説明

分岐オキサアルキル鎖を有している化合物およびその利用

【課題】直鎖アルキル鎖を有している化合物または直鎖オキサアルキル鎖を有している化合物の融点またはガラス転移点を低下させ、且つ動粘度等を含む粘度も低下させることができる手段を提供し、その手段によって得られた化合物および当該化合物の利用を提供する。
【解決手段】本発明に係る化合物は、分子中に、少なくとも1つの側鎖を有しているオキサアルキル鎖を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分岐オキサアルキル鎖を有している化合物およびその利用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
直鎖アルキル鎖を有している化合物は、例えば、潤滑剤、可塑剤、界面活性剤、液晶分子、エラストマー、合成樹脂、粘着剤等として用いられている。
【0003】
直鎖アルキル鎖を有している化合物の融点や柔軟性等を変化させる方法としては、直鎖アルキル鎖の鎖長を変化させる方法、直鎖アルキル鎖にメチル基等の側鎖や不飽和結合を導入する方法、異鎖長のアルキル鎖を混合する方法等が知られている。上記「直鎖アルキル鎖の鎖長を変化させる方法」は、分子量の低下によって融点が低下する一般的な経験則を応用したものであり、上記「直鎖アルキル鎖にメチル基等の側鎖や不飽和結合を導入する方法」は、バルキーな基等を導入した結果として分子の密な充填状態が形成され難くなることによって融点が低下する一般的な経験則を応用したものであり、上記「異鎖長のアルキル鎖を混合する方法」は、異なる化合物を混合することによって凝固点が降下する一般的な経験則を応用したものである。
【0004】
また、特許文献1には、直鎖アルキル鎖を有している化合物の直鎖アルキル鎖に酸素原子を導入し、オキサアルキル鎖に改変することによって、液体状態では直鎖アルキル鎖を有する化合物または組成物と類似の物性を有しつつ、且つ、融点の低下または消失、ガラス転移点の低下、結晶/液晶転移温度の低下、起泡性の抑制、流動点の低下等、物性の大幅な改質を行うことが可能となることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−31149号公報(平成20年 2月14日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
直鎖アルキル鎖を有している化合物の融点またはガラス転移点を低下させることに加えて、動粘度等を含む粘性を低下させることが求められる場合がある。例えば、直鎖アルキル鎖を有している化合物を自動車、家電、工業用機械等の潤滑剤として用いる場合は、当該機器の低燃費化・低消費電力化のために粘度を低下させることに加えて、寒冷地等への更なる仕様拡大の点からも上記化合物の融点またはガラス転移点を低下させることが求められる。また、直鎖アルキル鎖を有している化合物を可塑剤、界面活性剤、液晶分子、エラストマー、合成樹脂、粘着剤等として用いる場合は、取り扱い性を向上させるために、上記化合物の融点またはガラス転移点を低下させることに加えて、粘度を低下させることが求められる。
【0007】
しかし、上記従来技術では、直鎖アルキル鎖を有している化合物の融点またはガラス転移点を低下させるために、側鎖や不飽和結合を直鎖アルキル鎖に導入するので、化合物の分子量が大きくなり、その結果、化合物の粘度は高くなる。さらに、直鎖アルキル鎖に側鎖を導入する方法では、柔軟性の温度依存性を大きくする(粘度指数が低下する)という問題もある。
【0008】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、直鎖アルキル鎖を有している化合物または直鎖オキサアルキル鎖を有している化合物の融点またはガラス転移点を低下させ、且つ動粘度等を含む粘度も低下させることができる手段を提供し、その手段によって得られた化合物および当該化合物の利用を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、特許文献1に記載の方法をさらに改良すべく、直鎖オキサアルキル鎖を有する化合物の直鎖オキサアルキル鎖に側鎖を導入したところ、驚くべきことに、化合物の融点またはガラス転移点をさらに低下させることができるだけでなく、動粘度を顕著に低下させることができるという予期し得ない効果を奏することを見出した。さらに、この方法では、直鎖オキサアルキル鎖に側鎖を導入するにもかかわらず、化合物の粘度指数を低下させることがなかった。このような知見は、本発明者らが初めて見出したものである。本発明は、かかる新規知見に基づいて完成されたものである。
【0010】
すなわち、本発明に係る化合物は、分子中に、少なくとも1つの側鎖を有しているオキサアルキル鎖を有していることを特徴としている。
【0011】
また、本発明に係る化合物は、下記一般式(1)で表される構造単位を、分子中に少なくとも1以上有しているオキサアルキル鎖を有していることを特徴としている:
【0012】
【化1】

【0013】
(一般式(1)中、mは1以上の整数であり、nは0以上の整数であり、YおよびZは
【0014】
【化2】

【0015】
(R〜Rは、それぞれ独立して水素原子または置換基である。)
であり、R〜Rのうち少なくとも1つは、置換基である。)。
【0016】
本発明に係る化合物では、上記側鎖は、アルキル基、オキサアルキル基、ハロゲン基およびシリコーン基からなる群から選択されてもよい。
【0017】
本発明に係る化合物では、上記置換基は、アルキル基、オキサアルキル基、ハロゲン基およびシリコーン基からなる群から選択されてもよい。
【0018】
本発明に係る化合物では、上記オキサアルキル鎖は、分子中に、少なくとも1つのエステル結合をさらに有していることが好ましい。
【0019】
本発明に係る潤滑剤は、上述した化合物を含有していることを特徴としている。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る化合物は、分子中に、少なくとも1つの側鎖を有しているオキサアルキル鎖を有しているので、かかる化合物は、同じ分子量の直鎖アルキル鎖を有する化合物または直鎖オキサアルキル鎖を有する化合物と比較して、低融点または低ガラス転移点で、且つ低動粘度である。このため、本発明に係る化合物または当該化合物を含有している組成物は、例えば、潤滑剤、可塑剤、界面活性剤、液晶分子、エラストマー、合成樹脂、粘着剤等として好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施例において合成した合成例47、49および50の化合物の構造を模式的に示した図である。
【図2】直鎖アルキル鎖を有する化合物に、エーテル結合、エステル結合または側鎖を導入することによる融点またはガラス転移点低下効果の概略を示す図である。
【図3】エステル結合を有する直鎖オキサアルキル鎖を有する化合物に、エーテル結合または側鎖を導入することによる融点またはガラス転移点低下効果の概略を示す図である。
【図4】実施例において、合成例47、49および50の化合物の絶対粘度を測定した結果を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではなく、記述した範囲内で種々の変形を加えた態様で実施できるものである。また、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。なお、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A〜B」は、「A以上、B以下」を意味する。
【0023】
以下、本発明を、(1)本発明に係る化合物、(2)本発明に係る化合物の製造方法、(3)本発明に係る化合物の利用、(4)融点またはガラス転移点および動粘度低下方法の順に説明する。
【0024】
(1)本発明に係る化合物
本発明に係る化合物(以下、「本発明の化合物」ともいう。)は、分子中に、少なくとも1つの側鎖を有しているオキサアルキル鎖を有している化合物である。
【0025】
ここで、上記「側鎖」とは、鎖式化合物の分子構造において、炭素原子だけの鎖を考えた場合に、最も長い炭素原子の連鎖(主鎖)から枝分かれしている枝の部分をいう。つまり、本明細書においては、上記「オキサアルキル鎖」の炭素原子の連鎖を「主鎖」とした場合に、当該「主鎖」から枝分かれしている枝の部分が「側鎖」に相当する。このため、本明細書では、上記「分子中に、少なくとも1つの側鎖を有しているオキサアルキル鎖」を「分岐オキサアルキル鎖」と称する。また、本明細書において、単に「オキサアルキル鎖」と称する場合は、側鎖を有していない「直鎖オキサアルキル鎖」を意図し、単に「アルキル鎖」と称する場合は、側鎖を有していない「直鎖アルキル鎖」を意図している。
【0026】
また、上記「オキサアルキル鎖」とは、1以上の酸素原子を有している直鎖アルキル鎖をいう。言い換えれば、上記「オキサアルキル鎖」は、直鎖アルキル鎖が有しているアルキレン基(−(CH)−)のうち1以上が、
【0027】
【化3】

【0028】
で置換された直鎖アルキル鎖をいう。つまり、上記「オキサアルキル鎖」においては、酸素原子は、エーテル結合(−O−)によって炭素原子に結合している。このため、本明細書では、エーテル結合によってオキサアルキル鎖の炭素原子に結合している酸素原子を、特に「エーテル酸素原子」と称する場合がある。
【0029】
従って、上記「分子中に、少なくとも1つの側鎖を有しているオキサアルキル鎖」は、「下記一般式(1)で表される構造単位を、分子中に少なくとも1以上有しているオキサアルキル鎖:
【0030】
【化4】

【0031】
(一般式(1)中、mは1以上の整数であり、nは0以上の整数であり、YおよびZは
【0032】
【化5】

【0033】
(R〜Rは、それぞれ独立して水素原子または置換基である。)
であり、R〜Rのうち少なくとも1つは、置換基である。)」とも言換え可能である。
【0034】
なお、上記「置換基」は、上述した「側鎖」に対応している。このため、本明細書における「側鎖」についての説明は、「置換基」についての説明として読み替えることができる。
【0035】
本発明に係る化合物は、分岐オキサアルキル鎖を有している化合物であれば特に限定されるものではなく、低分子化合物であってもよいし高分子化合物であってもよい。また、分岐オキサアルキル鎖を主鎖に有するものであってもよいし、側鎖に有するものであってもよい。
【0036】
本発明に係る化合物では、上記「オキサアルキル鎖」が有しているアルキレン基(−(CH)−)の総数が、7以上135以下であれば特に限定されるものではないが、より好ましくは7以上40以下であり、さらに好ましくは9以上30以下であり、特に好ましくは9以上24以下である。
【0037】
また、上記「オキサアルキル鎖」を、例えば、下記一般式(2)
H−(CH)−O−(CH)−O−(CH)−H … (2)
(一般式(1)中、a〜cはそれぞれ独立して1以上の整数である。)
で表す場合、エーテル酸素原子(−O−)で区切られるアルキレン基の数、すなわち、上記一般式(2)における整数a〜cは、目的に応じて適宜設定することができ、それぞれ独立して偶数であっても奇数であってもよい。
【0038】
特に、上記一般式(2)における整数a〜cがすべて偶数であれば、得られる化合物の生分解性が向上するため、環境への負荷を低減することができる。これに対して、上記一般式(2)における整数a〜cのうち、少なくとも1つが奇数であれば、整数a〜cがすべて偶数である場合と比較して、得られる化合物の融点またはガラス転移点をより低下させることができる。この理由を以下に説明する。
【0039】
平面(鎖骨格のコンフォメーションが全トランスをとる場合)オキサアルキル鎖の形状を長方形(矩形)に近似した場合、分子軸に平行する2長辺を考えると、分子骨格はジグザグ形状であるためエーテル酸素原子はどちらかの長辺部に位置することになる。2個のエーテル酸素原子に挟まれたアルキレン基の数が偶数の場合、この2個の酸素原子は別々の長辺に位置することになる。これに対して、2個のエーテル酸素原子に挟まれたアルキレン基の数が奇数の場合には、この2個の酸素原子は同一辺上に位置する。つまり、アルキレン基の偶奇性により平面オキサアルキル鎖上の酸素原子の分子軸に対する対称性が交互に入れ替わることになり、これによりオキサアルキル鎖が集合した場合、オキサアルキル鎖間に生じるエーテル酸素原子間静電反発の効果に偶奇性が発現することになる。このため、2個のエーテル酸素原子に挟まれたアルキレン基の数が偶数の場合には、酸素原子が別々の長辺上にあるので、分子集合体により形成されるラメラ面に対してオキサアルキル鎖軸を傾斜させることによって、上記酸素原子間静電反発を回避させることができる。これに対して、同一長辺上に酸素原子が位置する場合、つまり2個のエーテル酸素原子に挟まれたアルキレン基の数が奇数の場合には、分子集合体により形成されるラメラ面に対してオキサアルキル鎖軸を傾斜させることによって、酸素原子間静電反発を回避させることが不可能となる(分子軸を傾けても分子間の酸素原子間距離を離すことによる利得が相殺されてしまうため。)。そのために集合体の安定性が低下し、結果として融点が偶数の場合に比較して低くなると考えられる。
【0040】
また、上記一般式(2)で表されるオキサアルキル鎖において、両端のアルキレン基に挟まれる「−O−(CH)−O−」部分は、当該オキサアルキル鎖の中心に位置していることがより好ましい。これにより、オキサアルキル鎖は、安定な平面ジグザグ構造をとりやすいため、本発明により好適に用いることができる。例えば、特開2008−31149号公報には、(CH)−O−[(CH)−O]−(CH)12−iで表されるオキサアルキル鎖において、iを変化させたオキサアルキル鎖を赤外線吸収およびDSC(示差走査熱量計)を用いて解析し、その結果、両端のアルキレン基の長さの比i/lが例えば0.35〜2.7の範囲で非常に好適であることが開示されている。
【0041】
また、本発明に係る化合物では、上記「オキサアルキル鎖」におけるエーテル結合の好ましい数はオキサアルキル鎖長に依存する。このため、オキサアルキル鎖におけるエーテル結合の数が1の場合は、「アルキレン基の数/エーテル結合の数」の比が、8以上であることが好ましく、オキサアルキル鎖におけるエーテル結合の数が2以上の場合は、「アルキレン基の数/エーテル結合の数」の比が、5以上であることが好ましい。「アルキレン基の数/エーテル結合の数」の比が上記範囲であれば、オキサアルキル鎖のコンフォメーションが変化することがないため、化合物の融点またはガラス転移点および動粘度を低下させることができる。また、アルキレン基の数/エーテル結合の数の比がなるべく小さい値であれば、化合物の融点またはガラス転移点および動粘度を低下させる効果が高いため好ましい。
【0042】
図2は、直鎖アルキル鎖を有する化合物に、エーテル結合、エステル結合または側鎖を導入することによる融点またはガラス転移点低下効果の概略を示す図である。図2において、黒色の丸は酸素原子を表している。
【0043】
図2に示すように、直鎖アルキル鎖に1以上のエーテル結合を導入することによって、化合物の融点またはガラス転移点を低下させることができる。さらに、導入するエーテル結合の数を増やすと、化合物の融点またはガラス転移点をより低下させることができる。
【0044】
また、図2に示すように、オキサアルキル鎖に1以上のエステル結合を導入することによって、化合物の融点またはガラス転移点を低下させることができ、さらに側鎖を導入することによって、化合物の融点またはガラス転移点をさらに低下させることができる。
【0045】
よって、本発明に係る化合物では、上記オキサアルキル鎖は、分子中に、少なくとも1つのエステル結合をさらに有していることが好ましい。すなわち、本発明に係る化合物では、上記オキサアルキル鎖は、分子中に、少なくとも1つの下記一般式(2)で表される構造単位をさらに有していることが好ましい。
【0046】
【化6】

【0047】
上記「オキサアルキル鎖」におけるエステル結合の数が多いほど、融点またはガラス転移点低下効果や結晶化阻害効果が高くなるが、その一方で、エステル結合の数が多すぎると粘度が上昇してしまうという側面を有する。このため、上記「オキサアルキル鎖」におけるエステル結合の数は、目的に応じて好ましい数を適宜設定すればよい。例えば、本発明に係る化合物を潤滑剤として用いる場合には、金属表面との馴染み性を考慮して、オキサアルキル鎖におけるエステル結合の数が1〜4個であることが好ましく、1〜3個であることがより好ましい。
【0048】
図3は、エステル結合を有する直鎖オキサアルキル鎖を有する化合物に、エーテル結合または側鎖を導入することによる融点またはガラス転移点低下効果の概略を示す図である。図3において、「T」は、「ガラス転移点」を示している。また、黒色の丸は酸素原子を表している。図3に示すように、直鎖アルキル鎖にエステル結合を導入したオキサアルキル鎖において、エーテル結合をさらに導入すると、エーテル結合の数の増加に応じて化合物の融点またはガラス転移点を低下させることができる。また、エステル結合を導入したオキサアルキル鎖において、側鎖を導入することによって、化合物の融点またはガラス転移点をさらに低下させることができる。
【0049】
なお、上記「オキサアルキル鎖」において、エステル結合が導入されている位置は特に限定されない。
【0050】
オキサアルキル鎖が有している上記「側鎖」の種類は特に限定されるものではなく、分子間相互作用があまり強くなく、嵩張った構造を持つ置換基であれば、化合物の融点またはガラス転移点および動粘度を低下させることができる。このような置換基は、例えば、アルキル基、オキサアルキル基、ハロゲン基およびシリコーン基からなる群から選択することができる。
【0051】
上記「アルキル基」としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基等を挙げることができるが、本発明はこれに限定されない。上記「アルキル基」が、空間的・立体的に嵩張ったいびつな構造であるほど分子の充填に不利であるため、本発明に係る化合物の融点またはガラス転移点および動粘度を低下させる効果が高くなる。このため、「側鎖」としての上記「アルキル基」が直鎖構造である場合は、上記「アルキル基」の炭素数が4以下であることが好ましい。これに対して、「側鎖」としての上記「アルキル基」が分岐構造を有する場合は、炭素数が10程度であっても、融点またはガラス転移点低下や結晶化阻害効果が得られる場合がある。
【0052】
また、本明細書において、上記「オキサアルキル基」は、1以上の酸素原子を有しているアルキル基をいう。言い換えれば、上記「オキサアルキル基」は、アルキル基が有しているアルキレン基のうち1以上が、
【0053】
【化7】

【0054】
で置換されたアルキル基をいう。つまり、上記「オキサアルキル基」においては、酸素原子は、エーテル結合によって炭素原子に結合している。
【0055】
上記「オキサアルキル基」については、上述した「オキサアルキル基」についての説明を、「オキサアルキル基」についての説明として読み替えることができる。
【0056】
ハロゲン基による分子の充填阻害効果は、共有結合半径の大きなものほど高く、I>Br>Cl>Fとなる。これに対して、炭素−ハロゲン結合の安定性は、逆にI<Br<Cl<Fとなる。従って、上記「ハロゲン基」としては、通常は、フッ素基(F基)または塩素基(Cl基)が好ましいが、遮光環境下やマイルドな使用環境下では、臭素基(Br基)も有効である。
【0057】
上記「シリコーン基」は、シロキサン結合の繰返し(−(Si−O)−;nは1以上の整数である。)を主鎖とし、側鎖としてアルキル基、アリール基等を有する重合体からなる置換基を指す。具体的には、下記一般式(3)で表される置換基を指す。
【0058】
【化8】

【0059】
(一般式(3)中、Rはアルキル基またはアリール基であり、Rは、同一でも異なっていてもよく、nは1以上の整数である。)。
【0060】
上記「シリコーン基」としては、かさばった構造を有するものが立体的な充填阻害効果が高いため好ましい。このようなシリコーン基としては、トリメチルシリル基(上記一般式(3)中、n=0であり、Rがメチル基)、tert-ブチルジメチルシリル基(上記一般式(3)中、n=0であり、Rがtert-ブチル基およびメチル基)を挙げることができる。
【0061】
本発明に係る化合物では、上記「側鎖」の数は特に限定されないが、2以上4以下であれば、化合物の融点またはガラス転移点をより低下させることができるため好ましい。
【0062】
2以上の側鎖が導入されている場合は、導入されている側鎖の全てが同一種類の側鎖であってもよく、2種類以上の側鎖が組み合わせられて導入されていてもよい。
【0063】
なお、上記「オキサアルキル鎖」において、側鎖が導入されている位置は特に限定されない。
【0064】
(2)本発明に係る化合物の製造方法
本発明に係る化合物の製造方法は特に限定されるものではなく、従来公知の方法を用いて好適に製造することができる。
【0065】
以下に、上記化合物の製造方法の一例を示すが、上記化合物の製造方法はこれに限定されるものではない。なお、本明細書では、オキサアルキル鎖として、例えば、「H(CH−O−(CH−O−(CH−」を、「6−2−4−」と省略して記載する場合がある。
【0066】
例えば、分岐オキサアルキルエーテルは、(オキサ)アルカンジオール HOROHと、R’Cl(またはR’Br)等のハロゲン化オキサアルカンとを、水酸化ナトリウム水溶液中で、相間移動触媒(例えば、硫酸水素テトラブチルアンモニウム:TBAH(tetrabutylammonium hydrogensulfate))存在下で反応させることによって合成することができる(なお、上記Rおよび上記R’は、分岐アルキル鎖、直鎖アルキル鎖、分岐オキサアルキル鎖または直鎖オキサアルキル鎖であり、上記Rおよび上記R’の少なくとも一方は、分岐オキサアルキル鎖または直鎖オキサアルキル鎖である。)。
【0067】
具体的には、例えば、分岐対称ジオキサアルキルエーテルであるH(CH−O−(CH−O−(CH−O−CHC(CHCH−O−(CH−O−(CH−O−(CHH(略称:PrMe(O4−2−6))は、以下の反応式(1)に示すように、(オキサ)アルカンジオールとしての2,2−ジメチルプロパンジオール(化学式:HOCHC(CHCHOH、略称:PrMe(OH))と、ハロゲン化オキサアルカンとしての6−2−4Cl(PrMe(OH)に対して大過剰)とを、50%NaOH水溶液中でTBAH共存下で加熱反応させることによって合成することができる。
【0068】
【化9】

【0069】
また、分岐オキサアルキルエステルは、(オキサ)アルカンジオール HOROHと、オキサアルカン酸R’COOHとを、触媒量の濃硫酸共存下で減圧脱水縮合させることによって合成することができる(なお、上記Rおよび上記R’は、分岐アルキル鎖、直鎖アルキル鎖、分岐オキサアルキル鎖または直鎖オキサアルキル鎖であり、上記Rおよび上記R’の少なくとも一方は、分岐オキサアルキル鎖または直鎖オキサアルキル鎖である。)。
【0070】
具体的には、例えば、分岐対称オキサアルキルジエステルであるH(CH−O−(CH−O−(CH−CO−O−CHC(CHCH−O−CO−(CH−O−(CH−O−(CHH(略称:(6−2−4OO)PrMe)は、以下の反応式(2)に示すように、(オキサ)アルカンジオールとしての2,2−ジメチルプロパンジオール(化学式:HOCHC(CHCHOH、略称PrMe(OH))と、オキサアルカン酸としてのH(CH−O−(CH−O−(CH−COOH(略称:6−2−4OOH)とを、触媒量の濃硫酸共存下で減圧脱水縮合させることによって合成することができる。
【0071】
【化10】

【0072】
また、例えば、分岐非対称オキサアルキルモノエステルであるH(CH−CH(C)−CO−O−(CH−O−(CH−O−(CHH(略称:EtHxOO4−2−6)は、以下の反応式(3)に示すように、オキサアルカノール(略称:6−2−4OH)と、(オキサ)アルカン酸としての2エチルヘキサン酸(化学式:H(CH−CH(C)−COOH、略称EtHxOOH)とを、触媒量の濃硫酸共存下で減圧脱水縮合させることによって合成することができる。
【0073】
【化11】

【0074】
なお、上記ハロゲン化オキサアルカン、上記オキサアルカノール、および上記オキサアルカン酸の製造方法は特に限定されるものではなく、従来公知の方法を用いて好適に製造することができる。
【0075】
例えば、ハロゲン化オキサアルカンの一例である、クロロオキサアルカン(化学式:H(CH−O−(CH−O−(CHCl、略称:6−2−4Cl)は、以下の反応式(4)に示すように、エチレングリコールモノヘキシルエーテル(化学式:H(CH−O−(CHOH、略称:6−2OH)と、1,4−ジクロロブタン(Cl(CHCl)(6−2OHに対して過剰)とを、50%NaOH水溶液中でTBAH共存下で加熱反応させることによって合成することができる。
【0076】
【化12】

【0077】
また、オキサアルカノールの一例である、H(CH−O−(CH−O−(CHOH(略称:6−2−4OH)は、以下の反応式(5)に示すように、6−2OHを、当量のピリジン中で塩化チオニル(SOCl)と反応させることにより、H(CH−O−(CHCl(略称:6−2Cl)を合成し、
【0078】
【化13】

【0079】
次いで、以下の反応式(6)に示すように、6−2Clと、1,4−ブタンジオールHO((CHOH)(6−2Clに対して過剰)とを、50%NaOH水溶液中で相間移動触媒としてのTBAH共存下で加熱反応させることによって合成することができる。
【0080】
【化14】

【0081】
また、オキサアルカン酸の一例である、H(CH−O−(CH−O−(CH−COOH(略称:6−2−4OOH)は、以下の反応式(7)に示すように、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル(化学式:H(CH−O−(CH−O−(CHOH、略称:6−2−2OH)を、三臭化リン(PBr)と反応させることにより、H(CH−O−(CH−O−(CHBr(略称:6−2−2Br)を合成し、
【0082】
【化15】

【0083】
次いで、以下の反応式(8)に示すように、マロン酸ジエチルナトリウム((H(CHOCO)CHNa)と、6−2−2Brとを反応させることにより、マロン酸ジエチルオキサアルキルエーテル((H(CHOCO)CHO(CHO(CHO(CHH)を合成し、
【0084】
【化16】

【0085】
次いで、以下の反応式(9)に示すように、マロン酸ジエチルオキサアルキルエーテルを濃アルカリ水溶液中で加水分解することにより合成することができる。
【0086】
【化17】

【0087】
上記方法により製造された化合物は、従来公知の方法によって、例えば、99.5%以上の高純度に精製することができる。
【0088】
(3)本発明に係る化合物の利用
本発明に係る化合物は、同じ分子量の直鎖アルキル鎖を有する化合物または直鎖オキサアルキル鎖を有する化合物と比較して、低融点または低ガラス転移点で、且つ低動粘度であるので、本発明に係る化合物または当該化合物を含有している組成物は、例えば、潤滑剤、可塑剤、界面活性剤、液晶分子、エラストマー、合成樹脂、粘着剤等として好適に用いることができる。なお、上記「本発明に係る化合物」については、上記「(1)本発明に係る化合物」の項で説明したとおりであるので、ここでは説明は省略する。
【0089】
本発明に係る組成物は、本発明に係る化合物を含有していれば、同じ分子量の直鎖アルキル鎖を有する化合物または直鎖オキサアルキル鎖を有する化合物を含有している組成物と比較して、低融点または低ガラス転移点で、且つ低動粘度の組成物となり得る。このため、当該組成物における本発明に係る化合物の含有量は特に限定されるものではないが、実用的な観点でいえば、上記組成物の総重量に対して、本発明に係る化合物の含有量が、20重量%以上であることが好ましく、50重量%以上であることがより好ましい。本発明に係る組成物において、本発明に係る化合物が上記範囲となるように含有されていれば、当該組成物は、同じ分子量の直鎖アルキル鎖を有する化合物または直鎖オキサアルキル鎖を有する化合物を含有している組成物と比較して、より低融点または低ガラス転移点で、且つ低動粘度の組成物となり得る。
【0090】
本発明に係る組成物は、本発明に係る化合物の1種類を単独で含有していてもよいし、複数の種類を組み合わせて含有していてもよい。
【0091】
以下に、潤滑剤について説明する。
【0092】
(i)本発明に係る潤滑剤
本発明に係る潤滑剤は、本発明に係る化合物を含有していれば、本発明に係る化合物を含有していない以外は同じ組成の潤滑剤と比較して、低融点または低ガラス転移点で、且つ低動粘度の組成物となり得る。このため、潤滑剤における本発明に係る化合物の含有量は特に限定されるものではないが、実用的な観点でいえば、潤滑剤の総重量に対して、20重量%以上であることが好ましく、50重量%以上であることがより好ましい。
【0093】
なお、本明細書において、上記「潤滑剤」は、摩擦面を潤滑し、機械効率の向上を計るために用いる物質全般を指している。このため、上記「潤滑剤」は、常温で液体であるものだけに限定されず、常温で固体または半固体物等を排除するものではない。
【0094】
本発明に係る潤滑剤は、本発明に係る化合物の1種類を単独で含有していてもよいし、本発明に係る化合物の複数の種類を組み合わせて含有していてもよい。
【0095】
本発明に係る化合物は、同じ分子量の直鎖アルキル鎖を有する化合物または直鎖オキサアルキル鎖を有する化合物と比較して、低融点または低ガラス転移点で、低動粘度であるので、本発明に係る潤滑剤は、同じ分子量の直鎖アルキル鎖を有する化合物または直鎖オキサアルキル鎖を有する化合物を含有している潤滑剤と比較して、低融点または低ガラス転移点で、且つ低動粘度の潤滑剤となり得る。本発明に係る潤滑剤は、ブレーキ油、有機溶剤、有機熱媒体等としても用いられ得る。
【0096】
なお、本発明に係る潤滑剤が融点を有している場合は、融点が、−40℃以下であることが好ましく、−50℃以下であることがより好ましい。また、ガラス転移点を有している場合は、ガラス転移点が、−80℃以下であることが好ましく、−100℃以下であることがより好ましい。
【0097】
また、本発明に係る潤滑剤は、40℃における動粘度が、50mm/s以下であり、且つ100℃における動粘度が、6mm/s以上であることが好ましく、40℃における動粘度が、15mm/s以下であり、且つ100℃における動粘度が、2mm/s以上であることがより好ましい。
【0098】
本発明に係る潤滑剤の融点またはガラス転移点および動粘度が上記範囲であれば、かかる潤滑剤を用いた自動車、家電、工業用機械等をより低燃費化または低消費電力化することができるため好ましい。後述する実施例に示した合成例47、49および50の化合物は、融点またはガラス転移点および動粘度が上記範囲であるので、潤滑剤として好適に利用することができる。
【0099】
なお、潤滑剤の「融点」、「ガラス転移点」および「動粘度」は、従来公知の方法によって測定することができる。「融点」および「ガラス転移点」は、例えば、後述する実施例に示しているように、DSC(島津社製、DSC−50)を用いて測定することができる。また、「動粘度」は、例えば、後述する実施例に示しているように、40℃における動粘度および100℃における動粘度を、JIS K 2283に準じ、キャノン−フェンスケ粘度計を用いて測定することができる。
【0100】
(ii)本発明に係る潤滑剤の製造方法
本発明に係る潤滑剤は、潤滑剤の本発明の化合物を基油として配合することによって製造することができる。
【0101】
潤滑剤の製造方法では、潤滑剤の総重量に対して、本発明に係る化合物が20重量%以上となるように配合することが好ましく、50重量%以上となるように配合することがより好ましい。本発明に係る化合物を、含有量が上記範囲となるように潤滑剤に配合することによって、低融点または低ガラス転移点で、且つ低動粘度の潤滑剤を製造することができる。
【0102】
また、本発明に係る潤滑剤の製造方法では、本発明に係る化合物の1種類を単独で配合していてもよいし、本発明に係る化合物の複数の種類を組み合わせて配合していてもよいが、本発明に係る化合物の複数の種類を組み合わせて配合することにより、潤滑剤の物性を連続的に制御することができる。さらに、本発明に係る化合物の複数の種類を組み合わせて配合する場合、同族体の混合状態は理想混合に近いと考えられるので、物性の予測および設計を行う上で有利である。
【0103】
(4)融点またはガラス転移点および動粘度低下方法
本発明に係る化合物は、直鎖アルキル鎖を有する化合物および/または直鎖オキサアルキル鎖を有する化合物を含有している組成物(以下、「改質対象組成物」と称する)と混合することによって、当該改質対象組成物の融点またはガラス転移点、および動粘度を顕著に低下させることができる。従って、本発明に係る化合物は、「融点またはガラス転移点および動粘度低下剤」と読み替えることもできる。なお、本明細書において、上記「融点またはガラス転移点および動粘度低下剤」とは、「融点またはガラス転移点および動粘度を低下させるための組成物」を意図している。なお、本明細書では、融点を低下させるだけでなく、融点を消失させることも含めて、「融点を低下させる」と表現している。
【0104】
上記「改質対象組成物」としては、直鎖アルキル鎖を有する化合物および/または直鎖オキサアルキル鎖を有する化合物を含有している組成物であれば特に限定されない。このような「改質対象組成物」としては、例えば、潤滑剤、可塑剤、界面活性剤、液晶分子、エラストマー、合成樹脂、粘着剤等を挙げることができる。
【0105】
本発明に係る方法(「融点またはガラス転移点および動粘度低下方法」ともいう)は、上記改質対象組成物の融点またはガラス転移点および動粘度を低下させるために、本発明に係る化合物と、改質対象組成物とを混合する工程を含んでいればよい。
【0106】
発明に係る化合物と、改質対象組成物とを混合する割合は特に限定されないが、改質対象組成物の総重量に対して、本発明に係る化合物が20重量%以上となるように混合することが好ましく、50重量%以上となるように混合することがより好ましい。本発明に係る化合物の含有量が上記範囲となるように改質対象組成物と混合することによって、改質対象組成物の融点またはガラス転移点および動粘度を効果的に低下させることができる。
【0107】
なお、発明に係る化合物と混合した後の改質対象組成物の融点またはガラス転移点が、発明に係る化合物と混合する前の改質対象組成物の融点またはガラス転移点よりも低下していれば、改質対象組成物の融点またはガラス転移点が低下したと判断することができる。また、発明に係る化合物と混合した後の改質対象組成物の動粘度が、発明に係る化合物と混合する前の改質対象組成物の動粘度よりも低下していれば、改質対象組成物の動粘度が低下したと判断することができる。なお、改質対象組成物の「融点」、「ガラス転移点」および「動粘度」の測定方法については、上記「(3)本発明に係る化合物の利用」の項で説明したとおりであるので、ここでは説明は省略する。
【0108】
本発明に係る方法では、改質対象組成物に対して、本発明に係る化合物の1種類を単独で混合していてもよいし、本発明に係る化合物の複数の種類を組み合わせて混合してもよいが、本発明に係る化合物の複数の種類を組み合わせて混合することにより、改質対象組成物の物性を連続的に制御することができる。さらに、本発明に係る化合物の複数の種類を組み合わせて混合する場合、同族体の混合状態は理想混合に近いと考えられるので、改質対象組成物の物性の予測および設計を行う上で有利である。
【0109】
なお、これは一般的にベース化合物に、この化合物よりも低融点化合物を混合することによる融点の低下で説明できる。混合する化合物同士に特殊な結合が偶然生じない場合はほぼ成り立つ。共融混合物や固溶体を作る混合物の一般的な特徴である。
【0110】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例】
【0111】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
【0112】
本実施例における化合物名の表記方法を説明する。オキサアルキル鎖として、例えば、「H(CH−O−(CH−O−(CH−」を、「6−2−4−」と省略して記載する。記載方法は、メチレン基(−CH−)およびエーテル結合(−O−)を、それぞれ、数字とハイフン(−)とに省略して記載し、式中の数字は、メチレン基(−CH−)の数nを示している。また、末端基の記載がないものは、末端が水素原子であることを示している。
【0113】
また、分岐アルキル鎖の場合は、−CH−CH(CH)−CH−;−CH−C(CH−CH−;−CH−C(C−CH−;−CH−C(C)(CH−)−CH−;H(CH−CH(C)−C−を、それぞれ、−PrMe−;−PrMe2−;−PrEt2−;−PrEt−;EtHx−と省略して記載する。
【0114】
〔実施例1〕
合成例を以下に示す。
【0115】
[原料系]
<モノオキサアルカノール>
〔合成例1:H−(CH−O−(CH−OH(略称:6−3OH)の製造〕
H−(CH−Cl(174.8g)と、HO−(CH−OH(430.2g)とを、50%水酸化ナトリウム水溶液(136.5g)中で、TBAH(23.4g)存在下、85℃、21時間反応させることにより、H−(CH−O−(CH−OHを製造した。
【0116】
〔合成例2:H−(CH−O−(CH−OH(略称:6−4OH)の製造〕
H−(CH−Cl(166g)と、HO−(CH−OH(381.3g)とを、50%水酸化ナトリウム水溶液(127.0g)中で、TBAH(46.8g)存在下、80℃、22時間反応させることにより、H−(CH−O−(CH−OHを製造した。
【0117】
<クロロモノオキサアルカン>
〔合成例3:H−(CH−O−(CH−Cl(略称:4−2Cl)の製造〕
窒素気流下で、H−(CH−O−(CH−OH(177.3g)と、ピリジン(177.8g)との溶液に塩化チオニル(267.8g)を滴下し、80℃で3時間反応させることにより、H−(CH−O−(CH−Cl(4−2Cl)を製造した。
【0118】
〔合成例4:H−(CH−O−(CH−Cl(略称:6−2Cl)の製造〕
窒素気流下で、H−(CH−O−(CH−OH(198.9g)と、ピリジン(157.5g)との溶液に塩化チオニル(222.8g)を滴下し、80℃で2時間反応させることにより、H−(CH−O−(CH−Clを製造した。
【0119】
〔合成例5:H−(CH−O−(CH−Cl(略称:6−3Cl)の製造〕
窒素気流下で、合成例1で得られたH−(CH−O−(CH−OH(167.2g)と、ピリジン(115.5g)との溶液に塩化チオニル(173.7g)を滴下し、80℃で2時間反応させることにより、H−(CH−O−(CH−Clを製造した。
【0120】
〔合成例6:H−(CH−O−(CH−Cl(略称:6−4Cl)の製造〕
H−(CH−O−H(124.2g)と、Cl−(CH−Cl(465.7g)とを、50%水酸化ナトリウム水溶液(119.1g)中で、TBAH(43.3g)存在下、82℃、22時間反応させることにより、H−(CH−O−(CH−Clを製造した。
【0121】
〔合成例7:H−(CH−O−(CH−Cl(略称:6−6Cl)の製造〕
H−(CH−OH(74.5g)と、Cl−(CH−Cl(460.2g)とを、50%水酸化ナトリウム水溶液(69.8g)中で、TBAH(22.8g)存在下、85℃、24時間反応させることにより、H−(CH−O−(CH−Clを製造した。
【0122】
〔合成例8:H−(CH−O−(CH−Cl(略称:8−4Cl)の製造〕
H−(CH−OH(100.3g)と、Cl−(CH−Cl(170.7g)とを、50%水酸化ナトリウム水溶液(78.2g)中で、TBAH(52.7g)存在下、85℃、24時間反応させることにより、H−(CH−O−(CH−Clを製造した。
【0123】
<ジオキサアルカノール>
〔合成例9:H−(CH−O−(CH−O−(CH−OH(略称:4−2−4OH)の製造〕
合成例3で得られたH−(CH−O−(CH−Cl(略称:4−2Cl、116.0g)と、HO−(CH−OH(305.8g)とを、50%水酸化ナトリウム水溶液(85.2g)中で、TBAH(24.7g)存在下、80℃、23時間反応させることにより、H−(CH−O−(CH−O−(CH−OHを製造した。
【0124】
〔合成例10:H−(CH−O−(CH−O−(CH−OH(略称:6−2−6OH)の製造〕
合成例4で得られたH−(CH−O−(CH−Cl(略称:6−2Cl、172g)と、HO−(CH−OH(372.4g)とを、50%水酸化ナトリウム水溶液(102.9g)中で、TBAH(36.5g)存在下、84℃、22時間反応させることにより、H−(CH−O−(CH−O−(CH−OHを製造した。
【0125】
〔合成例11:H−(CH−O−(CH−O−(CH−OH(6−3−4OH)の製造〕
合成例5で得られたH−(CH−O−(CH−Cl(略称:6−3Cl、66.5g)と、HO(CHOH(100.6g)とを、50%水酸化ナトリウム水溶液(35.7g)中で、TBAH(6.3g)存在下、90℃、24時間反応させることにより、H−(CH−O−(CH−O−(CH−OHを製造した。
【0126】
〔合成例12:H−(CH−O−(CH−O−(CH−OH(略称:6−3−6OH)の製造〕
合成例5で得られたH−(CH−O−(CH−Cl(略称:6−3Cl、67.4g)と、HO−(CH−OH(98g)とを、50%水酸化ナトリウム水溶液(27.2g)中で、TBAH(7.5g)存在下、83℃、24時間反応させることにより、H−(CH−O−(CH−O−(CH−OHを製造した。
【0127】
〔合成例13:H−(CH−O−(CH−O−(CH−OH(6−4−6OH)の製造〕
合成例6で得られたH−(CH−O−(CH−Cl(略称:6−4Cl、51.2g)と、HO−(CH−OH(92.6g)とを、50%水酸化ナトリウム水溶液(24.9g)中で、TBAH(9.9g)存在下、80℃、21時間反応させることにより、H−(CH−O−(CH−O−(CH−OHを製造した。
【0128】
〔合成例14:H−(CH−O−(CH−O−(CH−OH(略称:8−4−4OH)の製造〕
合成例8で得られたH−(CH−O−(CH−Cl(略称:8−4Cl、47.2g)と、HO(CHOH(65.4g)とを、50%水酸化ナトリウム水溶液(24.5g)中で、TBAH(4.2g)存在下、90℃、24時間反応させることにより、H−(CH−O−(CH−O−(CH−OHを製造した。
【0129】
<クロロジオキサアルカン>
〔合成例15:H−(CH−O−(CH−O−(CH−Cl(略称:6−2−4Cl)の製造〕
H−(CH−O−(CH−O−H(183.1g)と、Cl−(CH−Cl(563.3g)とを、50%水酸化ナトリウム水溶液(124.2g)中で、TBAH(21.1g)存在下、90℃、24時間反応させることにより、H−(CH−O−(CH−O−(CH−Clを製造した。
【0130】
〔合成例16:H−(CH−O−(CH−O−(CH−Cl(略称:6−2−6Cl)の製造〕
H−(CH−O−(CH−O−H(157.9g)と、Cl−(CH−Cl(353.2g)とを、50%水酸化ナトリウム水溶液(106.2g)中で、TBAH(25.5g)存在下、82℃、18時間反応させることにより、H−(CH−O−(CH−O−(CH−Clを製造した。
【0131】
〔合成例17:H−(CH−O−(CH−O−(CH−Cl(略称:6−3−4Cl)の製造〕
H−(CH−O−(CH−O−H(51.9g)と、Cl−(CH−Cl(159.4g)とを、50%水酸化ナトリウム水溶液(32.8g)中で、TBAH(5.6g)存在下、90℃、23時間反応させることにより、H−(CH−O−(CH−O−(CH−Clを製造した。
【0132】
<ブロモオキサアルカン(オキサアルカン酸原料)>
〔合成例18:H−(CH−O−(CH−Br(略称:6−2Br)の製造〕
窒素気流下で、H−(CH−O−(CH−O−H(49.2g)にPBr(30.9g)を滴下し、120℃で2時間反応させることにより、H−(CH−O−(CH−Brを製造した。
【0133】
〔合成例19:H−(CH−O−(CH−Br(略称:6−4Br)の製造〕
窒素気流下で、H−(CH−O−(CH−O−H(107g)にPBr(60.4g)を滴下し、120℃で2時間反応させることにより、H−(CH−O−(CH−Brを製造した。
【0134】
〔合成例20:H−(CH−O−(CH−O−(CH−Br(略称:6−2−2Br)の製造〕
窒素気流下で、H−(CH−O−(CH−O−(CH−O−H(57.7g)にPBr(37.1g)を滴下し、120℃で2時間反応させることにより、H−(CH−O−(CH−O−(CH−Brを製造した。
【0135】
<オキサアルカン酸(マロン酸エステル合成)>
〔合成例21:H−(CH−O−(CH−CO−O−H(略称:6−6OOH)の製造〕
窒素気流下で、99%エタノール(235.4g)と、Na(16.3g)とを反応させ、更にマロン酸ジエチル(125.6g)を反応させ、40℃で、合成例19で得られたH−(CH−O−(CH−Br(略称:6−4Br)(144.7g)を滴下し、50℃で24時間反応させた。
【0136】
得られたマロン酸ジエチルオキサアルキルエーテル((H−(CH−O−CO)−CH−O−(CH−O−(CH−H)(108.5g)を、50%水酸化カリウム(72.3g)により100℃で2時間加水分解させることにより、H−(CH−O−(CH−CO−O−Hを製造した。
【0137】
〔合成例22:H−(CH−O−(CH−O−(CH−CO−O−H(略称:6−2−4OOH)の製造〕
窒素気流下で、99%エタノール(138g)と、Na(10.5g)とを反応させ、更にマロン酸ジエチル(75.2g)を反応させ、40℃で、合成例20で得られたH−(CH−O−(CH−O−(CH−Br(略称:6−2−2Br、105.5g)を滴下し、50℃で21時間反応させた。
【0138】
得られたマロン酸ジエチルオキサアルキルエーテル((H−(CH−O−CO)−CH−O−(CH−O−(CH−O−(CH−H)(123.2g)を、50%水酸化カリウム(66.7g)により100℃で2時間加水分解させることにより、H−(CH−O−(CH−O−(CH−CO−O−Hを製造した。
【0139】
<側鎖オキサアルコール>
〔合成例23:H−(CH−O−CH−C(CH−CH−O−H(略称:6−PrMe2OH)の製造〕
H−(CH−Cl(32.9g)と、H−O−CH−C(CH−CH−O−H(105.3g)とを、50%水酸化ナトリウム水溶液(28g)中で、TBAH(8.6g)存在下、90℃、24時間反応させることにより、H−(CH−O−CH−C(CH−CH−O−H(略称:6−PrMeOH)を製造した。
【0140】
〔合成例24:H−(CH12−O−CH−C(CH−CH−O−H(略称:12−PrMe2OH)の製造〕
H−(CH12−Br(100.6g)と、H−O−CH−C(CH−CH−O−H(160g)とを、50%水酸化ナトリウム水溶液(41.9g)中で、TBAH(14.1g)存在下、90℃、13時間反応させることにより、H−(CH12−O−CH−C(CH−CH−O−H(略称:12−PrMeOH)を製造した。
【0141】
[生成物系(エーテル・エステル)]
<直鎖対称ジエーテル>
〔比較合成例1:H−(CH12−O−(CH−O−(CH12−H(略称:3(O12))の製造〕
H−(CH12−Cl(76.7g)と、H−O−(CH−O−H(9.3g)とを、50%水酸化ナトリウム水溶液(30.8g)、TBAH(8.4g)存在下、90℃、48時間反応させることにより、H−(CH12−O−(CH−O−(CH12−Hを製造した。
【0142】
〔比較合成例2:H−(CH−O−(CH−O−(CH−O−(CH−O−(CH−H(略称3(O4−8)):の製造〕
合成例8で得られたH−(CH−O−(CH−Cl(略称:8−4Cl、74.8g)と、H−O−(CH−O−H(11.3g)とを、50%水酸化ナトリウム水溶液(30.8g)、TBAH(7.7g)存在下、90℃、24時間反応させた後、50%水酸化ナトリウム水溶液を少量添加し、さらに24.5時間反応させることにより、H−(CH−O−(CH−O−(CH−O−(CH−O−(CH−Hを製造した。
【0143】
〔比較合成例3:H−(CH−O−(CH−O−(CH−O−(CH−O−(CH−H(略称:3(O6−6))の製造〕
合成例7で得られたH−(CH−O−(CH−Cl(略称:6−6Cl、81.6g)と、H−O−(CH−O−H(9.2g)とを、50%水酸化ナトリウム水溶液(34.0g)、TBAH(7.8g)存在下、90℃、24時間反応させた後、50%水酸化ナトリウム水溶液を少量添加し、さらに24.5時間反応させることにより、H−(CH−O−(CH−O−(CH−O−(CH−O−(CH−Hを製造した。
【0144】
〔比較合成例4:H−(CH−O−(CH−O−(CH−O−(CH−O−(CH−O−(CH−O−(CH−H(略称:3(O4−2−6))の製造〕
合成例15で得られたH−(CH−O−(CH−O−(CH−Cl(略称:6−2−4Cl、47.0g)と、H−O−(CH−O−H(6.0g)とを、50%水酸化ナトリウム水溶液(22.1g)、TBAH(5.1g)存在下、90℃、24時間反応させた後、50%水酸化ナトリウム水溶液を少量添加し、さらに24時間反応させることによりH−(CH−O−(CH−O−(CH−O−(CH−O−(CH−O−(CH−O−(CH−Hを製造した。
【0145】
〔比較合成例5:H−(CH−O−(CH−O−(CH−O−(CH−O−(CH−O−(CH−O−(CH−H(略称:3(O6−2−6))の製造〕
合成例16で得られたH−(CH−O−(CH−O−(CH−Cl(43.7g)と、H−O−(CH−O−H(4.1g)とを、50%水酸化ナトリウム水溶液(16g)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(8.3g)中で、TBAH(3.8g)存在下、90℃、48時間反応させることにより、H−(CH−O−(CH−O−(CH−O−(CH−O−(CH−O−(CH−O−(CH−Hを製造した。
【0146】
<直鎖対称モノエステル>
〔比較合成例6:H−(CH−O−(CH−O−(CH−CO−O−(CH−O−(CH−O−(CH−H(略称:6−2−4OO4−2−6)の製造〕
合成例22で得られたH−(CH−O−(CH−O−(CH−CO−O−H(7.7g)と、H−(CH−O−(CH−O−(CH−O−H(6.8g)とを、酸触媒HSO(0.16ml)と共に、80℃、4時間減圧下で反応させることにより、H−(CH−O−(CH−O−(CH−CO−O−(CH−O−(CH−O−(CH−Hを製造した。
【0147】
<直鎖非対称モノエステル>
〔比較合成例7:H−(CH−CO−O−(CH−O−(CH−O−(CH−H(略称:8OO6−4−6)の製造〕
H−(CH−CO−O−H(3.8g)と、H−(CH−O−(CH−O−(CH−O−H(5.3g)とを、酸触媒HSO(0.1ml)と共に、80℃、4時間減圧下で反応させることにより、H−(CH−CO−O−(CH−O−(CH−O−(CH−Hを製造した。
【0148】
〔比較合成例8:H−(CH−O−(CH−O−(CH−CO−O−(CH12−H(略称:6−2−4OO12)の製造〕
合成例22で得られたH−(CH−O−(CH−O−(CH−CO−O−H(7.6g)と、H−(CH12−O−H(8.4g)とを、酸触媒HSO(0.18ml)と共に、80℃、4時間減圧下で反応させることにより、H−(CH−O−(CH−O−(CH−CO−O−(CH12−Hを製造した。
【0149】
〔比較合成例9:H−(CH−O−(CH−O−(CH−CO−O−(CH−O−(CH−H(略称:6−2−4OO6−6)の製造〕
合成例22で得られたH−(CH−O−(CH−O−(CH−CO−O−H(8.9g)と、H−(CH−O−(CH−O−H(6.3g)とを、酸触媒HSO(0.16ml)と共に、80℃、4時間減圧下で反応させることにより、H−(CH−O−(CH−O−(CH−CO−O−(CH−O−(CH−Hを製造した。
【0150】
<分岐対称ジエーテル>
〔合成例25:H−(CH12−O−CH−CH(CH)−CH−O−(CH12−H(略称:PrMe(O12))の製造〕
H−(CH12−Cl(44.8g)と、H−O−CH−CH(CH)−CH−O−H(6.3g)とを、50%水酸化ナトリウム水溶液(12.8g)中で、TBAH(1.9g)存在下、85℃、51時間反応させることにより、H−(CH12−O−CH−CH(CH)−CH−O−(CH12−Hを製造した。
【0151】
〔合成例26:H−(CH−O−(CH−O−CH−CH(CH)−CH−O−(CH−O−(CH−H(略称:PrMe(O4−8))の製造〕
合成例8で得られたH−(CH−O−(CH−Cl(48.9g)と、H−O−CH−CH(CH)−CH−O−H(6.0g)とを、50%水酸化ナトリウム水溶液(12.4g)中で、TBAH(1.6g)存在下、85℃、48時間反応させることにより、H−(CH−O−(CH−O−CH−CH(CH)−CH−O−(CH−O−(CH−Hを製造した。
【0152】
〔合成例27:H−(CH−O−(CH−O−CH−CH(CH)−CH−O−(CH−O−(CH−H(略称:PrMe(O6−6))の製造〕
合成例7で得られたH−(CH−O−(CH−Cl(49.5g)と、H−O−CH−CH(CH)−CH−O−H(5.7g)とを、50%水酸化ナトリウム水溶液(11.9g)中で、TBAH(1.9g)存在下、85℃、48時間反応させることにより、H−(CH−O−(CH−O−CH−CH(CH)−CH−O−(CH−O−(CH−Hを製造した。
【0153】
〔合成例28:H−(CH−O−(CH−O−(CH−O−CH−CH(CH)−CH−O−(CH−O−(CH−O−(CH−H(略称:PrMe(O4−2−6))の製造〕
合成例15で得られたH−(CH−O−(CH−O−(CH−Cl(50g)と、H−O−CH−CH(CH)−CH−O−H(5.2g)とを、50%水酸化ナトリウム水溶液(14.9g)中で、TBAH(4.2g)存在下、90℃、48時間反応させることにより、H−(CH−O−(CH−O−(CH−O−CH−CH(CH)−CH−O−(CH−O−(CH−O−(CH−Hを製造した。
【0154】
〔合成例29:H−(CH−O−(CH−O−(CH−O−CH−CH(CH)−CH−O−(CH−O−(CH−O−(CH−H(略称:PrMe(O6−2−6))の製造〕
合成例16で得られたH−(CH−O−(CH−O−(CH−Cl(41.9g)と、H−O−CH−CH(CH)−CH−O−H(6.5g)とを、50%水酸化ナトリウム水溶液(10.2g)中で、TBAH(1.4g)存在下、85℃、47時間反応させることにより、H−(CH−O−(CH−O−(CH−O−CH−CH(CH)−CH−O−(CH−O−(CH−O−(CH−Hを製造した。
【0155】
〔合成例30:H−(CH12−O−CH−C(CH−CH−O−(CH12−H(略称:PrMe2(O12))の製造〕
H−(CH12−Cl(32.5g)と、H−O−CH−C(CH−CH−O−H(5.3g)とを、50%水酸化ナトリウム水溶液(22.5g)およびジエチレングリコールジメチルエーテル(17.3g)中で、TBAH(1.9g)存在下、80℃、24時間反応させることにより、H−(CH12−O−CH−C(CH−CH−O−(CH12−Hを製造した。
【0156】
〔合成例31:H−(CH−O−(CH−O−CH−C(CH−CH−O−(CH−O−(CH−H(略称:PrMe2(O4−8))の製造〕
合成例8で得られたH−(CH−O−(CH−Cl(67.2g)と、H−O−CH−C(CH−CH−O−H(10.4g)とを、50%水酸化ナトリウム水溶液(30.5g)およびジエチレングリコールジメチルエーテル(9.9g)中で、TBAH(7.1g)存在下、90℃で24時間反応させた後50%水酸化ナトリウム水溶液を少量添加し、さらに24時間反応させることにより、H−(CH−O−(CH−O−CH−C(CH−CH−O−(CH−O−(CH−Hを製造した。
【0157】
〔合成例32:H−(CH−O−(CH−O−CH−C(CH−CH−O−(CH−O−(CH−H(略称:PrMe2(O6−6))の製造〕
合成例7で得られたH−(CH−O−(CH−Cl(79.5g)と、H−O−CH−C(CH−CH−O−H(10.5g)とを、50%水酸化ナトリウム水溶液(24.4g)およびジエチレングリコールジメチルエーテル(11.7g)中で、TBAH(7.0g)存在下、90℃で5時間反応させた後50%水酸化ナトリウム水溶液を少量添加し、さらに16時間反応後に50%水酸化ナトリウム水溶液を少量添加し、引き続き13時間反応させることにより、H−(CH−O−(CH−O−CH−C(CH−CH−O−(CH−O−(CH−Hを製造した。
【0158】
〔合成例33:H−(CH−O−(CH−O−(CH−O−CH−C(CH−CH−O−(CH−O−(CH−O−(CH−H(略称:PrMe2(O4−2−4))の製造〕
H−(CH−O−(CH−O−(CH−Cl(21.0g)と、H−O−CH−C(CH−CH−O−H(3.5g)とを、50%水酸化ナトリウム水溶液(8.0g)およびジエチレングリコールジメチルエーテル(6.4g)中で、TBAH(1.2g)存在下、80℃で24時間反応させることにより、H−(CH−O−(CH−O−(CH−O−CH−C(CH−CH−O−(CH−O−(CH−O−(CH−Hを製造した。
【0159】
〔合成例34:H−(CH−O−(CH−O−(CH−O−CH−C(CH−CH−O−(CH−O−(CH−O−(CH−H(略称:PrMe2(O4−2−6))の製造〕
合成例15で得られたH−(CH−O−(CH−O−(CH−Cl(122.1g)と、H−O−CH−C(CH−CH−O−H(19.9g)とを、50%水酸化ナトリウム水溶液(47.5g)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(26.2g)中で、TBAH(13.9g)存在下、90℃、50時間反応させることにより、H−(CH−O−(CH−O−(CH−O−CH−C(CH−CH−O−(CH−O−(CH−O−(CH−Hを製造した。
【0160】
〔合成例35:H−(CH−O−(CH−O−(CH−O−CH−C(CH−CH−O−(CH−O−(CH−O−(CH−H(略称:PrMe2(O4−3−6))の製造〕
合成例17で得られたH−(CH−O−(CH−O−(CH−Cl(99%24g)と、H−O−CH−C(CH−CH−O−H(3.3g)とを、50%水酸化ナトリウム水溶液(7.8g)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(5.8g)中で、TBAH(2g)存在下、90℃、48時間反応させることにより、H−(CH−O−(CH−O−(CH−O−CH−C(CH−CH−O−(CH−O−(CH−O−(CH−Hを製造した。
【0161】
〔合成例36:H−(CH−O−(CH−O−(CH−O−CH−C(CH−CH−O−(CH−O−(CH−O−(CH−H(略称:PrMe2(O6−2−6))の製造〕
合成例16で得られたH−(CH−O−(CH−O−(CH−Cl(101.0g)と、H−O−CH−C(CH−CH−O−H(12.5g)とを、50%水酸化ナトリウム水溶液(36.2g)およびジエチレングリコールジメチルエーテル(18.4g)中で、TBAH(8.5g)存在下、90℃で24時間反応させた後50%水酸化ナトリウム水溶液を少量添加し、さらに24時間反応させることにより、H−(CH−O−(CH−O−(CH−O−CH−C(CH−CH−O−(CH−O−(CH−O−(CH−Hを製造した。
【0162】
〔合成例37:H−(CH−O−(CH−O−(CH−O−CH−C(CH−CH−O−(CH−O−(CH−O−(CH−H(略称:PrMe2(O6−3−6))の製造〕
H−(CH−O−(CH−O−(CH−Cl(85%、48g)と、H−O−CH−C(CH−CH−O−H(5.3g)とを、50%水酸化ナトリウム水溶液(11.3g)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(7.2g)中で、TBAH(3.6g)存在下、90℃、48時間反応させることにより、H−(CH−O−(CH−O−(CH−O−CH−C(CH−CH−O−(CH−O−(CH−O−(CH−Hを製造した。
【0163】
〔合成例38:H−(CH−O−(CH−O−(CH−O−CH−C(C−CH−O−(CH−O−(CH−O−(CH−H(略称:PrEt2(O4−2−6))の製造〕
合成例15で得られたH−(CH−O−(CH−O−(CH−Cl(93%、42.3g)と、H−O−CH−C(C−CH−O−H(7.3g)とを、50%水酸化ナトリウム水溶液(14.2g)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(9.7g)中で、TBAH(3.8g)存在下、90℃、48時間反応させることにより、H−(CH−O−(CH−O−(CH−O−CH−C(C−CH−O−(CH−O−(CH−O−(CH−Hを製造した。
【0164】
<分岐非対称モノエーテル>
〔合成例39:H−(CH14−O−CH−CH(C)−(CH−H(略称:EtHxO14)の製造〕
H−(CH14−Cl(13.6g)と、H−(CH−CH(C)−CH−O−H(7.5g)とを、50%水酸化ナトリウム水溶液(6.5g)中で、TBAH(0.9g)存在下、90℃、24時間反応させることにより、H−(CH14−O−CH−CH(C)−(CH−Hを製造した。
【0165】
〔合成例40:H−(CH−O−(CH−O−CH−CH(C)−(CH−H(略称:EtHxO4−8)の製造〕
合成例8で得られたH−(CH−O−(CH−Cl(11.4g)と、H−(CH−CH(C)−CH−O−H(6.5g)とを、50%水酸化ナトリウム水溶液(5.2g)中で、TBAH(0.9g)存在下、90℃、24時間反応させることにより、H−(CH−O−(CH−O−CH−CH(C)−(CH−Hを製造した。
【0166】
〔合成例41:H−(CH−O−(CH−O−(CH−O−CH−CH(C)−(CH−H(略称:EtHxO4−2−6)の製造〕
合成例15で得られたH−(CH−O−(CH−O−(CH−Cl(97%、13.3g)と、H−(CH−CH(C)−CH−O−H(8.1g)とを、50%水酸化ナトリウム水溶液(6.1g)中で、TBAH(1.7g)存在下、90℃、24時間反応させることにより、H−(CH−O−(CH−O−(CH−O−CH−CH(C)−(CH−Hを製造した。
【0167】
<分岐非対称モノエステル>
〔合成例42:H−(CH−O−(CH−O−(CH−CO−O−CH−C(CH−CH−O−(CH−H(略称:6−2−4OOPrMe2O6)の製造〕
合成例23で得られたH−(CH−O−CH−C(CH−CH−O−H(6−3MeOH)(6.2g)と、合成例22で得られたH−(CH−O−(CH−O−(CH−CO−O−H(10.8g)とを、酸触媒HSO(0.18ml)と共に、80℃、4時間減圧下で反応させることにより、H−(CH−O−(CH−O−(CH−CO−O−CH−C(CH−CH−O−(CH−Hを製造した。
【0168】
〔合成例43:H−(CH11−CO−O−CH−C(CH−CH−O−(CH12−H(略称:12OOPrMe2O12)の製造〕
合成例24で得られたH−(CH12−O−CH−C(CH−CH−O−H(略称:12−3MeOH、6.5g)と、H−(CH11−CO−O−H(6.0g)とを、酸触媒HSO(0.13ml)と共に、80℃、2時間減圧下で反応させることにより、H−(CH11−CO−O−CH−C(CH−CH−O−(CH12−Hを製造した。
【0169】
〔合成例44:H−(CH−O−(CH−O−(CH−CO−O−CH−C(CH−CH−O−(CH12−H(略称:6−2−4OOPrMe2O12)の製造〕
合成例22で得られたH−(CH−O−(CH−O−(CH−CO−O−H(7.6g)と、H−(CH12−O−CH−CH(CH−CH−O−H(6.4g)とを、酸触媒HSO(0.13ml)と共に、80℃、7時間減圧下で反応させることにより、H−(CH−O−(CH−O−(CH−CO−O−CH−CH(CH−CH−O−OC−(CH11−Hを製造した。
【0170】
〔合成例45:H−(CH−O(CH−O−(CH−CO−O−CH−CH(C)−(CH−H(略称:6−2−4OOEtHx)の製造〕
H−(CH−CH(C)−CH−O−H(7.8g)と、合成例22で得られたH−(CH−O(CH−O−(CH−CO−O−H(9.8g)とを、酸触媒HSO(0.16ml)と共に、80℃、2時間減圧下で反応させることにより、H−(CH−O(CH−O−(CH−CO−O−CH−CH(C)−(CH−Hを製造した。
【0171】
〔合成例46:H−(CH−CH(C)−CO−O−(CH−O−(CH−O−(CH−H(略称:EtHxOO4−2−6)の製造〕
H−(CH−O−(CH−O−(CH−O−H(90%、6.9g)と、H−(CH−CH(C)−CO−O−H(5.2g)とを、酸触媒HSO(0.16ml)と共に、80℃、4時間減圧下で反応させることにより、H−(CH−CH(C)−CO−O−(CH−O−(CH−O−(CH−Hを製造した。
【0172】
〔合成例47:H−(CH−CH(C)−CO−O−(CH−O−(CH−O−(CH−H(略称:EtHxOO4−3−6)の製造〕
合成例11で得られたH−(CH−O−(CH−O−(CH−OH(12.6g)と、H(CHCH(C)COOH(7.4g)とを、酸触媒HSO(0.3ml)と共に、80℃、4時間減圧下で反応させることにより、H−(CH−CH(C)−CO−O−(CH−O−(CH−O−(CH−Hを製造した。
【0173】
〔合成例48:H−(CH−CH(C)−CO−O−(CH−O−(CH−O−(CH−H(略称:EtHxOO4−4−8)の製造〕
合成例14で得られたH−(CH−O−(CH−O−(CH−OH(8g)と、H(CHCH(C)COOH(4.4g)とを、酸触媒HSO(0.2ml)と共に、80℃、4時間減圧下で反応させることにより、H−(CH−CH(C)−CO−O−(CH−O−(CH−O−(CH−Hを製造した。
【0174】
〔合成例49:H−(CH−CH(C)−CO−O−(CH−O−(CH−O−(CH−H(略称:EtHxOO6−3−6)の製造〕
合成例12で得られたH−(CH−O−(CH−O−(CH−OH(15.3g)と、H(CHCH(C)COOH(7.8g)とを、酸触媒HSO(0.3ml)と共に、80℃、6時間30分減圧下で反応させることにより、H−(CH−CH(C)−CO−O−(CH−O−(CH−O−(CH−Hを製造した。
【0175】
〔合成例50:H−(CH−CH(C)−CO−O−(CH−O−(CH−O−(CH−H(略称:EtHxOO6−4−6)の製造〕
合成例13で得られたH−(CH−O−(CH−O−(CH−OH(略称:6−4−6OH、13.6g)と、H−(CH−CH(C)−COOH(8.2g)とを、酸触媒HSO(0.2ml)と共に、減圧下80℃、4時間減圧下で反応させることにより、H−(CH−CH(C)−CO−O−(CH−O−(CH−O−(CH−Hを製造した。
【0176】
<分岐対称ジエステル>
〔合成例51:H−(CH11−CO−O−CH−C(CH−CH−O−CO−(CH11−H(略称:(12OO)PrMe2)の製造〕
H−(CH11−CO−O−H(7.6g)と、H−O−CH−CH(CH−CH−O−H(8.4g)とを、酸触媒HSO(0.18ml)と共に、80℃、4時間減圧下で反応させることにより、H−(CH11−CO−O−CH−C(CH−CH−O−CO−(CH11−Hを製造した。
【0177】
〔合成例52:H−(CH−O−(CH−CO−O−CH−C(CH−CH−O−CO−(CH−O−(CH−H(略称:(6−6OO)PrMe2)の製造〕
合成例21で得られたH−(CH−O−(CH−CO−O−H(8.7g)と、H−O−CH−CH(CH−CH−O−H(1.7g)とを、酸触媒HSO(0.2ml)と共に、80℃、4時間減圧下で反応させることにより、H−(CH−O−(CH−CO−O−CH−C(CH−CH−O−CO−(CH−O−(CH−Hを製造した。
【0178】
〔合成例53:H−(CH−O−(CH−O−(CH−CO−O−CH−CH(CH−CH−O−OC−(CH−O−(CH−O−(CH−H(略称:(6−2−4OO)PrMe2)の製造〕
合成例22で得られたH−(CH−O−(CH−O−(CH−CO−O−H(10g)と、H−O−CH−CH(CH−CH−O−H(1.5g)とを、酸触媒HSO(0.08ml)と共に、80℃、4時間減圧下で反応させることにより、H−(CH−O−(CH−O−(CH−CO−O−CH−CH(CH−CH−O−OC−(CH−O−(CH−O−(CH−Hを製造した。
【0179】
<分岐トリエステル>
〔合成例54:H−(CH−O−(CH−O−(CH−CO−O−CH−C(−CH−O−OC−(CH−O−(CH−O−(CH−H)−(CH−H(略称:(6−2−4OO)PrEt)の製造〕
合成例22で得られたH−(CH−O−(CH−O−(CH−CO−O−H(14.8g)と、トリメチロールプロパン(1.5g)とを、酸触媒HSO(0.33ml)と共に、80℃、4時間減圧下で反応させることにより、H−(CH−O−(CH−O−(CH−CO−O−CH−C(−CH−O−OC−(CH−O−(CH−O−(CH−H)−(CH−Hを製造した。
【0180】
得られた化合物は、赤外スペクトル、ガスクロマトグラフィーなどにより同定した。
【0181】
(物性の測定)
得られた化合物の融点およびガラス転移点は、DSC(島津社製、DSC−50)を用いて測定した。
【0182】
結果を表1および2に示す。
【0183】
【表1】

【0184】
【表2】

【0185】
表1および2中に示した「融点低下(℃)」の欄は、対象化合物の融点と比較対照化合物の融点とを比較し、比較対照化合物の融点に対して、対象化合物の融点がどの程度低下したかを示している。具体的には、例えば、比較合成例2の化合物であれば、対象化合物としての比較合成例2の化合物の融点から、比較対照化合物としての比較合成例1の化合物(3(O12))の融点を減じた値を示している。なお、融点の代わりに、対象化合物のガラス転移点と比較対照の化合物の融点とを比較した場合は、「融点低下(℃)」の欄に括弧書きで数値を記入した。
【0186】
表1および2に示したように、分岐ジエーテル系オキサアルキル化合物である合成例25〜38の化合物は、直鎖ジエーテル系オキサアルキル化合物である比較合成例1の化合物と比較して、融点またはガラス転移点が顕著に低下していた。この結果は、直鎖ジエーテル系オキサアルキル化合物に側鎖を導入することによって、融点またはガラス転移点を顕著に低下させることができることを示している。
【0187】
また、分岐モノエステル系オキサアルキル化合物である合成例45〜50の化合物は、直鎖モノエステル系オキサアルキル化合物である比較合成例7の化合物と比較して、融点またはガラス転移点が顕著に低下していた。この結果は、直鎖モノエステル系オキサアルキル化合物に側鎖を導入することによって、融点またはガラス転移点を顕著に低下させることができることを示している。
【0188】
また、分岐モノエーテル系オキサアルキル化合物の中でも、オキサアルキル鎖中にエーテル酸素原子を2つ有している合成例40、およびオキサアルキル鎖中にエーテル酸素原子を3つ有している合成例41の化合物は、オキサアルキル鎖中にエーテル酸素原子を1つ有している合成例39の化合物と比較して、融点が顕著に低下していた。さらに、合成例41の化合物は、合成例40の化合物と比較して、融点が顕著に低下していた。
【0189】
同様に、分岐ジエステル系オキサアルキル化合物の中でも、オキサアルキル鎖中にエーテル酸素原子を2つ有している合成例52、およびオキサアルキル鎖中にエーテル酸素原子を4つ有している合成例53の化合物は、オキサアルキル鎖中にエーテル酸素原子を有していない合成例51の化合物と比較して、ガラス転移点が顕著に低下していた。さらに、合成例53の化合物は、合成例52の化合物と比較して、ガラス転移点が顕著に低下していた。
【0190】
同様に、分岐モノエステル系オキサアルキル化合物の中でも、オキサアルキル鎖中にエーテル酸素原子を3つ有している合成例42および合成例44の化合物は、オキサアルキル鎖中にエーテル酸素原子を1つ有している合成例43の化合物と比較して、融点が顕著に低下していた。
【0191】
これらの結果は、オキサアルキル鎖中のエーテル酸素原子の数を増加させると、融点を顕著に低下させることができることを示している。
【0192】
また、オキサアルキル鎖中にエーテル酸素原子を3つ有している分岐モノエステル系オキサアルキル化合物の中でも、合成例42の化合物は、合成例44の化合物と比較して、ガラス転移点が顕著に低下していた。この結果は、オキサアルキル鎖の鎖長を長くすると、融点またはガラス転移点を顕著に低下させることができることを示している。
【0193】
また、分岐ジエーテル系オキサアルキル化合物の中でも、側鎖としてのメチル基が2つ導入されている合成例30の化合物は、オキサアルキル鎖が同じであるが、側鎖としてのメチル基が1つ導入されている点で異なる合成例25の化合物と比較して、融点が顕著に低下していた。同様に、側鎖としてのメチル基が2つ導入されている合成例30〜32、34、36の化合物は、オキサアルキル鎖が同じであるが、側鎖としてのメチル基が1つ導入されている点で異なる合成例25〜29の化合物とそれぞれ比較して、融点またはガラス転移点が顕著に低下していた。この結果は、オキサアルキル鎖が同じである場合は、導入する側鎖の数を増加させると、融点またはガラス転移点を顕著に低下させることができることを示している。
【0194】
さらに、側鎖としてのエチル基が2つ導入されている合成例38の化合物は、オキサアルキル鎖および側鎖の数が同じであるが、側鎖がメチル基である点で異なる合成例34の化合物と比較して、ガラス転移点が顕著に低下していた。この結果は、オキサアルキル鎖および側鎖の数が同じである場合は、導入する側鎖の炭素原子数を増加させると、融点またはガラス転移点を顕著に低下させることができることを示している。
【0195】
〔実施例2〕
実施例1で合成した化合物を代表して、合成例47、49および50の化合物の物性を測定した。
【0196】
物性を測定した合成例47、49および50の化合物の構造を、図1に示した。
【0197】
(物性の測定)
化合物の融点およびガラス転移点は、DSC(島津社製、DSC−50)を用いて測定した。
【0198】
40℃動粘度および100℃動粘度は、JIS K 2283に準じ、キャノン−フェンスケ粘度計を用いて測定した。
【0199】
絶対粘度は、平板回転式トルク計(TAインスツルメント社製、ARES−RDAW/FCO)を用いて測定した。
【0200】
粘度指数は、JIS K 2283に準じて測定した。
【0201】
融点、ガラス転移点、動粘度、絶対粘度、および粘度指数の比較対照として、従来公知の潤滑剤であるDOS(ジオクチルセバケート、豊国製油株式会社製)およびEDE(2−エチルへキシルオキシカルボニルプロピルエーテル、株式会社MORESCO製)を用いた。
【0202】
結果を表3に示す。
【0203】
【表3】

【0204】
合成例47、49および50の化合物は、DOSまたはEDEと比較して、動粘度が顕著に低下していた。この結果は、合成例47、49および50の化合物が、DOSまたはEDEと比較して、非常に高い流動性を有していることを示している。また、合成例47、49および50の化合物は、高い粘度指数を有していた。特に、サンプルAおよびCでは、DOSまたはEDEと比較して、粘度指数に明確な向上が認められた。
【0205】
また、オキサアルキル鎖の分子中に含まれているメチレン基(−CH−)の数が、奇数個である合成例47および49の化合物は、メチレン基の数が偶数個である合成例50の化合物と比較して、ガラス転移点がより低下することが明らかになった。
【0206】
図4は、合成例47、49および50の化合物の絶対粘度を測定した結果を表す図である。絶対粘度の比較対象として、DOSおよびEDEを用いた。
【0207】
図4に示すように、合成例47、49および50の化合物は、いずれも、DOSまたはEDEと比較し、優れた低温流動性を有していることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0208】
本発明によれば、潤滑剤の融点またはガラス転移点および動粘度を低下させることができる。動粘度が低い潤滑剤は、自動車、家電、工業用機械等のさらなる低燃費化、低消費電力化をもたらすことが期待される。このため、本発明は、潤滑剤を利用する機械産業、電子部品産業等の広範な産業において利用可能性がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子中に、少なくとも1つの側鎖を有しているオキサアルキル鎖を有していることを特徴とする、化合物。
【請求項2】
下記一般式(1)で表される構造単位を、分子中に少なくとも1以上有しているオキサアルキル鎖を有していることを特徴とする、化合物:
【化1】

(一般式(1)中、mは1以上の整数であり、nは0以上の整数であり、YおよびZは
【化2】

(R〜Rは、それぞれ独立して水素原子または置換基である。)
であり、R〜Rのうち少なくとも1つは、置換基である。)。
【請求項3】
上記側鎖は、アルキル基、オキサアルキル基、ハロゲン基およびシリコーン基からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
上記置換基は、アルキル基、オキサアルキル基、ハロゲン基およびシリコーン基からなる群から選択されることを特徴とする、請求項2に記載の化合物。
【請求項5】
上記オキサアルキル鎖は、分子中に、少なくとも1つのエステル結合をさらに有していることを特徴とする、請求項1〜4の何れか1項に記載の化合物。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1項に記載の化合物を含有していることを特徴とする、潤滑剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−106948(P2012−106948A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−256887(P2010−256887)
【出願日】平成22年11月17日(2010.11.17)
【出願人】(504136568)国立大学法人広島大学 (924)
【出願人】(000146180)株式会社MORESCO (20)
【Fターム(参考)】