説明

分散または粉砕装置及びビーズミル並びにこれらを用いた分散または粉砕方法

【課題】処理材料(ミルベース)と粉砕媒体(ビーズ)をベッセル内で攪拌して固体粒子を分散、粉砕する装置において、固体粒子をナノメートルサイズに分散、粉砕できるようにした実生産レベルで何ら障害が生じない装置を提供する。
【解決手段】ベッセル2内には、処理材料と粉砕媒体を攪拌するためのローター4がある。このベッセルの壁面には凹部12を形成してあり、この凹部に超音波発生装置の超音波ホーン13を設ける。凝集したナノ粒子には超音波による衝撃が与えられるとともに上記粉砕媒体に衝突し、また粉砕媒体も超音波の衝撃波により運動されるとともに粉砕媒体間の衝突によりせん断力が発生し、固体粒子はナノメートルサイズに分散、粉砕される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体中に混合されたナノメーターサイズの固体粒子を分散または粉砕できるようにした実生産レベルで使用可能な装置及びビーズミル並びにこれらを用いた分散または粉砕方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
粉砕媒体(ビーズ)を用いて処理材料(ミルベース)中の固体粒子を微粉砕し液中に分散または粉砕する装置が知られ、そのための装置としてmmオーダーのビーズを粉砕媒体としたビーズミル(湿式媒体分散機、メディアミル等)が広く用いられている。実生産で使用されている装置は、ビーズとともに処理材料を攪拌し、せん断作用で固体粒子を粉砕して液中に分散することによりサブミクロンレベルまで微粒子化した粒子を得ている。しかしながら、近年要求されているような粒子サイズが100ナノメーター以下である極めて微細なナノ粒子をmmオーダーのビーズを用いたビーズミルで得ることはむずかしい。これは、ナノ粒子に均一なせん断力を付加できないためである。そこで、最近では数十μmのビーズを用いたビーズミルが開発され、より均一なせん断力をナノ粒子に付加できるため、ナノメーターサイズである一次粒子近くまで、粉砕ならびに分散させることが実験室レベルで可能になってきた。一方、エマルジョンの製造等の液/液系の分散や固/液系における固体粒子の粉砕ならびに分散に使用する超音波分散機も知られている。この方法によれば均一な粒子同士の衝突を付加させることができるので、粒子濃度によっては、また実験室レベルでナノメーターサイズである一次粒子近くまで粉砕ならびに分散させることが可能である。この超音波分散機はキャビテーションの崩壊によって生じる衝撃波で粒子同士の衝突を発生させることにより粉砕ならびに分散させることが可能となる。生産レベルで使用可能な上記mmオーダーのビーズを用いたビーズミルと超音波照射を組み合わせた、具体的にはメディアミルと容器を管で連結して分散処理された固体顔料と液媒体の混合物を循環させ、この容器内を減圧し一部に超音波発振機構を設けた顔料分散装置も知られている(例えば特許文献1参照)。しかし、そのような装置、方法で用いる超音波発振機構はメディアミルによって分散された分散液の沈降防止の目的で超音波を照射しているのであり、確実に粉砕ならびに分散させたナノ粒子を得るために超音波装置を用いているのではない。
【特許文献1】特開2000−351916号公報(請求項7、〔0029〕、〔0049〕図面)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述したように、数十μmオーダーの非常に微小なビーズを用いたビーズミルでは、ナノメーターサイズの一次粒子サイズ近くまで粉砕および分散が実験室レベルで可能になったが、液中に分散したナノ粒子と数十μmオーダーのビーズの分離が難しく、実生産レベルではとても使用出来ないという課題がある。また、mmオーダーのビーズ、例えば0.5mm(500μm)レベルのビーズを用いた場合は、ビーズの分離は可能であるが、一次粒子サイズ近くまでの粉砕及び分散は不可能とされてきた。一方、超音波を照射する手法により一次粒子レベルの粉砕及び分散を可能とする方法も知られているが、粒子同士の衝突を十分に発生させるための条件が極めて狭く、そのエネルギーを付与できる領域が極めて狭いために、少量しか処理できない。そのためコストパフォーマンスの点で、実生産にはほとんど使用されていない。さらに特許文献1に示すように、超音波照射とビーズミルを組み合わせた方法も提案されているが、超音波照射が実生産レベルの大容量のタンクでなされており、タンクに粉砕媒体(ボールやビーズ)が入っていないので、超音波照射による粒子同士の衝突が十分でなく固体粒子を微粉砕する機能を有していない。超音波照射の効果により固体粒子を粉砕し液体中に分散するためには、タンクを極めて小さくする以外に方法はなく、それでは実生産では効率が悪く使用できない。
このようにいろいろな方法が試みられては来たが、依然としてナノ粒子の解砕・分散を目的とした用途において、mmオーダーのビーズを用いて実生産レベルで使用できるまで至っていないと言う課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明によれば、固体粒子を液体中に混合した処理材料を粉砕媒体とともに攪拌し、攪拌中に超音波を照射して上記固体粒子を微粉砕し液体中に分散することを特徴とする分散または粉砕装置が提供され、好ましくは上記粉砕媒体の粒径を約15μm〜1.0mmとし、照射する超音波の振動数を約15KHz〜30KHz、振幅を約5μm〜50μmとした上記分散または粉砕装置が提供されることで上記課題が解決される。また本発明によれば上記装置を用いて液体中の固体粒子を分散または粉砕する分散または粉砕方法が提供される。
【0005】
本発明によれば、固体粒子を液中に混合した処理材料(ミルベース)をベッセル内に供給し該ベッセル内で粉砕媒体とともに攪拌して固体粒子を微粉砕し液体中に分散するビーズミルにおいて、攪拌中の処理材料とビーズに超音波を照射するよう上記ベッセルに超音波発振機を設けたことを特徴とするビーズミルが提供される。また本発明によれば上記装置を用いて液体中の固体粒子を分散または粉砕する分散または粉砕方法が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本発明は上記のように構成され、mmオーダーのビーズを用いたビーズミルのように粉砕媒体の運動により処理材料中の固体粒子にせん断力を作用させたり、超音波分散機のように粒子同士の衝突を与えて粉砕、分散する場合に比べて、固体粒子を液体中に混合した処理材料を粉砕媒体とともに攪拌し、攪拌中に超音波を照射して上記固体粒子を微粉砕し液体中に分散するようにしたので、超音波照射により生じる衝撃波で凝集したナノ粒子間の衝突が発生するとともに粉砕媒体にもナノ粒子が衝突する。これは特により粒子濃度が低い場合に有効となる。同時に、上記粉砕媒体にも超音波照射による衝撃波が伝えられて運動を促進させるとともにこの粉砕媒体はベッセル内で激しく攪拌運動しているから、粉砕媒体は十分に運動し、粉砕媒体どうしの衝突により強いせん断力が生じ、この衝突により生じるせん断力と上記ナノ粒子間の衝突、粉砕媒体への上記衝突が相俟って、固体粒子を極めて微粉砕することができ、ナノ粒子を得ることができる。この粉砕ならびに分散装置は、実生産レベルで使用する際に、何ら問題は生じない。
【0007】
また、上記のようにして得られたナノ粒子の平均粒子径は約100nm以下であるから、粉砕媒体の粒径を15μm以上とすることにより粉砕媒体の分離が可能であり、また粉砕媒体の粒径を1.0mm以下とすることにより超音波により形成される衝撃波で該粉砕媒体を十分に運動させることができる。ビーズミルにおけるベッセル内に超音波発振機を設ける場合には、生産レベルで使用する上で、より確実にナノ粒子とビーズを分級可能な、かつ超音波により形成される衝撃波で該粉砕媒体を十分に運動させることができる0.5mmから1.0mmの範囲が好ましい。ビーズミルにおいて供給槽および回収槽を共有する槽に、超音波発振機を設ける場合は、該粉砕媒体を15μmから1.0mmのいずれの範囲でも実生産上、何ら問題はない。さらに、超音波の振動数を15KHz〜30KHz、振幅を5μm〜50μmとすると、確実に大きなキャビテーションを発生させることができ、崩壊するときに生じる衝撃波が強くなり、凝集したナノ粒子および粉砕媒体を十分に運動させ、分散ならびに粉砕することができる。より好ましくは、超音波の振動数を15KHz〜20KHz、振幅を20μm〜50μmとすることが望ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明は種々のビーズミル(湿式媒体分散機、メディアミル、ビーズ分散機等)に適用することができるが、以下具体的な実施例としてA〜D方式について説明する。図1は、A方式の一例を示し、ビーズミル1はベッセル2と、該ベッセル2内で駆動軸3により回転されるローター4を有し、該ベッセル2内にはビーズ供給口5から供給された所定量の粉砕媒体(ビーズ)が収納され、固体粒子と液体の混合物である処理材料(ミルベース、スラリー)がミルベース供給口6からベッセル2内に供給される。
【0009】
上記ローター4は筒状に形成され、表面は実質的に平滑面に形成してあるが、粉砕媒体に運動を与えるよう適宜形状の突起、例えば特公平4−70050号公報に示されているようなベッセル内で処理材料を前進させたり、後退させたりしてほぼ栓流状(プラグフロー状)に流動させることができるような案内メンバーを設けてもよい。なお、ローターには、内面から外面に粉砕媒体が循環運動するようローター開口7が適所に設けられている。
【0010】
上記ローター4の内面にはステーター8が形成され、該ステーター8の適宜位置には粉砕媒体を分離して処理材料のみを流出させるようスクリーン9等の媒体分離装置を有するステーター開口10が形成され、該ステーター開口10はミルベース吐出口11に通じている。
【0011】
図1に示す上記ビーズミルは、ベッセルの一部にポケットを設け、そのポケットの内側にホーン型超音波発振機を装着している。より具体的には、図1(B)に示すように上記ベッセル2の内壁には凹部12が形成され、該凹部12には超音波発生装置の超音波ホーン13が設けられている。この凹部12は上記粉砕媒体の影響を受けにくい部分、若しくは影響を受けにくくなるよう適宜のバッフル等を構成した箇所に設けるとよい。なお、図に示す具体例では、一箇所に設けてあるが、複数箇所に設けることもできる。ポケットにはビーズとスラリーが供給されるので、超音波照射すればナノ粒子同士の衝突とナノ粒子とビーズとの衝突が発生し、ローター回転部における高速回転に供せられるビーズによるせん断力と相重なって、凝集したナノ粒子は一次粒子近くまで粉砕ならびに分散できる。ビーズの大きさは15μmから1.0mmの範囲とする。好ましくは0.5mmから1.0mmの範囲である。この範囲とすることでスクリーン(隙間)等の媒体分離装置を用いて確実にナノ粒子とビーズを分級可能となる。
【0012】
図2はB方式の一例を示し、ビーズミル14はベッセル15内に駆動軸16で回転されるローター17を有し、該ローター17の周面には、例えば特公平4−70050号公報に記載されているようにスラリーを略栓流状に流動させるための案内メンバーを形成し、内部に粉砕媒体(ビーズ)を収納している。そして供給口18から入ったスラリーは略栓流状に流動しながら分散処理され、媒体分離装置19を通って吐出口20から流出する。この装置では、スラリーは上記A方式とは反対にベッセルの先端方向からローターに向かって流れている。このローターの先端の向かい側のベッセルにスペース21を作り、そこに投入型超音波発振機22を装着してある。このスペースにはビーズとスラリーが供給されるので、超音波照射すればナノ粒子同士の衝突とナノ粒子とビーズとの衝突が発生し、ローター回転部における高速回転に供せられるビーズによるせん断力と相重なって、凝集したナノ粒子は一次粒子近くまで粉砕ならびに分散できる。ビーズの大きさは15μmから1.0mmの範囲とする。好ましくは0.5mmから1.0mmの範囲である。この範囲とすることでスクリーン(隙間)等の媒体分離装置を用いて確実にナノ粒子とビーズを分離可能となる。
【0013】
図3はC方式の一例を示し、ビーズミル23は基本的に上記図1に示すビーズミル1と同じであるので、共通する部分は同じ符号を付して説明を省略するが、ベッセルに超音波ホーンを収納するための凹部が形成されておらず、ホーン型超音波発振機24はスラリーがスクリーン(隙間)を通過し吐出口へ出る前の溜まりのスペース25中に装着されている。先ず、スクリーン通過前のベッセル内でローター回転部における高速回転に供せられるビーズによるせん断力からの粒子の粉砕があり、その直後に、スラリーがスクリーンを通過し吐出口へ出る前の溜まりスペース25中にホーン型超音波発信機24が装着されているので、ナノ粒子同士の衝突がここで発生し、結果両作用をほぼ同時に受けることで、凝集したナノ粒子は一次粒子近くまで粉砕ならびに分散可能となる。ビーズの大きさは15μmから1.0mmの範囲とする。好ましくは0.5mmから1.0mmの範囲である。この範囲とすることでスクリーン(隙間)等の媒体分離装置を用いて確実にナノ粒子とビーズを分離可能となる。
【0014】
図4はD方式の一例を示す装置であって、スラリーの流入口26と流出口27を有し、ビーズミル28へのスラリー供給槽と回収槽を兼ね備えたある種のタンクミキサー29を具備し、そのミキサーにビーズを投入し、かつ超音波発振機30を装着する。同時にミキサーにはビーズを攪拌するための撹拌羽根31を装着しておく。ビーズの大きさは、15μmから1.0mmの範囲とする。スラリー中のナノ粒子とビーズを分離する媒体分離装置としては、0.5mmから1.0mmの場合は、スクリーン(隙間)を設ける方式により、15μmから0.5mmの場合は、フィルターを通過させる方式が望ましい。ビーズの大きさについては、超音波の振幅が大きい場合は、ビーズが大きくても運動させることができるので、15μmから1.0mmの範囲のいずれでも、ナノ粒子同士の衝突ならびにビーズとの衝突を発生させることができ、相重なる効果でナノ粒子の一次粒子近くまで粉砕ならびに分散が可能となる。一方、超音波の振幅が小さい場合は、大きなビーズは運動させることができないため、より小さなビーズを選択する必要が生じる。ビーズの投入量は、処理すべきスラリーの粒子濃度によって最適なビーズ投入量が決定される。希薄スラリーの場合は、投入量が多く必要となり、濃厚スラリーの場合は投入量を少なくする必要が生じる。
【0015】
ベッセル内に超音波発振機を設置する場合の粉砕媒体は、超音波により生じるキャビテーション崩壊による衝撃波で動かされる程度の微細なビーズ、すなわち従来の一般的な媒体分散機に使用するビーズより比較的粒径の小さいものが好適に使用でき、かつ上記スクリーン(隙間)等の媒体分離装置で分離できる程度の大きさが好ましい。具体的には、フィルターを用いる方法ならびに遠心分離による方法でも、実験の結果によれば、平均粒径が100nm以下のナノ粒子を分離できるようにするためには、粉砕媒体の粒径は約15μm以上必要であり、それ以下の小さい粒径では分離が困難であった。より好ましくは、確実に分級が可能なスクリーン(隙間)を用いる手法で、ビーズ径は0.5mm以上とすることがより好ましい。また、ビーズ径が1.0mmを超えると、超音波により形成される衝撃波で粉砕媒体を十分に運動させることができなくなるため、結果として凝集したナノ粒子を粉砕媒体に効果的に衝突させることができない。
より大きな粉砕媒体を運動させるためにはより大きなキャビテーションを発生ならびに崩壊させることが必要である。さらに、粒子濃度が高い時には、粉砕媒体の量は少量とし、粒子濃度が低い時には、粉砕媒体の量は多目とすることが望ましい。
粉砕媒体の材質は、本発明で提供される分散または粉砕装置が使用される用途によって最適な材質が選択され、例えばエンジニアリングプラスチック、ガラス、セラミックス、スチールなどいずれでも構わない。磨耗や欠損が発生しやすい用途には、ジルコニア材質が好ましい。
ナノ粒子を本発明で提供される分散または粉砕装置を用いて処理する際の、溶剤は水の他、各種アルコール、シクロヘキサン、メチルエチルケトン、酢酸メチル、トルエン、へキサンなどの有機溶剤であっても構わない。
【0016】
ベッセル内に超音波発振機を設置する場合、上記超音波発生装置は、超音波照射により生じるキャビテーションの衝撃波によってナノ粒子同士に衝突を与えるとともに上記粉砕媒体を運動させることができる程度の振動数と振幅が必要であり、実験の結果によれば振動数約15KHz〜30KHz、振幅約5μm〜50μmにすると、キャビテーションが大きく、崩壊時に生じる衝撃波を強くでき、凝集したナノ粒子及び粉砕媒体に十分な運動を与えることができた。より好ましくは、超音波の振動数を15KHz〜20KHz、振幅を20μm〜50μmとすることが望ましい。
【0017】
上記の如き超音波を併用したビーズミルと、単なる超音波分散機や従来のビーズミルを用いて分散、粉砕する場合との相違を簡単に説明すると、超音波分散機だけの場合は図5に示すように衝撃波によって発生する衝突は凝集したナノ粒子33間の衝突だけである。また、ビーズミルだけの場合には、図6に示すように、粉砕媒体34間により生じるせん断力だけであり、ナノ粒子33を積極的に粉砕媒体34に衝突させるものではない。そして、超音波を併用したビーズミルでは図7に示すように、超音波の衝撃波が粉砕媒体に付加されるから、凝集したナノ粒子33にはせん断力と超音波照射によるナノ粒子間の衝突とナノ粒子の粉砕媒体への衝突が発生するため、効果的に微粒子化され、ナノ粒子でも十分に分散、粉砕することが可能となる。
【0018】
以下本発明に係る実施例を詳細に説明する。ただし、これらの実施例によって必ずしも本発明が限定されるわけではない。
【実施例】
【0019】
(実施例1)
A方式によるベッセルの一部にポケットを設け、そのポケットの内側にホーン型超音波発振機を装着した図1に示す装置を用いた。より具体的には、上記ベッセル2の内壁には凹部12が形成され、該凹部12には超音波発生装置の超音波ホーン13を設けた。超音波は振幅50μm、振動数20KHzとした。ビーズミルは周速4m/S、スラリー送り速度10mL/Sで処理を行った。酸化チタンナノ粒子で構成される一次粒子径35nmのデグサP25粉末を10体積%、および高分子分散剤として分子量8000のポリアクリル酸アンモニウム塩をP25粉末の粒子表面積あたり0.5mg/m添加した水スラリーを500rpmの回転羽根を用いて30分間前処理した。このスラリー3リッターを用いて、上記装置を使用して5時間まで分散実験を行った。超音波減衰方式の粒度分析計を用いて、粒子濃度10体積%のままでスラリー中の粒子サイズを測定した。1時間ごとに5時間まで測定した粒子サイズを表1に示した。
【0020】
(実施例2)
B方式による上記図2に示す装置を用いた。具体的にはスラリーはA方式とは反対にベッセルの先端方向からローターに向かって流れ、ローターの先端の向かい側に作ったスペースに投入型超音波発振機を装着させた以外は、実施例1と同様にして分散実験を行い、1時間ごとに5時間まで測定した粒子サイズを表1に示した。
【0021】
(実施例3)
C方式による図3に示す装置を用いた。具体的にはスラリーがスクリーン(隙間)を通過し吐出口へ出る前の溜まりのスペース中にホーン型超音波発振機を装着させ、これ以外は実施例1と同様にして分散実験を行い、1時間ごとに5時間まで測定した粒子サイズを表1に示した。
【0022】
(実施例4)
D方式による図4に示す装置を用いた。具体的には0.5mmのジルコニア質ビーズを用いたビーズミルとその循環系にスラリー供給槽と回収槽を兼ねたミキサーを設け、そのミキサーには50μmのジルコニア質ボールを0.1リッター分投入した。ボール(ビーズ)とスラリー中のナノ粒子との分級を行うために25μm網目のフィルターを設置した。さらにその槽には振動数20KHz、振幅50μmの超音波発振機を設置した。ビーズミルは周速4m/S、スラリー送り速度10mL/Sで処理を行った。酸化チタンナノ粒子で構成される一次粒子径35nmのデグサP25粉末を10体積%、および高分子分散剤として分子量8000のポリアクリル酸アンモニウム塩をP25粉末の粒子表面積あたり0.5mg/m添加した水スラリーを500rpmの回転羽根を用いて30分間前処理した。このスラリー3リッターを用いて、上記装置を使用して5時間まで分散実験を行った。超音波減衰方式の粒度分析計を用いて、粒子濃度10体積%のままでスラリー中の粒子サイズを測定した。1時間ごとに5時間まで測定した粒子サイズを表1に示した。
【0023】
(実施例5)
供給槽および回収槽を兼ね備えたミキサーに入れるビーズ径を0.5mmとし、ビーズとナノ粒子の分離をスクリーン(隙間)0.2mmとした以外は実施例4と同様にして分散実験を行い、1時間ごとに5時間まで測定した粒子サイズを表1に示した。
【0024】
(実施例6)
振動数20KHz、振幅20μmの超音波を供給槽および回収槽を兼ね備えたミキサーにあるスラリーに照射した以外は実施例4と同様にして分散実験を行い、1時間ごとに5時間まで測定した粒子サイズを表1に示した。
【0025】
(実施例7)
振動数20KHz、振幅20μmの超音波を供給槽および回収槽を兼ね備えたタンクミキサーにあるスラリーに照射し、該ミキサーに入れるビーズ径を0.5mmとし、ビーズとナノ粒子の分級をスクリーン(隙間)0.2mmとした以外は実施例4と同様にして分散実験を行い、1時間ごとに5時間まで測定した粒子サイズを表1に示した。
【0026】
(比較例1)
供給槽および回収槽を兼ね備えたミキサーに入れるビーズと超音波照射をなくした以外は実施例4と同様にして分散実験を行い、1時間ごとに5時間まで測定した粒子サイズを表1に示した。
【0027】
(比較例2)
供給槽および回収槽を兼ね備えたミキサーに入れるビーズをなくした以外は実施例4と同様にして分散実験を行い、1時間ごとに5時間まで測定した粒子サイズを表1に示した。
【0028】
(比較例3)
振動数20KHz、振幅20μmの超音波を供給槽および回収槽を兼ね備えたミキサーのスラリーに照射し、ミキサーに入れるビーズをなくした以外は実施例4と同様にして分散実験を行い、1時間ごとに5時間まで測定した粒子サイズを表1に示した。
【0029】
(比較例4)
振動数40KHz、振幅5μmの超音波を供給槽および回収槽を兼ね備えたミキサーのスラリーに照射し、ミキサーに入れるボールビーズをなくした以外は実施例4と同様にして分散実験を行い、1時間ごとに5時間まで測定した粒子サイズを表1に示した。
【0030】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施例を示すA方式のビーズミルであって、(A)は断面図、(B)は(A)のB−B線断面図。
【図2】本発明の一実施例を示すB方式のビーズミルの断面図
【図3】本発明の一実施例を示すC方式のビーズミルの断面図
【図4】本発明の一実施例を示すD方式の装置の断面図。
【図5】従来の超音波分散機の作用を示す説明図。
【図6】従来のビーズミルの作用を示す説明図。
【図7】本発明のビーズミルの作用を示す説明図。
【符号の説明】
【0032】
1、14、23、28ビーズミル
2、15ベッセル
3、16駆動軸
4、17ローター
5ビーズ供給口
6、18ミルベース供給口
7ローター開口
8ステーター
9スクリーン
10ステーター開口
11、20ミルベース吐出口
12凹部
13、22、24、30、超音波発信機、
29タンクミキサー
33ナノ粒子
34粉砕媒体(ビーズ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体粒子を液体中に混合した処理材料を粉砕媒体とともに攪拌し、攪拌中に超音波を照射して上記固体粒子を微粉砕し液体中に分散することを特徴とする分散または粉砕装置。
【請求項2】
上記粉砕媒体は粒径が15μm〜1.0mmであり、照射する超音波の振動数は15KHz〜30KHz、振幅は5μm〜50μmである請求項1に記載の分散または粉砕装置。
【請求項3】
固体粒子を液中に混合した処理材料(ミルベース)をベッセル内に供給し該ベッセル内で粉砕媒体とともに攪拌して固体粒子を微粉砕し液体中に分散するビーズミルであることを特徴とする請求項1または2に記載の分散または粉砕装置。
【請求項4】
請求項3記載の分散または粉砕装置において超音波を照射する超音波ホーンが上記ベッセルの内面に形成した凹部に設けられているビーズミル。
【請求項5】
上記請求項1〜4のいずれかに記載の分散または粉砕装置を用いて液体中の固体粒子を分散または粉砕する分散または粉砕方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−200601(P2008−200601A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−39179(P2007−39179)
【出願日】平成19年2月20日(2007.2.20)
【出願人】(301023238)独立行政法人物質・材料研究機構 (1,333)
【出願人】(000139883)株式会社井上製作所 (24)
【Fターム(参考)】