよい。ここで第三のタイプの結合リガンドもまた、直接的または間接的な検出のための分子または実体を含む(例えば、反応槽中の第三のタイプの結合リガンドの存在は、区画中のアナライト分子の有無を決定するために必要とされる)。
【0229】
第一のタイプの結合リガンドと第二のタイプの結合リガンドとの両方とも互いに実質的に近接近して存在しているとき(例えばアナライト分子との結びつきを介して)、アナライト分子を検出するため、それ故に、第三のタイプの結合リガンドが結びついてもよい。非特異的な結合に関連した特定の悪影響を軽減し得るやり方で結合リガンドの一つ以上のタイプを使用することに関するさらなる情報について、2010年3月24日に出願された、Duffyらの、「Ultra-Sensitive Detection of Molecules using Dual Detection Methods」と題された、自己の米国特許出願第12/731,135号;および、2011年3月1日に出願された、Duffyらの、「Ultra-Sensitive Detection of Molecules using Dual Detection Methods」と題された、自己の国際特許出願第(未定)(代理人整理番号Q0052.70012WO00)に記載されている。これらは参照により組み込まれる。
【0230】
以下の実施例は、本発明のさまざまな特徴を実証するために含まれる。添付の請求項に定義されているような本発明の範囲から逸脱しない結果と同様の結果または類似の結果が依然得られる一方で開示されている具体的な態様において多くの変化がなされ得ることを、本開示を踏まえると、当業者は十分に理解するだろう。したがって、以下の実施例は、本発明の特定の特徴を説明することのみを目的としているが、必ずしも本発明の全範囲を例証してはいない。
【0231】
実施例1
以下の例には、実施例2〜10で使用された材料が記載されている。光ファイバー束は、Schott North America(マサチューセッツ州サウスフ゛リッシ゛)から購入した。非強化ガラスシリコーンシートは、Specialty Manufacturing(ミシガン州サギノー)から購入した。塩化水素酸、無水エタノール、および分子生物学グレードのツイーン−20は、Sigma-Aldrich(ミズーリ州セントルイス)から購入した。直径2.7μmの、カルボキシルで終端された磁気ビーズは、Varian社(カリフォルニア州レークフォレスト)から購入した。1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)、N−ヒドロキシスルホスクシンイミド(NHS)、およびSuperBlock(登録商標)T-20 Blocking Bufferは、Thermo Scientific(イリノイ州ロックフォード)から購入した。ストレプトアビジン−β−ガラクトシダーゼ(SβG)は、Invitrogen、Sigma-Aldrichから購入し、また標準的なプロトコルを用いて社内でコンジュゲート化した。レゾルフィン−β−D−ガラクトピラノシド(RGP)は、Invitrogen(カリフォルニア州カールスバッド)から購入した。ファイバー研磨機および研磨用の消耗品は、Allied High Tech Products(カリフォルニア州ランチョドミンゲス)から購入した。PSAに対するモノクローナル捕捉抗体、PSAに対するモノクローナル検出抗体、および精製PSAは、BiosPacificから購入した。ChromalinkTMビオチン化試薬は、Solulink社(カリフォルニア州サンディエゴ)から購入した。精製DNAは、Integrated DNA Technologiesから購入した。
【0232】
実施例2
以下には、典型的なアナライトであるSβG捕捉のためにビオチンにより機能的にされた直径2.7μmの磁気ビーズの調製について、限定されない例が記載されている。メーカーの使用説明書に従い、DNA捕捉プローブ(5’−NH2/C12−GTT GTC AAG ATG CTA CCG TTC AGA G−3’)により機能化されたビーズを調製した。0.5MのNaClと0.01%のツイーン−20とを含むTE緩衝液中、1μMのビオチン化相補DNA(5’−ビオチン−C TCT GAA CGG TAG CAT CTT GAC AAC−3’)とともに、このビーズを終夜インキュベートした。インキュベート後、ツイーン−20を0.01%含むPBS緩衝液中、三回洗浄した。100μL中、ウェルあたり400,000ビーズとなるように、マイクロタイタープレートに、ビーズストックを分配した。マイクロタイタープレートのウェルから緩衝液を吸引した。ビーズを再懸濁し、ツイーン−20を0.05%含むSuperblock中さまざまな濃度のSβGとともにビーズを5時間インキュベートした。その後、ビーズを分離し、ツイーン−20を0.1%含む5×PBS緩衝液で6回洗浄した。
【0233】
代わりの態様において、100μLのSβG標的溶液あたりのビーズ濃度として、200,000ビーズを用いた。ビーズを再懸濁し、ツイーン−20を0.05%含むSuperBlock中希釈されたさまざまな濃度のSβGとともにビーズを54時間インキュベートした。さまざまな標的溶液をマイクロタイタープレートに100μLずつ分配した。その後、マイクロタイタープレート用磁石でビーズを分離し、ツイーン−20を0.1%含む5×PBS緩衝液で6回洗浄した。検出のために、ツイーン−20を0.1%含むPBS10μLにビーズを再懸濁し、フェムトリットル容積のウェルアレイに、そのアリコートをロードした。
【0234】
実施例3
以下には、マイクロウェルアレイの調製について、限定されない例が記載されている。30ミクロン、9ミクロンおよび1ミクロンサイズのダイヤモンド研磨フィルムを使用する研磨機で、順に、長さ約5cmの光ファイバー束を研磨した。研磨されたファイバー束を、0.025MのHCl溶液中で130秒間化学的エッチングした直後、反応を停止するために浸水させた。平均して1分間あたり約1.5〜1.7μmの速度で、ウェルはエッチングされたことになる。したがって、深さ3.25μmのウェルは約115〜130秒間で生成される。エッチングの不純物を除去するために、エッチングされたファイバーを5秒間超音波処理し、水中で5分間洗浄した。その後、ファイバーを真空下で乾燥し、ガラス表面の汚れを落とし活性化するため、5分間空気プラズマに晒した。その表面を疎水的にするために、シラン2%溶液中アレイを30分間シラン化した。いくつかの場合において、良好な封を維持しながらウェル中に単一のビーズを保持するように、ウェルの寸法(例えば3.25±0.5μm)を設定した。
【0235】
実施例4
以下には、マイクロウェル中にビーズをロードすることについて、限定されない例が記載されている。エッチングされたウェル中にビーズをロードする前に、ビーズを、アナライト分子を含む流体試料に暴露してもよい。ファイバー束のエッチングされたウェルにビーズの溶液をアプライするため、汚れていないPVC管類(1/16”I.D. 1/8”O.D.)および汚れていない熱収縮チューブ(3/16”ID)を約1cmの長さに切断した。ビーズ溶液を保持するための容器を作るため、まずPVC管類の一片を、ファイバー束のエッチングされた一端上に置き、続いて密封を提供するために、PVC管類とファイバー束との間の接合部分の周囲に熱収縮チューブを取り付けた。濃縮されたビーズ溶液の10μLを、PVC管類で作られた容器にピペットで入れた。エッチングされたウェル中にビーズを押し付けるため、その後、ファイバー束を3000rpm(〜1300g)で10分間遠心した。遠心後、PVC管類/熱収縮チューブアセンブリを取り外した。過剰なビーズ溶液を洗い落とすため、ファイバー束の遠位端をPBS溶液中に沈め、続いて脱イオン化水でその表面を洗った。ビーズ濃度が10μLあたり200,000であった態様において、50,000ウェルのアレイのうち、単一のビーズに占有されているウェルは典型的には40〜60%という結果になった。
【0236】
実施例5
以下には、マイクロウェルのアレイ中にビーズおよび酵素標識ビーズをロードおよび検出することについて、限定されない例が記載されている。蛍光画像を取得するために、水銀光源とフィルターキューブ(filter cube)と対物とCCDカメラとを含む特注で作った画像システムを使用した。特注の冶具を使用してファイバー束のアレイを顕微鏡のステージに取り付けた。β−ガラクトシダーゼの基質(RPG)の液滴を、シリコーンガスケット材料上に垂らし、ファイバーアレイの遠位端を接触させるように置いた。機械的基盤は、エッチングされた光ファイバーアレイの遠位端に接触しているシリコーンシートを正確に移動させ、単離されたフェムトモーラーの反応槽のアレイを作った。暴露時間1011ミリ秒で、577nmで蛍光画像を取得した。それぞれのファイバー束アレイにつき、五つのフレーム(フレームあたり30秒で)を要した。マイクロウェルアレイのそれぞれのウェル内における酵素活性の有無を決定するために、画像分析ソフトウェアを使用して蛍光画像を分析した。MathWorks MATLABおよびMathWorks Image Processingツールボックスを使用する先進の画像処理ソフトウェアを使用して、データを分析した。ソフトウェアは、取得した画像フレームを整列させ、反応槽を同定し、ビーズを有する反応槽を位置付け、所定の時間にわたって反応槽強度の変化を測定するものである。全データフレームにわたって十分な強度増大を有するビーズを含む反応槽を計数し、同定された反応槽すべてのパーセンテージとして活性反応槽の最終数を報告する。
【0237】
蛍光と同様に、ビーズを含むウェルを同定するための白色光を用いてアレイを画像化した。蛍光画像を取得した後、ファイバー束アレイの遠位(封がされた)端を白色光で明るくし、CCDカメラ上で画像化した。ビーズによる光の散乱により、画像上では、ビーズを含むウェルはビーズのないウェルより明るく見えた。ソフトウェアによりこの方法を使用してビーズ付きウェルを同定した。
【0238】
実施例6
以下の限定されない方法には、単一分子測定のダイナミックレンジを拡張することが記載されている。広範な酵素濃度(例えば濃度の範囲について表2を参照)にわたって、実施例5において前述した実験を繰り返した。試験された濃度に応じて、異なる方法により、この実験で得られた画像を分析した。例えば詳細な説明において前述したとおり、少なくとも一つのアナライト分子(例えば酵素)と結びついたビーズのパーセンテージが約50%(または45%、または40%、または35%など)未満であったとき、「オン」ビーズの総数を計数することによって、ビーズあたりの平均分子を決定した。ビーズを含んだウェルとして(白色光画像から)「オン」ビーズを同定した。最初のフレームに次いで、四つすべての連続したフレームにおいて、その蛍光は増加した。そしてその全体の蛍光は、最初のフレームから最後までで、少なくとも20%増加した。
【0239】
ポアソン分布の調整を使用して、「オン」ビーズの総数を調整してもよい。「オン」ビーズの比率が高いとき、撮像された二番目のフレームの強度から平均ビーズ信号が決定される。「オン」ビーズのパーセンテージが約30%と約50%との間である既知濃度の試料を使用して、アナログからデジタルへの変換係数を決定する。校正係数を活用して既知濃度の試料の結果を校正曲線上にプロットしてもよい。得られた校正曲線を使用して、流体試料中のアナライト分子の未知濃度を決定してもよい。例えば、少なくとも一つのビーズを複数の区画の少なくともいくつかをアドレスし、かつ少なくとも一つのアナライト分子または粒子を含む区画のパーセンテージ(例えば「オン」ビーズのパーセンテージ)を示す度合いを決定することによる。パーセンテージに応じて、流体試料中のアナライト分子または粒子の未知濃度の度合いは、パーセンテージに少なくとも一部基づくか、または複数のアナライト分子または粒子の存在を示す信号の測定された強度に少なくとも一部基づき、および校正曲線と数値とを比較することによって決定されてもよい。
【0240】
実施例7
以下の例には、ビオチン化されたPSA検出抗体および酵素コンジュゲートの調製および特性評価が記載されている。ChromalinkTMビオチン化試薬を使用して検出抗体をビオチン化した。この試薬は、リジン残基を介して抗体にビオチン基を付着させるスクシンイミジルエステル基と、抗体あたりのビオチン分子数を定量化できるビスアリールヒドラゾン発色団とを含む。抗PSA抗体上のビオチン基の平均数は7.5〜9.5に及んだ。標準的なプロトコルを使用してストレプトアビジン−β−ガラクトシダーゼ(SβG)をコンジュゲートした。コンジュゲート分子の>80%が一つのβ−ガラクトシダーゼ分子を含んだことが、コンジュゲートのHPLC特性評価から示された(酵素/コンジュゲートの平均は1.2であった)。それぞれの酵素分子とコンジュゲートしたストレプトアビジン分子の平均数が2.7であったことが、分子量標準との比較から示された。検出抗体それぞれが多数のビオチン基を含むが、単一の検出抗体に結合した単一のタンパク質分子は多数の酵素コンジュゲートと結合できた可能性がある。しかしながら、多数の酵素コンジュゲートが単一の検出抗体分子と結合しなかったことは、単一分子レジーム(AMB<0.1)における酵素が結びついたビーズにより生成された蛍光強度の分析により示唆され:この蛍光強度は、単一分子であるβ−ガラクトシダーゼの既知の動力学と一致する。
【0241】
実施例8
以下の例には、磁気ビーズ上でのPSAの捕捉と酵素標識された免疫複合体の形成とが記載されている。メーカーの使用説明書に従い、PSAに対するモノクローナル抗体により機能的にされたビーズを調製した。磁気ビーズ500,000の懸濁液とともに試験溶液(100μL)を23℃で2時間インキュベートした。その後、ビーズを分離し、5×PBSと0.1%のツイーン−20とで3回洗浄した。ビーズを再懸濁し、検出抗体を含む溶液(〜1nM)とともに23℃で60分間インキュベートした。その後ビーズを分離し、5×PBSと0.1%のツイーン−20とで3回洗浄した。SβGを含む溶液(15pM)とともに23℃で30分間ビーズをインキュベートし、分離し、5×PBSと0.1%のツイーン−20とで7回洗浄した。その後、ビーズを25μLのPBSに再懸濁し、10μLのビーズ溶液をフェムトリットル容積のウェルアレイにロードした。
【0242】
実施例9
以下の例には、第二のアナログ分子の態様(方程式8)に関連して前述した分析を使用するデジタルとアナログとを組み合わせた酵素標識検出を実施した典型的なシステムが記載されている。前記実施例7に記載されたSβG結合アッセイ、および、拡張されたダイナミックレンジを実証する他の実施例に記載された方法および器具を使用することは、AMBのデジタル決定とアナログ決定とを組み合わせることによって達成することができる。図13Aは、ゼプトモーラーからピコモーラーにおよぶ濃度のSβGとともにインキュベートしたビオチン提示ビーズの母集団の画像から決定されたAMBを示す。特に、図13Aおよび13Bは、デジタル決定とアナログ決定とを組み合わせることによって広いダイナミックレンジを達成したことを示す。図13Aは酵素濃度に応じてAMBをプロットしたものを示す。エラーバーは、3回の反復による標準偏差である。図13Bは、酵素濃度に応じて%活性とAMB値とを含む表を示す。%活性<70%として方程式4を使用してAMBを決定し、%活性>70%として方程式8を使用してAMBを決定した。この実施例においてアナログとデジタルとの間の閾値は10fMと31.6fMとの間にある。
【0243】
%活性ビーズ<70%である画像において、方程式4を使用してAMBdigitalを決定した。<10%の活性ビーズを有するアレイのすべては、
【数32】
を決定するために使用され、全ビーズは7566であり;
【数33】
は298auに等しかった。70%を超える活性を有する画像におけるビーズの平均蛍光強度を決定し、方程式8を使用してAMBanalog値を算出した。0MのSβG濃度から活性ビーズが得られないことから、バックグラウンド・プラス3s.d.方法を使用しても、この実験における検出の下限を算出することはできない。以前実証されたLODの220zMおよびこの曲線の線形範囲で検出されたもっとも高い濃度である316fMを使用して、酵素標識を検出するための6.2logの線形ダイナミックレンジが観察された。線形デジタルダイナミックレンジは4.7logであり、アナログ線形ダイナミックレンジは1.5logであった。
【0244】
実施例10
この例には、血清中のPSAを測定するための、組み合わされたデジタルとアナログとのシステムおよび方法が記載されている。広いダイナミックレンジを有するPSAの濃度を決定するために、組み合わされたデジタルとアナログとのやり方を使用した。臨床的に、PSAは、前立腺癌をスクリーニングするために、および、癌を除去する手術を受けた患者における病気の生化学的再発を監視するために、使用された。前立腺全摘出術(RP)を受けた患者の血清におけるPSAレベルは、0.014pg/mLから100pg/mLを超える範囲に及ぶことが知られている。1回の試験で過半数の患者におけるPSAレベルの測定を成功させるには、4logのダイナミックレンジを有するアッセイが必要となる。実施例8に記載されたように実験を行った。図14Aおよび14Bは、デジタルおよびアナログ分析を組み合わせることによって、本発明のPSAアッセイの動作範囲が0.008pg/mLから100pg/mLにまで及んだことを示し、圧倒的多数のRP患者試料におけるPSAレベルをワンパスで正確に定量できる。特に、図14Aおよび14Bは、組み合わされたデジタルおよびアナログのPSAアッセイが4logの動作範囲と0.008pg/mLの算出されたLODを示す。PSA濃度に応じて、線形−線形空間(図14A)およびlog−log空間(図14B)にAMBがプロットされている。四重の測定に基づいた全データポイントについてエラーバーを示す。
【0245】
前立腺全摘出手術後、2〜46週(平均=13.8週)で採取された前立腺癌患者17名の血清におけるPSAの濃度を測定するために、アッセイを使用した。これらの試料は、デジタルELISAの検出の下限を押し広げるため、手術後すぐに採取した。ここで、所望の臨床範囲にわたりアッセイのダイナミックレンジを評価するために、より高レベルのPSAで癌が再発した患者を捕捉するために、手術直後に採取した試料を試験した。また一方で、一流のPSA診断試験(Siemens)を使用しても、これら試料のすべてにおいて、PSAを検出することができなかった。血清試料は緩衝液で1:4で希釈され、AMBは前記方法を使用して測定された。それぞれの試料におけるPSAの濃度は、図14Bに類似した、同時に取得された校正曲線から、AMBを読み取ることによって、決定した。表4は、%CVによって与えられる信号と濃度との不正確さとともに、これらの試料から決定されたAMBとPSAとの濃度を集約している。1回の実験で、試料のすべてにおいてPSAを定量化した。これらの試料の平均PSA濃度は33pg/mLであり、高いものが136pg/mLであり、低いものが0.4pg/mLである。前立腺全摘出(RP)手術を受けた患者の、以前測定したPSAの結果と組み合わせると、臨床試料におけるPSAの検出された濃度は0.46fM(0.014pg/mL)〜4.5pM(136pg/mL)に及び、この実施例の本発明のアッセイによって提供される良好なダイナミックレンジの重要性が実証される。
【0246】
【表5】
【0247】
実施例11
図15は、明確に定義された酵素/ビーズ比率を有するビーズをもたらしたストレプトアビジン−β−ガラクトシダーゼ(SβG)にかかるアッセイを使用する、校正曲線のデジタル範囲におけるポアソン分布分析の限定されない例を示す。簡潔にいうと、ビオチン化した捕捉分子によりビーズを機能化し、これらのビーズを、さまざまな濃度のSβG酵素コンジュゲートを捕捉するために使用した。ビーズをフェムトリットルアレイにロードし、アレイのウェルのRGP溶液に封をした後、反応チャンバーに蓄積された結合酵素から2.5分間蛍光が生成され、蛍光画像を30秒毎に取得した。実験の最後にアレイの白色光画像を取得した。ビーズを含むウェルを(白色光画像から)同定し、かつこれらのビーズのうちどのビーズが結合された酵素分子と関連するか(低速度撮影の蛍光画像から)決定するために、これらのイメージを分析した。fonが非線形変化であるにもかかわらず、方程式4から決定されたAMBデジタルは50%活性まで線形反応を維持していることが図15Bに示されている。特に、図15は、ポアソン統計を使用して、%活性ビーズのAMBデジタルへの変換を示している(図15A)。中央のカラムは、酵素濃度に応じてデジタル計数により決定された活性ビーズの割合である。右のカラムは、方程式4を使用して%活性ビーズから決定された、ビーズあたりの平均酵素(AMB)である。この変換は、デジタル計数方法を使用する多数の酵素分子と結びついたビーズを統計学的に説明し;(図15B)は、酵素濃度に応じて、%活性ビーズ(菱形)とAMBdigital(四角形)とをプロットしたものを示す。ポアソン分布から期待されるように、%活性ビーズは濃度が上昇するにつれて直線から逸脱する。この実験において、AMBデジタルは、約50%活性ビーズまで濃度に対して直線を有した。三回の測定にわたり標準偏差からエラーバーを決定した。
【0248】
本発明のいくつかの態様が本明細書中に記載、説明されているが、当業者は、機能を果たすための、および/または、本明細書に記載の一つまたは二つ以上の利点および/または結果を得るための、他のさまざまな方法および/または構造物を容易に想像するだろう。そして、かかる変動および/または修飾は、本発明の範囲内であると見なされる。さらに一般的に、本明細書に記載のすべてのパラメータ、寸法、材料および設定が典型的なものを意味すること、ならびに、実際のパラメータ、寸法、材料および/または設定が、特別な利用または本発明の教示が用いられた利用に依存するだろうことを、当業者は容易に理解するだろう。当業者は、本発明の具体的な態様の多くの均等物を、認識するか、または日常の実験以上のことを使用しないで確認することができるだろう。したがって、前述の態様が例示の目的でのみ提示されていること、および、添付の請求項と、それと均等物の範囲内であれば、具体的に記載およびクレームされた範囲を超えて本発明を実施し得ることが理解されるべきである。本発明は、本明細書に記載のそれぞれ個別の特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法を対象とする。さらに、かかる特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法が相互に矛盾したものでない場合、かかる特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法の二つまたは三つ以上の任意の組み合わせは本発明の範囲内に包含されている。
【0249】
本明細書および請求項で使用されているように、不定冠詞「a」および「an」は、それとは反対のことが明確に示されない限り、「少なくとも一つ」を意味するものと理解されるべきである。
【0250】
前記の明細書と同様、請求項において、「含む(comprising)」、「含む(including)」、「有する(carrying)」、「有する(having)」、「含む(containing)」、「含む(involving)」、「保持する(holding)」などのすべての移行句は、オープンエンドであると理解されるべきである、すなわち、含むがそれに限定されないことを意味する。「からなる」および「本質的にからなる」の移行句のみはそれぞれ、クローズまたはセミクローズの移行句であるとする。
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本明細書には、流体試料中のアナライト分子または粒子の濃度を決定するために使用される分析アッセイおよびシステムのダイナミックレンジを拡張するためのシステムおよび方法が記載されている。
【0002】
関連出願
この出願は、Rissinらの、「Methods and Systems for Extending Dynamic Range in Assays for the Detection of Molecules or Particles」と題された、2011年2月11日に出願された、米国仮特許出願第61/441,894号の利益を主張するものである。またこの出願は、Rissinらの、「Methods and Systems for Extending Dynamic Range in Assays for the Detection of Molecules or Particles」と題された、2010年3月24日に出願された、米国特許出願第12/731,136号の一部継続出願であり、該一部継続出願は、Rissinらの、「Methods and Systems for Extending Dynamic Range in Assays for the Detection of Molecules or Particles」と題された、2010年3月1日に出願された、米国仮特許出願第61/309,165号の利益を主張するものである。上記出願のそれぞれは参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
試料中の標的アナライト分子を迅速かつ正確に検出することができ、特定の場合においては定量することもできる方法およびシステムは、現代における分析測定の礎となっている。かかるシステムおよび方法は、学術的および工業的研究、環境アセスメント、食品安全性、医療診断、ならびに化学的、生物学的および放射線学的な兵器剤の検出などの多くの分野で採用されている。かかる技術の有利な特徴には、特異性、スピードおよび感度が含まれ得る。
【0004】
公知の方法および技術の多くは、該方法および技術が正確に検出できる濃度のダイナミックレンジ(例えば限定されたダイナミックレンジ)により限定され、および/または、分子もしくは粒子が極低濃度で存在するときそれらを検出するための感度を有さない。
【0005】
したがって、流体試料中の分子または粒子の濃度の度合い(measure)を決定するために使用される分析アッセイおよびシステムのダイナミックレンジを拡張するための、改善されたシステムおよび方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
発明の概要
本明細書には、流体試料中のアナライト分子または粒子の濃度を決定するために使用される分析方法およびシステムのダイナミックレンジを拡張するためのシステムおよび方法が記載されている。本発明の主題は、いくつかの場合において、相互に関連する製品、特定の問題に対する代替的解決、および/または、一つまたは二つ以上のシステムおよび/または物品の複数の異なる使用を伴う。
【0007】
いくつかの態様において、流体試料中のアナライト分子または粒子の濃度の度合いを決定するためのシステムは、複数の区画(location)であって、かかる区画内に形成されているか、または含まれる結合表面をそれぞれが含む、前記複数の区画を含むアッセイ基板(ここで少なくとも一つの結合表面は、該結合表面に固定化された少なくとも一つのアナライト分子または粒子を含む)、前記複数の区画をアドレスする(address)よう設定され、アドレスされたそれぞれの区画でのアナライト分子または粒子の有無を示し、かつそれぞれの区画でのアナライト分子または粒子の数によって変化する強度を有する、少なくとも一つの信号を生成することができる少なくとも一つの検出器、および、前記少なくとも一つの信号から、少なくとも一つのアナライト分子または粒子を含む前記区画のパーセンテージを決定するよう設定され、さらに、該パーセンテージに基づいて、少なくとも一つのアナライト分子もしくは粒子を含む区画の数に少なくとも一部基づいて前記流体試料中のアナライト分子もしくは粒子の濃度の度合いを決定するか、または複数のアナライト分子もしくは粒子の存在を示す前記少なくとも一つの信号の強度レベルに少なくとも一部基づいて前記流体試料中のアナライト分子もしくは粒子の濃度の度合いを決定するよう設定された、少なくとも一つの信号処理器、を含む。
【0008】
いくつかの態様において、流体試料中のアナライト分子または粒子の濃度の度合いを決定するための方法は、アナライト分子または粒子の少なくとも一つのタイプに親和性を有する結合表面、該結合表面は基板上の複数の区画の一つを形成しているか、またはその中に含まれている、に対して固定化されたアナライト分子または粒子を提供すること、前記複数の区画の少なくともいくつかにアドレスし、少なくとも一つのアナライト分子または粒子を含む前記区画のパーセンテージを示す度合いを決定すること、および該パーセンテージに基づいて、少なくとも一つのアナライト分子もしくは粒子を含む区画の数に少なくとも一部基づいて前記流体試料中のアナライト分子もしくは粒子の濃度の度合いを決定するか、または、複数のアナライト分子もしくは粒子の存在を示す信号の強度に少なくとも一部基づいて前記流体試料中のアナライト分子もしくは粒子の濃度の度合いを決定すること、を含む。
【0009】
いくつかの態様において、流体試料中のアナライト分子または粒子の濃度の度合いを決定するための方法は、捕捉物それぞれがアナライト分子または粒子の少なくとも一つのタイプに親和性を有する結合表面を含む複数の捕捉物を、アナライト分子もしくは粒子の少なくとも一つのタイプを含むかまたは含むことが疑われる溶液に暴露すること(ここで前記捕捉物の少なくともいくつかは少なくとも一つのアナライト分子または粒子と結びつく)、前記暴露工程に供された前記捕捉物の少なくとも一部捕捉物を、複数の区画に空間的に分離すること、前記複数の区画の少なくともいくつかをアドレスし、かつ、少なくとも一つのアナライト分子または粒子と結びついた捕捉物を含む該区画のパーセンテージを示す度合いを決定すること(ここでアドレスされた前記区画は少なくとも一つの捕捉物を含む区画である)、および該パーセンテージに基づいて、少なくとも一つのアナライト分子もしくは粒子と結びついた捕捉物を含む区画の数に少なくとも一部基づいて前記流体試料中のアナライト分子もしくは粒子の濃度の度合いを決定するか、または、複数のアナライト分子もしくは粒子の存在を示す信号の強度レベルに少なくとも一部基づいて前記流体試料中のアナライト分子もしくは粒子の濃度の度合いを決定すること、を含む。
【0010】
図面の簡単な説明
本発明の他の側面、態様および特徴は、添付の図面と併せて考慮すると、以下の詳細な説明から明らかになるだろう。添付の図面は概略図であって、縮尺通りに描くことを意図していない。明確化の目的のため、すべての図においてすべての構成要素に番号を付してはおらず、また描写が、当業者に本発明を理解させるために必要でない場合、本発明のそれぞれの態様のすべての構成要素が示されてもいない。本文に言及されているすべての特許出願および特許は、その全体が参照により組み込まれる。本明細書に含まれる記載と参照により組み込まれた文書との間に矛盾がある場合、本明細書が、定義を含め、制するものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、いくつかの態様に従って実施した、ポアソン分布調整の結果をグラフ表示したものを示す。
【図2】図2は、1つの態様に従い、流体試料中の酵素濃度に対してビーズあたりに結合した酵素の平均数をグラフにしたものを示す。
【0012】
【図3】図3は、1つの態様に従い、流体試料中の酵素濃度に対してビーズあたりに結合した酵素の平均数をグラフにしたものを示し、ここでビーズあたりに結合した酵素の平均数は、二つの異なる分析方法を使用して算出される。
【0013】
【図4A−C】図4Aは、1つの態様に従い、ポアソン分布を使用したデジタル計数により決定された、ビーズあたりの平均分子(AMB)によって与えられる、有効アナライト濃度に対する活性ビーズの割合をプロットしたものを示す。 図4Bは、1つの態様に従い、有効濃度、AMBの関数としてのアナログ強度(Ibead/Isingle)をプロットしたものを示す。
【0014】
図4Cは、1つの態様に従い、(i)デジタル分析および(ii)アナログ分析からの活性ビーズ数の関数としてのAMB(%CV)における不正確さをプロットしたものを示す。
【図5A】図5Aは、本発明の態様のアッセイプロトコルの模式図を示し、ここでAMB=0.1(左)、AMB=0.6(中央)およびAMB=3である。
【0015】
【図5B−D】図5B〜Dは、おおよそのAMBが(D)0.1、(E)0.6および(F)3.0であるときの、個々のウェルにおける単一化したビーズにかかるいくつかの態様におけるアッセイを使用して作成した蛍光画像を示す。
【図6】図6は、いくつかの態様に従い、ビーズ上の酵素数の関数として生成されたレゾルフィン分子数をプロットしたものを示す。
【0016】
【図7】図7は、いくつかの態様における、光退色の速度を決定するために使用され得る、時間に対する蛍光強度のグラフを示す。
【図8】図8は、前駆標識剤を採用する本発明の方法の工程の1つの態様を描写する模式図である。
【0017】
【図9A】図9Aおよび9Bは、光学検出システムを採用するシステムの、限定されない例を示す。
【図9B】図9Aおよび9Bは、光学検出システムを採用するシステムの、限定されない例を示す。
【図10】図10は、光検出システムを有する光ファイバー集合体を採用するシステムを示す模式的なブロック図である。
【0018】
【図11】図11は、基板と封着部材とを合わせることを通して複数の反応槽(reaction vessel)を形成するための方法の態様(工程A〜D)を描写する模式的なフロー図、および基板と比較した封着部材のサイズの例(E、F)の描写である。
【0019】
【図12A】図12Aは、光を使用する検出のための実験装置を描写したものである。
【図12B】図12Bは、封着部材により封着された光ファイバーのアレイを示す。
【図13A】図13Aは、1つの態様に従い、酵素濃度の関数としてのAMBをプロットしたものを示す。
【0020】
【図13B】図13Bは、1つの態様に従い、酵素濃度の関数としての%活性ビーズおよびAMB値を含む表を示す。
【図14A】図14Aおよび14Bは、いくつかの態様に従い、PSA試料のデジタルおよびアナログ分析の組み合わせを示すプロットである。
【図14B】図14Aおよび14Bは、いくつかの態様に従い、PSA試料のデジタルおよびアナログ分析の組み合わせを示すプロットである。
【0021】
【図15A】図15Aは、1つの態様に従い、ポアソン統計を使用した%活性ビーズからAMBdigitalへの変換を示すデータ表である。
【図15B】図15Bは、いくつかの態様に従い、酵素濃度の関数としての活性ビーズ(菱形)とAMBdigital(四角形)とをプロットしたものを示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
詳細な説明
本明細書には、流体試料中のアナライト分子または粒子(例えば、細胞、細胞小器官および他の生物学的または非生物学的な微粒子など)の濃度を決定するために使用される分析アッセイ方法およびシステムのダイナミックレンジを拡張するためのシステムおよび方法が記載されている。本発明の主題は、いくつかの場合において、相互に関連する製品、特定の問題に対する代替的解決、および/または、一つまたは二つ以上のシステムおよび/または物品の複数の異なる使用を伴う。以下の考察の多くがアナライト分子を対象としているが、これは例としてのみのものであり、例えば微粒子形態のアナライトなど、他の材料を検出および/または定量してもよいことは理解されるはずである。アナライト分子および粒子のいくつかの典型的な例は、本明細書に記載されている。
【0023】
本明細書に記載の方法およびシステムは、流体試料中のアナライト分子の濃度の度合いを決定するための二つまたは三つ以上の技術を採用することによって、ある態様で使用される分析の方法およびシステムのダイナミックレンジを拡張するのに役立ち得る。本明細書に記載されているように、いくつかの態様において、ダイナミックレンジは、アナログの、強度に基づいた検出/分析の方法/システムとデジタルの検出/分析の方法/システムとを組み合わせることによって拡張されてもよい。いくつかの場合において、流体試料中のアナライト分子がより低い濃度範囲で存在するとき、単一のアナライト分子が検出されてもよく、そしてアナライト分子数が決定されてもよい。流体試料中のアナライト分子の濃度の度合いは、デジタル分析の方法/システムを使用したこのデータ(例えばアナライト分子数)に少なくとも一部基づいてもよい。いくつかの場合において、そのデータは、ポアソン分布の調整を使用してさらに操作してもよい。
【0024】
より高い濃度範囲で(例えば、単離/検出/決定する単一のアナライト分子がより実用的でなくなり得る濃度レベルで)、流体試料中のアナライト分子の濃度の度合いは、アナログの、強度レベルに基づいた技術を使用して決定されてもよい。アナログ分析の方法/システムにおいて、濃度の度合いは、測定された相対的な信号強度に少なくとも一部基づいてもよく、ここで測定された強度の合計は、アナライト分子の存在および量に相関し得る。ある態様において、例えば、着目するアナライト分子についての校正基準を広いダイナミックレンジにわたり発生させてもよい、などのように、単一のアッセイ/システムにおいて、アナログとデジタルとの両方の性能を組み合わせてもよい。一つのかかる例において、単一の校正曲線を、デジタルとアナログとの両方の定量化技術を使用して作成してもよく、ここで本明細書に記載されているように、校正のデジタルとアナログとのレジーム(regime)は校正係数を使用することによって連結される。試験流体試料中のアナライト分子の未知の濃度の決定は、試験結果(例えばアナライト分子を含む区画の数/割合(デジタル)および/または測定された強度レベル(アナログ))を校正曲線と比較することに少なくとも一部基づいてもよい。
【0025】
「ダイナミックレンジ」という用語は、当該技術分野においてそれが通常用いられている意味が与えられ、試料の希釈もしくは濃縮または類似の結果を提供するアッセイ条件(例えば採用した試薬の濃度など)の変更をせずにシステムまたは方法によって定量化され得る流体試料中のアナライト分子の濃度範囲を言い、ここで流体試料中のアナライト分子の測定濃度は実質的に正確に決定されてもよい。流体試料中のアナライト分子の測定濃度が、流体試料中のアナライト分子の実際の(例えば本当の)濃度の約10%以内である場合、流体試料中のアナライト分子濃度は実質的に正確に決定されていると考えてもよい。ある態様において、測定濃度が流体試料中のアナライト分子の実際の濃度の約5%以内、約4%以内、約3%以内、約2%以内、約1%以内、約0.5%以内、約0.4%以内、約0.3%以内、約0.2%以内、または約0.1%以内である態様において、流体試料中のアナライト分子の測定濃度は実質的に正確に決定されている。
【0026】
いくつかの場合において、決定された濃度の度合いは、本当の(例えば実際の)濃度と、約20%以下、約15%以下、約10%以下、約5%以下、約4%以下、約3%以下、約2%以下、約1%以下、または約0.5%以下で異なる。いくつかの態様において、選択したアッセイ方法を使用して既知濃度である流体試料中のアナライト分子濃度を決定し、測定された濃度を実際の濃度と比較することによって、アッセイ方法の正確性を決定され得る。
【0027】
いくつかの態様において、本発明のシステムまたは方法は、約1000(3log)、約10,000(4log)、約100,000(5log)、約350,000(5.5log)、1,000,000(6log)、約3,500,000(6.5log)、約10,000,000(7log)、約35,000,000(7.5log)、約100,000,000(8log)、またはそれ以上のダイナミックレンジにわたり、流体試料中のアナライト分子濃度を測定することが可能であり得る。
【0028】
いくつかの態様において、実質的に正確に決定され得るてもよい流体試料中のアナライト分子濃度(例えば未知濃度)は、約5000fM(フェムトモーラー)未満、約3000fM未満、約2000fM未満、約1000fM未満、約500fM未満、約300fM未満、約200fM未満、約100fM未満、約50fM未満、約25fM未満、約10fM未満、約5fM未満、約2fM未満、約1fM未満、約500aM(アトモーラー)未満、約100aM未満、約10aM未満、約5aM未満、約1aM未満、約0.1aM未満、約500zM(ゼプトモーラー)未満、約100zM未満、約10zM未満、約5zM未満、約1zM未満、約0.1zM未満、またはそれ以下である。いくつかの場合において、検出限界(例えば溶液中で決定され得るアナライト分子のもっとも低い濃度)は、約100fM、約50fM、約25fM、約10fM、約5fM、約2fM、約1fM、約500aM(アトモーラー)、約100aM、約50aM、約10aM、約5aM、約1aM、約0.1aM、約500zM(ゼプトモーラー)、約100zM、約50zM、約10zM、約5zM、約1zM、約0.1zM、またはそれ以下である。
【0029】
いくつかの態様において、実質的に正確に決定されてもよい流体試料中のアナライト分子または粒子の濃度は、約5000fMと約0.1fMとの間、約3000fMと約0.1fMとの間、約1000fMと約0.1fMとの間、約1000fMと約0.1zMとの間、約100fMと約1zMとの間、約100aMと約0.1zMとの間、またはそれ以下である。検出の上限(例えば溶液中で決定されてもよいアナライト分子の最大の濃度)は、少なくとも約100fM、少なくとも約1000fM、少なくとも約10pM(ピコモーラー)、少なくとも約100pM、少なくとも約100pM、少なくとも約10nM(ナノモーラー)、少なくとも約100nM、少なくとも約1000nM、少なくとも約10μM、少なくとも約100μM、少なくとも約1000μM、少なくとも約10mM、少なくとも約100mM、少なくとも約1000mM、またはそれ以上である。いくつかの態様において、決定される流体試料中のアナライト分子または粒子の濃度は、約50×10−15M未満、または約40×10−15M未満、または約30×10−15M未満、または約20×10−15M未満、または約10×10−15M未満、または約1×10−15M未満である。
【0030】
典型的な、組み合わされたデジタル/アナログの分析の方法/システム
以下の項目には、流体試料中のアナライト分子または粒子の濃度の度合いを決定するために使用される分析方法/システムのダイナミックレンジを拡張するための典型的な方法およびシステムが記載されている。いくつかの態様において、採用した分析方法は、低濃度で単一のアナライト分子を個々に単離し検出することができる。いくつかの場合において、分析方法は、基板(例えば、プレート、チップ、光ファイバー表面など)の表面内または表面上の複数の区画に、複数のアナライト分子を空間的に分離することを含む。低濃度範囲において、少なくともいくつかの区画に少なくとも一つのアナライト分子が含まれると同時に、かかる区画の統計的に有意な割合にはアナライト分子が含まれないように、アナライト分子が空間的に分離されてよい。ダイナミックレンジを拡張するための本発明の方法/システムとともに使用してもよい方法/システムは本明細書に記載されている。
【0031】
典型的な方法として、そして本明細書にさらに詳細に記載されているように、流体試料中の複数のアナライト分子は、それぞれがアナライト分子の少なくとも一つのタイプに親和性を有する結合表面を含む複数の捕捉物(例えばビーズ)に対して固定化されるように作製されてもよい(例えば、共同出願である、2010年3月24日に出願された、Duffyらの、「Ultra-sensitive Detection of Molecules or Particles using Beads or Other Capture Objects」と題された米国特許出願第12/731,130号;および2011年3月1日に出願された、Duffyらの、「Ultra-sensitive Detection of Molecules or Particles using Beads or Other Capture Objects」と題された国際特許出願第(未定)(代理人整理番号Q0052.7011WO00)、それぞれ参照により本明細書に組み込まれる、に記載された方法および捕捉物を参照)。少なくともいくつかのビーズ(例えば少なくとも一つのアナライト分子と結びついた少なくともいくつか)は、複数の区画(例えば反応槽)に空間的に隔離/分離されてもよく、少なくともいくつかの反応槽は、ビーズおよびアナライト分子の存在を検出するためにアドレス/インタロゲート(interrogate)されてもよい。
【0032】
いくつかの場合において、アドレスされた複数の反応槽は、少なくとも一つの捕捉物(例えば、少なくとも一つのアナライト分子と結びついているか、または、どのアナライト分子にも結びついていない)を含んでもよい反応槽の総量の一部または実質的に全部である。本明細書の考察の多くが、複数の反応槽に複数のアナライト分子を空間的に分離する前に、ビーズ(または他の捕捉物)に対してアナライト分子を固定化すること含む方法に焦点を合わせているが、これは決して限定ではなく、他の方法/システムを、アナライト分子を空間的に分離するために使用してもよい(例えばアナライト分子が捕捉物上に固定化されずに複数の区画に分離される場合)ことは理解されるはずである。当業者は、本明細書に記載の方法、システムおよび分析を、捕捉物(例えばビーズ)を採用しない方法に適用することができるだろう。
【0033】
例えば、2007年2月16日に出願された、Waltらの、「Methods and arrays for target analyte detection and determination of target analyte concentration in solution」と題された米国特許出願第20070259448号;2007年2月16日に出願された、Waltらの、「Methods and arrays for detecting cells and cellular components in small defined volumes」と題された米国特許出願第20070259385号;2007年2月16日に出願された、Waltらの、「Methods and arrays for target analyte detection and determination of reaction components that affect a reaction」と題された米国特許出願第20070259381号;2007年8月20日に出願されら、Waltらの、「Methods for Determining the Concentration of an Analyte in Solution」と題された国際特許出願第PCT/US07/019184号;および2009年9月9日に出願された、Duffyらの「Ultra-Sensitive Detection of Molecules or Enzymes」と題された国際特許出願第PCT/US09/005428号を参照。これらは参照により本明細書に組み込まれる。
【0034】
ビーズを反応槽に空間的に分離することに続いて、少なくとも一つのアナライト分子と結びついたビーズを含む、アドレスされた区画の数および/またはパーセンテージを決定するために、少なくとも一部の反応槽をアドレス/インタロゲートしてもよい。いくつかの場合において、アドレスされた区画は、少なくとも一つのビーズ(例えば、少なくとも一つのアナライト分子と結びついているか、または、どのアナライト分子とも結びついていない)を含む区画の少なくとも一部である。少なくとも一つのアナライト分子と結びついたビーズを含む区画のパーセンテージ(「活性」ビーズのパーセンテージ)は、少なくとも一つのアナライト分子と結びついたビーズ数を、アドレスされたビーズの総数で割り、100%を乗じたものである。代わりに、アドレスされた区画がビーズを含むか否かにかかわらず、活性のパーセンテージは、必要に応じて、アドレスされた区画数に基づいてもよい(すなわち、アドレスされた区画のパーセンテージとしての、活性ビーズを含む区画)。当業者には理解されるだろうが、ビーズ(または他の捕捉物)が採用されない態様において、以下の考察における「活性ビーズ」のパーセンテージは、少なくとも一つのアナライト分子を含む区画のパーセンテージ(例えば「活性区画」のパーセンテージ)に置換され得る。
【0035】
いくつかの態様において、活性ビーズの数/パーセンテージを決定することによって、流体試料中のバルク(bulk)のアナライト濃度を決定することができる。特に低濃度レベルで(例えばデジタルの濃度範囲において)、流体試料中のアナライト分子濃度の度合いは、「オン」(例えば少なくとも一つのアナライト分子と結びついたビーズを含む反応槽)または「オフ」(例えばどのアナライト分子とも結びついていないビーズを含む反応槽)のいずれかとしてビーズを数えることによって、少なくとも一部決定されてもよい。ビーズに対するアナライト分子の比率が小さい(例えば、約1:5未満、約1:10未満、約1:20未満、またはそれ以下)とき、ほとんどすべてのビーズは、ゼロまたは一つのアナライト分子と結びついている。この範囲において、活性ビーズのパーセンテージ(例えば「オン」の反応槽)は、アナライト濃度の上昇に伴い、実質的に線形的に上昇し得、デジタルの分析方法を、データの分析のために有利に使用し得る。
【0036】
しかしながら、アナライト濃度が上昇するにつれて、ビーズの有意な集団は通常、一つ以上のアナライト分子と結びつく。すなわち、少なくともいくつかのビーズには、二つ、三つなどのアナライト分子が結びついている。したがって、より多くの割合を占めるビーズが一つ以上のアナライト分子と結びつき得るため、アナライト濃度が上昇するにつれて、ある時点で、集団中の活性ビーズのパーセンテージは通常、バルクのアナライト濃度と線形的に関連しないだろう。これら濃度範囲において、デジタルの分析方法(例えば「オン」と「オフ」とのビーズを数える)を使用して、データをさらに有利に分析してもよいが、ビーズ集団に対するアナライト分子集団の結合確率の計算に、ポアソン分布の調整を適用することによって、アッセイの正確性を改善することが可能であり得る。
【0037】
例えば、ポアソン分布の調整によれば、約1.0%の活性ビーズ(例えば、ビーズ総数に対する少なくとも一つのアナライト分子と結びついたビーズの比率が約1:100)を報告するアッセイでは、ビーズの約99%はアナライト分子がなく、ビーズの約0.995%は一つのアナライト分子と結びつき、ビーズの約0.005%は二つのアナライト分子と結びついている。比較として、約20.0%の活性ビーズ(例えば、ビーズ総数に対する少なくとも一つのアナライト分子と結びついたビーズの比率が約1:5)を報告するアッセイでは、ビーズの約80%はアナライト分子がなく、ビーズの約17.85%は一つのアナライト分子と結びつき、ビーズの約2.0%は二つのアナライト分子と結びつき、ビーズの約0.15%は三つのアナライト分子と結びついている。
【0038】
非線形効果(例えば、二つ目の比較例で見られるような)は、ポアソン分布の調整を使用する試料中のアナライト分子または粒子と結びついていない統計学的に有意な割合のビーズ(例えば本明細書に記載されているとおり−下記の方程式1と関連する考察を参照)が残存する濃度範囲(例えばデジタル分析の方法/システムが濃度の度合いを正確に決定し得る範囲、例えば、いくつかの場合において、最高約20%までの活性ビーズ、最高約30%までの活性ビーズ、最高約35%までの活性ビーズ、最高約40%までの活性ビーズ、最高約45%までの活性ビーズ、最高約50%までの活性ビーズ、最高約60%までの活性ビーズ、最高約70%までの活性ビーズ、またはそれ以上)の全体にわたって、説明する(account for)ことができる。ポアソン分布は、事象の平均数が既知である場合の事象が発生する数の尤度として記載される。発生数の期待値がμであるとき、正確にν発生(νは負の整数ではなく、ν=0、1、2、・・・)する確率(Pμ(ν))は、方程式1によって決定され得る:
【数1】
【0039】
本発明のいくつかの態様において、μは、検出されたビーズ(例えば、任意のアナライト分子と結びついているか、または結びついていないかのいずれか)の総数に対する検出されたアナライト分子数の比率と等しく、そしてνは、アナライト分子をある数含むビーズの数(例えば、0、1、2、3などのいずれかの個数のアナライト分子と結びついたビーズの数)である。したがって、実験からμを決定することにより、アナライト分子の数と、さらなる計算により、濃度とを決定することができる。測定のデジタル/バイナリモードにおいて、1、2、3、4などの個数のアナライト分子と結びついたビーズが区別できない場合(例えばν=1、2、3、4が区別できない場合)、アナライト分子を含むビーズ(または区画)は単純に「オン」として特徴付けられる。ν=0の発生は、「オフ」ビーズ(または区画)の数として断定的に決定することができる。(Pμ(0))は方程式2に従い算出され得、
【数2】
期待される発生数であるμは、方程式3で与えられるように、再構成された方程式2に基づき決定してもよい。
【数3】
【0040】
アナライト分子と結びついていないビーズの発生数であるPμ(0)が、1から、他のすべての発生にかかるビーズ(例えば少なくとも一つのアナライト分子と結びついたビーズ)の総数を差し引いたものであるとき、μは方程式4で与えられる。
【数4】
【0041】
いくつかの場合において、μはまた、「AMBdigital」として本明細書で言及されている。方程式4を再編成し、計数された区画に含まれる流体試料中のアナライト分子の総数は、方程式5を使用して決定することができる。
【数5】
【0042】
したがって、分子の総数は、与えられた数のビーズに対し「オン」ビーズの割合から決定することができ、そして、流体試料中のアナライト分子濃度の度合いは、(例えば、アッセイ中の試料の任意の希釈度、インタロゲートされた捕捉物を含むウェルの数や容積などと同様)この数に少なくとも一部基づいていてもよい。結びついたアナライト分子を1、2、3、4などの個数有するビーズの数は、決定されたμと方程式1とから、Pμ(1)、Pμ(2)、Pμ(3)などを算出することによっても決定することができる。
【0043】
ポアソン分布の調整の潜在的有用性は、表1により実証されている。カラムAは、試験されたモル濃度と容積とから算出された試料中のアナライト分子の数を示している。任意の数(例えば、1、2、3など)のアナライト分子と結びついた任意のビーズが単一のアナライト分子と結びついたものと数えられる場合、カラムBは、ビーズ上に捕捉された分子の調整されていない数を示している。カラムDはポアソン調整されたデータであり、ここで二つのアナライト分子と結びついたビーズは、結合された二分子を有するとして数え、三分子と結びついたビーズを、結合された三分子を有するとして数えられている。調整されていないデータと調整されたデータとの比較は、カラムCとEとを比較することによって理解することができる。これらのカラムから、各濃度でアッセイし、算出された捕捉効率が与えられる。ここで捕捉効率は、捕捉されたアナライト分子の決定された数(調整されていないか、またはポアソン調整された)を、流体試料中に提供されたアナライト分子の数で割り、100%を乗じたものである。
【0044】
カラムCは、調整されていないデータを使用して捕捉効率を算出したものを示し、アナライト分子濃度が上昇するにつれ、捕捉効率の低下が観察される。カラムEは、ポアソン調整したデータを使用して捕捉効率を算出したものを示す。図1は、典型的なポアソン分布の調整の結果をグラフ表示したものである。調整していないデータは濃度の上昇に伴い直線から逸脱しているのに対して、ポアソン分布の調整に供されたデータは、プロットされた濃度範囲の実質的な部分を通して、実質的に線形的である。カラムDに示された結果を使用して、ビーズあたりのアナライト分子の平均数を算出することができる(例えば捕捉された分子のポアソン調整された数をアドレスされたビーズの総数で割る)。本明細書に記載されているように、ある態様において、得られたビーズあたりのアナライト分子の平均数は、校正曲線を作成するために使用してもよい。
【0045】
【表1】
【0046】
ある活性ビーズのパーセンテージを超えると(すなわち、任意のアナライト分子もしくは粒子と結びついていないビーズの集団に統計学的に有意な割合のビーズがもはや存在しないか、あるいは、任意のアナライト分子もしくは粒子と結びついていないが、あるレベルを超える−例えば、約40%、もしくは約50%、もしくは約60%、もしくは約70%より大きいまたは十分に大きい−活性ビーズのパーセンテージ(または、ビーズを使用しない態様では活性区画のパーセンテージ)をもたらすビーズの集団に統計学的に有意な割合のビーズが存在し得る、潜在的に有利である状況)、アナライト分子濃度の決定における正確度および/または信頼性の改善は、前述のようなデジタル/バイナリ計数/ポアソン分布の調整よりむしろ、またはこれらに補足して、アナログの決定および分析に基づく強度測定を採用することによって潜在的に認識されてもよい。
【0047】
より高い活性ビーズのパーセンテージにおいては、他の活性ビーズ(例えば陽性の反応槽)に取り囲まれている活性ビーズ(例えば陽性の反応槽)の確率も高くなり、これは、特定のアッセイ装置において、デジタル/バイナリの決定方法を専ら使用することに対し、ある実務上の課題を創り出し得る。例えば、特定の態様において、隣接する反応槽からある反応槽に検出可能な成分が漏出することは、ある程度起こり得る。かかる状況において、アナログの、強度レベルに基づいた技術を使用することによって、より好ましい成績を生み出せる可能性がある。
【0048】
図2は、いくつかの場合において、アナライト濃度が上昇するにつれ、活性ビーズ数がより高いレベルまで増えるように観察され得る、ポアソン調整されたデジタル読み出し技術の特徴を説明するものである。特定の態様において、ある時点でのアナライト分子濃度が、ポアソン分布調整があろうとなかろうとデジタル読み出し技術によってはもはや直線的な関係が望ましいであろう程度には得られないレベルに到達し得、そして本発明のシステム/方法に採用された分析技術は、アナログの分析方法/システムが採用されるように変更され得る。
【0049】
アナログ分析では、単一ビーズに多数のアナライト分子が結びつくことによって、より効率的および/またはより確実に定量化できるかもしれない。少なくとも一つのアナライト分子を含む複数の反応槽からの少なくとも一つの信号の強度を決定してもよい。いくつかの場合において、決定された強度は、少なくとも一つのアナライト分子を含むインタロゲートされた反応槽のすべてから決定された全部の強度の合計であってもよい(例えば、反応槽の強度は全体として決定される)。他の場合では、信号を生成するそれぞれの反応槽の強度が決定され、平均化され、平均ビーズ信号(ABS)がもたらされてよい。
【0050】
アナログとデジタルとの両方の分析方法/システムを組み合わせた本発明のアッセイ方法/システムのダイナミックレンジを拡張するために、二つの分析方法/システムの結果/パラメータを関連付ける「関連性(link)」を規定してもよい。いくつかの場合において、これは、校正曲線の補助によりなされてもよい。いくつかの態様において、流体試料(例えば試験試料)中のアナライト分子の未知濃度の度合いは、測定されたパラメータを校正曲線と比較することによって少なくとも一部決定されてもよい。ここで校正曲線は、デジタルとアナログとの両方の濃度範囲を占めるデータ点を含むため、単一のモード(すなわちデジタルのみまたはアナログのみ)の分析方法/システムと比較すると、ダイナミックレンジが拡張されている。
【0051】
未知濃度の試験試料を分析するために使用された条件と実質的に類似した条件下で、既知濃度の複数の標準化試料を用いるアッセイを実施することによって、校正曲線を作成してもよい。ある例において、活性ビーズの検出されたパーセンテージが閾値(例えば、約40%の活性ビーズ、または約50%の活性ビーズ、または約60%の活性ビーズ、または約70%の活性ビーズなど)までまたは閾値を下回って低下するとき、アナログ測定を使用して決定されたデータから、デジタル分析システム/方法に、校正曲線を移行してもよい。
【0052】
特定の態様において、組み合わせたデジタル−アナログの校正曲線を作成するために、低濃度(デジタル)および高濃度(アナログ)の分析レジームで得られた結果の間で関連付けがなされる。特定の態様において、校正曲線は、ビーズあたりのアナライト分子の平均数、または溶液中の分子濃度に対するAMBとして定義されたパラメータに、アナライト分子濃度を関連付ける。以下の考察は、アナライト分子がたまたま酵素である典型的な態様を特徴とするが、これに決して限定されず、他の態様では、他のタイプのアナライト分子または粒子を採用してもよい。
【0053】
例えば、アナライト分子は生体分子であってもよく、アッセイは酵素成分を含む結合リガンドの使用を含んでもよい。デジタル分析に好ましい範囲に収まる濃度を有する試料のAMBは、前述のように、ポアソン分布の調整を使用して決定してもよい。アナログ分析に好ましい範囲に収まる濃度を有する試料のAMBは、後述のように、アナログの強度信号(例えば平均ビーズ信号)を、変換係数を用いてAMBに変換することによって、決定してもよい。
【0054】
最初の典型的な態様において、校正曲線を作成し適切な変換係数を決定するために、校正試料に対してアッセイを行う。ここで活性ビーズのパーセンテージ(または、ビーズを採用しない態様では活性区画のパーセンテージ)は、約30%と約50%との間、または約35%と約45%との間、またはいくつかの場合において約40%であり、またはいくつかの場合において50%より大きい。この試料にかかるAMBは、前述のように、ポアソン分布の調整を使用して算出することができる。この試料では、平均ビーズ信号(ABS)も決定される。ABSとAMBとを関連付ける変換係数(CF)は、例えば方程式6に従って定義し得る。
【数6】
【0055】
したがって、アナログ決定を使用するのが好ましいレジームにおいて、ある試料(例えば未知の試料、またはアナログ領域内にある濃度を有する校正試料)のAMBは、方程式7に従い算出し得る。
【数7】
【0056】
例えば、一つの典型的な態様において、校正曲線および変換係数は以下のように決定してもよい。以下に示す表2において、デジタル/バイナリの読み出しプロトコルを使用して決定されたもっとも濃度が高いアナライト分子(例えば、この典型的な態様における酵素)(約7fM)は、約42.36%の活性ウェルで発生した。このデジタル信号を、ポアソン分布調整を用いて調整して結合した分子の総数を決定し、そのAMBは0.551に決定された。この濃度レベルで収集されたデータはまた、分析して平均ビーズ信号を決定した(このABSは約1041蛍光ユニットに等しかった)。したがって、アナログからデジタルへの変換係数は、方程式6を使用して算出すると、0.000529AMB/蛍光ユニットであった。
【0057】
比較的高濃度範囲を有する他の試料にこの変換係数を適用することによって、AMB値を決定することができる(例えば方程式7に記載されているように)。アナログからデジタルへの変換係数を用いた平均ビーズ信号(例えば表2中の平均ビーズ化ウェル強度)からAMBへの変換と、いくらか低い濃度でデジタル的に決定されたAMB値とが、表2で説明される。組み合わせたデジタル/アナログ校正データは、濃度に対するAMB値の単一校正曲線上にプロットすることができる。図3は、デジタルデータとともにプロットされた、変換されたアナログデータのグラフ表示を示す。アナログ値は、AMBに変換され(データポイント14)、AMB値とともに、ポアソン調整されたデジタル読み出し範囲にプロットされている(データポイント12)。
【0058】
【表2】
【0059】
表1および2に一覧にされた実験に基づき、記載されたやり方によって実証されたダイナミックレンジは、6logより大きかった。一般的に、分析のシステム/方法のダイナミックレンジは、デジタル読み出しにかかる検出の下限(例えば記載されている具体例では、約227zM)およびアナログ読み出しにより試験され正確に定量化されたもっとも高い濃度(例えば、この例では、約700fM)、すなわち6.5logに境界される。分子集合体からのアナログ信号を測定する能力しか持たないプレートリーダー上の同じ試験試料に対して達成できる約3logのダイナミックレンジと、このダイナミックレンジを比較してもよい。
【0060】
二つ目の典型的な態様において、ビーズに対するアナライト分子の比率が低いとき、アナライト分子と結びついていないビーズ(「オフ」ビーズ)の数が有意である場合、検出されたビーズ総数に対する活性な、アナライト分子と結びついた(すなわち「オン」)ビーズの数を、前述のようなポアソン統計を通じてAMB(すなわちAMBdigital)を決定するために使用してもよい。しかしながら、比率がより高いときには、校正曲線を作成する最初の典型的な態様において、修正されたやり方が前述のものから得られる。この態様において、ビーズに対するアナライト分子の比率がより高く、ビーズのほとんどが一つまたは二つ以上の結合したアナライト分子を有し、そして計数のやり方がより不正確になるとき、AMB(すなわち、AMBanalog)は、アレイ中にビーズを含むウェルの平均蛍光強度(
【数8】
)から決定される。
【0061】
アナログレジームにおいて
【数9】
をAMBに変換するために、<10%の活性ビーズを有する画像を、単一の酵素分子の平均アナログ強度(
【数10】
)を決定するために使用してもよい。アナログAMBはすべてのビーズにわたる
【数11】
の
【数12】
に対する比率によって提供され、校正曲線は以下のようにして作成することができる。検出したそれぞれのビーズと結びついた分子(例えば酵素)の数を決定するために、ビーズを含むウェルの平均蛍光強度を測定することによって、デジタルレジームを超えて、アッセイのダイナミックレンジを拡張してもよい。この態様において、AMBは、活性ビーズの平均蛍光強度(
【数13】
)と、単一のビーズから生成される平均蛍光強度(例えば単一の酵素;
【数14】
)とから決定することができる。アナログ範囲におけるアレイのAMB(AMBanalog)は方程式8により定義される。
【数15】
【0062】
例えば方程式9に示されるように、一つまたはゼロのいずれかの分子と結びついた大部分のビーズが優位を占める場合、
【数16】
を決定するためには、AMBdigital(例えば方程式4を参照)とAMBanalog(方程式8)とを、活性ビーズの比率の点で明確に同等と見なすことができる。いくつかの場合において、(例えば、本明細書に記載されているように)基質の減損からの寄与が無視できる場合、これらの値は同等と見なされる。いくつかの場合において、アレイを分析し、「オン」ビーズの比率が<0.1であったとき、この条件はこれらの基準を満たすものと考えられる。
【数17】
【0063】
このとき、デジタル(AMBdigital(方程式4))とアナログ(AMBanalog(方程式8))との両方の範囲で、AMBをプロットすることができる。二つの曲線は、一つの校正曲線に組み合わせてもよい。
【0064】
二つ目の態様においてデジタルとアナログとのデータを組み合わせるとき、
【数18】
を決定するために実験を採用してもよい。この実験は試料を用い、ここで活性ビーズの比率は、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、またはそれ以上より小さい。いくつかの場合において、活性ビーズの比率は約10%である。この範囲をカバーする校正データポイント、またはこの範囲においてデジタル信号を有することが知られている具体的なコントロール試料を使用することによって、前述のようにこれを達成してもよい。fon<0.1である校正曲線において二つまたは三つの濃度を有する場合、
【数19】
を決定するために、個々のビーズの強度(例えば、個々の酵素分子の動力学的活性)を平均化することができる。酵素の場合、単一の酵素分子速度(例えば酵素代謝回転速度)に関連した固有変動を平均化することは、
【数20】
の測定に対する有意な変動がほとんど観察されないかまたはまったく観察されないようにしてもよい。
【0065】
N回測定に応じて、平均単一酵素強度(
【数21】
)における不確実性は
【数22】
によって与えられることができ、ここで
【数23】
は正規分布した単一酵素分子強度の幅パラメータである。例えば、平均単一酵素速度の幅パラメータが30%であり、1000を上回る単一分子を平均するとき、平均値である
【数24】
に加味される不確実性は1%であった。活性ビーズの割合が上昇するとき(例えば10%およびそれを超える)、AMBを決定するためには、理論上、デジタル計数とアナログ強度との両方を使用することができる。あるパーセンテージの活性ビーズを下回るとき(例えば、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約5%未満、またはそれ以下)、多数の酵素と結びついたビーズの寄与は、
【数25】
が活性ビーズの%の測定ノイズを超えて変動しないほど、かつアナログのやり方が正確な結果を提供しないだろうほど、小さいだろう。
【0066】
前述のように、fonが100%に達すると、「オン」と「オフ」とのビーズを数えることによっては、AMBの正確な測定は、提供され得ない。「オン」ビーズのパーセンテージが中間のとき、AMBdigital(方程式4)を使用する後述の活性ビーズとAMBanalog(方程式8)を使用する前述の活性ビーズとの割合の閾値を決定するためには、さまざまな係数を考慮してもよい。デジタルとアナログとの信号の変動に起因するAMBにおける不正確さをプロットすることによって、この閾値の選択を説明してもよい。
【0067】
例えば、図4Aは、ポアソン分布(方程式4)を使用してデジタル計数から決定される(AMBによって与えられる)有効濃度に対する活性ビーズの割合のプロットを示す。濃度が上昇するにつれて、活性%の勾配は緩やかになり、信号の不確実さによってもたらされる、決定された濃度における不確実さは大きくなる。図4Bは、AMB(方程式8)である有効濃度に応じてアナログ強度(Ibeads/Isingle)をプロットしたものを示す。低濃度では、強度測定における変動によって、多数の酵素における小さい増加分を検出するのが困難になる可能性があり、かつ外挿されたAMBのCVは高い。
【0068】
図4Cは、(i)デジタル分析および(ii)アナログ分析からのfonに応じてAMB(%CV)における不確実さをプロットしたものを示し、両方法においてCV信号を7.1%の一定とする。いくつかの場合において、デジタルからアナログへの閾値(例えば、デジタル分析(例えば方程式4)またはアナログ分析(例えば方程式8)を使用する間で濃度決定の移行がある閾値は、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、または約50%と約80%との間、または約60%と約80%との間、または約65%と約75%との間である。特定の態様において、この閾値は約70%、または約75%と約85%との間である。試料実験にかかる実施例8および9を参照。
【0069】
図5は、AMBを変動して決定がなされたアッセイを描写したものである。図5A(左)はAMB=0.1を示し、ここで活性ビーズのそれぞれは統計学的に大部分の単一アナライト分子と結びついており、デジタル分析を実施してもよい。図5A(中央)はAMB=0.6を示し、ここで有意な数の活性ビーズは一つ以上のアナライト分子と結びついており、アナログ分析またはデジタル分析を実施してもよい。デジタル分析を実施する場合、ビーズあたりの多数のアナライト分子は、ポアソン分布の分析を使用することによって説明し得る。
【0070】
図5A(右)はAMB=3を示し、ここで実質的にすべてのビーズが一つ以上のアナライト分子と結びついている。この場合、上述のように、活性ビーズの平均蛍光強度の測定によって、かつ、単一のアナライト分子(例えば酵素)によって生成された平均蛍光強度の情報から、ビーズあたりのアナライト分子の平均数を定量化してもよい。図5B〜Dは、おおよそのAMBが(D)0.1、(E)0.6および(F)3.0のとき、個々のウェル中の単一化したビーズの、本明細書に記載されているようなアッセイを使用して作成された、蛍光画像を示す。
【0071】
いったん、流体試料中のアナライト分子濃度の度合いとAMBとが関連付けられる校正曲線が展開されると、その校正曲線を使用して、試験試料(例えば未知試料)中のアナライト分子濃度の度合いを決定してもよい。校正試料に対して実施されたやり方と類似のやり方(例えば、複数のビーズに対してアナライト分子を固定化すること、および複数の反応槽に複数のビーズの少なくとも一部を空間的に分離することを含む)でアッセイを実施してもよい。複数の反応槽に複数のビーズを空間的に分離することに続いて、複数の反応槽の少なくとも一部を、特定の態様においては複数回、インタロゲートしてもよい。
【0072】
例えば、少なくとも約1回、少なくとも約2回、少なくとも約3回、少なくとも約4回、少なくとも約5回、少なくとも約6回、少なくとも約7回、少なくとも約8回、少なくとも約9回、少なくとも約10回、またはそれ以上インタロゲートを実施してもよく、該インタロゲートは、例えば、約1秒、約2秒、約5秒、約10秒、約20秒、約30秒、約40秒、約50秒、約1分、またはそれ以上の時間で隔てられている。それぞれのインタロゲートによって、一セットのデータが作成されてもよい。少なくとも一つのアナライト分子と結びついたビーズのパーセンテージ(例えば活性ビーズのパーセンテージ)(または、例えば、ビーズを採用しない態様においては活性区画のパーセンテージ)を決定するためにデータを分析してもよい。
【0073】
いくつかの態様において、活性ビーズ(または区画)のパーセンテージが約80%未満、約70%未満、約60%未満、約50%未満、約45%未満、約40%未満、約35%未満、約30%未満、約25%未満、または約20%未満である場合、流体試料中のアナライト分子または粒子の濃度の度合いは、少なくとも一つのアナライト分子または粒子を含むと決定された区画の数/パーセンテージに少なくとも一部基づいてもよい。すなわち、データの少なくとも一セットは、本明細書に記載されているように、デジタル分析の方法(ポアソン分布の調整による調整をさらに含んでもよい)を使用して分析してもよい。
【0074】
例えば、AMBは本明細書に記載されているように(例えばポアソン分布の調整を使用して)決定してもよく、濃度はAMBと校正曲線との比較によって決定してもよい。いくつかの場合において、使用するデータのセットは、(例えば酵素基質が検出可能な実体に変換されるのに充分な時間を確保するため)時間的により遅れて収集したデータセットでもよい。流体試料中のアナライト分子濃度の度合いは、測定されたパラメータと、(例えば少なくとも一つの校正係数の決定によって少なくとも一部形成された)校正曲線との比較に少なくとも一部基づいてもよい。
【0075】
他の態様において、例えば、活性ビーズのパーセンテージが比較的高い場合(例えば約30%を超え、約35%を超え、約40%を超え、約45%を超え、約50%を超え、約60%を超え、約70%を超え、約80%を超え、またはそれ以上)、流体試料中のアナライト分子または粒子の濃度の度合いは、複数のアナライト分子または粒子の存在を示す少なくとも一つの信号の強度レベルの度合いに少なくとも一部基づいてもよい。すなわち、そのデータは、本明細書に記載されているように、アナログ分析方法の一つを使用して分析してもよい。例えば、方程式7または方程式8を使用して試料に対して、AMBを決定してもよい。
【0076】
AMBは、流体試料中のアナライト分子濃度の度合いを決定するために、校正曲線と比較してもよい。いくつかの場合において、(例えば本明細書に記載されているように、基質の減損、光退色などに関連した困難を制限するため)使用したデータのセットは時間的により早く収集したデータセットであってもよい。流体試料中のアナライト分子濃度の度合いは、測定されたパラメータと、(例えば少なくとも一つの校正係数の決定によって少なくとも一部形成された)校正曲線との比較に少なくとも一部基づいてもよい。
【0077】
さらに他の態様において、例えば、活性ビーズのパーセンテージが約30%と約80%との間、または約40%と約70%との間、または約60%と約80%との間、または約65%と約75%との間、または約30%と約50%との間、または約35%と約45%との間、または40%付近であってもよい濃度の中間範囲では、流体試料中のアナライト分子または粒子の濃度の度合いは、デジタル分析方法によって決定されるように、およびアナログ分析方法によって決定されるように、アナライト分子または粒子の濃度の度合いの平均に基づいてもよい。すなわち、データの少なくとも一つのセットは、本明細書に記載されているように、デジタル分析方法および/またはアナログ分析方法を使用して分析してもよい。流体試料中のアナライト分子濃度の度合いを決定するために、(デジタルおよび/またはアナログの分析方法、および/または二者の平均から)AMBを決定し、そのAMBを校正曲線と比較してもよい。
【0078】
いくつかの態様において、アナライト分子の存在/濃度を示す信号の決定に加えて、少なくとも一つのバックグラウンド信号を決定してもよい。いくつかの場合において、データのセットからAMBを算出する前に、分析されたデータセットから、バックグラウンドのデータセットを差し引いてもよい。試験試料(例えば複数のビーズ上に固定化されていてもよいアナライト分子)を区画に空間的に分離する前に、および/または、信号を発現させるために複数の酵素基質(または他の前駆標識剤)に暴露させる前であるが空間的な分離の後に、区画のアレイをアドレスすることによってバックグラウンドのデータセットを収集してもよい。
【0079】
いくつかの態様において、アナライト捕捉用の複数の捕捉物に加えて、複数の対照物も提供および/または採用してもよい。対照物は、これに限定するものではないが、後述するように、複数の区画の配向(orientation)の同定(例えば複数の区画が反応部位や反応槽などのアレイとして形成される場合)アッセイの品質の決定を助けること、および/または、検出システム(例えば光学インタロゲートシステム)の校正を助けることを含む、さまざまな目的に有用であり得る。一つ以上のタイプの対照物(例えば対照物の第一のタイプはアッセイの品質を決定し、対照物の第二のタイプは区画マーカーとして作動する)が、アッセイのフォーマット(format)に存在してもよいこと、または単一のタイプの対照物が前述の機能の一つ以上を有してもよいことは理解されるはずである。
【0080】
いくつかの場合において、アレイ上の複数の区画(例えば反応槽や部位など)の配向を同定するために、対照物を使用してもよい(例えばアレイ用の区画マーカーとして機能する)。例えば、対照物は、アレイ上にランダムにまたは特異的に分布していてもよく、アレイの配向/位置を決定するための一つまたは二つ以上の参照区画を提供してもよい。かかる特徴は、アレイの一部からの多数の画像を異なる時間間隔で比較するとき、有用であり得る。すなわち、画像を登録するのに、アレイにおける対照物の位置を使用してもよい。いくつかの場合において、重複する小さな領域からなる複数の画像をより大きな画像を形成するために組み合わせる態様において、参照区画を提供するのに、対照物を使用してもよい。
【0081】
アッセイに対照物が存在することによって、アッセイの品質に関する情報が提供されてもよい。例えば、酵素成分を含む対照物は区画に含まれていることがわかっているが、標識剤(例えば酵素成分を含む対照物を前駆標識剤に暴露することによって存在し得る生成物)が存在しない場合、これによって、アッセイのある側面が適切に機能していないかもしれないという示唆が与えられる。例えば、試薬の質が落ちているかもしれない(例えば、前駆標識剤の濃度が低過ぎる、前駆標識剤の分解など)、および/または、おそらくすべての区画が前駆標識剤に暴露されていなかった、などである。
【0082】
いくつかの態様において、検出システムを校正するために、対照物を使用してもよい。例えば、対照物は、光学検出システムを校正するために使用し得る光学信号を出力してもよい。いくつかの態様において、対照物は、検出システム性能に対する品質管理チェックとして作動できる特定の特性(例えば、蛍光、色、吸光度など)で特徴付けられ、ドープ(dope)されることができる。
【0083】
いくつかの場合において、システムを標準化または正常化して、試験に使用されるアレイの異なる部分間および/または二つの異なるアレイ間で、時間の経過とともになど(例えば、検出システム、アレイ、試薬など)、異なるアッセイにおける異なるシステム成分の、性能および/または特性の変動を説明するために、対照物を使用してもよい。例えば、実験装置、パラメータおよび/または変化によって、異なる時点で単一のアレイから生成された信号(例えば蛍光信号)の強度、または同じもしくは異なる時点で少なくとも二つのアレイ間の変化がもたらされ得る。さらに、単一のアレイにおいて、アレイの異なる部分は異なるバックグラウンド信号を生成し得る。
【0084】
かかる変動は、アレイ間、アレイの部分間または多重時間の校正信号における変化(例えば平均ビーズ信号の決定)に繋がり得、それはいくつかの場合においては不正確な決定に繋がり得る。変動を引き起こすかもしれないパラメータの限定されない例として、標識剤の濃度、温度、焦点、検出光の強度、アレイ中の区画の深さおよび/または大きさなどが挙げられる。いくつかの態様において、かかる変動の一部または全部の効果を説明するために、複数の対照物を利用してもよい。いくつかの場合において、かかる対照物は、本質的にアナライト分子または粒子と結びつかない。特定の態様において、約20%、約10%、約5%、約1%など未満の対照物は、アナライト分子または粒子と結びついている。
【0085】
対照物は、捕捉物と区別できるものであってもよく(例えばそれぞれが区別できる信号を生成してもよく)、対照物と結びついたアナライト分子がアナライト分子の濃度決定の要因とならないように、システムが設定されていてもよい。異なるアレイ間のインタロゲート値または単一アレイの領域におけるインタロゲート値を正常化するために、対照物からの信号を使用してもよい。例えば、対照物からの信号は、アレイ間でおよび/または単一アレイについておおよそ等しいはずであるため、対照物の信号を適切な値に標準化し、非対照物(例えば、アナライト分子と結びついた捕捉物)の信号をそれに基づいて調整してもよい。
【0086】
具体例として、いくつかの場合において、活性10%に等しいかまたはそれ未満の対照物の群をアレイに提供してもよい。捕捉物からの
【数26】
は、デジタルAMB(例えば方程式4)とアナログAMB(例えば方程式8)とを等しくさせることによって決定してもよい。流体試料中のアナライト分子が低濃度のとき、アナログ領域における活性対照物のパーセンテージおよび流体試料のAMBanalogは、対照物を使用して決定された
【数27】
を使用して算出してもよい(例えば、流体試料からのアナライト分子と結びついた捕捉物を使用して算出した
【数28】
は使用しない)。この値は対照物(例えば、他の決定および/または対照物のインタロゲートにより校正されてもよい)を使用して決定されるため、
【数29】
におけるアレイからアレイの、アレイ内の、および/または、日々の変動によって引き起こされるAMBanalogの任意の不正確さが、このやり方によって低下され得る。
【0087】
対照物は、区画のアッセイアレイの至るところに分散配置されていてもよく、またはアッセイ捕捉物から隔離された一連の区画に分離されていてもよい。例えば、分離された一部の捕捉物は、捕捉物を含む領域から隔離されたアッセイ部位上の領域に提供されてもよく、これら部位にかかる
【数30】
の値は、アレイのこの特定の部分またはアレイのこのセットにかかる方程式8に特異的な分母を提供する。かかる場合において、対照物が捕捉物から空間的に隔離されているため、捕捉ビーズが対照物と区別できることは必ずしも必要ではない。
【0088】
いくつかの態様において、高解像度を有する画像カメラの使用を通じて、増大したダイナミックレンジが生成または強化されてもよい。例えば、前記の測定(例えば表2に与えられる)は、12ビットのカメラを使用して得られた。カメラの電子解像度の「n」ビットの特性評価は、2nで量子化されたアナログ強度ユニットが決定できることを示す。よって、12ビットのカメラでは、4096の離散強度の増分が区別し得る。このように、3.6logのオーダーのダイナミックレンジは一般に達成できるものであり、本明細書に記載されているように、カメラの解像度が向上することによって、デジタル分析レジームで正確に測定され得る濃度のダイナミックレンジが拡張され得る。
【0089】
通常、本発明の実施は、任意の特定のダイナミックレンジまたはカメラのタイプに特に限定されない。前記で考察した技術に代わって、または加えて、ダイナミックレンジを拡張またはさらに拡張するために、他の方法/システムを採用してもよい。例えば、より大量のビーズ(または他の捕捉物)の検出によって、ダイナミックレンジを拡張してもよい。結果が前記表に一覧にされた例において、アナライト分子を含む試料に暴露されたビーズの約13%が検出された。しかしながら、他の態様において、インタロゲートされた反応槽(例えば区画)の数を増やすことによって、および/または、視野がより大きいカメラを使用することによって、100%の試料に暴露されたビーズが検出できた。
【0090】
ダイナミックレンジのデジタル計数の限界において、数が増加したビーズを検出することによって、少なくとも1以上のlogの差で、ダイナミックレンジを拡張できた(例えば、約4.5logから約5.5logまでで、全範囲を約7.5logまで拡大する)。より多くのビーズを使用し、デジタル読み出し分析の方法/システムの検出限界(LOD)を下げることによっても、ダイナミックレンジを拡張できる。より多くの事象を計数することができるので、例えばビーズの数を増加することによって、ポアソンノイズの極限効果を低減させてもよい。
【0091】
特定の態様において、本発明にかかる一つまたは二つ以上の前記のダイナミックレンジを拡張する技術を用いて、試料あたりの単一アナライト分子を検出することが可能であり得る。ダイナミックレンジは、より高い濃度の、アナログ分析範囲においても拡張することができる。例えば、カメラの電子解像度を増大すること(例えば24ビットの光電子倍増管によるラインスキャンまたは最新式の16および18ビットの画像カメラの使用)によって、アナログ測定のダイナミックレンジを拡張してもよい。
【0092】
後述するように、検出可能な信号の生成を容易にするために前駆標識剤を使用する態様(例えば酵素標識されたアナライト分子またはアナライト分子に付着した結合リガンドを使用するアッセイ)において、検出され得る標識剤分子(例えば変換された酵素の基質分子)が少なくなるにつれ、アナライト分子が複数の区画に分離され、検出する標識剤に変換される前駆標識剤に暴露された後、より短い時間間隔(すなわちより短いインキュベーション時間の後)での画像の取得もまた、ダイナミックレンジを拡張することが可能であり得る。例えば、結果が表2に一覧になっている例において、もっとも低いアナログ測定は1041アナログカウントであった(表2参照)。
【0093】
使用した12ビットのカメラは16カウントから65536カウントまでのダイナミックレンジを有する。いくつかの態様において、インキュベート時間を短縮し、カウント下限での測定を取得することによって、ダイナミックレンジを拡張してもよく(例えば、もっとも低いアナログ測定は潜在的に(例えば1041カウントの代わりに)16カウントでなされることができる)、したがって、アナログの全ダイナミックレンジは3.6logとなり、これはデジタル+アナログの全ダイナミックレンジ約8.1logと同じである。同様な効果は、画像の取得時間(例えば、光がCCDチップにあたるまでの間、シャッターが開いている)を短縮することによっても達成できる。
【0094】
また、その時間は、デジタルからアナログへの切り替え点で、可能なアナログ反応のうちもっとも低いものが得られるように最小化することができ、かつダイナミックレンジを最大化することができる。特定の態様において、これらの変化によって、12ビットのカメラに対して9log超過のダイナミックレンジが潜在的にもたらされ得る。例えば、12ビットのカメラにおいて、ここに記載のデジタルおよびアナログ測定に対し前記変化を実施することによって、(5.5logデジタル+3.6logアナログ)9.1logの全ダイナミックレンジを達成し得る。16、18および24ビットの画像システムを使用することによって、そのダイナミックレンジはそれぞれ、10.3、10.9および12.7logに拡張できた。
【0095】
いくつかの場合において、本明細書に記載のデジタルからアナログへの変換は、基質の減損および/または光退色を説明するための技術および分析を含んでもよい。アッセイが、アナライト分子(またはアナライト分子と結びついた結合リガンド)に暴露されることにより前駆標識剤(例えば酵素基質)から形成される標識剤(例えば蛍光性の酵素産物)を検出することを含む態様において、基質の減損が発生してもよい。例えば、反応槽が一以上のアナライト分子(または結合リガンド)を含む態様において、基質の減損を説明するのに有利であり得る。例えば、ある実験において、おおよそ210万の基質分子が反応槽中、代謝回転に利用できることを考慮しなさい。
【0096】
この例において、酵素成分であるβ−ガラクトシダーゼは、100μMの基質濃度で186s−1の代謝回転速度を有する。(例えば反応槽中に存在する)ビーズあたりの酵素成分または分子(または結合リガンド)が一つしかない場合、酵素成分は、三分間の実験の時間を超えても、その活性の99%を保持する。他方、ビーズあたり(または、より高い濃度の試料では反応槽あたり)の酵素成分または分子が平均で50である場合、活性全体のおおよそ43%は、基質の減損により、実験の時間内に失われ得る。反応チャンバー活性の全体におけるこの損失は、酵素成分または分子を10含むチャンバーから期待されるだろう強度の値より少なくなっているという結果を招き得る。
【0097】
いくつかの態様において、アナログ測定の正確性に対する基質の減損の効果を軽減するために、さまざまな技術を採用してもよく、ここで考察される例のうち二つを挙げる。第一に、分析するデータセットを収集する時間を短縮してもよい。強度の値を算出するために、より長い時間(例えばt=0およびt=150秒)の代わりに、例えばt=0およびt=30秒での蛍光画像を使用してよい。より短時間で測定を実施することによって、減損される基質の量を減らしてもよく、かつ蛍光物質形成の線形速度を維持する助けになっていてもよい。さらに、多数回(例えばt=0、30、60、90、120、150秒で)に対して二回(例えばt=0およびt=30で)、蛍光産物を含む反応チャンバーを励起光に暴露することによって、光退色効果を減らしてもよい。表3は、典型的なアッセイ態様の基質の減損により、酵素活性が徐々に減少することを説明している。
【0098】
【表3】
【0099】
例えば、図6は、基質の減損を考慮し、ビーズを含む封をされたウェル中の酵素分子数に応じて、100μMのRPG溶液から、アッセイ測定の間にレゾルフィンに変換されたRPG量の理論曲線を示す。無制限の感度(例えばビット数に限定されない)を有するカメラを使用してアッセイを実施し、封をした直後に撮像を開始すると仮定すると、アッセイはAMB=50を超えておおよそ直線を保持し得る。具体的に図6は、ビーズ上の酵素数の関数として、150秒の実験の間に産生されたレゾルフィン分子数をプロットしたものを示し、ここで、モデル化の理論的制限は、(i)画像取得がt=0で始まり(封をしてすぐ)、いずれのRGPもレゾルフィンに変換される前である場合;および(ii)画像取得が封をした後t=45秒で始まる場合である。
【0100】
基質の減損の効果を軽減するために採用してもよい他の技術として、基質濃度を上昇することが挙げられる。前記の例における酵素/基質の対のKmは約62μMであった。酵素の代謝回転速度は、ミカエリス−メンテンの式によって明らかにされるように、基質濃度によって定義される。基質濃度がKmより大過剰であると、酵素の代謝回転速度はプラトーになり始めるだろう。例えば基質が約400μMのとき、酵素の代謝回転速度の平均は約707s−1であるのに対して、約200μMのときの代謝回転速度は約624s−1であり、約100μMのときの代謝回転の平均は約504s−1である。
【0101】
基質の濃度を約400μMから約200μMと半分に減らすことによって、代謝回転速度が約11%低下するという結果になるのに対して、基質の濃度を約200μMから約100μMに減らすことによって、代謝回転速度は約20%も低下するという結果になる。それ故に、基質の減損が、高い基質濃度を使用するアッセイ測定の間に起こる場合、この減損は、より低い基質濃度(例えばKmに近い)を使用するときに発生する消耗と比較して、酵素の代謝回転に対する効果がより小さいものであり得る。表4は、基質濃度が変わるときの消耗効果における変化の例を説明するものである。
【0102】
【表4】
【0103】
いくつかの態様において、生の蛍光強度に対する光退色効果を軽減するために、蛍光物質の光退色速度を決定してもよい。図7に示される例において、光退色速度は、検出される蛍光物質を含む溶液(10μMのレゾルフィン)を反応槽中に含むこと、および2000ミリ秒の暴露時間により15秒毎に蛍光減少を50分に亘り観測することによって決定した。データの指数関数適合によって、0.0013s−1の光退色速度kphが得られた(図7参照)。固有のkphは、アッセイシステム装置それぞれに使用される具体的な光学パラメータに対して決定でき、そして生の蛍光の強度に対する光退色効果のために収集したデータセットを調整するのに使用することができる。
【0104】
以下の項目は、本発明にかかる前述した分析方法/システムのさまざまな態様を実施するのに使用してもよい分析アッセイの方法/システム、アナライト分子、分析器のシステムなどのさまざまな側面に関連した、さらなる説明、例および手引きを提供する。追加情報として、2010年3月24日に出願された、Duffyらの、「Ultra-Sensitive Detection of Molecules or Particles using Beads or Other Capture Objects」と題された米国特許出願第12/731,130号;2011年3月1日に出願された、Duffyらの、「Ultra-Sensitive Detection of Molecules or Particles using Beads or Other Capture Objects」と題された国際特許出願第(未定)(代理人整理番号第Q0052.70011WO00);2007年2月16日に出願された、Waltらの、「Methods and arrays for target analyte detection and determination of target analyte concentration in solution」と題された米国特許出願第20070259448号;2007年2月16日に出願された、Waltらの、「Methods and arrays for detecting cells and cellular components in small defined volumes」と題された米国特許出願第20070259385号;2007年2月16日に出願された、Waltらの、「Methods and arrays for target analyte detection and determination of reaction components that affect a reaction」と題された米国特許出願第20070259381号;2010年3月24日に出願された、Duffyらの、「Ultra-Sensitive Detection of Molecules using Dual Detection Methods」と題された米国特許出願第12/731,135(代理人整理番号第Q0052.70012US01);2011年3月1日に出願された、Duffyらの、「Ultra-Sensitive Detection of Molecules using Dual Detection Methods」と題された国際特許出願第(未定)(代理人整理番号第Q0052.70012WO00);2007年8月20日に出願された、Waltらの、「Methods for Determining The Concentration of an Analyte In Solution」と題された国際特許出願第PCT/US07/019184号;および2009年9月9日に出願された、Duffyらの、「Ultra-Sensitive Detection of Molecules or Enzymes」と題された国際特許出願第PCT/US09/005428号からも見出してもよく、参照により本明細書に組み込まれる。
【0105】
区画のアレイにアナライト分子を分離するための方法およびシステム
本発明のアッセイ方法およびシステムは、特定の態様において検出/定量化を容易にするために、それぞれの区画がゼロまたは一つまたは二つ以上のいずれかのアナライト分子を含む(comprise)/含む(contain)ように、複数の区画にアナライト分子を空間的に分離する工程を採用する。さらに、いくつかの態様においては、それぞれの区画が単独にアドレスされうるようなやり方で、区画を含む物品が設定されている。複数の区画に複数のアナライト分子を空間的に分離するための典型的な態様が本明細書に記載されているが、他の多くの方法を潜在的に採用してもよい。
【0106】
いくつかの態様において、流体試料中のアナライト分子濃度の度合いを決定するための独創的な方法は、アナライト分子の少なくとも一つのタイプに親和性を有する結合表面に対して固定化されたアナライト分子を検出することを含む。特定の態様において、結合表面は、基板(例えば、プレート、ディッシュ、チップ、光ファイバーの一端など)上の複数の区画(例えば複数のウェル/反応槽)の一つを形成しているか(例えば基板上のウェル/反応槽の表面)、または該区画の一つの中に含まれている(例えば、ウェル内に含まれた、ビーズなどの捕捉物の表面)。
【0107】
少なくとも一部の区画がアドレスされてもよく、そして、少なくとも一つのアナライト分子または粒子を含む区画の数/パーセンテージを示す度合いをもたらしてもよい。いくつかの場合において、数/パーセンテージに基づき、流体試料中のアナライト分子または粒子の濃度の度合いを決定してもよい。以上詳述してきたように、流体試料中のアナライト分子または粒子の濃度の度合いは、ポアソン分布の調整を任意に採用するデジタル分析の方法/システムにより決定してもよく、および/または、測定された信号の強度に少なくとも一部基づいてもよい。
【0108】
前述のように、アナライト分子が複数の捕捉物に対して固定化されている態様において、アドレスされた区画は、少なくとも一つの捕捉物(例えば、任意のアナライト分子と結びついているか、または結びついていないかのいずれか)を含む区画であってもよく、よって、これらの態様において、少なくとも一つのアナライト分子を含む区画のパーセンテージが、少なくとも一つのアナライト分子と結びついた捕捉物のパーセンテージ(例えば「活性」ビーズのパーセンテージ)でもある。したがって、いくつかの態様において、流体試料中のアナライト分子または粒子の濃度の度合いを決定するための方法は、それぞれがアナライト分子または粒子の少なくとも一つのタイプに対して親和性を有する結合表面を含む複数の捕捉物(例えばビーズ)(例えば複数の捕捉成分)を、アナライト分子または粒子の少なくとも一つのタイプを含むかまたは含むことが疑われる溶液に暴露することを含む。ここで捕捉物の少なくともいくつかは、少なくとも一つのアナライト分子または粒子と結びつく。
【0109】
少なくとも一部の捕捉物(例えばビーズ)は複数の区画(例えば表面上の反応槽)に空間的に分離されていてもよい。複数の区画(例えば、いくつかの場合において、少なくとも一つの捕捉物を含む区画)の少なくとも一部をアドレスし、少なくとも一つのアナライト分子または粒子を含む区画のパーセンテージ(例えば、いくつかの場合において、少なくとも一つのアナライト分子と結びついた捕捉物のパーセンテージ)を示す度合いを決定してもよい。前述のように、いくつかの場合において、流体試料中のアナライト分子または粒子の濃度の度合いは、少なくとも一つのアナライト分子または粒子を含む捕捉物の数/パーセンテージに少なくとも一部基づき、および/または、複数のアナライト分子または粒子のパーセンテージを示す信号の測定された強度に少なくとも一部基づき、決定されたパーセンテージに基づいて決定されてもよい。
【0110】
いくつかの場合において、流体試料中のアナライト分子または粒子の濃度の度合いを決定するためのシステムは、さらに、複数の区画(例えば反応槽)を含むアッセイ基板(例えば、プレート、ディッシュ、スライド、チップ、光ファイバーの表面など)を含み、該区画それぞれは、かかる区画の中に結合表面を形成する(例えば複数の捕捉成分)か、またはかかる区画を含む(例えば複数の捕捉成分を含むビーズを含む)。ここで、少なくとも一つの結合表面は、該結合表面上に固定化された少なくとも一つのアナライト分子または粒子を含む。
システムはまた、複数の区画の少なくとも一部をアドレスするよう設定された少なくとも一つの検出器も含んでもよい。システムは、アドレスされたそれぞれの区画にアナライト分子または粒子が存在するか否かを示す少なくとも一つの信号を生成することができる。システムは、それぞれの区画でアナライト分子または粒子の数に伴い変化する強度レベルを測定できる能力を有する。
【0111】
さらに、システムは、少なくとも一つのアナライト分子または粒子を含むアドレスされた区画の数/パーセンテージを少なくとも一つの信号から決定するよう設定された少なくとも一つの信号処理器を含んでもよい。信号処理器は、前述の技術を使用して、数/パーセンテージに基づき、少なくとも一つのアナライト分子もしくは粒子を含む区画の数に少なくとも一部基づいた流体試料中のアナライト分子もしくは粒子の濃度の度合いを決定する(デジタル/バイナリ分析)、および/または、複数のアナライト分子または粒子の存在を示す少なくとも一つの信号の強度レベルに少なくとも一部基づいた流体試料中のアナライト分子または粒子の濃度の度合いを決定するよう、さらに設定されている。
【0112】
本明細書に提供されているアッセイ方法およびシステムは、本明細書に記載されているような、さまざまな異なる成分、工程および側面を採用してもよい。例えば、方法はさらに、少なくとも一つのバックグラウンド信号決定を決定すること(例えば他の決定からバックグラウンド信号を差し引くことをさらに含む)、洗浄工程などを含む。いくつかの場合において、アッセイまたはシステムは、本明細書に記載されているように、少なくとも一つの結合リガンドの使用を含んでもよい。いくつかの場合において、流体試料中のアナライト分子濃度の度合いは、測定されたパラメータと校正曲線との比較に少なくとも一部基づく。ときには、校正曲線は、本明細書に記載されているように、少なくとも一つの校正係数の決定によって少なくとも一部形成されている。
【0113】
いくつかの態様において、複数のアナライト分子は、複数の区画に空間的に分離されてもよい。ここで該区画は複数の反応槽を含む。少なくともいくつかの反応槽が少なくとも一つのアナライト分子を含み、かつ、統計学的に有意な割合の反応槽がアナライト分子を含まないように、アナライト分子は複数の反応槽にわたって分配されていてもよい。少なくとも一つのアナライト分子を含む(またはアナライト分子を含まない)統計学的に有意な割合の反応槽は、典型的には、特定の検出システムを使用して再現性良く検出かつ定量化することができるだろうし、典型的には、アナライト分子を一つも含まない試料のアッセイを実施する際に決定され、アドレスされた区画の総数で割ったバックグラウンドノイズ(例えば非特異的な結合)を上回っているだろう。本発明の態様において、本明細書中で使用される「統計学的に有意な割合」は、方程式10に従い評価してもよい。
【数31】
【0114】
ここでnは、選択した事象のカテゴリーにおいて、決定された事象の数である。すなわち、事象の数であるnが事象の数の平方根に三を乗じたものより大きいとき、統計学的に有意な割合が生じる。例えば、アナライト分子または粒子を含む反応槽の統計学的に有意な割合を決定するためには、nがアナライト分子を含む反応槽の数である。他の例として、単一のアナライト分子と結びついた捕捉物の統計学的に有意な割合を決定するためには、nが単一のアナライト分子と結びついた捕捉物の数である。
【0115】
いくつかの態様において、区画(または捕捉物)の総数に対する、少なくとも一つのアナライト分子(または、アナライト分子に対する区画の割合が、統計学的に、それぞれの区画に含まれたアナライト分子が実質的にゼロまたはたった一つとなるだろう場合において、単一のアナライト分子)を含む統計学的に有意な割合の区画は、約1:2未満、約1:3未満、約1:4未満、約2:5未満、約1:5未満、約1:10未満、約1:20未満、約1:100未満、約1:200未満、または約1:500未満である。したがって、かかる態様において、区画の総数に対する、アナライト分子を一つも含まない区画(または捕捉物)の割合は、少なくとも約1:100、約1:50、約1:20、約1:10、約1:5、約1:4、約1:3、約1:2、約1:1、約2:1、約3:1、約4:1、約5:1、約10:1、約20:1、約50:1、約100:1、またはそれ以上である。
【0116】
既に述べたように、いくつかの態様において、少なくとも一つのアナライト分子を含む区画のパーセンテージは、区画(または捕捉物)の総数の約50%未満、約40%未満、約30%未満、約20%未満、約10%未満、約5%未満、約2%未満、約1%未満、約0.5%未満、約0.01%未満、またはそれ以下である。いくつかの態様において、アナライト分子(またはアナライト分子と結びついた捕捉物)を一つも含まない区画のパーセンテージは、区画(または捕捉物)の総数の、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、またはそれ以上である。
【0117】
複数の反応槽に複数のアナライト分子または粒子を分配するための方法または技術は、2010年3月24日に出願された、Duffyらの、「Ultra-Sensitive Detection of Molecules or Particles using Beads or Other Capture Objects」と題された米国特許出願第12/731,130号(代理人整理番号Q0052.70011US01);2011年3月1日に出願された、Duffyらの、「Ultra-Sensitive Detection of Molecules or Particles using Beads or Other Capture Objects」と題された国際特許出願第(未定)(代理人整理番号Q0052.70011WO00);2007年2月16日に出願された、Waltらの、「Methods and arrays for target analyte detection and determination of target analyte concentration in solution」と題された米国特許出願第20070259448号;2007年2月16日に出願された、Waltらの、「Methods and arrays for detecting cells and cellular components in small defined volumes」と題された米国特許出願第20070259385号;2007年2月16日に出願された、Waltらの、「Methods and arrays for target analyte detection and determination of reaction components that affect a reaction」と題された米国特許出願第20070259381号;2007年8月20日に出願された、Waltらの、「Methods for Determining The Concentration of an Analyte In Solution」と題された国際特許出願第PCT/US07/019184号;および2009年9月9日に出願された、Duffyらの、「Ultra-Sensitive Detection of Molecules or Enzymes」と題された国際特許出願第PCT/US09/005428号に記載されており、これらは参照によって本明細書中に組み込まれる。
【0118】
いくつかの態様において、アッセイ方法は、複数の捕捉物の使用を含んでもよい。複数の捕捉物(例えばビーズ)は、アナライト分子または粒子を捕捉するよう設定してもよい。いくつかの場合において、複数の捕捉物は複数のビーズを含む。ビーズは磁性があってもなくてもよい。少なくとも一部の捕捉物は、複数の区画(例えば反応槽/ウェル)に空間的に分離されていてもよい。複数のアナライト分子は、捕捉物に対して複数のアナライト分子と結びつく前、同時または後に、複数のタイプの結合リガンドに暴露されてもよい。
【0119】
かかる捕捉成分を使用するアッセイ方法の他のさまざまな側面は、2010年3月24日に出願された、Duffyらの、「Ultra-Sensitive Detection of Molecules or Particles using Beads or Other Capture Objects」と題された、自己の米国特許出願第12/731,130号;および2011年3月1日に出願された、Duffyらの、「Ultra-Sensitive Detection of Molecules or Particles using Beads or Other Capture Objects」と題された、自己の国際特許出願第(未定)(代理人整理番号Q0052.70011WO00)に記載されている。特に、本明細書中に記載された方法およびシステムは、参照した前記出願に記載された単一の分子方法およびシステムと組み合わせ、そしてその文意内において使用してもよい。いくつかの場合において、捕捉物はそれ自体が検出可能であってもよく(例えば蛍光放射)、ビーズの検出がアナライト分子の検出を妨げないかまたは実質的に妨げないように、ビーズを選択してもよい。
【0120】
いくつかの態様において、アナライト分子は直接的に検出されても、間接的に検出されてもよい。直接的に検出される場合、アナライト分子は、直接インタロゲートおよび/または検出され得る分子またはその一部(例えば蛍光を放つ実体)を含んでもよい。間接的に検出される場合、アナライト分子の存在を決定するために追加成分を使用する。いくつかの場合において、アナライト分子は前駆標識剤(例えば酵素基質)を構成してもよく、該酵素基質は、アナライト分子に暴露されることによって検出可能な生成物(例えば蛍光分子)に変換されてもよい。いくつかの場合において、少なくともいくつかのアナライト分子を複数の区画に空間的に分離する前、同時および/または後に、複数のアナライト分子を、少なくとも一つの追加の反応成分に暴露してもよい。
【0121】
いくつかの場合において、少なくともいくつかが少なくとも一つのアナライト分子と結びついた複数の捕捉物を、複数の結合リガンドに暴露してもよい。以下でさらに考察するように、特定の態様において、結合リガンドは、直接的に検出されるように適合してもよく(例えば結合リガンドが検出可能な分子もしくはその一部を含む)、または間接的に検出されるように適合してもよい(例えば前駆標識剤を標識剤に変換することができる成分を含む)。結合の一つ以上のタイプとして、任意の所定アッセイ方法において、例えば結合リガンドの第一のタイプおよび結合リガンドの第二のタイプを採用してもよい。一例として、結合リガンドの第一のタイプは、アナライト分子の第一のタイプと結びつくことができ、結合リガンドの第二のタイプは、第一の結合リガンドと結びつくことができる。他の例として、本願明細書に記載されているように、結合リガンドの第一のタイプと結合リガンドの第二のタイプとはともに、単一のアナライト分子の同じまたは異なるエピトープと結びついてもよい。
【0122】
特定の結合リガンドは、直接的または間接的な検出を容易にすることができる実体を含むことができる。成分が測定可能な特性(例えば、蛍光放射、色など)を含む態様において、成分を、直接的に検出されるように適合してもよい。例えば成分は、前駆標識剤を標識剤(例えばアッセイで検出される薬剤)に変換することによって、間接的な検出を容易にし得る。「前駆標識剤」は、好適な変換剤(例えば酵素成分が結合リガンド中に含まれる)への暴露により、標識剤に変換されることができる任意の分子、粒子などである。「標識剤」は、検出される実体として働くことによって、選んだ検出技術を使用して検出を容易にする任意の分子、粒子などである。
【0123】
いくつかの態様において、少なくとも一つの結合リガンドは酵素成分を含む。いくつかの態様において、アナライト分子は酵素成分を含んでもよい。酵素成分は、前駆標識剤(例えば酵素基質)を標識剤(例えば検出可能な生成物)に変換してもよい。流体試料中のアナライト分子濃度の度合いはその後、標識剤を含む区画の数を決定すること(例えば、標識剤を含む区画の数を、アナライト分子を含む区画の数(または、捕捉物の総数に対する、少なくとも一つのアナライト分子と結びついた捕捉物の数)と関連付けることによって)に少なくとも一部基づいて、決定することができる。
【0124】
酵素または酵素成分の限定されない例として、西洋ワサビペルオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼおよびアルカリホスファターゼが挙げられる。検出のためのシステムまたは方法の他の限定されない例として、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、ローリングサークル増幅(RCA)、ライゲーション、ループを介した等温増幅(Loop-Mediated Isothermal Amplification)(LAMP)などの、核酸前駆体が多数のコピーに複製されるか、または核酸前駆体が容易に検出できる核酸に変換される態様が挙げられる。Vadim Demidovらの「DNA Amplification:Current Technologies and Application」(2004年)に記載されているように、かかるシステムおよび方法は当業者に公知であろう。
【0125】
図8に示されるように、前駆標識剤の使用を含むアッセイ方法の例として、複数の区画を含む基板100が提供される。ここで該区画は反応槽を含む。反応槽101(例えば区画)において、アナライト分子102はビーズ103(例えば捕捉物)に対して固定化されている。結合リガンド104はアナライト分子102と結びついている。結合リガンド104は酵素成分を含む(図示なし)。前駆標識剤106は、(酵素成分に暴露されると)標識剤108に変換される。標識剤108は、本明細書に記載されている方法を使用して検出される。
【0126】
対照的に、反応槽111は、ビーズ110に対して固定化されたアナライト分子112を含む。この反応槽において、アナライト分子112は、酵素成分を含む結合リガンドと結びついていない。したがって、前駆標識剤114は、反応槽内で標識剤に変換されない。よって、前駆標識剤が標識剤に変換された反応槽101と比較すると、この反応槽は異なる信号を与えることになる。いくつかの場合において、アナライト分子と結びついていないビーズを含む反応槽であってもよく、例えば反応槽121はビーズ116を含む。さらに、反応槽のいくつかは任意のビーズを含まなくてもよく、例えば反応槽123である。反応槽121および123は、標識剤が存在しないだろうから、反応槽101と比較して異なる信号を与え得る。しかしながら、反応槽121および123は、前駆標識剤117を含んでいてもよい。一つ以上の前駆標識剤は任意の所定の反応槽中に存在していてもよい。
【0127】
特定の態様において、可溶化したかまたは懸濁した前駆標識剤を採用してもよく、ここで前駆標識剤は、液体に不溶の標識剤および/または区画内(例えば標識剤が形成される反応槽内)/近傍に固定化される標識剤に変換される。かかる前駆標識剤および標識剤ならびにそれらの使用は、2008年9月23日に出願された、Duffyらの、「High Sensitivity Determination of the Concentration of Analyte molecules in a Fluid Sample」と題された、自己の米国特許出願第12/236,484号に記載されており、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0128】
いくつかの態様において、捕捉成分および/または捕捉物からアナライト分子が解離するのを止めるかもしくは抑える、および/または、アナライト分子および/または他の結合リガンドから結合リガンドが解離するのを止めるかもしくは抑える技術を使用してもよい。当業者には公知であろうが、選択したアナライト分子、捕捉成分および/または結合リガンドの間(例えば抗体と抗原との間)の、いくつかの可逆的な親和性相互作用は、熱力学に支配される。
【0129】
したがって、あるアッセイ方法の最中のある時点で、アナライト分子および捕捉成分および/または結合リガンドの間、ならびに/あるいは結合リガンドおよびアナライト分子および/または他の結合リガンドの間で、ある解離が発生してもよい。これにより、実際に存在するアナライト分子(例えば免疫複合体)の数より検出されるアナライト分子の数の方が減少するという結果になり得る。成分の特定の対(例えば抗体−抗原の対)の解離定数、洗浄および/または流体への暴露、暴露とインタロゲートとの時間間隔、および/または他の要因によって、解離事象がアナライト分子および/または粒子の決定を変える程度に影響が及ぼされてもよい。したがって、特定の技術を使用して解離過程の効果を軽減してもよい。
【0130】
第一の態様において、(例えば、捕捉成分を介して捕捉物と結びついた、および/または、少なくとも一つの結合リガンドと結びついた)複数のアナライト分子を複数の区画に空間的に分離することに続き、アッセイの区画(例えばウェル)から流体を除去することによって解離を抑えるかまたは減らしてもよい。すなわち、区画に取り囲まれているかまたは区画中に実質的に含まれる、全部または実質的に全部の流体を除去してもよい。例えば、空気および/または真空乾燥によって流体を除去してもよい。流体の除去によって、解離が抑えられるかまたは減らされてもよい。区画をインタロゲートする直前に、複合体への水分補給により検出器を使用するインタロゲートを促進するために、区画に流体を加えてもよい。
【0131】
第二の態様において、アナライト分子を捕捉成分に架橋、および/または、結合リガンドをアナライト分子および/または第二の結合リガンドに架橋することによって、解離を抑えるかまたは減らしてもよい。例えば、抗原を含むアナライト分子は結合リガンドおよび/または抗体を含む捕捉成分と架橋されていてもよい。採用してもよい架橋の方法および技術は当業者に公知である。
【0132】
いくつかの態様において、複数の区画をアドレスしてもよく、および/または、着目する複数の捕捉物および/または化学種/分子/粒子を実質的に同時に検出してもよい。本文中で使用されるときの「実質的に同時に」とは、期間が重複しない場合に連続してアドレス/検出されるのとは対照的に、着目する少なくとも二つの区画/捕捉物/化学種/分子/粒子がアドレス/検出される間の期間が重複するように、おおよそ同じ時に、着目する区画/捕捉物/化学種/分子/粒子がアドレス/検出されることを言う。光学技術(例えばCCD検出器)を含むさまざまな技術を使用することによって、同時のアドレス/検出を達成することができる。いくつかの態様に従い、捕捉物/化学種/分子/粒子を、複数の個別の溶解できる区画に空間的に分離することは、多数の区画が実質的に同時にアドレス可能となることによって、実質的な同時検出を促進する。
【0133】
例えば、検出の間、複数の、個別の別々に溶解できる区画に、他の捕捉物に対して空間的に分離されている捕捉物に個々の化学種/分子/粒子が結びついている態様について、複数の、個別の別々に溶解できる区画を実質的にアドレスすることで、個々の捕捉物ひいては個々の化学種/分子/粒子(例えばアナライト分子)も溶解することが可能となる。例えば、特定の態様において、それぞれの反応槽がゼロかまたはたった一つの化学種/分子/粒子を含むように、複数の分子/粒子の個々の分子/粒子は複数の反応槽にわたって分配されている。いくつかの場合において、すべての化学種/分子/粒子のうち、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、少なくとも約99.5%が、検出の間、他の化学種/分子/粒子に対して空間的に隔離されている。
【0134】
約1秒未満、約500ミリ秒未満、約100ミリ秒未満、約50ミリ秒未満、約10ミリ秒未満、約5ミリ秒未満、約1ミリ秒未満、約500マイクロ秒未満、約100マイクロ秒未満、約50マイクロ秒未満、約10マイクロ秒未満、約1マイクロ秒未満、約0.5マイクロ秒未満、約0.1マイクロ秒未満、または約0.01マイクロ秒未満、約0.001マイクロ秒未満、またはそれ以下の時間内に実質的に同時に、複数の化学種/分子/粒子を検出してもよい。いくつかの態様において、約100マイクロ秒と約0.001マイクロ秒との間、約10マイクロ秒と約0.01マイクロ秒またはそれ以下との間の時間内に実質的に同時に、複数の化学種/分子/粒子を検出してもよい。
【0135】
いくつかの態様において、区画は光学的にインタロゲートされる。それらの光学的な特徴において変化を示す区画は、従来の光学縦列および光学検出システムによって同定されてもよい。検出された化学種(例えば蛍光を放つタイプの実体など)および有効な波長に応じて、区画の光学的インタロゲートのために、特定の波長用に設計された光学フィルターを採用してもよい。光学的インタロゲートを使用する態様において、システムは、一つ以上の光源および/または波長を調整するための複数のフィルターおよび/または光源の強度を含んでもよい。いくつかの態様において、複数の区画からの光学信号は、CCDカメラを使用して捕捉される。
【0136】
当業者には公知であろうが、画像を取り込むために使用しうるカメラ画像タイプの、他の限定されない例として、電荷注入装置(CID)、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)装置、科学計測用(scientific)CMOS装置、および時間遅延積分方式(time delay integration)(TDI)装置が挙げられる。カメラは商業的供給源から得てもよい。CIDは、CCDと同様に、ソリッドステート(solid state)二次元マルチピクセル画像装置であるが、画像の取り込み方と読み込み方との点で異なる。CCDの例としては、米国特許第3,521,244号および米国特許第4,016,550号を参照。CMOS装置も二次元ソリッドステート画像装置であるが、電荷の集積と出力とのやり方の点で標準的なCCDアレイとは異なる。CMOSトランジスタを製作する半導体技術基盤に画素が組み込まれており、それ故、装置に組み込まれた相当な読み出しのある電子機器および顕著な補正電子機器からの信号において顕著な増幅を可能にする。
【0137】
例えば米国特許第5,883,83号を参照。CMOS装置は、優れた感度とダイナミックレンジとを可能にする特定の技術的進歩を有するCMOS画像技術を含む。TDI装置は、画素のカラムを該カラム内および隣接するカラムに移動させ、集光し続けさせるCCD装置を採用する。このタイプの装置は、典型的には、有意な時間内に動画を統合させることができ、かつカメラにおける画像の相対運動によって動画がぼやけないように、画素のカラムの移動が集積されている画像の動きと同期するようなやり方で使用される。いくつかの態様において、フォトダイオードまたは光電子倍増管(PMT)と一体となったスキャニングミラーシステム(scanning mirror system)を画像用に使用することができる。
【0138】
ある態様において、複数の反応槽として複数の区画を、光ファイバー束の一端に直接形成する。ある態様に従い、米国公報第20030027126号に記載のシステムなどの光学検出システムとともに、本発明の反応槽のアレイを使用することができる。ある態様に従い、例えば、本発明の反応槽のアレイは、光がファイバー間で混ざらないように、クラッドファイバーから構成される光ファイバー束を含む光ファイバー集合体の一端に形成される。
【0139】
図9Aおよび9Bは、いくつかの態様に従う、本発明のシステムの限定されない例を示す。該システムは、光源452、励起フィルター454、二色性鏡(dichromatic mirror)458、放射フィルター460、対物470、およびアレイ472を含む。光源452から発生する光453は励起フィルター454を通過する。該光は二色性鏡458に反射し、対物470を通過し、アレイ472上で光る。いくつかの場合において、絞り(iris)や開口部などのような迷光低減機能468によって、迷光464を低減させてもよい。アレイから放射された光471は対物470と放射フィルター460とを通過する。光462が観察される。当業者には理解されるだろうが、特定の応用のために、必要に応じて、システムは追加の部材(例えば、追加のフィルター、鏡、拡大装置など)を含んでもよい。
【0140】
図9Aに示されるシステムは、(例えば白色光を使用する)捕捉物を含む反応槽の数の決定に役立つ部材をさらに含んでもよい。代わりに、区画の総数を決定するため、および/または、区画(例えば捕捉物を含むかまたは含まない)の位置に関する空間的な情報を提供するために、追加の部材を使用してもよく、該部材は、異なる光レジーム(例えば、蛍光、白色光)の下で観察され、区画の位置と一致する信号を確認するのに役立たせてもよい(例えばマスクを設けてもよい)。
【0141】
図9Aおよび9Bにおいて、励起光は供給源452から放射され、ビーム453へとコリメートされる。励起フィルター454は、蛍光体を励起する波長バンドのみ(例えばレゾルフィンの場合、575nm+/−10nm)を伝送するよう設定してもよい。励起光は二色性フィルター458によって下方に反射され、対物レンズ470を介して、試料を含む基板472を励起する。対物レンズ470によって画像光が収集され、ビーム471に集束され、二色性フィルター458を介して伝送される。蛍光波長バンド(例えばレゾルフィンの場合、670nm+/−30nm)に一致する画像光のみを、放射フィルター460を介して伝送する。残存するコリメートされたビーム462は、カメラシステムを介してその後画像化されるだろう放射された蛍光波長のみを含む。
【0142】
試料を含む区画(例えば反応槽)の位置を決定するために、同じシステムを使用してもよい。「明視野」の白色光照明を用いて、捕捉物を含む反応槽を含むアレイを明るくしてもよい。収集対物の開口数をちょうど外れる角度(例えば図9Aのθ1が、約20度、約25度、約30度、約35度、約40度またはそれ以上であってもよい)からアレイ表面上に擬似コリメートされた白色光(例えば白色光LED)を向けることによって(例えば図9Aに示される光源475を使用して)、アレイを明るくしてもよい。アレイ472の表面に命中している光(例えば光476)が表面に反射(および散乱)され、471にコリメートされ、対物レンズ(470)に収集される。続いて、コリメートされたビームは、カメラシステムによって、画像化される。
【0143】
どの区画が捕捉物(例えばビーズ)を含むかを決定するためにもまた、同じシステムを使用してもよい。いかなる特定のビーズもアナライト分子および/または結合リガンドと結合していてもよいし、していなくてもよい。「暗視野」の白色光照明を用いて(例えば図9Aに示されるような光源473を使用して)アレイを明るくしてもよい。収集対象の開口数を十分に外れる角度(例えば図9Aのθ2が、約65度、約70度、約75度、約80度、約85度である)からアレイ表面上に擬似コリメートされた白色光(例えば白色光LED473)を向けることによって、アレイを明るくしてもよい。アレイ472の表面に命中している光(例えば光474)が表面に反射(および散乱)され、471にコリメートされ、対物レンズ470に集光される。続いて、コリメートされたビームは、カメラシステムによって、画像化される。
【0144】
いくつかの態様において、例えば米国公報第2003/0027126号に記載されているように、光学検出システムを採用してもよい。典型的なシステムにおいて、光ファイバーの近位端または遠位端の画像サイズの調整を可能にする倍率切り替えを使用することによって、光ファイバー束の遠位端で形成された反応槽のアレイから返ってくる光が変更される。拡大された画像は、その後、シャッターホイール(shutter wheel)により、シャッターが閉められ、フィルターがかけられる。そして、電荷結合素子(CCD)カメラにより画像が取り込まれる。CCDカメラからの情報を処理する画像処理ソフトウェアを含み、該ソフトウェアを実行するコンピュータが提供されてもよく、該コンピュータはシャッターを制御しホイールにフィルターをかけるよう任意に設定されていてもよい。米国公報第20030027126号に記載されているように、束の近位端は、z移動ステージおよびx−y微小位置決め(micropositioner)を与えられる。
【0145】
例えば図10は、光学検出システムを有する光ファイバー集合体400を採用するシステムの模式的なブロック図を示す。ファイバー間で光が混ざらないように、光学ファイバー束またはアレイ402を含む光学ファイバー集合体400は、クラッドファイバーから構成されている。反応槽401のアレイは、光ファイバーの遠位端412に形成/付着されており、その近位端414は、z移動ステージ416およびx−y微小位置決め418と動作可能なように(operatively)接続されている。これら二つの部材は、顕微鏡の対物レンズ420において、束402の近位端414を正確に位置決めするように協調する。対物レンズ420により収集された光は、スリーポインターキューブスライダー(three pointer cube slider)を有する反射光蛍光アタッチメント422に移動する。
【0146】
アタッチメント422によって、対物レンズ420を介する75ワットのXeランプ424からの直接光はファイバー束402中で組み合わせることができる。供給源424からの光は濃縮レンズ426により濃縮され、その後、フィルターおよびシャッターホイール428により、フィルターがかけられ、および/または、シャッターが閉められ、それに続き、NDフィルタースライド430を通過する。束402の遠位端412から帰ってきた光は、アタッチメント422から、ファイバーの近位端または遠位端の画像サイズの調整を可能とする倍率切り替えまで通過する。光が通過する倍率切り替え432は、その後、第二のホイール434によりシャッターが閉められ、フィルターがかけられる。光は電荷結合素子(CCD)カメラ436に集光される。コンピュータ438は、CCDカメラ436からの情報を処理する画像処理ソフトウェアを実行し、そしてシステムの他の部材も任意に制御する。他の部材としては、第一ならびに第二のシャッターおよびフィルターホイール428、434を含むがこれらに限定されない。
【0147】
本発明のいくつかの態様を実施するために使用される反応槽のアレイは、互換性のあるさまざまな工程を使用して、光ファイバー束の遠位端と一体となっているか、または該遠位端に付着していてもよい。いくつかの場合において、光ファイバー束の個々のファイバーの中央にマイクロウェル(microwell)が形成されており、該マイクロウェルは封がされていても、されていなくてもよい。光ファイバー束のそれぞれの光ファイバーは、ファイバーの遠位端の中央に形成された単一のマイクロウェルからの光を伝達してもよい。この特徴によって、それぞれのマイクロウェル中の反応物/内容物を同定するために、個別の反応槽の光学的特性をインタロゲートすることが可能となる。その結果、CCDアレイを用いて束の端の画像を収集することによって、反応槽の光学的特性を個々にインタロゲートしてもよく、および/または、実質的に同時に画像化してもよい。
【0148】
任意の好適な技術を使用して、複数の区画を形成してもよい。いくつかの態様において、複数の区画は、基板上の複数の反応槽/ウェルを含む。特定の態様において、反応槽は一つの捕捉物しか受け入れず、そして含まないように設定されてもよい。
【0149】
本発明のいくつかの態様において、複数の反応槽は、例えば第二の基板と封着部材とを合わせることによって、(例えば、アナライト分子、結合リガンド、および/または前駆標識剤の導入後)封がされてもよい。反応槽の封は、アッセイの残りの間、反応槽それぞれの内容物が反応槽から抜け出られないようになされてもよい。いくつかの場合において、アナライト分子の添加後、および任意で、アナライト分子の検出を容易にするために前駆標識剤の少なくとも一つのタイプを添加後、反応槽に封をしてもよい。前駆標識剤を採用する態様において、いくつかのまたはそれぞれの反応槽中の内容物に封をすることにより、検出可能な標識剤を生成する反応は封がされた反応槽内で進行することができ、その結果、反応槽中に保持される検出目的の標識剤が検出可能な量で生成される。
【0150】
さまざまな方法および/または材料を使用して、複数の反応槽を含む複数の区画を形成してもよい。いくつかの場合において、複数の反応槽は、第一の表面上のくぼみのアレイとして形成される。また一方で、他の場合では、のっぺりした表面を有してもよい基板か、または封着部材上のくぼみと合致したくぼみを含んでもよい基板のいずれかと、複数のくぼみを含む封着部材とを合わせることによって、複数の反応槽を形成してもよい。封に役立つため、任意の装置部材、例えば基板や封着部材、を柔軟な材料、例えば弾性ポリマー材料、から製作してもよい。その表面は疎水的であってもよく、疎水的になるよう製造されてもよく、またはマイクロウェルからの水性試料の漏出を最小化するために疎水的な領域を含んでもよい。
【0151】
いくつかの場合において、それぞれの反応槽の内容物が反応槽から抜け出すことができないよう、それぞれの反応槽に封がされるかまたは隔絶されるように、封着部材はマイクロウェルのアレイ外面に接触(例えばさらに詳細に後述するように、光ファイバー束の被覆)することができてもよい。ある態様に従い、封着部材は、基板全体にわたり実質的に一定に加圧されるマイクロウェルのアレイに対して置いてもよいシリコーンエラストマーガスケットであってもよい。いくつかの場合において、アナライト捕捉のために使用される複数の捕捉物と、任意に、アナライト分子の検出を容易にするために使用されてもよい任意の前駆標識剤とを添加した後、反応槽に封をしてもよい。
【0152】
基板上/内のアッセイ溶液を含む複数の反応槽の形成にかかる限定されない例を図11に示す。図11のパネル(A)は、アッセイ溶液141に暴露された複数のマイクロウェル139を含む表面(例えばアナライト分子を含む溶液)および封着部材143を示す。この例における封着部材143は実質的に平面的な底面を含む。基板139を封着部材143と合わせることによって、封がされた複数の反応槽145が形成される。反応槽間の領域148は、反応槽間を密封するのに役立つように変更してもよい。
【0153】
第二の態様を図11のパネル(B)に示す。ここで、複数のマイクロウェル163を含む封着部材162は、アッセイ溶液162に暴露された実質的に平面的な表面158と合わせられる。その結果、複数の反応槽164が形成される。
【0154】
第三の態様において、図11のパネル(C)に示されるように、複数のマイクロウェル167を含む基板表面166は、同様に複数のマイクロウェル171を含む封着部材170と合わせられる。この態様において、基板のマイクロウェルと封着部材のマイクロウェルとは、形成されたそれぞれの反応槽172が封着部材のマイクロウェルの一部と基板からのマイクロウェルの一部とを含むように、実質的に配置されている。図11のパネル(D)において、それぞれの反応槽が封着部材173のマイクロウェルまたは基板175のマイクロウェルとを含むように、マイクロウェルは配置されていない。
【0155】
封着部材は本質的に基板と同じサイズであってもよいし、異なるサイズであってもよい。いくつかの場合において、封着部材はおおよそ基板と同じサイズであり、基板の前面と実質的に合わさっている。他の場合において、図11のパネル(E)に描かれているように、封着部材176は基板174より小さく、封着部材は基板の一部178のみと合わさっている。さらに他の場合において、図11のパネル(F)に描かれているように、封着部材182は基板180より大きく、封着部材の一部184のみが基板180と合わさっている。
【0156】
いくつかの態様において、反応槽はすべて、おおよそ同じ容量を有していてもよい。他の態様において、反応槽は異なる容量を有していてもよい。それぞれ個別の反応槽の容量は、任意の特定のアッセイプロトコルを容易にするために適切に選択してもよい。例えば、それぞれの槽に含まれたアナライト捕捉に使用される捕捉物の数を小さい数に制限するのが望ましい態様の一セットにおいて、捕捉物の種類、採用された検出の技術および道具、基板上のウェルの数および密集度、ならびに、ウェルを含む基板にアプライされた液体中の捕捉物の期待される濃度に応じて、反応槽の容量は、アトリットル(またはそれ以下)からナノリットル(またはそれ以上)にまで及んでもよい。
【0157】
ある態様において、アナライト捕捉に使用される捕捉物がたった一つでも反応槽内に完全に含まれうるように、反応槽のサイズを選択してもよい(例えば、2010年3月24日に出願された、Duffyらの、「Ultra-Sensitive Detection of Molecules or Particles using Beads or Other Capture Objects」と題された米国特許出願第12/731,130号;または、2011年3月1日に出願された、Duffyらの、「Ultra-Sensitive Detection of Molecules or Particles using Beads or Other Capture Objects」と題された国際特許出願第(未定)(代理人整理番号Q0052.70011WO00)を参照。これらは参照により本明細書に組み込まれる)。
【0158】
本発明のある態様に従い、反応槽は、約1フェムトリットルと約1ピコリットルとの間、約1フェムトリットルと約100フェムトリットルとの間、約10アトリットルと約100ピコリットルとの間、約1ピコリットルと約100ピコリットルとの間、約1フェムトリットルと約1ピコリットルとの間、または約30フェムトリットルと約60フェムトリットルとの間の容量を有する。いくつかの場合において、反応槽は、約1ピコリットル未満、約500フェムトリットル未満、約100フェムトリットル未満、約50フェムトリットル未満、または約1フェムトリットル未満の容量を有する。いくつかの場合において、反応槽は、約10フェムトリットル、約20フェムトリットル、約30フェムトリットル、約40フェムトリットル、約50フェムトリットル、約60フェムトリットル、約70フェムトリットル、約80フェムトリットル、約90フェムトリットル、または約100フェムトリットルの容量を有する。
【0159】
アッセイで採用した区画の総数および/または区画の密集度(例えばアレイの反応槽の数/密集度)は、アレイの組成と最終用途とに依存することができる。例えば採用した反応槽の数は、採用したアナライト分子および/または結合リガンドのタイプの数、アッセイの疑わしい濃度範囲、検出の方法、捕捉物のサイズ、検出実体のタイプ(例えば、溶液中の遊離の標識剤、沈殿している標識剤など)に依存してもよい。反応槽を約2から何十億まで(または反応槽の総数)含むアレイは、さまざまな技術および材料を利用して作製することができる。アレイの反応槽数を増やすことは、アッセイのダイナミックレンジを増大すること、または、多数の試料もしくは多数のタイプのアナライト分子を並行してアッセイすることに利用できる。
【0160】
アッセイは、分析される試料あたりの反応槽を一千と百万との間の個数で含んでもよい。いくつかの場合において、アレイは百万を超える反応槽を含む。いくつかの態様において、アレイは反応槽を、約1,000と約50,000との間、約1,000と約1,000,000との間、約1,000と約10,000との間、約10,000と約100,000との間、約100,000と約1,000,000との間、約100,000と約500,000との間、約1,000と約100,000との間、約50,000と約100,000との間、約20,000と約80,000との間、約30,000と約70,000との間、約40,000と約60,000との間の個数で含む。いくつかの態様において、アレイは反応槽を、約10,000、約20,000、約50,000、約100,000、約150,000、約200,000、約300,000、約500,000、約1,000,000、またはそれ以上の個数含む。
【0161】
反応槽のアレイは、実質的に平面的な表面上に配置されてもよく、または非平面的な三次元配置に供されてもよい。反応槽は、規則的なパターンで整列していてもよいし、ランダムに分布していてもよい。具体的な態様において、アレイは、実質的に平面的な表面上の部位の規則的なパターンであり、該部位はX−Y座標面にアドレスされていてもよい。
【0162】
いくつかの態様において、反応槽は固形物中に形成される。当業者にはよく理解されているだろうが、反応槽を形成することができる潜在的に好適な材料は極めて多数あり、これらに限定されないが、ガラス(修飾(modified)ガラスおよび/または機能性(functionalized)ガラスを含む)、プラスチック(アクリル、ポリスチレンおよびスチレンと他の材料との共重合体、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレン、ポリウレタン、環状オレフィン共重合体(COC)、環状オレフィン重合体(COP)、テフロン(登録商標)、多糖、ナイロンまたはニトロセルロースなど)、エラストマー(ポリ(ジメチルシロキサン)およびポリウレタンなど)、複合材料、セラミック、シリカまたはシリカ系材料(シリコンおよび修飾シリコンを含む)、炭素、金属、光ファイバー束などが挙げられる。一般に、基板の材料は、感知できるほどの自己蛍光がなく、光学検出が可能なように選択してもよい。特定の態様において、反応槽を可とう性材料中に形成してもよい。
【0163】
表面(例えば基板または封着部材)上の反応槽を、当該分野において公知のさまざまな技術を使用して形成してもよく、該技術としては、これらに限定されないが、フォトリソグラフィ、スタンプ技術、成形技術、エッチング技術などが挙げられる。当業者にはよく理解されているだろうが、使用する技術は、支持材料の組成および形状ならびに反応槽のサイズおよび数に依存することができる。
【0164】
特定の態様において、反応槽のアレイは、光ファイバー束の一端上にマイクロウェルを作製することによって、および、封着部材として平面的な柔軟な表面を利用することによって、形成される。特定のかかる態様において、光ファイバー束の一端上に反応槽のアレイを以下のようにして形成してもよい。まず、マイクロウェルのアレイを、磨いた光ファイバー束の一端にエッチングする。光ファイバー束を形成しエッチングするための技術および材料は当業者に公知である。所望の容量のマイクロウェルを形成してもよいように、例えば、光ファイバーの直径、ファイバーのコアとクラッドとの領域の存在、サイズおよび組成、ならびにエッチングの深さおよび特異性を、選択したエッチング技術により変更してもよい。
【0165】
特定の態様において、それぞれのウェルが単一のファイバーにおおよそ調整され、かつクラッド材料により隣接するウェルと隔絶されるように、束の個別のガラスファイバーのコア材料を優先的にエッチングするというエッチング工程によって、マイクロウェルが作製される。光ファイバーのアレイフォーマットの潜在的利点は、それによって、複雑な微細加工をせずに数千から数百万もの反応槽を生産することができること、および、同時に多くの反応槽を観察し光学的にアドレスする能力を提供することができること、である。
【0166】
光ファイバー束が励起光および放射光の両方をウェルへおよびウェルから伝送することができるように、それぞれのマイクロウェルは束になっている光ファイバーとともに配列していてもよく、ウェルの内容物を遠隔インタロゲートすることが可能となる。
(2)さらに、光ファイバーをアレイすることによって、ファイバー間の信号「クロストーク(cross-talk)」がない、隣接する槽中の分子を同時にまたは非同時に励起することができる性能が提供されてもよい。
(3)すなわち、一つのファイバー中に伝送される励起光は隣接するファイバーに漏れ出さない。
【0167】
代わりに、基板として光ファイバー束の末端を利用しない他の方法および材料を使用して、複数の反応槽と同等の構造物を作製してもよい。例えば、そのアレイは、当該分野に公知の技術により製造され、目印をつけられた(spotted)基板、印刷された基板またはフォトリソグラフィで作製された基板であってもよい。例えば、WO95/25116;WO95/35505;PCT US98/09163;米国特許第5,700,637号、第5,807,522号、第5,445,934号、第6,406,845号および第6,482,593号を参照。当業者には公知であろうが、いくつかの場合において、成形技術、エンボス技術および/またはエッチング技術を使用して、アレイを製造してもよい。
【0168】
特定の態様において、本発明は、封着部材を基板に適用する機械的基盤を備えたシステムを提供する。基盤はシステムのステージの下方に位置付けられてもよい。選択した反応成分が反応槽のアレイに添加された後、封着部材をアレイと合わせてもよい。例えば、機械的基盤によって一定に加圧されながら平坦な表面(例えば顕微鏡のスライドなど)と反応槽のアレイとの間に、封着部材を入れてもよい。
【0169】
限定されない態様が図12Aに説明されている。封着部材300は機械的基盤302の上端に置かれている。アッセイ溶液304は封着部材300の上端に置かれている。一定に加圧されるように、機械的基盤はアレイ306(例えば光ファイバーアレイ)に面して上方に移動する。図12Bに示されるように、封着部材300によりアレイ306は密封される。他の例では、封着部材とアレイとの間が密封されるように、封着部材にさまざまな圧力を加えてもよい。本明細書でさらに考察されているとおり、システムもまた、アレイを分析するために利用してもよい追加部材312(例えば、顕微鏡、コンピュータなど)を含んでもよい。
【0170】
いくつかの態様において、複数の区画は複数の反応槽/ウェルを含まなくてもよい。例えば、捕捉物を採用する態様において、パターン形成された実質的に平面的な表面を採用してもよく、パターン形成された領域は複数の区画を形成している。いくつかの場合において、パターン形成された領域は、実質的に疎水的な表面によって実質的に囲まれた、実質的に親水的な表面を含んでもよい。特定の態様において、複数の捕捉物(例えばビーズ)は、実質的に親水的な培地(例えば水を含む)によって実質的に囲まれていてもよく、そしてビーズがパターン形成された領域(例えば表面上の親水的な区画)と結びつくようにビーズはパターン形成された表面に暴露されていてもよい。その結果、複数のビーズが空間的に分離される。
【0171】
例えば、かかる態様において、基板はゲルや他の材料であってもまたそれを含んでいてもよく、該ゲルや他の材料は、大量輸送に対する十分な障壁(例えば対流障壁および/または拡散障壁)を提供し、区画をアドレスしてアッセイを完了させるのに必要な時間枠内に異なる捕捉物を含む空間的な区画間で干渉またはクロストークの原因となるため、アナライト捕捉に使用される捕捉物および/または前駆標識剤および/または標識剤を、材料上または材料中の一つの区画からもう一つの区画に移動するのを防ぐ。例えば、ある態様において、複数の捕捉物は、ヒドロゲル材料上および/または該材料中の捕捉物が拡散されることによって、空間的に分離される。いくつかの場合において、前駆標識剤はヒドロゲル中に既に存在していてもよく、その結果、(例えば酵素成分を有する結合リガンドまたはアナライト分子に暴露することによって)標識剤の局所濃度の生成が容易になる。さらに他の態様では、一つまたは二つ以上の毛細管中に捕捉物を閉じ込めてもよい。
【0172】
いくつかの場合において、複数の捕捉物は多孔質または繊維質の基板(例えばろ紙)上に吸収されるか局在化されてもよい。いくつかの態様において、捕捉物は一定の表面(例えば平面的な表面)上に空間的に分離されていてもよく、捕捉物が局在化する区画またはその近くに局在し続ける実質的に不溶化のまたは沈殿する標識剤に変換される前駆標識剤を使用して、対応する捕捉物を検出してもよい。かかる実質的に不溶化のまたは沈殿する標識剤は、本明細書に記載されている。いくつかの場合において、単一のアナライト分子は、複数の液滴に空間的に分離されていてもよい。すなわち、単一のアナライト分子は、最初の流体を含む液滴に実質的に含まれていてもよい。液滴は第二の流体に実質的に囲まれていてもよく、ここで第二の流体は最初の流体と実質的に混合しない。
【0173】
いくつかの態様において、アッセイの間、少なくとも一つの洗浄工程を実施してもよい。特定の態様において、それが、捕捉物および/またはアナライト分子の立体配置(configuration)に大幅な変化をもたらさず、および/または、アッセイの少なくとも二つの成分間のいかなる特異的な結合の相互作用を破壊しないように、洗浄工程を選択する。他の場合において、洗浄溶液は、一つまたは二つ以上のアッセイ成分と化学的に相互作用するように選択する溶液であってもよい。当業者には理解されるだろうが、洗浄工程は、本発明の方法の間の任意の適切な時点で実施してもよい。
【0174】
例えば、アナライト分子、結合リガンド、前駆標識剤などを含む一つまたは二つ以上の溶液に捕捉物を暴露した後、複数の捕捉物を洗浄してもよい。他の例として、複数の捕捉物に対するアナライト分子の固定化に続き、複数の捕捉物を洗浄工程に供してもよく、その結果、捕捉物に対して特異的に固定化されていないアナライト分子のいずれも除去される。
【0175】
分析器システム
本発明はまた、前記の少なくともいくつかのアッセイ工程および/または信号/データ処理工程を実施するよう設定された流体試料中のアナライト分子または粒子の濃度の度合いを決定するためのシステムを含む。
【0176】
例えば特定の態様において、本発明は、流体試料中のアナライト分子または粒子の濃度の度合いを決定するためのシステムを含み、該システムは、複数の区画であって、かかる区画内に形成されているか、または含まれる結合表面をそれぞれが含む、前記複数の区画を含むアッセイ基板(ここで少なくとも一つの結合表面は、該結合表面に固定化された少なくとも一つのアナライト分子または粒子を含む)、前記複数の区画をアドレスするよう設定され、アドレスされたそれぞれの区画でのアナライト分子または粒子の有無を示し、かつそれぞれの区画でのアナライト分子または粒子の数によって変化する強度を有する、少なくとも一つの信号を生成することができる少なくとも一つの検出器、および、前記少なくとも一つの信号から、少なくとも一つのアナライト分子または粒子を含む前記区画のパーセンテージを決定するよう設定され、さらに、該パーセンテージに基づいて、少なくとも一つのアナライト分子もしくは粒子を含む区画の数に少なくとも一部基づいて前記流体試料中のアナライト分子もしくは粒子の濃度の度合いを決定するか、または複数のアナライト分子もしくは粒子の存在を示す前記少なくとも一つの信号の強度レベルに少なくとも一部基づいて前記流体試料中のアナライト分子もしくは粒子の濃度の度合いを決定するよう設定された、少なくとも一つの信号処理器を含む。
【0177】
特定のかかる態様において、信号処理器は図10に図解したコンピュータ438を含むか、またはその一部であってもよい。信号処理器/コンピュータは、システムの残存部材の一部でありうるか、または該部材と有効に関連して連結されうり、いくつかの態様において、前述のとおり、分析値および計算値と同様、システムの操作パラメータを制御および調整するよう設定および/またはプログラムされうる。いくつかの態様において、信号処理器/コンピュータは、システムの他の部材の操作パラメータを設定および/または制御するための制御信号を送信および受信できる。他の態様において、信号処理器/コンピュータは、他のシステム部材から隔離され、および/または、他のシステム部材に対して遠隔設置することができ、間接的手段および/または携帯用手段を介して(例えば携帯用電子データ記憶装置(磁気ディスクなど)を介して、またはコンピュータネットワーク通信(インターネットや局所的なイントラネットなど)を介して)システムの一つまたは二つ以上の他の部材からデータを受信するよう設定されてもよい。
【0178】
信号処理器/コンピュータは、いくつかの公知の部材および電気回路を含んでもよく、さらに詳細に後述するように、運搬電気回路(例えば一つまたは二つ以上のバス)、ビデオおよびオーディオデータの入力/出力(I/O)サブシステム、専用ハードウェア、ならびに他の部材や、電気回路などの他の部材と同様、プロセシング・ユニット(すなわち処理器)、メモリシステム、入力および出力装置ならびにインターフェース(例えば相互接続機構)が挙げられる。さらに、信号処理器/コンピュータはマルチ処理器コンピュータシステムであってもよく、コンピュータネットワークに接続した多数のコンピュータを含んでもよい。
【0179】
信号処理器/コンピュータは処理器を含んでもよく、例えば、セレロンおよびペンティアム(登録商標)処理器のシリーズx86の一つなどの市販の処理器、インテルから入手のもの、AMDおよびCyrixの類似の装置、モトローラから入手できる680X0シリーズマイクロプロセッサ、およびIBMのPowerPCマイクロプロセッサが挙げられる。他の処理器の多くも入手でき、コンピュータシステムは特定の処理器に限定されない。
【0180】
処理器は典型的には、Windows(登録商標)7、Windows(登録商標) Vista、Windows(登録商標)NT、Windows(登録商標)95または98、UNIX(登録商標)、Linux(登録商標)、DOS、VMS、MacOSおよびOS8が例である、オペレーティングシステムと呼ばれるプログラムを実行する。該オペレーティングシステムは、他のコンピュータプログラムの実行を制御し、スケジューリング、デバッギング、入力/出力制御、会計、編集、記憶域の割り当て、通信制御および関連するサービスを提供する。処理器およびオペレーティングシステムはともに、高レベルなプログラミング言語におけるアプリケーションプログラムが書かれたコンピュータ基盤を定義する。信号処理器/コンピュータは特定のコンピュータ基盤に限定されない。
【0181】
信号処理器/コンピュータは、メモリシステムを含んでもよく、該メモリシステムは、コンピュータが読み取れ、書き込める不揮発性の記録媒体であり、例えば磁気ディスク、光学ディスク、フラッシュメモリおよびテープなどである。かかる記録媒体は取り外し可能であってもよく(例えば、フロッピー(登録商標)ディスク、読み取り/書き込みCDやメモリスティック)、または常設されていてもよい(例えばハードドライブ)。
【0182】
かかる記録媒体は、典型的にはバイナリ形式(すなわち一とゼロとの数列として翻訳された形式)で信号を保存する。ディスク(例えば磁気または光学)は多数のトラックを有し、該トラック上でかかる信号は、典型的にはバイナリ形式(すなわち一とゼロとの数列として翻訳された形式)で保存されていてもよい。かかる信号は、マイクロプロセッサで実行されるソフトウェアのプログラム(例えばアプリケーションのプログラム)、またはアプリケーションのプログラムで処理される情報を定義してもよい。
【0183】
信号処理器/コンピュータのメモリシステムもまた、集積回路メモリエレメントを含んでいてもよく、該エレメントは、ダイナミック・ランダム・アクセス・メモリ(DRAM)やスタティックメモリ(SRAM)などの、揮発性のランダム・アクセス・メモリである。典型的には、処理器は、操作中、プログラムおよびデータを、不揮発性の記録媒体から集積回路メモリエレメント中に読み取らせる。典型的には、不揮発性の記録媒体より処理器の方がプログラム命令およびデータにより早くアクセスできる。
【0184】
一般に、処理器は、プログラム命令に従い集積回路メモリエレメント内でデータを操作し、処理が完了した後、不揮発性の記録媒体に操作したデータをコピーする。不揮発性の記録媒体と集積回路メモリエレメントとの間でのデータ移動を扱うためのさまざまな機構が知られており、前記の方法、工程、システムおよびシステム要素を実行する信号処理器/コンピュータは、それらに限定されない。信号処理器/コンピュータは、特定のメモリシステムに限定されない。
【0185】
前記のかかるメモリシステムの少なくとも一部は、前記の一つまたは二つ以上のデータ構造(例えば参照表)または方程式を保存するために使用してもよい。例えば、不揮発性の記録媒体の少なくとも一部は、一つまたは二つ以上のかかるデータ構造を含むデータベースの少なくとも一部を保存してもよい。かかるデータベースは、さまざまなタイプのデータベースのいずれであってもよく、例えば、ファイルシステムとしては、データがデリミタで区切られたデータユニットに整頓される、一つまたは二つ以上のフラット−ファイルデータ構造、データが表中に保存されたデータユニット中に整頓される関係型データベース、データがオブジェクトとして保存されたデータユニットに整頓されるオブジェクト指向データベース、他のタイプのデータベース、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0186】
信号処理器/コンピュータは、ビデオとオーディオデータI/Oサブシステムを含んでもよい。サブシステムのオーディオ部分は、アナログからデジタル(A/D)への変換器を含んでもよく、該変換器は、アナログのオーディオ情報を受け取り、それをデジタル情報に変換する。デジタル情報は、別のときに使用するハードディスクに保存するための公知の圧縮システムを使用して圧縮してもよい。I/Oサブシステムの典型的なビデオ部分は、その多くが当該分野で公知のビデオ画像圧縮器/解凍器を含んでもよい。かかる圧縮器/解凍器は、アナログのビデオ情報を圧縮されたデジタル情報に変換(逆の場合も同じ)する。圧縮されたデジタル情報は、後の使用のために、ハードディスクに保存してもよい。
【0187】
信号処理器/コンピュータは一つまたは二つ以上の出力装置を含んでもよい。出力装置の例としては、陰極線管(CRT)、液晶ディスプレイ(LCD)および他のビデオ出力装置、プリンター、モデムやネットワーク・インターフェースなどの通信装置、ディスクやテープなどの保存装置、ならびにスピーカーなどのオーディオ出力装置が挙げられる。
【0188】
信号処理器/コンピュータもまた、一つまたは二つ以上の入力装置を含んでもよい。入力装置の例としては、キーボード、キーパッド、トラックボール、マウス、ペンおよびタブレット、前記のものなどの通信装置、ならびにオーディオとビデオ取込装置およびセンサーが挙げられる。信号処理器/コンピュータは、本明細書に記載された特定の入力または出力装置に限定されない。
【0189】
信号処理器/コンピュータは、特別にプログラムされた特殊用途のハードウェア、例えばアプリケーション特異的集積回路(ASIC)を含んでもよい。かかる特殊用途のハードウェアは、前記の一つまたは二つ以上の方法、工程、シミュレーション、アルゴリズム、システム、およびシステム要素を実行するために設定してもよい。信号処理器/コンピュータおよびそれらの部材は、さまざまな一つまたは二つ以上の好適なコンピュータのプログラミング言語のいずれかを使用してプログラム可能であってもよい。かかる言語としては、例えばC、Pascal、FortranおよびBASICなどの手続き型プログラミング言語、例えばC++、Java(登録商標)およびEiffelなどのオブジェクト指向言語、ならびに他の言語、スクリプト言語やアセンブリ言語さえも挙げられる。
【0190】
方法、工程、シミュレーション、アルゴリズム、システムおよびシステム要素は、かかるコンピュータシステムで実行されてもよい、手続き型プログラミング言語、オブジェクト指向プログラミング言語、他の言語およびそれらの組み合わせを含むさまざまな好適なプログラミング言語のいずれかを使用して実行してもよい。かかる方法、工程、シミュレーション、アルゴリズム、システムおよびシステム要素は、コンピュータプログラムの別々のモジュールとして実行することができ、また別々のコンピュータプログラムとして独立して実行することもできる。かかるモジュールおよびプログラムは別々のコンピュータで実行することができる。
【0191】
前記の方法、工程、シミュレーション、アルゴリズム、システムおよびシステム要素は、前記のコントロールシステムを実行したコンピュータの一部として、または独立した部材として、ソフトウェア、ハードウェアまたはファームウェアまたはこれら三者の任意の組み合わせで実行してもよい。
【0192】
かかる方法、工程、シミュレーション、アルゴリズム、システムおよびシステム要素は、例えば不揮発性の記録媒体、集積回路メモリエレメントまたはそれらの組み合わせなどの、コンピュータで読み取り可能な媒体上のコンピュータで読み取り可能な信号として、有形に具体化されたコンピュータプログラム産物として、独立してまたは組み合わせて実行してもよい。かかる方法、工程、シミュレーション、アルゴリズム、システムおよびシステム要素のそれぞれにおいて、かかるコンピュータプログラム産物は、例えばコンピュータに実行された結果として方法、工程、シミュレーション、アルゴリズム、システムまたはシステム要素を実施するようコンピュータに命令する一つまたは二つ以上のプログラムの一部として、命令を定義する、コンピュータで読み取り可能な媒体上に有形に具体化されたコンピュータで読み取り可能な信号を含んでもよい。
【0193】
典型的な標的アナライト
当業者には十分理解されるだろうが、大多数のアナライト分子および粒子は、本発明の方法およびシステムを使用して検出され、任意に定量化されてもよく;基本的に、結合リガンドに対して固定化されるように作製することが可能な任意のアナライト分子は、本発明を使用して潜在的に調査することができる。アナライト分子を含んでもよい、潜在的に関心のある、特定のより具体的な標的について、以下に言及する。以下に列挙されたものは典型例であって、これらに限定されるものではない。
【0194】
いくつかの態様において、アナライト分子は生体分子であってもよい。生体分子の限定されない例として、ホルモン、抗体、サイトカイン、タンパク質、核酸、脂質、炭水化物、脂質細胞膜抗原および受容体(神経の、ホルモンの、栄養の、および細胞表面の受容体)もしくはそのリガンド、またはそれらの組み合わせが挙げられる。タンパク質の限定されない態様として、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質断片、タンパク質複合体、融合タンパク質、組み換えタンパク質、リンタンパク質、糖タンパク質、リポタンパク質などが挙げられる。当業者には十分理解されるだろうが、本発明を使用して結合パートナーを検出または評価してもよいタンパク性のアナライト分子は大多数存在する可能性がある。前に考察したような酵素に加えて、好適なタンパク質アナライト分子としては、これらに限定されないが、免疫グロブリン、ホルモン、成長因子、サイトカイン(これらの多くが細胞受容体のリガンドとして働く)、癌マーカーなどが挙げられる。生体分子の限定されない例としては、PSAおよびTNF−αが挙げられる。
【0195】
特定の態様において、アナライト分子は翻訳後修飾タンパク質(例えば、リン酸化、メチル化、グリコシル化)であってもよく、捕捉成分は翻訳後修飾に特異的な抗体であってもよい。修飾タンパク質は、極めて多数の特異的な抗体を含む捕捉成分により捕捉されてもよく、そして捕捉されたタンパク質は、翻訳後修飾に特異性を有する二次抗体を含む結合リガンドにさらに結合してもよい。代わりに、修飾タンパク質は、翻訳後修飾に特異的な抗体を含む捕捉成分により捕捉されてもよく、そして捕捉されたタンパク質は、それぞれの修飾タンパク質に特異的な抗体を含む結合リガンドにさらに結合してもよい。
【0196】
他の態様において、アナライト分子は核酸である。核酸は、相補的な核酸断片(例えばオリゴヌクレオチド)により捕捉されてもよく、そして任意に、異なる相補オリゴヌクレオチドを含む結合リガンドにより、続いて標識されてもよい。
【0197】
好適なアナライト分子および粒子としては、これらに限定されないが、小分子(有機化合物および無機化合物を含む)、環境汚染物質(農薬、殺虫剤、毒素などを含む)、治療用分子(治療用薬物および乱用薬物、抗体などを含む)、生体分子(ホルモン、サイトカイン、タンパク質、核酸、脂質、炭水化物、細胞膜抗原および受容体(神経の、ホルモンの、栄養の、および細胞表面の受容体)またはそのリガンドなどを含む)、全細胞(原核細胞(病原性細菌など)および哺乳動物腫瘍細胞を含む真核細胞を含む)、ウイルス(レトロウイルス、ヘルペスウイルス、アデノウイルス、レンチウイルスなどを含む)、胞子などが挙げられる。
【0198】
いくつかの態様において、アナライト分子は酵素であってもよい。酵素の限定されない例としては、酸化還元酵素、転移酵素、リン酸化酵素、加水分解酵素、リアーゼ、異性化酵素、リガーゼなどが挙げられる。酵素のさらなる例としては、これらに限定されないが、ポリメラーゼ、カテプシン、カルパイン、例えばASTおよびALTなどのアミノ転移酵素、例えばカスパーゼなどのプロテアーゼ、ヌクレオチドシクラーゼ、転移酵素、リパーゼ、心臓発作に関連した酵素などが挙げられる。本発明のシステム/方法を、ウイルス性因子または細菌性因子の存在を検出するために使用するとき、適切な標的酵素としては、ウイルス性または細菌性ポリメラーゼおよびウイルス性または細菌性プロテアーゼを含む他のかかる酵素などが挙げられる。
【0199】
他の態様において、アナライト分子は酵素成分を含む。例えばアナライト分子は、細胞外表面上に存在する酵素または酵素成分を有する細胞でありうる。代わりに、アナライト分子は、細胞表面上に酵素成分を有さない細胞である。後述する間接的アッセイの方法を使用して、典型的には、かかる細胞を同定する。酵素成分の限定されない例は、西洋ワサビペルオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、およびアルカリホスファターゼである。
【0200】
アナライト分子を含むか含むことが疑われる流体試料は任意の好適な供給源に由来する。いくつかの場合において、試料は、液体、流動性のある粒子状固体、固体粒子の流体懸濁液、超臨界流体および/または気体を含んでもよい。いくつかの場合において、アナライト分子は、決定前に、その供給源から分離または精製してもよく;しかしながら、特定の態様において、アナライト分子を含む未処理の試料は直接試験してもよい。アナライト分子の供給源は、合成品(例えば実験室で製造された)、環境(例えば空気、土など)、哺乳動物、動物、植物、またはそれらの任意の組み合わせであってもよい。特定の態様において、アナライト分子の供給源は、ヒトの体物質(例えば、血液、血清、血漿、尿、唾液、組織、器官など)である。
【0201】
分析される流体試料の体積は、例えば、使用される/利用できる捕捉物の数、使用される/利用できる区画の数などに応じて、広範な体積のうち潜在的に任意の量であってもよい。いくつかの特定の典型的な態様において、試料体積は、約0.01μL、約0.1μL、約1μL、約5μL、約10μL、約100μL、約1mL、約5mL、約10mLなどであってもよい。いくつかの場合において、流体試料の体積は、約0.01μLと約10mLとの間、約0.01μLと約1mLとの間、約0.01μLと約100μLとの間、または約0.1μLと約10μLとの間である。
【0202】
いくつかの場合において、流体試料は、アッセイで使用する前に希釈されてもよい。例えば、アナライト分子の供給源がヒトの体液(例えば血液、血清)である態様において、該液は、適切な溶媒(例えばPBS緩衝液などの緩衝液)で希釈されてもよい。流体試料は、使用前に、約1倍、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約10倍またはそれ以上に希釈されてもよい。試料を、複数の捕捉物を含む溶液に添加するか、または複数の捕捉物を試料に直接添加してもよく、もしくは溶液として試料に添加してもよい。
【0203】
捕捉成分
本発明のいくつかの態様において、アナライト分子は表面(例えば、捕捉物の表面、区画(例えば反応槽)の表面など)に対して固定化されてもよい。複数のタイプの結合リガンドに暴露する前、同時、または後に、アナライト分子は表面に対して固定化されてもよい。いくつかの態様において、表面に対するアナライト分子の固定化は、表面から(例えば反応槽から)アナライト分子を取り除くことを考慮せずに、溶液から任意の過剰な結合リガンドを除去するのに役立ってもよい。一般に、捕捉成分は、分子、粒子もしくは複合体の固定化、検出、定量化および/または分析の目的で、分子、粒子もしくは複合体を固体の支持体に付着させる。
【0204】
当業者には十分理解されるだろうが、捕捉成分の組成はアナライト分子の組成に依存するだろう。多種多様な標的分子に対する捕捉成分は公知であるか、または公知の技術を使用して容易に発見もしくは明らかになりうる。例えば、標的分子がタンパク質であるとき、捕捉成分は、タンパク質、特に抗体またはその断片(例えば、抗原結合断片(Fab)、Fab’断片、ペプシン断片、F(ab’)2断片、全長のポリクローナルまたはモノクローナル抗体、抗体様断片など)、受容体タンパク質、プロテインA、プロテインCなどの他のタンパク質、または小分子を含んでもよい。
【0205】
いくつかの場合において、タンパク質に対する捕捉成分はペプチドを含む。例えば、標的分子が酵素であるとき、好適な捕捉成分としては、酵素基質および/または酵素阻害剤が挙げられる。いくつかの場合において、標的アナライトがリン酸化された化学種であるとき、捕捉成分はリン酸結合剤を含んでもよい。例えば、リン酸結合剤は、米国特許第7,070,921号および米国特許出願第20060121544号に記載されたものなどの、金属イオン親和性媒体を含んでもよい。さらに、標的分子が一本鎖の核酸であるとき、捕捉成分は相補的な核酸であってもよい。同様に、標的分子は核酸結合タンパク質であってもよく、捕捉成分は一本鎖または二本鎖の核酸であってもよく;代わりに、標的分子が一本鎖または二本鎖の核酸であるとき、捕捉成分は核酸結合タンパク質であってもよい。
【0206】
代わりに、米国特許第5,270,163号、第5,475,096号、第5,567,588号、第5,637,459号、第5,683,867号、第5,705,337号および関連特許に一般に記載されているように、核酸である「アプタマー」を、任意の標的分子を事実上捕捉するために開発してもよい。また、例えば標的分子が炭水化物であるとき、潜在的に好適な捕捉成分として、例えば、抗体、レクチン、およびセレクチンが挙げられる。当業者には十分理解されているだろうが、着目する標的分子と特異的に結びつくことができる任意の分子は、捕捉成分として潜在的に使用してもよい。
【0207】
特定に態様において、好適な標的分子/捕捉成分の対としては、これらに限定されないが、抗体/抗原、受容体/リガンド、タンパク質/核酸、核酸/核酸、酵素/基質および/または阻害剤、炭水化物(糖タンパク質および糖脂質を含む)/レクチンおよび/またはセレクチン、タンパク質/タンパク質、タンパク質/小分子;小分子/小分子などを挙げることができる。一つの態様に従い、捕捉成分は、成長ホルモン受容体、ブドウ糖輸送担体(特にGLUT4受容体)などの多量体化するのが知られている細胞表面の受容体の一部(特に細胞外の一部)であり、T細胞受容体および標的アナライトは一つまたは二つ以上の受容体標的リガンドである。
【0208】
特定の態様において、捕捉成分の表面への付着を容易にする結合表面および/または捕捉成分のリンケージ(linkage)、機能化または修飾を介して、捕捉成分は表面に付着してもよく、該リンケージは任意の実体を含んでもよい。捕捉成分と表面との間のリンケージは、一つもしくは二つ以上の化学的または物理的(例えば、ファン・デル・ワールス力、水素結合、静電的相互作用、疎水的/親水的相互作用などを介した非特異的な付着)結合および/またはかかる結合を提供する化学的リンカーを含んでもよい。特定の態様において、捕捉成分は、捕捉拡張成分を含む。かかる態様において、捕捉成分は、アナライト分子に結合する第一の部分および結合表面への付着に使用されうる第二の部分を含む。
【0209】
特定の態様において、信号の喪失または検出中に擬陽性の信号をもたらすかもしれないアッセイの実施中、結合表面への非捕捉成分(例えばアナライト分子、結合リガンド)の非特異的な付着を低減することができるかまたは最小化することができる防御層または保護層も、表面に含まれてもよい。保護層を形成する特定の態様で利用してもよい材料の例としては、これらに限定されないが、タンパク質の非特異的な結合をはじくポリ(エチレングリコール)などの重合体;血清、アルブミンおよびカゼインなどの、タンパク質の非特異的な結合をはじく特性を有する天然由来のタンパク質;スルホベタインなどの界面活性剤(例えば両性イオン界面活性剤);天然由来の長鎖脂質;およびサケ精子DNAなどの核酸が挙げられる。
【0210】
一つの態様は、タンパク性の捕捉成分を利用する。当該分野において公知なように、あらゆる技術を、タンパク性の捕捉成分を多種多様な固体表面に付着させるために使用してもよい。本文中の「タンパク質」または「タンパク性」としては、例えば酵素および抗体を含む、タンパク質、ポリペプチド、ペプチドが挙げられる。多種多様な技術(例えば米国特許第5,620,850号に概要が記載されている方法)は、タンパク質に反応性の実体を加えることが知られている。表面にタンパク質を付着させることは公知であり、Heller、Acc.Chem.Res.23巻:128頁(1990年)および他の多くの類似の参考文献を参照のこと。
【0211】
いくつかの態様において、捕捉成分(または結合リガンド)はFab’断片を含んでもよい。全抗体とは対照的に、Fab’断片の使用によって、捕捉成分と結合リガンドとの間の非特異的な結合が低減させ得る。いくつかの場合において、捕捉成分(または結合リガンド)のFc領域を(例えばタンパク分解的に)除いてもよい。いくつかの場合において、酵素は、Fc領域を除くために使用してもよい(例えばF(ab’)2断片を生成し得るペプシンやFab断片を生成し得るパパイン)。ときには、捕捉成分は、アミンを使用して結合表面に付着させてもよく、またはアビジンまたはストレプトアビジンで被覆された捕捉物表面への結合を容易にするためにビオチンを使用して(例えばNHS−ビオチンを使用して)修飾してもよい。F(ab’)2断片は、二つのチオールを生成するFab’断片をいくつかの場合においては形成する化学的還元処理(例えば2−メルカプトエチルアミンへの暴露により)に供してもよい。これらチオール生成断片は、その後、マレイミドなどのマイケル・アクセプターとの反応を介して付着されうる。例えば、Fab’断片はその後、前述のようなストレプトアビジンで被覆した表面への付着を容易にするために少なくとも一つのビオチン実体を付着(すなわちビオチン化)するため、試薬(例えばマレイミド−ビオチン)で処理してもよい。
【0212】
当該分野において周知であるように、例えば、アナライト分子が核酸または核酸結合タンパク質であるとき、または捕捉成分がタンパク質に結合するアプタマーとして働くことが望ましいときの特定の態様は、捕捉成分として核酸を利用する。
【0213】
ある態様によれば、それぞれの結合表面は複数の捕捉成分を含む。複数の捕捉成分は、いくつかの場合において、「芝生」のような結合表面上にランダムに分布していてもよい。代わりに、捕捉成分は、異なる領域に空間的に分離していてもよく、かつ任意の所望のやり方で分布していてもよい。
【0214】
特定の態様において、捕捉成分とアナライト分子との間の結合は特異的であり、例えば、捕捉成分とアナライト分子とが結合対の相補的な部分である場合である。特定のかかる態様において、捕捉成分は、特異的かつ直接的にアナライト分子と結合する。「特異的に結合する」または「特異的な結合」とは、捕捉成分が、アナライト分子と試験試料中の他の成分または混入物質とを区別するのに十分な特異性を有してアナライト分子と結合することを意味する。ある態様によれば、例えば捕捉成分は、アナライト分子(例えば抗原)のある部分と特異的に結合する抗体であってもよい。ある態様によれば、抗体は、着目するアナライト分子に特異的に結合することができる任意の抗体でありうる。例えば、適切な抗体としては、これらに限定されないが、モノクローナル抗体、二重特異性抗体、ミニボディ、ドメイン(domain)抗体、合成抗体(ときとして抗体模倣剤として言及される)、キメラ抗体、ヒト化抗体、抗体融合(ときとして「抗体コンジュゲート」として言及される)、およびそれぞれの断片が挙げられる。他の例として、アナライト分子は抗体であってもよく、捕捉成分は抗体であってもよい。
【0215】
アナライト粒子が生体細胞(例えば、哺乳類、鳥類、爬虫類、他の脊椎動物、昆虫、酵母、細菌、の細胞など)である一つの態様によれば、捕捉成分は、細胞表面抗原(例えば細胞表面受容体)に特異的な親和性を有するリガンドであってもよい。一つの態様において、捕捉成分は、接着分子受容体またはその一部であり、それは標的の細胞タイプの表面上に発現された細胞接着分子に特異的に結合する。使用にあたって、接着分子受容体は、標的細胞の細胞外表面上の接着分子に結合し、その結果、細胞を固定化または捕捉する。アナライト分子が細胞である一つの態様において、捕捉成分がフィブロネクチンであり、それは、例えば神経細胞を含むアナライト粒子に対して特異性を有する。
【0216】
いくつかの態様において、当業者により十分に理解されているだろうが、アナライト分子との結合が高度に特異的ではない捕捉成分を使用してアナライト分子を検出することが可能である。例えば、かかるシステム/方法は、例えば異なる結合リガンドの一団などの異なる捕捉成分を使用してもよい。任意の特定のアナライト分子の検出は、「電子の鼻」が動作するやり方に類似して、結合リガンドのこの一団に結合する「特徴」を介して決定される。これによって、特定の小分子アナライトの検出において特定の有用性が見出され得る。いくつかの態様において、アナライト分子と捕捉成分との間の結合親和性は、非特異的に結合した分子または粒子を除去する洗浄工程を含むアッセイ条件下で、結合を残留させるのに十分であるはずである。いくつかの場合において、例えば特定の生体分子の検出において、アナライト分子とその相補的な捕捉成分との結合定数は、少なくとも約104と約106M−1との間、少なくとも約105と約109M−1との間、少なくとも約107と約109M−1との間、約109M−1を超え、またはそれを超えてもよい。
【0217】
結合リガンドおよび前駆標識剤/標識剤
いくつかの態様において、アッセイは少なくとも一つの結合リガンドを含んでもよい。より詳細に後述するが、結合リガンドは、アナライト分子と結びつくおよび/または他の結合リガンドと結びつくことができる、任意の好適な分子、粒子などから選択してもよい。特定の結合リガンドは、直接的(例えば検出可能な実体を介して)または間接的のいずれかで、検出を容易にできる成分を含むことができる。成分が例えば前駆標識剤分子を標識剤分子(例えばアッセイで検出される薬剤)に変換することによって、間接的な検出を容易にしてもよい。いくつかの態様において、結合リガンドは酵素成分(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、アルカリホスファターゼなど)を含んでもよい。本明細書中に考察したとおり、第一のタイプの結合リガンドは、追加の結合リガンド(例えば第二のタイプなど)とともに使用しても、使用しなくてもよい。
【0218】
いくつかの態様において、結合リガンドが複数のアナライト分子の少なくともいくつかと結びつくように、複数のアナライト分子(例えばいくつかの場合において、捕捉物に対して固定化されている)は、複数の結合リガンドに暴露されてもよい。いくつかの場合において、約80%を超える、約85%を超える、約90%を超える、約95%を超える、約97%を超える、約98%を超える、約99%を超える、またはそれ以上のアナライト分子は、結合リガンドと結びつく。
【0219】
捕捉工程において、ビーズ濃度の選択は、いくつかの競合因子に依存してもよい。例えば、熱力学的および動力学的な視点から、ほとんどの標的アナライトを捕捉するのに十分なビーズが存在する場合、それは有利でありうる。典型的な説明として、熱力学的に、それぞれが約80,000の捕捉成分(例えば抗体)に結合した、100μL中の200,000のビーズは、約0.3nMの濃度の抗体と相互に関連付けられ、その濃度のときの抗体とタンパク質との平衡は、ある場合において(例えば>70%)、標的アナライト分子の比較的高い捕捉効率を生じてもよい。動力学的に、100μL中に分散したビーズ200,000個において、ビーズ間の平均距離は約80nmであると見積もることができる。
【0220】
典型的なアナライト分子として、例えば、TNF−αおよびPSAのサイズ(それぞれ17.3kDaおよび30kDa)のタンパク質は典型的に、2時間を超えるインキュベートでは、かかるアナライト分子の捕捉が動力学的に制限されない傾向にあるように、1分間未満で80μm拡散する傾向にあるだろう。さらに、ポアソンノイズを制限するために、アレイ上に、所望の量または許容量までロードした十分なビーズを提供することもまた、有利でありうる。例として体積10μL中の200,000個のビーズがアレイ上にロードされている状況を考慮すると、典型的に、約20,000〜30,000個のビーズを、アレイのフェムトモーラーサイズのウェル中に閉じ込めてもよい。
【0221】
1%の活性ビーズの典型的なバックグラウンド信号(例えば非特異的な結合による等)において、このロードによって、検出された活性ビーズ200〜300個のバックグラウンド信号がもたらされることが予想されるだろう。これは6〜7%のポアソンノイズからの変動係数(CV)に対応し、典型的な態様において許容されてもよい。しかしながら、特定の濃度を超えるビーズ濃度は、ある場合において望ましくないかもしれない。a) バックグラウンドに対する信号(signal-to-background)を低減してもよい非特異的な結合が増加する;および/またはb) 活性ビーズの割合が低過ぎて、その結果ポアソンノイズのCVが高くなるように、ビーズに対するアナライトの比率が望ましくないぐらいに低い、という結果がもたらされるかもしれない。ある態様において、前述したもののような因子のバランスを考慮して、試験試料の100μLあたり約200,000〜1,000,000ビーズを提供することは、本発明の特定のアッセイを実施するにあたって、望ましいことであってもよく、またある場合には、最適であってもよい。
【0222】
捕捉されたアナライト分子を標識するために一つまたは二つ以上の結合リガンドを採用する本発明のアッセイの態様において、いくつかの場合において、望ましいかまたは最適な性能を得るために使用される濃度を調整することは有利であってもよい。例えば、タンパク質(捕捉タンパク質)であるアナライト分子を含む態様を考慮し、検出抗体を含む第一の結合リガンドと酵素コンジュゲート(例えばSβG)を含む第二の結合リガンドとを採用すると、捕捉されたタンパク質を標識するのに使用される検出抗体と酵素コンジュゲート(SβG)との濃度は、いくつかの場合において、許容されるバックグラウンド信号(例えば1%またはそれ以下)および許容されるポアソンノイズが得られるように制限または最小化してもよい。捕捉されたタンパク質を標識するのに使用される検出抗体と酵素コンジュゲート(SβG)との濃度の選択は、本発明のアッセイ方法の性能を改善するかまたは最適化する要素でありうる。
【0223】
ある場合において、アッセイで生成される信号が飽和状態になるのを避けるために、一部の捕捉タンパク質だけを標識することが望ましいことがあり得る。例えば、観察されたバックグラウンドレベルが標的タンパク質の〜1〜2fMに相当する特定のアッセイにおいて、ビーズに対するアナライトの比率が約0.3〜0.6となってもよいように、どのタンパク質も酵素で標識される場合、活性ビーズ数は約25〜40%の範囲にあってもよく、これは、いくつかの場合において望ましいものより高いかもしれない。
【0224】
デジタル検出アッセイにおけるダイナミックレンジの下限により近くてもよいバックグラウンド信号を生成すること−例えばある場合において、1%の活性ビーズが本発明のデジタル検出アッセイにおけるバックグラウンドに対して合理的なノイズ・フロアを提供してもよいことを考慮すると−両方の標識試薬の濃度を制限もしくは最小化すること、または、より短いインキュベート時間を用いることのいずれかによって、捕捉タンパク質の適切な標識は、標識工程の動力学的制御により潜在的に達成することができる。例えば、標識濃度が最小化されているある態様において、標準的なELISAインキュベート時間を用いることは、例えばアッセイの合計時間として〜6時間用いて、許容される結果を提供してもよい。この時間の長さは、試料にとって日々の所要時間に耐えるものであり、試験に許容されてもよい長さである。例えば<1時間などの、より短い所要時間において(例えばポイント・オブ・ケアの適用において)は、インキュベートをより短く、標識濃度をより高くして、アッセイを実施することができる。
【0225】
いくつかの態様において、結合リガンドの一つ以上のタイプを使用してもよい。
いくつかの態様において、第一のタイプの結合リガンドと第二のタイプの結合リガンドとを提供してもよい。いくつかの態様において、結合リガンドの少なくとも二つ、少なくとも三つ、少なくとも四つ、少なくとも五つ、少なくとも八つ、少なくとも十、またはそれ以上のタイプを提供してもよい。複数の捕捉物(そのうちのいくつかは少なくとも一つのアナライト分子と結びついている)が複数のタイプの結合リガンドに暴露されているとき、複数の固定化アナライト分子の少なくともいくつかは、結合リガンドのそれぞれのタイプの少なくとも一つと結びついていてもよい。さまざまな異なるやり方で結合リガンドが互いに相互作用するように、結合リガンドを選択してもよい。最初の例で、第一のタイプの結合リガンドはアナライト分子と結びつくことができてもよく、第二のタイプの結合リガンドは第一のタイプの結合リガンドと結びつくことができてもよい。かかる態様において、第一のタイプの結合リガンドは、アナライト分子との結びつきに役立つ第一の成分と、第一のタイプの結合リガンドを有する第二のタイプの結合リガンドとの結びつきに役立つ第二の成分とを含んでもよい。特定の態様において、第二の成分はビオチンであり、第二のタイプの結合リガンドは酵素またはビオチンと結びつく酵素成分を含む。
【0226】
他の例として、第一のタイプの結合リガンドと第二のタイプの結合リガンドとの両方とも、アナライト分子と直接結びついてもよい。理論や任意の特定のメカニズムに縛られることなく、第一のタイプと第二のタイプとの両方の結合リガンドの結びつきは、(例えば直接的または間接的な検出を介して)第一のタイプの結合リガンドおよび/または第二のタイプの結合リガンドの両方を含むと決定される区画のみをアナライト分子を含むものとして同定することによって、アッセイを実施するのにさらなる特異性と信頼性とを提供してもよい。結合リガンドの単一のタイプのみ(例えば第一のタイプの標識剤または第二のタイプの標識剤のみ)を有すると見出された区画を、アナライト分子を含む区画として考えないまたは計上しないことで、かかるアッセイ方法は、非特異的な結合により引き起こされる擬陽性の数を減らし得る。
【0227】
第一のタイプの結合リガンドは第一のタイプの酵素成分を含んでもよく、第二のタイプの結合リガンドは、第一のタイプの酵素成分とは異なる第二のタイプの酵素成分を含んでもよい。アナライト分子を含む捕捉物、第一のタイプの結合リガンド、および第二のタイプの結合リガンドは、第一のタイプの酵素成分に暴露されることによって第一のタイプの標識剤(例えば第一の測定可能な特性)に変換される第一のタイプの前駆標識剤と、第二のタイプの酵素成分に暴露されることによって第二のタイプの標識剤(例えば第一の測定可能な特性とは区別することができる測定可能な特性を含む)に変換される第二のタイプの前駆標識剤に暴露されてもよい。
【0228】
したがって、第一のタイプの標識剤と第二のタイプの標識剤とを含むことが決定された区画のみがアナライト分子を含むものと決定される。他の例として、第一のタイプの結合リガンドと第二のタイプの結合リガンドとはそれぞれ成分(例えばDNA標識など)を組み込んでもよく、第三のタイプの結合リガンドは、第一のタイプと第二のタイプの結合リガンドの成分に相補的な二つの成分(例えば二つのタイプの相補的DNA標識)を含んでもよい。ここで第三のタイプの結合リガンドもまた、直接的または間接的な検出のための分子または実体を含む(例えば、反応槽中の第三のタイプの結合リガンドの存在は、区画中のアナライト分子の有無を決定するために必要とされる)。
【0229】
第一のタイプの結合リガンドと第二のタイプの結合リガンドとの両方とも互いに実質的に近接近して存在しているとき(例えばアナライト分子との結びつきを介して)、アナライト分子を検出するため、それ故に、第三のタイプの結合リガンドが結びついてもよい。非特異的な結合に関連した特定の悪影響を軽減し得るやり方で結合リガンドの一つ以上のタイプを使用することに関するさらなる情報について、2010年3月24日に出願された、Duffyらの、「Ultra-Sensitive Detection of Molecules using Dual Detection Methods」と題された、自己の米国特許出願第12/731,135号;および、2011年3月1日に出願された、Duffyらの、「Ultra-Sensitive Detection of Molecules using Dual Detection Methods」と題された、自己の国際特許出願第(未定)(代理人整理番号Q0052.70012WO00)に記載されている。これらは参照により組み込まれる。
【0230】
以下の実施例は、本発明のさまざまな特徴を実証するために含まれる。添付の請求項に定義されているような本発明の範囲から逸脱しない結果と同様の結果または類似の結果が依然得られる一方で開示されている具体的な態様において多くの変化がなされ得ることを、本開示を踏まえると、当業者は十分に理解するだろう。したがって、以下の実施例は、本発明の特定の特徴を説明することのみを目的としているが、必ずしも本発明の全範囲を例証してはいない。
【0231】
実施例1
以下の例には、実施例2〜10で使用された材料が記載されている。光ファイバー束は、Schott North America(マサチューセッツ州サウスフ゛リッシ゛)から購入した。非強化ガラスシリコーンシートは、Specialty Manufacturing(ミシガン州サギノー)から購入した。塩化水素酸、無水エタノール、および分子生物学グレードのツイーン−20は、Sigma-Aldrich(ミズーリ州セントルイス)から購入した。直径2.7μmの、カルボキシルで終端された磁気ビーズは、Varian社(カリフォルニア州レークフォレスト)から購入した。1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)、N−ヒドロキシスルホスクシンイミド(NHS)、およびSuperBlock(登録商標)T-20 Blocking Bufferは、Thermo Scientific(イリノイ州ロックフォード)から購入した。ストレプトアビジン−β−ガラクトシダーゼ(SβG)は、Invitrogen、Sigma-Aldrichから購入し、また標準的なプロトコルを用いて社内でコンジュゲート化した。レゾルフィン−β−D−ガラクトピラノシド(RGP)は、Invitrogen(カリフォルニア州カールスバッド)から購入した。ファイバー研磨機および研磨用の消耗品は、Allied High Tech Products(カリフォルニア州ランチョドミンゲス)から購入した。PSAに対するモノクローナル捕捉抗体、PSAに対するモノクローナル検出抗体、および精製PSAは、BiosPacificから購入した。ChromalinkTMビオチン化試薬は、Solulink社(カリフォルニア州サンディエゴ)から購入した。精製DNAは、Integrated DNA Technologiesから購入した。
【0232】
実施例2
以下には、典型的なアナライトであるSβG捕捉のためにビオチンにより機能的にされた直径2.7μmの磁気ビーズの調製について、限定されない例が記載されている。メーカーの使用説明書に従い、DNA捕捉プローブ(5’−NH2/C12−GTT GTC AAG ATG CTA CCG TTC AGA G−3’)により機能化されたビーズを調製した。0.5MのNaClと0.01%のツイーン−20とを含むTE緩衝液中、1μMのビオチン化相補DNA(5’−ビオチン−C TCT GAA CGG TAG CAT CTT GAC AAC−3’)とともに、このビーズを終夜インキュベートした。インキュベート後、ツイーン−20を0.01%含むPBS緩衝液中、三回洗浄した。100μL中、ウェルあたり400,000ビーズとなるように、マイクロタイタープレートに、ビーズストックを分配した。マイクロタイタープレートのウェルから緩衝液を吸引した。ビーズを再懸濁し、ツイーン−20を0.05%含むSuperblock中さまざまな濃度のSβGとともにビーズを5時間インキュベートした。その後、ビーズを分離し、ツイーン−20を0.1%含む5×PBS緩衝液で6回洗浄した。
【0233】
代わりの態様において、100μLのSβG標的溶液あたりのビーズ濃度として、200,000ビーズを用いた。ビーズを再懸濁し、ツイーン−20を0.05%含むSuperBlock中希釈されたさまざまな濃度のSβGとともにビーズを54時間インキュベートした。さまざまな標的溶液をマイクロタイタープレートに100μLずつ分配した。その後、マイクロタイタープレート用磁石でビーズを分離し、ツイーン−20を0.1%含む5×PBS緩衝液で6回洗浄した。検出のために、ツイーン−20を0.1%含むPBS10μLにビーズを再懸濁し、フェムトリットル容積のウェルアレイに、そのアリコートをロードした。
【0234】
実施例3
以下には、マイクロウェルアレイの調製について、限定されない例が記載されている。30ミクロン、9ミクロンおよび1ミクロンサイズのダイヤモンド研磨フィルムを使用する研磨機で、順に、長さ約5cmの光ファイバー束を研磨した。研磨されたファイバー束を、0.025MのHCl溶液中で130秒間化学的エッチングした直後、反応を停止するために浸水させた。平均して1分間あたり約1.5〜1.7μmの速度で、ウェルはエッチングされたことになる。したがって、深さ3.25μmのウェルは約115〜130秒間で生成される。エッチングの不純物を除去するために、エッチングされたファイバーを5秒間超音波処理し、水中で5分間洗浄した。その後、ファイバーを真空下で乾燥し、ガラス表面の汚れを落とし活性化するため、5分間空気プラズマに晒した。その表面を疎水的にするために、シラン2%溶液中アレイを30分間シラン化した。いくつかの場合において、良好な封を維持しながらウェル中に単一のビーズを保持するように、ウェルの寸法(例えば3.25±0.5μm)を設定した。
【0235】
実施例4
以下には、マイクロウェル中にビーズをロードすることについて、限定されない例が記載されている。エッチングされたウェル中にビーズをロードする前に、ビーズを、アナライト分子を含む流体試料に暴露してもよい。ファイバー束のエッチングされたウェルにビーズの溶液をアプライするため、汚れていないPVC管類(1/16”I.D. 1/8”O.D.)および汚れていない熱収縮チューブ(3/16”ID)を約1cmの長さに切断した。ビーズ溶液を保持するための容器を作るため、まずPVC管類の一片を、ファイバー束のエッチングされた一端上に置き、続いて密封を提供するために、PVC管類とファイバー束との間の接合部分の周囲に熱収縮チューブを取り付けた。濃縮されたビーズ溶液の10μLを、PVC管類で作られた容器にピペットで入れた。エッチングされたウェル中にビーズを押し付けるため、その後、ファイバー束を3000rpm(〜1300g)で10分間遠心した。遠心後、PVC管類/熱収縮チューブアセンブリを取り外した。過剰なビーズ溶液を洗い落とすため、ファイバー束の遠位端をPBS溶液中に沈め、続いて脱イオン化水でその表面を洗った。ビーズ濃度が10μLあたり200,000であった態様において、50,000ウェルのアレイのうち、単一のビーズに占有されているウェルは典型的には40〜60%という結果になった。
【0236】
実施例5
以下には、マイクロウェルのアレイ中にビーズおよび酵素標識ビーズをロードおよび検出することについて、限定されない例が記載されている。蛍光画像を取得するために、水銀光源とフィルターキューブ(filter cube)と対物とCCDカメラとを含む特注で作った画像システムを使用した。特注の冶具を使用してファイバー束のアレイを顕微鏡のステージに取り付けた。β−ガラクトシダーゼの基質(RPG)の液滴を、シリコーンガスケット材料上に垂らし、ファイバーアレイの遠位端を接触させるように置いた。機械的基盤は、エッチングされた光ファイバーアレイの遠位端に接触しているシリコーンシートを正確に移動させ、単離されたフェムトモーラーの反応槽のアレイを作った。暴露時間1011ミリ秒で、577nmで蛍光画像を取得した。それぞれのファイバー束アレイにつき、五つのフレーム(フレームあたり30秒で)を要した。マイクロウェルアレイのそれぞれのウェル内における酵素活性の有無を決定するために、画像分析ソフトウェアを使用して蛍光画像を分析した。MathWorks MATLABおよびMathWorks Image Processingツールボックスを使用する先進の画像処理ソフトウェアを使用して、データを分析した。ソフトウェアは、取得した画像フレームを整列させ、反応槽を同定し、ビーズを有する反応槽を位置付け、所定の時間にわたって反応槽強度の変化を測定するものである。全データフレームにわたって十分な強度増大を有するビーズを含む反応槽を計数し、同定された反応槽すべてのパーセンテージとして活性反応槽の最終数を報告する。
【0237】
蛍光と同様に、ビーズを含むウェルを同定するための白色光を用いてアレイを画像化した。蛍光画像を取得した後、ファイバー束アレイの遠位(封がされた)端を白色光で明るくし、CCDカメラ上で画像化した。ビーズによる光の散乱により、画像上では、ビーズを含むウェルはビーズのないウェルより明るく見えた。ソフトウェアによりこの方法を使用してビーズ付きウェルを同定した。
【0238】
実施例6
以下の限定されない方法には、単一分子測定のダイナミックレンジを拡張することが記載されている。広範な酵素濃度(例えば濃度の範囲について表2を参照)にわたって、実施例5において前述した実験を繰り返した。試験された濃度に応じて、異なる方法により、この実験で得られた画像を分析した。例えば詳細な説明において前述したとおり、少なくとも一つのアナライト分子(例えば酵素)と結びついたビーズのパーセンテージが約50%(または45%、または40%、または35%など)未満であったとき、「オン」ビーズの総数を計数することによって、ビーズあたりの平均分子を決定した。ビーズを含んだウェルとして(白色光画像から)「オン」ビーズを同定した。最初のフレームに次いで、四つすべての連続したフレームにおいて、その蛍光は増加した。そしてその全体の蛍光は、最初のフレームから最後までで、少なくとも20%増加した。
【0239】
ポアソン分布の調整を使用して、「オン」ビーズの総数を調整してもよい。「オン」ビーズの比率が高いとき、撮像された二番目のフレームの強度から平均ビーズ信号が決定される。「オン」ビーズのパーセンテージが約30%と約50%との間である既知濃度の試料を使用して、アナログからデジタルへの変換係数を決定する。校正係数を活用して既知濃度の試料の結果を校正曲線上にプロットしてもよい。得られた校正曲線を使用して、流体試料中のアナライト分子の未知濃度を決定してもよい。例えば、少なくとも一つのビーズを複数の区画の少なくともいくつかをアドレスし、かつ少なくとも一つのアナライト分子または粒子を含む区画のパーセンテージ(例えば「オン」ビーズのパーセンテージ)を示す度合いを決定することによる。パーセンテージに応じて、流体試料中のアナライト分子または粒子の未知濃度の度合いは、パーセンテージに少なくとも一部基づくか、または複数のアナライト分子または粒子の存在を示す信号の測定された強度に少なくとも一部基づき、および校正曲線と数値とを比較することによって決定されてもよい。
【0240】
実施例7
以下の例には、ビオチン化されたPSA検出抗体および酵素コンジュゲートの調製および特性評価が記載されている。ChromalinkTMビオチン化試薬を使用して検出抗体をビオチン化した。この試薬は、リジン残基を介して抗体にビオチン基を付着させるスクシンイミジルエステル基と、抗体あたりのビオチン分子数を定量化できるビスアリールヒドラゾン発色団とを含む。抗PSA抗体上のビオチン基の平均数は7.5〜9.5に及んだ。標準的なプロトコルを使用してストレプトアビジン−β−ガラクトシダーゼ(SβG)をコンジュゲートした。コンジュゲート分子の>80%が一つのβ−ガラクトシダーゼ分子を含んだことが、コンジュゲートのHPLC特性評価から示された(酵素/コンジュゲートの平均は1.2であった)。それぞれの酵素分子とコンジュゲートしたストレプトアビジン分子の平均数が2.7であったことが、分子量標準との比較から示された。検出抗体それぞれが多数のビオチン基を含むが、単一の検出抗体に結合した単一のタンパク質分子は多数の酵素コンジュゲートと結合できた可能性がある。しかしながら、多数の酵素コンジュゲートが単一の検出抗体分子と結合しなかったことは、単一分子レジーム(AMB<0.1)における酵素が結びついたビーズにより生成された蛍光強度の分析により示唆され:この蛍光強度は、単一分子であるβ−ガラクトシダーゼの既知の動力学と一致する。
【0241】
実施例8
以下の例には、磁気ビーズ上でのPSAの捕捉と酵素標識された免疫複合体の形成とが記載されている。メーカーの使用説明書に従い、PSAに対するモノクローナル抗体により機能的にされたビーズを調製した。磁気ビーズ500,000の懸濁液とともに試験溶液(100μL)を23℃で2時間インキュベートした。その後、ビーズを分離し、5×PBSと0.1%のツイーン−20とで3回洗浄した。ビーズを再懸濁し、検出抗体を含む溶液(〜1nM)とともに23℃で60分間インキュベートした。その後ビーズを分離し、5×PBSと0.1%のツイーン−20とで3回洗浄した。SβGを含む溶液(15pM)とともに23℃で30分間ビーズをインキュベートし、分離し、5×PBSと0.1%のツイーン−20とで7回洗浄した。その後、ビーズを25μLのPBSに再懸濁し、10μLのビーズ溶液をフェムトリットル容積のウェルアレイにロードした。
【0242】
実施例9
以下の例には、第二のアナログ分子の態様(方程式8)に関連して前述した分析を使用するデジタルとアナログとを組み合わせた酵素標識検出を実施した典型的なシステムが記載されている。前記実施例7に記載されたSβG結合アッセイ、および、拡張されたダイナミックレンジを実証する他の実施例に記載された方法および器具を使用することは、AMBのデジタル決定とアナログ決定とを組み合わせることによって達成することができる。図13Aは、ゼプトモーラーからピコモーラーにおよぶ濃度のSβGとともにインキュベートしたビオチン提示ビーズの母集団の画像から決定されたAMBを示す。特に、図13Aおよび13Bは、デジタル決定とアナログ決定とを組み合わせることによって広いダイナミックレンジを達成したことを示す。図13Aは酵素濃度に応じてAMBをプロットしたものを示す。エラーバーは、3回の反復による標準偏差である。図13Bは、酵素濃度に応じて%活性とAMB値とを含む表を示す。%活性<70%として方程式4を使用してAMBを決定し、%活性>70%として方程式8を使用してAMBを決定した。この実施例においてアナログとデジタルとの間の閾値は10fMと31.6fMとの間にある。
【0243】
%活性ビーズ<70%である画像において、方程式4を使用してAMBdigitalを決定した。<10%の活性ビーズを有するアレイのすべては、
【数32】
を決定するために使用され、全ビーズは7566であり;
【数33】
は298auに等しかった。70%を超える活性を有する画像におけるビーズの平均蛍光強度を決定し、方程式8を使用してAMBanalog値を算出した。0MのSβG濃度から活性ビーズが得られないことから、バックグラウンド・プラス3s.d.方法を使用しても、この実験における検出の下限を算出することはできない。以前実証されたLODの220zMおよびこの曲線の線形範囲で検出されたもっとも高い濃度である316fMを使用して、酵素標識を検出するための6.2logの線形ダイナミックレンジが観察された。線形デジタルダイナミックレンジは4.7logであり、アナログ線形ダイナミックレンジは1.5logであった。
【0244】
実施例10
この例には、血清中のPSAを測定するための、組み合わされたデジタルとアナログとのシステムおよび方法が記載されている。広いダイナミックレンジを有するPSAの濃度を決定するために、組み合わされたデジタルとアナログとのやり方を使用した。臨床的に、PSAは、前立腺癌をスクリーニングするために、および、癌を除去する手術を受けた患者における病気の生化学的再発を監視するために、使用された。前立腺全摘出術(RP)を受けた患者の血清におけるPSAレベルは、0.014pg/mLから100pg/mLを超える範囲に及ぶことが知られている。1回の試験で過半数の患者におけるPSAレベルの測定を成功させるには、4logのダイナミックレンジを有するアッセイが必要となる。実施例8に記載されたように実験を行った。図14Aおよび14Bは、デジタルおよびアナログ分析を組み合わせることによって、本発明のPSAアッセイの動作範囲が0.008pg/mLから100pg/mLにまで及んだことを示し、圧倒的多数のRP患者試料におけるPSAレベルをワンパスで正確に定量できる。特に、図14Aおよび14Bは、組み合わされたデジタルおよびアナログのPSAアッセイが4logの動作範囲と0.008pg/mLの算出されたLODを示す。PSA濃度に応じて、線形−線形空間(図14A)およびlog−log空間(図14B)にAMBがプロットされている。四重の測定に基づいた全データポイントについてエラーバーを示す。
【0245】
前立腺全摘出手術後、2〜46週(平均=13.8週)で採取された前立腺癌患者17名の血清におけるPSAの濃度を測定するために、アッセイを使用した。これらの試料は、デジタルELISAの検出の下限を押し広げるため、手術後すぐに採取した。ここで、所望の臨床範囲にわたりアッセイのダイナミックレンジを評価するために、より高レベルのPSAで癌が再発した患者を捕捉するために、手術直後に採取した試料を試験した。また一方で、一流のPSA診断試験(Siemens)を使用しても、これら試料のすべてにおいて、PSAを検出することができなかった。血清試料は緩衝液で1:4で希釈され、AMBは前記方法を使用して測定された。それぞれの試料におけるPSAの濃度は、図14Bに類似した、同時に取得された校正曲線から、AMBを読み取ることによって、決定した。表4は、%CVによって与えられる信号と濃度との不正確さとともに、これらの試料から決定されたAMBとPSAとの濃度を集約している。1回の実験で、試料のすべてにおいてPSAを定量化した。これらの試料の平均PSA濃度は33pg/mLであり、高いものが136pg/mLであり、低いものが0.4pg/mLである。前立腺全摘出(RP)手術を受けた患者の、以前測定したPSAの結果と組み合わせると、臨床試料におけるPSAの検出された濃度は0.46fM(0.014pg/mL)〜4.5pM(136pg/mL)に及び、この実施例の本発明のアッセイによって提供される良好なダイナミックレンジの重要性が実証される。
【0246】
【表5】
【0247】
実施例11
図15は、明確に定義された酵素/ビーズ比率を有するビーズをもたらしたストレプトアビジン−β−ガラクトシダーゼ(SβG)にかかるアッセイを使用する、校正曲線のデジタル範囲におけるポアソン分布分析の限定されない例を示す。簡潔にいうと、ビオチン化した捕捉分子によりビーズを機能化し、これらのビーズを、さまざまな濃度のSβG酵素コンジュゲートを捕捉するために使用した。ビーズをフェムトリットルアレイにロードし、アレイのウェルのRGP溶液に封をした後、反応チャンバーに蓄積された結合酵素から2.5分間蛍光が生成され、蛍光画像を30秒毎に取得した。実験の最後にアレイの白色光画像を取得した。ビーズを含むウェルを(白色光画像から)同定し、かつこれらのビーズのうちどのビーズが結合された酵素分子と関連するか(低速度撮影の蛍光画像から)決定するために、これらのイメージを分析した。fonが非線形変化であるにもかかわらず、方程式4から決定されたAMBデジタルは50%活性まで線形反応を維持していることが図15Bに示されている。特に、図15は、ポアソン統計を使用して、%活性ビーズのAMBデジタルへの変換を示している(図15A)。中央のカラムは、酵素濃度に応じてデジタル計数により決定された活性ビーズの割合である。右のカラムは、方程式4を使用して%活性ビーズから決定された、ビーズあたりの平均酵素(AMB)である。この変換は、デジタル計数方法を使用する多数の酵素分子と結びついたビーズを統計学的に説明し;(図15B)は、酵素濃度に応じて、%活性ビーズ(菱形)とAMBdigital(四角形)とをプロットしたものを示す。ポアソン分布から期待されるように、%活性ビーズは濃度が上昇するにつれて直線から逸脱する。この実験において、AMBデジタルは、約50%活性ビーズまで濃度に対して直線を有した。三回の測定にわたり標準偏差からエラーバーを決定した。
【0248】
本発明のいくつかの態様が本明細書中に記載、説明されているが、当業者は、機能を果たすための、および/または、本明細書に記載の一つまたは二つ以上の利点および/または結果を得るための、他のさまざまな方法および/または構造物を容易に想像するだろう。そして、かかる変動および/または修飾は、本発明の範囲内であると見なされる。さらに一般的に、本明細書に記載のすべてのパラメータ、寸法、材料および設定が典型的なものを意味すること、ならびに、実際のパラメータ、寸法、材料および/または設定が、特別な利用または本発明の教示が用いられた利用に依存するだろうことを、当業者は容易に理解するだろう。当業者は、本発明の具体的な態様の多くの均等物を、認識するか、または日常の実験以上のことを使用しないで確認することができるだろう。したがって、前述の態様が例示の目的でのみ提示されていること、および、添付の請求項と、それと均等物の範囲内であれば、具体的に記載およびクレームされた範囲を超えて本発明を実施し得ることが理解されるべきである。本発明は、本明細書に記載のそれぞれ個別の特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法を対象とする。さらに、かかる特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法が相互に矛盾したものでない場合、かかる特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法の二つまたは三つ以上の任意の組み合わせは本発明の範囲内に包含されている。
【0249】
本明細書および請求項で使用されているように、不定冠詞「a」および「an」は、それとは反対のことが明確に示されない限り、「少なくとも一つ」を意味するものと理解されるべきである。
【0250】
前記の明細書と同様、請求項において、「含む(comprising)」、「含む(including)」、「有する(carrying)」、「有する(having)」、「含む(containing)」、「含む(involving)」、「保持する(holding)」などのすべての移行句は、オープンエンドであると理解されるべきである、すなわち、含むがそれに限定されないことを意味する。「からなる」および「本質的にからなる」の移行句のみはそれぞれ、クローズまたはセミクローズの移行句であるとする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体試料中のアナライト分子または粒子の濃度の度合いを決定するためのシステムであって、
複数の区画であって、かかる区画内に形成されているか、または含まれる結合表面をそれぞれが含む、前記複数の区画を含むアッセイ基板、ここで少なくとも一つの結合表面は、該結合表面に固定化された少なくとも一つのアナライト分子または粒子を含む;
前記複数の区画をアドレスするよう設定され、アドレスされたそれぞれの区画でのアナライト分子または粒子の有無を示し、かつそれぞれの区画でのアナライト分子または粒子の数によって変化する強度を有する、少なくとも一つの信号を生成することができる少なくとも一つの検出器;および
前記少なくとも一つの信号から、少なくとも一つのアナライト分子または粒子を含む前記区画のパーセンテージを決定するよう設定され、さらに、該パーセンテージに基づいて、少なくとも一つのアナライト分子もしくは粒子を含む区画の数に少なくとも一部基づいて前記流体試料中のアナライト分子もしくは粒子の濃度の度合いを決定するか、または複数のアナライト分子もしくは粒子の存在を示す前記少なくとも一つの信号の強度レベルに少なくとも一部基づいて前記流体試料中のアナライト分子もしくは粒子の濃度の度合いを決定するよう設定された、少なくとも一つの信号処理器
を含む、前記システム。
【請求項2】
流体試料中のアナライト分子または粒子の濃度の度合いを決定するための方法であって、
アナライト分子または粒子の少なくとも一つのタイプに親和性を有する結合表面、該結合表面は基板上の複数の区画の一つを形成しているか、またはその中に含まれている、に対して固定化されたアナライト分子または粒子を提供すること;
前記複数の区画の少なくともいくつかにアドレスし、少なくとも一つのアナライト分子または粒子を含む前記区画のパーセンテージを示す度合いを決定すること;および
該パーセンテージに基づいて、少なくとも一つのアナライト分子もしくは粒子を含む区画の数に少なくとも一部基づいて前記流体試料中のアナライト分子もしくは粒子の濃度の度合いを決定するか、または、複数のアナライト分子もしくは粒子の存在を示す信号の強度に少なくとも一部基づいて前記流体試料中のアナライト分子もしくは粒子の濃度の度合いを決定すること
を含む、前記方法。
【請求項3】
流体試料中のアナライト分子または粒子の濃度の度合いを決定するための方法であって、
それぞれがアナライト分子または粒子の少なくとも一つのタイプに親和性を有する結合表面を含む複数の捕捉物を、アナライト分子もしくは粒子の少なくとも一つのタイプを含むかまたは含むことが疑われる溶液に暴露すること、ここで前記捕捉物の少なくともいくつかは少なくとも一つのアナライト分子または粒子と結びつく;
前記暴露工程に供された前記捕捉物の少なくとも一部を、複数の区画に空間的に分離すること;
前記複数の区画の少なくともいくつかをアドレスし、かつ、少なくとも一つのアナライト分子または粒子と結びついた捕捉物を含む該区画のパーセンテージを示す度合いを決定すること、ここでアドレスされた前記区画は少なくとも一つの捕捉物を含む区画である;および
該パーセンテージに基づいて、少なくとも一つのアナライト分子もしくは粒子と結びついた捕捉物を含む区画の数に少なくとも一部基づいて前記流体試料中のアナライト分子もしくは粒子の濃度の度合いを決定するか、または、複数のアナライト分子もしくは粒子の存在を示す信号の強度レベルに少なくとも一部基づいて前記流体試料中のアナライト分子もしくは粒子の濃度の度合いを決定すること
を含む、前記方法。
【請求項4】
結合表面が、かかる区画に含まれる、請求項1または2に記載の方法またはシステム。
【請求項5】
結合表面が、複数の捕捉物を含む、請求項4に記載の方法またはシステム。
【請求項6】
捕捉物が、複数のビーズを含む、請求項5に記載の方法またはシステム。
【請求項7】
アドレスされた区画が、少なくとも一つの捕捉物を含む区画である、請求項5に記載の方法またはシステム。
【請求項8】
少なくとも一つのアナライト分子または粒子を含む区画のパーセンテージが約40%未満、約35%未満、または約30%未満であるとき、流体試料中のアナライト分子または粒子の濃度の度合いが、少なくとも一つのアナライト分子または粒子を含む区画の数に少なくとも一部基づく、請求項1または2に記載の方法またはシステム。
【請求項9】
少なくとも一つのアナライト分子または粒子を含む区画のパーセンテージが約80%未満、約75%未満、または約70%未満、約65%未満、または約60%未満であるとき、流体試料中のアナライト分子または粒子の濃度の度合いが、少なくとも一つのアナライト分子またはアナライト粒子を含む区画の数に少なくとも一部基づく、請求項1または2に記載の方法またはシステム。
【請求項10】
少なくとも一つのアナライト分子または粒子を含む区画のパーセンテージが約30%を超え、約35%を超え、約40%を超え、または約45%を超えるとき、流体試料中のアナライト分子または粒子の濃度の度合いが、複数のアナライト分子または粒子の存在を示す少なくとも一つの信号の強度レベルに少なくとも一部基づく、請求項1または2に記載の方法またはシステム。
【請求項11】
少なくとも一つのアナライト分子または粒子を含む区画のパーセンテージが約60%を超え、約65%を超え、約70%を超え、または約75%を超えるとき、流体試料中のアナライト分子または粒子の濃度の度合いが、複数のアナライト分子または粒子の存在を示す少なくとも一つの信号の強度レベルに少なくとも一部基づく、請求項1または2に記載の方法またはシステム。
【請求項12】
少なくとも一つのアナライト分子または粒子を含む区画のパーセンテージが約30%と約50%との間、または約35%と約45%との間、または約40%であるとき、流体試料中のアナライト分子または粒子の濃度の度合いが、少なくとも一つのアナライト分子または粒子を含む区画の数に少なくとも一部基づいた流体試料中のアナライト分子または粒子の濃度の度合いと、複数のアナライト分子またはアナライト粒子の存在を示す少なくとも一つの信号の強度レベルに少なくとも一部基づいた流体試料中のアナライト分子またはアナライト粒子の濃度の度合いとの平均である、請求項1または2に記載の方法またはシステム。
【請求項13】
少なくとも一つのアナライト分子または粒子を含む区画のパーセンテージが約60%と約80%との間、または約65%と約75%との間、または約70%であるとき、流体試料中のアナライト分子または粒子の濃度の度合いが、少なくとも一つのアナライト分子または粒子を含む区画の数に少なくとも一部基づいた流体試料中のアナライト分子または粒子の濃度の度合いと、複数のアナライト分子または粒子の存在を示す少なくとも一つの信号の強度レベルに少なくとも一部基づいた流体試料中のアナライト分子または粒子の濃度の度合いとの平均である、請求項1または2に記載の方法またはシステム。
【請求項14】
少なくとも一つのアナライト分子または粒子と結びついた捕捉物を含む捕捉物の少なくとも一つを含む区画のパーセンテージが約40%未満、約35%未満、または約30%未満であるとき、流体試料中のアナライト分子または粒子の濃度の度合いが、少なくとも一つのアナライト分子または粒子を含む区画の数に少なくとも一部基づく、請求項3に記載の方法またはシステム。
【請求項15】
少なくとも一つのアナライト分子または粒子と結びついた捕捉物を含む捕捉物の少なくとも一つを含む区画のパーセンテージが約80%未満、約75%未満、または約70%未満であるとき、流体試料中のアナライト分子または粒子の濃度の度合いが、少なくとも一つのアナライト分子または粒子を含む区画の数に少なくとも一部基づく、請求項3に記載の方法またはシステム。
【請求項16】
少なくとも一つのアナライト分子または粒子と結びついた捕捉物を含む捕捉物の少なくとも一つを含む区画のパーセンテージが約30%を超え、約35%を超え、約40%を超え、または約45%を超えるとき、流体試料中のアナライト分子または粒子の濃度の度合いが、複数のアナライト分子または粒子の存在を示す少なくとも一つの信号の強度レベルに少なくとも一部基づく、請求項3に記載の方法またはシステム。
【請求項17】
少なくとも一つのアナライト分子または粒子と結びついた捕捉物を含む捕捉物の少なくとも一つを含む区画のパーセンテージが約60%を超え、約65%を超え、約70%を超え、または約75%を超えるとき、流体試料中のアナライト分子または粒子の濃度の度合いが、複数のアナライト分子または粒子の存在を示す少なくとも一つの信号の強度レベルに少なくとも一部基づく、請求項3に記載の方法またはシステム。
【請求項18】
少なくとも一つのアナライト分子または粒子と結びついた捕捉物を含む捕捉物の少なくとも一つを含む区画のパーセンテージが約30%と約50%との間、または約35%と約45%との間、または約40%であるとき、流体試料中のアナライト分子または粒子の濃度の度合いが、少なくとも一つのアナライト分子または粒子を含む区画の数に少なくとも一部基づいた流体試料中のアナライト分子または粒子の濃度の度合いと、複数のアナライト分子または粒子の存在を示す少なくとも一つの信号の強度レベルに少なくとも一部基づいた流体試料中のアナライト分子またはアナライト粒子の濃度の度合いとの平均である、請求項3に記載の方法またはシステム。
【請求項19】
少なくとも一つのアナライト分子または粒子と結びついた捕捉物を含む捕捉物の少なくとも一つを含む区画のパーセンテージが約60%と約80%との間、または約65%と約75%との間、または約70%であるとき、流体試料中のアナライト分子または粒子の濃度の度合いが、少なくとも一つのアナライト分子または粒子を含む区画の数に少なくとも一部基づいた流体試料中のアナライト分子または粒子の濃度の度合いと、複数のアナライト分子または粒子の存在を示す少なくとも一つの信号の強度レベルに少なくとも一部基づいた流体試料中のアナライト分子または粒子の濃度の度合いとの平均である、請求項3に記載の方法またはシステム。
【請求項20】
さらに、少なくとも一つのバックグラウンド信号の決定を含む、請求項2または3に記載の方法。
【請求項21】
流体試料中のアナライト分子の濃度の度合いが、測定されたパラメータの校正曲線との比較に少なくとも一部基づく、請求項2または3に記載の方法。
【請求項22】
校正曲線が、少なくとも一つの校正係数の決定によって、少なくとも一部形成される、請求項2または3に記載の方法。
【請求項23】
校正係数が校正試料を用いて決定される、ここで少なくとも一つのアナライト分子と結びついた捕捉物を含む区画のパーセンテージが約30%と約50%との間である、請求項16に記載の方法。
【請求項24】
流体試料中のアナライト分子の濃度の度合いが、ポアソン分布の調整に少なくとも一部基づく、請求項2または3に記載の方法。
【請求項25】
複数の捕捉物が、複数のビーズを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項26】
少なくとも一つのアナライト分子を含む区画の数が、光学技術を用いて決定される、請求項2または3に記載の方法。
【請求項27】
光学技術が、CCD検出器の使用を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項28】
複数の区画が、複数の反応槽を含む、請求項1、2または3に記載の方法またはシステム。
【請求項29】
複数の反応槽が、光ファイバー束の一端に形成されている、請求項22に記載の方法またはシステム。
【請求項30】
さらに、複数の反応槽を封着することを含む、請求項22に記載の方法またはシステム。
【請求項31】
複数の反応槽の平均容積が、約10アトリットルと約100アトリットルとの間、または約1フェムトリットルと約100フェムトリットルとの間、または約1フェムトリットルと約1ピコリットルとの間、または約1マイクロメートルと約10マイクロメートルとの間である、請求項22に記載の方法またはシステム。
【請求項32】
流体試料中のアナライト分子または粒子の濃度が、約50×10−15M未満、または約40×10−15M未満、または約30×10−15M未満、または約20×10−15M未満、または約10×10−15M未満、または1×10−15M未満である、請求項2または3に記載の方法。
【請求項33】
アドレス工程におけるアドレスされた区画のパーセンテージが、区画の総数の少なくとも約5%、または少なくとも約10%、または少なくとも約20%、または少なくとも約30%、または少なくとも約40%、または少なくとも約50%、または少なくとも約60%、または少なくとも約70%、または少なくとも約80%、または少なくとも約90%である、請求項2または3に記載の方法。
【請求項34】
アナライト分子または粒子が、タンパク質または核酸である、請求項2または3に記載の方法。
【請求項35】
さらに、少なくとも一つの洗浄工程を実施することを含む、請求項2または3に記載の方法。
【請求項36】
アナライト分子または粒子が、酵素成分を含む、請求項2または3に記載の方法。
【請求項37】
実質的にすべてのアナライト分子が少なくとも一つの結合リガンドと結びつくような条件下で、アナライト分子が少なくとも一つの結合リガンドに暴露される、請求項2または3に記載の方法。
【請求項38】
少なくとも一つの結合リガンドが、酵素成分を含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
さらに、アナライト分子または粒子を、前駆標識剤に暴露することを含む、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
前駆標識剤が、酵素成分への暴露によって、標識剤に変換される、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
区画におけるアナライト分子または粒子の存在が、少なくとも一つの前駆標識剤の存在を決定することによって決定される、請求項40に記載の方法。
【請求項1】
流体試料中のアナライト分子または粒子の濃度の度合いを決定するためのシステムであって、
複数の区画であって、かかる区画内に形成されているか、または含まれる結合表面をそれぞれが含む、前記複数の区画を含むアッセイ基板、ここで少なくとも一つの結合表面は、該結合表面に固定化された少なくとも一つのアナライト分子または粒子を含む;
前記複数の区画をアドレスするよう設定され、アドレスされたそれぞれの区画でのアナライト分子または粒子の有無を示し、かつそれぞれの区画でのアナライト分子または粒子の数によって変化する強度を有する、少なくとも一つの信号を生成することができる少なくとも一つの検出器;および
前記少なくとも一つの信号から、少なくとも一つのアナライト分子または粒子を含む前記区画のパーセンテージを決定するよう設定され、さらに、該パーセンテージに基づいて、少なくとも一つのアナライト分子もしくは粒子を含む区画の数に少なくとも一部基づいて前記流体試料中のアナライト分子もしくは粒子の濃度の度合いを決定するか、または複数のアナライト分子もしくは粒子の存在を示す前記少なくとも一つの信号の強度レベルに少なくとも一部基づいて前記流体試料中のアナライト分子もしくは粒子の濃度の度合いを決定するよう設定された、少なくとも一つの信号処理器
を含む、前記システム。
【請求項2】
流体試料中のアナライト分子または粒子の濃度の度合いを決定するための方法であって、
アナライト分子または粒子の少なくとも一つのタイプに親和性を有する結合表面、該結合表面は基板上の複数の区画の一つを形成しているか、またはその中に含まれている、に対して固定化されたアナライト分子または粒子を提供すること;
前記複数の区画の少なくともいくつかにアドレスし、少なくとも一つのアナライト分子または粒子を含む前記区画のパーセンテージを示す度合いを決定すること;および
該パーセンテージに基づいて、少なくとも一つのアナライト分子もしくは粒子を含む区画の数に少なくとも一部基づいて前記流体試料中のアナライト分子もしくは粒子の濃度の度合いを決定するか、または、複数のアナライト分子もしくは粒子の存在を示す信号の強度に少なくとも一部基づいて前記流体試料中のアナライト分子もしくは粒子の濃度の度合いを決定すること
を含む、前記方法。
【請求項3】
流体試料中のアナライト分子または粒子の濃度の度合いを決定するための方法であって、
それぞれがアナライト分子または粒子の少なくとも一つのタイプに親和性を有する結合表面を含む複数の捕捉物を、アナライト分子もしくは粒子の少なくとも一つのタイプを含むかまたは含むことが疑われる溶液に暴露すること、ここで前記捕捉物の少なくともいくつかは少なくとも一つのアナライト分子または粒子と結びつく;
前記暴露工程に供された前記捕捉物の少なくとも一部を、複数の区画に空間的に分離すること;
前記複数の区画の少なくともいくつかをアドレスし、かつ、少なくとも一つのアナライト分子または粒子と結びついた捕捉物を含む該区画のパーセンテージを示す度合いを決定すること、ここでアドレスされた前記区画は少なくとも一つの捕捉物を含む区画である;および
該パーセンテージに基づいて、少なくとも一つのアナライト分子もしくは粒子と結びついた捕捉物を含む区画の数に少なくとも一部基づいて前記流体試料中のアナライト分子もしくは粒子の濃度の度合いを決定するか、または、複数のアナライト分子もしくは粒子の存在を示す信号の強度レベルに少なくとも一部基づいて前記流体試料中のアナライト分子もしくは粒子の濃度の度合いを決定すること
を含む、前記方法。
【請求項4】
結合表面が、かかる区画に含まれる、請求項1または2に記載の方法またはシステム。
【請求項5】
結合表面が、複数の捕捉物を含む、請求項4に記載の方法またはシステム。
【請求項6】
捕捉物が、複数のビーズを含む、請求項5に記載の方法またはシステム。
【請求項7】
アドレスされた区画が、少なくとも一つの捕捉物を含む区画である、請求項5に記載の方法またはシステム。
【請求項8】
少なくとも一つのアナライト分子または粒子を含む区画のパーセンテージが約40%未満、約35%未満、または約30%未満であるとき、流体試料中のアナライト分子または粒子の濃度の度合いが、少なくとも一つのアナライト分子または粒子を含む区画の数に少なくとも一部基づく、請求項1または2に記載の方法またはシステム。
【請求項9】
少なくとも一つのアナライト分子または粒子を含む区画のパーセンテージが約80%未満、約75%未満、または約70%未満、約65%未満、または約60%未満であるとき、流体試料中のアナライト分子または粒子の濃度の度合いが、少なくとも一つのアナライト分子またはアナライト粒子を含む区画の数に少なくとも一部基づく、請求項1または2に記載の方法またはシステム。
【請求項10】
少なくとも一つのアナライト分子または粒子を含む区画のパーセンテージが約30%を超え、約35%を超え、約40%を超え、または約45%を超えるとき、流体試料中のアナライト分子または粒子の濃度の度合いが、複数のアナライト分子または粒子の存在を示す少なくとも一つの信号の強度レベルに少なくとも一部基づく、請求項1または2に記載の方法またはシステム。
【請求項11】
少なくとも一つのアナライト分子または粒子を含む区画のパーセンテージが約60%を超え、約65%を超え、約70%を超え、または約75%を超えるとき、流体試料中のアナライト分子または粒子の濃度の度合いが、複数のアナライト分子または粒子の存在を示す少なくとも一つの信号の強度レベルに少なくとも一部基づく、請求項1または2に記載の方法またはシステム。
【請求項12】
少なくとも一つのアナライト分子または粒子を含む区画のパーセンテージが約30%と約50%との間、または約35%と約45%との間、または約40%であるとき、流体試料中のアナライト分子または粒子の濃度の度合いが、少なくとも一つのアナライト分子または粒子を含む区画の数に少なくとも一部基づいた流体試料中のアナライト分子または粒子の濃度の度合いと、複数のアナライト分子またはアナライト粒子の存在を示す少なくとも一つの信号の強度レベルに少なくとも一部基づいた流体試料中のアナライト分子またはアナライト粒子の濃度の度合いとの平均である、請求項1または2に記載の方法またはシステム。
【請求項13】
少なくとも一つのアナライト分子または粒子を含む区画のパーセンテージが約60%と約80%との間、または約65%と約75%との間、または約70%であるとき、流体試料中のアナライト分子または粒子の濃度の度合いが、少なくとも一つのアナライト分子または粒子を含む区画の数に少なくとも一部基づいた流体試料中のアナライト分子または粒子の濃度の度合いと、複数のアナライト分子または粒子の存在を示す少なくとも一つの信号の強度レベルに少なくとも一部基づいた流体試料中のアナライト分子または粒子の濃度の度合いとの平均である、請求項1または2に記載の方法またはシステム。
【請求項14】
少なくとも一つのアナライト分子または粒子と結びついた捕捉物を含む捕捉物の少なくとも一つを含む区画のパーセンテージが約40%未満、約35%未満、または約30%未満であるとき、流体試料中のアナライト分子または粒子の濃度の度合いが、少なくとも一つのアナライト分子または粒子を含む区画の数に少なくとも一部基づく、請求項3に記載の方法またはシステム。
【請求項15】
少なくとも一つのアナライト分子または粒子と結びついた捕捉物を含む捕捉物の少なくとも一つを含む区画のパーセンテージが約80%未満、約75%未満、または約70%未満であるとき、流体試料中のアナライト分子または粒子の濃度の度合いが、少なくとも一つのアナライト分子または粒子を含む区画の数に少なくとも一部基づく、請求項3に記載の方法またはシステム。
【請求項16】
少なくとも一つのアナライト分子または粒子と結びついた捕捉物を含む捕捉物の少なくとも一つを含む区画のパーセンテージが約30%を超え、約35%を超え、約40%を超え、または約45%を超えるとき、流体試料中のアナライト分子または粒子の濃度の度合いが、複数のアナライト分子または粒子の存在を示す少なくとも一つの信号の強度レベルに少なくとも一部基づく、請求項3に記載の方法またはシステム。
【請求項17】
少なくとも一つのアナライト分子または粒子と結びついた捕捉物を含む捕捉物の少なくとも一つを含む区画のパーセンテージが約60%を超え、約65%を超え、約70%を超え、または約75%を超えるとき、流体試料中のアナライト分子または粒子の濃度の度合いが、複数のアナライト分子または粒子の存在を示す少なくとも一つの信号の強度レベルに少なくとも一部基づく、請求項3に記載の方法またはシステム。
【請求項18】
少なくとも一つのアナライト分子または粒子と結びついた捕捉物を含む捕捉物の少なくとも一つを含む区画のパーセンテージが約30%と約50%との間、または約35%と約45%との間、または約40%であるとき、流体試料中のアナライト分子または粒子の濃度の度合いが、少なくとも一つのアナライト分子または粒子を含む区画の数に少なくとも一部基づいた流体試料中のアナライト分子または粒子の濃度の度合いと、複数のアナライト分子または粒子の存在を示す少なくとも一つの信号の強度レベルに少なくとも一部基づいた流体試料中のアナライト分子またはアナライト粒子の濃度の度合いとの平均である、請求項3に記載の方法またはシステム。
【請求項19】
少なくとも一つのアナライト分子または粒子と結びついた捕捉物を含む捕捉物の少なくとも一つを含む区画のパーセンテージが約60%と約80%との間、または約65%と約75%との間、または約70%であるとき、流体試料中のアナライト分子または粒子の濃度の度合いが、少なくとも一つのアナライト分子または粒子を含む区画の数に少なくとも一部基づいた流体試料中のアナライト分子または粒子の濃度の度合いと、複数のアナライト分子または粒子の存在を示す少なくとも一つの信号の強度レベルに少なくとも一部基づいた流体試料中のアナライト分子または粒子の濃度の度合いとの平均である、請求項3に記載の方法またはシステム。
【請求項20】
さらに、少なくとも一つのバックグラウンド信号の決定を含む、請求項2または3に記載の方法。
【請求項21】
流体試料中のアナライト分子の濃度の度合いが、測定されたパラメータの校正曲線との比較に少なくとも一部基づく、請求項2または3に記載の方法。
【請求項22】
校正曲線が、少なくとも一つの校正係数の決定によって、少なくとも一部形成される、請求項2または3に記載の方法。
【請求項23】
校正係数が校正試料を用いて決定される、ここで少なくとも一つのアナライト分子と結びついた捕捉物を含む区画のパーセンテージが約30%と約50%との間である、請求項16に記載の方法。
【請求項24】
流体試料中のアナライト分子の濃度の度合いが、ポアソン分布の調整に少なくとも一部基づく、請求項2または3に記載の方法。
【請求項25】
複数の捕捉物が、複数のビーズを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項26】
少なくとも一つのアナライト分子を含む区画の数が、光学技術を用いて決定される、請求項2または3に記載の方法。
【請求項27】
光学技術が、CCD検出器の使用を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項28】
複数の区画が、複数の反応槽を含む、請求項1、2または3に記載の方法またはシステム。
【請求項29】
複数の反応槽が、光ファイバー束の一端に形成されている、請求項22に記載の方法またはシステム。
【請求項30】
さらに、複数の反応槽を封着することを含む、請求項22に記載の方法またはシステム。
【請求項31】
複数の反応槽の平均容積が、約10アトリットルと約100アトリットルとの間、または約1フェムトリットルと約100フェムトリットルとの間、または約1フェムトリットルと約1ピコリットルとの間、または約1マイクロメートルと約10マイクロメートルとの間である、請求項22に記載の方法またはシステム。
【請求項32】
流体試料中のアナライト分子または粒子の濃度が、約50×10−15M未満、または約40×10−15M未満、または約30×10−15M未満、または約20×10−15M未満、または約10×10−15M未満、または1×10−15M未満である、請求項2または3に記載の方法。
【請求項33】
アドレス工程におけるアドレスされた区画のパーセンテージが、区画の総数の少なくとも約5%、または少なくとも約10%、または少なくとも約20%、または少なくとも約30%、または少なくとも約40%、または少なくとも約50%、または少なくとも約60%、または少なくとも約70%、または少なくとも約80%、または少なくとも約90%である、請求項2または3に記載の方法。
【請求項34】
アナライト分子または粒子が、タンパク質または核酸である、請求項2または3に記載の方法。
【請求項35】
さらに、少なくとも一つの洗浄工程を実施することを含む、請求項2または3に記載の方法。
【請求項36】
アナライト分子または粒子が、酵素成分を含む、請求項2または3に記載の方法。
【請求項37】
実質的にすべてのアナライト分子が少なくとも一つの結合リガンドと結びつくような条件下で、アナライト分子が少なくとも一つの結合リガンドに暴露される、請求項2または3に記載の方法。
【請求項38】
少なくとも一つの結合リガンドが、酵素成分を含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
さらに、アナライト分子または粒子を、前駆標識剤に暴露することを含む、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
前駆標識剤が、酵素成分への暴露によって、標識剤に変換される、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
区画におけるアナライト分子または粒子の存在が、少なくとも一つの前駆標識剤の存在を決定することによって決定される、請求項40に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A−C】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図13A】
【図14A】
【図14B】
【図15A】
【図15B】
【図5A】
【図5B−D】
【図13B】
【図2】
【図3】
【図4A−C】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図13A】
【図14A】
【図14B】
【図15A】
【図15B】
【図5A】
【図5B−D】
【図13B】
【公表番号】特表2013−521500(P2013−521500A)
【公表日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−556169(P2012−556169)
【出願日】平成23年3月1日(2011.3.1)
【国際出願番号】PCT/US2011/026665
【国際公開番号】WO2011/109379
【国際公開日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(512228495)クワンテリクス コーポレーション (2)
【氏名又は名称原語表記】QUANTERIX CORPORATION
【住所又は居所原語表記】One Kendall Square, Building 1400, 2nd Floor, Cambridge, MA 02139 U.S.A.
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月1日(2011.3.1)
【国際出願番号】PCT/US2011/026665
【国際公開番号】WO2011/109379
【国際公開日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(512228495)クワンテリクス コーポレーション (2)
【氏名又は名称原語表記】QUANTERIX CORPORATION
【住所又は居所原語表記】One Kendall Square, Building 1400, 2nd Floor, Cambridge, MA 02139 U.S.A.
【Fターム(参考)】
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