説明

分岐重合体、及びその重合体を含む防汚塗料組成物

【課題】
【解決手段】本発明は、(A)1個の重合性エチレン性不飽和結合を含む1つ以上の単量体であって、その内の少なくとも1つはシリルエステル官能基を含む単量体、(B)2個以上の重合性エチレン性不飽和結合を含む1つ以上の単量体、及び(C)1つ以上の連鎖移動剤の繰り返し単位を含む分岐シリルエステル共重合体に関する。さらに、本発明は、防汚塗料組成物の含有成分としての前記分岐シリルエステル共重合体の使用、ならびに前記分岐シリルエステル共重合体と1つ以上の他の成分を含む防汚塗料組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分岐シリルエステル共重合体、及びその分岐シリルエステル共重合体を含む防汚塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
海水中に沈められる表面は、緑藻や褐藻、フジツボ、イガイ、棲管虫といった海洋生物による汚れにさらされる。船舶、石油採掘用プラットフォーム、ブイなどの海洋構造物へのそのような汚れは好ましいものではなく、経済的な帰結を招く。汚れは表面の生物学的な劣化、負荷の増加や腐食の促進につながり得る。船舶にとって、汚れは摩擦抵抗を増加させ、それによって速度の減少や燃料消費量の増加が引き起こされる。汚れはまた、操縦性の低下を招き得る。
【0003】
海洋生物の定着や増殖を防止するために防汚塗料が用いられる。これらの塗料には、一般的に、薄膜形成バインダが、顔料、充填剤、溶剤や生物活性物質などの他の成分と共に含まれている。
【0004】
2003年まで、市場で最も成功を収めた防汚塗料システムはトリブチル錫(TBT)自己研磨型共重合体(自己研磨型塗料)システムであった。それらの防汚塗料のバインダシステムは、トリブチル錫ペンダント基の線状アクリル酸共重合体であった。その共重合体は海水中で徐々に加水分解され、有効な殺生物剤のトリブチル錫を放出していた。その時点でカルボン酸基を含んだ残りのアクリル酸共重合体は、塗料の表面から洗い流される、又は浸食されるのに十分海水中で溶けやすく、あるいは分散可能な状態となる。この自己研磨効果により塗料中の生物学的化合物の放出が調節され、優れた防汚効率と滑らかな表面がもたらされ、またそれによって摩擦抵抗が低減された。
【0005】
2001年の国際海事機関条約「船舶についての有害な防汚方法の管理に関する国際条約」では、2003年から新たなTBT含有防汚塗料の塗布の禁止、そして2008年からは船舶船体へのTBT含有防汚塗料の禁止が謳われている。
【0006】
TBTの禁止の結果として、近年、新たな防汚塗料システムが開発され採用されている。今日市場で殺生物性防汚塗料の広範な群をなすのは、TBT自己研磨型共重合体塗料によく似た自己研磨型防汚塗料である。これらの防汚塗料は、殺生物特性のない加水分解可能なペンダント基を有する線状共重合体系である。この加水分解メカニズムはTBT含有共重合体のものと同じである。これは、重合体の溶解を同じように調節し、それにより塗膜からの防汚化合物の放出が調節され、TBT含有防汚塗料システムの場合と同様の性能がもたらされる。
【0007】
今日最も成功を収めている自己研磨型防汚システムは、線状シリルエステル共重合体系である。線状シリルエステル共重合体、及びこれらの共重合体を含む防汚塗料組成物が、例えば、米国特許第4593055号(特許文献1)、欧州特許出願公開第0646630号(特許文献2)、欧州特許出願公開第1127902号(特許文献3)、欧州特許出願公開第1323745号(特許文献4)、米国特許第6992120号(特許文献5)、欧州特許出願公開第1479737号(特許文献6)、及びWO03/080747号(特許文献7)に記載されている。
【0008】
防汚塗料特性に変更を加えるために様々なコバインダ、あるいは他の添加剤が防汚塗料組成物に含まれている。例えば、欧州特許出願公開第0775733号(特許文献8)には、線状シリルエステル共重合体と塩化パラフィンとを含む防汚塗料組成物が記載され、欧州特許出願公開第0802243号(特許文献9)には、ロジン化合物と線状シリルエステル共重合体とを含む防汚塗料組成物が記載され、欧州特許出願公開第1127925号(特許文献10)には、線状シリルエステル共重合体と、ラクタム基又はアミド基を含む親水性の共重合体とを含む防汚組成物が記載され、欧州特許出願公開第1277816号(特許文献11)には、線状シリルエステル共重合体と金属カルボキシレート基含有重合体とを含む防汚塗料組成物が記載され、WO00/77102号(特許文献12)には、線状シリルエステル共重合体と繊維とを含む防汚塗料組成物が記載され、WO03/070832号(特許文献13)には、線状シリルエステル共重合体と非相溶性重合体とを含む防汚塗料組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第4593055号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第0646630号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第1127902号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第1323745号明細書
【特許文献5】米国特許第6992120号明細書
【特許文献6】欧州特許出願公開第1479737号明細書
【特許文献7】国際公開第03/080747号パンフレット
【特許文献8】欧州特許出願公開第0775733号明細書
【特許文献9】欧州特許出願公開第0802243号明細書
【特許文献10】欧州特許出願公開第1127925号明細書
【特許文献11】欧州特許出願公開第1277816号明細書
【特許文献12】国際公開第00/77102号パンフレット
【特許文献13】国際公開第03/070832号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、防汚塗料組成物に用いる分岐シリルエステル共重合体、及びその防汚塗料組成物から形成され、改善された物理特性、調節された自己研磨特性、ならびに優れた防汚性能を有する防汚塗膜を提供することである。
【0011】
本発明の他の目的は、一般的な塗布方法で塗布できるようにするために十分に低い粘度を示し、揮発性有機化合物(VOC)の濃度が低減された防汚塗料組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
VOCの排出に関するより厳格な規制により、塗料組成物中の有機溶剤の濃度の低減が求められている。例えば、欧州連合では、規制により造船所からのVOCの総排出量が制限され、アメリカ合衆国では、連邦規制により、防汚塗料の揮発性有機有害大気汚染物質の含有量が、1リットル当たり400グラム未満に制限されている。従って、VOCの含有量がより少ない防汚塗料組成物への要望がある。
【発明を実施するための形態】
【0013】
防汚塗料組成物中のVOC含有量を削減するために、シリルエステル共重合体溶液の固形分を増やす様々な方法がある。重要な要因は、固形分を増やす場合、シリルエステル共重合体溶液の溶液粘度を低く維持することである。線状重合体に対して取られる一般的なアプローチは、重合体の分子量を減らすことである。
【0014】
欧州特許出願公開第1641862号には、少なくとも55重量%で80重量%以下の固形分を有する線状シリルエステル共重合体溶液が記載されている。同共重合体溶液の固形分の増加は、重量平均分子量が1500〜20000で20ポアズ未満の高いずり粘度を有する線状シリルエステル共重合体を用いることで得られる。
【0015】
欧州特許出願公開第0802243号には、ロジン化合物と線状シリルエステル共重合体とを含む防汚塗料組成物が記載されている。線状シリルエステル共重合体溶液は、5〜90重量%の固形分を得るために調整可能な粘度を有する旨が言及されている。この文献には、どのようにして高固形分の共重合体溶液が得られるのかについての開示はない。実施例にのみ固形分が50重量%の共重合体が記載されている。
【0016】
分子量の小さい線状重合体は、分子量の大きい類似の重合体よりも凝集力が弱く、またガラス転移温度(Tg)が低い。これらの特性は防汚塗膜の特性にも影響を及ぼす。防汚塗膜の特性に悪影響を及ぼすのを避けるために、シリルエステル共重合体の分子量を、共重合体組成物に応じて一定の範囲内に抑えなければならない。従って、線状シリルエステル共重合体の分子量を削減することでは、防汚塗料組成物中のVOC含有量をどれだけの濃度に削減できるかに限られる。
【0017】
重合体構成は、重合体の特性に影響を及ぼすことがよく知られている。重合体中の分岐は、ガラス転移温度(Tg)、可撓性、有機溶剤への溶解性やポリマーブレンドの親和性などの重合体特性に変更を加えるために有利に用いることができる有用な構造変数である。重合体の分岐によって改善した溶解性は、重合体溶液の固形分を増やすのに用いることができ、それにより塗料組成物中のVOC含有量が削減される。
【0018】
非線状重合体構造のシリルエステル共重合体、及びその共重合体を含む防汚塗料組成物を前述した。
【0019】
WO96/03465号には、中心核から少なくとも3つの肢を有する星状重合体を含む防汚塗料組成物が記載されている。この文献には、シリルエステル共重合体も含まれている。星状構造の重合体は、多官能性開始剤、又は多官能性連鎖移動剤、好ましくは多官能性メルカプタン連鎖移動剤を用いることで得られる。少なくとも55容量%の固形分を含む防汚塗料組成物がクレームされている。
【0020】
欧州特許出願公開第1201700号には、多官能性(ポリ)オキシアルキレンメルカプタン化合物を用い、(ポリ)オキシアルキレンブロックを含む星状シリルエステル共重合体、及びこれらの共重合体を含む防汚塗料組成物を得ることが記載されている。重合体溶液の固形分、又は塗料組成物はクレームされていない。
【0021】
上記2つの文献に記載の星状構造は、分岐の種類やその度合の点で本発明の分岐構造とは異なる。星状構造では分岐点の数や分岐の度合が連鎖移動剤又は開始剤の官能性や濃度によって制限されるため、分岐の度合が低い。
【0022】
溶液粘度を低減するために、分岐ならびに超分岐重合体、又は分子量分布(MWD)が狭い構造の明確な重合体を得るための新たな重合技術や重合方法が近年開発されている。通常、超分岐重合体や高分岐重合体は段階成長重合技術により調製される。通常、この合成形態は多段式であり、かつ複雑である。一般的に、保護基反応と各段階の後で追加の精製作業の使用が必要となるため、合成に時間がかかるだけでなくコストもかかり、産業規模での応用ができない。より簡潔で経済的な方法で、分子量分布の調整が少ない分岐重合体を調製することができる。
【0023】
WO99/46301号には、単官能性ビニル単量体を架橋剤としての多官価性ビニル単量体及び連鎖移動剤とで構成することにより可溶性分岐重合体を調製するワンステップ方法が記載されている。WO99/46310号にはWO99/46301号と同じ方法が記載されているが、硬化システムの成分として重合体を有用なものにする少なくとも1個の重合性二重結合を含む重合体を得るために、完了前に重合が終了される。シリルエステル共重合体はこれらの文献のいずれにも記載されていない。双方の文献では、非溶液法、即ち、重合体が液体担体に溶けない方法で分岐重合体を有利に生成する旨が言及されている。どのようにして溶液重合、即ち、重合体が液体担体に溶ける方法で固形分の高い重合体溶液を得ることができるかについては、いずれの文献にも開示がない。実施例において、溶液重合で調製した重合体は、沈殿による重合体分離の前に、35重量%の理論固形分を有している。35重量%の固形分を有する重合体溶液から生成された塗料組成物がVOC規制を満たすことはないだろう。
【0024】
本発明の発明者は、溶液重合が記載されたWO99/46301号の実施例の固形分を、塗料製造に適した固形分、例えば50重量%に増やすことで、高粘度の材料、又は不溶解性ゲルが得られることを発見した。しかしながら、シリルエステル官能基を有する1つ以上の単量体を導入すると、塗料製造に有用な粘度を有し、また固形分が55重量%より大きくかつ高変換の重合体溶液を容易に得ることができる。これは驚くべき結果であった。不溶性の架橋共重合体ではなく可溶性の分岐シリルエステル共重合体を得るためには、重合条件を慎重に選択しなければならない。本発明の分岐シリルエステル共重合体は、シリルエステル共重合体を含有し、VOCに準拠した防汚塗料組成物を得るための汎用の解決策を意味する。
【0025】
本発明の分岐シリルエステル共重合体は、防汚塗料組成物を調製する際に溶液の状態で用いられる。従って、分岐シリルエステル共重体は、分岐シリルエステル共重合体を溶解でき、また防汚塗料組成物での使用に適した溶剤、又は溶剤混合物の中で重合されるのが好ましい。製造後の重合体単離工程を回避することで、分岐シリルエステル共重合体、及びその分岐シリルエステル共重合体を含む防汚塗料組成物を製造する際に用いられる溶剤の総量が低減される。これには環境上の利点があり、また製造上のコストを削減する。
【0026】
本発明の防汚塗料組成物に分岐シリルエステル共重合体を用いることにはいくつかの利点がある。分岐シリルエステル共重合体の溶液粘度は、類似の線状共重合体の溶液粘度よりも低いため、エアレススプレー法などの従来の塗布手段に適した粘度でより高い固形分の防汚塗料組成物を生成することができる。分岐シリルエステル共重合体はまた、線状の類似物よりも可撓性がある。改善した可撓性により、少ない亀裂傾向を呈する防汚塗膜がもたらされる。
【0027】
もし適切に設計された場合、分岐重合体構造は自己研磨特性に悪影響を及ばさない。
【0028】
本発明は、分岐シリルエステル共重合体、その分岐シリルエステル共重合体の防汚塗料組成物の成分としての使用、及びその分岐シリルエステル共重合体を含む防汚塗料組成物を提供する。
【0029】
本発明の分岐シリルエステル共重合体は、(A)1個の重合性エチレン性不飽和結合を含む1つ以上の単量体であって、その内の少なくとも1つはシリルエステル官能基を含む単量体、(B)2個以上の重合性エチレン性不飽和結合を含む1つ以上の単量体、及び(C)1つ以上の連鎖移動剤の繰り返し単位を含み、前記単量体(B)の重合性エチレン性不飽和単位の前記連鎖移動剤(C)の連鎖移動単位に対するモル比は5〜0.2である。
【0030】
本発明の分岐シリルエステル共重合体は、単量体(A)の少なくとも1つが一般式(I)で表わされた共重合体であることが好ましい。
【0031】
【化1】

【0032】
式中、R1、R2、及びR3はそれぞれ独立して、線状、又は分岐C1-20アルキル基、C3-12シクロアルキル基、及びC6-20アリール基からなる群から選択され、Xは、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、(メタクリロイルオキシ)アルキルカルボキシ基、マレイノイルオキシ基、フマロイルオキシ基、イタコノイルオキシ基、及びシトラコノイルオキシ基などのエチレン性不飽和基である。
【0033】
1、R2、及びR3で定義されるアリール基には、置換及び非置換フェニル、ベンジル、フェナルキル(phenalkyl)及びナフチルが含まれる。
【0034】
本発明の分岐シリルエステル共重合体は、前記一般式(I)で表わされるシリルエステル官能基を有する1つ以上の単量体(A)を、単量体混合物全体の1〜99モル%、より好ましくは15〜60モル%、最も好ましくは20〜40モル%含む。
【0035】
一般式(I)で表わされるシリルエステル官能基を含む単量体(A)の例としては、
(メタ)アクリル酸トリエチルシリル、(メタ)アクリル酸トリ−n−プロピルシリル、(メタ)アクリル酸トリイソプロピルシリル、(メタ)アクリル酸トリ−n−ブチルシリル、(メタ)アクリル酸トリイソブチルシリル、(メタ)アクリル酸トリ−tert−ブチルシリル、(メタ)アクリル酸トリ−sec−ブチルシリル、(メタ)アクリル酸トリ−n−ペンチルシリル、(メタ)アクリル酸トリイソペンチルシリル、(メタ)アクリル酸トリ−n−ヘキシルシリル、(メタ)アクリル酸トリ−n−オクチルシリル、(メタ)アクリル酸トリ−n−ドデシルシリル、(メタ)アクリル酸トリフェニルシリル、(メタ)アクリル酸トリ−(p−メチルフェニル)シリル、(メタ)アクリル酸トリベンジルシリル、(メタ)アクリル酸エチルジメチルシリル、(メタ)アクリル酸n−プロピルジメチルシリル、(メタ)アクリル酸イソプロピルジメチルシリル、(メタ)アクリル酸n−ブチルジメチルシリル、(メタ)アクリル酸イソブチルジメチルシリル、(メタ)アクリル酸tert−ブチルジメチルシリル、(メタ)アクリル酸n−ペンチルジメチルシリル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシルジメチルシリル、(メタ)アクリル酸ネオヘキシルジメチルシリル、(メタ)アクリル酸n−オクチルジメチルシリル、(メタ)アクリル酸n−デシルジメチルシリル、(メタ)アクリル酸ドデシルジメチルシリル、(メタ)アクリル酸n−オクタデシルジメチルシリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルジメチルシリル、(メタ)アクリル酸フェニルジメチルシリル、(メタ)アクリル酸ベンジルジメチルシリル、(メタ)アクリル酸フェネチルジメチルシリル、(メタ)アクリル酸(3−フェニルプロピル)ジメチルシリル、(メタ)アクリル酸p−トリルジメチルシリル、(メタ)アクリル酸イソプロピルジエチルシリル、(メタ)アクリル酸n−ブチルジイソプロピルシリル、(メタ)アクリル酸n−オクチルジイソプロピルシリル、(メタ)アクリル酸メチルジ−n−ブチルシリル、(メタ)アクリル酸メチルジシクロヘキシルシリル、(メタ)アクリル酸メチルジフェニルシリル、(メタ)アクリル酸tert−ブチルジフェニルシリルなどのアクリル酸及びメタクリル酸のシリルエステル単量体、
トリエチルシリルエチルマレアート、トリ−n−プロピルシリルn−プロピルマレアート、トリイソプロピルシリルメチルマレアート、トリ−n−ブチルシリルn−ブチルマレアート、及びトリ−n−ヘキシルシリルn−ヘキシルマレアートなどのマレイン酸のシリルエステル単量体、
トリエチルシリルエチルフマレート、トリ−n−プロピルシリルn−プロピルフマレート、トリイソプロピルシリルメチルフマレート、トリ−n−ブチルシリルn−ブチルフマレート、及びトリ−n−ヘキシルシリルn−ヘキシルフマレートなどのフマル酸のシリルエステル単量体、
(メタ)アクリル酸トリエチルシロキシカルボニルメチル、(メタ)アクリル酸トリ−n−プロピルシロキシカルボニルメチル、(メタ)アクリル酸トリイソプロピルシロキシカルボニルメチル、(メタ)アクリル酸トリ−n−ブチルシロキシカルボニルメチル、(メタ)アクリル酸トリイソブチルシロキシカルボニルメチル、(メタ)アクリル酸トリ−tert−ブチルシロキシカルボニルメチル、(メタ)アクリル酸トリ−sec−ブチルシロキシカルボニルメチル、(メタ)アクリル酸トリ−n−ペンチルシロキシカルボニルメチル、(メタ)アクリル酸トリイソペンチルシロキシカルボニルメチル、(メタ)アクリル酸トリ−n−ヘキシルシロキシカルボニルメチル、(メタ)アクリル酸トリ−n−オクチルシロキシカルボニルメチル、(メタ)アクリル酸トリ−n−ドデシルシロキシカルボニルメチル、(メタ)アクリル酸トリフェニルシロキシカルボニルメチル、(メタ)アクリル酸トリ−(p−メチルフェニル)シロキシカルボニルメチル、(メタ)アクリル酸トリベンジルシロキシカルボニルメチル、(メタ)アクリル酸エチルジメチルシロキシカルボニルメチル、(メタ)アクリル酸n−プロピルジメチルシロキシカルボニルメチル、(メタ)アクリル酸イソプロピルジメチルシロキシカルボニルメチル、(メタ)アクリル酸n−ブチルジメチルシロキシカルボニルメチル、(メタ)アクリル酸イソブチルジメチルシロキシカルボニルメチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチルジメチルシロキシカルボニルメチル、(メタ)アクリル酸n−ペンチルジメチルシロキシカルボニルメチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシルジメチルシロキシカルボニルメチル、(メタ)アクリル酸ネオヘキシルジメチルシロキシカルボニルメチル、(メタ)アクリル酸n−オクチルジメチルシロキシカルボニルメチル、(メタ)アクリル酸n−デシルジメチルシロキシカルボニルメチル、(メタ)アクリル酸ドデシルジメチルシロキシカルボニルメチル、(メタ)アクリル酸n−オクタデシルジメチルシロキシカルボニルメチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルジメチルシロキシカルボニルメチル、(メタ)アクリル酸フェニルジメチルシロキシカルボニルメチル、(メタ)アクリル酸ベンジルジメチルシロキシカルボニルメチル、(メタ)アクリル酸フェネチルジメチルシロキシカルボニルメチル、(メタ)アクリル酸(3−フェニルプロピル)ジメチルシロキシカルボニルメチル、(メタ)アクリル酸p−トリルジメチルシロキシカルボニルメチル、(メタ)アクリル酸イソプロピルジエチルシロキシカルボニルメチル、(メタ)アクリル酸n−ブチルジイソプロピルシロキシカルボニルメチル、(メタ)アクリル酸n−オクチルジイソプロピルシロキシカルボニルメチル、(メタ)アクリル酸メチルジ−n−ブチルシロキシカルボニルメチル、(メタ)アクリル酸メチルジシクロヘキシルシロキシカルボニルメチル、(メタ)アクリル酸メチルジフェニルシロキシカルボニルメチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチルジフェニルシロキシカルボニルメチル、及びWO03/080747号に記載の他のものなどの(メタ)アクリル酸カルボキシアルキルのシリルエステル単量体が挙げられる。
【0036】
シリルエステル官能基を有さない単量体(A)には、フリーラジカルメカニズムにより重合可能なあらゆる単量体が含まれ得る。2つ以上の単量体の混合物を、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体、又はグラフト共重合体を生成するのに用いてもよい。
【0037】
シリルエステル官能基を有さない単量体(A)の例としては、
(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸3,5,5−トリメチルヘキシル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸イソトリデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシルなどのアクリル酸及びメタクリル酸のアルキルエステル類、
(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸4−tert−ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンチルオキシエチル、(メタ)アクリル酸イソボルニルなどのアクリル酸及びメタクリル酸の環状アルキルエステル類、
(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ナフチルなどのアクリル酸及びメタクリル酸のアリールエステル類、
(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸ポリ(エチレングリコール)、(メタ)アクリル酸ポリ(プロピレングリコール)などのアクリル酸及びメタクリル酸のヒドロキシアルキルエステル、
(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−フェノキシエチル、エチルジグリコール(メタ)アクリレート、エチルトリグリコール(メタ)アクリレート、ブチルジグリコール(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール)メチルエーテル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートなどのアクリル酸及びメタクリル酸のアルコキシアルキルエステル類及びポリ(アルコキシ)アルキルエステル類、
2−(ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2−(ジエチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、3−(ジメチルアミノ)プロピル(メタ)アクリレート、3−(ジエチルアミノ)プロピル(メタ)アクリレート、2−(tert−ブチルアミノ)エチル(メタ)アクリレートなどのアクリル酸及びメタクリル酸のモノアルキルアミノアルキルエステル類及びジアルキルアミノアルキルエステル類、
(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−tert−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−フェニル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−(イソブトキシメチル)(メタ)アクリルアミド、N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル](メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミドなどのアクリル酸及びメタクリル酸のアミド類、
アクリル酸及びメタクリル酸の金属塩類、及び例えば欧州特許出願公開第1323745号に記載の他の金属官能性単量体、
(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸(2−アセトアセトキシ)エチルやWO96/41842号及び米国特許第4593055号に記載の単量体などのアクリル酸及びメタクリル酸の他の官能性単量体、
クロトン酸メチル、クロトン酸エチル、クロトン酸イソブチル、クロトン酸ヘキシル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル、無水マレイン酸、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジイソブチル、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジブチル、無水イタコン酸、無水シトラコン酸などのクロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、及びシトラコン酸のエステル類、
マレイミド、N−フェニルマレイミドやWO96/41841号に記載の他のものなどのマレイミド及びN−置換マレイミド類、
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバル酸ビニル、ビニルドデカノエート(ドデカン酸ビニル)、安息香酸ビニル、ビニル4−tert−ブチルベンゾエート、VeoVa(商標名)9、VeoVa(商標名)10などのビニルエステル類、
N−ビニルピロリドンや欧州特許出願公開第1127902号に記載の他のラクタム及びアミド官能性単量体などのN−ビニルラクタム類、N−ビニルアミド類、
スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンやp−クロロスチレンなどの他のビニル単量体が挙げられる。
【0038】
2個以上の重合性エチレン性不飽和結合を含む単量体(B)の例としては、
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12−ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、トリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、テトラ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ジ(プロピレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、トリ(プロピレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、トリ(プロピレングリコール)エトキシレートジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールプロポキシレートジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールエトキシレートジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールプロポキシレートジ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールジ(メタ)アクリレートモノステアレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエトキシレートジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAプロポキシレートジ(メタ)アクリレート、1,4−フェニレンジ(メタ)アクリレート、3−(アクリロイルオキシ)−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、アリルメタ(アクリレート)、ジ(プロピレングリコール)アリルエーテル(メタ)アクリレート、無水メタクリル酸、無水クロトン酸、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N’−エチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N’−ヘキサメチレンビス(メタ)アクリルアミド、ジウレタンジ(メタ)アクリレート、ビス(2−メタクリロイルオキシエチル)ホスフェート、バリウムジ(メタ)アクリレート、銅(II)ジ(メタ)アクリレート、マグネシウムジ(メタ)アクリレート、亜鉛ジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジビニルエーテル、1,4−シクロへキサンジメタノールジビニルエーテル、ジ(エチレングリコール)ジビニルエーテル、トリ(エチレングリコール)ジビニルエーテルやポリ(エチレングリコール)ジビニルエーテルなどの二官能性単量体、
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエトキシレートトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンプロポキシレートトリ(メタ)アクリレートやトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレートなどの三官能性単量体、及び
ジ(トリメチロールプロパン)テトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールエトキシレートテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールペンタ(メタ)アクリレートやジペンタエリトリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの多官能性単量体が挙げられる。
【0039】
単量体(B)の量は、単量体(A)の全体濃度の0.1〜25モル%である。単量体(B)の量は好ましくは0.1〜10モル%である。
【0040】
単量体(B)の好ましい官能基は、分子毎に2〜4個の重合性エチレン性不飽和結合であり、より好ましくは2個の重合性エチレン性不飽和結合である。
【0041】
連鎖移動剤(C)は、一官能性及び多官能性チオール類を含むチオール化合物の範囲から選ばれ得る。
【0042】
一官能性チオール類の例としては、
1−プロパンチオール、2−プロパンチオール、2−メチル−1−プロパンチオール、2−メチル−2−プロパンチオール、1−ブタンチオール、2−ブタンチオール、3−メチル−1−ブタンチオール、1−ペンタンチオール、1−ヘキサンチオール、1−ヘプタンチオール、1−オクタンチオール、sec−オクタンチオール、tert−オクタンチオール、1−ノナンチオール、tert−ノナンチオール、1−デカンチオール、1−ドデカンチオール、tert−ドデカンチオール、1−テトラデカンチオール、1−ヘキサデカンチオールや1−オクタデカンチオールなどのアルキルチオール類、
チオグリコール酸メチル、チオグリコール酸エチル、チオグリコール酸2−エチルヘキシル、チオグリコール酸オクチルやチオグリコール酸イソオクチルなどのチオグリコール酸及びアルキルチオグリコレート類、
エチル2−メルカプトプロピオナート、メチル3−メルカプトプロピオナート、エチル3−メルカプトプロピオナート、ブチル3−メルカプトプロピオナート、イソオクチル3−メルカプトプロピオナート、オクタデシル3−メルカプトプロピオナートやポリ(プロピレングリコール)3−メルカプトプロピオナートなどのメルカプトプロピオン酸及びアルキルメルカプトプロピオナート類、
11−メルカプトウンデカ酸や2−ヒドロキシエタンチオールなどの他のチオール化合物が挙げられる。
【0043】
多官能性チオール類の例としては、
1,2−エタンジチオール、1,3−プロパンジチオール、1,4−ブタンジチオール、2,3−ブタンジチオール、1,5−ペンタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、1,8−オクタンジチオール、1,9−ノナンジチオール、2,2’−(エチレンジオキシ)ジエタンチオール、エチレングリコールビス(チオグリコレート)、エチレングリコールビス(2−メルカプトプロピオネート)やエチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)などの二官能性チオール化合物、
トリメチロールプロパントリス(2−メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパントリス(2−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)やトリメチロールプロパンエトキシレートトリス(3−メルカプトプロピオネート)などの三官能性チオール化合物、
ペンタエリトリトールテトラキス(2−メルカプトアセテート)、ペンタエリトリトールテトラキス(2−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリトリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリトリトールヘキサキス(2−メルカプトアセテート)やトリペンタエリトリトールオクタキス(2−メルカプトアセテート)などの四官能性チオール化合物が挙げられる。
【0044】
代替的な連鎖移動剤は、エチレン性不飽和単量体の重合で分子量を減少させるものと知られているいずれの化合物であってもよい。例としては、ジ−n−ブチルスルフィドやジ−n−ブチルジスルフィドなどの硫化物類、四塩化炭素や四臭化炭素などのハロゲン含有化合物、α−メチルスチレン二量体などの芳香族化合物が挙げられる。例えば、コバルトポルフィリン化合物といった金属ポルフィリン類などの触媒連鎖移動剤も本発明に有用な連鎖移動剤である。従来のチオール連鎖移動剤に比べて、触媒連鎖移動剤は比較的低い濃度で用いられ得る。
【0045】
多官能性連鎖移動剤の使用は、重合体中の分岐の度合を増大させるのに有用な方法である。連鎖移動剤は、必要に応じて2種類以上の化合物の混合物を含んでもよい。
【0046】
好ましい連鎖移動剤はチオール化合物であり、より好ましくは一官能性チオール化合物である。
【0047】
連鎖移動剤(C)の量は、単量体(A)の全体濃度の0.1〜25モル%である。連鎖移動剤のより好ましい量は0.1〜10モル%である。
【0048】
本発明の分岐シリルエステル共重合体は、非線状重合体を提供するために2個以上の重合性エチレン性不飽和結合を含む単量体(B)を適量用いて生成され、不溶性の架橋重合体の形成を防ぐために、適量の連鎖移動剤(C)で釣り合いを取っている。
【0049】
単量体(B)の重合性エチレン性不飽和単位の連鎖移動剤(C)の連鎖移動単位に対するモル比は5〜0.2であり、より好ましくは2〜0.5である。
【0050】
分岐シリルエステル共重合体は、フリーラジカル重合開始剤、又は触媒の存在下で単量体(A)、単量体(B)、及び連鎖移動剤(C)の混合物を、溶液重合、バルク重合、乳化重合や懸濁重合などの技術上公知で幅広く用いられている様々な方法のいずれかを用いて重合することで得ることができる。重合体から、溶媒含有塗料組成物を調製する際、塗料製造に便利な粘度を有する重合体溶液を得るには、重合体を有機溶剤で薄めると有利である。このため、溶液重合法、又はバルク重合法を用いることが望ましい。
【0051】
重合は、分岐シリルエステル共重合体を溶解可能で防汚塗料組成物に用いるのに適した溶剤、又は溶剤混合物の中で行うのが好ましい。それにより、重合体単離工程を回避できる。重合体溶液中の未反応単量体を避けるために、これには、重合工程において好ましくは99%以上の高変換が要求される。単量体にさらされることに伴う健康ならびに安全性への懸念から、未反応単量体の程度は可能な限り小さく、好ましくは1%未満でなければならない。
【0052】
本発明の分岐重合体は、好ましくは従来のラジカル重合を用い促進(boost)開始剤を必要に応じて添加して調製される。促進開始剤の添加は重合の程度変換を高め、それにより未反応単量体の量を減らし得る。促進開始剤は、重合に用いられる開始剤と同じもの、又は別のものであってもよい。促進開始剤は、重合開始剤として同じ開始剤の群から選択される。
【0053】
フリーラジカル重合開始剤の例としては、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−イソブチロニトリル)や1,1’−アゾビス(シアノシクロヘキサン)などのアゾ化合物、tert−ブチルペルオキシピバレート、tert−ブチルペルオキシ2−エチルヘキサノエート、tert−ブチルペルオキシジエチルアセテート、tert−ブチルペルオキシイソブチレート、tert−アミルペルオキシピバレート、tert−アミルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、1,1−ジ(tert−アミルペルオキシ)シクロヘキサンや過酸化ジベンゾイルなどの過酸化物、及びそれらの混合物が挙げられる。
【0054】
好ましい開始剤は、アゾ系開始剤及びtert−アミル過酸化物である。
【0055】
本発明の分岐シリルエステル共重合体は、防汚塗料組成物の成分として用いることができる。
【0056】
分岐シリルエステル共重合体は、防汚塗料に必要な自己研磨特性を与える。分岐シリルエステル共重合体の研磨率は、シリルエステル官能性単量体の種類や量、及び親水性、疎水性や可撓性といった共重合用単量体、架橋剤、及び連鎖移動剤の特性により調整することができる。
【0057】
防汚塗料組成物及び防汚塗膜の特性は、他の成分を添加することでさらに調整することができる。
【0058】
本発明の防汚塗料組成物は、分岐シリルエステル共重合体、及び1つ以上の他の成分を含む。本発明の防汚塗料組成物は、好ましくは前に定義した分岐シリルエステル共重合体、及び1つ以上の生物活性剤を含む。さらに、同防汚塗料組成物は必要に応じて、他の樹脂、顔料、増量剤及び充填剤、脱水剤及び乾燥剤、添加物及び溶剤の中から選択される1つ以上の成分を含む。
【0059】
生物活性化合物は、海洋生物の定着や繁殖を防ぐあらゆる化学化合物である。
【0060】
無機生物活性化合物の例としては、酸化銅(例えば、亜酸化銅や酸化第2銅)などの銅及び銅化合物、銅合金(例えば銅ニッケル合金)、銅塩類(例えばチオシアン酸銅、硫化銅)やメタホウ酸バリウムが挙げられる。
【0061】
有機金属生物活性化合物の例としては、ピリチオン亜鉛、ピリチオン銅、酢酸銅、ナフテン酸銅、オキシン銅、ノニルフェノールスルホン酸銅、ドデシルベンゼンスルホン酸ビス(エチレンジアミン)銅やビス(ペンタクロロフェノレート)銅などの有機銅化合物、ビス(ジメチルジチオカルバミン酸)亜鉛、エチレンビス(ジチオカルバミン酸)亜鉛、エチレンビス(ジチオカルバミン酸)マンガンや亜鉛塩で錯化したエチレンビス(ジチオカルバミン酸)マンガンなどのジチオカルバメート化合物が挙げられる。
【0062】
有機生物活性化合物の例としては、2−(tert−ブチルアミノ)−4−(シクロプロピルアミノ)−6−(メチルチオ)−1,3,5−トリアジン、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、1,2−ベンジイソチアゾリン−3−オン、2−(チオシアナトメチルチオ)−1,3−ベンゾチアゾールや2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルフォニル)ピリジンなどの複素環式化合物、3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチル尿素などの尿素誘導体、N−(ジクロロフルオロメチルチオ)フタルイミド、N−ジクロロフルオロメチルチオ−N’,N’−ジメチル−N−フェニルスルファミド、N−ジクロロフルオロメチルチオ−N’,N’−ジメチル−N−p−トリルスルファミドやN−(2,4,6−トリクロロフェニル)マレイミドなどのカルボン酸、スルホン酸及びスルフェン酸のアミド類やイミド類、ピリジントリフェニルボラン、アミントリフェニルボラン、3−ヨード−2−プロピニルN−ブチルカルバメート、2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニトリルやp−((ジヨードメチル)スルフォニル)トルエンなどの他の有機化合物が挙げられる。
【0063】
他の例としては、テトラアルキルホスホニウムハロゲン化物やグアニジン誘導体が挙げられる。
【0064】
生物活性化合物は単独で、又は他との組み合わせで用いてもよい。
【0065】
本発明に係る防汚塗料組成物は、分岐シリルエステル共重合体及び生物活性化合物に加えて、他の樹脂、顔料、増量剤及び充填剤、脱水剤及び乾燥剤、添加物、溶剤及び薄め液の中から選択される1つ以上の成分を必要に応じて含む。
【0066】
付加的な樹脂は、防汚塗膜の自己研磨特性及び機械特性を調整するのに用いることができる。
【0067】
本発明に係る防汚塗料組成物で分岐シリルエステル共重合体に加えて用いることができる樹脂の例としては、
ウッドロジン、トール油ロジンやガムロジンなどのロジン材料、水添ならびに部分水添ロジン、不均化ロジン、二量体化ロジン、重合ロジン、マレイン酸エステル、フマル酸エステル、ロジン及び水添ロジンの他のエステル類、樹脂酸銅、樹脂酸亜鉛、樹脂酸カルシウム、樹脂酸マグネシウム、ロジン及び重合ロジンの他の樹脂酸金属類やWO97/44401号に記載の他のものなどのロジン誘導体、
コーパル樹脂やサンダラック樹脂などの樹脂酸類及びその誘導体、
アビエチン酸、ネオアビエチン酸、デヒドロアビエチン酸、ジヒドロアビエチン酸、テトラヒドロアビエチン酸、セコデヒドロアビエチン酸、ピマール酸、パラマトリニック酸(paramatrinic acid)、イソプリマル酸、レボプリマル酸、アガテンジカルボン酸、サンダラコピマル酸(sandaracopimalic acid)、ラウリン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、イソノナン酸、バーサチック酸、ナフテン酸、トール油脂肪酸、ココナッツ油脂肪酸、大豆油脂肪酸やそれらの誘導体などの他のカルボキシ酸含有化合物、
例えば、欧州特許出願公開第0204456号や欧州特許出願公開第0342276号に記載の酸基が一価有機残基に結合した二価金属により塞がれた酸官能性重合体、あるいは、例えば英国特許出願公開第2311070号や欧州特許出願公開第0982324号に記載のヒドロキシル残基に結合した二価金属類、又は欧州特許出願公開第0529693号に記載のアミン、
例えば、英国特許出願公開第2152947号に記載の(メタ)アクリル酸共重合体などの親水性共重合体、欧州特許出願公開第0526441号に記載のポリ(N−ビニルピロリドン)共重合体や他の重合体、
ポリ(n−ブチルアクリレート)やポリ(n−ブチルアクリレート−コ−イソブチルビニルエーテル)などの(メタ)アクリル酸重合体ならびに共重合体、
ポリ(メチルビニルエーテル)、ポリ(エチルビニルエーテル)、ポリ(イソブチルビニルエーテル)やポリ(ビニルクロライド−コ−イソブチルビニルエーテル)などのビニルエーテル重合体ならびに共重合体、
例えば、欧州特許出願公開第1033392号や欧州特許第1072625号に記載のポリエステル類、
アルキド樹脂及び修飾アルキド樹脂、
WO96/14362号に記載の他の縮合重合体、
及びポリウレタン類が挙げられる。
【0068】
他の樹脂は好ましくはロジン物質である。他の樹脂がロジン物質である場合、分岐シリルエステル共重合体は、防汚塗料組成物中の樹脂の全体量のうち少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも30重量%、より好ましくは少なくとも50重量%〜90重量%までを成す。ロジン物質は、防汚塗料組成物中の樹脂の全体量のうち少なくとも5重量%〜90重量%、好ましくは少なくとも10重量%、より好ましくは60重量%までを成す。
【0069】
シリルエステル共重合体は水存在下では加水分解に弱い。脱水剤や乾燥剤は、顔料や溶剤などの原料から添加される水分、又は防汚塗料組成物中のカルボン酸化合物と二価及び三価金属化合物との反応によって生成される水を取り除くことで、防汚塗料組成物の貯蔵安定性に寄与する。本発明に係る防汚塗料組成物で用いられ得る脱水剤及び乾燥剤には、有機ならびに無機化合物が含まれる。脱水剤及び乾燥剤の例としては、無水硫酸カルシウム、無水硫酸マグネシウム、モルキュラーシーブスやゼオライト類、オルトギ酸トリメチル、オルトギ酸トリエチル、オルトギ酸トリプロピル、オルトギ酸トリイソプロピル、オルトギ酸トリブチル、オルトギ酸トリメチルやオルト酢酸トリエチルなどのオルトエステル類、ケタール類、アセタール類、エノールエーテル類、ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリエチル、ホウ酸トリプロピル、ホウ酸トリイソプロピル、ホウ酸トリブチルやホウ酸トリ−tert−ブチルなどのオルトホウ酸類、トリメトキシメチルシラン、珪酸テトラエチルや多珪酸エチルなどの珪酸エステル類、及びp−トルエンスルホニルイソシアネートなどのイソシアネート類が挙げられる。
【0070】
好ましい脱水剤及び乾燥剤は無機化合物である。
【0071】
顔料の例としては、二酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、リン酸亜鉛、グラファイトやカーボンブラックなどの無機顔料類、フタロシアニン化合物やアゾ顔料などの有機顔料類が挙げられる。
【0072】
増量剤及び充填剤の例としては、ドロマイト、プラストライト(登録商標)、方解石、石英、方解石、マグネサイト、霰石、シリカ、珪灰石、雲母、縁泥石、マイカ、カオリンや長石などの鉱物類、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、珪酸カルシウムやシリカなどの合成無機化合物、中空ならびに固体ガラスビーズや中空ならびに固体セラミックビーズなどの高分子無機ミクロスフィア、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(メチルメタクリレート−コ−エチレングリコールジメチルアクリレート)、ポリ(スチレン−コ−エチレングリコールジメタクリレート)、ポリ(スチレン−コ−ジビニルベンゼン)、ポリスチレン、ポリ(ビニルクロライド)などの高分子物質の多孔性ならびに圧密ビーズが挙げられる。
【0073】
防汚塗料組成物に添加可能な添加物の例としては、補強剤、チキソトロープ剤、増粘剤、可塑剤や溶剤が挙げられる。
【0074】
補強剤の例としては、フレークや繊維が挙げられる。繊維には、珪素含有繊維、炭素繊維、酸化繊維、カーバイド繊維、窒化物繊維、硫化物繊維、リン酸繊維や鉱物繊維などの天然ならびに合成無機繊維類、金属繊維類、セルロース繊維、ゴム繊維、アクリル繊維、ポリアミド繊維、ポリイミド、ポリエステル繊維、ポリヒドラジド繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリエチレン繊維やWO00/77102号に記載の他のものなどの天然ならびに合成有機繊維類が含まれる。繊維は25〜2000μmの平均長、1〜50μmの平均厚みを有し、平均長と平均厚みとの比が少なくとも5であることが好ましい。
【0075】
チキソトロープ剤及び増粘剤の例としては、ヒュームドシリカ、有機変性粘土、アミドワックス、ポリアミドワックス、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、水添ひまし油ワックス、エチルセルロース、ステアリン酸アルミニウムやそれらの混合物などのシリカ類が挙げられる。
【0076】
可塑剤の例としては、塩化パラフィン、フタレート、リン酸エステル、スルホンアミド、アジピン酸塩又はエステルやエポキシ化植物油が挙げられる。
【0077】
有機溶剤及び薄め液の例としては、キシレン、トルエン、メシチレンなどの芳香族炭化水素、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルイソアミルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどのケトン類、ブチルアセテート、tert−ブチルアセテート、アミルアセテート、エチレングリコールメチルエチルアセテートなどのエステル類、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジブチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル類、n−ブタノール、イソブタノール、ベンジルアルコールなどのアルコール類、ブトキシエタノール、1−メトキシ−2−プロパノールなどのエーテルアルコール類、ホワイトスピリッツなどの脂肪族炭化水素、及び必要に応じて2つ以上の溶剤及び薄め液の混合物が挙げられる。
【0078】
一方、塗料を塗料組成物中の薄膜形成成分用の有機非溶剤、又は水性分散液に分散することができる。
【0079】
本発明を以下の実施例で説明する。
【実施例】
【0080】
[共重合体溶液]
[後加熱ありの共重合体溶液の一般調製手順]
攪拌機、凝縮器、窒素注入口、及び給送口を備えた温度調整型反応容器に多量の溶剤を投入する。反応容器を加熱し、95℃の反応温度で維持する。単量体、連鎖移動剤、開始剤、及び溶剤のプリミックスを調製する。窒素雰囲気下で、そのプリミックスを一定のペースで3時間かけて反応容器に投入する。さらなる30分後、後添加の促進開始剤を加える。反応容器をさらに2時間95℃の反応温度で維持する。温度をその後120℃に上げて、その温度でさらに30分間維持し、その後室温に冷却する。
【0081】
この手順に従い、表1の共重合体溶液S1〜S13、表2のS16〜S17を調製する。
【0082】
[共重合体溶液の一般調製手順]
攪拌機、凝縮器、窒素注入口、及び給送口を備えた温度調整型反応容器に多量の溶剤を投入する。反応容器を加熱し、95℃の反応温度で維持する。単量体、連鎖移動剤、開始剤、及び溶剤のプリミックスを調製する。窒素雰囲気下で、そのプリミックスを一定のペースで3時間かけて反応容器に投入する。さらなる30分後、後添加の促進開始剤を加える。反応容器をさらに2時間95℃の反応温度で維持し、その後室温に冷却する。
【0083】
この手順に従い、表3の共重合体溶液S14〜S15及びS18〜S19を調製する。
【0084】
[共重合体粘度の測定]
重合体の粘度を、ASTM D2196に従って、LV−2又はLV−4のスピンドルを備えたブルックフィールドDV-I粘度計を用いて12rpmで測定する。測定の前に重合体を23.0℃±0.5℃に調整する。
【0085】
[重合体溶液中の固形分の測定]
ISO3251に従って、重合体溶液中の固形分を測定する。0.6g±0.1gの検査試料を取り出し、送風乾燥機内で30分間150℃で乾燥する。残留物質の重量は不揮発物(NVM)であると考えられる。不揮発物含有量は重量パーセントで表わされる。示した値は3つの同等物の平均値である。
【0086】
[重合体平均分子量の測定]
重合体は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定によって特徴付けられる。屈折率(RI)検出器を備えたGPC計器を用いて重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)を測定する。示した値はポリエチレンの基準値に対するものである。多分散指数(PDI)はMw/Mnとして示される。
【0087】
この方法は、線状ポリスチレン基準に対する見掛けの分子量を提供するものであって、正確な分子量を提供するものではない。重合体がより分岐するにつれて、GPC分子量の不正確さが増大する。分岐は、分子量分布の広がりとして観察される。
【0088】
[ガラス転移温度の測定]
ガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量(DSC)計測により得られる。DSC測定は、TA計器DSCQ200で行われた。開いたアルミ製パン内の約10mgの乾燥重合体材料の試料を用い、空のパンを基準に10℃/分の加熱及び冷却速度で走査を記録した。
【0089】
以下の略語を表1〜表3で用いる。
TiPSA アクリル酸トリイソプロピルシリル
TBSMA メタクリル酸トリ−n−ブチルシリル
TiPSCMMA メタクリル酸トリイソプロピルシリルカルボキシメチル
MEA アクリル酸2−メトキシエチル
HEA アクリル酸2−ヒドロキシエチル
MMA メタクリル酸メチル
AIBN 2,2’−アゾジ(イソブチロニトリル)
AMBN 2,2’−アゾジ(2−メチルブチロニトリル)
EGDMA エチレングリコールジメタクリレート
MAAn 無水メタクリル酸
HP-A-MA 3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート
PETA−4 ペンタエリトリトールテトラアクリレート
E2MP エチル2−メルカプトプロピオネート
B3MP ブチル3−メルカプトプロピオネート
MTG チオグリコール酸メチル
HET 2−ヒドロキシエタンチオール
DDT ドデカンチオール/ドデシルメルカプタン
【0090】
【表1】

【0091】
表1の結果は、成分Bと成分Cとの組み合わせが、参考用の線状重合体S1に比べて重合体溶液粘度を低減させることを示す。
【0092】
共重合体S5は、分岐シリルエステル共重合体で用いられる濃度でのみ成分Cを用いることで、ほぼオリゴマー物質、即ち、Mwが非常に低い物質を提供することを示す。
【0093】
【表2】

【0094】
表2の結果は、様々な種類の成分Bと成分Cを異なる比率や量で組み合わせることで、低減された重合体溶液粘度の分岐シリルエステル共重合体が得られることを示す。
【0095】
【表3】

【0096】
表3の結果は、様々なシリルエステル共重合体に対して分岐が得られることを示す。
【0097】
表1から表3の結果は、線状重合体S1に比べて、分岐共重合体のガラス転移温度が低いことを示す。これは、分岐共重合体には類似の線状重合体よりもさらに可撓性があることを裏付けている。結果はまた、溶液粘度の減少は重量平均分子量Mwの減少だけでなく、分岐の度合にも関連していることを示す。
【0098】
[比較例1]
WO99/46301号の実施例26を固形分を増やして再現し、比較例1(CS1)を調製した。その組成物を表4に示す。
【0099】
[比較例2]
比較例2(CS2)として、WO99/46301号の実施例26の単量体組成物を、他の共重合体例のために用いた一般手順に従って重合した。その組成物を表4に示す。
【0100】
【表4】

【0101】
比較例の双方は、同じ又はより高い固形分で可溶性物質を形成するシリルエステル含有共重合体とは対照的に、不溶性ゲルを形成した。
【0102】
[塗料組成物]
[防汚塗料組成物の調製のための一般手順]
成分を混合し、高速分散機を用いて30μmより小さい磨砕度に粉砕する。粉砕工程において、高いずり応力や温度に弱い成分はすべて降下方式(let-down)で添加する。塗料組成物の一般的な組成物を表5及び表6に示す。
【0103】
塗料組成物を調製するのにいくつかの共重合体溶液を用いた。用いた共重合体溶液の概要、及び調製された塗料組成物の種類を表7に示す。
【0104】
[防汚塗料組成物の揮発性有機化合物(VOC)含有量の算出]
ASTM D5201に従って、防汚塗料組成物の揮発性有機化合物(VOC)含有量を算出する。
【0105】
[防汚塗料組成物の粘度の測定]
ASTM D4287に従って、コーンプレート粘度計を用いて防汚塗料組成物の高ずり粘度を測定する。
【0106】
[海水中の防汚塗膜の研磨率の測定]
塗膜の膜厚の減少を経時的に測定して研磨率を測定する。この実験のためにPVC製の円板を用いる。フィルムアプリケーターを用いて、塗料組成物を放射状のストライプとして円板に塗布する。乾燥した塗膜の厚みを好適な電子膜厚ゲージで測定する。PVC製の円板をシャフトに取り付け、海水が流通する容器内で回転させる。ろ過され、25℃±2℃に温度調整された天然の海水を用いる。膜厚を測定するために、PVC製の円板を一定の間隔で取り出す。円板を洗い、膜厚を測定する前に室温で一晩乾燥させる。
【0107】
【表5】

【0108】
【表6】

【0109】
【表7】


【0110】
表7は全ての防汚塗料組成物の粘度が低く、塗膜が良好な研磨率を呈することを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)1個の重合性エチレン性不飽和結合を含む1つ以上の単量体であって、その内の少なくとも1つはシリルエステル官能基を含む単量体、(B)2個以上の重合性エチレン性不飽和結合を含む1つ以上の単量体、及び(C)1つ以上の連鎖移動剤の繰り返し単位を含む分岐シリルエステル共重合体であって、前記単量体(B)の重合性エチレン性不飽和単位の前記連鎖移動剤(C)の連鎖移動単位に対するモル比は5〜0.2であることを特徴とする分岐シリルエステル共重合体。
【請求項2】
前記単量体(B)の重合性エチレン性不飽和単位の前記連鎖移動剤(C)の連鎖移動単位に対するモル比は2〜0.5である請求項1に記載の分岐シリルエステル共重合体。
【請求項3】
前記シリルエステル官能基を有する単量体(A)は、一般式(I)で表わされる請求項1に記載の分岐シリルエステル共重合体。
【化2】

(式中、R1、R2、及びR3はそれぞれ独立して、線状、又は分岐C1-20アルキル基、C3-12シクロアルキル基、及びC6-20アリール基からなる群から選択され、
Xは、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、(メタクリロイルオキシ)アルキルカルボキシ基、マレイノイルオキシ基、フマロイルオキシ基、イタコノイルオキシ基、及びシトラコノイルオキシ基などのエチレン性不飽和基である。)
【請求項4】
1、R2、及びR3は、それぞれ独立してメチル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、及びフェニルから選択される請求項3に記載の分岐シリルエステル共重合体。
【請求項5】
Xはアクリロイルオキシ基、又はメタクリロイルオキシ基である請求項3又は4に記載の分岐シリルエステル共重合体。
【請求項6】
前記シリルエステル官能基を有する1つ以上の単量体(A)の量は、単量体混合物全体の1〜99モル%、より好ましくは15〜60モル%、最も好ましくは20〜40モル%である請求項1から5のいずれかに記載の分岐シリルエステル共重合体。
【請求項7】
前記単量体(B)の量は、前記単量体(A)の全体濃度の0.1〜25モル%、より好ましくは0.1〜10モル%である請求項1から6のいずれかに記載の分岐シリルエステル共重合体。
【請求項8】
前記単量体(B)の官能基は、分子毎に2〜4個の重合性エチレン性不飽和結合であり、より好ましくは分子毎に2個の重合性エチレン性不飽和結合である請求項1から7のいずれかに記載の分岐シリルエステル共重合体。
【請求項9】
前記連鎖移動剤(C)の量は、前記単量体(A)の全体濃度の0.1〜25モル%、より好ましくは1〜10モル%である請求項1から6のいずれかに記載の分岐シリルエステル共重合体。
【請求項10】
前記連鎖移動剤(C)はチオール化合物である請求項1から6及び9のいずれかに記載の分岐シリルエステル共重合体。
【請求項11】
前記共重合体の重合が、フリーラジカル開始剤の存在下で行われる請求項1から10のいずれかに記載の分岐シリルエステル共重合体。
【請求項12】
防汚塗料組成物中の成分としての請求項1から10のいずれかに記載の分岐シリルエステル共重合体の使用。
【請求項13】
防汚塗料組成物中の固形分を増やすための請求項1から10のいずれかに記載の分岐シリルエステル共重合体の使用。
【請求項14】
請求項1から11のいずれかに記載の分岐シリルエステル共重合体と1つ以上の他の成分とを含む防汚塗料組成物。
【請求項15】
前記1つ以上の他の成分は、1つ以上の生物活性剤である請求項14に記載の防汚塗料組成物。
【請求項16】
他の樹脂、顔料、増量剤及び充填剤、脱水剤及び乾燥剤、添加剤及び溶剤の中から選択される1つ以上の成分をさらに含む請求項14又は15に記載の防汚塗料組成物。
【請求項17】
前記他の樹脂はロジン又はロジン誘導体である請求項16に記載の防汚塗料組成物。
【請求項18】
ロジン又はロジン誘導体の量は、前記組成物中の全樹脂の5〜90重量%、好ましくは少なくとも10重量%、より好ましくは60重量%までである請求項14から17のいずれかに記載の防汚塗料組成物。
【請求項19】
脱水剤及び乾燥剤が存在する請求項14から18のいずれかに記載の防汚塗料組成物。

【公表番号】特表2010−532402(P2010−532402A)
【公表日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−513971(P2010−513971)
【出願日】平成20年7月1日(2008.7.1)
【国際出願番号】PCT/EP2008/058460
【国際公開番号】WO2009/007276
【国際公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【出願人】(510005649)
【Fターム(参考)】