説明

分子間相互作用の測定装置

【課題】検出器上の流路に液体試料を循環させる測定が可能な分子間相互作用の測定装置を実現する。
【解決手段】測定装置1のチップカバー80において、流入路開閉部89aと流出路開閉部89bによって試料流入路81と試料流出路82を閉じ、分流路開閉部89cによって分流路83を開いた状態に切り替え、循環機構85を作動させて、密閉流路14bを流れたサンプル溶液60を試料流出路82から分流路83を通じて試料流入路81に循環させる。そして、サンプル溶液60が密閉流路14bを複数回通過する測定を行うことを可能にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分子間相互作用の測定装置に係り、特に生体分子や有機高分子などの分子間相互作用を測定するための測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、抗原抗体反応などの生体分子同士の分子間相互作用や、有機高分子同士の分子間相互作用などの結合の測定は、一般的に、放射性物質や蛍光体などの標識を用いることで行われてきた。この標識には手間がかかり、特にタンパク質への標識は方法が煩雑な場合や標識によりタンパク質の性質が変化する場合があった。近年では、生体分子や有機高分子間の結合を、簡便に標識を用いることなく直接的に検出する手段として、光学薄膜の干渉色変化を利用したRIfS方式(Reflectometric interference spectroscopy:反射型干渉分光法)が知られている。その基本原理は特許文献1や非特許文献1などに言及されている。
【0003】
RIfS方式について簡単に説明すると、この方式では、図7に示す検出器100が用いられる。図7(a)に示すとおり、検出器100は基板102を有しており、基板102上に光学薄膜104が設けられている。この状態の検出器100に対し白色光を照射した場合、図8に示すとおり、白色光そのものの分光強度は実線106で表され、その反射光の分光強度は実線108で表される。照射した白色光とその反射光との各分光強度から反射率を求めると、図9に示すとおり、実線で表された反射スペクトル110が得られる。
【0004】
分子間相互作用を検出するにあたっては、図7(b)に示すとおり、光学薄膜104上にリガンド120が設けられる。光学薄膜104上にリガンド120を設けると、光学的厚さ112が変化して光路長が変化し、干渉波長も変化する。すなわち、反射光の分光強度分布のピーク位置がシフトし、その結果、図9に示すとおり、反射スペクトル110が反射スペクトル122(点線部参照)にシフトする。この状態において、検出器100上にサンプル溶液を流し込むと、図7(c)に示すとおり、検出器100のリガンド120とサンプル溶液中のアナライト130とが結合する。リガンド120とアナライト130とが結合すると、光学的厚さ112がさらに変化し、図9に示すとおり、反射スペクトル122が反射スペクトル132(1点鎖線部参照)にシフトする。そして、反射スペクトル122のピーク波長(ボトムピーク波長)と反射スペクトル132のボトムピーク波長との変化量を検出することにより、分子間相互作用を検出することができるようになっている。
【0005】
ボトムピーク波長の変化の推移を経時的に観測すると、図10に示すとおり、時点140において、リガンド120によるボトムピーク波長の変化を確認することができ、時点142において、リガンド120とアナライト130との結合によるボトムピーク波長の変化を確認することができる。
【0006】
そして、検出器100上に上述のサンプル溶液を流すための流路を形成し、その流路の上流側と下流側にそれぞれ、流路にサンプル液を流入させる流入口と、流路から流出するサンプル液を受ける流出口を接続するチップカバーを備えた測定装置が知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3786073号公報
【特許文献2】特開2008−89579号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Sandstrom et al, APPL.OPT., 24, 472, 1985
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献2の場合、検出器100上の流路を通過したサンプル溶液(液体試料)が再度流路を通過することはなく、排液となってしまうので、サンプル溶液は流路を一回通過する測定に用いられるだけであった。
【0010】
本発明の目的は、検出器上の流路に液体試料を循環させる測定が可能な分子間相互作用の測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、分子間相互作用の測定装置であって、
リガンドが設けられた上面に流路が形成された検出器と、
前記流路の上流側に液体試料を流入させる流入口を有する試料流入路と、前記流路を流れてその下流側から流出する液体試料を受ける流出口を有する試料流出路と、前記試料流入路と前記試料流出路を繋ぐ分流路と、が設けられた試料供給部と、
を備え、
前記試料供給部は、前記試料流入路における前記分流路との分岐の上流側に設けられて当該試料流入路の開閉を切り替える流入路開閉部と、前記試料流出路における前記分流路との分岐の下流側に設けられて当該試料流出路の開閉を切り替える流出路開閉部と、前記分流路に設けられて当該分流路の開閉を切り替える分流路開閉部と、を有しており、前記試料流入路と前記試料流出路と前記分流路の開閉を調整することによって、前記流路を流れた前記液体試料を前記試料流出路を通じて排出することと、前記流路を流れた前記液体試料を前記試料流出路から前記分流路を通じて前記試料流入路に循環させることを、それぞれ可能にしたことを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の分子間相互作用の測定装置において、
前記試料流入路と前記試料流出路を開き、前記分流路を閉じた状態で、前記試料流入路から流入させて前記流路を流した前記液体試料を前記試料流出路を通じて排出し、
前記試料流入路と前記試料流出路を閉じ、前記分流路を開いた状態で、前記流路を流れた前記液体試料を前記試料流出路から前記分流路を通じて前記試料流入路に循環させることを特徴とする。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の分子間相互作用の測定装置において、
前記分流路に、前記試料流出路から前記試料流入路に向かう前記液体試料の流れを発生させる循環機構を備えたことを特徴とする。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の分子間相互作用の測定装置において、
前記分流路において前記循環機構を挟む両側に前記分流路開閉部を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、試料供給部における液体試料の流通経路を切り替えることができ、液体試料が検出器の流路を一回通過する通常の測定と、液体試料が検出器の流路を複数回通過する循環測定(ループ測定)を切り替えて行うことができる。
そして、液体試料を循環させるループ測定によれば、液体試料が流路を複数回通過することで、液体試料とリガンドが接触する機会を増やすことができ、より高感度に分子間相互作用を測定することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る分子間相互作用の測定装置の概略構成を示す模式図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る検出器とチップカバーの概略構成を示す斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るチップカバーにおける通常測定時の流路を示す説明図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るチップカバーにおける循環測定(ループ測定)時の流路を示す説明図である。
【図5】本発明の一実施形態に係るリガンドとアナライトとの結合の様子を模式的に表した断面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る測定装置の測定処理動作を示すフローチャートである。
【図7】RIfS方式の概略を説明するための模式図である。
【図8】波長と分光強度との概略的な関係を示す一例のグラフである。
【図9】波長と反射率との概略的な関係を示す一例のグラフである。
【図10】ボトムピーク波長の変化の概略的な推移を示す一例のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明を実施するための好ましい形態について図面を用いて説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0018】
図1に示すように、分子間相互作用の測定装置1は主に、検出器10、チップカバー80、白色光源20、分光器30、光ファイバ40、制御演算装置50などから構成されている。
測定装置1において制御演算装置50は、白色光源20や分光器30などの制御手段及び検出情報の演算手段並びに制御指令や検出情報の出入力を行う出入力手段(インターフェース)を構成する。検出器10、白色光源20、分光器30、光ファイバ40等は分子間相互作用が進捗する光学薄膜の反射光の分光特性を検出する検出手段を構成する。
【0019】
検出器10は基本的にはセンサーチップ12、フローセル14から構成されている。
図2に示すように、センサーチップ12は矩形状を呈したシリコン基板12aを有している。シリコン基板12a上にはSiN膜12b(窒化シリコン)が蒸着されている。SiN膜12bは光学薄膜の一例である。このSiN膜12b上にリガンド16が結合されている(図1参照)。
フローセル14はシリコーンゴム製の透明な部材である。フローセル14には溝14aが形成されている。フローセル14をセンサーチップ12に密着させると、溝14aに応じた密閉流路14bが形成される(図1参照)。密閉流路14b(溝14a)の両端部はフローセル14の表面から露出しており、一方の端部がサンプル溶液(液体試料)の入口14cとして、他方の端部がその出口14dとしてそれぞれ機能する。密閉流路14bの底部(SiN膜12b)にはリガンド16が設けられている(図1参照)。
【0020】
検出器10では、センサーチップ12に対しフローセル14を貼り替え可能となっており、フローセル14はディスポーザブル(使い捨て)使用が可能となっている。センサーチップ12の表面には、シランカップリング剤などにより、表面修飾をおこなってもよく、この場合フローセル14の貼り替えが容易となる。
【0021】
図1、図2に示すように、フローセル14上には試料供給部であるチップカバー80が配設される。
チップカバー80は、図2に示すように、検出器10における密閉流路14bの上流側の入口14cからサンプル溶液を流入させる流入口81aを有する試料流入路81と、密閉流路14bを流れてその下流側の出口14dから流出するサンプル溶液を受ける流出口82aを有する試料流出路82を備えている。このチップカバー80を検出器10(フローセル14)上に配置した際、試料流入路81の流入口81aとフローセル14の入口14cとが接合され、試料流出路82の流出口82aとフローセル14の出口14dとが接合されるようになっている。なお、試料流入路81には、チップカバー80にサンプル溶液を送液する送液機構(図示せず)が接続されており、試料流出路82には、チップカバー80から排出されたサンプル溶液を貯留する排液容器(図示せず)が接続されている。
また、チップカバー80は、試料流入路81と試料流出路82を繋ぐ分流路83を備えており、分流路83には、試料流出路82から試料流入路81に向かうサンプル溶液の流れを発生させる循環機構85が設けられている。循環機構85は、送液用のポンプ、ファンを回転させるモータなどを適宜適用できる。
【0022】
さらに、チップカバー80は、試料流入路81における分流路83との分岐の上流側に設けられて当該試料流入路81の開閉を切り替える流入路開閉部89aと、試料流出路82における分流路83との分岐の下流側に設けられて当該試料流出路82の開閉を切り替える流出路開閉部89bと、分流路83において循環機構85を挟む両側に設けられて当該分流路83の開閉を切り替える分流路開閉部89c,89cとを有している。
流入路開閉部89aは、試料流入路81に達する貫通口86を進退して、試料流入路81を開閉する流入制御弁96を備えている。この流入制御弁96が試料流入路81に進入することで試料流入路81が塞がれて閉じられる。
流出路開閉部89bは、試料流出路82に達する貫通口87を進退して、試料流出路82を開閉する流出制御弁97を備えている。この流出制御弁97が試料流出路82に進入することで試料流出路82が塞がれて閉じられる。
分流路開閉部89cは、分流路83に達する貫通口88を進退して、分流路83を開閉する分流制御弁98を備えている。この分流制御弁98が分流路83に進入することで分流路83が塞がれて閉じられる。
流入制御弁96、流出制御弁97、分流制御弁98は、制御弁駆動用のアクチュエータ90によって作動されて進退する。
なお、制御演算装置50が、アクチュエータ90や循環機構85の駆動制御を実行することで、チップカバー80における試料流入路81、試料流出路82、分流路83の開閉を調整し、サンプル溶液の流れを切り替えるようになっている。また、アクチュエータ90や循環機構85は、手動のスイッチでそのオン/オフを切り替えるようにしてもよい。
【0023】
また、チップカバー80には、このチップカバー80を検出器10(フローセル14)上に配置した際に密閉流路14bに対応する部分に測定孔84が形成されている。
チップカバー80の測定孔84には、光ファイバ40が束ねられてなるバンドルファイバが設置される。
図1に示すように、光ファイバ40の一方の端部には白色光源20が接続されている。白色光源20としては例えばハロゲン光源が使用される。光ファイバ40の他方の端部には分光器30が接続されている。
白色光源20が点灯すると、その光が光ファイバ40を介して密閉流路14bに照射され、その反射光が再度光ファイバ40を介して分光器30で検出される。白色光源20や分光器30は制御演算装置50に接続され、制御演算装置50はこれらモジュールの動作を制御する。
また、制御演算装置50は、分子間相互作用の測定プログラムの実行により、検出動作制御に連動した所定のタイミングでインターフェースを介して反射光の分光特性の入力を得るとともに、入力された反射光の分光特性に基づき各種測定値を算出する演算手段として機能する。
【0024】
続いて、測定装置1における分子間相互作用の測定について説明する。
【0025】
図1に示すように、アナライト62を含むサンプル溶液60を、フローセル14の入口14cから密閉流路14bを経てフローセル14の出口14dに流通させる。アナライト62とは、リガンド16と特異的に結合する物質であり、検出しようとする目的の分子である。アナライト62としては、例えばタンパク質、核酸、脂質、糖などの生体分子や、薬剤物質、内分泌錯乱化学物質などの生体分子と結合する外来物質などが使用される。
そして、密閉流路14bにサンプル溶液60を流通させる際、チップカバー80における試料流入路81、試料流出路82、分流路83の開閉を調整し、サンプル溶液の流通経路を切り替える。
具体的には、通常の測定を行う場合、図3に示すように、流入路開閉部89aと流出路開閉部89bによって試料流入路81と試料流出路82を開き、分流路開閉部89cによって分流路83を閉じた状態に調整して、試料流入路81から流入させて密閉流路14bを流したサンプル溶液60を試料流出路82から排出可能な流通経路に切り替える。この通常測定用の流通経路に切り替えた測定では、サンプル溶液60が密閉流路14bを一回通過する測定が可能となる。
また、分流路循環測定(ループ測定)を行う場合、図4に示すように、流入路開閉部89aと流出路開閉部89bによって試料流入路81と試料流出路82を閉じ、分流路開閉部89cによって分流路83を開いた状態に調整して、密閉流路14bを流れたサンプル溶液60が試料流出路82から分流路83を通じて試料流入路81に循環可能な流通経路に切り替える。このループ測定用の流通経路に切り替えた測定では、サンプル溶液60が密閉流路14bを複数回通過する測定が可能となる。
【0026】
制御演算装置50は、サンプル溶液60が密閉流路14bを流通している間、白色光源20を点灯させる。白色光はフローセル14を透過してセンサーチップ12に照射され、その反射光が分光器30で検出される。分光器30により検出された反射光の検出強度は制御演算装置50に送信される。
【0027】
そして、図5に示すように、サンプル溶液60中のアナライト62がリガンド16と結合すると、光学的厚さ70が変化し、干渉色(分光器30による検出強度が最も小さくなる波長)が変化する。制御演算装置50は、分光器30から、分子間相互作用の開始前や進捗中、終了後の反射光の分光特性の入力を得る。制御演算装置50は、入力された反射光の分光特性に基づき各種測定値を算出する。この測定値としては、例えば、分光反射率のボトムピーク波長や、その変化量である。
【0028】
次に、測定装置1の測定動作について、図6に示すフローチャートに基づき説明する。
【0029】
まず、流入路開閉部89aの流入制御弁96、流出路開閉部89bの流出制御弁97、分流路開閉部89cの分流制御弁98を開き、試料流入路81と試料流出路82と分流路83を開く(ステップS1)。
試料流入路81と試料流出路82と分流路83を開いた状態で、アナライトが含まれていないサンプル溶液(溶媒)をチップカバー80に送液し、試料流入路81、試料流出路82、分流路83および密閉流路14bにその液体を充填する(ステップS2)。このとき、試料流入路81、試料流出路82、分流路83、密閉流路14b内に気泡が残らないように液体を充填することが好ましい。
【0030】
次いで、流入路開閉部89aと流出路開閉部89bによって試料流入路81と試料流出路82を開き、分流路開閉部89cによって分流路83を閉じた状態に切り替えて、アナライトが含まれていないサンプル溶液(溶媒)を密閉流路14bに流す(ステップS3)。
密閉流路14bにおける液体の流れ(流速、流量)が安定した後、所定のインジェクターによってアナライトを含有するサンプルを注入する(ステップS4)。このアナライトを含有するサンプルは、試料流入路81よりも上流側に注入されてサンプル溶液60となって流れる。
そして、アナライトを含むサンプル溶液60を所定時間掛けて密閉流路14bを流す制御を実行し、サンプル溶液60が密閉流路14bを流通している間、白色光源20を点灯させ、センサーチップ12からの反射光を分光器30で検出する測定を行う(ステップS5)。ここでは、試料流入路81から流入させて密閉流路14bを流したサンプル溶液60を試料流出路82を通じて排出するように、サンプル溶液60が密閉流路14bを一回通過する通常の測定を行っている。
【0031】
次いで、測定を終了せず(ステップS6;No)、更に測定を継続する場合であって、通常の測定を行う場合(ステップS7;No)、ステップS5に戻る。
一方、測定を終了せず(ステップS6;No)、更に測定を継続する場合であって、分流路83を通じてサンプル溶液60を循環させるループ測定を行う場合(ステップS7;Yes)、流入路開閉部89aと流出路開閉部89bによって試料流入路81と試料流出路82を閉じ、分流路開閉部89cによって分流路83を開いた状態に切り替え、循環機構85を作動させて、密閉流路14bを流れたサンプル溶液60を試料流出路82から分流路83を通じて試料流入路81に循環させる(ステップS8)。そして、循環するサンプル溶液60が密閉流路14bを流通している間、白色光源20を点灯させ、センサーチップ12からの反射光を分光器30で検出する測定を行う(ステップS9)。ここでは、密閉流路14bを流れたサンプル溶液60を試料流出路82から分流路83を通じて試料流入路81に循環させて、サンプル溶液60が密閉流路14bを複数回通過する測定を行っている。
【0032】
更に測定を継続する場合であって、ループ測定を行う場合(ステップS10;Yes)、ステップS9に戻る。
一方、更に測定を継続する場合であって、サンプル溶液60が密閉流路14bを一回通過する通常の測定を行う場合(ステップS10;No)、流入路開閉部89aと流出路開閉部89bによって試料流入路81と試料流出路82を開き、分流路開閉部89cによって分流路83を閉じた状態に切り替え、循環機構85を停止させて(ステップS11)、ステップS5に戻る。
【0033】
ステップS6において、アナライトを含むサンプル溶液60が全て排出されるなどした場合(ステップS6;Yes)、測定を終了する。
【0034】
以上のように、この分子間相互作用の測定装置1によれば、チップカバー80におけるサンプル溶液60の流通経路を切り替えることができ、サンプル溶液60が密閉流路14bを一回通過する通常の測定と、サンプル溶液60が密閉流路14bを複数回通過するループ測定を切り替えて行うことができる。
そして、サンプル溶液60を循環させるループ測定によれば、サンプル溶液60が密閉流路14bを複数回通過することで、アナライト62がリガンド16と反応する機会を増やすことができ、より高感度に分子間相互作用を測定することが可能になる。
また、サンプル溶液60やアナライト62が少量で測定に用いることができる量に限りがあったり、サンプル溶液60やアナライト62が高価であったりする場合に、ループ測定であれば、サンプル溶液60やアナライト62を垂れ流すことなく、有効に測定に使用することができ、ランニングコストを低減することが可能になる。
【0035】
また、サンプル溶液60を循環させるための分流路83をチップカバー80内に設けることで、サンプル溶液60が循環する流路を短くすることができ、分流路83に起因するコンタミの発生を最小限に抑えることができる。
また、サンプル溶液60をチップカバー80内の分流路83を循環させることで、サンプル溶液60がチップカバー80外の環境に晒されないようにすることができ、通常測定と同様にチップカバー80内でサンプル溶液60を管理し、例えば、サンプル溶液60の温度を管理することによって、温度変化によるサンプル劣化を防ぐことができる。
【0036】
なお、以上の実施の形態においては、流入制御弁96、流出制御弁97、分流制御弁98を進退させて、それぞれ試料流入路81、試料流出路82、分流路83の開閉を切り替える流入路開閉部89a、流出路開閉部89b、分流路開閉部89cを例示して説明したが、各開閉部の構成はこれに限定されるものではなく、例えば、三方活栓を適用するなど任意の構成であってもよい。
【0037】
また、その他、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0038】
1 分子間相互作用の測定装置
10 検出器
12 センサーチップ
14 フローセル
14b 密閉流路(流路)
16 リガンド
20 白色光源
30 分光器
40 光ファイバ
50 制御演算装置
60 サンプル溶液(液体試料)
62 アナライト
80 チップカバー(試料供給部)
81 試料流入路
81a 流入口
82 試料流出路
82a 流出口
83 分流路
84 測定孔
85 循環機構
89a 流入路開閉部
89b 流出路開閉部
89c 分流路開閉部
96 流入制御弁
97 流出制御弁
98 分流制御弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リガンドが設けられた上面に流路が形成された検出器と、
前記流路の上流側に液体試料を流入させる流入口を有する試料流入路と、前記流路を流れてその下流側から流出する液体試料を受ける流出口を有する試料流出路と、前記試料流入路と前記試料流出路を繋ぐ分流路と、が設けられた試料供給部と、
を備え、
前記試料供給部は、前記試料流入路における前記分流路との分岐の上流側に設けられて当該試料流入路の開閉を切り替える流入路開閉部と、前記試料流出路における前記分流路との分岐の下流側に設けられて当該試料流出路の開閉を切り替える流出路開閉部と、前記分流路に設けられて当該分流路の開閉を切り替える分流路開閉部と、を有しており、前記試料流入路と前記試料流出路と前記分流路の開閉を調整することによって、前記流路を流れた前記液体試料を前記試料流出路を通じて排出することと、前記流路を流れた前記液体試料を前記試料流出路から前記分流路を通じて前記試料流入路に循環させることを、それぞれ可能にしたことを特徴とする分子間相互作用の測定装置。
【請求項2】
前記試料流入路と前記試料流出路を開き、前記分流路を閉じた状態で、前記試料流入路から流入させて前記流路を流した前記液体試料を前記試料流出路を通じて排出し、
前記試料流入路と前記試料流出路を閉じ、前記分流路を開いた状態で、前記流路を流れた前記液体試料を前記試料流出路から前記分流路を通じて前記試料流入路に循環させることを特徴とする請求項1に記載の分子間相互作用の測定装置。
【請求項3】
前記分流路に、前記試料流出路から前記試料流入路に向かう前記液体試料の流れを発生させる循環機構を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の分子間相互作用の測定装置。
【請求項4】
前記分流路において前記循環機構を挟む両側に前記分流路開閉部を備えることを特徴とする請求項3に記載の分子間相互作用の測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−127712(P2012−127712A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−277601(P2010−277601)
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【出願人】(303000408)コニカミノルタアドバンストレイヤー株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】