説明

分子診断装置

本発明は融解曲線分析が電気センサ及びプログラマブル加熱素子を用いて実行される生物学的検出装置に関する。本装置は、オプションとして、装置内の核酸を光学的に検出するための手段を更に含む。例えば本発明は、融解曲線分析を実行するための方法であって、マイクロチャンバ中の電気センサの表面に単鎖核酸プローブを供給するステップ、前記単鎖核酸プローブと単鎖核酸ターゲットとの間の二重鎖核酸へのハイブリッド形成を可能にするために、前記マイクロチャンバ中の前記電気センサに前記単鎖核酸ターゲットを含むサンプルを接触させるステップ、前記マイクロチャンバを徐々に加熱するステップ、前記電気センサの電気信号の変化に基づいて前記二重鎖核酸の融解温度を検出するステップを有する方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定のDNAシーケンスのセンサとして二重鎖核酸の融解温度を決定するための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
SNP(Single Nucleotide Polymorphisms:一塩基多型)は、ゲノム中の特定のマップされた場所に2つ以上の可能なヌクレオチド(個体のゲノム中の塩基対間の不整合)が存在する場合、発生する。それらは、推定で1200〜1500の塩基対(base pair: bp)ごとに1個の頻度でヒトゲノム中に見出される。特定のSNPは、疾患(すなわち胃潰瘍又は消化性潰瘍、癌など)に関連し、薬剤に対する反応を予測するために明らかにされる。通常、既知のSNPの患者マップは、対照群の同じSNPのマップと比較される。患者からのパターンが異なる場合、それらの相違点は、疾患又は特定の治療に対する患者の感受性に潜在的に関連する可能性がある遺伝因子を示している可能性がある。
【0003】
有用なマップを構築するために必要とされるSNPの数の見積もりは、100,000(DNAの30kbごとに1つのSNP)から1,000,000(3kbごとに1つのSNP以下)の範囲に及ぶ。一般的にマップ上により多くのSNPがあるほど良く、理想的な数は、多分600,000と1,000,000の間だろう。しかしながら、マップ上のSNPの数は、それらを識別するためのコストに対して均衡がとれていなければならない。
【0004】
SNPは、完全に相補的な二重鎖DNA(dsDNA)と不整合を含んでいるdsDNAとの間の融解温度の差によって検出されることができる。融解温度は、通常、いわゆる融解曲線分析(Melting Curve Analysis:MCA)を用いて決定される。MCAは、その1つが一般的に蛍光色素によってラベル付けされる二重鎖DNA断片をゆっくりと加熱することによって実行される。DNAが加熱されるにつれて、融解温度に達して二重鎖が変性するときに、蛍光は急激に低下する[Akey et al. (2001) Biotechniques. 30, 358-362]。不整合が見出されるdsDNAは、低い温度で変性する。96又は384ウェルマイクロプレート上の遺伝子タイピングSNPの蛍光融解曲線分析が、Bennett et al. (2003) Biotechniques 34, 1288-1294において説明される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ナノチューブセンサ装置は、ナノ構造素子を通した結合の電気変換によって生体分子の結合を検出し、ラベリングの必要を回避する。WO2006024023は、DNA検出のためのナノチューブセンサ装置を開示する。この文献は、(例えば異なるpH又は温度を用いて)結合の厳重さを変化させることによってSNPを検出することを提案する。しかしながら、これらの異なる条件がどの程度ナノチューブの電気的応答に影響を及ぼすのか、そしてこれが信頼性の高い検出を可能にするかどうかは不明確である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目的は、核酸配列の差異(例えばSNP)を識別するための方法及び装置を提供することである。本発明は、融解曲線分析(Melting Curve Analysis:MCA)が電気センサを用いて実行される装置及び方法を開示し、オプションとして光学的検出方法と組み合わせられる。
【0007】
電気的測定によるMCA決定は、光学的ラベルによってサンプルにラベル付けすることを必要とせずに実行されることができることが、本発明の利点である。
【0008】
MCAが2つの異なる検出方法(電気的測定及び光学的検出)を用いて同じ装置内で実行されることができることが、本発明の特定の実施例の利点である。
【0009】
提供された装置及び方法が、電気的及び光学的方法の組み合わせを用いて所与の二重鎖(ds)核酸の正確な融解温度を決定するために用いられることができることが、本発明の特定の実施例の更なる利点である。そしてこの基準値は、この所与の核酸の将来の検出において用いられることができ、電気的方法のみを用いた信頼性の高い検出を可能にする。
【0010】
本装置及び方法が、核酸中に生じている異なるSNPに対する電気的方法で得られる結果とMCAによって得られる結果との間の相関を決定するために用いられることができることが、本発明の更なる利点である。この情報は、ライブラリ中に記憶されることができ、電気的方法のみを用いたSNPの信頼性の高い決定を可能にするための基準として用いられることができる。
【0011】
本発明の第1の態様は、マイクロチャンバ(101)、前記マイクロチャンバ中に配置される電気センサを含み、当該センサがその表面に存在する二重鎖核酸の電気的特性の変化を検出することが可能である電気的検出手段(102)、及び前記マイクロチャンバを加熱することが可能なプログラム可能な加熱素子(103)を有するバイオセンサ装置(100)に関する。
【0012】
一実施例において、電気センサは、ナノ構造(例えばカーボンナノチューブ)を有する。他の実施例において、少なくとも1つの単鎖核酸が、装置の電気センサに存在する。
【0013】
特定の実施例において、装置のマイクロチャンバは、少なくとも1つの半透明又は透明な部分を有する。
【0014】
さらに他の実施例において、本装置は、マイクロチャンバの少なくとも1つの半透明又は透明な部分を通して、マイクロチャンバ中で生成される信号を検出することが可能な光学的検出手段(例えば蛍光検出器)を有する。
【0015】
特定の実施例において、本装置は、アレイ状に配列された少なくとも2つの電気センサを有する。
【0016】
さらに他の実施例において、本装置は、前記電気センサを支持する第1の基板をさらに含む。
【0017】
本発明の別の態様は、融解曲線分析を実行するための方法に関し、当該方法は、マイクロチャンバ中の電気センサの表面上に単鎖核酸プローブを提供し、マイクロチャンバ中の電気センサに単鎖核酸ターゲットを含むサンプルを接触させて、二重鎖核酸への単鎖核酸プローブと単鎖核酸ターゲットとの間のハイブリッド形成を可能にし、マイクロチャンバを徐々に加熱して、電気センサの変化する電気信号に基づいて二重鎖核酸の融解温度を検出する。
【0018】
本方法の1つの実施例は、変化する光学信号に基づいて二重鎖核酸の融解温度を検出するステップと、電気信号から得られる値と光学信号から得られる値を比較するステップをさらに含む。
【0019】
本発明の更に別の態様は、電気的検出方法を用いてサンプル中の遺伝子の核酸フラグメントの中の一つ以上のヌクレオチド多形の存在を決定する方法に関し、当該方法は、電気的検出手段を用いて遺伝子のヌクレオチド多形のライブラリの融解温度を決定し、これらのヌクレオチド多形の各々に対して、同時に光学的検出手段を用いて融解温度を決定し、電気的検出に基づいて融解点の値のライブラリを得るために、光学的検出手段で得られた値に電気的検出手段で得られた値を関連づけ、電気的検出方法を用いてサンプルの核酸フラグメントの融解点を決定し、一つ以上の多形の存在の信頼性の高い指示を得るために、得られた値をライブラリと比較する。
【0020】
本発明の別の態様は、本発明の装置を較正するための方法に関し、当該方法は、電気的測定方法を用いて二重鎖核酸の融解温度を決定し、光学的方法を用いて融解温度を同時に決定することによって、そのように得られた融解温度を一回以上確認し、光学的に決定された二重鎖核酸の融解温度に対応する電気的測定値を定めるステップを有する。
【0021】
本発明の更に別の態様は、サンプル核酸と核酸プローブとの間のハイブリッド形成を測定する方法に関し、当該方法は、単鎖核酸プローブを電気センサに提供し、サンプル核酸が核酸プローブとハイブリッドすることができる条件の下にサンプル核酸を有するサンプルを適用し、制御された態様で電気センサ上のハイブリッドされた核酸を徐々に加熱し、電気センサによってハイブリッドされた核酸の融解温度を決定する。
【0022】
この方法の特定の実施例において、ハイブリッドされた核酸の加熱の間、ハイブリッドされた核酸の融解点は、光学的検出によって検出される。この方法の特定の実施例において、サンプル核酸は、光学的ラベルによってラベル付けされる。
【0023】
この方法の一実施例において、加熱は、少なくとも毎秒1℃の速度で実行される。特定の実施例において、検出は、上述の較正方法によって決定される電気的測定値を用いて、電気的測定のみによって実行される。
【0024】
本発明の更に別の態様は、ds核酸中の不整合を決定するための本発明の装置及び本発明の方法の使用に関する。
【0025】
本発明の更に別の態様は、少なくとも1つの電気センサ、電気センサを支持している基板を有するナノセンシング装置の反応チャンバに関し、前記基板は熱伝導性であり、前記マイクロチャンバは、少なくとも一つの(半)透明な部分を有する。
【0026】
特定の実施例において、この反応チャンバは、マイクロチャンバを加熱することが可能なプログラム可能な加熱素子を更に含む。
【0027】
本発明の上記の及び他の特性、特徴及び利点は、一例として本発明の原理を説明する添付の図面に関して、以下詳細な説明から明らかになる。この説明は、本発明の範囲を制限せずに、単に例として与えられる。以下で示される参照図は、添付された図面を参照する。異なる図において、同じ参照符号は、同じ又は類似した要素を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施例によるナノセンサの模式的な構成の側面図(1:基板; 2:ナノ構造; 3:絶縁層; 4:電極(ソース及びドレイン); 5:ゲート電極)。
【図2】本発明の一実施例による、内蔵の加熱素子6を有するアレイナノセンサの模式的な構成の平面図。3は加熱素子を覆って絶縁を提供するオプションの材料である。(2:ナノ構造; 4:電極)
【図3】本発明の一実施例による、内蔵の加熱素子6及び透明又は半透明な部分7を有するアレイナノセンサの模式的な構成の平面図。(2:ナノ構造; 3:絶縁層; 4:電極)
【図4A】本発明の一実施例によるMCAの理論上の例。相補的なds核酸。
【図4B】本発明の一実施例によるMCAの理論上の例。1つの不整合を伴うds核酸。
【図4C】本発明の一実施例によるMCAの理論上の例。A及びBにおけるds核酸の理論上の融解曲線。
【図5】本発明の一実施例によるバイオセンサ装置100の要素を示す図。(101:マイクロチャンバ、102:電気的検出手段、103:加熱素子、104:光学的検出手段、105:供給手段、106:ソース、107:制御及び分析回路、108:入出力手段)
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明は、特定の実施例に関して、特定の図面を参照して説明されるが、本発明はそれらに制限されず、請求の範囲のみによって定められる。請求項中のいかなる参照符号も、範囲を制限するものとして解釈されてはならない。説明される図面は単なる模式図であり、非限定的である。図面において、いくつかの要素のサイズは、説明の便宜上、誇張される場合があり、スケール通りに描かれない場合がある。「有する」という用語が本説明及び請求項で用いられる場合、それは、他の要素又はステップを除外しない。単数形の名詞は、別途特に述べられない限り、その名詞が指すものが複数存在することを含む。
【0030】
さらに、説明及び請求の範囲中の「第1」「第2」「第3」等の用語は、同様の要素を区別するために用いられ、必ずしも逐次的又は時間的な順序を説明するためのものではない。そのように用いられる用語は、適切な状況の下で相互に交換可能であり、本願明細書において説明される本発明の実施例は、本願明細書において説明され又は示されるもの以外の他の順序での動作が可能であることが理解されるべきである。
【0031】
以下の用語又は定義は、単に本発明を理解することを補助するために提供される。これらの定義は、当業者によって理解される範囲よりも小さい範囲を持つものと解釈されてはならない。
【0032】
本願明細書において用いられる「多形」という用語は、一般に、生物体又は遺伝子が二種類以上の形態で出現する能力に関する。本発明において、「多形」は、特に、同じ遺伝子の二種類以上の形態に関する。
【0033】
本願明細書において用いられる「一塩基多型」又は「SNP」という用語は、単一のヌクレオチドの違いから生じる多形に関する。
【0034】
用語「対立遺伝子」は、一般に所与の遺伝子又は核酸セグメントの一つ以上の選択的形態のいずれかに関する。所与の遺伝子の両方又は全ての対立遺伝子は、同じ特徴又は特性に関するが、特定の対立遺伝子によってコード化される生成物又は機能は、定性的及び/又は定量的に、その遺伝子の他の対立遺伝子によってコード化されるものとは異なる。所与の遺伝子の3つ以上の対立遺伝子は、対立形質シリーズを構成する。二倍体細胞又は生物体において、対立遺伝子の対(すなわち所与の遺伝子の2つの対立遺伝子)のメンバーは、一組の相同染色体上の対応する位置(座)を占有する。これらの対立遺伝子が遺伝的に同一の場合、細胞又は生物体はホモ接合であると呼ばれる。対立遺伝子が遺伝的に異なる場合、細胞又は生物体は特定の遺伝子に関してヘテロ接合であると呼ばれる。野生型対立遺伝子は、所与の生物体の野性株中に見いだされる特定の表現型特性にコード化するものである。
【0035】
「融解プロフィル」において、二重鎖核酸の単鎖核酸への遷移によって影響を及ぼされるパラメータ(X)は、温度(T)に対してプロットされる。古典的に、このパラメータは、二重鎖核酸中にのみ存在し又は二重鎖核酸のみの特徴を示すラベル(例えば、本願明細書において説明されるように、鎖のうちの一方に結合する挿入剤及びラベル)によって確保される光学信号(例えば蛍光(F))である。
【0036】
「融解温度」又は「Tm」という用語は、二重鎖核酸の50%が単鎖核酸に変性した温度に関する。Tmは、融解プロフィルにおける最小信号と最大信号との間の中間点、及び核酸の融解プロファイルの負の第1微分(-d(X)/dT)におけるピークの頂点に対応する。
【0037】
本願明細書において用いられる用語「核酸」は、デオキシリボ核酸、オキシリボ核酸、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、リボ核酸、メッセンジャーRNA、トランスファーRNA及びペプチド核酸並びに他の合成複製物を含む。
【0038】
「単鎖(ss)核酸」という用語は、上記で定められた核酸の一つの鎖をいう。
【0039】
本願明細書において用いられる「二重鎖(ds)核酸」という用語は、上記の核酸の二重鎖に関し、RNA/DNAのようなハイブリッドds核酸を含む。それは、鎖の一方又は両方の一部のみ(少なくとも10個のヌクレオチド)が相補的であり、二重鎖を形成するハイブリッドを含む。
【0040】
「核酸プローブ」という用語は、ハイブリッド形成及び検出の前にセンサ(例えばナノチューブ)の表面に存在する核酸に関する。一般的に、核酸プローブは、サンプル中に存在すると考えられている特定のターゲット核酸とのハイブリッド形成を可能にするように選択される。
【0041】
本明細書で使用される用語「サンプル核酸」は、サンプル中に存在する核酸をいう。
【0042】
「電気センサ」という本明細書で用いられる用語は、その表面に存在する二重鎖核酸の電気的特性の変化を検出することが可能なセンサに関する。そのような電気的特性の例には、抵抗、インピーダンス、導電性が含まれる。
【0043】
「ナノ構造」という本明細書で用いられる用語は、少なくとも1つの100nmより小さい大きさを持ち、グラファイトのような化学結合を伴う結晶性物質の少なくとも1つのシートを有する対象物に関する。
【0044】
本願明細書において用いられる「ナノセンサ」という用語は検出装置であり、それによって、検出は、ナノ構造又はナノ構造のネットワークであるセンサを通して生じる。
【0045】
本明細書で用いられる用語「ナノチューブ」は、単一の管状要素、多重チューブ、又はナノ構造の相互接続されたチューブのネットワークに関し、直径は1〜2nmである。
【0046】
本願明細書において「電気的測定」という場合、一つ以上の電気的特性(例えば抵抗、インピーダンス、相互コンダクタンス、容量など)の測定に関することが意図される。
【0047】
本発明は、第2の核酸とのハイブリッド形成の強度に基づく生体分子の検出(より詳しくは核酸の検出)のための方法及びツールに関する。より詳しくは、本発明は、ds核酸の融解温度(Tm)の信頼性が高い決定のための方法及びツールを提供する。
【0048】
融解温度の値は、GC含量を含む複数の要因に依存する。より詳しくは、核酸中のGC対の割合がTmに関連する。GC対は、3つの水素結合を持ち、2つの水素結合だけを持つAT対より安定している。したがって、融解曲線分析(MCA)によって、GC/AT比が異なるDNA断片を区別することが可能である。融解曲線分析のコンセプトは、(前掲の)Akeyにおいて詳細に説明される。融解曲線分析は、温度の関数として、(二重鎖核酸本来の又はラベルの存在の結果としての)二重鎖核酸の減少及び/又は単鎖核酸の増加を示す(一般に'X'として参照される)パラメータを測定することによって実行される。このパラメータは、二重鎖核酸の融解温度(Tm)に達した時に、二重鎖核酸の変性に起因して影響を受ける。このパラメータの負の第1微分(-dX/dT)をとることによって、ds核酸の融解温度は容易に視覚化されることができて及び比較されることができ、完全に相補的なds核酸と一つ以上の不整合を有するds核酸との間の区別を簡単にする。一般的に、パラメータが挿入剤の結合である場合(下記参照)、パラメータは蛍光であり、蛍光の負の第1微分(-dF/dT)が用いられる(図4参照)。
【0049】
本発明は、電気センサに基づく検出装置に関し、加熱素子が、プログラム可能な信頼性が高い態様で電気センサ上に存在するサンプルを徐々に加熱(及びオプションとして冷却)するために提供される。二重鎖核酸の融解温度の決定のために、一般的に約20〜100℃、より詳しくは20〜80℃の範囲で、制御可能な温度勾配が適用される(例えば0.1℃/s〜1℃/s)。100℃に及ぶ高い温度への加熱は、核酸を変性し、サンプル中に存在するタンパク質の活性を破壊し、又は核酸の増幅若しくはラベリングに用いられるような酵素を変性させるために用いられることができる。約4℃までの冷却は、核酸をアニール/ハイブリッドするため、又は分析前後にサンプルを保存するために用いられることができる。
【0050】
本発明の装置の制御可能な加熱素子は、温度センサを含むことができる。温度センサからのデータは、本願明細書において説明される電気的及び/又は光学的検出手段のデータと組み合わせるために、データ分析器に提供されることができる。オプションとして、マイクロチャンバ内の温度を検出するための温度測定手段が、別のユニットとして提供される。
【0051】
1つの実施例によれば、本装置は、一つ以上のセンサの表面及び/又は一つ以上のセンサを含むマイクロチャンバの制御された加熱を可能にする一つ以上の加熱素子を有する。本発明の装置及び方法に用いられる制御可能で正確な様式で核酸サンプルを含む容器又はチャンバを加熱及び冷却するための加熱素子は、従来技術において周知である。そのような加熱素子は、電気ヒーター、熱電性ヒーター及び冷却器(ペルチェ素子)、抵抗ヒーター、容量結合RFヒーター、ヒートシンク、流体回路ヒーター、ヒートパイプ、化学ヒーター並びに他の種類を含む。特定の実施例において、加熱は、場外の加熱メカニズムを用いて実行される。他の実施例では、加熱メカニズムは、微小流体装置に物理的に接触しない。例えば、電磁放射(例えばマイクロ波スペクトラムの範囲内又は赤外線スペクトラムの範囲内である放射)が、マイクロチャンバの内部を加熱するために用いられることができる。あるいは、外部の加熱メカニズム(例えば流体の加熱を引き起こすために用いられる(超)音波ヒーター)が、マイクロチャンバに接触して用いられる。
【0052】
一つ以上の加熱素子が、一つ以上のセンサ及び/又はセンサやマイクロチャンバを囲む領域を適切に加熱することを確実にするように配置される。一般的に、一つ以上の加熱素子は、必要な絶縁を提供する基板内に提供される。例えば、加熱素子(例えば抵抗)は、リソグラフィ及びエッチングのような周知の半導体製造技術を用いることにより、基板中に直接微細加工される。また、同じ技術は、所望のセンサ領域内に熱を閉じ込めるための適切な絶縁を提供するために、オプションとして用いられる。1つの実施例によれば、加熱素子は、ヒートシンク素子として作用する材料の蒸着層によって囲まれる。特定の実施例において、加熱素子は、基板中に埋め込まれているジグザグライン構造を有する抵抗であり、ナノチューブの下を走り、電気的外乱を回避するために適切に絶縁される。
【0053】
本発明は、マイクロチャンバ中に冷却素子をオプションとして含むことができる。一例として、能動冷却素子は、ペルチェ素子であることができる。任意の形態の微小冷却素子が用いられることができる。例えば、冷却装置の1つの種類は、微小電気機械式冷却システムである。そのようなシステムの1つの例は、磁気冷却サイクルに基づく冷却システムであることができ、微小電気機械式スイッチ、マイクロリレー、リードスイッチ又はゲートスイッチが、そのようなサイクルの吸収フェーズと熱排除フェーズとの切り替えのために用いられる。そのような装置は、IBM社出願の米国特許6,588,215B1においてさらに詳細に説明される。そのようなシステムの他の例は、圧電ドライバを用いて積層を横断する温度差を提供することに基づく、熱音響冷却装置であることができる。それによって、例えばユタ大学による米国特許6,804,967B2においてより詳細に説明されるように、高周波音が生成され、それは積層の一つ以上の部分との相互作用によって温度勾配を生じさせて、冷却を可能にする。そのようなシステムの更に他の例は、Technology Applications社による米国特許6,804,967においてさらに詳細に説明されるように、気体の膨張が微小電気機械式バルブを用いて制御される微小電気機械式システムであることができる。マイクロチャンバ中に集積化されることができ、サイズがコンパクトであるように、微小電気機械式技術、リソグラフィ又は薄膜蒸着技術を用いて適用されることができることが、これらの冷却手段のいくつかの利点である。
【0054】
本発明は電気センサに基づく検出装置に関する。したがって、そのような装置は、一般的に、電気センサによって生成される信号を記録することが可能である電気的検出手段(102)を含む。本発明の1つの実施例によれば、一つ以上の電気センサを備える装置が提供される。複数の電気センサ(例えば電気センサのアレイ)での独立した検出が望まれる場合、独立した加熱素子が、電気センサの各々の近傍に配置されることができ、適切な及びオプションとして異なるレートで、熱を供給することができる。
【0055】
一実施例によれば、センサは、ソース電極、ドレイン電極及びオプションとしてゲート電極を更に含む電気的検出手段である。例えば、ゲート電極の存在下で、電気センサは、電界効果トランジスタを形成するために、ソース及びドレインを接続する。
【0056】
本発明の一実施例によれば、電気センサは、ナノ構造(すなわち少なくとも1つの100nmより小さい寸法を持つ構造)である。1つの実施例によれば、ナノ構造は、例えば、単一及び/若しくは多層カーボンナノチューブ二層ナノチューブ、多層ナノチューブすなわち"onion"、並びに/又は、検出素子として作用するようにポリヌクレオチドと相互作用するそのようなナノチューブを含む相互接続ネットワークのような、グラファイト状の化学結合を有する結晶性物質の少なくとも1つの薄板を含む。一般的に、ナノ構造は、マイクロチャンバの側面であることができる基板(第1基板)に配置される。
【0057】
本発明の文脈において用いられるナノチューブは、1〜2nmの直径を持つ単一壁カーボンナノチューブ(SWNT)であることができる。ナノチューブは、単一のチューブ、複数のチューブ又は相互に連結したチューブのネットワークを含むことができる。一実施例によれば、ナノチューブは、多層ナノチューブ(MWNT)である。一実施例において、複数のナノチューブは、基板上で互いに平行に向きを定められる。あるいは、多数のナノチューブは、ランダムに向きを定められる。基板の領域のナノチューブの数は密度として参照される。基板がランダムに向きを定められた多くのナノチューブを含む場合、電流が定められた領域の片側から反対側まで(例えばナノチューブ間の接点を介して)ネットワーク中を通ることを保証するために、密度は十分に高くなければならない。ナノチューブは主に炭素でできているが、他の材料(例えばシリコンナノワイヤ及び無機ナノロッド窒化ほう素、二硫化モリブデン及び二硫化タングステンが用いられることもできる。ナノチューブは、ナノチューブの鏡像異性により半電導性であることができる。ナノチューブネットワークを成長する方法は、当業者に知られており、従来のリソグラフィによる化学蒸着(CVD)、溶媒懸濁蒸着、真空蒸着などの方法を含む(WO2004040671, Hu et al. (2004) Nano Lett. 4, 2513-2517)。対向する電極間の領域の外側の領域では、過剰なナノチューブは、適切な方法(例えばプラズマエッチング)を用いて基板から除去されることができる。
【0058】
さらに他の実施例によれば、電気センサは、金属又は金属合金の一つ以上の電極を含む。例えば、電極はTi、Pd、Auであることができる。
【0059】
センサがその表面に存在する核酸の電気的特性の変化を、検出可能な電気信号に移すために、センサは、オプションとして接点を通して電気回路に接続される。接点は、センサとの電気通信を確実にする導電性素子を含む。センサがナノ構造である場合、接点は、ナノ構造を支持する第1基板の表面上に直接配置されることができ、あるいは、ナノ構造の上に(例えばナノチューブネットワーク上に)配置されることができる。ナノチューブネットワーク中を流れる電流は、ナノチューブネットワークの定められた領域内に各々の接点がネットワークと電気的に通信するように配置される少なくとも2つの接点を使用することで測定されることができる。電極とセンサとの間に電気容量が存在するように、センサと電気的に通信しない更なる接点がゲート電極として提供されることができる。一般的に、このゲート電極は、センサを支持している基板の下に配置される。そのようなナノ装置の例は、例えばUS2004132070に示される。抵抗、インピーダンス及びトランスダクタンスを含むセンサの異なる電気的特性が、選択された又は可変のゲート電圧の影響の下で測定されることができる。ゲート電極に対するセンサ中の電場を引き起こすために電圧が一つ以上の接点に印加されることができ、ネットワークの容量が測定されることができる。
【0060】
本発明の装置は、(吊下げによって又は直接的な支持によって)機械的に電気センサを支持する第1基板を含む。
【0061】
電気センサがナノ構造である場合、このセンサは一般的に、電気的絶縁材料(例えばシリカベース)である基板の表面上に製造される。各々のセンサによって覆われる基板表面の面積は、一般的に約1cm2以下である。特に、センサの各々によって覆われる基板表面の面積は、約1mm2〜約0.01mm2である。特に好ましい実施例において、各々のセンサは、約100μm2〜約2,500μm2の基板表面の面積を覆う。特定の実施例において、センサは、基板表面上の約3cm2以下の面積内に含まれるアレイ(下記参照)として配置される。
【0062】
あるいは、電気絶縁層が導電性基板と電気センサとの間に存在するならば、基板は電気伝導材料(例えばシリコン又は金属)である。
【0063】
適切な基板は、シリコン酸化物、シリコン窒化物、酸化アルミニウム、ポリイミド及びポリカーボネートであることができる。本願明細書において説明される複数の例において、基板は、シリコンウェーハ又はチップの表面上に、シリコン酸化物、SIO2、Si3N4などのような材料から成る一つ以上の層、フィルム又はコーティングを含む。一実施例によれば、第1基板は、透明な材料(例えばSIO2)又は透明にされることができる材料である。
【0064】
上記のように、電気センサがマイクロチャンバ中に配置される場合、第1基板は、マイクロチャンバの一つ以上の壁を形成するために用いられ、又は一つ以上のマイクロチャンバ壁のコーティングとして提供される。
【0065】
本発明の一実施例によれば、本装置の加熱素子は、電気センサ、電気センサを囲む領域及び/又は装置のマイクロチャンバ中の液体の加熱を容易にするために、第1基板の表面の下又は第1基板の表面の上に提供される。
【0066】
特定の実施例によれば、本発明の装置は、電気センサの接点の上に堆積する絶縁材料の層をさらに有する。エポキシコーティングを含む様々な適切なポリマー及び樹脂が、従来技術において周知である。この絶縁層は、第1基板の絶縁材料と同様の材料であることができる。それは、接点を含む第1基板の特定の領域に選択的に適用されることができ、又は基板全体の上に適用されることができ、接点間のようなセンサの有効領域から除去されることができる。絶縁層は、電気的絶縁を提供し、サンプルの適用に用いられる緩衝液のような導電性流体と接触する場合にセンサの短絡を防止し、又は環境への露出からセンサを保護する。絶縁層はまた、ナノチューブ及びDNA分子を含む(但しこれらに限定されない)他の材料の蒸着を制御する際に有用である。任意の数の絶縁層が用いられることができる。
【0067】
本発明の装置は、電気的検出手段に用いられる電気センサを含む少なくとも1つの反応チャンバ又はマイクロチャンバ(101)を含むことができる。一般的にマイクロチャンバのサイズは1〜100μlの間である。1つの実施例によれば、1つのマイクロチャンバは複数の電気センサを含み、異なる核酸プローブによる同時測定を可能にする。特定の実施例によれば、複数のセンサは、マイクロチャンバ内に配列される。アレイは、複数のセンサの事前に決められた態様での一次元又は二次元配置であることができる。センサは、1つの単一の反応チャンバ中に配列されることができる。あるいは、センサは、異なる反応チャンバにわたって分散する。一般的に、アレイは、少なくとも10個のセンサを含む。特定の実施例において、アレイは、少なくとも約50個のセンサ、より詳しくは約100個のセンサ、さらに具体的には103、104又は105個を超えるセンサを含む。
【0068】
本発明の一実施例によれば、マイクロチャンバの少なくとも1つの壁は、第1基板によって形成され又はそれによって被覆されて、上で説明された特性を持つ。
特定の実施例によれば、マイクロチャンバは、第1基板中にエッチングされた開口部によって形成される。マイクロチャンバは、上述のような一つ以上の絶縁層によってオプションとしてさらに部分的に被覆される。
【0069】
加えて又は代わりに、マイクロチャンバ壁の少なくとも1つの部分は、マイクロチャンバ内の(より詳しくは電気センサ上の)光検出を可能にするための透明な部分を有する。一般的に、これは、SiO2、プラスチック又はPVCのような材料である構造によって保証される。上記のように、この部分は、第1基板に一体化された部分であることができる。あるいは、透明又は半透明な部分は、融解曲線分析が実行されるセンサ領域の光検出を可能にするならば、反応チャンバの任意の壁に提供されることができる。
【0070】
一実施例によれば、マイクロチャンバは、本発明の装置の一体化された部分である。あるいは、マイクロチャンバは、電気信号及びオプションとして電気センサの表面上の光学信号を検出するための必要な接続を含む装置に用いられる、別々の、オプションとして使い捨てのカセット又はカートリッジとして提供される。1つの実施例によれば、マイクロチャンバは、少なくとも1つの電気センサ及び機械的に電気センサを支持している基板を含み、少なくとも基板は熱伝導性である。より詳しくは、マイクロチャンバは、マイクロチャンバの外側に(例えば検出装置中に)配置される加熱手段によって、マイクロチャンバの加熱を可能にする。1つの実施例によれば、加熱装置はマイクロチャンバ壁内に配置され、すなわちマイクロチャンバ壁は、制御可能な態様でマイクロチャンバ中に熱を生成することが可能な素子を含む。オプションとして、加熱素子は、例えば素子のための適切な接点を有する装置中に配置される場合、検出装置の制御手段によって制御される。
【0071】
本発明の装置のマイクロチャンバは一般的に、サンプル、緩衝液などを導入及び/又は除去するために、一つ以上の入口及び出口を有する。
【0072】
一般的に、本装置のマイクロチャンバは、マイクロチャンバに出入りする(より詳しくは電気センサに出入りする)微量の流体の供給及び流動を可能にする微小流体システム中に集積化される。したがって、本発明の装置は、一つ以上のソース(106)から反応チャンバ及び/又は電気センサへサンプル、緩衝液、試剤及び/又は添加剤を供給するための供給手段(105)をさらに有する。この手段は、サンプルの重力フィードを含むことができ、それぞれのソースからマイクロチャンバへの、及びチャンバから一つ以上の収集装置及び/又は廃棄場所までの流体の供給を可能にするために、パイプ/管路、ミキサー及びバルブ(例えば選択可能かつ制御可能なバルブ)の配置を含むことができる。毛細管に基づく微小流体装置は、一般的に、10-100μmの断面を持つ。ポンプ、バルブ及びチャネルシステムの単純な二次元システム並びにより複雑な三次元システムの両方が構想される。
【0073】
微小流体システム又は装置は、シリコン、ガラス及びポリマー中に製造されることができ(Microsystem Technology: A Powerful Tool for Biomolecular Studies, Kohler, J. M. et Al. Edsl, Birkhauser Verlag, Boston (1999))。ポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)のようなポリマー微小流体工学は、PDMS中のチャネルシステムの製造が簡単であり、サブ0.1ミクロンの正確さを有する適切な型でキャストされることができるので、特に新たなシステムを試作する際に魅力的である(McDonald et al (2002) Act. Chem. Res. 35, 491-499)。
【0074】
一実施例によれば、(例えばUS5271724及びUS5277556において説明されるように)装置内の機械的マイクロポンプ及びバルブが、微細加工された装置内で流体を動かす。
【0075】
これらの微小流体システム又は装置内での流体(例えば、サンプル、検体、緩衝液及び試剤)の輸送及び方向付けのために、代わりの方法が説明され、当業者に知られている。そのような方法は、装置内の流体を動かすための外部圧力の印加(US5304487)、(例えばWO9405414において説明されるような)音響流の効果によって装置内の流体サンプルを動かすための音響エネルギーの使用を含む。さらに他の方法は、微小流体システムのチャネルを通して流体材料を動かすために電場を用いる(Harrison et al. (1992) Anal. Chem. 64, 1926-1932、及びUS5126022)。
【0076】
10μlより小さい体積の使用は、蒸発、調剤時期、タンパク質不活性化及び分析適応に関する重大な問題を発生させるので、マイクロリットルからナノリットルの体積で機能する生物学的センサへの微小流体システムの集積化は有益である。1μlより小さい体積へのアッセイの小型化は、大幅に表面積対体積比を増加させる。さらに、マイクロリットル以下の体積の溶液は、空気に触れると、数秒から数分以内で急速に蒸発する。
【0077】
一般的に、本発明の装置は、供給手段の制御を保証する制御回路をさらに有する。
【0078】
特定の実施例によれば、本発明の装置は、光検出を用いたMCAを可能にする。したがって、本発明のこの態様による装置は、少なくとも1つの壁がマイクロチャンバ中の(より詳しくはセンサの領域の)光学信号の検出を可能にする透明又は半透明な部分(すなわちウィンドウ)を持つマイクロチャンバを有する。あるいは、本装置は、透明又は半透明な部分(すなわちウィンドウ)を持つ少なくとも1つの壁を含むマイクロチャンバカートリッジの導入が、マイクロチャンバ内の信号の光検出が可能であることを保証するように理解される。光検出が必要とされる場合、本発明の装置は、蛍光検出器のような光検出手段(104)を有する。検出手段の性質は、用いられる色素又はラベルの性質によって決定される。適切な光検出手段は、当業者にとって周知である。
【0079】
本発明によれば、光検出手段は、核酸のMCAの電気的検出と並列に、又は核酸のMCAの電気的検出のキャリブレーションとして、MCAの決定を可能にする。加えて、光検出手段は、サンプル内の核酸の識別及び/又は定量化のために用いられることができる。
【0080】
電気的検出手段及び光学的検出手段の両方が、制御及び分析回路(107)の管理下であることができる。検出を表わす信号は、上述の本発明のMCAのいずれかを実行するように適応されることができる制御及び分析回路に供給されることができる。
【0081】
制御及び分析回路は、ターゲットのTmに対応する検出信号を評価するために、従来通りに検出手段及び供給手段との接続を含む。システムは、例えば各々の検出システムの又は異なる検出システム間の2つの異なる測定値を関連づけるために、得られた検出結果の統計処理をさらに提供することができる。
【0082】
制御及び分析回路は、サンプル核酸がセンサ上の核酸プローブによって受容されたこと、及びサンプル核酸の量が検査のために十分であることを決定するための手段を含むことができる。制御及び分析回路は、例えばマイクロプロセッサのような処理手段、並びに/又は得られた及び/若しくは処理された評価情報を記憶するためのメモリコンポーネントを有することができる。
【0083】
さらに、本発明の装置は、典型的な入出力(108)手段をさらに有することができる。制御及び分析回路は、評価ステップを実行するための適切なソフトウェア又は専用のハードウェア処理手段を用いて制御されることができる。そして制御及び分析回路は、任意の適切な様式(例えば専用のハードウェア若しくは適切にプログラムされたコンピュータ、マイクロコントローラ若しくは埋め込みプロセッサ(例えばマイクロプロセッサ)、プログラマブルゲートアレイ(例えばPAL、PLA若しくはFPGA)など)で実現されることができる。制御及び分析回路は、一般的に、任意の適切なディスプレイ手段(例えば視覚的ディスプレイ装置、プロッタ、プリンタなど)に分析の結果を記憶及び表示し、あるいは、別の装置にデータを提供することができる。制御及び分析回路は、遠隔地への結果の送信のために、ローカルエリア又は広域エリアネットワークへの接続を持つこともできる。
【0084】
制御及び分析回路は、マイクロチャンバを含む別のカートリッジとして少なくとも部分的に提供されることができ、又はオプションとしてカートリッジに対して外付けであることができ、供給手段の動作を制御するためにオプションとして提供されることができる。制御及び分析回路は、カートリッジの表面上の適切な接点(例えば端子)によって、供給手段に接続されることができる。
【0085】
本発明によれば、電気センサによる検出は、ds核酸からss核酸への遷移の際のセンサの表面に存在する核酸の変化する特性に基づく。電気抵抗、電気コンダクタンス、電流、電圧、容量、トランジスタオン電流、トランジスタオフ電流又はトランジスタ閾値電圧を含む異なる電気的特性が、本発明の電気センサを用いて検出されることが構想される。それらは、選択された又は可変のゲート電圧の影響を受けて測定されることができる。都合の良いことに、(例えばナノチューブネットワークのような)電気センサによって形成されるチャネルに基づくトランジスタのソース(及び/又はドレイン)並びにゲート電極は、一つ以上のチャネル相互コンダクタンス特性の測定値に対する代わりの又は更なるセンサ信号として、ゲートに対するチャネルの容量を測定するために適切な回路を用いて使用されることができる。他の特定の実施例において、ゲート電極は導電性液体と接触する導電性素子であり、この液体がセンサに接触する。この例は、Bradley et al. (2003) Phys. Rev. Lett. 91, 218301において説明される。
【0086】
特定の実施例において、バイオセンサ装置はトランジスタを含む。トランジスタは、ある範囲のゲート電圧によって測定される最も大きなコンダクタンスである最大コンダクタンス、及びある範囲のゲート電圧によって測定される最も小さなコンダクタンスである最小コンダクタンスを持つ。トランジスタは、最大コンダクタンスと最小コンダクタンスとの間の比であるオン/オフ比を持つ。
【0087】
本発明は、電気センサを用いて核酸の電気的特性を検出するための方法及び装置を提供する。一実施例によれば、核酸の選択的な検出は、電気センサの表面上に核酸プローブを供給することによって保証される。核酸は、直接電気センサに取り付けられることができ、又は、電気センサの近傍で電気センサを支持する第1基板の表面上に存在することができる。加えて又はあるいは、核酸の電気的特性が電気センサへ伝達されることができるならば、核酸分子は電気センサを覆う材料上に供給される。(例えばds核酸の単一核酸への融解の結果としての)一つ以上の電気的特性の変化がセンサによって検出されることができるように、核酸は、電気測定が実行されるとき、電気センサに十分近くなければならない。
【0088】
一実施例によれば、核酸プローブはセンサ領域のみに供給されて、電気的及び光学的検出はセンサ領域上で実行される。あるいは、核酸プローブは、センサ領域の外側の第1基板の領域に供給されることが構想されることができる。この核酸プローブは電気信号に寄与しないが、光検出に用いられる又は寄与することができる。
【0089】
1つの実施例によれば、核酸、より詳しくは単鎖核酸、さらに詳しくは核酸プローブは、電気センサの表面に供給される。ss核酸は、ナノチューブのようなナノ構造と、ナノ構造の活性化を伴わずに結合することができる。電気センサ上に単鎖核酸プローブを提供する方法は、核酸プローブ溶液の滴をセンサ領域に置き、乾燥によってこの溶液を蒸発させ、電気センサを水でリンスし、及びセンサ表面を例えば窒素によって乾燥させるステップを有する。過剰なプローブss核酸は、リンス及びブローイング(blowing)によって除去されることができる。過剰なプローブ核酸が不必要な領域(例えばセンサ領域外の第1基板の領域)に結合される場合、より積極的な方法(例えばエッチング)が用いられる。あるいは、過剰なプローブ核酸は、センサ動作を阻害しない場合、又は追加の光検出のために望まれる場合、適当な位置に残されてもよい。
【0090】
特定の実施例によれば、核酸プローブのような一つ以上の核酸は、電気センサの表面に固定される。化学吸着(Hashimoto, K.; et al., Anal.Chim. Acta 1994, 286: 219; Zhao, Y.D.; et al. J. Electroanal. Chem. 1997, 431: 203) 、及び共有結合(Liu, et al. Anal. Biochem. 2000, 283, 56; Xu, C. et al. Anal. Chem. 2001, 369, 428; Steel, A.B. et al. Bioconjug. Chem. 1999, 10: 419)を含む、核酸の固定のためのいくつかの方法が、DNAセンサの準備のために説明された。アビジン-ビオチンシステム(Sun, X.Y.; et al.. Talata 1998, 47: 487)、キトサン修飾電極(Berney, H.; et al. Sensors and Actuators B 2000, 68:100) 、及び分子自己組織化による共有結合(Hagenstrom, H. et al. Langmuir 2001 17, 839) のような新たな固定技術が、単純かつ汎用的であることが示された。自己組織化単一層(SAM)修飾電極は、安定した、非常に密集した方向付け可能なssDNA修飾単一層を確立する。基板上に複数の異なるプローブ核酸をアレイ状に供給する方法が、(例えばインクジェット印刷装置に応用される)マイクロアレイ技術から知られている。
【0091】
1つの実施例によれば、センサ表面に核酸を供給した後で、センサの表面は、関係の無い核酸又は他の成分のセンサへの結合を防止するために、例えばTriton X-100TMのような遮断薬で処理される。
【0092】
本発明は、サンプル中の核酸の検出のための方法及びツールを提供する。
【0093】
特定の実施例によれば、サンプルはDNAを含む生物学的サンプルであり、より詳しくは、サンプルは真核生物由来のゲノムDNAを含む。特に、MCA検出のために関連サンプルは、一つ以上の遺伝子中の一つ以上のヌクレオチドの一つ以上の多形をもたらすと考えられている同じ種類の生体から得られるゲノムDNAのサンプルである。
【0094】
一実施例によれば、本発明の方法及び装置は、ヌクレオチド多形の検出に用いられる。遺伝子又は遺伝子断片中のヌクレオチド多形は、完全に相補的な二重鎖DNA(dsDNA)と不整合を含んでいるdsDNAとの間の、5〜100ヌクレオチドの不一致を含むDNAシーケンスの融解温度の差によって検出されることができる。融解温度は、通常、いわゆる融解曲線分析(Melting Curve Analysis:MCA)を用いて決定される。MCAは、不整合を含むサンプル核酸の領域に対応するプローブをサンプル核酸とハイブリッドすることによって得られる二重鎖核酸フラグメントをゆっくりと加熱することによって実行される。ds核酸対照標準(核酸プローブとハイブリッドされる不整合を含んでいない対照核酸)と、核酸プローブにサンプル核酸をハイブリッドすることによって形成されるds核酸との間のTmの差は、一つ以上のヌクレオチド多形の存在を示す。
【0095】
サンプルの分析の前に、サンプル中の核酸は、様々な方法によって増幅されることができる。PCRは別として、ターゲットポリヌクレオチド増幅方法(例えば自立配列複製(3SR)及びストランド変位増幅(SDA))、ターゲット核酸に取り付けられた信号の増幅(例えば「分岐鎖」核酸増幅)に基づく方法、プローブ核酸の増幅(例えばリガーゼ連鎖反応(LCR)増幅及びQBレプリカーゼ(QBR)増幅)に基づく方法、並びに、連結反応活性トランスクリプション(LAT)、核酸配列ベース増幅(NASBA)修復連鎖反応(RCR)及び循環プローブ反応(CPR)のような様々な他の方法を含む(但しこれらに限定されない)、従来技術において利用可能な他の増幅方法が利用されることができる。
【0096】
一実施例によれば、本発明の方法及び装置においてMCAを実行するための核酸は、長さが50-150塩基対の範囲である。核酸のサイズがMCAにおける重要な要素であることが知られている。より詳しくは、一つ以上のSNPにおいて異なるより小さな核酸フラグメント間のTmは、より大きな核酸フラグメントのTmの差よりも大きい。核酸変性に関する理論上の及び実験に基づく調査は、核酸フラグメントのサイズが増加するにつれて、一つ以上のSNPによって引き起こされるTmの差が減少することを示した。
【0097】
さらに特定の実施例によれば、不安定化剤が、サンプルに又はハイブリッドされた核酸プローブ/サンプル核酸に加えられる。不安定化剤は、ds核酸を不安定にし、それによってTmを低下させる。不安定化剤の追加は、通常は100℃を超える核酸のTmが、実験の間に到達する温度範囲内(すなわち、Tm<100℃)に低下することを保証することができる。それぞれの不安定化剤は、所与の核酸の融解曲線の形状に対する異なる影響を持つ。例えば、不安定化剤としての尿素の追加は、Tmの変化と、検出パラメータの負の第1微分(例えば蛍光に対して-dF/dT)で得られるピークの広幅化との両方をもたらす。それは、ラベル付けされたサンプルの蛍光を減少させる。DMSO及びホルムアミドの使用は、尿素と比べて、より明瞭なピークに結びつく。他の適切な不安定化剤は、ds核酸が存在する緩衝液の塩濃度を変更することによってds核酸を変性させる化合物を含む。不安定化剤の追加の必要性は、実験的に又は理論的には決定されることができる。核酸のTmの理論上の予測は、数多くの研究の主題である。融解温度は、MCAを実行しようとする温度範囲を決定するために、しばしば計算される。融解温度は、塩補正計算式(Rychlik and Rhoads (1989) Nucl. Acids Res. 17, 8543-8551; Sambrook, J. et al. (1989) Molecular Cloning : A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY) 、又は最近傍アルゴリズム(Breslauer et al. (1986) Proc Natl Acad Sci. 83, 3746-3750)を用いて予測される。
【0098】
本発明の方法は、二重鎖核酸から単鎖核酸への遷移の際に変化する核酸の電気的特性の検出に基づく。特に、この検出は、二重鎖核酸の加熱の間に実行され、それによって、二重鎖核酸の遷移が生じる温度(すなわち融解温度)が決定される。核酸プローブの使用によって、サンプル中の単鎖核酸は捕獲されることができ、形成された二重鎖核酸の電気的性質は結合された単鎖の性質を示す。
【0099】
本発明のこの態様によれば、一つ以上の核酸サンプルの融解温度の検出が実行され、ラベリングを必要とすることなくサンプル核酸の識別を可能にする。
【0100】
本発明の別の態様では、核酸サンプルの融解点の電気的検出方法が光検出と組み合わせられる装置及び方法が提供される。本発明のこの態様によれば、ラベル付けされたサンプルDNAが反応チャンバに導入され、その後、(変性及び)核酸プローブとのハイブリッド形成のための条件が適用される。核酸プローブとのサンプル核酸のハイブリッド形成の後、増加温度勾配が適用される。徐々に増加する加熱条件の間、ハイブリッドされたds核酸の電気的及び光学的特性が検出される。より詳しくは、ds核酸の融解点を決定するために、ds核酸のss核酸への遷移の際の電気的及び光学的特性の変化がモニタリングされる。
【0101】
本発明の方法及び装置が光検出を含む場合、これは、ds及びss核酸の光学的特性の差に基づく。古典的に、融解点分析は、260nmにおける核酸の検出によって実行されている。この波長におけるss及びds核酸の吸光度が区別されることができるからである。しかしながら、より高感度かつ正確な融解点決定を可能にするために、適切な色素又はラベルが用いられることができ、ds及びss核酸の差分信号を発生させる。
【0102】
1つの実施例によれば、特にss核酸又はds核酸と結合しない色素が使用される。適切な色素は、dsDNA特異色素(例えば臭化エチジウム、SYBR Green I若しくはSYBR Green II(Molecular Probes, Eugene, OR))、又はssDNA特異色素を含む(但しこれらに限定されない)。特定の実施例によれば、色素は、蛍光検出手段を用いて検出される蛍光色素である。適切な色素は、サンプルに加えられることができ、又は、ハイブリッド形成の後、センサ表面上のハイブリッドされたds DNAに加えられることができる。
【0103】
あるいは、例えばサンプル核酸に結合されるラベルが使用されることができ、それによって、センサ上に存在する核酸プローブとのハイブリッド形成が、センサ表面上での信号を発生させる。サンプル核酸は、増幅ステップの前、(ラベル付けされたプライマによる)増幅ステップの間、又は増幅ステップの後、ラベルによって修飾されることができる。特定の実施例において、2つの異なるラベルが存在することができる。例えば、サンプル及びプローブ核酸は、異なる波長の光を放射するラベルを含むことができる。1つの実施例によれば、サンプル及びプローブ核酸は、互いに近傍に存在する場合にそれぞれのラベルによって生成される信号を抑制し又は増強するラベルを備える。用いられるラベルの性質は、融解温度分析の性質を決定し、すなわちこれは、ds核酸が変性するときの光学信号の消失又は光学信号の利得を測定することによって実行されることができる。適切なラベルの非限定的なリストは、例えば5- (及び6-) カルボキシ-4',5'-ジクロロ-2',7'-ジメトキシフルオレセイン, 5-カルボキシ-2',4',5',7'-テトラクロロフルオレセイン 及び 5-カルボキシフルオレセインのようなフルオレセイン色素、5- (及び 6-) カルボキシローダミン, 6-カルボキシテトラメチルローダミン 及び 6-カルボキシローダミンXのようなローダミン色素、メチル、ニトロシル、スルホニル及びアミノフタロシアニンのようなフタロシアニン、アゾ色素、アゾメチン、シアニン、及びメチル、ニトロ、スルファノ及びアミノ派生物のようなキサンチン、及びスクシニルフルオレセインを含む。他の適切なラベルは、TOTO、YOYO、TO-PRO、Cy3、Cy5、Cy5.5、Cy7などのようなシアニン二量体及び単量体のグループからの蛍光色素分子であり、又はLCRed705のような色素が蛍光色素として用いられることができる。
【0104】
特定の実施例によれば、融解点の決定は、融点マーカー(Melting Point Marker:MPM)を用いることでさらに容易になる。MPMは、融解曲線分析に含まれる特異的な核酸フラグメントである。これらのフラグメントは、(複製され、合成され、又は試験座によって共増幅された)核酸の小さい断片であり、加熱フェーズの間に融解し、電気泳動における分子重量マーカーと同様に内部標準として作用する。これらのMPMを用いることにより、融解行程の内部検証及びテストされた断片を比較するための内部基準の両方を得ることができる。
【0105】
本発明の装置及び方法は、電気的測定及び光学的測定に基づいて、同時に及び同じ条件の下で、融解曲線分析を実行する。これはいくつかの利点を提供する。例えばそれは、pH又はイオン濃度の変動に起因して起こりうる電気的測定値の偏差を修正することを可能にする。したがって、本発明は、電気的測定を検証及び較正するために光学的方法によるMCA測定が用いられる方法を提供する。
【0106】
特定の実施例によれば、(例えばSNPの)例えばサンプルライブラリの同時測定が実行され、その後、信号の電気的検出に基づくSNPライブラリを得るために、2つの測定を用いて得られるデータが関連づけられる。これは電気的検出のみに基づくSNPの以降の信頼性が高い識別を可能にし、それによって、ラベルを不要にする。
【0107】
さらに他の特定の実施例によれば、電気的及び光学的検出方法は、連続的に用いられる。一実施例によれば、サンプル核酸/核酸プローブの融解温度は、増幅されておらず及び/又はラベル付けされていないサンプルについて、電気センサによって最初に決定される。その後で、一つ以上の増幅ステップ及び/又はラベル付けステップが実行される。この段階で、融解温度決定は、光学的方法だけを用いて、又は2つの独立した測定方法からの結果を得るために電気的及び光学的方法の組み合わせを用いて実行されることができる。
【0108】
本発明は、ds核酸の融解温度が決定され、MCAが光学的方法及び/又は電気的方法を用いて実行される装置及び方法を説明する。これらの方法及び装置による融解温度の決定は、複数の利点を持つ。光学的特性の変化は、一般に、サンプル核酸がプローブ核酸から完全に解離して、光学測定の領域から物理的に分離される場合にのみ観察される。しかしながら、この完全な解離の前に、ds核酸は局所的に変性する。電気センサを用いることにより、そのような先行する変性は直ちにモニタリングされる。同様に、ds核酸の完全な変性の際に、サンプルの物理的除去を待つことを要せずに、電気信号の変化は直ちに検出される。結果的に、融解曲線はより鮮明で、より正確である。同じ理由から、電気センサに適用される温度勾配をより急にすることができ、それによって、MCAを実行するために必要とされる時間を短縮する。
【0109】
本発明を実施するシステム及び方法の他の配置は、当業者にとって明らかである。特定の実施例、特定の構成及び構造、物質が本発明による装置及び方法のために本願明細書において論じられたが、形状や細部における様々な変更又は改良が、この発明の範囲及び精神を逸脱しない範囲で行われることができることが理解されるべきである。
【実施例1】
【0110】
蛍光モニタリングによる融解温度決定
血色素症SNPを含むオリゴヌクレオチドプローブ(上述のStar et al. (Table 2))が、カーボンナノチューブセンサに滴下される。乾燥の後、ナノセンサが反応チャンバに配置され、予め蛍光ラベルによってラベル付けされ、不整合を含むことが推測されるサンプルss核酸を有する緩衝液が加えられる。カーボンナノチューブセンサ上のコンダクタンスを測定するための電極を備え、カーボンナノチューブセンサの表面における蛍光を検出するための光学部品を備えている装置中に、反応チャンバが配置される。反応チャンバは、100℃に加熱されて、プローブ及びラベル付けされたサンプル核酸をアニールするために徐々に冷却される。続いて反応チャンバは、毎秒0.1℃の速度で徐々に加熱される。加熱の間(5秒毎に)、カーボンナノチューブの電気的コンダクタンスが検出され、ナノチューブセンサの表面に存在するサンプル核酸/核酸プローブの吸収が光学的に測定される。生データは最初に、蛍光及びコンダクタンス値の両方の負の第1微分をとることによって変換される。最終的な融解曲線は、このように、オプションとしてベースライン減算によって、温度に対する蛍光及びコンダクタンスの3点平滑化負第1温度微分として報告される。各々のデータ点のベースライン補正は、現在の点の直前及び直後の4つのデータ点を含む線形回帰線から勾配を差し引くことによって計算される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロチャンバ、
前記マイクロチャンバ内に配置され、その表面に存在する二重鎖核酸の電気的特性の変化を検出することができる電気センサを含む電気的検出手段、及び
前記マイクロチャンバを加熱することができるプログラム可能な加熱素子、
を有するバイオセンサ装置。
【請求項2】
前記電気センサがナノ構造を有する請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記ナノ構造がカーボンナノチューブである請求項2に記載の装置。
【請求項4】
少なくとも一つの単鎖核酸が前記電気センサ上に存在することを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記マイクロチャンバが少なくとも一つの半透明又は透明な部分を有することを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記マイクロチャンバの前記少なくとも一つの半透明又は透明な部分を通して前記マイクロチャンバ内で生成される信号を検出することが可能な光学的検出手段を有する請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記光学的検出手段が蛍光検出器である請求項4に記載の装置。
【請求項8】
前記少なくとも一つの電気センサがアレイ状に配置される請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記電気センサを支持する第1基板をさらに有する請求項1に記載の装置。
【請求項10】
融解曲線分析を実行するための方法であって、
(a)マイクロチャンバ中の電気センサの表面に単鎖核酸プローブを供給するステップ、
(b)前記単鎖核酸プローブと単鎖核酸ターゲットとの間の二重鎖核酸へのハイブリッド形成を可能にするために、前記マイクロチャンバ中の前記電気センサに前記単鎖核酸ターゲットを含むサンプルを接触させるステップ、
(c)前記マイクロチャンバを徐々に加熱するステップ、
(d)前記電気センサの電気信号の変化に基づいて前記二重鎖核酸の融解温度を検出するステップ、
を有する方法。
【請求項11】
(e)変化する光学信号に基づいて前記二重鎖核酸の融解温度を検出するステップ、及び
(f)ステップ(d)で得られる値をステップ(e)で得られる値と比較するステップ、
をさらに有する請求項10に記載の方法。
【請求項12】
電気的検出方法を用いてサンプル中の遺伝子の核酸フラグメント中の一つ以上のヌクレオチド多形の存在を決定する方法であって、
(a)電気的検出手段を用いて遺伝子のヌクレオチド多形のライブラリの融解温度を決定するステップ、
(b)同時に、光学的検出手段を用いて遺伝子のヌクレオチド多形の融解温度を決定するステップ、
(c)電気的検出に基づいて融解点の値のライブラリを得るために、ステップ(a)において電気的検出手段において得られる値を、ステップ(b)の光学的検出手段によって得られる値に関連付けるステップ、
(d)電気的検出方法を用いて前記サンプルの核酸フラグメントの融解点を決定するステップ、
(e)一つ以上の多形の存在の信頼性の高い指示を得るために、ステップ(d)において得られる値を、ステップ(c)において得られるライブラリと比較するステップ、
を有する方法。
【請求項13】
請求項1に記載の装置を較正する方法であって、
電気的測定方法を用いて二重鎖核酸の融解温度を決定し、
光学的方法によって一回以上、前記電気的測定の値によって得られる前記二重鎖核酸の融解温度を検証し、
前記二重鎖核酸の融解温度に対応する電気的測定値を定める方法。
【請求項14】
サンプル核酸と核酸プローブとの間のハイブリッド形成を測定する方法であって、
電気センサに単鎖核酸プローブを提供し、
サンプル核酸を有するサンプルを、前記サンプル核酸が前記核酸プローブとハイブリッド形成することができる条件下に適用し、
前記電気センサ上のハイブリッド化された核酸を制御された態様で徐々に加熱し、
前記電気センサによって前記ハイブリッド化された核酸の融解温度を決定する方法。
【請求項15】
ハイブリッド化された核酸の加熱の間に、光学的検出によってハイブリッド化された核酸の融解点を検出する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記サンプル核酸が光学ラベルによってラベル付けされている、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記加熱が、少なくとも毎秒1℃の速度で実行される請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記検出が、請求項13に記載の方法によって決定された電気的測定値を用いた電気的測定によって排他的に実行される、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
ds核酸中の不整合を決定するための、請求項1に記載の装置又は請求項10に記載の方法の使用。
【請求項20】
少なくとも一つの電気センサ、前記電気センサを支持し、熱伝導性である基板を有し、少なくとも一つの半透明又は透明な部分を有する、ナノセンシング装置の反応チャンバ。
【請求項21】
前記チャンバを加熱することが可能なプログラム可能な加熱素子をさらに有する、請求項20に記載の反応チャンバ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−544307(P2009−544307A)
【公表日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−521396(P2009−521396)
【出願日】平成19年7月17日(2007.7.17)
【国際出願番号】PCT/IB2007/052842
【国際公開番号】WO2008/012728
【国際公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】