説明

分子画像化プローブのクリックケミストリー合成法

本開示は、標的生体高分子に対し親和性を有する放射性リガンド又は放射性基質の調製方法であって、(a)クリックケミストリー反応に関与し得る第一の官能基を含んでなる第一の化合物と放射性試薬とを、脱離基を放射性試薬の放射性成分で置換するために十分な条件下、反応させて、第一の放射性化合物を形成すること;(b)第一の官能基とのクリックケミストリー反応に関与し得る第二の相補的官能基を含んでなる第二の化合物を提供すること;(c)第一の放射性化合物の第一官能基と第二の化合物の相補的官能基とをクリックケミストリー反応を介して反応させ、放射性リガンド又は基質を形成すること;及び(d)放射性リガンド又は基質を単離すること;を含んでなる方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高親和性分子画像化プローブ、特にPET画像化プローブのクリックケミストリー合成法の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
陽電子放射断層撮影法(PET)は、疾患の検出に使用されることが多くなってきた分子画像化の方法である。PET画像化システムは、患者の組織における陽子放射同位元素の分布に基づき、画像を創出する。同位元素は、典型的には、体内で容易に代謝されるか、もしくは体内に局在する分子(例えば、グルコース)、又は体内の受容体部位に化学的に結合する分子に、共有結合している陽子放射同位元素、例えば、F−18、C−11、N−13、又はO−15等を含んでなるプローブ分子を注射することにより、患者に投与される。ある場合には、同位元素はイオン溶液として、又は吸入により患者に投与される。最も広く使用されている陽電子放射剤標識化PET分子画像化プローブは、2−デオキシ−2−[18F]フルオロ−D−グルコース([18F]FDG)である。
【0003】
グルコース類似体[18F]FDGを使用するPET走査は、主としてグルコース輸送体を標的とし、癌の早期検出、進展度診断、及び進展度再診断のための正確な臨床的手段である。PET−FDG画像化は、癌化学療法及び化学放射線療法をモニターするために、その使用が増えつつあるが、その理由は、グルコース利用における早期の変化が、結果の予測と相関することが示されているからである。腫瘍細胞の特性は、その加速された解糖速度であり、その加速は急速に増殖する腫瘍組織の高度の代謝要求から生じるものである。グルコースと同様に、FDGはグルコース輸送体を介して癌細胞に取り込まれ、へキソキナーゼによるリン酸化を受けてFDG−6リン酸となる。後者は解糖連鎖において更に進行することができないか、又はその荷電のために細胞を離れることができず、高解糖速度をもつ細胞を検出可能とする。
【0004】
多くの状況下で有用ではあるが、癌をモニターするためのFDG−PET画像化の限界も、また、存在する。炎症組織での蓄積は、FDG−PETの特異性を制限する。逆に、非特異的なFDG取り込みは、腫瘍応答予測のためのPETの感受性をも、また、制限し得る。治療により誘発される細胞性ストレス反応は、放射線療法及び化学療法薬物で処置を受けた腫瘍細胞において、FDG−取り込みの一次的増加を惹き起こすことが示されている。更に、生理的に高い正常なバックグランド活性(即ち、脳における)は、身体の一部領域における癌関連FDG−取り込みの定量を不可能なものとし得る。
【0005】
これらの制限があるため、癌組織における他の酵素が仲介する形質転換を標的とするために、他のPET画像化トレーサーが開発されつつある;例えば、ドーパミン合成のための6−[F−18]フルオロ−L−DOPA、DNA複製のための3'−[F−18]フルオロ−3'−デオキシチミジン(FLT)、及びコリンキナーゼのための[C−11](メチル)コリン、ならびに超高特異活性受容体−リガンド結合(例えば、16α[F−18]フルオロエストラジオール)及び潜在的遺伝子発現(例えば、[F−18]フルオロ−ガンシクロビル)等である。分子を標的とする薬剤は、癌における非侵襲PET画像化にとって大きな潜在的価値のあることを示している。
【0006】
これらの研究は、非侵襲PET画像化が、癌の特異的代謝標的に対し、大きな価値のあることを証明している。進行中の研究努力は、抗癌剤開発を支援し、医療介護提供者に、疾患を正確に診断し、治療をモニターする手段を提供するために、腫瘍標的に非常に高い親和性と特異性を示す更なる生物マーカーを同定することに向けられている。このような画像化プローブは、PETスキャナーの見掛けの空間的解像度を劇的に改善することができ、これにより、より小さな腫瘍の検出を可能とし、患者にナノモル量の注射を可能とする。
【0007】
PET画像化プローブを形成するための伝統的な小分子の18F−標識化は、アセトニトリル等の適合する反応媒体中、適切に活性化した前駆体を[18F]フッ化物と置き換えることを伴う。[18F]フッ化物の連結は、通常、高められた温度で、置換スルホン酸エステル又はニトロ部分の求核置換を介して起こる。このような反応条件下に、[18F]フッ化物の反応性は、標的分子に本来備わる立体性と電子的影響とにより制限され得る。更に事を複雑にすることに、不所望の副反応を防止して標識化物質の全体工程収率を上げるために、通常、保護基の使用が必要であり得る。保護基の選択は、個別に評価しなければならず、また、それらの影響が善いか悪いかを、実験的に決定しなければならない。数多くの[18F]−標識化化合物を調製するためには、それぞれの前駆体は脱離基及び最適化した保護基を含んでいなければならない。従って、この戦略は、候補画像化プローブを迅速に変性して、その理化学的、薬物動態学的特性、及び有効性を最適化するためには、あまり一般的でない。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
先行技術が抱える最適化した保護基の必要性等の問題を回避することができる、画像化プローブを迅速に合成するための改善された方法が、当該技術分野で求められている。
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明はクリックケミストリーを利用して、放射性同位元素で分子を標識化するための、より効率的な方法を提供する。本発明方法は、反応性のパートナー、温和なカップリング条件、広範囲の化合物に対するカップリングの一般性、及び高い反応特異性(化学的直交性とも言われる)を特徴とするので、保護基の必要性がなくなり、膨大な数の分子に容易に放射標識を付することができる。
【0010】
一側面において、本発明方法はクリックケミストリー反応(Kolb, H.C.; Finn, M.G.; Sharpless, K.B. Angewandte Chemie, International Edition 2001, 40, 2004-2021)に関与することが知られている官能基を有する反応性前駆体(例えば、小分子又は生体分子)と、これも、また、クリックケミストリー反応に関与することが知られている相補的官能基に共有結合で連結する放射性同位元素を含有する放射性前駆体分子との反応を伴う。好適な態様において、これらの前駆体分子の官能基の対はアルキンとアジドであり、つまり、一方の前駆体がアルキニル官能基を有し他方がアジドを有し、これらは温和な反応条件下でカップリング反応を触媒する酢酸銅等の金属塩の存在下に、迅速に反応する。
【0011】
一態様において、本発明方法は2種類の前駆体分子とクリックケミストリー反応に関与し得る反応基との間のクリックケミストリー反応を伴う。前駆体の一方又は両方は、更に、該反応基とクリックケミストリー官能基との間の結合を有していてもよい。前駆体分子の一方は、また、求核置換反応において容易に置換され得る脱離基を含む。この脱離基は、F−18等の放射性同位元素で置換され、2つの官能基が反応して2つの前駆体分子を共有結合させ、その結果、例えば、腫瘍の生体内診断と同定とを可能とし、また処置する腫瘍の型についての機序に関する治療のための情報を提供する放射性化合物、即ち、分子画像化プローブを形成する。
【0012】
好適なリガンドの態様において、本発明は、標的生体高分子に対し親和性を有する放射性リガンド又は放射性基質の調製方法であって、
(a)i)第一の分子構造;ii)脱離基;iii)クリックケミストリー反応に関与し得る第一の官能基;を含んでなり、更に、iv)第一官能基と分子構造との間のリンカーを含んでいてもよい第一の化合物と、放射性試薬とを、脱離基を放射性試薬の放射性成分で置換するために十分な条件下で反応させて、第一の放射性化合物を形成すること;
(b)i)第二の分子構造;ii)第一の官能基とのクリックケミストリー反応に関与し得る第二の相補的官能基を含んでなる第二の化合物を提供すること(ここで、第二の化合物は第二の化合物と第二の官能基との間のリンカーを含んでなるものでもよい);
(c)第一の放射性化合物の第一官能基を、クリックケミストリー反応を介して、第二の化合物の相補的官能基と反応させ、放射性リガンド又は基質を形成すること;及び
(d)放射性リガンド又は基質を単離すること;
を含んでなる方法である。
【0013】
好適な態様において、生物学的標的分子はチミジンキナーゼ等の酵素である。放射性同位元素は、好ましくは、相間移動触媒と塩複合体とからなる配位化合物の形態のフッ素−18フッ化物を有する。脱離基の例としては、ハロゲン、擬ハロゲン、ニトロ部分、ジアゾニウム塩及びスルホン酸エステルが挙げられる。脱離基の例としては、これらに限定されるものではないが、スルホノキシ基(メタンスルホニル、トリフルオメタンスルホニル、トリルスルホニル、4−ニトロベンゼンスルホニル、4−ブロモベンゼンスルホニル)、ジアゾニウム塩、ニトロ基、及びヨード、ブロモ及びクロロ等のハロ基を挙げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
ここで本発明を更に詳細に以下に説明する。しかし、本発明は多くの異なる形態で具現化することが可能であり、本明細書に説明する実施態様に限定されると考えるべきではない;むしろ、これらの態様は、この開示が徹底的かつ完全であることを期して、また、本発明の範囲を十分に伝達するために、当業者に対して提供するものである。
【0015】
I.定義
本明細書にて使用する場合、単数形の「不定冠詞」及び「定冠詞」は、その文脈が他の意味を明瞭に示さない限り、複数をも指示するものである。
【0016】
「アルキル」とは、炭化水素鎖をいい、典型的には、その長さが1ないし20個程度の原子の範囲のものである。このような炭化水素鎖は分枝鎖でも直鎖でもよいが、典型的には直鎖が好適である。アルキル基の例としては、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、1−メチルブチル、1−エチルプロピル、3−メチルペンチル等が含まれる。本明細書にて使用する場合、「アルキル」は、3個以上の炭素原子について言及している場合、シクロアルキルを包含する。
【0017】
本明細書にて使用する場合、「定着部位」は第一の結合部位と同義である。
【0018】
「アリール」とは、1つ以上の芳香環を意味し、それぞれが5又は6個のコア炭素原子からなる。アリールは、複数のアリール環を含み、ナフチルのように縮合していてもよく、また、ビフェニルのように縮合していなくてもよい。また、アリール環は1つ以上の環状炭化水素、ヘテロアリール、又はヘテロ環と縮合していてもよいし、縮合していなくてもよい。本明細書にて使用する場合、「アリール」はヘテロアリールを包含する。
【0019】
「生物学的標的」は、種々の疾患及び症状のいずれかに伴う生物学的経路に関与する生体分子のいずれであってもよく、これらの疾患及び症状は、癌(例えば、白血病、リンパ腫、脳腫瘍、乳癌、肺癌、前立腺癌、胃癌、ならびに皮膚癌、膀胱癌、骨癌、子宮頚癌、結腸癌、食道癌、眼癌、胆嚢癌、肝臓癌、腎臓癌、喉頭癌、口腔癌、卵巣癌、膵臓癌、陰茎癌、腺腫瘍、直腸癌、小腸癌、ザルコーマ、睾丸癌、尿道癌、子宮癌、及び膣癌)、糖尿病、神経変性疾患、心臓血管系疾患、呼吸器疾患、消化器系疾患、感染性疾患、炎症性疾患、自己免疫疾患等を含む。生物学的経路の例としては、例えば、細胞周期調節(例;細胞増殖及びアポトーシス)、血管新生、シグナル伝達経路、腫瘍抑制因子経路、炎症(COX−2)、発癌遺伝子、及び増殖因子受容体が挙げられる。生物学的標的は、「標的生体高分子」又は「生体高分子」ともいう。生物学的標的は、酵素受容体、リガンド−ゲートイオンチャンネル、G−タンパク質結合受容体、転写因子等の受容体であり得る。生物学的標的は、好ましくは、酵素、膜輸送タンパク質、ホルモン、及び抗体等のタンパク質又はタンパク質複合体である。一つの特に好適な態様において、タンパク質生物学的標的は、炭酸脱水酵素−II等の酵素並びに炭酸脱水酵素IX、XII等のその関連イソ酵素、等の酵素である。
【0020】
本明細書にて使用する場合、「相補的官能基」とは高い特異性をもって互いに反応して(即ち、それらの基がお互いに選択的であり、それらの反応が予測可能な様式ではっきりと定義される生成物を与える。)、新しい共有結合を形成する化学的に反応性の基を意味する。
【0021】
「シクロアルキル」とは、飽和又は不飽和の環状炭化水素鎖をいい、好ましくは3ないし約12個までの炭素原子、より好ましくは3ないし約8個の炭素原子で作られた架橋環状、縮合環状、又はスピロ環状の化合物を包含する。
【0022】
「ヘテロアリール」とは、1ないし4個のヘテロ原子、好ましくは、N、O、もしくはS、又はその組合せを含むアリール基である。ヘテロアリール環は、1つ以上の、環状炭化水素、ヘテロ環、アリール環、又はヘテロアリール環と縮合していてもよい。
【0023】
「ヘテロ環」又は「ヘテロ環状」とは、5〜12原子、好ましくは5〜7原子で構成される1つ以上の環であって、不飽和又は芳香性を有しても有していなくてもよく、炭素ではない少なくとも1個の環原子を有する環を意味する。好適なヘテロ原子は、イオウ、酸素及び窒素である。
【0024】
本明細書にて使用する場合、また当該技術分野において周知として定義される「キナーゼ」とは、アデノシン三リン酸(ATP)から基質分子にリン酸を転移させる酵素である。キナーゼはATPに対する結合部位(リン酸化の補助因子である)、及び基質分子(典型的には別のタンパク質である)に対する少なくとも1つの結合部位を含む。
【0025】
本明細書にて使用する場合、「脱離基」とは、例えば、アミン、チオールもしくはアルコール求核基又はその塩等の求核基によって容易に置換され得る基をいう。このような脱離基は周知であり、例えば、カルボン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミド、N−ヒドロキシベンゾトリアゾール、ハロゲン化物、トリフレート、トシレート、−OR及び−SR等を含む。
【0026】
「リガンド」とは、好ましくは約800Da未満、より好ましくは約600Da未満の分子量を有し、タンパク質等の生物学的標的分子上の第一結合部位に親和性を示す第一の基及び同じ生物学的標的分子上の第二結合部位に親和性を示す第二の基とを含んでなる分子である。2つの結合部位は、標的分子上の同じ結合ポケット内の別々の領域であり得る。リガンドは好ましくは、生物学的標的分子に対し、ナノモルの結合親和性を示す。本明細書に開示したように、一部の側面において、リガンドは「基質」と互換性をもって使用される。リガンドは本明細書に定義したとおりの「分子構造」を含む。
【0027】
本明細書にて使用する場合、「リンカー」とは1ないし10個の原子を含んでなる鎖をいい、C、−NR−、O、S、−S(O)−、−S(O)2−、CO、−C(NR)−等の原子又は基から構成され得る;ここで、RはHであるか、又は、それぞれ置換もしくは非置換の、(C1-10)アルキル、(C3-8)シクロアルキル、アリール(C1-5)アルキル、ヘテロアリール(C1-5)アルキル、アミノ、アリール、へテロアリール、ヒドロキシ、(C1-10)アルコキシ、アリールオキシ及びヘテロアリールオキシからなる群より選択される。また、リンカー鎖は、多環及びヘテロ芳香環等を含めて、飽和、不飽和又は芳香族環の部分からなるものであってもよい。
【0028】
本明細書にて使用する場合、「メタルキレート化基」とは、当該技術分野で定義されているとおりのものであり、例えば、選択的に金属イオンに連結又は結合して複合体を形成する分子、フラグメント又は官能基を含んでいてもよい。ある種の有機化合物は、有機化合物の2個以上の原子を介して金属と配位結合を形成し得る。このような分子の例は、DOTA、EDTA、及びポルフィンを含む。
【0029】
「分子構造」とは、脱離基及び/又は放射性同位元素に連結していてもよい、クリック官能基に連結している、分子又は分子の部分もしくはフラグメントをいうが、いくつかの変形例では、分子はクリック官能基に連結したリンカーに連結し得る。このような分子構造の例としては、これらに限定されるものではないが、例えば、置換又は非置換のメチレン、O、N及びSからなる群より選択されるヘテロ原子を含んでいてもよい、直鎖又は分枝のアルキル基(C1−C10)、それぞれ、非置換又は置換されているアリール及びヘテロアリール基、生体高分子、ヌクレオシド及びその類似体又は誘導体、ペプチド及びペプチド擬似体、炭水化物及びその組合せ等を挙げることができる。
【0030】
「多座配位金属キレート化基」とは、金属に同時に配位(即ち、キレート化)し得る2個以上の供与体原子を有する化学基を意味する。従って、多座配位基は2個以上の供与体原子を有し、配位領域において2ヶ所以上の部位を占める。
【0031】
用語「患者」及び「被験者」とは、ヒト又は動物の対象をいい、特にすべての哺乳動物を包含する。
【0032】
用語「ペリ環状反応」とは、協奏的環状遷移状態において、結合が形成又は切断される反応をいう。協奏的反応は反応の過程において、中間体を伴わない反応である。典型的には、反応物自体が、電荷を帯びていなければ、即ち、カルボニウム又はカルボアニオンでなければ、反応速度に対する溶媒効果は比較的小さい。
【0033】
本明細書にて使用する場合、「放射性化学物質」とは、共有結合により連結したあらゆる放射性同位元素、あらゆる無機放射性イオン溶液(例えば、Na[18F]Fイオン溶液)、又はあらゆる放射性ガス(例えば、[11C]CO2)を含んでなる有機、無機又は有機金属化合物を包含することを意図し、特に、組織画像化を目的として、患者に(例えば、吸入、摂取又は静脈内注射により)投与することを企図した放射性分子画像化プローブを包含し、これらは当該技術分野において、放射性医薬品、放射性トレーサー、又は放射性リガンドともいう。本発明は、主としてPET画像化システムにおいて使用する陽電子放射分子画像化プローブの合成を目的とするものであるが、本発明は、シングルフォトン放射コンピューター連動断層撮影(SPECT)等、他の画像化システムに有用な放射性化学物質を始めとする放射性核種を含んでなるいかなる放射性化合物の合成にも容易に適用し得る。
【0034】
本明細書にて使用する場合、用語「放射性同位元素」とは、放射性崩壊を示す(即ち、陽電子を放射する)同位元素及び放射性同位元素(例えば、[11C]メタン、[11C]一酸化炭素、[11C]二酸化炭素、[11C]ホスゲン、[11C]尿素、[11C]ブロモシアン、ならびに炭素−11を含有する種々の酸塩化物、カルボン酸、アルコール、アルデヒド及びケトン)を含んでなる放射標識化剤をいう。このような同位元素は当該技術分野において、放射性同位元素又は放射性核種ともいう。放射性同位元素は、本明細書において、元素の名称又は記号とその質量数との、通常使用される、様々な組合せ(例えば、18F、F−18、又はフッ素−18)を用いて命名する。代表的な放射性同位元素は、I−124、F−18フッ化物、C−11、N−13、及びO−15であり、これらは、その半減期がそれぞれ、4.2日、110分、20分、10分、及び2分である。放射性同位元素は、好ましくは、極性非プロトン性溶媒等の有機溶媒に溶解する。好ましくは、本方法で使用する放射性同位元素には、F−18、C−11、I−123、I−124、I−127、I−131、Br−76、Cu−64、Tc−99m、Y−90、Ga−67,Cr−51、Ir−192、Mo−99、Sm−153及びTl−201が含まれる。採用し得るその他の放射性同位元素には:As−72、As−74、Br−75、Co−55、Cu−61、Cu−67、Ga−68、Ge−68、I−125、I−132、In−111、Mn−52、Pb−203及びRu−97が含まれる。
【0035】
光学的画像化剤とは、400nmより長く、1200nm以下の波長の光を発する分子をいう。光学的画像化剤の例は、アレックス・フルオル、BODIPY、ナイルブルー、COB、ローダミン、オレゴングリーン、フルオレセイン及びアクリジンである。
【0036】
用語「反応性前駆体」とは、如何なるものであれ、アジド又はアルキニル基の付加により化学的に修飾し得る様々な分子、例えば、小分子、天然物、又は生体分子(例えば、ペプチド又はタンパク質)等を指す。2つの前駆体分子からのリガンド形成のためには、前駆体分子の一方がその核種内に放射性同位元素を有する元素の非放射性同位体を含んでなる。本明細書にて使用する場合、ある側面において、用語「リガンド」は、生体高分子に結合する前駆体、化合物及び画像化プローブを指すことがある。リガンドの2つの前駆体は、好ましくは、酵素等の生物学的標的分子上の個別の結合部位(又は同じ結合部位もしくはポケットの個別の区分)に親和性を示す。生体高分子上の活性部位に結合親和性を有する反応性前駆体は、時に「定着化分子」とも本明細書ではいう。キナーゼの基質結合部位に結合親和性を有する反応性前駆体は、時に「基質擬似体」とも本明細書ではいう。用語「反応性前駆体」は、候補化合物のライブラリを構成する候補化合物を調製するために使用される前駆体又は化合物をもいう。
【0037】
リガンド放射化学態様による本方法の特定の側面において、前駆体分子の一方は、放射性同位元素を前駆体に共有結合させるために、求核置換反応により容易に置換され得る脱離基をも含み得る。代表的な反応性前駆体は、既存のPETプローブ分子、EGF、癌マーカー(例えば、乳癌用のp185HER2、卵巣、肺、乳房、膵臓、及び胃腸管の癌用のCEA、及び前立腺癌用のPSCA)、増殖因子受容体(例えば、EGFR及びVEGFR)、自己免疫疾患に関係する糖タンパク質(例えば、HCgp−39)、腫瘍又は炎症特異的糖タンパク質受容体(例えば、セレクチン類)、インテグリン特異的抗体、ウイルス関連抗原(例えば、HSV糖タンパク質D、EVgp)、及び臓器特異的遺伝子産物に構造的に類似する小分子を含む。
【0038】
「置換された」又は「置換基」とは、本明細書にて使用する場合、その1個以上の水素原子が、C1-5アルキル、C2-5アルケニル、ハロゲン(塩素、フッ素、臭素、ヨウ素原子)、−CF3、ニトロ、アミノ、オキソ、−OH、カルボキシル、−COOC1-5アルキル、−OC1-5アルキル、−CONHC1-5アルキル、−NHCOC1-5アルキル、−OSOC1-5アルキル、−SOOC1-5アルキル、−SOONHC1-5アルキル、−NHSO21-5アルキル、アリール、ヘテロアリール等(これらの基は、それぞれ、更に置換されていてもよい)の基(置換基)を含有する化合物又は官能基を意味する。
【0039】
「基質擬似体」とは、本明細書にて使用する場合、その三次元構造、電荷分布及び水素結合供与体又は受容体配向において酵素基質に類似し、それにより、酵素活性部位により認識され得る化合物を意味する。
【0040】
II.放射性化学品の合成方法
PET画像化プローブを形成するための小分子の伝統的18F−標識化は、適切に活性化された前駆体を、アセトニトリル等の適合する反応媒体中で、[18F]フッ化物で置き換えることからなる。[18F]フッ化物連結は、通常、高められた温度で、置換スルホン酸エステル又はニトロ部分の求核置換を介して起こる。このような反応条件下、[18F]フッ化物の反応性は、標的分子に本来備わる立体効果と電子効果により制限され得る。問題を更に複雑にするのは、通常、不所望の副作用を防止することにより標識化された物質の全体収率を高めるために、保護基の使用が必要とされ得ることである。保護基の選択は、個別に評価しなければならず、またそれらの影響が善いか悪いかを実験的に決定しなければならない。数多くの[18F]−標識化化合物を調製するために、それぞれの前駆体は脱離基及び最適化した保護基を含んでいなければならない。従って、この戦略は、その候補画像化プローブを迅速に変性して理化学的、薬物動態学的特性及び有効性を最適化するためにはあまり一般的でない。当該技術分野において、最適化した保護基を必要とする等、先行技術の問題を回避する画像化プローブを迅速に合成するための改良方法が必要性とされている。もし、放射標識化分子の構築が、クリックケミストリーの場合のように、温和な条件下、化学特異的カップリングパートナーを用いて達成され得るなら、現在実用化されている方法よりも、より迅速で、より効率的な方法で、多くの生物学的標的の生体内画像化のための多様な放射標識化分子を調製する機会があろう。
【0041】
本発明の放射化学合成法では、クリックケミストリーを利用して、PET分子画像化プローブとして使用することができる放射性リガンドを調製する。クリックケミストリーの技術については、例えば、以下の文献(その全文を参照により本明細書の一部とする)に記載されている:
● Kolb, H.C.; Finn, M.G.; Sharpless, K.B. Angewandte Chemie, International Edition 2001, 40, 2004-2021
● Kolb, H.C.; Sharpless, K.B. Drug Discovery Today 2003, 8, 1128-1137
● Rostovtsev, V.V.; Green, L.G.; Fokin, V.V.; Sharpless, K.B. Angewandte Chemie, International Edition 2002, 41, 2596-2599
● Tornoe, C.W.; Christensen, C.; Meldal, M. Journal of Organic Chemistry 2002, 67, 3057-3064
● Wang, Q.; Chan, T.R.; Hilgraf, R.; Fokin, V.V.; Sharpless, K.B.; Finn, M.G. Journal of the American Chemical Society 2003, 125, 3129-3193
● Lee, L.V.; Mitchell, M.L.; Huang, S.-J.; Fokin, V.V.; Sharpless, K.B.; Wong, C.-H. Journal of the American Chemical Society 2003, 125, 9588-9589
● Lewis, W.G.; Green, L.G.; Grynszpan, F.; Radic, Z.; Carlier, P.R.; Taylor, P.; Finn, M.G.; Barry, K. Angew. Chem., Int. Ed. 2002, 41, 1053-1057
● Manetsch, R.; Krasinski, A.; Radic, Z.; Raushel, J.; Taylor, P.; Sharpless, K.B.; Kolb, H.C. Journal of the American Chemical Society 2004, 126, 12809-12818
● Mocharla, V.P.; Colasson, B.; Lee, L.V.; Roeper, S.; Sharpless, K.B.; Wong, C.-H.; Kolb, H.C. Angew. Chem., Int. Ed. 2005, 44, 116-120
【0042】
上記の文献に記載されているように、他のクリックケミストリー官能基も、利用可能ではあるが、環状付加反応、特に、アジドとアルキニル基との反応の使用が好ましい。Cu(I)塩の存在下に、末端アルキンとアジドとは、1,3−双極環化付加反応を受け、1,4−二置換1,2,3−トリアゾールを形成する。Ru(II)塩の存在下に、末端アルキンとアジドとは、1,3−双極環化付加反応を受け、1,5−二置換1,2,3−トリアゾールを形成する(Fokin, V.V. et al. Organic Letters 2005, 127, 15998-15999)。別法として、1,5−二置換1,2,3−トリアゾールは、アジドとアルキニル試薬とを用いて形成し得る(Krasinski, A., Fokin, V.V. & Barry, K. Organic Letters 2004, 1237-1240)。ヘテロ−ディールス−アルダー反応又は1,3−双極環化付加反応もまた使用し得よう(参照:Huisgen 1,3-Dipolar Cycloaddition Chemistry (Vol.1)(Padwa, A., ed.), pp.1-176, Wiley; Jorgensen Angew. Chem., Int. Ed. Engl. 2000, 39, 3558-3588; Tietze, L.F. and Kettschau, G. Top. Curr. Chem. 1997, 189, 1-120)。
【0043】
カップリングパートナーとしてアジドとアルキンとを選択することは、それらが本質的に互いに不活性であり(銅の存在しない場合)、また他の官能基及び反応条件には非常によく耐えるので、特に有利である。この化学的な適合性は、多くの異なるタイプのアジドとアルキンとが最少量の副反応で、互いに結合し得ることを確かなものとする一助となる。このような官能基を用いる放射標識化法は一般的であり、[F18]−標識化前駆体が収率又は効率を失うことなくアルキン又はアジドのいずれかを含み得ることを意味する。更に、標識化条件は温和であり、多くの官能基をもつ小分子が標識化を妨げず、また生体分子も標識化を受け得る。更に、保護基を必要とせず、また反応条件は多くの標識化基質にとって適切である。
【0044】
一側面において、本発明方法は、クリックケミストリー官能基を有する反応性前駆体と、相補的クリックケミストリー官能基に共有結合した放射性同位元素を含んでなる放射性前駆体分子とを反応させることからなる(参照:反応1及び反応2、図1)。放射性前駆体分子は、好ましくは、脱離基に共有結合したクリックケミストリー官能基を有する親分子への放射性同位元素の求核置換により形成し得る比較的簡単な分子である。例えば、放射性前駆体分子はF−18原子に連結した末端アルキニル基を含み得る。
【0045】
別の側面において、本発明方法は、クリックケミストリー官能基を有する反応性前駆体と、放射性同位元素及び、相補性クリックケミストリー官能基と放射性同位元素による置換に適した脱離基との両方に連結した、第二の反応性前駆体を含んでなる放射性分子との、反応を伴う(反応3参照)。例えば、放射性前駆体分子は、F−18原子に連結した末端アルキニル基を含み得る。
【化1】

radioactivity =放射能;Reaction 1 =反応1
図1:分子画像化用標識化化合物の一般的調製法
【0046】
FLT類似体(2)を形成するための代表的反応スキーム(スキームI)を以下に示す;ここで、アジド基を含有するAZTは、F−18に連結した末端アルキンを有する分子と反応し、トリアゾール結合FLT類似体(1)を形成する。F−18前駆体は、単一の工程で脱離基(即ち、−OTs)をF−18で置換することにより形成される。
【0047】
このカップリングの温和な性質のために、ヌクレオシド及びそれらの類似体のすべてがこのケミストリーを用いて標識化し得る。例えば、グアノシンのアジド類似体を18F−フッ化プロパルギルで18F−標識化して、18F−標識化トリアゾール含有グアノシン誘導体を生じ得る(スキームI)。
【0048】
第二の反応スキームは、スキームIの下半分に示す。出発原料のヌクレオシド骨格はアルキンを含んでいてもよい。放射標識化前駆体、18F−フルオロエチルアジド、が先ず調製され、次いで、該分子のアルキン部分と反応して、トリアゾール含有18F−標識化ヌクレオシド類似体が形成される。もし、触媒をRu(II)誘導体に変更するなら、1,5−置換トリアゾールが形成される。
【0049】
ヌクレオシド骨格上のアジド及び/又はアルキンの位置を変化させることにより、一連の18F−標識化ヌクレオシド類似体を容易に入手し得る。下記の図2に示す例において、一連の18F−標識化チミジン類似体は、適切なアルキン又はアジドを含有するチミジン類似体から出発して、その類似体を18F−標識化アルキン又はアルキルアジドと反応させることにより、調製し得る。いくつかの例を本明細書に提供する。
【化2】

4 min =4分;10 min =10分;analog =類似体
B = thymine, adenine, guanine, cytosine, uracil =チミン、アデニン、グアニン、シトシン、ウラシル
スキームI
【化3】

Example 1 =実施例1
X= A linker that contains a click chemistry group =クリックケミストリー基を含むリンカー
A = A radioisotope for molecular imaging (PET or SPECT). In case of PET =分子画像化(PET又はSPECT)用放射性同位元素。PETの場合
【化4】


図2
【0050】
標識化の主題に関するもう一つの変形例は、先ず、アジドとアルキンとを(この例では、アルキルアジドが脱離基を有している)反応させてトリアゾールを形成し、次いで脱離基を18F−フッ化物で置換する(スキームII)。
【化5】

azidoethyltosylate =トシル酸アジドエチル
スキームII
【0051】
この標識化法は、また、放射性同位元素による生体高分子の標識化に理想的に適合する。放射性前駆体と又は「タグ」と反応する反応性前駆体は、タンパク質、炭水化物等の種々の疾患に関連する生体分子のいずれであってもよい。アジド又はアルキニル基等のクリックケミストリー反応性基を含むように化学的に変性し得るものであれば、生物学的有用性を有するいかなる分子であっても、本発明から乖離することなく、使用することができる。放射性前駆体を先ず合成し、次いでこれを銅(I)塩の存在下に水性バッファー媒体中でカップリングさせてトリアゾールを形成させる。
【化6】

biomacromolecule =生体高分子;buffer =バッファー
azide or alkyne =アジド又はアルキン
complementary azide or alkyne =相補的アジド又はアルキン;linker =リンカー
スキームIII
【0052】
第一の反応性前駆体を、脱離基を置換して第一の反応性前駆体に放射性同位元素を共有結合させるに十分な条件下で、放射性同位元素を含有する溶液と反応させ、これにより、放射性反応性前駆体を形成させる。18F含有溶液については、放射性同位元素は、典型的には、相間移動触媒と塩複合体とからなる配位化合物の形態にある。一つの一般的な18F溶液は、相間移動触媒としてのクリプトフィックス2.2.2及び炭酸カリウム(K2CO3)との塩複合体中の18Fからなる。前駆体及び放射性同位元素溶液の両方とも、好ましくは、極性非プロトン性溶媒に溶かす。各試薬について使用する極性非プロトン性溶媒は、同一であっても異なっていてもよいが、典型的には各試薬について同一である。代表的な極性非プロトン性溶媒は、アセトニトリル、アセトン、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、テトラメチレンスルホン(スルホラン)、N−メチルピロリジノン(NMP)、ジメトキシエタン(DME)、ジメチルアセトアミド(DMA)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、及びヘキサメチルホスホルアミド(HMPA)を含む。代表的な求核性脱離基は、ハロゲン、擬ハロゲン、ニトロ、ジアゾニウム塩及びスルホン酸エステルである。特に好適な脱離基は、臭素、ヨウ素、トシレート及びトリフレートである。
【0053】
放射性前駆体は次いで、第二の反応性前駆体と、第二の反応性前駆体に放射性前駆体を共有結合させるに十分な条件下で、第一及び第二反応性基間(例えば、アジド及びアルキニル基間)のクリックケミストリー反応を介して、反応させ、これにより、リガンド放射性化学品を形成する。上記反応の一変形例においては、メタノールが好適な溶媒である。しかし、他の極性プロトン性溶媒、例えば、これらに限定されるものではないが、エタノール、tert−ブタノール、水及びこれらの緩衝化混合物も採用し得る。次いで、リガンド放射性化学品を採取し、好ましくは、例えばリガンド放射性化学品の溶液を直列のHPLCカラムに通すことによって、精製する。1本のカラムは、好ましくは、無機の不純物(例えば、銅及び未反応のF−18)を除去するために使用し、1本のカラムは、好ましくは、クリプトフィックス等の有機不純物を除去するために使用する。
【0054】
放射性同位元素の溶液は、当該技術分野において既知の方法を用いて形成することができる。例えば、F−18の場合、[18F]フッ化物イオンを含むサイクロトロンから採取した水をアニオン交換カラムに通し、F−18イオンをトラップする。次いで、炭酸カリウム水溶液を用いて[18F]フッ化物イオンを樹脂カラムから遊離させ、アセトニトリル等の極性非プロトン性溶媒中でクリプトフィックス222の溶液と混合する。
【0055】
本発明について、当業者は多くの変形例と他の態様とを思いつくであろうが、本発明はこれらにも適合し、上記記述に述べられた教示の恩典を有する。それ故、本発明が開示された具体的な態様に制限されるものではないこと、及び、変形例と他の態様とは本発明の範囲内に包含されるものであることを理解すべきである。本明細書では具体的な用語が採用されているが、これらは一般的な記述の意味で使用されているのであり、制限する目的のものではない。
【0056】
本発明の諸側面
一態様においては、標的生体高分子に対し親和性を有する放射性リガンド又は放射性基質の調製方法であって、
(a)i)第一の分子構造;ii)脱離基;iii)クリックケミストリー反応に関与し得る第一の官能基;を含んでなり、iv)第一官能基と分子構造との間のリンカーを含んでいてもよい第一の化合物と放射性試薬とを、該脱離基を放射性試薬の放射性成分で置換するために十分な条件下で反応させて、第一の放射性化合物を形成すること;
(b)i)第二の分子構造;ii)第一の官能基とのクリックケミストリー反応に関与し得る第二の相補的官能基を含んでなる第二の化合物(ここで、第二の化合物と第二の官能基との間のリンカーを含んでいてもよい。)を提供すること;
(c)第一の放射性化合物の第一官能基を、クリックケミストリー反応を介して、第二の化合物の相補的官能基と反応させ、放射性リガンド又は基質を形成すること;及び
(d)該放射性リガンド又は基質を単離すること;
を含んでなる方法が提供される。
【0057】
上記方法の一変形例において、生体高分子は、酵素、受容体、DNA、RNA、イオンチャンネル及び抗体からなる群より選択される。特別の変形例において、生体高分子はタンパク質である。本方法のある変形例において、標的生体高分子は、アルツハイマー病患者の脳組織におけるベータ−アミロイド等の、病的状態で過剰発現されるタンパク質である。
【0058】
本方法の別の変形例によると、クリックケミストリー反応はペリ環状反応である。好ましくは、ペリ環状反応は環化付加反応である。上記の一変形例において、ペリ環状反応は、1,3−双極環化付加反応及びディールス−アルダー反応からなる群より選択される。本方法の別の変形例において、ペリ環状反応は、好ましくは、1,3−双極環化付加反応である。本方法の別の変形例において、クリックケミストリー反応は1,3−双極環化付加反応である。一つの特別の変形例において、第一官能基がアジドであり第二官能基が末端アルキンであるか、又は、第一官能基が末端アルキンであり第二官能基がアジドである。更に別の変形例において、相補的クリック官能基はアジドとアルキンとを含んでなり、クリック反応は1,4−又は1,5−二置換1,2,3−トリアゾールを含んでなる放射性リガンド又は基質を形成する。本方法の別の変形例において、クリック反応は触媒の存在下に実施され、その場合、触媒はCu(I)塩又はルテニウム(II)塩でよい。
【0059】
特定の好適な変形例において、Cu(I)塩はCu(OAc)であり、Ru(II)塩はCp*RuCl(PPh3)2である。
クリック反応は熱的にも実施し得る。一変形例において、クリック反応は25℃と200℃との間の僅かに高められた温度で実施される。一側面において、反応は25℃と150℃との間、又は25℃と100℃との間で実施し得る。もう一つの側面において、高められた温度でのクリック反応は、マイクロ波オーブンを用いて実施し得る。本方法の一変形例において、放射性試薬は相関移動触媒と塩複合体とからなる配位化合物である。もう一つの変形例において、放射性試薬は、n−Bu4NF−F18、クリプトフィックス[2,2,2]又は炭酸カリウムもしくは重炭酸カリウム、又は炭酸セシウムもしくは重炭酸セシウム、及び/又は18F−フッ化カリウム及び/もしくは18F−フッ化セシウムからなる群より選択される。
【0060】
本方法の特別の変形例においては、置換反応をアセトニトリル、アセトン、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、テトラメチレンスルホン(スルホラン)、N−メチルピロリジノン(NMP)、ジメトキシエタン(DME)、ジメチルアセトアミド(DMA)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)及びヘキサメチルホスホルアミド(HMPA)並びにこれらの混合物からなる群より選択される極性非プロトン性溶媒中で実施してもよく、また、クリック反応は極性非プロトン性溶媒中か、又はメタノール、エタノール、2−プロパノール、tert−ブタノール、n−ブタノール及び/もしくは水又はこれらの緩衝溶液からなる群より選択される極性プロトン性溶媒中で実施する。本方法の特別の変形例において、脱離基はハロゲン、ニトロ部分、ジアゾニウム塩及びスルホン酸エステルからなる群より選択される。
【0061】
上記方法の別の変形例において、第一の官能基と第一の分子構造との間のリンカー又は第二の官能基と第二の分子構造との間のリンカーは、リンカー鎖中に1ないし10個の原子を含有してなるものである。本明細書にて使用する場合、「リンカー」とは1ないし10個の原子を含んでなる鎖をいい、C、−NR−、O、S、−S(O)−、−S(O)2−、CO、−C(NR)−等の原子又は基から構成され得る;ここで、RはHであるか、又はそれぞれ置換もしくは非置換の、(C1-10)アルキル、(C3-8)シクロアルキル、アリール(C1-5)アルキル、ヘテロアリール(C1-5)アルキル、アミノ、アリール、へテロアリール、ヒドロキシ、(C1-10)アルコキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシからなる群より選択される。また、リンカー鎖は、多環及びヘテロ芳香環等を含めて、飽和、不飽和又は芳香族環の部分からなるものであってもよい。
【0062】
上記方法の変形例によると、第一の分子構造又は第二の分子構造は、核酸誘導体である。また、本方法のある変形例において、核酸誘導体はチミジン誘導体である。本方法の別の変形例において、放射性基質は以下の反応スキームに従って調製する:
【化7】

4 min =4分;10 min =10分
radioactive FLT analog =放射性FLT類似体
【0063】
[式中、第一の分子構造はデス−アジド(des-azide)AZTであり、第一の官能基はアジドであり、第二の分子構造は−CH2−基であり、第二の分子構造に連結する脱離基は−OTsであり、また、放射性基質は放射性FLT類似体である]。
【0064】
上記方法の更に別の変形例においては、放射性基質が以下の反応スキームに従って、調製される:
【化8】

M、溶媒、温度
B=チミン、アデニン、グアニン、シトシン、ウラシル
Ln=リンカー(ここで、n=0又は1)
M=CuOAc、Cp*RuCl(PPh3)2
X=放射性同位元素、蛍光団又はキレート化金属
Y=H、F、OH
A=分子構造
【0065】
[式中、リボース環上の塩基(B)は、アデニン、グアニン、シトシン、チミン及びウラシルからなる群より選択される;
触媒がCuOAcである場合、反応は1,4−トリアゾール生成物を形成し、生成物触媒がCp*RuCl(PPh3)2である場合は、反応は1,5−トリアゾール生成物を形成する;
Xは放射性同位元素、蛍光団及びキレート化金属からなる群より選択される;ここで、Xはリンカーを介してアルキンに連結していてもよい]。
【0066】
もう一つの態様によると、下記反応スキームによる基質又はリガンドの調製方法が提供される:
【化9】

M、溶媒、温度
B=チミン、アデニン、グアニン、シトシン、ウラシル
Ln=リンカー(ここで、n=0又は1)
L'=リンカー
M=CuOAc、Cp*RuCl(PPh3)2
X=放射性同位元素、蛍光団又はキレート化金属
Y=H、F、OH
Y'=H、F、OH
A=分子構造
【0067】
[式中、リボース環上の塩基(B)は、アデニン、グアニン、シトシン、チミン及びウラシルからなる群より選択され、このとき、塩基はリンカーL'に連結していてもよいアジドを含んでなる;ここで、塩基は:
1)B=チミン(ここで、アジドはリンカーを介して、3−位、5−メチル又は6−位に連結していてもよい);
2)B=シトシン(ここで、アジドはリンカーを介して、4−N−窒素、5−位又は6−位に連結していてもよい);
3)B=ウラシル(ここで、アジドはリンカーを介して、3−N−窒素、5−位又は6−位に連結していてもよい);
4)B=アデニン(ここで、アジドはリンカーを介して、6−N−窒素、2−位又は8−位に連結していてもよい);及び
5)B=グアニン(ここで、アジドはリンカーを介して、2−N−窒素、1−N−窒素又は8−位に連結していてもよい);
からなる群より選択されるように置換され、且つ、官能化されている;
ただし、触媒がCuOAcである場合、反応は1,4−トリアゾールを形成し、又は触媒がCp*RuCl(PPh3)2である場合、反応は1,5−トリアゾールを形成する;このとき、Xはリンカーを介してアルキンに連結する放射性元素であるか;又はXは放射性同位元素、蛍光団もしくはキレート化金属である;このとき、Yは水素、フッ素又はヒドロキシルである]。
【0068】
本方法又は工程の特別の変形例において、リンカーは分子構造を含有してなるか、又はリンカーと分子構造とが同一の要素である。
【0069】
もう一つの側面によると、下記工程による基質又はリガンドの調製方法が提供される:
【化10】

M、溶媒、温度
B=チミン、アデニン、グアニン、シトシン、ウラシル
Ln=リンカー(ここで、n=0又は1)
L'=リンカー
M=CuOAc、Cp*RuCl(PPh3)2
X=放射性同位元素、蛍光団又はキレート化金属
Y=H、F、OH
Y'=H、F、OH
A=分子構造
【0070】
[式中、Bはリボース環に結合する塩基であり、アデニン、グアニン、シトシン、チミン及びウラシルからなる群より選択される;又は、
B=チミンであり、アルキンがリンカーを介して、リボースの3−位、5−メチル又は6−位に連結していてもよい;又は、
B=シトシンであり、アルキンがリンカーを介して、4−N−窒素、5−位又は6−位に連結していてもよい;又は、
B=ウラシルであり、アルキンがリンカーを介して、3−N−窒素、5−位又は6−位に連結していてもよい;又は、
B=アデニンであり、アルキンがリンカーを介して、6−N−窒素、2−位又は8−位に連結していてもよい;又は、
B=グアニンであり、アルキンがリンカーを介して、2−N−窒素、1−N−窒素又は8−位に連結していてもよい;そして、
触媒がCuOAcである場合、反応は1,4−トリアゾールを形成し、又は触媒がCp*RuCl(PPh3)2である場合、反応は1,5−トリアゾールを形成する;又は
Xは放射性同位元素、蛍光団又はキレート化金属である;そして、Yは水素、フッ素又はヒドロキシルである]。
【0071】
更に別の側面において、標的生体高分子に対し親和性を有する放射性リガンド又は基質の調製方法であって、
(a)i)第一の分子構造;ii)脱離基;iii)クリックケミストリー反応に関与し得る第一の官能基;を含んでなり、iv)第一官能基と分子構造間のリンカーを含んでいてもよい第一の化合物を提供すること;
(b)i)第二の分子構造;ii)第一の官能基とのクリックケミストリー反応に関与し得る第二の相補的官能基を含んでなる第二の化合物を提供すること(ここで、第二の化合物は第二の化合物と第二の官能基との間のリンカーを含んでなるものでもよい);
(c)第一の官能基と第二の化合物の相補的官能基とを、クリックケミストリー反応を介して反応させ、リガンド又は基質を形成すること;及び
(d)リガンド又は基質と放射性試薬とを、脱離基を放射性試薬の放射性成分で置換するために十分な条件下で反応させて、放射性リガンド又は基質を形成すること;及び
(e)放射性リガンド又は基質を単離すること;
を含んでなる方法が提供される。
【0072】
上記方法のそれぞれの一変形例において、生体高分子は、酵素、受容体、DNA、RNA、イオンチャンネル及び抗体からなる群より選択される。上記方法のそれぞれの他の変形例において、生体高分子はタンパク質である。上記方法のそれぞれの更に別の変形例において、クリックケミストリー反応はペリ環状反応であり、ある変形例においては、ペリ環状反応は環化付加反応である。上記それぞれの特別の変形例において、ペリ環状反応は、1,3−双極環化付加反応及びディールス−アルダー反応からなる群より選択される。上記方法の特に好適な変形例において、好ましくは、ペリ環状反応が1,3−双極環化付加反応である。
【0073】
上記方法の一つの変形例において、第一官能基がアジドであり第二官能基がアルキンであるか、又は第一官能基がアルキンであり第二官能基がアジドである。上記方法の上記変形例によると、相補的クリック官能基がアジドとアルキンとを含んでなり、クリック反応が1,4−又は1,5−二置換1,2,3−トリアゾールを含んでなる放射性リガンド又は基質を形成する。特別の変形例において、クリック反応は触媒の存在下に実施され、該触媒はCu(I)塩又はルテニウム(II)塩である。特定の好適な変形例において、Cu(I)塩はCu(OAc)である。特別の変形例において、Ru(II)塩はCp*RuCl(PPh3)2である。
【0074】
上記方法の一部の手法において、反応は高められた温度で実施し得る。一変形例において、クリック反応は、25℃と200℃との間の僅かに高められた温度で実施される。本方法の特別の変形例において、放射性試薬は、相間移動触媒と塩複合体とを含んでなる配位化合物である。更に別の変形例において、放射性試薬は、n−Bu4NF−F18、クリプトフィックス[2,2,2]及び炭酸カリウム、重炭酸カリウム、炭酸セシウム、重炭酸セシウム及び/又は18F−フッ化カリウムからなる群より選択される。
【0075】
別の変形例によると、標識化生体高分子の調製方法であって、
(a)i)第一の分子構造;ii)脱離基;iii)クリックケミストリー反応に関与し得る第一の官能基;を含んでなり、iv)第一官能基と分子構造間のリンカーを含んでいてもよい第一の化合物と、放射性試薬とを、脱離基を放射性試薬の放射性成分で置換するために十分な条件下で反応させて、第一の放射性化合物を形成すること;
(b)i)高分子;ii)第一の官能基とのクリックケミストリー反応に関与し得る第二の相補的官能基を含んでなる第二の化合物を提供すること(ここで、生体高分子は、生体高分子と第二の官能基との間のリンカーを含んでいてもよい);
(c)第一の放射性化合物の第一官能基を、クリックケミストリー反応を介して、生体高分子の相補的官能基と反応させ、放射性生体高分子を形成すること;及び
(d)放射性生体高分子を単離すること;
を含んでなる方法が提供される。
【0076】
上記方法の変形例において、生体高分子は、酵素、受容体、DNA、RNA、イオンチャンネル及び抗体からなる群より選択される。上記方法の別の変形例において、生体高分子はタンパク質である。上記方法の更に別の変形例において、該タンパク質は表皮増殖因子(EGF)である。
【0077】
別の側面においては、放射性リガンド又は基質の調製方法であって、
(a)i)第一の分子構造;ii)脱離基;iii)クリックケミストリー反応に関与し得る第一の官能基;を含んでなり、iv)第一官能基と分子構造間のリンカーを含んでいてもよい第一の化合物を提供すること;
(b)i)生体高分子;ii)第一の官能基とのクリックケミストリー反応に関与し得る第二の相補的官能基を含んでなる第二の化合物を提供すること(ここで、第二の化合物が生体高分子と第二の官能基間のリンカーを含んでいてもよい);
(c)第一の官能基と第二化合物の相補的官能基とを、クリックケミストリー反応を介して反応させ、リガンド又は基質を形成すること;及び
(d)リガンド又は基質と放射性試薬とを、脱離基を放射性試薬の放射性成分で置換するために十分な条件下で反応させて、放射性リガンド又は基質を形成すること;及び
(e)放射性リガンド又は基質を単離すること;
を含んでなる方法が提供される。
【0078】
上記方法のそれぞれの一変形例によると、生体高分子は、酵素、受容体、DNA、RNA、イオンチャンネル及び抗体からなる群より選択される。別の変形例によると、生体高分子はタンパク質である。更に別の変形例によると、脱離基は、ハロゲン、ニトロ部分、ジアゾニウム塩及びスルホン酸エステルからなる群より選択される。
【0079】
本明細書に提供した開示の上記側面のそれぞれにおいては、すべての側面を含んで、態様、変形例及び代表例は、適用可能な場合には、相互に交換し得るものとし、その結果、種々の側面、態様及び変形例が、相互に交換可能であるように、また異なる組合せになるように結合され得る。例えば、リンカーを有さず第一官能基を含んでなる特別の第一分子構造は、相補的官能基を有しリンカーを有しない第二分子構造との1,3−双極性環化付加反応を受けてもよいし、代わりに、リンカーを有し官能基を含んでなる同じ第一分子構造が、分子構造と相補的官能基との間のリンカーを含んでなる相補的官能基を含んでなる第二分子構造との1,3−双極性環化付加反応を受けてもよい。これら諸々の組換えと変形例は、本発明の諸側面に包含されるものとする。
【実施例】
【0080】
3'−デオキシ−3'−[(4−[18F]フルオロメチル)−[1,2,3]トリアゾール]チミジンの合成
【化11】

4 minutes =4分;Cu(I) acetate =酢酸Cu(I);10-15 minutes =10〜15分
【0081】
クリック・インシチュー・2ステップF−18 3'−トリアゾール実験
ステップ1:
【化12】

Sealed vessel =密封容器;4 min =4分
【0082】
11MeVプロトン(RDS−111エクリプス、シーメンス・モレキュラー・イメージング社)を用いて、酸素−18 水(>97%濃厚化)を常法どおりに照射し、[18F]フッ化物イオンを発生させた。衝撃の終了時に、[18F]フッ化物イオン含有の[18O]水をタンタル標的から自動化求核性フッ素化モジュール(エクスプローラRN、シーメンス・バイオマーカー溶液社)に移した。コンピューター制御下に、[18O]水/[18F]フッ化物イオン溶液を、予め水(5mL)、重炭酸カリウム水溶液(0.5M、5mL)、及び水(5mL)ですすいだ小型のアニオン交換樹脂カラム(クロマフィックス45−PS−HCO3、マチェリー−ナーゲル社)に移した。[18O]水(1.8mL)を引き続く精製と再使用のために回収した。トラップした[18F]フッ化物イオンは、炭酸カリウム(3.0mg)/水(0.4mL)溶液で反応容器中に溶出した。クリプトフィックス222(K222、20mg)/アセトニトリル(1.0mL)溶液を加え、その混合物を真空アルゴン気流下に加熱(70〜95℃)し、アセトニトリルと水とを蒸発させた。冷却後、「乾燥した」反応性[18F]フッ化物イオン、K222及び炭酸カリウムの残渣に、トシル酸プロパルギル(1、10.0mg、47.6μmol)/アセトニトリル(0.8mL)溶液を加えた。反応混合物は密封容器(Pmax=1.8バール)中で攪拌(磁気)下、85℃に4分間加熱した。混合物を35℃に冷却した。
ステップ2:
【化13】

Sealed vessel =密封容器;10 min =10分
【0083】
2を含む反応混合物に、メタノール(0.5mL)中、3'−デオキシ−3'−アジドチミジン(AZT、3、13mg、48.7μmol)及び酢酸銅(I)(12mg、98μmol)の溶液を加え、その混合物を密封容器中、35℃で10分間、攪拌(磁気)した。
【0084】
残余のトシレートを加水分解するために、塩酸水(1.0M、1.0mL)を加え、その混合物を105℃で3分間加熱した。35℃に冷却した後、酢酸ナトリウム水溶液(2.0M、0.5mL)を攪拌しながら加えた。反応混合物をサンプルループ(1.5mL)に移し、準分取用HPLCカラム(フェノメネックス・ジェミニ 5μ C18、250×10mm、8%エタノール、92%21mMリン酸バッファー pH8.0 移動相、6.0mL/分)に注入した。生成物3'−デオキシ−3'−[(4−[18F]フルオロメチル)−[1,2,3]トリアゾール]チミジン(4、[18F]FMTT)は、フロー−スルー放射検出及びUV(254nm)でモニターしたところ、16〜18分で溶出した。生成物を含むHPLC溶出液(10〜12mL)は、0.22μm無菌フィルターを通して無菌バイアルに容れた。
【0085】
約500mCiの[18F]フッ化物イオンから出発した代表的な生産実験は、60分掛けた合成及びHPLC精製の後に、単離された生成物14.2mCi(EOBで20.7mCi、4.1%収率)を与えた。
【0086】
収集した生成物はHPLCにより分析した(フェノメネックス・ジェミニ5μ C18、150×4.6mm、12%エタノール、88%水 移動相、1.0mL/分)。放射能とUV(267nm)検出とによりモニターしたところ、この生成物は保持時間5分、及び放射化学純度>96.0%を示した。
【0087】
トリアゾール前駆体及び標準の合成
【化14】

propargyl alcohol =プロパルギルアルコール;Cu(I)acetate =酢酸Cu(I)
18F-labeling precursor =18F標識化前駆体;18F-standard=18F標準
【0088】
3−N−5'−O−ビスBocAZTの合成
AZT(3.2g、11.99mmol)、DMAP(8.1g、71.91mmol)及びCH2Cl2(20mL)を容れた丸底フラスコに、Boc2O(15.7g、71.91mmol)を通気しながら加えた。反応液は急速に黄色となった。反応液を室温で一夜攪拌した。次いで、反応液を水に注入し、CH2Cl2で抽出した。併合した有機層は水で洗い、乾燥し(MgSO4)、濾過、濃縮乾固した。粗製物質を、シリカゲル上で、溶出液としてCH2Cl2を用いて精製し、白色固体5g(89.3%)を得た。
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ: 1.50 (9H, s), 1.61 (9H, s), 1.95 (3H, d, J=3.0 Hz); 2.39-2.48 (2H, m), 4.05-4.07 (1H, m), 4.23-4.25 (1H, m), 4.32-4.34 (2H, m), 6.20 (1H, t, J=6.0 Hz), 7.46 (1H, s)。
MS(エレクトロスプレー):490(M+23)
【0089】
3−N−5'−O−ビスBoc−3'−[4−ヒドロキシメチル−1,2,3−トリアゾール]チミジンの合成
アジド(1.4g、3mmol)、プロパルギルアルコール(201mg、3.6mmol)及びMeOH(6mL)を容れた丸底フラスコに、酢酸Cu(I)(142mg、1.2mmol)を加えた。TLC(Et2O)は1分後に約80%の出発原料の消費を、また4分後に約100%の出発原料の消費を示した。反応液に水を加えると沈殿を生じた。この沈殿を濾過により単離した。次いで、粗製物質をシリカゲル上で精製した。
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ: 1.50 (9H, s), 1.61 (9H, s), 1.98 (3H, s,); 2.71-2.81 (1H, m), 3.02-3.11 (1H, m), 4.38 (2H, dq, J= 12.3 Hz), 4.63-4.67 (1H, m), 4.82 (2H, s), 5.20-5,28 (2H, m), 6.36 (1H, dd, J=9.0, 6.0 Hz), 7.50 (1H, d, J=3.0 Hz), 7.64 (1H, s)
13C NMR (75 MHz, CDCl3) δ: 12.69, 27.42, 27.73, 38.42, 56.35, 59.15, 65.06, 82.12, 83.53, 86.17, 87.01, 111.00, 121.66, 135.10, 147.76, 148.34, 152.78, 161.19
MS(エレクトロスプレー):524(M+H)、546(M+23)
【0090】
3−N−5'−O−ビスBoc−3'−[4−O−トシルメチル−1,2,3−トリアゾール]チミジンの合成
トリアゾール(102mg、0.2mol)、TEA(270μL、1.95mmol)、DMAP(2mg、0.02mmol)及びCH2Cl2(5mL)を容れた丸底フラスコに、−20℃で、Ts2O(152mg、0.8mmol)を加えた。反応液を−20℃で3時間攪拌した。TLC(EtOAc)はすべての出発原料が消費されたことを示した。次いで、反応液を濃縮乾固し、残渣はシリカゲル上、40%EtOAc/ヘキサンを溶出液として精製し、白色固体91mg(68.9%)を得た。
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ: 1.50 (9H, s), 1.61 (9H, s), 1.98 (3H, s,); 2.47 (3H, s), 2.71-2.81 (1H, m), 3.02-3.11 (1H, m), 4.38 (2H, dq, J=12.3 Hz), 4.56-4.61 (1H, m), 5.19 (2H, s), 5.20-5.28 (2H, m), 6.36 (1H, dd, J=9.0, 6.0 Hz), 7.35 (1H, s), 7.38 (1H, s), 7.50 (1H, d, J=3.0 Hz), 7.64 (1H, s), 7.77 (1H, s), 7.78 (1H, s), 7.82 (1H, s)
13C NMR (75 MHz, CDCl3) δ: 12.67, 21.67, 27.42, 27.72, 38.38, 59.34, 62.86, 64.99, 82.03, 83.51, 86.21, 86.95, 110.98, 127.99, 135.41, 145.28, 147.75, 148.29, 152.75, 161.17
【0091】
3−N−5'−O−ビスBoc−3'−[4−フルオロメチル−1,2,3−トリアゾール]チミジンの合成
原料アルコール(105mg、0.2mmol)及びCH2Cl2(5mL)を容れた丸底フラスコに、0℃で、BAST(44mg、0.2mmol)を加えた。反応液を2時間攪拌した。TLC(1:1EtOAc:ヘキサン)は、出発原料が略完全に消費されていることを示した。反応液を飽和NaHCO3に注ぎ、CH2Cl2中に抽出した。併合した有機層は乾燥し(MgSO4)、濾過、濃縮乾固して、シリカゲル上、1:1EtOAc:ヘキサンを溶出液として精製し、白色固体58mg(55%)を得た。
MS(エレクトロスプレー):526(M+H)、548(M+23)
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ: 1.50 (9H, s), 1.61 (9H, s), 1.98 (3H, s,); 2.75-2.84 (1H, m), 3.05-3.15 (1H, m), 4.38 (2H, dq, J=12.3 Hz), 4.63-4.67 (1H, m), 5.23-5.28 (2H, m), 5.51 (2H, d, J=51 Hz), 6.36 (1H, dd, J=9.0, 6.0 Hz), 7.50 (1H, d, J=3.0 Hz), 7.77 (1H, s)
【0092】
3'−[4−フルオロメチル−1,2,3−トリアゾール]チミジンの合成
フルオロトリアゾール(52mg、0.1mmol)を容れた丸底フラスコに、TFA(1mL)を加えた。反応液を室温で1時間攪拌した。次いで、反応液を減圧下濃縮乾固し、シリカゲル上、10%MeOH:CH2Cl2を溶出液として用い精製し、10mg(32.5%)の澄明な無色油を得た。
MS(エレクトロスプレー):326(M+H)、348(M+23)
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ: 1.96 (3H, s,); 2.89-2.98 (1H, m), 3.03-3.12 (1H, m), 3.78 (1H, dd, J=6.0, 3.0 Hz), 4.04 (1H, dd, J=6.0, 3.0 Hz), 4.44-4.48 (1H, m), 5.45-5.53 (2H, m), 5.52 (2H, d, J=48 Hz), 6.18 (1H, t, J=9.0, 6.0 Hz), 7.34 (1H, s), 7.78 (1H, d, J=3.0 Hz), 8.33 (1H, br s)
19F NMR (282 MHz, CDCl3) δ:-208.1087
【0093】
クリックF−18 3'−トリアゾール実験
【化15】

Sealed vessel =密封容器;10 min =10分
【0094】
11MeVプロトン(RDS−111エクリプス、シーメンス・モレキュラー・イメージング社)を用いて、酸素−18 水(>97%濃厚化)を常法どおりに照射し、[18F]フッ化物イオンを生成させた。衝撃の終了時に、[18F]フッ化物イオン含有の[18O]水をタンタル標的から自動化求核性フッ素化モジュール(エクスプローラRN、シーメンス・バイオマーカー溶液社)に移した。コンピューター制御下に、[18O]水/[18F]フッ化物イオン溶液を、予め水(5mL)、重炭酸カリウム水溶液(0.5M、5mL)、及び水(5mL)ですすいだ小型のアニオン交換樹脂カラム(クロマフィックス45−PS−HCO3、マチェリー−ナーゲル社)に移した。[18O]水(1.8mL)を引き続く精製と再使用のために回収した。トラップした[18F]フッ化物イオンは、炭酸カリウム(3.0mg)/水(0.4mL)溶液で反応容器中に溶出した。クリプトフィックス222(K222、20mg)/アセトニトリル(1.0mL)溶液を加え、その混合物を真空アルゴン気流下に加熱(70〜95℃)し、アセトニトリルと水とを蒸発させた。冷却後、「乾燥した」反応性[18F]フッ化物イオン、K222、及び炭酸カリウムの残渣に、アセトニトリル(0.9mL)中の3'−デオキシ−3'−[(4−p−トルエンスルホニルオキシ)メチル]−5'−O−Boc−3−N−Boc−[1,2,3]トリアゾール]チミジン(“3'−トリアゾール−チミジン−トシレート”)(5、26.7mg、39.4μmol)の溶液を加えた。反応混合物は密封容器(Pmax=2.1バール)中で攪拌(磁気)下、85℃に10分間加熱した。次いで、混合物を55℃に冷却し、アセトニトリルの大部分を前のように真空アルゴン気流下に蒸発させた。
【化16】

Sealed vessel =密封容器;3 min =3分
【0095】
粗製の保護された[18F]フッ素化中間体(6)に塩酸水(1.0M、1.0mL)を加え、その混合物を105℃で3分間加熱した。35℃に冷却した後、酢酸ナトリウム水溶液(2.0M、0.5mL)を撹拌下に加えた。反応混合物をサンプルループ(1.5mL)に移し、準分取用HPLCカラム(フェノメネックス・ジェミニ 5μ C18、250×10mm、8%エタノール、92%21mMリン酸バッファー pH8.0 移動相、5.0mL/分)に注入した。生成物の3'−デオキシ−3'−[(4−[18F]フルオロメチル)−[1,2,3]トリアゾール]チミジン(7、[18F]FMTT)は、フロー−スルー放射検出及びUV(254nm)でモニターしたところ、15〜18分で溶出した。生成物を含むHPLC溶出液(14〜16mL)は、0.22μm無菌フィルターを通して無菌バイアルに容れた。
【0096】
約800mCiの[18F]フッ化物イオンから出発した代表的な生産実験は、51分掛けた合成とHPLC精製の後に、単離された生成物404mCi(EOBで557mCi、69%収率)を与えた。
【0097】
収集した生成物はHPLCにより分析した(フェノメネックス・ジェミニ 5μ C18、150×4.6mm、12%エタノール、88%水移動相、1.0mL/分)。放射能とUV(267nm)検出によりモニターしたところ、この生成物は保持時間8分、及び放射化学純度>99.0%を示した。
【0098】
3N−トリアゾール前駆体及び標準の合成
【化17】

propargyl bromide =臭化プロパルギル
azido ethanol =アジドエタノール
18F-labeling precursor =18F標識前駆体;18F-standard =18F標準
【0099】
5'−O−DMT FLTの合成
FLT(244mg、1mmol)及びTEA(700uL、5mmol)を容れた丸底フラスコに、DMT−Cl(509mg、1.5mmol)を加えた。反応液を一夜攪拌した。次いで、反応液を水に注ぎ、CH2Cl2中に抽出した。併合した有機層を乾燥(MgSO4)し、濾過、濃縮乾固した。すべてを次のステップに移した。
【0100】
3−N−プロパルギル−5'−O−DMT FLTの合成
DMT−FLT(546mg、1mmol)、DMF(10mL)及びK2CO3(1g)を容れた丸底フラスコに、臭化プロパルギル(179mg、1.2mmol)を加えた。反応液を室温で3時間攪拌した。TLC(1:1Et2O:ヘキサン)は出発原料が完全に消費されたことを示した。反応液を水に注ぎ、CH2Cl2中に抽出した。併合した有機層を水洗し(10回)、乾燥(MgSO4)し、濾過、濃縮乾固した。すべてを次のステップに移した。
【0101】
3−N−プロパルギルFLTの合成
DMT−プロパルギルFLT(584mg、1mmol)を容れた丸底フラスコに、HOAc(10mL)を加えた。反応液を3時間、還流下に加熱した。TLC(40%EtOAc:ヘキサン)は反応が完結していないことを示した。次いで、反応液を減圧濃縮し、残渣をシリカゲル上、先ずCH2Cl2をサンプルに負荷し、次いで40%EtOAc:ヘキサンで溶出、精製し、146mg(52%)の澄明な無色油を得た。
【0102】
3−N−プロパルギル−5'−O−BocFLTの合成
プロパルギルFLT(146mg、0.52mmol)、DMAP(3mg、0.025mmol)、TEA(144uL、1.04mL)及びCH2Cl2(5mL)を容れた丸底フラスコに、Boc2O(136mg、0.62mmol)を通気しながら加えた。反応液は急速に黄色となった。反応液を室温で1時間攪拌した。TLC(50%EtOAc:ヘキサン)は出発原料が完全に消費されたことを示した。次いで、反応液を水に注ぎ、CH2Cl2中に抽出した。併合した有機層は水で洗い、乾燥し(MgSO4)、濾過、濃縮乾固した。すべてを次のステップに移した。
【0103】
3−N−(1−ヒドロキシエチル−4−メチレン)−5'−O−Boc−3'−デオキシ−3'−フルオロチミジンの合成
Boc−プロパルギルFLT(198mg、0.51mmol)、アジドエタノール(25%純度、271mg、0.78mmol)、アスコルビン酸ナトリウム溶液(0.1M、778uL)、tBuOH(2mL)及び水(2mL)を容れた丸底フラスコに、CuSO4溶液(0.04M、972uL)を加えた。反応液は黄色から褐色ないし黄色に、すべて1分以内に変化した。反応液を一夜攪拌した。次いで、反応液を飽和NaHCO3に注ぎ、EtOAc中に抽出した。併合した有機層を乾燥し(MgSO4)、濾過、濃縮乾固した。残渣をシリカゲル上、EtOAc(黄色の副生物を除くため)、次いで10%MeOH:CH2Cl2を用いて精製し、157mg(65.6%)の白色固体を得た。
【0104】
3−N−(1−O−トシルエチル−4−メチレン)−5'−O−Boc−3'−デオキシ−3'−フルオロチミジンの合成
当該アルコール(106mg、0.23mmol)、CH2Cl2(5mL)、DMAP(3mg、0.02mmol)、及びTEA(315uL、2.26mmol)を容れた丸底フラスコに、−20℃でTs2O(172mg、0.9mmol)を加えた。反応液を3時間攪拌した。次いで、反応液を水に注入し、CH2Cl2中に抽出した。併合した有機層を乾燥し(MgSO4)、濾過、濃縮乾固した。シリカゲル上、残渣にCH2Cl2を負荷し、次いでEtOAcで溶出、精製し、120mg(83.7%)の白色固体を得た。
【0105】
3−N−(1−フルオロエチル−4−メチレン)−5'−O−Boc−3'−デオキシ−3'−フルオロチミジンの合成
CH2Cl2(2mL)中、アルコール(46mg、0.1mmol)を容れた−78℃の丸底フラスコに、BAST(43μL、0.2mmol)を加えた。反応液を30分間攪拌し、次いで、30分で室温まで昇温した。次いで、反応液を飽和NaHCO3に注ぎ、CH2Cl2中に抽出した。併合した有機層を乾燥し(MgSO4)、濾過、濃縮乾固した。すべてを次のステップに移した。
【0106】
3−N−(1−フルオロエチル−4−メチレン)−3'−デオキシ−3'−フルオロチミジンの合成
フルオロ化合物(47mg、0.1mmol)を容れた丸底フラスコに、TFA(1mL)を加えた。反応液を室温で3時間攪拌した。次いで、反応液を濃縮乾固し、残渣はシリカゲル上、2.5%MeOH:CH2Cl2を用いて精製して、12mg(32.3%)の白色固体を得た。
【0107】
クリックF−18 3−N−トリアゾール実験
【化18】

Sealed vessel =密封容器;10 min =10分
【0108】
11MeVプロトン(RDS−111エクリプス、シーメンス・モレキュラー・イメージング社)を用いて、酸素−18 水(>97%濃厚化)を常法どおりに照射し、[18F]フッ化物イオンを生成させた。衝撃の終了時に、[18F]フッ化物イオン含有の[18O]水をタンタル標的から自動化求核性フッ素化モジュール(エクスプローラRN、シーメンス・バイオマーカー溶液社)に移した。コンピューター制御下に、[18O]水/[18F]フッ化物イオン溶液を、予め水(5mL)、重炭酸カリウム水溶液(0.5M、5mL)、及び水(5mL)ですすいだ小型のアニオン交換樹脂カラム(クロマフィックス45−PS−HCO3、マチェリー−ナーゲル社)に移した。[18O]水(1.8mL)を引き続く精製と再使用のために回収した。トラップした[18F]フッ化物イオンは、炭酸カリウム(3.0mg)/水(0.4mL)溶液で反応容器中に溶出した。クリプトフィックス222(K222、20mg)/アセトニトリル(1.0mL)溶液を加え、その混合物を真空アルゴン気流下に加熱(70〜95℃)し、アセトニトリルと水とを蒸発させた。冷却後、「乾燥した」反応性[18F]フッ化物イオン、K222及び炭酸カリウムの残渣に、アセトニトリル(0.9mL)中の3−N−[1−(2'−p−トルエンスルホニルオキシ)エチル]−1H−[1,2,3]トリアゾール−4−イルメチル]−3'−デオキシ−3'−フルオロ−5'−Boc−チミジン(“3−N−トリアゾール−チミジン−トシレート”)(8、20.0mg、32.1μmol)の溶液を加えた。反応混合物は密封容器(Pmax=2.1バール)中で攪拌(磁気)下、85℃に10分間加熱した。次いで、混合物を55℃に冷却し、アセトニトリルの大部分を前述のように真空アルゴン気流下に蒸発させた。
【化19】

Sealed vessel =密封容器;3 min =3分
【0109】
粗製の保護された[18F]フッ素化中間体(9)に塩酸水(1.0M、1.0mL)を加え、混合物を105℃で3分間加熱した。35℃に冷却した後、酢酸ナトリウム水溶液(2.0M、0.5mL)を撹拌下に加えた。反応混合物をサンプルループ(1.5mL)に移し、準分取用HPLCカラム(フェノメネックス・ジェミニ 5μ C18、250×10mm、8%エタノール、92%21mMリン酸バッファー pH8.0 移動相、6.0mL/分)に注入した。生成物の3−N−[1−(2'−[18F]フルオロエチル)−1H−[1,2,3]トリアゾール−4−イルメチル]−3'−デオキシ−3'−フルオロチミジン(10、[18F]FETFLT)は、フロー−スルー放射検出及びUV(254nm)でモニターしたところ、28〜29分で溶出した。生成物を含むHPLC溶出液(10〜12mL)は、0.22μm無菌フィルターを通して無菌バイアルに容れた。
【0110】
約475mCiの[18F]フッ化物イオンから出発した代表的な生産実験は、61分掛けた合成とHPLC精製の後、単離された生成物299mCi(EOBで439mCi、92%収率)を与えた。
【0111】
収集した生成物はHPLCにより分析した(フェノメネックス・ジェミニ 5μ C18、150×4.6mm、20%エタノール、80%水移動相、1.0mL/分)。放射能とUV(267nm)検出によりモニターしたところ、この生成物は保持時間6.5分、及び放射化学純度>99.0%を示した。
【0112】
塩基修飾FLT類似体
【化20】

【0113】
図3.チミジン修飾類似体18の合成。試薬と条件:(a)エチニルトリメチルシラン、 (Ph3P)2PdCl2、Cu(I)I、Et3N、DMF、8時間、25℃;(b)NaOCH3、CH3OH、4時間、25℃;次いで、アンバーライトIR−120(プラス)イオン交換樹脂(H+型);(c)Boc2O、Et3N、DMAP、THF、12時間、25℃;(d)アジドエタノール、酢酸Cu(I)、CH3OH、6時間、25℃;(e)Ts2O、Et3N、DMAP、CH2Cl2、3時間、−20℃;(f)BAST、CH2Cl2、1時間、−78℃、次いで、4時間、25℃;(g)TFA、3時間、25℃。
【化21】

【0114】
図4.18F−標識化チミジン類似体20の放射線合成。試薬と条件:(a)K18F、K222/K2CO3、CH3CN、85℃、密封容器、10分;(b)1M−HCl、105℃、密封容器、3分。
【0115】
実験の部
1−((2R,4S,5R)−4−ヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン−2−イル)−5−((トリメチルシリル)ピリミジン−2,4(1H,3H)−ジオン(12)の合成
5−ヨード−2'−デオキシウリジン(5.10g、14.4mmol)、DMF(36mL)、Et3N(72mL)、CuI(221mg、1.16mmol)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)(233mg、0.33mmol)及びトリメチルシリルエチン(6.93g、71mmol)を、アルゴン下に、乾燥した丸底フラスコ(250mL)に攪拌しながら順次加えた。反応は室温で8時間続けた。減圧下に溶媒を除去した後に、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、CH3OH:CHCl3 1:9)により精製して、生成物(3.84g、82%)を得た。1H NMR (300 MHz, DMSO-d6) δ: 0.18 (s, 9H), 2.10-2.15 (m, 2H), 3.59 (ddd, 2H, J=12.0, 6.0, 3.0 Hz), 3.79 (q, 1H, J=3.0 Hz), 4.21-4.24 (m, 1H), 5.11 (t, 1H, J=6.0 Hz), 5.25 (d, 1H, J=3.0 Hz), 6.09 (t, 1H, J=6.0 Hz), 8.27 (s, 1H), 11.63 (s, 1H)。13C NMR (75 MHz, DMSO-d6): δ: 0.00, 40.39, 60.84, 69.97, 84.84, 87.62, 97.06, 98.00, 98.29, 144.74, 149.42, 161.47
【0116】
5−エチニル−1−((2R,4S,5R)−4−ヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン−2−イル)ピリミジン−2,4(1H,3H)−ジオン(13)の合成
化合物12(3.25g、10mmol)をMeOH(40mL)に攪拌しながら溶かし、NaOMe(1.08g、20mmol)を加えた。反応液を室温で4時間攪拌した。次いで、該溶液をイオン交換樹脂アンバーライトIR−120プラス(H+型)で中和し、濾過、減圧濃縮し、クロマトグラフィー(シリカゲル、MeOH/CHCl31:9)に付し、生成物(2.0g、79%)を得た。1H NMR (300 MHz, DMSO-d6) δ: 2.11-2.15 (m, 2H), 3.59 (ddd, 2H, J=12.0, 6.0, 3.0 Hz), 3.80 (q, 1H, J=3.0 Hz), 4.11 (s, 1H), 4.22-4.24 (m, 1H), 5.14 (t, 1H, J=6.0 Hz), 5.25 (d, 1H, J=3.0 Hz), 6.10 (t, 1H, J=6.0 Hz), 8.30 (s, 1H), 11.63 (s, 1H)。13C NMR (75 MHz, DMSO-d6): δ: 40.29, 60.79, 69.94, 76.38, 83.60, 84.76, 87.55, 97.53, 144.50, 149.38, 161,63。MS (m/z)(ESI): 275.2 [M+Na]+, 527.2 [2M+Na]+
【0117】
3−((2R,4S,5R)−4−(tert−ブトキシカルボニルオキシ)−5−((tert−ブトキシカルボニルオキシ)メチル)テトラヒドロフラン−2−イル)−5−エチニル−2,6−ジオキソ−2,3−ジヒドロピリミジン−1(6H)−カルボン酸tert−ブチル(14)の合成
化合物13(1.514g、6mmol)、DMAP(0.73g、6mmol)、Et3N(5.47g、54mmol)及びTHF(75mL)の溶液に、二炭酸ジ−tert−ブチル(11.79g、54mmol)を通気しながら加えた。反応液を室温で12時間攪拌した。次いで、反応混合物を水中に注ぎ、CH2Cl2中に抽出した。併合した有機相を水洗し、MgSO4で乾燥し、濾過、濃縮乾固した。粗製物を、シリカゲル上、CH2Cl2を溶出液として精製し、淡黄色固体2.5g(75%)を得た。1H NMR (300 MHz, DMSO-d6) δ: 1.42 (d, 18H), 1.52 (s, 9H), 2.35-2.45 (m, 2H), 4.25 (m, 3H), 4.29 (s, 1H), 5.08 (d, 1H, J=6.0 Hz), 6.06 (t, 1H, J=6.0 Hz), 8.09 (s, 1H)。13C NMR (75 MHz, DMSO-d6): δ: 27.25, 31.25, 35.92, 65.87, 76.24, 81.12, 81.97, 82.44, 83.92, 84.88, 98.27, 144.11, 149.32, 152,02, 152.57, 161.43。MS (m/z)(ESI): 575.2 [M+Na]+
【0118】
3−((2R,4S,5R)−4−(tert−ブトキシカルボニルオキシ)−5−((tert−ブトキシカルボニルオキシ)メチル)テトラヒドロフラン−2−イル)−5−(1−(2−ヒドロキシエチル)−1H−1,2,3−トリアゾール−4−イル)−2,6−ジオキソ−2,3−ジヒドロピリミジン−1(6H)−カルボン酸tert−ブチル(15)の合成
化合物14(1.5g、2.72mmol)、アジドエタノール(40%純度、0.89g、4.08mmol)、CH3OH(45mL)を容れた丸底フラスコに、酢酸銅(I)(0.133g、1.09mmol)を加えた。反応液を室温で6時間攪拌した。次いで、反応混合物を水に注ぎ、酢酸エチル中に抽出した。併合した有機相を水洗し、MgSO4で乾燥し、濾過、濃縮乾固した。粗製物を、シリカゲル上、EtOAc:ヘキサン(7:3)を溶出液として精製し、淡黄色固体1.08g(62%)を得た。1H NMR (300 MHz, DMSO-d6) δ: 1.42 (d, 18H), 1.52 (s, 9H), 2.31-2.39 (m, 2H), 3.77 (d, 2H), 4.12 (d, 2H), 4.23 (m, 3H), 4.44 (t, 1H), 4.65 (t, 1H), 6.16 (m, 1H), 7.94 (d, 1H), 8.33 (s, 1H)。13C NMR (75 MHz, DMSO-d6): δ: 27.50, 31.25, 52.10, 59.94, 66.90, 76.48, 82.44, 82.49, 86.63, 105.73, 110.85, 122.97, 138.23, 147.12, 149.53, 151.99, 161.45。MS (m/z)(ESI): 640.2 [M+H]+
【0119】
3−((2R,4S,5R)−4−(tert−ブトキシカルボニルオキシ)−5−((tert−ブトキシカルボニルオキシ)メチル)テトラヒドロフラン−2−イル)−2,6−ジオキソ−5−(1−(2−トシルオキシ)エチル)−1H−1,2,3−トリアゾール−4−イル)−2,3−ジヒドロピリミジン−1(6H)−カルボン酸tert−ブチル(16)の合成
化合物15(0.4g、0.626mmol)、DMAP(8mg、0.06mmol)、Et3N(0.634g、6.26mmol)及びCH2Cl2(8mL)の溶液に、−20℃で、無水p−トルエンスルホン酸(0.817g、2.5mmol)を加えた。反応液を−20℃で3時間攪拌した。次いで、反応混合物を水に注ぎ、CH2Cl2中に抽出した。併合した有機相をMgSO4で乾燥し、濾過、濃縮乾固した。粗製物を、シリカゲル上、EtOAc:ヘキサン(3:2)で溶出して精製し、淡黄色固体0.38g(77%)を得た。1H NMR (300 MHz, DMSO-d6) δ: 1.35 (s, 9H), 1.45 (s, 9H), 1.56 (s, 9H), 2.62-2.75 (m, 2H), 2.34 (s, 3H), 4.26 (m, 3H), 4.43 (s, 2H), 4.68 (s, 2H), 5.14 (s, 1H), 6.19 (t, 1H, J=6.0 Hz), 7.35 (d, 2H, J=6.0 Hz), 7.58 (d, 2H, J=6.0 Hz), 8.28 (s, 1H), 8.40 (s, 1H)。13C NMR (75 MHz, DMSO-d6): δ: 20.98, 23.88, 27.16, 52.82, 60.12, 66.05, 76.48, 81.12, 81.88, 82.46, 125.46, 126.69, 127.40, 127.60, 128.04, 129.76, 130.22, 137.66, 145.53, 149.52, 152.07, 152.59。MS (m/z)(ESI): 794.2 [M+H]+
【0120】
3−((2R,4S,5R)−4−(tert−ブトキシカルボニルオキシ)−5−((tert−ブトキシカルボニルオキシ)メチル)テトラヒドロフラン−2−イル)−5−(1−(2−フルオロエチル)−1H−1,2,3−トリアゾール−4−イル)−2,6−ジオキソ−2,3−ジヒドロピリミジン−1(6H)−カルボン酸tert−ブチル(17)の合成
CH2Cl2(10mL)中の化合物15(0.4g、0.626mmol)を容れた−78℃の丸底フラスコに、三フッ化ビス(2−メトキシエチル)アミノイオウ(0.277g、1.251mmol)を加えた。反応液を1時間攪拌し、次いで、4時間で室温にまで温めた。次いで、反応混合物を飽和NaHCO3溶液に注ぎ、CH2Cl2中に抽出した。併合した有機相をMgSO4で乾燥し、濾過、濃縮乾固した。粗製物を、シリカゲル上、EtOAc:ヘキサン(1:1)を溶出液として精製し、白色固体0.26g(65%)を得た。1H NMR (300 MHz, DMSO-d6) δ: 1.35 (s, 9H), 1.45 (s, 9H), 1.54 (s, 9H), 2.55-2.70 (m, 2H), 4.20 (m, 1H), 4.31 (d, 2H), 4.77 (d, 2H), 4.81 (t, 1H), 4.91 (t, 1H), 5.12 (t, 1H), 6.16 (t, 1H), 8.41 (d, 1H), 8.47 (s, 1H)。13C NMR (75 MHz, DMSO-d6): δ: 27.14, 36.17, 58.13, 65.98, 76.48, 81.16, 81.85, 82.45, 86.64, 105.48, 110.85, 122.91, 135.74, 138.68, 149.52, 152.51, 152.58, 161.08。19F NMR (282 MHz, DMSO-d6): δ: -222.22。MS (m/z)(ESI): 642.2 [M+H]+
【0121】
5−(1−(2−フルオロエチル)−1H−1,2,3−トリアゾール−4−イル)−1−((2R,4S,5R)−4−ヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン−2−イル)ピリミジン−2,4(1H,3H)−ジオン(18)の合成
化合物17(0.2g、0.31mmol)を容れた丸底フラスコに、トリフルオロ酢酸(3mL)を加えた。反応液を室温で3時間攪拌した。次いで、反応液を濃縮乾固し、残渣をシリカゲル上、CH2Cl2:CH3OH(4:1)を溶出液として精製し、65mg(61%)の白色固体を得た。1H NMR (300 MHz, DMSO-d6) δ:2.16-2.18 (m, 2H), 3.57 (s, 2H), 3.59 (s, 1H), 3.83 (dd, 2H, J=6.0 Hz), 4.26 (dd, 1H, J=6.0 Hz), 4.73 (m, 2H), 4.79 (dd, 1H), 4.90 (dd, 1H), 6.24 (t, 1H, J=9.0 Hz), 8.40 (s, 1H), 8.51 (s, 1H)。13C NMR (75 MHz, DMSO-d6): δ: 49.75, 50.01, 61.42, 70.61, 80.90, 83.13, 84.63, 87.44, 105.07, 122.69, 135.74, 139.48, 150.68。19F NMR (282 MHz, DMSO-d6): δ: -222.06。MS (m/z)(ESI): 342.1 [M+H]+, 364.1 [M+Na]+
【0122】
クリックF−18 5−トリアゾール実験
【化22】

Sealed vessel =密封容器;10 min =10分
【0123】
11MeVプロトン(RDS−111エクリプス、シーメンス・モレキュラー・イメージング社)を用いて、酸素−18 水(>97%濃厚化)を常法どおりに照射し、[18F]フッ化物イオンを生成させた。衝撃の終了時に、[18F]フッ化物イオン含有の[18O]水をタンタル標的から自動化求核性フッ素化モジュール(エクスプローラRN、シーメンス・バイオマーカー溶液社)に移した。コンピューター制御下に、[18O]水/[18F]フッ化物イオン溶液を、予め水(5mL)、重炭酸カリウム水溶液(0.5M、5mL)、及び水(5mL)ですすいだ小型のアニオン交換樹脂カラム(マチェリー−ナーゲル社、クロマフィックス45−PS−HCO3)に移した。[18O]水(2.0mL)を再使用のために回収した。トラップした[18F]フッ化物イオンは、炭酸カリウム(3.0mg)/水(0.4mL)溶液で反応容器中に溶出した。クリプトフィックス(登録商標)222(K222、20mg)/アセトニトリル(1.0mL)溶液を加え、その混合物を真空アルゴン気流下に加熱(70〜95℃)し、アセトニトリルと水とを蒸発させた。冷却後、「乾燥した」反応性[18F]フッ化物イオン、K222、及び炭酸カリウムの残渣に、アセトニトリル(0.9mL)中の5−[1−(2'−p−トルエンスルホニルオキシ)エチル]−1H−[1,2,3]トリアゾール−4−イル]−3−N−Boc−3'−O−Boc−5'−O−Boc−チミジン(“5−トリアゾール−チミジン−トシレート”)(16、20.9mg、26.3μmol)の溶液を加えた。反応混合物は密封容器(Pmax=2.1バール)中で攪拌(磁気)下、85℃に10分間加熱した。混合物を55℃に冷却し、アセトニトリルの大部分を前述のように真空アルゴン気流下に蒸発させた。
【化23】

Sealed vessel =密封容器;3 min =3分
【0124】
粗製の保護された[18F]フッ素化中間体(19)に塩酸水(1.0M、0.8mL)を加え、その混合物を105℃で3分間加熱した。35℃に冷却した後、酢酸ナトリウム水溶液(2.0M、0.4mL)を撹拌下に加えた。反応混合物をサンプルループ(1.5mL)に移し、準分取用HPLCカラム(フェノメネックス・ジェミニ 5μ C6−フェニル、250×10mm、8%エタノール、92%21mMリン酸バッファー pH8.0 移動相、6.0mL/分)に注入した。生成物の5−[1−(2'−[18F]フルオロエチル)−1H−[1,2,3]トリアゾール−4−イル]チミジン(20、[18F]FETT)は、UV(254nm)及びフロー−スルー放射検出でモニターしたところ、14.5〜15.5分で溶出した。生成物20を含むHPLC溶出液(6〜7mL)は、0.22μm無菌フィルターを通して無菌バイアルに容れた。
【0125】
約1,001mCiの[18F]フッ化物イオンから出発した代表的な生産実験は、54分掛けた合成とHPLC精製の後、単離された生成物22.3mCi(EOBで31.4mCi、3.1%収率)を与えた。
【0126】
収集した生成物はHPLCにより分析した(フェノメネックス・ジェミニ 5μ C18、150×4.6mm、10%エタノール、90%水移動相、1.0mL/分)。放射能とUV(267nm)検出によりモニターしたところ、この生成物は保持時間7.95分、及び放射化学純度>99.0%を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的生体高分子に対し親和性を有する放射性リガンド又は放射性基質の調製方法であって、
(a)i)第一の分子構造;ii)脱離基;iii)クリックケミストリー反応に関与し得る第一の官能基;を含んでなり、iv)第一官能基と分子構造との間のリンカーを含んでいてもよい第一の化合物と放射性試薬とを、該脱離基を放射性試薬の放射性成分で置換するために十分な条件下で反応させて、第一の放射性化合物を形成すること;
(b)i)第二の分子構造;ii)第一の官能基とのクリックケミストリー反応に関与し得る第二の相補的官能基を含んでなる第二の化合物(ここで、第二の化合物と第二の官能基との間のリンカーを含んでいてもよい。)を提供すること;
(c)第一の放射性化合物の第一官能基を、クリックケミストリー反応を介して、第二の化合物の相補的官能基と反応させ、放射性リガンド又は基質を形成すること;及び
(d)該放射性リガンド又は基質を単離すること;
を含んでなる方法。
【請求項2】
生体高分子が、酵素、受容体、DNA、RNA、イオンチャンネル及び抗体からなる群より選択されるものである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
生体高分子がタンパク質である請求項1に記載の方法。
【請求項4】
クリックケミストリー反応がペリ環状反応である請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ペリ環状反応が環化付加反応である請求項4に記載の方法。
【請求項6】
ペリ環状反応が1,3−双極環化付加反応及びディールス−アルダー反応からなる群より選択されるものである請求項4に記載の方法。
【請求項7】
ペリ環状反応が1,3−双極環化付加反応である請求項5に記載の方法。
【請求項8】
クリックケミストリー反応が1,3−双極環化付加反応である請求項4に記載の方法。
【請求項9】
第一の官能基がアジドであり第二の官能基が末端アルキンであるか、又は第一の官能基が末端アルキンであり第二の官能基がアジドである請求項1に記載の方法。
【請求項10】
相補的クリック官能基がアジドとアルキンとを含んでなり、クリック反応が1,4−又は1,5−二置換1,2,3トリアゾールを含んでなる放射性リガンド又は基質を形成する請求項1に記載の方法。
【請求項11】
クリック反応が触媒の存在下に実施されるものである請求項9に記載の方法。
【請求項12】
触媒がCu(I)塩又はルテニウム(II)塩である請求項10に記載の方法。
【請求項13】
クリック反応が25℃と200℃との間の僅かに高められた温度で実施されるものである請求項9に記載の方法。
【請求項14】
放射性試薬が相間移動触媒と塩複合体とを含んでなる配位化合物である請求項1に記載の方法。
【請求項15】
放射性試薬が、n−Bu4NF−F18、クリプトフィックス[2,2,2]又は炭酸カリウムもしくは重炭酸カリウム、又は炭酸セシウムもしくは重炭酸セシウム、及び/又は18F−フッ化カリウム及び/もしくは18F−フッ化セシウムからなる群より選択されるものである請求項1に記載の方法。
【請求項16】
置換反応をアセトニトリル、アセトン、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、テトラメチレンスルホン(スルホラン)、N−メチルピロリジノン(NMP)、ジメトキシエタン(DME)、ジメチルアセトアミド(DMA)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)及びヘキサメチルホスホルアミド(HMPA)並びにこれらの混合物からなる群より選択される極性非プロトン性溶媒中で実施し、クリック反応を極性非プロトン性溶媒中か、又はメタノール、エタノール、2−プロパノール、tert−ブタノール、n−ブタノール及び/もしくは水、又はこれらの緩衝溶液からなる群より選択される極性プロトン性溶媒中で実施する、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
脱離基が、ハロゲン、ニトロ部分、ジアゾニウム塩及びスルホン酸エステルからなる群より選択されるものである請求項1に記載の方法。
【請求項18】
第一の官能基と第一の分子構造との間のリンカー又は第二の官能基と第二の分子構造との間のリンカーが、リンカー鎖中に1ないし10個の原子を含有してなるものである請求項1に記載の方法。
【請求項19】
第一の分子構造又は第二の分子構造が核酸誘導体である請求項1に記載の方法。
【請求項20】
核酸誘導体がチミジン誘導体である請求項16に記載の方法。
【請求項21】
放射性基質が以下の反応スキームに従って調製されるものである請求項1に記載の方法:
【化1】

4 min = 4分;10 min = 10分
radioactive FLT analog (1) =放射性FLT類似体(1)
[式中、第一の分子構造はデス−アジド(des-azide)AZTであり、第一の官能基はアジドであり、第二の分子構造は−CH2−基であり、第二の分子構造に連結する脱離基は−OTsであり、放射性基は放射性FLT類似体である]。
【請求項22】
基質又はリガンドが以下の反応スキームに従って調製されるものである請求項1に記載の方法:
【化2】

M、溶媒、温度
B=チミン、アデニン、グアニン、シトシン、ウラシル
Ln=リンカー(ここで、n=0又は1)
M=CuOAc、Cp*RuCl(PPh3)2
X=放射性同位元素、蛍光団又はキレート化金属
Y=H、F、OH
A=分子構造
[式中、リボース環上の塩基(B)は、アデニン、グアニン、シトシン、チミン及びウラシルからなる群より選択される;
触媒がCuOAcである場合、反応は1,4トリアゾール生成物を形成するか、又は触媒がCp*RuCl(PPh3)2である場合は、反応は1,5−トリアゾール生成物を形成する;
Xは放射性同位元素、蛍光団及びキレート化金属からなる群より選択される;また、Xはリンカーを介してアルキンに連結していてもよい]。
【請求項23】
下記反応スキームによる基質又はリガンドの調製方法:
【化3】

M、溶媒、温度
B=チミン、アデニン、グアニン、シトシン、ウラシル
Ln=リンカー(ここで、n=0又は1)
L'=リンカー
M=CuOAc、Cp*RuCl(PPh3)2
X=放射性同位元素、蛍光団又はキレート化金属
Y=H、F、OH
Y'=H、F、OH
A=分子構造
[式中、リボース環上の塩基(B)は、アデニン、グアニン、シトシン、チミン及びウラシルからなる群より選択され、このとき、塩基はリンカーL'に連結していてもよいアジドを含んでなる;ここで、塩基は:
1)B=チミン(ここで、アジドはリンカーを介して、3−位、5−メチル又は6−位に連結していてもよい);
2)B=シトシン(ここで、アジドはリンカーを介して、4−N−窒素、5−位又は6−位に連結していてもよい);
3)B=ウラシル(ここで、アジドはリンカーを介して、3−N−窒素、5−位又は6−位に連結していてもよい);
4)B=アデニン(ここで、アジドはリンカーを介して、6−N−窒素、2−位又は8−位に連結していてもよい);及び
5)B=グアニン(ここで、アジドはリンカーを介して、2−N−窒素、1−N−窒素又は8−位に連結していてもよい);
からなる群より選択されるように置換され、且つ、官能化されている;
ただし、触媒がCuOAcである場合、反応は1,4トリアゾールを形成し、又は触媒がCp*RuCl(PPh3)2である場合、反応は1,5−トリアゾールを形成する;このとき、Xはリンカーを介してアルキンに連結する放射性元素であるか;又はXは放射性同位元素、蛍光団もしくはキレート化金属である;このとき、Yは水素、フッ素又はヒドロキシルである]。
【請求項24】
下記反応スキームによる基質又はリガンドの調製方法:
【化4】

M、溶媒、温度
B=チミン、アデニン、グアニン、シトシン、ウラシル
Ln=リンカー(ここで、n=0又は1)
L'=リンカー
M=CuOAc、Cp*RuCl(PPh3)2
X=放射性同位元素、蛍光団又はキレート化金属
Y=H、F、OH
Y'=H、F、OH
A=分子構造
[式中、Bはリボース環に結合する塩基であり、アデニン、グアニン、シトシン、チミン及びウラシルからなる群より選択される;又は、
B=チミンであり、アルキンがリンカーを介して、リボースの3−位、5−メチル又は6−位に連結していてもよい;又は、
B=シトシンであり、アルキンがリンカーを介して、4−N−窒素、5−位又は6−位に連結していてもよい;又は、
B=ウラシルであり、アルキンがリンカーを介して、3−N−窒素、5−位又は6−位に連結していてもよい;又は、
B=アデニンであり、アルキンがリンカーを介して、6−N−窒素、2−位又は8−位に連結していてもよい;又は、
B=グアニンであり、アルキンがリンカーを介して、2−N−窒素、1−N−窒素又は8−位に連結していてもよい;そして、
触媒がCuOAcである場合、反応は1,4トリアゾールを形成し、又は触媒がCp*RuCl(PPh3)2である場合、反応は1,5−トリアゾールを形成する;又は
Xは放射性同位元素、蛍光団又はキレート化金属である;そして、Yは水素、フッ素又はヒドロキシルである]。
【請求項25】
標的生体高分子に対し親和性を有する放射性リガンド又は基質の調製方法であって、
(a)i)第一の分子構造;ii)脱離基;iii)クリックケミストリー反応に関与し得る第一の官能基;を含んでなり、iv)第一官能基と分子構造との間のリンカーを含んでいてもよい第一の化合物を提供すること;
(b)i)第二の分子構造;ii)第一の官能基とのクリックケミストリー反応に関与し得る第二の相補的官能基を含んでなる第二の化合物を提供すること(ここで、第二の化合物は第二の化合物と第二の官能基との間のリンカーを含んでなるものでもよい);
(c)第一の官能基と第二の化合物の相補的官能基とを、クリックケミストリー反応を介して反応させ、リガンド又は基質を形成すること;及び
(d)リガンド又は基質と放射性試薬とを、脱離基を放射性試薬の放射性成分で置換するために十分な条件下で反応させて、放射性リガンド又は基質を形成すること;及び
(e)放射性リガンド又は基質を単離すること;
を含んでなる方法。
【請求項26】
生体高分子が、酵素、受容体、DNA、RNA、イオンチャンネル及び抗体からなる群より選択されるものである請求項24に記載の方法。
【請求項27】
生体高分子がタンパク質である請求項24に記載の方法。
【請求項28】
クリックケミストリー反応がペリ環状反応である請求項24に記載の方法。
【請求項29】
ペリ環状反応が環化付加反応である請求項27に記載の方法。
【請求項30】
ペリ環状反応が1,3−双極環化付加反応及びディールス−アルダー反応からなる群より選択されるものである請求項27に記載の方法。
【請求項31】
ペリ環状反応がディールス−アルダー反応である請求項29に記載の方法。
【請求項32】
ペリ環状反応が1,3−双極環化付加反応である請求項29に記載の方法。
【請求項33】
第一の官能基がアジドであり第二の官能基がアルキンであるか、又は第一の官能基がアルキンであり第二の官能基がアジドである請求項24に記載の方法。
【請求項34】
相補性クリック官能基がアジドとアルキンとを含んでなり、クリック反応が1,4−もしくは1,5二置換1,2,3トリアゾールを含んでなる放射性リガンド又は基質を形成する請求項24に記載の方法。
【請求項35】
クリック反応が触媒の存在下に実施されるものである請求項32に記載の方法。
【請求項36】
触媒がCu(I)塩又はルテニウム(II)塩である請求項34に記載の方法。
【請求項37】
クリック反応が25℃と200℃との間の僅かに高められた温度で実施されるものである請求項33に記載の方法。
【請求項38】
放射性試薬が相間移動触媒と塩複合体とを含んでなる配位化合物である請求項24に記載の方法。
【請求項39】
放射性試薬が、n−Bu4NF−F18、クリプトフィックス[2,2,2]並びに炭酸カリウム、重炭酸カリウム、炭酸セシウム、重炭酸セシウム及び/又は18F−フッ化カリウム及び/又は18F−フッ化セシウムからなる群より選択されるものである請求項24に記載の方法。
【請求項40】
標識化生体高分子の調製方法であって、
(a)i)第一の分子構造;ii)脱離基;iii)クリックケミストリー反応に関与し得る第一の官能基;を含んでなり、iv)第一官能基と分子構造間のリンカーを含んでいてもよい第一の化合物と、放射性試薬とを、脱離基を放射性試薬の放射性成分で置換するために十分な条件下で反応させて、第一の放射性化合物を形成すること;
(b)i)高分子;ii)第一の官能基とのクリックケミストリー反応に関与し得る第二の相補的官能基を含んでなる第二の化合物を提供すること(ここで、生体高分子は、生体高分子と第二の官能基との間のリンカーを含んでいてもよい);
(c)第一の放射性化合物の第一官能基を、クリックケミストリー反応を介して、生体高分子の相補的官能基と反応させ、放射性生体高分子を形成すること;及び
(d)放射性生体高分子を単離すること;
を含んでなる方法。
【請求項41】
生体高分子が、酵素、受容体、DNA、RNA、イオンチャンネル及び抗体からなる群より選択されるものである請求項39に記載の方法。
【請求項42】
生体高分子がタンパク質である請求項39に記載の方法。
【請求項43】
タンパク質が表皮増殖因子(EGF)である請求項41に記載の方法。
【請求項44】
放射性リガンド又は基質の調製方法であって、
(a)i)第一の分子構造;ii)脱離基;iii)クリックケミストリー反応に関与し得る第一の官能基;を含んでなり、iv)第一官能基と分子構造間のリンカーを含んでいてもよい第一の化合物を提供すること;
(b)i)生体高分子;ii)第一の官能基とのクリックケミストリー反応に関与し得る第二の相補的官能基を含んでなる第二の化合物を提供すること(ここで、第二の化合物が生体高分子と第二の官能基間のリンカーを含んでいてもよい);
(c)第一の官能基と第二化合物の相補的官能基とを、クリックケミストリー反応を介して反応させ、リガンド又は基質を形成すること;及び
(d)リガンド又は基質と放射性試薬とを、脱離基を放射性試薬の放射性成分で置換するために十分な条件下で反応させて、放射性リガンド又は基質を形成すること;及び
(e)放射性リガンド又は基質を単離すること;
を含んでなる方法。
【請求項45】
生体高分子が、酵素、受容体、DNA、RNA、イオンチャンネル及び抗体からなる群より選択されるものである請求項43に記載の方法。
【請求項46】
生体高分子がタンパク質である請求項43に記載の方法。
【請求項47】
脱離基が、ハロゲン、ニトロ部分、ジアゾニウム塩及びスルホン酸エステルからなる群より選択されるものである請求項43に記載の方法。

【公表番号】特表2008−540338(P2008−540338A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−509142(P2008−509142)
【出願日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際出願番号】PCT/US2006/016088
【国際公開番号】WO2006/116629
【国際公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【出願人】(593063105)シーメンス メディカル ソリューションズ ユーエスエー インコーポレイテッド (156)
【氏名又は名称原語表記】Siemens Medical Solutions USA,Inc.
【住所又は居所原語表記】51 Valley Stream Parkway,Malvern,PA 19355−1406,U.S.A.
【Fターム(参考)】