説明

分子内2箇所にジフェニルアミンの構造を有するジアミン、このジアミンを反応させて得られるポリマー、このポリマーを含有する液晶配向剤、この液晶配向剤を用いて形成される液晶配向膜、およびこの液晶配向膜を有する液晶表示素子

【課題】
イオン密度が低く、かつ、その長期信頼性に優れた液晶表示素子を提供することであり、その特性をもたらす液晶配向膜、その液晶配向膜を形成するための液晶配向剤、その液晶配向剤に用いるポリマー、そして、そのポリマーの原料となるジアミンを提供すること。
【解決手段】
分子内2箇所にジフェニルアミンの構造に含まれる塩基性窒素原子を有するジアミンをテトラカルボン酸二無水物と反応させて得たポリアミック酸またはその誘導体を含有する液晶配向剤によって液晶配向膜を形成し、液晶表示素子に用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分子内2箇所にジフェニルアミンの構造を有するジアミン、このジアミンを原料の1つとして得られるポリマー(ポリアミック酸またはその誘導体)、これらのポリマーが溶剤に溶解した液晶配向剤、該液晶配向剤から形成される液晶配向膜を具備した液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子は、ノートパソコンやデスクトップパソコンのモニターをはじめ、ビデオカメラのビューファインダー、投写型のディスプレイ等の様々な液晶表示装置に使われており、最近ではテレビにも用いられている。さらに液晶素子は、光プリンターヘッド、光フーリエ変換素子、ライトバルブ等のオプトエレクトロニクス関連素子にも利用されている。
【0003】
液晶表示素子にはこれまでにTN(ツイステッドネマチック)、STN(超ツイステッドネマチック)、VA(垂直配向)、IPS(インプレーンスイッチング)、OCB(光学補償ベント)等、種々の駆動方式が知られている。しかし、液晶表示素子の技術の発展は、駆動方式や構造の改良のみならず、液晶表示素子に使用される構成部材の改良によっても達成されている。液晶表示素子は、通常、液晶層中の液晶組成物を特定の方向に配向させるための液晶配向膜を有する。液晶配向膜は液晶表示素子の表示品位に係わる重要な要素の1つであり、液晶表示素子の高品質化に伴って液晶配向膜の役割が年々重要になってきている。
【0004】
液晶配向膜は液晶配向剤を用いて形成される。現在、主として用いられている液晶配向剤とは、ポリアミック酸または可溶性のポリイミドを有機溶剤に溶解させた溶液である。液晶配向膜は、このような溶液を基板に塗布した後、加熱等の手段により成膜することにより形成される。成膜された液晶配向膜は、レーヨンやコットンなどの布で特定の方向へ擦るラビングを施すことにより異方性が発生し、液晶が所定の方向へ配列するようになる。
【0005】
液晶表示素子の表示品位を向上させるために液晶配向膜に要求される重要な特性として、イオン密度が挙げられる。イオン密度が高いと、フレーム期間中に液晶にかかる電圧が低下し、結果として輝度が低下して正常な階調表示に支障をきたすことがある。また、例え初期のイオン密度が低くても、高温加速試験後のイオン密度(長期信頼性)が増加してしまう場合は好ましくない。
【0006】
前記した問題を解決する試みとして、例えば液晶配向膜を形成させる際に、物性の異なる2つ以上のポリアミック酸を組み合わせたポリアミック酸組成物が知られている(例えば、特許文献1および2を参照)。
【0007】
一方で、低温焼成でもイミド化率の高い膜を形成するための液晶配向剤として、例えば1,4−ビス(3−アミノプロピル)ピペラジンのような、アミノ基以外の塩基性窒素原子を有するジアミンとテトラカルボン酸二無水物とを反応させて得られるポリアミック酸を含有する液晶配向剤が知られている(例えば、特許文献3を参照)。
【0008】
さらに、分子内にピペラジンのような構造を含む芳香族ジアミンとテトラカルボン酸二無水物とを反応させて得られるポリアミック酸とその熱特性とが知られている(例えば、非特許文献1を参照)。
【0009】
しかしながら、これらの先行技術によって得られる液晶配向膜にはイオン密度の低減という課題についてさらなる検討の余地が残されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平11−193345号公報
【特許文献2】特開平11−193347号公報
【特許文献3】特開平9−194725号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Journal of Polymer Science: Part A: Polymer Chemistry, vol. 30, p1099-1102 (1992)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の課題は、イオン密度が低く、かつ、その長期信頼性に優れた液晶表示素子を提供することであり、その特性をもたらす液晶配向膜、その液晶配向膜を形成するための液晶配向剤、その液晶配向剤に用いるポリマー、そして、そのポリマーの原料となるジアミンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、分子内2箇所にジフェニルアミンの構造を有するジアミンをテトラカルボン酸二無水物と反応させて得たポリアミック酸またはその誘導体を含有する組成物を液晶配向剤に用いた。その結果、その液晶配向剤によって形成された液晶配向膜を有する液晶表示素子が低いイオン密度を示し、その長期信頼性にも優れていることを見出し、本発明を完成させた。
【0014】
本発明は以下の構成からなる。
【0015】
[1] 式(N)で表されるジアミン。
【化1】

式(N)において、
は独立して−CHまたは−OCHであり、a1は独立して0〜2の整数であり;そして、
Xは下記の式(A)、(B)、(C)、および(D)で表される2価の基の群から選ばれる1つである。
【化2】

式(A)において、
は独立して−CHまたは−OCHであり、a2は独立して0〜2の整数であり;そして、
nは2〜10の整数である。
【化3】

式(B)において、
は、単結合、−O−、−COO−、−OCO−、−CO−、−CONH−、または−(CH−であり、mは1〜6の整数であり;
はステロイド骨格を有する基または下記式(IX)で表される基であり;
【化4】

式(IX)において、
およびAは独立して、単結合、−O−、−COO−、−OCO−、−CONH−、−CH=CH−、または炭素数1〜12のアルキレンであり;
およびRは独立して、−Fまたは−CHであり;
環Sは独立して1,4−フェニレン、1,4−シクロヘキシレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、ピリジン−2,5−ジイル、ナフタレン−1,5−ジイル、ナフタレン−2,7−ジイル、またはアントラセン−9,10−ジイルであり;
は−H、−F、炭素数1〜30のアルキル、炭素数1〜30のフッ素置換アルキル、炭素数1〜30のアルコキシ、−CN、−OCHF、−OCHF、または−OCFであり;
aおよびbは独立して0〜4の整数であり;
c、dおよびeは独立して0〜3の整数であり;
fおよびgは独立して0〜2の整数であり;そして、
c+d+e≧1である。
【化5】

式(C)において、
は−Hまたは炭素数1〜30のアルキルであり;
このアルキルの任意の−CH−は、−O−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく;
は単結合または炭素数1〜3のアルキレンであり;
環Tは1,4−フェニレンまたは1,4−シクロヘキシレンであり;
hは0または1であり;
は独立して−CHまたは−OCHであり、そして、a2は独立して0〜2の整数であり
【化6】

式(D)において、
10は炭素数6〜22のアルキルであり;
11は炭素数1〜22のアルキルであり;
は独立して−CHまたは−OCHであり、そして、a2は独立して0〜2の整数である。
【0016】
[2] 式(NA)で表される、前記[1]項に記載のジアミン。
【化7】

式(NA)において、
は独立して−CHまたは−OCHであり、a1は独立して0〜2の整数であり;
は独立して−CHまたは−OCHであり、a2は独立して0〜2の整数であり;そして、
nは2〜10の整数である。
【0017】
[3] 式(NB)で表される、前記[1]項に記載のジアミン。
【化8】

式(NB)において、
は、単結合、−O−、−COO−、−OCO−、−CO−、−CONH−、または(CH−であり、mは1〜6の整数であり;
は独立して−CHまたは−OCHであり、a1は独立して0〜2の整数であり;
は、ステロイド骨格を有する基または下記式(IX)で表される基であり;
【化9】

式(IX)において、
およびAは独立して、単結合、−O−、−COO−、−OCO−、−CONH−、−CH=CH−、または炭素数1〜12のアルキレンであり;
およびRは独立して、−FまたはCHであり;
環Sは独立して1,4−フェニレン、1,4−シクロヘキシレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、ピリジン−2,5−ジイル、ナフタレン−1,5−ジイル、ナフタレン−2,7−ジイル、またはアントラセン−9,10−ジイルであり;
は−H、−F、炭素数1〜30のアルキル、炭素数1〜30のフッ素置換アルキル、炭素数1〜30のアルコキシ、−CN、−OCHF、−OCHF、または−OCFであり;
aおよびbは独立して、0〜4の整数であり;
c、dおよびeは独立して0〜3の整数であり;
fおよびgは独立して0〜2の整数であり;そして、
c+d+e≧1である。
【0018】
[4] 式(NC)で表される、前記[1]項に記載のジアミン。
【化10】

式(NC)において、
は−Hまたは炭素数1〜30のアルキルであり;
このアルキルの任意の−CH−は、−O−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく;
は単結合または炭素数1〜3のアルキレンであり;
環Tは1,4−フェニレンまたは1,4−シクロヘキシレンであり;そして、
hは0または1であり;
は独立して−CHまたは−OCHであり、a1は独立して0〜2の整数であり;
は独立して−CHまたは−OCHであり、そして、a2は独立して0〜2の整数である。
【0019】
[5] hが1である、前記[4]項に記載のジアミン。
【0020】
[6] 式(ND)で表される、前記[1]項に記載のジアミン。
【化11】

式(ND)において、
10は炭素数6〜22のアルキルであり;
11は炭素数1〜22のアルキルであり;
は独立して−CHまたは−OCHであり、a1は独立して0〜2の整数であり;
は独立して−CHまたは−OCHであり、そして、a2は独立して0〜2の整数である。
【0021】
[7] 下記式(N)で表されるジアミン、または式(N)で表されるジアミンおよびそれ以外のジアミンの混合物を、テトラカルボン酸二無水物と反応させて得られるポリアミック酸またはその誘導体。
【化12】

式(N)において、
は独立して−CHまたは−OCHであり、a1は独立して0〜2の整数であり;そして、
Xは下記の式(A)、(B)、(C)、および(D)で表される2価の基の群から選ばれる1つである。
【化13】

式(A)において、
は独立して、−CHまたは−OCHであり、a2は独立して0〜2の整数であり;そして、
nは1〜10の整数である。
【化14】

式(B)において、
は、単結合、−O−、−COO−、−OCO−、−CO−、−CONH−、または−(CH−であり、mは1〜6の整数であり;
は、ステロイド骨格を有する基または下記式(IX)で表される基であり;
【化15】

式(IX)において、
およびAは独立して、単結合、−O−(ただし非連続)、−COO−、−OCO−、−CONH−、−CH=CH−、または炭素数1〜12のアルキレンであり;
およびRは独立して、−Fまたは−CHであり;
環Sは独立して1,4−フェニレン、1,4−シクロヘキシレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、ピリジン−2,5−ジイル、ナフタレン−1,5−ジイル、ナフタレン−2,7−ジイル、またはアントラセン−9,10−ジイルであり;
は−H、−F、炭素数1〜30のアルキル、炭素数1〜30のフッ素置換アルキル、炭素数1〜30のアルコキシ、−CN、−OCHF、−OCHF、またはOCFであり;
aおよびbは独立して0〜4の整数であり;
c、dおよびeは独立して0〜3の整数であり;
fおよびgは独立して0〜2の整数であり;そして、
c+d+e≧1である。
【化16】

式(C)において、
は−Hまたは炭素数1〜30のアルキルであり;
このアルキルの任意の−CH−は、−O−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく;
は単結合または炭素数1〜3のアルキレンであり;
環Tは1,4−フェニレンまたは1,4−シクロヘキシレンであり;
hは0または1であり;
は独立して−CHまたは−OCHであり、そして、a2は独立して0〜2の整数であり;
【化17】

式(D)において、
10は炭素数6〜22のアルキルであり;
11は炭素数1〜22のアルキルであり;
は独立して−CHまたは−OCHであり、そして、a2は独立して0〜2の整数である。
【0022】
[8] 下記式(NA)で表されるジアミン、または式(NA)で表されるジアミンおよびそれ以外のジアミンの混合物を、テトラカルボン酸二無水物と反応させて得られる、前記[7]項に記載のポリアミック酸またはその誘導体。
【化18】

式(NA)において、
は独立して−CHまたは−OCHであり、a1は独立して0〜2の整数であり;
は独立して−CHまたは−OCHであり、a2は独立して0〜2の整数であり;そして、
nは2〜10の整数である。
【0023】
[9] 下記式(NB)で表されるジアミン、または式(NB)で表されるジアミンおよびそれ以外のジアミンの混合物を、テトラカルボン酸二無水物と反応させて得られる、前記[7]項に記載のポリアミック酸またはその誘導体。
【化19】

式(NB)において、
は、単結合、−O−、−COO−、−OCO−、−CO−、−CONH−、または−(CH−であり、mは1〜6の整数であり;
は独立して−CHまたは−OCHであり、a1は独立して0〜2の整数であり;
はステロイド骨格を有する基または下記式(IX)で表される基であり;
【化20】

式(IX)において、
およびAは独立して、単結合、−O−、−COO−、−OCO−、−CONH−、−CH=CH−、または炭素数1〜12のアルキレンであり;
およびRは独立して、−Fまたは−CHであり;
環Sは独立して1,4−フェニレン、1,4−シクロヘキシレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、ピリジン−2,5−ジイル、ナフタレン−1,5−ジイル、ナフタレン−2,7−ジイル、またはアントラセン−9,10−ジイルであり;
は−H、−F、炭素数1〜30のアルキル、炭素数1〜30のフッ素置換アルキル、炭素数1〜30のアルコキシ、−CN、−OCHF、−OCHF、または−OCFであり;
aおよびbは独立して、0〜4の整数であり;
c、dおよびeは独立して0〜3の整数であり;
fおよびgは独立して0〜2の整数であり;そして、
c+d+e≧1である。
【0024】
[10] 下記式(NC)で表されるジアミン、または式(NC)で表されるジアミンおよびそれ以外のジアミンの混合物を、テトラカルボン酸二無水物と反応させて得られる、前記[7]項に記載のポリアミック酸またはその誘導体。
【化21】

式(NC)において、
は−Hまたは炭素数1〜30のアルキルであり;
このアルキルの任意の−CH−は、−O−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく;
は単結合または炭素数1〜3のアルキレンであり;
環Tは1,4−フェニレンまたは1,4−シクロヘキシレンであり;
hは0または1であり;
は独立して−CHまたは−OCHであり、a1は独立して0〜2の整数であり;
は独立して−CHまたは−OCHであり、そして、a2は独立して0〜2の整数である。
【0025】
[11] 下記式(ND)で表されるジアミン、または式(ND)で表されるジアミンおよびそれ以外のジアミンの混合物を、テトラカルボン酸二無水物と反応させて得られる、前記[7]項に記載のポリアミック酸またはその誘導体。
【化22】

式(ND)において、
10は炭素数6〜22のアルキルであり;
11は炭素数1〜22のアルキルであり;
は独立して−CHまたは−OCHであり、a1は独立して0〜2の整数であり;
は独立して−CHまたは−OCHであり、そして、a2は独立して0〜2の整数である。
【0026】
[12] 式(N)で表されるジアミンが下記(NA−1)〜(NA−6)で表される化合物の群から選ばれる少なくとも1つである、前記[7]項に記載のポリアミック酸またはその誘導体。
【化23】

【0027】
[13] 式(N)で表されるジアミンが、式(NA−1)および(NA−3)で表される化合物の群から選ばれる少なくとも1つである、前記[12]項に記載のポリアミック酸またはその誘導体。
【0028】
[14] 式(N)で表されるジアミン、および下記式(VIII)および(X)〜(XIII)で表される側鎖構造を有するジアミンの群から選ばれる少なくとも1つの混合物を、テトラカルボン酸二無水物と反応させて得られる、前記[7]〜[13]のいずれか1項に記載のポリアミック酸またはその誘導体。
【化24】

式(VIII)において、
は、単結合、−O−、−COO−、−OCO−、−CO−、−CONH−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、または−(CH−であり、mは1〜6の整数であり;
は、ステロイド骨格を有する基または下記式(IX)で表される基であり;
【化25】

式(IX)において、
およびAは独立して、単結合、−O−、−COO−、−OCO−、−CONH−、−CH=CH−、または炭素数1〜12のアルキレンであり;
およびRは独立して、−FまたはCHであり;
環Sは独立して1,4−フェニレン、1,4−シクロヘキシレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、ピリジン−2,5−ジイル、ナフタレン−1,5−ジイル、ナフタレン−2,7−ジイル、またはアントラセン−9,10−ジイルであり;
は−F、−OH、炭素数1〜30のアルキル、炭素数1〜30のフッ素置換アルキル、炭素数1〜30のアルコキシ、−CN、−OCHF、−OCHF、または−OCFであり、この炭素数1〜30のアルキルの任意の−CH−は下記式(s)で表される2価の基で置き換えられていてもよく;
【化26】

式(s)において、R33およびR34は独立して炭素数1〜3のアルキルであり、mは1〜6の整数であり;
aおよびbは独立して0〜4の整数であり;
c、dおよびeは独立して0〜3の整数であり;
fおよびgは独立して0〜2の整数であり;そして、
c+d+e≧1である。
【化27】

【化28】

式(X)および(XI)において、
は独立して−Hまたは−CHであり;
は−H、または炭素数1〜20のアルキルまたは炭素数2〜20のアルケニルであり;
は独立して単結合、−CO−または−CH−であり;
式(XI)において、
およびRは独立して炭素数1〜20のアルキルまたはフェニルである。
【化29】

【化30】

式(XII)および(XIII)において、
は独立して−O−または炭素数1〜6のアルキレンであり;
式(XII)において、
は−Hまたは炭素数1〜30のアルキルであり、このアルキルの任意の−CH−は、−O−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく;
は単結合または炭素数1〜3のアルキレンであり;
環Tは1,4−フェニレンまたは1,4−シクロヘキシレンであり;
hは0または1であり;
式(XIII)において、
10は炭素数6〜22のアルキルであり;そして、
11は炭素数1〜22のアルキルである。
【0029】
[15] 側鎖構造を有するジアミンが、下記式(VIII−2)、(VIII−4)〜(VIII−6)、(XII−2)、(XII−4)、および(XII−6)で表されるジアミンの群から選ばれる少なくとも1つである、前記[14]項に記載のポリアミック酸またはその誘導体。
【化31】

【化32】

【化33】

【化34】

【化35】

上記式中、R23、R29およびR30は、それぞれ独立して炭素数1〜30のアルキルまたは炭素数1〜30のアルコキシである。
【0030】
[16] 式(N)で表されるジアミン、および下記式(I)〜(VII)、(XV)、(a)、および(b)で表される側鎖構造を有さないジアミンの群から選ばれる少なくとも1つの混合物を、テトラカルボン酸二無水物と反応させて得られる、前記[7]〜[13]のいずれか1項に記載のポリアミック酸またはその誘導体。
【化36】

【化37】

式(I)において、Xは−(CH−であり、mは1〜6の整数であり;
式(III)および(V)〜(VII)において、Yは独立して、単結合、−O−、−S−、−S−S−、−SO−、−CO−、−CONH−、−NHCO−、−NH−、−N(CH)−、−N(CH)−(CH−N(CH)−、−C(CH−、−C(CF−、−(CH−、−O−(CH−O−、−S−(CH−S−であり、mは独立して1〜6の整数であり;
式(V)において、ZおよびZは−Hであるが、Yが−NH−、−N(CH)−、−CH−、−C(CH−または−C(CF−であるときには互いに結合して環を形成してもよく;
式(VI)において、環Dはフェニレンまたはシクロヘキシレンであり;
式(XV)において、R33およびR34はそれぞれ独立して炭素数1〜3のアルキルまたはフェニルであり;
は独立してメチレン、フェニレンまたはアルキル置換されたフェニレンであり;
mは1〜10の整数であり;
式(II)〜(VII)において、シクロヘキサン環またはベンゼン環の−Hは独立して、−F、−CH、−CF、−OH、−COOH、−SOH、または−POと置き換えられていてもよく;
式(IV)において、ベンゼン環の−Hはベンジルで置き換えられていてもよく;
式(XVI)において、Aは独立して1価の有機基またはハロゲンであり;
は独立して1価の有機基またはハロゲンであり;
mは0〜3の整数であり;
nは0〜4の整数であり;そして、
式(XVII)において、Lは−H、炭素数1〜4のアルキル、フェニル、またはベンジルである。
【0031】
[17] 側鎖構造を有さないジアミンが、下記の式(IV−1)、(IV−2)、(IV−15)〜(IV−17)、(V−1)〜(V−12)、(V−33)、(V−35)〜(V−37)、(VII−2)、(XV−1)、(XVI−1)、および(XVII−1)で表される化合物から選ばれる少なくとも1つである、前記[16]項に記載のポリアミック酸またはその誘導体。
【化38】

【化39】

【化40】

【化41】

【化42】

【化43】

【化44】

【化45】

【化46】

【化47】

【0032】
[18] 式(N)で表されるジアミン、前記[14]項に記載の式(VIII)および(X)〜(XIII)で表される側鎖構造を有するジアミンの群から選ばれる少なくとも1つ、および前記[16]項に記載の式(I)〜(VII)、(XV)、(XVI)、および(XVII)で表される側鎖構造を有さないジアミンから選ばれる少なくとも1つの混合物を、テトラカルボン酸二無水物と反応させて得られる、前記[7]〜[13]のいずれか1項に記載のポリアミック酸またはその誘導体。
【0033】
[19] 側鎖構造を有するジアミンが、前記[15]項に記載の式(VIII−2)、(VIII−4)〜(VIII−6)、(XII−2)、(XII−4)、および(XII−6)で表されるジアミンの群から選ばれる少なくとも1つであり、側鎖構造を有さないジアミンが、前記[17]項に記載の式(IV−1)、(IV−2)、(IV−15)〜(IV−17)、(V−1)〜(V−12)、(V−33)、(V−35)〜(V−37)、(VII−2)、(XV−1)、(XVI−1)、および(XVII−1)で表される化合物から選ばれる少なくとも1つである、前記[18]項に記載のポリアミック酸またはその誘導体。
【0034】
[20] ジアミンと反応させるテトラカルボン酸二無水物が、下記式(An−1)〜(An−6)で表される化合物から選ばれる少なくとも1つである、前記[7]〜[19]のいずれか1項に記載のポリアミック酸またはその誘導体。
【化48】

式(An−1)、(An−4)および(An−5)において、Xは独立して単結合または−CH−であり;
式(An−2)において、Gは単結合、炭素数1〜20のアルキレン、−CO−、−O−、−S−、−SO−、−C(CH−、または−C(CF−であり;
式(An−2)〜(An−4)において、Yは独立して下記の3価の基の群から選ばれる1つであり;
【化49】

式(An−3)〜(An−5)において、環Aは炭素数3〜10の単環式炭化水素の基または炭素数6〜20の縮合多環式炭化水素の基を表し、この基の任意の水素はメチル、エチルまたはフェニルで置き換えられていてもよく;
環に掛かっている結合手は環を構成する任意の炭素に連結しており、2本の結合手が同一の炭素に連結してもよく;
式(An−6)において、X11は炭素数2〜6のアルキレンであり;
Meはメチルを表し、そして、Phはフェニルを表す。
【0035】
[21] ジアミンと反応させるテトラカルボン酸二無水物が、芳香族テトラカルボン酸二無水物か、または芳香族テトラカルボン酸二無水物を含むテトラカルボン酸二無水物の混合物である、前記[20]項に記載のポリアミック酸またはその誘導体。
【0036】
[22] 芳香族テトラカルボン酸二無水物が下記の式(1)、(2)、(5)〜(7)および(17)で表される化合物から選ばれる少なくとも1つである、前記[21]項に記載のポリアミック酸またはその誘導体。
【化50】

【0037】
[23] 芳香族テトラカルボン酸二無水物が請求項22に記載の式(1)で表される化合物である、前記[21]項に記載のポリアミック酸またはその誘導体。
【0038】
[24] ジアミンと反応させるテトラカルボン酸二無水物が、脂環式テトラカルボン酸二無水物および脂肪族テトラカルボン酸二無水物の少なくとも1つか、または脂環式テトラカルボン酸二無水物および脂肪族テトラカルボン酸二無水物の少なくとも1つを含むテトラカルボン酸二無水物の混合物である、前記[20]項に記載のポリアミック酸またはその誘導体。
【0039】
[25] 脂環式テトラカルボン酸二無水物および/または脂肪族テトラカルボン酸二無水物が下記の式(19)、(23)、(25)、(35)〜(39)、(44)、および(49)で表される化合物から選ばれる少なくとも1つである、前記[24]項に記載のポリアミック酸またはその誘導体。
【化51】

【0040】
[26] 脂環式テトラカルボン酸二無水物および/または脂肪族テトラカルボン酸二無水物が、請求項25に記載の式(19)、(23)、(37)、および(49)で表される化合物から選ばれる少なくとも1つである、前記[24]項に記載のポリアミック酸またはその誘導体。
【0041】
[27] 前記[7]〜[26]のいずれか1項に記載のポリアミック酸またはその誘導体を含有する液晶配向剤。
【0042】
[28] アルケニル置換ナジイミド化合物、ラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物、オキサジン化合物、オキサゾリン化合物、およびエポキシ化合物からなる化合物の群から選ばれる少なくとも1つをさらに含有する、前記[27]項に記載の液晶配向剤。
【0043】
[29] アルケニル置換ナジイミド化合物が、ビス{4−(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)フェニル}メタン、N,N’−m−キシリレン−ビス(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)、およびN,N’−ヘキサメチレン−ビス(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)からなる化合物の群から選ばれる少なくとも1つである、前記[28]項に記載の液晶配向剤。
【0044】
[30] アルケニル置換ナジイミド化合物が、ビス{4−(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)フェニル}メタンである、前期[28]項に記載の液晶配向剤。
【0045】
[31] ラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物が、N,N’−エチレンビスアクリルアミド、N,N’−(1,2−ジヒドロキシエチレン)ビスアクリルアミド、エチレンビスアクリレート、および4,4’−メチレンビス(N,N―ジヒドロキシエチレンアクリレートアニリン)からなる化合物の群から選ばれる少なくとも1つである、前記[28]項に記載の液晶配向剤。
【0046】
[32] ラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物が、4,4’−メチレンビス(N,N―ジヒドロキシエチレンアクリレートアニリン)である、前記[28]項に記載の液晶配向剤。
【0047】
[33] エポキシ化合物が、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2−[4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル]−2−[4−[1,1−ビス[4−([2,3−エポキシプロポキシ]フェニル)]エチル]フェニル]プロパン、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート、N−フェニルマレイミド−グリシジルメタクリレート共重合体、および2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランからなる化合物の群から選ばれる少なくとも1つである、前記[28]項に記載の液晶配向剤。
【0048】
[34] エポキシ化合物が、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランである、前記[28]項に記載の液晶配向剤。
【0049】
[35] 前記[27]〜[34]のいずれか1項に記載の液晶配向剤による塗膜が加熱されて形成される液晶配向膜。
【0050】
[36] 一対の基板、この基板間に形成される液晶層、この液晶層に電圧を印加する電極、および液晶層を形成する液晶分子を所定の方向に配向させる液晶配向膜を有する液晶表示素子において、液晶配向膜が前記[35]項に記載の液晶配向膜である、液晶表示素子。
【発明の効果】
【0051】
本発明の好ましい態様に掛かるジアミンをテトラカルボン酸二無水物と反応させて得たポリアミック酸またはその誘導体を含有する組成物を液晶配向剤に用いることによって、その液晶配向剤によって形成された液晶配向膜を有する液晶表示素子は低いイオン密度を示し、かつ、その長期信頼性にも優れている。
【発明を実施するための形態】
【0052】
本明細書においては、以降、例えば「式(NA−1)で表される化合物」のことを「化合物(NA−1)」と称することがある。「式(NA−3)で表される化合物」のことを「化合物(NA−3)」と称することがある。その他の式記号、式番号についても同様に扱われる。また、例えば「式(VIII−2)で表される化合物」がジアミンである場合に、これを「ジアミン(VIII−2)」と称することがある。その他の式記号、式番号についても同様に扱われる。例えば「式(1)で表される化合物」がテトラカルボン酸二無水物である場合に、これを「酸無水物(1)」と称することがある。その他の式番号についても同様に扱われる。
【0053】
化学構造式を説明する際に用いる用語「任意の」は、位置だけでなく個数についても任意であることを意味する。そして、例えば、「任意のAはB、CまたはDで置き換えられてもよい」という表現は、少なくとも1つのAがBで置き換えられてもよく、少なくとも1つのAがCで置き換えられてもよく、少なくとも1つのAがDで置き換えられてもよく、そして更に複数のAがB〜Dの少なくとも2つで置き換えられてもよいことを意味する。但し、任意の−CH−が他の基で置き換えられてもよいとするとき、連続する複数の−CH−が−O−で置き換えられることは含まれない。Phはフェニルを意味し、Meはメチルを意味する。
【0054】
化学構造式において、文字(例えばA、B)を円または六角形で囲った基は環構造の基(環Aまたは環B)であることを意味する。環を構成する炭素のいずれか1つと明確に結合しておらず、環に掛かっている結合手は環を構成する任意の炭素原子に連結することを意味する。この環が、例えばシクロヘキサン環である場合、化学的に問題がない限りにおいて2つの結合手が1つの炭素原子と連結していてもよい。複数の式において同じ記号が用いられている場合は、その記号で示される環、結合基または末端基が同じ定義範囲を有することを意味するが、すべての式において同時にその定義範囲内の同じ基でなければならないことを意味しない。複数の式において同じ基であってもよいし、式ごとに異なる基であってもよい。
【0055】
[本発明のジアミン]
本発明のジアミンは下記の式(N)で表される、分子内2箇所にジフェニルアミンの構造を有するジアミン化合物である。ジアミン(N)とテトラカルボン酸二無水物とを反応させることにより得られるポリアミック酸またはその誘導体は、液晶配向膜を形成するための液晶配向剤として用いられる。
【化52】

式(N)において、Aは独立して−CHまたは−OCHであり、a1は独立して0〜2の整数である。2つのアミノ基は独立してフェニルの任意の位置に結合してよいが、−NH−と連結する炭素を基準にしてメタ位、パラ位が好ましく、パラ位がより好ましい。そして、Xは下記の式(A)、(B)、(C)、および(D)で表される2価の基の群から選ばれる1つである。
【0056】
【化53】

式(A)において、Aは独立して−CHまたは−OCHであり、a2は独立して0〜2の整数であり、そして、nは2〜10の整数である。
【化54】

式(B)において、Aは、単結合、−O−、−COO−、−OCO−、−CO−、−CONH−、または−(CH−であり、mは1〜6の整数であり、Rは、ステロイド骨格を有する基または下記式(IX)で表される基である。
【化55】

式(IX)において、AおよびAは独立して、単結合、−O−、−COO−、−OCO−、−CONH−、−CH=CH−、または炭素数1〜12のアルキレンである。RおよびRは独立して、−Fまたは−CHであり、環Sは独立して1,4−フェニレン、1,4−シクロヘキシレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、ピリジン−2,5−ジイル、ナフタレン−1,5−ジイル、ナフタレン−2,7−ジイル、またはアントラセン−9,10−ジイルである。Rは−H、−F、炭素数1〜30のアルキル、炭素数1〜30のフッ素置換アルキル、炭素数1〜30のアルコキシ、−CN、−OCHF、−OCHF、または−OCFである。aおよびbは独立して0〜4の整数であり、c、dおよびeは独立して0〜3の整数であり、fおよびgは独立して0〜2の整数であり、そして、c+d+e≧1である。
【0057】
【化56】

式(C)において、Rは−Hまたは炭素数1〜30のアルキルであり、このアルキルの任意の−CH−は、−O−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよい。Aは単結合または炭素数1〜3のアルキレンであり、環Tは1,4−フェニレンまたは1,4−シクロヘキシレンである。hは0または1であるが、後述する液晶配向膜のプレティルトを高くする効果を得るには、hは1の方が好ましい。Aは独立して−CHまたは−OCHであり、そして、a2は独立して0〜2の整数である。
【0058】
【化57】

式(D)において、
10は炭素数6〜22のアルキルであり、R11は炭素数1〜22のアルキルである。Aは独立して−CHまたは−OCHであり、そして、a2は独立して0〜2の整数である。
【0059】
[本発明のポリアミック酸またはその誘導体]
本発明のポリアミック酸は、本発明のジアミン(N)の少なくとも1つ、または本発明のジアミン(N)の少なくとも1つとそれ以外のジアミンとの混合物とを、テトラカルボン酸二無水物と反応させることによって得られる。このポリアミック酸は、ポリアミック酸の誘導体であってもよく、ポリアミック酸とその誘導体の混合物であってもよい。
【0060】
ポリアミック酸の誘導体としては、1)ポリアミック酸を完全に脱水閉環反応させて得られるポリイミド、2)ポリアミック酸を部分的に脱水閉環反応させて得られる部分イミド化ポリアミック酸、3)ポリアミック酸を部分的に脱水閉環反応させて得られる部分イソイミド化ポリアミック酸、4)ポリアミック酸エステル、5)テトラカルボン酸二無水物の一部をジカルボン酸に置き換えることによって得られるポリアミック酸−ポリアミド共重合体、6)このポリアミック酸−ポリアミド共重合体の一部もしくは全部を脱水閉環反応させて得られるポリアミドイミドが挙げられる。これらのうちポリイミドおよび部分イミド化ポリアミック酸が好ましく、ポリイミドがより好ましい。以後本明細書では、実施例等を除いて、ポリアミック酸およびその誘導体の総称として「ポリアミック酸」を用いる。
【0061】
[ジアミン(N)]
本発明のポリアミック酸の原料として用いられるジアミン(N)は、より詳しくは、下記の式(NA)、(NB)、(NC)、または(ND)で表される化合物である。
【0062】
ジアミン(NA)は下記の式で表される。
【化58】

式(NA)において、Aは独立して−CHまたは−OCHであり、a1は独立して0〜2の整数である。Aは独立して−CHまたは−OCHであり、a2は独立して0〜2の整数である。nは1〜10の整数である。2つのアミノ基は独立してフェニルの任意の位置に結合してよいが、−NH−と連結する炭素を基準にしてメタ位、パラ位が好ましく、パラ位がより好ましい。
【0063】
ジアミン(NA)の具体例は、下記の式(NA−1)〜(NA−7)で表される化合物であり、式(NA−1)および(NA−3)で表される化合物が好ましい。
【化59】

【0064】
ジアミン(NB)は下記の式で表される。
【化60】

式(NB)において、Aは、単結合、−O−、−COO−、−OCO−、−CO−、−CONH−、または(CH−であり、mは1〜6の整数である。Aは独立して−CHまたは−OCHであり、a1は独立して0〜2の整数である。Rは、ステロイド骨格を有する基または下記式(IX)で表される基である。
【化61】

式(IX)において、AおよびAは独立して、単結合、−O−、−COO−、−OCO−、−CONH−、−CH=CH−、または炭素数1〜12のアルキレンである。RおよびRは独立して、−FまたはCHである。環Sは独立して1,4−フェニレン、1,4−シクロヘキシレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、ピリジン−2,5−ジイル、ナフタレン−1,5−ジイル、ナフタレン−2,7−ジイル、またはアントラセン−9,10−ジイルである。Rは−H、−F、炭素数1〜30のアルキル、炭素数1〜30のフッ素置換アルキル、炭素数1〜30のアルコキシ、−CN、−OCHF、−OCHF、または−OCFである。aおよびbは独立して0〜4の整数であり、c、dおよびeは独立して0〜3の整数であり、fおよびgは独立して0〜2の整数であり、そして、c+d+e≧1である。2つのアミノ基は独立してフェニルの任意の位置に結合してよいが、−NH−と連結する炭素を基準にしてメタ位、パラ位が好ましく、パラ位がより好ましい。
【0065】
ジアミン(NB)の具体例は、下記の式(NB−1)〜(NB−4)で表される化合物である。
【化62】

【0066】
ジアミン(NC)は下記の式で表される。
【化63】

式(NC)において、Rは−Hまたは炭素数1〜30のアルキルであり、このアルキルの任意の−CH−は、−O−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよい。Aは単結合または炭素数1〜3のアルキレンであり、環Tは1,4−フェニレンまたは1,4−シクロヘキシレンである。hは0または1であるが、後述する液晶配向膜のプレティルトを高くする効果を得るには、hは1の方が好ましい。Aは独立して−CHまたは−OCHであり、a1は独立して0〜2の整数である。Aは独立して−CHまたは−OCHであり、そして、a2は独立して0〜2の整数である。2つのアミノ基は独立してフェニルの任意の位置に結合してよいが、−NH−と連結する炭素を基準にしてメタ位、パラ位が好ましく、パラ位がより好ましい。
【0067】
ジアミン(NC)の具体例は、下記の式(NC−1)〜(NC−6)で表される化合物である。
【化64】

【化65】

【0068】
ジアミン(ND)は下記の式で表される。
【化66】

式(ND)において、R10は炭素数6〜22のアルキルであり、R11は炭素数1〜22のアルキルである。Aは独立して−CHまたは−OCHであり、a1は独立して0〜2の整数である。Aは独立して−CHまたは−OCHであり、a2は独立して0〜2の整数である。2つのアミノ基は独立してフェニルの任意の位置に結合してよいが、−NH−と連結する炭素を基準にしてメタ位、パラ位が好ましく、パラ位がより好ましい。
【0069】
ジアミン(ND)の具体例は、下記の式(ND−1)および(ND−2)で表される化合物である。
【化67】

【0070】
本発明のポリアミック酸を製造するにあたり、原料であるジアミンは、前記のジアミン(NA)、(NB)、(NC)、および(ND)から選択される少なくとも1つのジアミンを用いてもよく、これらのジアミンとそれ以外のジアミンの少なくとも1つとの混合物として用いてもよい。ジアミン(N)の群から選択されるジアミンの使用割合は、ポリアミック酸製造に用いるジアミン原料に占める割合として1〜100モル%であり、10〜100モル%であることが好ましく、30〜100モル%であることがより好ましい。ジアミン(N)をこのような使用割合にすることによって、得られたポリアミック酸を含有する本発明の液晶配向剤によって形成された液晶配向膜を有する液晶表示素子は低いイオン密度を示し、またその長期信頼性にも優れる。
【0071】
[ジアミン(N)以外のジアミン]
本発明に用いられるジアミン(N)以外のジアミンはその構造よって2種類に分けることができる。即ち、2つのアミノ基を結ぶ骨格を主鎖として見たときに、主鎖から分岐する基、即ち側鎖基を有するジアミンと側鎖基を持たないジアミンである。側鎖基を有するジアミンをテトラカルボン酸二無水物と反応させることによって、ポリマーの主鎖に対して多数の側鎖基を有するポリアミック酸が得られる。このようなポリマー主鎖に対して側鎖基を有するポリアミック酸を使用するとき、このポリマーを含有する液晶配向剤から形成される液晶配向膜は、液晶表示素子におけるプレチルト角を大きくすることができる。この側鎖基はプレチルト角を大きくする効果を有する基である。このような効果を有する側鎖基は炭素数3以上の基である必要があり、具体的な例として炭素数3以上のアルキル、炭素数3以上のアルコキシ、炭素数3以上のアルコキシアルキル、およびステロイド骨格を有する基を挙げることができる。1つ以上の環を有する基であって、その末端の環が置換基として炭素数1以上のアルキル、炭素数1以上のアルコキシおよび炭素数2以上のアルコキシアルキルのいずれか1つを有する基も側鎖基としての効果を有する。本発明における側鎖基はこれらの基から選ばれる。以下の説明では、このような側鎖基を有するジアミンを側鎖型ジアミンと称することがある。そして、このような側鎖基を持たないジアミンを非側鎖型ジアミンと称することがある。
【0072】
側鎖型ジアミンと非側鎖型ジアミンを適切に使い分けることにより、先に挙げた種々の液晶表示素子のそれぞれに必要なプレチルト角に対応することができる。液晶層を狭持する一対の基板の対向する電極間に電圧が印加される縦電界方式の液晶表示素子では比較的大きなプレチルト角が必要となる。液晶分子を基板面に対してほぼ垂直に配向させるVA方式においては側鎖型ジアミンが主に用いられる。TN方式やSTN方式ではプレチルト角を1度からおよそ30度の間でコントロールするため、側鎖型ジアミンと非側鎖型ジアミンが併用される。側鎖型ジアミンと非側鎖型ジアミンの配合比率は、液晶表示素子毎に要求されるプレチルト角の大きさに応じて決めればよい。側鎖基を適当に選ぶことにより、側鎖型ジアミンのみを用いて対応することも可能である。液晶層を狭持する一対の基板の片方のみに形成された電極間に電圧が印加される、IPS方式に代表される横電界方式ではプレチルト角が小さく、高い液晶配向性が必要となるため、非側鎖型ジアミンの少なくとも1つを用いればよい。このように、本発明の液晶配向剤は、あらゆる種類の液晶表示素子に適用することができる。
【0073】
このような構造上の特徴に基づく側鎖型、非側鎖型の分類はジアミン(N)に関しても同様の扱いがなされる。本発明のジアミン(N)にも、側鎖型ジアミンと非側鎖型ジアミンがある。従って、例えば側鎖型のジアミン(N)、非側鎖型のジアミン(N)、側鎖型のその他ジアミン、および非側鎖型のその他ジアミンを併用する場合、側鎖型ジアミンの使用割合を論ずるときは、使用するジアミン全体の何モル%が側鎖型ジアミンであるかが議論の対象となる。
【0074】
[側鎖型ジアミン]
側鎖型ジアミンの側鎖基の例は次の通りである。
まず最初に、アルキル、アルキルオキシ、アルキルオキシアルキル、アルキルカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、アルキルオキシカルボニル、アルキルアミノカルボニル、アルケニル、アルケニルオキシ、アルケニルカルボニル、アルケニルカルボニルオキシ、アルケニルオキシカルボニル、アルケニルアミノカルボニル、アルキニル、アルキニルオキシ、アルキニルカルボニル、アルキニルカルボニルオキシ、アルキニルオキシカルボニル、アルキニルアミノカルボニル等を挙げることができる。これらの基におけるアルキル、アルケニルおよびアルキニルは、いずれも炭素数3以上の基である。但し、アルキルオキシアルキルにおいては、基全体で炭素数3以上であればよい。これらの基は直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。
【0075】
側鎖基の例は次に、末端の環が置換基として炭素数1以上のアルキル、炭素数1以上のアルコキシまたは炭素数2以上のアルコキシアルキルを有することを条件に、フェニル、フェニルアルキル、フェニルアルキルオキシ、フェニルオキシ、フェニルカルボニル、フェニルカルボニルオキシ、フェニルオキシカルボニル、フェニルアミノカルボニル、フェニルシクロヘキシルオキシ、炭素数3以上のシクロアルキル、シクロヘキシルアルキル、シクロヘキシルオキシ、シクロヘキシルオキシカルボニル、シクロヘキシルフェニル、シクロヘキシルフェニルアルキル、シクロヘキシルフェニルオキシ、ビス(シクロヘキシル)オキシ、ビス(シクロヘキシル)アルキル、ビス(シクロヘキシル)フェニル、ビス(シクロヘキシル)フェニルアルキル、ビス(シクロヘキシル)オキシカルボニル、ビス(シクロヘキシル)フェニルオキシカルボニル、およびシクロヘキシルビス(フェニル)オキシカルボニル等の環構造の基を挙げることができる。
【0076】
側鎖基の例はさらに、2個以上のベンゼン環を有する基、2個以上のシクロヘキサン環を有する基、またはベンゼン環およびシクロヘキサン環で構成される2環以上の基であって、結合基が独立して単結合、−O−、−COO−、−OCO−、−CONH−もしくは炭素数1〜3のアルキレンであり、末端の環が置換基として炭素数1以上のアルキル、炭素数1以上のフッ素置換アルキル、炭素数1以上のアルコキシ、または炭素数2以上のアルコキシアルキルを有する環集合基を挙げることができる。ステロイド骨格を有する基も側鎖基として有効である。
【0077】
側鎖型ジアミンの好ましい例は、式(VIII)および式(X)〜式(XIII)で表されるジアミンである。ジアミン(VIII)は以下のように定義される。
【化68】

式(VIII)において、Aは単結合、−O−、−COO−、−OCO−、−CO−、−CONH−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、または−(CH−であり、mは1〜6の整数である。
の好ましい例は単結合、−O−、−COO−、−OCO−、−CHO−、および炭素数1〜3のアルキレンであり、特に好ましい例は単結合、−O−、−COO−、−OCO−、−CHO−、−CH−および−CHCH−である。
【0078】
はステロイド骨格を有する基または式(IX)で表される基である。
【化69】

式(IX)において、AおよびAは独立して、単結合、−O−、−COO−、−OCO−、−CONH−、−CH=CH−、または炭素数1〜12のアルキレンである。好ましいAおよびAは独立して単結合または炭素数1〜4のアルキレンである。RおよびRは独立して、−Fまたは−CHである。環Sは独立して1,4−フェニレン、1,4−シクロヘキシレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、ピリジン−2,5−ジイル、ナフタレン−1,5−ジイル、ナフタレン−2,7−ジイルまたはアントラセン−9,10−ジイルである。Rは−F、−OH、炭素数1〜30のアルキル、炭素数1〜30のフッ素置換アルキル、炭素数1〜30のアルコキシ、−CN、−OCHF、−OCHF、または−OCFであり、この炭素数1〜30のアルキルの任意の−CH−は下記式(s)で表される2価の基で置き換えられていてもよく、aおよびbは独立して0〜4の整数であり、c、dおよびeは独立して0〜3の整数であり、fおよびgは独立して0〜2の整数であり、好ましくは0である。そして、c+d+e≧1である。
【化70】

式(s)において、R33およびR34は独立して炭素数1〜3のアルキルであり、mは1〜6の整数である。Rの好ましい例は炭素数1〜30のアルキルおよび炭素数1〜30のアルコキシである。
【0079】
の好ましい例は炭素数3〜30のアルキル、炭素数1〜30のアルキルで置換されたフェニル、炭素数1〜30のアルコキシで置換されたフェニルである。2つのアミノ基がベンゼン環と結合する位置は、Aの結合位置を1位とするとき、3位と5位または2位と5位であることが好ましい。
【0080】
ジアミン(X)および(XI)は以下のように定義される。
【化71】

【化72】

【0081】
式(X)および式(XI)において、Rは独立して−Hまたは−CHである。Rは−H、炭素数1〜20のアルキルまたは炭素数2〜20のアルケニルである。RおよびRはそれぞれ独立して炭素数1〜20のアルキルまたはフェニルである。Aは独立して単結合、−CO−または−CH−である。式(X)において、2つの「NH−Ph−A−O−」の一方はステロイド骨格の3位に結合し、もう一方は6位に結合していることが好ましい。また、2つのアミノ基のベンゼン環との結合位置は、いずれもAの結合位置に対して、メタ位またはパラ位であることが好ましい。式(XI)において、2つの「NH−(R−)Ph−A−O−」のベンゼン環との結合位置は、いずれもステロイド骨格が結合している炭素に対してメタ位またはパラ位であることが好ましい。また、2つのアミノ基のベンゼン環との結合位置は、いずれもAの結合位置に対して、メタ位またはパラ位であることが好ましい。
【0082】
ジアミン(XII)および(XIII)は以下のように定義される。
【化73】

【化74】

【0083】
式(XII)において、Rは炭素数1〜30のアルキルであり、このアルキルの任意の−CH−は、−O−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよい。Aは単結合または炭素数1〜3のアルキレンである。環Tは1,4−フェニレンまたは1,4−シクロヘキシレンである。hは0または1である。式(XIII)において、R10は炭素数6〜22のアルキルであり、R11は炭素数1〜22のアルキルである。式(XII)および式(XIII)において、Aは独立して−O−または炭素数1〜6のアルキレンである。式(XII)および式(XIII)共に、2つのアミノ基のベンゼン環との結合位置は、独立してAの結合位置に対してメタ位またはパラ位であることが好ましい。
【0084】
[側鎖型ジアミンの具体例]
ジアミン(VIII)の具体例を以下に示す。
【化75】

式(VIII−1)〜(VIII−11)において、R23は炭素数1〜30のアルキルまたは炭素数1〜30のアルコキシであり、好ましくは炭素数5〜25のアルキルまたは炭素数5〜25のアルコキシである。R24は炭素数1〜30のアルキルまたは炭素数1〜30のアルコキシであり、好ましくは炭素数3〜25のアルキルまたは炭素数3〜25のアルコキシである。
【0085】
【化76】

式(VIII−12)〜(VIII−17)において、R25は炭素数4〜30のアルキルであり、好ましくは炭素数6〜25のアルキルである。R26は炭素数6〜30のアルキルであり、好ましくは炭素数8〜25のアルキルである。
【0086】
【化77】

【0087】
【化78】

【0088】
式(VIII−18)〜(VIII−37)において、R27は炭素数1〜30のアルキルまたは炭素数1〜30のアルコキシであり、好ましくは炭素数3〜25のアルキルまたは炭素数3〜25のアルコキシである。R28は−F、炭素数1〜30のアルキル、炭素数1〜30のアルコキシ、−CN、−OCHF、−OCHFまたは−OCFであり、好ましくは炭素数3〜25のアルキル、または炭素数3〜25のアルコキシである。
【0089】
【化79】

【0090】
例示した式(VIII−1)〜(VIII−43)で表されるジアミンの中では、ジアミン(VIII−1)〜(VIII−11)が好ましく、ジアミン(VIII−2)および(VIII−4)〜(VIII−6)がより好ましい。
【0091】
ジアミン(X)の具体例を以下に示す。
【化80】

【0092】
ジアミン(XI)の具体例を以下に示す。
【化81】

【0093】
【化82】

【0094】
ジアミン(XII)の具体例を以下に示す。
【化83】

【0095】
【化84】

【0096】
式(XII−1)〜(XII−3)において、R29は炭素数1〜30のアルキルまたは炭素数1〜30のアルコキシであり、好ましくは炭素数3〜30のアルキルまたは炭素数3〜30のアルコキシである。式(XII−4)〜(XII−8)において、R30は炭素数1〜30のアルキルまたは炭素数1〜30のアルコキシであり、好ましくは炭素数3〜30のアルキルまたは炭素数3〜30のアルコキシである。
【0097】
ジアミン(XIII)の具体例を以下に示す。
【化85】

式(XIII−1)〜(XIII−3)において、R31は炭素数6〜22のアルキルであり、好ましくは炭素数6〜20のアルキルである。R32は炭素数1〜22のアルキルであり、好ましくは炭素数1〜10のアルキルである。
【0098】
例示した式(X−1)〜(X−4)、(XI−1)〜(XI−8)、(XII−1)〜(XII−8)、および(XIII−1)〜(XIII−3)で表されるジアミンの中では、ジアミン(VIII−2)、(VIII−4)〜(VIII−6)、(XII−2)、(XII−4)、および(XII−6)が好ましい。
【0099】
本発明の液晶配向膜を用いる液晶表示素子が大きなプレチルト角を必要とする場合には、本発明の液晶配向剤に用いるポリマーを製造するに際して、側鎖型ジアミンをジアミン総量の1〜90モル%用いることが好ましく、5〜70モル%用いることがより好ましい。
【0100】
[非側鎖型ジアミン]
側鎖基を持たないジアミン、即ち非側鎖型ジアミンの好ましい例として、式(I)〜(VII)、(XV)、(XVI)、および(XVII)で表される化合物が挙げられる。
【化86】

【化87】

【0101】
式(I)において、Xは炭素数2〜12の直鎖アルキレンである。式(III)、(V)、(VI)、および(VII)において、Yは独立して単結合、−O−、−CO−、−NH−、−N(CH)−、−CONH−、−NHCO−、−C(CH−、−C(CF−、−O−(CH−O−、−S−、−S−S−、−SO−、−S−(CH−S−または炭素数1〜12の直鎖アルキレンであり、tは1〜12の整数である。式(V)において、ZおよびZは−Hであるが、Yが−NH−、−N(CH)−、−CH−、−C(CH−または−C(CF−であるときには互いに結合して環を形成してもよい。式(VI)において、環Dはフェニレンまたはシクロヘキシレンである。式(XV)において、R33およびR34はそれぞれ独立して炭素数1〜3のアルキルまたはフェニルである。Aは独立して炭素数1〜6のアルキレン、フェニレンまたはアルキル置換されたフェニレンである。mは1〜10の整数である。上記の各式において、シクロヘキサン環またはベンゼン環の任意の−Hは、−F、−CH、−OH、−COOH、−SOH、−PO、ベンジルまたはヒドロキシベンジルで置き換えられていてもよい。式(XVI)において、Aは独立して1価の有機基であり、Aは独立して1価の有機基であり、mは0〜3の整数であり、nは0〜4の整数である。式(XVII)において、Lは−H、炭素数1〜4のアルキル、フェニル、またはベンジルである。
【0102】
[非側鎖型ジアミンの具体例]
ジアミン(I)の例を以下に示す。
【化88】

【0103】
ジアミン(II)の具体例を以下に示す。
【化89】

【0104】
ジアミン(III)の具体例を以下に示す。
【化90】

【0105】
ジアミン(IV)の具体例を以下に示す。
【化91】

【0106】
ジアミン(V)の具体例を以下に示す。
【化92】

【0107】
【化93】

【0108】
【化94】

【0109】
ジアミン(VI)の具体例を以下に示す。
【化95】

【0110】
ジアミン(VII)の具体例を次に示す。
【化96】

【0111】
ジアミン(XV)の具体例を次に示す。
【化97】

【0112】
前記式(XVI)で表されるジアミンとしては、例えば下記式(XVI−1)〜(XVI−13)で表されるジアミンが挙げられる。その中で、式(XVI−1)および(XVI−2)で表わされるジアミンを用いることが好ましい。
【化98】

【0113】
前記式(XVII)で表されるジアミンとしては、例えば下記式(XVII−1)〜(XVII−3)で表されるジアミンが挙げられる。その中で、式(XVII−1)で表わされるジアミンを用いることが好ましい。
【化99】

【0114】
上記の非側鎖型ジアミンの内、式(IV−1)〜(IV−5)、(IV−15)〜(IV−17)、(V−1)〜(V−12)、(V−26)、(V−27)、(V−31)、(V−33)、(V−35)〜(V−37)、(VI−1)、(VI−2)、(VI−6)、(VI−7)、(VII−1)〜(VII−5)、(XV−1)、(XVI−1)、(XVI−2)、および(XVII−1)で表されるジアミンが好ましく、式(IV−1)、(IV−2)、(IV−15)〜(IV−17)、(V−1)〜(V−12)、(V−33)、(V−35)〜(V−37)、(VI−7)、(VII−2)、(XV−1)、(XVI−1)、(XVI−2)、および(XVII−1)で表されるジアミンがより好ましい。
【0115】
このような非側鎖型ジアミンは液晶表示素子のイオン密度を低下させる等、電気特性を改善する効果がある。非側鎖型ジアミンは本発明の液晶配向剤に用いるポリマーを製造するに際して、ジアミン総量の1〜98モル%用いることが好ましく、10〜95モル%用いることがより好ましい。
【0116】
[その他のジアミン]
本発明で用いるジアミンには、これまで説明したジアミン(I)〜(VIII)、ジアミン(X)〜(XIII)およびジアミン(XV)以外のジアミンも用いることができる。このようなジアミンとしては、例えば、フルオレン環を有するフルオレン系ジアミンおよびジアミン(VIII)〜ジアミン(XII)以外の側鎖型ジアミンが挙げられる。
【0117】
ジアミン(VIII)〜ジアミン(XII)以外の側鎖型ジアミンの例は下記のジアミン(1')〜(8')である。
【化100】

【化101】

【化102】

これらの式において、R35およびR36はそれぞれ独立して炭素数3〜30のアルキル基である。これらのジアミンは、本発明の液晶配向剤に用いるポリアミック酸を製造する際に、本発明の効果が損なわれない範囲で用いることができる。
【0118】
[ポリアミック酸の製造]
本発明のポリアミック酸を製造する際には、常法に準じて等モル量のテトラカルボン酸二無水物とジアミンを有機溶剤中で混合する。このとき塩が沈殿するが、反応温度を通常70〜200℃、好ましくは70〜150℃、より好ましくは70〜100℃にして、混合物中の沈殿物が溶解し、均一の溶液になるまで反応を行った後、溶液の温度を室温に下げて反応を続ける。
【0119】
本発明のポリアミック酸を製造する際には、ジアミンにモノアミンを添加してもよい。モノアミンを添加することによって、ポリアミック酸を生成する際の重合反応のターミネーションを起こして、それ以上の重合反応の進行を抑えることができる。それによって得られるポリアミック酸の分子量を容易に制御することができ、その結果、例えば本発明の効果が損われることなく液晶配向剤の塗布特性を改善することができる。モノアミンの添加割合は、目的とするポリアミック酸の分子量を考慮して適宜調整すればよい。本発明の効果が損なわれなければ、2種以上のモノアミンを添加してもよい。モノアミンの例はアニリン、4−ヒドロキシアニリン、シクロヘキシルアミン、n−ブチルアミン、n−ペンチルアミン、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン、n−ノニルアミン、n−デシルアミン、n−ウンデシルアミン、n−ドデシルアミン、n−トリデシルアミン、n−テトラデシルアミン、n−ペンタデシルアミン、n−ヘキサデシルアミン、n−ヘプタデシルアミン、n−オクタデシルアミン、およびn−エイコシルアミンである。
【0120】
本発明では、ジアミンをテトラカルボン酸二無水物と反応させてポリアミック酸を得るに際して、前記のようにジアミン(N)の群から選択されるジアミンとそれ以外のジアミンとの混合物を用いることができる。このとき、それ以外のジアミンの好ましい例の1つは、ジアミン(VIII)およびジアミン(X)〜ジアミン(XIII)の群から選ばれる側鎖型ジアミンの少なくとも1つである。それ以外のジアミンのもう1つの好ましい例は、ジアミン(VIII)およびジアミン(X)〜ジアミン(XIII)の群から選ばれる側鎖型ジアミンの少なくとも1つと、ジアミン(I)〜ジアミン(VII)およびジアミン(XV)の群から選ばれる非側鎖型ジアミンの少なくとも1つとの混合物である。前記の[14]〜[19]項はジアミン(N)の群から選択されるジアミン、側鎖型ジアミンおよび非側鎖型ジアミンの組み合わせの好ましい例である。
【0121】
[ポリアミック酸の混合物]
本発明では、上記のように混合ジアミンをテトラカルボン酸と反応させて得られたポリアミック酸をポリマー成分としてもよいし、原料の異なるポリアミック酸の混合物をポリマー成分としてもよい。ポリアミック酸の混合物は少なくとも2つのポリアミック酸で構成される。そのポリアミック酸の1つは、例えばジアミン(N)の群から選択されるジアミンの少なくとも1つと、ジアミン(VIII)およびジアミン(X)〜ジアミン(XIII)の群から選ばれる側鎖型ジアミンの少なくとも1つとの混合物を、テトラカルボン酸二無水物と反応させて得られるポリアミック酸でもよく、またはジアミン(N)の群から選択されるジアミンの少なくとも1つ、ジアミン(VIII)およびジアミン(X)〜ジアミン(XIII)の群から選ばれる側鎖型ジアミンの少なくとも1つ、およびジアミン(I)〜ジアミン(VII)およびジアミン(XV)の群から選ばれる非側鎖型ジアミンの少なくとも1つの混合物を、テトラカルボン酸二無水物と反応させて得られるポリアミック酸でもよい。もう1つのポリアミック酸は、例えば前記の非側鎖型ジアミンの少なくとも1つとテトラカルボン酸二無水物と反応させて得られるポリアミック酸でもよく、またはこの非側鎖型ジアミンの少なくとも1つと、ジアミン(N)の群から選択されるジアミンの少なくとも1つとの混合物を、テトラカルボン酸二無水物と反応させて得られるポリアミック酸でもよい。ポリアミック酸の混合物の好ましい例の1つは、上記2種類のポリアミック酸の混合物である。
【0122】
また、ポリアミック酸の混合物として用いられるポリアミック酸の1つは、例えばジアミン(N)の群から選択されるジアミンの少なくとも1つと、ジアミン(I)〜ジアミン(VII)およびジアミン(XV)の群から選ばれる非側鎖型ジアミンの少なくとも1つとの混合物を、テトラカルボン酸二無水物と反応させて得られるポリアミック酸でもよい。もう1つのポリアミック酸は、例えばジアミン(VIII)およびジアミン(X)〜ジアミン(XIII)の群から選ばれる側鎖型ジアミンの少なくとも1つを、テトラカルボン酸二無水物と反応させて得られるポリアミック酸でもよく、またはこの側鎖型ジアミンの少なくとも1つと、前記の非側鎖型ジアミンの少なくとも1つとの混合物を、テトラカルボン酸二無水物と反応させて得られるポリアミック酸でもよい。ポリアミック酸の混合物の好ましい例のもう1つは、上記2種類のポリアミック酸の混合物である。
【0123】
[テトラカルボン酸二無水物]
本発明においてジアミンと反応させるテトラカルボン酸二無水物は、芳香族テトラカルボン酸二無水物、脂環式テトラカルボン酸二無水物および脂肪族テトラカルボン酸二無水物に大別される。本発明ではテトラカルボン酸二無水物は芳香族テトラカルボン酸の少なくとも1つを用いるか、または、芳香族テトラカルボン酸の少なくとも1つと芳香族以外のテトラカルボン酸二無水物の少なくとも1つの混合物として用いるのが好ましい。
【0124】
本発明において芳香族テトラカルボン酸二無水物とは、2つの−CO−O−CO−の少なくとも1つが芳香族化合物に結合する化合物である。芳香族テトラカルボン酸二無水物の例を以下に示す。
【化103】

【化104】

【化105】

【化106】

【化107】

【化108】

【化109】

【0125】
上記の芳香族テトラカルボン酸二無水物のうち、酸無水物(1)、(2)、(5)〜(7)、(11)および(17)が好ましく、酸無水物(1)が特に好ましい。芳香族テトラカルボン酸二無水物を使用すると液晶表示素子の耐光性を高める効果並びに残留DCを低減する効果がある。
【0126】
本発明において脂環式テトラカルボン酸二無水物とは、2つの−CO−O−CO−の少なくとも1つが脂肪族環に結合する化合物であり、上記で定義される芳香族テトラカルボン酸二無水物を含まない。脂環式テトラカルボン酸二無水物の例を以下に示す。
【化110】

【化111】


【化112】

【化113】

【化114】

【化115】

【化116】

【0127】
【化117】

【化118】

【化119】

【化120】

【化121】

【化122】

【化123】

【0128】
上記の脂環式テトラカルボン酸二無水物のうち、酸無水物(19)、(25)、(35)〜(37)、(39)、(44)、および(49)が好ましく、酸無水物(19)がより好ましい。
【0129】
本発明において脂肪族テトラカルボン酸二無水物とは、2つの−CO−O−CO−が芳香族環にも脂肪族環にも結合せず、脂肪族化合物に結合する化合物である。脂肪族テトラカルボン酸二無水物の例を以下に示す。下記の例のうち酸無水物(23)が好ましい。
【化124】

【化125】

【化126】

【0130】
脂環式テトラカルボン酸二無水物および/または脂肪族テトラカルボン酸二無水物を併用すると、液晶表示素子の耐熱性を高める効果並びに透明性を改善する効果がある。
【0131】
本発明では、上記の酸無水物(1)〜(67)以外のテトラカルボン酸二無水物も用いることができる。その例として側鎖基を有するテトラカルボン酸二無水物が挙げられる。側鎖基を有するテトラカルボン酸二無水物を用いることによって、液晶表示素子におけるプレチルト角を大きくすることができる。側鎖基を有するテトラカルボン酸二無水物としては、例えばステロイド骨格を有する酸無水物(68)および(69)が挙げられる。
【化127】

【0132】
[シルセスキオキサンテトラカルボン酸二無水物]
本発明においては、ジアミンと反応させるテトラカルボン酸二無水物にシルセスキオキサン構造を有するテトラカルボン酸二無水物を含むこともできる。シルセスキオキサンは高度な架橋体であり加水分解されることはないため、ポリアミック酸の原料に含有させることにより液晶配向剤としての保存安定性が優れる。また、製膜後も加水分解されないため、熱信頼性の高い液晶配向膜の形成が可能となる。
【0133】
本発明に用いるシルセスキオキサンテトラカルボン酸二無水物は、例えば国際公開第03/024870号パンフレットに記載されている下記の式(S)で表される化合物を用いることができる。
【化128】

【0134】
式(S)中、Rはそれぞれ独立して、−H、炭素数1〜45のアルキル、置換または非置換のアリールおよび置換または非置換のアリールアルキルから選択され、Yは下記(y1)または(y2)で表される。
【化129】

式(y1)および式(y2)中のXは、それぞれ独立して、−H、ハロゲン、水酸基または酸無水物の構造(−CO−O−CO−)を有する1価の有機基であり、Xの少なくとも2つは酸無水物の構造(−CO−O−CO−)を有する1価の有機基であり、Zは−O−、−CH−または単結合である。但し、炭素数1〜45のアルキルにおいて、任意の−Hは−Fで置き換えられてもよく、任意の−CH−は−O−、−CH=CH−、シクロアルキレンまたはシクロアルケニレンで置き換えられてもよい。置換または非置換のアリールアルキル中のアルキレンにおいて、任意の−Hは−Fで置き換えられていてもよく、任意の−CH−は−O−、−CH=CH−、またはシクロアルキレンで置き換えられていてもよい。
【0135】
式(S)で表されるシルセスキオキサンテトラカルボン酸二無水物の例は前記の式(An−6)で表される化合物であり、その内で好ましいのは下記の式(An−6−1)で表される化合物である。
【化130】

式(An−6−1)において、Phはフェニルを表し、Meはメチルを表す。
【0136】
シルセスキオキサンテトラカルボン酸二無水物誘導体を使用すると、液晶表示素子の電圧保持率を高くし、耐光性および耐熱性を高くし、そしてイオン密度を低減する効果がある。
【0137】
本発明のポリアミック酸を製造する際には、テトラカルボン酸二無水物にジカルボン酸無水物を添加して用いてもよい。そうすることによって、ポリアミック酸を生成する際の重合反応のターミネーションを起こして、それ以上の重合反応の進行を抑えることができる。それによって得られるポリアミック酸の分子量を容易に制御することができ、その結果、例えば本発明の効果が損われることなく液晶配向剤の塗布特性を改善することができる。ジカルボン酸無水物の添加割合は、目的とするポリアミック酸の分子量を考慮して適宜調整すればよい。本発明の効果が損なわれなければ、2種以上のジカルボン酸無水物を添加してもよい。ジカルボン酸無水物の例は、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水イタコン酸、n−デシル無水コハク酸、n−ドデシル無水コハク酸、n−テトラデシル無水コハク酸、n−ヘキサデシル無水コハク酸、およびシクロヘキサン酸無水物である。
【0138】
本発明では、ポリアミック酸を製造する際に、モノイソシアネート化合物をさらに添加してもよい。モノイソシアネート化合物を添加することによって、得られるポリアミック酸の末端が修飾され、分子量が調節される。この末端修飾型のポリアミック酸を用いることにより、例えば本発明の効果が損われることなく液晶配向剤の塗布特性を改善することができる。モノイソシアネート化合物の添加量は、ジアミンおよびテトラカルボン酸二無水物の総量に対して1〜10モル%であることが好ましい。モノイソシアネート化合物としては、例えばフェニルイソシアネートおよびナフチルイソシアネートが挙げられる。
【0139】
[ポリアミック酸]
本発明のポリアミック酸は、ポリイミド膜の形成に用いられる公知のポリアミック酸と同様に製造することができる。テトラカルボン酸二無水物の総仕込み量は、ジアミンの総モル数とほぼ等モル(モル比0.9〜1.1程度)とすることが好ましい。
【0140】
ポリアミック酸の分子量は、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)で10,000〜500,000であることが好ましく、20,000〜200,000であることがより好ましい。ポリアミック酸の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法による測定値から求めることができる。
【0141】
ポリアミック酸は、反応液に多量の貧溶媒を投入することにより沈殿させて得られる固形分を、IR、NMR等の手段で分析することにより、その存在を確認することができる。ポリアミック酸をKOHやNaOH等の強アルカリの水溶液によって分解し、その分解物から有機溶剤によって抽出された成分をGC、HPLCもしくはGC−MSで分析することにより、使用されている原料を確認することができる。
【0142】
[液晶配向剤]
本発明の液晶配向剤は、前記のポリアミック酸を含むポリマー成分を、通常溶媒で希釈して溶液の形態で実用に供される。その際のポリマー成分の濃度は、特に限定されないが、0.1〜40重量%が好ましい。本発明の液晶配向剤は、ポリアミック酸を合成した際の反応液に溶媒を加えて上記の濃度に調製してもよく、また、反応液の溶媒を一旦減圧・留去し、再度適当な溶媒に溶解して用いてもよい。
【0143】
本発明の液晶配向剤は、前記のポリアミック酸以外の他の成分をさらに含有していてもよい。他の成分は、1種であっても2種以上であってもよい。
【0144】
例えば、本発明の液晶配向剤は、液晶表示素子の電気特性を長期に安定させる観点から、アルケニル置換ナジイミド化合物をさらに含有していてもよい。アルケニル置換ナジイミド化合物は1種で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。アルケニル置換ナジイミド化合物の含有量は、液晶配向剤中のポリアミック酸に対する重量比で0.01〜1.00であることが好ましく、0.01〜0.70であることがより好ましく、0.01〜0.50であることがさらに好ましい。
【0145】
アルケニル置換ナジイミド化合物は、本発明で用いられるポリアミック酸を溶解する溶剤に溶解させることができる化合物であることが好ましい。このようなアルケニル置換ナジイミド化合物の例は、下記式(Ina)で表される化合物が挙げられる。
【化131】

式(Ina)において、LおよびLは独立して−H、炭素数1〜12のアルキル、炭素数3〜6のアルケニル、炭素数5〜8のシクロアルキル、アリールまたはベンジルであり、nは1または2である。
【0146】
n=1のとき、Wは炭素数1〜12のアルキル、炭素数2〜6のアルケニル、炭素数5〜8のシクロアルキル、炭素数6〜12のアリール、ベンジル、−Z−(O)−(ZO)−Z−H(ここで、Z、ZおよびZは独立して炭素数2〜6のアルキレンであり、qは0または1であり、そして、rは1〜30の整数である。)で表される基、−(Z−B−Z−H(ここで、ZおよびZは独立して炭素数1〜4のアルキレンまたは炭素数5〜8のシクロアルキレンであり、Bはフェニレンであり、そして、sは0または1である。)で表される基、−B−T−B−H(ここで、Bはフェニレンであり、そして、Tは−CH−、−C(CH−、−O−、−CO−、−S−、または−SO−である。)で表される基、またはこれらの基の1〜3個の−Hが−OHで置換された基である。
【0147】
このとき、好ましいWは、炭素数1〜8のアルキル、炭素数3〜4のアルケニル、シクロヘキシル、フェニル、ベンジル、炭素数4〜10のポリ(エチレンオキシ)エチル、フェニルオキシフェニル、フェニルメチルフェニル、フェニルイソプロピリデンフェニル、およびこれらの基の1個または2個の−Hが−OHで置き換えられた基である。
【0148】
一般式(Ina)において、n=2のとき、Wは炭素数2〜20のアルキレン、炭素数5〜8のシクロアルキレン、炭素数6〜12のアリーレン、−Z−O−(ZO)−Z−(ここで、Z〜Z、およびrの意味は前記の通りである。)で表される基、−Z−B−Z−(ここで、Z、ZおよびBの意味は前記の通りである。)で表される基、−B−(O−B)−T−(B−O)−B−(ここで、Bはフェニレンであり、Tは炭素数1〜3のアルキレン、−O−または−SO−であり、sは0または1である。)で表される基、またはこれらの基の1〜3個の−Hが−OHで置き換えられた基である。
【0149】
このとき、好ましいWは炭素数2〜12のアルキレン、シクロヘキシレン、フェニレン、トリレン、キシリレン、−C−O−(Z−O)−O−C−(ここで、Zは炭素数2〜6のアルキレンであり、rは1または2である。)で表される基、−B−T−B−(ここで、Bはフェニレンであり、そして、Tは−CH−、−O−または−SO−である。)で表される基、−B−O−B−C−B−O−B−(ここで、Bはフェニレンである。)で表される基、およびこれらの基の1個または2個の−Hが−OHで置き換えられた基である。
【0150】
このようなアルケニル置換ナジイミド化合物は、例えば特許第2729565号公報に記載されているように、アルケニル置換ナジック酸無水物誘導体とジアミンとを80〜220℃の温度で0.5〜20時間保持することにより合成して得られる化合物や市販されている化合物を用いることができる。アルケニル置換ナジイミド化合物の具体例として、以下に示す化合物が挙げられる。
【0151】
N−メチル−アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−メチル−アリルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−メチル−メタリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−メチル−メタリルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2−エチルヘキシル)−アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、
【0152】
N−(2−エチルヘキシル)−アリル(メチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−アリル−アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−アリル−アリルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−アリル−メタリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−イソプロペニル−アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−イソプロペニル−アリル(メチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−イソプロペニル−メタリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−シクロヘキシル−アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−シクロヘキシル−アリル(メチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−シクロヘキシル−メタリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−フェニル−アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、
【0153】
N−フェニル−アリル(メチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−ベンジル−アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−ベンジル−アリルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−ベンジル−メタリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2−ヒドロキシエチル)−アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2−ヒドロキシエチル)−アリル(メチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2−ヒドロキシエチル)−メタリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、
【0154】
N−(2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピル)−アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピル)−アリル(メチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2,3−ジヒドロキシプロピル)−アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2,3−ジヒドロキシプロピル)−アリル(メチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(3−ヒドロキシ−1−プロペニル)−アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(4−ヒドロキシシクロヘキシル)−アリル(メチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、
【0155】
N−(4−ヒドロキシフェニル)−アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)−アリル(メチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)−メタリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)−メタリルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(3−ヒドロキシフェニル)−アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(3−ヒドロキシフェニル)−アリル(メチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(p−ヒドロキシベンジル)−アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−{2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル}−アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、
【0156】
N−{2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル}−アリル(メチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−{2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル}−メタリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−{2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル}−メタリルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−〔2−{2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ}エチル〕−アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−〔2−{2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ}エチル〕−アリル(メチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−〔2−{2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ}エチル〕−メタリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−{4−(4−ヒドロキシフェニルイソプロピリデン)フェニル}−アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−{4−(4−ヒドロキシフェニルイソプロピリデン)フェニル}−アリル(メチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−{4−(4−ヒドロキシフェニルイソプロピリデン)フェニル}−メタリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、およびこれらのオリゴマー、
【0157】
N,N’−エチレン−ビス(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)、N,N’−エチレン−ビス(アリルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)、N,N’−エチレン−ビス(メタリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)、N,N’−トリメチレン−ビス(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)、N,N’−ヘキサメチレン−ビス(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)、N,N’−ヘキサメチレン−ビス(アリルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)、N,N’−ドデカメチレン−ビス(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)、N,N’−ドデカメチレン−ビス(アリルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)、N,N’−シクロヘキシレン−ビス(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)、N,N’−シクロヘキシレン−ビス(アリルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)、
【0158】
1,2−ビス{3’−(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)プロポキシ}エタン、1,2−ビス{3’−(アリルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)プロポキシ}エタン、1,2−ビス{3’−(メタリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)プロポキシ}エタン、ビス〔2’−{3’−(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)プロポキシ}エチル〕エーテル、ビス〔2’−{3’−(アリルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)プロポキシ}エチル〕エーテル、1,4−ビス{3’−(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)プロポキシ}ブタン、1,4−ビス{3’−(アリルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)プロポキシ}ブタン、
【0159】
N,N’−p−フェニレン−ビス(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)、N,N’−p−フェニレン−ビス(アリルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)、N,N’−m−フェニレン−ビス(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)、N,N’−m−フェニレン−ビス(アリルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)、N,N’−{(1−メチル)−2,4−フェニレン}−ビス(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)、N,N’−p−キシリレン−ビス(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)、N,N’−p−キシリレン−ビス(アリルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)、N,N’−m−キシリレン−ビス(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)、N,N’−m−キシリレン−ビス(アリルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)、
【0160】
2,2−ビス〔4−{4−(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)フェノキシ}フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−{4−(アリルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)フェノキシ}フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−{4−(メタリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)フェノキシ}フェニル〕プロパン、ビス{4−(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)フェニル}メタン、ビス{4−(アリルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)フェニル}メタン、
【0161】
ビス{4−(メタリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)フェニル}メタン、ビス{4−(メタリルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)フェニル}メタン、ビス{4−(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)フェニル}エーテル、ビス{4−(アリルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)フェニル}エーテル、ビス{4−(メタリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)フェニル}エーテル、ビス{4−(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)フェニル}スルホン、ビス{4−(アリルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)フェニル}スルホン、
【0162】
ビス{4−(メタリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)フェニル}スルホン、1,6−ビス(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)−3−ヒドロキシ−ヘキサン、1,12−ビス(メタリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)−3,6−ジヒドロキシ−ドデカン、1,3−ビス(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)−5−ヒドロキシ−シクロヘキサン、1,5−ビス{3’−(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)プロポキシ}−3−ヒドロキシ−ペンタン、1,4−ビス(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)−2−ヒドロキシ−ベンゼン、
【0163】
1,4−ビス(アリルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)−2,5−ジヒドロキシ−ベンゼン、N,N’−p−(2−ヒドロキシ)キシリレン−ビス(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)、N,N’−p−(2−ヒドロキシ)キシリレン−ビス(アリルメチルシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)、N,N’−m−(2−ヒドロキシ)キシリレン−ビス(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)、N,N’−m−(2−ヒドロキシ)キシリレン−ビス(メタリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)、N,N’−p−(2,3−ジヒドロキシ)キシリレン−ビス(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)、
【0164】
2,2−ビス〔4−{4−(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)−2−ヒドロキシ−フェノキシ}フェニル〕プロパン、ビス{4−(アリルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)−2−ヒドロキシ−フェニル}メタン、ビス{3−(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)−4−ヒドロキシ−フェニル}エーテル、ビス{3−(メタリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)−5−ヒドロキシ−フェニル}スルホン、1,1,1−トリ{4−(アリルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)}フェノキシメチルプロパン、N,N’,N”−トリ(エチレンメタリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)イソシアヌレート、およびこれらのオリゴマー等。
【0165】
さらに、本発明に用いられるアルケニル置換ナジイミド化合物は、非対称なアルキレン・フェニレン基を含む下記構造式で表される化合物でもよい。
【化132】

【0166】
前記アルケニル置換ナジイミド化合物のうち、好ましい化合物を以下に示す。
N,N’−エチレン−ビス(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)、N,N’−エチレン−ビス(アリルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)、N,N’−エチレン−ビス(メタリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)、N,N’−トリメチレン−ビス(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)、N,N’−ヘキサメチレン−ビス(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)、N,N’−ヘキサメチレン−ビス(アリルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)、N,N’−ドデカメチレン−ビス(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)、N,N’−ドデカメチレン−ビス(アリルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)、N,N’−シクロヘキシレン−ビス(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)、N,N’−シクロヘキシレン−ビス(アリルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)、
【0167】
N,N’−p−フェニレン−ビス(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)、N,N’−p−フェニレン−ビス(アリルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)、N,N’−m−フェニレン−ビス(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)、N,N’−m−フェニレン−ビス(アリルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)、N,N’−{(1−メチル)−2,4−フェニレン}−ビス(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)、N,N’−p−キシリレン−ビス(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)、N,N’−p−キシリレン−ビス(アリルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)、N,N’−m−キシリレン−ビス(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)、N,N’−m−キシリレン−ビス(アリルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)、2,2−ビス〔4−{4−(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)フェノキシ}フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−{4−(アリルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)フェノキシ}フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−{4−(メタリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)フェノキシ}フェニル〕プロパン、ビス{4−(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)フェニル}メタン、ビス{4−(アリルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)フェニル}メタン、
【0168】
ビス{4−(メタリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)フェニル}メタン、ビス{4−(メタリルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)フェニル}メタン、ビス{4−(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)フェニル}エーテル、ビス{4−(アリルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)フェニル}エーテル、ビス{4−(メタリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)フェニル}エーテル、ビス{4−(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)フェニル}スルホン、ビス{4−(アリルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)フェニル}スルホン、ビス{4−(メタリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)フェニル}スルホン。
【0169】
更に好ましいアルケニル置換ナジイミド化合物を次に示す。
N,N’−エチレン−ビス(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)、N,N’−エチレン−ビス(アリルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)、N,N’−エチレン−ビス(メタリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)、N,N’−トリメチレン−ビス(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)、N,N’−ヘキサメチレン−ビス(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)、N,N’−ヘキサメチレン−ビス(アリルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)、N,N’−ドデカメチレン−ビス(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)、N,N’−ドデカメチレン−ビス(アリルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)、N,N’−シクロヘキシレン−ビス(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)、N,N’−シクロヘキシレン−ビス(アリルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)、
【0170】
N,N’−p−フェニレン−ビス(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)、N,N’−p−フェニレン−ビス(アリルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)、N,N’−m−フェニレン−ビス(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)、N,N’−m−フェニレン−ビス(アリルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)、N,N’−{(1−メチル)−2,4−フェニレン}−ビス(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)、N,N’−p−キシリレン−ビス(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)、N,N’−p−キシリレン−ビス(アリルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)、N,N’−m−キシリレン−ビス(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)、N,N’−m−キシリレン−ビス(アリルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)、
【0171】
2,2−ビス〔4−{4−(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)フェノキシ}フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−{4−(アリルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)フェノキシ}フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−{4−(メタリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)フェノキシ}フェニル〕プロパン、ビス{4−(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)フェニル}メタン、ビス{4−(アリルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)フェニル}メタン、ビス{4−(メタリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)フェニル}メタン、ビス{4−(メタリルメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)フェニル}メタン。
【0172】
そして、特に好ましいアルケニル置換ナジイミド化合物として、下記式(Ina−1)で表されるビス{4−(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)フェニル}メタン、式(Ina−2)で表されるN,N’−m−キシリレン−ビス(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)、および式(Ina−3)で表されるN,N’−ヘキサメチレン−ビス(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)が挙げられる。
【化133】

【化134】

【化135】

【0173】
本発明の液晶配向剤は、例えば液晶表示素子の電気特性を長期に安定させる観点から、ラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物をさらに含有していてもよい。ラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物としては、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸アミド等の(メタ)アクリル酸誘導体、およびビスマレイミドが挙げられ、ラジカル重合性不飽和二重結合を2つ以上有する(メタ)アクリル酸誘導体が好ましい。
【0174】
(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸イソボロニル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、および(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピルが挙げられる。
【0175】
2官能(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、エチレンビスアクリレート、東亜合成(株)の製品であるアロニックスM−210、アロニックスM−240およびアロニックスM−6200、日本化薬(株)の製品であるKAYARAD HDDA、KAYARAD HX−220、KAYARAD R−604およびKAYARAD R−684、大阪有機化学工業(株)の製品であるV260、V312およびV335HP、並びに共栄社化学(株)の製品であるライトアクリレートBA−4EA、ライトアクリレートBP−4PAおよびライトアクリレートBP−2PAが挙げられる。
【0176】
3官能以上の多官能(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、4,4’−メチレンビス(N,N―ジヒドロキシエチレンアクリレートアニリン)、アロニックスM−400、アロニックスM−405、アロニックスM−450、アロニックスM−7100、アロニックスM−8030、アロニックスM−8060、KAYARAD TMPTA、KAYARAD DPCA−20、KAYARAD DPCA−30、KAYARAD DPCA−60、KAYARAD DPCA−120、および大阪有機化学工業(株)の製品であるVGPTが挙げられる。
【0177】
(メタ)アクリル酸アミド誘導体の具体例としては、N−イソプロピルアクリルアミド、N−イソプロピルメタクリルアミド、N−n−プロピルアクリルアミド、N−n−プロピルメタクリルアミド、N−シクロプロピルアクリルアミド、N−シクロプロピルメタクリルアミド、N−エトキシエチルアクリルアミド、N−エトキシエチルメタクリルアミド、N−テトラヒドロフルフリルアクリルアミド、N−テトラヒドロフルフリルメタクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−エチル−N−メチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−メチル−N−n−プロピルアクリルアミド、N−メチル−N−イソプロピルアクリルアミド、N−アクリロイルピペリジン、N−アクリロイルピロリディン、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、N,N’−エチレンビスアクリルアミド、N,N’−ジヒドロキシエチレンビスアクリルアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、N−フェニルメタクリルアミド、N−ブチルメタクリルアミド、N−(iso−ブトキシメチル)メタクリルアミド、N−[2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル]メタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]メタクリルアミド、N−(メトキシメチル)メタクリルアミド、N−(ヒドロキシメチル)―2−メタクリルアミド、N−ベンジル−2−メタクリルアミド、およびN,N’−メチレンビスメタクリルアミドが挙げられる。
【0178】
上記の(メタ)アクリル酸誘導体のうち、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、N,N’−ジヒドロキシエチレン−ビスアクリルアミド、エチレンビスアクリレート、および4,4’−メチレンビス(N,N―ジヒドロキシエチレンアクリレートアニリン)が特に好ましい。
【0179】
ビスマレイミドとしては、例えばケイ・アイ化成(株)製のBMI−70およびBMI−80、並びに大和化成工業(株)製のBMI−1000、BMI−3000、BMI−4000、BMI−5000およびBMI−7000が挙げられる。
【0180】
本発明の液晶配向剤は、液晶表示素子における電気特性の長期安定性の観点から、オキサジン化合物をさらに含有していてもよい。オキサジン化合物としては、例えば下記式(a)〜(f)で表される化合物が挙げられる。
【化136】

【化137】

【化138】

【0181】
式(a)〜(f)において、RおよびRは炭素数1〜30の有機基である。R〜Rは−Hまたは炭素数1〜6の炭化水素基である。Xは単結合、−O−、−S−、−S−S−、−SO−、−CO−、−CONH−、−NHCO−、−C(CH−、−C(CF−、−(CH−、−O−(CH−O−、−S−(CH−S−であり、mは1〜6の整数である。Yは独立して単結合、−O−、−S−、−CO−、−C(CH−、−C(CF−または炭素数1〜3のアルキレンである。
【0182】
本発明の液晶配向剤は、液晶表示素子における電気特性の長期安定性の観点から、分子内にエポキシ環を1つまたは2つ以上有するエポキシ化合物をさらに含有してもよい。このエポキシ化合物はエポキシ環を有するモノマー、オリゴマーまたは重合体であってもよい。
【0183】
本発明の液晶配向剤は、液晶表示素子における電気特性の長期安定性の観点から、オキサゾリン化合物をさらに含有していてもよい。オキサゾリン化合物とはオキサゾリン構造を有する化合物である。オキサゾリン化合物は1種で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。オキサゾリン化合物の含有量は、ポリアミック酸に対する重量比で0.001〜0.50であることが好ましく、0.01〜0.40であることがより好ましく、0.01〜0.20であることがさらに好ましい。または、オキサゾリン化合物の含有量は、オキサゾリン化合物中のオキサゾリン構造をオキサゾリンに換算したときに、ポリアミック酸に対して0.001〜0.40であることが好ましい。
【0184】
オキサゾリン化合物は、1つの化合物中にオキサゾリン構造を1種だけ有していてもよいし、2種以上有していてもよい。オキサゾリン化合物は、1つの化合物中にオキサゾリン構造を1個有していればよいが、2個以上有することが好ましい。また、オキサゾリン化合物は、オキサゾリン環構造を側鎖に有する重合体であってもよい。オキサゾリン構造を側鎖に有する重合体は、オキサゾリン構造を側鎖に有するモノマーの単独重合体であってもよいし、オキサゾリン構造を側鎖に有するモノマーとオキサゾリン構造を有しないモノマーとの共重合体であってもよい。オキサゾリン構造を側鎖に有する共重合体は、オキサゾリン構造を側鎖に有する2種以上のモノマーの共重合体であってもよいし、オキサゾリン構造を側鎖に有する2種以上のモノマーとオキサゾリン構造を有しないモノマーとの共重合体であってもよい。
【0185】
オキサゾリン構造は、オキサゾリン構造中の酸素および窒素の一方または両方とポリアミック酸のカルボニル基とが反応し得るように、オキサゾリン化合物中に存在する構造であることが好ましい。
【0186】
オキサゾリン化合物としては、例えば2,2’−ビス(2−オキサゾリン)、1,2,4−トリス−(2−オキサゾリン−2−イル)−ベンゼン、4−フラン−2−イルメチレン−2−フェニル−4H−オキサゾール−5−オン、1,4−ビス(4,5−ジヒドロ−2−オキサゾリル)ベンゼン、1,3−ビス(4,5−ジヒドロ−2−オキサゾリル)ベンゼン、2,3−ビス(4−イソプロペニル−2−オキサゾリン−2−イル)ブタン、2,2’−ビス−4−ベンジル−2−オキサゾリン、2,6−ビス(イソプロピル−2−オキサゾリン−2−イル)ピリジン、2,2’−イソプロピリデンビス(4−tert−ブチル−2−オキサゾリン)、2,2’−イソプロピリデンビス(4−フェニル−2−オキサゾリン)、2,2’−メチレンビス(4−tert−ブチル−2−オキサゾリン)、および2,2’−メチレンビス(4−フェニル−2−オキサゾリン)が挙げられる。これらの他、エポクロス(商品名、株式会社日本触媒製)のようなオキサゾリルを有するポリマーやオリゴマーも挙げられる。
【0187】
より好ましい前記オキサゾリン化合物としては、例えば2,2’―ビス(2−オキサゾリン)および1,3−ビス(4,5―ジヒドロ−2−オキサゾリル)ベンゼンが挙げられる。
【0188】
本発明の液晶配向剤は、液晶表示素子における電気特性の長期安定性の観点から、エポキシ化合物をさらに含有していてもよい。エポキシ化合物は1種で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。エポキシ化合物の含有量は、ポリアミック酸に対する重量比で0.001〜0.50であることが好ましく、0.01〜0.40であることがより好ましく、0.01〜0.20であることがさらに好ましい。
【0189】
エポキシ化合物としては、分子内にエポキシ環を1つまたは2つ以上有する種々の化合物が挙げられる。分子内にエポキシ環を1つ有する化合物としては、例えばフェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、3,3,3−トリフルオロメチルプロピレンオキシド、スチレンオキシド、ヘキサフルオロプロピレンオキシド、シクロヘキセンオキシド、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−グリシジルフタルイミド、(ノナフルオロ−N−ブチル)エポキシド、パーフルオロエチルグリシジルエーテル、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、N,N−ジグリシジルアニリン、および3−[2−(パーフルオロヘキシル)エトキシ]−1,2−エポキシプロパンが挙げられる。
【0190】
分子内にエポキシ環を2つ有する化合物としては、例えばエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、2,2−ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレートおよび3−(N,N−ジグリシジル)アミノプロピルトリメトキシシランが挙げられる。
【0191】
分子内にエポキシ環を3つ有する化合物としては、例えば2−[4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル]−2−[4−[1,1−ビス[4−([2,3−エポキシプロポキシ]フェニル)]エチル]フェニル]プロパン(商品名「テクモアVG3101L」、(三井化学)社製)が挙げられる。
【0192】
分子内にエポキシ環を4つ有する化合物としては、例えば1,3,5,6−テトラグリシジル−2,4−ヘキサンジオール、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、および3−(N−アリル−N−グリシジル)アミノプロピルトリメトキシシランが挙げられる。
【0193】
上記の他、分子内にエポキシ環を有する化合物の例として、エポキシ環を有するオリゴマーや重合体も挙げられる。エポキシ環を有するモノマーとしては、例えばグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、およびメチルグリシジル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0194】
エポキシ環を有するモノマーと共重合を行う他のモノマーとしては、例えば(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン、クロルメチルスチレン、(3−エチル−3−オキセタニル)メチル(メタ)アクリレート、N−シクロヘキシルマレイミドおよびN−フェニルマレイミドが挙げられる。
【0195】
エポキシ環を有するモノマーの重合体の好ましい具体例としては、ポリグリシジルメタクリレート等が挙げられる。また、エポキシ環を有するモノマーと他のモノマーとの共重合体の好ましい具体例としては、N−フェニルマレイミド−グリシジルメタクリレート共重合体、N−シクロヘキシルマレイミド−グリシジルメタクリレート共重合体、ベンジルメタクリレート−グリシジルメタクリレート共重合体、ブチルメタクリレート−グリシジルメタクリレート共重合体、2−ヒドロキシエチルメタクリレート−グリシジルメタクリレート共重合体、(3−エチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレート−グリシジルメタクリレート共重合体およびスチレン−グリシジルメタクリレート共重合体が挙げられる。
【0196】
これら例の中でも、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、商品名「テクモアVG3101L」、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート、N−フェニルマレイミド−グリシジルメタクリレート共重合体、および2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランが特に好ましい。
【0197】
より体系的には、前記エポキシ化合物としては、例えばグリシジルエーテル、グリシジルエステル、グリシジルアミン、エポキシ基含有アクリル系樹脂、グリシジルアミド、グリシジルイソシアヌレート、鎖状脂肪族型エポキシ化合物、および環状脂肪族型エポキシ化合物が挙げられる。なお、エポキシ化合物はエポキシ基を有する化合物を意味し、エポキシ樹脂はエポキシ基を有する樹脂を意味する。
【0198】
グリシジルエーテルとしては、例えばビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールS型エポキシ化合物、ビスフェノール型エポキシ化合物、水素化ビスフェノール−A型エポキシ化合物、水素化ビスフェノール−F型エポキシ化合物、水素化ビスフェノール−S型エポキシ化合物、水素化ビスフェノール型エポキシ化合物、臭素化ビスフェノール−A型エポキシ化合物、臭素化ビスフェノール−F型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、臭素化フェノールノボラック型エポキシ化合物、臭素化クレゾールノボラック型エポキシ化合物、ビスフェノールAノボラック型エポキシ化合物、ナフタレン骨格含有エポキシ化合物、芳香族ポリグリシジルエーテル化合物、ジシクロペンタジエンフェノール型エポキシ化合物、脂環式ジグリシジルエーテル化合物、脂肪族ポリグリシジルエーテル化合物、ポリサルファイド型ジグリシジルエーテル化合物、およびビフェノール型エポキシ化合物が挙げられる。
【0199】
グリシジルエステルとしては、例えばジグリシジルエステル化合物およびグリシジルエステルエポキシ化合物が挙げられる。
【0200】
グリシジルアミンとしては、例えばポリグリシジルアミン化合物が挙げられる。
【0201】
エポキシ基含有アクリル系化合物としては、例えばオキシラニルを有するモノマーの単独重合体および共重合体が挙げられる。
【0202】
グリシジルアミドとしては、例えばグリシジルアミド型エポキシ化合物が挙げられる。
【0203】
鎖状脂肪族型エポキシ化合物としては、例えばアルケン化合物の炭素−炭素二重結合を酸化して得られる、エポキシ基を含有する化合物が挙げられる。
【0204】
環状脂肪族型エポキシ化合物としては、例えばシクロアルケン化合物の炭素−炭素二重結合を酸化して得られる、エポキシ基を含有する化合物が挙げられる。
【0205】
ビスフェノールA型エポキシ化合物としては、例えば828、1001、1002、1003、1004、1007、1010(いずれもジャパンエポキシレジン製)、エポトートYD−128(東都化成(株)製)、DER−331、DER−332、DER−324(いずれもダウ・ケミカル日本(株)から購入可)、エピクロン840、エピクロン850、エピクロン1050(いずれもDIC(株)製)、エポミックR−140、エポミックR−301、およびエポミックR−304(いずれも三井化学(株)製)が挙げられる。
【0206】
ビスフェノールF型エポキシ化合物としては、例えば806、807、4004P(いずれもジャパンエポキシレジン(株)製)、エポトートYDF−170、エポトートYDF−175S、エポトートYDF−2001(いずれも東都化成(株)製)、DER−354(ダウ・ケミカル日本(株)から購入可)、エピクロン830、およびエピクロン835(いずれもDIC(株)製)が挙げられる。
【0207】
ビスフェノール型エポキシ化合物としては、例えば2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンのエポキシ化物が挙げられる。
【0208】
水素化ビスフェノール−A型エポキシ化合物としては、例えばサントートST−3000(東都化成(株)製)、リカレジンHBE−100(新日本理化(株)製)、およびデナコールEX−252(ナガセケムテックス(株)製)が挙げられる。
【0209】
水素化ビスフェノール型エポキシ化合物としては、例えば水素化2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンのエポキシ化物が挙げられる。
【0210】
臭素化ビスフェノール−A型エポキシ化合物としては、例えば5050、5051(いずれもジャパンエポキシレジン(株)製)、エポトートYDB−360、エポトートYDB−400(いずれも東都化成(株)製)、DER−530、DER−538(いずれもダウ・ケミカル日本(株)から購入可)、エピクロン152、およびエピクロン153(いずれもDIC(株)製)が挙げられる。
【0211】
フェノールノボラック型エポキシ化合物としては、例えば152、154(いずれもジャパンエポキシレジン(株)製)、YDPN−638(東都化成(株)製)、DEN431、DEN438(いずれもダウ・ケミカル日本(株)から購入可)、エピクロンN−770(DIC(株)製)、EPPN−201、およびEPPN−202(いずれも日本化薬(株)製)が挙げられる。
【0212】
クレゾールノボラック型エポキシ化合物としては、例えば180S75(ジャパンエポキシレジン(株)製)、YDCN−701、YDCN−702(いずれも東都化成(株)製)、エピクロンN−665、エピクロンN−695(いずれもDIC(株)製)、EOCN−102S、EOCN−103S、EOCN−104S、EOCN−1020、EOCN−1025、およびEOCN−1027(いずれも日本化薬(株)製)が挙げられる。
【0213】
ビスフェノールAノボラック型エポキシ化合物としては、例えば157S70(ジャパンエポキシレジン(株)製)、およびエピクロンN−880(DIC(株)製)が挙げられる。
【0214】
ナフタレン骨格含有エポキシ化合物としては、例えばエピクロンHP−4032、エピクロンHP−4700、エピクロンHP−4770(いずれもDIC(株)製)、およびNC−7000(日本化薬(株)製)が挙げられる。
【0215】
芳香族ポリグリシジルエーテル化合物としては、例えばハイドロキノンジグリシジルエーテル(下記式E101)、カテコールジグリシジルエーテル(下記式E102)レゾルシノールジグリシジルエーテル(下記式E103)、トリス(4−グリシジルオキシフェニル)メタン(下記式E105)、1031S、1032H60(いずれもジャパンエポキシレジン(株)製)、TACTIX−742(ダウ・ケミカル日本(株)から購入可)、デナコールEX−201(ナガセケムテックス(株)製)、DPPN−503、DPPN−502H、DPPN−501H、NC6000(いずれも日本化薬(株)製)、テクモアVG3101L(三井化学(株)製)、下記式E106で表される化合物、および下記式E107で表される化合物が挙げられる。
【0216】
【化139】

【0217】
ジシクロペンタジエンフェノール型エポキシ化合物としては、例えばTACTIX−556(ダウ・ケミカル日本(株)から購入可)、およびエピクロンHP−7200(DIC(株)製)が挙げられる。
【0218】
脂環式ジグリシジルエーテル化合物としては、例えばシクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル化合物、およびリカレジンDME−100(新日本理化(株)製)が挙げられる。
【0219】
脂肪族ポリグリシジルエーテル化合物としては、例えばエチレングリコールジグリシジルエーテル(下記式E108)、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル(下記式E109)、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル(下記式E110)、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル(下記式E111)、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル(下記式E112)、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル(下記式E113)、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(下記式E114)、ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル(下記式E115)、デナコールEX−810、デナコールEX−851、デナコールEX−8301、デナコールEX−911、デナコールEX−920、デナコールEX−931、デナコールEX−211、デナコールEX−212、デナコールEX−313(いずれもナガセケムテックス(株)製)、DD−503((株)ADEKA製)、リカレジンW−100(新日本理化(株)製)、1,3,5,6−テトラグリシジル−2,4−ヘキサンジオール(下記式E116)、グリセリンポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、デナコールEX−313、デナコールEX−611、デナコールEX−321、およびデナコールEX−411(いずれもナガセケムテックス(株)製)が挙げられる。
【0220】
【化140】

【0221】
ポリサルファイド型ジグリシジルエーテル化合物としては、例えばFLDP−50、およびFLDP−60(いずれも東レチオコール(株)製)が挙げられる。
【0222】
ビフェノール型エポキシ化合物としては、例えばYX−4000、YL−6121H(いずれもジャパンエポキシレジン(株)製)、NC−3000P、およびNC−3000S(いずれも日本化薬(株)製)が挙げられる。
【0223】
ジグリシジルエステル化合物としては、例えばジグリシジルテレフタレート(下記式117)、ジグリシジルフタレート(下記式E118)、ビス(2−メチルオキシラニルメチル)フタレート(下記式E119)、下記式E121で表される化合物、下記式E122で表される化合物、および下記式E123で表される化合物が挙げられる。
【0224】
【化141】

【0225】
グリシジルエステルエポキシ化合物としては、例えば871、872(いずれもジャパンエポキシレジン(株)製)、エピクロン200、エピクロン400(いずれもDIC(株)製)、デナコールEX−711、およびデナコールEX−721(いずれもナガセケムテックス(株)製)が挙げられる。
【0226】
ポリグリシジルアミン化合物としては、例えばN,N−ジグリシジルアニリン(下記式E124)、N,N−ジグリシジル−o−トルイジン(下記式E125)、N,N−ジグリシジル−m−トルイジン(下記式E126)、N,N−ジグリシジル−2,4,6−トリブロモアニリン(下記式E127)、3−(N,N−ジグリシジル)アミノプロピルトリメトキシシラン(下記式E128)、N,N,O−トリグリシジル−p−アミノフェノール(下記式E129)、N,N,O−トリグリシジル−m−アミノフェノール(下記式E130)、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン(TETRAD−X(三菱ガス化学(株)製)、下記式E132)、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン(TETRAD−C(三菱ガス化学(株)製)、下記式E133)、1,4−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン(下記式E134)、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノ)シクロヘキサン(下記式E135)、1,4−ビス(N,N−ジグリシジルアミノ)シクロヘキサン(下記式E136)、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノ)ベンゼン(下記式E137)、1,4−ビス(N,N−ジグリシジルアミノ)ベンゼン(下記式E138)、2,6−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン(下記式E139)、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン(下記式E140)、2,2’−ジメチル−(N,N,N’,N’−テトラグリシジル)−4,4’−ジアミノビフェニル(下記式E141)、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(下記式E142)、1,3,5−トリス(4−(N,N−ジグリシジル)アミノフェノキシ)ベンゼン(下記式E143)、2,4,4’−トリス(N,N−ジグリシジルアミノ)ジフェニルエーテル(下記式E144)、トリス(4−(N,N−ジグリシジル)アミノフェニル)メタン(下記式E145)、3,4,3’,4’−テトラキス(N,N−ジグリシジルアミノ)ビフェニル(下記式E146)、3,4,3’,4’−テトラキス(N,N−ジグリシジルアミノ)ジフェニルエーテル(下記式E147)、下記式E148で表される化合物、および下記式E149で表される化合物が挙げられる。
【0227】
【化142】

【0228】
【化143】

【0229】
【化144】

【0230】
オキシラニルを有するモノマーの単独重合体としては、例えばポリグリシジルメタクリレートが挙げられる。前記オキシラニルを有するモノマーの共重合体としては、例えばN−フェニルマレイミド−グリシジルメタクリレート共重合体、N−シクロヘキシルマレイミド−グリシジルメタクリレート共重合体、ベンジルメタクリレート−グリシジルメタクリレート共重合体、ブチルメタクリレート−グリシジルメタクリレート共重合体、2−ヒドロキシエチルメタクリレート−グリシジルメタクリレート共重合体、(3−エチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレート−グリシジルメタクリレート共重合体、およびスチレン−グリシジルメタクリレート共重合体が挙げられる。
【0231】
オキシラニルを有するモノマーとしては、例えばグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、およびメチルグリシジル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0232】
オキシラニルを有するモノマーの共重合体における前記オキシラニルを有するモノマー以外の他のモノマーとしては、例えば(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン、クロルメチルスチレン、(3−エチル−3−オキセタニル)メチル(メタ)アクリレート、N−シクロヘキシルマレイミド、およびN−フェニルマレイミドが挙げられる。
【0233】
グリシジルイソシアヌレートとしては、例えば1,3,5−トリグリシジル−1,3,5−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)−トリオン(下記式E150)、1,3−ジグリシジル−5−アリル−1,3,5−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)−トリオン(下記式E151)、およびグリシジルイソシアヌレート型エポキシ樹脂が挙げられる。
【0234】
【化145】

【0235】
鎖状脂肪族型エポキシ化合物としては、例えばエポキシ化ポリブタジエン、およびエポリードPB3600(ダイセル化学工業(株)製)が挙げられる。
【0236】
環状脂肪族型エポキシ化合物としては、例えば2−メチル−3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−2’−メチル−3’,4’−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート(下記式E153)、2,3−エポキシシクロペンタン−2’,3’−エポキシシクロペンタンエーテル(下記式E154)、ε−カプロラクトン変性3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキレート、1,2:8,9−ジエポキシリモネン(セロキサイド3000(ダイセル化学工業(株)製)、3、4-エポキシシクロヘキセニルメチル-3、'4'-エポキシシクロヘキセンカルボキシレート(セロキサイド2021P(ダイセル化学工業(株)製)、下記式E155)、下記式E156で表される化合物、CY−175、CY−177、CY−179(いずれもCIBA−GEIGY Ltd.製)、EHPD−3150(ダイセル化学工業(株)製)、および環状脂肪族型エポキシ樹脂が挙げられる。
【0237】
【化146】

【0238】
本発明の液晶配向剤は各種添加剤をさらに含有していてもよい。各種添加剤としては、例えばポリアミック酸およびその誘導体以外のポリマー、および低分子化合物が挙げられ、それぞれの目的に応じて選択して使用することができる。このポリマーとしては、有機溶剤に可溶性のポリマーが挙げられる。このようなポリマーを本発明の液晶配向剤に添加することは、形成される液晶配向膜の電気特性や配向性を制御する観点から好ましい。該ポリマーとしては、例えばポリアミド、ポリウレタン、ポリウレア、ポリエステル、ポリエポキサイド、ポリエステルポリオール、シリコーン変性ポリウレタン、およびシリコーン変性ポリエステルが挙げられる。
【0239】
低分子化合物としては、例えば1)塗布性の向上を望むときにはこの目的に沿った界面活性剤、2)帯電防止の向上を必要とするときは帯電防止剤、3)基板との密着性や耐ラビング性の向上を望むときにはシランカップリング剤やチタン系のカップリング剤、また、4)低温でイミド化を進行させる場合はイミド化触媒が挙げられる。
【0240】
シランカップリング剤としては、例えばビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルトリメトキシシラン、パラアミノフェニルトリメトキシシラン、パラアミノフェニルトリエトキシシラン、メタアミノフェニルトリメトキシシラン、メタアミノフェニルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロピルアミン、およびN,N’−ビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミンが挙げられる。
【0241】
イミド化触媒としては、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン等の脂肪族アミン類;N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、メチル置換アニリン、ヒドロキシ置換アニリン等の芳香族アミン類;ピリジン、メチル置換ピリジン、ヒドロキシ置換ピリジン、キノリン、メチル置換キノリン、ヒドロキシ置換キノリン、イソキノリン、メチル置換イソキノリン、ヒドロキシ置換イソキノリン、イミダゾール、メチル置換イミダゾール、ヒドロキシ置換イミダゾール等の環式アミン類が挙げられる。前記イミド化触媒は、N,N−ジメチルアニリン、o−ヒドロキシアニリン、m−ヒドロキシアニリン、p−ヒドロキシアニリン、o−ヒドロキシピリジン,m−ヒドロキシピリジン、p−ヒドロキシピリジン、およびイソキノリンから選ばれる1種または2種以上であることが好ましい。
【0242】
本発明の液晶配向剤は、液晶配向剤の塗布性やポリアミック酸の濃度を調整する観点から、溶剤をさらに含有していてもよい。溶剤は、ポリマー成分を溶解する能力を持った溶剤であれば格別制限なく適用可能である。溶剤は、ポリアミック酸、可溶性ポリイミド等のポリマー成分の製造工程や用途面で通常使用されている溶剤を広く含み、使用目的に応じて適宜選択できる。溶剤は1種でも2種以上の混合溶剤であってもよい。このような溶剤としては、前記ポリアミック酸の親溶剤や、塗布性改善を目的とした他の溶剤が挙げられる。
【0243】
ポリアミック酸に対し親溶剤である非プロトン性極性有機溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルイミダゾリジノン、N−メチルカプロラクタム、N−メチルプロピオンアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、ジエチルアセトアミド、γ−ブチロラクトン等のラクトンが挙げられる。
【0244】
塗布性改善等を目的とした他の溶剤の例としては、乳酸アルキル、3−メチル−3−メトキシブタノール、テトラリン、イソホロン、エチレングリコールモノアルキルエーテル(例えば、エチレングリコールモノブチルエーテル)、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル(例えば、ジエチレングリコールモノエチルエーテル)、エチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、エチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル(例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル)、マロン酸ジアルキル(例えば、マロン酸ジエチル)、ジプロピレングリコールモノアルキルエーテル(例えば、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル)、およびこれらの化合物の末端OH基をエステル化したアセテート類が挙げられる。
【0245】
これらのうち特に好ましい溶剤は、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルイミダゾリジノン、γ−ブチロラクトン、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、およびジプロピレングリコールモノメチルエーテルである。
【0246】
本発明において液晶配向剤中のポリアミック酸を含むポリマー成分の濃度は、特に限定されないが、前述のように0.1〜40重量%が好ましい。該液晶配向剤を基板に塗布するときには、膜厚調整のため含有されているポリマー成分を予め溶剤により希釈する操作が必要とされることがある。このとき液晶配向剤に対して溶剤を容易に混合するのに適した粘度に液晶配向剤の粘度を調整する観点から、ポリマー成分の濃度は40重量%以下であることが好ましい。
【0247】
また液晶配向剤中におけるポリマー成分の濃度は、液晶配向剤の塗布方法に応じて調整される場合もある。液晶配向剤の塗布方法がスピンナー法や印刷法のときには、膜厚を良好に保つために、ポリマー成分の濃度を通常10重量%以下とすることが多い。その他の塗布方法、例えばディッピング法やインクジェット法では更に濃度を低くすることもあり得る。ポリマー成分の濃度が0.1重量%以上であると、得られる液晶配向膜の膜厚が最適となり易い。従って、ポリマー成分の濃度は、通常のスピンナー法や印刷法等では0.1重量%以上、好ましくは0.5〜10重量%である。しかしながら、液晶配向剤の塗布方法によっては、更に低い濃度で使用してもよい。
【0248】
[液晶配向膜]
液晶配向膜の作製に用いる場合において、本発明の液晶配向剤の粘度は、この液晶配向剤の膜を形成する手段や方法に応じて決めることができる。例えば、印刷機を用いて液晶配向剤の膜を形成する場合は、十分な膜厚を得る観点から5mPa・s以上であることが好ましく、また印刷ムラを抑制する観点から100mPa・s以下であることが好ましく、より好ましくは10〜80mPa・sである。スピンコートによって液晶配向剤を塗布して液晶配向剤の膜を形成する場合は、同様の観点から、5〜200mPa・sであることが好ましく、より好ましくは10〜100mPa・sである。液晶配向剤の粘度は、溶剤による希釈や攪拌を伴う養生によって小さくすることができる。
【0249】
本発明の液晶配向膜は、前述した本発明の液晶配向剤の塗膜が加熱されて形成される膜である。本発明の液晶配向膜は、液晶配向剤から液晶配向膜を作製する通常の方法によって得ることができ、例えば本発明の液晶配向膜は、本発明の液晶配向剤の塗膜を形成する工程と、これを加熱して焼成する工程とによって得ることができる。本発明の液晶配向膜については、必要に応じて、前記焼成工程で得られる膜をラビング処理してもよい。
【0250】
塗膜は通常の液晶配向膜の作製と同様に、液晶表示素子における基板に本発明の液晶配向剤を塗布することによって形成することができる。基板には、ITO(Indium TinOxide)電極等の電極やカラーフィルタ等が設けられていてもよいガラス製の基板が挙げられる。
【0251】
液晶配向剤を基板に塗布する方法としてはスピンナー法、印刷法、ディッピング法、滴下法、インクジェット法等が一般に知られている。これらの方法は本発明においても同様に適用可能である。
【0252】
塗膜の焼成はポリアミック酸が脱水・閉環反応を呈するのに必要な条件で行うことができる。塗膜の焼成はオーブンまたは赤外炉の中で加熱処理する方法、ホットプレート上で加熱処理する方法等が一般に知られている。これらの方法も本発明において同様に適用可能である。一般に150〜300℃程度の温度で1分間〜3時間行うことが好ましい。
【0253】
ラビング処理は、通常の液晶配向膜の配向処理のためのラビング処理と同様に行うことができ、本発明の液晶配向膜において十分なリタデーションが得られる条件であればよい。特に好ましい条件は、毛足押し込み量0.2〜0.8mm、ステージ移動速度5〜250mm/sec、ローラー回転速度500〜2,000rpmである。液晶配向膜の配向処理方法としては、ラビング法の他に、光配向法や転写法等が一般に知られている。本発明の効果が得られる範囲において、これらの他の配向処理方法をラビング処理において併用してもよい。
【0254】
本発明の液晶配向膜は、前述した工程以外の他の工程をさらに含む方法によって好適に得られる。このような他の工程としては、前記塗膜を乾燥させる工程や、ラビング処理前後の膜を洗浄液で洗浄する工程等が挙げられる。
【0255】
乾燥工程は、焼成工程と同様に、オーブンまたは赤外炉の中で加熱処理する方法、ホットプレート上で加熱処理する方法等が一般に知られている。これらの方法も乾燥工程に同様に適用可能である。乾燥工程は溶剤の蒸発が可能な範囲内の温度で実施することが好ましく、焼成工程における温度に対して比較的低い温度で実施することがより好ましい。
【0256】
配向処理の前後における液晶配向膜の洗浄液による洗浄方法としては、ブラッシング、ジェットスプレー、蒸気洗浄または超音波洗浄等が挙げられる。これらの方法は単独で行ってもよいし、併用してもよい。洗浄液としては純水または、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等の各種アルコール類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、塩化メチレン等のハロゲン系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類を用いることができるが、これらに限定されるものではない。もちろん、これらの洗浄液は十分に精製された不純物の少ないものが用いられる。このような洗浄方法は、本発明の液晶配向膜の形成における前記洗浄工程にも適用することができる。
【0257】
本発明の液晶配向膜の膜厚は、特に限定されないが、10〜300nmであることが好ましく、30〜150nmであることがより好ましい。本発明の液晶配向膜の膜厚は、段差計やエリプソメータ等の公知の膜厚測定装置によって測定することができる。
【0258】
[液晶表示素子]
本発明の液晶表示素子は、一対の基板と、この一対の基板の間に形成される液晶層、液晶層に電圧を印加する電極、および液晶分子を所定の方向に配向させる本発明の液晶配向膜を有する。
【0259】
基板には前述したガラス製の基板を用いることができ、電極にはITO電極を用いることができる。液晶層は液晶配向膜面を内側にした基板間に密封される液晶組成物によって形成される。
【0260】
使用する液晶組成物には、特に制限はなく、誘電率異方性が正または負の各種の液晶組成物を用いることができる。誘電率異方性が正の好ましい液晶組成物には、特許第3086228号公報、特許第2635435号公報、特表平5−501735号公報、特開平8−157826号公報、特開平8−231960号公報、特開平9−241644号公報(EP885272A1明細書)、特開平9−302346号公報(EP806466A1明細書)、特開平8−199168号公報(EP722998A1明細書)、特開平9−235552号公報、特開平9−255956号公報、特開平9−241643号公報(EP885271A1明細書)、特開平10−204016号公報(EP844229A1明細書)、特開平10−204436号公報、特開平10−231482号公報、特開2000−087040公報、特開2001−48822公報等に開示されている液晶組成物が挙げられる。
【0261】
誘電率異方性が負の好ましい液晶組成物には、特開昭57−114532号公報、特開平2−4725号公報、特開平4−224885号公報、特開平8−40953号公報、特開平8−104869号公報、特開平10−168076号公報、特開平10−168453号公報、特開平10−236989号公報、特開平10−236990号公報、特開平10−236992号公報、特開平10−236993号公報、特開平10−236994号公報、特開平10−237000号公報、特開平10−237004号公報、特開平10−237024号公報、特開平10−237035号公報、特開平10−237075号公報、特開平10−237076号公報、特開平10−237448号公報(EP967261A1明細書)、特開平10−287874号公報、特開平10−287875号公報、特開平10−291945号公報、特開平11−029581号公報、特開平11−080049号公報、特開2000−256307公報、特開2001−019965公報、特開2001−072626公報、特開2001−192657公報等に開示されている液晶組成物が挙げられる。
【0262】
これらの誘電率異方性が正または負の液晶組成物に1種以上の光学活性化合物を添加して使用することも何ら差し支えない。
【0263】
本発明の液晶表示素子は、種々の電界方式用の液晶表示素子を形成することができる。このような電界方式用の液晶表示素子には、前記基板の表面に対して水平方向に前記電極が前記液晶層に電圧を印加する横電界方式用の液晶表示素子や、前記基板の表面に対して垂直方向に前記電極が前記液晶層に電圧を印加する縦電界方式用の液晶表示素子が挙げられる。
【0264】
横電界方式用の液晶表示素子は、比較的大きなプレチルト角を発現しなくてもよい。従って、横電界方式用の液晶表示素子には、非側鎖型ジアミンを用いて得られる非側鎖型ポリアミック酸を含有する液晶配向剤から形成される液晶配向膜が好適に用いられる。
【0265】
縦電界方式用の液晶表示素子は、比較的大きなプレチルト角の発現を要する。従って、縦電界方式用の液晶表示素子には、側鎖型ジアミンまたはこれを含むジアミン混合物を用いて得られる側鎖型ポリアミック酸を含有する液晶配向剤から形成される液晶配向膜が好適に用いられる。
【0266】
このように、本発明の液晶配向剤を原料として作製される液晶配向膜は、その原料であるポリマーを適宜選択することにより、種々の表示駆動方式の液晶表示素子に適用させることができる。
【0267】
本発明の液晶表示素子は、前述した構成要素以外の要素をさらに有していてもよい。このような他の構成要素として、本発明の液晶表示素子には、偏光板(偏光フィルム)、波長板、光散乱フィルム、駆動回路等の、液晶表示素子に通常使用される構成要素が実装されてもよい。
【実施例】
【0268】
以下、本発明を実施例により説明する。なお、実施例において用いる化合物は次の通りである。
【0269】
<テトラカルボン酸二無水物>
酸無水物(1):ピロメリット酸二無水物
酸無水物(19):1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物
【0270】
<ジアミン>
ジアミン(N−1):ビス−4−(N,N’−(4−アミノフェニル)アミノフェニル)メタン
ジアミン(N−3):1,3−ビス−4−(N,N’−(4−アミノフェニル)アミノフェニル)プロパン
ジアミン(V−1):4,4’−ジアミノジフェニルメタン
ジアミン(V−7):4,4’−ジアミノ−1,2−ジフェニルエタン
ジアミン(XII−2−1):1,1−ビス[4−(4−アミノフェニル)メチルフェニル] −4−n−ヘプチルシクロヘキサン
ジアミン(XII−4−1):1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル−4−(トランス−4−n−ペンチルシクロヘキシル)シクロヘキサン
【0271】
<溶剤>
NMP:N−メチル−2−ピロリドン
BC :ブチルセロソルブ(エチレングリコールモノブチルエーテル)
【0272】
<添加剤>
化合物:ビス[4−(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)フェニル]メタン:BANI−M
化合物:4,4’−メチレンビス(N,N−ジヒドロキシエチレンアクリレートアニリン):MHA
化合物:2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン:EHS
【0273】
<1.ジアミンの合成>
[1,3−ビス−4−(N,N’−(4−アミノフェニル)アミノフェニル)プロパン:(N−3)の合成]
第一段:1,3−ビス−4−(N,N’−(4−ニトロフェニル)アミノフェニル)プロパンの合成
【化147】

【0274】
500mL3つ口フラスコに、Journal of Organic Chemistry(1958),23,487-488に記載の方法に従い合成した1,3−ビス(4−アミノフェニル)プロパン10g(44.2mmol)、4−ブロモニトロベンゼン17.9g(88.4mmol)、酢酸パラジウム(II)2.0g(8.84mmol)、2−(ジイソプロピルフォスフィノ)ビフェニル2.4g(8.84mmol)および炭酸カリウム14.7g(106.1mmol)を入れ、トルエン200mLを加えた。この溶液を20時間加熱還流し、得られた反応溶液を純水300mLにあけ、酢酸エチル300mLで抽出した。この有機層を純水300mLで2回洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。硫酸マグネシウムをろ過して除去し、溶媒を減圧留去して粗結晶を得た。この粗結晶をトルエン/酢酸エチル=5/1(容積比)で再結晶して、1,3−ビス−4−(N,N’−(4−ニトロフェニル)アミノフェニル)プロパンを得た(収量14.7g、収率71%)。
【0275】
第二段:ニトロ基の還元
【化148】

1Lオートクレーブ反応管に、得られた1,3−ビス−4−(N,N’−(4−ニトロフェニル)アミノフェニル)プロパン14.7g(31.4mmol)、Pd/C粉末1.5gを入れ、酢酸エチル150mLおよびエタノール150mLを加えた。水素圧8kgf/cm2、室温で12時間反応させた後、Pd/C粉末をろ過して除去し、溶媒を減圧留去した。残渣をカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン/メタノール=10/1(v/v))で分離精製し、得られた粗結晶をトルエン/酢酸エチル=20/1(v/v)で再結晶して、1,3−ビス−4−(N,N’−(4−アミノフェニル)アミノフェニル)プロパンを得た(収量10.6g、収率83%)。
融点;148.7−151.5℃
1H-NMR(DMSO, ppm): 1.73-1.79(-CH2-, 2H, m), 2.43-2.46(-CH2-, 4H, t, J=7.65Hz), 4.74(-NH2, 4H, br.s), 6.52-6.55(arm.H, 4H, q, J=8.6Hz), 6.72-6.74(arm.H, 4H, d, J=8.5Hz), 6.80-6.83(arm.H, 4H, q, J=8.6Hz), 6.93-6.95(arm.H, 4H, d, J=8.4Hz), 7.34(>NH, 2H, br.s).
【0276】
<2.ポリアミック酸の合成>
[合成例1]
温度計、攪拌機、原料投入仕込み口および窒素ガス導入口を備えた100mLの四つ口フラスコに化合物(N−1)を3.885g、および脱水NMP40.0gを入れ、乾燥窒素気流下攪拌溶解した。次いで化合物(1)を1.114g、化合物(19)を1.001gおよび脱水NMP40.0gを入れ、室温で15時間反応させた。得られた溶液に、BC14.0gを加えて、固形分濃度が6重量%のポリアミック酸溶液を得た。このポリアミック酸をPA1とする。PA1の重量平均分子量は80200であった。
【0277】
ポリアミック酸の重量平均分子量は、得られたポリアミック酸をリン酸−DMF混合溶液(リン酸/DMF=0.6/100:重量比)でポリアミック酸濃度が約2重量%になるように希釈し、2695セパレーションモジュール・2414示差屈折計(Waters製)を用いて、上記混合溶液を展開剤としてGPC法により測定し、ポリスチレン換算することにより求めた。なお、カラムはHSPgel RT MB−M(Waters製)を使用し、カラム温度50℃、流速0.40mL/minの条件で測定した。
【0278】
[合成例2〜9]
表1に示したようにテトラカルボン酸二無水物およびジアミンを変更した以外は、合成例1に準拠してポリアミック酸溶液(PA2)〜(PA9)を調製した。合成例1を含めて、結果を表1にまとめた。
【0279】
【表1】

【0280】
[実施例1]
<2.液晶表示素子の作製>
合成例1で合成した固形分濃度6重量%のポリアミック酸溶液(PA1)を、NMP/BC=4/1(重量比)の混合溶剤を加えて固形分濃度4重量%に希釈して液晶配向剤とした。得られた液晶配向剤を用いて下記の通り液晶表示素子を作製した。
【0281】
<液晶表示素子の作製方法>
液晶配向剤を2枚のITO電極付きガラス基板にスピンナーにて塗布し、膜厚70nmの膜を形成した。塗膜後80℃にて約1分間加熱乾燥した後、210℃にて15分間加熱処理して液晶配向膜を形成した。次いで、液晶配向膜が形成された基板の表面をラビング装置にてラビング処理して配向処理を行った。その後、液晶配向膜を超純水中で5分間超音波洗浄してから120℃のオーブンで30分間乾燥した。
【0282】
一方のガラス基板に4μmのギャップ材を散布し、液晶配向膜を形成した面を内側にしてラビング方向が逆平行になるように対向配置させた後、エポキシ系シール剤でシールして、ギャップ4μmのアンチパラレルセルを作製した。該セルに、下記の液晶組成物を注入し、注入口をUV硬化型封止剤で封止した。次いで、110℃で30分間加熱処理を行い、評価用の液晶表示素子を作製した。
【0283】
【化149】

【0284】
[実施例2]
合成例2で合成した固形分濃度6重量%のポリアミック酸溶液(PA2)を、NMP/BC=4/1(重量比)の混合溶剤を加えて固形分濃度4重量%に希釈して液晶配向剤とした。得られた液晶配向剤を用いて、実施例1に準じた方法で液晶表示素子を作製した。
【0285】
[実施例3]
合成例3で合成した固形分濃度6重量%のポリアミック酸溶液(PA3)を、NMP/BC=4/1(重量比)の混合溶剤を加えて固形分濃度4重量%に希釈して液晶配向剤とした。得られた液晶配向剤を用いて、実施例1に準じた方法で液晶表示素子を作製した。
【0286】
[実施例4]
合成例4で合成した固形分濃度6重量%のポリアミック酸溶液(PA4)を、NMP/BC=4/1(重量比)の混合溶剤を加えて固形分濃度4重量%に希釈して液晶配向剤とした。得られた液晶配向剤を用いて、実施例1に準じた方法で液晶表示素子を作製した。
【0287】
[実施例5]
合成例1で合成した固形分濃度6重量%のポリアミック酸溶液(PA1)と合成例7で合成した濃度6重量%のポリアミック酸溶液(PA7)とを重量比2/8で混合した。得られた混合物にNMP/BC=1/1(重量比)の混合溶媒を加えて固形分濃度4重量%に希釈して液晶配向剤とした。得られた液晶配向剤を用いて、実施例1に準じた方法で液晶表示素子を作製した。
【0288】
[実施例6]
合成例1で合成した固形分濃度6重量%のポリアミック酸溶液(PA1)と合成例7で合成した濃度6重量%のポリアミック酸溶液(PA7)とを重量比8/2で混合した。得られた混合物にNMP/BC=1/1(重量比)の混合溶媒を加えて固形分濃度4重量%に希釈して液晶配向剤とした。得られた液晶配向剤を用いて、実施例1に準じた方法で液晶表示素子を作製した。
【0289】
[実施例7]
合成例1で合成した固形分濃度6重量%のポリアミック酸溶液(PA1)と合成例6で合成した固形分濃度6重量%のポリアミック酸溶液(PA6)とを重量比2/8で混合した。得られた混合物にNMP/BC=1/1(重量比)の混合溶媒を加えて固形分濃度4重量%に希釈して液晶配向剤とした。得られた液晶配向剤を用いて、実施例1に準じた方法で液晶表示素子を作製した。
【0290】
[実施例8]
合成例3で合成した固形分濃度6重量%のポリアミック酸溶液(PA3)と合成例8で合成した固形分濃度6重量%のポリアミック酸溶液(PA8)とを重量比2/8で混合した。得られた混合物にNMP/BC=1/1(重量比)の混合溶媒を加えて固形分濃度4重量%に希釈して液晶配向剤とした。得られた液晶配向剤を用いて、実施例1に準じた方法で液晶表示素子を作製した。
【0291】
[実施例9]
合成例1で合成した固形分濃度6重量%のポリアミック酸溶液(PA1)と合成例7で合成した固形分濃度6重量%のポリアミック酸溶液(PA7)とを重量比2/8で混合した。得られた混合物にMHAをポリマー重量当たり20重量%添加した。その後、NMP/BC=1/1(重量比)の混合溶媒を加えて固形分濃度4重量%に希釈して液晶配向剤とした。得られた液晶配向剤を用いて、実施例1に準じた方法で液晶表示素子を作製した。
【0292】
[実施例10]
合成例1で合成した固形分濃度6重量%のポリアミック酸溶液(PA1)と合成例6で合成した固形分濃度6重量%のポリアミック酸溶液(PA6)とを重量比2/8で混合した。得られた混合物にBANI−Mをポリマー重量当たり20重量%、EHSをポリマー重量当たり10重量%添加した。その後、NMP/BC=1/1(重量比)の混合溶媒を加えて固形分濃度4重量%に希釈して液晶配向剤とした。得られた液晶配向剤を用いて、実施例1に準じた方法で液晶表示素子を作製した。
【0293】
[実施例11]
合成例1で合成した固形分濃度6重量%のポリアミック酸溶液(PA1)と合成例7で合成した固形分濃度6重量%のポリアミック酸溶液(PA7)とを重量比2/8で混合した。得られた混合物にBANI−Mをポリマー重量当たり20重量%添加した。その後、NMP/BC=1/1(重量比)の混合溶媒を加えて固形分濃度4重量%に希釈して液晶配向剤とした。得られた液晶配向剤を用いて、実施例1に準じた方法で液晶表示素子を作製した。
【0294】
[比較例1]
合成例9で合成した固形分濃度6重量%のポリアミック酸溶液(PA9)を、NMP/BC=1/1(重量比)の混合溶剤を加えて固形分濃度4重量%に希釈して液晶配向剤とした。得られた液晶配向剤を用いて、実施例1に準じた方法で液晶表示素子を作製した。
【0295】
<3.電気特性の評価>
実施例1〜11および比較例1で作製した液晶表示素子について、イオン密度の測定と長期信頼性の評価を以下のようにして行った。
【0296】
1)イオン密度の測定
東陽テクニカ製液晶物性評価装置6254型を用いてイオン密度の測定を行った。測定条件は、波形:三角波、周波数:0.01Hz、電圧:±10Vであり、測定温度は60℃とした。この値が小さいほど電気特性は良好であると言える。結果を表2に示す。
【0297】
2)イオン密度の保持特性の測定
作製した液晶表示素子について、経時的にイオン密度[pC]を求め、その保持特性を評価した。保持特性の試験法は、温度100℃のオーブン中に液晶表示素子を放置し、経時的に取り出してイオン密度[pC]を測定する方法を採用した。下式にて求めたイオン密度の増加量が小さいほどイオン密度の保持特性が良好であると言え、また電気特性の長期信頼性が良好であると言える。イオン密度の増加量は150未満であることが好ましい。300時間後および500時間後のデータを表2に示す。

イオン密度の増加量[pC]=500時間後のイオン密度−初期(0時間)のイオン密度
【0298】
【表2】

【0299】
テトラカルボン酸二無水物と反応させるジアミンとして(N−1)または(N−3)を用いてポリアミック酸を製造し、これを含有する液晶配向剤を調製した。この液晶配向剤から形成される液晶配向膜を有する液晶表示素子は、表2に示されたように、イオン密度の経時的増大を抑制する効果が顕著であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(N)で表されるジアミン。
【化1】

式(N)において、
は独立して−CHまたは−OCHであり、a1は独立して0〜2の整数であり;そして、
Xは下記の式(A)、(B)、(C)、および(D)で表される2価の基の群から選ばれる1つである。
【化2】

式(A)において、
は独立して−CHまたは−OCHであり、a2は独立して0〜2の整数であり;そして、
nは2〜10の整数である。
【化3】

式(B)において、
は、単結合、−O−、−COO−、−OCO−、−CO−、−CONH−、または−(CH−であり、mは1〜6の整数であり;
はステロイド骨格を有する基または下記式(IX)で表される基であり;
【化4】

式(IX)において、
およびAは独立して、単結合、−O−、−COO−、−OCO−、−CONH−、−CH=CH−、または炭素数1〜12のアルキレンであり;
およびRは独立して、−Fまたは−CHであり;
環Sは独立して1,4−フェニレン、1,4−シクロヘキシレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、ピリジン−2,5−ジイル、ナフタレン−1,5−ジイル、ナフタレン−2,7−ジイル、またはアントラセン−9,10−ジイルであり;
は−H、−F、炭素数1〜30のアルキル、炭素数1〜30のフッ素置換アルキル、炭素数1〜30のアルコキシ、−CN、−OCHF、−OCHF、または−OCFであり;
aおよびbは独立して0〜4の整数であり;
c、dおよびeは独立して0〜3の整数であり;
fおよびgは独立して0〜2の整数であり;そして、
c+d+e≧1である。
【化5】

式(C)において、
は−Hまたは炭素数1〜30のアルキルであり;
このアルキルの任意の−CH−は、−O−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく;
は単結合または炭素数1〜3のアルキレンであり;
環Tは1,4−フェニレンまたは1,4−シクロヘキシレンであり;
hは0または1であり;
は独立して−CHまたは−OCHであり、そして、a2は独立して0〜2の整数である。
【化6】

式(D)において、
10は炭素数6〜22のアルキルであり;
11は炭素数1〜22のアルキルであり;
は独立して−CHまたは−OCHであり、そして、a2は独立して0〜2の整数である。
【請求項2】
式(NA)で表される、請求項1に記載のジアミン。
【化7】

式(NA)において、
は独立して−CHまたは−OCHであり、a1は独立して0〜2の整数であり;
は独立して−CHまたは−OCHであり、a2は独立して0〜2の整数であり;そして、
nは2〜10の整数である。
【請求項3】
式(NB)で表される、請求項1に記載のジアミン。
【化8】

式(NB)において、
は、単結合、−O−、−COO−、−OCO−、−CO−、−CONH−、または(CH−であり、mは1〜6の整数であり;
は独立して−CHまたは−OCHであり、a1は独立して0〜2の整数であり;
は、ステロイド骨格を有する基または下記式(IX)で表される基であり;
【化9】

式(IX)において、
およびAは独立して、単結合、−O−、−COO−、−OCO−、−CONH−、−CH=CH−、または炭素数1〜12のアルキレンであり;
およびRは独立して、−FまたはCHであり;
環Sは独立して1,4−フェニレン、1,4−シクロヘキシレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、ピリジン−2,5−ジイル、ナフタレン−1,5−ジイル、ナフタレン−2,7−ジイル、またはアントラセン−9,10−ジイルであり;
は−H、−F、炭素数1〜30のアルキル、炭素数1〜30のフッ素置換アルキル、炭素数1〜30のアルコキシ、−CN、−OCHF、−OCHF、または−OCFであり;
aおよびbは独立して、0〜4の整数であり;
c、dおよびeは独立して0〜3の整数であり;
fおよびgは独立して0〜2の整数であり;そして、
c+d+e≧1である。
【請求項4】
式(NC)で表される、請求項1に記載のジアミン。
【化10】

式(NC)において、
は−Hまたは炭素数1〜30のアルキルであり;
このアルキルの任意の−CH−は、−O−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく;
は単結合または炭素数1〜3のアルキレンであり;
環Tは1,4−フェニレンまたは1,4−シクロヘキシレンであり;
hは0または1であり;
は独立して−CHまたは−OCHであり、a1は独立して0〜2の整数であり;
は独立して−CHまたは−OCHであり、そして、a2は独立して0〜2の整数である。
【請求項5】
hが1である、請求項4に記載のジアミン。
【請求項6】
式(ND)で表される、請求項1に記載のジアミン。
【化11】

式(ND)において、
10は炭素数6〜22のアルキルであり;
11は炭素数1〜22のアルキルであり;
は独立して−CHまたは−OCHであり、a1は独立して0〜2の整数であり;
は独立して−CHまたは−OCHであり、そして、a2は独立して0〜2の整数である。
【請求項7】
下記式(N)で表されるジアミン、または式(N)で表されるジアミンおよびそれ以外のジアミンの混合物を、テトラカルボン酸二無水物と反応させて得られるポリアミック酸またはその誘導体。
【化12】

式(N)において、
は独立して−CHまたは−OCHであり、a1は独立して0〜2の整数であり;そして、
Xは下記の式(A)、(B)、(C)、および(D)で表される2価の基の群から選ばれる1つである。
【化13】

式(A)において、
は独立して−CHまたは−OCHであり、a2は独立して0〜2の整数であり;そして、
nは1〜10の整数である。
【化14】

式(B)において、
は、単結合、−O−、−COO−、−OCO−、−CO−、−CONH−、または−(CH−であり、mは1〜6の整数であり;
は、ステロイド骨格を有する基または下記式(IX)で表される基であり;
【化15】

式(IX)において、
およびAは独立して、単結合、−O−(ただし非連続)、−COO−、−OCO−、−CONH−、−CH=CH−、または炭素数1〜12のアルキレンであり;
およびRは独立して、−Fまたは−CHであり;
環Sは独立して1,4−フェニレン、1,4−シクロヘキシレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、ピリジン−2,5−ジイル、ナフタレン−1,5−ジイル、ナフタレン−2,7−ジイル、またはアントラセン−9,10−ジイルであり;
は−H、−F、炭素数1〜30のアルキル、炭素数1〜30のフッ素置換アルキル、炭素数1〜30のアルコキシ、−CN、−OCHF、−OCHF、または−OCFであり;
aおよびbは独立して0〜4の整数であり;
c、dおよびeは独立して0〜3の整数であり;
fおよびgは独立して0〜2の整数であり;そして、
c+d+e≧1である。
【化16】

式(C)において、
は−Hまたは炭素数1〜30のアルキルであり;
このアルキルの任意の−CH−は、−O−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく;
は単結合または炭素数1〜3のアルキレンであり;
環Tは1,4−フェニレンまたは1,4−シクロヘキシレンであり;
hは0または1であり;
は独立して−CHまたは−OCHであり、そして、a2は独立して0〜2の整数であり;
【化17】

式(D)において、
10は炭素数6〜22のアルキルであり;
11は炭素数1〜22のアルキルであり;
は独立して−CHまたは−OCHであり、そして、a2は独立して0〜2の整数である。
【請求項8】
下記式(NA)で表されるジアミン、または式(NA)で表されるジアミンおよびそれ以外のジアミンの混合物を、テトラカルボン酸二無水物と反応させて得られる、請求項7に記載のポリアミック酸またはその誘導体。
【化18】

式(NA)において、
は独立して−CHまたは−OCHであり、a1は独立して0〜2の整数であり;
は独立して−CHまたは−OCHであり、a2は独立して0〜2の整数であり;そして、
nは2〜10の整数である。
【請求項9】
下記式(NB)で表されるジアミン、または式(NB)で表されるジアミンおよびそれ以外のジアミンの混合物を、テトラカルボン酸二無水物と反応させて得られる、請求項7に記載のポリアミック酸またはその誘導体。
【化19】

式(NB)において、
は、単結合、−O−、−COO−、−OCO−、−CO−、−CONH−、または−(CH−であり、mは1〜6の整数であり;
は独立して−CHまたは−OCHであり、a1は独立して0〜2の整数であり;
はステロイド骨格を有する基または下記式(IX)で表される基であり;
【化20】

式(IX)において、
およびAは独立して、単結合、−O−、−COO−、−OCO−、−CONH−、−CH=CH−、または炭素数1〜12のアルキレンであり;
およびRは独立して、−Fまたは−CHであり;
環Sは独立して1,4−フェニレン、1,4−シクロヘキシレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、ピリジン−2,5−ジイル、ナフタレン−1,5−ジイル、ナフタレン−2,7−ジイル、またはアントラセン−9,10−ジイルであり;
は−H、−F、炭素数1〜30のアルキル、炭素数1〜30のフッ素置換アルキル、炭素数1〜30のアルコキシ、−CN、−OCHF、−OCHF、または−OCFであり;
aおよびbは独立して、0〜4の整数であり;
c、dおよびeは独立して0〜3の整数であり;
fおよびgは独立して0〜2の整数であり;そして、
c+d+e≧1である。
【請求項10】
下記式(NC)で表されるジアミン、または式(NC)で表されるジアミンおよびそれ以外のジアミンの混合物を、テトラカルボン酸二無水物と反応させて得られる、請求項7に記載のポリアミック酸またはその誘導体。
【化21】

式(NC)において、
は−Hまたは炭素数1〜30のアルキルであり;
このアルキルの任意の−CH−は、−O−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく;
は単結合または炭素数1〜3のアルキレンであり;
環Tは1,4−フェニレンまたは1,4−シクロヘキシレンであり;
hは0または1であり;
は独立して−CHまたは−OCHであり、a1は独立して0〜2の整数であり;
は独立して−CHまたは−OCHであり、そして、a2は独立して0〜2の整数である。
【請求項11】
下記式(ND)で表されるジアミン、または式(ND)で表されるジアミンおよびそれ以外のジアミンの混合物を、テトラカルボン酸二無水物と反応させて得られる、請求項7に記載のポリアミック酸またはその誘導体。
【化22】

式(ND)において、
10は炭素数6〜22のアルキルであり;
11は炭素数1〜22のアルキルであり;
は独立して−CHまたは−OCHであり、a1は独立して0〜2の整数であり;
は独立して−CHまたは−OCHであり、そして、a2は独立して0〜2の整数である。
【請求項12】
式(N)で表されるジアミンが下記(NA−1)〜(NA−6)で表される化合物の群から選ばれる少なくとも1つである、請求項7に記載のポリアミック酸またはその誘導体。
【化23】

【請求項13】
式(N)で表されるジアミンが、式(NA−1)および(NA−3)で表される化合物の群から選ばれる少なくとも1つである、請求項12に記載のポリアミック酸またはその誘導体。
【請求項14】
式(N)で表されるジアミン、および下記式(VIII)および(X)〜(XIII)で表される側鎖構造を有するジアミンの群から選ばれる少なくとも1つの混合物を、テトラカルボン酸二無水物と反応させて得られる、請求項7〜13のいずれか1項に記載のポリアミック酸またはその誘導体。
【化24】

式(VIII)において、
は、単結合、−O−、−COO−、−OCO−、−CO−、−CONH−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、または−(CH−であり、mは1〜6の整数であり;
は、ステロイド骨格を有する基または下記式(IX)で表される基であり;
【化25】

式(IX)において、
およびAは独立して、単結合、−O−、−COO−、−OCO−、−CONH−、−CH=CH−、または炭素数1〜12のアルキレンであり;
およびRは独立して、−FまたはCHであり;
環Sは独立して1,4−フェニレン、1,4−シクロヘキシレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、ピリジン−2,5−ジイル、ナフタレン−1,5−ジイル、ナフタレン−2,7−ジイル、またはアントラセン−9,10−ジイルであり;
は−F、−OH、炭素数1〜30のアルキル、炭素数1〜30のフッ素置換アルキル、炭素数1〜30のアルコキシ、−CN、−OCHF、−OCHF、または−OCFであり、この炭素数1〜30のアルキルの任意の−CH−は下記式(s)で表される2価の基で置き換えられていてもよく;
【化26】

式(s)において、R33およびR34は独立して炭素数1〜3のアルキルであり、mは1〜6の整数であり;
aおよびbは独立して0〜4の整数であり;
c、dおよびeは独立して0〜3の整数であり;
fおよびgは独立して0〜2の整数であり;そして、
c+d+e≧1である。
【化27】

【化28】

式(X)および(XI)において、
は独立して−Hまたは−CHであり;
は−H、または炭素数1〜20のアルキルまたは炭素数2〜20のアルケニルであり;
は独立して単結合、−CO−または−CH−であり;
式(XI)において、
およびRは独立して炭素数1〜20のアルキルまたはフェニルである。
【化29】

【化30】

式(XII)および(XIII)において、
は独立して−O−または炭素数1〜6のアルキレンであり;
式(XII)において、
は−Hまたは炭素数1〜30のアルキルであり、このアルキルの任意の−CH−は、−O−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく;
は単結合または炭素数1〜3のアルキレンであり;
環Tは1,4−フェニレンまたは1,4−シクロヘキシレンであり;
hは0または1であり;
式(XIII)において、
10は炭素数6〜22のアルキルであり;そして、
11は炭素数1〜22のアルキルである。
【請求項15】
側鎖構造を有するジアミンが、下記式(VIII−2)、(VIII−4)〜(VIII−6)、(XII−2)、(XII−4)、および(XII−6)で表されるジアミンの群から選ばれる少なくとも1つである、請求項14に記載のポリアミック酸またはその誘導体。
【化31】

【化32】

【化33】

【化34】

【化35】

上記式中、R23、R29およびR30は、それぞれ独立して炭素数1〜30のアルキルまたは炭素数1〜30のアルコキシである。
【請求項16】
式(N)で表されるジアミン、および下記式(I)〜(VII)、(XV)、(XVI)、および(XVII)で表される側鎖構造を有さないジアミンの群から選ばれる少なくとも1つの混合物を、テトラカルボン酸二無水物と反応させて得られる、請求項7〜13のいずれか1項に記載のポリアミック酸またはその誘導体。
【化36】

【化37】

式(I)において、Xは−(CH−であり、mは1〜6の整数であり;
式(III)および(V)〜(VII)において、Yは独立して、単結合、−O−、−S−、−S−S−、−SO−、−CO−、−CONH−、−NHCO−、−NH−、−N(CH)−、−N(CH)−(CH−N(CH)−、−C(CH−、−C(CF−、−(CH−、−O−(CH−O−、−S−(CH−S−であり、mは独立して1〜6の整数であり;
式(V)において、ZおよびZは−Hであるが、Yが−NH−、−N(CH)−、−CH−、−C(CH−または−C(CF−であるときには互いに結合して環を形成してもよく;
式(VI)において、環Dはフェニレンまたはシクロヘキシレンであり;
式(XV)において、R33およびR34はそれぞれ独立して炭素数1〜3のアルキルまたはフェニルであり;
は独立してメチレン、フェニレンまたはアルキル置換されたフェニレンであり;
mは1〜10の整数であり;
式(II)〜(VII)において、シクロヘキサン環またはベンゼン環の−Hは独立して、−F、−CH、−CF、−OH、−COOH、−SOH、または−POと置き換えられていてもよく;
式(IV)において、ベンゼン環の−Hはベンジルで置き換えられていてもよく;
式(XVI)において、Aは独立して1価の有機基またはハロゲンであり;
は独立して1価の有機基またはハロゲンであり;
mは0〜3の整数であり;
nは0〜4の整数であり;そして、
式(XVII)において、Lは−H、炭素数1〜4のアルキル、フェニル、またはベンジルである。
【請求項17】
側鎖構造を有さないジアミンが、下記の式(IV−1)、(IV−2)、(IV−15)〜(IV−17)、(V−1)〜(V−12)、(V−33)、(V−35)〜(V−37)、(VII−2)、(XV−1)、(XVI−1)、および(XVII−1)で表される化合物から選ばれる少なくとも1つである、請求項16に記載のポリアミック酸またはその誘導体。
【化38】

【化39】

【化40】

【化41】

【化42】

【化43】

【化44】

【化45】

【化46】

【化47】

【請求項18】
式(N)で表されるジアミン、請求項14に記載の式(VIII)および(X)〜(XIII)で表される側鎖構造を有するジアミンの群から選ばれる少なくとも1つ、および請求項16に記載の式(I)〜(VII)、(XV)、(XVI)、および(XVII)で表される側鎖構造を有さないジアミンから選ばれる少なくとも1つの混合物を、テトラカルボン酸二無水物と反応させて得られる、請求項7〜13のいずれか1項に記載のポリアミック酸またはその誘導体。
【請求項19】
側鎖構造を有するジアミンが、請求項15に記載の式(VIII−2)、(VIII−4)〜(VIII−6)、(XII−2)、(XII−4)、および(XII−6)で表されるジアミンの群から選ばれる少なくとも1つであり、側鎖構造を有さないジアミンが、請求項17に記載の式(IV−1)、(IV−2)、(IV−15)〜(IV−17)、(V−1)〜(V−12)、(V−33)、(V−35)〜(V−37)、(VII−2)、(XV−1)、(XVI−1)、および(XVII−1)で表される化合物から選ばれる少なくとも1つである、請求項18に記載のポリアミック酸またはその誘導体。
【請求項20】
ジアミンと反応させるテトラカルボン酸二無水物が、下記式(An−1)〜(An−6)で表される化合物から選ばれる少なくとも1つである、請求項7〜19のいずれか1項に記載のポリアミック酸またはその誘導体。
【化48】

式(An−1)、(An−4)および(An−5)において、Xは独立して単結合または−CH−であり;
式(An−2)において、Gは単結合、炭素数1〜20のアルキレン、−CO−、−O−、−S−、−SO−、−C(CH−、または−C(CF−であり;
式(An−2)〜(An−4)において、Yは独立して下記の3価の基の群から選ばれる1つであり;
【化49】

式(An−3)〜(An−5)において、環Aは炭素数3〜10の単環式炭化水素の基または炭素数6〜20の縮合多環式炭化水素の基を表し、この基の任意の水素はメチル、エチルまたはフェニルで置き換えられていてもよく;
環に掛かっている結合手は環を構成する任意の炭素に連結しており、2本の結合手が同一の炭素に連結してもよく;
式(An−6)において、X11は炭素数2〜6のアルキレンであり;
Meはメチルを表し、そして、Phはフェニルを表す。
【請求項21】
ジアミンと反応させるテトラカルボン酸二無水物が、芳香族テトラカルボン酸二無水物か、または芳香族テトラカルボン酸二無水物を含むテトラカルボン酸二無水物の混合物である、請求項20に記載のポリアミック酸またはその誘導体。
【請求項22】
芳香族テトラカルボン酸二無水物が下記の式(1)、(2)、(5)〜(7)および(17)で表される化合物から選ばれる少なくとも1つである、請求項21に記載のポリアミック酸またはその誘導体。
【化50】

【請求項23】
芳香族テトラカルボン酸二無水物が請求項22に記載の式(1)で表される化合物である、請求項21に記載のポリアミック酸またはその誘導体。
【請求項24】
ジアミンと反応させるテトラカルボン酸二無水物が、脂環式テトラカルボン酸二無水物および脂肪族テトラカルボン酸二無水物の少なくとも1つか、または脂環式テトラカルボン酸二無水物および脂肪族テトラカルボン酸二無水物の少なくとも1つを含むテトラカルボン酸二無水物の混合物である、請求項20に記載のポリアミック酸またはその誘導体。
【請求項25】
脂環式テトラカルボン酸二無水物および/または脂肪族テトラカルボン酸二無水物が下記の式(19)、(23)、(25)、(35)〜(39)、(44)、および(49)で表される化合物から選ばれる少なくとも1つである、請求項24に記載のポリアミック酸またはその誘導体。
【化51】

【請求項26】
脂環式テトラカルボン酸二無水物および/または脂肪族テトラカルボン酸二無水物が、請求項25に記載の式(19)、(23)、(37)、および(49)で表される化合物から選ばれる少なくとも1つである、請求項24に記載のポリアミック酸またはその誘導体。
【請求項27】
請求項7〜26のいずれか1項に記載のポリアミック酸またはその誘導体を含有する液晶配向剤。
【請求項28】
アルケニル置換ナジイミド化合物、ラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物、オキサジン化合物、オキサゾリン化合物、およびエポキシ化合物からなる化合物の群から選ばれる少なくとも1つをさらに含有する、請求項27に記載の液晶配向剤。
【請求項29】
アルケニル置換ナジイミド化合物が、ビス{4−(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)フェニル}メタン、N,N’−m−キシリレン−ビス(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)、およびN,N’−ヘキサメチレン−ビス(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)からなる化合物の群から選ばれる少なくとも1つである、請求項28に記載の液晶配向剤。
【請求項30】
アルケニル置換ナジイミド化合物が、ビス{4−(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)フェニル}メタンである、請求項28に記載の液晶配向剤。
【請求項31】
ラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物が、N,N’−エチレンビスアクリルアミド、N,N’−(1,2−ジヒドロキシエチレン)ビスアクリルアミド、エチレンビスアクリレート、および4,4’−メチレンビス(N,N―ジヒドロキシエチレンアクリレートアニリン)からなる化合物の群から選ばれる少なくとも1つである、請求項28に記載の液晶配向剤。
【請求項32】
ラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物が、4,4’−メチレンビス(N,N―ジヒドロキシエチレンアクリレートアニリン)である、請求項28に記載の液晶配向剤。
【請求項33】
エポキシ化合物が、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2−[4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル]−2−[4−[1,1−ビス[4−([2,3−エポキシプロポキシ]フェニル)]エチル]フェニル]プロパン、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート、N−フェニルマレイミド−グリシジルメタクリレート共重合体、および2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランからなる化合物の群から選ばれる少なくとも1つである、請求項28に記載の液晶配向剤。
【請求項34】
エポキシ化合物が、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランである、請求項28に記載の液晶配向剤。
【請求項35】
請求項27〜34のいずれか1項に記載の液晶配向剤による塗膜が加熱されて形成される液晶配向膜。
【請求項36】
一対の基板、この基板間に形成される液晶層、この液晶層に電圧を印加する電極、および液晶層を形成する液晶分子を所定の方向に配向させる液晶配向膜を有する液晶表示素子において、液晶配向膜が請求項35に記載の液晶配向膜である、液晶表示素子。

【公開番号】特開2011−207786(P2011−207786A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−75239(P2010−75239)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(311002067)JNC株式会社 (208)
【出願人】(596032100)チッソ石油化学株式会社 (309)
【Fターム(参考)】