説明

分子インプリントポリマー、その製造方法、および液体中で分解が容易でなく且つ/又は有毒な化合物を選択的に処理するための方法

本発明は、分子インプリントポリマー、およびこの目的のための生産方法、さらにこの分子インプリントポリマーを用いて液体中の分解が容易でない化合物及び/又は有毒な化合物を選択的に処理する方法に関する。このタイプのポリマーおよび方法は、容易に生分解しない有害物質または有毒な化合物を、たとえば汚水から選択的に除去及び/又は分解するのに必要である。したがって、分解が容易でない且つ/又は有毒な化合物の少なくとも1種の選択的処理に好適な分子インプリントポリマーであって、モノマーから構成されたポリマーネットワークを有し、所定のサイズのキャビティを有し、このキャビティが所定の間隔で配置され、分解の容易でない且つ/又は有毒な化合物に対する特異的な結合サイト及び/又は結合パターンを有する分子インプリントポリマーが提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分子インプリントポリマー、およびこの目的のための生産方法に関し、さらにこの分子インプリントポリマーを用いて液体中の分解が容易でない化合物及び/又は毒性を有する化合物を選択的に処理する方法に関する。このタイプのポリマーおよび方法は、容易に生分解しない有害物質または有毒な化合物を、たとえば汚水から選択的に除去し、及び/又は分解するのに必要である。
【背景技術】
【0002】
汚水処理施設における現行の汚水の生物学的浄化は、容易に生分解しない有害物質または一定程度の持続性を有する物質の多くを不十分に分解できるにすぎない。水や汚水からこのような物質をより徹底して消去する目的のために、とりわけいわゆる「促進酸化処理(advanced oxidation)」プロセス(AOP)が産業的に大規模なスケールで用いられる。このような「促進酸化処理」プロセスは、非常に反応性の高いラジカル種、主に酸化剤として+2.80Vの酸化還元電位を有するヒドロキシラジカルを用いて、容易に分解しない有害物質を効果的に除去することを目的とするが、そのうえさらに有機物質を二酸化炭素と水にまで可能な限り無機化するものである。この高い反応性に起因して、水中の多数の有機化合物、すなわち容易に分解可能なものについても攻撃対象となる。このような非特異的な攻撃はその後、用いられた促進酸化処理プロセスの型に依存して、反応種を生産するために酸化剤及び/又はエネルギーを必要以上に要求することとなる。その結果、技術費用の上昇をもたらすこととなり、さらにその基礎とするプロセス自体がその効力を失うこととなる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
すなわち本発明の課題は、分子インプリントポリマー、ならびに液体中で分解が容易でなく且つ/又は有毒な化合物の選択的処理のための方法を提供することであって、その選択的処理がより特異的かつより経済的に設定され得る。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題は、請求項1に記載の分子インプリントポリマー、請求項3に記載のその製造方法、さらに請求項5に記載の液体中で分解が容易でなく且つ/又は有毒な化合物の少なくとも1種の選択的処理のための方法によって解消される。本発明のポリマー、本発明の生産方法、および本発明の選択的処理方法の有利な発展態様は、従属請求項のそれぞれに記載されている。化合物の選択的処理を目的とする本発明の方法は、複数の個々のステップを有し、これらは後に詳述されることが意図されている。第一ステップとして、化合物(すなわち、たとえば水や汚水などの液体からの1種の物質または特定の物質群)の分子インプリントポリマーへの吸着が行われ、これは請求項1において例示され記載されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
液体中のターゲット分子および類似化合物の特異的または選択的な吸着が、一方では分子構造を介して達成され、また一方では、キャビティ(凹部)表面での結合基を用いた特定された分子認識メカニズムまたは特異的な結合性相互作用(たとえばイオン性インターラクションまたは塩橋、水素結合、疎水的インターラクション等)により達成される。ここで、問題となる物質または問題となる物質群の吸着は、表面における付加(Anlagerung)により、あるいは同様に材料の内部における吸着(Einlagerung)により達成され得る(それゆえ以降の過程では、収着または吸着(Sorption, sorbieren)の用語を一般に用いる)。
【0006】
さらに、問題となる汚水に存在する問題となる各難分解性物質のための異なる選択的ポリマー材料の組合せまたは連続的設定が考えられ得る。
【0007】
ポリマーにおける標的化合物の吸着につづいて、一定の割合まで付随してポリマーに吸着された外来物質が、適切な溶媒または溶媒混合物を用いて洗い流される。ここで、溶媒としては水、考えられ得る水性溶液、有機性の溶媒のすべてが用いられ得るし、さらにこれらの混合物、さらに水または溶解した有機もしくは無機の化合物も用いられ得る。このステップは必ずしも必要でないが、状況に応じて実施され得る。
【0008】
さらなるステップにおいて、適切な溶媒または溶媒混合物を用いて、標的化合物は選択的に吸着された化合物もしくはこれらの分解産物として遊離されまたは脱着される。ここでも、水、考えられ得る水性溶液および有機溶媒のすべてが用いられ得るし、さらにこれらの混合物、さらに水または溶解した有機もしくは無機の化合物も用いられ得る。
【0009】
さらに、そのように標的化合物が分離される本発明の方法は、異なった分解プロセス、特にいわゆる促進酸化プロセス(AOP)と組み合わせられ、連結されてもよい。このようなAOPを用いて、各有害物質は分解され得る。
【0010】
触媒的、すなわち反応促進的に作用する材料または物質が用いられる場合に、さらなる改良がもたらされる。これらは補充的に用いられてもよいし、たとえばポリマーにカップリングされて用いられてもよい。同様にAOPとのカップリングも可能であるが、特定の酸化生成物の形成に必要な活性化エネルギーが単に減少され得るだけである。また、部分的な酸化によってさえ生分解可能な生成物が生成され、その結果AOPの酸化剤または酸化工程をより有効に活用できるようなタイプの材料または物質を用いることで、反応を制御することも可能である。
【0011】
さらに、生物学的な殺菌との組合せも有効である。
【0012】
すでに上に示したように、付随的に吸着された外来物質の除去、及び/又は選択的に吸着された物質もしくは物質群(化合物)の遊離のための洗浄ステップを避けてもよいし、削除してもかまわない。このことは、それぞれの物質の積み込まれた分子インプリントポリマー(MIP)が、後続のAOPに直接的に統合される場合に可能である。この場合、AOPに必要な試薬はポリマー材料内に直接的に注入されまたは導入され得る。触媒を用いた直接的なカップリングも可能である。
【0013】
この場合、選択的に処理されるべき化合物はポリマーにおいてすでに直接的に分解され、そしてその後、分解産物は上述の好適な溶媒または溶媒混合物を用いて、ポリマーから再び除去されもしくは脱着される。
【0014】
本方法の別の可能性または変形は、触媒的な活性中心を分子インプリントポリマー(MIP)の構造内に一緒に結合させること、およびそれにより、これが人工的酵素アナログとして機能することである。
【0015】
ポリマーの触媒活性は、分子インプリント結合サイトでの触媒基の正確な構築の結果として生じ得る。ヒドロキシルラジカル及び/又は他の酸素含有の酸化剤を生成する構造は、触媒基として機能することができる。
【0016】
問題となる物質の分解のための既知の確定された触媒的メカニズムの場合、遷移状態アナログ(TSAs)を分子インプリントポリマーの生成において用いることが可能であり、その結果として、問題となる分解反応の遷移状態が安定化され、生成物形成速度が上昇し、及び/又は生成物形成が直接的もしくは間接的に制御される。
【0017】
典型的な分解反応には、たとえばエステル、アミド、エーテルの加水分解、環開裂反応、芳香族置換反応および他の反応が挙げられ、これらの遷移状態は生成プロセスにおける遷移状態アナログとして用いられることができる。
【0018】
別の可能性として、反応の触媒的支援のために補酵素アナログまたは配位性化合物を用いることが挙げられる。さらに他の触媒中心を用いることも可能である。
【0019】
分解産物の遊離は、上述したように分解反応の後に、適当な溶剤または溶剤混合物を用いて行われる。
【0020】
本発明のポリマーおよび液体中の化合物の選択的処理のための本発明の方法を用いることで、従来の方法よりも多数の利点が達成され得る。
【0021】
一方で、AOPによる水処理の際に不都合な易分解性含有物またはマトリックス化合物からの単純で経済的な有害物質の分離も可能である。さらに、難分解な化合物もしくは化合物属の濃縮および凝集も可能であり、すなわち液体体積の削減によって、AOPにおける費用削減も分解性の向上も達成され得る。
【0022】
さらに、本発明の方法によれば、所定の選択的な、かつ問題となる難分解性-または毒性化合物もしくは化合物群だけが液体から特定的に吸着されるため、その結果 選択的フィルター構成要素(ポリマー)の作用時間の長期化が可能となる。問題となる有害物質は、引き続きまたは同時に分解され得て、活性炭を使用した場合とは対照的にわずかな有害生成物しか生じない。たとえばポリマーに統合されまたはポリマーによる分離の後に実行されるAOPによる方法が挙げられる。
【0023】
とくに本発明の方法によれば、多数の異なった非常に有害な物質に対する、個別にテーラーメード設計された分子インプリントポリマーの柔軟な使用が可能となる。このように用いられた分子インプリントポリマーは再生され再利用されることができる。難分解性化合物の分解に代わり、これらが稀少化合物である場合はとくに、これらをポリマーから回収することも可能である。したがって総括すると、本発明は、現状の課題のそれぞれに対して、液体処理システムの幅広い可能なバリエーションおよび適用を提供することができる。
【0024】
当該方法は、特定の有害物質に汚染または含有する水または汚水などの液体媒体物の処理用に適用されることができる。さらに以下の他の分野についても例示され得る。
【0025】
たとえば、化学もしくは薬品産業、または紙もしくはパルプ産業などの処理廃水などの産業廃水、地方自治体の汚水、病院廃水、またはこれらの部分的な排水の処理、ならびに環境汚染廃棄物処理およびゴミ集積場が挙げられる。本発明の方法は、高いAOX濃度を有する汚水の処理に好適である。
【0026】
さらに本発明の方法は、活性炭または限外濾過の使用の代替として、汚水プラントにおいて最終浄化過程として用いられることができる。
【0027】
さらに本発明の方法は、家畜などの動物由来の有害物質を含有する排出物の処理にも用いられることができる。またさらに、選択的フィルター構成品に吸着したレアケミカルの回収も考えられる。
【0028】
以降において、分子インプリントポリマーの製造方法(MIPのインプリント工程)を簡単に説明することが意図される。これらは以下を包含するものである。
【0029】
・適当な溶媒(ポロゲン、porogen)中に溶解させた標的分子(鋳型、プリント分子)またはこれらの分子ユニットもしくは官能基と、いわゆる官能性(機能性)モノマー(プリント分子と相互作用する重合化可能なユニット)との、特定の相互作用を介して生じる複合体形成、
・続いて行われる、架橋剤(官能性モノマーと2以上の架橋可能性を有するユニット)を用いた重合ステップであって、所定のサイズのキャビティを有するネットワーク、および所定の間隔(Abstaend)での特異的な結合サイトおよび結合パターンの構築のためのもの、
・および最後の、鋳型分子の洗い出し。
【0030】
本発明の対象は、環境分野におけるたとえば水や汚水などの液体メディアに関する、およびこれら液体メディアの含有物質の選択的除去ならびに分解に関する使用である。したがって、官能性モノマーもしくは官能性モノマーの混合物、架橋剤もしくは架橋剤の混合物、ポロゲンもしくはポロゲン混合物、ならびに特定の標的分子もしくは標的分子群もしくはこれらの誘導体に関するラジカルスタータおよび適当な触媒基の選択および修正が重要であり、さらに新しく生成されたポリマーのための適当な洗浄プロトコルおよび精製プロトコルの設定が重要である。本発明は新規な官能性モノマーの製造に関するほかに、吸着、洗浄、脱着および分解のステップを有し、適宜使用された材料および試薬または技術を有する本発明の液体の選択的処理方法に関する。ただし必要に応じて当該方法は説明されたステップをすべて含んもよいし、選択された1ステップのみを有してもよい。
【0031】
使用される典型的な官能性モノマー(プリント分子と相互作用する重合可能な単位)は以下のものを挙げることができる。
アクリル酸、メタクリル酸、トリフルオロメタクリル酸、安息香酸ビニル、イタコン酸などのカルボン酸、ならびにこれらのアミド、
アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸などのスルホン酸、
ヘテロ芳香族塩基または弱塩基、たとえば置換され又は置換されていないビニルピリジン、ビニルピリミジン、ビニルピラゾール、ビニルイミダゾール、ビニルトリアジン、ビニルプリン、−インドール、−キノリン、−アクリジン、−フェナントリジン、ビス(アクリルアミド)ピリジンなど、
脂肪族または芳香族のビニル誘導体、たとえば置換され又は置換されていないスチレン、ビニルナフタレン、ビニルナフタレンカルボン酸、ビニルナフトール、ビニルアントラセン、ビニルアントラセンカルボン酸、ビニルフェナントレン、ビニルフェナントレンカルボン酸、および類似の縮合芳香族化合物、ビニルベンズアミジン、アクリロイルアミノ−ベンズアミジン、(アミジノアルキル)−スチレン(但しアルキルがメチル、エチルまたはプロピルでもよい)、N-アクリロイル−(アミジノアルキル)−アニリン、金属イオンの錯体形成のためにイミノジ酢酸、エチレンジアミンテトラ酢酸およびこれの類似物などのキレート形成基を有するビニル誘導体、シラン、ならびにこの類のモノマーの混合物など。他の官能性モノマーもさらに用いることができる。
【0032】
架橋剤(前記官能性モノマーとの2以上の架橋形成能を有する単位)として以下のものが挙げられる:
ジビニルベンゼンのアイソマー、
ビス(アクリロイル)−アルカン、但しアルカンとしてエタン、プロパンおよびブタンでもよい、
アクリル酸またはメタクリル酸に基づく系、たとえばエチレングリコールジメタクリレート(EDMA)およびトリメチロールプロパントリメタクリレート(TRIM)、
3および4官能性アクリレート架橋剤、たとえばペンタエリトリトールトリアクリレート(PETRA)およびペンタエリトリトールテトラアクリレート(PETEA)ならびに、
脂肪族(メチレンなど)、芳香族(フェニレンなど)またはヘテロ芳香族(ピリジニルなど)のスペーサーを介してアミド窒素で互いに架橋される、たとえばアクリルアミドユニットなどの官能基を有する架橋剤。さらに別の架橋剤、たとえばUV光またはオゾンに対して安定な架橋剤を用いることもできる。
【0033】
ポロゲン(重合反応における溶媒として作用し、インプリントポリマーにおける多孔性を誘発する溶媒)として、ポリマーの異なる膨潤特性、種々の構造および孔径/多孔性を有するポリマーの異なる形態性、または非共有性相互作用の異なる結合強度などのパラメータに影響を与える異なる誘電率を有する溶媒を用いることもできる。とくにヘキサン、ヘプタンまたはシクロヘキサンなどの脂肪族または脂環式の炭化水素、
トルエンなどの芳香族の炭化水素、
クロロホルム、ジクロロメタンまたは1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン化された炭化水素、
メタノール、エタノール、プロパノールなどの短鎖のアルコール類、
エーテル、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、エチルアセテート、アセトン、ジメチルホルムアミド、ジオキサン、ジメチルスルホキシド、
さらにこれらの混合物および水との混合物が挙げられる。
【0034】
イニシエータ(ラジカル開始剤)として、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)(ADVN)および他の物質を用いることもできるし、さらにUV光の使用も可能である。
【0035】
分子インプリントポリマーは、その製造プロセスによって、以下の形態で存在しうる:
・ポリマーモノリスの作製およびその後のフラグメンテーション
・予め形成された粒子へのインプリントポリマーのグラフティング
・サスペンション−、エマルション−または分散重合からのポリマー球の作製
・薄膜またはポリマー膜上に結合されたポリマー粒子
・ポリマー膜
・表面インプリントポリマー相:鋳型分子と官能性モノマーから形成された複合体を、活性化された表面(たとえば、シリコンもしくはガラス表面)に結合し、洗い出し後に所定のインプリント構造を生成する。
【0036】
該ポリマーは、分離カラム内またはフィルター装置内(プラスチック材料、ガラス、ステンレス鋼もしくは他の材料からなるもの)に導入されてもよいし、あるいは薄膜、異なった材料のもしくはポリマー膜の表面上に結合されてもよいし、さらにこれ自体が膜として用いられてもよい。他の方法として、粒子は液体相において自由に浮遊させて用いられることもできる。さらにポリマーを吸着させるための他の装置が用いられてもよい。
【0037】
さらに、同じまたは異なった選択的ポリマー材料を用いた複数の収着ステップの組合せまたは連続配置もあり得る。リアクターの形状は多様であってよい。
【0038】
したがって、問題となる物質または問題となる物質群を含有する水の流れを、分離カラム、フィルター装置、膜等に通すことができるし、ほぼ並行して収着材料にさらに通すことも可能である。さらに、他の方法を用いることもできる。
【0039】
クロロフェノキシ化合物群の分子を用いてインプリントされたポリマーに関するいくつかの実施例は、以下で示されている。これらは図1において示されている。ここでこの表は、分子インプリントポリマーの製造のために用いられる個々の問題となる物質を示している。
【0040】
個々の成分は、50ml試験管中で氷冷下にて混合され、窒素で5分間洗浄され、パラフィルムで密封された後に60℃にて19時間放置された。
【0041】
加工のために、ポリマーブロックは粒子サイズが<250μmの粒子となるまで粉砕され、その後に4回、各アセトン50mlを用いてすり潰され、それぞれ20μmふるいにかけられた。
【0042】
ポリマーの精製は以下にしたがって行われた:
【0043】
ポリマー1および5の場合:
・それぞれ4回、65℃にて、アセトニトリル:酢酸(99:1)、およびメタノール:酢酸(90:10)を用い、その後5回各50mlの水を用いて洗浄した。
【0044】
ポリマー4の場合:
・それぞれ2回、50mlの酢酸(氷酢酸)、50mlのアセトニトリル:酢酸(1:1)、50mlのアセトニトリル:酢酸(90:1)、50mlのメタノール:酢酸(80:20)、50mlのメタノールを用い、さらに5回、各50mlの水を用いて洗浄した。
【0045】
図2には、MIP1における分子インプリントポリマーの収着(1または2回、それぞれ300mg)後の、収着されたクロフィブリン酸の割合(%)および水相にて残留するクロフィブリン酸の濃度(mol/l)が示されている。ここで、処理されるべき汚水としてごみ集積地由来の水10mlに、1.2×10−4Mのクロフィブリン酸を添加したものを用いた。処理されるべきこの汚水に、300mgのMIP1を加え、30分間振とうさせた。
【0046】
1回の収着のみで、60%以上のクロフィブリン酸が汚水から除去されたことを直接的に確認することができた。2回の収着によって、80%以上の収着率が得られた。
【0047】
図3には、300mgの分子インプリントポリマーをそれぞれ用いて振とう下で30分以上インキュベーションした後の、収着1回(表2列目)または2回(表3列目)後における、収着されたクロフィブリン酸(ごみ集積地由来の水における初期濃度c=1.2×10−4M)の割合(%)が表の形式で示されている。ここで、2列には、表1に記載された使用された分子インプリントポリマーが示されている。
【0048】
ここでも、本発明による分子インプリントポリマーを用いることで優れた収着率が得られたことがさらに確認された。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】分子インプリントポリマーの製造のために用いられる個々の物質を示す。
【図2】MIP1における分子インプリントポリマーの収着(1または2回、それぞれ300mg)後の、収着されたクロフィブリン酸の割合(%)および水相にて残留するクロフィブリン酸の濃度(mol/l)を示す。
【図3】300mgの分子インプリントポリマーをそれぞれ用いて振とう下で30分以上インキュベーションした後の、収着1回(表2列目)または2回(表3列目)後における、収着されたクロフィブリン酸の割合(%)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分解の容易でない且つ/又は有毒な化合物の少なくとも1種の選択的処理に好適な分子インプリントポリマーであって、所定のサイズのキャビティを有するモノマーから構成されたポリマーネットワークを有し、このキャビティが所定の間隔で配置され、分解の容易でない且つ/又は有毒な化合物に関する特異的な結合サイト及び/又は結合パターンを有することを特徴とする分子インプリントポリマー。
【請求項2】
モノマーとして、アクリル酸、メタクリル酸、トリフルオロメタクリル酸、安息香酸ビニル、イタコン酸などのカルボン酸、ならびにこれらのアミド;
アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸などのスルホン酸;
置換され又は置換されていないビニルピリジン、ビニルピリミジン、ビニルピラゾール、ビニルイミダゾール、ビニルトリアジン、ビニルプリン、ビニルインドール、ビニルキノリン、ビニルアクリジン、ビニルフェナントリジン、ビス(アクリルアミド)ピリジンなどのヘテロ芳香族塩基もしくは弱塩基;
下記のような脂肪族または芳香族のビニル誘導体:
置換され又は置換されていないスチレン、ビニルナフタレン、ビニルナフタレンカルボン酸、ビニルナフトール、ビニルアントラセン、ビニルアントラセンカルボン酸、ビニルフェナントレン、ビニルフェナントレンカルボン酸、および類似の縮合芳香族化合物、ビニルベンズアミジン;
アクリロイルアミノ−ベンズアミジン、(アミジノアルキル)−スチレンでアルキルが好ましくはメチル、エチルまたはプロピルであるもの、N-アクリロイル−(アミジノアルキル)−アニリン、金属イオンの錯体形成のためのイミノジ酢酸、エチレンジアミンテトラ酢酸およびこれの類似物などのキレート形成基を有するビニル誘導体、シラン、
ならびにこの類のモノマーの混合物、及び/又は
架橋剤として、ジビニルベンゼンのアイソマー、ビス(アクリロイル)−アルカンでアルカンとして好ましくはエタン、プロパン又はブタンであるもの、
アクリル酸またはメタクリル酸に基づく系、たとえばエチレングリコールジメタクリレート(EDMA)およびトリメチロールプロパントリメタクリレート(TRIM);
3-および4-官能性アクリレート架橋剤、たとえばペンタエリトリトールトリアクリレート(PETRA)およびペンタエリトリトールテトラアクリレート(PETEA)ならびに、
脂肪族(メチレン-など)、芳香族(フェニレン-など)またはヘテロ芳香族(ピリジニル-など)のスペーサーを介してアミド窒素で互いに架橋される、たとえばアクリルアミドユニットなどの官能基を有する架橋剤が用いられることを特徴とする請求項1に記載のポリマー。
【請求項3】
複合体が、分解の容易でない且つ/又は有毒な化合物(標的分子、鋳型、プリント分子)またはその分子部分またはその構造的アナログの少なくとも1つ、および重合可能なモノマーの少なくとも1つから、溶媒(ポロゲン)もしくは溶媒混合物中にて形成され、
当該複合体は、規定されたサイズのキャビティ、及び/又は分解の容易でない且つ/又は有毒な化合物に特異的な、所定のパターンにおける結合サイト及び/又は結合パターンを有するポリマーネットワークを形成するために、架橋剤とともに重合化され、さらに
分解の容易でない且つ/又は有毒な化合物を洗い流すことを特徴とする、請求項1または2のいずれかに記載の分子インプリントポリマーの製造方法。
【請求項4】
モノマーとして、アクリル酸、メタクリル酸、トリフルオロメタクリル酸、安息香酸ビニル、イタコン酸などのカルボン酸、ならびにこれらのアミド;
アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸などのスルホン酸;
置換され又は置換されていないビニルピリジン、ビニルピリミジン、ビニルピラゾール、ビニルイミダゾール、ビニルトリアジン、ビニルプリン、ビニルインドール、ビニルキノリン、ビニルアクリジン、ビニルフェナントリジン、ビス(アクリルアミド)ピリジンなどのヘテロ芳香族塩基もしくは弱塩基;
下記のような脂肪族または芳香族のビニル誘導体:
置換され又は置換されていないスチレン、ビニルナフタレン、ビニルナフタレンカルボン酸、ビニルナフトール、ビニルアントラセン、ビニルアントラセンカルボン酸、ビニルフェナントレン、ビニルフェナントレンカルボン酸、および類似の縮合芳香族化合物、ビニルベンズアミジン;
アクリロイルアミノ−ベンズアミジン、(アミジノアルキル)−スチレンでアルキルが好ましくはメチル、エチルまたはプロピルであるもの、N-アクリロイル−(アミジノアルキル)−アニリン、金属イオンの錯体形成のためのイミノジ酢酸、エチレンジアミンテトラ酢酸およびこれの類似物などのキレート形成基を有するビニル誘導体、シラン、
ならびにこの類のモノマーの混合物、及び/又は
重合の架橋剤として、ジビニルベンゼンのアイソマー、ビス(アクリロイル)−アルカンでアルカンとして好ましくはエタン、プロパンおよびブタンであるもの、
アクリル酸またはメタクリル酸に基づく系、たとえばエチレングリコールジメタクリレート(EDMA)およびトリメチロールプロパントリメタクリレート(TRIM);
3-および4-官能性アクリレート架橋剤、たとえばペンタエリトリトールトリアクリレート(PETRA)およびペンタエリトリトールテトラアクリレート(PETEA)ならびに、
脂肪族(メチレン-など)、芳香族(フェニレン-など)またはヘテロ芳香族(ピリジニル-など)のスペーサーを介してアミド窒素で互いに架橋される、たとえばアクリルアミドユニットなどの官能基を有する架橋剤、及び/又は
溶剤として、ポリマーの異なる膨潤特性、種々の構造および孔径/多孔性を有するポリマーの異なる形態性、または非共有性相互作用の異なる結合強度などのパラメータに影響を与える異なる誘電率の溶媒が用いられ、詳細にはヘキサン、ヘプタンまたはシクロヘキサンなどの脂肪族または脂環式の炭化水素;
トルエンなどの芳香族の炭化水素;
クロロホルム、ジクロロメタンまたは1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン化された炭化水素;
メタノール、エタノール、プロパノールなどの短鎖のアルコール;
エーテル、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、エチルアセテート、アセトン、ジメチルホルムアミド、ジオキサン、ジメチルスルホキシド;
さらにこれらの混合物および水との混合物、及び/又は
重合のラジカル開始剤として、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)(ADVN)および他の物質が用いられることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
液体における分解の容易でない且つ/又は有毒な化合物の少なくとも1つの選択的処理のための方法であって、
液体は、処理されるべき化合物またはその分解産物の1つに対する分子インプリントポリマーの少なくとも1つに接触され、
処理されるべき化合物は分子インプリントポリマーに吸着され、
必要に応じて、処理されるべきでない化合物の一部またはすべては分子インプリントポリマーから除去され、
さらに処理されるべき化合物またはその分解産物が分子インプリントポリマーから除去されることを特徴とする方法。
【請求項6】
分子インプリントポリマーが、処理されるべき物質の分解を促進する触媒材料とカップリングされていることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
触媒材料として、補酵素アナログまたは配位性化合物が用いられることを特徴とする請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
分解が促進酸化プロセス(AOP)、プラズマ処理、光触媒、オゾン処理、紫外線照射、フェントン処理および同様な方法で行われることを特徴とする請求項5〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
触媒材料として、チタン、酸化イリジウム、鉄、及び/又はダイアモンドがポリマー内に、好ましくは促進酸化処理の標的分子を結合するキャビティ内/上に導入されることを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
酸化チタンであることが好ましいラジカル形成剤が溶解した形態で導入され、分子インプリントポリマーの周囲が洗浄されることを特徴とする請求項8または9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
分解の容易でない且つ/又は有毒な化合物の少なくとも2つを処理するために、少なくとも2つの異なった分子インプリントポリマーが用いられることを特徴とする請求項5〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
請求項1または2に記載の分子インプリントポリマーが用いられることを特徴とする請求項5〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
液体、詳細には工業廃水、化学もしくは薬品産業、または紙もしくはパルプ産業などの処理廃水、地方自治体の廃水、病院廃水、家畜などの動物由来の排泄物などの廃水を処理、浄化及び/又は改質するための請求項1〜12のいずれか1項に記載の分子インプリントポリマー及び/又は方法の環境分野における使用、および最終浄化としての活性炭または限外濾過の代替としての微生物的処理方法との連結での使用。
【請求項14】
レアケミカルまたはその分解産物を回収するための、請求項1〜12のいずれか1項に記載の分子インプリントポリマー及び/又は方法の使用。
【請求項15】
環境汚染廃棄物の衛生化、およびゴミ集積場の排水及び/又はゴミ集積場の衛生化のための、請求項13または14に記載の方法の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−529066(P2009−529066A)
【公表日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−554700(P2008−554700)
【出願日】平成19年2月20日(2007.2.20)
【国際出願番号】PCT/EP2007/001455
【国際公開番号】WO2007/096135
【国際公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(508048724)キスト−ヨーロップ フォルシュングスゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (2)
【氏名又は名称原語表記】KIST‐Europe Forschungsgesellschaft mbH
【Fターム(参考)】