説明

分岐器電気融雪器遠隔制御システムおよび分岐器電気融雪器遠隔制御方法

【課題】高い制御能力を有し、設置費用が安価で済み、気象や季節に応じて電気融雪器の最適な制御を行うことができる分岐器電気融雪器遠隔制御システムを提供する。
【解決手段】このシステムは、分岐器に設置された電気融雪器28と、分岐器付近に設置され、電気融雪器28のオン/オフをPLCで制御する電気融雪器制御盤20と、電気融雪器制御盤20を遠隔制御する操作表示盤10とを有する。分岐器設置箇所の気象情報をインターネットで取得し、大雪警報などが出ている場合には電気融雪器28をオンとし、出ていない場合には分岐器付近の降雪センサー24で降雪の有無を検知する。降雪が有る場合は電気融雪器28をオン、無い場合には、冬期でないときは電気融雪器28をオフ、冬期であるときは入冬期、厳冬期および融冬期に分け、各期間毎に電気融雪器28をオンとするレール温度およびオフとするレール温度を設定して電気融雪器28をオン/オフする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、分岐器電気融雪器遠隔制御システムおよび分岐器電気融雪器遠隔制御方法に関し、特に、降雪量が多い地域の鉄道線路の分岐器(ポイント)に設置される電気融雪器の制御に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
例えば北海道のような降雪量が多い地域の鉄道線路においては、雪の影響により分岐器の不転換などの障害が発生するのを防止するために、分岐器の基本レールの外側側面および床板に複数の電気融雪器を設置し、これらの電気融雪器に通電して加熱することにより、分岐器、取り分け基本レールとトングレールとの間に入った雪氷を融解するようにしている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
駅員が常駐する駅の構内に設置される電気融雪器については、駅員が降雪状態や外気温度を確認し、スイッチにより手動で電気融雪器のオン/オフを制御している。しかしながら、基本レールとトングレールとの間に入った雪氷の融解が不十分であったり、電気融雪器のスイッチを入れ忘れたりすることによる分岐器の不転換が懸念されるため、実際には電気融雪器が常時オンとなったままになることが多い。このため、電気融雪器を手動で制御することは、必要以上にレールを加熱することになり、電気を無駄に消費する結果となっていた。
【0004】
この問題を解消するために、制御リレーにより電気融雪器の自動制御を行う全自動電気融雪器制御盤が開発され、北海道内の鉄道路線の多くの駅において既に実用化されている。この全自動電気融雪器制御盤によれば、電気融雪器を手動で制御する場合に比べて使用電気量の大幅な低減を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−311101号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の全自動電気融雪器制御盤は、多数の制御リレーを用いるため、設置費用が高額になることから、全ての駅の分岐器に設置される電気融雪器の制御に用いることは費用の点で困難であった。また、この全自動電気融雪器制御盤では、降雪センサーおよび外気温度センサーの条件設定により電気融雪器の制御を行っていることから、気象の変化などに応じてきめ細かく制御を行うことができず、電気融雪器の最適な制御を行うことができなかった。
【0007】
そこで、この発明が解決しようとする課題は、制御リレーを用いて制御を行う上述の全自動電気融雪器制御盤を用いる電気融雪器制御システムと同等またはそれ以上の高い制御能力を有し、しかも設置費用が安価で済み、さらに気象や季節に応じて電気融雪器の最適な制御を行うことができる分岐器電気融雪器遠隔制御システムおよび分岐器電気融雪器遠隔制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、この発明は、
分岐器に設置された電気融雪器と、
上記分岐器の付近に設置され、上記電気融雪器のオン/オフをプログラマブルロジックコントローラにより制御する電気融雪器制御盤と、
施設内に設置され、上記電気融雪器制御盤を遠隔制御する操作表示盤とを有し、
上記操作表示盤において、上記分岐器の設置箇所を含む地域の気象情報をインターネットにより取得し、大雪警報または大雪注意報が出ている場合には、上記電気融雪器をオンとし、
大雪警報または大雪注意報が出ていない場合には、上記分岐器の付近に設置された降雪センサーにより降雪の有無を検知し、降雪が有る場合は上記電気融雪器をオンとし、
降雪が無い場合には、冬期でないときは上記電気融雪器をオフとし、冬期の場合には、入冬期、厳冬期および融冬期に分け、各期間毎に上記電気融雪器をオンとするレール温度およびオフとするレール温度を設定して上記電気融雪器をオン/オフすることを特徴とする分岐器電気融雪器遠隔制御システムである。
【0009】
また、この発明は、
分岐器に設置された電気融雪器と、
上記分岐器の付近に設置され、上記電気融雪器のオン/オフをプログラマブルロジックコントローラにより制御する電気融雪器制御盤と、
施設内に設置され、上記電気融雪器制御盤を遠隔制御する操作表示盤とを用いる電気融雪器遠隔制御方法であって、
上記操作表示盤において、上記分岐器の設置箇所を含む地域の気象情報をインターネットにより取得し、大雪警報または大雪注意報が出ている場合には、上記電気融雪器をオンとし、
大雪警報または大雪注意報が出ていない場合には、上記分岐器の付近に設置された降雪センサーにより降雪の有無を検知し、降雪が有る場合は上記電気融雪器をオンとし、
降雪が無い場合には、冬期でないときは上記電気融雪器をオフとし、冬期の場合には、入冬期、厳冬期および融冬期に分け、各期間毎に上記電気融雪器をオンとするレール温度およびオフとするレール温度を設定して上記電気融雪器をオン/オフすることを特徴とする分岐器電気融雪器遠隔制御方法である。
【0010】
上記の分岐器電気融雪器遠隔制御システムあるいは分岐器電気融雪器遠隔制御方法は、好適には、レール上を走行する車両の床下に付着した雪氷が分岐器に落下したことを検知する落雪センサーをさらに有し、あるいは用い、必要に応じてさらに、分岐器のレールに設置された増設電気融雪器をさらに有し、あるいは用いる。落雪センサーにより分岐器への雪氷の落下が検知されたとき、この増設電気融雪器をオンとする。こうすることで、既に設置された電気融雪器とこの増設電気融雪器とにより、レールを急速に加熱することができ、分岐器に落下した雪氷を迅速に融解することができる。この落雪センサーとしては、各種のものを用いることができ、必要に応じて選ばれる。落雪センサーとしては、具体的には、例えば、分岐器の付近に設置され、分岐器を監視する監視カメラ、分岐器の道床バラスト上に設置された振動センサーおよび分岐器の道床バラスト上に設置された荷重センサーのうちの少なくとも一つが用いられる。荷重センサーとしては、例えばマットスイッチなどを用いることができる。入冬期、厳冬期および融冬期の各期間毎の電気融雪器をオンとするレール温度およびオフとするレール温度は、地域などに応じて適宜選ばれる。
【0011】
操作表示盤が設置される施設は、典型的には、駅の輸送本部がある建物であるが、これに限定されるものではない。
【0012】
上記の分岐器電気融雪器遠隔制御システムあるいは分岐器電気融雪器遠隔制御方法は、典型的には、分岐器の付近に設置された外気温度センサーをさらに有し、あるいは用いる。降雪も分岐器への雪氷の落下も無い場合において、この外気温度センサーにより検知された外気温度が所定の温度以上のときは、電気融雪器をオフとする。これは、外気温度が所定の温度以上のときは、電気融雪器を用いないでも、分岐器に残った雪氷が自然に融解するためである。
【0013】
好適には、操作表示盤により取得される列車運行情報から分岐器を通過する列車が一定時間無いかどうかを調べ、分岐器を通過する列車が一定時間内に有る場合には、冬期を入冬期、厳冬期および融冬期に分け、各期間毎に電気融雪器をオンとするレール温度およびオフとするレール温度を設定して電気融雪器をオン/オフする。一方、分岐器を通過する列車が一定時間無い場合には、通過列車の通過時刻より所定時間前の時刻に、冬期を入冬期、厳冬期および融冬期に分け、各期間毎に電気融雪器をオンとするレール温度およびオフとするレール温度を設定して電気融雪器をオン/オフする。入冬期、厳冬期および融冬期の各期間毎の電気融雪器をオンとするレール温度およびオフとするレール温度は、地域などに応じて適宜選ばれる。
【0014】
電気融雪器制御盤では、プログラマブルロジックコントローラ(Programmable Logic Controller,PLC)を用いて制御を行うが、こうすることで、制御リレーを用いて構成する場合に比べて、電気融雪器制御盤を極めて安価に構成することができる。また、駅操作表示盤と電気融雪器制御盤との間の通信は、各種の方法により行うことができ、必要に応じて選ばれるが、好適には、無線LAN(Local Area Network) により行う。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、電気融雪器のオン/オフをプログラマブルロジックコントローラにより制御する電気融雪器制御盤は、制御リレーを用いて制御を行う従来の全自動電気融雪器制御盤と同等またはそれ以上の高い制御能力を有し、しかも従来の全自動電気融雪器制御盤に比べて極めて安価に構成することができる。このため、分岐器電気融雪器遠隔制御システムの設置費用が安価で済む。また、操作表示盤により取得される気象情報を利用して電気融雪器のオン/オフを制御するとともに、入冬期、厳冬期および融冬期の各期間毎に電気融雪器をオンとするレール温度およびオフとするレール温度を設定して電気融雪器をオン/オフするようにしているので、気象や季節に応じて電気融雪器の最適な制御を行うことができる。また、列車運行情報を利用して電気融雪器をオン/オフすることにより、不要なときに電気融雪器をオンとすることがなくなり、大幅な節電効果を得ることができる。また、分岐器への降雪の程度によっては除雪要員が除雪作業のために分岐器に立ち入る必要があり、これが落雪センサーによる誤検知につながるおそれがあるが、列車運行情報を利用して電気融雪器をオン/オフすることにより、この問題がなくなる。さらに、落雪センサーを用いていることにより、分岐器を通過する列車からの落雪により分岐器に大量の雪塊が発生しても、これをすぐ検知することができ、電気融雪器、必要に応じてさらに増設電気融雪器を用いて雪塊を短時間で融解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明の第1の実施の形態による分岐器電気融雪器遠隔制御システムを示すブロック図である。
【図2】この発明の第1の実施の形態による分岐器電気融雪器遠隔制御システムの具体的な構成を示す略線図である。
【図3】この発明の第1の実施の形態による分岐器電気融雪器遠隔制御システムにおいて用いられるレールヒーター、床板ヒーターおよび床板温度センサーの例を示す略線図である。
【図4】この発明の第1の実施の形態による分岐器電気融雪器遠隔制御システムの自動制御フローを示すフローチャートである。
【図5】この発明の第1の実施の形態による分岐器電気融雪器遠隔制御システムにおいて落雪センサーとして用いられる監視カメラによる落雪検知方法を説明するための略線図である。
【図6】この発明の第1の実施の形態による分岐器電気融雪器遠隔制御システムの操作表示盤の表示画面の一例を示す略線図である。
【図7】この発明の第1の実施の形態による分岐器電気融雪器遠隔制御システムの操作表示盤に表示されるメイン画面の一例を示す略線図である。
【図8】この発明の第1の実施の形態による分岐器電気融雪器遠隔制御システムの操作表示盤に表示されるメイン画面に休止中と表示された例を示す略線図である。
【図9】この発明の第1の実施の形態による分岐器電気融雪器遠隔制御システムの操作表示盤に表示される運転モード切換画面の一例を示す略線図である。
【図10】この発明の第1の実施の形態による分岐器電気融雪器遠隔制御システムの操作表示盤に表示される電圧電流表示画面の一例を示す略線図である。
【図11】この発明の第1の実施の形態による分岐器電気融雪器遠隔制御システムの操作表示盤に表示される設定一覧表示画面の一例を示す略線図である。
【図12】この発明の第1の実施の形態による分岐器電気融雪器遠隔制御システムの操作表示盤に表示される期間設定画面の一例を示す略線図である。
【図13】この発明の第1の実施の形態による分岐器電気融雪器遠隔制御システムの操作表示盤に表示される外気温度設定画面の一例を示す略線図である。
【図14】この発明の第1の実施の形態による分岐器電気融雪器遠隔制御システムの操作表示盤に表示されるレール温度設定画面の一例を示す略線図である。
【図15】この発明の第1の実施の形態による分岐器電気融雪器遠隔制御システムの操作表示盤に表示される故障表示画面の一例を示す略線図である。
【図16】この発明の第1の実施の形態による分岐器電気融雪器遠隔制御システムの電気融雪器制御盤に表示される画面の一例を示す略線図である。
【図17】この発明の第1の実施の形態による分岐器電気融雪器遠隔制御システムの電気融雪器制御盤に表示される動作状態表示画面の一例を示す略線図である。
【図18】この発明の第1の実施の形態による分岐器電気融雪器遠隔制御システムの電気融雪器制御盤に表示される電圧電流表示画面の一例を示す略線図である。
【図19】この発明の第1の実施の形態による分岐器電気融雪器遠隔制御システムの電気融雪器制御盤に表示される期間設定画面の一例を示す略線図である。
【図20】この発明の第1の実施の形態による分岐器電気融雪器遠隔制御システムの電気融雪器制御盤に表示される外気温度連続運転設定画面の一例を示す略線図である。
【図21】この発明の第1の実施の形態による分岐器電気融雪器遠隔制御システムの電気融雪器制御盤に表示されるレール温度設定画面の一例を示す略線図である。
【図22】この発明の第1の実施の形態による分岐器電気融雪器遠隔制御システムの電気融雪器制御盤に表示される故障表示画面の一例を示す略線図である。
【図23】この発明の第1の実施の形態による分岐器電気融雪器遠隔制御システムの電気融雪器制御盤に表示される故障表示画面の他の例を示す略線図である。
【図24】この発明の第1の実施の形態による分岐器電気融雪器遠隔制御システムの操作表示盤10に表示される列車情報入力画面の一例を示す略線図である。
【図25】この発明の第1の実施の形態による分岐器電気融雪器遠隔制御システムの操作表示盤と電気融雪器制御盤との間の通信方法を説明するための略線図である。
【図26】この発明の第1の実施の形態による分岐器電気融雪器遠隔制御システムの設置例を説明するための略線図である。
【図27】この発明の第1の実施の形態による分岐器電気融雪器遠隔制御システムの設置例を説明するための略線図である。
【図28】無指向性アンテナと平面アンテナとの間の無線LANによる通信能力を説明するための略線図である。
【図29】この発明の第2の実施の形態による分岐器電気融雪器遠隔制御システムを説明するための略線図である。
【図30】この発明の第3の実施の形態による分岐器電気融雪器遠隔制御システムを説明するための略線図である。
【図31】この発明の第5の実施の形態による分岐器電気融雪器遠隔制御システムを説明するための略線図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、発明を実施するための形態(以下「実施の形態」という。)について説明する。
〈1.第1の実施の形態〉
図1は、第1の実施の形態による分岐器電気融雪器遠隔制御システムを示すブロック図である。
【0018】
図1に示すように、この分岐器電気融雪器遠隔制御システムは、所定の施設内、例えば駅の輸送本部がある建物内に設置される操作表示盤10および分岐器の付近に設置され、操作表示盤10により遠隔制御される電気融雪器制御盤20を有する。この場合、操作表示盤10と電気融雪器制御盤20との間の通信は、無線通信、例えば無線LANにより行われるようになっている。
【0019】
操作表示盤10は、パーソナルコンピュータなどのコンピュータ11および表示・操作のためのタッチパネルディスプレイ12を有する。操作表示盤10では、コンピュータ11がインターネットにより気象情報(降雪情報、大雪警報、大雪注意報など)を取得したり、運転指令本部から列車運行情報(Traffic Information Display,TID)を取得したり、各種設定変更を行ったりする。また、操作表示盤10から、監視カメラで撮影した分岐器の画像やメンテナンス情報などを配信する。タッチパネルディスプレイ12では、各分岐器に設置された電気融雪器のオン/オフの手動操作、運転モード切換操作、各種設定変更などを行うことができるようになっている。電気融雪器は、レールヒーターおよび床板ヒーターからなる。また、タッチパネルディスプレイ12には、電気融雪器制御盤20から、電気融雪器のオン/オフ表示、運転モード表示、外気温度表示、床板ヒーター温度表示、ヒーター電源の電圧・電流表示、故障通知の各信号などが送られるようになっている。
【0020】
電気融雪器制御盤20は、制御用のPLC21および表示・操作のためのタッチパネルディスプレイ22を有する。PLC21は、例えば、温度調節ユニット、出力ユニット(無接点)、入力ユニットなどを有する。この電気融雪器制御盤20には、落雪センサー23、降雪センサー24、外気温度センサー25、床板温度センサー26からの信号が送られるようになっている。また、電気融雪器制御盤20には、開閉器盤・分岐開閉器盤27からのヒーター電源電圧、ヒーター電源電流、床板ヒーター温度断線検知、投入確認の各信号が送られるようになっている。開閉器盤・分岐開閉器盤27では、電気融雪器制御盤20によりオン/オフ制御が行われるようになっている。開閉器盤・分岐開閉器盤27は、各電気融雪器28と接続されている。
【0021】
図2Aに分岐器電気融雪器遠隔制御システムの具体的な構成を示す。図2Aに示すように、この分岐器電気融雪器遠隔制御システムにおいては、線路51の所定箇所に分岐器52が設けられている。ここでは、一例として分岐器52が片開き分岐器である場合を示すが、これに限定されるものではない。分岐器52の範囲における基本レール51aの外側側面にレールヒーター28aが典型的には一定間隔で複数個設置されている。レールヒーター28aおよび後述の床板ヒーター28bからなる電気融雪器28は、端子箱53を介して分岐開閉器盤27aと接続されている。分岐開閉器盤27aは電磁式の開閉器盤27bと接続されている。分岐開閉器盤27aおよび開閉器盤27bの全体が図1に示す開閉器盤・分岐開閉器盤27に対応する。開閉器盤27bは電気融雪器制御盤20と接続されている。電気融雪器制御盤20には、降雪センサー24および外気温度センサー25が接続されている。また、基本レール51aおよびトングレール51bと道床バラスト54上に設けられた枕木55との間には床板ヒーター28bが設置されている。線路51は、レールヒーター28aとこの床板ヒーター28bとからなる電気融雪器28によって加熱される。床板に接して床板温度センサー26が取り付けられている。この床板温度センサー26により計測される温度がレール温度とみなされる。図2Bにこれらの床板ヒーター28bおよび床板温度センサー26の設置部位を拡大して示す。また、落雪センサー23として、分岐器52の部分の画像を取得する監視カメラ23aが設置されている。監視カメラ23aは、線路51の付近の地面に設置された電化柱59に取り付けられている。電気融雪器制御盤20には、これらの床板温度センサー26および監視カメラ23aも接続されている。
【0022】
図3Aにレールヒーター28aの一例を示す。図3Aに示すように、レールヒーター28aの本体の側面に端子が設けられ、これらの端子に給電線が接続されている。図3Bに床板ヒーター28bの一例を示す。図3Bに示すように、床板ヒーター28bの本体に給電線が接続されている。図3Cに床板温度センサー26の一例を示す。図3Cに示すように、センサー部26aに配線部26bが接続されている。
【0023】
次に、この分岐器電気融雪器遠隔制御システムの動作について説明する。図4はこの分岐器電気融雪器遠隔制御システムの自動制御フローの一例を示す。
【0024】
図4に示すように、分岐器電気融雪器遠隔制御システムの制御を開始すると、ステップS11において、インターネットにより気象情報を取得し、大雪警報または大雪注意報が出ている場合には、ステップS12において、電気融雪器28を強制的にオンとする。
【0025】
ステップS11において、大雪警報または大雪注意報が出ていない場合には、ステップS13において、降雪センサー24により各分岐器52を含む地域における降雪の有無を検知する。降雪有りと検知された場合には、電気融雪器28を強制的にオンとする。降雪設定は、例えば、7 Count/10分である。降雪センサー24は、基本的にはどのようなものであってもよく、必要に応じて選ばれるが、雨や霰による誤検知を防止することができることが望ましい。降雪センサー24としては、具体的には、例えば、雪の結晶による光の反射をカウントする光反射式降雪センサーや赤外線検知式降雪センサーなどが挙げられる。
【0026】
降雪無しと判定されたら、ステップS14において、制御期間内かどうか、具体的には冬期であるかないかを判定する。制御期間外、つまり冬期でない場合には、ステップS15において、電気融雪器28を強制的にオフとする。制御期間内、つまり冬期である場合には、冬期を入冬期、厳冬期および融冬期に分け、いずれの期間であるかを判定する。例えば、入冬期は10月1日〜12月9日、厳冬期は12月10日〜3月15日、融冬期は3月16日〜4月30日である。
【0027】
制御期間内である場合には、ステップS16において、落雪センサー23により、分岐器52への落雪の有無を検知する。具体的には、分岐器52への落雪の有無は次のようにして検知する。すなわち、監視カメラ23aにより、図5Aに示すように分岐器52を撮影する。基本レール51aとトングレール51bとの間の領域に落雪が起きていない状態では、監視カメラ23aの画像は、図5Bに示すような標準パターンを示す。これに対し、図5Cに示すように、基本レール51aとトングレール51bとの間の領域に落雪が起きると、監視カメラ23aの画像が標準パターンから急激に変化する。このため、この監視カメラ23aの画像の急激な変化があったときに、基本レール51aとトングレール51bとの間の領域における落雪が検知される。こうして落雪が検知されたら、電気融雪器28あるいはさらに増設電気融雪器をオンとして雪氷を迅速に融解する。こうすることにより、図5Dに示すように、分岐器52を支障なく転換することができる。
【0028】
落雪センサー23により分岐器52への落雪が検知された場合には、ステップS17において、電気融雪器28を強制的にオンとする。列車が走行している間に、雪が列車床下に張り付き大きな雪氷の塊となり、分岐器の通過時振動によりその雪塊を落とされ、分岐器不転換の原因となる「持ち込み雪」は、大量の雪氷が一瞬にして分岐器を覆うため、分岐器開口部周辺の電気融雪器28の直ぐ下に例えば細長い棒状のヒーターからなる電気融雪器を増設することにより、フルパワー機能とさせてもよいし、圧縮空気や温水などを組み合わせて併用してもよい。なお、必要に応じて、落雪センサー23により分岐器52への落雪が検知された場合、駅へ警報を鳴動して除雪要員に除雪作業にあたらせるようにしてもよい。
【0029】
落雪センサー23により分岐器52への落雪が検知されない場合には、ステップS18において、外気温度センサー25により、分岐器52を含む地域の外気温度を検知する。検知された外気温度が設定温度より高い場合には、ステップS15において、電気融雪器28を強制的にオフとする。設定温度は、分岐器52を含む地域などに応じて適宜選ばれるが、一例を挙げると5℃である。
【0030】
外気温度センサー25により検知された外気温度が設定温度以下である場合には、ステップS19において、操作表示盤10により運転指令本部から列車運行情報を取得し、分岐器52を通過する列車が一定時間無いかどうかを判定する。この一定時間、すなわち通過列車の空き時間は、例えば3時間とする。分岐器52を通過する列車が一定時間内に有る場合には、ステップ20において、入冬期、厳冬期および融冬期の各期間毎に電気融雪器28をオン/オフする電気融雪器温度(床板温度センサー26により計測される温度)、すなわちレール温度を設定する。一例を挙げると、入冬期にはレール温度が10℃以下のときに電気融雪器28をオン、20℃以上のときに電気融雪器28をオフとし、厳冬期にはレール温度が20℃以下のときに電気融雪器28をオン、40℃以上のときに電気融雪器28をオフとし、融冬期にはレール温度が10℃以下のときに電気融雪器28をオン、20℃以上のときに電気融雪器28をオフとする。
【0031】
次に、ステップS21において、レール温度が、オン温度以上であるかどうかを判定する。レール温度が、オン温度より低いと判定されれば、ステップ22において、電気融雪器28がオフでかつレール温度がオフ温度以下であるかどうかを判定する。電気融雪器28がオフでかつレール温度がオフ温度以下であると判定された場合には、ステップS12において、電気融雪器28を強制的にオンとする。
【0032】
ステップS19において、分岐器52を通過する列車が一定時間無い場合には、ステップ23において、分岐器52を通過する列車の通過時刻より所定時間前であるかどうかを判定する。この所定時間は、例えば、通過列車時刻前1時間〜2時間である。分岐器52を通過する列車の通過時刻より所定時間前でなければ、ステップS15において、電気融雪器28を強制的にオフとしてもよいし、厳冬期は低温(10〜20℃程度)融雪状態で待機させてもよい。
【0033】
分岐器52を通過する列車の通過時刻より所定時間前であれば、ステップS24において、入冬期、厳冬期および融冬期の各期間毎に電気融雪器28をオン/オフする電気融雪器温度、すなわちレール温度を設定する。一例を挙げると、入冬期にはレール温度が20℃以下のときに電気融雪器28をオン、30℃以上のときに電気融雪器28をオフとし、厳冬期にはレール温度が20℃以下のときに電気融雪器28をオン、50℃以上のときに電気融雪器28をオフとし、融冬期にはレール温度が20℃以下のときに電気融雪器28をオン、30℃以上のときに電気融雪器28をオフとする。その後はステップS21、S22の順で既に述べた処理を行う。
【0034】
次に、操作表示盤10の表示および操作の一例について説明する。
操作表示盤10のディスプレイ12に表示される画面は、例えば、図6に示す8画面であり、画面の切換はディスプレイ12に表示されたボタンで順次行う。これらの8画面のうち、動作状態表示画面が2画面、操作画面が1画面、設定内容表示画面が1画面、設定画面が3画面、故障表示画面が1画面である。具体的には、これらの8画面は、メイン画面、運転モード切換画面、電圧・電流表示画面、設定一覧表示画面、期間設定画面、外気温度設定画面、レール温度設定画面、故障表示画面である。メイン画面は、電気融雪器制御盤20の動作状態を表示する。運転モード切換画面は、自動運転/矯正運転の切換操作画面である。電圧・電流表示画面は、レールヒーター28aおよび床板ヒーター28bの電源電圧および負荷電流を表示する画面である。設定一覧表示画面は、各種設定内容を表示する画面である。期間設定画面は、入冬期、厳冬期、融冬期の各期間を設定する画面である。外気温度設定画面は、レール温度制御を開始する外気温度を設定する画面である。レール温度設定画面は、レール温度制御のオン/オフ温度を設定する画面である。故障表示画面は、故障発生時に故障原因を表示する画面である。
【0035】
図7にメイン画面の詳細を示す。メイン画面は現在の動作状態、現在温度などを表示する。メイン画面において、日時は、現在の日時を表示する。レール温度は、床板ヒーター28bの現在温度を表示する。外気温度は、外気の現在の温度を表示する。加熱中ランプは、電磁開閉器(マグネット、略記号Mg)入り時、電気融雪器28が加熱中に黄点灯する。自動運転ランプは、自動運転時に青点灯する。強制運転ランプは、強制運転時に橙点灯する。故障発生ランプは、故障発生時に赤点灯する。入冬期ランプは、入冬期間時に緑点灯する。厳冬期ランプは、厳冬期間時に緑点灯する。融冬期ランプは、融冬期間時に緑点灯する。
なお、高圧交流負荷開閉器(AS)切り時には、図8に示すように、メイン画面に「休止中」の表示が出る。
【0036】
図9に運転モード切換画面の詳細を示す。運転モード切換画面において、一括切換自動運転スイッチは、押下で全箇所一斉に自動運転モードに切り換える。一括切換強制運転スイッチは、押下で全箇所一斉に強制運転モードに切り換える。個別切換自動運転スイッチは、押下で対象箇所を自動運転モードに切り換える。個別切換強制運転スイッチは、押下で対象箇所を強制運転モードに切り換える。自動運転ランプは、自動運転ランプ青点灯で自動運転する。強制運転ランプは、強制運転ランプ橙点灯で強制運転する。
【0037】
図10に電圧電流表示画面の詳細を示す。電圧電流表示画面において、床板ヒーター電流は、床板温度センサー26が設置された床板ヒーター28bの電流値を表示する。各相電圧は、各相の電気融雪器28の電源電圧を表示する。各相電流は、各相の電気融雪器28の負荷電流を表示する。
【0038】
図11に設定一覧表示画面の詳細を示す。設定一覧表示画面において、入冬期開始月日は、入冬期開始月日を表示する。厳冬期開始月日は、厳冬期開始月日を表示する。厳冬期終了月日は、厳冬期終了月日を表示する。自動運転開始温度は、各期間毎のレール温度制御を開始する外気温度の設定内容を表示する。レール温度は、各期間毎の電気融雪器28のオン/オフ温度の設定内容を表示する。
【0039】
図12に期間設定画面の詳細を示す。期間設定画面において、入冬期開始は、入冬期開始月日を設定する。厳冬期開始は、厳冬期開始月日を設定する。厳冬期終了は、厳冬期終了月日を設定する。融冬期終了は、融冬期終了月日を設定する。設定は、月日入力後、タッチで設定完了する。
【0040】
なお、月日表示部をタッチしてテンキーで入力後、エンターキーで変更が有効とある。
【0041】
図13に外気温度設定画面の詳細を示す。外気温度設定画面において、自動運転開始温度は、各期間毎のレール温度制御を開始する外気温度を設定する。設定は、設定温度入力変更後、タッチで設定完了する。
【0042】
なお、温度表示部をタッチしてテンキーで入力後、エンターキーで変更が可能となる。また、レール温度制御を終了する温度は開始温度の+1℃である。
【0043】
図14にレール温度設定画面の詳細を示す。レール温度設定画面において、ON温度は、各期間毎に電気融雪器28のオンする温度を設定する。OFF温度は、各期間毎に電気融雪器28のオフする温度を設定する。設定は、設定温度入力変更後、タッチで設定完了する。
【0044】
なお、温度表示部をタッチしてテンキーで入力後、エンターキーで変更が有効となる。また、ON、OFF温度の差は10℃未満は設定不可である。
【0045】
図15に故障表示画面の詳細を示す。故障表示画面においては、故障発生した時に、該当する故障の項目が点灯し、ブザーが鳴動する。
【0046】
ブザー鳴動は、ブザー鳴動停止ボタンの押下で停止する。ただし、通信異常については、通信異常ランプの押下により停止する。
【0047】
故障表示画面において、開閉器盤27bのMg未投入ランプは、開閉器入り時に開閉器が未投入、トリップなどの発生時に赤点灯する。なお、ランプ押下で開閉器が再投入する(5秒後)。また、投入正常動作により自動的にランプが滅灯し、復帰する。床板温度センサー異常ランプは、床板温度センサー26の断線時に黄点灯する(自動的に強制運転となる)。なお、故障復位後、ランプ押下で滅灯し、復帰する。床板ヒーター断線ランプは、床板ヒーター28bの断線または床板ヒーター配線遮断機(NFB)未投入で黄点灯する(自動的に強制運転となる)。外気センサー異常ランプは、外気温度センサー25断線時に黄点灯する(自動的に強制運転となる)。なお、故障復位後、ランプ押下で滅灯し、復帰する。PLC異常ランプは、PLC21の故障時、床板温度センサー26の異常時に黄点灯する(自動的に強制運転となる)。なお、故障復位後、ランプ押下で滅灯し、復帰する。通信異常は、電気融雪器制御盤20との通信が途絶えた場合に黄点灯する。なお、通信回復時に自動的にランプが滅灯し、復帰する。各相要確認ランプは、NFBトリップなどにより、通常電流値の4/5以下に電流値が急激に下がった場合に赤点灯する。なお、ランプ押下で滅灯する。
【0048】
なお、故障発生時に強制運転に移行する故障項目の復帰時は、故障原因が完全に取り除かれていない場合、再び強制運転によりマグネットを再投入する場合がある。
【0049】
故障発生時の動作を表1にまとめて示す。
【表1】

【0050】
なお、故障発生時の強制運転は、入冬期間、厳冬期間、融冬期間内において強制運転に移行し、他の期間は故障通知のみとなる。
【0051】
電気融雪器制御盤20のタッチパネルディスプレイ22に表示される画面は、例えば、図16に示す9画面であり、画面の切換はタッチパネルディスプレイ22に表示される前後ボタンで順次行う。これらの9画面のうち、動作状態表示画面が4画面、設定内容表示画面が3画面、故障表示画面が2画面である。具体的には、これらの9画面はメイン画面、電圧・電流表示画面(3画面)、期間設定画面、外気温度設定画面、レール温度設定画面、故障表示画面である。メイン画面は、動作状態を表示する。電圧・電流表示画面は、電気融雪器28の電源電圧および負荷電流を表示する画面であり、三つの線路(ここでは32番、33番、34番と表示している)の3画面ある。期間設定画面は、入冬期、厳冬期、融冬期の各期間を設定する画面である。外気温度設定画面は、レール温度制御を開始する外気温度を設定する画面である。レール温度設定画面は、レール温度制御のオン/オフ温度を設定する画面である。故障表示画面は、故障発生時に故障原因を表示する画面である。
【0052】
図17にメイン画面の詳細を示す。メイン画面において、レール温度は、床板ヒーターの現在温度を表示する。外気温度は、外気の現在の温度を表示する。Mg入ランプは、開閉器盤27bの入り時に点灯する。自動運転ランプは、駅操作により自動運転時に点灯する。強制運転ランプは、駅操作により強制運転時に点灯する。入冬期ランプは、入冬期間時に点灯する。厳冬期ランプは、厳冬期間に点灯する。融冬期ランプは、融冬期間に点灯する。
【0053】
図18に電圧電流表示画面の詳細を示す。この例では、32番線の分岐器52に設置された電気融雪器28の電源電圧および負荷電流が表示されている。電圧電流表示画面において、床板ヒーター電流は、床板温度センサー26が設置された床板ヒーター23bの電流値を表示する。各相電圧は、各相の電気融雪器28の電源電圧を表示する。各相電流は、各相の電気融雪器28の負荷電流を表示する。
【0054】
図19に期間設定画面の詳細を示す。期間設定画面において、入冬期開始は、入冬期開始月日を表示する。厳冬期開始は、厳冬期開始月日を表示する。厳冬期終了は、厳冬期終了月日を表示する。融冬期終了は、融冬期終了月日を表示する。
【0055】
図20に外気温度連続運転設定画面の詳細を示す。外気温度連続運転設定画面において、入冬期は、入冬期の自動運転を開始する外気温度の設定温度を表示する。厳冬期は、厳冬期の自動運転を開始する外気温度の設定温度を表示する。融冬期は、融冬期の自動運転を開始する外気温度の設定温度を表示する。
【0056】
図21にレール温度設定画面の詳細を示す。レール温度設定画面において、ON温度は、各期間毎に電気融雪器28をオンする設定温度を表示する。OFF温度は、各期間毎に電気融雪器28をオフする設定温度を表示する。
【0057】
図22に一つの故障表示画面の詳細を示す。故障発生時に強制運転に移行する故障の復帰時は、故障原因が完全に取り除かれていない場合、再び強制運転によりマグネットが再投入する場合がある。この故障表示画面において、Mg未投入ランプは、マグネット未投入発生時に点灯する。床板温度センサー異常ランプは、床板温度センサー26の異常時に点灯する。外気温センサー異常ランプは、外気温度センサー25の異常時に点灯する。PLC異常ランプは、PLC21の異常時に点灯する。無線通信断ランプは、操作表示盤10との通信断時に点灯する。
【0058】
図23にもう一つの故障表示画面の詳細を示す。この故障表示画面において、各相要確認ランプは、各相電流低下で点灯する。
【0059】
時計合わせについては、電気融雪器制御盤20のPLC21の時計は、操作表示盤10の時計と1分毎に自動的に時刻同期を行う。時刻変更(修正)は、操作表示装置10のタッチパネルディスプレイ12の操作により行う。
【0060】
列車情報入力画面の一例を図24に示す。図24には、一例として、A駅を通る列車の列車情報が記載されている。列車のダイヤ、進入番線等は自動的に情報を取得して生成され、図24の最下部において、一番左の項目から右の項目に向かって順に、列車名、愛称名、行先、到着時刻、発車時刻、番線、走行区間、前運用、後運用を示す。例えば、A駅における到着時刻・発車時刻から当該分岐器の通過時刻を算出する。これにより、例えば、到着時刻の1〜2時間前で電気融雪器28をオン、3時間以上前で電気融雪器28をオフとする。
【0061】
次に、操作表示盤10と電気融雪器制御盤20との間の通信方法について説明する。
この通信方法としては、無線LANを用いる。図25に示すように、操作表示盤10に電源盤60が接続され、この電源盤60に無線伝送盤70が接続されている。この無線伝送盤70の無線LANボード71に無線アンテナ72が接続されている。この無線アンテナ72としては、例えば、無指向性アンテナを用いる。この無指向性アンテナは、典型的には、電化柱に設置される。また、電気融雪器制御盤20に無線伝送盤80が設置され、この無線伝送盤80の無線LANボード81に無線アンテナ82が接続されている。この無線アンテナ82としては、例えば、平面アンテナを用いる。この平面アンテナは、典型的には、電化柱に設置される。
【0062】
一例として、A駅構内における無線アンテナ72、82の設置例について説明する。図26はA駅の構内の一部を示す。図26に示すように、一番線ホーム、線路の上方を横断するように、自由通路91および人道橋92が設置されている。自由通路91と一番線ホームとの間の地面に設置された電化柱に、操作表示盤10側の無線アンテナ72が設置されている。また、人道橋92の、自由通路91とは反対側の、上り引上2番線き付近の地面に設置された電化柱に、電気融雪器制御盤20側の無線アンテナ82が設置されている。無線アンテナ72と無線アンテナ82とは、直線距離で互いに約700m離れている。
【0063】
図27に、操作表示盤10側の無線アンテナ72およびこの無線アンテナ72が設置された電化柱93、電気融雪器制御盤20側の無線アンテナ82およびこの無線アンテナ82が設置された電化柱94、自由通路91および人道橋92の高さ位置を示す。無線アンテナ72、82は、いずれも地面から約5mの高さに設置されている。自由通路91および人道橋92の底面は、地面から5mより高い位置にある。また、これらの自由通路91および人道橋92の下側の線路を通る列車95の高さは、無線アンテナ72、82の高さよりもかなり低い。このため、無線アンテナ72と無線アンテナ82との間の通信は、障害物のない空間を通して行われる。図28に示すように、無指向性アンテナからなる無線アンテナ75と平面アンテナからなる無線アンテナ82とは、例えば、それらの間に障害物がなく、見通しが良い場合には最大1km離れていても通信可能であるので、無線アンテナ72と無線アンテナ82とが直線距離で互いに約700m離れているこの例では、通信可能である。
【0064】
実際に、A駅構内で実験を行った結果、操作表示盤10側の無指向性アンテナからなる無線アンテナ72と平面アンテナからなる無線アンテナ82との間の通信を支障なく行うことができた。
【0065】
以上のように、この第1の実施の形態による分岐器電気融雪器遠隔制御システムによれば、次のような種々の利点を得ることができる。すなわち、電気融雪器制御盤20においては、電気融雪器28のオン/オフをPLC21により制御している。このため、この電気融雪器制御盤20は、制御リレーを用いて制御を行う従来の電気融雪器制御盤と同等の制御能力を有していながら、従来の電気融雪器制御盤に比べて極めて安価に構成することができる。このため、分岐器電気融雪器遠隔制御システムの設置費用が安価で済む。また、操作表示盤10により取得される気象情報を利用して電気融雪器28のオン/オフを制御するとともに、入冬期、厳冬期および融冬期の各期間毎に電気融雪器28をオンとするレール温度およびオフとするレール温度を設定して電気融雪器28をオン/オフするようにしているので、気象情報や季節に応じて電気融雪器28の最適な制御を行うことができる。この分岐器電気融雪器遠隔制御システムを用いることにより、例えば、制御リレーを用いて制御を行う従来の電気融雪器制御盤を用いる場合と比べて、電気融雪器28による使用電力量を半減させることができ、大幅な節電効果を得ることができる。また、列車運行情報を利用して電気融雪器28をオン/オフすることにより、不要なときに電気融雪器28をオンとすることがなくなり、大幅な節電効果を得ることができる。また、分岐器52への降雪の程度によっては除雪要員が除雪作業のために分岐器52に立ち入る必要があり、これが落雪センサー23による誤検知につながるおそれがあるが、列車運行情報を利用して電気融雪器28をオン/オフすることにより、この問題がなくなる。さらに、落雪センサー23を用いていることにより、分岐器52を通過する列車からの落雪により分岐器に大量の雪塊が発生しても、これをすぐ検知することができ、電気融雪器28、必要に応じてさらに増設電気融雪器を用いて雪塊を短時間で融解することができる。
【0066】
〈2.第2の実施の形態〉
次に、第2の実施の形態による分岐器電気融雪器遠隔制御システムについて説明する。
この分岐器電気融雪器遠隔制御システムにおいては、落雪センサー23として、振動センサーを用いる。その他のことは、第1の実施の形態による分岐器電気融雪器遠隔制御システムと同様である。
【0067】
すなわち、図29Aに示すように、この分岐器電気融雪器遠隔制御システムにおいては、基本レール51aとトングレール51bとの間の枕木55間の道床バラスト54上に、振動受け板101の下面に振動センサー23bを取り付けたものを、振動センサー23b側が下になるようにして設置する。ここで、図29Aは平面図である。こうすることで、基本レール51aとトングレール51bとの間の領域で、この分岐器52を通過した列車の車両の床下から落雪があった場合、振動受け板101が落雪を受けて振動し、その振動が振動センサー23bにより検知される。こうして、基本レール51aとトングレール51bとの間の領域における落雪が検知される。こうして落雪が検知されたら、電気融雪器28あるいはさらに増設電気融雪器をオンとして雪氷を迅速に融解する。こうすることにより、図29Bに示すように、分岐器52を支障なく転換することができる。
この第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様な利点を得ることができる。
【0068】
〈3.第3の実施の形態〉
次に、第3の実施の形態による分岐器電気融雪器遠隔制御システムについて説明する。
この分岐器電気融雪器遠隔制御システムにおいては、落雪センサー23として、マットスイッチなどの荷重センサーを用いる。その他のことは、第1の実施の形態による分岐器電気融雪器遠隔制御システムと同様である。
【0069】
すなわち、図30Aに示すように、この分岐器電気融雪器遠隔制御システムにおいては、基本レール51aとトングレール51bとの間の枕木55間の道床バラスト54上に、例えばマットスイッチのような荷重センサー23cを設置する。ここで、図30Aは平面図である。こうすることで、基本レール51aとトングレール51bとの間の領域で、分岐器52を通過した列車の車両の床下から落雪があった場合、この落雪による荷重により荷重センサー23cが凹むことにより落雪が検知される。こうして、基本レール51aとトングレール51bとの間の領域における落雪が検知される。こうして落雪が検知されたら、電気融雪器28あるいはさらに増設電気融雪器をオンとして雪氷を迅速に融解する。こうすることにより、図30Bに示すように、分岐器52を支障なく転換することができる。
この第3の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様な利点を得ることができる。
【0070】
〈4.第4の実施の形態〉
次に、第4の実施の形態による分岐器電気融雪器遠隔制御システムについて説明する。
この分岐器電気融雪器遠隔制御システムにおいては、落雪センサー23として、第1の実施の形態で用いた監視カメラ23aと第2の実施の形態で用いた振動センサー23bとを併用して落雪検知を行う。その他のことは、第1および第2の実施の形態による分岐器電気融雪器遠隔制御システムと同様である。
この第4の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様な利点を得ることができる。
【0071】
〈5.第5の実施の形態〉
次に、第5の実施の形態による分岐器電気融雪器遠隔制御システムについて説明する。
図31に示すように、この分岐器電気融雪器遠隔制御システムにおいては、落雪センサー23として、第1の実施の形態で用いた監視カメラ23aと第3の実施の形態で用いた荷重センサー23cとを併用して落雪検知を行う。その他のことは、第1および第3の実施の形態による分岐器電気融雪器遠隔制御システムと同様である。
この第5の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様な利点を得ることができる。
【0072】
〈6.第6の実施の形態〉
次に、第6の実施の形態による分岐器電気融雪器遠隔制御システムについて説明する。
この分岐器電気融雪器遠隔制御システムにおいては、落雪センサー23として、第2の実施の形態で用いた振動センサー23bと第3の実施の形態で用いた荷重センサー23cとを併用して落雪検知を行う。この場合、振動センサー23bの振動受け板101として荷重センサー23cを用い、振動および荷重の両方を検知するようにしてもよいし、振動センサー23bと荷重センサー23cとを交互に設置してもよい。例えば、第2の実施の形態において、枕木55の上に荷重センサー23cを設置してもよい。その他のことは、第2および第3の実施の形態による分岐器電気融雪器遠隔制御システムと同様である。
この第6の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様な利点を得ることができる。
【0073】
〈7.第7の実施の形態〉
次に、第7の実施の形態による分岐器電気融雪器遠隔制御システムについて説明する。
この分岐器電気融雪器遠隔制御システムにおいては、落雪センサー23として、第1の実施の形態で用いた監視カメラ23aと第2の実施の形態で用いた振動センサー23bと第3の実施の形態で用いた荷重センサー23cとを併用して落雪検知を行う。この場合、振動センサー23bの振動受け板101として荷重センサー23cを用い、振動および荷重の両方を検知するようにしてもよい。その他のことは、第1、第2、第3および第6の実施の形態による分岐器電気融雪器遠隔制御システムと同様である。
この第7の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様な利点を得ることができる。
【0074】
以上、この発明の実施の形態について具体的に説明したが、この発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、この発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。例えば、上述の実施の形態において挙げた仕様、数値、構成、機能などはあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれらと異なる仕様、数値、構成、機能などを用いてもよい。
【符号の説明】
【0075】
10…操作表示盤、11…コンピュータ、12…タッチパネルディスプレイ、20…電気融雪器制御盤、21…PLC、22…タッチパネルディスプレイ、23…落雪センサー、23a…監視カメラ、23b…振動センサー、23c…荷重センサー、24…降雪センサー、25…外気温度センサー、26…床板温度センサー、27…開閉器盤・分岐開閉器盤、28…電気融雪器、28a…レールヒーター、28b…床板ヒーター、51…線路、51a…基本レール、51b…トングレール、52…分岐器、53…端子箱、54…道床バラスト、55…枕木、59…電化柱、60…電源盤、70…無線伝送盤、71…無線LANボード、72…無線アンテナ、80…無線伝送盤、81…無線LANボード、82…無線アンテナ、101…振動受け板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分岐器に設置された電気融雪器と、
上記分岐器の付近に設置され、上記電気融雪器のオン/オフをプログラマブルロジックコントローラにより制御する電気融雪器制御盤と、
施設内に設置され、上記電気融雪器制御盤を遠隔制御する操作表示盤とを有し、
上記操作表示盤において、上記分岐器の設置箇所を含む地域の気象情報をインターネットにより取得し、大雪警報または大雪注意報が出ている場合には、上記電気融雪器をオンとし、
大雪警報または大雪注意報が出ていない場合には、上記分岐器の付近に設置された降雪センサーにより降雪の有無を検知し、降雪が有る場合は上記電気融雪器をオンとし、
降雪が無い場合には、冬期でないときは上記電気融雪器をオフとし、冬期の場合には、入冬期、厳冬期および融冬期に分け、各期間毎に上記電気融雪器をオンとするレール温度およびオフとするレール温度を設定して上記電気融雪器をオン/オフすることを特徴とする分岐器電気融雪器遠隔制御システム。
【請求項2】
レール上を走行する車両の床下に付着した雪氷が上記分岐器に落下したことを検知する落雪センサーをさらに有することを特徴とする請求項1記載の分岐器電気融雪器遠隔制御システム。
【請求項3】
上記落雪センサーは、上記分岐器の付近に設置され、上記分岐器を監視する監視カメラ、上記分岐器の道床バラスト上に設置された振動センサーおよび上記分岐器の道床バラスト上に設置された荷重センサーのうちの少なくとも一つであることを特徴とする請求項2記載の分岐器電気融雪器遠隔制御システム。
【請求項4】
上記分岐器に設置された増設電気融雪器をさらに有し、上記落雪センサーにより上記分岐器への雪氷の落下が検知されたとき、上記増設電気融雪器をオンとすることを特徴とする請求項2または3記載の分岐器電気融雪器遠隔制御システム。
【請求項5】
上記分岐器の付近に設置された外気温度センサーをさらに有し、上記外気温度センサーにより検知された外気温度が所定の温度以上のときは、上記電気融雪器をオフとすることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載の分岐器電気融雪器遠隔制御システム。
【請求項6】
上記操作表示盤により取得される列車運行情報から上記分岐器を通過する列車が一定時間無いかどうかを調べ、上記分岐器を通過する列車が一定時間内に有る場合には、冬期を入冬期、厳冬期および融冬期に分け、各期間毎に上記電気融雪器をオンとするレール温度およびオフとするレール温度を設定して上記電気融雪器をオン/オフし、上記分岐器を通過する列車が一定時間無い場合には、通過列車の通過時刻より所定時間前の時刻に、冬期を入冬期、厳冬期および融冬期に分け、各期間毎に上記電気融雪器をオンとするレール温度およびオフとするレール温度を設定して上記電気融雪器をオン/オフすることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項記載の分岐器電気融雪器遠隔制御システム。
【請求項7】
上記操作表示盤と上記電気融雪器制御盤との間の通信を無線LANにより行うことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項記載の分岐器電気融雪器遠隔制御システム。
【請求項8】
分岐器に設置された電気融雪器と、
上記分岐器の付近に設置され、上記電気融雪器のオン/オフをプログラマブルロジックコントローラにより制御する電気融雪器制御盤と、
施設内に設置され、上記電気融雪器制御盤を遠隔制御する操作表示盤とを用いる分岐器電気融雪器遠隔制御方法であって、
上記操作表示盤において、上記分岐器の設置箇所を含む地域の気象情報をインターネットにより取得し、大雪警報または大雪注意報が出ている場合には、上記電気融雪器をオンとし、
大雪警報または大雪注意報が出ていない場合には、上記分岐器の付近に設置された降雪センサーにより降雪の有無を検知し、降雪が有る場合は上記電気融雪器をオンとし、
降雪が無い場合には、冬期でないときは上記電気融雪器をオフとし、冬期の場合には、入冬期、厳冬期および融冬期に分け、各期間毎に上記電気融雪器をオンとするレール温度およびオフとするレール温度を設定して上記電気融雪器をオン/オフすることを特徴とする分岐器電気融雪器遠隔制御方法。
【請求項9】
レール上を走行する車両の床下に付着した雪氷が上記分岐器に落下したことを検知する落雪センサーをさらに用いることを特徴とする請求項8記載の分岐器電気融雪器遠隔制御方法。
【請求項10】
上記操作表示盤により取得される列車運行情報から上記分岐器を通過する列車が一定時間無いかどうかを調べ、上記分岐器を通過する列車が一定時間内に有る場合には、冬期を入冬期、厳冬期および融冬期に分け、各期間毎に上記電気融雪器をオンとするレール温度およびオフとするレール温度を設定して上記電気融雪器をオン/オフし、上記分岐器を通過する列車が一定時間無い場合には、通過列車の通過時刻より所定時間前の時刻に、冬期を入冬期、厳冬期および融冬期に分け、各期間毎に上記電気融雪器をオンとするレール温度およびオフとするレール温度を設定して上記電気融雪器をオン/オフすることを特徴とする請求項8または9記載の分岐器電気融雪器遠隔制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【公開番号】特開2013−49972(P2013−49972A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−188176(P2011−188176)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(590003825)北海道旅客鉄道株式会社 (94)
【出願人】(599142590)北海道ジェイ・アール・サイバネット株式会社 (14)
【Fターム(参考)】