説明

分岐付ケーブル

【課題】耐火性能の劣化防止を図ることが可能な分岐付ケーブルを提供する。
【解決手段】分岐付ケーブル21は、幹線ケーブル22及び分岐線ケーブル24の各被覆の一部を除去して導体同士を接続した後、この導体接続部分34の外側に耐火層36及び絶縁体層37を有する導体保護部35を形成し、さらに導体保護部35よりも外側に外装保護部39を形成してなっている。導体保護部35は、耐火層36が耐火テープの巻き付けにより形成され、且つ絶縁体層37がガラス系テープの巻き付けにより形成されている。外装保護部39は、ガラス系テープ及び耐火テープの巻き付けにより形成される保護層40を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビル、集合住宅、工場、学校、トンネル等の非常用回路の幹線ケーブルとして使用される分岐付ケーブル(耐火回路用ブランチケーブル)に関する。
【背景技術】
【0002】
分岐付ケーブルは、幹線ケーブルと分岐線ケーブルとの接続処理を予め工場で行う一連長のケーブルであって、現場作業の省力化、工期の短縮化と配線工事の高信頼性とを実現することができるようになっている(例えば下記特許文献1が参考になる)。
【0003】
図3において、分岐付ケーブル1は、複数の幹線ケーブル2を撚り合わせてなる幹線3と、複数の分岐線ケーブル4を撚り合わせてなる分岐線5とを備えている。幹線3及び分岐線5は、幹線3の中間において接続されて分岐接続部6を形成するようになっている。
【0004】
幹線ケーブル2における引用符号7は幹線側導体、引用符号8は幹線側絶縁体を示している(幹線側導体7及び幹線側絶縁体8の間には図示しないケーブル耐火層が設けられている)。一方、分岐線ケーブル4における引用符号9は分岐側導体、引用符号10は分岐側絶縁体を示している(分岐側導体9及び分岐側絶縁体10の間にも図示しないケーブル耐火層が設けられている)。
【0005】
分岐接続部6では、圧縮コネクタ11によって、幹線側導体7と分岐側導体9とが接続されている(導体接続部分が形成される)。この導体接続部分は、耐火層12にて覆われている。耐火層12には、絶縁層13が設けられている。分岐接続部6は、耐火層12及び絶縁層13の外側に整形層14を有している。この整形層14の外側には、樹脂モールド15が施されている。耐火層12は、耐火テープ(マイカ複合テープ)の巻き付けにより形成されている。絶縁層13は、ビニルテープの巻き付けにより形成されている。整形層14は、自己融着テープの巻き付けにより形成されている。
【特許文献1】特開2002−42563号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図3の構造にあっては、仮に火災等により燃焼した場合、次のような問題点が懸念される。すなわち、樹脂モールド15及び整形層14が溶けて、例えばケーブル支持具(図示省略)等の外圧が耐火層12、絶縁層13、幹線側絶縁体8、分岐側絶縁体10に直接加わると、これによって傷付きが生じ、耐火性能の劣化に繋がる可能性があり、これが懸念される。
【0007】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたもので、耐火性能の劣化防止を図ることが可能な分岐付ケーブルを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた請求項1記載の本発明の分岐付ケーブルは、幹線ケーブル及び分岐線ケーブルの各被覆の一部を除去して導体同士を接続した後、この導体接続部分の外側に耐火層及び絶縁体層を有する導体保護部を形成し、さらに該導体保護部よりも外側で被覆除去部分を覆うような外装保護部を形成してなる分岐付ケーブルにおいて、前記導体保護部は、前記耐火層が耐火テープの巻き付けにより形成され、且つ前記絶縁体層がガラス系テープの巻き付けにより形成され、前記外装保護部は、ガラス系テープ及び耐火テープの巻き付けにより形成される保護層を有することを特徴としている。
【0009】
このような特徴を有する本発明によれば、導体保護部は、耐火テープにより形成される耐火層とガラス系テープにより形成される絶縁体層との2層構造となる。一方、外装保護部は、ガラス系テープ及び耐火テープにより形成される保護層を有し、この保護層は2種類のテープによる構成及び構造になる。
【0010】
請求項2記載の本発明の分岐付ケーブルは、請求項1に記載の分岐付ケーブルにおいて、前記保護層は、第1層目がガラス系テープの巻き付けにより形成され、第2層目が耐火テープの巻き付けにより形成され、第3層目がガラス系テープの巻き付けにより形成されることを特徴としている。
【0011】
このような特徴を有する本発明によれば、外装保護部は、耐火テープの層をガラス系テープの層で挟み込んでなる層構造の保護層を有する。
【0012】
請求項3記載の本発明の分岐付ケーブルは、請求項1又は請求項2に記載の分岐付ケーブルにおいて、前記保護層は、この外側に樹脂モールド成形するための整形層としての機能も有することを特徴としている。
【0013】
このような特徴を有する本発明によれば、外装保護部は、保護層と樹脂モールドとを有する構成となる。保護層は、樹脂モールドを成形する際の射出成形(樹脂モールド成形)をし易くするために整形される。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載された本発明によれば、先ず導体保護部における効果として、耐火層は、熱及び炎からの保護をすることができる。また、絶縁体層は、ガラス系テープを使用することにより、このガラス系テープが熱によって溶けず、結果、確実に絶縁を維持することができる。絶縁体層は、ガラス系テープが熱によって硬化し、これにより外圧を受けても内側の保護をすることができる。次に、外装保護部における効果として、保護層は、2種類のテープによる構成及び構造であることから、熱及び炎からの保護をすることができるとともに、外圧からの保護もすることができる。従って、本発明によれば、耐火性能の劣化防止を図ることができるという効果を奏する。
【0015】
請求項2に記載された本発明によれば、熱及び炎からの保護と、外圧からの保護とをより良くすることができるという効果を奏する。
【0016】
請求項3に記載された本発明によれば、樹脂モールドを成形する際の射出成形をし易くすることができるという効果を奏する。また、ケーブル形状を安定させることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら説明する。図1は本発明の分岐付ケーブルの一実施の形態を示す図である。また、図2は分岐接続部の処理構造を模式的に示す図であり、(a)は導体接続部分の処理構造の図、(b)は被覆除去部分(外装保護部)の処理構造の図である。
【0018】
図1において、引用符号21は本発明の分岐付ケーブル(耐火回路用ブランチケーブル)を示している。分岐付ケーブル21は、ビル、集合住宅、工場、学校、トンネル等の非常用回路の幹線ケーブルとして使用されるものとなっている。分岐付ケーブル21は、複数の幹線ケーブル22を撚り合わせてなる幹線23と、複数の分岐線ケーブル24を撚り合わせてなる分岐線25とを備えて構成されている。幹線23及び分岐線25は、幹線23の中間において被覆の一部を除去した状態で接続されて、分岐接続部26を形成するようになっている。
【0019】
幹線ケーブル22における引用符号27は幹線側導体、引用符号28はケーブル耐火層、引用符号29は幹線側絶縁体を示している。一方、分岐線ケーブル24も同様の構成であって、引用符号30は分岐側導体、引用符号31はケーブル耐火層、引用符号32は分岐側絶縁体を示している。
【0020】
図1及び図2において、分岐接続部26では、圧縮コネクタ33によって、幹線側導体27と分岐側導体30とが接続されて、導体接続部分34が形成されている。この導体接続部分34は、本発明の特徴の一つとなる導体保護部35によって保護されている。導体保護部35は、導体接続部分34の外側に設けられる部分であって、耐火層36及び絶縁体層37を有する構成及び構造になっている。
【0021】
耐火層36は、耐火テープの巻き付けにより形成されている。具体的には、本形態の場合、ポリエチレンフィルムに集成マイカを接着してなる、両面フィルムマイカテープを1/2重ね4回巻きして形成されている。耐火層36は、図2(a)の寸法Aで示す如く、ケーブル耐火層28と幹線側絶縁体29との境界、及びケーブル耐火層31と分岐側絶縁体32との境界までの長さとなるように形成されている(長さは一例であるものとする)。尚、テープ幅は圧縮コネクタ33のサイズに応じて設定されるものとする。
【0022】
絶縁体層37は、ガラス系テープの巻き付けによって耐火層36の上に形成されている(従来のようなビニールテープでなく、ガラス系テープが用いられている)。具体的には、本形態の場合、ガラスクロスにシリコーン系感圧性接着剤を塗布してなる、ガラスクロス粘着テープ(例えば日東電工(株)製のNo.188UL)を1/2重ね2回巻きして形成されている。上記ガラスクロス粘着テープは、耐熱性・機械的強度を有している。絶縁体層37は、図2(a)の寸法B、B′で示す如く、幹線側絶縁体29及び分岐側絶縁体32に被る(10〜20mm程度)ように形成されている。絶縁体層37は、熱によって硬化するものが用いられている。
【0023】
分岐接続部26は、導体保護部35の外側の被覆除去部分38を覆って保護するような外装保護部39を有している。この外装保護部39は、本発明の特徴の一つとなる保護層40と、保護層40の外側に樹脂モールド成形される樹脂モールド41とを備えて構成されている。
【0024】
保護層40は、上記ガラス系テープ及び耐火テープの巻き付けにより形成されている(従来のような自己融着テープでなく、ガラス系テープ及び耐火テープの2種類のテープが用いられている)。具体的には、耐火テープの層をガラス系テープの層で挟み込んでなる3層構造の部分となるように形成されている。
【0025】
本形態においては、図2(b)で示す如く、第1層目保護層42がガラス系テープの巻き付けにより形成(ガラスクロス粘着テープを1/2重ね2回巻きして形成)、また、第2層目保護層43が耐火テープの巻き付けにより形成(両面フィルムマイカテープを1/2重ね2回巻きして形成)、さらに、第3層目保護層44がガラス系テープの巻き付けにより形成(ガラスクロス粘着テープを1/2重ね2回巻きして形成)されている。
【0026】
保護層40は、図2(b)の寸法C、C′で示す如く、幹線23及び分岐線25に被る(5mm程度かかるように巻く。本形態においては、保護層40の全長を230mmにするようにも巻く)ように形成されている。
【0027】
保護層40は、この外側に樹脂モールド成形をするための整形層として機能するようにも形成されている。保護層40は、樹脂モールド41を成形する際の射出成形をし易くするために整形されている。
【0028】
上記構成及び構造において、導体保護部35における耐火層36は、耐火テープの巻き付けにより形成されることから、熱及び炎からの保護をすることができる。また、導体保護部35における絶縁体層37は、ガラス系テープの巻き付けにより形成されることから、熱によってガラス系テープは溶けず、結果、確実に絶縁を維持することができる。ガラス系テープにより形成される絶縁体層37は、熱によって硬化することから、外圧を受けても内側の保護をすることができる。
【0029】
外装保護部39における保護層40は、耐火テープ及びガラス系テープの2種類のテープによって構成されることから、熱及び炎からの保護をすることができるのは勿論のこと、外圧からの保護もすることができる。
【0030】
以上、本発明によれば、耐火性能の劣化防止を図ることができるという効果を奏する。本発明は、従来と比べて耐火性能を格段に向上させることができるという効果を奏する。
【0031】
本発明は本発明の主旨を変えない範囲で種々変更実施可能なことは勿論である。尚、本発明の特徴的な部分は、高圧耐火ケーブルの端末同士を接続する部分にも適用することができるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の分岐付ケーブルの一実施の形態を示す構成図である。
【図2】分岐接続部の処理構造を模式的に示す図であり、(a)は導体接続部分の処理構造の図、(b)は被覆除去部分(外装保護部)の処理構造の図である。
【図3】従来例の分岐付ケーブルの構成図である。
【符号の説明】
【0033】
21 分岐付ケーブル
22 幹線ケーブル
23 幹線
24 分岐線ケーブル
25 分岐線
26 分岐接続部
27 幹線側導体
28 ケーブル耐火層
29 幹線側絶縁体
30 分岐側導体
31 ケーブル耐火層
32 分岐側絶縁体
33 圧縮コネクタ
34 導体接続部分
35 導体保護部
36 耐火層
37 絶縁体層
38 被覆除去部分
39 外装保護部
40 保護層
41 樹脂モールド
42 第1層目保護層
43 第2層目保護層
44 第3層目保護層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
幹線ケーブル及び分岐線ケーブルの各被覆の一部を除去して導体同士を接続した後、この導体接続部分の外側に耐火層及び絶縁体層を有する導体保護部を形成し、さらに該導体保護部よりも外側で被覆除去部分を覆うような外装保護部を形成してなる分岐付ケーブルにおいて、
前記導体保護部は、前記耐火層が耐火テープの巻き付けにより形成され、且つ前記絶縁体層がガラス系テープの巻き付けにより形成され、前記外装保護部は、ガラス系テープ及び耐火テープの巻き付けにより形成される保護層を有する
ことを特徴とする分岐付ケーブル。
【請求項2】
請求項1に記載の分岐付ケーブルにおいて、
前記保護層は、第1層目がガラス系テープの巻き付けにより形成され、第2層目が耐火テープの巻き付けにより形成され、第3層目がガラス系テープの巻き付けにより形成される
ことを特徴とする分岐付ケーブル。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の分岐付ケーブルにおいて、
前記保護層は、この外側に樹脂モールド成形するための整形層としての機能も有する
ことを特徴とする分岐付ケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−86837(P2010−86837A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−255943(P2008−255943)
【出願日】平成20年10月1日(2008.10.1)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】