分子内発光抑制式近赤外蛍光プローブ
【課題】標的組織との相互作用(すなわち、活性化)によってのみ実質的な蛍光を発光する分子内発光抑制された近赤外蛍光プローブを提供する。
【解決手段】プローブは、ポリマー骨格と、蛍光活性化部位の酵素的切断によって分離可能な骨格の蛍光発光抑制性相互作用許容位置に共有結合する複数の近赤外蛍光色素とを含む。プローブは、必要に応じて、保護鎖もしくは蛍光色素スペーサー、またはその両方を含む。また、分子内発光抑制されたプローブは、インビボにおける光学的画像形成のために使用することができる。
【解決手段】プローブは、ポリマー骨格と、蛍光活性化部位の酵素的切断によって分離可能な骨格の蛍光発光抑制性相互作用許容位置に共有結合する複数の近赤外蛍光色素とを含む。プローブは、必要に応じて、保護鎖もしくは蛍光色素スペーサー、またはその両方を含む。また、分子内発光抑制されたプローブは、インビボにおける光学的画像形成のために使用することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、生化学、細胞生物学およびインビボにおける光学的画像形成に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
光学に基づいた生体医学的画像形成技法は、レーザー技術、高性能再構成アルゴリズムおよび当初はCTおよびMRIなどの非光学的断層画像形成様式のために開発された画像形成ソフトウェアの開発を含む要因により過去10年の間に進歩した。可視波長は、内視鏡および顕微鏡による表面構造の光学的画像形成に使用される。
【0003】
近赤外線(約700〜1000 nm)は6〜8センチメーターまでの組織透過性を示すので、内部組織の光学的画像形成に使用されている。例えば、ウィアット(Wyatt)、1997年、「胎児および新生児における脳内酸素化および血行力学(Cerebral oxygenation and heamodynamics in the fetus and new born infant)」、Phil. Trans. R. Soc. London B 352: 701-706(非特許文献1);トロンベルグ(Tromberg)ら、1997年、「周波数領域の光の移動を使用した胸部組織光学特性の非侵襲的測定(Non-invasive measurements of breast tissue optical properties using frequency-domain photo migration)」、Phil. Trans. R. Soc. London B 352: 661-667(非特許文献2)を参照。
【0004】
近赤外画像形成が現在使用されている他の臨床的画像形成より優れた利点には、多数の識別可能なプローブの同時使用の可能性(分子的画像形成において重要)、時間的高分解能(機能的画像形成において重要)、空間的高分解能(生体顕微鏡における重要性)、および安全性(電離放射線がない)が含まれる。
【0005】
近赤外線蛍光画像形成において、フィルター処理済み光線または規定された帯域幅を有するレーザーが励起光線源として使用される。励起光線は生体内組織を通過する。励起光線が近赤外蛍光分子(「造影剤」)に出会うと、励起光線は吸収される。次いで、蛍光分子は、励起光線スペクトル的に識別可能な(わずかに長い波長)光線(蛍光)を放射する。近赤外線による良好な生物組織透過性にもかかわらず、従来の近赤外蛍光プローブは、標的/バックグラウンド比の低さを含む、他の造影剤で出会うものと同じ制限の多くを受ける。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】ウィアット(Wyatt)、1997年、「胎児および新生児における脳内酸素化および血行力学(Cerebral oxygenation and heamodynamics in the fetus and new born infant)」、Phil. Trans. R. Soc. London B 352: 701-706
【非特許文献2】トロンベルグ(Tromberg)ら、1997年、「周波数領域の光の移動を使用した胸部組織光学特性の非侵襲的測定(Non-invasive measurements of breast tissue optical properties using frequency-domain photo migration)」、Phil. Trans. R. Soc. London B 352: 661-667
【発明の概要】
【0007】
本発明者らは、標的組織との相互作用後にのみ実質的な蛍光を放射する、すなわち、「活性化」、分子内発光抑制された近赤外蛍光プローブを開発した。これは標的/バックグラウンド比を数次数の大きさ分増加し、標的組織中に存在する酵素活性に基づいて、インビボにおいて内部標的組織の非侵襲的近赤外画像形成を可能にする。
【0008】
従って、本発明は、ポリマー骨格と、蛍光活性化部位の酵素的切断によって分離可能な骨格の蛍光発光抑制相互作用許容位置に共有結合する複数の近赤外蛍光色素とを含む分子内発光抑制された蛍光プローブを特徴とする。
【0009】
骨格はいかなる生体適合性ポリマーであってもよい。例えば、骨格はポリペプチド、ポリサッカライド、核酸または合成ポリマーであってもよい。骨格として有用なポリペプチドには、例えば、ポリリジン、アルブミンおよび抗体が含まれる。ポリ(L-リジン)は好ましいポリペプチド骨格である。骨格はまた、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリ(グリコール酸-コ乳酸)、ポリジオキサノン、ポリバレロラクトン、ポリ-ε-カプロラクトン、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)、ポリ(3-ヒドロキシバレレート)、ポリタルトロン酸およびポリ(β-マロン酸)などの合成ポリマーであってもよい。
【0010】
プローブは、骨格に共有結合した1つ以上の保護鎖を含んでもよい。好適な保護鎖には、ポリエチレングリコール、メトキシポリエチレングリコール、メトキシポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールとメトキシポリプロピレングリコールのコポリマー、デキストラン、およびポリ乳酸-ポリグリコール酸が含まれる。本発明のいくつかの態様において、骨格はポリリジンで、保護鎖はメトキシポリエチレングリコールである。蛍光活性化部位は、例えば蛍光色素がポリリジンのε-アミノ基に直接結合される場合には、骨格内に配置されてもよい。または、各蛍光色素は、蛍光色素活性化部位を含有するスペーサーによって骨格に結合されてもよい。スペーサーはオリゴペプチドであってもよい。スペーサーとして有用なオリゴペプチド配列には、Arg-Arg、Arg-Arg-Gly、Gly-Pro-Ile-Cys-Phe-Phe-Arg-Leu-Gly(配列番号:1)、および His-Ser-Ser-Lys-Leu-Gln-Gly(配列番号:2)が含まれる。
【0011】
本発明に有用な蛍光色素の例には、Cy5.5、Cy5、IRD41、IRD700、NIR-1およびLaJolla Blueが含まれる。蛍光色素は、蛍光色素の任意の好適な反応性基および骨格またはスペーサーの適合性官能基を使用して、骨格またはスペーサーに共有結合されてもよい。本発明に係るプローブはまた、抗体、抗原-結合抗体断片、受容体-結合ポリペプチドまたは受容体-結合ポリサッカライドなどの標的部分を含んでもよい。
【0012】
本発明はまた、インビボ光学的画像形成方法を特徴とする。本発明の方法は、(a)主に標的組織に蓄積し、蛍光色素結合部分と蛍光活性化部位における酵素的切断によって分離可能な蛍光色素結合部分の蛍光発光抑制性相互作用許容位置に共有結合した複数の近赤外蛍光色素とを含む分子内発光抑制された蛍光プローブを生きている動物またはヒトに投与する段階と、(b)標的組織が存在する場合には、(1)プローブが標的組織に主に蓄積し、(2)標的組織内の酵素が蛍光活性化部位における酵素的切断によってプローブを活性化する時間を可能にする段階と、(c)蛍光色素によって吸収可能な波長の近赤外光線で標的組織を照明する段階と、(d)蛍光色素によって放射される蛍光を検出する段階とを含む。好ましくは、蛍光色素結合部分はポリマー骨格である。または、蛍光色素結合部分はモノマー、ダイマーまたはオリゴマー分子であってもよい。
【0013】
本発明はまた、(a)蛍光色素結合部分と蛍光活性化部位における酵素的切断によって分離可能な蛍光色素結合部分の蛍光発光抑制性相互作用許容位置に共有結合した複数の近赤外蛍光色素とを含み、酵素的な切断が標的組織内で主に生じる分子内発光抑制された蛍光プローブを生きている動物またはヒトに投与する段階と、(b)標的組織が存在する場合には、標的組織内の酵素が蛍光活性化部位における酵素的切断によってプローブを活性化する時間を可能にする段階と、(c)蛍光色素によって吸収可能な波長の近赤外光線で標的組織を照明する段階と、(d)蛍光色素によって放射される蛍光を検出する段階とを含む、インビボにおける光学的画像形成方法を特徴とする。好ましくは、蛍光色素結合部分はポリマー骨格である。または、蛍光色素結合部分はモノマー、ダイマーまたはオリゴマー分子であってもよい。
【0014】
本明細書において使用する「骨格」とは、近赤外蛍光色素が蛍光発光抑制性相互作用許容位置に共有結合する生体適合性ポリマーを意味する。
【0015】
本明細書において使用する「蛍光活性化部位」とは、結合が、(1)標的組織内に存在する酵素によって切断可能であり、(2)その切断が、蛍光発光抑制性相互作用許容位置における保持状態から蛍光色素を遊離するように配置される、プローブ内の共有結合を意味する。
【0016】
本明細書において使用する「蛍光発光抑制性相互作用許容位置」とは、蛍光色素が光化学的に相互作用し、互いの蛍光を発光抑制することができる、互いに対する位置に維持されるように、蛍光色素が(直接またはスペーサーを介して間接的に)共有結合することができる(1つのポリマー内の)2つ以上の原子の位置を意味する。
【0017】
本明細書において使用する「蛍光色素結合部分」とは、2つ以上の蛍光色素が(直接またはスペーサーを介して)共有結合し、互いに対して蛍光発光抑制性相互作用許容位置に維持される分子を意味する。
【0018】
本明細書において使用する「保護鎖」とは、プローブの骨格に共有結合して望ましくない骨格の生物分解、クリアランスまたは免疫原性を抑制する生体適合性ポリマー部分を意味する。
【0019】
本明細書において使用する「標的部分」とは、自己発光抑制型プローブに共有結合または非共有結合し、周囲組織と比較して標的組織内のプローブ濃度を増大する部分を意味する。
【0020】
特に規定しない限り、本明細書において使用する全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって通常理解されているものと同じ意味を持つ。抵触の場合には、定義を含む本願が支配する。全ての文献、特許出願、特許および本明細書において記載する他の参考文献は参照として組み入れられる。
【0021】
本明細書に記載するものと同様または等価な方法および材料を本発明を実施または試験する際に使用することができるが、好ましい方法および材料を以下に記載する。材料、方法および実施例は例示的なだけであり、限定する意図のものではない。本発明の他の特徴および利点は詳細な説明および特許請求の範囲から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1Aおよび1Bは、本発明の2つの態様を示すプローブの化学的成分およびそれらの構造配列を示す略図である。
【図2A】図2Aは、6つの近赤外蛍光色素の化学構造である。図2Aは、Cy5.5、Cy5、IRD41およびIRD700の構造を含む。
【図2B】図2Bは、6つの近赤外蛍光色素の化学構造である。図2Bは、NIR-1およびLaJolla Blueの構造を含む。
【図3】図3Aおよび3Bは、PL-MPEGとの共有結合前(図3A)および後(図3B)の近赤外蛍光色素、Cy5.5の分光光度計スキャンである。
【図4】図4は、分子内発光抑制およびプローブ活性化のデータを要約する棒グラフである。データは、異なる程度の蛍光色素を負荷したCy-PL-MPEGプローブを使用して得た。
【図5A】図5Aは、図5Bおよび5Cに示すマウス側腹部腫瘍の位置を例示する略図である。
【図5B】図5Bは、9L-保有ヌードマウスにおいてヒト側腹部腫瘍を被覆する皮膚の可視光写真である。
【図5C】図5Cは、図5Bの腫瘍の近赤外蛍光画像である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
詳細な説明
プローブのデザインおよび合成
プローブの骨格デザインは、生体適合性(例えば、毒性および免疫原性)、血清中の半減期、有用な官能基(蛍光色素、スペーサーおよび保護基を接合するため)および費用などの考慮点に依存する。有用な種類の骨格にはポリペプチド(ポリアミノ酸)、ポリエチレンアミン、ポリサッカライド、アミノ化ポリサッカライド、アミノ化オリゴサッカライド、ポリアミドアミン、ポリアクリル酸およびポリアルコールが含まれる。好ましい骨格はL-アミノ酸から形成されるポリペプチドからなる。ポリリジンを骨格として使用する場合には、ポリリジンの側鎖のε-アミノ基が蛍光色素およびスペーサーの共有結合のための便利な反応性基として働くことができる(図1Aおよび1B)。骨格がポリペプチドである場合には、好ましくは、プローブの分子量は2 kD〜1000 kDである。さらに好ましくは、その分子量は4 kd〜500 kdである。
【0024】
骨格は、本質的に好適に長いインビボ持続時間(半減期)を有するように選択またはデザインすることができる。従って、保護鎖は本発明のいくつかの態様では必要ない。または、ポリリジンなどの速やかに生物分解されうる骨格を共有結合により結合する保護鎖と併用してもよい。有用な保護鎖の例には、ポリエチレングリコール(PEG)、メトキシポリエチレングリコール(MPEG)、メトキシポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール−二酸、ポリエチレングリコールモノアミン、MPEGモノアミン、MPEGヒドラジドおよびMPEGイミダゾールが含まれる。保護鎖は、PEGとポリペプチド、ポリサッカライド、ポリアミドアミン、ポリエチレンアミンまたはポリヌクレオチドなどの異なるポリマーとのブロック-コポリマーであってもよい。合成の生体適合性ポリマーは、一般に、ホランド(Holland)ら、1992年、「生物分解可能なポリマー(Biodegradable Polymers)」、Advances in Pharmaceutical Sciences 6: 101-164に考察されている。
【0025】
有用な骨格-保護鎖の組み合わせはメトキシポリ(エチレン)グリコール-スクシニル-N-ε-ポリ-L-リジン(PL-MPEG)である。この物質および保護鎖を有する他のポリリジン骨格の合成は、ボグダノフ(Bogdanov)ら、米国特許第5,593,658号およびボグダノフ(Bogdanov)ら、1995年、Advanced Drug Delivery Reviews 16: 335-348に記載されている。
【0026】
種々の近赤外蛍光色素が市販されており(Cy5.5およびCy5;イリノイ州アーリントンHts.のアマシャム(Amersham);IRD41およびIRD700、ネブラスカ州リンカンのLI-COR;NIR-1、日本、熊本のデジンド(Dejindo);LaJolla Blue、フロリダ州マイアミのダイアトロン(Doatron))、本発明に係るプローブを構築するために使用することができる。近赤外スペクトル、すなわち650〜1300 nmに励起および発光波長を有する蛍光プローブを使用する。電磁スペクトルのこの部分を使用すると、組織透過性が最大になり、ヘモグロビン(<650 nm)および水(>1200 nm)などの生理学的に豊富な吸収物質による吸収が最小になる。インビボにおける使用のための理想的な近赤外蛍光色素は、(1)狭いスペクトルの特徴、(2)高い感度(量子収率)、(3)生体適合性、および(4)デカップリング吸収および励起スペクトルを示す。表1は6つの市販の近赤外蛍光色素の特性に関する情報を要約し、それらの構造は図2Aおよび2Bに示す。
【0027】
(表1) 近赤外蛍光色素
【0028】
非活性化プローブによる分子内蛍光発光抑制は種々の発光抑制機序の任意のものによって起こりうる。2つの蛍光色素間の共鳴エネルギー移動を含むいくつかの機序が知られている。この機序では、第1の蛍光色素の発光スペクトルは第2の蛍光色素の励起と非常に類似しているはずであり、第2の蛍光色素の励起は第1の蛍光色素に非常に近接している。エネルギー移動効率はr6(ここで、rは、発光抑制されている蛍光色素と励起されている蛍光色素との間の距離である)に逆比例する。蛍光色素の凝集またはエキサイマー形成により自己発光抑制が生ずることもある。この影響は厳密に濃度依存的である。発光抑制はまた、非極性から極性への環境変化によって生ずることもある。
【0029】
分子内発光抑制を達成するために、いくつかの方法を適用することができる。それらには、(1)第1の蛍光色素から好適な距離の位置に、エネルギーアクセプターとして第2の蛍光色素を結合すること、(2)自己発光抑制を誘導するために、骨格に高密度に蛍光色素を結合すること、および(3)骨格および/または保護鎖の非極性構造成分に近接して極性蛍光色素を結合することが含まれる。プローブの近接する蛍光色素および/または特定の領域、例えば非極性領域から蛍光色素が切断されると、蛍光が部分的または完全に回収される。
【0030】
蛍光色素は、蛍光色素の任意の好適な反応性基および蛍光色素結合部分、骨格またはスペーサーの同等な官能性基を使用して、蛍光色素結合部分、骨格またはスペーサーに共有結合することができる。例えば、蛍光色素のカルボキシル基(または活性化されたエステル)を使用して、ポリリジンのリジル側鎖のε-アミノ基などの一級アミンとアミド結合を形成することができる。
【0031】
本発明のいくつかの態様において、蛍光色素は骨格に直接結合されるか、または生物分解不可能なスペーサーを介して骨格に結合される。このような態様では、蛍光色素活性化部位は骨格内にある。この種のプローブの中には、例えば流動相エンドサイトーシスによって腫瘍細胞間質および腫瘍細胞内に蓄積するものがある。この優先的な蓄積のために、プローブを活性化する酵素が腫瘍特異的でなくても、このようなプローブを使用して、腫瘍組織を画像化することができる。
【0032】
本発明の好ましい態様において、蛍光色素は、蛍光色素活性化部位を含有するスペーサーを介して骨格に結合される。オリゴペプチドスペーサーは、標的組織に関連する特異的なプロテアーゼによって認識されるアミノ酸配列を含有するようにデザインすることができる。
【0033】
前立腺特異的抗原(PSA)は33 kDであり、キモトリプシン様セリンプロテアーゼは主に前立腺上皮細胞によって分泌される。通常、この酵素は主に、主要なヒト精液タンパク質の射精後分解に関与する。通常、PSAの血清濃度は前立腺上皮の容量に比例する。しかし、前立腺腫瘍細胞からのPSAの放出は、正常な前立腺上皮細胞からのものより約30倍多い。基底膜の損傷および組織構造の破壊により、PSAは細胞外空間および血中に直接分泌されることが可能になる。高濃度のPSAを血清中で検出することができるが、血清PSAはa1-抗キモトリプシンタンパク質との複合体として存在し、タンパク質分解作用としては不活性である。遊離の複合体を形成していない活性化型PSAは悪性腫瘍化した前立腺組織からの細胞外液中に生じ、PSA活性は前立腺腫瘍組織のマーカーとして使用することができる。前立腺腫瘍組織にはPSAが非常に大量に含有される。従って、PSAによって認識されるアミノ酸配列を含有するスペーサーを使用して、前立腺腫瘍組織内で特異的に蛍光活性化を受ける近赤外プローブを作製することができる。PSA-感受性スペーサーの例はHis-Ser-Ser-Lys-Leu-Gln-Gly(配列番号:2)である。他のPSA-感受性スペーサーは、PSAの基質特異性に関する当技術分野において公知の情報を使用してデザインすることができる。例えば、1997年、デンメアド(Denmeade)ら、Cancer Res. 57: 4924-4930を参照。
【0034】
カテプシンDは種々の哺乳類組織に大量に分布するリソソームアスパラギン酸プロテアーゼである。ほとんどの乳癌腫瘍において、カテプシンDは線維芽細胞または正常な哺乳類乳腺細胞において見られる濃度より2倍〜50倍多い濃度で見られる。従って、カテプシンDは乳癌の有用なマーカーとなりうる。カテプシンDによって認識されるアミノ酸配列を含有するスペーサーを使用して、乳癌組織において特異的に蛍光活性化を受ける近赤外プローブを作製することができる。カテプシンD-感受性スペーサーの例はオリゴペプチド:Gly-Pro-Ile-Cys-Phe-Phe-Arg-Leu-Gly(配列番号:1)である。他のカテプシンD-感受性スペーサーは、カテプシンDの基質特異性に関する当技術分野において公知の情報を使用してデザインすることができる。例えば、グルニク(Gulnik)ら、1997年、FEBS Let.413:379-384を参照。
【0035】
蛍光色素を骨格に直接結合する場合には、プローブの活性化は骨格の切断による。骨格の蛍光色素負荷量が多いと、トリプシンなどの酵素を活性化することによる骨格の切断を妨害することがある。従って、蛍光発光抑制とプローブ-活性化酵素による骨格の接近性とのバランス。任意の所定の骨格-蛍光色素の組み合わせでは(活性化部位が骨格内にある)ある範囲の蛍光色素負荷密度であるプローブを作製して、インビトロで試験して、最適な蛍光色素負荷率を決定することができる。
【0036】
蛍光色素が活性化部位を含有するスペーサーを介して骨格に結合される場合には、プローブ-活性化酵素による骨格の接近性は必要ない。従って、スペーサーおよび蛍光色素による骨格の高負荷はプローブの活性化を有意に妨害しない。このような系では、ポリリジンの全てのリジン残基はスペーサーおよび蛍光色素を保有することができ、全ての蛍光色素は活性化酵素によって遊離されることができる。
【0037】
標的組織へのプローブの優先的な蓄積は、プローブに組織特異的標的部分(標的リガンド)を結合することによって達成または増大することができる。結合は共有結合であっても、非共有結合であってもよい。標的部分の例には、標的特異的マーカーに対するモノクローナル抗体(または抗原結合性抗体断片)、標的特異的受容体に対する受容体結合性ポリペプチドおよび標的特異的受容体に対する受容体結合性ポリサッカライドが含まれる。従来の抗体技術(例えば、フォリ(Folli)ら、1994年、「ヌードマウスにおいてヒト扁平上皮癌を免疫光検出するための抗体-インドシアニン結合体(Antibody-Indocyanin Conjugates for Immunophotodetection of Human Squqmous Cell Carcinoma in Nude Mice)」、Cancer Res. 54: 2643-2649;ネリ(Neri)ら、1997年、「血管形成に関連するフィブロネクチンアイソフォームの親和性-成熟組換え抗体断片による標的化(Targeting By Affinity-Matured Recombinant Antibody Fragments of an Angiogenesis Associated Fibronection Isoform)」、Nature Biotechnology 15: 1271-1275)を使用して、抗体または抗体断片を作製して、本発明のプローブに結合することができる。同様に、公知の技術を使用して、受容体結合性ポリペプチドおよび受容体結合性ポリサッカライドを作製して、本発明のプローブに接合することができる。
【0038】
インビトロにおけるプローブ試験
プローブがデザインされ、合成されたら、活性化前の分子内蛍光発光抑制の必要なレベルを解明するためにプローブをインビトロにおいて日常的に試験することができる。好ましくは、これは、希釈した生理学的緩衝液中で分子内発光抑制された蛍光色素含有プローブの蛍光地を得ることによって実施される。次いで、この値を、同じ緩衝液中で、同じ蛍光測定条件下で等しいモル濃度の遊離の蛍光色素から得られた蛍光値と比較する。好ましくは、測定が、蛍光vs.蛍光色素濃度曲線の直線部分で行われていることを明らかにするために、この比較は一連の希釈液中で実施される。
【0039】
プローブ上の分子内発光抑制された蛍光色素のモル量は、任意の好適な技法を使用して、当業者によって求められる。例えば、近赤外吸収測定によってモル量は容易に求めることができる。または、骨格の反応性結合基(またはスペーサー)の損失、例えば、アミノ基の損失によるニンヒドリン反応性の減少を測定することによってモル量を容易に求めることができる。
【0040】
好適な分子内蛍光発光抑制が明らかにされたら、活性化酵素への暴露の結果、「脱-発光抑制」、すなわち蛍光をインビトロにおいて明らかにすることができる。好ましい手法において、分子内発光抑制されたプローブの蛍光を活性化酵素による処理の前後に測定する。プローブが(スペーサー内ではなく)骨格内に活性化部位を有する場合には、脱-発光抑制は種々の蛍光色素負荷レベルで試験されるべきである。ここで、「負荷」とは蛍光色素が実際に占めると思われる骨格の蛍光色素結合部位の割合を意味する。
【0041】
また、分子内発光抑制された近赤外蛍光プローブを試験するために培養により増殖させた細胞を日常的に使用することができる。細胞培養培地中に遊離するプローブ分子は蛍光顕微鏡によって検出不可能であるべきである。細胞の取り込みによって、プローブが活性化され、プローブを含有する細胞からの蛍光シグナルが得られる。従って、試験対象のプローブの細胞内取り込みの結果、活性化が生じることを明らかにするために培養細胞の顕微鏡検査を使用することができる。培養細胞の顕微鏡検査はまた、活性化が1カ所以上の細胞内コンパートメント内で生じているかどうかを判定するための便利な手段である。
【0042】
インビボにおける光学的画像形成
本発明は新規蛍光プローブを含むが、蛍光の一般原理、光学的画像獲得および画像処理を本発明を実施する際に適用することができる。光学的画像形成技法は、例えば、アルファノ(Alfano)ら、1997年、生物医学的培地の光学的画像形成の進歩(Advances in Optical Imaging of Biomedical Media)」、Ann. NY. Acad. Sci. 820: 248-270を参照。
【0043】
本発明を実施する際に有用な画像形成システムは3つの基本的な構成要素を含んでもよい。第1はほぼ単色の近赤外光源である。これは、フィルター処理済み白色光によって提供することができる。例えば、オメガ・オプティカル(Omega Optical)(バーモント州ブラトルボロ)製の好適な帯域通過フィルターに150ワットのハロゲンランプの光線を通過させることができる。第2の基礎的な構成要素は高域通過フィルター(700 nm)で、励起光線から蛍光発光を分離する。好適な高域通過フィルターもオメガ・オプティカル(Omega Optical)から購入することができる。第3の基本的な構成要素は、適当なマクロレンズ付属品がついた弱光(冷却した(cooled))CCDカメラである。好適な構成要素の選択および好適な光学的画像作製システムへのそれらの集成は当技術分野の通常の技術範囲内である。
【0044】
本発明をより十分に理解するために、以下の実施例を提供する。これらの実施例は例示的な目的のためだけであって、本発明をいずれにせよ限定すると考えられるべきではないことが理解されるべきである。
【実施例】
【0045】
近赤外蛍光プローブの合成
本発明者らは、Cy5.5として知られる市販の蛍光色素(吸収=675 nm、発光=694 nm;アマシャム(Amersham)、イリノイ州アーリントンハイツ)をPL-MPEG(平均分子量約450 kD)に接合することによって、3種の異なる分子内発光抑制された近赤外蛍光プローブを合成した。3種のプローブはポリリジン骨格への蛍光色素の結合が異なっていた。「Cy-PL-MPEG」と命名されたプローブでは、Cy5.5は種々の密度でポリリジン側鎖のε-アミノ基に直接結合し、ε-アミノ基の誘導体化率は0.1%〜70%の範囲であった。「Cy-RRG-PL-MPEG」と命名されたプローブでは、Cy5.5蛍光色素はArg-Arg-Glyからなるスペーサーによってポリリジンに結合された。「Cy-GPICFFRLG-PL-MPEG」と命名されたプローブでは、Cy5.5蛍光色素は、Gly-Pro-Ile-Cys-Phe-Phe-Arg-Leu-Gly(配列番号:1)からなるスペーサーによってポリリジンに結合された。トリプシンおよびトリプシン様プロテアーゼは、骨格が部分的にだけ誘導体化されている場合には、Cy-PL-MPEGのポリリジン骨格を切断することができる。
【0046】
プローブCy-RRG-PL-MPEGおよびCy-GPICFFRLG-PL-MPEGはスペーサーの蛍光色素切断を可能にするが、骨格の蛍光色素切断は必ずしも可能ではないようにデザインされた。例えば、トリプシン切断に感受性を示すペプチドスペーサーRRGはPL-MPEGを誘導体化するのに使用され、次いでCy5.5をRRGスペーサーのN-末端に結合した。カテプシンD感受性ペプチドスペーサー、GPICFFRLG(配列番号:1)はPL-MPEGを誘導体化するのに同様に使用された。
【0047】
一官能性NHS-エステル(アマシャム(Amersham)、イリノイ州アーリントンハイツ)として市販されているCy5.5は、PL-MPEGのポリリジン骨格の遊離ε-アミノ基を標識するために、販売業者の指示に従って使用した。Cy5.5を予め混合しておいたMPEG-PL溶液(0.2 mgのPL-MPEGを80 mM重炭酸ナトリウム水溶液 1 mlに加えたもの)に添加し、最終濃度を17μMとした。3時間後、未反応蛍光色素および反応混合物の他の低分子量成分から反応生成物(Cy-PL-MPEG)を分離するために、反応混合物を登録商標セファデックス(Sephadex)G-25(ファルマシア(Pharmacia))カラム(12 cm)に適用した。平均蛍光色素負荷は約20%であった。すなわち、PL-MPEGの55個の遊離アミノ基のうち11個がCy5.5で標識された(TNBSアッセイ法および吸光度測定に基づいて)。
【0048】
図3Aは、溶液中の遊離Cy5.5の励起および発光スペクトルを示す。図3Bは、Cy-PL-MPEGのCy5.5蛍光色素の励起および発光スペクトルを示す。Cy5.5の励起および発光波長は、それぞれ、648 nmおよび694 nmである。遊離Cy5.5およびCy-PL-MPEGの蛍光レベルには顕著な差があった。Cy-MPEG-PLの蛍光レベルは、未結合Cy5.5のものより約30倍低かった。
【0049】
その後の検討において、本発明者らは、プローブの光学的特性に対する蛍光色素負荷の影響(すなわち、蛍光色素が占めるポリリジン骨格のε-アミノ基の割合)を求めた。図4は、蛍光色素が占めるポリリジン骨格のε-アミノ基の割合の関数として、Cy(n)-MPEG-PL(白色の棒)の相対的な蛍光シグナルを示す。20%の負荷(55個の基のうち11個)およびそれ以上において、分子内発光抑制が観察され、より低い蛍光色素負荷のプローブと比較すると、蛍光シグナルは低かった。骨格のトリプシン切断後、図4の黒色のバーによって示されるように、蛍光シグナルが回収された。最大の蛍光回収は20%負荷において得られた(活性化の結果、15倍の蛍光シグナル増加)。負荷が20%より大きいと、回収は低下した。これは、立体障害と骨格の効率的な切断のために遊離リジン基が必要であることに依るとされている。
【0050】
細胞培養中のプローブ活性化
機能的な画像形成用プローブを試験する際の次の段階は細胞培養実験を実施することであった。本発明者らは、取り込まれていないCy-PL-MPEGは蛍光顕微鏡によって検出不能で、細胞内取り込みによりプローブが活性化され、蛍光シグナルが得られると予測した。メラニン欠乏性B16黒色腫を使用して得られたデータは本発明者らの予測を確認しており、(1)非活性化プローブは蛍光を発光しない、(2)プローブはこの細胞株に取り込まれる、および(3)細胞内取り込みにより、プローブが活性化され、蛍光シグナルが検出されることを示した。
【0051】
この実験において、本発明者らは、B16細胞の輪郭の明視野像を、(1)時間0時付近のCy-MPEG-PLを細胞に添加したときの、近赤外蛍光条件下において同じ視野、および(2)プローブの細胞内取り込みの時間を可能にした後(データは示していない)と比較した。細胞は時間0時付近では近赤外蛍光によって検出されなかったが、プローブの細胞取り込み後、すなわち約2時間後は(細胞内蛍光によって)はっきりと見ることができた。この実験は、本発明者らの画像形成用プローブは、標的細胞依存的に光学的特性を検出可能であるように変更したことを実証した。
【0052】
インビボにおける画像形成
インビボにおけるマウス画像形成は、3つの主要な部品、光源、台/ホルダー、および画像記録装置を備えるシステムを使用して実施した。150Wハロゲンバルブを備えた光ファイバー光束(ファイバーライト(Fiberlite)高強度イルミネーターシリーズ180、ドラン-ジェネン インダストリーズ(Dolan-Jennen Industries)は広いスペクトルの白色光線を提供した。610 nm〜650 nmの範囲の均一な励起光源を形成するために、シャープなカットオフ帯域通過光フィルター(オメガ フィルター コーポ(Omega Filter Corp.)、バーモント州ブラトレボロ)を光ファイバー束の末端に取り付けた。マウス全体を均一に照射するために、光源は画像形成台の約15 cm上方に設置した。台自体は、記録装置によって反射される(および検出される可能性のある)励起光子の数を低下する皮製の黒色面とした。
【0053】
蛍光(発光)光子は、700 nmにシャープなカットオフのある低域通過フィルター(Omega Filter Corp.)を使用して選択した。Cy5.5染料は、約670 nmに励起ピークを有し、広がったピークの肩が610 nmより低い帯域に延在する。ピーク発光は694 nmである。フィルターセットの広域スペース周波数と組み合わせた、5より大きいOD減衰のシャープなカットオフフィルターは、蛍光発光シグナルとして記録される入射励起光子の「混信」を顕著に低下した。光源と記録装置との角度を狭くすることにより、マウスの組織と相互作用した蛍光発光光子または散乱光子だけが低域通過フィルターに確実に到達した。
【0054】
画像の記録のためには、低域通過フィルターを低パワー顕微鏡に取り付けた(Leica StereoZoom 6 photo, Leica microscope systems, Heerbrugg, Switzerland)。弱光CCD(SenSys 1400, 12 bit cooled CCD, Photometrics, Tuscon, AZ)が蛍光発光画像を記録した。画像をパワーマック(PowerMac)7600/120 PC(Apple Computer, Cupertino, CA)に転送し、IPLab Spectrum 3.1 ソフトウェア(Signal Analytics Corp., Vienne, VA)を使用して処理した。後処理には、不良CCDピクセルを排除するための標準的な操作と、第2の白色光源を使用して得たマウス全体の局所画像に発光画像を重ね合わせる重ね合わせ操作が含まれた。近赤外発光画像では一般的なアクジション時間は30秒で、白色光線(非選択的画像)では1秒であった。
【0055】
本発明者らは、腫瘍保有マウスにおいて分子内発光抑制された近赤外蛍光プローブ(Cy11-PL-MPEG;20%蛍光色素負荷)を試験した。腫瘍株9LまたはLX1を有するヌードマウスに2 nmolのCy11-PL-MPEGを静脈内注射した。直後、およびプローブの静脈内投与の36時間後までに、近赤外光線によってマウスを画像化した。腫瘍内の蛍光シグナルの増加を、プローブが腫瘍細胞内部に取り込まれ、エンドソームによる加水分解によって活性化される時間の関数として観察した。
【0056】
図5Aは、画像形成したマウスの略図で、図5Bおよび5Cに示す腫瘍の位置を表している。図5Bは、Cy11-PL-MPEGプローブを注射したヌードマウスの側腹部の腫瘍を被覆する皮膚の可視光写真である。図5Cは、対応する近赤外蛍光画像である。腫瘍は、周囲の組織とは対照的に、強烈な蛍光領域として見える。
【0057】
他の態様は特許請求の範囲内である。
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、生化学、細胞生物学およびインビボにおける光学的画像形成に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
光学に基づいた生体医学的画像形成技法は、レーザー技術、高性能再構成アルゴリズムおよび当初はCTおよびMRIなどの非光学的断層画像形成様式のために開発された画像形成ソフトウェアの開発を含む要因により過去10年の間に進歩した。可視波長は、内視鏡および顕微鏡による表面構造の光学的画像形成に使用される。
【0003】
近赤外線(約700〜1000 nm)は6〜8センチメーターまでの組織透過性を示すので、内部組織の光学的画像形成に使用されている。例えば、ウィアット(Wyatt)、1997年、「胎児および新生児における脳内酸素化および血行力学(Cerebral oxygenation and heamodynamics in the fetus and new born infant)」、Phil. Trans. R. Soc. London B 352: 701-706(非特許文献1);トロンベルグ(Tromberg)ら、1997年、「周波数領域の光の移動を使用した胸部組織光学特性の非侵襲的測定(Non-invasive measurements of breast tissue optical properties using frequency-domain photo migration)」、Phil. Trans. R. Soc. London B 352: 661-667(非特許文献2)を参照。
【0004】
近赤外画像形成が現在使用されている他の臨床的画像形成より優れた利点には、多数の識別可能なプローブの同時使用の可能性(分子的画像形成において重要)、時間的高分解能(機能的画像形成において重要)、空間的高分解能(生体顕微鏡における重要性)、および安全性(電離放射線がない)が含まれる。
【0005】
近赤外線蛍光画像形成において、フィルター処理済み光線または規定された帯域幅を有するレーザーが励起光線源として使用される。励起光線は生体内組織を通過する。励起光線が近赤外蛍光分子(「造影剤」)に出会うと、励起光線は吸収される。次いで、蛍光分子は、励起光線スペクトル的に識別可能な(わずかに長い波長)光線(蛍光)を放射する。近赤外線による良好な生物組織透過性にもかかわらず、従来の近赤外蛍光プローブは、標的/バックグラウンド比の低さを含む、他の造影剤で出会うものと同じ制限の多くを受ける。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】ウィアット(Wyatt)、1997年、「胎児および新生児における脳内酸素化および血行力学(Cerebral oxygenation and heamodynamics in the fetus and new born infant)」、Phil. Trans. R. Soc. London B 352: 701-706
【非特許文献2】トロンベルグ(Tromberg)ら、1997年、「周波数領域の光の移動を使用した胸部組織光学特性の非侵襲的測定(Non-invasive measurements of breast tissue optical properties using frequency-domain photo migration)」、Phil. Trans. R. Soc. London B 352: 661-667
【発明の概要】
【0007】
本発明者らは、標的組織との相互作用後にのみ実質的な蛍光を放射する、すなわち、「活性化」、分子内発光抑制された近赤外蛍光プローブを開発した。これは標的/バックグラウンド比を数次数の大きさ分増加し、標的組織中に存在する酵素活性に基づいて、インビボにおいて内部標的組織の非侵襲的近赤外画像形成を可能にする。
【0008】
従って、本発明は、ポリマー骨格と、蛍光活性化部位の酵素的切断によって分離可能な骨格の蛍光発光抑制相互作用許容位置に共有結合する複数の近赤外蛍光色素とを含む分子内発光抑制された蛍光プローブを特徴とする。
【0009】
骨格はいかなる生体適合性ポリマーであってもよい。例えば、骨格はポリペプチド、ポリサッカライド、核酸または合成ポリマーであってもよい。骨格として有用なポリペプチドには、例えば、ポリリジン、アルブミンおよび抗体が含まれる。ポリ(L-リジン)は好ましいポリペプチド骨格である。骨格はまた、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリ(グリコール酸-コ乳酸)、ポリジオキサノン、ポリバレロラクトン、ポリ-ε-カプロラクトン、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)、ポリ(3-ヒドロキシバレレート)、ポリタルトロン酸およびポリ(β-マロン酸)などの合成ポリマーであってもよい。
【0010】
プローブは、骨格に共有結合した1つ以上の保護鎖を含んでもよい。好適な保護鎖には、ポリエチレングリコール、メトキシポリエチレングリコール、メトキシポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールとメトキシポリプロピレングリコールのコポリマー、デキストラン、およびポリ乳酸-ポリグリコール酸が含まれる。本発明のいくつかの態様において、骨格はポリリジンで、保護鎖はメトキシポリエチレングリコールである。蛍光活性化部位は、例えば蛍光色素がポリリジンのε-アミノ基に直接結合される場合には、骨格内に配置されてもよい。または、各蛍光色素は、蛍光色素活性化部位を含有するスペーサーによって骨格に結合されてもよい。スペーサーはオリゴペプチドであってもよい。スペーサーとして有用なオリゴペプチド配列には、Arg-Arg、Arg-Arg-Gly、Gly-Pro-Ile-Cys-Phe-Phe-Arg-Leu-Gly(配列番号:1)、および His-Ser-Ser-Lys-Leu-Gln-Gly(配列番号:2)が含まれる。
【0011】
本発明に有用な蛍光色素の例には、Cy5.5、Cy5、IRD41、IRD700、NIR-1およびLaJolla Blueが含まれる。蛍光色素は、蛍光色素の任意の好適な反応性基および骨格またはスペーサーの適合性官能基を使用して、骨格またはスペーサーに共有結合されてもよい。本発明に係るプローブはまた、抗体、抗原-結合抗体断片、受容体-結合ポリペプチドまたは受容体-結合ポリサッカライドなどの標的部分を含んでもよい。
【0012】
本発明はまた、インビボ光学的画像形成方法を特徴とする。本発明の方法は、(a)主に標的組織に蓄積し、蛍光色素結合部分と蛍光活性化部位における酵素的切断によって分離可能な蛍光色素結合部分の蛍光発光抑制性相互作用許容位置に共有結合した複数の近赤外蛍光色素とを含む分子内発光抑制された蛍光プローブを生きている動物またはヒトに投与する段階と、(b)標的組織が存在する場合には、(1)プローブが標的組織に主に蓄積し、(2)標的組織内の酵素が蛍光活性化部位における酵素的切断によってプローブを活性化する時間を可能にする段階と、(c)蛍光色素によって吸収可能な波長の近赤外光線で標的組織を照明する段階と、(d)蛍光色素によって放射される蛍光を検出する段階とを含む。好ましくは、蛍光色素結合部分はポリマー骨格である。または、蛍光色素結合部分はモノマー、ダイマーまたはオリゴマー分子であってもよい。
【0013】
本発明はまた、(a)蛍光色素結合部分と蛍光活性化部位における酵素的切断によって分離可能な蛍光色素結合部分の蛍光発光抑制性相互作用許容位置に共有結合した複数の近赤外蛍光色素とを含み、酵素的な切断が標的組織内で主に生じる分子内発光抑制された蛍光プローブを生きている動物またはヒトに投与する段階と、(b)標的組織が存在する場合には、標的組織内の酵素が蛍光活性化部位における酵素的切断によってプローブを活性化する時間を可能にする段階と、(c)蛍光色素によって吸収可能な波長の近赤外光線で標的組織を照明する段階と、(d)蛍光色素によって放射される蛍光を検出する段階とを含む、インビボにおける光学的画像形成方法を特徴とする。好ましくは、蛍光色素結合部分はポリマー骨格である。または、蛍光色素結合部分はモノマー、ダイマーまたはオリゴマー分子であってもよい。
【0014】
本明細書において使用する「骨格」とは、近赤外蛍光色素が蛍光発光抑制性相互作用許容位置に共有結合する生体適合性ポリマーを意味する。
【0015】
本明細書において使用する「蛍光活性化部位」とは、結合が、(1)標的組織内に存在する酵素によって切断可能であり、(2)その切断が、蛍光発光抑制性相互作用許容位置における保持状態から蛍光色素を遊離するように配置される、プローブ内の共有結合を意味する。
【0016】
本明細書において使用する「蛍光発光抑制性相互作用許容位置」とは、蛍光色素が光化学的に相互作用し、互いの蛍光を発光抑制することができる、互いに対する位置に維持されるように、蛍光色素が(直接またはスペーサーを介して間接的に)共有結合することができる(1つのポリマー内の)2つ以上の原子の位置を意味する。
【0017】
本明細書において使用する「蛍光色素結合部分」とは、2つ以上の蛍光色素が(直接またはスペーサーを介して)共有結合し、互いに対して蛍光発光抑制性相互作用許容位置に維持される分子を意味する。
【0018】
本明細書において使用する「保護鎖」とは、プローブの骨格に共有結合して望ましくない骨格の生物分解、クリアランスまたは免疫原性を抑制する生体適合性ポリマー部分を意味する。
【0019】
本明細書において使用する「標的部分」とは、自己発光抑制型プローブに共有結合または非共有結合し、周囲組織と比較して標的組織内のプローブ濃度を増大する部分を意味する。
【0020】
特に規定しない限り、本明細書において使用する全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって通常理解されているものと同じ意味を持つ。抵触の場合には、定義を含む本願が支配する。全ての文献、特許出願、特許および本明細書において記載する他の参考文献は参照として組み入れられる。
【0021】
本明細書に記載するものと同様または等価な方法および材料を本発明を実施または試験する際に使用することができるが、好ましい方法および材料を以下に記載する。材料、方法および実施例は例示的なだけであり、限定する意図のものではない。本発明の他の特徴および利点は詳細な説明および特許請求の範囲から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1Aおよび1Bは、本発明の2つの態様を示すプローブの化学的成分およびそれらの構造配列を示す略図である。
【図2A】図2Aは、6つの近赤外蛍光色素の化学構造である。図2Aは、Cy5.5、Cy5、IRD41およびIRD700の構造を含む。
【図2B】図2Bは、6つの近赤外蛍光色素の化学構造である。図2Bは、NIR-1およびLaJolla Blueの構造を含む。
【図3】図3Aおよび3Bは、PL-MPEGとの共有結合前(図3A)および後(図3B)の近赤外蛍光色素、Cy5.5の分光光度計スキャンである。
【図4】図4は、分子内発光抑制およびプローブ活性化のデータを要約する棒グラフである。データは、異なる程度の蛍光色素を負荷したCy-PL-MPEGプローブを使用して得た。
【図5A】図5Aは、図5Bおよび5Cに示すマウス側腹部腫瘍の位置を例示する略図である。
【図5B】図5Bは、9L-保有ヌードマウスにおいてヒト側腹部腫瘍を被覆する皮膚の可視光写真である。
【図5C】図5Cは、図5Bの腫瘍の近赤外蛍光画像である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
詳細な説明
プローブのデザインおよび合成
プローブの骨格デザインは、生体適合性(例えば、毒性および免疫原性)、血清中の半減期、有用な官能基(蛍光色素、スペーサーおよび保護基を接合するため)および費用などの考慮点に依存する。有用な種類の骨格にはポリペプチド(ポリアミノ酸)、ポリエチレンアミン、ポリサッカライド、アミノ化ポリサッカライド、アミノ化オリゴサッカライド、ポリアミドアミン、ポリアクリル酸およびポリアルコールが含まれる。好ましい骨格はL-アミノ酸から形成されるポリペプチドからなる。ポリリジンを骨格として使用する場合には、ポリリジンの側鎖のε-アミノ基が蛍光色素およびスペーサーの共有結合のための便利な反応性基として働くことができる(図1Aおよび1B)。骨格がポリペプチドである場合には、好ましくは、プローブの分子量は2 kD〜1000 kDである。さらに好ましくは、その分子量は4 kd〜500 kdである。
【0024】
骨格は、本質的に好適に長いインビボ持続時間(半減期)を有するように選択またはデザインすることができる。従って、保護鎖は本発明のいくつかの態様では必要ない。または、ポリリジンなどの速やかに生物分解されうる骨格を共有結合により結合する保護鎖と併用してもよい。有用な保護鎖の例には、ポリエチレングリコール(PEG)、メトキシポリエチレングリコール(MPEG)、メトキシポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール−二酸、ポリエチレングリコールモノアミン、MPEGモノアミン、MPEGヒドラジドおよびMPEGイミダゾールが含まれる。保護鎖は、PEGとポリペプチド、ポリサッカライド、ポリアミドアミン、ポリエチレンアミンまたはポリヌクレオチドなどの異なるポリマーとのブロック-コポリマーであってもよい。合成の生体適合性ポリマーは、一般に、ホランド(Holland)ら、1992年、「生物分解可能なポリマー(Biodegradable Polymers)」、Advances in Pharmaceutical Sciences 6: 101-164に考察されている。
【0025】
有用な骨格-保護鎖の組み合わせはメトキシポリ(エチレン)グリコール-スクシニル-N-ε-ポリ-L-リジン(PL-MPEG)である。この物質および保護鎖を有する他のポリリジン骨格の合成は、ボグダノフ(Bogdanov)ら、米国特許第5,593,658号およびボグダノフ(Bogdanov)ら、1995年、Advanced Drug Delivery Reviews 16: 335-348に記載されている。
【0026】
種々の近赤外蛍光色素が市販されており(Cy5.5およびCy5;イリノイ州アーリントンHts.のアマシャム(Amersham);IRD41およびIRD700、ネブラスカ州リンカンのLI-COR;NIR-1、日本、熊本のデジンド(Dejindo);LaJolla Blue、フロリダ州マイアミのダイアトロン(Doatron))、本発明に係るプローブを構築するために使用することができる。近赤外スペクトル、すなわち650〜1300 nmに励起および発光波長を有する蛍光プローブを使用する。電磁スペクトルのこの部分を使用すると、組織透過性が最大になり、ヘモグロビン(<650 nm)および水(>1200 nm)などの生理学的に豊富な吸収物質による吸収が最小になる。インビボにおける使用のための理想的な近赤外蛍光色素は、(1)狭いスペクトルの特徴、(2)高い感度(量子収率)、(3)生体適合性、および(4)デカップリング吸収および励起スペクトルを示す。表1は6つの市販の近赤外蛍光色素の特性に関する情報を要約し、それらの構造は図2Aおよび2Bに示す。
【0027】
(表1) 近赤外蛍光色素
【0028】
非活性化プローブによる分子内蛍光発光抑制は種々の発光抑制機序の任意のものによって起こりうる。2つの蛍光色素間の共鳴エネルギー移動を含むいくつかの機序が知られている。この機序では、第1の蛍光色素の発光スペクトルは第2の蛍光色素の励起と非常に類似しているはずであり、第2の蛍光色素の励起は第1の蛍光色素に非常に近接している。エネルギー移動効率はr6(ここで、rは、発光抑制されている蛍光色素と励起されている蛍光色素との間の距離である)に逆比例する。蛍光色素の凝集またはエキサイマー形成により自己発光抑制が生ずることもある。この影響は厳密に濃度依存的である。発光抑制はまた、非極性から極性への環境変化によって生ずることもある。
【0029】
分子内発光抑制を達成するために、いくつかの方法を適用することができる。それらには、(1)第1の蛍光色素から好適な距離の位置に、エネルギーアクセプターとして第2の蛍光色素を結合すること、(2)自己発光抑制を誘導するために、骨格に高密度に蛍光色素を結合すること、および(3)骨格および/または保護鎖の非極性構造成分に近接して極性蛍光色素を結合することが含まれる。プローブの近接する蛍光色素および/または特定の領域、例えば非極性領域から蛍光色素が切断されると、蛍光が部分的または完全に回収される。
【0030】
蛍光色素は、蛍光色素の任意の好適な反応性基および蛍光色素結合部分、骨格またはスペーサーの同等な官能性基を使用して、蛍光色素結合部分、骨格またはスペーサーに共有結合することができる。例えば、蛍光色素のカルボキシル基(または活性化されたエステル)を使用して、ポリリジンのリジル側鎖のε-アミノ基などの一級アミンとアミド結合を形成することができる。
【0031】
本発明のいくつかの態様において、蛍光色素は骨格に直接結合されるか、または生物分解不可能なスペーサーを介して骨格に結合される。このような態様では、蛍光色素活性化部位は骨格内にある。この種のプローブの中には、例えば流動相エンドサイトーシスによって腫瘍細胞間質および腫瘍細胞内に蓄積するものがある。この優先的な蓄積のために、プローブを活性化する酵素が腫瘍特異的でなくても、このようなプローブを使用して、腫瘍組織を画像化することができる。
【0032】
本発明の好ましい態様において、蛍光色素は、蛍光色素活性化部位を含有するスペーサーを介して骨格に結合される。オリゴペプチドスペーサーは、標的組織に関連する特異的なプロテアーゼによって認識されるアミノ酸配列を含有するようにデザインすることができる。
【0033】
前立腺特異的抗原(PSA)は33 kDであり、キモトリプシン様セリンプロテアーゼは主に前立腺上皮細胞によって分泌される。通常、この酵素は主に、主要なヒト精液タンパク質の射精後分解に関与する。通常、PSAの血清濃度は前立腺上皮の容量に比例する。しかし、前立腺腫瘍細胞からのPSAの放出は、正常な前立腺上皮細胞からのものより約30倍多い。基底膜の損傷および組織構造の破壊により、PSAは細胞外空間および血中に直接分泌されることが可能になる。高濃度のPSAを血清中で検出することができるが、血清PSAはa1-抗キモトリプシンタンパク質との複合体として存在し、タンパク質分解作用としては不活性である。遊離の複合体を形成していない活性化型PSAは悪性腫瘍化した前立腺組織からの細胞外液中に生じ、PSA活性は前立腺腫瘍組織のマーカーとして使用することができる。前立腺腫瘍組織にはPSAが非常に大量に含有される。従って、PSAによって認識されるアミノ酸配列を含有するスペーサーを使用して、前立腺腫瘍組織内で特異的に蛍光活性化を受ける近赤外プローブを作製することができる。PSA-感受性スペーサーの例はHis-Ser-Ser-Lys-Leu-Gln-Gly(配列番号:2)である。他のPSA-感受性スペーサーは、PSAの基質特異性に関する当技術分野において公知の情報を使用してデザインすることができる。例えば、1997年、デンメアド(Denmeade)ら、Cancer Res. 57: 4924-4930を参照。
【0034】
カテプシンDは種々の哺乳類組織に大量に分布するリソソームアスパラギン酸プロテアーゼである。ほとんどの乳癌腫瘍において、カテプシンDは線維芽細胞または正常な哺乳類乳腺細胞において見られる濃度より2倍〜50倍多い濃度で見られる。従って、カテプシンDは乳癌の有用なマーカーとなりうる。カテプシンDによって認識されるアミノ酸配列を含有するスペーサーを使用して、乳癌組織において特異的に蛍光活性化を受ける近赤外プローブを作製することができる。カテプシンD-感受性スペーサーの例はオリゴペプチド:Gly-Pro-Ile-Cys-Phe-Phe-Arg-Leu-Gly(配列番号:1)である。他のカテプシンD-感受性スペーサーは、カテプシンDの基質特異性に関する当技術分野において公知の情報を使用してデザインすることができる。例えば、グルニク(Gulnik)ら、1997年、FEBS Let.413:379-384を参照。
【0035】
蛍光色素を骨格に直接結合する場合には、プローブの活性化は骨格の切断による。骨格の蛍光色素負荷量が多いと、トリプシンなどの酵素を活性化することによる骨格の切断を妨害することがある。従って、蛍光発光抑制とプローブ-活性化酵素による骨格の接近性とのバランス。任意の所定の骨格-蛍光色素の組み合わせでは(活性化部位が骨格内にある)ある範囲の蛍光色素負荷密度であるプローブを作製して、インビトロで試験して、最適な蛍光色素負荷率を決定することができる。
【0036】
蛍光色素が活性化部位を含有するスペーサーを介して骨格に結合される場合には、プローブ-活性化酵素による骨格の接近性は必要ない。従って、スペーサーおよび蛍光色素による骨格の高負荷はプローブの活性化を有意に妨害しない。このような系では、ポリリジンの全てのリジン残基はスペーサーおよび蛍光色素を保有することができ、全ての蛍光色素は活性化酵素によって遊離されることができる。
【0037】
標的組織へのプローブの優先的な蓄積は、プローブに組織特異的標的部分(標的リガンド)を結合することによって達成または増大することができる。結合は共有結合であっても、非共有結合であってもよい。標的部分の例には、標的特異的マーカーに対するモノクローナル抗体(または抗原結合性抗体断片)、標的特異的受容体に対する受容体結合性ポリペプチドおよび標的特異的受容体に対する受容体結合性ポリサッカライドが含まれる。従来の抗体技術(例えば、フォリ(Folli)ら、1994年、「ヌードマウスにおいてヒト扁平上皮癌を免疫光検出するための抗体-インドシアニン結合体(Antibody-Indocyanin Conjugates for Immunophotodetection of Human Squqmous Cell Carcinoma in Nude Mice)」、Cancer Res. 54: 2643-2649;ネリ(Neri)ら、1997年、「血管形成に関連するフィブロネクチンアイソフォームの親和性-成熟組換え抗体断片による標的化(Targeting By Affinity-Matured Recombinant Antibody Fragments of an Angiogenesis Associated Fibronection Isoform)」、Nature Biotechnology 15: 1271-1275)を使用して、抗体または抗体断片を作製して、本発明のプローブに結合することができる。同様に、公知の技術を使用して、受容体結合性ポリペプチドおよび受容体結合性ポリサッカライドを作製して、本発明のプローブに接合することができる。
【0038】
インビトロにおけるプローブ試験
プローブがデザインされ、合成されたら、活性化前の分子内蛍光発光抑制の必要なレベルを解明するためにプローブをインビトロにおいて日常的に試験することができる。好ましくは、これは、希釈した生理学的緩衝液中で分子内発光抑制された蛍光色素含有プローブの蛍光地を得ることによって実施される。次いで、この値を、同じ緩衝液中で、同じ蛍光測定条件下で等しいモル濃度の遊離の蛍光色素から得られた蛍光値と比較する。好ましくは、測定が、蛍光vs.蛍光色素濃度曲線の直線部分で行われていることを明らかにするために、この比較は一連の希釈液中で実施される。
【0039】
プローブ上の分子内発光抑制された蛍光色素のモル量は、任意の好適な技法を使用して、当業者によって求められる。例えば、近赤外吸収測定によってモル量は容易に求めることができる。または、骨格の反応性結合基(またはスペーサー)の損失、例えば、アミノ基の損失によるニンヒドリン反応性の減少を測定することによってモル量を容易に求めることができる。
【0040】
好適な分子内蛍光発光抑制が明らかにされたら、活性化酵素への暴露の結果、「脱-発光抑制」、すなわち蛍光をインビトロにおいて明らかにすることができる。好ましい手法において、分子内発光抑制されたプローブの蛍光を活性化酵素による処理の前後に測定する。プローブが(スペーサー内ではなく)骨格内に活性化部位を有する場合には、脱-発光抑制は種々の蛍光色素負荷レベルで試験されるべきである。ここで、「負荷」とは蛍光色素が実際に占めると思われる骨格の蛍光色素結合部位の割合を意味する。
【0041】
また、分子内発光抑制された近赤外蛍光プローブを試験するために培養により増殖させた細胞を日常的に使用することができる。細胞培養培地中に遊離するプローブ分子は蛍光顕微鏡によって検出不可能であるべきである。細胞の取り込みによって、プローブが活性化され、プローブを含有する細胞からの蛍光シグナルが得られる。従って、試験対象のプローブの細胞内取り込みの結果、活性化が生じることを明らかにするために培養細胞の顕微鏡検査を使用することができる。培養細胞の顕微鏡検査はまた、活性化が1カ所以上の細胞内コンパートメント内で生じているかどうかを判定するための便利な手段である。
【0042】
インビボにおける光学的画像形成
本発明は新規蛍光プローブを含むが、蛍光の一般原理、光学的画像獲得および画像処理を本発明を実施する際に適用することができる。光学的画像形成技法は、例えば、アルファノ(Alfano)ら、1997年、生物医学的培地の光学的画像形成の進歩(Advances in Optical Imaging of Biomedical Media)」、Ann. NY. Acad. Sci. 820: 248-270を参照。
【0043】
本発明を実施する際に有用な画像形成システムは3つの基本的な構成要素を含んでもよい。第1はほぼ単色の近赤外光源である。これは、フィルター処理済み白色光によって提供することができる。例えば、オメガ・オプティカル(Omega Optical)(バーモント州ブラトルボロ)製の好適な帯域通過フィルターに150ワットのハロゲンランプの光線を通過させることができる。第2の基礎的な構成要素は高域通過フィルター(700 nm)で、励起光線から蛍光発光を分離する。好適な高域通過フィルターもオメガ・オプティカル(Omega Optical)から購入することができる。第3の基本的な構成要素は、適当なマクロレンズ付属品がついた弱光(冷却した(cooled))CCDカメラである。好適な構成要素の選択および好適な光学的画像作製システムへのそれらの集成は当技術分野の通常の技術範囲内である。
【0044】
本発明をより十分に理解するために、以下の実施例を提供する。これらの実施例は例示的な目的のためだけであって、本発明をいずれにせよ限定すると考えられるべきではないことが理解されるべきである。
【実施例】
【0045】
近赤外蛍光プローブの合成
本発明者らは、Cy5.5として知られる市販の蛍光色素(吸収=675 nm、発光=694 nm;アマシャム(Amersham)、イリノイ州アーリントンハイツ)をPL-MPEG(平均分子量約450 kD)に接合することによって、3種の異なる分子内発光抑制された近赤外蛍光プローブを合成した。3種のプローブはポリリジン骨格への蛍光色素の結合が異なっていた。「Cy-PL-MPEG」と命名されたプローブでは、Cy5.5は種々の密度でポリリジン側鎖のε-アミノ基に直接結合し、ε-アミノ基の誘導体化率は0.1%〜70%の範囲であった。「Cy-RRG-PL-MPEG」と命名されたプローブでは、Cy5.5蛍光色素はArg-Arg-Glyからなるスペーサーによってポリリジンに結合された。「Cy-GPICFFRLG-PL-MPEG」と命名されたプローブでは、Cy5.5蛍光色素は、Gly-Pro-Ile-Cys-Phe-Phe-Arg-Leu-Gly(配列番号:1)からなるスペーサーによってポリリジンに結合された。トリプシンおよびトリプシン様プロテアーゼは、骨格が部分的にだけ誘導体化されている場合には、Cy-PL-MPEGのポリリジン骨格を切断することができる。
【0046】
プローブCy-RRG-PL-MPEGおよびCy-GPICFFRLG-PL-MPEGはスペーサーの蛍光色素切断を可能にするが、骨格の蛍光色素切断は必ずしも可能ではないようにデザインされた。例えば、トリプシン切断に感受性を示すペプチドスペーサーRRGはPL-MPEGを誘導体化するのに使用され、次いでCy5.5をRRGスペーサーのN-末端に結合した。カテプシンD感受性ペプチドスペーサー、GPICFFRLG(配列番号:1)はPL-MPEGを誘導体化するのに同様に使用された。
【0047】
一官能性NHS-エステル(アマシャム(Amersham)、イリノイ州アーリントンハイツ)として市販されているCy5.5は、PL-MPEGのポリリジン骨格の遊離ε-アミノ基を標識するために、販売業者の指示に従って使用した。Cy5.5を予め混合しておいたMPEG-PL溶液(0.2 mgのPL-MPEGを80 mM重炭酸ナトリウム水溶液 1 mlに加えたもの)に添加し、最終濃度を17μMとした。3時間後、未反応蛍光色素および反応混合物の他の低分子量成分から反応生成物(Cy-PL-MPEG)を分離するために、反応混合物を登録商標セファデックス(Sephadex)G-25(ファルマシア(Pharmacia))カラム(12 cm)に適用した。平均蛍光色素負荷は約20%であった。すなわち、PL-MPEGの55個の遊離アミノ基のうち11個がCy5.5で標識された(TNBSアッセイ法および吸光度測定に基づいて)。
【0048】
図3Aは、溶液中の遊離Cy5.5の励起および発光スペクトルを示す。図3Bは、Cy-PL-MPEGのCy5.5蛍光色素の励起および発光スペクトルを示す。Cy5.5の励起および発光波長は、それぞれ、648 nmおよび694 nmである。遊離Cy5.5およびCy-PL-MPEGの蛍光レベルには顕著な差があった。Cy-MPEG-PLの蛍光レベルは、未結合Cy5.5のものより約30倍低かった。
【0049】
その後の検討において、本発明者らは、プローブの光学的特性に対する蛍光色素負荷の影響(すなわち、蛍光色素が占めるポリリジン骨格のε-アミノ基の割合)を求めた。図4は、蛍光色素が占めるポリリジン骨格のε-アミノ基の割合の関数として、Cy(n)-MPEG-PL(白色の棒)の相対的な蛍光シグナルを示す。20%の負荷(55個の基のうち11個)およびそれ以上において、分子内発光抑制が観察され、より低い蛍光色素負荷のプローブと比較すると、蛍光シグナルは低かった。骨格のトリプシン切断後、図4の黒色のバーによって示されるように、蛍光シグナルが回収された。最大の蛍光回収は20%負荷において得られた(活性化の結果、15倍の蛍光シグナル増加)。負荷が20%より大きいと、回収は低下した。これは、立体障害と骨格の効率的な切断のために遊離リジン基が必要であることに依るとされている。
【0050】
細胞培養中のプローブ活性化
機能的な画像形成用プローブを試験する際の次の段階は細胞培養実験を実施することであった。本発明者らは、取り込まれていないCy-PL-MPEGは蛍光顕微鏡によって検出不能で、細胞内取り込みによりプローブが活性化され、蛍光シグナルが得られると予測した。メラニン欠乏性B16黒色腫を使用して得られたデータは本発明者らの予測を確認しており、(1)非活性化プローブは蛍光を発光しない、(2)プローブはこの細胞株に取り込まれる、および(3)細胞内取り込みにより、プローブが活性化され、蛍光シグナルが検出されることを示した。
【0051】
この実験において、本発明者らは、B16細胞の輪郭の明視野像を、(1)時間0時付近のCy-MPEG-PLを細胞に添加したときの、近赤外蛍光条件下において同じ視野、および(2)プローブの細胞内取り込みの時間を可能にした後(データは示していない)と比較した。細胞は時間0時付近では近赤外蛍光によって検出されなかったが、プローブの細胞取り込み後、すなわち約2時間後は(細胞内蛍光によって)はっきりと見ることができた。この実験は、本発明者らの画像形成用プローブは、標的細胞依存的に光学的特性を検出可能であるように変更したことを実証した。
【0052】
インビボにおける画像形成
インビボにおけるマウス画像形成は、3つの主要な部品、光源、台/ホルダー、および画像記録装置を備えるシステムを使用して実施した。150Wハロゲンバルブを備えた光ファイバー光束(ファイバーライト(Fiberlite)高強度イルミネーターシリーズ180、ドラン-ジェネン インダストリーズ(Dolan-Jennen Industries)は広いスペクトルの白色光線を提供した。610 nm〜650 nmの範囲の均一な励起光源を形成するために、シャープなカットオフ帯域通過光フィルター(オメガ フィルター コーポ(Omega Filter Corp.)、バーモント州ブラトレボロ)を光ファイバー束の末端に取り付けた。マウス全体を均一に照射するために、光源は画像形成台の約15 cm上方に設置した。台自体は、記録装置によって反射される(および検出される可能性のある)励起光子の数を低下する皮製の黒色面とした。
【0053】
蛍光(発光)光子は、700 nmにシャープなカットオフのある低域通過フィルター(Omega Filter Corp.)を使用して選択した。Cy5.5染料は、約670 nmに励起ピークを有し、広がったピークの肩が610 nmより低い帯域に延在する。ピーク発光は694 nmである。フィルターセットの広域スペース周波数と組み合わせた、5より大きいOD減衰のシャープなカットオフフィルターは、蛍光発光シグナルとして記録される入射励起光子の「混信」を顕著に低下した。光源と記録装置との角度を狭くすることにより、マウスの組織と相互作用した蛍光発光光子または散乱光子だけが低域通過フィルターに確実に到達した。
【0054】
画像の記録のためには、低域通過フィルターを低パワー顕微鏡に取り付けた(Leica StereoZoom 6 photo, Leica microscope systems, Heerbrugg, Switzerland)。弱光CCD(SenSys 1400, 12 bit cooled CCD, Photometrics, Tuscon, AZ)が蛍光発光画像を記録した。画像をパワーマック(PowerMac)7600/120 PC(Apple Computer, Cupertino, CA)に転送し、IPLab Spectrum 3.1 ソフトウェア(Signal Analytics Corp., Vienne, VA)を使用して処理した。後処理には、不良CCDピクセルを排除するための標準的な操作と、第2の白色光源を使用して得たマウス全体の局所画像に発光画像を重ね合わせる重ね合わせ操作が含まれた。近赤外発光画像では一般的なアクジション時間は30秒で、白色光線(非選択的画像)では1秒であった。
【0055】
本発明者らは、腫瘍保有マウスにおいて分子内発光抑制された近赤外蛍光プローブ(Cy11-PL-MPEG;20%蛍光色素負荷)を試験した。腫瘍株9LまたはLX1を有するヌードマウスに2 nmolのCy11-PL-MPEGを静脈内注射した。直後、およびプローブの静脈内投与の36時間後までに、近赤外光線によってマウスを画像化した。腫瘍内の蛍光シグナルの増加を、プローブが腫瘍細胞内部に取り込まれ、エンドソームによる加水分解によって活性化される時間の関数として観察した。
【0056】
図5Aは、画像形成したマウスの略図で、図5Bおよび5Cに示す腫瘍の位置を表している。図5Bは、Cy11-PL-MPEGプローブを注射したヌードマウスの側腹部の腫瘍を被覆する皮膚の可視光写真である。図5Cは、対応する近赤外蛍光画像である。腫瘍は、周囲の組織とは対照的に、強烈な蛍光領域として見える。
【0057】
他の態様は特許請求の範囲内である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー骨格と、蛍光活性化部位の酵素的切断によって分離可能な骨格の蛍光発光抑制相互作用許容位置に共有結合する複数の近赤外蛍光色素とを含む分子内発光抑制された蛍光プローブ。
【請求項2】
骨格がポリペプチドである、請求項1記載のプローブ。
【請求項3】
ポリペプチドがポリリジンである、請求項2記載のプローブ。
【請求項4】
骨格に共有結合した複数の保護鎖をさらに含む、請求項1記載のプローブ。
【請求項5】
保護鎖が、ポリエチレングリコール、メトキシポリエチレングリコール、メトキシポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールとメトキシポリプロピレングリコールのコポリマー、デキストラン、およびポリ乳酸-ポリグリコール酸からなる群より選択される、請求項4記載のプローブ。
【請求項6】
骨格がポリリジンであり、保護鎖がメトキシポリエチレングリコールである、請求項4記載のプローブ。
【請求項7】
蛍光活性化部位が骨格内に配置される、請求項1記載のプローブ。
【請求項8】
蛍光色素がポリリジンのε-アミノ基に結合される、請求項7記載のプローブ。
【請求項9】
各蛍光色素が、蛍光活性化部位を含有するスペーサーによって骨格に結合される、請求項1記載のプローブ。
【請求項10】
スペーサーがオリゴペプチドである、請求項9記載のプローブ。
【請求項11】
オリゴペプチドが、
Arg-Arg、
Arg-Arg-Gly、
Gly-Pro-Ile-Cys-Phe-Phe-Arg-Leu-Gly(配列番号:1)、
および
His-Ser-Ser-Lys-Leu-Gln-Gly(配列番号:2)
からなる群より選択される、請求項10記載のプローブ。
【請求項12】
蛍光色素が、Cy5.5、Cy5、IRD41、IRD700、NIR-1およびLaJolla Blueからなる群より選択される、請求項1記載のプローブ。
【請求項13】
蛍光色素が、骨格またはスペーサーのアミノ基にアミド結合によって共有結合される、請求項1記載のプローブ。
【請求項14】
標的部分をさらに含む、請求項1記載のプローブ。
【請求項15】
標的部分が、抗体、抗体断片、受容体結合ポリペプチドおよび受容体結合ポリサッカライドからなる群より選択される、請求項14記載のプローブ。
【請求項16】
(a)主に標的組織に蓄積し、蛍光色素結合部分と蛍光活性化部位における酵素的切断によって分離可能な蛍光色素結合部分の蛍光発光抑制性相互作用許容位置に共有結合した複数の近赤外蛍光色素とを含む分子内発光抑制された蛍光プローブを生きている動物またはヒトに投与する段階と、
(b)標的組織が存在する場合には、(1)プローブが標的組織に主に蓄積し、(2)標的組織内の酵素が蛍光活性化部位における酵素的切断によってプローブを活性化する時間を可能にする段階と、
(c)蛍光色素によって吸収可能な波長の近赤外光線で標的組織を照明する段階と、
(d)蛍光色素によって放射される蛍光を検出する段階であって、それによって、存在する場合には標的組織の光学的画像を形成する段階とを含む、
インビボにおける光学的画像形成方法。
【請求項17】
蛍光色素結合部分がポリマー骨格である、請求項16記載の方法。
【請求項18】
(a)蛍光色素結合部分と蛍光活性化部位における酵素的切断によって分離可能な蛍光色素結合部分の蛍光発光抑制性相互作用許容位置に共有結合した複数の近赤外蛍光色素とを含み、酵素的な切断が標的組織内で主に生じる分子内発光抑制された蛍光プローブを生きている動物またはヒトに投与する段階と、
(b)標的組織が存在する場合には、標的組織内の酵素が蛍光活性化部位における酵素的切断によってプローブを活性化する時間を可能にする段階と、
(c)蛍光色素によって吸収可能な波長の近赤外光線で標的組織を照明する段階と、
(d)蛍光色素によって放射される蛍光を検出する段階であって、それによって、存在する場合には標的組織の光学的画像を形成する段階とを含む、
インビボにおける光学的画像形成方法。
【請求項19】
蛍光色素結合部分がポリマー骨格である、請求項18記載の方法。
【請求項1】
ポリマー骨格と、蛍光活性化部位の酵素的切断によって分離可能な骨格の蛍光発光抑制相互作用許容位置に共有結合する複数の近赤外蛍光色素とを含む分子内発光抑制された蛍光プローブ。
【請求項2】
骨格がポリペプチドである、請求項1記載のプローブ。
【請求項3】
ポリペプチドがポリリジンである、請求項2記載のプローブ。
【請求項4】
骨格に共有結合した複数の保護鎖をさらに含む、請求項1記載のプローブ。
【請求項5】
保護鎖が、ポリエチレングリコール、メトキシポリエチレングリコール、メトキシポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールとメトキシポリプロピレングリコールのコポリマー、デキストラン、およびポリ乳酸-ポリグリコール酸からなる群より選択される、請求項4記載のプローブ。
【請求項6】
骨格がポリリジンであり、保護鎖がメトキシポリエチレングリコールである、請求項4記載のプローブ。
【請求項7】
蛍光活性化部位が骨格内に配置される、請求項1記載のプローブ。
【請求項8】
蛍光色素がポリリジンのε-アミノ基に結合される、請求項7記載のプローブ。
【請求項9】
各蛍光色素が、蛍光活性化部位を含有するスペーサーによって骨格に結合される、請求項1記載のプローブ。
【請求項10】
スペーサーがオリゴペプチドである、請求項9記載のプローブ。
【請求項11】
オリゴペプチドが、
Arg-Arg、
Arg-Arg-Gly、
Gly-Pro-Ile-Cys-Phe-Phe-Arg-Leu-Gly(配列番号:1)、
および
His-Ser-Ser-Lys-Leu-Gln-Gly(配列番号:2)
からなる群より選択される、請求項10記載のプローブ。
【請求項12】
蛍光色素が、Cy5.5、Cy5、IRD41、IRD700、NIR-1およびLaJolla Blueからなる群より選択される、請求項1記載のプローブ。
【請求項13】
蛍光色素が、骨格またはスペーサーのアミノ基にアミド結合によって共有結合される、請求項1記載のプローブ。
【請求項14】
標的部分をさらに含む、請求項1記載のプローブ。
【請求項15】
標的部分が、抗体、抗体断片、受容体結合ポリペプチドおよび受容体結合ポリサッカライドからなる群より選択される、請求項14記載のプローブ。
【請求項16】
(a)主に標的組織に蓄積し、蛍光色素結合部分と蛍光活性化部位における酵素的切断によって分離可能な蛍光色素結合部分の蛍光発光抑制性相互作用許容位置に共有結合した複数の近赤外蛍光色素とを含む分子内発光抑制された蛍光プローブを生きている動物またはヒトに投与する段階と、
(b)標的組織が存在する場合には、(1)プローブが標的組織に主に蓄積し、(2)標的組織内の酵素が蛍光活性化部位における酵素的切断によってプローブを活性化する時間を可能にする段階と、
(c)蛍光色素によって吸収可能な波長の近赤外光線で標的組織を照明する段階と、
(d)蛍光色素によって放射される蛍光を検出する段階であって、それによって、存在する場合には標的組織の光学的画像を形成する段階とを含む、
インビボにおける光学的画像形成方法。
【請求項17】
蛍光色素結合部分がポリマー骨格である、請求項16記載の方法。
【請求項18】
(a)蛍光色素結合部分と蛍光活性化部位における酵素的切断によって分離可能な蛍光色素結合部分の蛍光発光抑制性相互作用許容位置に共有結合した複数の近赤外蛍光色素とを含み、酵素的な切断が標的組織内で主に生じる分子内発光抑制された蛍光プローブを生きている動物またはヒトに投与する段階と、
(b)標的組織が存在する場合には、標的組織内の酵素が蛍光活性化部位における酵素的切断によってプローブを活性化する時間を可能にする段階と、
(c)蛍光色素によって吸収可能な波長の近赤外光線で標的組織を照明する段階と、
(d)蛍光色素によって放射される蛍光を検出する段階であって、それによって、存在する場合には標的組織の光学的画像を形成する段階とを含む、
インビボにおける光学的画像形成方法。
【請求項19】
蛍光色素結合部分がポリマー骨格である、請求項18記載の方法。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【公開番号】特開2011−95273(P2011−95273A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−5396(P2011−5396)
【出願日】平成23年1月14日(2011.1.14)
【分割の表示】特願2000−548012(P2000−548012)の分割
【原出願日】平成11年5月13日(1999.5.13)
【出願人】(592017633)ザ ジェネラル ホスピタル コーポレイション (177)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月14日(2011.1.14)
【分割の表示】特願2000−548012(P2000−548012)の分割
【原出願日】平成11年5月13日(1999.5.13)
【出願人】(592017633)ザ ジェネラル ホスピタル コーポレイション (177)
【Fターム(参考)】
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