分子線源セル
【課題】極めて安価な部材を追加するだけで低コストに、基板上に形成する薄膜の膜厚の均一性を向上させることができ、しかも有機材料の蒸着のためだけでなく高温工程が必要な無機材料の蒸着のためにも使用できる分子線源セルを提供する。
【解決手段】被蒸着基板に対向する開口部1aを有する坩堝1と、坩堝1内に充填される分子線材料を加熱し蒸発させて開口部1aから分子線を放出させるためのヒータとを備えており、坩堝1の開口部1aにはキャップ2が配置されており、キャップ2は、その全体が開口部1aの中心軸A方向に約6mm以上の厚みを有するように形成されており、且つ、その内部には、キャップの底部2cの略中心から坩堝1の開口部1aの外周又はその近傍へ延びる複数の絞り穴2aであって、開口部1aの中心軸Aに対して約15〜60度の範囲内で傾斜する複数の絞り穴2aが、略放射状に形成されている。
【解決手段】被蒸着基板に対向する開口部1aを有する坩堝1と、坩堝1内に充填される分子線材料を加熱し蒸発させて開口部1aから分子線を放出させるためのヒータとを備えており、坩堝1の開口部1aにはキャップ2が配置されており、キャップ2は、その全体が開口部1aの中心軸A方向に約6mm以上の厚みを有するように形成されており、且つ、その内部には、キャップの底部2cの略中心から坩堝1の開口部1aの外周又はその近傍へ延びる複数の絞り穴2aであって、開口部1aの中心軸Aに対して約15〜60度の範囲内で傾斜する複数の絞り穴2aが、略放射状に形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空中で所望の蒸着物質(分子線材料)を加熱、蒸発させることにより分子線を発生、放出し、これを基板上に衝突、堆積させて薄膜を形成するために使用される分子線源セルに関する。
【背景技術】
【0002】
分子線エピキタシー装置(MBE装置)は、超高真空中に基板を置いて加熱すると共に、原料となる堆積したい物質をそれぞれ異なる坩堝に入れてヒータで加熱、蒸発させて分子線として基板上に照射して結晶成長させる装置である。
【0003】
図14はこのようなMBE装置の従来例を示す図である(特許文献1参照)。この図14に示す従来のMBE装置では、真空容器(図示せず)中に坩堝10,20と基板33が配置されている。各坩堝10,20には各蒸発材料a,bがそれぞれ充填されている。各坩堝10,20をヒータ15,16,25,26で加熱して各蒸発材料を蒸発させ、蒸発分子を各坩堝10,20の各開口部14,24から分子線として基板33方向に放出させることにより、基板33上に薄膜が形成される。この図14の従来例では、図示左側に配置された坩堝10には主成分の蒸着材料aが充填され、それが加熱されると蒸発して坩堝10の開口部14から分子線が基板33方向に放出される。他方、図示右側に配置された坩堝20には副成分の蒸着材料bが充填され、それが加熱されると蒸発して坩堝20の開口部24から分子線が基板33方向に放出されるが、その際、前記坩堝20の開口部に複数の絞り穴32が形成されたキャップ(前記開口部を閉止する閉止部材)31が嵌め込まれているため、前記蒸発分子はその量が所定量に絞り込まれて分子線として放出されるようになっている。
【特許文献1】特開2003−34591号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前述のような従来のMBE装置においては、前記各坩堝10,20の開口部は基板33の中心に向くように配置されており、且つ、前記各坩堝10,20内で蒸着材料が加熱、蒸発して発生した蒸発分子は、そのまま又は前記絞り穴32により所定量に制限されて前記坩堝10,20の開口部14,24から分子線として放出されるだけなので、基板33上に形成される薄膜の膜厚は基板33の中心部分だけが大きく基板中心から離れた周辺部分では小さくなってしまうというように、基板上に形成される薄膜の膜厚が不均一となってしまうという問題があった。
【0005】
本発明はこのような従来技術の問題点に着目してなされたものであって、極めて安価な部材を追加するだけで低コストに、基板上に形成する薄膜の膜厚の均一性を向上させることができ、しかも有機材料の蒸着のためだけでなく高温工程が必要な無機材料の蒸着のためにも使用することができる分子線源セルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上のような課題を解決するための本発明による分子線源セルは、被蒸着基板に対向する開口部を有する坩堝と、前記坩堝内に充填される分子線材料を加熱し蒸発させ、発生した蒸発分子を前記開口部から分子線として放出させるためのヒータとを備えた分子線源セルであって、前記坩堝の開口部にはキャップが配置されており、前記キャップは、その全体が前記開口部の中心軸方向に沿って約6mm以上の厚みを有するように形成されており、且つ、その内部には、前記キャップの底部の略中心から前記坩堝の開口部の外周又はその近傍へ延びる複数の絞り穴であって、前記開口部の中心軸方向に対して約15〜60度の範囲内で傾斜する複数の絞り穴が、略放射状に形成されている、ことを特徴とするものである。
【0007】
また、本発明による分子線源セルにおいては、前記キャップの絞り穴は、その内径が蒸発分子の進行方向に沿って徐々に増大するように形成されている、ことが望ましい。
【0008】
また、本発明による分子線源セルにおいては、前記キャップは、その外形が、前記開口部の中心軸に対して垂直な断面の面積が蒸発分子の進行方向に沿って徐々に増大するように形成されている、ことが望ましい。
【0009】
さらに、本発明による分子線源セルにおいては、前記キャップは、公知のセラミック材料により一体に成形されている、ことが望ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、前記坩堝の開口部に、その全体が前記開口部の中心軸方向に約6mm以上の厚みを有するキャップを配置し、このキャップの内部に、前記坩堝の開口部の中心軸方向に対して約15〜60度だけ傾斜する複数の絞り穴を、前記キャップの底部の略中心から坩堝の開口部の外周又はその近傍へ向かう方向に(例えば被蒸着基板(特にその周辺部)に向かう方向に)、略放射状に形成するようにしている。したがって、本発明によれば、蒸発分子は前記キャップの各絞り穴から基板方向に分子線として放出されるが、前記各絞り穴はそれぞれ前記坩堝の開口部(被蒸着基板に対向している)の中心軸に対して約15〜60度だけ傾斜するように形成されているので、前記分子線は前記基板の中心部から外れた周辺部の方向に(基板表面に対して約15〜60度だけ傾斜した方向に)照射されるようになる。実際には、前記分子線は拡散しながら進行するので、前記基板の周辺部だけでなく中心部にもほぼ均等に照射される。よって、本発明によるときは、基板上に堆積される薄膜の膜厚が基板の中心部のみが大きくなってその周辺部が小さくなってしまうという不都合が防止され、基板上に形成される薄膜全体の膜厚の均一性を向上させることができる。
【0011】
また、特に、本発明において、前記キャップの絞り穴の内径を蒸発分子の進行方向に沿って徐々に拡大するように形成したときは、前記絞り穴から放出される分子線は前記絞り穴の内径形状に沿って拡がりながら進行するので、基板上に形成される薄膜の膜厚の均一性をより一層向上させることができる。
【0012】
また、本発明において、前記キャップは、その外形が、前記開口部の中心軸に対して垂直な断面の面積が蒸発分子の進行方向に沿って徐々に増大するように形成されているので、前記坩堝の開口部の下方近傍部分を基板方向に向かって徐々に内径が拡大するテーパ状に形成した場合でも、前記キャップの取り付けを容易に行うことができる。
【0013】
さらに、本発明において、前記キャップを耐熱性を有する公知のセラミック材料により一体に成形するようにしたときは、前記キャップの製造を極めて安価に行うことができると共に、有機材料の蒸着のためだけでなく坩堝を高温に加熱する必要がある無機材料の蒸着のためにも使用できる、という効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明を実施するための最良の形態は、以下の実施例1について述べるような形態である。
【実施例1】
【0015】
図1(a)は本発明の実施例1に係る分子線源セルに使用される坩堝を示す側断面図、図1(b)は図1(a)の坩堝に後述のキャップ2を装着した状態を示す側断面図、図2(a)は図1の坩堝の開口部に配置されるキャップ2を示す平面図、図2(b)は前記キャップ2の側断面図、図2(c)は前記キャップ2の底面を示す図、図3(a)は前記キャップ2を斜め上方から示す斜視図、図3(b)は前記キャップ2を斜め下方から示す斜視図である。
【0016】
図1(a)(b)において、1は有底で略円筒状の坩堝、1aは坩堝1の開口部、1bは坩堝1の開口部1aの近傍の内径が他の部分より小さく形成された括れ部、である。本実施例1においては、真空容器(図示せず)内に、前記坩堝1が、その開口部1aが被蒸着基板(図示せず)に対向するように配置されている。また、本実施例1では、前記坩堝1の開口部1aの下方近傍部分1cは、その内径が図示上方に向かって徐々に拡大するテーパ状に形成されている。
【0017】
また、図2(a)(b)(c)において、2は前記坩堝1の開口部1aに配置する例えばセラミック材料で一体成形されて成るキャップ、2aは前記キャップ2の内部に略放射状に形成された複数の絞り穴、2bは前記キャップ2の底部2cに形成され前記各絞り穴2aの図示下方部分と連続するように形成された共通穴、である。本実施例1においては、前記坩堝1内で分子線材料が加熱、蒸発することにより発生する蒸発分子は、前記キャップ2の共通穴2b及びそれに連続する各絞り穴2aを通過して、分子線として前記基板方向へ放出される。
【0018】
本実施例1では、前記キッャプ2は、その図示上下方向の厚さ(前記坩堝1の開口部1aの中心軸A方向の厚さ)が、例えば8.6mmとなるように形成されている。よって、本実施例1では、前記キャップ2内に形成された絞り穴2aは、それぞれ前記基板に照射される分子線に指向性を与えるのに十分な長さを有している。
【0019】
また、本実施例1において、前記キッャプ2の絞り穴2aは、キャップ2の図示上下方向(前記坩堝1の開口部1aの中心軸A方向)に対して例えば約45度だけ傾斜するように、形成されている。また、本実施例1では、計12個の絞り穴2aが、前記坩堝1の開口部1aの近傍の括れ部1bの略中心から開口部1aの外周又はその近傍へ向かう方向(被蒸着基板の周辺部へ向かう方向)に、略放射状に形成されている。すなわち、本実施例1では、前記各絞り穴2aは、前記キャップ2の共通穴3bから斜め上方向(徐々に外周に近づく方向)に向かって延びて行き、前記キャップ2の上面の一部(外周に近い側)に開口している。
【0020】
以上より、本実施例1では、前記坩堝1で発生した蒸発分子は、前記絞り穴2aを通過するとき、基板の中心部にではなく基板の周辺部に向かうように、指向性を付与されて分子線として放出される。なお、本実施例1では、前記各絞り穴2aの内径は全て略同一に形成されている。また、本実施例1において、前記キャップ2は、前記坩堝1の開口部1aの下方近傍部分1cのテーパ状に形成された内壁面に対応するように、その外径が図示上方向(基板の方向)に沿って徐々に拡大するテーパ状に形成されている(図2(b)参照)。
【0021】
以上のように、本実施例1においては、前記坩堝1の開口部1aに例えば8.6mmの厚さを有するキャップ2が配置され、且つ、前記キャップ2には基板に向かう方向(前記坩堝1の開口部1aの中心軸A方向)に対して例えば約45度だけ傾斜する複数の絞り穴2aが形成されている。したがって、本実施例1では、前記坩堝1内で分子線材料が加熱、蒸発して発生した蒸発分子は、前記キャップ2内の各絞り穴2aの中を所定の長さ(指向性を与えるのに十分な長さ)だけ通過することにより、基板の中心部だけでなく基板の周辺部に向かうように指向性を与えられて、分子線として放出される(これに対して、例えば特許文献1の閉止部材31に形成された絞り穴32は、前記絞り穴32の長さが極めて短いため、分子線に指向性を与えることはできない)。したがって、本実施例1によれば、基板の周辺部と中心部とに渡ってほぼ均一に蒸着分子(分子線)を衝突、堆積させることができ、基板表面にほぼ均一の膜厚を有する薄膜を形成することができる。また、本実施例1においては、前記キャップ2は公知のセラミック材料で一体成形するようにしているので、極めて安価に製造することができると共に、例えば1,700℃などの高温でも耐えられるので有機材料の蒸着だけでなく高温工程が必要な無機材料の蒸着のためにも使用することができる。
【0022】
なお、本発明者は、前記坩堝1に前記キャップ2を装着して基板にAgなどの金属薄膜を形成した場合と前記キャップ2を装着しないで基板に金属薄膜を形成した場合(いずれも分子線の基板への付着速度は0.5Å/s)とにおける膜厚分布形状を測定して比較する実験を行った。図4はこの結果を示すグラフである。図4においては、前記キャップ2を使用した場合と、前記キャップ2を使用しない場合との膜厚分布形状を示している。図4に示すように、前記キャップ2を使用しない場合はセル中心(坩堝1の開口部1aの中心軸Aと基板とが交差する位置)からの距離が大きくなるに従って膜厚が比較的急激に小さくなっているが、前記キャップ2を使用した場合はセル中心からの距離が大きくなっても膜厚分布が比較的緩やかに下降している(膜厚分布形状がN=3よりも向上している)。よって、本実施例1のキャップ2を使用することにより、基板上に形成される薄膜の膜厚分布の均一性を向上させることができることが確認できた。
【実施例2】
【0023】
次に、図5(a)は本発明の実施例2に係る分子線源セルに使用される坩堝を示す側断面図、図5(b)は図5(a)の坩堝に後述のキャップを装着した状態を示す側断面図、図6(a)は図5の坩堝の開口部に配置されるキャップを示す平面図、図6(b)はその側断面図、図6(c)はその底面を示す図、図6(d)はその側面図(内部の絞り穴を破線及び一点鎖線で示す)、図7(a)は本実施例2に使用されるキャップを斜め上方から示す斜視図、図7(b)はそのキャップを斜め下方から示す斜視図である。
【0024】
図5〜7において、図1〜3と共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。図5〜7において、3は前記坩堝1の開口部1aに配置する例えばセラミック材料で一体成形されて成るキャップ、3aは前記キャップ3の内部に形成された複数の絞り穴、3bは前記キャップ3の底部3cの中央に形成され前記各絞り穴3aの図示下方部分と連続する共通穴、である。本実施例2においては、前記坩堝1内で分子線材料が加熱、蒸発して発生する蒸発分子が、前記キャップ3の共通穴3b及びそれに連続する各絞り穴3aを通過することにより、分子線となって前記基板方向へ放出される。
【0025】
本実施例2では、前記キッャプ3は、その図示上下方向の厚さ(前記坩堝1の開口部1aの中心軸A方向の厚さ)が、例えば12.6mmとなるように形成されている。よって、本実施例2では、前記キャップ3内に形成された各絞り穴3aは、それぞれ所定の長さ(前記坩堝1の開口部1aから放出される分子線に指向性を与えるのに十分な長さ)が確保されている。また、本実施例2において、前記キッャプ3の各絞り穴3aは、キャップ3の図示上下方向(前記坩堝1の開口部1aの中心軸Aの方向)に対して例えば約45度だけ傾斜するように、形成されている(図6(b)参照)。また、本実施例2では、計12個の絞り穴3aが、前記坩堝1の括れ部1cの中心から被蒸着基板へ向かう方向に、略放射状に形成されている。すなわち、本実施例2では、前記各絞り穴3aは、前記キャップ3の共通穴3bから斜め上方向(徐々に外周に近づく方向)に向かって延びて行き、前記キャップ3の図示上方部分の側面3dと上面3eの一部に開口している。
【0026】
以上より、本実施例2では、前記坩堝1内で発生した蒸発分子は、前記絞り穴3aにより、基板の中心部にではなく基板の周辺部に向かうように指向性を付与された分子線として放出される。なお、本実施例2では、前記各絞り穴3aの内径は全て同一に形成されている。また、前記キャップ3の図示下方部分は、図6(b)に示すように、前記坩堝1の開口部1aの下方近傍部分1cのテーパ状の内壁面に対応するように、その外径が図示上方向(基板の方向)に沿って徐々に拡大するテーパ状に形成されている。
【0027】
以上のように、本実施例2においては、前記坩堝1の開口部1aに例えば12.6mmの厚さを有するキャップ3が配置され、且つ、前記キャップ3には基板方向(前記坩堝1の開口部1aの中心軸A方向)に対して例えば約45度だけ傾斜する複数の絞り穴3aが略放射状に形成されている。したがって、本実施例2では、前記坩堝1内で分子線材料が加熱、蒸発することにより発生した蒸発分子が、前記キャップ3内の各絞り穴3aの中を所定の長さ(指向性を与えるのに十分な長さ)だけ通過することにより、基板の中心部にではなく基板の周辺部に向かうように指向性を与えられ、分子線として放出される。このように分子線が基板の周辺部の方向への指向性を与えられた場合でも、実際には、分子線は基板に向かう途中で徐々に拡散するので、分子線は基板の周辺部だけでなくその中心部にもほぼ均等に衝突し、堆積する。したがって、本実施例2によれば、基板の周辺部と中心部とにほぼ均一に、分子線を衝突させ蒸着分子を堆積させることができるので、基板表面にほぼ均一な膜厚の薄膜を形成することができる。また、本実施例2においては、前記キャップ3は公知のセラミック材料で一体成形できるので、極めて安価に製造することができると共に、例えば1,700℃などの高温でも耐えられるので有機材料の蒸着だけでなく高温工程が必要な無機材料の蒸着のためにも使用することができる。
【実施例3】
【0028】
次に、図8は本発明の実施例3に係る分子線源セルに使用されるキャップを示す側断面図である。本実施例3においては、図8に示すように、坩堝1の開口部1aに配置されるキャップ4の構造が前記実施例1と異なっているだけで、それ以外の基本構成は前記実施例1と同様である。本実施例3で使用されるキャップ4は、その底部4cの中央に形成されている共通穴4bから図8の斜め上方に(且つ放射状に)延びる複数の絞り穴4aの内部形状(内壁面)が、前記実施例1の絞り穴2aのようなストレートの形状(図2(b)参照)ではなく蒸発分子の進行方向に沿って徐々に内径が拡大するテーパ状に形成されている点に特徴がある。
【0029】
本実施例3においては、前述のように前記各絞り穴4aがテーパ状に形成されているため、前記各絞り穴4aを通過する蒸発分子は、前記各絞り穴4aを通過する過程で指向性を付与されながら同時にテーパ状の内壁面に沿って拡散しながら分子線として基板方向に放出される。よって、本実施例3によれば、基板表面に分子線が均等に衝突することになり、基板上の薄膜の膜厚の均一性をより向上させることが可能になる。
【実施例4】
【0030】
次に、図9は本発明の実施例4に係る分子線源セルに使用されるキャップを示す側断面図である。本実施例4においては、図9に示すように、坩堝1の開口部1aに配置されるキャップ5の構成が前記実施例2と異なっているだけで、それ以外の基本構成は前記実施例2と同様である。本実施例4で使用されるキャップ5は、その底部5cの中央に形成されている共通穴5bから図9の斜め上方に(且つ放射状に)延びる複数の絞り穴5aの内部形状(内壁面)が、前記実施例2の絞り穴3aのようなストレートの形状(図6(b)参照)ではなく蒸発分子の進行方向に沿って徐々に内径が拡大するテーパ状に形成されている点に特徴がある。
【0031】
本実施例4においては、前述のように前記各絞り穴5aがテーパ状に形成されているため、前記各絞り穴5aを通過する蒸発分子は、前記各絞り穴5aを通過する過程で指向性を付与されながら同時にテーパ状の内壁面に沿って拡散しながら分子線として基板方向に放出される。よって、本実施例4によれば、基板表面に分子線が均等に衝突することになり、基板上の薄膜の膜厚の均一性をより向上させることが可能になる。
【実施例5】
【0032】
次に、図10は本発明の実施例5に係る分子線源セルに使用されるキャップを示す側断面図である。本実施例5においては、図10に示すように、坩堝1の開口部1aに配置されるキャップ6の外形が前記実施例1と異なっているだけで、それ以外の基本構成は前記実施例1と同様である。本実施例5においては、前記キャップ6の外形が円筒形状に形成されている。これは、前記キャップ6が装着される坩堝1の開口部1aの下方近傍部分(図1の1c参照)の形状が図1などに示すようなテーパ状でなくストレートの円筒状に形成されている場合を想定して、それに適合するようにキャップ6の外形を形成したものである。なお、前記キャップ6にはその底部6cの中央に形成されている共通穴6bから図10の斜め上方に(且つ放射状に)向かうように複数の絞り穴6aが形成されているが、この点は前記実施例1と同様である。よって、本実施例5によっても前記実施例1と同様の作用効果を奏することができる。
【実施例6】
【0033】
次に、図11は本発明の実施例6に係る分子線源セルに使用されるキャップを示す側断面図である。本実施例6においては、図11に示すように、坩堝1の開口部1aに配置されるキャップ7の外形が前記実施例2と異なっているだけで、それ以外の基本構成は前記実施例2と同様である。本実施例6においては、前記キャップ7の外形は円筒形状に形成されている。これは、前記キャップ7が装着される坩堝1の開口部1aの下方の近傍部分(図5の1c参照)の形状が図5などに示すようなテーパ状でなくストレートの円筒状に形成されている場合を想定して、それに適合するようにキャップ7の外形を形成したものである。なお、前記キャップ7にはその底部7cの中央に形成されている共通穴7bから図11の斜め上方に(且つ放射状に)向かうように複数の絞り穴7aが形成されているが、この点は前記実施例2と同様である。よって、本実施例6によっても前記実施例2と同様の作用効果を奏することができる。
【実施例7】
【0034】
次に、図12は本発明の実施例7に係る分子線源セルに使用されるキャップを示す側断面図である。本実施例7においては、図12に示すように、坩堝1の開口部1aに配置されるキャップ8の外形が前記実施例3と異なっているだけで、それ以外の基本構成は前記実施例3と同様である。本実施例7においては、前記キャップ8の外形は円筒形状に形成されている。これは、前記キャップ8が装着される坩堝1の開口部1aの下方の近傍部分(図1の1c参照)の形状が図1などに示すようなテーパ状でなくストレートの円筒状に形成されている場合を想定して、それに適合するようにキャップ8の外形を形成したものである。なお、前記キャップ8には、その底部8cの中央に形成されている共通穴8bから図12の斜め上方に(且つ放射状に)向かうように、蒸発分子の進行方向に沿って徐々に内径が拡大する絞り穴8aが複数、形成されているが、この点は前記実施例3と同様である。よって、本実施例7によっても前記実施例3と同様の作用効果を奏することができる。
【実施例8】
【0035】
次に、図13は本発明の実施例8に係る分子線源セルに使用されるキャップを示す側断面図である。本実施例8においては、図13に示すように、坩堝1の開口部1aに配置されるキャップ9の外形が前記実施例4と異なっているだけで、それ以外の基本構成は前記実施例4と同様である。本実施例8においては、前記キャップ9の外形は円筒形状に形成されている。これは、前記キャップ9が装着される坩堝1の開口部1aの下方の近傍部分(図5の1c参照)の形状が図5などに示すようなテーパ状でなくストレートの円筒状に形成されている場合を想定して、それに適合するようにキャップ9の外形を形成したものである。なお、前記キャップ9にはその底部9cの中央に形成されている共通穴9bから図13の斜め上方に(且つ放射状に)向かうように、蒸発分子の進行方向に沿って徐々に内径が拡大する絞り穴9aが複数、形成されているが、この点は前記実施例4と同様である。よって、本実施例8によっても前記実施例4と同様の作用効果を奏することができる。
【0036】
以上、本発明の各実施例について説明したが、本発明及び本発明を構成する各構成要件は、それぞれ、前記の各実施例及び前記の各実施例を構成する各要素として述べたものに限定されるものではなく、様々な修正及び変更が可能である。例えば、前記実施例1においては、前記キャップ2を公知のセラミック材料により製造した例を示したが、本実施例1ではこれに限られるものではなく、例えば公知の金属材料により製造するようにしてもよいことは勿論である。
【0037】
また、前記実施例1〜8においては、坩堝1の開口部1aに配置するキャップ2,3,4,5,6,7,8,9の前記開口部1aの中心軸A方向の厚さを8.6mm(実施例1など)又は12.6mm(実施例2など)としたが、本発明では、これらに限られるものではない。すなわち、本発明においては、前記キャップは、前記絞り穴2a,3a,4a,5a,6a,7a,8a,9aにその中を通過する蒸発分子に十分な指向性を与えることができるような長さを確保できるだけの厚さを有していればよいので、結局、前記キャップの厚さは約6mm以上の厚みを有するものであればよい。また、そもそもキャップとは開口部を閉止するためのものであるからその厚さ寸法は常識的な範囲に止まるべきことや製造コストなどの観点から、本発明におけるキャップについても過大な必要以上の厚さ寸法は採用すべきではない(その中を通過する蒸発分子に十分な指向性を付与できる長さを前記絞り穴に確保できるような厚さであれば必要十分である)ので、結局、本発明におけるキャップの厚さは約6〜15mm程度の厚みを有するように形成すればよいし、それが望ましい。
【0038】
また、前記実施例1〜8においては、前記キャップ2,3,4,5,6,7,8,9の内部に形成する各絞り穴2a,3a,4a,5a,6a,7a,8a,9aを、前記坩堝1の括れ部1cの略中心から開口部1aの外周方向に向かって、前記開口部1aの中心軸A方向に対して約45度だけ傾斜するように形成するようにしているが、本発明では、これに限られるものではなく、分子線の放出方向を基板の中心ではなく基板の周辺部とすることができれば良いので、結局、前記キャップの内部に形成する各絞り穴は前記開口部1aの中心軸A方向に対して約15〜60度の範囲内(より望ましくは約30〜50度の範囲内)で傾斜するように形成すればよいし、それが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】(a)は本発明の実施例1に係る分子線源セルに使用される坩堝を示す側断面図、(b)は(a)の坩堝にキャップを装着した状態を示す側断面図。
【図2】(a)は本実施例1に使用されるキャップを示す平面図、(b)はその側断面図、(c)はその底面を示す図。
【図3】(a)は本実施例1に使用されるキャップを斜め上方から示す斜視図、(b)はそのキャップを斜め下方から示す斜視図。
【図4】本実施例1の作用効果を説明するためのグラフ。
【図5】(a)は本発明の実施例2に係る分子線源セルに使用される坩堝を示す側断面図、(b)は(a)の坩堝にキャップを装着した状態を示す側断面図。
【図6】(a)は本実施例2に使用されるキャップを示す平面図、(b)はその側断面図、(c)はその底面を示す図、(d)はその側面図(内部の絞り穴を破線及び一点鎖線で示す)。
【図7】(a)は本実施例2に使用されるキャップを斜め上方から示す斜視図、(b)はそのキャップを斜め下方から示す斜視図。
【図8】本発明の実施例3に使用されるキャップを示す側断面図。
【図9】本発明の実施例4に使用されるキャップを示す側断面図。
【図10】本発明の実施例5に使用されるキャップを示す側断面図。
【図11】本発明の実施例6に使用されるキャップを示す側断面図。
【図12】本発明の実施例7に使用されるキャップを示す側断面図。
【図13】本発明の実施例8に使用されるキャップを示す側断面図。
【図14】従来の分子線源セルを説明するための図。
【符号の説明】
【0040】
1 坩堝
1a 開口部
1b 括れ部
1c 開口部の下方近傍部分(括れ部・テーパ状部分)
2,3,4,5,6,7,8,9 キャップ
2a,3a,4a,5a,6a,7a,8a,9a 絞り穴
2b,3b,4b,5b,6b,7b,8b,9b 共通穴
2c,3c,4c,5c,6c,7c,8c,9c キャップの底部
3d キャップの側面
3e キャップの上面
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空中で所望の蒸着物質(分子線材料)を加熱、蒸発させることにより分子線を発生、放出し、これを基板上に衝突、堆積させて薄膜を形成するために使用される分子線源セルに関する。
【背景技術】
【0002】
分子線エピキタシー装置(MBE装置)は、超高真空中に基板を置いて加熱すると共に、原料となる堆積したい物質をそれぞれ異なる坩堝に入れてヒータで加熱、蒸発させて分子線として基板上に照射して結晶成長させる装置である。
【0003】
図14はこのようなMBE装置の従来例を示す図である(特許文献1参照)。この図14に示す従来のMBE装置では、真空容器(図示せず)中に坩堝10,20と基板33が配置されている。各坩堝10,20には各蒸発材料a,bがそれぞれ充填されている。各坩堝10,20をヒータ15,16,25,26で加熱して各蒸発材料を蒸発させ、蒸発分子を各坩堝10,20の各開口部14,24から分子線として基板33方向に放出させることにより、基板33上に薄膜が形成される。この図14の従来例では、図示左側に配置された坩堝10には主成分の蒸着材料aが充填され、それが加熱されると蒸発して坩堝10の開口部14から分子線が基板33方向に放出される。他方、図示右側に配置された坩堝20には副成分の蒸着材料bが充填され、それが加熱されると蒸発して坩堝20の開口部24から分子線が基板33方向に放出されるが、その際、前記坩堝20の開口部に複数の絞り穴32が形成されたキャップ(前記開口部を閉止する閉止部材)31が嵌め込まれているため、前記蒸発分子はその量が所定量に絞り込まれて分子線として放出されるようになっている。
【特許文献1】特開2003−34591号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前述のような従来のMBE装置においては、前記各坩堝10,20の開口部は基板33の中心に向くように配置されており、且つ、前記各坩堝10,20内で蒸着材料が加熱、蒸発して発生した蒸発分子は、そのまま又は前記絞り穴32により所定量に制限されて前記坩堝10,20の開口部14,24から分子線として放出されるだけなので、基板33上に形成される薄膜の膜厚は基板33の中心部分だけが大きく基板中心から離れた周辺部分では小さくなってしまうというように、基板上に形成される薄膜の膜厚が不均一となってしまうという問題があった。
【0005】
本発明はこのような従来技術の問題点に着目してなされたものであって、極めて安価な部材を追加するだけで低コストに、基板上に形成する薄膜の膜厚の均一性を向上させることができ、しかも有機材料の蒸着のためだけでなく高温工程が必要な無機材料の蒸着のためにも使用することができる分子線源セルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上のような課題を解決するための本発明による分子線源セルは、被蒸着基板に対向する開口部を有する坩堝と、前記坩堝内に充填される分子線材料を加熱し蒸発させ、発生した蒸発分子を前記開口部から分子線として放出させるためのヒータとを備えた分子線源セルであって、前記坩堝の開口部にはキャップが配置されており、前記キャップは、その全体が前記開口部の中心軸方向に沿って約6mm以上の厚みを有するように形成されており、且つ、その内部には、前記キャップの底部の略中心から前記坩堝の開口部の外周又はその近傍へ延びる複数の絞り穴であって、前記開口部の中心軸方向に対して約15〜60度の範囲内で傾斜する複数の絞り穴が、略放射状に形成されている、ことを特徴とするものである。
【0007】
また、本発明による分子線源セルにおいては、前記キャップの絞り穴は、その内径が蒸発分子の進行方向に沿って徐々に増大するように形成されている、ことが望ましい。
【0008】
また、本発明による分子線源セルにおいては、前記キャップは、その外形が、前記開口部の中心軸に対して垂直な断面の面積が蒸発分子の進行方向に沿って徐々に増大するように形成されている、ことが望ましい。
【0009】
さらに、本発明による分子線源セルにおいては、前記キャップは、公知のセラミック材料により一体に成形されている、ことが望ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、前記坩堝の開口部に、その全体が前記開口部の中心軸方向に約6mm以上の厚みを有するキャップを配置し、このキャップの内部に、前記坩堝の開口部の中心軸方向に対して約15〜60度だけ傾斜する複数の絞り穴を、前記キャップの底部の略中心から坩堝の開口部の外周又はその近傍へ向かう方向に(例えば被蒸着基板(特にその周辺部)に向かう方向に)、略放射状に形成するようにしている。したがって、本発明によれば、蒸発分子は前記キャップの各絞り穴から基板方向に分子線として放出されるが、前記各絞り穴はそれぞれ前記坩堝の開口部(被蒸着基板に対向している)の中心軸に対して約15〜60度だけ傾斜するように形成されているので、前記分子線は前記基板の中心部から外れた周辺部の方向に(基板表面に対して約15〜60度だけ傾斜した方向に)照射されるようになる。実際には、前記分子線は拡散しながら進行するので、前記基板の周辺部だけでなく中心部にもほぼ均等に照射される。よって、本発明によるときは、基板上に堆積される薄膜の膜厚が基板の中心部のみが大きくなってその周辺部が小さくなってしまうという不都合が防止され、基板上に形成される薄膜全体の膜厚の均一性を向上させることができる。
【0011】
また、特に、本発明において、前記キャップの絞り穴の内径を蒸発分子の進行方向に沿って徐々に拡大するように形成したときは、前記絞り穴から放出される分子線は前記絞り穴の内径形状に沿って拡がりながら進行するので、基板上に形成される薄膜の膜厚の均一性をより一層向上させることができる。
【0012】
また、本発明において、前記キャップは、その外形が、前記開口部の中心軸に対して垂直な断面の面積が蒸発分子の進行方向に沿って徐々に増大するように形成されているので、前記坩堝の開口部の下方近傍部分を基板方向に向かって徐々に内径が拡大するテーパ状に形成した場合でも、前記キャップの取り付けを容易に行うことができる。
【0013】
さらに、本発明において、前記キャップを耐熱性を有する公知のセラミック材料により一体に成形するようにしたときは、前記キャップの製造を極めて安価に行うことができると共に、有機材料の蒸着のためだけでなく坩堝を高温に加熱する必要がある無機材料の蒸着のためにも使用できる、という効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明を実施するための最良の形態は、以下の実施例1について述べるような形態である。
【実施例1】
【0015】
図1(a)は本発明の実施例1に係る分子線源セルに使用される坩堝を示す側断面図、図1(b)は図1(a)の坩堝に後述のキャップ2を装着した状態を示す側断面図、図2(a)は図1の坩堝の開口部に配置されるキャップ2を示す平面図、図2(b)は前記キャップ2の側断面図、図2(c)は前記キャップ2の底面を示す図、図3(a)は前記キャップ2を斜め上方から示す斜視図、図3(b)は前記キャップ2を斜め下方から示す斜視図である。
【0016】
図1(a)(b)において、1は有底で略円筒状の坩堝、1aは坩堝1の開口部、1bは坩堝1の開口部1aの近傍の内径が他の部分より小さく形成された括れ部、である。本実施例1においては、真空容器(図示せず)内に、前記坩堝1が、その開口部1aが被蒸着基板(図示せず)に対向するように配置されている。また、本実施例1では、前記坩堝1の開口部1aの下方近傍部分1cは、その内径が図示上方に向かって徐々に拡大するテーパ状に形成されている。
【0017】
また、図2(a)(b)(c)において、2は前記坩堝1の開口部1aに配置する例えばセラミック材料で一体成形されて成るキャップ、2aは前記キャップ2の内部に略放射状に形成された複数の絞り穴、2bは前記キャップ2の底部2cに形成され前記各絞り穴2aの図示下方部分と連続するように形成された共通穴、である。本実施例1においては、前記坩堝1内で分子線材料が加熱、蒸発することにより発生する蒸発分子は、前記キャップ2の共通穴2b及びそれに連続する各絞り穴2aを通過して、分子線として前記基板方向へ放出される。
【0018】
本実施例1では、前記キッャプ2は、その図示上下方向の厚さ(前記坩堝1の開口部1aの中心軸A方向の厚さ)が、例えば8.6mmとなるように形成されている。よって、本実施例1では、前記キャップ2内に形成された絞り穴2aは、それぞれ前記基板に照射される分子線に指向性を与えるのに十分な長さを有している。
【0019】
また、本実施例1において、前記キッャプ2の絞り穴2aは、キャップ2の図示上下方向(前記坩堝1の開口部1aの中心軸A方向)に対して例えば約45度だけ傾斜するように、形成されている。また、本実施例1では、計12個の絞り穴2aが、前記坩堝1の開口部1aの近傍の括れ部1bの略中心から開口部1aの外周又はその近傍へ向かう方向(被蒸着基板の周辺部へ向かう方向)に、略放射状に形成されている。すなわち、本実施例1では、前記各絞り穴2aは、前記キャップ2の共通穴3bから斜め上方向(徐々に外周に近づく方向)に向かって延びて行き、前記キャップ2の上面の一部(外周に近い側)に開口している。
【0020】
以上より、本実施例1では、前記坩堝1で発生した蒸発分子は、前記絞り穴2aを通過するとき、基板の中心部にではなく基板の周辺部に向かうように、指向性を付与されて分子線として放出される。なお、本実施例1では、前記各絞り穴2aの内径は全て略同一に形成されている。また、本実施例1において、前記キャップ2は、前記坩堝1の開口部1aの下方近傍部分1cのテーパ状に形成された内壁面に対応するように、その外径が図示上方向(基板の方向)に沿って徐々に拡大するテーパ状に形成されている(図2(b)参照)。
【0021】
以上のように、本実施例1においては、前記坩堝1の開口部1aに例えば8.6mmの厚さを有するキャップ2が配置され、且つ、前記キャップ2には基板に向かう方向(前記坩堝1の開口部1aの中心軸A方向)に対して例えば約45度だけ傾斜する複数の絞り穴2aが形成されている。したがって、本実施例1では、前記坩堝1内で分子線材料が加熱、蒸発して発生した蒸発分子は、前記キャップ2内の各絞り穴2aの中を所定の長さ(指向性を与えるのに十分な長さ)だけ通過することにより、基板の中心部だけでなく基板の周辺部に向かうように指向性を与えられて、分子線として放出される(これに対して、例えば特許文献1の閉止部材31に形成された絞り穴32は、前記絞り穴32の長さが極めて短いため、分子線に指向性を与えることはできない)。したがって、本実施例1によれば、基板の周辺部と中心部とに渡ってほぼ均一に蒸着分子(分子線)を衝突、堆積させることができ、基板表面にほぼ均一の膜厚を有する薄膜を形成することができる。また、本実施例1においては、前記キャップ2は公知のセラミック材料で一体成形するようにしているので、極めて安価に製造することができると共に、例えば1,700℃などの高温でも耐えられるので有機材料の蒸着だけでなく高温工程が必要な無機材料の蒸着のためにも使用することができる。
【0022】
なお、本発明者は、前記坩堝1に前記キャップ2を装着して基板にAgなどの金属薄膜を形成した場合と前記キャップ2を装着しないで基板に金属薄膜を形成した場合(いずれも分子線の基板への付着速度は0.5Å/s)とにおける膜厚分布形状を測定して比較する実験を行った。図4はこの結果を示すグラフである。図4においては、前記キャップ2を使用した場合と、前記キャップ2を使用しない場合との膜厚分布形状を示している。図4に示すように、前記キャップ2を使用しない場合はセル中心(坩堝1の開口部1aの中心軸Aと基板とが交差する位置)からの距離が大きくなるに従って膜厚が比較的急激に小さくなっているが、前記キャップ2を使用した場合はセル中心からの距離が大きくなっても膜厚分布が比較的緩やかに下降している(膜厚分布形状がN=3よりも向上している)。よって、本実施例1のキャップ2を使用することにより、基板上に形成される薄膜の膜厚分布の均一性を向上させることができることが確認できた。
【実施例2】
【0023】
次に、図5(a)は本発明の実施例2に係る分子線源セルに使用される坩堝を示す側断面図、図5(b)は図5(a)の坩堝に後述のキャップを装着した状態を示す側断面図、図6(a)は図5の坩堝の開口部に配置されるキャップを示す平面図、図6(b)はその側断面図、図6(c)はその底面を示す図、図6(d)はその側面図(内部の絞り穴を破線及び一点鎖線で示す)、図7(a)は本実施例2に使用されるキャップを斜め上方から示す斜視図、図7(b)はそのキャップを斜め下方から示す斜視図である。
【0024】
図5〜7において、図1〜3と共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。図5〜7において、3は前記坩堝1の開口部1aに配置する例えばセラミック材料で一体成形されて成るキャップ、3aは前記キャップ3の内部に形成された複数の絞り穴、3bは前記キャップ3の底部3cの中央に形成され前記各絞り穴3aの図示下方部分と連続する共通穴、である。本実施例2においては、前記坩堝1内で分子線材料が加熱、蒸発して発生する蒸発分子が、前記キャップ3の共通穴3b及びそれに連続する各絞り穴3aを通過することにより、分子線となって前記基板方向へ放出される。
【0025】
本実施例2では、前記キッャプ3は、その図示上下方向の厚さ(前記坩堝1の開口部1aの中心軸A方向の厚さ)が、例えば12.6mmとなるように形成されている。よって、本実施例2では、前記キャップ3内に形成された各絞り穴3aは、それぞれ所定の長さ(前記坩堝1の開口部1aから放出される分子線に指向性を与えるのに十分な長さ)が確保されている。また、本実施例2において、前記キッャプ3の各絞り穴3aは、キャップ3の図示上下方向(前記坩堝1の開口部1aの中心軸Aの方向)に対して例えば約45度だけ傾斜するように、形成されている(図6(b)参照)。また、本実施例2では、計12個の絞り穴3aが、前記坩堝1の括れ部1cの中心から被蒸着基板へ向かう方向に、略放射状に形成されている。すなわち、本実施例2では、前記各絞り穴3aは、前記キャップ3の共通穴3bから斜め上方向(徐々に外周に近づく方向)に向かって延びて行き、前記キャップ3の図示上方部分の側面3dと上面3eの一部に開口している。
【0026】
以上より、本実施例2では、前記坩堝1内で発生した蒸発分子は、前記絞り穴3aにより、基板の中心部にではなく基板の周辺部に向かうように指向性を付与された分子線として放出される。なお、本実施例2では、前記各絞り穴3aの内径は全て同一に形成されている。また、前記キャップ3の図示下方部分は、図6(b)に示すように、前記坩堝1の開口部1aの下方近傍部分1cのテーパ状の内壁面に対応するように、その外径が図示上方向(基板の方向)に沿って徐々に拡大するテーパ状に形成されている。
【0027】
以上のように、本実施例2においては、前記坩堝1の開口部1aに例えば12.6mmの厚さを有するキャップ3が配置され、且つ、前記キャップ3には基板方向(前記坩堝1の開口部1aの中心軸A方向)に対して例えば約45度だけ傾斜する複数の絞り穴3aが略放射状に形成されている。したがって、本実施例2では、前記坩堝1内で分子線材料が加熱、蒸発することにより発生した蒸発分子が、前記キャップ3内の各絞り穴3aの中を所定の長さ(指向性を与えるのに十分な長さ)だけ通過することにより、基板の中心部にではなく基板の周辺部に向かうように指向性を与えられ、分子線として放出される。このように分子線が基板の周辺部の方向への指向性を与えられた場合でも、実際には、分子線は基板に向かう途中で徐々に拡散するので、分子線は基板の周辺部だけでなくその中心部にもほぼ均等に衝突し、堆積する。したがって、本実施例2によれば、基板の周辺部と中心部とにほぼ均一に、分子線を衝突させ蒸着分子を堆積させることができるので、基板表面にほぼ均一な膜厚の薄膜を形成することができる。また、本実施例2においては、前記キャップ3は公知のセラミック材料で一体成形できるので、極めて安価に製造することができると共に、例えば1,700℃などの高温でも耐えられるので有機材料の蒸着だけでなく高温工程が必要な無機材料の蒸着のためにも使用することができる。
【実施例3】
【0028】
次に、図8は本発明の実施例3に係る分子線源セルに使用されるキャップを示す側断面図である。本実施例3においては、図8に示すように、坩堝1の開口部1aに配置されるキャップ4の構造が前記実施例1と異なっているだけで、それ以外の基本構成は前記実施例1と同様である。本実施例3で使用されるキャップ4は、その底部4cの中央に形成されている共通穴4bから図8の斜め上方に(且つ放射状に)延びる複数の絞り穴4aの内部形状(内壁面)が、前記実施例1の絞り穴2aのようなストレートの形状(図2(b)参照)ではなく蒸発分子の進行方向に沿って徐々に内径が拡大するテーパ状に形成されている点に特徴がある。
【0029】
本実施例3においては、前述のように前記各絞り穴4aがテーパ状に形成されているため、前記各絞り穴4aを通過する蒸発分子は、前記各絞り穴4aを通過する過程で指向性を付与されながら同時にテーパ状の内壁面に沿って拡散しながら分子線として基板方向に放出される。よって、本実施例3によれば、基板表面に分子線が均等に衝突することになり、基板上の薄膜の膜厚の均一性をより向上させることが可能になる。
【実施例4】
【0030】
次に、図9は本発明の実施例4に係る分子線源セルに使用されるキャップを示す側断面図である。本実施例4においては、図9に示すように、坩堝1の開口部1aに配置されるキャップ5の構成が前記実施例2と異なっているだけで、それ以外の基本構成は前記実施例2と同様である。本実施例4で使用されるキャップ5は、その底部5cの中央に形成されている共通穴5bから図9の斜め上方に(且つ放射状に)延びる複数の絞り穴5aの内部形状(内壁面)が、前記実施例2の絞り穴3aのようなストレートの形状(図6(b)参照)ではなく蒸発分子の進行方向に沿って徐々に内径が拡大するテーパ状に形成されている点に特徴がある。
【0031】
本実施例4においては、前述のように前記各絞り穴5aがテーパ状に形成されているため、前記各絞り穴5aを通過する蒸発分子は、前記各絞り穴5aを通過する過程で指向性を付与されながら同時にテーパ状の内壁面に沿って拡散しながら分子線として基板方向に放出される。よって、本実施例4によれば、基板表面に分子線が均等に衝突することになり、基板上の薄膜の膜厚の均一性をより向上させることが可能になる。
【実施例5】
【0032】
次に、図10は本発明の実施例5に係る分子線源セルに使用されるキャップを示す側断面図である。本実施例5においては、図10に示すように、坩堝1の開口部1aに配置されるキャップ6の外形が前記実施例1と異なっているだけで、それ以外の基本構成は前記実施例1と同様である。本実施例5においては、前記キャップ6の外形が円筒形状に形成されている。これは、前記キャップ6が装着される坩堝1の開口部1aの下方近傍部分(図1の1c参照)の形状が図1などに示すようなテーパ状でなくストレートの円筒状に形成されている場合を想定して、それに適合するようにキャップ6の外形を形成したものである。なお、前記キャップ6にはその底部6cの中央に形成されている共通穴6bから図10の斜め上方に(且つ放射状に)向かうように複数の絞り穴6aが形成されているが、この点は前記実施例1と同様である。よって、本実施例5によっても前記実施例1と同様の作用効果を奏することができる。
【実施例6】
【0033】
次に、図11は本発明の実施例6に係る分子線源セルに使用されるキャップを示す側断面図である。本実施例6においては、図11に示すように、坩堝1の開口部1aに配置されるキャップ7の外形が前記実施例2と異なっているだけで、それ以外の基本構成は前記実施例2と同様である。本実施例6においては、前記キャップ7の外形は円筒形状に形成されている。これは、前記キャップ7が装着される坩堝1の開口部1aの下方の近傍部分(図5の1c参照)の形状が図5などに示すようなテーパ状でなくストレートの円筒状に形成されている場合を想定して、それに適合するようにキャップ7の外形を形成したものである。なお、前記キャップ7にはその底部7cの中央に形成されている共通穴7bから図11の斜め上方に(且つ放射状に)向かうように複数の絞り穴7aが形成されているが、この点は前記実施例2と同様である。よって、本実施例6によっても前記実施例2と同様の作用効果を奏することができる。
【実施例7】
【0034】
次に、図12は本発明の実施例7に係る分子線源セルに使用されるキャップを示す側断面図である。本実施例7においては、図12に示すように、坩堝1の開口部1aに配置されるキャップ8の外形が前記実施例3と異なっているだけで、それ以外の基本構成は前記実施例3と同様である。本実施例7においては、前記キャップ8の外形は円筒形状に形成されている。これは、前記キャップ8が装着される坩堝1の開口部1aの下方の近傍部分(図1の1c参照)の形状が図1などに示すようなテーパ状でなくストレートの円筒状に形成されている場合を想定して、それに適合するようにキャップ8の外形を形成したものである。なお、前記キャップ8には、その底部8cの中央に形成されている共通穴8bから図12の斜め上方に(且つ放射状に)向かうように、蒸発分子の進行方向に沿って徐々に内径が拡大する絞り穴8aが複数、形成されているが、この点は前記実施例3と同様である。よって、本実施例7によっても前記実施例3と同様の作用効果を奏することができる。
【実施例8】
【0035】
次に、図13は本発明の実施例8に係る分子線源セルに使用されるキャップを示す側断面図である。本実施例8においては、図13に示すように、坩堝1の開口部1aに配置されるキャップ9の外形が前記実施例4と異なっているだけで、それ以外の基本構成は前記実施例4と同様である。本実施例8においては、前記キャップ9の外形は円筒形状に形成されている。これは、前記キャップ9が装着される坩堝1の開口部1aの下方の近傍部分(図5の1c参照)の形状が図5などに示すようなテーパ状でなくストレートの円筒状に形成されている場合を想定して、それに適合するようにキャップ9の外形を形成したものである。なお、前記キャップ9にはその底部9cの中央に形成されている共通穴9bから図13の斜め上方に(且つ放射状に)向かうように、蒸発分子の進行方向に沿って徐々に内径が拡大する絞り穴9aが複数、形成されているが、この点は前記実施例4と同様である。よって、本実施例8によっても前記実施例4と同様の作用効果を奏することができる。
【0036】
以上、本発明の各実施例について説明したが、本発明及び本発明を構成する各構成要件は、それぞれ、前記の各実施例及び前記の各実施例を構成する各要素として述べたものに限定されるものではなく、様々な修正及び変更が可能である。例えば、前記実施例1においては、前記キャップ2を公知のセラミック材料により製造した例を示したが、本実施例1ではこれに限られるものではなく、例えば公知の金属材料により製造するようにしてもよいことは勿論である。
【0037】
また、前記実施例1〜8においては、坩堝1の開口部1aに配置するキャップ2,3,4,5,6,7,8,9の前記開口部1aの中心軸A方向の厚さを8.6mm(実施例1など)又は12.6mm(実施例2など)としたが、本発明では、これらに限られるものではない。すなわち、本発明においては、前記キャップは、前記絞り穴2a,3a,4a,5a,6a,7a,8a,9aにその中を通過する蒸発分子に十分な指向性を与えることができるような長さを確保できるだけの厚さを有していればよいので、結局、前記キャップの厚さは約6mm以上の厚みを有するものであればよい。また、そもそもキャップとは開口部を閉止するためのものであるからその厚さ寸法は常識的な範囲に止まるべきことや製造コストなどの観点から、本発明におけるキャップについても過大な必要以上の厚さ寸法は採用すべきではない(その中を通過する蒸発分子に十分な指向性を付与できる長さを前記絞り穴に確保できるような厚さであれば必要十分である)ので、結局、本発明におけるキャップの厚さは約6〜15mm程度の厚みを有するように形成すればよいし、それが望ましい。
【0038】
また、前記実施例1〜8においては、前記キャップ2,3,4,5,6,7,8,9の内部に形成する各絞り穴2a,3a,4a,5a,6a,7a,8a,9aを、前記坩堝1の括れ部1cの略中心から開口部1aの外周方向に向かって、前記開口部1aの中心軸A方向に対して約45度だけ傾斜するように形成するようにしているが、本発明では、これに限られるものではなく、分子線の放出方向を基板の中心ではなく基板の周辺部とすることができれば良いので、結局、前記キャップの内部に形成する各絞り穴は前記開口部1aの中心軸A方向に対して約15〜60度の範囲内(より望ましくは約30〜50度の範囲内)で傾斜するように形成すればよいし、それが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】(a)は本発明の実施例1に係る分子線源セルに使用される坩堝を示す側断面図、(b)は(a)の坩堝にキャップを装着した状態を示す側断面図。
【図2】(a)は本実施例1に使用されるキャップを示す平面図、(b)はその側断面図、(c)はその底面を示す図。
【図3】(a)は本実施例1に使用されるキャップを斜め上方から示す斜視図、(b)はそのキャップを斜め下方から示す斜視図。
【図4】本実施例1の作用効果を説明するためのグラフ。
【図5】(a)は本発明の実施例2に係る分子線源セルに使用される坩堝を示す側断面図、(b)は(a)の坩堝にキャップを装着した状態を示す側断面図。
【図6】(a)は本実施例2に使用されるキャップを示す平面図、(b)はその側断面図、(c)はその底面を示す図、(d)はその側面図(内部の絞り穴を破線及び一点鎖線で示す)。
【図7】(a)は本実施例2に使用されるキャップを斜め上方から示す斜視図、(b)はそのキャップを斜め下方から示す斜視図。
【図8】本発明の実施例3に使用されるキャップを示す側断面図。
【図9】本発明の実施例4に使用されるキャップを示す側断面図。
【図10】本発明の実施例5に使用されるキャップを示す側断面図。
【図11】本発明の実施例6に使用されるキャップを示す側断面図。
【図12】本発明の実施例7に使用されるキャップを示す側断面図。
【図13】本発明の実施例8に使用されるキャップを示す側断面図。
【図14】従来の分子線源セルを説明するための図。
【符号の説明】
【0040】
1 坩堝
1a 開口部
1b 括れ部
1c 開口部の下方近傍部分(括れ部・テーパ状部分)
2,3,4,5,6,7,8,9 キャップ
2a,3a,4a,5a,6a,7a,8a,9a 絞り穴
2b,3b,4b,5b,6b,7b,8b,9b 共通穴
2c,3c,4c,5c,6c,7c,8c,9c キャップの底部
3d キャップの側面
3e キャップの上面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被蒸着基板に対向する開口部を有する坩堝と、前記坩堝内に充填される分子線材料を加熱し蒸発させ、発生した蒸発分子を前記開口部から分子線として放出させるためのヒータとを備えた分子線源セルであって、
前記坩堝の開口部にはキャップが配置されており、
前記キャップは、その全体が前記開口部の中心軸方向に沿って約6mm以上の厚みを有するように形成されており、且つ、その内部には、前記キャップの底部の略中心から前記坩堝の開口部の外周又はその近傍へ延びる複数の絞り穴であって、前記開口部の中心軸方向に対して約15〜60度の範囲内で傾斜する複数の絞り穴が、略放射状に形成されている、ことを特徴とする分子線源セル。
【請求項2】
請求項1において、
前記キャップの絞り穴は、その内径が蒸発分子の進行方向に沿って徐々に増大するように形成されている、ことを特徴とする分子線源セル。
【請求項3】
請求項1において、
前記キャップは、その外形が、前記開口部の中心軸に対して垂直な断面の面積が蒸発分子の進行方向に沿って徐々に増大するように形成されている、ことを特徴とする分子線源セル。
【請求項4】
請求項1において、
前記キャップは、セラミック材料により一体に成形されている、ことを特徴とする分子線源セル。
【請求項1】
被蒸着基板に対向する開口部を有する坩堝と、前記坩堝内に充填される分子線材料を加熱し蒸発させ、発生した蒸発分子を前記開口部から分子線として放出させるためのヒータとを備えた分子線源セルであって、
前記坩堝の開口部にはキャップが配置されており、
前記キャップは、その全体が前記開口部の中心軸方向に沿って約6mm以上の厚みを有するように形成されており、且つ、その内部には、前記キャップの底部の略中心から前記坩堝の開口部の外周又はその近傍へ延びる複数の絞り穴であって、前記開口部の中心軸方向に対して約15〜60度の範囲内で傾斜する複数の絞り穴が、略放射状に形成されている、ことを特徴とする分子線源セル。
【請求項2】
請求項1において、
前記キャップの絞り穴は、その内径が蒸発分子の進行方向に沿って徐々に増大するように形成されている、ことを特徴とする分子線源セル。
【請求項3】
請求項1において、
前記キャップは、その外形が、前記開口部の中心軸に対して垂直な断面の面積が蒸発分子の進行方向に沿って徐々に増大するように形成されている、ことを特徴とする分子線源セル。
【請求項4】
請求項1において、
前記キャップは、セラミック材料により一体に成形されている、ことを特徴とする分子線源セル。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2009−40615(P2009−40615A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−204235(P2007−204235)
【出願日】平成19年8月6日(2007.8.6)
【出願人】(591097632)長州産業株式会社 (19)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年8月6日(2007.8.6)
【出願人】(591097632)長州産業株式会社 (19)
【Fターム(参考)】
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