説明

分岐状ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体およびその製造方法

【課題】押出成形、ブロー成形、射出成形、真空成形等の加工の際に、安定成形が可能であり、ドローダウンを生じ難く、透明性、低温衝撃強度に優れた分岐状ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体およびその製造方法を提供する。
【解決手段】二価フェノール化合物、分岐剤、ポリオルガノシロキサン、一価フェノール類、およびホスゲンを使用し、アルカリ水溶液および有機溶媒の存在下で、所望により反応触媒を用いて、界面重合法によって得られる分岐状ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体であって、該共重合体中の分岐剤含有量が、二価フェノール化合物に対し0.25〜1.2モル%であり、ポリオルガノシロキサン単位の含有量が該共重合体100重量%に対して0.5〜10.0重量%であり、且つ該共重合体のヘイズ値が3.0%以下であることを特徴とする分岐状ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体およびその製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は透明性、成形性、低温衝撃強度、ドローダウン性が改善された分岐状ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体およびその製造方法に関し、さらに詳しくは、押出成形、ブロー成形、射出成形、真空成形等において安定した成形が可能で、種々の用途に適した分岐状ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ビスフェノールA等から製造される直鎖状ポリカーボネート樹脂は、透明性、耐熱性、機械特性に優れ、幅広い用途で使用されている。しかし、該直鎖状ポリカーボネート樹脂を押出成形、ブロー成形、射出成形、真空成形等の用途に用いた場合は、成形品に厚みむらが生じたり、ドローダウンを生じたりして満足な成形品が得られない場合がある。また、得られた成形品においても低温下における衝撃強度が劣る場合がある。
【0003】
これらを解決する方法としては、ポリカーボネート樹脂重合時に3個以上の官能基を有する分岐剤を添加して得た分岐状ポリカーボネート樹脂を用いる方法(特許文献1〜3)、およびポリオルガノシロキサンを添加して得たポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体を用いる方法(特許文献4〜7)が開示されている。
【0004】
しかしながら、特許文献1および2の方法ではポリカーボネート樹脂のドローダウン性はある程度改善されるけれども、低温下における衝撃強度は改善されていない。特許文献3の方法はポリカーボネート樹脂のドローダウン性は改善されているものの、成形性に劣り、低温下における衝撃強度も改善されていない。特許文献4〜6の方法では低温衝撃強度はある程度改善されているものの、透明性やドローダウン性の改善が不十分である。特許文献7の方法では低温衝撃強度と透明性は比較的改善されているものの、まだ透明性とドローダウン性の改善が不十分である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭59−047228号公報
【特許文献2】特開2005−126477号公報
【特許文献3】特許第3693462号公報
【特許文献4】特開2009−120707号公報
【特許文献5】特許第3195848号公報
【特許文献6】特表2006−523243号公報
【特許文献7】特許第3180407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、押出成形、ブロー成形、射出成形、真空成形等の加工の際に、安定成形が可能であり、ドローダウンを生じ難く、透明性、低温衝撃強度に優れた分岐状ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記目的を達成するため鋭意研究を重ねた結果、ポリオルガノシロキサンと分岐剤とを特定割合で含有する分岐状ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体を、特定の方法で製造することにより、ヘイズ値が3.0%以下である重合体を得ることができ、前記目的を達成することを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明によれば、
1.二価フェノール化合物、分岐剤、ポリオルガノシロキサン、一価フェノール類、およびホスゲンを使用し、アルカリ水溶液および有機溶媒の存在下で、所望により反応触媒を用いて、界面重合法によって得られる分岐状ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体であって、該共重合体中の分岐剤含有量が、二価フェノール化合物に対し0.25〜1.2モル%であり、ポリオルガノシロキサン単位の含有量が該共重合体100重量%に対して0.5〜10.0重量%であり、且つ該共重合体のヘイズ値が3.0%以下であることを特徴とする分岐状ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体。
2.粘度平均分子量が1.8×10〜3.0×10であることを特徴とする前項1記載の共重合体。
3.ポリオルガノシロキサン単位が(α1)で表されるものである前項1記載の共重合体。
【化1】

(式中、R、R、RおよびRは炭素数1〜6のアルキル基またはフェニル基を示し、同一でも異なっていてもよく、Rは脂肪族または芳香族化合物からの二価の有機残基を示し、nはカッコ内の単位の繰り返し数を示し、その数平均値が10〜60であり、カッコ内の構成単位は2種以上の混合物であってもよい。)
4.300℃における構造粘性指数が1.6〜2.2の範囲であることを特徴とする前項1記載の共重合体。
5.二価フェノール化合物と分岐剤とを混合したアルカリ水溶液、ポリオルガノシロキサン、および有機溶媒の存在下に、ホスゲンを吹き込み反応させてオリゴマーを得、得られた反応溶液に一価フェノール類を加え、乳化重合時に、更に二価フェノール化合物に対して0.01〜0.5モル%の反応触媒を加えて、重合させることを特徴とする前項1記載の共重合体の製造方法。
6.二価フェノール化合物と分岐剤とを混合したアルカリ水溶液、ポリオルガノシロキサン、有機溶媒、および二価フェノール化合物に対して0.01〜0.1モル%の反応触媒の存在下に、ホスゲンを吹き込み反応させてオリゴマーを得、得られた反応溶液に一価フェノール類を加え、乳化重合時に、更に二価フェノール化合物に対して0.01〜0.4モル%の反応触媒を加えて、重合させることを特徴とする前項1記載の共重合体の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の分岐状ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体は、押出成形、ブロー成形、射出成形、真空成形等の加工の際に、安定成形が可能であり、ドローダウンを生じ難く、透明性、低温衝撃強度に優れており、電気・電子部品等種々の用途に好適に用いられ、その効果は格別なものがある。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
(二価フェノール化合物について)
本発明で使用される二価フェノール化合物の代表的な例は、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4’ −ビフェノール、1,1−ビス(4ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−イソプロピルシクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)オキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド等が挙げられる。これらは単独で用いても、二種以上併用してもよい。なかでも2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンが好ましい。
【0011】
(分岐剤について)
本発明で使用される分岐剤は3価以上の多価フェノール類又はそれらの誘導体で代表的な例は、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−2,4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,3,5−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、2,6−ビス(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェノ−ル、テトラ(4−ヒドロキシフェニル)メタン、トリスフェノール、ビス(2,4−ジヒドロキシルフェニル)ケトン、フロログルシン、フロログルシド、イサンチンビスフェノール、1,4−ビス(4,4−ジヒドロキシトリフェニルメチル)ベンゼン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ペンテン、3,3−ビス(4−ヒドロキシアリール)オキシインドール、5−クロロイサチン、5,7−ジクロロイサチン、2,4,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,2,4,4−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,4,4−トリヒドロキシジフェニルエーテル、2,2,4,4−テトラヒドロキシジフェニルエーテル、2,4,4−トリスヒドロキシフェニル−2−プロパン、2,2−ビス(2,4−ジヒドロキシ)プロパン、2,2,4,4−テトラヒドロキシジフェニルメタン、1−〔α−メチル−α−(4−ヒドロキシフェニル)エチル〕−4−〔α,α−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチル〕ベンゼン、α、α’,α”−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリイソプロピルベンゼン、2,2−ビス〔4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル〕−プロパン、2,6−ビス(2−ヒドロキシ−5−イソプロピロベンジル)−4−イソプロピルフェノール、ビス〔2−ヒドロキシ−3−(2−ヒドロキシ−5−イソプロピロベンジル)−5−メチルフェニル〕メタン、トリス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,4,7−トリヒドロキシフラバン、2,4,4−トリメチル−2,4,7−トリヒドロキシフラバン、1,3−ビス(2,4−ジヒドロキシフェニルイソプロピル)ベンゼン、5−ブロモイサチン、トリメリト酸、ピロメリト酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸及びこれらの酸クロライド等が挙げられる。これらは単独で用いても、二種以上併用してもよい。なかでも、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンが好ましい。前記の多価フェノール類は固形物およびまた溶融物を、あるいは固形物およびまたは溶融物をアルカリ水溶液または有機溶媒に溶解して用いることができる。
【0012】
(ポリオルガノシロキサンについて)
本発明で使用されるポリオルガノシロキサンの代表例は前記式(α1)で表される構造単位を含有するものが挙げられる。かかる式(α1)におけるR、R、RおよびRの具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘプチル基、およびフェニル基などが好適に例示され、特にメチル基が好ましい。Rは脂肪族または芳香族化合物からの二価の有機残基を示す。−Si−R−において、−Si−O−の結合を有する場合、Rは、各種の脂肪族ジオール、脂環式ジオール残基および二価フェノール残基を挙げることができる。二価フェノールとしては、前述した二価フェノールと同様のものが利用できる。−Si−R−において、−Si−C−の結合を有する場合、Rは、o−アリルフェノール残基、p−ヒドロキシスチレン残基、4−アリル−2−メトキシフェノール残基、およびイソプロペニルフェノール残基などが好適に例示され、特にo−アリルフェノール残基が好ましい。
【0013】
また、好適な態様の1つとして、前記式(α1)におけるnが10〜60の範囲であるポリオルガノシロキサンが用いられる。ポリオルガノシロキサンの重合度を示すnは、10未満では十分な低温衝撃強度を付与することができず、一方60を超えると透明性に劣るようになる。透明性の点では微分散が必要とされ、耐久性の点では層がある程度分離している方が有利であるからである。かかるnはより好適には16〜50であり、更に好適には20〜40の範囲となる。
【0014】
(一価フェノール類について)
本発明において、分子量調節剤として用いられる一価フェノール類(末端停止剤)としては、例えば、p−tert−ブチルフェノール、p−tert−オクチルフェノール、p−クミルフェノール、4−ヒドロキシベンゾフェノン、フェノール等が挙げられる。なかでも、p−tert−ブチルフェノールが好ましい。これらの一価フェノール類は、得られたポリカーボネート樹脂の全末端に対して少なくとも5モル%、好ましくは少なくとも10モル%以上末端に導入されることが望ましく、また、一価フェノールは単独または2種以上混合して用いてもよい。前記の一価フェノール類は固形物およびまたは溶融物を、あるいは固形物およびまたは溶融物をアルカリ水溶液または有機溶媒に溶解して加えることができる。
【0015】
(アルカリについて)
本発明に用いるアルカリは例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物等が用いられる。該アルカリは、水にて濃度5.5〜8.5重量%水溶液に希釈し、二価フェノール化合物1モルに対し1.7〜3.0モル用いることが好ましい。
【0016】
(有機溶媒について)
有機溶媒としては、例えば塩化メチレン、テトラクロルエタン、トリクロルエタン、ジクロルエタン、クロルベンゼン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素が用いられ、特に塩化メチレンが好ましく用いられる。
【0017】
(反応触媒について)
また、本発明において反応促進のために好ましく使用される反応触媒として、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド、テトラ−n−ブチルホスホニウムブロマイド等の第三級アミン、第四級アンモニウム化合物、第四級ホスホニウム化合物等の触媒が挙げられる。
【0018】
(分岐状ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体の製造方法について)
本発明の分岐状ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体は、好適には下記(i)および(ii)の方法で製造され、特に(ii)の方法が透明性、ドローダウン性、成形性および低温衝撃強度により優れた分岐状ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体を得られやすく好ましい。
【0019】
(i)二価フェノール化合物と分岐剤とを混合したアルカリ水溶液、ポリオルガノシロキサン、および有機溶媒の存在下に、ホスゲンを吹き込み反応させてオリゴマーを得、得られた反応溶液に一価フェノール類を加え、乳化重合時に、更に二価フェノール化合物に対して0.01〜0.5モル%の反応触媒を加えて、重合させる共重合体の製造方法。
【0020】
(ii)二価フェノール化合物と分岐剤とを混合したアルカリ水溶液、ポリオルガノシロキサン、有機溶媒、および二価フェノール化合物に対して0.01〜0.1モル%の反応触媒の存在下に、ホスゲンを吹き込み反応させてオリゴマーを得、得られた反応溶液に一価フェノール類を加え、乳化重合時に、更に二価フェノール化合物に対して0.01〜0.4モル%の反応触媒を加えて、重合させる共重合体の製造方法。
【0021】
反応触媒は、二価フェノール化合物に対して0.01〜0.5モル%使用することが好ましい。該反応触媒を添加する時期は、上記(i)および(ii)の方法のようにホスゲン吹き込み終了以降(乳化重合時)に添加することが好ましい。さらに、オルガノポリシロキサンは2価フェノール化合物より反応性が低いため、反応触媒をホスゲン吹き込み前に若干量添加し、残りをホスゲン吹き込み終了以降(乳化重合時)に添加する2段添加する方法(上記(ii)の方法)がより好ましい。
【0022】
上記(i)の方法のように反応触媒をホスゲン吹き込み終了以降(乳化重合時)に一括して添加する場合は、二価フェノール化合物に対して0.01〜0.5モル%が好ましく、0.05〜0.3モル%がより好ましい。0.5モル%を超える場合はゲルが生成するため透明性が低下し、また触媒がクロロホーメート基と反応して熱的に不安定なウレタン結合が多くなると共に、触媒が残存することにより共重合体中の全N含有量が増大し、耐衝撃性、透明性、耐熱性が低下するので好ましくない。
【0023】
上記(ii)の方法のように反応触媒をホスゲン吹き込み前に若干量添加し、残りをホスゲン吹き込み終了以降(乳化重合時)に添加する2段添加する方法の場合、ホスゲン吹き込み前に添加する反応触媒量は二価フェノール化合物に対して0.01〜0.1モル%が好ましく、0.01〜0.05モル%がより好ましい。0.1モル%を越えると、オリゴマーの粘度平均分子量が上昇し過ぎるため、粘度平均分子量の制御が困難になる。また、ホスゲン吹き込み終了以降(乳化重合時)に添加する反応触媒量は二価フェノール化合物に対して0.01〜0.4モル%が好ましく、0.01〜0.25モル%がより好ましい。0.4モル%を越えるとゲルが生成して透明性が低下し、また共重合体中の全N含有量が増大し、耐衝撃性、透明性、耐熱性が低下するので好ましくない。ホスゲン吹き込み前に添加する反応触媒量とホスゲン吹き込み終了以降(乳化重合時)に添加する反応触媒量とのモル比は1:2〜1:10の範囲が好ましく、1:3〜1:5の範囲がより好ましい。
反応温度は0〜40℃の範囲が好ましく、15〜38℃の範囲がより好ましい。反応時間は10分〜5時間の範囲が好ましく、反応中のpHは9.0以上に保つことが好ましく、11.0〜13.8の範囲に保つことがより好ましい。
【0024】
上記の界面重合反応する際に一価フェノール類を投入後に乳化させる方法としては特に制限はないが、撹拌装置で撹拌する方法が挙げられる。撹拌装置としては、パドル、プロペラ、タービンまたはカイ型翼等の単純な撹拌装置、ホモジナイザー、ミキサー、ホモミキサー等の高速撹拌機、スタティックミキサー、コロイドミル、オリフィスミキサー、フロージェットミキサー、超音波乳化装置等がある。なかでもホモミキサー、スタティックミキサー等が好ましく用いられる。
重合後の有機溶媒溶液は公知の方法で洗浄、造粒、乾燥することにより、分岐状ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体のパウダーを得ることができる。また、該パウダーを溶融押出してペレット化してペレットを得ることができる。
【0025】
(分岐状ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体について)
本発明の分岐状ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体は、該共重合体中の分岐剤含有量は0.25〜1.2モル%であり、好ましくは0.3〜1.0モル%である。分岐剤含有量は二価フェノール化合物の総モル数に対する分岐剤のモル数(分岐剤のモル数/二価フェノール化合物の総モル数×100モル%で表す)を意味する。分岐剤含有量が0.25モル%未満であると、ドローダウンを生じ易い。また、分岐剤含有量が1.2モル%を超えるとと、ゲルが生成したりするため、ポリマーの成形性が低下したり、衝撃強度や透明性が低下するので好ましくない。
【0026】
本発明の分岐状ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体は、共重合体100重量%中に含有するポリオルガノシロキサン単位の含有量が0.5〜10.0重量%であり、好ましくは1.0〜9.0重量%であり、より好ましくは2.0〜8.0重量%である。ポリオルガノシロキサン単位の含有量は、0.5重量%未満では共重合体のポリオルガノシロキサン濃度の調整範囲が制限されて生産効率的に劣るようになり、また低温下における衝撃強度も改善されない、10.0重量%を超えると透明性が安定性して発揮されず、かかる点で生産効率的に劣るようになる。
【0027】
本発明の分岐状ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体のヘイズ値は3.0%以下であり、2.5%以下が好ましく、2.0%以下がより好ましい。ヘイズ値は、該共重合体より形成された厚み2.0mmの成形板におけるヘイズ(Haze)値をASTM D1003に準拠し測定した値である。
【0028】
本発明の分岐状ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体の粘度平均分子量は1.8×10〜3.0×10の範囲が好ましく、2.0×10〜2.7×10の範囲がより好ましい。粘度平均分子量が3.0×10を越えると成形性に劣り、粘度平均分子量が1.8×10未満であるとドローダウン性が改善されず、押出成形やブロー成形が困難になるので好ましくない。なお、押出成形用には粘度平均分子量2.0×10〜3.0×10、射出成形用には粘度平均分子量1.8×10〜2.7×10が昜成形性面から好ましく用いられる。共重合体の粘度平均分子量は、塩化メチレン100mlに共重合体0.7gを20℃で溶解した溶液から求めた比粘度(ηsp)を次式に挿入して求めたものである。
ηsp/c=[η]+0.45×[η]c(但し[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10−40.83
c=0.7
【0029】
本発明の分岐状ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体の300℃における構造粘性指数は1.6〜2.2の範囲が好ましく、1.7〜2.0の範囲がより好ましい。構造粘性指数が2.2を越えると、成形性に劣り、構造粘性指数が1.6未満であるとドローダウン性が改善されず、押出成形やブロー成形が困難になる。構造粘性指数はISO11443(JIS K 7199)に準拠して測定される。
【0030】
本発明の分岐状ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体には、リン系の熱安定性を配合することが好ましい。リン系の熱安定剤としては、例えば亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸およびこれらのエステル等が挙げられ、具体的には、トリスフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2.トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリブチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェート、4,4’−ビフェニレンジホスフィン酸テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)、ベンゼンホスホン酸ジメチル、ベンゼンホスホン酸ジエチル、ベンゼンホスホン酸ジプロピル等が挙げられる。)
【0031】
なかでも、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、及び4,4’−ビフェニレンジホスフィン酸テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)等が好ましく使用され、特にトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトが好ましい。これらは単独又は2種以上を混合して使用できる。これらの熱安定剤の配合量は、該共重合体100重量部に対して、好ましくは0.001〜1重量部、より好ましくは0.002〜0.1重量部である。これらのリン系熱安定剤の配合量が0.001重量部未満の場合は熱安定性向上が十分でなく、1重量部を超えると耐久性が低下することがある。
【0032】
前記熱安定剤を該共重合体に配合する方法としては、該共重合体の有機溶媒溶液に添加する方法、該共重合体のパウダーに添加する方法、溶融押出機に供給する方法等のいずれの方法で加えてもよい。熱安定剤は、そのまま添加しても溶媒に溶解して添加しても構わない。
【0033】
本発明の分岐状ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体は、直鎖状ポリカーボネート樹脂、または分岐状ポリカーボネートを本発明の特性を損なわない範囲の量ブレンドすることができる。
【0034】
本発明の分岐状ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体には、本発明の特性を損なわない範囲で、さらに酸化防止剤、離型剤(脂肪酸エステル等)、耐候剤(紫外線吸収剤)、核剤、滑剤、可塑剤、帯電防止剤、増白剤、抗菌剤、着色剤(顔料、染料等)、充填剤、強化剤、他樹脂やゴム等の重合体、難燃剤等の改質改良剤を適宜添加して用いることができる。シート分野で建材用途として用いる場合は耐候剤を配合することが望ましく、また、発泡シートでは、核剤を配合することが望ましい。耐候剤としては、2−(2−ヒドロキシ−5−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール、2−[5−クロロ(2H)−ベンゾトリアゾール−2−イル]−4−メチル−6−(tert−ブチル)フェノール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]等が挙げられる。
【0035】
また、本発明の分岐状ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体は、透明性、成形性、低温衝撃強度、ドローダウン性に優れるので、種々の用途に好適に使用される。具体的には、射出成形、押出成形、ブロー成形などの成形加工に好適である。かかる用途としては電気・電子部品等を挙げることができる。
【実施例】
【0036】
以下に実施例を挙げて本発明を更に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。特に断り書きのない場合、部は重量部を表す。なお、評価は次に示す方法で行った。
【0037】
(1)分岐状ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体中の分岐剤含有量、ポリオルガノシロキサン単位含有量;1H−NMR(JEOL製JNM−AL400)を用いて、ペレット中の分岐剤含有量とポリオルガノシロキサン単位含有量を測定した。
【0038】
(2)分岐状ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体の粘度平均分子量(M);塩化メチレン100mlにペレット0.7gを20℃で溶解した溶液から求めた比粘度(ηsp)を次式に挿入して求めた。
ηsp/c=[η]+0.45×[η]c(但し[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10−40.83
c=0.7
【0039】
(3)分岐状ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体の構造粘性指数(N); ISO11443(JIS K 7199)に準拠し、キャピラリー型レオメーター(東洋精機製作所(株)製 キャピログラフ1D)を使用し、キャピラリーとして東洋精機製作所(株)製 キャピラリー型式EF(径:1.0mm、長さ:10.0mm、L/D:10)を用いて、炉体温度300℃で、剪断速度D(60.8−2430 sec−1)に対する剪断応力σ(Pa)を測定し、それぞれの値を両対数グラフにプロットして得られる回帰直線の勾配から構造粘性指数(N)を求めた。得られたペレットを120℃で5時間熱風乾燥したものをサンプルとして用いた。
【0040】
(4)ドローダウン性(Rd)の測定;ペレットを120℃で5時間乾燥した後、住友ベクーム社製の成形機SE−51/BA2を用い、緩圧縮タイプのスクリューで60mmφ×2mmのダイより角型水ボトル100mm×30mmを成形し、その際のパリソンのドローダウンおよびスウェルの影響を除いたパリソン長(L1)と実際のパリソン長(L2=60cm)とから次式により算出した。ドローダウン性は、Rdを評価し、Rd≦42を○、Rd>42を×とした。
Rd=(L2−L1)/L2×100
【0041】
(5)透明性:ペレットを120℃で5時間乾燥した後、算術平均粗さ(Ra)が0.03μmとしたキャビティ面を持つ金型を使用し、射出成形機(住友重機械工業(株)製 SG−150U)によりシリンダー温度290℃、金型温度80℃の条件で、成形サイクル50秒にて幅50mm、長さ90mm、厚みがゲート側から3mm(長さ20mm)、2mm(長さ45mm)、1mm(長さ25mm)である3段型プレートを成形した。かかる3段型プレートの厚み2.0mm部の成形板におけるHazeをASTM D1003に準拠し測定した。Hazeは成形品の濁り度で、数値が低いほど濁りが少ないことを示す。
【0042】
(6)低温シャルピー衝撃強度(単位:kJ/m);ペレットを120℃で5時間乾燥した後、射出成形機(住友重機械工業(株)製 SG−150U)によりシリンダー温度290℃、金型温度80℃の条件で、成形サイクル50秒にて幅10mm、長さ80mm、厚み4mmである曲げ試験片を成形し、ISO179に準拠し、−30℃でのシャルピー衝撃値(ノッチ付)を測定した。衝撃強度が大きいほど実用上好ましい。
【0043】
(7)成形性;(5)で作製した成形板の表面のムラ、ヒケの発生を目視評価した。(○は発生せず、×は発生)
【0044】
(8)金型汚れ;(5)と同様の手法で同一の成形板を連続100ショット成形し、その前後の金型表面の状態を目視評価した。(○は連続成形試験前後の変化なし、△は連続成形試験後に少量の付着物発生、×は連続成形試験後に多量の付着物発生)
【0045】
[実施例1]
温度計、攪拌機、還流冷却器付き反応器にイオン交換水2340部、25%水酸化ナトリウム水溶液947部、ハイドロサルファイト0.6部を仕込み、攪拌下にビスフェノールA710部を溶解した(ビスフェノールA溶液)後、塩化メチレンを2254部と48%水酸化ナトリウム水溶液94部、14%濃度の水酸化ナトリウム水溶液に1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンを25%濃度で溶解した水溶液38.1部(1.00モル%)、o−アリルフェノールで両末端がキャップされ、両末端にフェノール性水酸基を含有する平均重合度25のポリジメチルシロキサン(信越化学工業(株)製X−22−1875;下記式(α1−a)で示される化合物)36.0部、トリエチルアミン0.16部(0.05モル%)を加えて20±3℃でホスゲン350部を約90分かけて吹き込みホスゲン化反応を行った。ホスゲン化終了後、11%濃度のp−tert−ブチルフェノールの塩化メチレン溶液208部と48%水酸化ナトリウム水溶液74部を加え、攪拌を停止した。10分間静置後、攪拌を始め、乳化させた後、トリエチルアミン0.63部(0.20モル%)を加え、さらに28〜33℃で1時間攪拌して反応を終了した。
【0046】
反応終了後、生成物を塩化メチレンで希釈して水洗した後、塩酸酸性にして水洗し、水相の導電率がイオン交換水と殆ど同じになったところで、水相を分液し精製溶液を得た。この精製溶液を軸受け部に異物取出口を有する隔離室を設けた液温75℃のイオン交換水を満たしたニーダーに投入し、塩化メチレンを蒸発させて、分岐状ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体の粉粒体を得た。この粉粒体を145℃、6時間乾燥した。
【0047】
この粉粒体100重量部に対してトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトを0.03重量部、高級脂肪酸ペンタエリスリトールエステルを0.3重量部、アンスラキノン系染料を0.000035重量部加え混合し、かかる粉粒体をベント式二軸押出機[東芝機械(株)製TEM−50B]によりシリンダー温度280℃、乾式真空ポンプを用いてベント吸引圧700Paで吸引脱気しながら溶融混練押出しペレットを得た。このようにして得られたペレットを用いて、前記(1)〜(8)の評価を行い、その結果を表1に示した。
【0048】
【化2】

【0049】
[実施例2]
実施例1においてホスゲンを345部、14%濃度の水酸化ナトリウム水溶液に1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンを25%濃度で溶解した水溶液19.1部(0.50モル%)、11%濃度のp−tert−ブチルフェノールの塩化メチレン溶液174部に変更した以外は、実施例1と同様に行い、ペレットを得た。該ペレットを用いて、前記(1)〜(8)の評価を行い、その結果を表1に示した。
【0050】
[実施例3]
実施例1においてホスゲンを342部、14%濃度の水酸化ナトリウム水溶液に1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンを25%濃度で溶解した水溶液11.4部(0.30モル%)、11%濃度のp−tert−ブチルフェノールの塩化メチレン溶液161部に変更した以外は、実施例1と同様に行い、ペレットを得た。該ペレットを用いて、前記(1)〜(8)の評価を行い、その結果を表1に示した。
【0051】
[実施例4]
実施例1においてホスゲンを352部、ポリジメチルシロキサン88部、11%濃度のp−tert−ブチルフェノールの塩化メチレン溶液164部に変更した以外は、実施例1と同様に行い、ペレットを得た。該ペレットを用いて、前記(1)〜(8)の評価を行い、その結果を表1に示した。
【0052】
[実施例5]
実施例1においてホスゲンを347部、ポリジメチルシロキサン7部、11%濃度のp−tert−ブチルフェノールの塩化メチレン溶液217部に変更した以外は、実施例1と同様に行い、ペレットを得た。該ペレットを用いて、前記(1)〜(8)の評価を行い、その結果を表1に示した。
【0053】
[実施例6]
実施例1においてホスゲンを349部、14%濃度の水酸化ナトリウム水溶液に1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンを25%濃度で溶解した水溶液11.4部(0.30モル%)、ポリジメチルシロキサン88部、11%濃度のp−tert−ブチルフェノールの塩化メチレン溶液161部に変更した以外は、実施例1と同様に行い、ペレットを得た。該ペレットを用いて、前記(1)〜(8)の評価を行い、その結果を表1に示した。
【0054】
[実施例7]
実施例1においてホスゲンを347部、14%濃度の水酸化ナトリウム水溶液に1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンを25%濃度で溶解した水溶液11.4部(0.30モル%)、ポリジメチルシロキサン6部、11%濃度のp−tert−ブチルフェノールの塩化メチレン溶液246部に変更した以外は、実施例1と同様に行い、ペレットを得た。該ペレットを用いて、前記(1)〜(8)の評価を行い、その結果を表1に示した。
【0055】
[実施例8]
実施例1においてホスゲンを348部、14%濃度の水酸化ナトリウム水溶液に1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンを25%濃度で溶解した水溶液26.7部(0.70モル%)、ポリジメチルシロキサン25部、11%濃度のp−tert−ブチルフェノールの塩化メチレン溶液199部に変更した以外は、実施例1と同様に行い、ペレットを得た。該ペレットを用いて、前記(1)〜(8)の評価を行い、その結果を表1に示した。
【0056】
[実施例9]
実施例1においてホスゲンを351部、14%濃度の水酸化ナトリウム水溶液に1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンを25%濃度で溶解した水溶液26.7部(0.70モル%)、ポリジメチルシロキサン70部、11%濃度のp−tert−ブチルフェノールの塩化メチレン溶液246部に変更した以外は、実施例1と同様に行い、ペレットを得た。該ペレットを用いて、前記(1)〜(8)の評価を行い、その結果を表1に示した。
【0057】
[実施例10]
実施例1においてホスゲン吹き込み前にトリエチルアミンを添加せず、ホスゲン吹き込み終了後に添加するトリエチルアミンを0.80部(0.25モル%)に変更した以外は、実施例1と同様に行い、ペレットを得た。該ペレットを用いて、前記(1)〜(8)の評価を行い、その結果を表1に示した。
【0058】
[比較例1]
実施例1においてホスゲンを345部、ポリジメチルシロキサン0部、11%濃度のp−tert−ブチルフェノールの塩化メチレン溶液217部に変更した以外は、実施例1と同様に行い、ペレットを得た。該ペレットを用いて、前記(1)〜(8)の評価を行い、その結果を表2に示した。
【0059】
[比較例2]
実施例1においてホスゲンを349部、ポリジメチルシロキサン0部、11%濃度のp−tert−ブチルフェノールの塩化メチレン溶液272部に変更した以外は、実施例1と同様に行い、ペレットを得た。該ペレットを用いて、前記(1)〜(8)の評価を行い、その結果を表2に示した。
【0060】
[比較例3]
実施例1においてホスゲンを342部、14%濃度の水酸化ナトリウム水溶液に1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンを25%濃度で溶解した水溶液0部(0.00モル%)、11%濃度のp−tert−ブチルフェノールの塩化メチレン溶液178部に変更した以外は、実施例1と同様に行い、ペレットを得た。該ペレットを用いて、前記(1)〜(8)の評価を行い、その結果を表2に示した。
【0061】
[比較例4]
実施例1においてホスゲンを346部、14%濃度の水酸化ナトリウム水溶液に1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンを25%濃度で溶解した水溶液0部(0.00モル%)、ポリジメチルシロキサン92部、11%濃度のp−tert−ブチルフェノールの塩化メチレン溶液127部に変更した以外は、実施例1と同様に行い、ペレットを得た。該ペレットを用いて、前記(1)〜(8)の評価を行い、その結果を表2に示した。
【0062】
[比較例5]
実施例1においてホスゲンを353部、14%濃度の水酸化ナトリウム水溶液に1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンを25%濃度で溶解した水溶液19.1部(0.50モル%)、ポリジメチルシロキサン113部、11%濃度のp−tert−ブチルフェノールの塩化メチレン溶液231部に変更した以外は、実施例1と同様に行い、ペレットを得た。該ペレットを用いて、前記(1)〜(8)の評価を行い、その結果を表2に示した。
【0063】
[比較例6]
実施例1においてホスゲンを351部、14%濃度の水酸化ナトリウム水溶液に1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンを25%濃度で溶解した水溶液53.4部(1.40モル%)、ポリジメチルシロキサン54部、11%濃度のp−tert−ブチルフェノールの塩化メチレン溶液229部に変更した以外は、実施例1と同様に行い、ペレットを得た。該ペレットを用いて、前記(1)〜(8)の評価を行い、その結果を表2に示した。
【0064】
[比較例7]
実施例1においてホスゲンを359部、14%濃度の水酸化ナトリウム水溶液に1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンを25%濃度で溶解した水溶液53.4部(1.40モル%)、ポリジメチルシロキサン115部、11%濃度のp−tert−ブチルフェノールの塩化メチレン溶液229部に変更した以外は、実施例1と同様に行い、ペレットを得た。該ペレットを用いて、前記(1)〜(8)の評価を行い、その結果を表2に示した。
【0065】
[比較例8]
実施例1においてホスゲンを346部、14%濃度の水酸化ナトリウム水溶液に1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンを25%濃度で溶解した水溶液7.6部(0.20モル%)、ポリジメチルシロキサン1部、11%濃度のp−tert−ブチルフェノールの塩化メチレン溶液214部に変更した以外は、実施例1と同様に行い、ペレットを得た。該ペレットを用いて、前記(1)〜(8)の評価を行い、その結果を表2に示した。
【0066】
[比較例9]
実施例1においてポリジメチルシロキサンを添加するタイミングをホスゲン吹き込み前からホスゲン吹き込み終了後に変更した以外は、実施例1と同様に行い、ペレットを得た。該ペレットを用いて、前記(1)〜(8)の評価を行い、その結果を表2に示した。
【0067】
表1および表2における実施例と比較例との比較から、本発明の分岐状ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体は、透明性、ドローダウン性、低温衝撃強度、成形性に優れていることがわかる。
【0068】
比較例1、2(ポリオルガノシロキサン単位を含有しないもの)ではドローダウン性、透明性、成形性は良好であったが、低温衝撃強度が悪化している。比較例3、4(分岐剤を含有しないもの)では低い構造粘性指数しか示さず、ドローダウン性が悪化した。比較例5(ポリオルガノシロキサン単位の含有量が多すぎるもの)では成形品に白い曇りが発生し、透明性が低下した。比較例6(分岐剤含有量が多すぎるもの)では構造粘性指数が高くなりすぎ、成形性が悪化した。比較例7(ポリオルガノシロキサン単位の含有量および分岐剤含有量が多すぎるもの)では構造粘性指数が高くなりすぎ、成形性が悪化し、更には透明性も悪化した。比較例8(ポリオルガノシロキサン単位の含有量および分岐剤含有量が少なすぎるもの)では低い構造粘性指数しか示さず、ドローダウン性が悪化し、低温衝撃強度も悪化した。比較例9(製造条件を変更したもの)では低い低温衝撃強度しか示さず、透明性も悪化し、更に連続成形後の金型には付着物が発生した。
【0069】
【表1】

【0070】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明の分岐状ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体は、電気・電子部品等種々の用途として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二価フェノール化合物、分岐剤、ポリオルガノシロキサン、一価フェノール類、およびホスゲンを使用し、アルカリ水溶液および有機溶媒の存在下で、所望により反応触媒を用いて、界面重合法によって得られる分岐状ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体であって、該共重合体中の分岐剤含有量が、二価フェノール化合物に対し0.25〜1.2モル%であり、ポリオルガノシロキサン単位の含有量が該共重合体100重量%に対して0.5〜10.0重量%であり、且つ該共重合体のヘイズ値が3.0%以下であることを特徴とする分岐状ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体。
【請求項2】
粘度平均分子量が1.8×10〜3.0×10であることを特徴とする請求項1記載の共重合体。
【請求項3】
ポリオルガノシロキサン単位が(α1)で表されるものである請求項1記載の共重合体。
【化1】

(式中、R、R、RおよびRは炭素数1〜6のアルキル基またはフェニル基を示し、同一でも異なっていてもよく、Rは脂肪族または芳香族化合物からの二価の有機残基を示し、nはカッコ内の単位の繰り返し数を示し、その数平均値が10〜60であり、カッコ内の構成単位は2種以上の混合物であってもよい。)
【請求項4】
300℃における構造粘性指数が1.6〜2.2の範囲であることを特徴とする請求項1記載の共重合体。
【請求項5】
二価フェノール化合物と分岐剤とを混合したアルカリ水溶液、ポリオルガノシロキサン、および有機溶媒の存在下に、ホスゲンを吹き込み反応させてオリゴマーを得、得られた反応溶液に一価フェノール類を加え、乳化重合時に、更に二価フェノール化合物に対して0.01〜0.5モル%の反応触媒を加えて、重合させることを特徴とする請求項1記載の共重合体の製造方法。
【請求項6】
二価フェノール化合物と分岐剤とを混合したアルカリ水溶液、ポリオルガノシロキサン、有機溶媒、および二価フェノール化合物に対して0.01〜0.1モル%の反応触媒の存在下に、ホスゲンを吹き込み反応させてオリゴマーを得、得られた反応溶液に一価フェノール類を加え、乳化重合時に、更に二価フェノール化合物に対して0.01〜0.4モル%の反応触媒を加えて、重合させることを特徴とする請求項1記載の共重合体の製造方法。

【公開番号】特開2012−236926(P2012−236926A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−107286(P2011−107286)
【出願日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(000215888)帝人化成株式会社 (504)
【Fターム(参考)】