説明

分岐鎖アミノ酸を含有する錠剤およびその製造方法

本発明は、圧縮成形障害を起こすことなく製造し得る分岐鎖アミノ酸を含有する錠剤とその製造方法を提供することを目的に、分岐鎖アミノ酸および還元パラチノースを含有する錠剤、分岐鎖アミノ酸および還元パラチノースを含有する混合物を直接打錠法により圧縮成形することを特徴とする分岐鎖アミノ酸を含有する錠剤の製造方法、ならびに分岐鎖アミノ酸および還元パラチノースを含有する混合物を造粒する工程およびそれに続く圧縮成形工程を含むことをすることを特徴とする分岐鎖アミノ酸を含有する錠剤の製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分岐鎖アミノ酸を含有する錠剤およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
分岐鎖アミノ酸として知られるバリン、ロイシン、イソロイシン等は、筋タンパクの分解抑制、虚血性心不全の予防、肝保護、腎不全患者の睡眠障害改善、糖尿病改善等に効果があると言われ、バリン、ロイシンおよびイソロイシンを有効成分として含む医薬用製剤は肝疾患治療用の医薬品として知られている。また近年、分岐鎖アミノ酸の栄養生理学的な機能が注目され、これらのアミノ酸を含む飲料、食品等が市場で評価されつつある。分岐鎖アミノ酸の摂取形態としては、飲料、顆粒、錠剤等があるが、分岐鎖アミノ酸は独特の苦味を有するので、これら飲料、顆粒、錠剤等においては、味に工夫が必要である。また、分岐鎖アミノ酸を含有する錠剤を製造しようとした場合、圧縮成形機の杵臼への分岐鎖アミノ酸の付着、キャッピング、スティッキング等の圧縮成形障害を起こし易く、錠剤の製造が困難であるので、これらの圧縮成形障害を防止する必要があった。
【0003】
これまでに、分岐鎖アミノ酸を含有する錠剤を製造する場合の圧縮成形障害を防止する方法として、いくつか報告がされている(例えば、特許文献1〜3等)。特許文献1では、賦形剤としてラクチトールを用いることにより圧縮成形障害を起こすことなく、分岐鎖アミノ酸錠剤を製造できることが示されている。この方法ではラクチトール0.12〜2質量部と分岐鎖アミノ酸1質量部を含む粉末原料を造粒後に乾燥してまず顆粒とし、これを賦形剤である微結晶セルロース、および滑沢剤である植物油脂末と混合してから圧縮成形している。一方、特許文献2では、分岐鎖アミノ酸等のアミノ酸と、乳糖、マルトース、トレハロース、ソルビトール、ラクチトール、マンニトール、キシリトールおよびマルチトールからなる群から選ばれる1つと崩壊剤とを含む混合物を、結合剤水溶液を用いて造粒し乾燥して得られる造粒物を圧縮成形してアミノ酸含有口腔内速崩壊錠を製造している。また、特許文献3は、分岐鎖アミノ酸を含有するチュアブル剤に関するものであって、ここでは、イソロイシン、ロイシンおよびバリンの3種の分岐鎖アミノ酸を有効成分として含有する粒子混合物を造粒して顆粒を製造し、結合剤成分を含有するコーティング液で該顆粒をコーティングして、該コーティング顆粒を圧縮成形している。
【0004】
一方、還元パラチノースは砂糖を原料とした甘味料である。還元パラチノースは、虫歯の原因にならず、低カロリーで血糖値をあげないため、肥満者や糖尿病患者に好適である。また、還元パラチノースは、化学的に安定で、加熱や酸またはアルカリで分解着色を示さずメイラード反応も示さず、吸湿性も低いため食品等への適性に優れる。還元パラチノースの顆粒品は圧縮成形に適することが知られている(例えば特許文献4等)。
【特許文献1】特開2001−258509号公報
【特許文献2】国際公開第03/041698号パンフレット
【特許文献3】特開2003−221326号公報
【特許文献4】特開2000−197454号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、圧縮成形障害を起こすことなく製造し得る分岐鎖アミノ酸を含有する錠剤とその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下の(1)〜(15)に関する。
(1)分岐鎖アミノ酸および還元パラチノースを含有する錠剤。
(2)分岐鎖アミノ酸1質量部に対し還元パラチノースを0.1〜6質量部含有する前記(1)記載の錠剤。
(3)錠剤硬度が20〜200Nである前記(1)または(2)記載の錠剤。
(4)体積平均粒子径が0.5〜400μmである還元パラチノースと分岐鎖アミノ酸とを混合する工程を含む錠剤の製造方法により製造できる前記(1)〜(3)のいずれかに記載の錠剤。
(5)セルロースを含有する前記(1)〜(4)のいずれかに記載の錠剤。
(6)セルロースが微結晶セルロースであり、体積平均粒子径が20〜100μmである微結晶セルロースと還元パラチノースまたは還元パラチノースを含有する造粒物とを混合する工程を含む錠剤の製造方法により製造できる前記(5)記載の錠剤。
(7)分岐鎖アミノ酸を錠剤質量の10〜80%含有する前記(1)〜(6)のいずれかに記載の錠剤。
(8)分岐鎖アミノ酸がバリンである前記(1)〜(7)のいずれかに記載の錠剤。
(9)分岐鎖アミノ酸がロイシンである前記(1)〜(7)のいずれかに記載の錠剤。
(10)分岐鎖アミノ酸がイソロイシンである前記(1)〜(7)のいずれかに記載の錠剤。
(11)分岐鎖アミノ酸がバリン、ロイシンおよびイソロイシンの混合物である前記(1)〜(7)のいずれかに記載の錠剤。
(12)バリン、ロイシンおよびイソロイシンの重量比が1:0.6〜6:0.3〜3である前記(11)記載の錠剤。
(13)滑沢剤を実質的に含まない前記(1)〜(12)のいずれかに記載の錠剤。
(14)分岐鎖アミノ酸および還元パラチノースを含有する混合物を直接打錠法により圧縮成形することを特徴とする分岐鎖アミノ酸を含有する錠剤の製造方法。
(15)分岐鎖アミノ酸および還元パラチノースを含有する混合物を造粒する工程およびそれに続く圧縮成形工程を含むことをすることを特徴とする分岐鎖アミノ酸を含有する錠剤の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、圧縮成形障害を起こすことなく製造し得る分岐鎖アミノ酸を含有する錠剤とその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の錠剤は、分岐鎖アミノ酸と還元パラチノース、好ましくはさらにセルロースを含有し、所望により糖類、滑沢剤、甘味剤、酸味料、結合剤、抗酸化剤、着色剤、香料、賦形剤、崩壊剤等を含有していてもよい。
【0009】
本発明における分岐鎖アミノ酸としては、例えばバリン、ロイシン、イソロイシン、それら2種〜3種の混合物等があげられる。分岐鎖アミノ酸の製造方法は特に限定されず、発酵法、合成法、精製法等で製造することができる。分岐鎖アミノ酸の粒度分布は特に限定されない。分岐鎖アミノ酸は例えば協和発酵工業株式会社や株式会社協和ウェルネスから購入することができる。本発明の錠剤中で分岐鎖アミノ酸が占める割合は、10〜80質量%であることが好ましく、30〜60質量%であることがより好ましい。分岐鎖アミノ酸としては、バリン、ロイシンもしくはイソロイシンのそれぞれ単独、またはバリン、ロイシンおよびイソロイシンの混合物が好ましく、該混合物における各成分の重量比は1:0.6〜6:0.3〜3であるのが好ましく、1:1〜3:0.5〜1.5であるのがより好ましい。また、バリン、ロイシンおよびイソロイシンは、それぞれL体、D体、およびL体とD体の混合物のいずれでもよく、好ましくはL体である。
【0010】
本発明における還元パラチノースとしては、例えばα−D−グルコピラノシル−1,6−ソルビトール(GPS)、α−D−グルコピラノシル−1,6−マンニトール(GPM)、それらの混合物等があげられる。還元パラチノースがGPSとGPMの混合物であるとき、GPSとGPMの混合比は特に限定されないが、等モルの混合物が好ましい。還元パラチノースの製造方法は、特に限定されないが、例えば砂糖に糖転移酵素を作用させてパラチノースを製造し、次に還元することにより還元パラチノースが得られる。本発明の錠剤の製造において、使用される還元パラチノースの粒子径は、顕微鏡法または篩い分け法で測定するときの体積平均粒子径で0.5〜400μmであるのが好ましく、5〜200μmであるのがより好ましい。還元パラチノースは例えば新三井製糖株式会社(製品名パラチニット)から購入することができる。本発明の錠剤中における分岐鎖アミノ酸に対する還元パラチノースの量は、分岐鎖アミノ酸1質量部に対し0.1〜6質量部であることが好ましく、0.2〜2質量部であることがより好ましい。
【0011】
本発明におけるセルロースとしては、例えば微結晶セルロース等があげられる。本発明の錠剤の製造において、使用される微結晶セルロースの粒子径は特に限定されないが、顕微鏡法または篩い分け法で測定するときの体積平均粒子径で約20〜100μmであることが好ましく、約30〜60μmであることがより好ましい。微結晶セルロースの粒子は、錠剤の硬度や崩壊性等を高めるために、不定形の棒状粒子であることが好ましく、微細な空隙を有することが好ましい。また、微結晶セルロースの粒子は、錠剤の含量均一性や製造速度等を高めるために、流動性に優れることが好ましい。微結晶セルロースの製造方法は特に限定されないが、例えばパルプ繊維等を加水分解し、非微結晶セルロースを除去して粉砕、乾燥して製造することができる。微結晶セルロースは例えば旭化成株式会社(製品名アビセル)から購入することもできる。本発明の錠剤中でセルロースが占める割合は、製剤における一般的な使用の量の範囲内であれば特に限定されないが、0〜30質量%であることが好ましい。
【0012】
糖類としては、食品等に使用できるものであれば特に制限されないが、例えば単糖類、二糖類、糖アルコール、オリゴ糖等があげられる。
単糖類としては、例えばグルコース、キシロース、ガラクトース、フラクトース等があげられる。二糖類としては、例えばトレハロース、蔗糖、乳糖、パラチノース等があげられる。糖アルコールとしては、例えばマルチトール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール等があげられる。オリゴ糖としては、例えばラフィノース、イヌロオリゴ糖(チコリオリゴ糖)、パラチノースオリゴ糖等があげられる。
【0013】
本発明の錠剤の製造において、使用される糖類の形状は特に制限されないが、微結晶または微粒子の形態が好ましく、その粒子径は、顕微鏡法または篩い分け法で測定するときの体積平均粒子径で例えば1〜100μm、好ましくは5〜80μm、より好ましくは10〜60μm、特に好ましくは30〜50μmである。本発明の錠剤中で糖類が占める割合は、製剤における一般的な使用の量の範囲内であれば特に限定されない。
【0014】
滑沢剤としては、食品等に使用できるものであれば特に制限されないが、例えば、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム等のステアリン酸またはその金属塩、ショ糖脂肪酸エステルまたはグリセリン脂肪酸エステル、硬化油脂等があげられる。滑沢剤は、錠剤の表面のみにあっても、錠剤内部に分散していてもよい。本発明の錠剤中で滑沢剤が占める割合は、0〜20質量%であることが好ましく、0〜5質量%であることがより好ましく、0〜1質量%であることがさらに好ましく、0%であることが最も好ましい。本発明の錠剤は、滑沢剤を実質的に含有しなくても、圧縮成形障害なく製造することが可能であり、錠剤の服用後の崩壊性や錠剤の構成成分の安定性の観点からも、滑沢剤を実質的に使用しないことが好ましい。
【0015】
甘味剤としては、食品等に使用できるものであれば特に制限されないが、例えば、サッカリンナトリウム、グリチルリチン二カリウム、アスパルテーム、ステビア、ソーマチン等があげられる。本発明の錠剤中で甘味剤が占める割合は、製剤における一般的な使用の量の範囲内であれば特に限定されない。
酸味料としては、食品等に使用できるものであれば特に制限されないが、例えば、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸等があげられる。本発明の錠剤中で酸味料が占める割合は、製剤における一般的な使用の量の範囲内であれば特に限定されない。
【0016】
結合剤としては、食品等に使用できるものであれば特に制限されないが、例えば、ゼラチン、プルラン等があげられる。本発明の錠剤中で結合剤が占める割合は、製剤における一般的な使用の量の範囲内であれば特に限定されない。
【0017】
抗酸化剤としては、食品等に使用できるものであれば特に制限されないが、例えば、トコフェロール、アスコルビン酸、塩酸システイン、L−アスコルビン酸ステアリン酸エステル等があげられる。本発明の錠剤中で抗酸化剤が占める割合は、製剤における一般的な使用の量の範囲内であれば特に限定されない。
着色剤としては、食品等に使用できるものであれば特に制限はされないが、例えば、食用黄色5号、食用赤色2号、食用青色2号、カロチノイド色素、トマト色素等があげられる。本発明の錠剤中で着色剤が占める割合は、製剤における一般的な使用の量の範囲内であれば特に限定されない。
香料としては、食品等に使用できるものであれば特に制限されないが、例えば、レモンフレーバー、レモンライムフレーバー、グレープフルーツフレーバー、アップルフレーバー等があげられる。本発明の錠剤中で香料が占める割合は、製剤における一般的な使用の量の範囲内であれば特に限定されない。
【0018】
賦形剤としては、食品等に使用できるものであれば特に制限されないが、例えば、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等があげられる。本発明の錠剤中で賦形剤が占める割合は、製剤における一般的な使用の量の範囲内であれば特に限定されない。
【0019】
崩壊剤としては、食品等に使用できるものであれば特に制限されないが、例えば、コーンスターチ、バレイショデンプン等があげられる。本発明の錠剤中で崩壊剤が占める割合は、製剤における一般的な使用の量の範囲内であれば特に限定されない。
【0020】
本発明の錠剤は、例えばかけ、くずれ等が生じない硬度を有しているのが好ましい。錠剤の硬度は、一般的に錠剤硬度計で錠剤の直径方向の破壊強度として測定されるが、その値は20〜200Nであるのが好ましく、30N〜150Nであるのがより好ましく、40N〜100Nであるのが特に好ましい。錠剤の硬度は、市販の錠剤破壊強度測定機、例えば、富山産業製TH−203CP型等により測定できる。
【0021】
本発明の錠剤の形状は、特に制限されないが、例えば丸錠、三角錠、砲丸錠等が好ましい。本発明の錠剤の大きさは、特に制限されないが、例えば質量で0.1〜2g、直径で0.3〜2.0cmであるのが好ましい。
【0022】
本発明の錠剤は、例えば上述した該錠剤の各構成成分を粉末のまま混合するか、該構成成分の一部を造粒物とした後に残りの成分を混合するか、該構成成分のすべてを造粒する工程、次いで得られた混合物または造粒物を圧縮成形することにより錠剤を製造する工程を含む製造方法で製造することができる。より具体的には、分岐鎖アミノ酸および還元パラチノースを含有する該錠剤の各構成成分を混合し、得られた混合物を直接打錠法により圧縮成形する製造方法でも、所望の硬度を有する錠剤を圧縮成形障害なく製造することができ、また分岐鎖アミノ酸および還元パラチノースを含有する該錠剤の各構成成分のうち、分岐鎖アミノ酸および還元パラチノースを含有する混合物を造粒した後、該構成成分の混合物を圧縮成形する製造方法(間接打錠法により圧縮成形する製造方法)でも、所望の硬度を有する錠剤を圧縮成形障害なく製造することができる。各分岐鎖アミノ酸の純度は、95%以上であるのが好ましく98%以上であるのがより好ましい。また、分岐鎖アミノ酸の水分含量は、1%以下であるのが好ましく、0.5%以下であるのがより好ましい。圧縮成形に用いる機器は、特に限定されず、例えばロータリー圧縮成形機、油圧プレス機等の圧縮機を用いることができる。前記の直接打錠法により圧縮成形する製造方法は、錠剤の各構成成分をただ単に混合するだけで圧縮成形に付する極めて簡便な製造方法であるので好ましく、製造工程中に該構成成分に水分等の添加をしていないので、錠剤の構成成分の安定性等においても好ましい。
【0023】
本発明の錠剤の製造方法では、滑沢剤を実質的に使用しなくても、前記各混合物または前記造粒物に滑沢剤を混合しても所望の硬度を有する錠剤を圧縮成形障害なく製造することができ、錠剤の服用後の崩壊性や錠剤の構成成分の安定性の観点からも、滑沢剤を実質的に使用しないことが好ましい。また、圧縮成形機の杵臼にあらかじめ極微量の滑沢剤を塗布し、滑沢剤が塗布された杵臼を有する圧縮成形機で滑沢剤を含有しない混合物を圧縮成形する、いわゆる外部滑沢圧縮成形方法を用いても所望の硬度を有する錠剤を圧縮成形障害なく製造することができ、該方法は使用する滑沢剤が極微量なので、同じく錠剤の服用後の崩壊性や錠剤の構成成分の安定性において好ましい。
【0024】
本発明の錠剤の各構成成分の全てまたは該構成成分の一部を造粒する場合(例えば前記の間接打錠法により圧縮成形する製造方法等)においての造粒方法としては、例えば精製水、エタノール等を用いた湿式造粒法、乾式造粒法等をあげることができる。造粒に用いる機器は、特に限定されず、例えば流動層造粒機、転動撹拌造粒機、押し出し造粒機等を用いることができる。前記間接打錠法により圧縮成形する製造方法は、分岐鎖アミノ酸および還元パラチノースの含量を均一にするためにおいて好ましい。また、造粒時にできるだけ水分等の添加を減らすことは、錠剤の構成成分の安定性等において好ましく、前記間接打錠法により圧縮成形する製造方法では、造粒時に水分等の添加を減らしても、所望の硬度を有する錠剤を圧縮成形障害なく製造することが可能である。
【0025】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0026】
表1に示す組成を有する錠剤を以下の手順に従って製造した。
BCAA(L−バリン10部、L−ロイシン20部、L−イソロイシン10部(L−バリンおよびL−イソロイシンは粉砕機(奈良機械製作所製M−2型(スクリーン0.5mm使用))を用い粉砕してから使用した))と還元パラチノース(パラチニットPNM−2(新三井製糖(株))、ラクチトール(ラクチトールLC−1(日研化成(株))、マルチトール(マビット50M((株)林原商事)または乳糖(SUPER−TAB(旭化成工業(株))と微結晶セルロース(アビセルFD101(旭化成工業(株))との配合比を表1のように変えて、ポリエチレン袋内で十分に混合した後、直径8mm、240mgの錠剤を圧縮成形した(単発式圧縮成形機:菊水竪型成形機6B−2M)。なお、錠剤硬度がすべて59N(硬度測定器:藤原製作所KHT−20N)となるように圧縮成形圧を調整した。
【0027】
【表1】

【0028】
表1に示すように、還元パラチノースを用いた場合は、所望の硬度を有する錠剤を圧縮成形障害なく製造することができた。マルチトールまたは乳糖を用いた場合には、所望の硬度を有する錠剤を製造することはできるものの、スティッキングが認められた。ラクチトールを用いた場合には、所望の硬度を有する錠剤を製造することはできるものの、キャッピングが認められた。すなわち、分岐鎖アミノ酸および還元パラチノースを含有する本発明の錠剤は、錠剤の各構成成分の混合物を直接打錠法により圧縮成形する簡便な製造方法で、実質上に滑沢剤を含まなくても、所望の硬度を有する錠剤として圧縮成形障害なく製造することが可能であった。
【実施例2】
【0029】
L−ロイシン1360g、還元パラチノース2240gおよび微結晶セルロース400gを混合した。得られた混合物を圧縮成形機を用いて圧縮成形圧13kNで圧縮成形して直径8mm、240mgの錠剤を製造した。圧縮成形障害は認められず、錠剤硬度は75N(n=20の平均値)であった。
【0030】
実施例2に示すように、分岐鎖アミノ酸および還元パラチノースを含有する本発明の錠剤は、錠剤の各構成成分を含有する混合物を直接打錠法により圧縮成形する簡便な製造方法で、実質上滑沢剤を含まなくても、所望の硬度を有する錠剤として圧縮成形障害なく製造することが可能であった。
【実施例3】
【0031】
L−バリン(奈良機械製作所製M−2型(スクリーン0.5mm使用)で粉砕した。以下同じ)1530gと還元パラチノース1584gの混合物をプルラン33.75g(5%水溶液)を用い流動層造粒機(フロイント産業社製FLO−5)で造粒した。得られた造粒物2798gに微結晶セルロース1200gおよび微粒二酸化ケイ素2gを加え混合した。得られた混合物を圧縮成形機(菊水制作所社製 VIRGO524SS1AY、以下同じ)を用い圧縮成形圧12kNで圧縮成形して直径8mm、240mgの錠剤を製造した。圧縮成形障害は認められず、錠剤硬度は83N(n=20の平均値)であった。
【実施例4】
【0032】
L−イソロイシン(奈良機械製作所製M−2型(スクリーン0.5mm使用)で粉砕した。以下同じ)1530gと還元パラチノース1584gの混合物をプルラン33.75g(5%水溶液)を用い流動層造粒機(フロイント産業社FLO−5)で造粒した。得られた造粒物2798gに微結晶セルロース1200gおよび微粒二酸化ケイ素2gを加え混合した。得られた混合物を圧縮成形機を用いて圧縮成形圧14kNで圧縮成形して直径8mm、240mgの錠剤を製造した。圧縮成形障害は認められず、錠剤硬度は75N(n=20の平均値)であった。
【実施例5】
【0033】
L−バリン382.5g、L−ロイシン765g、L−イソロイシン382.5gと還元パラチノース2038.5gの混合物をプルラン29.25g(5%水溶液)を用い流動層造粒機(フロイント産業社製FLO−5)で造粒した。得られた造粒物3200gに微結晶セルロース1200gを加え混合した。得られた混合物を圧縮成形機を用い圧縮成形圧18kNで圧縮成形して直径8mm、240mgの錠剤を製造した。圧縮成形障害は認められず、錠剤硬度は72N(n=20の平均値)であった。
【実施例6】
【0034】
L−バリン8.5kg、L−ロイシン17kg、L−イソロイシン8.5kgと還元パラチノース45.3kgの混合物をプルラン0.7kg(5%水溶液)を用い流動層造粒機(フロイント産業社製FLO−120型)で造粒した。得られた造粒物77.6kgに微結晶セルロース19.4kgを加え、コニカルブレンダー(日本乾燥機株式会社製CB−1200ブレンダー)を用いて混合した。得られた混合物を圧縮成形機を用い圧縮成形圧18kNで圧縮成形して直径8mm、240mgの錠剤を製造した。圧縮成形障害は認められず、錠剤硬度は75N(n=20の平均値)であった。
【0035】
実施例3〜6に示すように、分岐鎖アミノ酸および還元パラチノースを含有する本発明の錠剤は、錠剤の各構成成分のうち、分岐鎖アミノ酸および還元パラチノースを含有する混合物を造粒する工程およびそれに続く圧縮成形工程を含む製造方法で、実質上滑沢剤を含まなくても、所望の硬度を有する錠剤として圧縮成形障害なく製造することが可能であった。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明により、圧縮成形障害を起こすことなく製造し得る分岐鎖アミノ酸を含有する錠剤とその製造方法を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分岐鎖アミノ酸および還元パラチノースを含有する錠剤。
【請求項2】
分岐鎖アミノ酸1質量部に対し還元パラチノースを0.1〜6質量部含有する請求項1記載の錠剤。
【請求項3】
錠剤硬度が20〜200Nである請求項1または2記載の錠剤。
【請求項4】
体積平均粒子径が0.5〜400μmである還元パラチノースを用いて製造されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の錠剤。
【請求項5】
セルロースを含有する請求項1〜4のいずれかに記載の錠剤。
【請求項6】
セルロースが微結晶セルロースであり、体積平均粒子径が20〜100μmである微結晶セルロースを用いて製造されたことを特徴とする請求項5記載の錠剤。
【請求項7】
分岐鎖アミノ酸を錠剤質量の10〜80%含有する請求項1〜6のいずれかに記載の錠剤。
【請求項8】
分岐鎖アミノ酸がバリンである請求項1〜7のいずれかに記載の錠剤。
【請求項9】
分岐鎖アミノ酸がロイシンである請求項1〜7のいずれかに記載の錠剤。
【請求項10】
分岐鎖アミノ酸がイソロイシンである請求項1〜7のいずれかに記載の錠剤。
【請求項11】
分岐鎖アミノ酸がバリン、ロイシンおよびイソロイシンの混合物である請求項1〜7のいずれかに記載の錠剤。
【請求項12】
バリン、ロイシンおよびイソロイシンの重量比が1:0.6〜6:0.3〜3である請求項11記載の錠剤。
【請求項13】
滑沢剤を実質的に含まない請求項1〜12のいずれかに記載の錠剤。
【請求項14】
分岐鎖アミノ酸および還元パラチノースを含有する混合物を直接打錠法により圧縮成形することを特徴とする分岐鎖アミノ酸を含有する錠剤の製造方法。
【請求項15】
分岐鎖アミノ酸および還元パラチノースを含有する混合物を造粒する工程およびそれに続く圧縮成形工程を含むことをすることを特徴とする分岐鎖アミノ酸を含有する錠剤の製造方法。

【国際公開番号】WO2005/099681
【国際公開日】平成17年10月27日(2005.10.27)
【発行日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−512368(P2006−512368)
【国際出願番号】PCT/JP2005/007203
【国際出願日】平成17年4月14日(2005.4.14)
【出願人】(000001029)協和醗酵工業株式会社 (276)
【Fターム(参考)】