説明

分散された充填剤を含む重合性大環状オリゴマーマスターバッチ

大環状オリゴマー及び充填剤の複合体を、マスターバッチ法で製造する。マスターバッチは充填剤を少なくも15重量%含む。充填剤は、好ましくは1ミクロン未満の大きさの材料であり、特に、少なくとも一部分が剥離されることができるクレイ又は他の層状材料である。マスターバッチは、より多量の大環状オリゴマー、別のポリマー、別の重合性材料中にレットダウンさせ、重合条件に供して、ナノ複合体を形成できる。別法として、マスターバッチは高分子量又は中間分子量に重合させ、次いで追加のオリゴマー、ポリマー又は他の重合性材料とブレンドすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2004年6月18日に出願された米国仮特許出願第60/581,189号の利益を請求する。
【0002】
本発明は、有機化クレイ(organoclay)充填剤を含む大環状オリゴマーから得られるポリマーに関する。更に、本発明は、クレイ充填剤の大環状オリゴマー中のナノ分散体から製造される製品に関する。
【背景技術】
【0003】
強度、靭性、高光沢度及び耐溶剤性のような望ましい性質を有するポリマー組成物を形成する大環状オリゴマーが開発されている。好ましい大環状オリゴマーには、特許文献1(引用することによって本明細書中に組み入れる)に開示されたような大環状ポリエステルオリゴマーがある。このような大環状ポリエステルオリゴマーは、複合体用途における良好な含浸及び浸潤を容易にする低溶融粘度を示すので、ポリマー複合体を製造するための優れた出発原料である。更に、このような大環状オリゴマーは、従来の加工技術を用いて加工するのが容易である。しかし、このようなポリマー組成物は、一部の高温用途に適合可能になるのに充分に高い加熱撓み温度を有さない。従って、層状クレイ小板(platelet)がポリマーマトリックス中に分散されたこのような材料のナノ複合体が開発された。このような組成物は、特許文献2及び3に開示されている。これらの特許は引用することによって本明細書中に組み入れる。
【0004】
【特許文献1】米国特許第5,498,651号
【特許文献2】米国特許第5,530,052号
【特許文献3】PCT/US03/041476(2003年12月19日出願)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記ナノ複合体中の分散クレイは、延性のような他の有用な性質を許容され得る値に保持しながら、ポリマーに対して改善された熱的性質及び補強をもたらす。このような性質の向上は、ポリマー全体へのクレイの分散度に非常に左右される。これらのクレイ充填剤は自然界では、厚さがほぼ0.5〜2nmの「積み重なった(stacked)」高アスペクト比の小板の形態で見られる。小板が互いに分離する(又は「剥離される(exfoliated)」)場合には、クレイがポリマー中に分散されるので、これらのクレイ充填剤から最大の利益が得られる。しかし、通常の溶融加工用途という状況では、通常は充分な混合を達成できないので、この方法に若干の変更を加えなければ、この効果を経済的に達成するのは実際には困難である。条件が厳しすぎる場合には、クレイ粒子及び/又はクレイ上の有機改質剤は分解するおそれがあるので、この問題は悪化する。従って、クレイ粒子を効率的に且つより均一にポリマーマトリックス全体に分布させることができる実用的な方法が非常に望ましい。
【0006】
大環状オリゴマーの充填剤入りポリマー(filled polymer)の形成に関する別の問題は、商業的に妥当な反応期間内にオリゴマーをポリマーに充分に転化させることである。この問題は、特にオリゴマーが押出機中で重合され且つ他の材料(例えば充填剤及び触媒)と混合される、いわゆる反応性押出法において見られる。非常に遅い処理速度を用いなければ、一方で充填剤をオリゴマーと充分に混合しながら、同時にオリゴマーのポリマーへの充分な転化を得るのは非常に困難である。比較的速い作業速度では、オリゴマーのポリマーへの転化は多くの場合、非常に遅いので、押出物は更に後硬化しなければ使用できない。この問題は、一つには、重合触媒の作用を妨害するクレイ及び/又はクレイ改質剤の分解生成物の形成による可能性がある。理由のいかんに関わらず、大環状オリゴマーを単一の操作で充填剤と混合し且つ重合する方法において、大環状オリゴマーの充填剤入りポリマーを製造するのは非常に難しいことが判明した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様において、本発明は、少なくとも15重量%の分散された充填剤粒子を含む、充填剤粒子の大環状オリゴマー中の分散体である。
【0008】
第2の態様において、本発明は、少なくとも15重量%の分散された充填剤粒子を含む、充填剤粒子の、大環状オリゴマーのポリマー又はオリゴマー中の複合体である。
【0009】
第3の態様において、本発明は、
a)大環状オリゴマー中に分散された充填剤粒子のマスターバッチを形成し(このマスターバッチは少なくとも10重量%の分散された充填剤粒子を含む);そして
b)前記マスターバッチをポリマー又は重合性材料と混合して、大環状オリゴマー及びポリマー又は重合性材料の混合物中の充填剤粒子の分散体を形成する
ことを含んでなるポリマー又は重合性材料中の充填剤粒子の分散体の製造方法である。
【0010】
第4の態様において、本発明は、
a)大環状オリゴマー中に分散された充填剤粒子のマスターバッチを形成し(このマスターバッチは少なくとも15重量%の分散充填剤粒子を含む);そして
b)前記マスターバッチをポリマー又は重合性材料と混合して、大環状オリゴマー及びポリマー又は重合性材料の混合物中の充填剤粒子の分散体を形成し;そして
c)分散充填剤粒子の存在下に前記大環状オリゴマーを重合させる
ことを含んでなる大環状オリゴマーのポリマー中の充填剤粒子のナノ複合体の製造方法である。
【0011】
この方法は、ポリマー相中に充填剤粒子を非常によく分散させることができる方法を提供する。充填剤粒子がクレイのような層状材料である好ましい場合において、このような非常によい分散は更には、ポリマーマトリックス内におけるクレイの比較的高度の剥離を可能にし、その結果、非常に効率的な補強並びに他の望ましい物理的及び熱的性質が得られる。高濃度の分散充填剤粒子を有するマスターバッチの形成は、反応性押出(及び他の溶融加工操作)中における成分の計量及び混合を簡単にし、結果としてより均一な生成物を生成すると共に操作をより容易にする。反応性押出、及びマスターバッチが単一加工工程で別のポリマー又は重合性材料中にレットダウンされ且つ重合される他の同様な溶融加工操作においては、特にオリゴマーのポリマーへのより高い転化率が見られることが多い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明のマスターバッチは、大環状オリゴマーを含む連続相中に分散された充填剤粒子を10重量%、好ましくは15重量%又はそれ以上含む。充填剤粒子の重量はここでは、マスターバッチの総重量に基づいて表す。マスターバッチは、分散充填剤粒子を65重量%以下又はそれ以上、例えば20〜60重量%、20〜50重量%。又は25〜50重量%含むことができる。
【0013】
充填剤粒子は、基本的には、任意の粒子状充填剤であることができるが、本発明の利点は、充填剤がサブミクロン(sub−micron)サイズの粒子の形態であるか又はサブミクロンサイズの大きさの粒子中に部分的に又は完全に剥離されることができる層状材料の場合に特に認められる。約0.6nm又はそれ以上、好ましくは約1nm又はそれ以上であって、且つ約50nm以下、より好ましくは約20nm以下、そして特に約10nm以下の最小寸法を有する粒子。本発明における粒度は、透過電子顕微鏡のような適当な分析方法を用いて測定された分散された充填剤粒子の体積平均粒度(volume average particle size)を意味し、入手したままの充填剤だけを意味するのではない。入手したままの充填剤は、集合体の形態であることもできるし、又は層状構造を有することもでき、それは多くの場合、マスターバッチ及び/又は複合体の製造の過程でより小さい材料に更に分割される。
【0014】
好ましくは、充填剤粒子は約10又はそれ以上、より好ましくは約100又はそれ以上、そして最も好ましくは約500又はそれ以上のアスペクト比を有する。ここで使用する「アスペクト比」は、小板又は繊維の最大寸法の長さを最小寸法、好ましくは小板又は繊維の厚さで割ったものを意味する。
【0015】
マスターバッチの重量の残りは、少なくとも1種の大環状オリゴマー及び場合によっては1種又はそれ以上の他の成分、例えば重合触媒、コモノマー、連鎖延長剤、別のポリマー、耐衝撃性改良剤、又はゴム(以下により詳細に記載)で構成される。特に重要なマスターバッチは、大環状オリゴマー、及び部分的に又は完全に剥離される層状クレイの分散されたサブミクロンサイズの粒子を含むが、他のポリマー、重合性若しくは反応性材料、耐衝撃性改良剤又はゴムは含まない。特に重要な別のマスターバッチは、分散されたサブミクロンサイズの充填剤粒子(特に、部分的に又は完全に剥離される層状クレイの粒子)、大環状オリゴマー及び重合触媒を含むが、他のポリマー、重合性若しくは反応性材料又は耐衝撃性改良剤若しくはゴムは含まない。特に重要な別のマスターバッチは、部分的に又は完全に剥離させることができる層状クレイの分散粒子、分散された導電性炭素充填剤粒子、大環状オリゴマー及び重合触媒を含むが、他のポリマー、重合性若しくは反応性材料、又は耐衝撃性改良剤若しくはゴムは含まない。「反応性材料」とは、重合大環状オリゴマーと架橋し、共重合し又はそれを連鎖延長する材料を意味する。
【0016】
本発明のマスターバッチは、充填剤粒子、大環状オリゴマー及び任意の任意的成分を合し且つそれらの材料を混合してクレイの分散体を形成することによって製造する。これは、無溶媒溶融ブレンド法で、又は希釈剤法によって行うことができる。クレイの剥離を更に行うために、クレイと大環状オリゴマーとの混合物に剪断を適用することができ、適用するのが好ましい。剪断工程の時期は、以下のより詳細に記載するように様々であることができる。
【0017】
1つの無溶媒法において、大環状オリゴマーは、その溶融温度に近いか又はそれ以上の温度において充填剤粒子とブレンドする。別の無溶媒法においては、大環状オリゴマーとクレイとのドライブレンドを形成し、次いで大環状オリゴマーの溶融温度に近いか又はそれ以上の温度に加熱して、オリゴマーを軟化又は溶融させ且つクレイをオリゴマー中に混ぜ込ませる。これらの無溶媒法において、任意的成分は任意の都合のよい順序で添加できる。例えば、任意的成分は大環状オリゴマーとプレブレンドしてから、充填剤粒子に添加することもできるし、或いは充填剤粒子とプレブレンドしてから大環状オリゴマーを添加することもできる。任意的成分は、充填剤粒子及び大環状オリゴマーのそれぞれに別々に添加することもできる。
【0018】
マスターバッチの製造には、希釈剤に基づく、いくつかのアプローチがある。このような方法の1つにおいては、充填剤粒子と希釈剤とを合し且つ混合して、充填剤粒子を希釈剤中に分散させる。これは、希釈剤が液体である任意の温度において実施するのが都合よい。約0〜50℃、特に約20〜35℃の温度が一般に適している。次に、充填剤/希釈剤混合物を撹拌し且つ/又は剪断して、希釈剤中への充填剤粒子の最初の分散を行う。層状クレイ粒子のような層状充填剤粒子のインターカレーション及び剥離が、この分散工程の間に起こり得る。所望ならば、この撹拌又は剪断は、充填剤粒子が希釈剤中に沈降しない概ね均質の分散体を形成するまで実施することができる。次いで、充填剤/希釈剤分散体を大環状オリゴマーと合する。大環状オリゴマーは室温では一般に固体材料であるので、別法として、充填剤/希釈剤分散体とブレンドするために大環状オリゴマーをその溶融温度以上に加熱することができる。これは、大環状オリゴマーを溶融させ、そして且つブレンドが完了するまで大環状オリゴマーが液体であり続けるのに充分に高い温度に注意深く保持しながら、溶融大環状オリゴマーを充填剤/希釈剤分散体と合することによって行うことができる。別法として、大環状オリゴマーを固体の、好ましくは粒子状の材料として充填剤/希釈剤分散体に添加し、次いで必要ならば、組成物全体を加熱して大環状オリゴマーを溶融又は溶解させることができる。
【0019】
水又は揮発性不純物を含む原料(充填剤粒子、希釈剤、大環状オリゴマー及び他の任意的成分)は好ましくは乾燥させてからマスターバッチを形成する。
【0020】
前述の希釈剤に基づく方法のためのいくつかのアプローチを用いることができる。1つの代替的アプローチにおいては、大環状オリゴマーを希釈剤中に溶解させ、得られた大環状オリゴマー溶液中に充填剤粒子を分散させる。別の代替的手法においては、充填剤、希釈剤及び大環状オリゴマーを全て一緒に合して、必要ならば、大環状オリゴマーを溶融又は溶解させるのに充分な温度に加熱し、そして得られた混合物を撹拌して、充填剤粒子を分散させる。
【0021】
第3の代替的アプローチにおいては、追加量の希釈剤中の大環状オリゴマーの別個の溶液である希釈剤中充填剤粒子分散体を形成し、追加量の希釈剤中に大環状オリゴマー溶液を別個に形成する。この変法では、希釈剤は大環状オリゴマーの溶媒である。充填剤/希釈剤分散体及び大環状オリゴマー溶液をブレンドし、得られたブレンドを前述と同様に混合して、充填剤粒子を分散させる。大環状オリゴマー溶液は、最初にその溶融温度より高温に加熱する(必要ならば)ことによって、液体として充填剤/希釈剤分散体に添加することができる。別法として、大環状オリゴマー溶液が室温(約22℃)で固体である場合には、大環状オリゴマー溶液を粒子状固体として充填剤/希釈剤分散体中に分散させ、そして得られる混合物を加熱して大環状オリゴマー溶液を溶融させ且つブレンドを形成することができる。このアプローチでは、比較的低粘度で且つ比較的低温の環境において最初の加工をすることができ、比較的低温で且つ低粘度の環境において充填剤分散体及び大環状オリゴマー溶液を混合することができる。
【0022】
前記アプローチのいずれにおいても、いずれの材料も連続的に、断続的に又は増加的に別の材料に添加することができる。
【0023】
希釈剤に基づく前記手法において使用する希釈剤は、室温で又は少々高いある温度(例えば50℃以下)において液体であり且つ充填剤粒子とも大環状オリゴマーとも不所望には反応しない任意の材料である。充填剤が層状クレイであるか又は層状クレイを含む好ましい実施態様においては、希釈剤は、クレイを膨潤させるものであるのが好ましい。希釈剤は、大環状オリゴマーの溶媒であることができるが、多くの場合、そうである必要はない。しかし、好ましい希釈剤は、希釈剤の沸点未満のある温度では大環状オリゴマーの溶媒である。希釈剤は比較的に高沸点であり、例えば、約100〜約300℃、特に約100〜約200℃の沸点を有するものであることができる。しかし、次のレットダウン及び重合工程の前に希釈剤を除去すべき場合には、100℃未満の沸点を有する比較的低沸点の希釈剤が好ましい。希釈剤は、存在する大環状オリゴマー、架橋剤、コモノマー又は改質剤と反応性であってはならない。適当な希釈剤としては、ハロゲン化(特に塩素化)炭化水素、例えば塩化メチレン、クロロホルム、オルトジクロロベンゼン、芳香族及び/又はアルキル置換芳香族炭化水素並びに高沸点エーテル、ケトン、アルコール及びエステルが挙げられる。
【0024】
希釈剤の量は、溶液中に大環状オリゴマー(及び任意の任意的なコモノマー、架橋剤又は改質剤)の所望の濃度を生じるようにかなり変動することができる。溶媒の適当な濃度は、溶媒、大環状オリゴマー、コモノマー、架橋剤及び改質剤の総重量の約1〜95%である。溶媒のより適当な濃度は約10〜80重量%である。特に適当な濃度は約25〜75重量%である。
【0025】
層状クレイを更に分散させるために、クレイ/大環状オリゴマー混合物は剪断に供することが好ましい。「剪断」は、撹拌、配合若しくは素練りのような何らかの機械的な方法、又はクレイ層の少なくとも一部を機械的に分離させることによって、大環状オリゴマー相中に分散された、少なくとも一部分剥離されたクレイ小板を形成するソニフィケーションのような別の方法であることができる操作を意味する。充填剤粒子が好ましい層状クレイ材料である場合には、この剪断工程は、大環状オリゴマー及び/若しくは希釈剤がクレイの層の間に浸透する、インターカレーションとして知られる作用、並びに剥離、即ち、個々の小板へのクレイ粒子の分離を伴うことが多い。これは、クレイ粒子の少なくとも一部の平均中間層間隔が、クレイの最初の中間層間隔に比べて、一般的に少なくとも2Å、より典型的には少なくとも5Å増加することによって示される。これは、X線回折法及び透過電子顕微鏡法によって測定できる。X線回折パターンは、層間距離に関連した回折極大の減衰又は拡大をことによると伴うであろう面間隔(d−spacing)のシフトのような変化を示し、これは層間距離がインターカレーション及び剥離プロセスの間により不均一にされることを示している。クレイ粒子のインターカレーション及び剥離は、複合体の補強(それによる物理的性質の改善)及び熱的性質の改善におけるクレイの効率を改善する。
【0026】
剪断は、マスターバッチの製造又は使用の任意の段階で適用できるが、一般に剪断は、オリゴマーが溶融されるか又は希釈剤中に溶解される1つ又はそれ以上の段階で適用する。従って、充填剤/大環状オリゴマー混合物は、マスターバッチを追加のポリマー又は重合性材料中にレットダウンさせる場合には充填剤と大環状オリゴマーとを合する際に又は合した直後に、或いはレットダウンされたマスターバッチを用いて成形品又は造形品を製造する工程の間に剪断に供することができる。希釈剤に基づく方法においてマスターバッチを製造する場合には、マスターバッチは、希釈剤の除去前又は後に剪断工程に供することができる。
【0027】
マスターバッチは、製造の間に、高速混合ブレード、一軸若しくは二軸スクリュー押出機又は高剪断を生じる他の特殊混合装置を用いて剪断するのが都合よい。10,000レシプロカル秒(reciprocal second)又はそれ以上、例えば20,000〜150,000レシプロカル秒又は30,000〜100,000レシプロカル秒の剪断速度が特に有用である。種々の高剪断混合装置が有用である。適当な高剪断ミキサーの例は、2500フィート/分又はそれ以上、例えば約3000〜約6000フィート/分又は約3500〜約5000フィート/分の先端速度を生じるように回転する、Cowlesブレードとして一般に知られている鋸歯状ブレードである。好ましい実施態様において、剪断は約2分間又はそれ以上続け、より好ましくは約10分間又はそれ以上、最も好ましくは約15分間又はそれ以上が一般に充分な期間である。約90分以下、例えば、約40分間又はそれ以下、そして最も好ましくは約25分又はそれ以下もまた、一般に充分な期間である。過度の剪断時間は、充填剤粒子及び/又は大環状オリゴマーを分解させるおそれがある。
【0028】
剪断は、レットダウン工程の間に又は次の溶融過酷操作において押出機、例えば二軸スクリュー押出機を用いて適用するのが都合よい。前述の剪断速度が適当である。このように、剪断工程は、マスターバッチを追加のポリマー若しくは重合性材料と合すると同時に、そして/又はレットダウン分散体を溶融加工して製品を形成すると同時に、実施できる。
【0029】
剪断工程は、好ましくは大環状オリゴマー(及び存在する可能性のある追加のポリマー又は重合性オリゴマー)が流体である温度において行う。剪断工程を溶媒又は希釈剤の存在下で実施する場合を除いて、通常は、剪断工程は高温で実施することが必要であろう。任意の個々の例で必要な温度は、個々の大環状オリゴマー、溶媒若しくは希釈剤の存在(もしあれば)、更に溶媒若しくは希釈剤が存在する場合には、個々の溶媒若しくは希釈剤と、希釈剤若しくは溶剤、大環状オリゴマー並びに他のポリマー及び/若しくは重合性材料の相対的比率によって決まることは言うまでもない。剪断工程の実施に適当な温度は、存在する個々の材料に応じて、約100℃〜約300℃、例えば約100℃〜約250℃又は約100℃〜約200℃である。
【0030】
充填剤粒子としては、ガラス(布、粉末、微小球及び繊維を含む);炭素及びグラファイト(布、粉末、小板、繊維及びナノチューブを含む);シリケート(タルク、長石、ウォラストナイト及びクレイを含む);水酸化物(アルミナ三水和物及び水酸化マグネシウムを含む);金属(粉末、フレーク、繊維を含む);セラミック(粉末、小板、ウィスカー及び繊維を含む);無機酸化物に加えて、炭酸塩、硫酸塩、アルミン酸塩、アルミノ珪酸塩、ステアリン酸塩及び硼酸塩が挙げられるが、これらに限定するものではない。充填剤粒子としてはまた、有機材料、例えば合成又は天然ポリマー粉末又は繊維、セルロース粉末又は繊維(木材、澱粉及び綿を含む)並びに植物質(vegetable matter)が挙げられる。このような充填剤は、より高価なポリマーの代わりに、補強及び強化のために、耐衝撃性の改良のために、着色のために、耐燃性の改善のために、光学的、電気的又は磁気的性質の改善のために、離型性とコスト、加工性又は性能面での種々の他の改善のために、用いる。充填剤粒子は、顔料、レーキ、若しくは染料のような着色剤の働きをすることができ、且つ/又は触媒、安定剤又は難燃剤としての働きをすることができる。
【0031】
本発明において有用なクレイは、層状構造を有する鉱物又は合成材料であり、個々の層は厚さが5〜100Åの範囲の小板又は繊維である。適当なクレイとしては、カオリナイト、ハロイサイト、サーペンティン、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト、サポナイト、イライト、ケニヤアイト、マガディアイト、マスコバイト、ソーコナイト、バーミキュライト、ボルコンスコアイト、パイロフィライト、マイカ、緑泥石又はスメクタイトが挙げられる。好ましくは、クレイは、カオリナイト、マイカ、バーミキュライト、ホルマイト、イライト又はスメクタイト群の天然又は合成クレイを含んでなる。好ましいカオリナイト群のクレイとしては、カオリナイト、ハロイサイト、ディッカイト、ナクライトなどが挙げられる。好ましいスメクタイトクレイとしては、モンモリロナイト、ノントロナイト、バイデライト、ヘクトライト、サポナイト、ベントナイトなどが挙げられる。イライト群の好ましい鉱物としては、ハイドロマイカ、フェンジャイト、ブランマライト、グローコナイト、セラドナイトなどが挙げられる。より好ましくは、好ましい層状鉱物としては、マスコバイト、バーミキュライト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト及びモンモリロナイトのような2:1層状シリケート鉱物としばしば称されるものが挙げられ、モンモリロナイトが最も好ましい。ホルマイト群の好ましい鉱物としては、層状構造が一次元で遮断されることによって繊維状又はラス状粒子形態を生じる海泡石(セピオライト)及びアタパルガイトが挙げられる。
【0032】
前述のクレイの他に、それらから製造された混合物と、例えば石英、黒雲母、リモナイト、含水マイカ、長石などを含む副成分鉱物も使用できる。前述の層状鉱物は、種々の方法によって合成的に製造でき、合成ヘクトライト、サポナイト、モンモリロナイト、マイカ及びそれらのフッ素化類似体として知られる。合成クレイは、シリケートの加水分解及び水和、タルクとアルカリフルオロ珪酸塩との間の気固反応、酸化物及びフッ化物の高温溶融、フッ化物と水酸化物の熱水反応、頁岩の屋外暴露(風化)並びに酸性クレイ、腐植質及び無機酸の一次シリケートに対する作用を含む多くの方法によって製造できる。
【0033】
クレイは好ましくは、米国特許第5,707,439号及びPCT/US03/041,476に記載されたような有機オニウム化合物で改質する。この改質は、非改質クレイ中に存在する主としてアルカリ金属及びアルカリ土類陽イオンを有機オニウム化合物で置換する、有機オニウム化合物と天然クレイとの間の陽イオン交換反応によると考えられる。オニウム化合物は、負の電荷を帯びた対イオン及び正の電荷を帯びた窒素、燐又は硫黄原子を含む塩である。特に有用なオニウム化合物は、炭素数が5又はそれ以上の鎖を有する少なくとも1個の配位子を有する。好ましくは、オニウム化合物は炭素数が5又はそれ以上の鎖を有する少なくとも1個の配位子を有すると共に、重合反応の間に大環状オリゴマーと反応できる活性水素原子を有する官能基を含む少なくとも1個の(好ましくは2個又はそれ以上の)他の配位子も含む。オニウム化合物中の陰イオン性対イオンは、オニウム化合物と共に塩を形成し且つクレイ粒子上の陰イオン種と交換することができる任意の陰イオンであることができる。好ましくは、オニウム化合物は下記式に相当する:
【0034】
【化1】

【0035】
前記式において、R1はC5又はそれ以上の直鎖、脂環式又は分岐鎖ヒドロカルビル基であり;R2は、それぞれ独立して、場合によっては1個又はそれ以上のヘテロ原子を含むC1−C20ヒドロカルビル基であり;R3はC1−C20アルキレン又はシクロアルキレン部分であり;Xは窒素、燐又は硫黄原子であり;Zは活性水素原子含有官能基であり;aはそれぞれ別個に0、1又は2の整数であり、yは陰イオンであり且つbは1〜3の整数であって、Xが硫黄である場合にはa+bの合計は2であり、Xが窒素又は燐である場合にはa+bの合計は3である。より好ましくは、Xは窒素である。より好ましくは、R1はC10−C20炭化水素鎖であり、そして最も好ましくはC12−C18アルキル基である。より好ましくは、R2はC1−C10ヒドロカルビルであり、そして最も好ましくはC1−C3アルキルである。より好ましくは、R3はC1−C10アルキレンであり、そして最も好ましくはC1−C3アルキレンである。より好ましくは、Zは第一又は第二アミン、チオール、ヒドロキシル、酸塩化物若しくはカルボン酸、カルボン酸エステル又はグリシジル基であり、更に好ましくは第1アミン又はヒドロキシル基であり、そして最も好ましくはヒドロキシル基である。より好ましくは、yはそれぞれ別個にハロゲン又は硫酸エステル(例えば、硫酸メチルのような硫酸アルキル)であり、そして最も好ましくは塩素又は臭素である。より好ましくは、aは0又は1の整数であり、最も好ましくは1である。最も好ましくは、bは2又は3である。
【0036】
活性水素含有官能基を含まない他のオニウム化合物を、前述の化合物の代わりに又は前述の化合物と組合せて使用することができる。これらの適当な例としては、米国特許第5,530,052号及び米国特許第5,707,439号に記載されたものが挙げられる。これらの特許を引用することによって本明細書中に組み入れる。このような非官能性オニウム化合物を用いる場合には、これらは、官能性型と組合せて使用するのが好ましい。官能基を含むオニウム化合物は、大環状オリゴマーの重合の開始部位となる傾向がある。これらの開始部位の存在は、形成されるポリマー鎖の数を増加させる傾向があり、その結果としてポリマーの平均分子量が減少する傾向がある。官能性型と非官能性型の混合物を用いると、分子量への影響とポリマーマトリックス中へのクレイの充分な分散とをバランスさせることができる。好ましくは、官能性オニウム化合物は、使用する全オニウム化合物の少なくとも1重量%又はそれ以上、例えば、少なくとも10重量%又は少なくとも20重量%、約100重量%、例えば約90重量%以下、約50重量%以下又は約30重量%以下を構成する。
【0037】
オニウム化合物は、触媒及び大環状オリゴマーがクレイにインターカレートする能力を増大する傾向がある。好ましくは、クレイ上の交換可能な陽イオンの少なくとも50%、例えば少なくとも75%又は少なくとも90%を、オニウム化合物と交換することができる。過剰のオニウム化合物、例えば交換可能な陽イオン1当量当たり1.5当量以下又は1.25当量以下のオニウム化合物を使用できる。
【0038】
大環状オリゴマーは、環構造中に2個又はそれ以上のエステル結合を有する重合性環状物質である。エステル結合を含む環構造は、一緒に結合して環を形成する少なくとも8個の原子を含む。オリゴマーは、エステル結合を介して接続される2個又はそれ以上の構造反復単位を含む。構造反復単位は同一でも異なってもよい。オリゴマー中の反復単位の適当な数は約2〜約8の範囲である。通常、環状オリゴマーは、種々の数の反復単位を有する物質の混合物を含むであろう。好ましい種類の環状オリゴマーは、構造:
−[O−A−O−C(O)−B−C(O)]y− (I)
で表される。前記式中、Aは炭素数が2又はそれ以上の、二価アルキル、二価シクロアルキル又は二価モノ−若しくはポリオキシアルキレン基であり、Bは二価芳香族又は二価脂環式基であり、yは2〜8の数である。構造Iの末端に示される結合は接続して環を形成する。構造Iに相当する適当な大環状オリゴマーの例としては、1,4−ブチレンテレフタレート、1,3−プロピレンテレフタレート、1,4−シクロヘキセンジメチレンテレフタレート、エチレンテレフタレート及び1,2−エチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートのオリゴマー並びにこれらの2種又はそれ以上を含むコポリエステルオリゴマーが挙げられる。大環状オリゴマーは、好ましくは約200℃未満、好ましくは約150〜190℃の範囲の溶融温度を有するものである。特に好ましい環状オリゴマーは、1,4−ブチレンテレフタレートのオリゴマーである。
【0039】
環状オリゴマーの適当な製造方法は、米国特許第5,039,783号、第6,369,157号及び第6,525,164号、国際出願公開番号第WO02/18476号並びに国際出願公開番号第WO03/031059号に記載されている。これらの全ての特許は引用することにより本明細書に組み入れる。一般に、環状オリゴマーは、ジオールと二酸、二酸塩化物若しくはジエステルとの反応において、又は線状ポリエステルの解重合によって適当に製造される。環状オリゴマーの製造方法は一般に本発明には重大ではない。
【0040】
マスターバッチは、マスターバッチ中に存在するか又はその後にマスターバッチとブレンドされるであろう大環状オリゴマー及び/又は他の重合性材料のための1種又はそれ以上の重合触媒を含むことができる。マスターバッチのレットダウン後に有効量の触媒が存在するように、充分な触媒を含ませるのが好ましい。触媒の典型的な量は、マスターバッチの重量の0.25〜約5%である。錫又はチタネートをベースとする重合触媒が特に重要である。このような触媒の例は米国特許第5,498,651号及び米国特許第5,547,984号に記載されており、これらの開示を引用することによって本明細書中に組み入れる。1種又はそれ以上の触媒は、一緒に又は順次に使用することもできる。
【0041】
本発明において使用できる錫化合物の類の例示としては、モノアルキル錫ヒドロキシドオキシド、モノアルキル錫クロリドジヒドロキシド、ジアルキル錫オキシド、ビストリアルキル錫オキシド、モノアルキル錫トリスアルコキシド、ジアルキル錫ジアルコキシド、トリアルキル錫アルコキシド、式:
【0042】
【化2】

【0043】
を有する錫化合物及び式:
【0044】
【化3】

【0045】
を有する錫化合物が挙げられる。前記式において、R2はC1−C4一級アルキル基であり、R3はC1−C10アルキル基である。本発明において使用できる有機錫化合物の具体例としては、1,1,6,6−テトラ−n−ブチル−1,6−ジスタンナ−2,5,7,10−テトラオキサシクロデカン、n−ブチル錫クロリドジヒドロキシド、ジ−n−ブチル錫オキシド、ジ−n−オクチル錫オキシド、n−ブチル錫トリ−n−ブトキシド、ジ−n−ブチル錫ジ−n−ブトキシド、2,2−ジ−n−ブチル−2−スタンナ−1,3−ジオキサシクロヘプタン及びトリブチル錫エトキシドが挙げられる。更に、米国特許第6,420,047号(引用することによって組み入れる)に記載された錫触媒を重合反応に使用することもできる。
【0046】
本発明において使用できるチタネート化合物としては、米国特許第6,420,047号(引用することによって組み入れる)に記載されたものが挙げられる。その例示としては、テトラアルキルチタネート(例えば、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、テトライソプロピルチタネート及びテトラブチルチタネート)、イソプロピルチタネート、チタネートテトラアルコキシドが挙げられる。他の例示としては、(a)式:
【0047】
【化4】

【0048】
[式中、各R4は独立してアルキル基であり、又は2つのR4基が一緒になって二価脂肪族炭化水素基を形成し;R5はC2−C10二価又は三価脂肪族炭化水素基であり;R6はメチレン又はエチレン基であり;nは0又は1である]
を有するチタネート化合物、(b)式:
【0049】
【化5】

【0050】
[式中、各R7は独立してC2−C3アルキレン基であり;ZはO又はNであり;R8はC1−C6アルキル基又は非置換若しくは置換フェニル基であり;ただし、ZがOである場合には、m−n−0であり、ZがNである場合にはm=0又は1で且つm+n=1である]
の少なくとも1個の部分を有するチタン酸エステル化合物及び(c)式:
【0051】
【化6】

【0052】
[式中、各R9は独立してC2−C6アルキレン基であり、qは0又は1である]
の少なくとも1個の部分を有するチタン酸エステル化合物が挙げられる。
【0053】
適当な重合触媒は、
n(3-n)Sn−O−X (II)
[式中、nは1又は2であり;各Rは独立して、不活性に置換されたヒドロカルビル基であり;Qは陰イオン配位子であり;Xは、隣接酸素原子に結合される錫、亜鉛、アルミニウム又はチタン原子を有する部分である]
として表されることができる。適当なX基としては、−SnRn(3-n)[式中、R、Q及びnは前述の通りである];−ZnQ[式中、Qは前述の通りである]、−Ti(Q)3[式中、Qは前述の通りである]及び−AlRp(Q)(2-p)[式中、Rは前述の通りであり、pは0、1又は2である]が挙げられる。好ましいQ基としては、−OR基[式中、Rは前述の通りである]が挙げられる。XがSnRn(3-n)である場合には、R及び/又はOR基は、触媒中に1個又はそれ以上の錫又は他の金属原子を含む環構造を形成する二価基であることができる。好ましいX部分は、−SnRn(3-n)、−Ti(OR)3及び−AlRp(OR)(2-p)である。−SnRn(3-n)がX部分の特に好ましい型である。好ましいX基は、−SnRn(3-n)、Ti(OR)3及び−AlRp(OR)(2-p)である。nは好ましくは2である。これらの触媒は、2004年4月22日に出願された米国仮特許出願第60/564,552号により詳細に記載されている。この型の個々の重合触媒の例としては、1,3−ジクロロ−1,1,3,3−テトラブチルジスタノキサン;1,3−ジブロモ−1,1,3,3−テトラブチルジスタノキサン;1,3−ジフルオロ−1,1,3,3−テトラブチルジスタノキサン;1,3−ジアセチル−1,1,3,3−テトラブチルジスタノキサン;1−クロロ−3−メトキシ−1,1,3,3−テトラブチルジスタノキサン;1,3−メトキシ−1,1,3,3−テトラブチルジスタノキサン;1,3−エトキシ−1,1,3,3−テトラブチルジスタノキサン;1,3−(1,2−グリコレート)−1,1,3,3−テトラブチルジスタノキサン;1,3−ジクロロ−1,1,3,3−テトラフェニルジスタノキサン;(n−ブチル)2(エトキシ)Sn−O−Al(エトキシド)2、(n−ブチル)2(メトキシ)Sn−O−Zn(メトキシド)、(n−ブチル)2(i−プロポキシ)Sn−O−Ti(i−プロポキシド)3、(n−ブチル)3Sn−O−Al(エチル)2、(t−ブチル)2(エトキシ)Sn−O−Al(エトキシド)2などが挙げられる。適当なジスタノキサン触媒は、米国特許第6,350,850号に記載されており、この特許を引用することによって本明細書中に組み入れる。
【0054】
マスターバッチ中には共重合性モノマーを取り入れることができる。共重合性モノマーは、大環状オリゴマーと共重合してランダム又はブロックコポリマーを形成する、大環状オリゴマー以外の物質である。適当な共重合性モノマーとしては、環状エステル、例えばラクトンが挙げられる。ラクトンは1個又はそれ以上のエステル結合を含む4〜7員環を含むのが都合よい。ラクトンは置換されていても非置換でもよい。適当な置換基としては、ハロゲン、アルキル、アリール、アルコキシル、シアノ、エーテル、スルフィド又は第3アミン基が挙げられる。置換基は好ましくは、それらが共重合性モノマーを開始剤化合物として働かせるような方法ではエステル基と反応性でない。このような共重合性モノマーの例としては、グリコリド、ジオキサノン、1,4−ジオキサン−2,3−ジオン、ε−カプロラクトン、テトラメチルグリコリド、β−ブチロラクトン、ラクチド、γ−ブチロラクトン及びピバロラクトンが挙げられる。
【0055】
マスターバッチに含ませることができる別の任意的材料は重合された大環状オリゴマー(及び/又はブレンド中の別のポリマー)上の官能基と反応するであろう2個又はそれ以上の官能基を有する多官能価の連鎖延長化合物である。適当な官能基の例はエポキシ、イソシアネート、エステル、ヒドロキシル、カルボン酸、カルボン酸無水物又はカルボン酸ハロゲン化物基である。より好ましくは、官能基はイソシアネート又はエポキシであり、エポキシ官能基が最も好ましい。好ましいエポキシ含有連鎖延長剤は、脂肪族又は芳香族グリシジルエーテルである。好ましいイソシアネート含有連鎖延長剤としては、芳香族及び脂肪族の両者のジイソシアネートが挙げられる。好ましくは、連鎖延長剤はこのような官能基を平均して分子当たり約2〜約4個、より好ましくは約2〜約3個、そして最も好ましくは約2個有する。連鎖延長剤は官能基当たりの当量が500又はそれ以下であるのが適当である。適当な量の連鎖延長剤は、例えば重合された大環状オリゴマー中の反応性基モル当たり少なくも0.25モルの官能基を与える。
【0056】
マスターバッチは、更に、その後の重合の間に、重合された大環状オリゴマーとポリマーブレンドを形成する1種又はそれ以上のポリマー材料を含むことができる。このようなポリマー材料の例としては、例えばポリエステル、例えばポリ(・−カプロラクタム)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンアジペート、ポリエチレンテレフタレートなど、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール並びにアミン官能性ポリエーテル及び/ポリエステルが挙げられる。重合された大環状オリゴマー及び/又は連鎖延長剤上の官能基と反応する官能基を含むポリオレフィン(例えばエチレン、プロピレン、ブチレン異性体及び/又は他の重合性アルケンのポリマー及びインターポリマー)を使用できる。大環状オリゴマー及び/又は重合された大環状オリゴマーと相溶性であるか、又は重合された大環状オリゴマーに結合されることができる官能基を含む他のポリマー材料も有用である。これらのポリマーのいくつかは、重合プロセスの間に大環状オリゴマー又はそのポリマーとのエステル交換反応に関わって、ブロックコポリマーを形成することができる。反応性官能基を有するポリマー材料は、前述のように連鎖延長剤によって、重合された大環状オリゴマーに結合されることができる。適当な官能基化ポリマー材料は、このような官能基を平均して分子当たり約1個又はそれ以上、好ましくは約2〜約3個、そして最も好ましくは約2個含み、官能基当たりの当量が500超である。これらの分子量は約100,000以下、例えば約20,000以下又は約10,000以下であるのが適当である。好ましくは、ポリマー材料は、重合された大環状オリゴマー単独のガラス転移温度よりもかなり低い(例えば少なくとも10℃低い又は少なくとも30℃低い)ガラス転移温度を有する。ガラス転移温度が比較的低いポリマー材料は得られる生成物の延性及び耐衝撃性を改善する傾向がある。官能基化ポリマーは、本発明の望ましい結果を達成する任意の主鎖を含むことができる。特に適当な多官能価ポリマーはポリエーテル又はポリエステルポリオールである。
【0057】
マスターバッチの別の任意成分は耐衝撃性改良剤である。ポリマー組成物の耐衝撃性及び靭性を改善する任意の耐衝撃性改良剤を使用できる。耐衝撃性改良剤の例としては、コアシェル改質剤、オレフィン系強化剤、モノビニリデン芳香族化合物とアルカジエンのブロックコポリマー及びエチレンープロピレンジエンモノマーに基づくポリマーが挙げられる。耐衝撃性改良剤は、官能基化されていなくてもよいし、極性官能基によって官能基化されていてもよい。適当なコアシェルゴムとしては、大環状オリゴマー又は重合された大環状オリゴマー上の官能基と反応する表面官能基を有する官能基化コアシェルゴムが挙げられる。好ましい官能基は、グリシジルエーテル部分又はグリシジルアクリレート部分である。コアシェルゴムは一般に約30〜約90重量%のコアを含む。「コア」は、コアシェルゴムの中心のエラストマー部分を意味する。コアシェル改質剤は、押出機のような高剪断環境中で、重合の完了後に添加できる。
【0058】
天然又は合成ゴムは組成物に添加することができる有用な別の型の改質剤である。ゴムは一般に、ポリマーの靭性を改善するために添加する。ゴムで改質されたポリマーは望ましくは、落槍衝撃強さ(ASTM D3763−99による)が約50インチ/lbs(5.65N−m)又はそれ以上、より好ましくは約150インチ/lbs(16.95N−m)又はそれ以上、最も好ましくは約300インチ/lbs(33.9N−m)又はそれ以上である。
【0059】
1種又はそれ以上のこれらの任意的材料(触媒、連鎖延長剤、追加ポリマー、耐衝撃性改良剤又はゴム)がマスターバッチ中に存在する場合には、大環状オリゴマーは好ましくは、マスターバッチの重量の約25〜85%、例えば40〜80%又は50〜75%を構成する。
【0060】
マスターバッチは、ほとんどの場合、室温において固体材料である。追加の大環状モノマー又は他の材料によるレットダウンを容易にするために、マスターバッチは粉砕又はペレット化することができる。
【0061】
クレイ補強ポリマーナノ複合体は、マスターバッチをポリマー又は重合性材料中にレットダウンさせてから、大環状オリゴマー(及び、もしあれば、他の重合性材料)を重合させることによって形成する。マスターバッチのレットダウンには任意の溶融加工性ポリマー、例えば、前記大環状オリゴマー又は別の大環状オリゴマーのポリマー;重合された大環状オリゴマーと相溶性のポリマー;前記大環状オリゴマー又はそのポリマーと反応性であるポリマー(例えば、それとランダム又はブロックコポリマーを形成するか、又は前記大環状オリゴマー又はそのポリマーと反応する官能基を含むもの)、或いは前記大環状オリゴマー又はそのポリマーと比較的不相溶性であるポリマー(相分離したブレンド又はアロイを形成する)ですら使用できる。適当なポリマーの例としては、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリエーテル、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリ(ビニル芳香族炭化水素)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリアミド、スチレン−ブタジエンコポリマーなどが挙げられる。適当な重合性材料としては、追加量の大環状オリゴマー、異なる大環状オリゴマー、大環状オリゴマーとランダム又はブロックコポリマーを形成できるその大環状オリゴマー以外のモノマー又は他の重合性材料が挙げられる。
【0062】
レットダウン比は、最終生成物中に所望のレベルの分散充填剤粒子が存在するように、選択する。このレベルは、一般に、充填剤粒子約1〜約30重量%、特に約2〜20重量%、より好ましくは約2〜8重量%である。これを達成するためには、追加のポリマー又は重合性材料約0.5〜20部対マスターバッチ1部、特に約1〜10:1、より好ましくは約2〜6:1のレットダウン比が多くの場合に都合よい。これは、成分を溶融させ且つそれらの混合することによって、又はドライブレンドを形成してから加熱及び混合することによって行うのが都合よい。前述のように、混合工程と同時に剪断工程を行うか又は混合工程の後に剪断工程を行って、充填剤を分散させ且つ/又はクレイの剥離を促進することができる。粒子状の出発原料は前もってドライブレンドすることができる。本発明の利点は、成分の計量が単純化され、その結果、ブレンドされた生成物の組成の一貫性の改善に役立つことである。混合も改善され、その結果、より均質な生成物並びに層状クレイ粒子のより良い分散及び剥離が得られる。
【0063】
希釈剤に基づく方法を用いてマスターバッチを生成する場合には、希釈剤は、レットダウンの前又は後に除去するのが都合よい。デカント、乾燥、蒸留、減圧蒸留、濾過、抽出又はこれらの組合せという従来の方法を使用できる。希釈剤が比較的低い沸点を有する場合には、乾燥及び蒸留方法、特に減圧乾燥及び減圧蒸留法が適当である。希釈剤が比較的高沸点である場合には、抽出法が特に重要である。抽出法は、マスターバッチ又はレットダウンされたマスターバッチについて、それらを希釈剤が混和できる抽出剤と接触させることによって行うことができる。抽出剤は一般に、100℃より低い沸点の有する揮発性炭化水素、ハロカーボン又はアルコールである。抽出剤の比較的に高い揮発性により、抽出剤の残量は、真空及び/又は中程度に高い温度への暴露によって、例えば脱揮押出機内において分散体から除去することができる。
【0064】
本発明の一態様においては、大環状オリゴマーは、マスターバッチのレットダウン後に重合させる。環状オリゴマーの重合方法はよく知られている。このような方法の例は、特に、米国特許第6,369,157号及び第6,420,048号、国際出願公開番号第WO03/080705号並びに米国特許出願公開番号第2004/0011992号に記載されている。これらの従来の重合法はいずれも本発明への使用に適している。一般に、重合反応は、前述のような重合触媒の存在下で実施する。
【0065】
重合は、分散体を重合触媒の存在下で大環状オリゴマーの溶融温度より高温に加熱することによって実施する。重合中の混合物は、所望の分子量及び転化率が得られるまで、高温に保持する。適当な重合温度は約100℃〜約300℃であり、約100℃〜約280℃の温度範囲が好ましく、約180〜270℃の温度範囲が特に好ましい。
【0066】
触媒はマスターバッチに混和するのが好ましいが、そうでない場合には、重合中又は重合直前に、加えることができる。所望の重合速度を生じ且つオリゴマーのポリマーへの所望の転化率を得るのに充分な触媒を供給するが、過剰量の触媒の使用は避けるのが通常は望ましい。エステル交換触媒対大環状オリゴマーの適当なモル比は、約0.01モル%又はそれ以上、より好ましくは約0.1モル%又はそれ以上、より好ましくは0.2モル%又はそれ以上であることができる。エステル交換触媒対大環状オリゴマーのモル比は、約10モル%又はそれ以下、より好ましくは2モル%又はそれ以下、更に好ましくは約1モル%又はそれ以下、最も好ましくは0.6モル%又はそれ以下である。
【0067】
重合を、密閉金型中で実施して、成形品を形成できる。環状オリゴマー重合法の利点は、熱可塑性樹脂の成形作業が、熱硬化性樹脂に一般に適用できる手法を用いて実施できることである。溶融時には、環状オリゴマーは一般に比較的低粘度を有する。このため、環状オリゴマーは、液体樹脂成形、反応射出成形及び樹脂トランスファー成形のような反応性成形法において、並びに樹脂フィルム溶融注入(レジン・フィルム・インフュージョン)、繊維マット又は布の含浸、プリプレグ形成、引抜成形及びフィラメント・ワインディングのような、樹脂を繊維束の個々の繊維の間に浸透させて構造用複合体を形成する必要がある方法において使用できる。これらの型の方法のいくつかは、米国特許第6,420,047号に記載されており、この特許を引用することによって本明細書中に組み入れる。
【0068】
得られるポリマーは、離型前に、その結晶化温度未満の温度に達しなければならない。従って、離型前に(又は別の方法で加工を完了させる前に)ポリマーを冷却することが必要な場合がある。場合によっては、環状ブチレンテレフタレートオリゴマーの重合においては特に、オリゴマーの溶融及び重合温度は、得られるポリマーの結晶化温度よりも低い。このような場合には、重合温度は、オリゴマーの溶融温度とポリマーの結晶化温度との間であるのが有利である。これにより、ポリマーは、分子量の増加につれて重合温度において結晶化することができる(等温硬化)。このような場合には、離型を行えるようになる前にポリマーを冷却する必要はない。
【0069】
重合を塊状重合として実施して、押出、射出成形、圧縮成形、熱成形、ブロー成形、樹脂トランスファー成形などのようなその後の溶融加工操作に有用な粒子状ポリマー(例えばペレット化ポリマー)を生成することもできる。
【0070】
更に、マスターバッチを大環状オリゴマー及び前記大環状オリゴマー用の溶媒と合することによってマスターバッチをレットダウンしながら、溶液重合を実施することも可能である。希釈剤に基づく方法において大環状オリゴマー用の溶媒である希釈剤を用いてマスターバッチを製造する場合には、その希釈剤は溶液重合用の溶媒として働くことができる。溶液重合は一般にバルクで実施して、前述のようなその後の溶融加工操作に有用な粒子状又はペレット化ポリマーを形成する。溶液重合法の利点は、大環状オリゴマー溶液を溶融させるのに、従って、重合を実施するのに必要な温度が通常は比較的低いことである。この比較的低い温度のため、充填剤(特に、クレイ)及び大環状モノマーの分解が減少すると共に、エネルギー必要量が減少する。溶液重合は、無溶媒重合よりも若干低く且つ溶媒の沸点よりも低い温度で実施するのが適当である。適当な溶液重合温度は100〜270℃、特に150〜220℃である。適当な溶媒は、大環状オリゴマー用の溶媒である前述の希釈剤を含み且つ沸点が重合温度又はそれ以下である。溶媒は、得られたポリマーから前述の方法を用いて除去することができ、抽出方法が特に適当である。溶媒の除去後、ポリマーは、成形品又は造形品を製造するための種々の溶融加工操作に使用するのに適当である。
【0071】
得られた複合体は、分子量を増加させるために、更に処理することができる。これを行うための2つのアプローチは、固相重合(solid state polymerization)と連鎖延長である。固相重合は、複合体を高温に暴露することによって後硬化させることによって行う。これは、溶融加工操作の間に又はその後の工程で実施できる。適当な後硬化温度は約170℃、約180℃又は約195℃から約220℃、約210℃又は約205℃までであるが、複合体のポリマー相の溶融温度未満である。固相重合は好ましくは非酸化性環境下で、例えば窒素又はアルゴン雰囲気下で実施し、好ましくは揮発性成分を除去するために真空下及び/又は流動させながら実施する。約1〜36時間、例えば4〜30時間又は12〜24時間の後硬化時間が一般に適当である。好ましくは大環状オリゴマーは、重量平均分子量約60,000又はそれ以上、より好ましくは約80,000又はそれ以上、最も好ましくは100,000又はそれ以上まで進行(advance)させる。固相進行(advancemnt)には通常は追加触媒の使用は必要はない。
【0072】
連鎖延長は、複合体を多官能価連鎖延長剤と接触させることによって実施する。多官能価連鎖延長剤は、重合された大環状オリゴマー上の官能基と反応してポリマー鎖を結合させ、それによって分子量を増加させる2個又はそれ以上の官能基を含む。適当なこのような多官能価連鎖延長剤は前述の通りである。追加触媒は通常必要なく、前述のような高温を連鎖延長反応に使用する。
【0073】
前述の連鎖延長剤及び改質剤の他に、種々の任意材料を重合プロセスに取り入れることができる。このような材料の例としては、補強剤(例えばガラス、カーボンブラック又は他の繊維)、難燃剤、着色剤、酸化防止剤、防腐剤、離型剤、潤沢剤、紫外線安定剤などが挙げられる。
【0074】
マスターバッチは、レットダウンの前に低分子量又は高分子量ポリマー分散体を形成するために重合させることができる。これは、例えばレットダウンプロセスの間に材料がより容易且つ効率的にブレンドされるように、溶融マスターバッチの粘度を増加させて、溶融マスターバッチの粘度を別のポリマー材料、耐衝撃性改良剤又はゴムの粘度とより合致させることによって有益であることができる。マスターバッチは、レットダウンの前に重合させて、重量平均分子量が例えば約2000〜20,000又は約3000〜10,000の重合大環状オリゴマーを形成することができる。別法として、マスターバッチは、レットダウン前に、分子量20,000超、例えば30,000〜150,000まで重合させることができる。重合されたマスターバッチは、前述と同様にして追加量の大環状オリゴマー、別のポリマー又は他の重合性材料中にレットダウンすることができる。
【実施例】
【0075】
本発明を説明するために以下の実施例を記載するが、これらは本発明の範囲を制限するものではない。特に断らない限り、全ての部及び%は重量に基づく。
【0076】
実施例1〜3
環状ブチレンテレフタレートオリゴマー430部及びココアルキル、メチル、ビスヒドロキシエチルアンモニウム改質フルオロマイカクレイ(Co−op ChemicalからSomasif(登録商標)MEEクレイとして市販されている)25gを、撹拌機及びガスアダプターを装着したフラスコに装入する。フラスコ及びその内容物を、緩やかに撹拌しながら真空下で190℃まで1時間加熱して、クレイ及びオリゴマーを乾燥させる。次いで、混合物を、Cowlesブレードを装着したバッフル付き反応がまに移し、3000rpmで撹拌しながら190℃に加熱する。環状ブチレンテレフタレートオリゴマーを更に920部とクレイ213部を、各添加中の温度をほぼ190℃に保持しながら、この反応がまに30分間にわたって徐々に加える。総混合時間は60分間である。得られたマスターバッチ材料をパン中に注ぎ、ドライアイス中に置いて急速に固化させる。次いで、固化されたマスターバッチ材料(実施例1)をWileyミル中で粉砕し、60℃において真空下で一晩乾燥させる。これは約15重量%のクレイを含んでいる。
【0077】
実施例2のマスターバッチは、Somasif MEEクレイの代わりに等重量の無機非改質フルオロマイカクレイ(Co−opからSomasif(登録商標)ME−100として市販されている)を用いる以外は同様にして生成する。
【0078】
実施例3のマスターバッチは、撹拌機及びガスアダプターを装着したフラスコに環状ブチレンテレフタレートオリゴマー430部及びSomasif MEEクレイ25gを装入することによって生成する。フラスコ及びその内容物を、緩やかに撹拌しながら真空下で190℃まで1時間加熱して、クレイ及びオリゴマーを乾燥させる。次いで、混合物を、Cowlesブレードを装着したバッフル付き反応がまに移し、3000rpmで撹拌しながら190℃に加熱する。環状ブチレンテレフタレートオリゴマーを更に920部とクレイ213部を、各添加中の温度をほぼ190℃に保持しながら、この反応がまに30分間にわたって徐々に加える。全ての成分の添加後、混合物を190℃において更に1時間加熱する。次に、これを145℃に冷却し、1,1,6,6−テトラブチル−1,6−ジスタンナ−2,5,7,10−テトラオキサシクロデカン(重合触媒)16.99部を添加し、1分間混合させる。得られたマスターバッチ材料をパン中に注ぎ、ドライアイス中に置いて急速に冷却させることによって、早期重合を防ぐと共に材料を固化させる。次いで、固化されたマスターバッチ材料をWileyミル中で粉砕し、60℃において真空下で一晩乾燥させる。これは、約15重量%のクレイ及び1.06重量%の重合触媒を含んでいる。
【0079】
実施例4
粉末の環状ブチレンテレフタレートオリゴマーを、実施例1のマスターバッチと重量比2:1でドライブレンドし、90℃において真空下で一晩乾燥させる。この混合物を、2穴式の3mmのストランドダイとして60のL/Dを有するKrupp−Werner Pfliederer Model ZSK−25完全噛合形同方向回転二軸スクリュー押出機中で押出する。混合物は、スクリュー型粉体供給装置を用いて押出機中にスターブフィードする。押出物を水冷し、パレットに載せる。押出機は60〜125rpmで運転し、温度分布は押出機の最初の部分の50℃から後半部分全体における240℃まで増加させる。次いで、このようにして生成されたペレットを真空オーブン中で200℃において8時間、固相進行(advancement)に供する。得られたポリマーを実施例4Aと称する。
【0080】
実施例4B及び4Cは、それぞれ、実施例2及び3のマスターバッチの代わりに実施例4Aの生成に用いたマスターバッチを用いて同様にして製造する。
【0081】
試験片は、3種の組成物と市販ポリ(ブチレンテレフタレート)樹脂(General Electric Corp.製のValox 315)から、ノズル温度256°F(124℃)及び金型温度205°F(96℃)で運転される28トンのArburg射出成形プレスを用いて成形する。物理的性質及び熱的性質は、表Iに報告する通りである。
【0082】
【表1】

【0083】
実施例5
Somasif(登録商標)MEEクレイ(181.4g)、環状ブチレンテレフタレートオリゴマー(714.34g)及びブチル錫クロリドジヒドロキシド(11.4g)を、塩化メチレン約2リットルと合する。混合物を室温で6時間撹拌し、ロトエバポレーター(rotoevaporator)に移して、溶媒の大部分を除去する。ゲル状混合物が得られる。真空オーブン中で80℃において乾燥させることによって、このゲル状混合物から残りの溶媒を除去する。得られたマスターバッチ生成物は、分散クレイ約20重量%及び触媒1.3重量%を含む固体である。マスターバッチを微粉に粉砕する。
【0084】
マスターバッチを、追加の環状ブチレンテレフタレートオリゴマーを重量比1:3で用いて粉末材料をブレンドすることによってレットダウンさせて、クレイを約5重量%含む重合性混合物を生成し、続いて反応性押出法で重合させて、重合ポリ(ブチレンテレフタレート)中クレイの複合体を形成する。REX法の装置は、下流に向かってギアポンプ、1”(2.5cm)スタティックミキサー(Kenics)、2.5”(6.25cm)フィルター(80/325/80メッシュ)及び2穴式ダイを装着した同方向回転二軸スクリュー押出機(Werner Pfleiderer and Krupp,25mm.38L/D)からなる。押出機は、10ポンド(4.54kg)/時及びバレル温度265℃で運転する。PET及び進行(advanced)濃縮物は別々に、振動フィーダーを用いて押出装置の供給口に供給する。フィーダー及びホッパーには、操作の間中、不活性ガスを充填する。材料は全て、加工前に真空オーブン中で90℃において少なくとも8時間乾燥させる。
【0085】
20%のマスターバッチを、真空オーブン中で190℃において8時間、進行(advancement)によって重合させる。8時間の終わりに、環状ブチレンテレフタレートオリゴマーは、重量平均分子量41,600(GPCによってポリスチレン標準に比較して測定)を有するポリ(ブチレンテレフタレート)に97%転化される。進行(advanced)20%濃縮物を、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET,Grade XZM94A)中に、マスターバッチ1部に対してPET 4部の比率でレットダウンさせて、PET 80%、PBT 16%及びクレイ4%を含む組成物(実施例5)を生成する。ペレットを引張試験片に射出成形する。PET、PBT及びSomasif MEEを混合し、そして前述のREX法によって押出することによって、同様な組成物を製造する(比較サンプルB)。対照サンプル(比較サンプルA)は、ポリ(エチレンテレフタレート)とポリ(ブチレンテレフタレート)との重量比83/17の充填剤無添加ブレンドである。
【0086】
性質は、以下の表IIに報告する通りである。
【0087】
【表2】

【0088】
PET中への17%のPBTの添加は、引張弾性率にそれほど影響を与えない(比較サンプルA)。示差走査熱量測定法(DSC)は、実施例5並びに比較サンプルA及びBのそれぞれに関して単一の溶融及びガラス転移を示す。これはいずれの場合にもエステル交換反応によって混和性の系が形成されることを示す。実施例5は、充填剤が添加されていない比較サンプルAに比較して弾性率の34%の改善を示す。比較サンプルBは、反応性押出法の間におけるオリゴマーへの充填剤の直接混和によくある問題を示している。ポリマーへのオリゴマーの転化が著しく悪化し、その結果、更なる硬化に供するのでなければ試験片に成形すらできない生成物が形成される。サンプル5は、低転化率の問題が、複合体形成のためのマスターバッチによるアプローチによって克服されることを示している。
【0089】
実施例6及び7
Somasif(登録商標)MEEクレイ、1,1,6,6−テトラ−n−ブチル−1,6−ジスタンナ−2,5,7−10−テトラオキサシクロデカン及び環状ブチレンテレフタレートオリゴマーの重量比15:85:0.34の粉末混合物をドライブレンドし、真空オーブン中で80℃において一晩処理する。この粉末混合物を、170℃において5lbs(2.27kg)/時で運転される18mmのLeistritz同方向回転二軸スクリュー押出機に供給することによって、この組成のマスターバッチを製造する。溶融された押出物を固化させ、粒状化し、結晶化させる。X線回折は、クレイにおける初期値に対してマスターバッチ中のクレイの中間層間隔が増加することによって示されるように、このマスターバッチがオリゴマーがインターカレートされたクレイを含むことを示す。
【0090】
実施例7は、クレイ濃度を3倍に増加させる以外は前述のようにして製造する。X線回折の結果は、実施例6の結果と同様である。
【0091】
実施例8〜10
反応性押出法によって実施例6のマスターバッチから組成物を製造する。反応押出法は、実施例5に記載した同方向回転二軸スクリュー押出機上で行う。押出機は10ポンド(4.54kg)/時において7.5分の平均滞留時間を用いて運転する。粒状化されたマスターバッチ及び環状ブチレンテレフタレートオリゴマー/ジスタノキサン触媒混合物を、使用前に真空オーブン中で90℃において少なくとも8時間乾燥させる。これらは別々に、押出機の供給口に振動フィーダーを用いて供給する。フィーダー及びホッパーには操作の間中、不活性ガスを充填する。混合比は、大環状オリゴマー2部及び触媒0.0067部につきマスターバッチ1部である。押出機は最初のゾーンにおいては120℃で運転し、下流ゾーンは170℃で、追加の下流装置は250℃で運転する。ダイから押出された、撚られたポリマーを空冷し、ペレタイザー中で細断する。押出されたペレットは次に、真空オーブン中で200℃において8時間、固相進行(advance)させる。28トンのArburgプレスを使用して、260℃のバレル温度及び88℃の金型温度を用いて、試験片を成形する。得られた成形品(実施例8)の機械的性質及び熱的性質は、標準試験法を用いて得る。これらは表III中に記載する通りである。
【0092】
実施例9のポリマーは、実施例6のマスターバッチを環状ブチレンテレフタレートオリゴマー中にレットダウンさせ且つ重合触媒としてブチル錫クロリドジヒドロキシドを用いる以外は実施例8と同様にして生成する。結果は、表IIIに示す通りである。
【0093】
実施例10のポリマーは、実施例7のマスターバッチを環状ブチレンテレフタレートオリゴマー中にレットダウンさせ且つ触媒を添加しない以外は実施例8と同様にして製造する。結果は、表IIIに示す通りである。
【0094】
【表3】

【0095】
実施例8〜10は更に、充填剤が添加されていない比較サンプルCに比較して、引張弾性率の非常に大幅な改善を示し、CLTEにはほとんど悪影響がない。
【0096】
実施例11
Somasif MEEクレイを15重量%含む環状ブチレンテレフタレートマスターバッチを、実施例4に記載した一般的な方法で製造する。このマスターバッチは、実施例5に記載したようにして追加の環状ブチレンテレフタレートで1:2の比でレットダウンさせる。生成物(実施例11)は、46,000の重量平均分子量を有する。オリゴマーのモノマーへの転化率は95%である。その結果、生成物は容易にペレットの形にされるか、または造形品に成形される。
【0097】
実施例5に記載した反応性押出法において5%のSomasif MEEクレイを環状ブチレンテレフタレート中に直接混合することによって、比較サンプルDを製造する。生成物の重量平均分子量は実施例11と同様であるが、転化率はわずか73%である。オリゴマーのポリマーへの転化率が低いため、ポリマーはペレット化も成形もできない。
【0098】
本発明の範囲は添付した「特許請求の範囲」によって規定され、本発明の精神から逸脱しなければ、本明細書中に記載した本発明に多くの変更を行えることがわかるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散された充填剤粒子を少なくとも15重量%含む、大環状オリゴマー中の充填剤粒子の分散体。
【請求項2】
前記充填剤粒子が約0.6nm〜約50nmの体積平均最小寸法を有する請求項1に記載の分散体。
【請求項3】
前記充填剤粒子が層状クレイを含む請求項2に記載の分散体。
【請求項4】
15〜60重量%の分散された充填剤粒子を含む請求項2に記載の分散体。
【請求項5】
前記充填剤粒子が約20nm以下の体積平均最小寸法を有する請求項3に記載の分散体。
【請求項6】
前記大環状オリゴマーが1,4−ブチレンテレフタレート、1,3−プロピレンテレフタレート、1,4−シクロヘキセンジメチレンテレフタレート、エチレンテレフタレート及び1,2−エチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートのオリゴマー又はそれらの2種若しくはそれ以上のオリゴマーである請求項3に記載の分散体。
【請求項7】
希釈剤を更に含む請求項6に記載の分散体。
【請求項8】
前記大環状オリゴマーが1,4−ブチレンテレフタレートのオリゴマーである請求項7に記載の分散体。
【請求項9】
コモノマー、連鎖延長剤、別のポリマー、耐衝撃性改良剤又はゴムを更に含む請求項1に記載の分散体。
【請求項10】
分散された充填剤粒子を少なくとも15重量%含む、大環状オリゴマーのポリマー中の充填剤粒子の複合体。
【請求項11】
前記充填剤粒子が約0.6nm〜約50nmの体積平均最小寸法を有する請求項10に記載の複合体。
【請求項12】
前記充填剤粒子が層状クレイを含む請求項11に記載の複合体。
【請求項13】
15〜60重量%の分散された充填剤粒子を含む請求項12に記載の複合体。
【請求項14】
前記充填剤粒子が約20nm以下の体積平均最小寸法を有する請求項13に記載の複合体。
【請求項15】
前記大環状オリゴマーが1,4−ブチレンテレフタレート、1,3−プロピレンテレフタレート、1,4−シクロヘキセンジメチレンテレフタレート、エチレンテレフタレート及び1,2−エチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートのオリゴマー、又はそれらの2種若しくはそれ以上のオリゴマーである請求項14に記載の複合体。
【請求項16】
希釈剤を更に含む請求項13に記載の複合体。
【請求項17】
前記大環状オリゴマーが1,4−ブチレンテレフタレートのオリゴマーである請求項16に記載の複合体。
【請求項18】
コモノマー、連鎖延長剤、別のポリマー、耐衝撃性改良剤又はゴムを更に含む請求項11に記載の複合体。
【請求項19】
a)大環状オリゴマー中に、少なくとも10重量%の分散された充填剤粒子を含む、分散された充填剤粒子のマスターバッチを形成し、;そして
b)前記マスターバッチをポリマー又は重合性材料と混合して、大環状オリゴマー及びポリマー又は重合性材料の混合物中の充填剤粒子の分散体を形成する
ことを含んでなるポリマー又は重合性材料中の充填剤粒子の分散体の製造方法。
【請求項20】
前記充填剤粒子が約0.6nm〜約50nmの体積平均最小寸法を有する請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記充填剤粒子が層状クレイを含む請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記充填剤粒子が約20nm以下の体積平均最小寸法を有する請求項21に記載の方法。
【請求項23】
c)分散された充填剤粒子の存在下に、大環状オリゴマーを重合させることを更に含む請求項19に記載の方法。
【請求項24】
工程c)を工程b)の間又は工程b)の後に実施する請求項23に記載の方法。
【請求項25】
工程c)を工程b)の前に実施する請求項23に記載の方法。
【請求項26】
工程a)を希釈剤の存在下に実施する請求項19に記載の方法。
【請求項27】
工程a)を希釈剤の存在下に実施する請求項23に記載の方法。
【請求項28】
工程c)を希釈剤の存在下に実施する請求項28に記載の方法。
【請求項29】
工程b)及びc)を単一工程として実施する請求項23に記載の方法。
【請求項30】
工程b)及びc)を反応性押出プロセスにおいて実施する請求項30に記載の方法。
【請求項31】
工程a)を希釈剤の存在下に実施する請求項29に記載の方法。
【請求項32】
工程c)を希釈剤の存在下に実施する請求項31に記載の方法。
【請求項33】
工程b)及びc)を単一工程として実施する請求項32に記載の方法。
【請求項34】
工程b)及びc)を反応性押出プロセスにおいて実施する請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記大環状オリゴマーが1,4−ブチレンテレフタレートのオリゴマーである請求項19〜34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
マスターバッチがコモノマー、連鎖延長剤、別のポリマー、耐衝撃性改良剤又はゴムを更に含む請求項19〜35のいずれか1項に記載の方法。

【公表番号】特表2008−503613(P2008−503613A)
【公表日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−516746(P2007−516746)
【出願日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【国際出願番号】PCT/US2005/021338
【国際公開番号】WO2006/028541
【国際公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】