説明

分岐部治療システムおよび方法

血管分岐部の治療のために構成されたカテーテルアセンブリに関する。カテーテルアセンブリは、カテーテルシャフト、第1バルーンおよび第2バルーンを備える。第2バルーンは、拡張されると、第1バルーンに対して半径方向外側に伸展する。弁装置は、第2バルーンの拡張を制御する。弁装置の一部は、カテーテルシャフトの基端部分および先端部分に配置され得る。典型的には、第1バルーンが拡張され、続いて第2バルーンが拡張される。側枝開口を有するステントは、第1バルーンに操作可能に取り付けられる。第2バルーンは、第2バルーンが拡張されると、側枝開口を通って伸展するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は分岐部治療システム、および関連する分岐部を治療する方法に関する。好ましい構成はまた、脈管分岐部を治療するために用いられるカテーテルアセンブリのバルーン部分を作動させるための方法および構成に関する。
【背景技術】
【0002】
カテーテルは、身体の様々な部分において、狭窄症(strictures)、狭窄(stenoses)および狭細(narrowing)を治療するために、ステントおよびバルーン構造体と共に用いられる。狭窄の拡張のため、体内の治療部位にステントを搬送し留置するために、様々なカテーテル設計が開発されてきた。
【0003】
脈管を拡張することにより、または管壁を補強することにより、例えば閉塞、狭窄、動脈瘤、解離、または弱くなったり、病変したり、もしくは異常に拡張したりした脈管または管壁のような症状を治療するために、ステントは、典型的には、カテーテルによって、静脈、動脈、または他の管状身体器官内において腔内に配置される。ステントは、管壁の弾性反跳および再構築を防止し、冠動脈のバルーン血管形成術によって生じた血管壁における解離を治療することによって、血管形成術の結果を改善することができる。
【0004】
従来のステントの技術は比較的十分に開発されているが、脈管分岐部の領域の治療に関するステント技術は依然として開発中である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、脈管分岐部の領域の治療を行うための改良されたカテーテルアセンブリを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、概して、脈管分岐部のような患者の分岐した管腔の治療のためのカテーテルアセンブリに関連する。本開示の一態様は、第1バルーンおよび第2バルーンを有するカテーテルアセンブリに関連する。第1バルーンは、カテーテルシャフトの先端に連結された長尺状管状構造であり、第2バルーンは第1バルーン上に配置されている。第2バルーンは、第1バルーンに対して半径方向外側に伸展し得る。1つの構成において、第1バルーンと第2バルーンとの間には、第1バルーンおよび第2バルーンの膨張の相対的なタイミングを制御するために、層または膜が備えられている。典型的には、第1バルーンを膨張させ、続いて膜に開口を生成する。前記開口は、第1バルーンと第2バルーンと間に流体の流れを提供して、第2バルーンを半径方向に伸展させる。
【0007】
本開示のさらなる態様は、カテーテルアセンブリの少なくとも2本の膨張管腔の基端と、流体が流れるように連通(以下「流体連通」とする)しているマニホルドにおける弁機構に関連する。前記膨張管腔は、カテーテルアセンブリの第1バルーン部分および第2バルーン部分と流体連通している。弁機構は、一度に流体源から前記膨張管腔のうちの1つへの膨張流体の流れを制御する。前記弁はまた、流体源からすべての膨張管腔への流体の流れが終了する停止位置に駆動され得る。前記弁はまた、第1バルーン部分および第2バルーン部分を収縮または再膨張させるために用いられ得る。
【0008】
この開示による効果を得るために、ある構成が本願で特徴付けられるすべての特徴を含む必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1A】この開示の原理に従って構成され、第1閉鎖位置にある弁部材を有するカテーテルアセンブリの例を示す概略側面図。
【図1B】弁部材が主膨張管腔と流体連通する第1開放位置にある、図1のカテーテルアセンブリを示す概略側面図。
【図1C】弁部材が副膨張管腔と流体連通する第2開放位置にある、図1のカテーテルアセンブリを示す概略側面図。
【図1D】弁部材が第2閉鎖位置にある、図1のカテーテルアセンブリを示す概略側面図。
【図2A】この開示の原理に従ったカテーテルアセンブリの先端特徴を示す概略側面図であり、前記カテーテルアセンブリは、膨張した第1バルーン部材と収縮した第2バルーン部材との間の位置において、閉鎖形態にある弁構造を備える。
【図2B】弁構造が、第2バルーン部材の膨張を提供する開放形態にある、図2Aのカテーテルアセンブリを示す概略側面図。
【図3A】この開示の原理に従った別のカテーテルアセンブリの例の先端特徴を示す概略側面図であり、前記カテーテルアセンブリは、収縮した第1バルーン部材と第2バルーン部材との間の位置において、閉鎖形態にある弁構造を備える。
【図3B】弁部材は閉鎖されており、かつ第1バルーン部材は膨張している、図3Aに示したカテーテルアセンブリを示す概略側面図。
【図3C】弁部材は開放されており、第1バルーンおよび第2バルーン部材は膨張している、図3Aのカテーテルアセンブリを示す概略側面図。
【図4A】機械的拡張部材が収縮した第2バルーン部材内に配置されており、かつ第1バルーン部材は膨張している、この開示の原理に従った別のカテーテルアセンブリの例の先端特徴を示す概略側面図。
【図4B】機械的拡張部材は第2バルーンを拡張するように作動されている、図4Aのカテーテルアセンブリを示す概略側面図。
【図4C】図4Bの拡張部材を示す概略上面図。
【図5A】側方バルーンは独立した側方膨張部材に連結されており、かつ主バルーンから流れが分離されている、この開示の原理に従った別のカテーテルアセンブリの例の先端特徴を示す概略側面図。
【図5B】側方バルーンは独立した側方膨張部材に連結されており、かつ主バルーンから流れが分離されている、この開示の原理に従った別のカテーテルアセンブリの例の先端特徴を示す概略側面図。
【図5C】側方バルーンは独立した側方膨張部材に連結されており、かつ主バルーンから流れが分離されている、この開示の原理に従った別のカテーテルアセンブリの例の先端特徴を示す概略側面図。
【図6A】側方バルーンは、主バルーンと流体連通するように操作可能な独立した側方膨張部材に連結されている、この開示の原理に従った別のカテーテルアセンブリの例の先端特徴を示す概略側面図。
【図6B】側方バルーンは、主バルーンと流体連通するように操作可能な独立した側方膨張部材に連結されている、この開示の原理に従った別のカテーテルアセンブリの例の先端特徴を示す概略側面図。
【図6C】側方バルーンは、主バルーンと流体連通するように操作可能な独立した側方膨張部材に連結されている、この開示の原理に従った別のカテーテルアセンブリの例の先端特徴を示す概略側面図。
【図7】上部に配置されたステントを有する、図3Cに示したカテーテルアセンブリを示す概略側面図であり、前記カテーテルアセンブリは脈管分岐部内に配置されている。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.一般的背景
この開示は、分岐部治療用カテーテルアセンブリおよび関連する患者の体内の分岐部の治療法に関する。分岐部という用語は、1つの構成部分から2つ以上の構成部分への分離地点を意味する。一般に、体内管腔の分岐部は、1)主管腔から延びる、もしくは分岐する少なくとも1本の枝管腔を有する連続した主管腔、または、2)少なくとも第1枝管腔と第2枝管腔とに分離する第1管腔(親管腔とも称される)として定義される。管腔という用語は、管状構造の空洞を意味する。分岐部の例は、連続した主血管と、主血管から分岐した枝血管とを含む血管分岐部である。血管分岐部は、これに代わって、第1枝血管と第2枝血管とに分離する親血管を含み得る。
【0011】
本願において開示するカテーテルアセンブリの例のいくつかは、膨張管腔を画定する主カテーテルシャフトまたは他の構造と、ガイドワイヤ管腔を画定するガイドワイヤハウジングと、カテーテルシャフトの先端部分に配置された長尺状の主バルーンとを備える。カテーテルシャフトの先端部分には副バルーンも配置される。一部の構成において、副バルーンは主バルーンの上に配置される。副バルーンは、膨張させると、主バルーンの長手軸線に対して略半径方向に突出する。主バルーンの「上に配置されている」副バルーンは、主バルーンに取り付けられているか、または主バルーンと一体である。図1A〜図4Bは、主バルーンの上に配置されているいくつかの副バルーンの例を示している。
【0012】
本願において開示する他のカテーテルアセンブリの例は、主バルーンに平行に隣接して延びる独立した側方膨張部材の上に配置された副バルーンまたは側方バルーンを備える。副バルーンは、膨張させると、主バルーンの長手軸線に関して略半径方向に突出する。側方膨張部材の基端部分は、主バルーンの基端側でカテーテルシャフトと交差し得る。側方膨張部材はまた、主バルーンに膨張流体を提供する膨張管腔と流体連通し得る。一部の構成において、側方膨張管腔は、主バルーンの基端側でカテーテルシャフトの外側に留まる。側方膨張部材はまた、主バルーンに膨張流体を提供する膨張管腔からは流れが分離されたままであり得る。図5A〜図6Cは、独立した側方膨張部材に沿って配置された、いくつかの副バルーンの例を示す。
【0013】
側方膨張部材と、主バルーンに膨張流体を提供する膨張管腔とは、カテーテルシャフトの基端部分において、弁機構を有するマニホルドに連結され得る。マニホルドの例について、図1A〜図1Dを参照して下記で説明する。
【0014】
本願において開示するカテーテルアセンブリの例はさらにステントを備え得る。カテーテルアセンブリは、ステントを、例えば血管分岐部の領域の分岐治療部位に配置するように適合され得る。ステントは、基端開放端および先端開放端、ならびに側枝開口を備え得る。側枝開口は、ステントの基端開放端と先端開放端との間の位置に配置される。副バルーンが主バルーンから半径方向外側に拡張されるとき、副バルーンの少なくとも一部は、側枝開口を通って伸展する。
【0015】
本願において用いられる「バルーン」という用語は、膨張流体(例えば液体またはガス状物質)で満たされると拡張する膨張可能部材に限定されない。本願において用いられるバルーンは、様々な媒体、構造および方法のうちのいずれかを用いて、非拡張状態から拡張状態に拡張される拡張可能部材である。典型的には、本願に記載するバルーンは、血管のような体内管腔内で使用するために構成される。さらに、本願に記載するバルーンは、バルーンが拡張されるときに、バルーンの少なくとも一部に操作可能に取り付けられているか、または係合している拡張型ステントの一部を拡張させるために用いることができる。
【0016】
II. 図1A−1Dに示した例
ここで、図1A〜図1Dを参照して、カテーテルアセンブリ10の例について説明する。カテーテルアセンブリ10は、カテーテルシャフト12と、第1バルーンおよび第2バルーン14,16と、ガイドワイヤ管腔18を画定するガイドワイヤハウジングと、主膨張管腔および副膨張管腔をそれぞれ画定する主膨張部材および副膨張部材20,22とを備える。「膨張管腔」という用語は、本願では「膨張部材」という用語と区別なく用いられる。マニホルド24は、カテーテルシャフト12の基端部分11に連結されている。マニホルド24は、バルーン14,16への膨張流体の流れを制御するために、それぞれ図1A〜図1Dに示した第1位置、第2位置、第3位置、および第4位置の間で調節可能な弁26を備える。
【0017】
第1バルーンおよび第2バルーン14,16は、カテーテルシャフト12の先端部分13に配置されている。第1バルーン14は、典型的には、略円形断面を備えた長尺状の管状形を有する。第2バルーン16は、第1バルーン14の外側に配置され、第1バルーン14(図1Cを参照)の長手軸線Xに対して略半径方向に拡張するように拡張可能である。
【0018】
主膨張管腔20はカテーテルシャフト12の内部空洞内に画定されている。主膨張管腔20は、第1バルーン14の内部と流体連通している。副膨張管腔22もまた、カテーテルシャフト12の基端部分11と先端部分13との間のカテーテルシャフト12内に画定されて示されている。副膨張管腔22は、第2バルーン16と流体連通するように連結されている。膨張管腔20,22は、互いに平行に配置されて、カテーテルシャフト12内に配列された別個の管であり得る。これに代わって、膨張管腔20,22は、カテーテルシャフト12内の長手方向に配置された分離壁によってカテーテルシャフト内に画定することができる。他の構成では、膨張管腔20,22の一方をカテーテルシャフト12の外側に配置することができる。主膨張管腔および副膨張管腔20,22は、カテーテルシャフト12の基端部分において、マニホルド24の弁26を介して、膨張流体28の供給源に流体連通するように連結されている。典型的には、膨張管腔20,22は、互いに流れが分離(fluidly separated)されている。
【0019】
ガイドワイヤ管腔18は、第1バルーン14内を通って、第1バルーン14の先端15を越えて先端側に延在する。ガイドワイヤ管腔18は、カテーテルシャフト12の先端部分において、第1バルーン14およびカテーテルシャフト12から離れている。ガイドワイヤ管腔18のこの種の構造は、時に、ラピッドエクスチェンジ(Rx)ガイドワイヤシステムのようなシングルオペレーターエクスチェンジ(SOE)ガイドワイヤシステムと称される。他の配置において、ガイドワイヤ管腔18は、カテーテルシャフト12内をカテーテルシャフト12の先端部分から基端部分まで延び、さらに第1バルーン14内を通って延在する。
【0020】
マニホルド24の弁26は、流体源28からバルーン14,16への流体の流れを制御するために、いくつかの異なる位置において調節するように構成されている。図1Aは、弁26を通る流体経路27が、主膨張管腔および副膨張管腔20,22の開放基端部分21,23と流体連通しない第1閉鎖位置にある弁26を示している。図1Bは、流体経路27が主膨張管腔20への開放端21と整合されている第2位置にある弁26を示している。図1Cは、流体経路27が副膨張管腔22への開放端23と整合されて、流体源28と第2バルーン16との間に流体連通を提供する第3位置にある弁26を示している。図1Dは、流体経路27が再び、主膨張管腔または副膨張管腔20,22のいずれとももはや流体連通しない第4位置にある弁26を示している。添付図面には示していないが、代替構成では、膨張管腔20,22のうちの1つ以上を介して、流体源28と、バルーン14,16の各々との間に流体連通を同時に提供することが可能である。
【0021】
弁26は、常時、主膨張管腔または副膨張管腔20,22のうちの一方のみと流体連通する流体経路を有する回転可能な構造体として構成される。図1A〜図1Dに示す弁26の構造は概略であり、例示のみのために提供される。他のバルブ構造の例を用いて、類似した弁機能を提供してもよい。次に、弁26のさらなる態様について、カテーテルアセンブリ10を用いる方法に関連して説明する。
【0022】
カテーテルアセンブリ10が患者内の治療に用いられる場合、第1バルーンおよび第2バルーン14,16は、典型的には、最小の外形(outer profile)または外周を有するように、最初は図1Aに示すような収縮状態に維持される。最小の外形を提供することは、カテーテルアセンブリ10が冠血管のような様々な体内管腔を通って移動する能力を高める。カテーテルシャフト12の先端部分が患者内の治療部位に位置しているときに、分岐部を治療する目的のために、第1バルーンおよび第2バルーンが膨張させられる。
【0023】
次に図1Bを参照すると、弁26を、流体源28が主膨張管腔および副膨張管腔20,22(図1Aを参照)のいずれとの流体連通からも分離される第1(閉鎖)位置から、流体源28が主膨張管腔20と流体連通するように連結される第2位置に調節することによって、まず第1バルーン14を膨張させる。第1バルーン14を膨張させた後、弁26は、流体源28と副膨張管腔22との間に流体連通を提供するために、図1Cに示すような第3位置に調節される。
【0024】
第2バルーン16を膨張させた後、弁26は所望により様々な位置に調節することができる。例えば、弁26を、流体源28が主膨張管腔および副膨張管腔20,22との流体連通から再び分離される図1Dに示す第4位置に調節することができる。第1バルーン14のさらなる膨張を提供するために、弁26を図1Cに示す第3位置から図1Bに示す第2位置に調節することもできる。また、弁26を第3位置から図1Aに示す第1位置に調節することもできる。
【0025】
弁26はまた、第1バルーンおよび第2バルーン14,16を収縮させるときに、図1A〜図1Dに示す位置のいずれかに調節することもできる。第1バルーンおよび第2バルーン14,16を収縮させるとき、弁26は、膨張流体のための貯蔵所に連結され得る。一部の例では、流体源28が流体貯蔵所として作用し得るが、他の構成では、別個の流体貯蔵所を備えることができる。第1バルーンおよび第2バルーン14,16を収縮させるときに、弁26を図1A〜図1Dに示す位置の間で所望の通りに調節して、第1バルーンおよび第2バルーン14,16を連続して収縮させることができる。第1バルーンおよび第2バルーン14,16は、1段階で完全に収縮させてもよいし、または図1A〜図1Dに示す位置の間で切り替えることにより、複数の段階で収縮させてもよい。
【0026】
本願で開示するカテーテルアセンブリにおいて、バルーンは、血管内で膨張させた場合、血管内の狭窄およびプラーク蓄積のような症状を治療するために用いることができる。バルーンは任意の適当な材料から構成することができる。本願で開示するバルーンおよびカテーテルのいくつかの材料の例としては、熱可塑性ポリマー、ポリエチレン(高密度、低密度、中間密度、直鎖低密度)、ポリエチレンの様々なコポリマーおよびブレンド、アイオノマー、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマー、ポリエーテル−ポリエステルコポリマー、およびポリエーテルポリアミドコポリマーが挙げられる。適当な1つの材料は、コポリマーポリオレフィン材料であるSurlyn(登録商標)(デュポン ド ヌムール、デラウェア州ウィルミントン)である。さらに適当な材料としては、熱可塑性ポリマーおよび熱硬化性ポリマー材料、ポリエチレンテレフタレート(一般にPETと呼ばれる)、熱可塑性ポリアミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリプロピレンが挙げられる。いくつかの他の材料の例としては、ポリウレタン、およびポリアミド−ポリエーテルブロックコポリマーまたはアミド−テトラメチレングリコールコポリマーのようなブロックコポリマーが挙げられる。付加的な例としては、PEBAX(登録商標)(ポリアミド/ポリエーテル/ポリエステルブロックコポリマー)のポリマー群、例えばPEBAX(登録商標)70D、72D、2533、5533、6333、7033または7233(ペンシルベニア州フィラデルフィア所在のエルフ アトケム(Elf AtoChem)から入手可能)が挙げられる。他の例としては、脂肪族ナイロン、例えば、Vestamid L21011F、ナイロン11(エルフ アトケム(Elf Atochem))、ナイロン6(アリード シグナル(Allied Signal))、ナイロン6/10(ビーエーエスエフ(BASF))、ナイロン6/12(アシュリー ポリマー(Ashley Polymers))、またはナイロン12のようなナイロンが挙げられる。ナイロンの付加的な例としては、Grivory(登録商標)(イーエムエス(EMS))およびナイロンMXD6のような芳香族ナイロンが挙げられる。他のナイロンおよび/またはナイロンの組み合わせを用いることもできる。さらにさらなる例としては、CELANEX(登録商標)(ニュージャージー州サミット所在のティコナ(Ticona)から入手可能)のようなポリブチレンテレフタレート(PBT)、例えばARNITEL(登録商標)EM740などのARNITEL(登録商標)(インディアナ州エリオンスピラ(Erionspilla)所在のディエスエム(DSM)から入手可能)のようなポリエステル/エーテルブロックコポリマー、Trogamid(PA6−3−T、デグサ)のような芳香族アミド、およびHYTREL(登録商標)(デラウェア州ウィルミントン所在のデュポン ド ヌムール(Dupont de Nemours))のような熱可塑性エラストマーが挙げられる。いくつかの実施形態において、PEBAX(登録商標)、HYTREL(登録商標)およびARNITEL(登録商標)材料は、約45D〜約82DのショアD硬度を有する。前記バルーン材料は、純粋な状態で用いてもよいし、またはブレンドとして用いてもよい。例えば、ブレンドは、PBTと、RITEFLEX(登録商標)(ティコナから入手可能)、ARNITEL(登録商標)またはHYTREL(登録商標)のような1種以上のPBT熱可塑性エラストマーとを含んでもよいし、またはポリエチレンテレフタレート(PET)と、PBT熱可塑性エラストマーのような熱可塑性エラストマーとを含んでもよい。バルーン材料の付加的な例は、米国特許第6,146,356号に見られる。前記特許文献は参照によって本願に援用される。
【0027】
本開示の分岐部デリバリーシステムの実施形態と共に、多種多様なステント、カテーテルおよびガイドワイヤの形態を用いることができる。本願で開示される本発明の原理は、いかなる特定の設計または形態にも限定されるべきでない。
【0028】
カテーテルアセンブリ10は、拡張型ステント(例えば、下記に記載する図7のステント70を参照されたい)と共に用いることができる。本願において開示する分岐部デリバリーシステムと共に用いることができるいくつかのステントは、例えば、バルディ(Vardi)らに付与された米国特許第6,210,429号、同第6,325,826号および同第6,706,062号、2003年8月21日出願の「STENT WITH A PROTRUDING BRANCH PORTION FOR BIFURCATED VESSELS」と題された米国特許出願第10/644,550号、および「SELF−EXPANDING STENT AND CATHETER ASSEMBLY AND METHOD FOR TREATING BIFURCATIONS」と題された米国特許出願公開第2004/0176837号に見られる。前記特許文献の全容は、参照によって本願に援用される。一般に、前述のステントは、ステントの先端開放端と基端開放端との間に位置する側枝開口を備える。側枝開口は、ステントの内部管腔と、ステントの外側の領域との間の経路を画定する。ステントの側枝開口は、ステント側壁が構成されるストラット構造の間に画定されるセル開口とは異なる。一部のステントでは、側枝開口は、拡張可能構造によって包囲され得る。拡張可能構造は、例えば、分岐部治療システムの膨張可能部分の拡張の際に、分岐部の枝管腔内へと半径方向に延びるように構成され得る。典型的には、ステントは、側枝開口が枝管腔への開口と整合された状態で、主管腔内に配置された後に、拡張される。側枝開口の枝管腔への開口との整合は、半径方向の整合および軸線方向の整合の双方を含む。側枝開口を包囲する拡張可能構造を備えるステントは、1つ以上の膨張可能部材を用いて、1回の拡張または複数回の拡張によって拡張され得る。
【0029】
典型的には、ステントは、該ステントの側枝開口が第2バルーン16と軸線方向および半径方向において整合された状態で、第1バルーン14上に配置される。第2バルーン16は、膨張すると、側枝開口を通って伸展する。側枝開口を備えたステントおよび血管分岐部の治療のさらなる考察について、図7を参照しながら下記で述べる。
【0030】
III. 図2A〜図2Bに示した例
図2A〜図2Bを参照しながら、別のカテーテルアセンブリ100の例について説明する。カテーテルアセンブリ100は、カテーテルシャフト12、第1バルーンおよび第2バルーン14,16、ガイドワイヤ管腔18、膨張管腔20、および電気活性ポリマー(EAP)弁30を備える。カテーテルシャフト12は、その基端(図示せず)において、マニホルドまたはカテーテルシャフト12の操作のための他の器具を有していてもよい。第1バルーン14は、その基端において、カテーテルシャフト12の先端部分に連結されている。第1バルーン14の先端はガイドワイヤ管腔18の先端に連結されている。膨張管腔20は、第1バルーン14の内部と流体連通している。
【0031】
第2バルーン16は、第1バルーン14の基端と先端との間において第1バルーン14上に配置されている。第2バルーン16は、膨張すると、第1バルーン14から半径方向外側の方向に拡張するように構成されている。一例において、第2バルーン16は、例えば、成形法を用いて、第1バルーン14と一体に形成することができる。これに代わって、第2バルーン16は、独立した要素として製造され、例えば、熱接着または溶接(例えばレーザーボンディング)、接着結合、または機械的結合(例えば超音波、高周波、ラッピングまたはスウェージング)を用いて、別工程で、第1バルーン14に固定されるか、さもなければ取り付けられ得る。さらなる代替案では、第1バルーンおよび第2バルーン14,16は、内側バルーンおよび外側バルーンを有する二要素(two−piece)バルーンとして形成される。
【0032】
弁30(または本願で開示する他の弁構造)は、単一要素または二要素バルーン構造のための成形工程と同時に、第1バルーン14と第2バルーン16との間に配置され得る。これに代わって、前記弁は、第2層と、または第2層内に、接合する前の、バルーンのうちの1つの内層の二次処理の間に、例えば、一部を切除して、その切除した部分を、弁機能を提供する第2要素と置き換えることによって、配置され得る。
【0033】
EAP弁30は、EAP材料32を備える。EAP材料32には、複数の駆動線(actuation wire)34,35が電気的に接続され得る。作動線(activation wire)34,35の一方または双方を作動させると、EAP材料32は開口36を画定するように形状を変化させる(図2Bを参照)。
【0034】
カテーテルアセンブリにおけるEAP材料の配置によって、様々なバルーン特性を操作および/または改善することができる。EAPは、電気刺激に応答して、形状を変化させるその能力によって特徴づけられる。アクチュエータとして用いられる場合、EAP材料は、典型的には、大きな力を持続しながら、大きな変形を受ける。EAP材料は、誘電性EAPとイオン性EAPとに分類することができる。圧電材料を用いることもできるが、圧電材料は、電圧が印加されると、変形を受ける傾向があり得る。電気的EAPとしては、強誘電体ポリマー、誘電性EAP、エレクトロリストリクティブ(electrorestrictive)グラフトエラストマーのようなエレクトロリストリクティブポリマーおよび電気粘弾性(electroviscoelastic)エラストマーおよび液晶エラストマー材料が挙げられる。イオン性EAPとしては、イオン性ポリマーゲル、アイオノマーポリマー−金属複合材、導電性ポリマー(conductive polymer)およびカーボンナノチューブが挙げられる。イオン性EAPは、小電圧の印加により、形状を著しく屈曲させたり、変化させたりすることができる。
【0035】
イオン性EAPはまた、それらを本願に開示するカテーテルアセンブリ構成における使用に対して興味深いものにする以下の、1)イオン性EAPは比較的軽量で、可撓性であり、小さく、容易に製造される、2)制御するのが容易なエネルギー源が利用可能であり、エネルギーを容易にEAPに伝えることができる、3)電位の小さな変化(例えば1Vのオーダーの電位変化)を用いて、EAPの体積変化をもたらすことができる、4)イオン性EAPは駆動が比較的に速い(例えば、2、3秒で完全に拡張/収縮)、5)EAP領域は、様々な技術、例えば電着を用いて形成することができる、6)所望により、EAP領域は、例えばフォトリソグラフィーを用いて、パターン化することができるといったことを含む多数の付加的な特性を有する。
【0036】
EAPの駆動をもたらすためには、一般に以下の要素、すなわち、1)電位の供給源、2)EAPを含む活性領域、3)対向電極、および4)活性領域と対向電極との双方に接触した電解質が用いられる。本発明に関連して使用するための電位の供給源は、極めて単純であり得、例えばDCバッテリーおよび入切スイッチからなる。これに代わって、より複雑なシステムを用いることができる。例えば、マイクロプロセッサーと電気的接続を確立して、一連の複雑な制御信号がEAP活性領域に送られることを可能にすることができる。活性領域の表面の少なくとも一部と接触している電解質は、イオンの流動を可能にし、よってイオンに対するソース/シンクとして作用する。本願では、任意の適切な電解質を使用することができる。電解質は、イオン移動が許容される限り、例えば液体であっても、ゲルであっても、または固体であってもよい。対向電極は、任意の適切な導電体、例えば導電性ポリマー、導電性ゲル、またはステンレス鋼、金、または白金のような金属から形成され得る。対向電極の表面の少なくとも一部は、電荷の帰還経路を提供するために電解質に接している。
【0037】
一構成において、用いられるEAPはポリピロール(plypyrrole)である。ポリピロール(Plypyrrole)含有の活性領域は、押し出し、キャスティング、浸漬被覆、スピンコーティングまたは電気重合/堆積技術のような多くの既知の技術を用いて作製することができる。そのような活性領域はまた、所望により、例えばリソグラフィ技術を用いて、パターン化することができる。他のEAP材料の例としては、ポリアニリン、ポリスルホンおよびポリアセチレンが挙げられる。EAP材料およびそれらの使用に関する付加的な詳細および説明は、本発明の譲受人に譲渡された米国特許出願第11/411,690号および同第10/763,825号、ならびに米国特許第6,514,237号に記載されている。上記特許文献は、参照により、余すところなく本願に援用される。
【0038】
駆動線34,35は、EAP材料の電子的駆動を提供して、EAP弁を、第1バルーン14と第2バルーン16との間に流体の流れが存在しない図2Aに示す閉鎖位置と、開口36が第1バルーン14と第2バルーン16との間に流体連通を提供する図2Bに示す開放位置との間で変化させる。EAP弁30が図2Bに示す開放位置にある場合、膨張流体は第1バルーン14内から第2バルーン16の内部に移動して、第2バルーン16を図2Bに示す半径方向の拡張位置に膨張させる。一部の構成において、EAP弁30は、第1バルーン14と第2バルーン16との間の流体の流れをさらに制御するために閉鎖され得る。
【0039】
駆動線34,35は、EAP材料32から、第1バルーン14の内部、およびカテーテルシャフト12の内部を通って、操作者による駆動のための基端側位置に向かって延在して示されている。他の構成において、駆動線34は、例えば、第1バルーン14およびカテーテルシャフト12の一部の外側に沿ってなどのような、異なる経路に沿って配置することができる。別の例では、駆動線34は、EAP材料32と係合している第2バルーン16の部分を通って延在することができる。駆動線はまた、例えばワイヤの編組、カテーテルシャフトまたはカテーテルアセンブリの他の構造の内層と外層との間の螺旋コイル、または第2バルーン16の所定位置まで内側の表面に転写されたパッド印刷可能導電性インキ(または類似した伝導性材料)の一部であり得る。
【0040】
IV. 図3A〜図3Cに示した例
次に、図3A〜図3Cを参照しながら、別のカテーテルアセンブリ200の例について説明する。カテーテルアセンブリ200は、EAP弁30がEAP特性を有さない膜40と置き換えられるという点を除いて、カテーテルアセンブリ100に関して上述したものと同一または類似した特徴の多くを備えている。膜40は第1バルーン14と第2バルーン16との間に配置されている。一例において、膜40は、バルーン16によって少なくとも部分的に包囲されている第1バルーン14の側壁内に組み込まれている。膜40は、第1バルーン14の膨張中のある時点において、第1バルーン14の内部と第2バルーン16の内部との間に流体流路を提供するように、変更されるか、またはさもなければ操作されるように構成されている。
【0041】
図3Aは、収縮状態にある第1バルーンおよび第2バルーン14,16を備えたカテーテルアセンブリ200を示す。図3Bは、膨張管腔20によって膨張した第1バルーン14を示す。図3Cは、開口42が画定された変更状態にある膜40を示す。流体は、第1バルーン14から、開口42を通って、第2バルーン16内に流れて、第2バルーン16を半径方向に伸展した位置(以下「半径方向伸展位置」と称する)に膨張させる。
【0042】
膜40は、複数の異なる方法のうちいずれかで、開口42を生じさせるように構成され得る。例えば、膜40は、第1バルーン14内で特定の圧力閾値に到達すると、自動的に破断するように構成され得る。別の例では、膜40は、第1バルーン14において限界圧力条件に到達すると、少なくとも1つのスリット開口を提供するように裂ける応力線を備えることができる。さらなる例では、機械的構造を膜40に連結して、適時に所望の地点において開口42を穿孔するか、または開口42の生成を開始することができる。一構成において、引張部材が該引張部材の先端において膜40に連結され、該引張部材の基端はカテーテルアセンブリ200の操作者によってアクセス可能である。前記引張部材の基端を引っ張ることによって、開口42を生成する。引張部材の例としては、ケーブルまたはワイヤ構造体が挙げられる。
【0043】
V. 図4A〜図4Bに示した例
図4A〜図4Bを参照しながら、別のカテーテルアセンブリ300の例について説明する。カテーテルアセンブリ300は、EAP弁30が機械的拡張部材50と置き換えられているという点を除いて、カテーテルアセンブリ100に関して上述したものと同一の特徴の多くを有する。機械的拡張部材50は、作動すると、第2バルーン16を、図4Aに示す第1非展開位置から、図4Bに示す展開された半径方向伸展位置に伸展させるように構成されている。機械的拡張部材50は、膨張流体を使用することなく、第2バルーン16を半径方向伸展位置に移動させることができる。機械的拡張部材50は第1バルーン14と第2バルーン16との間に配置される。拡張部材50の第1側面51は、第1バルーン14の外側壁と係合する。拡張部材50の第2側面53は第2バルーン16と係合する。拡張部材50は、既に第1バルーン14が少なくとも膨張しているときに、第2バルーン16を図4Bに示す半径方向伸展位置に移動させることにおいてより効果的である。
【0044】
機械的拡張部材50には、拡張部材50の図4Aに示す非展開状態から図4Bに示す展開状態への作動を開始するために、作動子(activator)52が連結され得る。図2A〜図2Bに示す作動線34に類似した作動子52は、第1バルーン14およびカテーテルシャフト12内を通って、カテーテルアセンブリ300の操作者によってアクセス可能な基端側の位置まで延在する。用いられている機械的拡張部材50の種類によって、作動子52は異なる機能を有し得る。例えば、作動子52は、機械的拡張部材50が非展開状態から展開状態に移動することができるように、機械的拡張部材50を機械的に解放する引張線であり得る。これに代わって、作動子52は、展開状態を開始する機械的拡張部材50に電気的刺激を与える電気的結合であってもよい。機械的拡張部材50は、印加電圧または電流によって開始される二峰性駆動(bimodal actuation)を提供するニチノール(Nitinol(Nickel Titanium Naval Ordance Laboratory))のような熱形状記憶材料(thermal shaped memory material)を含むことができる。熱形状記憶材料は、材料を遷移温度より高く加熱することにより、機械的拡張部材50の形状の変更を提供する。カリフォルニア州コスタメーサのダイナロイ(Dynalloy)製の熱形状記憶材料Flexinol(登録商標)の遷移温度は約70°Cである。他の熱形状記憶材料の遷移温度は、特定の材料組成によって、より高くても、より低くてもよい。
【0045】
熱形状記憶材料が冷却されると、熱形状記憶材料は元の形状とは異なる新規の形状に伸張または形成され得る。機械的拡張部材50の構造に熱形状記憶材料を含めることによって、元の形状は図4Bに示す形態に拡張および展開され、遷移温度を下回るときに維持される形状は、図4Aに示す非展開状態である。いくつかの種類の熱形状記憶材料は、カテーテルアセンブリ300が導入される患者の体温を利用して、その遷移温度に加熱され得る。熱源として患者の身体を利用すると、患者へのカテーテルアセンブリ300の導入によって始まる、遷移温度に到達するのに必要な時間の範囲を推定することが可能である。患者にカテーテルアセンブリ300を導入する前に機械的拡張部材50の初期温度を低下させること(例えば低温療法による)により、カテーテルアセンブリ300が患者に導入された後に遷移温度に到達するのに必要な期間を延長するのを助け得る。上述したように、熱形状記憶材料はまた、電流、または、例えば、第1バルーン14を膨張させるために用いられる膨張流体からの熱のような患者の体以外の他の熱源を用いて、加熱することができる。
【0046】
図4Cは、コイル状の形態にある機械的拡張部材50の平面図を示す。例えば冠型構造のような機械的拡張部材50の他の形状および構造を用いることができる。機械的拡張部材50は、第1バルーンおよび第2バルーン14,16のいずれか、または双方に境を接するか、さもなければ固定され得る。これに代わって、機械的拡張部材50は、第1バルーン14と第2バルーン16との間に画定された空間に緩く保持され得る。
【0047】
VI. 図5A〜図6Cに示す例
図5A〜図5Cを参照しながら、別のカテーテルアセンブリ400の例について説明する。カテーテルアセンブリ400は、第2バルーン16が副膨張管腔22の先端部分70上に配置されているという点を除いて、カテーテルアセンブリ100,200,300に関して上述したものと同一の特徴の多くを有する。副膨張管腔22の先端部分70は、第1バルーンの先端15の先端側の位置において、ガイドワイヤ管腔18を画定するガイドワイヤハウジングに固定される先端72を有する。副膨張管腔22は、先端部分70に沿った地点74においてカテーテルシャフト12から離れる。副膨張管腔の基端部分は、図1A〜図1Dに示すマニホルド24のようなマニホルドと流体連通している。
【0048】
他の構成では、副膨張管腔22は、シャフト12の基端部分からカテーテルシャフト12の外側に沿って第1バルーン14まで延在する。副膨張管腔22は、例えば、熱結合または接着剤を用いて、カテーテルシャフト12または第1バルーン14の外面に固定することができる。さらに、副膨張管腔22の先端部分70の先端72は端を切断されており、先端部分70は第2バルーン16の基端側または先端側の位置において第1バルーン14の外側に固定されている。
【0049】
第2バルーン16の膨張は、図1〜図4Cに関して上述した構造および構成のうちのいずれかを用いて制御することができる。例えば、EAP弁のような弁構造を副膨張管腔内に配置することもできるし、または、機械的拡張部材50を第2バルーン16内に配置することもできる。
【0050】
他のバルーン構造および形態を、本願において開示した原理を用いて、図1〜図5Cに示す第1バルーンおよび第2バルーンに用いることができる。例えば、第2バルーンは、血管分岐部の枝血管内に配置される別個のカテーテル枝上に配置され、本願において検討した弁技術および膨張技術を用いて膨張させることができる。
【0051】
ここで図6A〜図6Cを参照すると、別のカテーテルアセンブリ500の例が示されて説明されている。カテーテルアセンブリ500は、図5A〜図5Cに関連して上述したものと同一または類似した特徴の多くを備える。カテーテルアセンブリ500は、第2バルーン16に膨張流体を提供する副膨張管腔22を備える。副膨張管腔22は、該副膨張管腔22の基端部分74において、第1バルーン14の基端側で膨張管腔20と交わる。弁装置75は、副膨張管腔に沿って、膨張管腔20と第2バルーン16との間の位置に配置されている。弁装置75は、図6A〜図6Cにおいて、副膨張管腔22がカテーテルシャフト12の先端部分と交わる位置に概略的に示されている。これに代わって、弁装置75は、例えば、副膨張管腔22の先端部分72またはその近くのような他の位置に配置され得る。
【0052】
弁装置75は、上述した弁部材形態、例えば図1A〜図4Cに関して説明した形態のうちのいずれかを備えることができる。例えば、弁装置75は、EAP材料、引張部材、または感圧膜を備えることができる。
【0053】
VII. 血管分岐部治療の例
次に、図7を参照すると、図7には、図3A〜図3Cに関して示したカテーテルアセンブリ200が、血管分岐部60を治療するためにステント70と共に使用されて示されている。血管分岐部は、主血管62と、主血管62から分岐した枝血管64とを備える。枝血管64の口63は、主血管62の側壁に沿った枝血管64への開口として定義される。
【0054】
ステント70は対向する開放端を有する長尺状管状構造である。ステント70は、非拡張状態(図示せず)から図7に示す拡張状態までステントの拡張を可能にする、その長さに沿った複数の構造体を備える。典型的には、ステントの複数の構造体は一連のセル開口を画定する。セル開口に加えて、ステント90は、ステントの対向した開放端の間のステントの側壁に画定された独立した側枝開口92を備える。側枝開口92は、通常、セル開口よりも大きいが、セル開口と同じか、またはセル開口よりも寸法が小さくてもよい。一例において、側枝開口92は、側枝開口92の周囲を画定する連続した材料の帯によって画定される。この材料の連続帯は、好ましくは、側枝開口92の領域がステント90の拡張と共に拡張するように、その長さにわたって不連続部を備える。一部の形態において、連続帯は、側枝開口92の周辺端部から内側に突出する突出部を備える。これらの突出部(また拡張可能構造94とも称される)は、当初は、ステント90の管状本体の円筒形の外囲内に配置されている。拡張可能構造94は、第2バルーン16の膨張により、ステント90の本体から半径方向外側に、ステント90の本体の円筒形の外囲の外側へと少なくとも部分的に拡張することができる。
【0055】
ステント90は、第1バルーン14の基端と先端との間において第1バルーン14上に配置されている。第2バルーン16が半径方向伸展位置へ移動することによって、第2バルーン16が枝血管64の口63に向かって側枝開口92を通って少なくとも部分的に伸展するように、側枝開口92は第2バルーン16と整合されている。拡張可能構造94の拡張は、その拡張可能構造94を枝血管64の口を通って伸展させて、例えば、主血管および枝血管62,64の一部を治療することができる。拡張可能構造74の拡張は、第1バルーンおよび第2バルーン14,16の収縮後に用いられる付加的な治療装置またはアラインメント装置に対して、ステント90の側枝開口92を介した枝64内へのより大きな経路を提供し得る。
【0056】
血管60を治療する場合、半径方向外側に向かう方向において、拡張可能構造を枝血管64内へと拡張する前に、最初にステント90の本体を主血管62内に固定することが時には望ましい。このステント90の特徴とする拡張の順序を保証するために、第1バルーン14が完全に膨張してステント90の本体を主血管62と係合するように拡張させるまで、第2バルーン16の膨張あるいは半径方向の伸展に遅れがもたらされる。例えば、上述した図2A〜図2BのEAP弁30、図3A〜図3Cに示す開放可能な膜40、または図4A〜図4Cに示す機械的拡張部材50の使用により、まず第1バルーン14を膨張させ、続いて第2バルーン16を半径方向に伸展させるという望ましい順序を提供することができる。図7に示す例では、第1バルーン14を膨張させてステント90の本体を拡張させ、続いて膜40を変更して開口42を生成することによって、第2バルーン16を膨張させて、拡張可能構造94を半径方向に伸展させる。
【0057】
上述したカテーテルアセンブリ100,200,300,400は、ステントの側枝開口92を枝血管64の口63と整合させるのを支援する付加的なカテーテル構成要素および機能と共に用いることができる。例えば、枝ガイドワイヤを受容するための枝ガイドワイヤ管腔を画定する側方カテーテル枝は、カテーテルシャフト12と平行に血管分岐部60まで延在し得る。側方カテーテル枝は、ステント90の基端開放端を通って、側枝開口92から、枝血管64へと延びる。血管分岐部60を治療する方法の例において、ガイドワイヤ17は、口63の遠位側の主血管62内に位置し、枝ガイドワイヤは枝血管64内に配置される。ステント90は、第1バルーンおよび第2バルーン14,16のまわりに事前に配置され、第2バルーンはステント90の側枝開口92と整合される。側方カテーテル枝もまた、事前に配置されて、側枝開口92を通って延びる。次に、ステント90を備えたカテーテルアセンブリ10および側方カテーテル枝は、ガイドワイヤ17および枝ガイドワイヤを伝って血管分岐部60へと進められる。カテーテルアセンブリ10が血管分岐部を越えて配置されると、側方カテーテル枝の先端は、枝ガイドワイヤ上において枝血管64内へ自動的に進む。側方カテーテル枝は、該側方カテーテル枝が側枝開口92および口63の双方を通って延びているため、側枝開口92を口63と回転可能に整合させるのを助けることができる。
【0058】
カテーテルアセンブリ100,200,300と共に用いることができる別のカテーテルの整合の特徴は、マーカーシステムである。側方カテーテル枝(上記で検討した)に沿って放射線不透過性マーカーを配置すると、カテーテルシャフト12およびバルーン14は、側方カテーテル枝が枝血管64内に前進したときに、医師が蛍光透視法下で視覚化するのを助けることができる。一部のマーカーおよびマーカー材料の例は、バルディら付与された米国特許第6,692,483号、および2006年2月22日出願の「MARKER ARRANGEMENT FOR BIFURCATION CATHETER」と題された米国特許出願第60/776,149号に記載されている。前記特許文献は、参照によって本願に援用される。例えば、少なくとも2つの軸線方向に離間されたマーカーがバルーン14の両端に配置され、側方カテーテル枝に沿って少なくとも2つのマーカーが配置され得る。4つのマーカーの相対的な配置は、側方カテーテル枝およびカテーテルシャフト12の相対的な半径方向の位置についての情報を提供することができる。前記情報は、枝血管64の口63に対するバルーン16およびステントの側枝開口92の軸線方向および半径方向の整合において用いることができる。
【0059】
ステント90は、本願において開示する他のカテーテルアセンブリおよび原理を用いた血管分岐部の治療のための類似した方法で用いることができる。
V. 結論
本開示の態様において、カテーテルシャフト、主バルーンおよび副バルーン、並びにアクチュエータ装置を有するカテーテルアセンブリに関連する。カテーテルシャフトは先端部分および基端部分を備える。主バルーンはカテーテルシャフトの先端部分に配置されている。主バルーンは非拡張形態と拡張形態との間で操作可能である。副バルーンもまたカテーテルシャフトの先端部分に配置されている。副バルーンは、副バルーンが主バルーンに隣接して配置される非拡張形態と、副バルーンが主バルーンに対して半径方向に外側に伸展する拡張形態との間で操作可能である。アクチュエータ装置は、主バルーンの非拡張形態と拡張形態との間の操作からは独立して、副バルーンを非拡張形態と拡張形態との間で操作するように構成される。カテーテルアセンブリは、側枝開口を有するステントをさらに備え得る。副バルーンが拡張形態にある場合、副バルーンの少なくとも一部は側枝開口を通って伸展する。アクチュエータ装置は、限界圧力条件を超えると破断する膜、加電圧に応答して破断する膜、膜に開口を生じさせるように構成された引張部材、または副バルーンを非拡張形態と拡張形態との間で作動させる副バルーン内に配置された機械的アクチュエータのような様々な形態を有し得る。
【0060】
本開示の別の態様は、カテーテルアセンブリによって血管分岐部を治療する方法に関連する。血管分岐部は、主血管、および主血管から延びる枝血管を含む。カテーテルアセンブリは、基端部分および先端部分を有するカテーテルシャフト、カテーテルシャフトの先端部分に配置された第1バルーン、カテーテルシャフトの先端部分に配置された第2バルーン、およびアクチュエータ装置を備える。方法工程は、第2バルーンを枝血管の口に対面するように向けて、カテーテルアセンブリを主血管内に配置する工程と、第1バルーンを膨張させる工程と、第1バルーンを膨張させる工程の後に、第2バルーンを第1バルーンに対して半径方向に外側方向に拡張させるようにアクチュエータ装置を操作する工程とを含む。
【0061】
本開示のさらなる態様は別のカテーテルアセンブリに関連する。前記カテーテルアセンブリは、基端部分および先端部分を有するカテーテルシャフトと、カテーテルシャフトの先端部分に配置された第1バルーン部材と、カテーテルシャフトの先端部分に配置され、第1バルーン部材に対して半径方向に外側へ拡張するように構成された第2バルーン部材と、第1膨張管腔および第2膨張管腔を画定する第1膨張ハウジングおよび第2膨張ハウジングと、弁部材とを備える。第1膨張管腔は、カテーテルシャフトの基端部分から先端部分まで延在する。第1膨張管腔は第1バルーン部材と流体連通するように連結されている。第2膨張管腔は、カテーテルシャフトの基端部分から先端部分まで延在する。第2膨張管腔は、第2バルーン部材と流体連通するように連結されている。前記弁部材は、流体源と第2膨張管腔との間の流体連通を妨げるが、流体源を第1膨張管腔に流体連通するように接続する第1位置と、流体源と第1膨張管腔との間の流体連通を妨げるが、流体源を第2膨張管腔に流体連通するように接続する第2位置と、流体源が第1膨張管腔および第2膨張管腔と流体連通していない第3位置との間で調整可能である。
【0062】
本開示のさらなる態様はバルーンカテーテルを操作する方法に関連する。バルーンカテーテルは、基端部分および先端部分を有するカテーテルシャフト、カテーテルシャフトの先端部分に配置された第1バルーンおよび第2バルーン、並びにカテーテルシャフトの基端部分に配置されたマニホルドを備える。第2バルーンは、第1バルーンに対して半径方向外側に伸展するように構成されている。前記方法は、流体源と第2バルーンとの間の流体連通を妨げるが、第1バルーンを膨張源に流体連通するように接続するようにマニホルドを操作する工程を含む。前記方法は、さらに、第1バルーンを膨張源に流体連通するように接続するようにマニホルドを操作した後、流体源と第1バルーンとの間の流体連通を妨げると同時に、第2バルーンを膨張源に流体連通するように接続するようにマニホルドを操作することを含む。
【0063】
上記の明細書、実施例およびデータは、本発明の構成物の製造および使用の完全な説明を提供する。本発明の多くの実施形態は、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなくなされ得るので、本発明は以下に添付される特許請求の範囲内に存する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテーテルアセンブリであって、
(a)先端部分および基端部分を有するカテーテルシャフトと、
(b)カテーテルシャフトの先端部分に配置された主バルーンと、主バルーンは非拡張形態と拡張形態との間で操作可能であることと、
(c)カテーテルシャフトの先端部分に配置された副バルーンと、副バルーンは、副バルーンが主バルーンに隣接して配置される非拡張形態と、副バルーンが主バルーンに対して半径方向外側に伸展する拡張形態との間で操作可能であることと、
(d)主バルーンの非拡張形態と拡張形態との間における操作とは独立して、副バルーンを拡張形態と非拡張形態との間で操作するように構成されたアクチュエータ装置とを備える、カテーテルアセンブリ。
【請求項2】
前記主バルーン上に操作可能に取り付けられたステントをさらに備える、請求項1に記載のカテーテルアセンブリ。
【請求項3】
前記ステントは、基端開放端、先端開放端および側枝開口を備え、前記側枝開口は基端開放端と先端開放端との間の位置に配置されており、副バルーンが拡張形態にある場合、副バルーンの少なくとも一部は側枝開口を通って伸展する、請求項2に記載のカテーテルアセンブリ。
【請求項4】
前記アクチュエータ装置は、限界圧力条件を超えると破断する膜を備える、請求項1に記載のカテーテルアセンブリ。
【請求項5】
前記アクチュエータ装置は加電圧に応答して破断する膜を備える、請求項1に記載のカテーテルアセンブリ。
【請求項6】
前記アクチュエータ装置は膜および引張部材を備え、前記引張部材は前記膜に開口を生じさせるように構成されている、請求項1に記載のカテーテルアセンブリ。
【請求項7】
前記アクチュエータ装置は副バルーン内に配置された機械的アクチュエータを備え、前記機械的アクチュエータは、副バルーンを非拡張形態と拡張形態との間で駆動する、請求項5に記載のカテーテルアセンブリ。
【請求項8】
副バルーンは主バルーン上に配置されている、請求項1に記載のカテーテルアセンブリ。
【請求項9】
副バルーンは主バルーンと一体に成形されている、請求項8に記載のカテーテルアセンブリ。
【請求項10】
膨張管腔を画定する膨張ハウジングをさらに備え、前記膨張管腔は、主バルーンおよび副バルーンの双方に膨張流体を提供する、請求項1に記載のカテーテルアセンブリ。
【請求項11】
第1膨張管腔および第2膨張管腔を画定する構造をさらに備え、第1膨張管腔は主バルーンに膨張流体を提供し、第2膨張管腔は副バルーンに膨張流体を提供する、請求項1に記載のカテーテルアセンブリ。
【請求項12】
前記第1膨張管腔および第2膨張管腔は、各々、先端部分および基端部分を有し、第2膨張管腔の基端部分は、主バルーンの基端側の位置で、第1膨張管腔の先端部分と流体連通するように連結されている、請求項11に記載のカテーテルアセンブリ。
【請求項13】
カテーテルアセンブリであって、
(a)基端部分および先端部分を有するカテーテルシャフトと、
(b)前記カテーテルシャフトの先端部分に配置された第1バルーン部材と、
(c)前記カテーテルシャフトの先端部分に配置され、第1バルーン部材に対して半径方向外側に拡張するように構成された第2バルーン部材と、
(d)第1膨張管腔を画定する第1膨張ハウジングと、第1膨張管腔は、前記カテーテルシャフトの基端部分から先端部分まで延在し、かつ、前記第1バルーン部材と流体連通するように連結されていることと、
(e)第2膨張管腔を画定する第2膨張ハウジングと、第2膨張管腔は、前記カテーテルシャフトの基端部分から先端部分まで延在し、かつ、前記第2バルーン部材と流体連通するように連結されていることと、
(f)流体源と第2膨張管腔との間の流体連通を妨げるが、流体源を第1膨張管腔と流体連通するように接続する第1位置と、流体源と第1膨張管腔との間の流体連通を妨げるが、流体源を第2膨張管腔と流体連通するように接続する第2位置と、流体源が第1膨張管腔および第2膨張管腔と流体連通していない第3位置との間で調整可能な弁部材とを備える、カテーテルアセンブリ。
【請求項14】
第2バルーン部材は第1バルーン部材上に配置されている、請求項13に記載のカテーテルアセンブリ。
【請求項15】
第1第膨張管腔および第2膨張管腔の少なくとも一部はカテーテルシャフト内に画定される、請求項13に記載のカテーテルアセンブリ。
【請求項16】
第2膨張管腔の一部は第1バルーン部材内を通って延在する、請求項13に記載のカテーテルアセンブリ。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7】
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【公表番号】特表2010−535095(P2010−535095A)
【公表日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−520217(P2010−520217)
【出願日】平成20年8月1日(2008.8.1)
【国際出願番号】PCT/US2008/071887
【国際公開番号】WO2009/029385
【国際公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【出願人】(500332814)ボストン サイエンティフィック リミテッド (627)
【Fターム(参考)】